説明

放射線障害から保護するためのβ−ラパコンの使用

細胞周期チェックポイント活性化の調節物質(好ましくは、β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体)の投与は正常細胞を放射線障害から保護する。本発明は、放射線損傷の予防方法を含む。本発明はまた、放射線療法を施す前に対象体に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質を投与することによる、放射線療法で癌のような症状を治療する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、35 U.S.C.§119(e)の下、2003年11月26日に出願された米国出願番号第60/525,341号、および2004年4月14日に出願された米国出願番号第60/561,901号、および2004年5月12日に出願された米国出願番号第60/570,096号の利益を主張する。
【0002】
(発明の背景)
電離放射線(例えば、X線、γ線、およびαまたはβ線)への曝露は、細胞に損傷を引き起こす可能性がある。この損傷は、結果として細胞死(例えば、アポトーシスを介する)を引き起こす可能性があるか、または、細胞の遺伝的変化を引き起こし、結果として抑制のない細胞増殖および癌を引き起こす可能性がある。
【0003】
一方、一般に、かかる放射線への曝露はそれ故に望ましくないが、注意深くモニターされる放射線量の投与は、ある種の癌についての承認された治療である;腫瘍を放射線の標的とすることによって、癌細胞を破壊することができる。放射線療法のよくみられる合併症は、癌組織の周りの正常組織への照射である。かかる正常組織は、しばしば、放射線によって損傷し、結果として正常な細胞および組織への望ましくない放射線障害を引き起こし、罹患患者にとって重篤な結果を及ぼす可能性がある。
【0004】
放射線曝露は、通常のバックグラウンドレベルの放射線(例えば、宇宙線または地球に存在する自然発生同位元素による放射線)への曝露または高い環境放射線(医療施設または原子力発電所における労働者の職業性被曝を含む)を含む他の方法で生じることがある。ある種の放射線への曝露が発生する可能性のある別の原因は、例えば、事故の結果としての、またはテロ行為の結果としての、例えば、いわゆる「ダーティーボム」(地域を汚染するために放射性物質を撒き散らすことを目的とした爆破装置)のような放射性物質兵器の結果としての、放射性物質の偶発的または意図的な放出である。
【0005】
放射線障害からの保護の主な形態は放射線曝露の回避である。例えば、放射線源が知られている場合には、放射線が体へ浸透するのを防止する能力を有する遮蔽材を使用することができる;例えば、鉛のエプロンを使用してX線を遮断することができる。防護服を着用して放射性物質による体の汚染を防止することができ、汚染除去法を用いて放射性物質を除去することができる。
【0006】
ヨウ素による予防的処置を用いて甲状腺における放射性ヨウ素の蓄積を予防することができ、かくして、甲状腺への放射性障害を予防することできるが、かかる処置は、他の放射性元素または他の器官部位に対する保護は提供せず、いったん放射性同位元素が放射線量を組織に送達したら障害を防ぐことはできない。アミフォスチン(承認された放射線防護剤)のような放射線防護剤での処置は、放射線によって生じるフリーラジカル(または他の反応種)によるDNA損傷のようなある種の放射線損傷を予防するのに有効である。しかしながら、アミフォスチンに対して承認された適応症は制限されており、悪心のような副作用が分かっている。
【0007】
別の化合物、5−アンドロステンジオールは、前臨床動物実験において放射線防護剤として試験されている。この化合物は、おそらくは好中球および他の免疫系細胞の生産を刺激して放射線障害患者の有意な死亡原因である感染症を予防することによって、放射線に曝露されたマウスの生存期間を延ばしたことが報告されている。しかしながら、この化合物は救済措置であり、放射線の発症機序に対抗するものでも、造血系以外の器官を保護するものでもない。それはヒト用にはまだ承認されていない。
【0008】
放射線障害および放射線宿酔は症候的に処置できるが、ほとんどの場合、いったん放射線曝露が生じたら、細胞への放射線損傷または障害を防止したり寛解したりするのは困難である。
【0009】
β−ラパコン(lapachone)(3,4−ジヒドロ−2,2−ジメチル−2H−ナフト[1,2−b]ピラン−5,6−ジオン)は、ラパチョ(rapacho tree)の心材から単離することができる単純な非水溶性オルトナフトキノンである(Hooker, S.C., (1936) J. Am. Chem. Soc. 58:1181-1190;Goncalves de Lima, O, et al., (1962) Rev. Inst. Antibiot. Univ. Recife. 4:3-17を参照)。β−ラパコンの構造は、1896年にHookerによって確立され、1927年にFieserによって合成された(Hooker, S.C., (1936) J. Am. Chem. Soc. 58:1181-1190)。
【0010】
β−ラパコンは様々な薬理効果を有することが示されている。多くの誘導体が合成され、抗ウイルス剤および抗寄生虫剤として試験されており、β−ラパコンは、抗トリパノソーム効果を有することが示されている(Goncalves, AM et al. (1980) Mol. Biochem. Parasitology 1:167-176;Schaffner-Sabba, K. et al. (1984) J. Med. Chem. 27:990-994;Li, CJ et al., (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:1839-1842を参照)。β−ラパコンは、おそらく逆転写酵素の阻害を介して、ラウシャー白血病ウイルスに感染したマウスの生存期間を有意に延長する(Schaffner-Sabba, K. et al. (1984) J. Med. Chem. 27:990-994;Schuerch, AR et al., (1978) Eur. J. Biochem. 84:197-205)。β−ラパコンは、I型ヒト免疫不全ウイルスの長い末端反復配列(LTR)に指示されるウイルス複製および遺伝子発現を阻害する(Li, CJ et al., (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:1839-1842)。
【0011】
β−ラパコンがヒト前立腺癌細胞における細胞死を誘発すること(See Li, CJ et al., I (1995) Cancer Res. 55:3712-3715)、およびβ−ラパコンがヒト乳癌細胞の壊死およびカスパーゼ活性化によって媒介される卵巣癌細胞、結腸癌細胞および膵癌細胞のアポトーシスを誘発すること(Li, YZ et al., (1999) Molecular Medicine 5:232-239)が報告されている。さらに、β−ラパコンは、適度な用量のパクリタキセル(ニューヨーク州ニューヨークのBristol-Myers Squibb Co.によってTaxol(登録商標)の名称の下に販売されている)と組み合わせた場合、ヌードマウスのヒト卵巣癌、前立腺癌および乳癌異種移植モデルにおいて有効な抗腫瘍活性を有する(Li, CJ et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:13369-13374を参照)。
【0012】
β−ラパコンは、癌細胞の電離放射線およびDNA損傷剤に対する感作物質として研究された(Boorstein, RJ et al., (1984) Biochem Biophys. Res. Commun. 118:828-834;Boothman, et al., (1989) Cancer Res. 49:605-612)。β−ラパコン投与とX線照射との組み合わせは、結果としてヒト放射線抵抗性悪性黒色腫細胞系においてインビトロで相乗(増加)細胞毒性を引き起こすことが見出された;この報告(Boothman, et al., (1989) Cancer Res. 49:605-612)の著者は、悪性細胞が放射線によって引き起こされる潜在性致死DNA損傷を修復する能力をβ−ラパコンが阻害することを示唆している。
【0013】
本発明者らは、このたび、予想外にも、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質(例えば、β−ラパコンのような細胞周期チェックポイント活性化剤)の投与が正常な(例えば、非癌性の)細胞および生物の放射線損傷または障害からの保護、または正常な細胞および生物における放射線損傷または障害の処置、またはその両方に有効であることを発見した。
【0014】
(発明の概要)
本発明は、放射線障害の予防方法であって、放射線曝露の前に、かかる予防を必要とする対象体に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を医薬上許容される担体と組み合わせて投与する(ここで、放射線障害が予防される)ことを含む方法を提供する。
【0015】
本発明は、放射線障害の予防方法であって、放射線曝露の前に、かかる予防を必要とする対象体にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を医薬上許容される担体と組み合わせて投与する(ここで、放射線障害が予防される)ことを含む方法を提供する。
【0016】
本発明はまた、放射線障害の治療方法であって、放射線曝露の前に、かかる治療を必要とする対象体に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を医薬上許容される担体と組み合わせて投与する(ここで、放射線障害が治療される)ことを含む方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、放射線障害の治療方法であって、放射線曝露の前に、かかる治療を必要とする対象体にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を医薬上許容される担体と組み合わせて投与する(ここで、放射線障害が治療される)ことを含む方法を提供する。
【0018】
本発明は、放射線損傷の予防方法であって、放射線曝露の前に、かかる予防を必要とする対象体に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を医薬上許容される担体と組み合わせて投与する(ここで、放射線損傷が予防される)ことを含む方法を提供する。
【0019】
本発明はまた、放射線損傷の予防方法であって、放射線曝露の前に、かかる予防を必要とする対象体にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を医薬上許容される担体と組み合わせて投与する(ここで、放射線損傷が予防される)ことを含む方法を提供する。
【0020】
本発明は、放射線曝露を受ける危険性がある対象体における正常細胞への放射線の影響を減少させる方法であって、放射線曝露の前に、該対象体に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を投与する(ここで、該対象体における正常細胞への放射線の影響が減少する)ことを含む方法を提供する。
【0021】
本発明は、放射線曝露を受ける危険性がある対象体における正常細胞への放射線の影響を減少させる方法であって、放射線曝露の前に、該対象体にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を投与する(ここで、該対象体における正常細胞への放射線の影響が減少する)ことを含む方法を提供する。
【0022】
本発明は、電離放射線曝露を受ける危険性がある対象体における正常細胞への電離放射線の影響を減少させる方法であって、電離放射線曝露の前に、該対象体に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を投与する(ここで、該対象体における正常細胞への電離放射線の影響が減少する)ことを含む方法を提供する。
【0023】
本発明は、電離放射線曝露を受ける危険性がある対象体における正常細胞への電離放射線の影響を減少させる方法であって、電離放射線曝露の前に、該対象体にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を投与する(ここで、該対象体における正常細胞への電離放射線の影響が減少する)ことを含む方法を提供する。
【0024】
本発明はまた、放射線曝露の後に対象体が癌を発症する危険性を低下させる方法であって、電離放射線曝露の前に、かかる危険性の低下を必要とする対象体に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を投与する(ここで、放射線曝露の後に対象体が癌を発症する危険性が低下する)ことを含む方法を提供する。
【0025】
本発明はまた、放射線曝露の後に対象体が癌を発症する危険性を低下させる方法であって、電離放射線曝露の前に、かかる危険性の低下を必要とする対象体にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を投与する(ここで、放射線曝露の後に対象体が癌を発症する危険性が低下する)ことを含む方法を提供する。
【0026】
本発明は、正常細胞への放射線障害を予防する方法であって、放射線曝露の前に、正常細胞を細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、放射線障害が予防される)ことを含む方法を提供する。
【0027】
本発明は、正常細胞への放射線障害を予防する方法であって、放射線曝露の前に、正常細胞をβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、放射線障害が予防される)ことを含む方法を提供する。
【0028】
本発明は、非癌性細胞の放射線障害からの保護方法であって、放射線曝露の前に、非癌性細胞を細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、非癌性細胞が放射線障害から保護される)ことを含む方法を提供する。
【0029】
本発明は、非癌性細胞の放射線障害からの保護方法であって、放射線曝露の前に、非癌性細胞をβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、非癌性細胞が放射線障害から保護される)ことを含む方法を提供する。
【0030】
本発明はまた、非癌性細胞における放射線誘発細胞死の予防方法であって、放射線曝露の前に、非癌性細胞を細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、非癌性細胞の放射線誘発細胞死が予防される)ことを含む方法を提供する。
【0031】
本発明はまた、非癌性細胞における放射線誘発細胞死の予防方法であって、放射線曝露の前に、非癌性細胞をβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、非癌性細胞の放射線誘発細胞死が予防される)ことを含む方法を提供する。
【0032】
本発明は、癌の治療方法であって、a)かかる治療を必要とする対象体に、放射線療法と組み合わせて、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を投与すること(ここで、該治療上有効量は、正常細胞への放射線障害を予防するのに十分である);およびb)該正常細胞への放射線障害を予防しながら、該対象体に放射線療法の癌を治療するための有効な量を施す(ここで、癌が治療される)ことを含む方法を提供する。
【0033】
本発明は、癌の治療方法であって、a)かかる治療を必要とする対象体に、放射線療法と組み合わせて、β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を投与すること(ここで、該治療上有効量は、正常細胞への放射線障害を予防するのに十分である);およびb)該正常細胞への放射線障害を予防しながら、該対象体に放射線療法の癌を治療するための有効な量を施す(ここで、癌が治療される)ことを含む方法を提供する。
【0034】
本発明は、癌の治療方法であって、a)放射線療法の前に、かかる治療を必要とする対象体に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を投与すること(ここで、該治療上有効量は、正常細胞への放射線障害を予防するのに十分である);およびb)該正常細胞への放射線障害を予防しながら、該対象体に放射線療法の癌を治療するための有効な量を施す(ここで、癌が治療される)ことを含む方法を提供する。
【0035】
本発明は、癌の治療方法であって、a)放射線療法の前に、かかる治療を必要とする対象体にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を投与すること(ここで、該治療上有効量は、正常細胞への放射線障害を予防するのに十分である);およびb)該正常細胞への放射線障害を予防しながら、該対象体に放射線療法の癌を治療するための有効な量を施す(ここで、癌が治療される)ことを含む方法を提供する。
【0036】
本発明は、癌の治療方法であって、a)放射線療法の前に、かかる治療を必要とする対象体にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を投与すること(ここで、該治療上有効量は、非癌性細胞における放射線誘発細胞死を予防するのに十分である);およびb)該非癌性細胞における放射線誘発細胞死を予防しながら、該対象体に放射線療法の癌を治療するための有効な量を施す(ここで、癌が治療される)ことを含む方法を提供する。
【0037】
本発明は、癌の治療方法であって、a)放射線療法の前に、かかる治療を必要とする対象体に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を投与すること(ここで、該治療上有効量は、非癌性細胞における放射線誘発細胞死を予防するのに十分である);およびb)該非癌性細胞における放射線誘発細胞死を予防しながら、該対象体に放射線療法の癌を治療するための有効な量を施す(ここで、癌が治療される)ことを含む方法を提供する。
【0038】
本発明は、放射線障害予防用キットであって、a)細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量を含む容器、およびb)対象体における放射線障害を予防するために放射線曝露の前に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を使用することについての説明書を含むキットを提供する。
【0039】
本発明は、放射線障害予防用キットであって、a)β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量を含む容器、およびb)対象体における放射線障害を予防するために放射線曝露の前にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を使用することについての説明書を含むキットを提供する。
【0040】
本発明は、放射線障害治療用キットであって、a)細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量を含む容器、およびb)対象体における放射線障害を治療するために放射線曝露の前にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を使用することについての説明書を含むキットを提供する。
【0041】
本発明は、放射線障害治療用キットであって、a)β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量を含む容器、およびb)対象体における放射線障害を治療するために放射線曝露の前にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を使用することについての説明書を含むキットを提供する。
【0042】
本発明は、正常細胞への放射線障害を予防する方法であって、a)正常細胞を細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させること、およびb)正常細胞内の細胞周期チェックポイントを活性化させる(ここで、放射線障害が予防される)ことを含む方法を提供する。
【0043】
本発明は、正常細胞への放射線障害を予防する方法であって、a)正常細胞をβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させること、およびb)正常細胞内の細胞周期チェックポイントを活性化させる(ここで、放射線障害が予防される)を含む方法を提供する。
【0044】
本発明は、正常細胞への放射線障害を予防する方法であって、a)正常細胞を細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させること、およびb)正常細胞内のE2F1を活性化させる(ここで、放射線障害が予防される)ことを含む方法を提供する。
【0045】
本発明は、正常細胞への放射線障害を予防する方法であって、a)正常細胞をβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させること、およびb)正常細胞内のE2F1を活性化させる(ここで、放射線障害が予防される)ことを含む方法を提供する。
【0046】
本発明は、正常細胞への放射線障害を予防する方法であって、a)正常細胞を細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させること、およびb)正常細胞内のBRCA1を活性化させる(ここで、放射線障害が予防される)ことを含む方法を提供する。
【0047】
本発明は、正常細胞への放射線障害を予防する方法であって、a)正常細胞をβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させること、およびb)正常細胞内のBRCA1を活性化させる(ここで、放射線障害が予防される)ことを含む方法を提供する。
【0048】
本発明は、正常細胞への放射線障害を予防する方法であって、a)正常細胞を細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させること、およびb)正常細胞内のChk2を活性化させる(ここで、放射線障害が予防される)ことを含む方法を提供する。
【0049】
本発明は、正常細胞への放射線障害を予防する方法であって、a)正常細胞をβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させること、およびb)正常細胞内のChk2を活性化させる(ここで、放射線障害が予防される)ことを含む方法を提供する。
【0050】
本発明は、癌細胞における細胞周期チェックポイント経路の活性化方法であって、癌細胞を細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、該癌細胞の接触が結果として癌細胞における細胞周期チェックポイント経路の活性化をもたらす)ことを含む方法を提供する。
【0051】
本発明は、癌細胞における細胞周期チェックポイント経路の活性化方法であって、癌細胞をβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、該癌細胞の接触が結果として癌細胞における細胞周期チェックポイント経路の活性化をもたらす)ことを含む方法を提供する。
【0052】
本発明は、癌細胞における細胞周期チェックポイント調節因子の活性化方法であって、癌細胞を細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、該癌細胞の接触が結果として癌細胞における細胞周期チェックポイント調節因子の活性化をもたらす)ことを含む方法を提供する。
【0053】
本発明は、癌細胞における細胞周期チェックポイント調節因子の活性化方法であって、癌細胞をβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、該癌細胞の接触が結果として癌細胞における細胞周期チェックポイント調節因子の活性化をもたらす)ことを含む方法を提供する。
【0054】
本発明は、癌細胞におけるE2F1の活性化方法であって、癌細胞を細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、該癌細胞の接触が結果として癌細胞におけるE2F1の活性化をもたらす)ことを含む方法を提供する。
【0055】
本発明は、癌細胞におけるE2F1の活性化方法であって、癌細胞をβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、該癌細胞の接触が結果として癌細胞におけるE2F1の活性化をもたらす)ことを含む方法を提供する。
【0056】
本発明は、癌細胞におけるE2F1チェックポイント経路の活性化方法であって、癌細胞を細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、該癌細胞の接触が結果として癌細胞におけるE2F1チェックポイント経路の活性化をもたらす)ことを含む方法を提供する。
【0057】
本発明は、癌細胞におけるE2F1チェックポイント経路の活性化方法であって、癌細胞をβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、該癌細胞の接触が結果として癌細胞におけるE2F1チェックポイント経路の活性化をもたらす)ことを含む方法を提供する。
【0058】
本発明は、癌細胞におけるBRCA1の活性化方法であって、癌細胞を細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、該癌細胞の接触が結果として癌細胞におけるBRCA1の活性化をもたらす)ことを含む方法を提供する。
【0059】
本発明は、癌細胞におけるBRCA1の活性化方法であって、癌細胞をβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、該癌細胞の接触が結果として癌細胞におけるBRCA1の活性化をもたらす)ことを含む方法を提供する。
【0060】
本発明は、癌細胞におけるChk2の活性化方法であって、癌細胞を細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、該癌細胞の接触が結果として癌細胞におけるChk2の活性化をもたらす)ことを含む方法を提供する。
【0061】
本発明は、癌細胞におけるChk2の活性化方法であって、癌細胞をβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、該癌細胞の接触が結果として癌細胞におけるChk2の活性化をもたらす)ことを含む方法を提供する。
【0062】
本発明は、癌細胞におけるATM/ATRチェックポイント経路の活性化方法であって、癌細胞を細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、該癌細胞の接触が結果として癌細胞におけるATM/ATRチェックポイント経路の活性化をもたらす)ことを含む方法を提供する。
【0063】
本発明は、癌細胞におけるATM/ATRチェックポイント経路の活性化方法であって、癌細胞をβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、該癌細胞の接触が結果として癌細胞におけるATM/ATRチェックポイント経路の活性化をもたらす)ことを含む方法を提供する。
【0064】
本発明は、癌細胞におけるChk2チェックポイント経路の活性化方法であって、癌細胞を細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、該癌細胞の接触が結果として癌細胞におけるChk2チェックポイント経路の活性化をもたらす)ことを含む方法を提供する。
【0065】
本発明は、癌細胞におけるChk2チェックポイント経路の活性化方法であって、癌細胞をβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、該癌細胞の接触が結果として癌細胞におけるChk2チェックポイント経路の活性化をもたらす)ことを含む方法を提供する。
【0066】
本発明は、癌細胞中のE2F1のレベルを上昇させる方法であって、癌細胞を細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、該癌細胞の接触が結果として癌細胞中のE2F1のレベルの上昇をもたらす)ことを含む方法を提供する。
【0067】
本発明は、癌細胞中のE2F1のレベルを上昇させる方法であって、癌細胞をβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、該癌細胞の接触が結果として癌細胞中のE2F1のレベルの上昇をもたらす)ことを含む方法を提供する。
【0068】
本発明は、癌細胞中のBRCA1のレベルを上昇させる方法であって、癌細胞を細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、該癌細胞の接触が結果として癌細胞中のE2F1のレベルの上昇をもたらす)ことを含む方法を提供する。
【0069】
本発明は、癌細胞中のBRCA1のレベルを上昇させる方法であって、癌細胞をβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、該癌細胞の接触が結果として癌細胞中のE2F1のレベルの上昇をもたらす)ことを含む方法を提供する。
【0070】
本発明は、癌細胞中のリン酸化Chk2の割合を増大させる方法であって、癌細胞を細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、該癌細胞の接触が結果として癌細胞中のリン酸化Chk2の割合の増大をもたらす)ことを含む方法を提供する。
【0071】
本発明は、癌細胞中のリン酸化Chk2の割合を増大させる方法であって、癌細胞をβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、該癌細胞の接触が結果として癌細胞中のリン酸化Chk2の割合の増大をもたらす)ことを含む方法を提供する。
【0072】
本発明はまた、放射線障害または放射線損傷予防用キットであって、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量を含む容器、および、放射線曝露の前に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質を投与することによって対象体における放射線障害または放射線損傷を予防するために細胞周期チェックポイント活性化の調節物質を使用することについての説明書を含むキットを提供する。
【0073】
本発明はまた、放射線障害または放射線損傷予防用キットであって、β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量を含む容器、および、放射線曝露の前にβ−ラパコンを投与することによって対象体における放射線障害または放射線損傷を予防するためにβ−ラパコンを使用することについての説明書を含むキットを提供する。
【0074】
本発明はまた、放射線障害または放射線損傷予防用キットであって、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量を含む容器、および、放射線曝露の直後に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質を投与することによって対象体における放射線障害または放射線損傷を予防するために細胞周期チェックポイント活性化の調節物質を使用することについての説明書を含むキットを提供する。
【0075】
本発明はまた、放射線障害または放射線損傷予防用キットであって、β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量を含む容器、および、放射線曝露の直後にβ−ラパコンを投与することによって対象体における放射線障害または放射線損傷を予防するためにβ−ラパコンを使用することについての説明書を含むキットを提供する。
【0076】
本発明はまた、放射線障害または放射線損傷治療用キットであって、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量を含む容器、および、対象体における放射線障害または放射線損傷を治療するために細胞周期チェックポイント活性化の調節物質を使用することについての説明書を含むキットを提供する。
【0077】
本発明はまた、放射線障害または放射線損傷治療用キットであって、β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量を含む容器、および、対象体における放射線障害または放射線損傷を治療するためにβ−ラパコンを使用することについての説明書を含むキットを提供する。
【0078】
本発明はまた、放射線障害または放射線損傷治療用キットであって、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量を含む容器、および、放射線曝露の直後に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質を投与することよって対象体における放射線障害または放射線損傷を治療するために細胞周期チェックポイント活性化の調節物質を使用することについての説明書を含むキットを提供する。
【0079】
本発明はまた、放射線障害または放射線損傷治療用キットであって、β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量を含む容器、および、放射線曝露の直後にβ−ラパコンを投与することよって対象体における放射線障害または放射線損傷を治療するためにβ−ラパコンを使用することについての説明書を含むキットを提供する。
【0080】
本発明はまた、放射性物質の偶発的または意図的な放出の後に起こる放射線障害または放射線損傷を予防する方法であって、かかる予防を必要とする対象体に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量を投与する(ここで、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、対象体が放射性物質の偶発的または意図的な放出に曝露される前に投与され、対象体における放射線障害または放射線損傷を予防する)ことを含む方法を提供する。
【0081】
本発明はまた、放射性物質の偶発的または意図的な放出の後に起こる放射線障害または放射線損傷を予防する方法であって、かかる予防を必要とする対象体にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量を投与する(ここで、β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体は、対象体が放射性物質の偶発的または意図的な放出に曝露される前に投与され、対象体における放射線障害または放射線損傷を予防する)ことを含む方法を提供する。
【0082】
本発明はまた、放射性物質の偶発的または意図的な放出の後に起こる放射線障害または放射線損傷を予防する方法であって、かかる予防を必要とする対象体に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量を投与する(ここで、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、対象体が放射性物質の偶発的または意図的な放出に曝露された直後に投与され、対象体における放射線障害または放射線損傷を予防する)ことを含む方法を提供する。
【0083】
本発明はまた、放射性物質の偶発的または意図的な放出の後に起こる放射線障害または放射線損傷を予防する方法であって、かかる予防を必要とする対象体にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量を投与する(ここで、β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体は、対象体が放射性物質の偶発的または意図的な放出に曝露された直後に投与され、対象体における放射線障害または放射線損傷を予防する)ことを含む方法を提供する。
【0084】
本発明は、癌に罹患している対象体の治療方法であって、a)該対象体に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の、正常細胞を放射線損傷から保護するために十分な量を投与すること、b)患者内の細胞周期チェックポイントを活性化させること、およびc)正常細胞への放射線損傷を予防しながら、該対象体に放射線の癌を治療するための有効な量を照射することを含む方法を提供する。
【0085】
本発明は、癌に罹患している対象体の治療方法であって、a)該対象体にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の、正常細胞を放射線損傷から保護するために十分な量を投与すること、b)患者内の細胞周期チェックポイントを活性化させること、およびc)正常細胞への放射線損傷を予防しながら、該対象体に放射線の癌を治療するための有効な量を照射することを含む方法を提供する。
【0086】
本発明はまた、放射線曝露の前または直後に、対象体に細胞周期チェックポイント活性化剤、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を投与することにより正常細胞への放射線障害を予防する方法を提供する。本発明はまた、治療線量の放射線への曝露の前に、対象体に細胞周期チェックポイント活性化剤、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を投与することにより正常細胞が放射線障害から保護される、放射線治療方法を提供する。
【0087】
本発明はまた、放射線曝露の前または直後に、対象体にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を投与することにより正常細胞への放射線障害を予防する方法を提供する。本発明はまた、治療線量の放射線への曝露の前に、対象体にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を投与することにより正常細胞が放射線障害から保護される、放射線治療方法を提供する。
【0088】
本発明はまた、正常な細胞または組織への放射線損傷または障害を予防する方法を提供する。該方法は、対象体に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質(例えば、β−ラパコン、またはその誘導体もしくはアナログ)の有効量を投与し、その結果、その後に細胞または組織が放射線に曝露された後に正常な細胞または組織への放射線損傷または障害が(未処置の細胞または組織と比べ)減少するかまたはなくなる工程を含む。
【0089】
本発明はまた、放射線に曝露した対象体における放射線損傷または障害の治療方法を提供する。該方法は、対象体に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の有効量を投与し、その結果、放射線損傷または障害が治療される工程を含む。
【0090】
本発明はまた、放射線による損傷または放射線による障害をもつ非癌性細胞の死を予防する方法を提供する。該方法は、放射線による損傷または放射線による障害をもつ非癌性細胞を細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の有効量と接触させ、その結果、放射線による損傷または放射線による障害をもつ非癌性細胞の死が予防される工程を含む。
【0091】
本発明はまた、放射線に曝露した対象体における癌の予防方法を提供する。該方法は、対象体に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の有効量を投与し、その結果、対象体における癌の発症が予防される工程を含む。
【0092】
本発明はまた、改良された放射線治療方法、例えば、癌の治療のための放射線療法を提供する。該方法は、対象体に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質(好ましくは、β−ラパコン、またはその誘導体もしくはアナログ)の有効な正常細胞保護量を投与し、次いで、該対象体に放射線の有効な量を照射し、その結果、(細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の不在下における放射線療法と比べ)正常細胞への放射線障害が減少するかまたはなくなり、該対象体が治療される工程を含む。ある種の実施態様において、該対象体にさらなる化学療法剤を投与してもよい。
【0093】
本発明はまた、放射線障害の治療用または予防用キットを提供する。該キットは、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質(好ましくは、β−ラパコン、またはその誘導体もしくはアナログ)の有効量を含む容器を、(例えば、放射線曝露の前に該対象体に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質を投与することにより)対象体への放射線障害を予防するために細胞周期チェックポイント活性化の調節物質を使用することについての説明書と一緒に含む。ある種の態様において、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、医薬上許容される担体または希釈剤と一緒に処方されてもよい。
【0094】
(発明の詳細な説明)
本明細書で用いる場合、「β−ラパコン」なる語句は、化学構造:
【化1】

によって表される3,4−ジヒドロ−2,2−ジメチル−2H−ナフト[1,2−b]ピラン−5,6−ジオンをいう。
【0095】
好ましい誘導体およびアナログは以下に記載する。
【0096】
理論によって制限されないが、本発明は、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質(例えば、β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体)による細胞周期チェックポイントの活性化に対する理解および該活性化のための方法を含み、また、一部これらの理解および方法に基づく。細胞周期チェックポイントの活性化は、一般に、Activated Checkpoint Therapy(登録商標)またはACT(登録商標)と称される。ACT(登録商標)は、正常細胞と比べた癌細胞に対する選択性を提供し、したがって、選択性の低い治療法よりも安全である。
【0097】
「細胞周期チェックポイント活性化の調節物質」なる用語は、本明細書で用いる場合、好ましくはチェックポイント媒介DNA修復メカニズムを活性化することによるかまたは細胞周期活性を調節する細胞経路における機能不全または変異のために失われたチェックポイント活性を復元することにより、細胞におけるチェックポイント活性化を変更する(好ましい実施態様においては、1つまたはそれ以上の細胞周期チェックポイントを活性化する)能力を有する化合物をいう。当該技術分野において知られているように、主な細胞周期チェックポイントは、G1/S期移行時およびG2/M期移行時に生じる。モデルでは、4つの主な細胞周期チェックポイントが遺伝物質の完全性をモニターする。DNA合成は、G1の間の調製が細胞周期継続のために満足のいくものであったかを細胞が決める制限ポイント(Rポイント)を過ぎただけで始まる。第2のチェックポイントは、S期における複製開始の間に生じる。第3および第4のチェックポイントは、それぞれ、G2期およびM期に起こる。細胞周期チェックポイント活性化の調節は、さらに、例えば、C.J. Li et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1999), 96(23), 13369-13374、およびY. Li et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2003), 100(5), 2674-2678、およびPCT公開WO 00/61142(Pardee et al.)にて検討されている。本発明において使用するための好ましい細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、好ましくは実質的なDNA損傷を引き起こすことなく、チェックポイント活性化を誘発する(すなわち、1つまたはそれ以上の細胞周期チェックポイント(好ましくはG1/S期の)を活性化する)。また、ある種の好ましい細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、細胞中のE2F(より好ましくはE2F1)のレベルまたは活性を増強する能力を有する。細胞中のE2F活性またはレベルを増強する能力を有する化合物を包含する細胞周期チェックポイント活性化の調節物質についてのスクリーニング方法は、PCT特許出願番号PCT/US03/22631(Li et al.)に記載されているものが挙げられる。ある種の実施態様において、好ましい細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、細胞が癌性細胞である場合にはアポトーシスを引き起こすのに十分な量によって細胞中のE2Fのレベルまたは活性を増強する能力を有する。より好ましい細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、細胞が癌性細胞である場合にはアポトーシスを引き起こすのに十分な量によって細胞中のE2F1のレベルまたは活性を上昇させる能力を有する。より好ましい細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、細胞が正常細胞である場合には細胞を放射線障害または損傷から保護するのに十分な量によって細胞中のE2F1のレベルまたは活性を増強する能力を有する。一の態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、β−ラパコンではない。
【0098】
さらに、理論によって制限されないが、DNA損傷に対する細胞性応答はATM/ATRシグナル伝達経路によって調節される(ここで、ATMおよびATRはホスファチジル−イノシトール−3キナーゼファミリー(PI3K)のプロテインキナーゼである)。DNA損傷に応答して、ATMおよびATRはそれぞれChk2およびChk1をリン酸化し、次に、細胞周期のG1/S期で細胞を停止することならびにDNA修復に関与するタンパク質を誘発および活性化することに関与する種々の基質を活性化する。Chk2は、腫瘍抑制因子BRCA1を含むDNA修復に関与するタンパク質を活性化し、それによりDNA損傷後のDNA修復能を増強することが示されている。Chk2はまた、p53を直接リン酸化すること、およびp53を分解の標的とするユビキチンリガーゼであるMdm2を阻害することのいずれによってもp53を安定化することが示されている。かかる条件下にて、p53のレベル増加は、G1/S停止、DNA修復、および回復不能なDNA損傷をもつ細胞におけるアポトーシスを引き起こす。さらに、理論によって制限されないが、Chk2は、条件に依存して細胞周期停止およびDNA修復を誘発したり、DNA損傷が重篤すぎる場合にアポトーシスを開始したりすることができる重要な細胞周期調節因子であると考えられる。ある種の実施態様において、好ましい細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、細胞が癌性細胞である場合にはアポトーシスを引き起こすのに十分な量によって細胞中のChk2のレベルまたは活性を増強する能力を有する。
【0099】
さらに、理論によって制限されないが、E2F1はE2Fファミリーの核転写因子における関連タンパク質の1つであり、このファミリーは、細胞周期の調節において非常に重要である。E2F1は、G1/Sチェックポイントの通過を促進することによって細胞増殖に必要とされる。正常細胞の増殖の間に、転写的に活性のE2F1は、Rbのリン酸化の後に不活性E2F1/Rb複合体から遊離される。E2F1レベルは上昇し、G1を介する進行を促進する。細胞がS期の終わりに向かって移動する時、E2F1レベルは進行が続くように減少しなければならない。細胞周期におけるこの時点でのE2F1の持続的上昇は、S期チェックポイントの活性化およびその結果生じる細胞死(例えば、アポトーシスによる)を引き起こす。かくして、細胞周期の期およびE2F1上昇の動態に依存して、この調節タンパク質は、細胞増殖を促進したり、細胞周期遅延、DNA修復または細胞死を誘発したりすることができる。図1に示すように、細胞周期のG1期の間に、Rbのリン酸化は、活性E2F1を遊離するRb−E2F1複合体の分解を引き起こし、次いで、重要な細胞周期エフェクターの転写を促進することによってS期への移行を刺激する。S期の間に、E2F1は進行が続くように分解されなければならない。しかしながら、DNA損傷の存在下では、E2F1レベルは減少するのではなくむしろ増加し、細胞周期遅延およびDNA修復を生じ、損傷が重篤な場合には細胞死を生じる。
【0100】
本明細書で用いる場合、「細胞周期チェックポイント経路」とは、細胞周期チェックポイントの調節に関与する生化学的経路をいう。細胞周期チェックポイント経路は、細胞周期チェックポイントを含む1つまたはそれ以上の機能に対する刺激効果または抑制効果またはその両方を有し得る。細胞周期チェックポイント経路は、少なくとも2つの物質の合成物(compositions of matter)、好ましくは、タンパク質から構成されており、そのどちらも細胞周期チェックポイントの調節に寄与する。細胞周期チェックポイント経路は、細胞周期チェックポイント経路の1つまたはそれ以上のメンバーの活性化を介して活性化され得る。好ましくは、細胞周期チェックポイント経路は生化学シグナリング経路である。
【0101】
本明細書で用いる場合、「細胞周期チェックポイント調節因子」とは、細胞周期チェックポイントの調節において少なくとも部分的に機能することができる物質の合成物(composition of matter)をいう。細胞周期チェックポイント調節因子は、細胞周期チェックポイントを含む1つまたはそれ以上の機能に対する刺激効果または抑制効果またはその両方を有し得る。一の態様では、細胞周期チェックポイント調節因子はタンパク質である。別の態様では、細胞周期チェックポイント調節因子はタンパク質ではない。一の態様では、細胞周期チェックポイント調節因子は、ATM、ATR、Chk1、Chk2、E2F1、BRCA1、Rb、p53、p21、Mdm2、Cdc2、Cdc25、および14−4−3[シグマ]からなる群から選択される。
【0102】
一の態様では、必要とする対象体への細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の投与は、結果として、正常細胞における細胞周期チェックポイントの活性化をもたらす。別の態様では、必要とする対象体への細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の投与は、結果として、細胞増殖性疾患によって特徴付けられる細胞における細胞周期チェックポイントの活性化をもたらす。別の態様では、必要とする対象体への細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の投与は、結果として、癌細胞における細胞周期チェックポイントの活性化をもたらす。別の態様では、必要とする対象体への細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の投与は、正常細胞および癌細胞における細胞周期チェックポイントの活性化をもたらす。別の態様では、必要とする対象体への細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の投与は、正常細胞および細胞増殖性障害によって特徴付けられる細胞における細胞周期チェックポイントの活性化をもたらす。別の態様では、必要とする対象体への細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の投与は、癌細胞および細胞増殖性障害によって特徴付けられる細胞における細胞周期チェックポイントの活性化をもたらす。別の態様では、必要とする対象体への細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の投与は、正常細胞、癌細胞、および細胞増殖性障害によって特徴付けられる細胞における細胞周期チェックポイントの活性化をもたらす。
【0103】
いずれもの特定の理論に制約されることなく、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質(例えば、チェックポイントの活性化因子)で処置された正常細胞は、細胞周期チェックポイント(例えば、G1またはS期チェックポイント)へ進み、それによって、DNA修復酵素および細胞修復メカニズムの他の要素のレベルが増加すると考えられる。(上記したように、癌性細胞は、β−ラパコンのような細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の有効量で処置された場合、アポトーシスを受ける)。したがって、このような処置された正常細胞は、未処置の正常細胞と比べて、放射線によって引き起こされるいずれもの損傷または障害を良好に修復することができる。未処置の正常細胞は、放射線障害または損傷の修復をすぐには開始せず、この未修復損傷は、さらなる障害または損傷(例えば、不正確に合成されたDNAおよびRNA転写物による)の蓄積を生じる可能性がある。未処置の損傷細胞は最終的に細胞周期チェックポイントに到達するであろうが、蓄積した損傷は、細胞が修復するには大きすぎ、結果として細胞のアポトーシスを引き起こすことがある。処置した正常細胞は、いずれもの放射線障害または損傷を素早く修復し、さらなる障害または損傷を回避し、細胞が生存する可能性を増大させる可能性が高い。さらに、理論によって制限されないが、β−ラパコンによるチェックポイントの活性化は、増強したDNA修復能をリンパ球に与え、成熟したリンパ球および未熟なリンパ球の放射線感受性増殖フラクションの減少、および修復可能ではない免疫細胞の除去を与えると考えられる。
【0104】
一の態様では、必要とする対象体への細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の有効量の投与は、正常細胞におけるDNA損傷を治療または予防する。別の態様では、必要とする対象体への細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の有効量の投与は、正常細胞における細胞性DNA修復活性の増強または正常細胞における検出可能なDNA損傷の減少を引き起こす。
【0105】
一の態様では、活性化することとは、1つまたはそれ以上の物質の合成物(例えば、タンパク質または核酸)を、所望の生物学的機能を果たすのに適した状態におくことをいう。一の態様では、活性化能を有する物質の合成物はまた非活性化状態を有する。一の態様では、活性化した物質の合成物は、抑制性生物学的機能または刺激性生物学的機能またはその両方を有することができる。
【0106】
一の態様では、上昇とは、物質の合成物(例えば、タンパク質または核酸)の所望の生物学的活性の増強をいう。一の態様では、上昇は、物質の合成物の濃度の増加を介して生じ得る。一の態様では、上昇することとは、物質の合成物(例えば、タンパク質または核酸)の所望の生物学的活性の増大をいう。
【0107】
本明細書で用いる場合、「選択的に」なる用語は、一の集団における方が別の集団におけるよりも高い頻度で生じる傾向にあることを意味する。一の態様では、比較される集団は細胞集団である。一の態様では、本発明の化合物は、一の分子標的(例えば、E2F1)を選択的に活性化するが、別の分子標的(例えば、アクチン)についてはそうではない。別の好ましい態様では、本発明の化合物は、一の分子標的(例えば、E2F1)を選択的に上昇させるが、別の分子標的(例えば、アクチン)についてはそうではない。別の態様では、本発明の化合物は、一の分子標的を選択的に阻害するが、別の分子標的についてはそうではない。好ましくは、ある事象が集団Aにおいて集団Bと比べて2倍以上の高い頻度で生じる場合には、その事象は集団Bと比べて集団Aにおいて選択的に生じている。より好ましくは、ある事象が集団Aにおいて5倍以上の高い頻度で生じる場合、その事象は選択的に生じている。より好ましくは、ある事象が集団Aにおいて集団Bと比べて10倍以上、より好ましくは50倍以上、さらにより好ましくは100倍以上、最も好ましくは1000倍以上の高い頻度で生じる場合には、その事象は選択的に生じている。例えば、細胞死が癌細胞において正常細胞と比べて2倍以上の高い頻度で生じる場合には、その細胞死は癌細胞において選択的に生じると言われる。
【0108】
好ましい態様では、本発明の化合物(例えば、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体)は、分子標的(例えば、E2F1)の活性を調節する。一の態様では、調節することとは、分子標的の活性を刺激または阻害することをいう。好ましくは、本発明の化合物が分子標的の活性を、該化合物の存在だけを欠いている以外は同一の条件下での分子標的の活性と比べて少なくとも2倍、刺激または阻害する場合には、この本発明の化合物は分子標的の活性を調節している。より好ましくは、本発明の化合物が分子標的の活性を、該化合物の存在だけを欠いている以外は同一の条件下での分子標的の活性と比べて少なくとも4倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、または少なくとも50倍、刺激または阻害している場合には、この本発明の化合物は分子標的の活性を調節している。分子標的の活性は、再現性のある手段によって測定され得る。分子標的の活性は、インビトロまたはインビボで測定され得る。例えば、分子標的の活性は、酵素活性アッセイまたはDNA結合アッセイによってインビトロで測定することができるか、または、分子標的の活性は、レポーター遺伝子の発現についてアッセイすることによってインビボで測定することができる。
【0109】
一の態様では、本発明の化合物が分子標的の活性を、該化合物の存在だけを欠いている以外は同一の条件下での分子標的の活性と比べて10%以上刺激または阻害しない場合、この本発明の化合物は分子標的の活性を有意には調節していない。
【0110】
本明細書で用いる場合、「代謝物」なる用語は、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質と同様のインビボ活性を示す、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、アナログもしくは誘導体の代謝の産物を意味する。
【0111】
本明細書で用いる場合、「プロドラッグ」なる用語は、アミノ酸部分または他の水可溶化部分のような1つまたはそれ以上のプロ部分と共有結合した本発明の化合物(例えば、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体)を意味する。本発明の化合物は、加水分解性、酸化性および/または酵素性遊離メカニズムを介してプロ部分から遊離され得る。一の実施態様では、本発明のプロドラッグ組成物は、水溶性の増強、安定性の向上、および薬物動態学的プロファイルの向上の付加利益を示す。プロ部分は、所望のプロドラッグ特性を得るように選択され得る。例えば、プロ部分、例えば、アミノ酸部分または他の水可溶化部分は、可溶性、安定性、生物学的利用能、および/またはインビボ送達または取り込みに基づいて選択され得る。
【0112】
本明細書で用いる場合、「塩」なる用語は、医薬上許容される塩であり、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、乳酸塩および酒石酸塩を含む酸付加塩;Na、K、Liのようなアルカリ金属陽イオン、MgまたはCaのようなアルカリ土類金属塩、または有機アミン塩を挙げることができる。
【0113】
本明細書で用いる場合、「細胞を接触させること」とは、化合物または他の物質の合成物を細胞と直接接触させるか、または、細胞中にて所望の生物学的効果を誘発するのに十分に接近している状態をいう。
【0114】
本明細書で用いる場合、「対象体」なる用語は、イヌ、ネコ、ラット、マウス、サル、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ラクダ、および最も好ましくはヒトを包含する哺乳動物をいう。好ましい実施態様では、対象体は、治療を必要とするヒトである。
【0115】
本明細書で用いる場合、「必要とする対象体」は、放射線曝露に対する予防または処置を必要とする対象体である。ある種の実施態様では、対象体は、正常な対象体、例えば、既知のまたは診断された異常細胞を有しない対象体、例えば、癌のない対象体であり得る。他の実施態様(例えば、本発明の放射線治療方法)では、対象体は、細胞増殖性障害(例えば、癌または前癌性状態)を有する対象体、または細胞増殖性障害を発症するリスクが人口全般と比べて高くなっている対象体をいう。
【0116】
一の実施態様では、本発明によって処置される対象体は、電離放射線曝露を受ける危険性がある。一の態様では、対象体は、職務執行過程で放射線に曝露され得る(例えば、該従業員は放射線により汚染されていることが知られているかまたはそう考えられる場所に入ることが要求される)ために、電離放射線曝露を受ける危険性がある。一の態様では、対象体が核施設で働いているために、または対象体が放射線で汚染されていることが知られているかまたはそう考えられる場所に入るであろう緊急作業員(例えば、消防士または医療関係者)であるために、該対象体は、従業員としての職務執行過程で電離放射線曝露を受ける危険性がある。別の態様では、対象体(例えば、一般市民または軍隊の一員である対象体)は、信憑性の高い放射能攻撃の危険性のために放射線曝露を被る危険性がある。一の態様では、対象体は、兵士としての職務執行過程で電離放射線曝露を受ける危険性がある。
【0117】
本明細書で用いる場合、「細胞増殖性障害」なる用語は、細胞の未制御の増殖または異常な増殖またはその両方が望ましくない状態または疾患(癌性であってもなくてもよい)の発症を引き起こす可能性がある状態をいう。一の態様では、細胞増殖性障害は、前癌または前癌性状態を誘発する。別の態様では、細胞増殖性障害は癌を誘発する。一の態様では、「前癌細胞」または「前癌性細胞」は、前癌または前癌性状態である細胞増殖性障害が現れている細胞である。別の態様では、「癌細胞」または「癌性細胞」は、癌である細胞増殖性障害が現れている細胞である。いずれもの再現性のある測定手段が、癌細胞または前癌性細胞を同定するために使用され得る。好ましい態様では、該細胞または前癌性細胞は、組織試料(例えば、生検試料)の組織学的分類または類別によって同定される。別の態様では、癌細胞または前癌性細胞は、適当な分子マーカーの使用によって同定される。一の態様では、細胞増殖性障害としては、例えば、肺癌および肺の前癌性状態が挙げられる。一の態様では、細胞増殖性障害としては、過形成、化生および異形成が挙げられる。
【0118】
本明細書で用いる場合、「正常(な)細胞」なる用語は、前癌性ではない非癌性または非過剰増殖性細胞をいう;かくして、正常細胞は、癌性または前癌性細胞のDNA損傷特性を有していない。本明細書で用いる場合、「正常(な)細胞」は、「細胞増殖性障害」の一部として分類することができない細胞である。一の態様では、正常細胞は、望ましくない状態または疾患の発症を引き起こす可能性がある未制御の増殖または異常な増殖またはそのどちらもない。好ましくは、正常細胞は、正常に機能する細胞周期チェックポイント制御メカニズムを有する。本明細書で用いる場合、「非癌性細胞」なる用語は、前癌性ではなく、癌細胞でもない(すなわち、癌性でもない)、非過剰増殖性細胞をいう。
【0119】
本明細書で用いる場合、「正常な対象体」または「健康な対象体」なる用語は、癌または他の細胞増殖性障害を有しない対象体をいう。本発明は、細胞、器官または対象体全体への放射線障害を治療または予防するための方法およびキットを提供する。
【0120】
本明細書で用いる場合、「単独療法」とは、必要とする対象体への単一の活性または治療的化合物の投与をいう。好ましくは、単独療法は、活性化合物の治療上有効量の投与を伴うであろう。例えば、β−ラパコンでの癌単独療法は、癌の治療を必要とする対象体へのβ−ラパコンの治療上有効量の投与を含む。単独療法は、複数の活性化合物の組み合わせが好ましくは治療上有効量で存在する該組み合わせの成分ごとに投与される併用療法と対比され得る。一の態様では、本発明の化合物(例えば、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体)での単独療法は、所望の生物学的効果の誘発において併用療法よりも有効である。
【0121】
本明細書で用いる場合、「治療上有効量」とは、研究者または臨床医によって求められている組織、系、動物またはヒトの所望の生物学的または医学的応答を発揮するであろう薬物または薬剤の量を意味する。一の態様では、生物学的または医学的応答は癌の処置である。別の態様では、生物学的または医学的応答は、細胞増殖性障害の処置または予防である。別の態様では、生物学的または医学的応答は、正常な細胞および対象体への放射線障害または損傷の治療または予防である。
【0122】
本明細書で用いる場合、「放射線」なる用語は、細胞損傷を引き起こす能力のある、電離放射線を包含する放射線をいう。かかる放射線の形態としては、α線、β線、X線、γ線および中性子が挙げられる。一の態様では、電離放射線は、電気的に中性の原子から電子を放出させて荷電原子またはイオンを残すのに十分なエネルギーを有する放射線である。一の態様では、電離放射線は、ヒトにおいて発癌性、変異性または催奇性健康影響を及ぼし得る155電子ボルト以上の線量の放射線である。一の態様では、α線は、α線またはα粒子(ヘリウム原子核)である。一の態様では、β線は、β粒子(電子)である。一の態様では、高周波電磁波であるX線は、その発生位置を除いてγ線と一般に同一である。一の態様では、中性子はそれ自身電離していないが、中性子と核との衝突は電離を引き起こす他の荷電粒子の放出を引き起こす。紫外線(UV)のような細胞への損傷を引き起こすのに十分なエネルギーをもつ他の放射線形態も含まれる。放射線源としては、自然発生的であっても人工的であってもよい放射性同位元素、および宇宙線が挙げられる。放射線は、放射性同位元素の漸次的崩壊によって、または核分裂もしくは核融合事象(例えば、原子爆弾または原子炉における)によって放射され得る。ある好ましい実施態様では、放射線は、X線またはγ線である。他の好ましい実施態様では、放射線は、β線である。ある実施態様では、放射線は、放射線療法によるものである。ある実施態様では、放射線は、放射性降下物または放射能汚染による放射線である。
【0123】
本明細書で用いる場合、「治療すること」とは、疾患、状態または障害と闘うことを目的とする患者の管理およびケアをいい、症状もしくは合併症の発症の予防、症状もしくは合併症の軽減、または疾患、状態もしくは障害の除去のための本発明の化合物の投与を含む。
【0124】
本明細書で用いる場合、「放射線損傷」なる用語は、細胞中の核酸分子への損傷をいい、該損傷は細胞の放射線曝露によって引き起こされる。例えば、放射線曝露は、結果として核酸の二本鎖切断を引き起こす可能性がある。別の例としては、放射線曝露は、結果として核酸の一本鎖ニック、切断またはギャップ、および核酸塩基への損傷または核酸塩基の欠失を引き起こす可能性がある。別の例としては、放射線曝露は、結果として核酸トランスロケーションまたは種々の他の染色体異常を引き起こす可能性がある。核酸への放射線損傷は、直接的であっても間接的であってもよく、例えば、放射線はフリーラジカルを作りだすことができ、次に、核酸損傷を誘発する。本明細書で用いる場合、「放射線損傷を予防すること」なる用語は、処置細胞における1つまたはそれ以上の放射線損傷の徴候を未処置細胞と比べて除去、寛解または軽減することを意味する。本明細書で用いる場合、「細胞または対象体を放射線損傷から保護すること」なる用語は、処置細胞における1つまたはそれ以上の放射線損傷の徴候を未処置細胞と比べて除去または軽減することを意味する。一の態様では、細胞における放射線損傷を予防すること(または治療すること)とは、本発明に従って処置した細胞における1つまたはそれ以上の核酸分子への損傷を未処置細胞と比べて少なくとも約10%(より好ましくは、20%、30%、40%、50%、80%、90%または95%)軽減することを含む。一の態様では、放射線損傷を予防すること(または治療すること)とは、正常細胞におけるDNA修復を増強することを意味する。
【0125】
本明細書で用いる場合、「放射線障害を予防すること」なる用語は、処置した細胞、器官または対象体における1つまたはそれ以上の放射線障害の徴候または症状を未処置の細胞、器官または対象体と比べて除去、寛解または軽減すること、または対象体の生存率を増加させることを意味する。本明細書で用いる場合、「細胞または対象体を放射線障害から保護すること」なる用語は、処置した細胞または対象体における1つまたはそれ以上の放射線障害の徴候または症状を未処置の細胞または対象体と比べて除去または軽減すること、または対象体の生存率を増加させることを意味する。細胞における放射線障害の症状または徴候は、当該技術分野において知られており、壊死もしくはアポトーシスによる細胞死または染色体損傷を誘発する。好ましい実施態様では、細胞における放射線障害を予防すること(または治療すること)とは、本発明に従って処置した正常細胞または非癌性細胞における細胞死を未処置細胞と比べて少なくとも約10%(より好ましくは、20%、30%、40%、50%、80%、90%または95%)軽減することを含む。例えば、細胞死を90%軽減することとは、本発明の化合物で処置していない細胞1000個の集団中n個の細胞が照射から生き延びる場合、細胞1000個の等価集団を本発明の化合物の有効量で前処置し、次いで、照射すると、生き延びる細胞の個数が{n+[(1000−n)×0.9]}となるであろうということを意味する。集団中の細胞の個数は、いずれもの再現性のある手段によって測定することができる。一の態様では、集団中の細胞の個数は、蛍光活性化細胞選別装置(FACS)によって測定される。別の態様では、集団中の細胞の個数は、免疫蛍光顕微鏡法によって測定される。別の態様では、集団中の細胞の個数は、光学顕微鏡法によって測定される。別の態様では、細胞死を測定する方法は、Li et al., (2003) Proc Natl Acad Sci USA. 100(5): 2674-8に示されるとおりである。好ましい態様では、細胞死は、アポトーシスの結果生じる。対象体における放射線障害の症状または徴候は、当該技術分野で知られており、悪心、嘔吐、脱毛、貧血、血小板減少症、白血球減少症、食欲不振、放射線によるやけど、発癌(癌の発症または促進)および死のような長期作用および短期作用の両方を含む。ある好ましい実施態様では、対象体における放射線障害を予防すること(または治療すること)とは、本発明に従って処置した対象体における死亡率(death rates)(例えば、死亡率(mortality rates))を未処置の対象体と比べて少なくとも約10%(より好ましくは、20%、30%、40%、50%、80%、90%または95%)減少させることを含む。ある好ましい実施態様では、対象体における放射線障害を予防すること(または治療すること)とは、本発明に従って処置した対象体におけるメディアン生存時間を未処置の対象体と比べて少なくとも約10%(より好ましくは、20%、30%、40%、50%、80%、90%または95%)増加させることを含む。ある好ましい実施態様では、対象体における放射線障害を予防すること(または治療すること)とは、本発明に従って処置した対象体における貧血を未処置の対象体と比べて少なくとも約10%(より好ましくは、20%、30%、40%、50%、80%、90%または95%)軽減することを含む。別の実施態様では、対象体における放射性障害を予防すること(または治療すること)とは、処置した対象体における癌の発症、形成または促進を未処置の対象体と比べて少なくとも約10%(より好ましくは、20%、30%、40%、50%、80%、90%または95%)軽減することを含む。別の実施態様では、対象体における放射線障害を予防すること(または治療すること)とは、処置した対象体の集団における癌の発症、形成または促進を未処置の対象体と比べて少なくとも約10%(より好ましくは、20%、30%、40%、50%、80%、90%または95%)軽減することを含む。別の実施態様では、対象体における放射線障害を予防すること(または治療すること)とは、処置した対象体の集団における日和見感染症の発生率を未処置の対象体と比べて少なくとも約10%(より好ましくは、20%、30%、40%、50%、80%、90%または95%)軽減することを含む。
【0126】
一の態様では、癌の放射線曝露療法の前に、対象体は、正常細胞への放射線障害を実質的に予防するのに十分な本発明の化合物の治療上有効量を投与され得る。一の態様では、治療上有効量は、化合物の投与が結果として本発明に従って処置した正常細胞または非癌性細胞における細胞死を未処置の細胞と比べて約50%(より好ましくは、60%、70%、80%、90%または95%)軽減するならば、正常細胞への放射線障害を実質的に予防するのに十分である。例えば、細胞死を80%軽減することとは、本発明の化合物で処置していない細胞1000個の集団中n個の細胞が照射から生き延びる場合、本発明の化合物の有効量で細胞1000個の等価集団を前処置し、次いで、照射すると、生き延びる細胞の個数が{n+[(1000−n)×0.8]}となるであろうということを意味する。
【0127】
一の態様では、癌の放射線曝露療法の前に、または該療法と組み合わせて、対象体は、非癌性細胞における放射線誘発細胞死を実質的に予防するのに十分な本発明の化合物の治療上有効量を投与され得る。一の態様では、治療上有効量は、化合物の投与が結果として本発明に従って処置した非癌性細胞における細胞死を未処置の細胞と比べて約50%(より好ましくは、60%、70%、80%、90%または95%)軽減させるならば、非癌性細胞における放射線誘発細胞死を実質的に予防するのに十分である。例えば、細胞死を80%軽減することとは、本発明の化合物で処置していない細胞1000個の集団中n個の細胞が照射から生き延びる場合、本発明の化合物の有効量で細胞1000個の等価集団を前処置し、次いで、照射すると、生き延びる細胞の個数が{n+[(1000−n)×0.8]}となるであろうということを意味する。
【0128】
体内で最も放射線感受性のあるものの中には好中球を含む免疫系の細胞がある。一の態様では、放射線障害の症状または徴候としては、免疫系への損傷または免疫系の機能不全が挙げられる。本明細書で用いる場合、「免疫細胞」は、免疫応答において機能するいずれもの細胞であるか、または免疫応答において機能する細胞の直接前駆体であり、造血細胞、リンパ球様細胞、骨髄性細胞、リンパ球前駆体、B細胞前駆体、T細胞前駆体、リンパ球、B細胞、T細胞、プラズマ細胞、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、ナチュラルキラー細胞(すなわち、NK細胞)、マスト細胞、および樹状細胞が挙げられるが、それらに限定されるものではない。本明細書で用いる場合、「白血球(white blood cell)」(すなわち、白血球(leukocyte))は、ヘモグロビンを含まない血液細胞であり、リンパ球、B細胞、T細胞、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、好中球、好酸球および好塩基球が挙げられるが、それらに限定されるものではない。本明細書で用いる場合、「リンパ球」は、骨髄にて連続的に作られるタイプの白血球であり、血液、リンパ節、脾臓、胸腺、腸壁および骨髄中に存在し得、Bリンパ球およびTリンパ球が挙げられるが、それらに限定されるものではない。本明細書で用いる場合、「単球」は、貪食能を有し、組織内に移入するとマクロファージへと転換する大きい白血球である。本明細書で用いる場合、「好中球」は、貪食能を有する白血球であり、分葉した核および顆粒状細胞質によって区別される。本明細書で用いる場合、「ナチュラルキラー細胞」は、溶解メカニズムを介する自然免疫応答においてIFN−γを分泌することによって機能する、BまたはT細胞とは異なる、骨髄由来リンパ球のサブセットである。本明細書で用いる場合、「脾臓細胞」は、脾臓中にあるか、または脾臓に由来するか、または脾臓が作用する細胞であり、リンパ球、赤血球、脾上皮細胞、樹状細胞およびマクロファージが挙げられるが、それらに限定されるものではない。本明細書で用いる場合、「胸腺細胞」は、胸腺中にあるか、または胸腺に由来するか、または胸腺が作用する細胞であり、リンパ球、間質性胸腺上皮細胞、胸腺皮質性上皮細胞、胸腺髄質性上皮細胞、マクロファージ、樹状細胞およびT細胞前駆体が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0129】
一の態様では、放射線曝露は、対象体において白血球減少症を誘発する。本明細書で用いる場合、「白血球減少症」は、血中を循環している白血球の数が減少する状態、例えば、白血球数(WBC)が正常な範囲以下である状態である。一の態様では、成人対象体において、正常な白血球数は、全血1マイクロリットル当たり約5,000〜11,000cuである。一の態様では、成人対象体において、白血球数が1マイクロリットル当たり約5,000cu以下である場合に白血球減少症が存在する。別の態様では、成人対象体において、白血球数が1マイクロリットル当たり約3,000〜5,000cuである場合に軽度の白血球減少症が存在し、白血球数が1マイクロリットル当たり約1,500〜3,000cuである場合に中等度の白血球減少症が存在し、白血球数が1マイクロリットル当たり約1,500cu未満である場合に重度の白血球減少症が存在する。白血球数は、いずれもの再現性のある手段によって測定され得る。一の態様では、白血球数は、自動白血球カウントを行うことができる医療診断機器によって測定される。
【0130】
別の態様では、放射線曝露は、対象体において好中球減少症を誘発する。本明細書で用いる場合、「好中球減少症」は、血中を循環している好中球の数が減少する状態である。一の態様では、成人対象体において、正常な好中球数は、全血1cc3当たり約1,000〜1,500細胞である。一の態様では、成人対象体において、好中球数が1cc3当たり約1,000細胞以下である場合に好中球減少症が存在する。別の態様では、成人対象体において、好中球数が1cc3当たり約500〜1,000細胞である場合に軽度の好中球減少症が存在し、好中球が1cc3当たり約200〜500細胞である場合に中等度の好中球減少症が存在し、好中球数が1cc3当たり約200細胞未満である場合に重度の好中球減少症が存在する。好中球減少症は、いずれもの再現性のある手段によって評価され得る。一の態様では、好中球減少症は、白血球カウントおよびディファレンシャルを行うことによって評価される。一の態様では、ディファレンシャルは、白血球100個をカウントすること、ならびに核の形状および外観、色および粒度によってそれらが好中球、バンド、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、または異型もしくは未熟細胞のいずれかであることを同定することによって行われる。一の態様では、白血球数は、自動白血球カウントを行うことができる医療診断機器によって測定される。一の態様では、ディファレンシャルは、光学顕微鏡を使用して手動で行われる。別の態様では、ディファレンシャルは、医療診断機器によって自動的に行われる。
【0131】
別の態様では、放射線曝露は、対象体において単球減少症を誘発する。本明細書で用いる場合、「単球減少症」は、血中を循環している単球の数が減少する状態である。一の態様では、成人対象体において、正常な単球数は、全血1cc3当たり約40〜180細胞である。一の態様では、成人対象体において、単球数が1cc3当たり約35細胞以下である場合に単球減少症が存在する。別の態様では、単球のパーセンテージがディファレンシャルアッセイ法を使用して約2%未満である場合に単球減少症が存在する。単球減少症は、いずれもの再現性のある手段によって評価され得る。一の態様では、単球減少症は、白血球カウントおよびディファレンシャルを行うことによって評価される。一の態様では、ディファレンシャルは、白血球100個をカウントすること、ならびに核の形状および外観、色および粒度によってそれらが好中球、バンド、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、または異型もしくは未熟細胞のいずれかであることを同定することによって行われる。一の態様では、白血球数は、自動白血球カウントを行うことができる医療診断機器によって測定される。一の態様では、ディファレンシャルは、光学顕微鏡を使用して手動で行われる。別の態様では、ディファレンシャルは、医療診断機器によって自動的に行われる。
【0132】
別の態様では、放射線曝露は、対象体においてリンパ球減少症を誘発する。本明細書で用いる場合、「リンパ球減少症」は、血中を循環しているリンパ球の数が減少する状態である。一の態様では、成人対象体において、正常なリンパ球数は、全血1cc3当たり約400〜1,200細胞である。一の態様では、成人対象体において、リンパ球数が1cc3当たり約350細胞以下である場合にリンパ球減少症が存在する。別の態様では、リンパ球のパーセンテージがディファレンシャルアッセイ法を使用して約20%未満である場合にリンパ球減少症が存在する。リンパ球減少症は、いずれもの再現性のある手段によって評価され得る。一の態様では、リンパ球減少症は、白血球カウントおよびディファレンシャルを行うことによって評価される。一の態様では、ディファレンシャルは、白血球100個をカウントすること、ならびに核の形状および外観、色および粒度によってそれらが好中球、バンド、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、または異型もしくは未熟細胞のいずれかであることを同定することによって行われる。一の態様では、白血球数は、自動白血球カウントを行うことができる医療診断機器によって測定される。一の態様では、ディファレンシャルは、光学顕微鏡を使用して手動で行われる。別の態様では、ディファレンシャルは、医療診断機器によって自動的に行われる。
【0133】
別の態様では、放射線曝露は、免疫細胞のプロファイルの変化を誘発する。一の態様では、免疫細胞のプロファイルの変化は、白血球カウントおよびディファレンシャルを行うことによって評価され得る。一の態様では、成人対象体において、免疫細胞の正常なプロファイルは、全血1マイクロリットル当たり約5,000〜11,000cuの全白血球数;全血1cc3当たり約1,000〜1,500細胞の好中球数;好中球50〜60%;リンパ球20〜40%;単球2〜6%;好酸球1〜4%;および好塩基球0.5〜1%を含む。一の態様では、免疫細胞のプロファイルの変化は、規定されたパラメーターのうちの1つ、または規定されたパラメーターのうちの2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたは7つにおいて正常なプロファイルとは異なるプロファイルである。一の態様では、白血球数は、自動白血球カウントを行うことができる医療診断機器によって測定される。一の態様では、ディファレンシャルは、光学顕微鏡を使用して手動で行われる。別の態様では、ディファレンシャルは、医療診断機器によって自動的に行われる。
【0134】
一の態様では、放射線曝露の前の本発明の化合物の有効量の投与は、結果として免疫系の正常な細胞性の保護をもたらす。一の態様では、免疫系の正常な細胞性の保護とは、放射線曝露にもかかわらず、免疫細胞の正常な数および外観が維持されることを意味する。免疫系の正常な細胞性の保護は、いずれもの再現性のある手段によって測定され得る。一の実施態様では、免疫系の正常な細胞性は、モデル生物において(例えば、本明細書の実施例7および8に記載される方法に従って)定量的に評価され得る。好ましくは、免疫系の正常な細胞性の維持とは、放射線曝露の前の本発明の化合物の有効量の投与が結果として、同一種の非照射対応対照対象体における生存免疫細胞の平均数と比較して最も好ましくは10%未満;または好ましさは劣るものの15%未満、20%未満、25%未満、30%未満、または40%未満しか生存免疫細胞のパーセンテージの変化を生じないことを意味する。別の実施態様では、免疫系の正常な細胞性の維持とは、放射線曝露の前の本発明の化合物の有効量の投与が結果として、脾臓生検の組織学的分析による免疫細胞の外観の目に見える定性的な差を生じないことを意味する。一の態様では、組織学的分析による免疫細胞の外観の定性的な差は、標準的な方法に従って(例えば、実施例7cに記載されている方法に従って)脾臓切片をヘマトキシリン−エオシンで染色することによって測定することができる。一の態様では、免疫系の正常な細胞性の維持は、免疫細胞の蛍光活性化細胞選別によって測定することができる。
【0135】
一の態様では、放射線曝露の前の本発明の化合物の有効量の投与は、結果として脾臓の正常な細胞性の保護をもたらす。一の態様では、脾臓の正常な細胞性の保護とは、放射線曝露にもかかわらず、脾における細胞の正常な数および外観が維持されることを意味する。脾臓の正常な細胞性の保護は、いずれもの再現性のある手段によって測定され得る。一の実施態様では、脾臓の正常な細胞性は、モデル生物において(例えば、実施例7bに記載されている方法に従って)定量的に評価され得る。好ましくは、脾臓の正常な細胞性の維持は、放射線曝露の前の本発明の化合物の有効量の投与が結果として、同一種の非照射対応対照対象体における生存脾細胞の平均数と比較して最も好ましくは10%未満;または好ましさは劣るものの15%未満、20%未満、25%未満、30%未満、または40%未満しか生存脾細胞のパーセンテージの変化を生じないことを意味する。別の実施態様においては、脾臓の正常な細胞性の維持とは、放射線曝露の前の本発明の化合物の有効量の投与が結果として、脾臓生検の組織学的分析による脾細胞の外観の目に見える定性的な差を生じないことを意味する。一の態様では、組織学的分析による脾細胞の外観の定性的な差は、標準的な方法に従って(例えば、実施例7cに記載されている方法に従って)脾臓切片をヘマトキシリン−エオシンで染色することによって測定することができる。
【0136】
一の態様では、放射線曝露の前の本発明の化合物の有効量の投与は、結果として、胸腺および脾臓からなる群から選択される免疫器官の正常な組織像の保護をもたらす。免疫器官の正常な組織像の保護は、いずれもの再現性のある手段によって(例えば、本明細書の実施例7および8に記載されている方法に従って)測定され得る。
【0137】
別の態様では、本発明の化合物の有効量の投与は、結果として脾臓の正常な組織像の保護をもたらす。一の態様では、脾臓の正常な組織像の保護とは、放射線曝露にもかかわらず、組織学的分析の結果、脾臓組織が定性的に正常に見えることを意味する。脾臓の正常な組織像の保護は、いずれもの再現性のある手段によって測定され得る。一の態様では、脾臓の正常な組織像の保護は、標準的な方法に従って(例えば、実施例7cに記載されている方法に従って)脾臓切片をヘマトキシリン−エオシンで染色することによって測定することができる。一の態様では、放射線曝露の前の本発明の化合物の有効量の投与は、結果として胸腺および脾臓からなる群から選択される免疫器官の正常な組織像の保護をもたらす。
【0138】
別の態様では、本発明の化合物の有効量の投与は、結果として脾臓の正常な構造の保護をもたらす。一の態様では、脾臓の正常な構造の保護とは、放射線曝露にもかかわらず、組織学的分析の結果、脾臓構造が定性的に正常に見えることを意味する。一の態様では、脾臓の正常な組織像の保護は、標準的な方法に従って(例えば、実施例7cに記載されている方法に従って)脾臓切片をヘマトキシリン−エオシンで染色することによって測定することができる。別の態様では、脾臓の正常な構造の保護とは、放射線曝露にもかかわらず、例えば対象体の外科的検査の間に、脾臓を顕微鏡により観察した結果、脾臓構造が定性的に正常に見えることを意味する。
【0139】
別の態様では、本発明の化合物の有効量の投与は、結果として脾臓の胚中心の保護をもたらす。一の態様では、脾臓の胚中心の保護とは、放射線曝露にもかかわらず、組織学的分析の結果、胚中心の外観が定性的に正常に見えることを意味する。一の態様では、脾臓の胚中心の保護は、標準的な方法に従って(例えば、実施例7cに記載されている方法に従って)脾臓切片をヘマトキシリン−エオシンで染色することによって測定することができる。
【0140】
一の態様では、放射線曝露の前の本発明の化合物の有効量の投与は、結果として、胸腺の正常な細胞性の保護をもたらす。一の態様では、胸腺の正常な細胞性の保護とは、放射線曝露にもかかわらず、胸腺における細胞の正常な数および外観が維持されることを意味する。胸腺の正常な細胞性の保護は、いずれもの再現性のある手段によって測定され得る。一の実施態様では、胸腺の正常な細胞性は、生存胸腺細胞をカウントするいずれもの手段(例えば、生存細胞の蛍光活性化細胞選別)によってモデル生物において定量的に評価することができる。好ましくは、胸腺の正常な細胞性の維持とは、放射線曝露の前の本発明の化合物の有効量の投与が結果として、同一種の非照射対応対照対象体における生存胸腺細胞の平均数と比べて最も好ましくは10%未満;または好ましさは劣るものの15%未満、20%未満、25%未満、30%未満、または40%未満しか生存胸腺細胞のパーセンテージの変化を生じないことを意味する。別の実施態様では、胸腺の正常な細胞性の維持とは、放射線曝露の前の本発明の化合物の有効量の投与が結果として、胸腺生検の組織学的分析による胸腺細胞の外観の目に見える定性的な差を生じないことを意味する。一の態様では、組織学的分析による胸腺細胞の外観の定性的な差は、標準的な方法に従って(例えば、実施例7aに記載されている方法に従って)胸腺切片をヘマトキシリン−エオシンで染色することによって測定することができる。
【0141】
別の態様では、本発明の化合物の有効量の投与は、結果として、胸腺の正常な組織像の保護をもたらす。一の態様では、胸腺の正常な組織像の保護とは、放射線曝露にもかかわらず、組織学的な分析の結果、胸腺組織が定性的に正常に見えることを意味する。胸腺の正常な組織像の保護は、いずれもの再現性のある手段によって測定され得る。一の態様では、胸腺の正常な組織像の保護は、標準的な方法に従って(例えば、実施例7aに記載されている方法に従って)胸腺切片をヘマトキシリン−エオシンで染色することによって測定することができる。
【0142】
別の態様では、本発明の化合物の有効量の投与は、結果として、胸腺の正常な構造の保護をもたらす。一の態様では、胸腺の正常な構造の保護とは、放射線曝露にもかかわらず、組織学的分析の結果、胸腺構造が定性的に正常に見えることを意味する。一の態様では、胸腺の正常な組織像の保護は、標準的な方法に従って(例えば、実施例7aに記載されている方法に従って)胸腺切片をヘマトキシリン−エオシンで染色することによって測定することができる。別の態様では、胸腺の正常な構造の保護とは、放射線曝露にもかかわらず、(例えば対象体の外科的検査の間に)胸腺を顕微鏡で観察した結果、胸腺構造が定性的に正常に見えることを意味する。
【0143】
一の態様では、本発明の化合物の有効量の投与は、結果として、胸腺細胞または脾臓細胞の細胞死の減少をもたらす。一の態様では、本発明の化合物の有効量の投与は、正常な胸腺細胞または非癌性胸腺細胞の細胞死の減少をもたらす。一の態様では、本発明の化合物の有効量の投与は、正常な脾細胞または非癌性脾細胞の細胞死の減少をもたらす。
【0144】
一の態様では、癌の治療は、結果として、腫瘍の大きさの縮小をもたらす。腫瘍の大きさの縮小はまた、「腫瘍退縮」ということもできる。好ましくは、治療後、腫瘍の大きさは、治療前のその大きさと比べて5%またはそれ以上縮小し;より好ましくは、腫瘍の大きさは、10%またはそれ以上縮小し;より好ましくは、20%またはそれ以上縮小し;より好ましくは、30%またはそれ以上縮小し;より好ましくは、40%またはそれ以上縮小し;さらにより好ましくは、50%またはそれ以上縮小し;最も好ましくは、75%またはそれ以上縮小する。腫瘍の大きさは、いずれもの再現性のある測定手段によって測定され得る。好ましい態様では、腫瘍の大きさは、腫瘍の直径として測定され得る。
【0145】
別の態様では、癌の治療は、結果として、腫瘍容積の減少をもたらす。好ましくは、治療後、腫瘍容積は、治療前のその大きさと比べて5%またはそれ以上減少し;より好ましくは、腫瘍容積は、10%またはそれ以上減少し;より好ましくは、20%またはそれ以上減少し;より好ましくは、30%またはそれ以上減少し;より好ましくは、40%またはそれ以上減少し;さらにより好ましくは、50%またはそれ以上減少し;最も好ましくは、75%またはそれ以上減少する。腫瘍容積は、いずれもの再現性のある測定手段によって測定され得る。
【0146】
別の態様では、癌の治療は、結果として、腫瘍の数の減少をもたらす。好ましくは、治療後、腫瘍の数は、治療前の数と比べて5%またはそれ以上減少し;より好ましくは、腫瘍の数は、10%またはそれ以上減少し;より好ましくは、20%またはそれ以上減少し;より好ましくは、30%またはそれ以上減少し;より好ましくは、40%またはそれ以上減少し;さらにより好ましくは、50%またはそれ以上減少し;最も好ましくは、75%またはそれ以上減少する。腫瘍の数は、いずれもの再現性のある測定手段によって測定され得る。好ましい態様では、腫瘍の数は、肉眼でまたは特定の倍率で見ることができる腫瘍をカウントすることによって測定され得る。好ましい態様では、特定の倍率は、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍または50倍である。
【0147】
別の態様では、癌の治療は、結果として、担体だけを投与している集団と比べて、処置対象体の集団の平均生存時間の増加をもたらす。好ましくは、平均生存時間は、30日以上;より好ましくは、60日以上;より好ましくは、90日以上;最も好ましくは、120日以上増加する。集団の平均生存時間の増加は、いずれもの再現性のある手段によって測定され得る。好ましい態様では、集団の平均生存時間の増加は、例えば、活性化合物での治療の開始後の平均の生存の長さを集団について算出することによって、測定することができる。別の好ましい態様では、集団の平均生存時間の増加はまた、例えば、活性化合物での1回目の処置の完了後の平均の生存の長さを集団について算出することによって、測定することができる。
【0148】
別の態様では、癌の治療は、結果として、未処置対象体の集団と比べて、処置対象体の集団の平均生存時間の増加をもたらす。好ましくは、平均生存時間は、30日以上;より好ましくは、60日以上;より好ましくは、90日以上;最も好ましくは、120日以上増加する。集団の平均生存時間の増加は、いずれもの再現性のある手段によって測定され得る。好ましい態様では、集団の平均生存時間の増加は、例えば、活性化合物での治療の開始後の平均の生存の長さを集団について算出することによって、測定することができる。別の好ましい態様では、集団の平均生存時間の増加はまた、例えば、活性化合物での1回目の治療の完了後の平均の生存の長さを集団について算出することによって、測定することができる。
【0149】
別の態様では、癌の治療は、結果として、本発明の化合物、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体ではない薬物での単独療法を受けている集団と比べて、処置対象体の集団の平均生存時間の増加をもたらす。好ましくは、平均生存時間は、30日以上;より好ましくは、60日以上;より好ましくは、90日以上;最も好ましくは、120日以上増加する。集団の平均生存時間の増加は、いずれもの再現性のある手段によって測定され得る。好ましい態様では、集団の平均生存時間の増加は、例えば、活性化合物での治療開始後の平均の生存の長さを集団について算出することによって、測定することができる。別の好ましい態様では、集団の平均生存時間の増加はまた、例えば、活性化合物での1回目の治療の完了後の平均の生存の長さを集団について算出することによって、測定することができる。
【0150】
別の態様では、癌の治療は、結果として、担体だけを投与している集団と比べて、処置対象体の集団の死亡率の低下をもたらす。別の態様では、乳癌の治療は、結果として、未処置集団と比べて、処置対象体の集団の死亡率の低下をもたらす。さらなる態様では、乳癌の治療は、結果として、本発明の化合物、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体ではない薬物での単独療法を受けている集団と比べて、処置対象体の集団の死亡率の低下をもたらす。好ましくは、死亡率は、2%以上;より好ましくは、5%以上;より好ましくは、10%以上;最も好ましくは、25%以上低下する。好ましい態様では、処置対象体の集団の死亡率の低下は、いずれもの再現性のある手段によって測定され得る。別の好ましい態様では、集団の死亡率の低下は、例えば、活性化合物での処置開始後の単位時間当たりの平均疾患関連死亡数を集団について算出することによって、測定することができる。別の好ましい態様では、集団の死亡率の低下はまた、例えば、活性化合物での1回目の治療の完了後の単位時間当たりの平均疾患関連死亡数を集団について算出することによって、測定することができる。
【0151】
別の態様では、癌の治療は、結果として、腫瘍増殖率の低下をもたらす。好ましくは、治療後、腫瘍増殖率は、治療前の数と比べて少なくとも5%低下し;より好ましくは、腫瘍増殖率は、少なくとも10%低下し;より好ましくは、少なくとも20%低下し;より好ましくは、少なくとも30%低下し;より好ましくは、少なくとも40%低下し;より好ましくは、少なくとも50%低下し;さらにより好ましくは、少なくとも50%低下し;最も好ましくは、少なくとも75%低下する。腫瘍増殖率は、いずれもの再現性のある測定手段によって測定され得る。好ましい態様では、腫瘍増殖率は、単位時間当たりの腫瘍の直径の変化にしたがって測定される。
【0152】
別の態様では、癌の治療は、結果として、腫瘍再増殖の減少をもたらす。好ましくは、治療後、腫瘍再増殖は、5%未満であり;より好ましくは、腫瘍再増殖は、10%未満;より好ましくは、20%未満;より好ましくは、30%未満;より好ましくは、40%未満;より好ましくは、50%未満;さらにより好ましくは、50%未満;最も好ましくは、75%未満である。腫瘍再増殖は、いずれもの再現性のある測定手段によって測定され得る。好ましい態様では、腫瘍再増殖は、例えば、治療の後に起こった先の腫瘍収縮の後の腫瘍の直径の増加を測定することによって、測定される。別の好ましい態様では、腫瘍再増殖の減少は、治療を停止した後に腫瘍が再発しないことによって示される。
【0153】
別の態様では、細胞増殖性障害の治療または予防は、結果として、細胞増殖率の低下をもたらす。好ましくは、治療後、細胞増殖率は、少なくとも5%;より好ましくは、少なくとも10%;より好ましくは、少なくとも20%;より好ましくは、少なくとも30%;より好ましくは、少なくとも40%;より好ましくは、少なくとも50%;さらに好ましくは、少なくとも50%;最も好ましくは、少なくとも75%低下する。細胞増殖率は、いずれもの再現性のある測定手段によって測定され得る。好ましい態様では、細胞増殖率は、例えば、単位時間当たりの組織試料中の分裂細胞の数を測定することによって、測定される。
【0154】
別の態様では、細胞増殖性障害の治療または予防は、結果として、増殖細胞の割合の減少をもたらす。好ましくは、治療後、増殖細胞の割合は、少なくとも5%;より好ましくは、少なくとも10%;より好ましくは、少なくとも20%;より好ましくは、少なくとも30%;より好ましくは、少なくとも40%;より好ましくは、少なくとも50%;さらにより好ましくは、少なくとも50%;最も好ましくは、少なくとも75%減少する。増殖細胞の割合は、いずれもの再現性のある測定手段によって測定され得る。好ましい態様では、増殖細胞の割合は、例えば、組織試料中の非分裂細胞の数に対する分割細胞の数を定量化することによって、測定される。別の好ましい態様では、増殖細胞の割合は、分裂指数に相当する。
【0155】
別の態様では、細胞増殖性障害の治療または予防は、結果として、細胞増殖の領域または帯域の大きさの減縮をもたらす。好ましくは、治療後、細胞増殖の領域または帯域の大きさは、治療前のその大きさと比べて少なくとも5%減縮し;より好ましくは、少なくとも10%減縮し;より好ましくは、少なくとも20%減縮し;より好ましくは、少なくとも30%減縮し;より好ましくは、少なくとも40%減縮し;より好ましくは、少なくとも50%減縮し;さらにより好ましくは、少なくとも50%減縮し;最も好ましくは、少なくとも75%減縮する。細胞増殖の領域または帯域の大きさは、いずれもの再現性のある測定手段によって測定され得る。好ましい態様では、細胞増殖の領域または帯域の大きさは、細胞増殖の領域または帯域の直径または幅として測定され得る。
【0156】
別の態様では、細胞増殖性障害の治療または予防は、結果として、異常な外観または形態を有する細胞の数または割合の減少をもたらす。好ましくは、治療後、異常な形態を有する細胞の数は、治療前のその大きさと比べて少なくとも5%減少し;より好ましくは、少なくとも10%減少し;より好ましくは、少なくとも20%減少し;より好ましくは、少なくとも30%減少し;より好ましくは、少なくとも40%減少し;より好ましくは、少なくとも50%減少し;さらにより好ましくは、少なくとも50%減少し;最も好ましくは、少なくとも75%減少する。異常な細胞外観または形態は、いずれもの再現性のある測定手段によって測定され得る。一の態様では、異常な細胞形態は、顕微鏡によって、例えば、倒立組織培養顕微鏡を使用して、測定される。一の態様では、異常な細胞形態は、核多型の形態をとる。
【0157】
I.正常な細胞、組織および対象体の放射線障害または放射線損傷を予防または治療する方法
本発明の方法はいくつかの方法において有用である。第1の態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質(例えば、G1/S期薬、例えば、β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体)を、放射線曝露の前またはそれと同時に投与して、予防的処置として正常(例えば、非癌性)細胞への放射線障害または損傷を予防することができる。かかる予防は、放射線曝露を予測できる場合に有用であり、曝露が生じる前に製剤を調製することができる。例えば、放射線に曝露され得る労働者は、汚染場所に入る前に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の予防量の投与を受けることができる;兵士は、戦場または放射能攻撃の標的となり得る他の場所に入る前に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の予防量の投与を受けることができる;一般市民は、民間住居地域での放射能攻撃が行われる場合(または信憑性の高いかかる攻撃の脅威が生じた場合)には細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の予防量の投与を受けることができる。
【0158】
例えば長期間にわたって予防を維持したい場合は、反復投与(例えば、1日1回、1日おきに1回、または週1回の投与)を用いることができる。加えて、本明細書に記載するように、対象体に放射線の治療線量を施す前に該対象体に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質を投与して、対象体の正常細胞への損傷を予防することができる。
【0159】
第2の態様では、放射線曝露後の時期に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質(例えば、G1/S期薬)を投与して、かかる処置なしで生じる放射線誘発損傷または細胞死を予防することができる。この場合、該薬物は、好ましくは、実質的な細胞死が生じる前、好ましくは遅くとも放射線曝露後24時間以内、より好ましくは曝露後12時間以内、より好ましくは曝露後8時間以内、より好ましくは曝露後6時間以内、さらにより好ましくは曝露後4時間以内、さらにより好ましくは曝露後3時間以内、さらにより好ましくは曝露後2時間以内、さらにより好ましくは放射線曝露後1時間以内、より好ましくは曝露後30分以内、より好ましくは曝露後20分以内、より好ましくは曝露後10分以内、さらにより好ましくは曝露後5分以内、さらにより好ましくは曝露後2分以内、最も好ましくは曝露後1分以内に、対象体に投与されるべきである。本明細書で用いる場合、投与が放射線曝露後5分以内に起こる場合には、該投与は放射線曝露の「直後」である。
【0160】
さらに別の実施態様では、本発明は、放射性物質の偶発的または意図的な放出後に放射線障害または損傷を予防する方法であって、かかる予防を必要とする対象体に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の有効量を投与することを含む方法であり、該細胞周期チェックポイント活性化の調節物質が、対象体が放射性物質の偶発的または意図的な放出に曝露される前または直後に投与され、該対象体における放射線障害または損傷を予防する、方法を提供する。一の態様では、原子力発電所での放射能事故の浄化の間に放射線に曝露され得る労働者は、汚染場所に入る前に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の予防量の投与を受けることができる。別の態様では、兵士は、戦場または放射能攻撃の標的となり得る他の場所に入る前に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の予防量の投与を受けることができる。別の態様では、一般市民は、民間住居地域での放射能攻撃が行われる場合または信憑性の高いかかる攻撃の脅威が生じた場合には細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の予防量の投与を受けることができる。例えば、放射性物質の意図的な放出(例えば、放射能攻撃)としては、ダーティーボムの爆発、放射性物質貯蔵施設の意図的な爆発、核弾頭を装備したミサイルによる攻撃、またはヒトまたは他の動物に対して放射線誘発障害を引き起こす能力を有する物質の意図的な放出が挙げられる。別の態様では、原子力発電所での放射能事故または放射能攻撃の後に放射線曝露された一般市民または兵士は、曝露後に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の治療量の投与を受けることができる。一の態様では、放射性物質の偶発的または意図的な放出は、50mGy(5ラド)、250mGy(25ラド)、0.5Gy(50ラド)、1Gy(100ラド)、1.5Gy(150ラド)、2.0Gy(200ラド)、2.5Gy(250ラド)、3.0Gy(300ラド)、3.5Gy(350ラド)、4.0Gy(400ラド)、5.0Gy(500ラド)、7.5Gy(750ラド)、10Gy(1000ラド)または25Gy(2500ラド)よりも大きいかまたはそれと同等の全身照射曝露を含む。かかる曝露は、限られたタイムスパンにわたって、例えば、限定されないが、約5分〜約1時間、約1時間〜約24時間、約24時間〜約168時間、約168時間〜約744時間、または約1ヶ月〜約6ヶ月の間であり得る。
【0161】
ある実施態様では、治療または保護されるべき対象体は正常な対象体であり、放射線(例えば、電離放射線)への曝露の前に本発明の化合物の有効量が投与される。一の態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、治療または保護されるべき対象体に、該対象体の放射線曝露の24時間未満前、より好ましくは曝露の12〜24時間前、より好ましくは曝露の8〜12時間前、より好ましくは曝露の6〜8時間前、より好ましくは曝露の4〜6時間前、より好ましくは曝露の3〜4時間前、より好ましくは曝露の2〜3時間前、より好ましくは曝露の1〜2時間前、より好ましくは曝露の0.5〜1時間前、より好ましくは曝露の0.25〜0.5時間前に投与される。別の態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、治療または保護されるべき対象体に、該対象体の放射線曝露の10〜15分前に投与される。好ましい態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、放射線曝露の約1時間前に対象体に投与される。別の好ましい態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、放射線曝露の約0.5時間前に対象体に投与される。別の態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の遅延放出を可能にする製剤にて長時間にわたって、治療または保護されるべき対象体に投与される。このような態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、治療または保護されるべき対象体に、該対象体の放射線曝露の約3ヶ月前、曝露の2〜3ヶ月前、曝露の1〜2ヶ月前、曝露の3〜4週間前、曝露の2〜3週間前、曝露の1〜2週間前、曝露の3〜7日前、または曝露の1〜3日前に投与され得る。ある実施態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質を、医薬上許容される担体または希釈剤と一緒処方することができる。
【0162】
一の態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、治療または保護されるべき細胞に、細胞の放射線曝露の24時間未満前、より好ましくは曝露の12〜24時間前、より好ましくは曝露の8〜12時間前、より好ましくは曝露の6〜8時間前、より好ましくは曝露の4〜6時間前、より好ましくは曝露の3〜4時間前、より好ましくは曝露の2〜3時間前、より好ましくは曝露の1〜2時間前、より好ましくは曝露の0.5〜1時間前、より好ましくは曝露の0.25〜0.5時間前に投与される。別の態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、治療または保護されるべき細胞に、細胞の放射線曝露の10〜15分前に投与される。別の態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の遅延放出を可能にする製剤にて長時間にわたって、治療または保護されるべき細胞に投与される。このような態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、細胞の放射線曝露の約3ヶ月前、曝露の2〜3ヶ月前、曝露の1〜2ヶ月前、曝露の3〜4週間前、曝露の2〜3週間前、曝露の1〜2週間前、曝露の3〜7日前、または曝露の1〜3日前に投与され得る。ある実施態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質を、医薬上許容される担体または希釈剤と一緒に処方することができる。
【0163】
一の実施態様では、本発明は、正常な(例えば、非癌性の)細胞または組織への放射線損傷または障害を予防する方法に関する。該方法は、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質(例えば、β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体)の有効量を対象体に投与し、その結果、その後の細胞または組織の放射線曝露の後に正常な細胞または組織への放射線損傷または障害が(未処置の細胞または組織と比べて)減少するかまたはなくなる工程を含む。好ましい実施態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、細胞におけるE2Fレベルまたは活性を増大させる能力を有する化合物である。好ましい実施態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質はβ−ラパコンである。
【0164】
一の実施態様では、本発明は、正常細胞を放射線損傷または障害から保護する方法であって、細胞の放射線曝露の前に細胞を細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の有効量と接触させる工程を含む方法を提供する。本発明のこの実施態様の方法は、インビボまたはインビトロで有用であり得る。好ましい実施態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、細胞におけるE2Fレベルまたは活性を増大させる能力を有する化合物である。好ましい実施態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質はβ−ラパコンである。
【0165】
一の実施態様では、本発明は、対象体における放射線損傷または障害を予防する方法に関する。該方法は、かかる予防を必要とする対象体に、該対象体の放射線曝露の前に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の有効量を投与する工程を含む。好ましい実施態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、細胞におけるE2Fレベルまたは活性を増大させる能力を有する化合物である。好ましい実施態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質はβ−ラパコンである。
【0166】
一の実施態様では、本発明は、健康な対象体における正常細胞への放射線損傷または障害を予防する方法に関する。該方法は、対象体の放射線曝露の前に該対象体に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の有効量を投与し、その結果、正常細胞への放射線損傷または障害が予防される工程を含む。好ましい実施態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、細胞におけるE2Fレベルまたは活性を増大させる能力を有する化合物である。好ましい実施態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質はβ−ラパコンである。
【0167】
一の実施態様では、本発明は、放射線損傷または放射線障害を受けた非癌性細胞の死を予防する方法、例えば、放射線損傷または放射線障害を受けた非癌性細胞の死亡率を低下させるか、または生存時間を増加させる方法を提供する。該方法は、放射線損傷または放射線障害を受けた非癌性細胞を(インビボまたはインビトロで)細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の有効量と接触させ、その結果、放射線損傷または放射線障害を受けた非癌性細胞の死が予防される(または遅くなる)工程を含む。好ましい実施態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、細胞におけるE2Fレベルまたは活性を増大させる能力を有する化合物である。好ましい実施態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質はβ−ラパコンである。
【0168】
一の実施態様では、本発明は、放射線に曝露された対象体における放射線損傷または障害の治療方法を提供する。該方法は、かかる治療を必要とする対象体(すなわち、既に放射線に曝露された対象体)に、該対象体の放射線曝露の後に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の有効量を投与する工程を含む。好ましい実施態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、細胞におけるE2Fレベルまたは活性を増大させる能力を有する化合物である。好ましい実施態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質はβ−ラパコンである。
【0169】
実施態様では、本発明は、放射線に曝露された対象体における癌の予防方法を提供する。該方法は、対象体に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の有効量を投与し、その結果、対象体における癌(例えば、腫瘍)の発生が予防される工程を含む。好ましい実施態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、細胞におけるE2Fレベルまたは活性を増大させる能力を有する化合物である。好ましい実施態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質はβ−ラパコンである。
【0170】
II.正常な(例えば、非癌性の)細胞、組織および対象体の放射線障害または放射線損傷を予防または治療するためのキット
さらに別の実施態様では、本発明は、放射線損傷または障害を予防するためのキットを提供する。該キットは、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質(好ましくは、β−ラパコン)の放射線損傷または障害の予防に有効な量を含む容器を、対象体における放射線損傷または障害を予防するために対象体に細胞周期チェックポイント活性化の調節物質を投与することについての説明書と一緒に含む。ある実施態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、医薬上許容される担体または希釈剤と一緒に処方されていてもよい。好ましい実施態様では、本発明のキットは、多数の個体に迅速に投与することができる製剤中の細胞周期チェックポイント活性化の調節物質(好ましくは、β−ラパコン)の有効量を含む。別の好ましい実施態様では、本発明のキットは、対象体の身体に迅速に取り込まれて治療効果が迅速に達成される製剤中の細胞周期チェックポイント活性化の調節物質(好ましくは、β−ラパコン)の有効量を含む。一の実施態様では、本発明のキットは、経口投与用に処方される細胞周期チェックポイント活性化の調節物質(好ましくは、β−ラパコン)を含む。他の実施態様では、本発明のキットは、筋肉内投与用、静脈内投与用または肺投与用に処方される細胞周期チェックポイント活性化の調節物質(好ましくは、β−ラパコン)を含む。ある実施態様では、本発明のキットとしては、対象体への細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の投与に有用な装置またはデバイスを挙げることができる。例えば、該キットは、アプリケーター、注射用製剤の投与のための針およびシリンジ、または静脈内投与用製剤の投与のための輸液セットを含むことができる。
【0171】
キットに同梱されている説明書は、好ましくは、適当な適応症、服薬スケジュール、および細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の投与方法を説明する。本発明のキットは、好ましくは、将来必要になる場合の十分な量の薬物の貯蔵を可能する適当に長い品質保持期間を有する。
【0172】
例えば、実際に起こったかまたは危険が迫っている放射線緊急時の場合には、民間の防衛機関が該キットの供給を受け、放射線損傷または障害の有効な処置の迅速な配布を促進することができる。同様に、軍隊は、フォールアウトへの潜在曝露または他の放射線災害に直面する部隊のために標準仕様装置の一部として本発明のキットを装備することができる。このようなキットについて、安定性のために固体投与形態が好ましい。好ましい実施態様において、該キットは、有意な放射線防護効力を失わずに(例えば、効力の低下が10%以下)、少なくとも6ヶ月、より好ましくは、少なくとも1年の間、貯蔵安定性である。好ましい実施態様では、該キットは、有意な生物学的利用能を失わずに(例えば、生物学的利用能の低下が10%以下)、少なくとも6ヶ月、より好ましくは、少なくとも1年の間、貯蔵安定性である。好ましい実施態様では、該キットは、活性薬物(すなわち細胞周期チェックポイント活性化の調節物質)の有意な分解を伴わずに(例えば、活性薬物の分解が10%以下)、少なくとも6ヶ月、より好ましくは、少なくとも1年の間、貯蔵安定性である。
【0173】
III.癌を含む細胞増殖性障害の治療方法
当業者は、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質(例えば、β−ラパコン)の投与が2つの補完性効果を有する可能性があることを理解するであろう:第1に、正常細胞の放射線障害または損傷からの保護;第2に、癌細胞の放射線障害または損傷に対する感作。かくして、放射線療法の前のまたは放射線療法と組み合わせた対象体へのかかる化合物の投与は、癌細胞についての放射線療法の選択性を向上させることができる(すなわち、治療的放射線の所定の線量で、より多くの癌細胞が殺されるが、正常細胞は少ししか殺されない)。これは、治療に柔軟性を加えることを可能にする。
【0174】
慣用的な放射線療法では、医療提供者(例えば、放射線腫瘍医)は、患者の体重、年齢、全身的な身体状態、放射線療法歴または薬物療法歴、腫瘍の大きさおよびタイプのようなファクターに基づいて、放射線の、患者に投与するのに適した線量を決定する。本発明の改良された放射線療法では、医療提供者は、慣用の放射線療法の過程において投与されるであろう放射線の線量とは異なる線量を使用することができる。例えば、放射線に対する腫瘍細胞の感作のために、施される放射線の全線量を減少させることができるか、または、正常細胞の放射線障害または損傷に対する抵抗性が向上するために、施される放射線の全量を、(細胞周期チェックポイント活性化の調節物質での処置の不在下で患者に投与されるであろう放射線の量と比べて)増加させることができる。
【0175】
かくして、好ましい実施態様において、本発明は、改良された放射線療法を提供する。
【0176】
該方法は、治療的放射線を施す前に、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の、正常細胞を放射線障害または損傷から保護するのに有効な量を、放射線療法を必要とする対象体に投与する工程、次いで、該対象体の正常細胞は放射線障害から保護されるが標的細胞(例えば、癌細胞)は放射線障害から保護されない(および、好ましくは、放射線障害に対して感作される)ような条件下にて該対象体に治療的放射線を施す工程を含む。一の実施態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、細胞中のE2Fレベルを増加させる能力を有する化合物である。好ましい実施態様において、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は細胞中のE2F1レベルを増加させる能力を有する化合物である。好ましい実施態様において、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質はβ−ラパコンである。
【0177】
一の態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、対象体の放射線曝露の24時間未満前、より好ましくは曝露の12〜24時間前、より好ましくは曝露の8〜12時間前、より好ましくは曝露の6〜8時間前、より好ましくは曝露の4〜6時間前、より好ましくは曝露の3〜4時間前、より好ましくは曝露の2〜3時間前、より好ましくは曝露の1〜2時間前、より好ましくは曝露の0.5〜1時間前、より好ましくは曝露の0.25〜0.5時間前に対象体に投与される。別の態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、対象体の放射線曝露の10〜15分前に対象体に投与される。
【0178】
別の態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の遅延放出を可能にする製剤にて長時間にわたって対象体に投与される。このような態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、対象体の放射線曝露の約3ヶ月前、曝露の2〜3ヶ月前、曝露の1〜2ヶ月前、曝露の3〜4週間前、曝露の2〜3週間前、曝露の1〜2週間前、曝露の3〜7日前、または曝露の1〜3日前に投与され得る。
【0179】
別の態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質を放射線療法後の時期に投与して、かかる処置がなければ生じるであろう放射線誘発損傷または細胞死を予防することができる。この場合、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、好ましくは、実質的な細胞死が生じる前、好ましくは遅くとも放射線曝露後24時間以内、より好ましくは曝露後12時間以内、より好ましくは曝露後8時間以内、より好ましくは曝露後6時間以内、さらにより好ましくは曝露後4時間以内、さらにより好ましくは曝露後3時間以内、さらにより好ましくは曝露後2時間以内、さらにより好ましくは放射線曝露後1時間以内、より好ましくは曝露後30分以内、より好ましくは曝露後20分以内、より好ましくは曝露後10分以内、さらにより好ましくは曝露後5分以内、さらにより好ましくは曝露後2分以内、最も好ましくは放射線曝露後1分以内に、対象体に投与されるべきである。本明細書で用いる場合、投与が放射線曝露後5分以内に起こるならば、該投与は放射線曝露の「直後」である。
【0180】
癌は、単独のまたは細胞周期チェックポイント活性化の調節物質と組み合わせた放射線療法によって治療可能な癌である;ある実施態様では、癌は、多発性骨髄腫または白血病のような血液学的癌である;他の実施態様では、癌は、前立腺癌、膵癌、肺癌、卵巣癌、子宮癌、皮膚癌(黒色腫を含む)、骨癌、肝癌、結腸癌、直腸結腸癌、腎臓癌、肝癌、脳の癌、または乳癌のような固形腫瘍である。ある実施態様では、対象体に施される放射線の量は、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の不在下で対象体に施されている放射線の量よりも多い;好ましい実施態様では、該放射線の量は、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の不在下で対象体に施されている放射線の量よりも少なくとも10%(より好ましくは20%、50%、または100%)増加する。他の実施態様では、対象体に施される放射線の量は、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の不在下で対象体に施されている放射線の量よりも少ない;好ましい実施態様では、該放射線の量は、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の不在下で対象体に施されている放射線の量と比べて少なくとも10%(より好ましくは20%、50%、または80%)減少する。ある実施態様では、対象体に施される放射線の量は、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の不在下で対象体に施されている照射線量率よりも大きい照射線量率におけるものである;好ましい実施態様では、該照射線量率は、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の不在下で対象体に施されている照射線量率よりも少なくとも10%(より好ましくは20%、50%、または100%)増大する。他の実施態様では、対象体に施される放射線の量は、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の不在下で対象体に施されている照射線量率よりも低い照射線率におけるものである;好ましい実施態様では、該照射線量率は、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の不在下で対象体に施されている照射線量率よりも少なくとも10%(より好ましくは20%、50%、または100%)低下する。一の態様では、放射線量率は、Gy/分の単位で測定される。ある実施態様では、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、医薬上許容される担体または希釈剤と一緒に処方され得る。一の態様では、本発明の化合物は、癌の放射線療法と組み合わせて、必要とする対象体に投与される。
【0181】
一の態様では、本発明は、癌の治療方法であって、a)癌の治療を必要とする対象体に、放射線療法の前に、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を投与すること(ここで、該治療上有効量は、正常細胞への放射線障害を予防するのに十分である);およびb)該正常細胞への放射線障害を予防しながら、該対象体に、放射線療法の癌を治療するための有効な量を施す(ここで、癌が治療される)ことを含む方法を提供する。
【0182】
一の態様では、本発明は、癌の治療方法であって、a)癌の治療を必要とする対象体に、放射線療法の前に、β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を投与すること(ここで、該治療上有効量は、正常細胞への放射線障害を予防するのに十分である);およびb)該正常細胞への放射線障害を予防しながら、該対象体に、放射線療法の癌を治療するための有効な量を施す(ここで、癌が治療される)ことを含む方法を提供する。
【0183】
一の態様では、本発明は、癌の治療方法であって、a)癌の治療を必要とする対象体に、放射線療法の前に、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を投与すること(ここで、該治療上有効量は非癌性細胞における放射線誘発細胞死を予防するのに十分である);およびb)非癌性細胞における放射線誘発細胞死を予防しながら、該対象体に、放射線療法の癌を治療するための有効な量を施す(ここで、癌が治療される)ことを含む方法を提供する。
【0184】
一の態様では、本発明は、癌の治療方法であって、a)癌の治療を必要とする対象体に、放射線療法の前に、β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を投与すること(ここで、該治療上有効量は非癌性細胞における放射線誘発細胞死を予防するのに十分である);およびb)非癌性細胞における放射線誘発細胞死を予防しながら、該対象体に、放射線療法の癌を治療するための有効な量を施す(ここで、癌が治療される)ことを含む方法を提供する。
【0185】
別の態様では、本発明は、癌に罹患している対象体の治療方法であって、a)該対象体に、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の、正常細胞を放射線損傷または障害から保護するのに十分な量を投与する工程、およびb)正常細胞への放射線損傷または障害を実質的に予防しながら、該対象体に、放射線の癌を治療するための有効な量を施す工程を含む方法を提供する。
【0186】
別の態様では、本発明は、癌に罹患している対象体の治療方法であって、a)該対象体に、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の、正常細胞を放射線損傷または障害から保護するのに十分な量を投与する工程;およびb)正常細胞への放射線損傷または障害を有意に予防しながら、該対象体に、放射線の癌を治療するための有効な量を施す工程を含む方法を提供する。
【0187】
本発明はまた、癌細胞の治療方法であって、1つまたはそれ以上の細胞に、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の、正常細胞を放射線損傷から保護するのに十分な量を投与すること;および正常細胞への放射線損傷を実質的に予防しながら、該細胞に、放射線の癌細胞を治療するための有効な量を施すことを含む方法を提供する。
【0188】
一の態様では、本発明は、細胞増殖性障害の治療方法であって、a)かかる治療を必要とする対象体にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を投与すること(ここで、該治療上有効量は、正常細胞への放射線障害を予防するのに十分である);およびb)正常細胞への放射線障害を予防しながら、該対象体に、放射線療法の細胞増殖性障害を治療するための有効な量を施す(ここで、細胞増殖性障害が治療される)ことを含む方法を提供する。好ましい態様では、細胞増殖性障害は、皮膚または免疫系の細胞増殖性障害である。別の好ましい態様では、放射線療法は、紫外線による放射線療法を含む。一の態様では、細胞増殖性障害は、乾癬である。
【0189】
IV.有用な細胞周期チェックポイント活性化の調節物質、およびそれらの投与
好ましいG1および/またはS期チェックポイント活性化合物としては、G1/S期薬(例えば、β−ラパコン、ならびに還元β−ラパコンを含むその誘導体およびアナログ)、およびG1期薬(例えば、ロバスタチン、ミモシン、タモキシフェン、および同類のもの)が挙げられる。β−ラパコン、ならびに(例えば、以下に記載するような)その誘導体およびアナログ(還元β−ラパコン(式Ia、最も好ましくは、R'およびR"が共に水素である場合)および式VIで示される化合物を含む)がより好ましく、β−ラパコンが最も好ましい。
【0190】
【化2】

式Ia
【0191】
一の細胞周期チェックポイント活性化の調節物質はβ−ラパコンである。β−ラパコンは、イヌ、ラット、マウス、およびニワトリにおいて良好な耐容性を示す。最大耐性量は、1ヶ月間毎日経口投与した場合、ラットでは200mg/kg、イヌでは100mg/kgである。もちろん、所定の対象体に適当な用量は、対象体の種、対象体の健康、投与経路(例えば、経口、静脈内および同類のもの)および当業者に知られている他のファクターによって異なるであろう。
【0192】
好ましくは、化合物(例えば、β−ラパコンまたはその誘導体もしくはアナログ)は、1日当たりレシピエントの体重1kgにつき100〜500,000μgの範囲、より好ましくは、1日当たり体重1kgにつき1000〜250,000μgの範囲、最も好ましくは、1日当たり体重1kgにつき10000〜150,000μgの範囲で、少なくとも1回量で患者に投与される。用量はまた、mg/m2の単位で表すこともできる;一例としては、ヒト対象体に適している用量は、投与が1週間に1回の点滴静注による場合、好ましくは、2mg/m2〜5000mg/m2、より好ましくは、20mg/m2〜500mg/m2(さらにより好ましくは、30〜300mg/m2)の範囲である。所望の用量は、適当には、1回で、または適当な間隔で投与される数回以上のサブ投与(例えば、1週間に1回、1日1回、1日を通して投与される分割投与、または他の適当なスケジュール)で投与される。これらのサブ投与は、例えば、一の単位投与形態につき1〜20,000μg、好ましくは、10〜10,000μgを含有する、単位投与形態として投与され得る。反復投与は、必要に応じて、放射線への連続曝露(または潜在曝露)に対する保護効果を維持するように投与することができる。
【0193】
上記のように、本発明において使用するのに好ましい細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、好ましくは実質的なDNA損傷を引き起こさずに、チェックポイント活性化を誘発する。さらに、好ましい細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、細胞中のE2F(より好ましくはE2F1)のレベルまたは活性を増大させる能力を有する。細胞中のE2F活性またはレベルを上昇させる能力を有する化合物を含む細胞周期チェックポイント活性化の調節物質についてのスクリーニング方法としては、Li et alのPCT特許出願番号PCT/US03/22631(WO 04/07531)に記載されている方法のような方法が挙げられる。細胞死または生存率を測定するためのアッセイもまたPCT特許出願番号PCT/US03/22631に記載されている;かかるアッセイは、放射線曝露の後の細胞死を予防するための有効な化合物を決定するのに有用である。
【0194】
本明細書における教示を考慮して、当業者は、慣用的な実験だけを使用して、潜在的な細胞周期チェックポイント活性化の調節物質をスクリーニングして、どの化合物が本発明の方法およびキットにおいて有用であるかを決定することができるであろう。
【0195】
β−ラパコンは本発明にかかる組成物において使用するのに適した化合物であるが、本発明はこの点において限定されず、ラパコールのようなβ−ラパコン誘導体またはアナログ、ならびにその医薬組成物および製剤は本発明の一部である。かかるβ−ラパコンアナログとしては、式:
【化3】

で示される化合物を記載するPCT国際出願PCT/US93/07878(WO 94/04145)に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ここで、RおよびR1は、各々独立して、水素、置換および非置換アリール、置換および非置換アルケニル、置換および非置換アルキルおよび置換または非置換アルコキシである。該アルキル基は、好ましくは、炭素原子1〜約15個、より好ましくは、炭素原子1〜約10個、さらにより好ましくは、炭素原子1〜約6個を有する。他に修飾されない限りアルキルなる用語は、環状および非環状のどちらの基も表すが、もちろん、環状の基は少なくとも3個の炭素環原子を含む。一般に環状の基よりも直鎖または分枝鎖非環状アルキル基の方が好ましい。一般に分枝鎖よりも直鎖アルキル基の方が好ましい。アルケニル基は、好ましくは、炭素原子2〜約15個、より好ましくは、炭素原子2〜約10個、さらにより好ましくは、炭素原子2〜6個を有する。特に好ましいアルケニル基は、炭素原子3個を有しており(すなわち、1−プロペニルまたは2−プロペニル)、アリル基が特に好ましい。一般に好ましいアリール基はフェニルおよびナフチルである。アルコキシ基としては、1個またはそれ以上の酸素結合を有するこれらのアルコキシ基が挙げられ、好ましくは、炭素原子1〜15個、より好ましくは、炭素原子1〜約6個を有する。置換されたRおよびR1基は、例えば、炭素原子1〜10個または炭素原子1〜6個を有するアルキル基のようなアルキル基、炭素原子2〜10個または炭素原子2〜6個を有するアルケニル基のようなアルケニル基、炭素原子6〜10個を有するアリール基、フルオロ、クロロおよびブロモのようなハロゲン、ならびに、ヘテロアルキル[例えば、1個またはそれ以上のヘテロ原子結合(かくして、アルコキシ、アミノアルキルおよびチオアルキルを含む)および炭素原子1〜10個または炭素原子1〜6個を有するヘテロアルキル]を含むN、OおよびSのような1個またはそれ以上の適当な基によって1つまたはそれ以上の利用可能な位置で置換されていてもよい。
【0196】
本発明において意図する他のβ−ラパコンアナログは、下記構造:
【化4】

を有するβ−ラパコンアナログおよび誘導体が記載されている米国特許第6,245,807号に記載されているものを包含する。ここで、RおよびR1は、各々独立して、水素、ヒドロキシ、スルフヒドリル、ハロゲン、置換アルキル、非置換アルキル、置換アルケニル、非置換アルケニル、置換アリール、非置換アリール、置換アルコキシ、非置換アルコキシ、およびその塩から選択され、ここで、環炭素原子間に点線を引いた二重結合は任意の環二重結合を表す。
【0197】
さらなるβ−ラパコンアナログおよび誘導体は、下記構造:
【化5】

を有する化合物が記載されているPCT国際出願PCT/US00/10169(WO 00/61142)に記載されている。ここで、R5およびR6は、独立して、ヒドロキシ、C1−C6アルキル、C1−C6アルケニル、C1−C6アルコキシ、C1−C6アルコキシカルボニル、−−(CH2)n−フェニルから選択され得る;R7は、水素、ヒドロキシル、C1−C6アルキル、C1−C6アルケニル、C1−C6アルコキシ、C1−C6アルコキシカルボニル、−−(CH2)n−アミノ、−−(CH2)n−アリール、−−(CH2)n−ヘテロアリール、−−(CH2)n−ヘテロサイクル、または−−(CH2)n−フェニルであり、ここで、nは、0〜10の整数である。
【0198】
他のβ−ラパコンアナログおよび誘導体は、米国特許第5,763,625号、米国特許第5,824,700号および米国特許第5,969,163号、ならびに以下の位置:2位、8位および/または9位のうちの1つまたはそれ以上の位置に置換基を有するβ−ラパコンを記載しているSabba et al., J Med Chem 27:990-994(1984)のような科学学術論文に記載されている。Portela et al., Biochem Pharm 51:275-283(1996)(2位および9位に置換基);Maruyama et al., Chem Lett 847-850(1977);Sun et al., Tetrahedron Lett 39:8221-8224(1998);Goncalves et al., Molecular and Biochemical Parasitology 1:167-176(1998)(2位および3位に置換基);Gupta et al., Indian Journal of Chemistry 16B: 35-37(1978);Gupta et al., Curr Sci 46:337(1977)(3位および4位に置換基);DiChenna et al., J Med Chem 44: 2486-2489(2001)(モノアリールアミノ誘導体)も参照。
【0199】
より好ましくは、本発明において意図するβ−ラパコンアナログおよび誘導体は、一般式IおよびII:
【化6】

式I 式II
で示される化合物を包含するものである。ここで、環炭素原子間に点線を引いた二重結合は、任意の二重結合を表し、RおよびR1は、各々独立して、水素、ヒドロキシ、スルフヒドリル、ハロゲン、置換アルキル、非置換アルキル、置換アルケニル、非置換アルケニル、置換アリール、非置換アリール、置換アルコキシ、非置換アルコキシ、およびその塩から選択される。アルキル基は、好ましくは、炭素原子1〜15個、より好ましくは、炭素原子1〜約10個、さらにより好ましくは、炭素原子1〜約6個を有する。アルキルなる用語は、環状および非環状のどちらの基も表す。一般に環状の基よりも直鎖または分枝鎖非環状アルキル基の方が好ましい。一般に分枝鎖よりも直鎖アルキル基の方が好ましい。アルケニル基は、好ましくは、炭素原子2〜約15個、より好ましくは、炭素原子2〜約10個、さらにより好ましくは、炭素原子2〜6個を有する。特に好ましいアルケニル基は、炭素原子3個を有し(すなわち、1−プロペニルまたは2−プロペニル)、アリル基が特に好ましい。一般に好ましいアリール基はフェニルおよびナフチルである。アルコキシ基としては、1個またはそれ以上の酸素結合を有するこれらのアルコキシ基が挙げられ、好ましくは、炭素原子1〜15個、より好ましくは、炭素原子1〜約6個を有する。置換されたRおよびR1基は、例えば、炭素原子1〜10個または炭素原子1〜6個を有するアルキル基、炭素原子2〜10個または炭素原子2〜6個を有するアルケニル基、炭素原子6〜10個を有するアリール基、フルオロ、クロロおよびブロモのようなハロゲン、ならびに、ヘテロアルキル[例えば、1個またはそれ以上のヘテロ原子結合(かくして、アルコキシ、アミノアルキルおよびチオアルキルを含む)および炭素原子1〜10個または炭素原子1〜6個を有するヘテロアルキル]を含むN、OおよびSのような1個またはそれ以上の適当な基によって1つまたはそれ以上の利用可能な位置で置換されていてもよい。R5およびR6は、独立して、ヒドロキシ、C1−C6アルキル、C1−C6アルケニル、C1−C6アルコキシ、C1−C6アルコキシカルボニル、−−(CH2)n−アリール、−−(CH2)n−ヘテロアリール、−−(CH2)n−ヘテロサイクル、または−−(CH2)n−フェニルから選択され得る;R7は、水素、ヒドロキシル、C1−C6アルキル、C1−C6アルケニル、C1−C6アルコキシ、C1−C6アルコキシカルボニル、−−(CH2)n−アミノ、−−(CH2)n−アリール、−−(CH2)n−ヘテロアリール、−−(CH2)n−ヘテロサイクル、または−−(CH2)n−フェニルであり、ここで、nは0〜10の整数である。
【0200】
本発明において意図する好ましいβ−ラパコンアナログおよび誘導体はまた、下記一般式III:
【化7】

式III
で示される化合物を包含する。ここで、R1は、(CH2)n−R2であり、ここで、nは、0〜10の整数であり、R2は、水素、アルキル、アリール、複素環式芳香族、複素環、脂肪族、アルコキシ、アリルオキシ、ヒドロキシル、アミン、チオール、アミド、またはハロゲンである。
【0201】
本発明において意図するアナログおよび誘導体はまた、4−アセトキシ−β−ラパコン、4−アセトキシ−3−ブロモ−β−ラパコン、4−ケト−β−ラパコン、7−ヒドロキシ−β−ラパコン、7−メトキシ−β−ラパコン、8−ヒドロキシ−β−ラパコン、8−メトキシ−β−ラパコン、8−クロロ−β−ラパコン、9−クロロ−β−ラパコン、8−メチル−β−ラパコンおよび8,9−ジメトキシ−β−ラパコンを包含する。
【0202】
本発明において意図する他のβ−ラパコンアナログおよび誘導体はまた、下記一般式IV:
【化8】

式IV
で示される化合物を包含する。ここで、R1〜R4は、各々独立して、H、C1−C6アルキル、C1−C6アルケニル、C1−C6アルコキシ、C1−C6アルコキシカルボニル、−−(CH2)n−アリール、−−(CH2)n−ヘテロアリール、−−(CH2)n−ヘテロサイクル、または−−(CH2)n−フェニルからなる群から選択されるか;またはR1およびR2が一緒になって上記の群から選択される単一の置換基となり、R3およびR4が一緒になって上記の群から選択される単一の置換基となり、この場合、----は二重結合である。
【0203】
本発明において意図する好ましいβ−ラパコンアナログおよび誘導体はまた、ダニオン(dunnione)および2−エチル−6−ヒドロキシナフト[2,3−b]−フラン−4,5−ジオンを包含する。
【0204】
本発明において意図するβ−ラパコンアナログおよび誘導体はまた、下記一般式V:
【化9】

式V
で示される化合物を包含する。ここで、R1は、H、CH3、OCH3およびNO2から選択される。
【0205】
本発明の方法およびキットにおいて有用なさらに好ましいβ−ラパコンアナログは、式VI:
【化10】

式VI
によって表されるかまたはその医薬上許容される塩、またはその位置異性体混合物である(2002年11月18日に出願された米国仮出願番号第60/427,283号を優先権主張して2003年11月18日に出願された、“NOVEL LAPACHONE COMPOUNDS AND METHODS OF USE THEREOF”なる発明の名称のPCT特許出願(WO 04/45557)もまた参照)。ここで、R1〜R6は、各々独立して、H、OH、置換および非置換C1−C6アルキル、置換および非置換C1−C6アルケニル、置換および非置換C1−C6アルコキシ、置換および非置換C1−C6アルコキシカルボニル、置換および非置換C1−C6アシル、−(CH2)n−アミノ、−(CH2)n−アリール、−(CH2)n−ヘテロサイクル、および−(CH2)n−フェニルからなる群から選択されるか;または、R1またはR2のうちの1つとR3またはR4のうちの1つ;またはR3またはR4のうちの1つとR5またはR6のうちの1つが、4〜8個の環構成メンバーを有する縮合環を形成し;R7〜R10は、各々独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;nは0〜10の整数である。
【0206】
好ましい実施態様では、R1およびR2はアルキルであり、R3〜R6は、独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、置換または非置換アシル、置換アルケニルまたは置換アルキルカルボニルであり、R7〜R10は水素である。別の好ましい実施態様では、R1およびR2は、各々、メチルであり、R3〜R10は、各々、水素である。別の好ましい実施態様では、R1〜R4は、各々、水素であり、R5およびR6は、各々、メチルであり、R7〜R10は、各々、水素である。
【0207】
本発明の方法およびキットにおいて有用なさらなる好ましいβ−ラパコンアナログは、式VII:
【化11】

式VII
によって表されるかまたはその医薬上許容される塩、またはその位置異性体混合物である(2003年11月18日に出願された、“NOVEL LAPACHONE COMPOUNDS AND METHODS OF USE THEREOF”なる発明の名称のPCT特許出願もまた参照)。ここで、R1〜R4は、各々独立して、H、OH、置換および非置換C1−C6アルキル、置換および非置換C1−C6アルケニル、置換および非置換C1−C6アルコキシ、置換および非置換C1−C6アルコキシカルボニル、置換および非置換C1−C6アシル、−(CH2)n−アミノ、−(CH2)n−アリール、−(CH2)n−ヘテロサイクル、および−(CH2)n−フェニルからなる群から選択されるか;またはR1またはR2のうちの1つとR3またはR4のうちの1つが、4〜8個の環構成メンバーを有する縮合環を形成し;R5〜R8は、各々独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;nは、0〜10の整数である。式VIIのある実施態様では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、各々同時にはHではない。
【0208】
本発明の化合物の全ての立体異性体は、混合物または純粋な形態もしくは実質的に純粋な形態のいずれかであることが意図される。本発明にかかる化合物の定義は、全ての起こり得る立体異性体(例えば、各不斉中心についてのRおよびS配置)およびそれらの混合物を含む。特に、ラセミ形態および特定の活性を有する単離した光学異性体を含む。ラセミ形態は、例えば、ジアステレオマー誘導体の分別結晶、分離もしくは結晶化、またはキラルカラムクロマトグラフィーによる分離のような物理的方法によって分割することができる。個々の光学異性体は、例えば、光学活性酸との塩形成の後の結晶化のような慣用的な方法によってラセミ体から得ることができる。さらにまた、二重結合におけるE配置およびZ配置のような全ての幾何異性体は、特記しない限り本発明の範囲内である。本発明のある種の化合物は、互変異性体の形態で存在し得る。当該化合物のかかる互変異性体は全て、特記しない限り、本発明の範囲内であると考える。本発明はまた、アナログまたは誘導体の1つまたはそれ以上の位置異性体混合物も包含する。
【0209】
2つ以上の細胞周期チェックポイント活性化の調節物質を対象体に投与して、例えば、副作用を減少させたり、効力を増強したりすることができる。さらに、さらなる化学療法剤のような他の活性薬剤を細胞周期チェックポイント活性化の調節物質と合わせて、該対象体をさらに治療することができる(例えば、化学療法と本発明の放射線療法との併用)。β−ラパコンのような細胞周期チェックポイント活性化の調節物質と合わせることができる化学療法剤の例については、PCT国際公開WO 00/61142を参照。
【0210】
他の化学療法剤の使用に関して、個々の患者は、処置する医師が適当であると考える方法でモニターされる。投与量は、National Cancer InstituteのCommon Toxicity Criteriaを用いて、好中球減少症または重篤な末梢神経障害のような重篤な副作用が生じる場合やグレード2またはそれ以上のレベルの粘膜炎が観察される場合には減らすこともできる。
【0211】
本明細書に記載されている薬剤は、1回でおよび逐次的に、または当該薬剤の1つまたはそれ以上を他の治療剤(免疫抑制剤、増強剤および副作用軽減剤が挙げられるがこれらに限定されるものではない)と一緒に含有するカクテルまたはコンビネーションで投与してもよい。該治療剤は、好ましくは、静脈内に、または筋肉注射、皮下注射、クモ膜下腔内注射もしくは腹腔内注射によって全身に投与されるであろう。
【0212】
本発明の方法およびキットにおいて有用な医薬組成物は、固体、半固体、または液体、例えば、懸濁剤、エアロゾル剤または同類のものとしての投与形態で存在し得る。好ましくは、当該組成物は、正確な投与量の1回投与に適した単位投与形態で投与される。当該組成物はまた、所望の製剤に依存して、動物またはヒト投与用の医薬組成物を処方するために一般的に使用される担体である医薬上許容される非毒性担体または希釈剤を含んでもよい。該希釈剤は、好ましくは、コンビネーションの生物学的活性に悪影響を及ぼさないように選択される。かかる希釈剤の例は、蒸留水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、およびハンクス液である。β−ラパコンの可溶化のための好ましい担体は、水可溶性担体分子であるヒドロキシプロピルベータシクロデキストリンである(例えば、米国特許公開第20030091639号を参照)。Poloxamer、Povidone K17、Povidone K12、Tween 80、エタノール、Cremophor/エタノール、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコールおよびTrappsolのような、β−ラパコンまたは他の細胞周期チェックポイント活性化の調節物質と組み合わせるための他の水可溶化剤が意図される。さらにまた、本発明は水可溶化剤に限定されず、リピオドールおよび落花生油のような油性可溶化剤を使用することもできる。β−ラパコンのような細胞周期チェックポイント活性化の調節物質を投与するために高分子担体を使用することもできる(例えば、PCT国際公開WO 03090710を参照)。細胞周期チェックポイント活性化の調節物質を担持する生体適合性ポリマーは、ミクロスフェア、ナノスフェアもしくはミリロッドの形態または当業者に知られている他の形状もしくは形態で提供され得る。
【0213】
さらに、医薬組成物または製剤はまた、他の担体、アジュバント、または非毒性、非治療性、非免疫性安定剤および同類のものを含むこともできる。かかる希釈剤または担体の有効量は、成分の可溶性または生物学的活性および同類のものの点から見て医薬上許容される製剤を得るための有効な量である。リポソーム製剤もまた本発明において意図されるものであり、記載されている(例えば、米国特許第5,424,073号を参照)。
【0214】
本発明の目的のために、本明細書に記載される細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、それらの医薬上許容される塩、好ましくはナトリウム;ハロゲン置換(好ましくは塩素またはフッ素)を含有するアナログ;アンモニウムまたは置換アンモニウム塩(好ましくは第2もしくは第3アンモニウム塩)を含有するアナログ;アルキル、アルケニル、アリールまたはそれらのアルキル、アルケニル、アリール、ハロ、アルコキシ、アルケニルオキシ置換誘導体(好ましくはメチル、メトキシ、エトキシ、またはフェニルアセテート)を含有するアナログ;およびナフチルアセテートのような天然アナログを包含する。また、細胞周期チェックポイント活性化の調節物質は、水溶性ポリマーと結合してもよく、または水溶性キレート化剤または放射性核種で誘導体化されてもよい。水溶性ポリマーの例としては、ポリグルタミン酸ポリマー、ポリカプロラクトンとのコポリマー、ポリグリコール酸、ポリアクチン酸、ポリアクリル酸、ポリ(2−ヒドロキシエチル1−グルタミン)、カルボキシメチルデキストラン、ヒアルロン酸、ヒト血清アルブミン、ポリアルギニン酸またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。水溶性キレート化剤の例としては、DIPA(ジエチレントリアミンペンタ酢酸)、EDTA、DTTP、DOTAまたはそれらの水溶性塩などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。放射性核種の例としては、111In、90Y、166Ho、68Ga、99mTcおよび同類のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0215】
上記したように、ある実施態様では経口投与が好ましいが、本発明は、この点において限定されるものではなく、当該化合物は、当該技術分野で知られているいずれもの手段によって投与することができる。かかる仕様としては、経鼻投与、肺投与、局所投与(頬側および舌下を含む)または非経口投与(皮下、筋肉内、静脈内および皮内を含む)が挙げられる。
【0216】
投与の容易さおよび患者にとっての快適さのために、経口投与が一般に好ましい。しかしながら、経口投与は、典型的には、静脈内投与よりも高い投与量を必要とする。かくして、状況に応じて、当業者は、特定のケースにおいてどの投与形態が最良であるかを決定しなければならない −− 必要とされる投与量と必要な投与回数(例えば、1日当たり、1週間当たり、または1ヶ月当たり)とのバランスが必要である。好ましい経口投与剤形としては、錠剤、カプセル剤、カシェ剤、糖衣錠、シロップ剤、懸濁剤、エリキシル剤、ロゼンジ剤、および同類のものが挙げられる。
【0217】
細胞周期チェックポイント活性化の調節物質(例えば、β−ラパコン)の投与に際して、かかる化合物の通常の投与量が個々に以下に記載するように利用される。しかしながら、併用療法を用いる場合(例えば、2種類以上の細胞周期チェックポイント活性化の調節物質を患者に投与する場合)、該細胞周期チェックポイント活性化の調節物質の一方または両方を、いずれかの細胞周期チェックポイント活性化の調節物質が個々に投与された場合に使用されるよりも低い投与量で用いるのが好ましい −− 典型的には、個々の量の75%またはそれ以下、より好ましくは50%またはそれ以下、さらにより好ましくは40%またはそれ以下。
【0218】
治療用途において、本発明に従って使用される薬剤の投与量は、いくつかある選択される投与量に影響を及ぼすファクターの中で特に、薬剤、レシピエント患者の年齢、体重および臨床状態、ならびに治療を施す臨床医または開業医の経験および判断によって異なる。一般に、該投与量は、上記したような放射線障害の予防または治療をもたらすのに十分であるべきである。
【0219】
以下の実施例を参照することにより本発明をさらに定義する。上記の詳細な説明および以下の実施例は、本発明を例示しているだけであり、本発明の範囲を制限するものではないと解される。本発明の目的および利益から逸脱することなく物質および方法の両方についての多くの変更が行われ得ることは当業者には明らかであろう。
【実施例】
【0220】
実施例1
ヒト結腸癌細胞(SW480)および正常な結腸細胞(NCM460)を2μMの濃度のβ−ラパコンで処理し、20分、1時間、2時間、または4時間の曝露の後に収集する。全細胞抽出物を調製し、SDS/PAGEによって分解する。増強型ケミルミネッセンスアッセイシステム(Amersham Pharmacia)を用いてE2F1レベルを測定する。E2F1に対するモノクローナル抗体をSanta Cruz Biotechnology(カリフォルニア州サンタクルーズ)から入手する。早くもβ−ラパコンへの曝露後20分にはもう、腫瘍細胞ではE2F1の上昇が見られるが、正常細胞では見られない(図2)。β−ラパコンへの曝露後のE2F1の上昇は、癌細胞における細胞死の間じゅう持続する。
【0221】
実施例2
指数関数的に増殖するヒト結腸癌細胞(SW480)を2μMのβ−ラパコン、または担体単独対照で4時間処理する。トリゾール試薬によって全RNAを調製する。細胞周期チェックポイントに関与する複数の遺伝子の相対的な発現レベルを、Human Cell−cycle Checkpoint GEArray Kit(SuperArray Inc.、ミズーリ州ベテスダ)を用いて測定する(図3)。β−ラパコンで処理した癌細胞中のE2F1標的BRCA1のアップレギュレーションは、E2F1活性化のもう1つの指標である。BRCA1は、DNA修復を含む細胞内での多くの役割に関与する腫瘍抑制因子である。
【0222】
実施例3
ヒト子宮頚癌細胞(HeLa)を4μMのβ−ラパコンで0、3、10、30、60および120分間処理する。全細胞溶解液を調製し、SDS−PAGEによって分離し、抗−Chk2および抗−リン酸化−Chk2抗体を用いてイムノブロッティング法を行うことにより分析する。リン酸化Chk2(p−Chk2)レベルは、10分にはもう現れており、120分まで増加し続ける。β−ラパコンは、標的残基トレオニン68(T68)のリン酸化を介してChk2の活性リン酸化型の持続性増加を誘発する。Chk2のリン酸化型はβ−ラパコンでの処理後に増加したが、該細胞内のChk2の総量は、該時間経過の間じゅう依然として変化しない(図4)。そのようなものとして、リン酸化Chk2の割合はβ−ラパコンでの処理後に上昇する(すなわち、β−ラパコン処理後、リン酸化Chk2のフラクションは、β−ラパコン処理後に変化しない該細胞内のChk2の総量と比較して増加する)。
【0223】
実施例4
方法および設計:
薬物処方:
40%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPBCD)中10mg/mlのβ−ラパコンを調製する。
【0224】
動物
C57BL/6J近交系雌性マウス(4〜5週齢)を使用する。動物は、環境制御した動物施設中に維持する。
【0225】
薬物処置
照射の4時間前および後に、種々の濃度のβ−ラパコン(体重1kg当たり20および40mg)を動物に腹腔内注射する。
【0226】
照射
ガンマチャンバー(Gammacell 40 Exactor)中、室温で、空中にて、8Gyのγ線で1.05Gy/分の線量率で動物の全身照射を行う。この放射線量は、放射線または核によるテロ攻撃の多くのシナリオにおいて予測される等価なヒト曝露の範囲内である。
【0227】
動物の生存率
マウスを以下のグループに分ける(各グループは、同一の処置を受けるマウス4匹を含む):
グループI: マウスは放射線だけを受け、対照としての役割を果たす。
グループII: マウスに、放射線照射の4時間前に体重1kg当たり20mgのβ−ラパコンを注射する。
グループIII: マウスに、放射線照射の4時間前に体重1kg当たり40mgのβ−ラパコンを注射する。
グループIV: マウスに、放射線照射の4時間後に体重1kg当たり20mgのβ−ラパコンを注射する。
グループV: マウスに、放射線照射の4時間後に体重1kg当たり40mgのβ−ラパコンを注射する。
グループVI: マウスに、放射線照射の4時間前に体重1kg当たり10mgのアミフォスチン(amifostine)を注射する。
【0228】
放射線曝露および死亡プロファイル
1.05Gy/分の線量率で8Gyを動物に照射する。照射後、マウスをそのケージに戻し、定期的に観察する。放射線誘発死亡プロファイルおよびβ−ラパコンによるその調節を表1に示す。γ線への曝露は、動物において致死性を引き起こす。重要なことには、β−ラパコンでの処置(特に照射前に40mg/kgのレベルでの処置)は死亡率を低下させる。
【0229】
β−ラパコンの生存時間に対する効果
照射のメディアン生存時間に対する影響およびβ−ラパコンによる調節を表2に示す。照射(8Gy)の4時間前にβ−ラパコン(40mg/kg)を注射した動物のグループでは、メディアン生存時間が(照射だけの対照グループと比べて)16.4日から25日に増えたことが判明した。対照的に、10mg/kgのアミフォスチン(公知の放射線防護薬)での処置は、メディアン生存時間に対する効果をほとんど示さなかった。
【0230】
時間的生存率パターン
図5は、β−ラパコン(体重1kg当たり20、40mg)での処置前または処置後に8Gyを照射したマウスの時間的生存率パターンを示す。対照グループでは、10〜14日の間に生存率の急激な低下が見られた。β−ラパコンの投与は、この初期の生存率低下を遅らせた(これは特に照射前に40mg/kgを投与した場合であるが、20日目の死亡率は放射線照射の4時間後に20mg/kgのβ−ラパコンで処置したグループでも低下した)。
【0231】
【表1】

【0232】
【表2】

【0233】
実施例5
方法および設計:
薬物処方:
40%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPBCD)中10mg/mlのβ−ラパコンを調製する。
【0234】
動物
C57BL/6J近交系雌性マウス(4〜5週齢)を使用する。動物は、環境制御した動物施設中に維持する。
【0235】
薬物処置
照射の0.5時間、1時間もしくは4時間前または照射の10分もしくは1時間後にβ−ラパコン(体重1kg当たり40mg)を動物に腹腔内注射する。
【0236】
照射
ガンマチャンバー(Gammacell 40 Exactor)中、室温で、空中にて、8Gyのγ線で1.05Gy/分の線量率で動物の全身照射を行う。この放射線量は、放射線または核によるテロ攻撃の多くのシナリオにおいて予測される等価なヒト曝露の範囲内である。
【0237】
動物の生存率
マウスを以下のグループに分ける(各グループは、同一の処置を受けるマウス8匹を含む):
グループI: 対照(マウスは放射線を受けない)。
グループII: マウスに、放射線照射の1時間前に体重1kg当たり4mlの40%HPBCDを注射する。
グループIII: マウスに、放射線照射の4時間前に体重1kg当たり40mgのβ−ラパコンを注射する。
グループIV: マウスに、放射線照射の1時間前に体重1kg当たり40mgのβ−ラパコンを注射する。
グループV: マウスに、放射線照射の0.5時間前に体重1kg当たり40mgのβ−ラパコンを注射する。
グループVI: マウスに、放射線照射の10分後に体重1kg当たり40mgのβ−ラパコンを注射する。
グループVII: マウスに、放射線照射の1時間後に体重1kg当たり40mgのβ−ラパコンを注射する。
【0238】
放射線曝露および死亡プロファイル
動物に1.05Gy/分の線量率で8Gyを照射する。照射後、マウスをそのケージに戻し、定期的に観察する。放射線誘発死亡プロファイルおよびβ−ラパコンによるその調節を表3に示す。γ線への曝露は、動物において致死性を引き起こす。重要なことには、β−ラパコンでの処置(特に、照射の4、1または0.5時間前の40mg/kgのレベルでの処置)は死亡率を低下させる。
【0239】
β−ラパコンの生存時間に対する効果
照射のメディアン生存時間に対する影響およびβ−ラパコンによる調節を表4に示す。照射(8Gy)の4時間前にβ−ラパコン(40mg/kg)を注射した動物のグループでは、メディアン生存時間が(照射だけの対照グループと比べて)16.4日から21日に増えたことが判明した。照射(8Gy)の1時間前にβ−ラパコン(40mg/kg)を注射した動物のグループでは、メディアン生存時間が(照射だけの対照グループと比べて)16.4日から68日に増えたことが判明した。照射(8Gy)の0.5時間前にβ−ラパコン(40mg/kg)を注射した動物のグループでは、メディアン生存時間が(照射だけの対照グループと比べて)16.4日から>68日(死亡なし)に増えたことが判明した。
【0240】
時間的生存率パターン
図6は、β−ラパコン(体重1kg当たり40mg)での処置前または処置後の8Gyを照射したマウスの時間的生存率パターンを示す。対照グループでは、16〜20日の間に生存率の急激な低下が見られた。照射の0.5、1.0または4時間前のβ−ラパコンの投与は、この初期の生存率低下を遅らせた
【0241】
【表3】

【0242】
【表4】

【0243】
この実験は、β−ラパコンの投与、特に放射線曝露の前の投与が致死性を有意に遅らせることができ、特定の投与量では、放射線誘発致死性に対する完全な保護をもたらすことができることを示している(例えば、表2および4)。β−ラパコンは、照射を受けた対象体において観察される初期の生存率低下を遅らせることができ、これはβ−ラパコンが放射線防護特性を有することを示唆している。
【0244】
実施例6
方法および設計:
薬物処方:
40%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPBCD)中10mg/mlのβ−ラパコンを調製する。
【0245】
動物
C57BL/6J近交系雌性マウス(4〜5週齢)を使用する。動物は、環境制御した動物施設中に維持する。
【0246】
薬物処置
照射の0.5時間、1時間、2時間、4時間または6時間前にβ−ラパコン(体重1kg当たり200mg)を動物に経口投与する。
【0247】
照射
ガンマチャンバー(Gammacell 40 Exactor)中、室温で、空中にて、8Gyのγ線で1.05Gy/分の線量率で動物の全身照射を行う。この放射線量は、放射線または核によるテロ攻撃の多くのシナリオにおいて予測される等価なヒト曝露の範囲内である。
【0248】
動物の生存率
マウスを以下のグループに分ける(各グループは、同一の処置を受けるマウス8匹を含む):
グループI: マウスは放射線もβ−ラパコンも担体も受けない。
グループII: マウスに、放射線照射の1時間前に担体(体重1kg当たり4mlの40%HPBCD)を経口投与する。
グループIII: マウスに、放射線照射の6時間前にβ−ラパコン(体重1kg当たり200mg)を経口投与する。
グループIV: マウスに、放射線照射の4時間前にβ−ラパコン(体重1kg当たり200mg)を経口投与する。
グループV: マウスに、放射線照射の2時間前にβ−ラパコン(体重1kg当たり200mg)を経口投与する。
グループVI: マウスに、放射線照射の1時間前にβ−ラパコン(体重1kg当たり200mg)を経口投与する。
グループVII: マウスに、放射線照射の0.5時間前にβ−ラパコン(体重1kg当たり200mg)を経口投与する。
【0249】
放射線曝露および死亡プロファイル
動物に1.05Gy/分の線量率で8Gyを照射する。照射後、マウスをそのケージに戻し、定期的に観察する。放射線誘発死亡プロファイルおよびβ−ラパコンによるその調節を表5に示す。γ線への曝露は、動物において致死性を引き起こす。重要なことには、β−ラパコンでの処置(特に、照射の1時間前の200mg/kgのレベルでの処置)は死亡率を低下させる。
【0250】
【表5】

【0251】
【表6】

【0252】
β−ラパコンの生存時間に対する効果
照射のメディアン生存時間に対する影響およびβ−ラパコンによる調節を表6に示す。照射(8Gy)の1時間前にβ−ラパコン(200mg/kg)の経口投与を受けた動物のグループでは、メディアン生存時間が(照射だけの対照グループと比べて)13日から18日に増えたことが判明した。
【0253】
時間的生存率パターン
図7は、β−ラパコン(体重1kg当たり200mg)で経口前処置して8Gyを照射したマウスの時間的生存率パターンを示す。対照グループでは、16〜20日の間に生存率の急激な低下が見られた。照射の1時間前のβ−ラパコンの経口投与は、照射後50日目に処置マウスの30%を超える生存率をもたらした。
【0254】
実施例7
実施例7a
最近、成熟T細胞の胸腺産出量が、若年期だけではなく青年期のずっと後の成人においても容易に測定することができることが立証された。例えば、Douek DC, McFarland RD, Keiser PH, et al., Nature(1998)396:690-669を参照。以下のとおりβ−ラパコン処置を伴う場合と伴わない場合のマウスにおける全身γ線照射後に胸腺細胞性を評価する。
【0255】
40%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPBCD)中10mg/mlのβ−ラパコンを調製する。C57BL/6J近交系雌性マウス(4〜5週齢)を6匹ずつ3つのグループに分ける:グループIのマウスには、放射線もβ−ラパコンも担体も与えない;グループIIのマウスには、放射線を照射し、担体(体重1kg当たり4mlの40%HPBCD)を注射する;グループIIIのマウスには、照射の0.5時間前にβ−ラパコン(体重1kg当たり40mg)を腹腔内注射する。ガンマチャンバー(Gammacell 40 Exactor)中、室温で、空中にて、8Gyのγ線で1.05Gy/分の線量率で動物の全身照射を行う。この放射線量は、放射線または核によるテロ攻撃の多くのシナリオにおいて予測される等価なヒト曝露の範囲内である。照射後、動物は、環境制御した動物施設中に維持する。照射後5日目にグループI、IIおよびIIIのそれぞれのマウス3匹ずつを屠殺し、それぞれについて胸腺細胞性の分析を行う。照射後8日目に残りのマウスを屠殺し、それぞれについて胸腺細胞性の分析を行う。胸腺細胞性は、標準的な方法に従ってヘマトキシリン−エオシンで染色した切片で定性的に評価する。
【0256】
図8のパネルCに示されるように、β−ラパコンでの処置の不在下では、マウスの8Gy全身照射後5日目に採取した胸腺切片において胸腺細胞性が実質的に破壊されることが観察される。図8のパネルBに示されるように、β−ラパコンでのマウスの前処置は、8Gy全身照射後5日目に採取した胸腺切片における胸腺細胞性を保存する。図8のパネルAは、照射していない対照動物における正常なマウス胸腺を示す。
【0257】
実施例7b
以下のとおりβ−ラパコンでの前処置を伴う場合と伴わない場合のマウスにおける全身γ線照射後に脾臓細胞を定量的に評価する。40%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPBCD)中10mg/mlのβ−ラパコンを調製する。C57BL/6J近交系雌性マウス(4〜5週齢)を6匹ずつ3つのグループに分ける:グループIのマウスには、放射線もβ−ラパコンも担体も与えない;グループIIのマウスには、放射線を照射し、担体(体重1kg当たり4mlの40%HPBCD)を注射する;グループIIIのマウスには、照射の0.5時間前にβ−ラパコン(体重1kg当たり40mg)を腹腔内注射する。ガンマチャンバー(Gammacell 40 Exactor)中、室温で、空中にて、8Gyのγ線で1.05Gy/分の線量率で動物の全身照射を行う。この放射線量は、放射線または核によるテロ攻撃の多くのシナリオにおいて予測される等価なヒト曝露の範囲である。照射後、動物は、環境制御した動物施設中に維持する。照射後5日目にグループI、IIおよびIIIのそれぞれのマウス3匹ずつを屠殺し、それぞれについて脾臓細胞性の定量分析を行う。照射後8日目に残りのマウスを屠殺し、それぞれについて脾臓細胞性の定量分析を行う。
【0258】
脾臓細胞性についての定量分析について、単一細胞懸濁液中にて脾臓を処理し、溶解緩衝液(0.01M KHCO3、0.154M NH4Cl、0.01mM EDTA)2mlに赤血球を溶解させる。残りの白血球を洗浄し、懸濁させ、トリパンブルー排除法を用いて血球計数器中にて計数する。図9に示されるように、β−ラパコンでの処置の不在下(すなわち、担体だけ)では、マウスの全身照射後5日目および8日目に採取した脾臓切片において脾臓細胞性が実質的に破壊されることが観察される。図9に示されるように、β−ラパコン前処置は、マウスの全身照射後5日目および8日目に採取した脾臓切片において細胞性を有意に保存した(p=0.00035)。
【0259】
実施例7c
以下のとおりβ−ラパコンでの前処置を伴う場合と伴わない場合のマウスの全身γ線照射後に染色した脾臓の組織分析によって脾臓の細胞性を評価する。
【0260】
以下のとおりβ−ラパコンでの前処置を伴う場合と伴わない場合のマウスの全身γ照射後に脾臓細胞性を定性的に評価する。40%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPBCD)中10mg/mlのβ−ラパコンを調製する。C57BL/6J近交系雌性マウス(4〜5週齢)を6匹ずつ3つのグループに分ける:グループIのマウスには、放射線もβ−ラパコンも担体も与えない;グループIIのマウスには、放射線を照射し、担体(体重1kg当たり4mlの40%HPBCD)を注射する;グループIIIのマウスは、照射の0.5時間前にβ−ラパコン(体重1kg当たり40mg)を腹腔内注射する。ガンマチャンバー(Gammacell 40 Exactor)中、室温で、空中にて、8Gy(致死放射線)または5Gy(致死下放射線)のγ線で1.05Gy/分の線量率でマウスの全身照射を行う。この放射線量は、放射線または核によるテロ攻撃の多くのシナリオにおいて予測される等価なヒト曝露の範囲である。照射後、動物は、環境制御した動物施設中にて維持する。照射後5日目にグループI、IIおよびIIIのそれぞれのマウス3匹ずつを屠殺し、それぞれについて脾臓細胞性の分析を行う。照射後8日目に残りのマウスを屠殺し、それぞれについて脾臓細胞性の分析を行う。脾臓細胞性は、標準的な方法に従ってヘマトキシリン−エオシンで染色した切片において定性的に評価する。
【0261】
非致死線量5Gyでのマウスの全身照射の5日後に組織学的に判断されるようにβ−ラパコンは脾臓構造に対する保護効果を有する。これらの条件下では、β−ラパコンを受けていない照射マウスの脾臓は激しく破壊されており、リンパ球がほとんど残存していない(図10のパネルC)が、β−ラパコン処置および照射を受けているマウスの脾臓は十分に構築されており、脾臓の胚中心ではリンパ球がほとんど保存されている(図10のパネルB)。図10のパネルAは、照射されていない正常なマウス脾臓を示す:莢膜下にはいくつかの明らかな胚中心および明らかな洞がある。
【0262】
β−ラパコンで処置していない照射マウスにおける放射線量および死亡するまでの時間は、造血症候群に二次的な免疫機能障害を伴う罹患率と一致する(例えば、実施例4〜6を参照)。β−ラパコンは、胸腺および脾臓の正常な細胞性を放射線誘発損傷から保護することにおいて重大な効果を有すると考えられる(例えば、実施例7を参照)。β−ラパコンはまた、胸腺および脾臓の正常な組織像を放射線誘発損傷から保護することおよび胸腺および脾臓の正常な構造を放射線誘発損傷から保護することにおいて重大な効果を有すると考えられる(例えば、実施例7を参照)。β−ラパコンが照射後の二次リンパ器官(例えば、胸腺および脾臓)の構築的な構造および細胞性を保存する能力は、β−ラパコンが致死線量の照射からマウスを保護する能力において重要な役割を果たすと考えられる。
【0263】
実施例8
以下のとおりβ−ラパコンでの前処置を伴う場合と伴わない場合のマウスの全身γ線照射後の放射線誘発白血球減少症(例えば、放射線誘発好中球減少症、単球減少症もしくはリンパ球減少症、またはそのサブコンビネーション)に対するβ−ラパコン前処置の効果を評価する。40%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPBCD)中10mg/mlのβ−ラパコンを調製する。C57BL/6J近交系雌性マウス(4〜5週齢)を6匹ずつ3つのグループに分ける:グループIのマウスには、放射線もβ−ラパコンも担体も与えない;グループIIのマウスには、放射線を照射し、担体(体重1kg当たり4mlの40%HPBCD)を注射する;グループIIIのマウスには、放射線照射の0.5時間前にβ−ラパコン(体重1kg当たり40mg)を腹腔内注射する。ガンマチャンバー(Gammacell 40 Exactor)中、室温で、空中にて8Gy(致死放射線)または5Gy(致死下放射線)のγ線で1.05Gy/分の線量率で動物の全身照射を行う。この放射線量は、放射線または核によるテロ攻撃の多くのシナリオにおいて予測される等価なヒト曝露の範囲内である。照射後、動物は環境制御した動物施設中にて維持する。照射後5日目にグループI、IIおよびIII中のそれぞれ3匹のマウスを屠殺し、それぞれについて放射線誘発白血球減少症の分析を行う。照射後8日目に残りのマウスを屠殺し、それぞれについて放射線誘発白血球減少症の分析を行う。MITでの動物施設中にて血球計数器を使用して白血球を自動的に計数する。
【0264】
【表7】

【0265】
表7に示されるように、β−ラパコンで前処置しなかったγ線照射マウスは、致死放射線曝露後5日目および8日目に激しい白血球減少症を示した(好中球、単球およびリンパ球のパーセンテージと共に、WBCを1000細胞/mlで表した)。β−ラパコンでの前処置は、この放射線誘発好中球減少症、単球減少症およびリンパ球減少症に対して部分的に保護する(5日目および8日目の両方に相当するデータについて、P<0.05)。β−ラパコンは、致死放射線(8Gy)への曝露後の最初の8日間の間、循環白血球を保存することにおいて中等度であるが実質的な影響を及ぼすと考えられる。
【0266】
上記発明は、明確な理解のために説明および実施例によって少し詳しく記載されているが、当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずにある種の変更および変形を行うことができることを容易に確認するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0267】
【図1】図1は、細胞周期およびチェックポイント活性化におけるE2F1の役割を示す略図である。
【図2】図2は、β−ラパコンがヒト結腸癌細胞におけるE2F1の発現の増強を誘発するが、同様に処置した正常なヒト結腸細胞においては誘発しないことを示す。
【図3】図3は、β−ラパコンがヒト結腸癌細胞におけるBRCA1の発現の増強を誘発することを示す。
【図4】図4は、β−ラパコンがHeLa細胞におけるリン酸化Chk2の割合の増大を誘発することを示す。
【図5】図5は、照射の前または後に腹腔内投与したβ−ラパコン処置マウスの生存率を、照射だけを受けたマウスの生存率と比べて示す。
【図6】図6は、照射の前または後に腹腔内投与したβ−ラパコン処置マウスの生存率を、照射だけを受けたマウスの生存率と比べて示す。
【図7】図7は、照射の前に経口投与したβ−ラパコン処置マウスの生存率を、照射だけを受けたマウスの生存率と比べて示す。
【図8】図8は、照射前に腹腔内投与したβ−ラパコン処置マウスにおける胸腺の細胞性を、照射だけを受けたマウスにおける胸腺の細胞性と比べて示す。
【図9】図9は、照射前に腹腔内投与したβ−ラパコン処置マウスにおける脾臓の細胞性を、照射だけを受けたマウスにおける脾臓の細胞性と比べて示す。
【図10】図10は、照射前に腹腔内投与したβ−ラパコン処置マウスにおける脾臓の細胞性を、照射だけを受けたマウスにおける脾臓の細胞性と比べて示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線障害の予防方法であって、放射線曝露の前に、かかる予防を必要とする対象体にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を医薬上許容される担体と組み合わせて投与する(ここで、該放射線障害が予防される)ことを含む方法。
【請求項2】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が経口投与される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が静脈内投与される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が筋肉内投与される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
放射線障害が電離放射線によって引き起こされる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
放射線障害がα線、β線、γ線またはX線によって引き起こされる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
放射線障害の予防が細胞死を減少させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
放射線障害の予防が免疫細胞の細胞死を減少させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
放射線障害の予防が白血球の細胞死を減少させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
放射線障害の予防がリンパ球、単球または好中球の細胞死を減少させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
放射線障害の予防が白血球減少症を寛解させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
放射線障害の予防が好中球減少症、単球減少症またはリンパ球減少症を寛解させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
放射線障害の予防が免疫系の正常な細胞性を保護することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
放射線障害の予防が免疫器官の正常な組織像を保護することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
放射線障害の予防が胸腺の正常な構造を保護することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
放射線障害の治療方法であって、放射線曝露の前に、かかる治療を必要とする対象体にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を医薬上許容される担体と組み合わせて投与する(ここで、放射線障害が治療される)ことを含む方法。
【請求項17】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が経口投与される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が静脈内投与される、請求項16記載の方法。
【請求項19】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が筋肉内投与される、請求項16記載の方法。
【請求項20】
放射線障害が電離放射線によって引き起こされる、請求項16記載の方法。
【請求項21】
放射線障害がα線、β線、γ線またはX線によって引き起こされる、請求項16記載の方法。
【請求項22】
放射線障害の治療が細胞死を減少させることを含む、請求項16記載の方法。
【請求項23】
放射線障害の治療が免疫細胞の細胞死を減少させることを含む、請求項16記載の方法。
【請求項24】
放射線障害の治療が白血球の細胞死を減少させることを含む、請求項16記載の方法。
【請求項25】
放射線障害の治療がリンパ球、単球または好中球の細胞死を減少させることを含む、請求項16記載の方法。
【請求項26】
放射線障害の治療が白血球減少症を寛解させることを含む、請求項16記載の方法。
【請求項27】
放射線障害の治療が好中球減少症、単球減少症またはリンパ球減少症を寛解させることを含む、請求項16記載の方法。
【請求項28】
放射線障害の治療が免疫系の正常な細胞性を保護することを含む、請求項16記載の方法。
【請求項29】
放射線障害の治療が免疫器官の正常な組織像を保護することを含む、請求項16記載の方法。
【請求項30】
放射線障害の治療が胸腺の正常な構造を保護することを含む、請求項16記載の方法。
【請求項31】
放射線損傷の予防方法であって、放射線曝露の前に、かかる予防を必要とする対象体にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を医薬上許容される担体と組み合わせて投与する(ここで、放射線損傷が予防される)ことを含む方法。
【請求項32】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が経口投与される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が静脈内投与される、請求項31記載の方法。
【請求項34】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が筋肉内投与される、請求項31記載の方法。
【請求項35】
放射線損傷が電離放射線によって引き起こされる、請求項31記載の方法。
【請求項36】
放射線損傷がα線、β線、γ線またはX線によって引き起こされる、請求項31記載の方法。
【請求項37】
放射線損傷が結果としてリンパ球、単球または好中球の細胞死を引き起こす、請求項31記載の方法。
【請求項38】
放射線損傷が結果として好中球減少症、単球減少症またはリンパ球減少症を引き起こす、請求項31記載の方法。
【請求項39】
電離放射線曝露を受ける危険性がある対象体における正常細胞への電離放射線の影響を減少させる方法であって、電離放射線曝露の前に、該対象体にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を投与する(ここで、該対象体における正常細胞への電離放射線の影響が減少する)ことを含む方法。
【請求項40】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が経口投与される、請求項39記載の方法。
【請求項41】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が静脈内投与される、請求項39記載の方法。
【請求項42】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が筋肉内投与される、請求項39記載の方法。
【請求項43】
電離放射線曝露がα線、β線、γ線またはX線への曝露である、請求項39記載の方法。
【請求項44】
正常細胞への電離放射線の影響が正常細胞の細胞死である、請求項39記載の方法。
【請求項45】
正常細胞への電離放射線の影響が正常免疫細胞の細胞死である、請求項39記載の方法。
【請求項46】
正常細胞への電離放射線の影響が正常白血球の細胞死である、請求項39記載の方法。
【請求項47】
正常細胞への電離放射線の影響が正常リンパ球、単球または好中球の細胞死である、請求項39記載の方法。
【請求項48】
対象体への電離放射線の影響が白血球減少症である、請求項39記載の方法。
【請求項49】
対象体への電離放射線の影響が好中球減少症、単球減少症またはリンパ球減少症である、請求項39記載の方法。
【請求項50】
正常細胞への放射線障害を予防する方法であって、放射線曝露の前に、正常細胞をβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、放射線障害が予防される)ことを含む方法。
【請求項51】
放射線障害が電離放射線によって引き起こされる、請求項50記載の方法。
【請求項52】
放射線障害がα線、β線、γ線またはX線によって引き起こされる、請求項50記載の方法。
【請求項53】
正常細胞が正常免疫細胞である、請求項50記載の方法。
【請求項54】
正常細胞が正常白血球である、請求項50記載の方法。
【請求項55】
正常細胞が正常リンパ球である、請求項50記載の方法。
【請求項56】
正常細胞が正常単球である、請求項50記載の方法。
【請求項57】
正常細胞が正常好中球である、請求項50記載の方法。
【請求項58】
放射線障害の予防が細胞死を減少させることを含む、請求項50記載の方法。
【請求項59】
非癌性細胞の放射線障害からの保護方法であって、放射線曝露の前に、非癌性細胞をβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、非癌性細胞が放射線障害から保護される)ことを含む方法。
【請求項60】
放射線障害が電離放射線によって引き起こされる、請求項59記載の方法。
【請求項61】
放射線障害がα線、β線、γ線またはX線によって引き起こされる、請求項59記載の方法。
【請求項62】
非癌性細胞が非癌性免疫細胞である、請求項59記載の方法。
【請求項63】
非癌性細胞が非癌性白血球である、請求項59記載の方法。
【請求項64】
非癌性細胞が非癌性リンパ球である、請求項59記載の方法。
【請求項65】
非癌性細胞が非癌性単球である、請求項59記載の方法。
【請求項66】
非癌性細胞が非癌性好中球である、請求項59記載の方法。
【請求項67】
非癌性細胞の放射線障害からの保護が細胞死を減少させることを含む、請求項59記載の方法。
【請求項68】
非癌性細胞における放射線誘発細胞死の予防方法であって、放射線曝露の前に、非癌性細胞をβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量と接触させる(ここで、非癌性細胞の放射線誘発細胞死が予防される)ことを含む方法。
【請求項69】
放射線誘発細胞死が電離放射線によって誘発される、請求項68記載の方法。
【請求項70】
放射線誘発細胞死がα線、β線、γ線またはX線によって引き起こされる、請求項68記載の方法。
【請求項71】
非癌性細胞が非癌性免疫細胞である、請求項68記載の方法。
【請求項72】
非癌性細胞が非癌性白血球である、請求項68記載の方法。
【請求項73】
非癌性細胞が非癌性リンパ球である、請求項68記載の方法。
【請求項74】
非癌性細胞が非癌性単球である、請求項68記載の方法。
【請求項75】
非癌性細胞が非癌性好中球である、請求項68記載の方法。
【請求項76】
癌の治療方法であって、a)放射線療法の前に、かかる治療を必要とする対象体にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を投与すること(ここで、該治療上有効量は、正常細胞への放射線障害を予防するのに十分である);およびb)該正常細胞への放射線障害を予防しながら、該対象体に放射線療法の癌を治療するための有効な量を施す(ここで、癌が治療される)ことを含む方法。
【請求項77】
放射線療法の癌を治療するための有効な量が、β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の投与の不在下で該対象体に施されている放射線療法の量よりも多い、請求項76記載の方法。
【請求項78】
放射線療法の癌を治療するための有効な量が、β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の投与の不在下で対象体に施されている放射線療法の量よりも少ない、請求項76記載の方法。
【請求項79】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が経口投与される、請求項76記載の方法。
【請求項80】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が静脈内投与される、請求項76記載の方法。
【請求項81】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が筋肉内投与される、請求項76記載の方法。
【請求項82】
癌の治療方法であって、a)放射線療法の前に、かかる治療を必要とする対象体にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を投与すること(ここで、該治療上有効量は、非癌性細胞における放射線誘発細胞死を予防するのに十分である);およびb)該非癌性細胞における放射線誘発細胞死を予防しながら、該対象体に放射線療法の癌を治療するための有効な量を施す(ここで、癌が治療される)ことを含む方法。
【請求項83】
放射線療法の癌を治療するための有効な量がβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の投与の不在下で対象体に施されている放射線療法の量よりも多い、請求項82記載の方法。
【請求項84】
放射線療法の癌を治療するための有効な量がβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の投与の不在下で対象体に施されている放射線療法の量よりも少ない、請求項82記載の方法。
【請求項85】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が経口投与される、請求項82記載の方法。
【請求項86】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が静脈内投与される、請求項82記載の方法。
【請求項87】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が筋肉内投与される、請求項82記載の方法。
【請求項88】
放射線障害予防用キットであって、a)β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量を含む容器、およびb)対象体における放射線障害を予防するために放射線曝露の前にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を使用することについての説明書を含むキット。
【請求項89】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が経口投与される、請求項88記載のキット。
【請求項90】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が静脈内投与される、請求項88記載のキット。
【請求項91】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が筋肉内投与される、請求項88記載のキット。
【請求項92】
容器が、さらに、β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量の1つまたはそれ以上の追加用量を含む、請求項88記載のキット。
【請求項93】
放射線障害治療用キットであって、a)β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量を含む容器、およびb)対象体における放射線障害を治療するために放射線曝露の前にβ−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を使用することについての説明書を含むキット。
【請求項94】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が経口投与される、請求項93記載のキット。
【請求項95】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が静脈内投与される、請求項93記載のキット。
【請求項96】
β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体が筋肉内投与される、請求項93記載のキット。
【請求項97】
容器が、さらに、β−ラパコン、またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量の1つまたはそれ以上の追加用量を含む、請求項93記載のキット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−512378(P2007−512378A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541734(P2006−541734)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/039647
【国際公開番号】WO2005/053682
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(501054229)アークル インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】