説明

放射能汚染土壌の浄化方法

【課題】本発明は、放射能汚染土壌中の放射性物質を効率的、経済的に除去する方法を提供する。
【解決手段】放射能汚染土壌と放射性物質抽出剤を接触させ、土壌中の放射性物質を自然界レベルまで低減させた土壌に浄化を行った後、土壌中の放射性物質を抽出した抽出剤を放射性物質吸着剤と接触処理せしめることにより、放射性物質含有量の少ない抽出剤に再生させた後、再び放射能汚染土壌の放射性物質抽出剤として繰り返し使用するようにした。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、放射能汚染土壌の浄化方法に係り、特に、原子力発電事故により漏洩飛散したセシウム、ストロンチウムに汚染された土壌中の放射性物質を効率よく且つ経済的に除去する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射能汚染土壌の浄化実績は少ないが、チェルノブイリ原発事故では、放射性物質吸着除去を目的として大量にゼオライトが地中に散布された実績がある。この方法は、地下水の汚染を抑性する効果が期待されたが、放射性物質を吸着したゼオライトの回収に問題が有り、自然界の放射能低減効果には、大きく寄与しなかった。
【0003】
環境省試算による、福島原子力発電所の放射能汚染土壌の除染により排泄される土壌量は、年間5mSvを超える地区の土壌5cm切削除去する場合、2123万〜2818万M、年間20mSvを超える高濃度汚染土壌は、520万〜750万Mとなる(2011年9月29日日経新聞)(非特許文献1)。さらに政府は、1mSvを超える地区の土壌は、国の責任で除染をするとした(2011年10月10日日経新聞夕刊)(非特許文献2)。
【0004】
かかる膨大な量の放射能汚染土壌を保管するには、広域な場所を要し、且つ長期間汚染土壌の飛散を防ぎながら保管することは、二次環境汚染による安全及び保安面で問題があるほか、経済的な観点からも望ましい方法では無いが、放射能汚染土壌の放射性物質を除去する適切な技術が確立できていないため、政府は10月29日、汚染土壌を最長30年間中間貯蔵する場所の設置及びこの間に技術開発し放射性廃棄物最終処分を終えることを公表した(2011年10月30日日経新聞)(非特許文献3)。
【0005】
放射能汚染土壌中の放射性物質の除去方法としては、水洗浄の繰り返しで、土壌中の放射性物質の除去に一定の効果が認められるという検討がなされている(平成23年9月6日、原子力委員会実例会議、東北大学 石井慶造)(非特許文献4)。
【0006】
しかしこの方法は、放射能除染に、複数回の洗浄を必要とし、処理土壌の複数倍の放射能を含む水が排出される他、粘土層に吸着された放射性物質のセシウムの除去には、効果が低いという問題を抱えている。
【0007】
その他、放射能汚染土壌中の放射性物質の除去方法として超臨界二酸化炭素によるセシウムの抽出技術や高温高圧によるセシウムの分離技術等を各研究機関で開発がなされている(2011年9月20日 日経産業新聞)(非特許文献5)。
【0008】
放射能汚染土壌から放射能の効率的な除去技術は無く、現在各研究機関で鋭意検討段階にあり、早期に効率的で経済的な放射能汚染土壌の浄化方法の確立が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
該当文献は無い。
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】2011年9月29日 日経新聞
【非特許文献2】2011年10月10日 日経新聞夕刊
【非特許文献3】2011年10月30日 日経新聞
【非特許文献4】平成23年9月6日、原子力委員会実例会議、東北大学 石井慶造
【非特許文献5】2011年9月20日 日経産業新聞
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、かかる事情に鑑み、原子力発電事故に見られる広範囲の放射能汚染土壌中の放射性元素を自然界レベルまで低減除去し土壌を自然界に戻すとともに放射能汚染物質の減用化の効率的且つ経済的な処方を図ることを課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、原子力発電事故に見られる放射能汚染土壌中の放射性元素のセシウム、ストロンチウムを抽出剤で抽出を行い、次いで放射性物質を低減された土壌と放射性物質を抽出した抽出剤を分離した後、分離回収した放射性物質抽出剤を放射性物質吸着剤と接触処理させ抽出剤中の放射性物質を除去した抽出剤を、再び放射能汚染土壌中の放射性元素の抽出剤として使用することを特徴とする、補充抽出剤量を削減し且つ放射性元素の吸着剤への濃縮による放射能汚染物質の減用化を図ることを特徴とする放射能汚染土壌の浄化方法を、その要旨とするものである。
【0013】
すなわち本発明は、放射能汚染土壌と放射性物質抽出剤を接触させ、土壌中の放射能物質を抽出剤に抽出する第一工程、次いで放射性物質を低減された土壌と放射性物質を抽出した抽出剤を分離する第二工程、第二工程で回収した放射性物質抽出剤を放射性物質吸着剤と接触処理させ抽出剤中の放射性物質を除去する第三工程、第三工程の処理を経た抽出剤を第一工程の放射能汚染土壌の放射性物質抽出剤として再使用することを特徴とする、放射能汚染土壌の浄化方法を提供する。
【0014】
第一工程の放射性元素の抽出方法において、放射能汚染土壌中に多く含まれるセシウム、ストロンチウムは、土壌成分中に比較的多く含まれる粘土及び砂の多孔質成分に吸着される。このため、水に移行しやすい元素を除き、セシウム、ストロンチウムのような元素は、水洗浄だけで容易に除染・抽出は困難である。このため、除染に、大量の水が必要となり、設備及び処理効率の観点からも実用的では無く、水よりも抽出効率の良い、抽出剤が用いられる。
【0015】
より具体的には、このような土壌成分に吸着されたセシウム、ストロンチウムの抽出剤には、硫酸、燐酸、塩酸、硝酸の水溶液が有効に使用される。特に、環境面、設備面、放射能除染土壌の現地再利用の各観点から総合的に判断すると硫酸水溶液が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
【0016】
土壌から効率よくセシウム、ストロンチウムを抽出するには、0.4規定濃度以上の酸濃度からなる抽出剤が好ましく、より好ましくは、0.5規定以上が、特に好ましくは0.7〜2.0規定酸濃度の抽出剤が用いられる。
【0017】
2規定以上の酸濃度の抽出剤の使用は、セシウム、ストロンチウム抽出速度が早くなるというメリットと、高濃度の酸が土壌に付着しロスするディメリットがあり、総合的な判断で使用条件は、設定される。
【0018】
抽出剤の酸濃度が0.4規定以下の場合、室温の使用では、土壌中のセシウムの抽出速度が遅く抽出率が低くなる。土壌中のセシウム抽出率を高くするために、大量の抽出剤の使用若しくは繰り返し抽出処理が必要となるため、40℃以上、より好ましくは60〜100℃に加熱した抽出剤が用いられる。
【0019】
汚染土壌に対する抽出剤の使用量は、汚染土壌と抽出剤が接触撹拌出来る固比液比であれば特に制限されないが、土壌重量に対して0.8倍量以上、一般には1〜2倍量が用いられるが、予備実験により最適な条件が設定される。
【0020】
汚染土壌と抽出剤の接触撹拌は、プロペラ型撹拌機、ドラム回転型混合機、箱型振動機、ミキサー型撹拌機等いずれの撹拌装置の使用可能であり、土壌の種類、抽出剤の使用量、固液比、粘度により、固液接触効率の良い撹拌方式が採用される。
【0021】
撹拌時間は、汚染土壌中の放射性物質と抽出剤による抽出平衡時間により決まるが、抽出処理剤、抽出処理方法により最適時間が設定され、一般には約一時間で抽出平衡に達するような処理条件の選定を行うのが、処理効率的に望ましいが、これに限定されるものでは無い。
【0022】
上記の方法により、放射能汚染土壌と放射性物質抽出剤を接触させ、土壌中の放射能物質を抽出剤に抽出した第一工程の後、放射性物質を低減された土壌と放射性物質を抽出した抽出剤を分離する第二工程に附される。
【0023】
第二工程の分離方法は、固体と液体を分離濾過する方法で有れば、特に制限はされないが、一般的には、減圧濾過器、遠心脱水機が用いられる。
【0024】
第二工程で分離された放射性物質を低減された土壌は、放射性物質量が所望の濃度まで低減していない場合は、再処理の為、第一工程に戻される。その回数は、土壌の種類、抽出剤の種類により、好ましい条件が設定される。
【0025】
第二工程で分離された放射性物質を低減された土壌は、そのまま、または、より好ましくは、土壌中に放射性物資抽出剤付着量が極力低減されるよう、さらに土壌の1〜3倍量の水で水洗処理が行われる。
【0026】
第二工程の処理で経た土壌は、そのまま又は必用に応じて土壌に残存する抽出剤の酸を中和するために水酸化カルシウム、酸化カルシウム類の土壌改良材を加え、自然界に戻される。
【0027】
第二工程を経た、土壌中の放射性物質を抽出した抽出剤は、次いで抽出剤中の放射性物質を吸着する吸着剤と接触させ、抽出剤中の放射性物質を吸着剤に吸着除去させる第三工程に附される。
【0028】
第三工程で用いられる放射性物質吸着剤には、セシウム、ストロンチウムの放射性物質を吸着する物であれば、特に限定されないが、一般に、セシウム及びストロンチウム吸着剤には、ゼオライトが使用される。
【0029】
ゼオライトは、セシウム、ストロンチウムを吸着し且つ抽出剤に溶解しないものであれば、特に使用に制限されず、天然系ゼオライト(例えば、ソザイコウボウ製モルデナイト#103)及び、合成系ゼオライト(例えば、東ソー株式会社製HSZ−642NAA、HSZ−980HOA)が用いられる。
【0030】
プルシアンブルー単独またはプルシアンブルー混錬ゼオライト、プルシアンブルー担持活性炭等もセシウムを吸着するがアルカリ条件下でシアンガスを発生する恐れがあるので、取り扱いには注意が必要である。
【0031】
セシウム、ストロンチウム以外の放射性物質を吸着した土壌の場合、例えば、沃素には、ポリエチレンポリアミノ基を有するスミカイオンKA850及び塩基性イオン交換樹脂のデュオライトA−113が、プルトニウムには、アミノカルボン酸型又はアミノアルキレンホスホン酸型キレート樹脂のスミキレートMC75またはスミキレートMC−95が用いられる。
【0032】
第三工程で用いられる土壌中の放射性物質を抽出した抽出剤と前記放射性物質吸着剤の接触方法は、抽出剤と放射性物質吸着剤を撹拌混合又は放射性物質吸着を充填した塔に放射性物質を抽出した抽出剤の通液の、いずれかの方法が採用される。
【0033】
放射性物質吸着剤が粉体又は約200μmφよりも小粒子の場合は、撹拌混合による抽出処理を行い、前記の濾過分離方法により、放射性物質を含まない抽出剤と放射性物質を吸着した吸着剤に分離する方法が一般に採用される。
【0034】
該撹拌混合方式に用いられる粉体及び微粒子の放射性物質吸着剤による抽出剤中の放射性物質の吸着は、粒子径の大きさの二乗に逆比例した吸着速度を有しているため、10〜30分の短時間の接触処理が可能であるが、予備実験により、最適処理時間を設定する。
【0035】
放射性物質吸着剤の粒子が約200μmφよりも大きい場合は、吸着剤塔に充填した放射性物質吸着剤塔に土壌中の放射性物質を抽出した抽出剤を通液する方法が一般に採用されるが、前記のような撹拌混合後,静置濾過により、放射性物質を含まない抽出剤を容易に分離回収出来る。
【0036】
前記吸着剤塔への通液は、放射性物質吸着剤の種類、吸着剤層高、放射性物質吸着剤径粒の大きさ等を考慮し適宜予備試験を行い実施し設定されるが、一般には、空塔速度SV5〜50/hrの速度で流される。
【0037】
第三工程で放射性物質含量を減じた抽出剤は、再び放射能物質汚染土壌の放射性物質抽出剤として再使用される。
【0038】
さらに第三工程で抽出剤中の放射性物質を吸着した放射性物質吸着剤は、放射性物質を飽和吸着するまで、繰り返し第三工程の放射性物質吸着剤として、繰り返し使用出来る。
【発明の効果】
【0039】
以上の説明から明らかなように、本発明方法は、原子力発電事故等により地上に降り注いだ放射能により汚染された地域の除染目的で表層土壌削除後の大量の放射能汚染土壌を比較的短期間に除去出来、住民の早期帰宅を可能ならしめるとともに汚染廃棄物の大幅な減容化による地域の安全性向上をもたらす効果がある。
【0040】
本発明方法により、日本政府が検討中の大量の汚染土壌を蓄える中間設備の設置をするまでもなく、放射能汚染土壌を自然界レベル濃度まで比較的容易に低減出来且つ諸経費を抑制した方法で処理出来るので、本発明の放射能汚染土壌の浄化方法は、社会的、経済的観点からも、その価値は大なるものである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に本発明方法を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明方法は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されない。
【実施例1】
【0042】
10mgCs/kg−10mgSr/kgを含有する粘土成分を含む模擬放射性物質含有土壌の真土を調製し、1週間室温密閉下、養生させた。該養生土壌1000gに放射性物質抽出剤の1規定硫酸水溶液1000gを加え、室温下、1時間撹拌混合を行い、抽出処理を行った(第一工程)。第一工程後、遠心分離機による第二工程処理により、Cs,Sr抽出液(1)とCs,Sr低減土壌(1)を得た。次いで、Cs、Sr低減土壌(1)に水1000gを加え30分間撹拌混合後、遠心分離機にて土壌水洗液(1)と水洗土壌(2)を得た。Cs,Sr抽出液(1)と土壌水洗液(1)中のCs,Sr濃度と回収液量から求めた各液のCs,Srの各々の量は、Cs,Sr抽出液(1)が9.3mg、8.9mg、土壌水洗液(1)が、0.4mg、0.6mgであった。従って、処理前の土壌中のCs,Srに対する各工程におけるCs,Sr除去率は、第1表のような結果と計算された。

前記Cs,Sr抽出液(1)と土壌水洗液(1)各900gを天然系ゼオライト モルデナイト#103を100g充填したカラムに約1時間(SV約9/hr)で流し、Cs,Srを除去する第三工程の処理を行った。流出液の1規定硫酸抽出液及び第一工程水洗液各液中のCs,Sr濃度は、0.1mg/L以下であった。この結果より、土壌中のCs,Srの95%以上が除去出来た。Cs,Srが低減された土壌には0.04モル量の硫酸が付着していたので0.05モルの水酸化カルシウムを添加し掻き混ぜ、土壌を弱アルカリにし、田畑、野原に戻せるようにした。
【実施例2】
【0043】
実施例の第二工程の後のCs,Sr低減土壌(1)を、再度同一の抽出剤による処理、すなわち、抽出剤による抽出処理を二回行ったCs,Sr低減土壌(2)を得る以外は、実施例1と全く同一の処理を行った。その結果、第一工程抽出一回目のCs,Sr抽出液(1)と二回目のCs,Sr抽出液(2)及び土壌水洗液(1)中のCs,Sr濃度との回収液量から求めた各液のCs,Srの量は、Cs,Sr抽出液(1)が9.2mg、9.0mg、抽出液(2)が、0.7mg、0,9mg、土壌水洗液(1)が、0.0mg、0.0mgであった。従って、処理前の土壌中のCs,Srに対する各工程におけるCs,Sr除去率は、第2表のような結果となった。

第一工程抽出液(1)と抽出液(2)を実施例1で用いたゼオライト塔に流したところ各液ともCs,Sr濃度は、0.1mg/L以下であった。この結果より、Cs,Sr汚染土壌は、抽出剤の1規定硫酸水溶液による二回の抽出処理によりCs,Srの99%が除去出来た事が判った。
【実施例3】
【0044】
10mgCs/kg−10mgSr/kgを含有する川砂をまたCs抽出後の抽出液は、合成ゼオライトゼオラム球状(東ソー株式会社製)用いた以外は、実施例1と同様の処理を行った。結果を第3表に示した。砂中の放射性物質は、真土よりも除去率が高かった。

Cs抽出後の抽出液の合成ゼオライト処理後の抽出液中のCs,Srは、いずれも0.1mg/L以下であった。
【実施例4〜6、比較例1〜3】
【0045】
10mgCs/kgを含有する真土と放射性物質抽出剤として水、0.2規定、0.4規定、0.5規定、0.7規定の硫酸水溶液を用いた以外は、実施例1と同様な方法で真土に吸着されたCsの抽出を行った。結果を第3表に示した。またCs抽出後の抽出液の合成ゼオライト処理後の抽出液中のCs,Srは、いずれも0.1mg/L以下であった。

【実施例7〜9、比較例4〜6】
【0046】
10mgCs/kgを含有する土壌として砂を用いた以外は、実施例4〜6、比較例1〜3と同様な試験を行った。結果を第4表に示した。第4表の除去率90%以上にする処理回数計算値(回)は、Cs除去率が一定として90%以上の除去が出来る回数を求めた。一回の抽出処理で40%以上汚染土壌のCsを抽出出来る物が有効と判断した。

またCs抽出後の抽出液の合成ゼオライト処理後の抽出液中のCs,Srは、いずれも0.1mg/L以下であった。
【実施例10〜12】
【0047】
抽出剤として40〜45℃、60〜67℃、80〜90℃の0.4規定硫酸水溶液を用いた以外は実施例9と同じ試験を行った。結果を第5表に示した。処理温度は、高い方が、Cs除去率も向上する。

またCs抽出後の抽出液の合成ゼオライト処理後の抽出液中のCs,Srは、いずれも0.1mg/L以下であった。
【実施例13,14】
【0048】
10mgCs/kgを含有する真土と抽出剤として1規定の塩酸水溶液、硝酸水溶液を使用し、実施例1と同様なに第一工程、第二工程処理を行い、第三工程の抽出剤には、粉末の合成ゼオライトHSZ−642NOA(東ソー株式会社製)1gを添加し10分間撹拌後、濾過分離した以外は、実施例1に準じて処理を行った。結果を第6表に示した。

抽出剤の硫酸、硝酸、塩酸の種類の差は、無かった。また抽出剤中のCsは、放射性物質吸着剤として粉末ゼオライトを用いた場合、短時間の処理で除去が出来、抽出剤のCs濃度は、いずれも0.1mg/L以下となった。
実施例15
【0049】
1.1μSv/hの放射線量の放射能汚染土壌1kgと放射能抽出剤として1規定硫酸水溶液1kgをミキサーに加え、1時間撹拌処理を行い、第一工程の抽出処理第一回目を行ったのち、次いで遠心分離機により放射能低減土壌(1)とCs抽出剤(1)と分離する第二工程を行った。遠心分離機から出る抽出剤及び土壌水洗用の天然系ゼオライト モルデナイト#103を100gを各々の充填した鉛の箔で表面を覆ったカラム及び抽出液受器に受入れの塔、抽出剤処理用と水処理用の2塔をあらかじめ用意し、第二工程の抽出剤は、連続的に第三工程の抽出剤中の放射性物質を除去する塔に、空塔速度SV10/hで流下させ放射性物質除去処理を行った抽出剤(1)を回収した。その結果、放射能低減土壌(1)の放射線量は0.1μSv/hに、抽出剤(1)の放射線量は、0.01μSv/h以下であった。放射能低減土壤(1)を再度放射性物質抽出剤の1規定硫酸水溶液1kgと第一回目と同様の処理を行い、放射能低減土壌(2)を回収した。放射能低減土壌(2)の放射線量は、0.04μSv/hであった。放射能低減土壌(2)を次いで1kgの水で撹拌洗浄、遠心分離除去を行った。遠心分離機から分離された水洗水は、もう一塔の水処理用のゼオライト塔で処理し、放射線量は、0.01μSv/h以下の水を回収した。放射能低減−水洗処理土壌は、水酸化カルシウム0.1モル加え、放射能低減放射能低減弱アルカリ土壌として回収した。最終の土壌の放射線量は、0.03μSv/hであった。
【0050】
実施例から明らかなように本発明の方法は、第一工程〜第三工程からなり、酸抽出剤で、放射能汚染土壌の放射性物質を自然界レベルまで効率的に低減除去出来、抽出剤の放射性物質も放射性物質吸着剤で除去出来、リサイクル使用が出来る経済的な処方であり、土壌中の放射性物質は、放射性物質吸着剤に濃縮されため、大幅な放射性汚染土壌、汚染物質の減容化が可能な環境面、安全面及び経済的面のいずれにおいても優れた、放射能汚染土壌の浄化方法であることが明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射能汚染土壌と放射性物質抽出剤を接触させ、土壌中の放射能物質を抽出剤に抽出する第一工程、次いで放射性物質を低減された土壌と放射性物質を抽出した抽出剤を分離する第二工程、第二工程で回収した放射性物質抽出剤を放射性物質吸着剤と接触処理させ抽出剤中の放射性物質を除去する第三工程、第三工程の処理を経た抽出剤を第一工程の放射能汚染土壌の放射性物質抽出剤として再使用することを特徴とする、放射能汚染土壌の浄化方法。
【請求項2】
第一工程、第二工程を複数回繰り返し行った後に、第二工程で回収した放射性物質抽出剤を第三工程の処理をおこなうことを特徴とする請求項1に記載の放射能汚染土壌の浄化方法。
【請求項3】
放射性物質がセシウム、ストロンチウムであることを特徴とする請求項1に記載の放射能汚染土壌の浄化方法。
【請求項4】
放射性物質抽出剤が硫酸水溶液であることを特徴とする請求項1に記載の放射能汚染土壌の浄化方法。

【公開番号】特開2013−96982(P2013−96982A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252039(P2011−252039)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(393021370)第一化成株式会社 (4)
【Fターム(参考)】