説明

放射線遮蔽部材

【課題】放射性物質で汚染された大量の土壌等から放出される放射線を遮蔽する。
【解決手段】放射性遮蔽部材1は、鉛シートからなる遮蔽層2と、遮蔽層2の両面を被覆するように積層され、ゴム化アスファルトを含浸させた不織布からなる緩衝層3と、緩衝層を被覆する合成樹脂からなるフィルム状の表面被覆層4と、からなるシート状に形成された部材とし、柔軟性及び耐久性を有するとともにロール状に巻きとることができる程度の厚さとする。この放射線遮蔽部材を集積された汚染土壌等の外面に沿って隙間なく敷き並べる。また、遮蔽層の両面に積層された緩衝層の一方は、表面被覆層で被覆し、他方は剥離紙を積層することもできる。この放射線遮蔽部材は、放射性物質で汚染された土壌を固化して土壌ブロックを形成し、表面に貼り付けて包み込む。この土壌ブロックは、例えば堤体の盛土の一部として利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質で汚染された土壌・汚泥等を覆って、放射線を遮蔽する放射線遮蔽部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射線は医療等に利用され、人類にとって欠かせないものになっている。一方、多量の放射線に被曝すると人体に甚大な影響を及ぼすことも知られている。このため、医療機関等の放射線を扱う施設では放射線の漏出を抑制するため、又は放射線を扱う作業に従事する者を放射線から保護する等の目的で、放射線遮蔽部材が使用されている。また、原子力発電所等の放射性物質を扱う施設でも、作業者が放射線に被曝しないように所定の領域を放射線遮蔽部材で遮蔽することが必要となる。このような放射線遮蔽部材は、例えば特許文献1に示すように、放射線遮蔽性を有する金属、例えば鉛を板状又はシート状にして用いるものであり、放射線を扱う施設内の壁、天井、床等に使用して放射線の漏出を防ぐもの、人が装着して人体に放射線が照射されるのを遮蔽するもの等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−211888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原子力発電所の事故により多量の放射性物質が周辺環境に放出され、周辺の土壌が汚染されるという事態が生じている。また、広範囲に放射性物質が飛散したことにより、下水処理後の汚泥やゴミを焼却した後の焼却灰に高い放射性物質の濃度が検出されている。汚染された土壌や下水汚泥等は早急に処理し、生活環境を安全なものとすることが求められているが、汚染土壌や汚泥は大量に存在し、これらすべての処分が完了するまでには相当の期間を要することが予測される。したがって、多量の土壌や汚泥は仮処分場等において緊急避難的に保管し、汚染土壌等から生じる放射線を遮蔽した状態とする必要がある。また、最終処分においても多量の土壌や汚泥を、放射線が遮蔽された状態として処分しなければならない。
【0005】
しかし、特許文献1に記載されているような従来の放射線遮蔽部材は、大量の汚染土壌等を被覆して放射線を遮蔽することは全く想定されていない。また、屋外に堆積された汚染土壌等を覆うように使用したときの耐久性が必要となり、さらに土壌等が散逸するのを抑止しなければならない。
したがって、放射性物質で汚染された大量の土壌や汚泥等から放出される放射線を早急に遮蔽する簡易かつ容易な手段が求められている。
【0006】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、大量の土壌や汚泥から生じる放射線を容易に遮蔽することができる放射線遮蔽部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 放射線の遮蔽性を有する金属からなり、板状又はシート状に形成された遮蔽層と、 柔軟なアスファルト系材料からなり、前記遮蔽層の両面に積層された緩衝層と、 合成樹脂からなり、前記緩衝層を被覆する表面被覆層と、を有する放射線遮蔽部材を提供する。
【0008】
この放射線遮蔽部材では、薄く形成された板状又はシート状の金属、例えば鉛を用いることにより、安価で効率よく放射線を遮蔽することができる。そして、金属に柔軟なアスファルト系材料を積層することにより、板状又はシート状の金属の補強及び外部から作用する力や衝撃を緩和することができる。つまり、汚染土壌等を覆うときに、土壌に含まれる礫、コンクリート片等に擦りつけられることによる損傷や折れ曲がりによる損傷等が抑制され、屋外での使用にも耐え得るものとなる。また、金属として鉛等の重金属を用いる場合は、金属の表面がアスファルト系材料からなる緩衝層で被覆されていることにより、鉛等が周辺地盤に漏れ出す鉛害等を防ぐことができる。
【0009】
さらに、放射線遮蔽部材で汚染土壌を覆うと、その後土壌の移動等を行うときに、剥がした放射線遮蔽部材に汚染土壌が付着する。しかし、この放射線遮蔽部材では表面が合成樹脂で被覆されており、洗浄によって放射性物質で汚染された土壌を容易に洗い流すことができる。したがって、この放射線遮蔽部材に付着して放射性物質が拡散されるのを防止することができる。
【0010】
また、汚染土壌の仮置き場等で使用し、使用済みとなった上記放射線遮蔽部材は熱処理により鉛とアスファルト系材料とに容易に分離することができ、再利用が可能となる。
なお、上記表面被覆層は、遮蔽層の両面に積層された緩衝層の双方を被服するように積層されるものであってもよいし、一方の緩衝層を被覆し、他方の緩衝層は他のシート状の部材で被覆するものであってもよい。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の放射線遮蔽部材において、 前記表面被覆層は、前記遮蔽層の両面に積層された前記緩衝層の一方に積層されて被覆するものであり、 前記緩衝層の他方には、前記緩衝層に接着されるとともに該緩衝層から容易に剥離することができる剥離紙が積層されているものとする。
【0012】
この放射線遮蔽部材では、遮蔽層の両面に積層されたアスファルト系材料の片側が表面被覆層で被覆されるとともに他方の面は剥離紙によって被覆される。これにより、放射線遮蔽部材を積み重ねたりロール状に巻き回したりしたときにも、積層された放射線遮蔽部材は、柔軟なアスファルト系材料で互いに接着してしまうという事態を回避することができる。また、搬送等の取り扱い時にもアスファルト系材料の粘性によって作業に支障が生じるのを防ぐことができる。
一方、放射線を放出している対象物を被覆するときに、対象物が固形化されたものである場合等には、剥離紙を剥がしてアスファルト系材料の層を対象物に押し付ける。これにより、アスファルト系材料の粘着性によって放射線遮蔽部材を対象物に貼り付けることができる。したがって、簡単な作業で対象物を包むように被覆することができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の放射線遮蔽部材において、 前記緩衝層は、合成繊維、ガラス繊維もしくは炭素繊維による不織布もしくは織布に、アスファルトに合成ゴムを混合したゴム化アスファルトを含浸させて形成されたもの、又はゴム化アスファルトに前記不織布、前記織布もしくは金属メッシュを埋め込んで形成されたものとする。
【0014】
この放射線遮蔽部材では、緩衝層に含まれる不織布、織布又は金属メッシュによって補強され、引張強度が増大するとともに柔軟性は維持される。したがって、放射性物質によって汚染された土壌や汚泥を覆うために引き延ばしたときの破損を防止することができる。また、土壌等に含まれる尖った形状の石等が突き当てられたときにも破損を有効に防ぐことが可能となる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の放射線遮蔽部材において、 前記遮蔽層、前記緩衝層及び前記表面被覆層は、これらを積層したときにロール状に巻き取ることができる程度の厚さに設定されているものとする。
【0016】
この放射線遮蔽部材は、ロール状に巻き取ることができ、搬送等の取り扱い及び土壌等を覆う作業が容易となる。また、集積された放射線汚染土壌等を簡単な作業で覆うことができ、放射性物質から放出される放射線を遮蔽するとともに、汚染された土壌等の流出を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の放射線遮蔽部材は、多量の土壌や汚泥を簡単な作業で覆い、放射線を遮蔽することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態である放射性遮蔽部材を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る放射線遮蔽部材の使用状態を示す概略断面図及び概略斜視図である。
【図3】本発明に係る放射線遮蔽部材を敷設する方法の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の他の実施形態である放射線遮蔽部材の概略断面図である。
【図5】図4に示す放射線遮蔽部材の使用状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である放射線遮蔽部材を示す概略断面図である。
この放射線遮蔽部材1は、鉛をシート状に形成した遮蔽層2と、この遮蔽層2に積層される緩衝層3と、緩衝層3を被覆する表面被覆層4と、からなり、ロール状に巻き取ることができるシート状の部材となっている。
上記遮蔽層2には、放射線の遮蔽性能が高く、安価であるとともに薄く形成することが容易である鉛を用いている。この鉛シートの厚さは、被覆する土壌等の汚染濃度に応じて適宜決定されるが、0.1mm以上で5mm以下であることが望ましい。
この他、遮蔽層としては、比重の大きい金属としてタングステン等を採用することもできる。また、要求される放射線の遮蔽性能によっては、アルミニウム 鋼等の金属を用いることもできる。
【0020】
上記緩衝層3は、アスファルトに合成ゴムを混合したゴム化アスファルトを合成繊維からなる不織布に含浸させ、さらに両面にゴム化アスファルトを塗布して不織布をゴム化アスファルト内に埋め込んだものであり、厚さが0.5mm〜5mm程度となっている。この緩衝層3は表面に沿った方向及び厚さ方向に柔軟に変形するものであり、石片等が押し付けられたり、擦られたりしても、遮蔽層2が破損しないように保護するものとなっている。また、不織布によって引張力に対しても抵抗し得るように補強されている。
なお、緩衝層3は、放射線遮蔽部材の用途等に応じて厚さを調整することができるとともに、不織布等を含まずにゴム化アスファルト層のみで使用することもできるし、不織布、織布、金属メッシュ等をゴム化アスファルトに埋め込むように形成したものを用いることもできる。
【0021】
上記緩衝層3は、遮蔽層2の端部において、図1に示すように遮蔽層2の端面も覆うように形成するのが望ましい。つまり、緩衝層3の寸法を遮蔽層2より大きくしておき、遮蔽層2の端縁より緩衝層3が突き出した部分で、遮蔽層2の両面に張り合わされた緩衝層3を互いに接着するものである。また、一方の緩衝層を遮蔽層の端面を覆うように曲げ回し、他方の被覆層の上に折り返して接着するものでもよい。
【0022】
上記表面被覆層4は、放射線遮蔽部材1の表面を形成するものであり、約0.1μm〜1mmの厚さのフィルム状となった合成樹脂を、上記緩衝層3に積層したものである。合成樹脂としては、例えばポリエステル、ポリエチレン又はポリプロピレン等を用いることができる。緩衝層3への積層は、例えば接着剤を塗布して接着するものであっても良いし、ゴム化アスファルトの粘性によって接着するものであってもよい。
このように形成された表面被覆層4は、上記緩衝層3に放射性物質で汚染された土壌が付着するのを抑制するとともに、洗浄して放射性物質が付着した表面を容易に除染することを可能としている。
【0023】
上記のように複数の層から形成される放射線遮蔽部材1は、厚さを1.2mm〜17mm程度とし、幅を0.9m〜2.0m、長さを約10mの帯状とするのが望ましい。そして、ロール状に巻き取ることができる程度の柔軟性を有するものとしている。幅を0.9m、長さを10mとし、遮蔽層2の厚さを1mm、緩衝層4の厚さを1mmとしたときにはロール状に巻き取ったシートは重さが約130kg〜140kg程度となる。また、幅が2mで長さが10mのときには重さが約260kg〜280kg程度となる。したがって、簡易的な揚重機等によって取り扱うことができ、使用する現場への搬送及び汚染した土壌等に覆い被せる作業を容易に行うことができる。
【0024】
図2は、放射線遮蔽部材1の使用状態の一例を示す概略断面図及び概略斜視図である。
原子力発電所から環境中に放出された放射性物質は大気中に飛散し、周辺地域に降下して土壌を汚染している。放射性物質は多くが地表面近くの土壌に滞留し、計測される放射線量が高くなる要因となっている。このため、地表面近くの土壌を剥ぎ取るように掘削し、除去することが行われている。除去した土壌は、住民に影響が生じないように最終処分をする必要があるが、汚染した土壌は大量に発生しており、仮処分場等に一時的に集積される。
また、放射性物質を含んだ下水汚泥も大量に発生しており、最終処分の方法が具体化するまで屋内又は屋外の集積場所に保管しなければならなくなっている。
図2は、本発明の放射線遮蔽部材1を、上記のような汚染土壌の仮処分場や放射性物質で汚染した下水汚泥等の集積場所において、土壌や汚泥を覆うように敷設した状態を示すものである。このように汚染土壌や汚泥を覆うことによって放射線を遮蔽し、近隣への影響を防止しようとするものである。
【0025】
汚染土壌又は汚泥の集積場所では、土壌や汚泥を集積する範囲に遮水性を有するシート12を敷設するのが望ましい。これによって、放射性物質が地下水に浸透するのを防ぐものである。そして、この上に汚染土壌等を搬入し、堆積する。土壌等はそのまま堆積してもよいし、袋詰めにした状態で積み上げるものであってもよい。その後、図2(a)に示すように堆積又は積み上げられた汚染土壌11等の上を放射線遮蔽部材1によって覆う。
【0026】
上記放射線遮蔽部材1は、芯材1aを用いてロール状に巻き回したものとし、この芯材1aを支持することによって輸送等の取り扱いを行うのが望ましい。また、芯材1aを支持しながらロール状に巻き回された放射線遮蔽部材1を引き出し、汚染土壌11等の上に敷設することができる。つまり、図3に示すようにシート状の放射線遮蔽部材1が巻き回された芯材1aをクレーン13等によって吊り支持し、堆積された汚染土壌11の表面から所定の高さで、該表面に沿って移動しながら放射線遮蔽部材1を引き出す。これにより、汚染土壌11等の上に効率よくシート状の放射線遮蔽部材1を敷設することができる。
敷設時には、放射線遮蔽部材1を汚染土壌11の上で引きずるようなことがあっても、放射線遮蔽部材1が有する緩衝層3によって鉛からなる遮蔽層2が保護されるとともに、緩衝層3が有する不織布及び表面被覆層4によって補強されており、遮蔽層2の損傷が抑えられる。
【0027】
上記放射線遮蔽部材1の敷設は、図2(b)に示すように、隣り合って敷き並べられる放射線遮蔽部材1の所定範囲1bを重ね合わせながら、堆積した汚染土壌11の外形に沿って隙間なく覆い、露出部分がないようにする。汚染土壌等の堆積された形状により、重ね合わせた放射線遮蔽部材1間に隙間が生じ易い部分や相互間にずれが生じやすい部分では、重ね合わせた所定範囲1bを接着剤、又はテープ等によって接合してもよい。
【0028】
このように、放射性物質を含む土壌、下水処理で生じる汚泥、ゴミの焼却灰等が堆積された上を上記放射線遮蔽部材1で覆うことにより、周辺域における放射線量を低減することができる。そして、上記放射線遮蔽部材1は、敷設する場所が屋外であっても、ゴム化アスファルトを含浸させた不織布からなる緩衝層3により日射、風、雨、温度差等に対しても耐久力を備えるものとなっている。
また、仮処分場に堆積された汚染土壌11等を最終処分場に移動するときには、上記放射線遮蔽部材1を剥ぎ取るとともに、放射線遮蔽部材1の表面を水で洗浄して付着している汚染土壌等を洗い流すことができる。したがって、放射線遮蔽部材1の再利用が可能になるとともに放射性物質の拡散を防ぐことができる。
【0029】
また、再使用ができなくなった放射線遮蔽部材1は、加熱により材料を分離して再利用することができる。つまり、表面被覆層4を形成する合成樹脂、緩衝層3を形成するゴム化アスファルト及び遮蔽層2の鉛は溶融温度の違いによって分離することができる。
【0030】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図4は、本発明の他の実施形態である放射線遮蔽部材の断面図である。
この放射線遮蔽部材21は、鉛をシート状に形成した遮蔽層22と、この遮蔽層22の両面に積層される緩衝層23と、緩衝層23の一方を被覆する表面被覆層24と、緩衝層23の他方の表面に積層される剥離紙25とからなるものである。
【0031】
上記遮蔽層22、緩衝層23、表面被覆層24は、図1に示す放射線遮蔽部材と同様のものを用いることができる。
上記剥離紙25は、クラフト紙等の破れにくい紙の片面にシリコーン樹脂、シリコーンオイル等のコーティングを施したもので、合成樹脂はゴム化アスファルトとの接着力を抑制することができるものが用いられている。したがって、ゴム化アスファルトからなる緩衝層23に積層して接着することができるものであるが、容易に引き剥がすことができるものとなっている。
このような放射線遮蔽部材は、ロール状に巻き回して又は積層して貯蔵及び搬送することができ、使用する直前に剥離紙をはがして、ゴム化アスファルトからなる緩衝層23が備える接着力を利用することができる。
【0032】
上記放射線遮蔽部材は、次のように使用することができる。
図5(a)は、汚染土壌等を放射線遮蔽部材21で包み込んだ土壌ブロック31を示す概略斜視図であり、図5(b)はこの土壌ブロック31を堤体32の一部として使用した状態を示す概略断面図である。
この土壌ブロック31は、放射性物質で汚染した土壌又は汚染した下水汚泥等にセメント系の固化剤を添加して硬化させ、これを放射線遮蔽部材21で隙間が生じないように包み込んで形成したものである。このような土壌ブロック31は例えば次のように形成することができる。つまり、型枠を組み立てて、その内側に鉄筋を配置する。そして、放射性物質で汚染された土壌、汚泥、焼却灰等に固化剤を添加したものを投入し、水分を供給するとともに締め固めて硬化させる。硬化後に脱型し、図5(a)に示すように、硬化した土壌ブロック31の外周面の全てを上記放射線遮蔽部材21で覆うものとする。
このような土壌ブロック31の大きさは、例えば1m×1m×6m程度の直方体とすることができる。
【0033】
上記放射線遮蔽シート21は、土壌ブロック31が形成された現場において対応する大きさに切断し、剥離紙25を剥がして土壌ブロック31の表面に押し付ける。これによりゴム化アスファルトからなる緩衝層23の粘着力によって放射性線遮蔽部材21が土壌ブロック31に接着される。貼り付ける放射線遮蔽部材21の端縁付近は隣り合うように貼り付けられる放射線遮蔽部材21と互いに重ねあわせる。そして、放射線遮蔽部材21を土壌ブロック31の表面の全てに隙間なく貼り付けることにより、土壌ブロック31に含まれる放射性物質からの放射線を遮蔽することができる。
【0034】
このように形成された複数の土壌ブロック31は、図5(b)に示すように、例えば河川や海岸における堤体32の一部として使用することができる。この提体32は、放射線遮蔽部材21で覆われた土壌ブロック31を該提体32の中心部に積み上げるように配置し、放射性物質で汚染されていない土で覆って締め固めたものである。放射性物質を含む土壌は放射線遮蔽部材21で包み込まれ、さらに土層によって覆われていることにより、提体32の表面における放射線量を充分に小さな値とすることが可能となる。したがって、放射性物質を含む土壌や下水汚泥、ゴミの焼却灰の最終処分とすることが可能となる。
【0035】
なお、本発明に係る放射線遮蔽部材1,21は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内となる他の形態で実施することもできる。例えば、遮蔽層2、緩衝層3又は表面被覆層4のそれぞれの厚さは適宜変更することが可能であるとともに、これらが積層された放射線遮蔽部材1,21の全厚さ、幅、長さ等も変更可能である。また、緩衝層3の合成繊維からなる不織布に替えて織布や金属メッシュを用いることもできるし、合成繊維に替えてガラス繊維又は炭素繊維を用いることもできる。
【0036】
また、上記実施の携帯では、放射線遮蔽部材1,21はロール状に巻き取ることができるものとしたが、例えば0.9m×2m程度の大きさの板状とすることもできる。
一方、上記土壌ブロック31は堤体32の他に、造成地盤内や道路の盛土内に使用することもできる。
【符号の説明】
【0037】
1:放射線遮蔽部材, 2:遮蔽層(シート状の鉛), 3:緩衝層, 4:表面被覆層,
11:放射性物質で汚染した土壌, 12:遮水性を有するシート,
21:放射線遮蔽部材, 22:遮蔽層, 23:緩衝層, 24:表面被覆層, 25:剥離紙、
31:土壌ブロック, 32:提体








【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線の遮蔽性を有する金属からなり、板状又はシート状に形成された遮蔽層と、
柔軟なアスファルト系材料からなり、前記遮蔽層の両面に積層された緩衝層と、
合成樹脂からなり、前記緩衝層を被覆する表面被覆層と、を有することを特徴とする放射線遮蔽部材。
【請求項2】
前記表面被覆層は、前記遮蔽層の両面に積層された前記緩衝層の一方に積層されて被覆するものであり、
前記緩衝層の他方には、前記緩衝層に接着されるとともに該緩衝層から容易に剥離することができる剥離紙が積層されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線遮蔽部材。
【請求項3】
前記緩衝層は、合成繊維、ガラス繊維もしくは炭素繊維による不織布もしくは織布に、アスファルトに合成ゴムを混合したゴム化アスファルトを含浸させて形成されたもの、又はゴム化アスファルトに前記不織布、前記織布もしくは金属メッシュを埋め込んで形成されたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の放射線遮蔽部材。
【請求項4】
前記遮蔽層、前記緩衝層及び前記表面被覆層は、これらを積層したときにロール状に巻き取ることができる程度の厚さに設定されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の放射線遮蔽部材。










【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−104802(P2013−104802A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249388(P2011−249388)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(511276747)