説明

放射線計測装置

【目的】 通常の放射線量測定を中断することなく、検出器異常の早期発見および電極生成物の除去を可能にする放射線計測装置を得る。
【構成】 放射線検出器1は電極間に定電圧を印加して形成される電界に放射線を照射し、電極に流れる電流を検出する。可変電圧印加装置2は定電圧およびこれより所定値だけ高い高電圧をそれぞれ瞬時値に含むように周期的に変化する電圧を電極間に印加する。電流読み取り装置4は少なくとも定電圧および高電圧を含む複数の電圧値に対応する電極の電流を周期的に読み取る。判定装置5は定電圧に対する読み取り電流値から放射線量を測定すると共に、定電圧以外の電圧に対する読み取り電流値から放射線検出器1の異常を検出する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は放射線測定装置に係り、特に、装置自体の異常を検出する自己診断に関する。
【0002】
【従来の技術】放射線検出器には、電極間に定電圧を印加して形成される電界に放射線を照射し、電極に流れる電流を検出するものがある。かかる放射線検出器は、電流出力が電極への印加電圧に依存するため、安定した定電圧を供給する必要がある。
【0003】因みに、原子炉内の中性子を測定する核分裂電離箱では、100[V]の安定直流電源から得た電圧を放射線検出器に印加し、中性子量に比例した電流信号を得ている。
【0004】この場合、電流信号は放射線量のみに従って変化するのではなく、電圧や封入ガス圧等にも影響を受ける。そこで、検出器の健全性を確認するため、あるいは、検出器出力に異常が発生した場合の異常原因を追及するため、印加電圧に対する出力特性(前記電離箱では0[V] から300[V]程度まで電圧を変化させてその出力変化)を測定している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述した電圧ー出力特性の測定は、通常の測定を一時中断して行うのが一般的である。従って、数百本の中性子検出器から構成される原子炉の出力領域モニタでは、測定すべき検出器を原子炉出力の監視から一旦外して、出力特性を測定しなければなかった。このため、出力特性測定は異常発生時あるいは定期点検時に限られ、検出器異常の早期発見ができないという問題があった。
【0006】また、電極間に100[V]程度の電圧を印加するこの種の放射線検出器では、電極に突起物が生成され、この突起物を介して電極間放電が発生することがある。この突起物を除去するには通常の電圧に比べて、かなり高い電圧を印加する方法があるが、そのために、一定期間毎に通常の測定を中断しなければならないという問題もあった。
【0007】この発明は上記の問題点を解決するためになされたもので、通常の測定を中断することなく、検出器異常の早期発見および電極生成物の除去を可能にする放射線計測装置を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、電極間に定電圧を印加して形成される電界に放射線を照射し、前記電極に流れる電流を検出する放射線検出器と、前記定電圧およびこれより所定値だけ高い高電圧をそれぞれ瞬時値に含むように周期的に変化する電圧を前記電極間に印加する可変電圧印加装置と、少なくとも前記定電圧および高電圧を含む複数の電圧値に対応する前記電極の電流を周期的に読み取る電流読み取り装置とを備え、前記定電圧に対する読み取り電流値から放射線量を測定すると共に、前記定電圧以外の電圧に対する読み取り電流値から前記放射線検出器の異常を検出するものである。
【0009】
【作用】この発明においては、放射線検出器の電極間に、定電圧およびこれより所定値だけ高い突起物除去用の高電圧をそれぞれ瞬時値に含むように周期的に変化する電圧を印加し、これらの電圧値に対応する電極の電流を周期的に読み取って、放射線量の測定と、放射線検出器の異常を検出するようにしたので、通常の測定を中断することなく、検出器異常の早期発見および電極生成物の除去が可能になる。
【0010】
【実施例】以下、図面に示す実施例に従って本発明を詳細に説明する。図1はこの発明の一実施例の構成を示すブロック図である。同図において、放射線検出器1は中心電極と、殻状電極とでなっている。このうち、殻状電極は接地され、中心電極は可変電圧印加装置2に接続されている。可変電圧印加装置2は放射線検出器1を動作させる定電圧と、電極生成物除去のための高電圧を瞬時値に含んで周期的に変化する電圧、すなわち、図2に示すように、交流電圧に定電圧の100[V]を重畳させた電圧を発生する。また、可変電圧印加装置2の電圧印加経路の電流値を増幅して出力する電流増幅装置3が設けられ、その出力電流が電流読み取り装置4に供給される。電流読み取り装置4は可変電圧印加装置2から同期信号を得て、定電圧および高電圧を含む複数の電圧に対応する多数の電流値をサンプリングし、それぞれ電流値信号S1 ,…,Sn を出力する。そして、判定装置5が電流値信号S1 ,…,Sn に基づいて、放射線量の測定、検出器異常を判定するようになっている。
【0011】上記のように構成された本実施例の動作を以下に説明する。
【0012】放射線検出器1の電極への印加電圧Vと、この電極に流れる電流iとの間には図2(a) に示す関係がある。すなわち、電極空間のガス圧等が所望の値に保たれた「通常」時には、実線に示したように、電流iは電圧Vの小さいときに急速に増大し、その後、電圧Vのかなり広い範囲に亘って電流iは一定となり、さらに電圧Vの大きい範囲で電流iは再び増大する。定電圧の100[V]は電流が平坦になる中間部に定められたものである。そして、電極間のガス圧が変化したような異常時には、それぞれ異常の程度に応じて「異常1」,「異常2」として示したように、電圧Vの変化に対して電流iが変化しない平坦部がなくなり、曲線全体が立上がった特性となる。
【0013】可変電圧印加装置2は図2(b) に示すように、交流電圧に定電圧の100[V]を重畳させた電圧を発生して、放射線検出器1の電極間に印加する。この場合、交流電圧の振幅は、最大電圧時に電極生成物質を除去し得る値が選ばれる。かかる電圧によつて電極に流れる電流は、電流増幅装置3で増幅されて電流読み取り装置4に取り込まれる。
【0014】電流読み取り装置4は可変電圧印加装置2から、例えば、ゼロクロス点毎に発生する同期パルスを受け、正弦波交流電圧の0°,45°,90°, 135°, 180°, 225°, 270°, 315°, 360°の各サンプリング点で電流増幅装置3から出力される電流値S1 ,S2 ,S3 ,S2 ,S1 ,S4 ,S5 ,S4 ,S1 を読み取り、同一の電圧毎に整理して電流値信号を周期的に出力する。
【0015】そこで、判定装置5は、図3に示すように、電流値S1 のデータ系列により定電圧100[V]における電流変化、すなわち、放射線量を測定する一方、S2 ,S3 ,S4 ,S5 の各データ系列から検出器自体の異常を判定する。
【0016】この場合、図4に示した「正常」時の特性曲線から、「異常1」あるいは「異常2」のように特性曲線が全体的に変化したことを確認した上で検出器の異常判定を行う。
【0017】一般に、ガス圧等の変化により電流値S1 が増大傾向にあったとしても、その変化は少ないために検出器の異常と判定し難いが、電流値S2 およびS3 は比較的大きく変動するため検出器の異常を早期に発見することができる。
【0018】一方、定電圧100[V]に重畳させる交流の振幅は、電極表面に形成される突起物を除去し得る大きさに選定され、電流値S3 に対応する電圧が電極間に印加される毎に突起物の除去が行われる。これにより、正確な放射線量の測定が可能となる。
【0019】かくして、この実施例によれば、測定データに影響が及ぶ前に検出器の異常検出ができると共に、通常の測定を中断することなく異常発見および電極生成物の除去が可能になる。
【0020】また、上記実施例では、多数のサンプリング点で電流値を周期的に読み取るため、各電流値の変化率を測定することによって検出器の容量等の変化が測定でき、検出器の破損等を早期に発見できるという効果もある。
【0021】図5は本発明の他の実施例の説明図であり、検出器の電極間に印加する電圧として、定電圧の100[V]に矩形状波を重畳させたものを用い、定電圧と最大電圧を含むように定めた一定の周期で電流値S1 ,S2 を読み取るようにしたものである。これによっても、放射線量の測定と、この測定を中断することなく異常の早期検出および電極生成物の除去とが可能となる。
【0022】
【発明の効果】以上の説明により明らかなようにこの発明によれば、通常の放射線量の測定を中断することなく、検出器異常の早期発見および電極生成物の除去が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の一実施例の動作を説明するために、電圧と電流との関係、ならびに、電圧と時間との関係をそれぞれ示した線図。
【図3】本発明の一実施例の動作を説明するために、電流読み取り値の時間的変化を示した図。
【図4】本発明の一実施例の動作を説明するために、電圧と電流との関係を示した線図。
【図5】本発明の他の実施例を説明するために、電圧と電流との関係、ならびに、電圧と時間との関係をそれぞれ示した線図。
【符号の説明】
1 放射線検出器
2 可変電圧印加装置
3 電流増幅装置
4 電流読み取り装置
5 判定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】電極間に定電圧を印加して形成される電界に放射線を照射し、前記電極に流れる電流を検出する放射線検出器と、前記定電圧およびこれより所定値だけ高い高電圧をそれぞれ瞬時値に含むように周期的に変化する電圧を前記電極間に印加する可変電圧印加装置と、少なくとも前記定電圧および高電圧を含む複数の電圧値に対応する前記電極の電流を周期的に読み取る電流読み取り装置とを備え、前記定電圧に対する読み取り電流値から放射線量を測定すると共に、前記定電圧以外の電圧に対する読み取り電流値から前記放射線検出器の異常を検出することを特徴とする放射線計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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