説明

放射線透視検査装置

【課題】自由に動かすことのできない被検体に対し、観察部分の拡大率と透視方向を自由に操作性よく設定して透視する。
【解決手段】X線管2を位置決めするロボット7と、ロボット7を制御する制御部9と、X線検出器5を位置決めするロボット8と、ロボット8を制御する制御部10と、被検体1の着目点を基準とした被検体座標に基づいたX線焦点Fの位置と透過像の拡大率とに関する透視条件データを受け付けて、透視条件データを実現するためのロボット7の所定の姿勢、およびロボット8の所定の姿勢を計算し、それぞれ制御部9と制御部10に送信するデータ処理部11とより成り、被検体座標に基づいて透視方向と拡大率を変更する放射線透視検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過性の放射線を用いて被検体の内部状態を検査する放射線透視検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透過性の放射線を用いて、被検体を連続して透視して観察することで、内部状態の過渡的変化を調査、あるいは研究することは、従来より行われている。観察対象としては、例えば、人工衛星や航空機等の材料の製造における溶融・凝固過程(特許文献1)、また、溶接現象(特許文献2)、乾留中の石炭充填層(特許文献3)、プリンターのインク等の流れ(特許文献4)、加熱時や通電時の電子デバイス、衝撃時の振舞い、破壊過程、生命現象等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−138073号公報
【特許文献2】特開平8−206833号公報
【特許文献3】特開2000−131247号公報
【特許文献4】特開2004−177212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内部状態の過渡的変化の調査、研究は、近年、調査内容が多様化し、放射線透視検査装置への要求も高度化してきている。
【0005】
この要求として、観察対象の任意の観察部分の拡大撮影や拡大率の変更、また、透視方向の自由な変更、等が求められている。
【0006】
他方、観察対象は、その過渡的変化を乱さないようにするため、検査中に自由に姿勢を変えたり移動させたりできず、可能な動きは極めて制限されたものである。このため、観察部分や透視方向を変える場合、放射線源や放射線検出器を動かさねばならず、従来は、観察部分に光軸を合わせ、拡大率を合わせ、かつ、透視方向を所望の方向に合わせることが非常に困難であった。
【0007】
本発明は、前記課題を鑑みてなされたもので、その目的は、自由に動かすことのできない被検体に対し、観察部分の拡大率と透視方向を自由に操作性よく設定して透視することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の問題を解決するために請求項1記載の発明は、位置決め手段で支持された被検体に対し放射線を放射する放射線源と、前記被検体を透過した前記放射線を検出し、2次元の透過像として出力する放射線検出器と、前記透過像を取り込み記憶および表示を行う画像処理部とを有し、前記被検体の着目点を中心とする前記透過像を得る放射線透視検査装置において、前記放射線源を支持して動かし位置決めする第一のロボットと、前記第一のロボットを所定の姿勢に制御する第一の制御部と、前記放射線検出器を支持して動かし位置决めする第二のロボットと、前記第二のロボットを所定の姿勢に制御する第二の制御部と、前記着目点を基準とした被検体座標に基づいた前記放射線源の放射線焦点の位置と前記透過像の拡大率とに関する透視条件データを受け付けて、前記透視条件データを実現するための前記第一のロボットの所定の姿勢、および前記第二のロボットの所定の姿勢を計算し、それぞれ前記第一の制御部と前記第二の制御部に送信するデータ処理部とより成り、前記被検体座標に基づいて透視方向と拡大率を変更することを要旨とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の放射線透視検査装置において、前記被検体座標は極座標であることを要旨とする。
【0010】
この構成で、自由に動かすことのできない被検体に対し、被検体座標に基づいた放射線焦点の位置と拡大率とに関する透視条件データを入力するだけで、透視方向と拡大率を自由に操作性よく変更して透視できる。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の放射線透視検査装置において、前記データ処理部は、さらに、前記着目点を示す着目点データを受け付けて前記着目点を変更することを要旨とする。
【0012】
この構成で、さらに、被検体の観察部分を容易に変更できる。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の放射線透視検査装置において、前記被検体に対し第二の放射線を放射する第二の放射線源と、前記被検体を透過した前記第二の放射線を検出し、2次元の第二の透過像として出力する第二の放射線検出器と、前記第二の放射線源を支持して動かし位置決めする第三のロボットと、前記第三のロボットを所定の姿勢に制御する第三の制御部と、前記第二の放射線検出器を支持して動かし位置決めする第四のロボットと、前記第四のロボットを所定の姿勢に制御する第四の制御部と、をさらに有し、前記データ処理部は、さらに、前記被検体座標に基づいた前記第二の放射線源の放射線焦点の位置と前記第二の透過像の拡大率とに関する第二の透視条件データを受け付けて、前記第二の透視条件データを実現するための前記第三のロボットの所定の姿勢、および前記第四のロボットの所定の姿勢を計算し、それぞれ前記第三の制御部と前記第四の制御部に送信し、前記画像処理部は、さらに、前記第二の透過像を取り込み記憶および表示を行うことを要旨とする。
【0014】
この構成で、自由に動かすことのできない被検体に対し、被検体座標に基づいた放射線焦点の位置と拡大率とに関する透視条件データを2組入力するだけで、透視方向と拡大率を自由に操作性よく変更して、着目点の2方向透視ができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の放射線透視検査装置において、前記画像処理部は前記透過像および前記第二の透過像を立体視表示することを要旨とする。
【0016】
この構成で、立体視表示で立体視ができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項4記載の放射線透視検査装置において、前記画像処理部は前記透過像および前記第二の透過像から前記被検体の3次元解析を行なうことを要旨とする。
【0018】
この構成で、2方向の透視の連続撮影から、被検体の特徴点の3次元空間での時間的追跡が可能で、被検体の変化の解析ができる。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の放射線透視検査装置において、前記データ処理部は前記透視条件データをグラフィック表示することを要旨とする。
【0020】
この構成で、さらに視認性よく、透視方向と拡大率を変更できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、自由に動かすことのできない被検体に対し、被検体座標に基づいた放射線焦点の位置と拡大率とに関する透視条件データを入力するだけで、観察部分の拡大率と透視方向を自由に操作性よく設定して透視できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一の実施の形態の放射線透視検査装置の構成図。
【図2】第一の実施の形態に係るロボット7(あるいは8)を示す概念図。
【図3】第一の実施形態の被検体1の着目点Pを基準とした被検体座標を表す鳥瞰図。
【図4】本発明の第二の実施の形態の放射線透視検査装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第一の実施形態の構成)
図1は本発明の第一の実施の形態の放射線透視検査装置の構成図である。
【0024】
放射線透視検査装置は、被検体1の内部状態の過渡的変化を透視して観察する装置であり、X線管(放射線源)2と、X線管2から放射されて検出されるX線ビーム(放射線)3の中に被検体1を位置決めする位置決め機構(位置決め手段)4と、被検体1を透過したX線ビーム3を検出し、透過像(透過データ)として出力するX線検出器(放射線検出器)5と、透過像を取り込み記憶および表示を行う画像処理部6と、X線管2を支持して動かし位置決めするロボット(第一のロボット)7、X線検出器5を支持して動かし位置決めするロボット(第二のロボット)8、ロボット7,8をそれぞれ所定の姿勢に制御する制御部(第一および第二の制御部)9,10、および所定の姿勢を計算し制御部9,10に送信するデータ処理部11、より成る。
【0025】
また、他の構成として、X線管2に高電圧を供給する高圧発生器や管電圧・管電流を制御するX線制御器、X線コリメータやX線遮蔽箱等を有するが、図1では省略している。
【0026】
放射線光軸Lは、X線管2から放射されたビーム中の検出されるX線ビーム3の中央線と定義される。
【0027】
X線管2としては、例えば、X線ビーム3の発散点であるX線焦点(放射線焦点)Fの大きさが1μm程度のマイクロフォーカスX線管を用いる。
【0028】
X線検出器5は、2次元の分解能でX線を検出するもので、例えば、X線像を可視光像に変換するX線II(イメージインテンシファイア)と、この可視光像を撮影してデジタルデータとしての透過像を出力する撮像カメラ、及びX線IIと撮像カメラを制御する検出器制御部、等より成る。また、X線検出器5は、フラットパネルディテクタ等であってもよい。
【0029】
図2はロボット7(あるいは8)を示す概念図である。ロボット7,8は例えば6つの関節を持ち、6軸駆動される。ロボットの姿勢は6つの軸の回転位置(β1〜β6)で表される。なお、この6つの回転位置(β1〜β6)を姿勢、あるいは姿勢の信号と呼ぶことにする。
【0030】
機構制御部9,10はそれぞれデータ処理部11から送信された姿勢(各軸の回転位置信号)に合致するようにロボット7,8の姿勢を制御する。
【0031】
データ処理部11は、例えば、通常のコンピュータであり、CPU、メモリ、インターフェース、キーボードやマウスなどの入力部11a、表示部11b、などを持つ。データ処理部11は、プログラムに基づいてCPUが実行する機能ブロックとしては、条件設定部11c、座標変換部11d等を持つ。
【0032】
条件設定部11cは、操作者が入力部11aから入力する、被検体1の着目点Pを基準とした所定の被検体座標に基づいたX線焦点Fの位置と透過像の拡大率とに関する透視条件データを受け付ける。
【0033】
座標変換部11dは、受け付けた透視条件データを実現するためのロボット7およびロボット8それぞれの姿勢を計算し、それぞれ制御部9,10に送信する。
【0034】
画像処理部6は、例えば、通常のコンピュータであり、CPU、メモリ、インターフェース、キーボードやマウスなどの入力部6a、表示部6b、などを持つ。画像処理部6は、ログラムに基づいて、CPUが透過像を取り込み、記憶および表示を行うほか、各種画像処理や解析、データの通信などを行う。
【0035】
(第一の実施形態の作用)
図3を参照して、第一の実施の形態における作用を説明する。
【0036】
図3は、被検体1の着目点Pを基準とした被検体座標を表す鳥瞰図である。ロボット7,8を基準としたロボット座標x,y,zは例えば、各ロボットの基準点B1,B2を結んだ中点を原点Oとしてz軸を垂直方向に取った直交座標として設定され、被検体1の着目点Pは座標(xp,yp,zp)(着目点データ)で指定できる。
【0037】
次に、被検体1の着目点Pを基準(原点)とした被検体座標を設定する。被検体座標としては、垂直方向を極軸AXとした極座標(φ,θ,r)を用いる。図3は、X線焦点Fが被検体座標での位置(φ,θ,rf)に位置決めされた状態を表している。ここで、点DはX線検出器5の検出面5aの中央点を表し、点Dは、位置(φ−π,−θ,rd)に位置決めされる。すると、X線焦点Fと点Dを結んだ線である放射線光軸Lは点Pを通過し、放射線光軸Lの方向はφ,θで表され、着目点Pを被検体座標で透視方向φ,θで透視する状態となる。
【0038】
この状態で、点Fと点Dの被検体座標は、それぞれ、(φ,θ,rf)と(φ−π,−θ,rd)である。rfはPとFとの距離、rdはPとDとの距離である。
【0039】
透視検査に先立ち、先ず、操作者は被検体1を位置決め機構4により位置決めさせる。次に入力部11a(キーボード等)より、着目点データ(xp,yp,zp)を数値入力すると共に、着目点に対する透視条件データ、すなわち、X線焦点Fの位置(φ,θ,rf)に関するデータ、および、透過像の拡大率に関するデータであるFとDとの距離fdd(=rf+rd)とを数値入力する。条件設定部11cは入力した透視条件データを受け付け、記憶する。
【0040】
ここで、拡大率に関するデータとしては、fddでなくてもよい。すなわち、rf,rd,fdd,拡大率Mの間には、式、
M=fdd/rf=(rf+rd)/rf ………(1)
の関係があり、rf,fddの入力は、rf,rd,fdd,Mの内の任意の2つの値の入力で代用できる。すなわち、入力する透視条件データとしては、(φ,θ)および(rf,rd,fdd,Mの内の任意の2つ)でよく、この入力から、座標変換部11dは、式(1)の関係を用いて拡大率Mを確定すると共に、rfとrdの両方を知ることができ、点Fと点Dの被検体座標での座標を確定することができる。
【0041】
座標変換部11dは、入力された透視条件データよりこの透視条件データを実現するためのロボット7,8の姿勢を計算する。これには、先ず、被検体座標で入力されたX線焦点Fの位置(φ,θ,rf)と距離fddから、被検体座標での点Fと点Dの位置が分かり、次に、ロボット座標での点Fと点Dの位置を求めて、さらに、ロボット座標での点Fと点Dの位置からロボットの姿勢を計算する。
【0042】
ロボット7の姿勢としては、X線焦点Fを、入力された位置にすると共に、X線管の放射軸ベクトル(放射範囲の中央ベクトル)sが点Dに向くような姿勢を計算する。
【0043】
ロボット8の姿勢としては、検出面5aの中央点Dを、計算された位置にすると共に、点Dでの検出面法線ベクトルhが点Fに向き、かつ、点Dを通り透過像の上方向を示すベクトルuの方向が垂直上方に最も近づく(このときuは極軸AXと点Dを通る平面内にある)姿勢を計算する。
【0044】
次に、データ処理部11は、計算されたロボット7,8の姿勢をそれぞれ制御部9,10に送り、制御部9,10は、それぞれロボット7,8の姿勢を制御し、それぞれX線管2とX線検出器5を位置決めし、透視条件データを実現させる。これにより、被検体座標に基づいて透視方向と拡大率を変更できる。
【0045】
透視条件が設定された後、X線管2からX線ビーム3を放射させ、被検体1を透過したX線ビーム3をX線検出器5で検出し、検出器5の出力する透過像を画像処理部6が取り込んで記憶すると共に、表示部6bに表示する。表示は、次々と検出して動画として表示することも、1枚を静止画として表示することもできる。また、透過像に対し、画像処理を施すこともできる。
【0046】
(第一の実施形態の効果)
第一の実施形態によれば、自由に動かすことのできない被検体に対し、着目点を基準とした被検体座標に基づいたX線焦点の位置と拡大率とに関する透視条件データを入力するだけで、透視する被検体の着目点が視野から外れずに、透視方向と拡大率のみを自由に操作性よく変更して着目点の透視ができる。
【0047】
また、被検体座標を極座標とすることで、rdやfddを一定にして透視方向を容易に

を保つことで機械的干渉が起こりにくく、また、fdd(=rf+rd)を保つことで透過像の明るさを一定に保てるという効果がある。
【0048】
また、着目点の座標を入力するだけで、透視方向と拡大率を変えずに、透視する被検体の着目点を自由に操作性よく変更できる。
【0049】
(第一の実施形態の変形)
下記の変形例は組合せて適用することも可能である。
【0050】
(変形例1)
第一の実施形態では、着目点データや透視条件データの入力はキーボード等で数字を打ち込んで数値入力しているが、入力画面上で設定値およびアップダウンボタンを表示させ、アップダウンボタンをマウスでクリックして設定値を変えてもよい(数値入力の変形)。
【0051】
また、設定値は、棒グラフや円グラフでグラフィック表示してもよい。また、図3に示すような3次元的なグラフィック表示をしてもよい。
【0052】
また、設定を、棒グラフや円グラフでグラフィック表示した上で、グラフをマウスでドラッグ&ドロップして設定を変えるようにしてもよい(グラフィック入力)。ここで、設定を、図3に示すような3次元的なグラフィック表示とし、表示上の点や線をマウスでドラッグ&ドロップして設定を変えるようにしてもよい。
【0053】
さらに、グラフィック表示と数値表示、また、グラフィック入力と数値入力とを併用してもよい。
【0054】
これにより、さらに視認性よく透視方向と拡大率、また、着目点を変更できる。
【0055】
(変形例2)
第一の実施形態では、被検体座標として垂直方向を極軸AXとした極座標を設定したが、水平方向を極軸AXとする極座標であっても良い。また極軸AXを任意方向に向けてもよい。
【0056】
また、被検体により、極座標の代わりに、円筒座標を用いることもできる。これは、円筒状の被検体、例えば管状体中の流れの透視などの場合に都合が良い。すなわち、この場合、点Fと点Dを、管状体に対し一定距離を保って動かすような設定が容易に行える。
【0057】
(変形例3)
第一の実施形態では、ロボット座標として、各ロボットの基準点を結んだ中点を原点Oとして1つの直交座標を設定しているが、原点位置や軸の方向は自由に設定できる。
【0058】
また、ロボット毎にロボット座標を設定しても良い。例えばロボット7の基準点を原点とした直交座標とロボット8の基準点を原点にした直交座標を、対応する軸が互いに平行になるように、それぞれ、ロボット座標として設定する。すなわち、例えば、図3のx,y,z座標をy方向にd/2ずらした座標と、y方向に−d/2ずらした座標とを設定する。この場合、着目点Pの指定は、予め定めたどちらかの座標で行えば良い。
【0059】
また、ロボット座標は直交座標には限られない。たとえば、各ロボットごとに各ロボットの基準点を原点とする円筒座標や極座標を設定してもよい。
【0060】
(変形例4)
第一の実施形態では、ベクトルuの方向が垂直上方に最も近づくロボット8の姿勢を計算したが、ベクトルuはこのような方向から、ベクトルhを軸として任意角度γ回転した方向に設定できる。また、この角度γは操作者の指定で可変とすることができる。
【0061】
(第二の実施形態の構成)
図4は本発明の第二の実施の形態の放射線透視検査装置の構成図である。図4で、第一の実施形態と同じ構成は同じ番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0062】
第二の実施形態は第一の実施形態の構成にもう一組のX線管とX線検出器を追加し、それに応じて、画像処理部6とデータ処理部11の処理内容を変えたものである。
【0063】
詳細には、第二の実施形態の構成は、X線管(第二の放射線源)12と、X線管12から放射されて被検体1を透過したX線ビーム(第二の放射線)13を検出し、透過像(第二の透過像)として出力するX線検出器(第二の放射線検出器)15と、X線管12を支持して動かし位置決めするロボット(第三のロボット)17、X線検出器15を支持して動かし位置決めするロボット(第四のロボット)18、ロボット17,18をそれぞれ所定の姿勢に制御する制御部(第三および第四の制御部)19,20、が追加されている。ここで、X線管12、X線検出器15はそれぞれX線管2、X線検出器5と同等のもので、また、ロボット17,18と制御部19,20は、それぞれロボット7,8と制御部9,10と同等のものである。
【0064】
なお、他の追加構成として、X線管12に高電圧を供給する高圧発生器や管電圧・管電流を制御するX線制御器、X線コリメータを有するが、図4では省略している。
【0065】
第二の実施形態の画像処理部6’は、ハードウエアの構成は第一の実施形態の画像処理部6と同じであるが、放射線検出器15の透過像(第二の透過像)も取り込み、処理内容は、2つ放射線検出器5,15からの透過像を保存および表示するように変更されている。
【0066】
また、第二の実施形態のデータ処理部11’は、ハードウエアの構成は第一の実施形態のデータ処理部11と同じであるが、制御部19,20にも接続され、処理内容は、ロボット7,8と同様にロボット17,18の姿勢も計算し、それぞれ制御部19,20に送信するように変更されている。すなわち、データ処理部11’は2組のX線管とX線検出器に対し、それぞれ被検体座標に基づいて透視方向と拡大率を変更するものである。
【0067】
(第二の実施形態の作用)
第二の実施形態では、操作者は、着目点データ(xp,yp,zp)と着目点に対する(第一の)透視条件データφ,θ,rf,fddとに加えて、2組目のX線管12とX線検出器15に係る同じ被検体座標での第二の透視条件データφ2,θ2,rf2,fdd2を数値入力する。条件設定部11’cはこれを受け付け、記憶する。
【0068】
ここで、第一の実施形態と同様に、φ2,θ2,rf2は第二のX線焦点F2の位置であり、rdd2は第二の拡大率に関するデータである。
【0069】
なお、視差が水平方向のステレオ視をする場合は、φ2=φ+ステレオ角、θ2=θ、rf2=rf、fdd2=fddとする。視差が垂直方向のステレオ視をする場合は、φ2=φ、θ2=θ+ステレオ角、rf2=rf、fdd2=fddとする。直交2方向透視の場合は、上記でステレオ角=90°とする。
【0070】
座標変換部11’dは、第一の実施形態と同様に、入力された(第一の)透視条件データよりこの(第一の)透視条件データを実現するためのロボット7,8の姿勢を計算すると共に、同様に第二の透視条件データから第二の透視条件データを実現するためのロボット17,18の姿勢を計算する。
【0071】
次に、データ処理部11は計算された、ロボット7,8,17,18の姿勢をそれぞれ制御部9,10,19,20に送り、制御部9,10,19,20は、それぞれロボット7,8,17,18の姿勢を制御し、それぞれX線管2、X線検出器5、X線管12、X線検出器15を位置決めして入力された(第一の)透視条件データと第二の透視条件データを実現させる。これにより、被検体座標に基づいて透視方向と拡大率を変更できる。
【0072】
透視条件が設定された後、X線管2,12からそれぞれX線ビーム3,13を放射させ、被検体1の着目点Pを透過したX線ビーム3,13をそれぞれX線検出器5,15で検出し、検出器5の出力する第一の透過像および検出器15の出力する第二の透過像を画像処理部6が取り込んで記憶すると共に、表示部6bにならべて表示するか、あるいは、ステレオ表示する。表示は、次々と検出して動画として表示することも、1枚を静止画として表示することもできる。
【0073】
ステレオ表示は、公知のステレオ表示を採用できる。例えば、第一と第二の透過像を時分割で交互に同一画面に表示し、これを、同期して左右を交互に遮断させる液晶シャッタ付メガネを掛けて観ることで立体視が可能となる。または、例えば、(株)東芝製の裸眼3Dテレビ「グラスレス3Dレグザ(登録商標)」等を表示部6bに用いれば、メガネなしで立体視が可能となる。
【0074】
(第二の実施形態の効果)
第二の実施形態によれば、自由に動かすことのできない被検体に対し、着目点を基準とした被検体座標に基づいたX線焦点の位置と拡大率とに関する透視条件データを2組入力するだけで、透視する被検体の着目点が視野から外れずに、透視方向と拡大率のみを自由に操作性よく変更して着目点の2方向透視ができる。
【0075】
また、2つの透過像の中心が互いにずれることがなく、また、ステレオ角を正確に容易に設定あるいは変更できる他、ステレオ視の視差方向の変更(水平/垂直/斜め)も容易である。
【0076】
また、被検体座標を極座標とすることで、rdやfddを一定にして透視方向を容易に

を保つことで機械的干渉が起こりにくく、また、fdd(=rf+rd)を保つことで透過像の明るさを一定に保てるという効果がある。
【0077】
また、着目点の座標を入力するだけで、透視方向と拡大率を変えずに、透視する被検体の着目点を自由に操作性よく変更できる。
【0078】
(第二の実施形態の変形)
第二の実施形態の2組のX線源とX線検出器に対して、第一の実施形態の変形と同様の変形、また、それらの組合せが可能である。さらに、以下の変形も可能で、組合せも可能である。
【0079】
(変形例5)
第二の実施形態で、2方向の透視の連続撮影から、被検体の特徴点の3次元空間での時間的追跡が可能で、被検体の変化の解析ができる。
【0080】
これは、例えば、流体中の粒子の移動、衝撃を与えたときの内部の部品の歪、等の解析がある。
【0081】
(変形例6)
第二の実施形態で、ステレオ視しない場合は、2つの透視条件データで拡大率が異なっていてもよい。これにより同じ部分の拡大率の異なる2つの透過像を同時に得ることができる。
【0082】
また、2つのX線管2,12を互いに異なる管電圧に設定して、同一部の異なる透過度の透過像を同時に得ることもできる。
【0083】
(第一および第二の実施形態の変形)
さらに、以下の変形も可能で、組合せも可能である。
【0084】
(変形例7)
第一および第二の実施形態では、着目点Pや透視条件を固定して透過像を動画表示させるが、着目点、透視方向、拡大率のどれか1つあるいは複数を、次々刻々と変化させながら動画表示させることもできる。
【0085】
(変形例8)
第一および第二の実施形態で、X線検出器5,15により、毎秒100フレーム以上の高速で撮影(検出)し、撮影した透過像を記憶し、記憶した透過像を通常速度(毎秒30フレーム)で再生表示させることで、スローモーション表示することができる。
【0086】
(変形例9)
第一および第二の実施形態では、位置決め機構4により被検体1を静止位置決めしている。しかし、自由に動かすことのできない被検体ではあるが、場合により、制限された可能な動きを位置決め機構4により行わせることもできる。
【0087】
例えば、溶接現象を連続透視する場合、特許文献2と同様に、溶接機の所定の溶接点を着目点Pに設定し、この固定した着目点Pに対し溶接対象片(被検体)を移動させながら溶接を実行しつつ、この溶接点を連続して透視することができる。
【0088】
(変形例10)
第一および第二の実施形態で、画像処理部6,6’の機能をデータ処理部11,11’で行うようにしてもよい(画像処理部とデータ処理部の統合)。
【0089】
また、データ処理部11,11’の機能の内、「ロボット座標での点Fと点Dの位置からロボットの姿勢を計算する」機能を各制御部9,10,19,20で行うようにしてもよいし、また、代わりに、「入力された着目点データと透視条件データよりロボットの姿勢を計算する」機能を各制御部9,10,19,20で行うようにしてもよい。
【0090】
また、各制御部(9,10,19,20)の機能をデータ処理部(11,11’)で行うようにしてもよい(制御部とデータ処理部の統合)。
【0091】
(変形例11)
第一および第二の実施形態で、X線は透過性の放射線、例えば、γ線やマイクロ波でもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…被検体、2,12…X線管、3,13…X線ビーム、4…位置決め機構、5,15…X線検出器、5a,15a…検出面、6,6’…画像処理部、7,8,17,18…ロボット、9,10,19,20…制御部、11,11’…データ処理部、6a,11a…入力部、6b,11b…表示部、F,F2…X線焦点、L,L2…放射線光軸、AX…極軸、D,D2…検出面の中央点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決め手段で支持された被検体に対し放射線を放射する放射線源と、前記被検体を透過した前記放射線を検出し、2次元の透過像として出力する放射線検出器と、前記透過像を取り込み記憶および表示を行う画像処理部とを有し、前記被検体の着目点を中心とする前記透過像を得る放射線透視検査装置において、
前記放射線源を支持して動かし位置決めする第一のロボットを、前記第一のロボットを所定の姿勢に制御する第一の制御部と、
前記放射線検出器を支持して動かし位置決めする第二のロボットと、前記第二のロボットを所定の姿勢に制御する第二の制御部と、
前記着目点を基準とした被検体座標に基づいた前記放射線源の放射線焦点の位置と前記透過像の拡大率とに関する透視条件データを受け付けて、前記透視条件データを実現するための前記第一のロボットの所定の姿勢、および前記第二のロボットの所定の姿勢を計算し、それぞれ前記第一の制御部と前記第二の制御部に送信するデータ処理部とより成り、
前記被検体座標に基づいて透視方向と拡大率を変更することを特徴とする放射線透視検査装置。
【請求項2】
前記被検体座標は極座標である請求項1に記載の放射線透視検査装置。
【請求項3】
前記データ処理部は、さらに、前記着目点を示す着目点データを受け付けて前記着目点を変更する請求項1または2に記載の放射線透視検査装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の放射線透視検査装置において、
前記被検体に対し第二の放射線を放射する第二の放射線源と、前記被検体を透過した前記第二の放射線を検出し、2次元の第二の透過像として出力する第二の放射線検出器と、
前記第二の放射線源を支持して動かし位置決めする第三のロボットと、前記第三のロボットを所定の姿勢に制御する第三の制御部と、
前記第二の放射線検出器を支持して動かし位置決めする第四のロボットと、前記第四のロボットを所定の姿勢に制御する第四の制御部と、をさらに有し、
前記データ処理部は、さらに、前記被検体座標に基づいた前記第二の放射線源の放射線焦点の位置と前記第二の透過像の拡大率とに関する第二の透視条件データを受け付けて、前記第二の透視条件データを実現するための前記第三のロボットの所定の姿勢、および前記第四のロボットの所定の姿勢を計算し、それぞれ前記第三の制御部と前記第四の制御部に送信し、
前記画像処理部は、さらに、前記第二の透過像を取り込み記憶および表示を行う放射線透視検査装置。
【請求項5】
前記画像処理部は前記透過像および前記第二の透過像を立体視表示する請求項4に記載の放射線透視検査装置。
【請求項6】
前記画像処理部は前記透過像および前記第二の透過像から前記被検体の3次元解析を行なう請求項4に記載の放射線透視検査装置。
【請求項7】
前記データ処理部は前記透視条件データをグラフィック表示する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の放射線透視検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−189560(P2012−189560A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68773(P2011−68773)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】