説明

放射線管装置及び放射線画像撮影システム

【課題】小焦点化及びマルチビーム化したX線管において、陽極の熱による劣化を防止する。
【解決手段】X線管に用いられる回転陽極の陽極本体30のビーム照射面29に、溝33と、溝33の表面に設けられた第1のX線非発生材37と、溝33内に埋め込まれた第2のX線非発生材34とからなる複数のX線非発生部35a〜35dと、X線非発生部35a〜35dの間に設けられ、ビーム照射面29の表面から構成される複数のX線発生部36a〜36cとを設けている。陰極から電子ビームが照射されると、X線発生部36a〜36cは、放射線画像撮影に適した強度及び波長域のX線を発生するので、小焦点化され、かつ所定ピッチで配列された仮想的な複数の点光源を得られる。第1のX線非発生材37及び第2のX線非発生材34は、例えばカーボン及びアルミニウムからなるので、陽極本体30の熱が放熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相コントラスト画像の撮影に用いられる放射線管装置と、この放射線管装置を用いた放射線画像撮影システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線、例えばX線は、物体に入射したときの相互作用により強度と位相とが変化し、位相の変化が強度の変化よりも高い相互作用を示すことが知られている。このX線の性質を利用し、被検体によるX線の位相変化(角度変化)に基づいて、X線吸収能が低い被検体から高コントラストの画像(以下、位相コントラスト画像と称する)を得るX線位相イメージングの研究が盛んに行われている。
【0003】
X線位相イメージング装置として、タルボ・ロー干渉計を用いたX線画像撮影システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このX線画像撮影システムは、一般的な通常サイズのX線焦点(例えば、0.1〜1mm程度)を有するX線源から放射されたX線をマルチスリットによって部分的に遮蔽し、細幅かつ線状で所定ピッチで配置された複数の仮想的なX線源を形成する。マルチスリットにより形成された仮想的なX線源は、焦点サイズが小さくなるため、X線位相イメージングに最適な空間的可干渉性を得ることができ、X線源が複数になるのでX線強度を高めることができる。
【0004】
上記X線画像撮影システムは、マルチスリットに対面するように第1の格子を配置し、第1の格子からタルボ干渉距離だけ下流に第2の格子を配置している。第2の格子の背後には、X線を検出して画像を生成するX線画像検出器(FPD:Flat Panel Detector)が配置されている。そして、マルチスリットと第1の格子との間に配置された被検体を透過したX線から、第1及び第2の格子により縞画像を生成し、縞画像の変化を縞走査法により検出して、被検体の位相情報を取得する(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【0005】
縞走査法とは、第1の格子に対して第2の格子を、第1の格子の面にほぼ平行で、かつ第1の格子の格子方向(条帯方向)にほぼ垂直な方向に、格子ピッチを等分割した走査ピッチで並進移動させながら複数回の撮影を行い、X線画像検出器で得られる各画素値の変化から、被検体で屈折したX線の角度分布(位相シフトの微分像)を取得する方法であり、この角度分布に基づいて被検体の位相コントラスト画像を得る。この縞走査法は、レーザ光を利用した撮影装置においても用いられている(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
マルチスリットは、X線を吸収すべき部分の機能を保証するために、十分な厚さを持つ必要がある。しかも、マルチスリットは、数十ミクロンの間隔で十ミクロン程度のスリット幅を持つ必要がある。このため、マルチスリットは、アスペクト比の高い構造となってしまい、作製が難しいという問題がある。さらに、X線は、発生源から放射状に広がるので、高いアスペクト比を持つX線マルチスリットは、理想的には、X線源を曲率中心とした円筒面である必要がある。このことも、マルチスリットの作製を難しくしている。
【0007】
従来、製造が難しいマルチスリットを使用せずに、マルチスリットを用いたX線源と同様にX線を小焦点化及びマルチビーム化できるようにしたX線源が発明されている。このX線源は、電子ビームの照射によってX線を発生しない材質で形成された支持基板上に、電子ビームの照射によりX線を発生する陽極をストライプ状に配置することにより、細幅かつ線状で所定ピッチで配置された複数の仮想的なX線源を形成している(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
また、特許文献3には、タングステン、モリブデン等の原子番号が大きな高Z材料と、アルミニウム、ベリリウム等の原子番号が小さな低Z材料とを交互に配置した陽極を用いることによりマルチビーム化したX線源が開示されている。また、特許文献4には、特許文献3のX線源を用いてタルボ干渉法により位相コントラスト画像を撮影できるようにしたX線画像撮影システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2008−545981号公報
【特許文献2】特開2009−195349号公報
【特許文献3】中国公開公報 CN1917135
【特許文献4】米国公開公報 US2010/0091947
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】C. David, et al., Applied Physics Letters, Vol.81, No.17, 2002年10月,3287頁
【非特許文献2】Hector Canabal, et al., Applied Optics, Vol.37, No.26, 1998年9月,6227頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
X線管では、陽極に照射された電子ビームの総エネルギーのうち、X線に変換されるエネルギーの変換率は1%以下であり、残りの99%以上は熱となって陽極を加熱することが知られている。特許文献3では、現ヂ番号が低い低Z材料を用いているが、このような材料は単体では融点が低くいため、電子ビームの照射による加熱で溶融したり、高Z材料と低Z材料とが合金化する等して陽極が劣化することが懸念される。
【0012】
本発明の目的は、小焦点化及びマルチビーム化した放射線管装置において、陽極の熱による劣化を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の放射線管装置は、電子ビームを放射する陰極と、電子ビームが照射されるビーム照射面を有する陽極本体と、ビーム照射面に設けられ、電子ビームの照射によって放射線画像の撮影が可能な放射線を発生する複数の放射線発生部、及び放射線発生部の間にそれぞれ配置され電子ビームの照射によって放射線画像の撮影に使用可能な放射線を発生しない複数の放射線非発生部とを有する陽極と、を備えており、放射線非発生部は、ビーム照射面に設けられた溝と、2種類以上の元素で構成され溝内に埋め込まれた放射線非発生材とを含んでいる。
【0014】
放射線非発生材を構成する2種類以上の元素には、原子番号が30以下の元素が少なくとも1つ以上含まれていることが好ましい。また、放射線非発生材は、溝の表面に設けられた第1の放射線非発生材と、溝内に埋め込まれた第2の放射線非発生材とから構成してもよい。この場合、第1及び第2の放射線非発生材は、それぞれ単元素または2種類以上の元素の化合物から構成するのが好ましい。また、別の放射線非発生材としては、2種類以上の元素の化合物であってもよい。
【0015】
陽極に、複数の放射線発生部及び放射線非発生部によって複数本の放射線ビームを放射するマルチビーム発生部と、1つの放射線発生部によって1本の放射線ビームを放射する単ビーム発生部とを設け、電子ビームをマルチビーム発生部と単ビーム発生部とに選択的に照射させる電子ビーム切替手段を備えていてもよい。
【0016】
また、陽極に、複数の放射線発生部及び放射線非発生部の配置間隔を異ならせることにより、放射される放射線ビームの配置間隔をそれぞれ異ならせた複数のマルチビーム発生部を設け、電子ビームを複数のマルチビーム発生部に選択的に照射させる電子ビーム切替手段を備えていてもよい。
【0017】
陽極が円板状の回転陽極であるときには、射線発生部及び放射線非発生部を、陽極板に設けられたビーム照射面に円環状に設けてもよい。
【0018】
本発明の放射線画像撮影システムは、放射線を透過する部分と吸収する部分とからなる格子構造が周期的に配置され、放射線源から照射された放射線を通過させて第1の周期パターン像を形成する第1の格子と、第1の周期パターンに対して位相が異なる少なくとも1つの相対位置で第1の周期パターン像に強度変調を与える強度変調手段と、強度変調手段により相対位置で生成された第2の周期パターン像を検出する放射線画像検出器と、放射線画像検出器により検出された少なくとも1つの第2の周期パターン像に基づいて、位相情報を画像化する演算処理手段とを備えており、放射線菅装置として本発明の放射線管装置を用いたものである。
【0019】
強度変調手段として、第1の周期パターンを透過する部分と吸収する部分とからなる格子構造が周期的に配置された第2の格子と、前記第1及び第2の格子のいずれか一方を、第1及び第2の格子の格子構造の周期方向に所定のピッチで移動させる走査手段とからなり、走査手段により移動される各位置が相対位置に対応するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、2種類以上の元素で構成された放射線非発生材により放射線非発生部を構成しているので、放射線非発生部の融点が高くなり、かつ熱伝導性も向上するので、熱による陽極の劣化を抑制することができる。また、2種類以上の元素で構成された放射線非発生材により放射線非発生部を構成することにより、放射線発生部と放射線非発生部とが合金化するのも防止することができる。
【0021】
放射線非発生材を構成する2種類以上の元素には、原子番号が30以下の元素が少なくとも1つ以上含まれていればよいので、放射線非発生材として様々な材料を用いることができる。また、放射線非発生材は、第1及び第2の放射線非発生材としたり、2種類以上の元素の化合物とすることもできるので、様々な構成で利用可能である。
【0022】
また、放射線の単ビームとマルチビームとを切り換えることができるので、位相コントラスト画像の撮影と吸収の画像の撮影とで、最適な放射線を用いることができる。更に、マルチビームのピッチを切り換えることができるので、位相コントラスト画像の画質を向上させることができる。本発明の放射線画像撮影システムによれば、本発明の放射線管装置を使用するので、位相コントラスト画像の画質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のX線画像撮影システムの構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態のX線管の構成を示す概略図である。
【図3】第1実施形態の回転陽極の平面図である。
【図4】第1実施形態の陽極板の要部断面図である。
【図5】第1実施形態の陽極板の製造手順を示す説明図である。
【図6】モリブデンとアルミニウムから発生されるX線の特性を示すグラフである。
【図7】点光源のピッチと第1及び第2の吸収型格子の格子ピッチとの関係を示す説明図である。
【図8】第2実施形態のX線管を示す説明図である。
【図9】第3実施形態のX線管を示す説明図である。
【図10】第4実施形態のX線管を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1実施形態]
図1に示すように、本発明のX線画像撮影システム10は、被検体HにX線を照射するX線源11と、X線源11に対向配置され、X線源11から被検体Hを透過したX線を検出して画像データを生成する撮影部12とを備えている。撮影部12には、撮影部12から読み出された画像データを記憶するメモリ13が接続されており、メモリ13には、メモリ13に記憶された複数の画像データを画像処理して位相コントラスト画像を生成し、生成した位相コントラスト画像を画像記録部15に記録する画像処理部14が接続されている。X線源11及び撮影部12は、撮影制御部16により制御される。システム制御部18は、操作部やモニタからなるコンソール17から入力された操作信号に基づいて、X線画像撮影システム10の全体を統括的に制御する。
【0025】
X線源11は、図2に示す回転陽極型のX線管装置20と、図示しない高電圧発生器及びコリメータ等から構成されている。X線管装置20は、撮影制御部16の制御に基づいて、被検体HにX線を照射する。コリメータは、X線管装置20から発せられたX線のうち、被検体Hの検査領域に寄与しない部分を遮蔽するように照射野を制限する。
【0026】
X線管装置20は、真空外囲器21と、この真空外囲器21内に収容された回転陽極22、及び陰極23とを備えている。真空外囲器21は、内部が真空状態とされたガラス管25と、ガラス管25の外側を覆う金属性のケース体26と、ガラス管25とケース体26との間に封入された絶縁オイル27とからなる。ケース体26には、X線を放射する放射口26aが設けられている。なお、X線管装置20は、回転陽極22を回転自在に支持する軸受け部や、回転陽極22を回転させる回転機構等も当然備えているが、本実施形態ではこれらの詳しい説明を省略する。
【0027】
回転陽極22は、円板の一方の面の外周部分に他方の面に向かって傾斜されたビーム照射面29が設けられた円錐台形状の断面を有する陽極本体30と、陽極本体30の中央に設けられた回転軸31とを備えている。陰極23は、回転軸31の軸方向において、陽極本体30のビーム照射面29に対面するように配置されており、高電圧発生装置から高電圧が印加されたときに、ビーム照射面29に向けて電子ビームを照射する。陽極本体30は、例えばモリブデンやタングステン等からなり、電子ビームが照射されたときに材質に依存したX線スペクトルでX線を発生する。陽極本体30が発生したX線は、回転陽極22の半径方向に放射され、放射口26aを通過してX線管装置20の外に放射される。
【0028】
図3及び図4に示すように、陽極本体30のビーム照射面29には、円環状の溝33と、溝33の表面に設けられた第1のX線非発生材37と、溝33内に埋め込まれた第2のX線非発生材34とからなる4本のX線非発生部35a〜35dが設けられている。また、X線非発生部35a〜35dの間には、ビーム照射面29の一部からなる円環状の3本のX線発生部36a〜36cが設けられている。X線発生部36a〜36cは、位相コントラスト画像の撮影に適した複数の微小なX線焦点が得られるように、幅、間隔が設定されている。
【0029】
なお、本実施形態で用いるX線非発生部35a〜35dとは、X線を全く発生しないという意味ではなく、X線発生部36a〜36cで発生される所望の波長のX線に比べて、十分に無視できるエネルギー量あるいは、所望の波長から外れた波長のX線が発生する部位という意味である。X線非発生部35a〜35dから発生するX線について、十分に無視できるエネルギー量としては、例えば、X線発生部36a〜36cから発生するX線の1/10程度が望ましく、より望ましくは1/100程度である。
【0030】
また、第1のX線非発生材37、及び第2のX線非発生材34は、電子ビームの照射により発生する特性X線の波長が、陽極本体30に用いられた材質の特性X線よりもはるかに長い材質であればよく、例えば原子番号が30以下の単元素、または原子番号が30以下の元素を少なくとも1つ以上含む2種類以上の元素の化合物等を用いることができる。
【0031】
このような特性を有する第1のX線非発生材37の材質としては、例えば、C、SiC、TiC、TaC、BN、GaN、AlN、TiN、TiCN、TiAlN、AlCrN等を用いることができる。また、溝33の表面にイオン注入を行い、その後に加熱処理をして保護層を形成してもよい。
【0032】
また、第2のX線非発生材34に適用可能な材質としては、例えばアルミニウム等の他、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、SiO、Al、BeO、MgO、TiO、Si、SiC、BN、AlN、SUS、TiC、WC、WCTiCo、GaN等が挙げられる。
【0033】
第1のX線非発生材37及び第2のX線非発生材34として、例えばカーボン及びアルミニウムを用いた場合、カーボン及びアルミニウムは熱伝導性が高いので、第2のX線非発生材34の溶融を防止することができる。また、第1のX線非発生材37を構成するカーボンは、高融点で熱的に安定しているため、陽極本体30と第2のX線非発生材34との間の反応を抑えて合金化を防止することができる。これにより、熱に対する陽極本体30の強度が向上する。
【0034】
回転陽極22は、例えば次のように製造される。図5(A)に示すように、タングステン、あるいはモリブデン等の金属からなる円板状の金属板38を用意する。次いで、同図(B)に示すように、金属板38の一方の面から外周部分を切削してビーム照射面29を形成し、金属板38の断面形状を円錐台形状の陽極本体30に整形する。同図(C)に示すように、陽極本体30のビーム照射面29には、溝の切削加工あるいはエッチング加工によって4本の円環状の溝33が形成される。
【0035】
図5(D)に示すように、陽極本体30に形成された複数の溝33の表面に第1のX線非発生材37を形成する。第1のX線非発生材37は、例えばスパッタ、イオンプレーティング又はCVD等によって形成することができる。なお、第1のX線非発生材37の厚みは、材質等によって異なるものの、例えば10nm以上10μm以下程度であることが好ましい。
【0036】
図5(E)に示すように、陽極本体30の上面には、アルミニウム等からなる第2のX線非発生材34が、メッキあるいは蒸着によって成膜される。陽極本体30上に成膜された第2のX線非発生材34は、4本の溝33内にも充填される。次いで、同図(F)に示すように、陽極本体30の表面の第2のX線非発生材34が研磨装置により除去される。溝33内に充填された第2のX線非発生材34は、研磨では除去されずに残る。これにより、溝33、第1のX線非発生材37及び第2のX線非発生材34からなるX線非発生部35a〜35dと、X線非発生部35a〜35dの間に設けられたX線発生部36a〜36cとを備えた回転陽極22が完成する。
【0037】
陰極23から放射された電子ビームは、回転軸31を中心に回転している陽極本体30のビーム照射面29に照射される。すると、ビーム照射面29のX線発生部36a〜36c及びX線非発生部35a〜35dから、それぞれの材質に依存したX線スペクトルでX線が発生する。
【0038】
X線スペクトルには、特定のエネルギーを持つ特性X線と、それよりも弱いが様々なエネルギー成分を含む連続X線の成分がある。図6に示すように、モリブデンから発生される特性X線を含む波長領域は、例えば、X線画像撮像装置で使われる。一方、アルミニウムから発生される特性X線は、低エネルギーであるため上記の波長域には含まれず、かつそのほとんどは空気で吸収されるので観測されない。また、連続X線の全強度も物質の原子番号の自乗にほぼ比例するので、アルミニウムからの連続X線はかなり弱い。したがって、材料の差異により、発生するX線強度が大幅に変わる。また、X線非発生部35a〜35dに照射される電子ビームは、全て第1のX線非発生材37及び第2のX線非発生材34に吸収されて陽極本体30に到達しないので、X線非発生部35a〜35dの下面に面する位置では、陽極本体30からX線は発生しない。
【0039】
以上により、本実施形態では、X線画像の撮影に適した波長領域のX線がX線発生部36a〜36cにより発生され、放射口26aからX線管装置20の外に放射される。また、これらのX線は、図7に示すように、微小な焦点サイズを有し、所定ピッチで配置されるので、位相コントラスト画像の撮影に適した微小サイズの仮想的な複数の点光源11a〜11cを形成することができる。
【0040】
図1に示すように、撮影部12には、半導体回路からなるフラットパネル検出器(FPD)40、被検体HによるX線の位相変化(角度変化)を検出し位相イメージングを行うための第1の吸収型格子41及び第2の吸収型格子42が設けられている。FPD40は、X線源11から照射されるX線の光軸Aに沿う方向(以下、z方向という)に検出面が直交するように配置されている。
【0041】
第1の吸収型格子41は、z方向に直交する面内の一方向(以下、y方向という)に延伸した複数のX線遮蔽部41aが、z方向及びy方向に直交する方向(以下、x方向という)に所定のピッチpで配列されたものである。同様に、第2の吸収型格子42は、y方向に延伸した複数のX線遮蔽部42aが、x方向に所定のピッチpで配列されたものである。X線遮蔽部41a,42aの材料としては、X線吸収性に優れる金属が好ましく、例えば、金、白金、銀、タングステン、モリブデン、タンタル、ニオブ、パラジウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、レニウム及びそれらの合金等が好ましい。
【0042】
また、撮影部12には、第2の吸収型格子42を格子方向に直交する方向(x方向)に並進移動させることにより、第1の吸収型格子41に対する第2の吸収型格子42との相対位置を変化させる走査機構43が設けられている。走査機構43は、例えば、圧電素子等のアクチュエータにより構成される。走査機構43は、後述する縞走査の際に、撮影制御部16の制御に基づいて駆動されるものである。詳しくは後述するが、メモリ13には、縞走査の各走査ステップで撮影部12により得られる画像データがそれぞれ記憶される。なお、第2の吸収型格子42と走査機構43とが特許請求の範囲に記載の強度変調手段を構成している。
【0043】
画像処理部14は、縞走査の各走査ステップで撮影部12により撮影され、メモリ13に記憶された複数の画像データに基づいて位相微分像を生成し、位相微分像をx方向に沿って積分することにより、位相コントラスト画像を生成する。位相コントラスト画像は、画像記録部15に記録された後、コンソール17に出力されてモニタ(図示せず)に表示される。
【0044】
コンソール17は、モニタの他、操作者が撮影指示やその指示内容を入力する入力装置(図示せず)を備えている。この入力装置としては、例えば、スイッチ、タッチパネル、マウス、キーボード等が用いられ、入力装置の操作により、X線管の管電圧やX線照射時間等のX線撮影条件、撮影タイミング等が入力される。モニタは、液晶ディスプレイやCRTディスプレイからなり、X線撮影条件等の文字や、上記位相コントラスト画像を表示する。
【0045】
図7に示すように、第1の吸収型格子41のX線遮蔽部41aは、x方向に所定のピッチpで、互いに所定の間隔dを空けて配列されている。同様に、第2の吸収型格子42のX線遮蔽部42aは、x方向に所定のピッチpで、互いに所定の間隔dを空けて配列されている。また、X線管装置20により仮想的に形成される点光源11a〜11cは、x方向に所定のピッチpで配列されている。X線遮蔽部41a,42aは、それぞれ不図示のX線透過性基板(例えば、ガラス基板)上に配置されたものである。第1及び第2の吸収型格子41,42は、入射X線に位相差を与えるものでなく、強度差を与えるものであるため、振幅型格子とも称される。なお、スリット部(上記間隔d,dの領域)は空隙でなくてもよく、高分子や軽金属等のX線低吸収材が充填されていてもよい。
【0046】
第1及び第2の吸収型格子41,42は、タルボ干渉効果の有無に係らず、スリット部を通過したX線を線形的に投影するように構成されている。具体的には、間隔d,dを、X線源11から照射されるX線のピーク波長より十分大きな値とすることで、照射X線に含まれる大部分のX線をスリット部で回折させずに、直進性を保ったまま通過するように構成する。例えば、前述のX線管の回転陽極としてタングステンを用い、管電圧を50kVとした場合には、X線のピーク波長は、約0.4Åである。この場合には、間隔d,dを、1〜10μm程度とすれば、スリット部で大部分のX線が回折されずに線形的に投影される。この場合、格子ピッチp,pは、2〜20μm程度の大きさである。
【0047】
X線源11から照射されるX線は、平行ビームではなく、X線焦点を発光点としたコーンビームであるため、第1の吸収型格子41を通過して射影される第1の周期パターン像である投影像(以下、この投影像をG1像または縞画像と称する)は、仮想的な点光源11a〜11cからの距離に比例して拡大される。第2の吸収型格子42の格子ピッチp及び間隔dは、そのスリット部が、第2の吸収型格子42の位置におけるG1像の明部の周期パターンとほぼ一致するように決定されている。すなわち、点光源11a〜11cから第1の吸収型格子41までの距離をL、第1の吸収型格子41から第2の吸収型格子42までの距離をLとした場合に、格子ピッチp及び間隔dは、次式(1)及び(2)の関係を満たすように決定される。
【0048】
【数1】

【0049】
【数2】

【0050】
第1の吸収型格子41から第2の吸収型格子42までの距離Lは、タルボ干渉計の場合には、第1の格子の格子ピッチとX線波長とで決まるタルボ干渉距離に制約されるが、本実施形態の撮影部12では、第1の吸収型格子41が入射X線を回折させずに投影させる構成であって、第1の吸収型格子41のG1像が、第1の吸収型格子41の後方のすべての位置で相似的に得られるため、該距離Lを、タルボ干渉距離と無関係に設定することができる。
【0051】
また、点光源11a〜11cのピッチpは、次式(3)を満たすように設定される。
【0052】
【数3】

【0053】
上記式(3)は、X線管装置20により形成された各点光源11a〜11cから射出されたX線の第1の吸収型格子41による投影像(G1像)が、第2の吸収型格子42の位置で一致する(重なり合う)ための幾何学的な条件である。このように、本実施形態では、X線管装置20により形成された複数の点光源11a〜11cに基づくG1像が重ね合わせられることにより、X線強度を低下させずに、位相コントラスト画像の画質を向上させることができる。
【0054】
次に、上記実施形態の作用について説明する。図1に示すように、X線画像撮影システム10において、X線源11と撮影部12との間に被検体Hが配置される。この状態で、コンソール17からシステム制御部18に撮影指示が入力されると、撮影制御部16は、X線画像撮影システム10の各部を制御し、第2の吸収型格子42を第1の吸収型格子41に対してx方向に移動させながら、各走査位置で、X線源11による曝射及びFPD40による検出動作が行わせる。
【0055】
図2〜図4に示すように、X線管装置20は、各走査位置における曝射期間中に、陰極23から陽極本体30のビーム照射面29に向けて電子ビームを照射させる。陽極本体30のX線非発生部35a〜35d及びX線発生部36a〜36cは、電子ビームの照射により、それぞれの材質に依存したX線スペクトルでX線を発生する。しかし、X線非発生部35a〜35dから発生されるX線はX線画像撮影に使用できるような強度を有しないため、X線管装置20からは、X線発生部36a〜36cによって発生されたX線が放射される。
【0056】
図7に示すように、X線管装置20から放射されたX線により、微小な焦点サイズを有し、所定ピッチp3で配置された仮想的な複数の点光源11a〜11cが形成される。点光源11a〜11cのX線は、被検体Hを通過することにより位相差が生じ、このX線が第1の吸収型格子41を通過することにより、被検体Hの屈折率と透過光路長とから決定される被検体Hの透過位相情報を反映した縞状のG1像が形成される。各点光源11a〜11cのG1像は、第2の吸収型格子42に投影され、第2の吸収型格子42の位置で一致する(重なり合う)ので、X線強度を低下させずに、位相コントラスト画像の画質を向上させることができる。
【0057】
G1像は、第2の吸収型格子42により強度変調され、第2の周期パターン像であるG2像が形成される。G2像は、例えば、縞走査法により検出される。縞走査法とは、第1の吸収型格子41に対し、第2の吸収型格子42を走査機構43によって、X線焦点を中心として格子面に沿った方向に格子ピッチを等分割(例えば、5分割)した走査ピッチでx方向に並進移動させながら、X線源11から被検体HにX線を照射して複数回の撮影を行なってFPD40により検出し、画像処理部14により、FPD40の各画素の画素データの位相のズレ量(被検体Hがある場合とない場合とでの位相のズレ量)から位相微分像(被検体で屈折したX線の角度分布に対応)を取得する方法である。この位相微分像を、画像処理部14により、上記の縞走査方向に沿って積分することにより、被検体Hの位相コントラスト画像を得ることができる。位相コントラスト画像は、画像処理部14により画像記録部15に記録され、コンソール17のモニタ等に表示される。
【0058】
以上で説明したように、本実施形態のX線管装置20は、マルチスリットを用いずに点光源11a〜11cを形成しているため、製造の難しいマルチスリットを省略することができる。これにより、装置の小型化や低コスト化に資することができる。更に、本実施形態では、第1のX線非発生材37及び第2のX線非発生材34に、熱伝導性のよいカーボン及びアルミニウムを用いているので、電子ビームの照射により発生した陽極本体30の熱を、X線非発生部35a〜35dから放熱することができる。また、溝33の表面に設けられた第1のX線非発生材37により、陽極本体30と第2のX線非発生材34の反応が抑止され、合金化が防止されている。したがって、陽極本体30が熱によって劣化するのを防止することができる。
【0059】
上記実施形態では、陽極本体30の溝33を回転軸31と平行に配置したが、回転軸31と非平行に配置してもよい。また、第2のX線非発生材34を溝33の上端まで埋め込んだが、溝33の深さ方向の途中まで第2のX線非発生材34を埋め込むようにしてもよい。また、上記実施形態では、第1のX線非発生材37にカーボンを用い、第2のX線非発生材34にアルミニウムを用いたが、それぞれ上述した他の単元素または2種類以上の元素の化合物によって置き換えてもよく、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0060】
以下、上記第1実施形態を変形した別の実施形態について説明する。なお、他の実施形態と同じ構成については、同符号を用いて詳しい説明は省略する。
【0061】
[第2実施形態]
図8に示すように、陰極23を圧電素子等のアクチュエータからなる移動機構55によって水平方向に移動自在にし、X線非発生部35a〜35d及びX線発生部36a〜36cからなるマルチビーム発生部56と、陽極本体30のビーム照射面29のみ、すなわちX線発生部しか有しない単ビーム発生部57との間で、電子ビームを選択的に照射できるようにしてもよい。これによれば、位相コントラスト画像の撮影時には、マルチビーム発生部56に電子ビームを照射することによって複数の仮想的な点光源11a〜11cを得ることができる。また、吸収画像を撮影する際には、単ビーム発生部57に電子ビームを照射することによって、線量の大きなX線を得ることができる。
【0062】
[第3実施形態]
図9に示すように、X線非発生部35a〜35d及びX線発生部36a〜36cからなる第1マルチビーム発生部60と、第1マルチビーム発生部60とはX線非発生部61a〜61d及びX線発生部62a〜62cの配置間隔が異なる第2マルチビーム発生部63とを陽極本体30に設け、移動機構55によって移動された陰極23により、第1マルチビーム発生部60と第2マルチビーム発生部63とに選択的に電子ビームを照射してもよい。X線非発生部61a〜61dは、X線非発生部35a〜35dと同様に溝及びX線非発生材からなり、X線発生部62a〜62cは陽極本体30のビーム照射面29からなる。
【0063】
これによれば、第1マルチビーム発生部60により形成される仮想的な点光源11a〜11cのピッチp3を、例えばピッチp4のように切り換えることができるようになる。例えば、X線源11と第1の吸収型格子41との距離L1、あるいは第1の吸収型格子41と第2の吸収型格子42との距離L2、第2の吸収型格子42の格子ピッチp2等に合わせて、点光源11a〜11cのピッチp3を切り換えるようにすれば、より高画質な位相コントラスト画像を撮影することができる。
【0064】
なお、第1及び第2マルチビーム発生部60、63の両方に同時に電子ビームを照射できるような陰極を配置するとともに、第1及び第2マルチビーム発生部60、63のいずれか一方からのX線の照射と、第1及び第2マルチビーム発生部60、63の両方からのX線の照射とを切り換えられるようにすることにより、照射するX線のエネルギーを切り換えられるようにしてもよい。これによれば、エネルギー帯域の異なるX線を用いたエネルギーサブトラクション撮影を行なうことができるようになる。
【0065】
また、上記第2、第3実施形態では、陰極23を移動機構55によって移動させることにより電子ビームの照射位置を切り換えているが、陰極23と陽極本体30との間で電子ビームの遮蔽状態を切り換えてもよいし、電子ビームに高電圧を加えて偏向させ、照射位置を切り換えてもよい。
【0066】
[第4実施形態]
また、上記各実施形態では、X線非発生部を構成する溝33の表面に第1のX線非発生材37を設けたが、第2のX線非発生材34の材質に、原子番号が30以下の元素を少なくとも1つ以上含む2種類以上の元素からなり、融点がカーボンと同程度に高い化合物を用いる場合には、図10に示すように、第1のX線非発生材37を省略したX線非発生部35a〜35dを用いてもよい。
【0067】
上記各実施形態では、一方向に延伸されかつ延伸方向に直交する方向に沿って配置されたX線遮蔽部を有する縞状の一次元格子を使用したX線画像撮影装置を例に説明したが、本発明は、X線遮蔽部を2方向に配列された二次元格子を用いたX線画像撮影装置にも適用が可能である。さらに、上記実施形態では、被検体HをX線源と第1の吸収型格子との間に配置しているが、被検体Hを第1の吸収型格子と第2の吸収型格子との間に配置した場合にも同様に位相コントラスト画像の生成が可能である。また、上記各実施形態は、矛盾しない範囲で相互に組み合わせることが可能である。
【0068】
上記各実施形態は、第1及び第2の吸収型格子を、スリットを通過したX線を線形的に投影するように構成しているが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、第1及び第2の吸収型格子でX線を回折することにより、いわゆるタルボ干渉効果が生じる構成(国際公開WO2004/058070号公報等に記載の構成)としてもよい。この場合には、第1及び第2の吸収型格子間の距離をタルボ干渉距離に設定する必要がある。また、第1の吸収型格子の種類を、吸収型格子ではなく、比較的アスペクト比が低い位相型格子にすることも可能である。
【0069】
また、上記各実施形態では、第2の吸収型格子により強度変調された縞画像を縞走査法によって検出して位相コントラスト画像を生成しているが、1回の撮影によって位相コントラスト画像を生成するX線画像撮影システムも知られている。例えば、国際公開WO2010/050483号公報に記載されているX線画像撮影システムでは、第1及び第2の格子により生成されたモアレをX線画像検出器により検出し、この検出されたモアレの強度分布をフーリエ変換することによって空間周波数スペクトルを取得し、この空間周波数スペクトルからキャリア周波数に対応したスペクトルを分離して逆フーリエ変換を行なうことにより微分位相像を得ている。このようなX線画像撮影システムにも、本発明のX線管を用いることができる。
【0070】
また、1回の撮影により位相コントラスト画像を生成するX線画像撮影システムには、強度変調手段として、第2の格子の代わりに、X線を電荷に変換する変換層と、変換層により生成された電荷を収集する電荷収集電極とを備えた直接変換型のX線画像検出器を用いたものがある。このX線画像撮影システムは、例えば、各画素の電荷収集電極が、第1の格子で形成された縞画像の周期パターンとほぼ一致する周期で配列された線状電極を互いに電気的に接続してなる線状電極群が、互いに位相が異なるように配置されたものであり、各線状電極群を個別に制御して電荷を収集することにより、1度の撮影により複数の縞画像を取得し、この複数の縞画像に基づいて位相コントラスト画像を生成している(特開2009−133823号公報等に記載の構成)。このようなX線画像撮影システムにも、本発明のX線管を用いることができる。
【0071】
また、1回の撮影により位相コントラスト画像を生成する別のX線画像撮影システムとして、第1及び第2の格子を、格子の延伸方向が相対的に所定の角度だけ傾くように配置し、この傾きにより延伸方向に生じるモアレ周期の区間を分割して撮影することにより、第1及び第2の格子の相対位置が異なる複数の縞画像を取得し、これらの複数の縞画像から位相コントラスト画像を生成することも可能である。このようなX線画像撮影システムにも、本発明のX線管を用いることができる。
【0072】
また、光読取型のX線画像検出器を用いることにより、第2の格子を省略したX線画像撮影システムが考えられる。このシステムでは、第1の格子によって形成された周期パターン像を透過する第1の電極層と、第1の電極層を透過した周期パターン像の照射を受けて電荷を発生する光導電層と、光導電層において発生した電荷を蓄積する電荷蓄積層と、読取光を透過する線状電極が多数配列された第2の電極層とがこの順に積層され、読取光によって走査されることによって各線状電極に対応する画素毎の画像信号が読み出される光読取型のX線画像検出器を強度変調手段として用いており、電荷蓄積層を線状電極の配列ピッチよりも細かいピッチで格子状に形成することにより、電荷蓄積層を第2の格子として機能させることができる。このようなX線画像撮影システムにも、本発明のX線管を用いることができる。
【0073】
以上説明した実施形態は、医療診断用の放射線画像撮影システムのほか、工業用や、非破壊検査等のその他の放射線撮影システムに適用することが可能である。更に、本発明は、放射線として、X線以外にガンマ線等を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0074】
10 X線画像撮影システム
11 X線源
11a〜11c 点光源
12 撮影部
20 X線菅装置
22 回転陽極
23 陰極
29 傾斜面
30 陽極板
33 溝
34 第2のX線非発生材
35a〜35d X線非発生部
36a〜36c X線発生部
37 第1のX線非発生材
40 フラットパネル検出器
41 第1の吸収型格子
42 第2の吸収型格子
55 移動機構
56 マルチビーム発生部
57 単ビーム発生部
60 第1マルチビーム発生部
63 第2マルチビーム発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを放射する陰極と、
前記陰極から電子ビームが照射されるビーム照射面を有する陽極本体と、前記ビーム照射面に設けられ、電子ビームの照射によって放射線画像の撮影が可能な放射線を発生する複数の放射線発生部、及び前記放射線発生部の間にそれぞれ配置され電子ビームの照射によって放射線画像の撮影に使用可能な放射線を発生しない複数の放射線非発生部とを有する陽極と、を備えており、
前記放射線非発生部は、前記ビーム照射面に設けられた溝と、2種類以上の元素で構成され前記溝内に埋め込まれた放射線非発生材と、を含むことを特徴とする放射線管装置。
【請求項2】
前記放射線非発生材を構成する2種類以上の元素には、原子番号が30以下の元素が少なくとも1つ以上含まれていることを特徴とする請求項1記載の放射線菅装置。
【請求項3】
前記放射線非発生材は、前記溝の表面に設けられた第1の放射線非発生材と、前記溝内に埋め込まれた第2の放射線非発生材とを含み、前記第1及び第2の放射線非発生材は、それぞれ単元素または2種類以上の元素の化合物からなることを特徴とする請求項1または2記載の放射線菅装置。
【請求項4】
前記放射線非発生材は、2種類以上の元素の化合物であることを特徴とする請求項1または2記載の放射線菅装置。
【請求項5】
前記陽極は、複数の前記放射線発生部及び前記放射線非発生部を有し複数本の放射線ビームを放射するマルチビーム発生部と、1つの放射線発生部を有し1本の放射線ビームを放射する単ビーム発生部とを有し、
前記電子ビームを、前記マルチビーム発生部と前記単ビーム発生部とに選択的に照射させる電子ビーム切替手段を備えたことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の放射線管装置。
【請求項6】
前記陽極は、複数の前記放射線発生部及び前記放射線非発生部の配置間隔を異ならせることにより、放射される放射線ビームの配置間隔をそれぞれ異ならせた複数のマルチビーム発生部を有し、
前記電子ビームを複数の前記マルチビーム発生部に選択的に照射させる電子ビーム切換え手段を備えたことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の放射線管装置。
【請求項7】
前記陽極本体は、円板状の回転陽極であり、前記放射線発生部及び前記放射線非発生部は、前記陽極板に設けられた前記ビーム照射面に円環状に配置されていることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の放射線管装置。
【請求項8】
放射線を透過する部分と吸収する部分とからなる格子構造が周期的に配置され、放射線菅装置から照射された放射線を通過させて第1の周期パターン像を形成する第1の格子と、前記第1の周期パターン像に対して位相が異なる少なくとも1つの相対位置で前記第1の周期パターン像に強度変調を与える強度変調手段と、前記強度変調手段により前記相対位置で生成された第2の周期パターン像を検出する放射線画像検出器と、前記放射線画像検出器により検出された少なくとも1つの前記第2の周期パターン像に基づいて、位相情報を画像化する演算処理手段とを備え、
前記放射線菅装置に、請求項1〜7いずれか記載の放射線管装置を用いたことを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項9】
前記強度変調手段は、前記第1の周期パターンを透過する部分と吸収する部分とからなる格子構造が周期的に配置された第2の格子と、前記第1及び第2の格子のいずれか一方を、前記第1及び第2の格子の格子構造の周期方向に所定のピッチで移動させる走査手段とからなり、前記走査手段により移動される各位置が前記相対位置に対応することを特徴とする請求項8記載の放射線画像撮影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−129184(P2012−129184A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99236(P2011−99236)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】