説明

放射線計測システム

【課題】計測時間が短期間で、かつクロストークによる影響を抑制することができる放射線計測システムを提供する。
【解決手段】放射線計測システム100では、対象物50が放射線計測対象の領域において、放射線の強度分布について予め設定される強弱の変化がつけてある。このような対象物50の放射線を計測する際には、シンチレータ11を計測領域に対向する位置に配置し、シンチレータ11が対向する領域と該領域に隣接する領域とは、強度分布に基づく強弱の変化を有する。したがって対向する領域からシンチレータ11に照射する放射線の強度と、隣接する領域からシンチレータ11に照射する放射線の強度とが異なることになる。強度分布は既知であるので、予め既知の強度分布による各シンチレータ11への影響を調査などしておくことによって、既知の強度分布に基づいて、隣接する領域からの放射線の入射量を予測することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を計測する放射線計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種製品の摩耗部において、放射化された部材から発せられる放射能強度の減少度合いを測定することにより摩耗量を測定する方法が知られている。
【0003】
このような方法を実施するためには、対象物から発せられる放射能強度を正確に計測する必要がある。従来の放射線計測装置が特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の放射線計測装置は、放射線によって発光するシンチレータを複数備え、複数のシンチレータをカメラで撮像して、画像処理することによって、放射能強度を計測している。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の放射線計測装置では、各シンチレータが対向する放射化領域だけでなく、放射化領域に隣接するその他の領域からのも放射線(ガンマ線)も入射する。これによって各シンチレータは、測定対象の領域以外の放射線が入射することによっても発光してしまうクロストークと呼ばれる現象が発生し、放射能強度を正確に計測することができないという問題がある。
【0005】
このような問題に対して、特許文献2に記載の肉厚測定装置では、シンチレータと対象物との間にコリメータを設けてシンチレータの正面(対向する位置)の放射線のみを入射させるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−25658号公報
【特許文献2】特開昭58−158510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載の従来技術では、コリメータを用いているが、たとえばガンマ線を90%以上で遮蔽するには、鉛を使用した場合で30mm以上の厚さが必要である。このため放射線源とシンチレータとの間の距離が増大し、放射線源からシンチレータへ放射線が入射する際の立体角が放射線源とシンチレータとが密着している場合の1000分の1程度になる。その結果、シンチレータでのガンマ線の検出率も1000分の1程度になる。これによって放射線の計測時間が大幅に増加するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、計測時間が短期間で、かつクロストークによる影響を抑制することができる放射線計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0010】
請求項1に記載の発明に従えば、対象物は、放射線の計測対象の領域において、放射線の強度分布について予め設定される強弱の変化がつけてある。したがって対象物の放射線の強度は、一様ではない。このような対象物の放射線を計測する際には、シンチレータを計測領域に対向する位置に配置する。ここでシンチレータが対向する領域(計測領域の一部)と、このシンチレータが対向する領域に隣接する領域とは、強度分布に基づく強弱の変化を有する。したがって対向する領域からシンチレータに照射する放射線の強度と、隣接する領域からシンチレータに照射する放射線の強度とが異なることになる。強度分布は既知であるので、予め既知の強度分布による各シンチレータへの影響を調査などしておくことによって、既知の強度分布に基づいて、シンチレータが対向する領域以外からの放射線の入射量を予測することができる。これによってシンチレータが対向する領域(計測領域の一部)からの放射線を予測することができる。したがってクロストークの影響を抑制することで計測時間を短くすることができる。
【0011】
また請求項2に記載の発明に従えば、強度分布における強度変化は、離散的な強度変化であるので、連続的に変化する強度変化よりも強度変化が顕著である。したがってシンチレータが対向する領域からシンチレータに入射する放射能強度をさらに高精度に予測することができる。
【0012】
さらに請求項3に記載の発明に従えば、強度分布における強度変化は、放射化領域と非放射化領域とによる変化であるので、連続的に変化する強度変化よりも強度変化が顕著である。したがってシンチレータが対向するからシンチレータに入射する放射能強度をさらに高精度に予測することができる。
【0013】
さらに請求項4に記載の発明に従えば、シンチレータが対向する計測領域は、放射化領域であり、計測領域に隣接する領域は非放射化領域である。したがって隣接する領域から放射線がシンチレータに入射しない。隣接していない他の放射化領域から放射線が入射することがあるが、シンチレータが対向する領域以外からの放射能強度を少なくすることができる。これによって計測領域からシンチレータに入射する放射能強度をさらに高精度に予測することができる。
【0014】
さらに請求項5に記載の発明に従えば、中央のシンチレータは、両隣のシンチレータが放射線を計測するため、それぞれ計測領域に対向している場合には、非放射化領域に対向している。したがって隣接する領域から放射線が両隣のシンチレータに入射しない。隣接していない他の放射化領域から放射線が入射することがあるが、シンチレータが対向する領域以外からの放射能強度を少なくすることができる。これによって計測領域からシンチレータに入射する放射能強度をさらに高精度に予測することができる。
【0015】
さらに請求項6に記載の発明に従えば、対象物における放射能強度の強弱の変化がつけてある領域と、放射線を計測する際にシンチレータが配置されると位置との間には、他の物体が配置されているが、このような位置関係であっても前述の同様の作用および効果を達成することができる。これによって、たとえば他の物体の大きさや厚みなどを測定することができる。
【0016】
さらに請求項7に記載の発明に従えば、対象物から発せられる放射線を対象物からシンチレータに至る棒状(ペンシル状)に整形する整形部材をさらに含むので、隣接する領域からシンチレータに入射する放射線による影響をさらに抑制することができる。
【0017】
さらに請求項8に記載の発明に従えば、隣接するシンチレータの間および隣接する導光手段の間に放射線を遮蔽する遮蔽部材が設けられるので、隣接する領域からシンチレータに入射する放射線による影響をさらに抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】放射線計測システム100を簡略化して示す正面図である。
【図2】放射線計測システム100と対象物50とを簡略化して示す図である。
【図3】図2に対応する対象物50を示す平面図である。
【図4】A列の放射線強度の一例を示すグラフである。
【図5】放射化領域51の寄与度の一例を示すグラフである。
【図6】B列の放射線強度の一例を示すグラフである。
【図7】放射化領域51の寄与度の一例を示すグラフである。
【図8】第2実施形態の放射線計測システム100Aを示す図である。
【図9】図8に対応する対象物50Aを示す平面図である。
【図10】A列の放射線強度の一例を示すグラフである。
【図11】放射化領域51Aの寄与度の一例を示すグラフである。
【図12】第3実施形態の放射線計測システム100Bを簡略化して示す図である。
【図13】図12に対応する対象物50Bを示す平面図である。
【図14】A列の放射線強度の一例を示すグラフである。
【図15】放射化領域51Bの寄与度の一例を示すグラフである。
【図16】第4実施形態の放射線計測システム100Cを簡略化して示す図である。
【図17】図16に対応する対象物50Cを示す平面図である。
【図18】第5実施形態の放射線計測システム100Dを簡略化して示す図である。
【図19】第6実施形態の放射線計測システム100Eと簡略化して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。各実施形態で先行する実施形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。また各実施形態にて構成の一部を説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している実施形態と同様とする。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0020】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に関して、図1〜図7を用いて説明する。図1は、放射線計測システム100を簡略化して示す正面図である。放射線計測システム100は、放射線源から放射される放射線を計測するものとして用いられるものである。放射線計測システム100は、たとえば測定対象の摩耗量および測定対象の厚みの測定などに用いられる。放射線計測システム100が摩耗量を測定する場合には、予め摩耗量を測定したい対象物50(図2参照)を放射化し、放射化された対象物50が摩耗すると放射能強度が変化することを利用して、対象物50から発せられる放射線を所定時間検出することにより、対象物50の摩耗量を測定することができる。また放射線計測システム100が測定物の厚みを測定する場合には、予め厚みを測定したい測定物の反対側に放射化した対象物50を配置し、対象物50から発せられる放射能強度が測定物の厚みの大小によって変化することを利用して、測定物を透過した放射線を検出することにより、測定物の厚みを測定することができる。
【0021】
放射線計測システム100は、放射線プローブ10と、増倍ユニット20と、電荷結合素子(Charge-Coupled Device:略称CCD)カメラ30と、画像処理装置40とを含んで構成されている。
【0022】
放射線プローブ10は、放射線源から放射される放射線を検出するものである。この放射線プローブ10は放射線を検出すると、放射線を放射線エネルギーに応じた光として取得する構成になっている。そして、放射線プローブ10は、増倍ユニット20に取り付けられている。
【0023】
増倍ユニット20は、放射線プローブ10で検出された光の強度を増倍させるものである。具体的に、増倍ユニット20は、放射線プローブ10から射出された光を光電面に当てて電子に変換して増幅し、増幅した電子を蛍光面に当てることにより、増幅した電子の量に応じた光に変換する。
【0024】
CCDカメラ30は、増倍ユニット20で増幅された光を撮影するものである。このCCDカメラ30は増倍ユニット20に取り付けられており、増倍ユニット20から放出された光を撮影する。
【0025】
画像処理装置40は、画像処理手段であって、CCDカメラ30で撮影された画像を取り込み、画像処理を行う機能を有するものである。画像処理装置40では、撮影された画像のノイズ処理、多数の画像の加減算処理、画像の保存等の各種処理が行われる。画像処理装置40としては、一般的なパーソナルコンピュータ等が用いられる。
【0026】
次に、放射線プローブ10の構成についてさらに説明する。放射線プローブ10は、シンチレータ11と、光導波路12と、金属ケース13とを備えている。
【0027】
シンチレータ11は、放射線を光に変換する放射線−光変換器である。具体的に、シンチレータ11は、放射線(ガンマ線)が照射されるとその放射線エネルギーを吸収して光を発する蛍光板である。この光は、シンチレータ11内の一点を中心に放射状に四方八方へ放射される。本実施形態では、シンチレータ11は、2mm角の板状のものが採用される。
【0028】
光導波路12は、導光手段であって、一方から他方に光を導くものである。光導波路12は、一端部と他端部とを有している。本実施形態では、1本の光導波路12は2mm角の棒状をなしている。
【0029】
また、光導波路12の一端部には光が入射される入射面12aが設けられ、他端部には光が射出される射出面12bが設けられている。入射面12aは棒状の光導波路12の一方の端面であり、射出面12bは棒状の光導波路12の他方の端面である。
【0030】
入射面12aと射出面12bとが成す角度は、必要に応じて適宜設定可能であり、本実施形態では、入射面12aは射出面12bに対して角度を持っている。具体的には、入射面12aは、射出面12bに対して垂直に配置されている。このため、入射面12aと射出面12bとが垂直になるように、光導波路12の一端部と他端部との間の一部が曲げられた形状になっている。
【0031】
光導波路12の材質は、たとえばアクリル樹脂である。アクリル樹脂は曲がりやすく、加工しやすい材料であるため、図3に示されるような形状の光導波路12を作りやすくすることができる。光導波路12の形成方法としては、棒状のアクリル樹脂を曲げる方法や、一つのブロックを光導波路12の形状に削る方法がある。一方、アクリル樹脂を型成形することにより光導波路12を得ることもできる。
【0032】
光導波路12の側面には、反射材(図示せず)が設けられている。反射材として、たとえば金属箔や金属の蒸着膜が採用される。金属としては、反射効率が高いAl(アルミニウム)などが採用される。このような反射材処理が施されていることにより、光導波路12内を伝達する光の漏れを防止できる。また、反射材による光導波路12内での集光効率も向上する。
【0033】
そして、入射面12aから光が入射されると、この光が光導波路12と外部との境界で反射しながら光導波路12内を伝達していき、射出面12bから光導波路12の外部に射出されることとなる。光導波路12の一部が曲げられているため、該曲がった部分で一端部側から他端部側に光を導けるように光導波路12に反射面12cが設けられている。
【0034】
この反射面12cは、入射面12aおよび射出面12bに対して傾けられ、入射面12aから入射された光を反射させて他端部側に導く役割を果たす。また、光導波路12の一端部側から他端部側に伝達する光が当該曲がった部分で反射せずに光導波路12の外部に漏れることを防止する。
【0035】
光導波路12の入射面12aにシンチレータ11が接着剤等により取り付けられ、1本の光導波路12と該光導波路12に取り付けられたシンチレータ11とで一つの組が構成されている。本実施形態では、図1に示されるように、光導波路12とシンチレータ11との組が5つ備えられている。
【0036】
また、図1に示されるように、各組のシンチレータ11それぞれが一次元に配置され、光導波路12とシンチレータ11との5つの組が一体化されている。換言すると、シンチレータ11は、3つ以上である5つを1列に配列させている。シンチレータ11は、一次元に配置されているので、放射線源に対して相対的に変位させることによって、2次元の領域を測定対象とすることができる。
【0037】
そして、一体化された各光導波路12は有底筒状の金属ケース13で覆われている。すなわち、シンチレータ11が取り付けられた各光導波路12は、それぞれの射出面12bを除いて金属ケース13に収納された状態になっている。
【0038】
この金属ケース13は、シンチレータ11や光導波路12を外部から保護する役割を果たすものである。また、シンチレータ11で発せられた光は弱い光であるため、外部からのノイズに影響されやすい。しかし、金属ケース13によって光導波路12を覆い隠すことにより、外部からのノイズを遮断できる。金属ケース13の材質として、SUSやAl等が採用される。
【0039】
次に、上記の放射線プローブ10が備えられた放射線計測システム100で放射線を計測する方法について説明する。先ず、放射線プローブ10のシンチレータ11と放射線源とを対向させる。このとき、金属ケース13を放射線源に接触させることがもっとも良い。放射線源が動いているものや、ハウジング内の構造によっては近づけることが難しいものについては、放射線源になるべくシンチレータ11を近づけるようにする。
【0040】
放射線源から放射線が放射されていれば、放射線が金属ケース13を通過してシンチレータ11に入射する。これにより、シンチレータ11が放射線エネルギーを吸収して光を発する。この光が光導波路12の入射面12aから光導波路12内に照射され、光導波路12内を伝達して射出面12bから射出されると共に増倍ユニット20に入射する。
【0041】
この後、増倍ユニット20で光が電子に変換されて増幅され、増幅された電子が再び光に変換される。この光をCCDカメラ30で撮影し、撮影した画像を画像処理装置40に取り込む。
【0042】
画像処理装置40により、たとえば放射線源とシンチレータ11との距離に基づく干渉を考慮したノイズ処理等を行って画像化を図る。これにより、放射線源から放射線が放射されていればその分布が表示された画像が得られ、放射線が放射されていなければ何も表示されない画像が得られる。このようにして、放射線計測が完了する。
【0043】
次に、各シンチレータ11と対象物50との位置関係に関して説明する。図2は、放射線計測システム100と対象物50とを簡略化して示す図である。図3は、図2に対応する対象物50を示す平面図である。図2および図3では、理解を容易にするため、対象物50において放射化された領域について斜線を施して示す。
【0044】
図2および図3に示すように、対象物50は、放射線計測対象の領域において、放射線の強度分布について予め設定される強弱の変化がつけてある。強度分布における強度変化は、離散的な強度変化であり、具体的には放射線を発する放射化領域51と放射線を発しない非放射化領域52とによる変化である。本実施形態の対象物50は、シンチレータ11の数と同数である5つの放射化領域51を有する。また各放射化領域51は、それぞれ独立するように配置されている。換言すると、各放射化領域51は、互いに接触しておらず、離間している。本実施形態では、図3に示すように、複数配列、本実施形態では2行に配置されており、1行目(以下、A行ということがある)には2つの放射化領域51が配置され、2行目(以下、B行ということがある)には3つの放射化領域51が配置されている。また図2に示すように、5つの放射化領域51は側方に見ると、左右に隣接するような位置関係にある。
【0045】
また各行において左右方向の放射化領域51の間隔は、シンチレータ11の左右方向の寸法以上に設定される。換言すると、放射化領域51間、すなわち非放射化領域52に、シンチレータ11を丸ごと入るような位置関係である。これによって複数のシンチレータ11のうち両隣にシンチレータ11が配置されている中央のシンチレータ11は、両隣のシンチレータ11が放射線を計測するため、それぞれ計測領域に対向している場合には、非放射化領域52に対向することになる。
【0046】
あるシンチレータ11の放射化領域51と他のシンチレータ11の放射化領域51の距離が少なくともシンチレータ11の最も狭い部分の寸法(形状によって名称が変わるが、たとえば縦、横、直径、および短径、相当直径など)よりも離れているように設定される。本実施形態では、シンチレータ11は正方形板状であるので、具体的には、放射化領域51の幅W1はシンチレータ11の幅以下に設定される。放射化領域51の長さH1はシンチレータ11の長さ以下に設定される。またA行とB行の放射化領域51の間T1は、シンチレータ11の長さ以上離れているように設定される。
【0047】
次に、各放射化領域51における放射能強度の計測に関して説明する。本実施形態では、5つの放射化領域51の放射能強度を一度に計測するのではなく、2段階に分けて計測する。いずれの段階が先でもよいが、本実施形態では図3の上方に位置する2つの放射化領域51(A列の放射化領域51)の計測から開始する。
【0048】
先ず、5つのシンチレータ11を図2に示すように、5つの放射化領域51にそれぞれ対向するように配置する。ここで対向とは、上下方向に相対する状態をいい、シンチレータ11と対象物50とが密着している状態も含むものとする。次に、シンチレータ11をA列の上方に移動する。すると、図2に示すように左から各シンチレータ11をそれぞれチャンネル(ch)1と順次、5つをチャンネル5まで称した場合、チャンネル2とチャンネル4とが放射化領域51と対向することになる。したがって、チャンネル1、3,5は、非放射化領域52と対向することになる。
【0049】
このような位置関係で放射線計測した場合の放射線強度に関して説明する。図4は、A列の放射線強度の一例を示すグラフである。図5は、チャンネル2における放射化領域51の寄与度の一例を示すグラフである。前述のようにA列の放射線強度は予め設定しているので、図4のように既知である。放射線強度が既知であるので、図5に示すように各放射化領域51からチャンネル2に入射する放射線強度を予測することができる。このような予測データがあるので、チャンネル2が対向する放射化領域51から入射した実際の放射能強度を、図5に基づいて予測することができる。チャンネル4においても同様である。これによってA列の放射化領域51の放射量を計測することができる。
【0050】
換言すると、A列でチャンネル2およびチャンネル4のみの放射線計測を行うことで、チャンネル1、チャンネル3、およびチャンネル5の対面の放射化領域51の影響をほぼ受けないので、チャンネル2はチャンネル2の対面の放射化領域51の変化を検出できる。
【0051】
次に、シンチレータ11をB列の上方に移動する。すると、図2に示すように、チャンネル1、3,5が放射化領域51と対向することになる。したがって、チャンネル2、4は、非放射化領域52と対向することになる。
【0052】
このような位置関係で放射線計測した場合の放射線強度に関して説明する。図6は、B列の放射線強度の一例を示すグラフである。図7は、チャンネル3における放射化領域51の寄与度の一例を示すグラフである。前述のようにB列の放射線強度は予め設定しているので、図6のように既知である。放射線強度が既知であるので、図7に示すように各放射化領域51からチャンネル3に入射する放射線強度を予測することができる。このような予測データがあるので、チャンネル3が対向する放射化領域51から入射した実際の放射能強度を、図7に基づいて予測することができる。チャンネル1、3においても同様である。
【0053】
換言すると、B列でチャンネル1、チャンネル3およびチャンネル5のみの放射線計測を行うことで、チャンネル2およびチャンネル4の対面の放射化領域51の影響をほぼ受けないので、チャンネル3はチャンネル3の対面の放射化領域51の変化を検出できる。
【0054】
以上説明したように本実施形態の放射線計測システム100では、対象物50が放射線計測対象の領域において、図4および図6に示すように、放射線の強度分布について予め設定される強弱の変化がつけてある。したがって対象物50の放射線の強度は、一様ではない。このような対象物50の放射線を計測する際には、シンチレータ11を計測領域に対向する位置に配置し、シンチレータ11が対向する領域とシンチレータ11が対向する領域に隣接する領域とは、強度分布に基づく強弱の変化を有する。したがって対向する領域からシンチレータ11に照射する放射線の強度と、隣接する領域からシンチレータ11に照射する放射線の強度とが異なることになる。強度分布は既知であるので、予め既知の強度分布による各シンチレータ11への影響を調査などしておくことによって、既知の強度分布に基づいて、隣接する領域からの放射線の入射量を予測することができる。これによって対向する領域からの放射線を予測することができる。したがってクロストークの影響を抑制することで計測時間が長期間になることを防ぐことができる
また本実施形態では、強度分布における強度変化は、離散的な強度変化である。具体的には、放射化領域51と非放射化領域52とによる変化であるので、連続的に変化する強度変化よりも強度変化が顕著である。したがって隣接する領域からシンチレータ11に入射する放射能強度をさらに高精度に予測することができる。
【0055】
さらに本実施形態では、シンチレータ11が対向する計測領域は、放射化領域51であり、計測領域に隣接する領域は非放射化領域52である。したがって隣接する領域から放射線がシンチレータ11に入射しない。隣接していない他の放射化領域51から放射線が入射することがあるが、他の放射化領域51からの距離が離れているので、シンチレータが対向する領域以外からの放射能強度を少なくすることができる。これによって計測領域からシンチレータ11に入射する放射能強度をさらに高精度に予測することができる。
【0056】
さらに本実施形態では、中央のシンチレータ11は、両隣のシンチレータ11が放射線を計測するため、それぞれ計測領域に対向している場合には、非放射化領域52に対向している。換言すると、計測するチャネルの放射化領域51と他のチャネルの放射化領域51とは接していない。したがって隣接する領域から放射線が両隣のシンチレータ11に入射しない。隣接していない他の放射化領域51から放射線が入射することがあるが、シンチレータが対向する領域以外からの放射能強度を少なくすることができる。これによって計測領域からシンチレータ11に入射する放射能強度をさらに高精度に予測することができる。
【0057】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に関して、図8〜図11を用いて説明する。図8は、第2実施形態の放射線計測システム100Aと対象物50Aとを簡略化して示す図である。図9は、図8に対応する対象物50Aを示す平面図である。図8および図9では、理解を容易にするため、対象物50Aにおいて放射化された領域について斜線を施して示す。本実施形態では、対象物50Aにおける放射化領域51Aの大きさの点で前述の第1実施形態と異なる。
【0058】
図9に示すように、本実施形態の対象物50Aは、3行に配置されており、1行目には2つの放射化領域51Aが配置され、2行目(以下、A行ということがある)には2つの放射化領域51Aが配置され、3行目には1つの放射化領域51Aが配置されている。また図8に示すように、5つの放射化領域51Aは側方に見ると、左右に離間するような位置関係にある。換言すると、各シンチレータ11の対面の中心部分のみ放射化している。
【0059】
次に、各放射化領域51Aにおける放射能強度の計測に関して説明する。シンチレータ11を図9に示すA列の上方に移動する。すると、図8に示すようにチャンネル2とチャンネル5とが放射化領域51Aと対向することになる。したがって、チャンネル1、3,4は、非放射化領域52Aと対向することになる。
【0060】
このような位置関係で放射線計測した場合の放射線強度に関して説明する。図10は、A列の放射線強度の一例を示すグラフである。図11は、チャンネル2における放射化領域51Aの寄与度の一例を示すグラフである。前述のようにA列の放射線強度は予め設定しているので、図10のように既知である。放射線強度が既知であるので、図11に示すように各放射化領域51Aからチャンネル2に入射する放射線強度を予測することができる。このような予測データがあるので、チャンネル2が対向する放射化領域51Aから入射した実際の放射能強度を、図11に基づいて予測することができる。チャンネル5においても同様である。これによってA列の放射化領域51Aの放射量を計測することができる。
【0061】
また本実施形態では、各チャンネルの対面の中心部分のみ放射化しているので、各放射化領域51Aから隣接するチャンネルに入射する放射線(γ線)の量を減らすことができる。これによってさらに高精度に放射能強度を計測することができる。
【0062】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に関して、図12〜図15を用いて説明する。図12は、第3実施形態の放射線計測システム100Bと対象物50Bとを簡略化して示す図である。図13は、図12に対応する対象物50Bを示す平面図である。図12および図13では、理解を容易にするため、対象物50Bにおいて放射化された領域について斜線を施して示す。本実施形態では、対象物50Bにおける放射化領域51Bの大きさの点で前述の第1実施形態と異なる。
【0063】
図13に示すように、本実施形態の対象物50Bは、5行に配置されており、各行には1つの放射化領域51Bが配置されており、2行目を図13に示すようにA行ということがある。また図12に示すように、5つの放射化領域51Bは側方に見ると、左右に離間するような位置関係にある。換言すると、各チャンネルの対面の中心部分のみ放射化している。
【0064】
次に、各放射化領域51Bにおける放射能強度の計測に関して説明する。シンチレータ11を図13に示すA列の上方に移動する。すると、図12に示すようにチャンネル2が放射化領域51Bと対向することになる。したがって、チャンネル1、3、4、5は、非放射化領域52Bと対向することになる。
【0065】
このような位置関係で放射線計測した場合の放射線強度に関して説明する。図14は、A列の放射線強度の一例を示すグラフである。図15は、チャンネル2における放射化領域51Bの寄与度の一例を示すグラフである。前述のようにA列の放射線強度は予め設定しているので、図14のように既知である。放射線強度が既知であるので、図15に示すように各放射化領域51Bからチャンネル2に入射する放射線強度を予測することができる。このような予測データがあるので、チャンネル2が対向する放射化領域51Bから入射した実際の放射能強度を、図14に基づいて予測することができる。
【0066】
また本実施形態では、各チャンネルの対面の中心部分のみ放射化しており、さらに5つの放射化領域51Bを斜め方向に離間するように配置しているので、各放射化領域51Bから隣接するチャンネルに入射する放射線(γ線)の量を減らすことができる。これによってさらに高精度に放射能強度を計測することができる。
【0067】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に関して、図16および図17を用いて説明する。図16は、第4実施形態の放射線計測システム100Cと対象物50Cとを簡略化して示す図である。図17は、図16に対応する対象物50Cを示す平面図である。図16および図17では、理解を容易にするため、対象物50Cにおいて放射化された領域について斜線を施して示す。本実施形態では、対象物50Cにおける強弱の変化がつけてある領域は、放射線を計測する際にシンチレータ11が配置されると位置の間には、他の物体である測定物60が配置されている。
【0068】
本実施形態では、図16に示すように、シンチレータ11と対象物50Cとの間に測定物60を配置している。放射化領域51Cについては、前述の第1実施形態について同様であるので、測定物60を通過した各放射化領域51Cからの放射線の放射能強度を放射線計測システム100Cによって計測することができる。したがって測定物60を放射化するのではなく、測定物60の下に放射線源となる対象物50Cを配置して、放射能強度を計測することによって、測定物60の厚さ計測をすることができる。
【0069】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に関して、図18を用いて説明する。図18は、第5実施形態の放射線計測システム100Dと対象物50Dとを簡略化して示す図である。図18では、理解を容易にするため、対象物50Dにおいて放射化された領域について斜線を施して示す。本実施形態では、対象物50Dにおける強弱の変化がつけてある領域は、独立してなく連続している領域である。また放射線計測システム100Dは、コリメータ70をさらに備える点に特徴を有する。
【0070】
コリメータ70は、シンチレータ11と対象物50Dとの間に配置され、対象物50Dから発せられる放射線を対象物50Dからシンチレータ11に至るペンシル状に整形する整形部材である。ペンシル状とは、上下方向に延びる棒状である。
【0071】
コリメータ70が配置されていない場合には、放射化領域51Dから斜め方向に放射線が放射された場合、隣接するシンチレータ11に直接放射線が入射する場合があるが、本実施形態のようにコリメータ70を整形部材として設けることによって、放射能強度が他の放射化領域51Dから斜めに放射されたとしても、コリメータ70が障壁となり、直接隣接チャネルのシンチレータ11に放射線が入射しないようにすることができる。これによって図18に示すように、独立していない放射化領域51Dであっても、計測領域に隣接する領域の影響を受けにくくすることができる。
【0072】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態に関して、図19を用いて説明する。図19は、第6実施形態の放射線計測システム100Eと対象物50Eとを簡略化して示す図である。図19では、理解を容易にするため、対象物50Eにおいて放射化された領域について斜線を施して示す。本実施形態では、対象物50Eにおける強弱の変化がつけてある領域は、独立してなく連続している領域である。また放射線計測システム100Eは、コリメータ70Eをさらに備える点に特徴を有する。
【0073】
コリメータ70Eは、隣接するシンチレータ11の間、および隣接する光導波路12の間に配置され、放射線を遮蔽する遮蔽部材である。
【0074】
コリメータ70Eが配置されていない場合には、放射化領域51Eから斜め方向に放射線が放射された場合、隣接するチャネル両方のシンチレータ11および光導波路12を通過する場合があるが、本実施形態のようにコリメータ70Eを遮蔽部材として設けることによって、放射線が放射化領域51Eから斜めに放射されたとしても、コリメータ70Eが障壁となり、1一つの放射線があるシンチレータ11を発光させた後に、隣接するチャネルのシンチレータ11を発光させないようにすることができる。これによって図19に示すように、独立していない放射化領域51Eであっても、計測領域に隣接する領域の影響を受けにくくすることができる。
【0075】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0076】
前述の第1実施形態では、撮影手段は、CCDカメラ30によって実現されているが、CCDカメラ30に限るものではなく、相補型金属酸化膜半導体(Complementary Metal Oxide Semiconductor:略称CMOS)カメラであってもよい。
【0077】
また前述の第1実施形態では、放射線プローブ10は複数の光導波路12を備えた構成になっているが、1本の光導波路と1つのシンチレータ11とによって放射線プローブを構成することも可能である。また、光導波路12を一次元に5本並べるだけでなく、2本や6本以上を並べるようにしても良い。同様に、光導波路を二次元に並べる場合には、5×5の配置でもよく、3×3、7×7および3×5といった配置でも良い。また光導波路12は棒状のものであったが、光ファイバーのような管状のものでも良い。このようなシンチレータ11の位置によって、放射化領域51と設定することによって、前述の第1実施形態と同様の作用および効果を達成することができる。たとえば放射化領域51と非放射化領域52との配置関係は、千鳥状、ジグザグ状、市松模様状およびストライプ状など、適宜設定することができる。
【0078】
また前述の第1実施形態では、放射化領域51の強度分布は、放射化領域51と非放射化領域52とのいわば放射線有り無しの2値化によって実現されるが、このような強度分布に限るものではなく、たとえば離散的に強度を変化させてもよく、連続的に強度を変化させてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10…放射線プローブ
11…シンチレータ
12…光導波路(導光手段)
13…金属ケース
20…増倍ユニット
30…CCDカメラ(撮影手段)
40…画像処理装置(画像処理手段)
50…対象物
51…放射化領域
52…非放射化領域
60…測定物
70…コリメータ(整形部材)
70A…コリメータ(遮蔽部材)
100…放射線計測システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物から放射される放射線、もしくは対象物を通過する放射線を計測する放射線計測システムであって、
前記放射線が照射されると光を発するシンチレータと、
前記シンチレータが発した光を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段で撮影された画像を画像処理する画像処理手段と、を含み、
前記対象物は、放射線の計測対象の領域において、放射線の強度分布について予め設定される強弱の変化がつけてあり、
前記放射線を計測する際には、前記放射線を計測する計測領域に対向する位置に前記シンチレータを配置し、
前記シンチレータが対向する領域と、前記シンチレータが対向する領域に隣接する領域とは、前記強度分布に基づく強弱の変化を有することを特徴とする放射線計測システム。
【請求項2】
前記強度分布における強度変化は、離散的な強度変化であることを特徴とする請求項1に記載の放射線計測システム。
【請求項3】
前記強度分布における強度変化は、前記放射線を発する放射化領域と前記放射線を発しない非放射化領域とによる変化であることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線計測システム。
【請求項4】
前記シンチレータが対向する前記計測領域は前記放射化領域であり、
前記計測領域に隣接する領域は、前記非放射化領域であることを特徴とする請求項3に記載の放射線計測システム。
【請求項5】
前記シンチレータは、少なくとも3つ以上が配列して設けられ、
複数の前記シンチレータのうち両隣にシンチレータが配置されている中央のシンチレータは、前記両隣のシンチレータが前記放射線を計測するため、それぞれ前記計測領域に対向している場合には、前記非放射化領域に対向していることを特徴とする請求項3または4に記載の放射線計測システム。
【請求項6】
前記対象物における前記強弱の変化がつけてある領域と、前記放射線を計測する際に前記シンチレータが配置される位置との間には、他の物体が配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の放射線計測システム。
【請求項7】
前記シンチレータと前記対象物との間に設けられ、前記対象物から発せられる放射線を前記対象物から前記シンチレータに至る棒状に整形する整形部材をさらに含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の放射線計測システム。
【請求項8】
前記シンチレータは、複数配列して設けられ、
前記各シンチレータが発した光を前記撮影手段にそれぞれ導く複数の導光手段と、
隣接する前記シンチレータの間および隣接する前記導光手段の間に設けられ、前記放射線を遮蔽する遮蔽部材と、をさらに含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の放射線計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−122962(P2012−122962A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276007(P2010−276007)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】