説明

放射線線量測定システム

【課題】長期間に渡って線量測定が可能な無線通信型の放射線線量測定システムを提供する。
【解決手段】放射線線量測定システムは、パケット無線通信が可能な複数のワイヤレス線量計と中継無線通信装置で構成され、ワイヤレス線量計は、線量データ及び識別データを含むパケットデータを作成するパケットデータ作成部10f4と、乱数データを発生する乱数発生器10gと、発生乱数に応じてパケットデータの送信タイミングを制御する送信タイミング制御部10f2と、制御された送信タイミングで送信する送信制御部10f5とを備え、中継無線通信装置は、複数のワイヤレス線量計から送信された信号を受信する受信手段と、受信信号に含まれるパケットデータから各ワイヤレス線量計のデジタル線量データ及び識別データを抽出するデータ抽出手段と、抽出した識別データによって特定されるデジタル線量データを端末へ送信する送信手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信型の放射線線量測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信を利用した放射線計測システムとして、特許文献1には、各作業者が携帯する複数の携帯機と、それぞれ交信エリアが個別設定され、各携帯機との間で無線通信を行う分散配置された複数の基地局と、各基地局と接続されたホスト装置とを含み、各携帯機からの計測データが基地局を介してホスト装置へ送られるように構成した計測システムが開示されている。
【0003】
このような計測システムによれば、携帯機は例えば作業者のポケットなどに装着され、その携帯機によって個人被ばく線量などが計測される。その計測データは携帯機が有する無線通信機能を利用して基地局へ送信され、さらにホスト装置へ伝送される。ここで、各基地局には個別的に担当エリアが設定され、ホスト装置は、そのようなエリア設定に従って、線量データを受信した基地局を特定することにより、作業者の被ばくエリアを特定し、そのエリアにおける線量を把握することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3273915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された放射線計測システムによれば、基地局によって特定される各作業エリアについての、放射線線量を把握することが可能であるが、把握できるのは作業者が立ち入りした作業エリアのみの線量であり、作業者の立ち入り禁止のエリアや立ち入り禁止ではないが作業者が立ち入りしなかったエリアについては、放射線線量を測定することができない。
【0006】
作業者の立ち入り禁止のエリアや立ち入り禁止ではないが作業者が立ち入りしなかったエリアの放射線線量を測定するためには、各エリアに無線測定端末を固定的に設置しておく必要がある。
【0007】
このように、無線測定端末を固定的に設置しておく場合に問題となるのは、各測定端末の電池寿命である。最近は、長寿命の電池も開発されているが、電力消費量が非常に大きい従来の無線測定端末を用いた場合に頻繁な電池交換が必要であり、長期間に渡って電池交換無しに動作させることは極めて困難であった。
【0008】
従って本発明の目的は、放射線線量の高いエリアにおいても、長期間に渡って無人で線量測定が可能な無線通信型の放射線線量測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の放射線線量測定システムは、複数のワイヤレス線量計と、複数のワイヤレス線量計とパケット無線通信が可能であると共にネットワークに接続可能な中継無線通信装置とを備えている。各ワイヤレス線量計は、放射線の線量に応じて検出信号を出力する放射線センサと、放射線センサから出力される検出信号から放射線の線量を表すデジタル線量データを求める信号処理手段と、求めたデジタル線量データ及びワイヤレス線量計の識別データを含むパケットデータを作成するパケットデータ作成手段と、乱数データを発生する乱数発生手段と、発生した乱数に応じてパケットデータの送信タイミングを制御するタイミング制御手段と、パケットデータを含む高周波信号をこの制御された送信タイミングで送信する送信手段と備えている。中継無線通信装置は、複数のワイヤレス線量計から送信された複数の高周波信号を受信する受信手段と、得られた複数の受信信号に含まれるパケットデータから各ワイヤレス線量計のデジタル線量データ及び識別データを抽出するデータ抽出手段と、抽出した識別データによって特定される各ワイヤレス線量計毎のデジタル線量データを少なくとも1つの端末へ送信する送信手段とを備えている。
【0010】
複数のワイヤレス線量計でそれぞれ測定した放射線線量測定値をこれら複数のワイヤレス線量計との間でパケット無線通信が可能である中継無線通信装置に伝送した後、この中継無線通信装置から端末に伝送するという2段階の伝送システムを用いている。従って、各ワイヤレス線量計は、長距離の無線送信を行う必要がないので、短距離の消費電力の小さい送信機能を有すれば良いこととなり、ワイヤレス線量計としての消費電力を低減化可能となる。しかも、各ワイヤレス線量計は乱数発生手段が発生した乱数に応じてパケットデータの送信タイミングを制御し、パケットデータを含む高周波信号をこの制御された送信タイミングで送信する。このように、他のワイヤレス線量計から送信が行われているか等を検出判断することなく、発生した乱数に応じてタイミング制御し衝突を回避しているため、回路構成を簡易化でき、その分、電力消費量を低減できると共に製造コストも低減できる。電力消費量が小さいため、頻繁な電池交換は不要となり、長期間に渡って電池交換無しに無人で動作させることができる。
【0011】
各ワイヤレス線量計はパケットデータに付加する誤り検出符号を生成する誤り検出符号生成手段をさらに備えており、中継無線通信装置は複数の受信信号に含まれるパケットデータについて誤り検出を行う誤り検出手段をさらに備えていることが好ましい。
【0012】
送信手段は、各ワイヤレス線量計毎のデジタル線量データをネットワークのアクセスポイントへ送信するネットワーク送信手段を備えていることも好ましい。
【0013】
この場合、中継無線通信装置のネットワーク送信手段は、各ワイヤレス線量計毎のデジタル線量データを無線によってネットワークのアクセスポイントへ送信する無線LAN手段であることも好ましい。さらに、無線LAN手段が低転送レートWiFi送信手段であることがより好ましい。
【0014】
また、中継無線通信装置のネットワーク送信手段は、各ワイヤレス線量計毎のデジタル線量データを有線によってネットワークのアクセスポイントへ送信する有線LAN手段であることも好ましい。
【0015】
各ワイヤレス線量計は、ワイヤレス線量計内の全ての要素に電源供給を行うリチウム電池をさらに備えていることも好ましい。
【0016】
各ワイヤレス線量計の送信手段は、950MHz又は2.4GHzの高周波信号を上述の送信タイミングで送信するように構成されていることも好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、2段階の伝送システムを用いているため、各ワイヤレス線量計の消費電力を低減化することができる。また、回路構成を簡易化でき、その分、電力消費量を低減できると共に製造コストも低減できる。電力消費量が小さいため、頻繁な電池交換は不要となり、長期間に渡って電池交換無しに無人で動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態として、放射線線量測定システムの全体構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1の放射線線量測定システムにおける各ワイヤレス線量計の構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】図2のワイヤレス線量計においてMCUの一部動作を概略的に示すフローチャートである。
【図4】図2のワイヤレス線量計においてMCUの一部動作を概略的に示すフローチャートである。
【図5】図2のワイヤレス線量計においてMCUの一部動作を概略的に示すフローチャートである。
【図6】図1の放射線線量測定システムのワイヤレス線量計において、MCUによって実現される送信タイミング制御及びパケット生成の機能的構成を概略的に示すブロック図である。
【図7】図1の放射線線量測定システムにおける中継無線通信装置を含むその他の構成を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の一実施形態として、放射線線量測定システムの全体構成を概略的に示している。
【0020】
同図において、10〜10は測定すべきエリアに分布配置された複数のワイヤレス線量計、11はこれら複数のワイヤレス線量計10〜10とパケット無線通信可能に配置された単一の中継無線通信装置、13は中継無線通信装置11が無線又は有線で接続されている、ネットワーク14のアクセスポイント、14は例えばインターネットワークのごときネットワーク、15〜15はインターネット14に接続可能に構成された例えば携帯端末や固定端末等の端末をそれぞれ示している。
【0021】
図2は本実施形態の放射線線量測定システムにおける各ワイヤレス線量計の構成を概略的に示している。
【0022】
同図において、10aは本実施形態では例えばPINフォトダイオードから主として構成されており、ガンマ線等の放射線及びX線を検出可能なセンサを示している。図示されていないが、このセンサ10aの検出窓には、赤外光、紫外光及び可視光を検出しないように光遮断膜が装着されている。また、センサ10aの出力には、X線等の波長の長い電磁波を遮断するためのハイパスフィルタとセンサ出力を100〜200倍の増幅率で増幅する増幅器とからなるハイパスフィルタ・増幅器10bの入力が接続されている。このハイパスフィルタ・増幅器10bの出力には主にノイズを遮断するためのローパスフィルタ10cの入力が接続されており、このローパスフィルタ10cの出力にはパルス検出コンパレータ10dの一方の入力が接続されている。パルス検出コンパレータ10dの他方の入力には、比較電圧生成器10eの出力が接続されている。
【0023】
このパルス検出コンパレータ10dは、ローパスフィルタ10cの出力電圧を比較電圧生成器10eからの比較基準電圧と比較することにより、センサ10aからの放射線検出パルスに対応する矩形波パルスを発生する。パルス検出コンパレータ10dの出力は、マイクロコントロールユニット(MCU)10fの割り込み入力に接続されている。
【0024】
このMCU10fの入力には、送信タイミング制御用の擬似乱数列を発生する乱数発生器10gの出力が接続されており、さらに、誤り検出符号の一例であるCRC(巡回冗長検査)符号を生成するための生成多項式を供給するCRC生成器10hの出力が接続されている。MCU10fは、演算器、RAM及びROM等を含むメモリ、入出力ポート、入出力インターフェース並びにタイマ等を内蔵したマイクロコンピュータから主として構成されている。
【0025】
MCU10fの出力は、このMCU10fからのパケットデータを単一周波数帯(950MHz又は2.4GHz)の高周波信号に変調し、MCU10fによって制御される送信タイミングで送信するトランシーバ10iの入力に接続されている。トランシーバ10iの入力には、さらに、混信防止用の40ビットの識別符号を生成する識別符号生成器10jの出力が接続されている。トランシーバ10iの出力はフィルタマッチング回路10kを介してチップアンテナ10lに接続されている。
【0026】
ワイヤレス線量計は、さらに、これらセンサ10a、ハイパスフィルタ・増幅器10b、パルス検出コンパレータ10d、比較電圧生成器10e、MCU10f、乱数発生器10g、CRC生成器10h、トランシーバ10i、及び識別符号生成器10jに3Vの電源供給を行うリチウム電池による電源10mが設けられている。リチウム電池が電源であるため、長寿命化を図ることができる。従って、この点からも、頻繁な電池交換は不要となり、長期間に渡って電池交換無しに無人で動作させることができる。
【0027】
図3〜図5は、本実施形態の各ワイヤレス線量計におけるMCU10fの一部動作の流れを概略的に示しており、以下、これらの図を用いてこのMCU10fの動作を説明する。
【0028】
パルス検出コンパレータ10dから、放射線検出パルスに対応する矩形波パルスが印加されると、MCU10fは図3に示すパルス割り込み処理を実行する。
【0029】
即ち、あらかじめ設定されたソフトカウンタを1つインクリメントし(ステップS1)、この割り込み処理を終了する。この割り込み処理によって、放射線検出パルス数がカウントされる。なお、MCU10fによるソフトカウンタに代えてハードウェアによるカウンタを設けてカウントしても良い。ハードウェアのカウンタによれば、消費電力の低減化を図ることができる。
【0030】
一方、MCU10fは例えば水晶発振器等の外部タイマ10fに基づく所定時間毎に図4に示す第1のタイマ割り込み処理を実行する。
【0031】
まず、ソフトカウンタのカウンタ値を読み出す(ステップS11)。
【0032】
次いで、この読み出したカウンタ値と前回の割り込み処理時のカウンタ値との差から所定時間内の放射線検出パルス数を算出する(ステップS12)。
【0033】
次いで、この算出した所定時間内の放射線検出パルス数にセンサの感度に比例した定数である校正値を乗算することにより、放射線線量、さらに、放射線線量の積算値等を算出し、これら算出した放射線線量データ、その積算値データ、検出した日時データ等をメモリ10fに記憶することにより(ステップS13)、この第1のタイマ割り込み処理を終了する。この第1のタイマ割り込み処理によって、放射線線量データ、その積算値データ、検出した日時データ等が算出される。
【0034】
MCU10fは外部タイマ10fに基づいて1タイムスロットに相当する時間が経過する毎に、図5に示す第2のタイマ割り込み処理を実行する。
【0035】
まず、あらかじめ「0」にリセットされているカウンタの値をkとすると、乱数発生器10gから得られる擬似乱数列RSのk番目のビットの内容RS(k)が「1」であるか否かを判別する(ステップS21)。
【0036】
RS(k)=1の場合(YESの場合)、この割り込み処理に対応するタイムスロットにおいてパケットデータの送信を許可する(ステップS22)。RS(k)=1ではない場合(NOの場合)、この割り込み処理に対応するタイムスロットにおいてパケットデータの送信が許可せず、カウンタ値kを1つインクリメントする(ステップS23)。
【0037】
次いで、カウンタ値kが、疑似乱数列RSの最終ビットに達したか否かを判別し(ステップS24)、最終ビットに達していない場合(NOの場合)、カウンタ値kをリセットすることなくこの第2のタイマ割り込み処理を終了し、最終ビットに達した場合(YESの場合)、カウンタ値kを「0」にリセットし(ステップS25)、この第2のタイマ割り込み処理を終了する。この第2のタイマ割り込み処理によって、疑似乱数列が生成される。
【0038】
図6は本実施形態の放射線線量測定システムのワイヤレス線量計において、MCU10fの第2のタイマ割り込み処理(図5)等によって実現される送信タイミング制御及びパケット生成の機能的構成を概略的に示している。
【0039】
同図において、メモリ10fは、MCU10f内のメモリであり、制御プログラムやこのワイヤレス線量計のID(デバイス番号)を記憶している。
【0040】
乱数発生器10gは、予め定めたアルゴリズムに従って「1」、「0」の擬似乱数列、例えばM系列の擬似乱数列、を生成する。この擬似乱数列は、ワイヤレス線量計毎に異なる乱数列となるように、各ワイヤレス線量計のIDに従って設定された初期値に基づいて生成される。
【0041】
送信タイミング制御部10fは、乱数発生器10gの生成する疑似乱数に基づいて、送信制御部10fからトランシーバ10iへ送られる信号のタイミングを決定する。例えば、疑似乱数列の対応するビットが「1」であるタイムスロットの間は送信制御部10fに対しパケット生成部10fにより生成されるパケットの信号送信を許可し、疑似乱数列の対応するビットが「0」であるタイムスロットの間は送信制御部10fに対しパケットの信号送信を禁止する。換言すれば、それぞれのタイムスロットが疑似乱数列の各ビットに対応している。
【0042】
パケット生成部10fは、送信制御部10fによって送信される信号に含まれるパケットデータ(パケットフレーム)を生成する。パケットデータには、フレーム開始フラグ、送り先である中継無線通信装置11のID及び送信元であるワイヤレス線量計自体のIDを含むヘッダと、送信されるデータ本体を含むペイロードと、誤り検出符号及びフレーム終了フラグを含むトレーラとがこの順序で含まれている。
【0043】
CRC生成器10hの生成する生成多項式は、パケットの送信ビット列のデータを除算するために使用され、その余りは、誤り検出符号の一例であるCRC符号としてパケットデータに付加される。
【0044】
送信制御部10fは、送信タイミング制御部10fによって決定された送信タイミングに応じて、パケット生成部10fによって生成されたパケットを含む信号の送信制御を行なう。具体的には、トランシーバ10iを介してアンテナ10lから送信される信号の実行及び停止を制御する。なお、トランシーバ10iから出力されるパケットデータの送信時間は、150〜250μ・secと非常に短いため、その意味からもパケットの衝突の可能性は小さい。また、例え衝突したとしても、乱数により次のタイミングが制御されるため、衝突を回避できる可能性が高くなる。因みに、2つの送信機間における10秒間の衝突確率は約1/80000である。
【0045】
なお、各ワイヤレス線量計は、データの転送がない場合はスリープ状態とし、スリープ状態からの立ち上がりが高速化するように、コネクションアルゴリズムの改良が施されているため、この点からも電力消費量が低減化される。
【0046】
図7は本実施形態の放射線線量測定システムにおける中継無線通信装置11及びその他の構成を概略的に示している。
【0047】
同図に示すように、中継無線通信装置11は無線LAN(ローカルエリアネットワーク)の一種であるWiFiによるアクセスポイント13にアンテナ12を介してアクセス可能となっており、このアクセスポイント13はLANを介して例えばインターネットのごときネットワークに接続されている。さらに、このネットワーク14には、例えば携帯端末や固定端末等の端末15〜15がアクセス可能に接続されている。
【0048】
中継無線通信装置11は、複数のワイヤレス線量計10〜10(図1参照)からの空中線信号を受信するアンテナ11aと、このアンテナ11aにフィルタマッチング回路11bを介して入力が接続されているトランシーバ11cと、トランシーバ11cの出力に入力が接続されているMCU11dと、MCU11dの出力に入力が接続されているWiFiモジュール11eと、WiFiモジュール11eの出力に接続されている無線LANのアンテナ11fとを備えている。
【0049】
トランシーバ11cは、複数のワイヤレス線量計からの単一周波数帯(950MHz又は2.4GHz)の高周波信号を復調し、パケットデータを抽出してMCU11dに出力する。なお、950MHz帯によれば、通信距離は100〜1000m程度となる。2.4GHzによれば、通信距離は長くて50m程度であるが、低消費電力となる。
【0050】
MCU11dは、演算器、RAM及びROM等を含むメモリ、入出力ポート、入出力インターフェース並びにタイマ等を内蔵したマイクロコンピュータから主として構成されており、トランシーバ11cから入力されるパケットデータを送信側と同じ生成多項式で除算し割り切れるか否かで誤り検出を行う。そして、送信元のワイヤレス線量計のIDと放射線線量データとを抽出し、抽出したIDによって特定される各ワイヤレス線量計毎の放射線線量データ、その積算値データ、検出した日時データをメモリに記憶すると共に、これらデータを送信すべき端末のアドレスを付して、WiFiモジュール11eからアンテナ11f及び12を介してWiFiアクセスポイント13へ送信する。これにより、そのアドレスに該当する端末は、ネットワーク14を介して、IDによって特定される各ワイヤレス線量計毎の放射線線量データ、その積算値データ、検出した日時データ等を含むデータを受け取ることができる。
【0051】
WiFiモジュール11eは、通信レートを通常より遅く設定し(1Mbps)、かつWiFiアクセスポイント13との距離が近い場合は出力を低下させるなど、通信距離に応じた出力調整可能に構成されているため、低消費電力の低減化を図ることができる。また、データの転送がない場合はスリープ状態とし、スリープ状態からの立ち上がりが高速化するように、コネクションアルゴリズムの改良が施されているため、この点からも電力消費量が低減化される。
【0052】
中継無線通信装置11は多数の(本実施形態では最大1024個の)ワイヤレス線量計10〜10(図1参照)からの単一周波数帯の信号をマルチ受信できるように構成されている。特に本実施形態においては、個々のワイヤレス線量計の送信時間が150〜250μ・secと非常に短時間であるため、他のワイヤレス線量計についてキャリアセンスすることなく、単一の周波数帯で多数の送信を行っても衝突する確率が非常に低くなっている。しかも、乱数で送信タイミングが制御されているため、衝突が続いて生じる可能性がより低くなっている。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によれば、複数のワイヤレス線量計10〜10でそれぞれ測定した放射線線量測定値をこれら複数のワイヤレス線量計10〜10との間でパケット無線通信が可能である中継無線通信装置11に伝送した後、この中継無線通信装置11から端末に伝送するという2段階の伝送システムを用いているため、各ワイヤレス線量計は、長距離の無線送信を行う必要がない。このため、トランシーバ10iは短距離の消費電力の小さい送信機能を有すれば良いこととなり、ワイヤレス線量計の消費電力を大幅に低減化できる。しかも、各ワイヤレス線量計は送信時間が150〜250μ・secと非常に短時間であり、かつ乱数発生器10gが発生した乱数に応じてパケットデータの送信タイミングを制御し、パケットデータを含む高周波信号をこの制御された送信タイミングで送信することにより、データの衝突ができるだけ生じないように構成されている。このように、他のワイヤレス線量計から送信が行われているか等を検出判断することなく衝突を回避するように構成しているため、そのキャリアセンスのための回路が不要となり、その分、回路構成を簡易化でき、電力消費量を低減できると共に製造コストも低減できる。さらに、各ワイヤレス線量計は、データの転送がない場合はスリープ状態とし、スリープ状態からの立ち上がりが高速化するように、コネクションアルゴリズムの改良が施されているため、この点からも電力消費量が低減化される。このように、ワイヤレス線量計全体の電力消費量が小さいため、また、リチウム電池による電源10mを用いているため、頻繁な電池交換は不要となり、長期間に渡って電池交換無しに無人で動作させることができる。これは、特に放射線線量の高いエリアや、頻繁に巡回できない取付け位置やエリアの放射線線量を定常的に測定する場合に非常に効果的である。
【0054】
また、中継無線通信装置11は、WiFiモジュール11eの通信レートを通常より遅く設定し、かつWiFiアクセスポイント13との距離が近い場合は出力を低下させるなど、通信距離に応じた出力調整可能に構成されているため、低消費電力の低減化を図ることができる。また、WiFiモジュール11eが、データの転送がない場合はスリープ状態とし、スリープ状態からの立ち上がりが高速化するように、コネクションアルゴリズムの改良が施されているため、この点からも電力消費量が低減化される。
【0055】
なお、上述した実施形態においては、中継無線通信装置とネットワークとの接続がWiFiによる無線LANで行われているが、有線LANで両者を接続しても良いことはもちろんである。
【0056】
また、WiFiによる無線LANで接続を行う場合、中継無線通信装置をネットワークを介して端末に接続せずに、WiFi機能を有する携帯端末や固定端末に直接的に接続するように構成しても良い。
【0057】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0058】
10〜10 ワイヤレス線量計
10a センサ
10b ハイパスフィルタ・増幅器
10c ローパスフィルタ
10d パルス検出コンパレータ
10e 比較電圧生成器
10f、11d MCU
10f メモリ
10f 送信タイミング制御部
10f 外部タイマ
10f パケット生成部
10f 送信制御部
10g 乱数発生器
10h CRC生成器
10i、11c トランシーバ
10j 識別符号生成器
10k、11b フィルタマッチング回路
10l チップアンテナ
10m 電源
11 中継無線通信装置
11a、11f アンテナ
11e WiFiモジュール
13 アクセスポイント
14 ネットワーク
15〜15 端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワイヤレス線量計と、該複数のワイヤレス線量計とパケット無線通信が可能であると共にネットワークに接続可能な中継無線通信装置とを備えており、
前記各ワイヤレス線量計は、放射線の線量に応じて検出信号を出力する放射線センサと、該放射線センサから出力される前記検出信号から放射線の線量を表すデジタル線量データを求める信号処理手段と、該求めたデジタル線量データ及び当該ワイヤレス線量計の識別データを含むパケットデータを作成するパケットデータ作成手段と、乱数データを発生する乱数発生手段と、該発生した乱数に応じて前記パケットデータの送信タイミングを制御するタイミング制御手段と、前記パケットデータを含む高周波信号を該制御された送信タイミングで送信する送信手段と備えており、
前記中継無線通信装置は、前記複数のワイヤレス線量計から送信された複数の高周波信号を受信する受信手段と、得られた複数の受信信号に含まれるパケットデータから各ワイヤレス線量計のデジタル線量データ及び識別データを抽出するデータ抽出手段と、抽出した識別データによって特定される各ワイヤレス線量計毎のデジタル線量データを少なくとも1つの端末へ送信する送信手段とを備えていることを特徴とする放射線線量測定システム。
【請求項2】
前記各ワイヤレス線量計は前記パケットデータに付加する誤り検出符号を生成する誤り検出符号生成手段をさらに備えており、前記中継無線通信装置は前記複数の受信信号に含まれるパケットデータについて誤り検出を行う誤り検出手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の放射線線量測定システム。
【請求項3】
前記送信手段は、各ワイヤレス線量計毎のデジタル線量データをネットワークのアクセスポイントへ送信するネットワーク送信手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線線量測定システム。
【請求項4】
前記中継無線通信装置の前記ネットワーク送信手段は、各ワイヤレス線量計毎のデジタル線量データを無線によってネットワークのアクセスポイントへ送信する無線LAN手段であることを特徴とする請求項3に記載の放射線線量測定システム。
【請求項5】
前記無線LAN手段が低転送レートWiFi送信手段であることを特徴とする請求項4に記載の放射線線量測定システム。
【請求項6】
前記中継無線通信装置の前記ネットワーク送信手段は、各ワイヤレス線量計毎のデジタル線量データを有線によってネットワークのアクセスポイントへ送信する有線LAN手段であることを特徴とする請求項3に記載の放射線線量測定システム。
【請求項7】
前記各ワイヤレス線量計は、当該ワイヤレス線量計内の全ての要素に電源供給を行うリチウム電池をさらに備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の放射線線量測定システム。
【請求項8】
前記各ワイヤレス線量計の前記送信手段は、950MHz又は2.4GHzの高周波信号を前記送信タイミングで送信するように構成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の放射線線量測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−113678(P2013−113678A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259315(P2011−259315)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(509131339)株式会社アール・アイ・イー (8)
【Fターム(参考)】