説明

放射線被曝防止方法及び放射線被曝防止装置

【課題】中性子治療に際しての中性子及び中性子による大気の放射化による放射線被曝を防止するための簡易な放射線被曝防止方法及び放射線被曝防止装置を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、中性子を遮蔽するために中性子診療台を放射線遮蔽材で遮蔽する。また、大気環境の放射化による放射線被曝を防止するために上記放射線遮蔽材で遮蔽された大気環境(空間)をアルゴンを実質的に含まない人工空気に置換する。その手段として、中性子診療室内の診療台の周辺を放射線遮蔽材で遮蔽した放射線遮蔽室と、人工空気を製造するための人工空気製造装置と、人工空気を放射線遮蔽室に送風するための送風器と、放射線遮蔽室の空気を排気するための排気ラインと、からなる放射線被曝防止装置の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子治療の際に照射中性子が大気環境を放射化することによって起きる放射線被曝を未然に防止するための放射線被曝防止及び放射線被曝防止装置に関するものである。さらに詳しくは、中性子治療用診療台の大気環境を実質的にアルゴンを含まない人工空気に置換することによる放射線被曝防止方法及び放射線被曝防止を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、選択的ながん治療として期待されているホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Newtron Capture Therapy)に用いられる治療用の中性子は、主として熱中性子及び熱外中性子である。
【0003】
医療用小型加速器等の使用によって発生するこれらの中性子は、高速中性子に比べて物質の放射化能は桁違いに低いものの、空気を放射化することがある。中性子による空気の放射化は、主として空気中のアルゴンの放射化であり、核反応40Ar(n,γ)41Arによって、ガンマ線と放射性の41Ar(半減期1.83時間)が生じることが知られている。
【0004】
障防法に基づく41Arの空気中濃度限度は、作業環境と一般環境のそれぞれに対して法定限度が定められており、作業環境では1×10−1(Bq/cm)であり、一般環境では5×10−4(Bq/cm)である。
【0005】
非特許文献1、及び2には、医療用小型加速器の使用に伴って発生する41Arの濃度の測定と上記濃度限度との比較が報告されている。これによると、ターゲット付近では0.62×10−1(Bq/cm)であったとされており、作業環境の法定管理基準は下回っているものの、一般環境の排気の許容基準に比べると120倍程度になっている。
【0006】
従来、中性子発生施設に用いられている遮蔽材としては、水、コンクリート材料、鉄材、等が知られており、これらの材料の中性子遮蔽能力を推定するための遮蔽計算方法が、非特許文献3に報告されている。これによると、1MeVの中性子を遮蔽する能力は、鉄材、コンクリート材料、水の順に大きく、鉄材では殆ど遮蔽能力がないのに対して、厚さ100cmのコンクリート材料では中性子透過率が約1000分の1になり、厚さ100cmの水では中性子透過率が10−8になる。
【0007】
また、近年、中性子遮蔽材としてホウ素が注目されており、中性子遮蔽用のコンクリート材料としてホウ素を含有したコンクリート材料を用いることが特許文献1に提案されている。
【0008】
また、上記のような41Arによる放射線被曝を防止するために、室内の空気の連続強制排気が挙げられており、例えば、1時間に10回空気を入れ替えるとすると、濃度は10分の1に低下させることができると考えられる。
【0009】
また、排気をする前に治療室を密閉した状態に置き、加速器の運転後に41Arを減衰させた後、排気をする方法も考えられる。しかし、この方法は、排気中の放射能濃度を低減させるには有効であるが、強制排気に要する電力の消費が大きいという問題がある。
【0010】
また、高エネルギーの加速器施設では、放射化空気の施設外漏洩を防ぐために、通常は、室内を陰圧にするために、室内空気の排気運転が行われている。しかし、この方法は排気中の放射能濃度を低減させるには有効であるが、室内物品の腐食を引き起こすことがある。
【0011】
以上の問題を解決するためには、中性子治療を行うための治療室の大気環境を放射化し難い大気環境にするのが本質的な解決方法であると考えられるが、これまで上記問題を解決するような方法は知られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】吉村厚、上原周三、大崎進、坂本弘巳、入江聖義、「小型サイクロトロンにより発生する中性子による空気中40Arの放射化」、RADIOISOTOPES,42,325-329,1993.
【非特許文献2】坂本弘巳、吉村厚、上原周三、入江聖義、泉隆、斎藤高志、「医療用加速より発生する中性子の検討」、九州大学医療技術短期大学部紀要、20、7-10、1993.
【非特許文献3】放射線施設のしゃへい計算実務マニュアル、2007、(財)原子力安全技術センター
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−039453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の事情に鑑み、中性子治療の際に照射中性子が大気環境を放射化することによって起きる放射線被曝を未然に防止するための簡易な放射線被曝防止方法及び放射線被曝防止装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記の課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、中性子治療用診療台の大気環境を実質的にアルゴンが含まれない人工空気に置換する方法が、放射化空気による放射線被曝を防止するために非常に有効であることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、
(1)
中性子治療室内の診療台周辺の空間を放射線遮蔽材で遮蔽するとともに、前記放射線遮蔽材で遮蔽された空間の大気環境を実質的にアルゴンが含まれない人工空気に置換することを特徴とする放射線被曝防止方法の構成とした。
(2)
(1)に記載の放射線被曝防止方法に用いる放射線被曝防止装置であって、前記中性子診療室内の診療台の周辺を放射線遮蔽材で遮蔽した放射線遮蔽室と、前記人工空気を製造するための人工空気製造装置と、前記人工空気を前記放射線遮蔽室に送風するための送風器と、前記放射線遮蔽室の空気を排気するための排気ラインと、からなることを特徴とする放射線被曝防止装置の構成とした。
(3)
さらに、前記人工空気製造装置から人工空気を前記送風器に通気するための通気ラインと、前記通気ラインに設けられ人工空気の温度及び湿度を調整するための人工空気調整器と、を備えることを特徴とする(2)に記載の放射線被曝防止装置の構成とした。
(4)
前記人工空気製造装置及び前記人工空気調整器を前記放射線遮蔽室の室外に設け、前記送風器を前記該診療台の長手方向の前記放射線遮蔽室に設け、前記排気ラインの排気口を上記送風器と対向する側の前記放射線遮蔽室に設け、前記中性子の出射部を前記診療台の上部に設けることを特徴とする(3)に記載の放射線被曝防止装置の構成とした。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、中性子治療室に置かれた診療台周辺の大気環境をアルゴンを実質的に含有しない人工空気の環境に置換するだけで放射化大気環境からの放射線被曝を本質的に防止することが可能である。本発明は、診療台周辺の局所的な大気環境だけを人工空気に置換することが可能であるので、従来の治療室全体の大気を強制換気する方法ではないので、非常に少ない電力消費量ですむ。
【0018】
例えば、放射線遮蔽材で囲まれた局所空間の空気をアルゴンの含有量が0.1%以下の人工空気に置換することによって、放射能濃度を0.03(Bq/cm)程度乃至それ以下にすることが可能である。これは自然放射能の濃度レベル乃至それ以下の濃度であるので、本発明を用いることによって、内部被曝を本質的に防止できるという顕著な効果が得られる。
【0019】
一方、治療室全体の大気を強制換気する従来の方法では放射線被曝を本質的に防止することは困難であり、作業環境における41Arの濃度限度である1×10−1(Bq/cm)を達成するには少なくとも本発明の電力消費量の10倍の電力が必要である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本実施形態に係る放射線被曝防止装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、中性子治療用診療台を放射線遮蔽材で遮蔽し、該放射線遮蔽材で遮蔽された診療台周辺の大気環境をアルゴンを実質的に含有しない人工空気の環境に置換することを特徴とする放射線被曝防止方法及び放射線被曝防止装置である。
【0022】
本発明において診療台周辺の大気環境をアルゴンを実質的に含有しない人工空気に置換する理由は、中性子による空気の放射化で最も大きな要因となっているのが、空気中に含まれるアルゴンの放射化であるからである。
【0023】
アルゴンは、空気中に約0.9%含有されている希ガスであるが、人体の呼吸に必要な成分ではない。したがって、アルゴンを実質的に含まない大気環境を人工的に調整することによって、中性子による放射化による放射線被曝を殆ど起こらないようにすることが可能である。
【0024】
そのために、本発明では、アルゴンを実質的に含有しない人工空気を用いる。アルゴンを実質的に含有しない人工空気は、例えば、純窒素ガスと純酸素ガスを大気と同じ成分比率で混合することによって調整することが可能である。
【0025】
中性子治療用の診療台を放射線遮蔽材で遮蔽し、該遮蔽された大気環境(空間)を上記アルゴンを実質的に含有しない人工空気の環境に置換する理由は、必ずしも治療室全体の大気の置換ではなくて、治療室に置かれた診療台周辺の局所的な大気環境だけを上記アルゴンを実質的に含有しない人工空気で置換することによって、より効果的に放射線被曝を防止することが可能であるからである。
【0026】
なぜなら、治療室に置かれた診療台の周囲を局所的に放射線遮蔽材で遮蔽し、この遮蔽された空間に上記アルゴンを実質的に含有しない人工空気を供給することによって、診療台が置かれている環境の放射線被曝を防止することが可能であるだけでなく、診療台の外部環境からの放射線被曝も防止することが可能であるからである。
【0027】
上記放射線遮蔽材としては、ホウ素を含有した材料が好ましい。ホウ素を含有した材料は、中性子の遮蔽効果が高いからである。ホウ素を含有した材料としては、例えばホウ素を含有したポリエチレン材料やホウ素を含有したコンクリート材料、等を挙げることができるが、これらの材料に限定するものではない。
【0028】
以下に中性子による空気の放射化に関する計算結果等を参照しつつ本発明の一側面を実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)として詳細に説明する。
【0029】
空気の放射化による空気中放射能濃度は、式1によって与えられる。
R=λ×(λ+α)−1×N×φ×σ×[1−exp〔−(λ+α)t〕]・・・式1
ここで、Rは空気中放射濃度(Bq/cm)、λは崩壊定数(min−1)、αは室内空気排出率(min−1)、Nは原子密度(atoms cm−3)、φは中性子束密度(n cm−2sec−1、nは個数)でありφ=4Q・S−1で与えられる、Qは線源強度であり、Sは中性子が放出される部屋の表面積であり、σは反応断面積(cmatom−1)である。
【0030】
上記式1に、出力50kW−8MeVの陽子を中性子発生用のターゲットに衝突させた時に発生する中性子の強度としてQ=1×1011(s−1)、遮蔽された空間の表面積としてS=18(m)、濃度1%のArの原子密度としてN=2.5×1017(atoms cm−3)、崩壊定数としてλ=1、アルゴンの反応断面積としてσ=660×10−27(cmatom−1)を代入すると、R=0.34(Bq/cm)程度となり、作業環境における41Arの濃度限度である1×10−1(Bq/cm)を超えることが予想される。
【0031】
したがって、上記遮蔽空間の大気環境をアルゴンを実質的に含有しない人工空気に置換することによって、アルゴンの放射化による放射線被曝を防止することが可能である。
【0032】
また、中性子が放出される部屋を局所的に放射線遮蔽材で遮蔽するための放射線遮蔽材として、従来のコンクリート材料を用いる場合とホウ素を含有したコンクリート材料を用いる場合の中性子遮蔽能力を非特許文献3及び特許文献1から推定すると、以下のようになる。
【0033】
すなわち、1MeVの中性子を遮蔽するために、厚さ100cmのコンクリート材料を用いた場合には、中性子の実効線量透過率は約1000分に1になるのに対して、ホウ素を含有したコンクリート材料を用いた場合には、厚さ50cmで中性子の実効線量透過率を約1000分に1に低減可能である。
【0034】
したがって、上記遮蔽をホウ素を含有したコンクリート材料やホウ素を含有したポリエチレン材料を用いて行うことによって、中性子の遮蔽効果を顕著に高めることが可能である。
【0035】
本発明における放射線被曝防止装置は、中性子治療室の中に中性子治療用診療台を配置するために局所的に設けられた放射線遮蔽材で遮蔽された放射線遮蔽室、アルゴンを実質的に含有しない人工空気を製造するための人工空気製造装置、人工空気製造装置によって製造される人工空気を調整するための人工空気調整器、人工空気調整器から人工空気を通気するための通気ライン、通気ラインを通して供給される人工空気を送風するための送風器、放射線遮蔽室の空気を排気するための排気ライン、及び放射線遮蔽室に設置される中性子の出射部から構成される。
【0036】
そして、上記人工空気製造装置及び上記人工空気調整器を上記放射線遮蔽室の室外に設け、上記通気ラインによって上記人工空気調整器と上記送風器を連結し、上記送風器、上記排気ライン、及び上記中性子の出射部を上記放射線遮蔽室に設け、上記放射線遮蔽室に置かれる中性子治療用診療台の位置を基準にして、上記送風器を該診療台の長手方向の離れた位置に設け、上記排気ラインを上記空調器と対向する側に設け、上記中性子の出射部を上記診療台の上部に設けることを特徴とする放射線被曝防止装置である。
【0037】
上記放射線遮蔽室は、放射線遮蔽材を用いて遮蔽された局所的空間であり、中性子治療室内に設けられ、中性子治療用診療台を設置するに足るだけの容積があればよい。放射線遮蔽材としては、従来の放射線遮蔽材を用いることができるが、中性子の遮蔽効果が高いホウ素含有のコンクリート材やホウ素含有のポリエチレン材料を用いるのが好ましい。
【0038】
上記人工空気製造装置は、中性子治療室に設けることも可能ではあるが、そうすると騒音等の防止のための設備が必要なので、放射線遮蔽室の室外に設けるのが好ましい。
【0039】
アルゴンを実質的に含有しない人工空気を製造するための装置は、従来の人工空気製造装置を用いることが可能である。本発明における人工空気製造装置は、アルゴンを実質的に含有しない人工空気を製造するための装置ではあるが、アルゴン含有量が0.1%以下であれば空気中放射濃度を作業環境の法定管理基準である1×10−1(Bq/cm)以下にすることが十分に可能であるので、アルゴン含有量が0.1%以下の人工空気を製造可能な装置であれば実際上差し支えない。従って、アルゴン含有量が0.1%以下の人工空気は、アルゴンが実質的に含まれない人工空気である。
【0040】
上記人工空気調整器は、人工空気製造装置によって製造される人工空気の温度及び湿度を調整するための装置であり、従来の空調器と従来の加湿装置を適宜組み合わせることによって可能である。該人工空気調整器は、放射線遮蔽室の室内に設けることも可能ではあるが、騒音等の防止のために放射線遮蔽室の室外に設けるのが好ましい。
【0041】
上記通気ラインは、上記人工空気製造装置、人工空気調整器、及び放射線遮蔽室を連結するための通気ラインのことである。通気ラインとしては、従来の鋼管製の気体通気ラインを用いることが可能である。
【0042】
上記送風器は、上記通気ラインからの人工空気を放射線遮蔽室に送風するための装置であり、放射線遮蔽室の中で送風を調整するために、通常、放射線遮蔽室の室内に設ける。該送風器は、上記放射線遮蔽室に置かれる中性子治療用診療台の位置を基準にして、診療台の長手方向の離れた位置に設けるのが好ましい。これは、送風による空気の流れを平均化するためである。
【0043】
上記排気ラインは、上記放射線遮蔽室の室内の空気を排気するための排気ラインであり、排気ライン端部は放射線遮蔽室に設ける。該排気ラインは、強制排気のための特別な排気ラインでなくてもよい。例えば、排気口でよい。該排気ラインは、送風器と対向する側に設けるのが自然な空気の流れを作るために好ましい。
【0044】
上記中性子の出射部は、通常、上記診療台の上部に設ける。これは、中性子照射が、通常、診療台の上部から行われるためである。上記送風器、出射部、排出口を直線的に配置することで、放射化物を効果的に放射線遮蔽室外に排出できる。
【実施例1】
【0045】
図1は、本実施形態に係る放射線被曝防止装置の一例を示す概略図である。図1(A)は放射線被曝防止装置20の平面透視図であり、図1(B)は正面透視図である。
【0046】
放射線被曝防止装置20は、中性子治療室1の中に局所的に設けられ診療台8が収納される放射線遮蔽室2と、中性子治療室1の外に設けられる人工空気製造装置3及び人工空気の温度及び湿度を調整するための人工空気調整器4と、温度及び湿度が調整された人工空気を放射線遮蔽室2に通気するための通気ライン5と、放射線遮蔽室2の室内に設けられる人工空気を送風するための送風器6と、放射線遮蔽室2の空気を排気するための排気ライン(排気口7)と、及び中性子をターゲットに照射する出射部9から構成される。
【0047】
出射部9は、加速器で生成され輸送管内を輸送された中性子ビームをターゲットに向け出射する部分で、固定部10に移動可能に設置される。送風器6と排気口7は診療台8の長手方向に対向して放射線遮蔽室2の側壁に設けられている。
【0048】
放射線被曝防止装置20において、アルゴンを実質的に含有しない人工空気が人工空気製造装置3によって製造され、この人工空気は人工空気調整器4に送られ、そこで温度及び湿度が調整され、通気ライン5によって放射線遮蔽室2の室内(空間2a)に設けられた送風器6に送られる。
【0049】
送風器6によって送風されるアルゴンを実質的に含有しない人工空気は放射線遮蔽室2の室内にある空気と置換され、一方、放射線遮蔽室2の室内に設けられた排気口7(排気ライン)を通して人工空気が放射線遮蔽室2外に排気される。出射部9は、診療台8の上部に設けられる。
【0050】
以上のように、本発明は、中性子治療に際しての中性子及び中性子による大気の放射化による放射線被曝を防止するための簡易な放射線被曝防止方法及び放射線被曝防止装置である。
【0051】
中性子診療台を放射線遮蔽材で遮蔽することによって中性子を遮蔽し、且つ、放射線遮蔽材で遮蔽された診療台周辺の大気環境(空間2a)をアルゴンを実質的に含有しない人工空気の環境に置換することによって大気の放射化による放射線被曝を防止することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 中性子治療室
2 放射線遮蔽室
2a 空間
3 人工空気製造装置
4 人工空気調整器
5 通気ライン
6 送風器
7 排気口
8 診療台
9 出射部
10 固定部
20 放射線被曝防止装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子治療室内の診療台周辺の空間を放射線遮蔽材で遮蔽するとともに、前記放射線遮蔽材で遮蔽された空間の大気環境を実質的にアルゴンが含まれない人工空気に置換することを特徴とする放射線被曝防止方法。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線被曝防止方法に用いる放射線被曝防止装置であって、
前記中性子診療室内の診療台の周辺を放射線遮蔽材で遮蔽した放射線遮蔽室と、
前記人工空気を製造するための人工空気製造装置と、
前記人工空気を前記放射線遮蔽室に送風するための送風器と、
前記放射線遮蔽室の空気を排気するための排気ラインと、
からなることを特徴とする放射線被曝防止装置。
【請求項3】
さらに、前記人工空気製造装置から人工空気を前記送風器に通気するための通気ラインと、前記通気ラインに設けられ人工空気の温度及び湿度を調整するための人工空気調整器と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の放射線被曝防止装置。
【請求項4】
前記人工空気製造装置及び前記人工空気調整器を前記放射線遮蔽室の室外に設け、前記送風器を前記該診療台の長手方向の前記放射線遮蔽室に設け、前記排気ラインの排気口を上記送風器と対向する側の前記放射線遮蔽室に設け、前記中性子の出射部を前記診療台の上部に設けることを特徴とする請求項3に記載の放射線被曝防止装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−81602(P2013−81602A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223093(P2011−223093)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(504151365)大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構 (125)
【Fターム(参考)】