説明

放射線計測装置及びその方法

【課題】放射線検出器が有する時間分解能を維持しつつ、放射性核種の定量分析及びエネルギー分析を精度良く行うことができる放射線計測装置を提供する。
【解決手段】半導体放射線検出器1から出力されるアナログパルス信号ごとに、このアナログパルス信号をアナログデジタル変換器2により複数のデジタル信号に変換する。これらのデジタル信号が入力されるスレッショルド回路3は、スレッショルド値を超えるデジタル信号を弁別する。デジタル信号加算回路4は、弁別された複数のデジタル信号をアナログパルス信号ごとに加算してアナログパルス信号ごとに加算値を求める。それぞれの加算値を入力するスペクトル生成回路5は、それらの加算値を用いて放射線エネルギースペクトルを生成し、放射線エネルギースペクトルを用いて放射性核種9の定量分析及びエネルギー分析を精度良く行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線計測装置及びその方法に係り、特に、放射線検出器から出力されるパルス信号を基に放射線エネルギー分布を生成し、放射性核種を分析するのに好適な放射線計測装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線核種を分析する方法の1つ押して、放射線検出器及び放射線計測回路を含む放射線計測装置を用い、放射線検出器で放射線核種が放射する放射線エネルギーを計測し、放射線計測回路でその放射性核種を同定及び定量している。具体的には、放射線エネルギーを計測するためには、NaI(TI)シンチレーション検出器、及びGe(Li)半導体検出器等の汎用の放射線検出器いて放射線を電荷等の信号に変換し、光電子増倍管、電荷有感型前置増幅器、パルス整形アンプ、台形フィルタを適用したデジタル信号処理(DSP)及び多チャンネル波高分析装置等の汎用の放射線計測回路で放射線エネルギー分布を生成し、放射線エネルギー分析を実施している。
【0003】
原子力施設、加速器もしくは放射性同位元素を使用する医療施設、研究用加速器施設及び宇宙環境は、雰囲気線量率が非常に高いレベルになる状況及び箇所がある。一例として、原子力施設では、原子力プラント運転中での原子力格納容器内、医療施設では加速器運転中のビーム照射室及び放射性同位元素使用室がある。宇宙環境は、地上と比較して非常に高い線量場となる。
【0004】
これらの環境における線量もしくは放射性核種のモニタリングは、リアルタイムで行われる。その理由として、例えば、原子力施設では、原子力施設の安全性を確保するために、高計数率及び高線量率であっても放射性核種の漏えいをいち早く検出できる放射線計測装置が必要である。また、医療施設においては、陽子線治療等の患者への放射線照射、及び陽電子断層法(PET)の患者への放射性薬剤の投与が実施されている。
【0005】
放射線計測装置の例が、特開平8−189974号公報及び特開2002−55171号公報に記載されている。
【0006】
特開平8−189974号公報に記載された放射線計測装置は、入射された放射線に対応して電荷を発生する放射線検出器を有し、プリアンプ、信号検出器、ランプ信号発生器、信号処理部及びスペクトル表示器を有する。プリアンプは放射線検出器で発生した電荷量を電気信号に変換し、この電気信号を出力する。信号検出器はプリアンプの出力信号を検出し、ランプ信号発生器は信号検出器がその出力信号を検出したときに所定のランプ信号を発生する。加算器はプリアンプの出力信号とランプ信号を加算し、AD変換器はアナログ/デジタル変換により加算器で得られた加算結果をデジタル信号に変換する。信号処理部は、AD変換器の出力であるデジタル値を積分して得られた積分値を時間平均し、この時間平均値をチャンネル変換する。このような放射線計測装置は、放射線エネルギースペクトルを容易にかつ高精度に求めることができる。
【0007】
特開2002−55171号公報は、放射線計測装置を記載している。この放射線計測装置は、半導体放射線検出器、プリアンプ、整形アンプ、バンドパスフィルタ、ピーク検出回路、ピークホールド回路、A/D変換器及びマルチチャンネルアナライザ(MCA)を有する。整形アンプは直列に接続された微分回路、増幅器及び積分器を含んでいる。
【0008】
プリアンプは、放射線を検出した半導体放射線検出器から出力された放射線検出信号である微小な電荷パルスを積分して電圧パルスに変換し、増幅する。微分回路はこの電圧パルスの減衰時間を短くし、増幅器は微分回路の出力信号を増幅してパルス波形整形を行う。積分器は、増幅器の出力波形をガウス関数状のパルス波形に整形する。バンドパスフィルタは、増幅器の出力波形から放射線検出信号による信号を強調して取り出す。ピーク検出回路は、バンドパスフィルタから出力された信号のうち閾値以上の信号をピーク検出する。ピークホールド回路は、ピーク検出回路から出力された信号によって、積分器から出力された、ガウス関数状のパルス波形に整形された出力信号をピークホールドする。A/D変換器は、ピークホールド回路でピークホールドされた信号の波高値を、ピーク検出回路からのタイミング信号でA/D変換し、デジタル信号に変換する。MCAは、そのデジタル信号を統計的に解析し、マルチチャンネル波高分析及び時間分布測定を行う。
【0009】
特開平7−2919号公報は、アナログ/デジタル変換器(A/D変換器)が有するランダムな変換誤差を一様にする放射線エネルギースペクトル測定装置を記載している。この放射線エネルギースペクトル測定装置では、プリアンプから出力される矩形状の出力信号にランプ信号を加算し、この加算結果をデジタル変換してサンプリング時間で平均化することによって放射線エネルギースペクトルを導出する。
【0010】
特許第2577386号公報は、放射線検出器の出力信号を基に放射線エネルギースペクトルを求める放射線エネルギースペクトル測定装置を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−189974号公報
【特許文献2】特開2002−55171号公報
【特許文献3】特開平7−2919号公報
【特許文献4】特許第2577386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
汎用の放射線検出器及び放射線計測回路を有する放射線計測装置を用いて放射性核種の定量分析及びエネルギー分析をリアルタイムで容易に実施するためには、その放射線計測装置としての最大計数率の上限を10〜10個/秒(cps)程度として測定及び分析する必要がある。最大計数率の範囲は、使用する放射線検出器及び放射線計測回路に依存する。しかし、後段の放射線計測回路は、信号処理におけるS/N比の向上と引き換えに、放射線検出器が有する時間分解能(例えば、シンチレータでは発光減衰時間及び半導体放射線検出器では電荷収集時間)を劣化させた放射線検出信号の処理を行っている。したがって、従来の放射線計測装置では、放射線検出器が有する時間分解能を劣化させており、最大計数率を超える範囲で放射線測定及び分析を行うためには、信号成分のパイルアップ及び数え落としが深刻になり、リアルタイムにおける放射線の測定ではその測定精度を維持することができない。
【0013】
特開2002−55171号に記載された放射線計測装置は、低エネルギー成分を効果的に計測するために整形アンプの増幅器出力部分で分岐した信号を用いてピーク検出、つまり検出しきい値を決定している。この装置は前記検出しきい値の精度向上で、低エネルギー成分を計測できることが特徴で、全エネルギーを対象としたスループット向上装置ではない。つまり放射線計測装置としての最大計数率は10cps程度である。
【0014】
特許第2577386号に記載された放射線エネルギースペクトル測定装置は、Ge半導体検出器等を高エネルギー分解能で動作させるための手段であり、スループットを向上するための記述はない。
【0015】
特開平7−2919号公報に記載された放射線エネルギースペクトル測定装置は、A/D変換器が有する変換誤差を低減するために、全チャンネルの誤差を加えると全体として誤差がゼロになることを利用している。このため、加算器に入力するプリアンプ信号は、特開平7−2919号公報の一例で示される振幅Pの一定出力にしなければならず、放射線検出器の時間分解能を劣化させることになる。したがって、最大計数率は、10cps程度が限界である。特開平8−189974号公報も、特開平7−2919号公報と同じ課題を有する。
【0016】
放射線計測装置で制限される最大計数率の上限を上げることができれば、放射線検出器が有する時間分解能を活かすことができ、高線量率及び高計数率環境下であっても、リアルタイムで容易に放射線の定量分析及びエネルギー分析が可能になる。さらに、放射線計測装置の放射線遮へい体の厚みを薄くすることができ、放射線遮へい体を含む放射線計測装置の小型軽量化が可能になる。さらに、高計数率での性能維持に伴って、高速の放射線監視装置及び放射線計測装置として利用できるので、放射線の測定時間を短縮することができる。
【0017】
本発明の目的は、放射線検出器が有する時間分解能を維持しつつ、放射性核種の定量分析及びエネルギー分析を精度良く行うことができる放射線計測装置及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、放射線を検出して放射線検出信号であるアナログパルス信号を出力する放射線検出器と、放射線検出器から出力されるアナログパルス信号ごとに、このアナログパルス信号を複数のデジタル信号に変換するアナログデジタル変換装置と、アナログデジタル変換装置から出力される複数のデジタル信号をアナログパルス信号ごとに加算してアナログパルス信号ごとに加算値を求めるデジタル信号加算装置と、これらの加算値を用いて放射線エネルギースペクトルを生成し、この放射線エネルギースペクトルの情報を用いて放射線検出器で検出される前記放射線を放出する放射性核種の定量分析及びエネルギー分析を行うスペクトル生成装置とを備えたことにある。
【0019】
放射線検出器から出力されるアナログパルス信号ごとに、このアナログパルス信号を複数のデジタル信号に変換し、複数のデジタル信号をアナログパルス信号ごとに加算してアナログパルス信号ごとに加算値を求め、これらの加算値を用いて放射線エネルギースペクトルを生成するので、放射線検出器が有する時間分解能を維持しつつ、放射線検出器から出力された各アナログパルス信号が有している放射線エネルギー情報を得ることができ、放射線エネルギー情報を用いることにより、放射線エネルギースペクトルの情報をリアルタイムで作成することができて、放射線を放出する放射性核種の定量分析及びエネルギー分析を精度良く行うことができる。
【0020】
従来技術は、アナログパルス信号から整形アンプを介して、アナログパルス信号と比較して長い時間分解能を有するピークホールド回路でエネルギー分析するため、不感時間が生じてスループットが抑制される。これに対し、本発明は、アナログパルス信号を複数のデジタル信号とし、デジタル的に加算処理するので、放射線検出器が有する時間分解能を維持でき、放射線検出器が有するスループットを活かす(例えば、最大限に活かす)ことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、放射線検出器が有する時間分解能を維持しつつ、放射性核種の定量分析及びエネルギー分析を精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の放射線計測装置の構成図である。
【図2】図1に示す放射線検出器から出力された放射線検出信号であるパルス信号の一例を示す説明図である。
【図3】図1に示すアナログデジタル変換器でデジタル変換された、図2に示すパルス信号の一例を示す説明図である。
【図4】図1に示すデジタル信号加算回路における、デジタル変換後のパルス信号の加算方法の一例を示す説明図である。
【図5】放射線検出器から出力された放射線検出信号であるパルス信号の1つのパルスにおける、デジタル信号加算回路での加算処理において加算するサンプル点の数を示す説明図である。
【図6】図1に示すスペクトル生成回路で生成された放射線エネルギースペクトルの一例を示す説明図である。
【図7】図1に示す表示装置に表示される表示情報の一例を示す説明図である。
【図8】本発明の他の実施例である実施例2の放射線計測装置の構成図である。
【図9】本発明の他の実施例である実施例3の放射線計測装置の構成図である。
【図10】本発明の他の実施例である実施例4の放射線計測装置の構成図である。
【図11】本発明の他の実施例である実施例5の放射線計測装置のデジタル信号加算回路における、デジタル変換後のパルス信号の加算方法の一例を示す説明図である。
【図12】実施例5のデジタル信号加算回路でのデジタル変換後のパルス信号の加算時におけるパイルアップ除去方法の一例を示す説明図である。
【図13】本発明の他の実施例である実施例6の放射線計測装置のスレッショルド回路及びデジタル信号加算回路における、デジタル変換後のパルス信号の処理の一例を示す説明図である。
【図14】本発明の他の実施例である実施例7の放射線計測装置のスレッショルド回路及びデジタル信号加算回路における、デジタル変換後のパルス信号の処理の一例を示す説明図である。
【図15】本発明の他の実施例である実施例8の放射線計測装置の前置増幅器における、デジタル変換後のパルス信号の処理の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施例を、以下に説明する。
【実施例1】
【0024】
本発明の好適な一実施例である実施例1の放射線計測装置を、図1を用いて説明する。本実施例の放射線計測装置8は、半導体放射線検出器1、前置増幅器17、放射線計測回路7及び表示装置6を備えている。放射線計測回路7は、アナログデジタル変換器(アナログデジタル変換装置)2、スレッショルド回路(スレッショルド装置)3、デジタル信号加算回路(デジタル信号加算装置)4及びスペクトル生成回路(スペクトル生成装置)5を有する。半導体放射線検出器1としては、Si放射線検出器、Ge放射線検出器、CdTe放射線検出器、GaAs放射線検出器、TlBr放射線検出器、HgI放射線検出器、またはCZT放射線検出器を用いる。
【0025】
半導体放射線検出器1は前置増幅器17に接続され、前置増幅器17はアナログデジタル変換器2に接続される。アナログデジタル変換器2はスレッショルド回路3に接続され、スレッショルド回路3はデジタル信号加算回路4される。デジタル信号加算回路4はスペクトル生成回路5に接続され、スペクトル生成回路5は表示装置6に接続される。
【0026】
半導体放射線検出器1は、放射性核種9から放出された放射線10を検出する。本実施例では、半導体放射線検出器1は放射性核種9から放出された放射線10を検出しているが、この半導体放射線検出器1によって、加速器等で発生する放射線及び宇宙線を検出することができる。また、半導体放射線検出器1で検出できる放射線は、α線、β線、γ線、X線、中性子線、陽子線、重粒子線及び宇宙線である。
【0027】
半導体放射線検出器1は、放射線10を検出するたびに、放射線検出信号であるパルス信号15を出力する。このパルス信号15は、アナログ信号であり、パルス信号の例が図2に示されている。図2に示された各ピークがパルス信号(放射線検出信号)15である。図2の縦軸は電圧であり、横軸は時刻(時間)である。各パルス信号15の波高値は、半導体放射線検出器1で検出されたそれぞれの放射線のエネルギーと相関を有している。
【0028】
半導体放射線検出器1から出力された各パルス信号15は、前置増幅器17で増幅された後に、アナログデジタル変換器2に入力される。アナログデジタル変換器2は、入力したアナログ信号であるパルス信号15をデジタル信号に変換する。なお、アナログ信号であるパルス信号15をアナログパルス信号と称する。アナログデジタル変換器2から出力されたアナログ/デジタル変換後におけるパルス信号は、図3において黒丸で示される。この黒丸を、デジタルパルス信号と称し、「デジタルパルス信号46」で表している。図3に示す実線は、アナログのパルス信号である。
【0029】
アナログデジタル変換器2は、入力した、連続量であるアナログパルス信号15ごとに離散値であるデジタル信号(デジタルパルス信号)46に変換する(図4の上段参照)。アナログデジタル変換器2としては、フラッシュ型、パイプライン型、逐次変換型、デルタシグマ型、または二重積分型のアナログデジタル変換器を用いることができる。放射線計測装置8を高計数率(10cps以上の計数率の範囲)及び高線量率環境(計数率が10cps以上となる環境)下で使用する場合には、半導体放射線検出器1から出力されるアナログパルス信号15が高速になるため、アナログデジタル変換器2としては、高速のサンプリング周期の機能を有するアナログデジタル変換器を用いる必要がある。具体的には、半導体放射線検出器1から出力されるアナログパルス信号15が高速になると、出力されるアナログパルス信号の数が増加して半導体放射線検出器1からアナログパルス信号が出力される間隔が短くなるため、アナログデジタル変換器2としてサンプリング周期の短いアナログデジタル変換器を用いる。例えば、半導体放射線検出器1として、Ge放射線検出器を用いた場合には、通常、12bit以上の分解能で放射性核種9の定量分析及びエネルギー分析を実施する。
【0030】
アナログデジタル変換器2は、1つのアナログパルス信号15に対して、5つのサンプル点でデジタルパルス信号46を出力する(図5の上段参照)。図5の下段は、1つのアナログパルス信号15における、3つのサンプル点でのデジタルパルス信号46を示している。図5の上段及び下段の各実線は、アナログパルス信号15を示している。アナログデジタル変換器2のアナログ/デジタル変換により、連続したアナログパルス信号15のデータを離散値(各デジタルパルス信号46の電圧)として取り扱うため、1つのアナログパルス信号15のサンプル点の数により、後述する放射線エネルギーの算出値(例えば、図4に示す加算値23)に誤差が生じる。規格化した連続データ(アナログデジタル信号15)に対する離散データ(各デジタルパルス信号46)の誤差を0.1%以下にするためには、デジタルパルス信号46を生成するサンプル点の数を5点以上にする必要がある。これにより、あるアナログパルス信号15の放射線エネルギーに対する、そのアナログ信号15に対する5以上のサンプル点でのデジタルパルス信号46の加算により求めた放射線エネルギーの誤差を、0.1%以下にすることができる。
【0031】
半導体放射線検出器1から出力されたアナログパルス信号15の各サンプル点の電圧値は、半導体放射線検出器1で検出された放射線10のエネルギーと相関を有するので、半導体放射線検出器1に入射される放射線10のエネルギーが既知であれば、1つのアナログパルス信号15当たりのサンプル点の数の制御は容易に可能である。サンプル点の周期はデジタル処理回路(スレッショルド回路3、デジタル信号加算回路4及びスペクトル生成回路5)で決定されているので、1つのアナログパルス信号の処理時間を固定することで、サンプル点の数の制御が可能である。サンプル点の数の制御は、例えば、決定されたサンプル点の周期に基づいて、アナログデジタル変換器2で行われる。1つのアナログパルス信号15当たりのサンプル点の数を5以上にすることによって、放射線核種9の高精度の定量分析及びエネルギー分析を行うことができる。本実施例におけるサンプル点の数は5である(図4の上段参照)。
【0032】
スレッショルド回路の代表的な方式として、リーディングエッジタイミング方式及びコンスタントフラクションタイミング方式がある。本実施例で使用するスレッショルド回路3は、リーディングエッジタイミング方式を適用したスレッショルド回路である。このスレッショルド回路3は、スレッショルド値19を設定している(図3及び図4参照)。アナログデジタル変換器2から出力されたデジタルパルス信号46を入力したスレッショルド回路3は、そのスレッショルド値19を超えた電圧を有するデジタルパルス信号46を、弁別してデジタル信号加算回路4に出力する(図4の上段参照)。
【0033】
リーディングエッジタイミング方式を適用したスレッショルド回路は、放射線検出器から出力された放射線検出信号の波高値が閾値を超えたか否かで弁別する最も簡単な弁別方式であり、放射線計測以外の多数の分野の計測装置に一般的に用いられている。また、コンスタントフラクションタイミング方式を適用したスレッショルド回路は、放射線検出器から出力された放射線検出信号のパルス波高の立ち上がり時間が異なる場合に用いられる。コンスタントフラクションタイミング方式を適用したスレッショルド回路によって、放射線検出信号に入力される放射線のエネルギーに依存しない放射線検出信号の波高弁別が可能になる。
【0034】
デジタル信号加算回路である、デジタルパルス信号46を加算するデジタル信号加算回路4の作用について説明する。デジタル信号加算回路4は、スレッショルド回路3から出力された各デジタルパルス信号46(図4の上段参照)を入力し、各デジタルパルス信号46のそれぞれの電圧を加算して加算値23を算出する(図4の下段参照)。この加算値23の算出は以下のように行われる。
【0035】
図4において、加算開始時間(積分開始時間)21はこの1つのアナログパルス信号15に対するデジタルパルス信号46がスレッショルド値19を超えたときの時刻であり、加算時間(積分時間)22は、この時刻から、その1つのアナログパルス信号15に対する最も大きなデジタルパルス信号の後でデジタルパルス信号46がスレッショルド値19に低下するまでの時間である。1つのアナログパルス信号15に対するデジタルパルス信号46がスレッショルド値19を超えたときの第1時刻(加算開始時間21)、及びその1つのアナログパルス信号15に対する最も大きなデジタルパルス信号の後でデジタルパルス信号46がスレッショルド値19に低下した第2時刻が、スレッショルド回路3からデジタル信号加算回路4に入力される。第2時刻と第1時刻の差(1つのアナログパルス信号15に対するデジタルパルス信号がスレッショルド値以上になっている時間にほぼ等しい)が加算時間22である。
【0036】
デジタル信号加算回路4は、1つのアナログパルス信号15に対して、加算開始時間21以降で加算時間22の間に入力した5点のデジタルパルス信号46のそれぞれの電圧を加算することによって、加算値23を算出する。図4の下段に示された実線16は、加算時間22内に存在する5つのサンプル点でのデジタルパルス信号46の各電圧が加算された状態において、これらのデジタルパルス信号46を結んだ線である。加算値23の算出は、半導体放射線検出器1から出力されたアナログパルス信号15のうち、スレッショルド値19を超える電圧を有する各アナログパルス信号15に対して行われる。加算値23は、グラウンドレベル20との差分である。なお、算出された加算値23は、半導体放射線検出器1から1つのアナログパルス信号15を出力させる、半導体放射線検出器1に入射された放射線10のエネルギーに相当する。
【0037】
デジタル信号加算回路4は、アナログパルス信号15において5点のサンプル点でデジタルパルス信号46を生成し、これらのデジタルパルス信号を加算して加算値23を求めている。このため、デジタル信号加算回路4は、近似的に、それぞれのアナログパルス信号15の積分値を求めていることになる。アナログデジタル変換器2において各アナログパルス信号15をデジタルパルス信号46に変換するサンプル点の数を6以上にすることによって、上記の積分値は、アナログパルス信号15の積分値により近くなる。
【0038】
デジタル信号加算回路4で算出された、それぞれのアナログパルス信号15に対する5点のデジタルパルス信号46の電圧の加算値23が、スペクトル生成回路5に入力される。スペクトル生成回路5は、放射性核種9から放出される放射線10を測定する所定の測定時間の間に半導体放射線検出器1から出力されたそれぞれのアナログパルス信号15に対する加算値23を、1つのアナログパルス信号に対する加算値23を一個として、加算値23の値ごとにカウントする。加算値23のカウント値(計数値)は、半導体放射線検出器1から出力されたアナログパルス信号15の計数値、すなわち、半導体放射線検出器1に入射された放射線10の計数値を示している。加算値23を加算値23の値ごとにカウントすることは、半導体放射線検出器1に入射された放射線10、具体的には、半導体放射線検出器1から出力されたアナログパルス信号15を、入射した放射線10のエネルギーごとにカウントすることに該当する。
【0039】
スペクトル生成回路5は、1つのアナログパルス信号に対する加算値23を一個として、算出された加算値23(半導体放射線検出器1に入射された放射線10のエネルギー)ごとにカウントした加算値23の計数値に基づいて、放射線エネルギースペクトルの情報(図6参照)を作成する。図6に示された放射線エネルギースペクトルの例は、光電ピーク24及びコンプトン分布26を有している。図6の縦軸は計数値を示し、横軸は加算値(半導体放射線検出器1に入射した放射線10のエネルギーに相当)23を示している。
【0040】
放射線エネルギースペクトルの情報を用いてスペクトル生成回路5で実行される放射性核種9の定量分析及びエネルギー分析について、説明する。
【0041】
まず、エネルギー分析について説明する。放射線エネルギースペクトルにおいて、光電ピーク24、及びコンプトン分布26のコンプトン端25は、半導体放射線検出器1に入射した放射線10のエネルギーと相関がある。このため、光電ピーク24のピーク中心エネルギー28は、半導体放射線検出器1に入射した放射線10の全エネルギーであると近似でき、コンプトン端25のコンプトン端エネルギー29に基づいて放射線10の全エネルギーを評価することができる。
【0042】
複数の光電ピーク24及び複数のコンプトン端25が放射線エネルギースペクトルに存在する場合には、いずれかの光電ピーク24またはいずれかのコンプトン端25が既知であれば、一般に実施されている一次関数もしくは二次関数によるフィティングによって、ピーク中心エネルギー28及びコンプトン端エネルギー29を、スペクトル生成回路5において算出することができる。
【0043】
次に、スペクトル生成回路5で実行される放射性核種9の定量分析について説明する。また、ピーク中心エネルギー28に基づいて半導体放射線検出器1に入射された放射線10を放出する放射性核種9の種類が同定される。さらに、同定された放射性核種9に対するネット計数値27を、光電ピーク24に基づいて、知られている一般的な手法を用いて算出する。さらに、この算出されたネット計数値領域27の面積を、放射性核種9が放射する各エネルギー放射線の放射率、及び半導体放射線検出器1の幾何効率、半導体放射線検出器1の放射線10の検出効率、放射線核種9の放射線放射率及び半導体放射線検出器1の放射線遮へい条件等の補正効率を加えることによって、同定された放射性核種9を定量化することができる。
【0044】
スペクトル生成回路5は、得られた放射性核種9の定量分析及びエネルギー分析の結果の情報等を表示装置6に出力する。表示装置6はこれらの情報等を表示する。表示装置6に表示された表示情報の一例を図7に示す。この表示情報は、ディスクリミネータ条件、及び加算時間等の加算処理設定パラメータ、エネルギースペクトルで取得できる光電ピーク等のROI(Region of Interest:関心領域)を設定するROI設定パラメータ、測定時間及び測定回数等を設定する測定設定パラメータ、半導体放射線検出器1の幾何効率、放射線10の検出効率及び半導体放射線検出器1の放射線遮へい条件等の補正効率を設定する定量分析設定パラメータ、及び測定結果であるインプット計数率、スループット計数率、各ROIのピーク中心エネルギー、エネルギー分解能、ネット計数率、定量分析結果及び放射線エネルギースペクトルの情報を含んでいる。
【0045】
本実施例によれば、アナログパルス信号15ごとに、スレッショルド回路3から出力された、スレッショルド値19を超えた各サンプル点のデジタルパルス信号46を、デジタル信号加算回路4において、加算するので、半導体放射線検出器1が有する時間分解能を維持しつつ、半導体放射線検出器1から出力された各アナログパルス信号15が有している放射線エネルギー情報(加算値23)を得ることができる。さらに、本実施例は、スペクトル生成回路5において、デジタル信号加算回路4で得られた放射線エネルギー情報(加算値23)を用いることにより、放射線エネルギースペクトルの情報を、放射線を測定しながら作成する、すなわち、リアルタイムで作成することができ、放射性核種9の定量分析及びエネルギー分析を容易にかつ精度良く行うことができる。
【0046】
上記した効果を得ることができる本実施例の放射線計測装置8は、半導体放射線検出器1が有する時間分解能等の性能を最大限に生かして、高計数率環境での放射線10の測定を行うことができ、放射性核種9の定量分析及びエネルギー分析を精度良くかつ短時間に行うことができる。このため、本実施例の放射線計測装置8は、放射線10の測定時間を短縮することができる。また、放射線計測装置8が高計数率環境での放射線10の測定ができるので、半導体放射線検出器1の放射線遮へい体の厚みを薄くすることができる。このため、放射線遮へい体を含む半導体放射線検出器1の小型化及び軽量化を図ることができる
本実施例は、デジタル信号加算回路4の前段にアナログデジタル変換器2を配置し、デジタル信号加算回路4がアナログデジタル変換器2で生成されたデジタルパルス信号46を入力するので、デジタル信号加算回路4及びこれよりも後段の各回路における信号処理をデジタル処理にすることができ、他機器、例えば、表示装置との接続、すなわち情報の受け渡しが容易になる。また、デジタル信号加算回路4の前段にアナログデジタル変換器2を配置することによって、アナログパルス信号を早い段階でデジタル化することができ、誘導ノイズ等の電気ノイズに対する耐ノイズ性能が向上する。
【0047】
本実施例では、1つのアナログパルス信号15において、デジタルパルス信号46を生成するサンプル点の数を5点にしているので、連続したアナログパルス信号15に対して、離散値である各デジタルパルス信号46の電圧を用いて求めたそのアナログパルス信号15の放射線エネルギー(加算値23)の誤差を、0.1%以下に抑えることができる。
【0048】
本実施例は、スレッショルド回路3を備えているため、このスレッショルド回路3により、電気ノイズ及び測定対象以外の放射性核種に起因した信号を除去することができる。このため、スレッショルド回路3から出力されたデジタルパルス信号46を入力するデジタル信号加算回路4は、測定対象の放射線核種9から放出された放射線10の放射線エネルギー(加算値23)を精度良く求めることができる。また、シュレッショルド値19を超えるデジタルパルス信号46がスレッショルド回路3から出力されるので、デジタル信号加算回路4及びスペクトル生成回路5に入力される不必要な情報が低減される。このため、デジタル信号加算回路4及びスペクトル生成回路5に対する負荷が軽減される。
【0049】
本実施例では、1つのアナログパルス信号15に対するデジタルパルス信号46がスレッショルド値19を超えたときの第1時刻を、デジタル信号加算回路4におけるデジタルパルス信号46の加算開始時間21にしているので、デジタル信号加算回路4でのそのアナログパルス信号15に対する各デジタルパルス信号46の加算処理を、スレッショルド回路3におけるそれらのデジタルパルス信号46の波高弁別処理と同期させて行うことができる。このため、本実施例では、より精度の高い放射性核種9の定量分析及びエネルギー分析を行うことができる。
【0050】
本実施例によれば、半導体放射線検出器1の出力であるアナログパルス信号15を前置増幅器17に入力しているので、アナログパルス信号15のシグナルノイズ比(SN比)を改善することができ、分解能がより高い、放射線核種の定量分析及びエネンルギー分析が可能になる。
【0051】
本実施例の放射線計測装置8のスペクトル生成回路5において、横軸が1つのアナログパルス信号15に対する複数のデジタルパルス信号46の加算値23であって縦軸が計数値である放射線エネルギースペクトルの情報を作成するため、一般的な放射線エネルギースペクトルとして用いられる波高値スペクトル(横軸が放射線検出信号の波高値)と同等の放射線エネルギースペクトル情報を生成することができる。
【0052】
本実施例では、スペクトル生成回路5で実行される放射性核種9の定量分析及びエネルギー分析は、放射線エネルギースペクトルの情報に基づいて得られた光電ピーク24のピーク中心エネルギー28またはコンプトン端25のコンプトン端エネルギー29を用いて行われるため、放射線10及び半導体放射線検出器1の相互作用に基づいた放射線核種9の定量分析及びエネルギー分析を行うことができる。
【実施例2】
【0053】
本発明の他の実施例である実施例2の放射線計測装置を、図8を用いて説明する。本実施例の放射線計測装置8Aは、実施例1の放射線計測装置8において半導体放射線検出器1をシンチレーション検出器(放射線検出器)13に替え、前置増幅器17を削除した構成を有する。放射線計測装置8Aの他の構成は実施例1の放射線計測装置8と同じである。
【0054】
放射線計測装置8Aは、シンチレーション検出器13、放射線計測回路7及び表示装置6を備えている。シンチレーション検出器13は、シンチレータ11及び光検出器12を有する。放射線10を検出するシンチレータ11が光検出器12に光学接着され、光検出器11がアナログデジタル変換器2に接続される。
【0055】
放射線を検出してシンチレーション光を発生するシンチレータ11として、NaI(Tl),BGO,GSO,LSO,YAP,LuAG(Pr),LaBr(Ce),CsI,またはPWOで作られたシンチレータが用いられる。特に、高計数率及び高線量率環境で使用する場合には、発光減衰時間が短いシンチレータが必要になる。発光減衰時間が100ns以下のシンチレータとして、LaBr(Ce),LaCl(Ce),LSO(Ce),YAG,GSO(Ce),PWO,CeF,LuAG(Pr)またはLuAg(Ce)で作られたシンチレータがある。
【0056】
光検出器12は、シンチレータ11で発生したシンチレーション光を入力して、このシンチレーション光を電気信号に変換する。光検出器12として、光電子増倍管、フォトダイオードまたはアパランシェフォトダイオードを用いる。
【0057】
信号処理の高速性が要求される本実施例では、光検出器12として光電子増倍管を用いており、光電子増倍管から出力されるアナログパルス信号15の電圧が高いので、実施例1で用いた前置増幅器17は不要である。光検出器12として光電子増倍管を用いる場合でも、信号処理の高速性を少し犠牲にしてSN比の向上を目指す場合には、光電子増倍管を、前置増幅器17を介してアナログデジタル変換器2に接続しても良い。また、光検出器12としてフォトダイオードを用いた放射線計測装置8Aでは、フォトダイオードから出力されるアナログパルス信号15の電圧が低いので、このフォトダイオードの出力端に前置増幅器17を接続し、この前置増幅器17をアナログデジタル変換器2に接続する必要がある。
【0058】
放射性核種9から放出された放射線10がシンチレータ11に入射されたとき、シンチレータ11はシンチレーション光を発する。このシンチレーション光が光検出器12に入射され、光検出器12はシンチレーション光を電気信号であるアナログパルス信号15に変換してこのアナログパルス信号15を出力する。出力されたアナログパルス信号15は、放射線計測回路7のアナログデジタル変換器2に入力される。本実施例の放射線計測装置8Aにおけるアナログデジタル変換器2、スレッショルド回路3、デジタル信号加算回路4及びスペクトル生成回路5のそれぞれは、実施例1の放射線計測装置8におけるアナログデジタル変換器2、スレッショルド回路3、デジタル信号加算回路4及びスペクトル生成回路5のそれぞれで実施される処理を実行する。
【0059】
この結果、本実施例は、実施例1と同様に、デジタル信号加算回路4においてスレッショルド回路3から出力された各デジタルパルス信号46の電圧を加算して加算値23を算出し、スペクトル生成回路5はこれらの加算値23を用いて放射線エネルギースペクトルの情報を作成して放射性核種9の定量分析及びエネルギー分析を実施する。
【0060】
本実施例も、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
【0061】
放射線計測装置8Aを高計数率(10cps以上の計数率の範囲)及び高線量率環境下で使用する場合には、光検出器12から出力されるアナログパルス信号15が高速になるため、アナログデジタル変換器2としては、高速のサンプリング周期の機能を有するアナログデジタル変換器を用いる必要がある。例えば、100ns以下の発光減衰時間を有するシンチレータ11を用いる場合には、アナログデジタル変換器2として、50MHz以上のサンプリング周期を有するアナログデジタル変換器を用いるとよい。50MHz以上のサンプリング周期を有するアナログデジタル変換器2を用いることによって、光検出器12からアナログデジタル変換器2にアナログパルス信号15を出力する周期を20nsにすることができるため、シンチレーション検出器13に100ns以下の発光減衰時間を有するシンチレータ11を用いた場合であっても、そのアナログデジタル変換器2は、光検出器12から出力される100ns以下のパルス時間幅を有する高速のアナログパルス信号15を入力しても、デジタルパルス信号46に変換することができる。したがって、100ns以下の発光減衰時間を有するシンチレータ11を用いた場合であっても、10bit以上の分解能で放射性核種9の定量分析及びエネルギー分析を実施することができる。100ns以下の発光減衰時間を有するシンチレータ11を用いる場合には、アナログデジタル変換器2として、サンプリング周期が実現できる範囲である50MHz〜2GHzの範囲内でサンプリング周期を有するアナログデジタル変換器を用いることが望ましい。
【0062】
シンチレーション検出器13に100ns以下の発光減衰時間を有するシンチレータ11を用いた場合には、10cps以上の高計数率環境または数mSv/h以上の高線量率環境下にある領域にシンチレーション検出器13が配置されている放射線計測装置8Aでも、精度の高い、放射性核種9の定量分析及びエネルギー分析を行うことができる。
【実施例3】
【0063】
本発明の他の実施例である実施例3の放射線計測装置を、図9を用いて説明する。本実施例の放射線計測装置8Bは、実施例1の放射線計測装置8において半導体放射線検出器1をダイヤモンド放射線検出器14に替えた構成を有する。放射線計測装置8Bの他の構成は実施例1の放射線計測装置8と同じである。
【0064】
ダイヤモンド放射線検出器14は、検出素子に半導体を用いている半導体放射線検出器1と異なり、検出素子にダイヤモンドを用いている。しかし、ダイヤモンド放射線検出器14は、半導体放射線検出器1と同様に、その検出素子に電圧を印加し、入射した放射線10との相互作用で検出素子内に発生した電子を検出素子に設けた1つの電極に集め、その相互作用で検出素子内に発生した正孔をその検出素子に設けた他の電極に集め、それらの電極間に生じる電位をアナログパルス信号15として出力する機能を有している。
【0065】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
【実施例4】
【0066】
本発明の他の実施例である実施例4の放射線計測装置を、図10を用いて説明する。本実施例の放射線計測装置8Cは、実施例1の放射線計測装置8において放射線計測回路7を放射線計測回路7Aに替えた構成を有する。放射線計測装置8Cの他の構成は実施例1の放射線計測装置8と同じである。
【0067】
放射線計測回路7Aは、アナログデジタル回路2及び書き換え可能なゲートアレイ(Field programmable gate array)30を有する。書き換え可能なゲートアレイを、以下においてFPGAと称する。FPGA30は、放射線計測回路7に用いられるスレッショルド回路3、デジタル信号加算回路4及びスペクトル生成回路5の各機能を有し、スレッショルド回路3、デジタル信号加算回路4及びスペクトル生成回路5の各機能をそれぞれプログラムにより構築している。本実施例において、プログラムにより構築されたスレッショルド回路3、デジタル信号加算回路4及びスペクトル生成回路5の各機能を、便宜的に、スレッショルド回路3、デジタル信号加算回路4及びスペクトル生成回路5と称する。
【0068】
スレッショルド回路3、デジタル信号加算回路4及びスペクトル生成回路5のそれぞれにおける設定パラメータは、半導体放射線検出器1で測定する放射線10の種類に応じて変更する必要がある。しかしながら、放射線計測装置8CはFPGA30を用いているので、半導体放射線検出器1で測定する放射線10の種類を変える場合、例えば、γ線の測定をα線に変える場合には、FPGA30におけるスレッショルド回路3、デジタル信号加算回路4及びスペクトル生成回路5のそれぞれのγ線の設定パラメータを、α線の設定パラメータに変更することにより、放射線計測装置8Cでα線を測定することができる。
【0069】
放射線計測装置8Cでは、半導体放射線検出器1から出力されたアナログパルス信号15が、前置増幅器17を介してアナログデジタル変換器2に入力されてデジタルパルス信号46に変換される。このデジタルパルス信号46がFPGA30に入力され、FPGA30にいて、実施例1と同様に、スレッショルド回路3、デジタル信号加算回路4及びスペクトル生成回路5のそれぞれの処理が順次実行される。表示装置6には、例えば、図7に示すそれぞれの表示情報が表示される。
【0070】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例は、FPGA30を備えているので、半導体放射線検出器1で測定する放射線10の種類に応じて設定パラメータを変更することができる。このため、放射線計測装置8Cは、違う放射線10を放出する放射線核種の定量分析及びエネルギー分析を容易に行うことができる。
【0071】
実施例2の放射線計測装置8A及び実施例3の放射線計測装置8Bにおいて、放射線計測回路7のスレッショルド回路3、デジタル信号加算回路4及びスペクトル生成回路5を、FPGA30に置き換えてもよい。この場合には、それぞれのFPGA30において、シンチレーション検出器13またはダイヤモンド放射線検出器14に対する設定パラメータを容易に設定することができる。
【実施例5】
【0072】
本発明の他の実施例である実施例5の放射線計測装置を、図1及び図11を用いて説明する。本実施例の放射線計測装置は、実施例1の放射線計測装置8と実質的に同じ構成を有する。本実施例の放射線計測装置は、放射線計測装置8とは、デジタル信号加算回路4の処理が異なっているだけである。
【0073】
本実施例の放射線計測装置では、半導体放射線検出器1から出力されたアナログパルス信号15は、前置増幅器17で増幅された後に、アナログデジタル変換器2に入力されてデジタルパルス信号46に変換される。このデジタルパルス信号46がスレッショルド回路3に入力される。スレッショルド回路3はスレッショルド値19を超えるデジタルパルス信号46を出力する。
【0074】
本実施例で用いられるデジタル信号加算回路4は、実施例1において用いられるデジタル信号加算回路4と異なり、加算時間が加算時間33に予め設定されている。本実施例で用いられるデジタル信号加算回路4は、スレッショルド回路3でアナログパルス信号15に対するデジタルパルス信号46がスレッショルド値19を超えたときの第1時刻を加算開始時間21とし(図11の上段参照)、この加算開始時間21を起点として加算時間33が経過するまでの間で、1つのアナログパルス信号15に対するデジタルパルス信号46をそれぞれ加算する。この加算により、1つのアナログパルス信号15に対するデジタルパルス信号46の加算値34が、デジタル信号加算回路4で算出される(図11の下段参照)。図11の下段に示された実線16Aは、加算時間33内に存在する5つのサンプル点でのデジタルパルス信号46の各電圧が加算された状態において、これらのデジタルパルス信号46を結んだ線である。
【0075】
スペクトル生成回路5は、その加算値34を入力し、加算値23を入力する実施例1のスペクトル生成回路5と同様に、放射線エネルギースペクトルの情報を作成し、放射線10を放出する放射性核種9の定量分析及びエネルギー分析を行う。
【0076】
本実施例で用いられるデジタル信号加算回路4に設定された加算時間33は、常に一定であるため、実施例1に用いられるデジタル信号加算回路4で使用される加算時間22と異なり、アナログデジタル信号15のパイルアップを防ぐことができる。
【0077】
このパイルアップについて説明する。半導体放射線検出器1に短時間の間に複数、例えば2つの放射線10が入射された場合には、図12に示すように、2つのアナログパルス信号が重なっている状態であるピークを2つ有するアナログパルス信号15Aが、半導体放射線検出器1から出力される。図12において、アナログパルス信号15Aはパイルアップしている信号の一例を示し、アナログパルス信号15B,15Cはパイルアップしていない信号の例を示している。図12の上段である(A)に示されるように、実施例1では、アナログパルス信号15Aがスレッショルド値19を超える第1時刻(加算開始時間21)から、このアナログパルス信号15Aがスレッショルド値19まで低下した第2時刻までの間の時間が、デジタル信号加算回路4で加算処理を行う加算時間22になる。複数、例えば、2つのアナログパルス信号が重なってパイルアップが生じた場合には、加算時間22が、図4に示される、ピークが1つ存在する1つのアナログパルス信号に対する加算時間21よりも長くなる。
【0078】
本実施例では、図12の下段である(B)に示されるように、加算開始時間21を起点とする加算時間33がデジタル信号加算回路4に予め設定されている。このため、デジタル信号加算回路4で加算処理された、アナログパルス信号15Aに対する複数のデジタルパルス信号46の加算値34は、アナログパルス信号15Aの1つ目のピークのテイル部につながる2つ目のピークを形成する部分に対する複数のデジタルパルス信号46を含んでいない。このように、本実施例は、パイルアップが生じても、放射性核種9の定量分析及びエネルギー分析を精度良く行うことができる。特に、パイルアップが生じやすい高計数率環境の領域に半導体放射線検出器1を配置しても、精度の高い、放射性核種9の定量分析及びエネルギー分析を行うことができる。
【0079】
さらに、本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
【0080】
実施例2〜4のそれぞれにおいて、本実施例と同様に、加算時間33を予め設定してもよい。
【実施例6】
【0081】
本発明の他の実施例である実施例6の放射線計測装置を、図1及び図13を用いて説明する。本実施例の放射線計測装置は、実施例1の放射線計測装置8と実質的に同じ構成を有する。本実施例の放射線計測装置は、放射線計測装置8とは、スレッショルド回路3及びデジタル信号加算回路4の各処理が異なっているだけである。
【0082】
本実施例の放射線計測装置では、半導体放射線検出器1から出力されたアナログパルス信号15は、前置増幅器17で増幅された後に、アナログデジタル変換器2に入力されてデジタルパルス信号46に変換される。このデジタルパルス信号46がスレッショルド回路3に入力される。
【0083】
まず、本実施例の放射線計測装置におけるスレッショルド回路3の処理について説明する。スレッショルド回路3には、図13の上段に示すアナログパルス信号15ごとに5つのサンプル点でのデジタルパルス信号46を入力する。スレッショルド回路3は、これらのデジタルパルス信号46を用いて該当するアナログパルス信号15の近似的な微分波形18(図13の中段参照)を求めるとともに、微分波形18が微分スレッショルド値30を超えたときの第3時刻(加算開始時間36)と微分波形18のグラウンドレベル20と交差する2つ目のゼロクロス点32での第4時刻の間の時間(後述の加算時間34に相当)内に存在するデジタルパルス信号46を弁別する。そして、スレッショルド回路3は、該当するアナログパルス信号15において、第3時刻と第4時刻の間に存在して弁別された複数のデジタルパルス信号46を、デジタル信号加算回路4に出力する。アナログパルス信号15の近似的な微分波形は、例えば、該当するデジタルパルス信号46を用いて、隣り合う2点のデジタルパルス信号46の差分値を微分値として求めるとよい。
【0084】
デジタル信号加算回路4は、第4時刻と第3時刻の差を加算時間34とし、この加算時間34内に存在する、スレッショルド回路3から入力した複数のデジタルパルス信号46を加算して加算値35を算出する(図13の下段参照)。この加算値35は、グラウンドレベル20を基準にした値である。図13の下段に示された実線16Bは、加算時間34内に存在する5つのサンプル点でのデジタルパルス信号46の各電圧が加算された状態において、これらのデジタルパルス信号46を結んだ線である。
【0085】
スペクトル生成回路5は、その加算値35を入力し、加算値23を入力する実施例1のスペクトル生成回路5と同様に、放射線エネルギースペクトルの情報を作成し、放射線10を放出する放射性核種9の定量分析及びエネルギー分析を行う。
【0086】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
【0087】
本実施例は、各アナログパルス信号15に対してスレッショルド回路3から入力した複数のデジタルパルス信号46を用いて微分波形18を求めるので、以下の効果を得ることができる。半導体放射線検出器1から出力されるアナログパルス信号15は、図14の上段に示すように、電気ノイズである高周波信号37及び低周波信号38を含んでいる。高周波信号37及び低周波信号38はアナログ信号である。スレッショルド回路3よって前述したようにアナログパルス信号15に対する微分波形18を求めるとき、高周波信号37に対する微分波形40及び低周波信号38に対する微分波形41も求められる。微分波形40及び微分波形41は、微分スレッショルド上限値42及び微分スレッショルド下限値43を用いてスレッショルド回路3で分離される。
【0088】
微分スレッショルド上限値42及び微分シュレッショルド下限値43(図14の下段参照)が、放射線10を測定する前において、予めスレッショルド回路3に設定されている。スレッショルド回路3は、アナログパルス信号15に対する微分波形18のうち、微分スレッショルド上限値42と部分シュレッショルド下限値43の間に入る微分波形18をデジタル信号加算回路4に出力する。アナログパルス信号15に比べて立ち上がり時間及び立下り時間が短い高周波信号37では、波高値レベルがアナログパルス信号15と同等であっても、微分波形40のレベルは、微分波形18のレベルと比較して大きくなる。また、アナログパルス信号15に比べて立ち上がり時間及び立下り時間が長い低周波信号38では、波高値レベルがアナログパルス信号15と同等であっても、微分波形41のレベルは、微分波形18のレベルと比較して小さくなる。このため、スレッショルド値19によってアナログパルス信号15と弁別できない高周波信号37及び低周波信号38は、立ち上がり時間及び立下り時間の長短によってアナログパルス信号15と弁別することができる。したがって、高周波信号37及び低周波信号38を除去できる本実施例は、耐ノイズ性能に優れ、精度の高い放射性核種9の定量分析及びエネルギー分析を行うことができる。
【0089】
実施例2〜5のそれぞれにおいて、本実施例におけるスレッショルド回路3及びデジタル信号加算回路4の各処理を適用してもよい。
【実施例7】
【0090】
本発明の他の実施例である実施例7の放射線計測装置を、図1及び図15を用いて説明する。本実施例の放射線計測装置は、実施例1の放射線計測装置8と実質的に同じ構成を有する。本実施例の放射線計測装置は、放射線計測装置8とは、前置増幅器17の処理が異なっているだけである。
【0091】
半導体放射線検出器1から出力されたアナログパルス信号15(図15参照)が、前置増幅器17に入力される。このアナログパルス信号15は、図15に示す時間幅46を有している。前置増幅器17は、入力した、時間幅46を有するアナログパルス信号15を、立ち上がり時間48を有するアナログパルス信号である前置増幅器出力信号47に整形する。前置増幅器出力信号47の立ち上がり時間48は時間幅46以下になっている。
【0092】
アナログパルス信号である前置増幅器出力信号47は、実施例1と同様に、アナログデジタル変換器2に入力され、5つのサンプル点でデジタルパルス信号15Aに変換される。各アナログ信号15に対するそれぞれのデジタルパルス信号15Aが、スレッショルド回路4に入力されて実施例1のように弁別され、デジタル信号加算回路4で加算される。スペクトル生成回路5は、デジタル信号加算回路4から出力された加算値を用いて放射線エネルギースペクトル情報を作成し、放射性核種9の定量分析及びエネルギー分析を行う。
【0093】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例は、前置増幅器出力信号47の立ち上がり時間48を時間幅46以下にするので、半導体放射線検出器1の時間分解能を維持することができ、かつ前置増幅器17の設置により前置増幅器出力信号47の耐ノイズ性が向上してエネルギー分解能の維持が可能になる。このため、本実施例は、さらに高精度の放射性核種9の定量分析及びエネルギー分析を行うことができる。
【0094】
実施例4〜6のそれぞれにおいて、本実施例における前置増幅器17の各処理を適用してもよい。
【0095】
前述した実施例1〜7の各放射線計測装置は、原子力プラント等の放射性物質取扱施設、医療用装置、加速器装置及び宇宙用装置における放射線の計測に適用することができる。原子力プラントでは、それらの放射線計測装置は、炉心、原子炉格納容器、一次系配管蒸気発生器及び燃料プール等における放射線モニタとして用いられる。医療用装置では、それらの放射線計測装置は、荷電粒子線(陽子線または重粒子線)治療等の患者への荷電粒子線照射、陽電子断層撮影法(PET)及び単一光子放射断層撮影法(SPECT)等の放射線計測システムに適用される。加速器装置では、それらの放射線計測装置は、粒子線計測用システム、中性子線計測用システム及びビームモニタ等に適用できる。宇宙用装置では、それらの放射線計測装置は、天体観測用システム等に適用される。
【符号の説明】
【0096】
1…半導体放射線検出器、2…アナログデジタル変換器、3…スレッショルド回路、4…デジタル信号加算回路、5…スペクトル生成回路、7,7A…放射線計測回路、8,8A,8B,8C…放射線計測装置、9…放射線核種、10…放射線、11…シンチレータ、12…光検出器、13…シンチレーション検出器、14…ダイヤモンド放射線検出器、30…書き換え可能なゲートアレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検出して放射線検出信号であるアナログパルス信号を出力する放射線検出器と、前記放射線検出器から出力される前記アナログパルス信号ごとに、このアナログパルス信号を複数のデジタル信号に変換するアナログデジタル変換装置と、前記アナログデジタル変換装置から出力される前記複数のデジタル信号を前記アナログパルス信号ごとに加算して前記アナログパルス信号ごとに加算値を求めるデジタル信号加算装置と、これらの加算値を用いて放射線エネルギースペクトルを生成し、この放射線エネルギースペクトルの情報を用いて前記放射線検出器で検出される放射性核種の定量分析及びエネルギー分析を行うスペクトル生成装置とを備えたことを特徴とする放射線計測装置。
【請求項2】
前記アナログパルス信号ごとに、前記アナログデジタル変換装置から出力される前記複数のデジタル信号のうち閾値を超える前記デジタル信号を弁別し、前記アナログパルス信号ごとに、弁別された複数のデジタル信号を前記デジタル信号加算装置に出力するシュレッショルド装置を備えた請求項1に記載の放射線計測装置。
【請求項3】
1つの前記アナログパルス信号においてこのアナログパルス信号の5つ以上のサンプル点を前記デジタル信号に変換する前記アナログデジタル変換装置を備えた請求項2に記載の放射線計測装置。
【請求項4】
前記アナログパルス信号ごとに、前記デジタル信号が前記閾値を超えた時点から、前記閾値を超えた前記弁別された複数のデジタル信号を加算して前記加算値を求める前記デジタル信号加算装置を備えた請求項3に記載の放射線計測装置。
【請求項5】
前記アナログパルス信号ごとに、前記デジタル信号が前記閾値を超えた時点から、予め設定された設定時間内に存在する前記弁別された複数のデジタル信号を加算して前記加算値を求める前記デジタル信号加算装置を備えた請求項3に記載の放射線計測装置。
【請求項6】
前記アナログパルス信号ごとに、前記アナログデジタル変換装置から出力される前記複数のデジタル信号を用いて該当する前記アナログパルス信号の微分波形を求める前記シュレッショルド装置、及び前記微分波形が微分閾値を超えた時点から、前記微分波形がグラウンドレベルと交差する2つ目のクロス点の時点までに存在する前記弁別された複数のデジタル信号を加算して前記加算値を求める前記デジタル信号加算装置を備えた請求項3に記載の放射線計測装置。
【請求項7】
前記スレッショルド装置、前記デジタル信号加算装置及び前記スペクトル生成装置を含む書き換え可能なゲートアレイを備えた請求項1ないし6のいずれか1項に記載の放射線計測装置。
【請求項8】
前記放射線検出器から出力される前記アナログパルス信号を増幅し、増幅した前記アナログ信号を前記アナログデジタル変換装置に出力する前置増幅器を備え、前記前置増幅器が、入力する前記アナログパルス信号を、立ち上がり時間が前記アナログパルス信号の時間幅以下であるアナログパルス信号に整形する請求項1ないし7のいずれか1項に記載の放射線計測装置。
【請求項9】
前記放射線検出器が、半導体放射線検出器、シンチレーション検出器及びダイヤモンド放射線検出器のいずれかである請求項1ないし8のいずれか1項に記載の放射線計測装置。
【請求項10】
前記放射線検出器が前記シンチレーション検出器であるとき、前記アナログデジタル変換装置が、50MHz〜2GHzの範囲内でサンプリング周期を有するアナログデジタル変換装置である請求項9に記載の放射線計測装置。
【請求項11】
放射線を検出した放射線検出器から出力されるアナログパルス信号ごとに、このアナログパルス信号を複数のデジタル信号に変換し、前記複数のデジタル信号を前記アナログパルス信号ごとに加算して前記アナログパルス信号ごとに加算値を求め、これらの加算値を用いて放射線エネルギースペクトルを生成し、前記放射線エネルギースペクトルの情報を用いて前記放射線検出器で検出される前記放射線を放出する放射性核種の定量分析及びエネルギー分析を行うことを特徴とする放射線測定方法。
【請求項12】
前記アナログパルス信号ごとに、前記複数のデジタル信号のうち閾値を超える前記デジタル信号を弁別し、前記アナログパルス信号ごとに、弁別された複数のデジタル信号を用いて前記加算値を求める請求項11に記載の放射線計測方法。
【請求項13】
1つの前記アナログパルス信号においてこのアナログパルス信号の5つ以上のサンプル点を前記デジタル信号に変換する請求項12に記載の放射線計測方法。
【請求項14】
前記アナログパルス信号ごとに、前記デジタル信号が前記閾値を超えた時点から、前記閾値を超えた前記弁別された複数のデジタル信号を加算して前記加算値を求める請求項13に記載の放射線計測方法。
【請求項15】
前記アナログパルス信号ごとに、前記デジタル信号が前記閾値を超えた時点から、予め設定された設定時間内に存在する前記弁別された複数のデジタル信号を加算して前記加算値を求める請求項13に記載の放射線計測方法。
【請求項16】
前記アナログパルス信号ごとに、前記複数のデジタル信号を用いて該当する前記アナログパルス信号の微分波形を求め、前記微分波形が微分閾値を超えた時点から、前記微分波形がグラウンドレベルと交差する2つ目のクロス点の時点までに存在する前記弁別された複数のデジタル信号を加算して前記加算値を求める請求項13に記載の放射線計測装置。
【請求項17】
前記放射線検出器から出力される前記アナログパルス信号を増幅し、この増幅において、入力する前記アナログパルス信号を、立ち上がり時間が前記アナログパルス信号の時間幅以下であるアナログパルス信号に整形する請求項11ないし16のいずれか1項に記載の放射線計測方法。
【請求項18】
前記放射線検出器として、半導体放射線検出器、シンチレーション検出器及びダイヤモンド放射線検出器のいずれかを用いる請求項11ないし17のいずれか1項に記載の放射線計測方法。
【請求項19】
前記放射線検出器として前記シンチレーション検出器を用いるとき、前記アナログパルス信号の前記複数のデジタル信号への変換が、50MHz〜2GHzの範囲内のサンプリング周期で行われる請求項18に記載の放射線計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−233727(P2012−233727A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100824(P2011−100824)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】