説明

放射能汚染廃水処理方法及び処理システム並びに移動式処理装置

【課題】放射性物質を含有する廃水中の放射性物質を迅速、簡便かつ安価に吸着処理することができ、しかも、処理後の放射性物質の減容化を図ることが可能な、放射能汚染廃水処理方法及び処理システム、並びに、移動式処理装置を提供する。
【解決手段】放射性物質を含有する廃水からなる原水に、粉末活性炭を添加、撹拌した後、粉末ゼオライトを添加、撹拌する、又は、粉末活性炭と放射性物質を吸着する粉末吸着剤を同時添加、撹拌することにより、放射性物質を吸着処理する。次いで、活性二酸化ケイ素及びアルミナを主成分とする無機粉粒体からなる無機系粉末凝集剤を添加、撹拌して凝集フロックを形成した後、静置して凝集フロックを沈殿させ、沈殿させた凝集フロックを脱水濾過し、そのスラッジを放射能遮蔽効果のある保管容器に保管する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質を含む放射能汚染廃水の処理方法に関し、詳細には、放射性物質の他に、油分やCOD物質、懸濁物質、窒素成分などを含有する廃水の処理方法及び処理システム、並びに、それに好適に用いられる移動式処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
東日本大震災により未曾有の被害が発生し、とりわけ福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染は、発電所内で発生した冷却水だけに止まらず、周辺の農地や宅地あるいは学校のグラウンドやプールのみならず、遠隔地の下水処理場の脱水ケーキやその焼却灰に至るまで高レベルの放射線が検出されるなど、深刻な問題となっている。
【0003】
放射性物質により汚染された水や土壌は、環境中に戻すことはできず、放射線量が規定値以下に低下するまで、周囲に影響を及ぼさないような安全な状態で保管せざるを得ない。しかしながら、放射性物質により汚染された水や土壌の量は膨大な量に上るため、汚染されたままの状態の水や土壌を長期間にわたって保管することは極めて困難である。したがって、放射性物質に汚染された水や土壌から放射性物質を取り除いて、安全な水や土壌として環境中に戻すとともに、取り除いた放射性物質は出来るだけ少量の物質中に閉じ込めることで、放射性物質による汚染物の減容化を図ってから保管することが求められる。
【0004】
放射性物質で汚染された土壌の処理法としては、汚染土壌を水で洗浄して安全なレベルまで浄化してから環境中に戻す方法を想定すれば、放射性物質により汚染された水や土壌の処理法は、結局のところ、放射性物質で汚染された水の処理法に一元化することができる。
【0005】
放射性物質を含む冷却水や、放射性物質で汚染された土壌を洗浄した後の水には、油分やCOD物質あるいは種々の懸濁物質等が含まれているため濁水になっており、処理後の水を環境中に戻すためには、放射性物質を除去することは勿論、これらの油分やCOD物質、懸濁物質等についても所定のレベル以下にまで浄化する必要がある。
【0006】
放射性物質を含む廃水の処理方法であって、処理した際に発生する廃棄物の容積を大幅に減容させるように構成した方法として、特許文献1には、使用済燃料の再処理工場から発生する硝酸ナトリウムを含んだ放射性廃棄物含有廃水を、ランタノイド化合物とリン酸を添加してPu等のTRU核種を取り除く共沈処理と、ゼオライト等をイオン交換体としてCsやRu等のイオン性の放射性核種を取り除くイオン交換処理を併用して処理する方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1の方法では、イオン交換処理の前に不溶性物質を取り除くことが必要で、共沈処理で生成した析出物を濾過により取り除いた後にイオン交換処理を行うことが記載され(段落[0047]参照)、また、廃水中に油分が含まれる場合には、活性炭処理後濾過して活性炭を取り除いてから共沈処理する必要のあることが示されている(実施例4参照)。したがって、油分を含む放射性廃棄物含有廃水を処理するためには、特許文献1の方法では、活性炭処理、濾過、共沈処理、濾過、イオン交換処理の手順を経ることとなり、多くの操作を必要とするため簡便な処理方法とは言えない。
【0007】
さらに特許文献1におけるイオン交換処理方法は、ゼオライト等のイオン交換体を充填したイオン交換塔に廃水を通水してイオン交換するものであり、その際イオン交換塔を200Lドラム缶に収容可能なサイズにしておくことにより、イオン交換体等の取り出し作業が無くなり、取り出しに必要な機器が不要となるばかりでなく、作業員の被ばく低減にもつながることが示されている(段落[0045]参照)。
しかしながら、この方法ではイオン交換塔が200Lドラム缶に収容できる容量及び形状に限定されるため、汎用性のある方法とは言えない。また、200Lドラム缶に収容可能なイオン交換塔として、特許文献1の実施例7には、100Lドラム缶大の容器をイオン交換塔とし、当該イオン交換塔はそのままシステムから取り外して200Lドラム缶に収納できたことが示されているが、実際には処理後のイオン交換塔は放射性廃棄物で汚染されていることを考慮すると、容積100Lの筒状の容器を取り扱うことはその大きさや重量から判断して簡便な方法であるとは言えない。
【0008】
一方、従来より広範に行なわれている下水処理場や工場等における廃水処理は、放射性廃棄物を含有する廃水を対象とするものではない。しかし、水中に含まれる不純物を凝集処理や生物処理等によって取り除き、不純物で汚染された水を浄化して河川等に放流することを可能にするとともに、水中の不純物を凝集物や活性汚泥として分離することで、不純物を含む媒体の体積を、当初の下水や廃水の体積から、凝集物や活性汚泥の体積にまで減容化する方法ということができる。
【0009】
これらの従来からの水処理法において、例えば特許文献2および3には、活性炭による吸着処理の後、凝集剤を加えて廃水中の不純物と活性炭を合せて凝集沈殿する方法が開示されている。
【0010】
特許文献2は、ごみ焼却場における排水処理施設の洗煙排水や、灰の水洗により生じる灰汚水のようなダイオキシン類を含有する排水の処理に関する発明であり、pH調整後の排水に活性炭を添加してダイオキシンを吸着させた後、塩化第2鉄や硫酸バンドあるいは高分子凝集剤などの凝集剤を添加して、ダイオキシンを吸着した活性炭と凝集フロックを同時に沈殿させる方法が記載されている(段落[0013]、[図2])。しかしながら、ダイオキシン以外の油分やCOD物質あるいは懸濁物質の同時処理に関する記載はなく、また吸着処理は活性炭による処理のみであり、活性炭以外の吸着剤を併用することを示唆する記載はない。
【0011】
特許文献3には、剥離したワックスが含まれている汚水に粉末活性炭を添加して強くかき混ぜた後、酸化アルミニウムや硫黄、二酸化珪素などを成分とする凝集剤を添加して凝集物を生成し、次いで強く撹拌して大きな凝集物を形成させて濾過する方法が開示されている。しかしながら、特許文献3の方法においても、吸着処理は活性炭のみによる処理であり、活性炭以外の吸着剤を併用することを示唆する記載はない。
【0012】
また、特許文献4には、粒度200メッシュ(74μm)の粉末ゼオライトにより廃水中のアンモニア性窒素を吸着除去した後、鉄系凝集剤により、粉末ゼオライトとともに廃水中の浮遊物、リン、COD等を除去する方法が開示されている。しかしながら、特許文献4の方法では、廃水中の油分に関する記載はなく、また、吸着処理はゼオライトのみによる処理であり、ゼオライト以外の吸着剤を併用することを示唆する記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平8−271692号公報
【特許文献2】特開2002−186963号公報
【特許文献3】特開2008−246275号公報
【特許文献4】特開平8−257553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、放射性物質を含有する廃水中の放射性物質を迅速、簡便かつ安価に吸着処理することができ、しかも、処理後の放射性物質の減容化を図ることが可能な、放射能汚染廃水処理方法及び処理システム、並びに、移動式処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため、本発明は以下の手段をとるものである。
【0016】
(1)放射性物質を含有する廃水からなる原水に、粉末活性炭を添加して撹拌した後、放射性物質を吸着する粉末吸着剤を添加して撹拌する、又は、粉末活性炭と放射性物質を吸着する粉末吸着剤を同時添加して撹拌することにより、放射性物質を吸着処理した後、
活性二酸化ケイ素及びアルミナを主成分とする無機粉粒体からなる無機系粉末凝集剤を添加して撹拌し、次いで静置して、凝集フロックを沈殿させた後、
凝集フロックを脱水濾過し、そのスラッジを、放射能遮蔽効果のある保管容器に保管することを特徴とする放射能汚染廃水処理方法。
【0017】
(2)放射性物質を吸着する粉末吸着剤が、粉末ゼオライトであることを特徴とする上記(1)に記載の放射能汚染廃水処理方法。
【0018】
(3)放射性物質を含有する廃水からなる原水に、粉末活性炭を添加して撹拌した後、放射性物質を吸着する粉末吸着剤を添加して撹拌する、又は、粉末活性炭と放射性物質を吸着する粉末吸着剤を同時添加して撹拌することにより、放射性物質を吸着処理する吸着処理工程(a)と、
吸着処理後の原水に、活性二酸化ケイ素及びアルミナを主成分とする無機粉粒体からなる無機系粉末凝集剤を添加する凝集反応工程(b)と、
凝集反応後の原水を静置して凝集フロックを沈殿させ、上澄み水と分離する分離工程(c)と、
凝集フロックを濾過することにより、凝集フロックと水とを分別する濾過工程(d)と、
を有し、
濾過工程(d)で得たスラッジを、放射能遮蔽効果のある保管容器に保管することを特徴とする放射能汚染廃水処理システム。
【0019】
(4)前記濾過工程(d)で分別された水について、水質検査を行い、所定の基準値以下の水を処理水として排出すると共に、所定の基準値を超える水を吸着処理工程(a)に戻すことを特徴とする上記(3)に記載の放射能汚染廃水処理システム。
【0020】
(5)放射性物質を含有する廃水に油分が含有される場合に、粉末活性炭及び放射性物質を吸着する粉末吸着剤による吸着処理を行う前に、予め油分を除去する処理を行い、油分による粉末活性炭及び放射性物質を吸着する粉末吸着剤の吸着阻害を防止することを特徴とする上記(3)又は(4)に記載の放射能汚染廃水処理システム。
【0021】
(6)放射性物質を含有する廃水からなる原水を貯留するとともに、該原水中の放射性物質を、粉末活性炭及び放射性物質を吸着する粉末吸着剤を用いて吸着処理する原水槽と、
吸着処理後の原水に、活性二酸化ケイ素及びアルミナを主成分とする無機粉粒体からなる無機系粉末凝集剤を添加して凝集反応させる凝集反応槽と、
凝集反応後の原水を静置して凝集フロックを沈殿させ、上澄み水と分離する沈殿槽と、
を備えたことを特徴とする車載型放射能汚染廃水処理装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、放射性物質を含有する放射能汚染廃水を、原水のpH調整を行わずに、2種類の吸着剤を用いて同時に吸着処理することができ、しかも、凝集剤の添加、撹拌により、これらの吸着剤を急速に凝集沈殿させ、迅速に分離することができる。そのため、放射能汚染廃水中のCOD成分、放射性物質の一括処理、システムの簡素化、低コスト化が可能となり、懸濁物質や油分を含む濁水の処理も容易である。また、凝集フロックは、沈降性及び脱水性が良好であるため、安全かつ簡素な濾過システムで分離することができ、しかも、含水率が低いため、分離した濾過残渣(スラッジ)の保管場所の確保が容易である。
【0023】
本発明によれば、放射能汚染廃水を入れる原水槽を2基用意し、吸着及び凝集処理を実施していない原水槽を予備水槽として利用することにより、所定の排水処理基準値を満たさない処理水を再び予備水槽に戻し、吸着及び凝集処理を行うことが容易となるため、所定の基準値以下の水を確実に処理水として排出することが可能となる。
【0024】
本発明の処理方法及び処理システムは、放射能汚染廃水の貯留と吸着処理を行う原水槽と、凝集処理を行う凝集反応槽と、凝集フロックを沈降させ上澄み水と分離する沈殿槽とを備える、車載型放射能汚染廃水処理装置を利用して実施することができる。当該車載型放射能汚染廃水処理装置は、移動式のコンパクトな連続処理装置であることから、放射能汚染土壌等の処理を要する場所にも簡単に移動させることができ、装置の新設や付加を伴わないため、低コストかつ効率的な処理に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る放射能汚染廃水処理方法及び処理システムの一実施形態を示す概略工程図。
【図2】本発明に係る車載型放射能汚染廃水処理装置の一実施形態を説明する概略平面図と正面図。
【図3】車載型放射能汚染土壌洗浄装置の一実施形態を説明する概略平面図と正面図。
【図4】本発明に係る放射能汚染廃水処理システムの一実施形態を示す概略図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の放射能汚染廃水の処理方法及び処理システムは、放射性物質を含有する放射能汚染廃水に適用することができ、例えば、放射能で汚染された土壌や瓦礫等の洗浄水、原子力発電所の廃水等に適用することができる。前記放射能汚染廃水には、放射性物質の他に、動植物油類、絶縁油、潤滑油、離型油、切削油等の油分、界面活性剤等のCOD成分、窒素成分、及び懸濁物質(SS成分)等も含有されていることが多い。
本発明は、粉末活性炭と、放射性物質を吸着する吸着剤を、放射性物質を含有する廃水(以下、これを「原水」という。)中に添加し、撹拌することにより、放射性物質を吸着除去すると同時に、BOD成分、COD成分、窒素成分も吸着除去するものである。
【0027】
以下、本発明に係る放射能汚染廃水の処理方法を詳細に説明する。
【0028】
本発明の放射能汚染廃水処理方法及び処理システムでは、粉末活性炭と、放射性物質を吸着する粉末吸着剤(以下、これを「放射性物質吸着剤」という。)を、原水に添加して撹拌することにより、原水中の放射性ヨウ素、放射性セシウム、BOD成分、COD成分、窒素成分を吸着処理する。ここで、必要であれば原水の水質を、アルカリ性であれば希硫酸等、酸性であれば消石灰等を添加して、凝集に適したpHに調整しても構わないが、本発明では、活性二酸化ケイ素及びアルミナを主成分とする無機粉粒体からなる無機系粉末凝集剤を用いるため、原水のpH調整は基本的に不要である。
【0029】
粉末活性炭及び放射性物質吸着剤を原水に添加する場合は、段階的添加、同時添加のいずれの添加方法でもよいが、吸着処理時間を短縮できる点から同時添加が好ましく、処理現場での作業性等を考慮すると、混合物として添加することがより好ましい。粉末活性炭は、主に原水中の放射性ヨウ素、BOD成分、COD成分、窒素成分を吸着し、放射性物質吸着剤は、主にセシウム等の放射性核種を吸着する。
【0030】
活性炭としては、粉末活性炭、粒状活性炭などが挙げられるが、比表面積が大きく、水中での分散性に優れ、吸着処理が短時間で実施できる点より、粉末活性炭が好ましい。
【0031】
粉末活性炭は、粒径200μm以下のものが好ましい。通常は平均粒径が1〜150μmであり、より好ましくは1〜100μmである。平均粒径が1μm未満では、飛散等し易く取扱いが困難になると共に、微粒子化のコストが高くなる傾向があり、一方、平均粒径が150μmを超えると、比表面積が小さくなり、一定の吸着能力を維持するために多量の粉末活性炭を要する傾向がある。粉末活性炭の平均粒径は、さらに好ましくは5〜80μmである。比表面積は900m/g(N吸着)以上が好ましい。
【0032】
放射性物質吸着剤は、放射性物質、特にセシウム等の放射性核種の吸着能力に優れるものであれば、特に限定されるものではなく公知の吸着剤を用いることができる。これらの吸着剤は、粉末状であることが好ましいが、粒径は特に限定されない。その中でも、粉末ゼオライトが好ましい。
【0033】
粉末ゼオライトは、天然ゼオライト、合成ゼオライト、及びこれらのゼオライトから選ばれる2種以上の混合物を用いることができるが、コストの観点より、天然ゼオライトが好ましい。シリカは等電点が約pH2.5、アルミナは等電点が約pH9付近であるが、アルミノケイ酸塩であるゼオライトは、シリカとアルミナの間の等電点を持ち、シリカとアルミナのモル比(Si/Al比)によって等電点が異なってくる。
【0034】
粉末ゼオライトは、粒径70μm以下のものが好ましい。粒径が70μm以下であれば汚染水中の放射性物質との接触機会が増加し、短時間の撹拌で放射能汚染水の処理が可能となる。
【0035】
また、粉末活性炭と放射性物質吸着剤を段階的に添加する場合は、粉末活性炭を添加して撹拌した後、放射性物質吸着剤を添加して撹拌することが好ましい。予め粉末活性炭を添加して原水中の微量油分を吸着処理しておくことにより、当該油分が粉末ゼオライトの細孔に付着することで細孔を塞いでしまい、粉末ゼオライトの吸着能力が低下するのを防止できる。
【0036】
粉末活性炭及び放射性物質吸着剤の添加量は、活性炭及び放射性物質吸着剤の種類、原水の性状によっても異なるが、それぞれ、原水に対して0.1%〜10%添加するのがよく、さらに好ましくは原水に対して0.5%〜5%添加するのがよい。0.1%未満では活性炭及び放射性物質吸着剤の吸着能力が、全体として不足する傾向がある。
【0037】
粉末活性炭と放射性物質吸着剤の比率は、放射性物質吸着剤/粉末活性炭=0.5〜5とすることが好ましく、より好ましくは1〜4である。
【0038】
粉末活性炭及び放射性物質吸着剤は、ミキサー等の撹拌装置を用いて原水中に分散させることが好ましく、撹拌条件としては、添加した粉末活性炭や放射性物質吸着剤が沈降しない程度の低速撹拌を行うことが好ましい。粉末活性炭及び放射性物質吸着剤による吸着処理の所要時間は特に限定されないが、通常、それぞれ5分〜10分程度である。
【0039】
また、原水に油分が含有される場合は、粉末活性炭及び放射性物質吸着剤による吸着処理を行う前に、油分吸着剤を添加(0.1%以上)して撹拌し、予め油分を除去する処理を行い、油分による粉末活性炭及び放射性物質吸着剤の吸着阻害を防止することが望ましい。油分吸着剤としては、(株)ノアテック製 CS−05、富士メンテニール(株)製 FM−502、ユニバース開発(株)オイルゲーター、三菱化学(株)製 ダイヤマルス、(株)エコフィールド製 フューゲルST等を挙げることができる。
【0040】
次に、粉末活性炭及び放射性物質吸着剤による吸着処理を行った原水に、活性二酸化ケイ素及びアルミナを主成分とする無機粉粒体からなる無機系粉末凝集剤を添加し、撹拌することにより、前記粉末活性炭と放射性物質吸着剤を凝集させる。油分吸着剤を添加した場合は、該油分吸着剤も同時に凝集させる。無機系粉末凝集剤は、とりわけ、活性二酸化ケイ素及びアルミナを主成分とし、かつゼータ電位の最大値でその値が、少なくとも+15mVを示す無機粉粒体から構成されるものが、凝集性の観点から好適である。
【0041】
上記の無機系粉末凝集剤には、硫酸アルミニウム、ポリ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム等のアルミニウム系の無機金属塩系凝集剤や、フライアッシュ、人工ゼオライト等を粉砕したものを少量配合することもできる。
【0042】
無機系粉末凝集剤の粒径は、特に限定されない。凝集物の沈降速度を速めて処理時間を短縮できる観点より、無機系粉末凝集剤の主成分はある程度比重の大きいものがよく、平均比重1.5以上のものが好ましい。
【0043】
無機系粉末凝集剤の添加量は、その組成、処理対象の原水の性状、あるいは吸着処理に用いた粉末活性炭や粉末ゼオライトの種類によっても異なるが、原水に対して50ppm〜10,000ppm添加するのがよく、さらに好ましくは原水に対して100ppm〜5,000ppm添加するのがよい。添加した無機系粉末凝集剤は、適宜ミキサー等の撹拌装置を用いて原水中に分散させることが好ましい。
【0044】
主に放射性ヨウ素、COD成分及び窒素成分を吸着した粉末活性炭と、主に放射性セシウムを吸着した粉末ゼオライトが、凝集フロックとなって下層に沈殿し、上層には原水中の放射性物質、COD成分等が除去された、透明な上澄み水が形成される。
【0045】
本発明で用いる無機系粉末凝集剤は、活性ケイ素と活性アルミナを主成分とする凝集剤であり、該凝集剤を例えばpH6.3の原水に添加した際のpHは6.5〜7.0であるため、原水のpH調整やアルカリ剤等の事前溶解作業が不要であり、単に添加、撹拌するだけで容易にフロックを形成することができる。また、生成したフロックは、脱水性が良く、スラッジの処理も容易である。
【0046】
次いで、沈殿させた凝集フロックを、例えば、織布又は不織布を用いたフィルター、フレコン等で脱水濾過することにより、凝集フロックから水を分別する。濾過残渣の凝集フロック(スラッジ)は、フィルターやフレコン等の濾材ごと、放射能遮蔽効果のある保管容器に保管する。これにより、放射性物質を凝集フロック内に閉じ込めることで減容化するとともに、濾過作業に従事する作業員の放射能被ばくを防止することができる。一方、凝集フロックから分別した水(以下、これを「濾過水」という。)は原水の貯槽に戻して、吸着以降の処理を再度行なう。
【0047】
次に、本発明に係る放射能汚染廃水の処理システム及びそれに用いる処理装置について、図を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る放射能汚染廃水の処理システムの好ましい実施形態を示す概略工程図である。図2は、本発明に係る車載型放射能汚染廃水処理装置を説明する概略平面図と正面図である。
【0048】
図1〜2中、各符号は以下の装置を示す。
10:放射能汚染汚廃水を貯留するとともに、粉末活性炭及び粉末ゼオライトによる放射性物質の吸着処理工程(a)を行う原水槽、
20:凝集反応工程(b)を行う凝集反応槽、
30:凝集フロックを沈殿させる分離工程(c)を行う沈殿槽、
40:濾過工程(d)を行う濾過用のスラッジ脱水ボックス、
50:上澄み水5に含まれる異物等を除去する最終吸着濾過槽、
60:原水槽を兼ねる予備水槽。
【0049】
また、図1中、1は原水、2は油分吸着剤、3は粉末活性炭と粉末ゼオライトの混合物、4は無機系粉末凝集剤であり、6は沈殿槽30の下層に沈殿した凝集フロックを濾過することで水を分別した後の残渣の凝集フロック(スラッジ)、7は濾過水を示す。
【0050】
上記の原水槽10と予備水槽60は同じ目的で用いられ、原水槽10が吸着処理工程(a)に用いられている間は予備水槽60が濾過水を貯留し、予備水槽60が吸着処理工程(a)に用いられている間は原水槽10が濾過水を貯留する。かかる2系統の装置を用い、貯留と吸着処理を交互に行うことにより、効率化を図ることができる。
【0051】
図1の工程図に示すように、本発明の放射能汚染廃水処理システムでは、放射能汚染廃水を、工程(a)から順に工程(d)に供し、分離工程(c)で得られる上澄み水5を、沈澱槽30の上部より分離し、それを最終吸着濾過槽50において最終的な濾過処理を行った後、環境中に排出しても問題のない排水であることを確認して、環境中に排出する。
【0052】
従って、本発明によれば、所定の排水処理基準値以下の処理水を排出できるとともに、放射性物質による汚染物を減容化して保管する一連の工程を、簡便に実施できる。
【0053】
次に、本発明の放射能汚染廃水処理システムで採用する工程((a)ないし(d)工程)及びそれに用いる装置について、さらに詳細に説明する。
【0054】
(a)吸着処理工程
吸着処理工程では、原水1を、配管及びポンプを介して、撹拌装置を備えた原水槽10に貯留した後、該原水槽10に粉末活性炭とゼオライトの混合物3を添加して5〜10分間撹拌することにより、原水1中の放射性物質を吸着除去する。原水槽10では、原水1のpH調整は基本的に不要であるが、後流の凝集反応工程(b)で、放射性物質を吸着した粉末ゼオライト及び粉末活性炭を効率的に凝集させるためには、原水1のpHが6〜8の範囲であることが好ましい。吸着処理後は、粉末活性炭と粉末ゼオライト3を含む黒色濁水状態の原水1を、原水槽10から排出し、配管及びポンプを介して、凝集反応槽20に移送する。
【0055】
(b)凝集反応工程
凝集反応工程では、撹拌装置を備えた凝集反応槽20に導入された黒色の懸濁液に、無機系粉末凝集剤4を添加し撹拌することにより、粉末活性炭と粉末ゼオライトを凝集させ、放射性物質、粉末活性炭及び粉末ゼオライトを含む凝集フロックを形成する。当該凝集フロックを水と分離するために、凝集反応処理後は、凝集反応槽20の懸濁液を、配管及びポンプを介して、沈殿槽30に移送する。
【0056】
(c)分離工程
分離工程では、沈殿槽30に導入された黒色の懸濁液を、約5分間静置分離することにより、下層に凝集フロックを沈殿させ、上層に、放射性物質、COD成分等が除去された上澄み水を分離する。沈澱槽30からオーバーフローした上澄み水5を、配管を介して、最終吸着濾過槽50に移送する。
【0057】
(d)濾過工程
濾過工程では、分離工程で分離した凝集フロックを、スラッジ脱水ボックス40の内部に設置した濾過フィルター41を用いて濾過し、凝集フロックに含まれている水を、スラッジ脱水ボックス40の中に流下させて排除し、濾過フィルター内にスラッジ6を分別する。このような簡便な操作により、含水率が低く高濃度で減容化されたスラッジ6を得ることができる。この減容化したスラッジ6は濾過フィルター41ごと重量コンクリート製のスラッジ保管容器42(図4)に収容し保管する。一方、スラッジ脱水ボックス40の中の濾過水7は、該ボックスから排出した後、配管及びポンプを介して、予備水槽60に移送し、一旦貯留後、再び、工程(a)に供給し、原水1とともに上記の方法で処理する。
【0058】
以上の工程(a)〜(d)を経た後、最終吸着濾過槽50において、沈澱槽30からオーバーフローした上澄み水5を通過させる。この最終吸着濾過槽50を設けることによって、処理水中のゴミ等の異物を除去することができる。そして、通過した水について、水質検査を行い、所定の基準値を満たしていれば処理水8として環境中に排出し、所定の基準値を超える場合には、原水槽を兼ねる予備水槽60に戻し、再び、工程(a)に供する。
【0059】
最終吸着濾過槽50としては、公知の装置を利用することができ、例えば、上向き流式濾過装置、圧力式濾過装置等を挙げることができる。濾過材としては、発泡ポリプロピレン、粒状ゼオライト、アンスラサイト等を用いることができる。
【0060】
なお、図1では、上記の凝集反応工程及び分離工程を別々の装置で実施している例を示しているが、これらの工程を単一の連続式処理装置で実施することもできる。かかる連続式処理装置としては、スーパーナミット濁水処理装置(株式会社ノアテック)等を挙げることができる。
【0061】
装置のコンパクト化と処理速度の向上を図る点からは、単一の連続式処理装置で実施することが好ましい。図2は、連続式処理装置である凝集沈殿装置25を車載した例を示している。
【0062】
次に、本発明の放射能汚染廃水処理システムに好適に用いられる移動式プラント(車載型放射能汚染廃水処理装置、車載型放射能汚染土壌洗浄装置)を利用した放射能汚染廃水処理システムの一実施形態を、図2ないし図4を参照しつつ説明する。
【0063】
図2は、本発明に係る車載型放射能汚染廃水処理装置の一実施形態を説明する概略平面図と正面図であり、図3は、車載型放射能汚染土壌洗浄装置の一実施形態を説明する概略平面図と正面図である。図4は、本発明に係る放射能汚染廃水処理システムの一実施形態を示す概略図である。
【0064】
図2に示す車載型放射能汚染廃水処理装置70は、2基の原水槽兼予備水槽10と、凝集沈殿装置25を備え、原水の貯留と吸着処理とを並行して実施できるように構成されている。凝集沈殿装置25は、凝集反応槽20と沈殿槽30の機能を併有し、凝集反応工程(b)と分離工程(c)とを連続で行うことができる装置である。最終吸着濾過槽50は、上澄み水5に含まれる異物を除去する濾過装置である。これらの各装置は、既知の装置又はそれに準ずる装置を利用することができ、各装置の大きさ、台数、配置は一例であって、適宜変更できることは言うまでもない。
好ましい装置として、凝集沈殿装置25としては、前記のスーパーナミット濁水処理装置等が挙げられ、最終吸着濾過槽50としては、雨水排水再利用システム「れいんクル」、「hyper−れいんクル」(株式会社ホクコン)等が挙げられる。
【0065】
図2に例示する車載型放射能汚染廃水処理装置は、各装置がコンパクトに車載されているため、校庭、公園、汚泥処理場等の公共施設の他、比較的狭い場所にも容易に移動させることができる。
【0066】
また、本発明に係る車載型放射能汚染廃水処理装置は、車載型放射能汚染土壌洗浄装置と組合せることにより、放射能汚染廃水の処理、放射能汚染土壌の洗浄及び該洗浄水の処理に好適に用いることができる。なお、図3に示す車載型放射能汚染土壌洗浄装置及びそれに配備する各装置は、既知の装置又はそれに準ずる装置を利用することができる。各装置の大きさ、台数、配置は一例であって、適宜変更できることは言うまでもない。
【0067】
一例として示す、図3の車載型放射能汚染土壌洗浄装置80は、洗浄用水を貯留する2基の洗浄用水タンク81と、汚染土壌を洗浄するためのロータリーミキサー型の撹拌槽84、洗浄後の土壌から水を分離するための遠心脱水機85を備えている。87は撹拌用モーター、88は発電機である。当該洗浄装置では、撹拌槽84の上部投入口86から汚染土壌と洗浄用水を投入し、所定の速度で撹拌槽84を回転させて汚染土壌を洗浄した後、洗浄した土壌及び洗浄水の全量を遠心脱水機85に投入し、遠心脱水処理を行う。その後、遠心脱水機85から排出した洗浄水を、図4の車載型放射能汚染廃水処理装置70に配備された予備水槽60に導入する。
【0068】
図4に示す放射能汚染廃水処理システムは、車載型放射能汚染廃水処理装置70、及び車載型放射能汚染土壌洗浄装置80を配置した例であり、別に、濾過フィルター41を備えたスラッジ脱水ボックス40、予備水槽60、土砂ピット89、運搬用のフォークリフト90、及び脱水後のスラッジを濾過材ごと保管する放射能遮蔽効果のあるスラッジ保管容器42が配備されている。スラッジ保管容器42としては、高比重の骨材を配合した重量コンクリート製のものが好ましく用いられる。
【0069】
この移動式プラントを用いた放射能汚染廃水処理システムでは、移動式プラントによって上記の工程(a)、工程(b)、工程(c)、及び最終吸着濾過槽による処理工程を実施する。そして、凝集沈殿装置25から排出した凝集フロックを、濾過フィルター41を備えたスラッジ脱水ボックス40を用いて濾過することにより、凝集フロック(スラッジ)から水を分別してスラッジを充分水切りする。その後、当該スラッジを濾過フィルター41ごと処理施設内の敷地に配備された放射能遮蔽効果のあるスラッジ保管容器42内に収容し、当該保管容器42内にスラッジを保管する。
【0070】
以上説明したように、本発明の放射能汚染廃水処理システムにおいては、廃水中の放射性物質を所定の吸着剤により吸着処理する原水槽(吸着処理工程)と、吸着処理後の懸濁液に所定の無機系粉末凝集剤を添加する凝集反応槽(凝集反応工程)と、凝集処理後の懸濁液を静置して凝集フロックを沈殿させる沈殿槽(分離工程)とを有し、沈殿させた凝集フロックを濾過することにより、凝集フロックと水とを分別し(濾過工程)、さらに、その後流において、排出前の処理水を最終吸着濾過槽で処理することにより、放射能汚染廃水の処理を簡便に行うことができる。
【0071】
また、汚染廃水や汚染土壌の処理を要する場所に隣接して、車載型の放射能汚染廃水処理装置や放射能汚染土壌洗浄装置を配備し、さらに放射性物質を含むスラッジを保管する重量コンクリート製の保管容器等を配備することにより、汚染土壌の洗浄と洗浄水の処理を一括して行うことができるので、汚染土壌の搬送距離も短く処理効率に優れている。
【0072】
そして、最終処理を行った処理水を排水として放流することができるので、放射能汚染水が蓄積する恐れがない。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
(試験例1)
粉末活性炭(粒径200μm以下)、及び、粉末活性炭(粒径200μm以下)と粉末ゼオライト(粒径70μm以下)の混合物(株式会社ノアテック製「スーパーナミットNAC−04」)の1%水懸濁液を作製し、凝集沈降時のフロック沈降速度を、1分間に沈降したフロックの高さで比較評価した。
(1)各懸濁液に、無機系粉末凝集剤(株式会社ノアテック製「スーパーナミットTN315NY−T3」)を500ppm添加し、強撹拌1分弱、弱撹拌2分行いフロックを形成させ、そのフロックの沈降速度を測定した。
(2)粉末活性炭と粉末ゼオライトの混合物の1%水懸濁液に、PAC(ポリ塩化アルミニウム)を200ppm、高分子凝集剤(東亜合成(株)アロンフロックA−205)を2ppm添加し、強撹拌1分弱、弱撹拌2分行いフロックを形成させ、そのフロックの沈降速度を測定した。
【0075】
試験結果を表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
上記の結果より、活性炭とゼオライトの混合物のフロック沈降速度は、活性炭のみの場合の2倍であり、活性炭とゼオライトを混合することで、フロックの沈殿時間が短縮されることがわかる。無機系粉末凝集剤(スーパーナミットTN315NY−T3)により形成されたフロックの沈降速度は、PAC+高分子凝集剤の3倍であり、スーパーナミットTN315NY−T3の凝集力が高いことがわかる。
【0078】
(実施例1)
図1に示す工程図に基づいて、油分及び放射性物質を含有する廃水(以下、「油含有汚染水」と称する。)を処理した。油含有汚染水としては、表3に示す性状のものを用いた。
油分吸着剤として、株式会社ノアテック製「スーパーナミットCS−05」)を、油含有汚染水に対し0.5重量%添加した後、10分間撹拌した。
次に、放射性物質吸着剤として、粉末活性炭と粉末ゼオライトの混合物(株式会社ノアテック製「スーパーナミットNAC−04」)を、油含有汚染水に対し1.0重量%添加した後、10分間撹拌した。
【0079】
「スーパーナミットNAC−04」の性状は以下の通りである。
比重 :0.77t/m
比表面積 :1013m/g、
揮発分 :0.8%、
粒度 :45μm通過分99.9%、
乾燥減量 :14.3%、
ヨウ素吸着量 :333mg/g、
セシウム吸着量:725mg/g
【0080】
「スーパーナミットNAC−04」のセシウムに対する吸着能を別途測定した結果を、表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
次いで、無機系粉末凝集剤(株式会社ノアテック製「スーパーナミットTN315NY−T3」)を、油含有汚染水に対し500ppm添加し、撹拌しながら粉末活性炭及び粉末ゼオライトの凝集沈殿処理を行った。強撹拌開始後15秒〜30秒でフロックの形成が認められた。強撹拌を1分間行った後、弱撹拌を2分間行い、凝集沈殿処理を終了した。
【0083】
ここで、凝集剤として用いた「スーパーナミットTN315NY−T3」の主要成分は以下の通りである。
SiO 約70%
Al 約15%
約 5%
Na 約 2%
SO 約 1%
CaO 約 1%
約 2%
【0084】
凝集沈澱処理が終了した後、約5分間静置し、フロックを完全に沈降させた。次いで、目開き20μmの不織布で濾過し、濾液を分析に供した。分析結果を表3に示す。
【0085】
[COD]
100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素消費量で測定した。
【0086】
[放射線量]
以下の測定器で測定した。
製造元;株式会社堀場製作所
形 式;Radi(PA−1000)
種 類;シンチレーション式
測定範囲;0.000〜9.999μS/h
【0087】
(比較例1)
実施例1で用いた油含有汚染水を処理した。油分吸着剤として、株式会社ノアテック製「スーパーナミットCS−05」)を、油含有汚染水に対し0.5重量%添加した後、10分間撹拌した。次に、粉末ゼオライトを、油含有汚染水に対し0.5重量%添加した後、10分間撹拌した。
次いで、無機系粉末凝集剤(株式会社ノアテック製「スーパーナミットTN315NY−T3」)を、油含有汚染水に対し500ppm添加し、撹拌しながら粉末ゼオライトの凝集沈殿処理を行った。凝集沈澱処理が終了した後、約5分間静置し、フロックを完全に沈降させた。目開き20μmの不織布で濾過し、濾液を分析に供した。分析結果を表2に示す。
【0088】
(比較例2)
実施例1で用いた油含有汚染水を処理した。油分吸着剤として、株式会社ノアテック製「スーパーナミットCS−05」)を、油含有汚染水に対し0.5重量%添加した後、10分間撹拌した。次に、粉末活性炭を、油含有汚染水に対し0.5重量%添加した後、10分間撹拌した。
その後、比較例1と同様の方法で凝集沈殿処理を行い、濾液を分析に供した。分析結果を表3に示す。
【0089】
【表3】

【0090】
上記の結果から明らかなように、本発明の放射能汚染廃水処理方法にあっては、油分吸着剤及び放射性物質吸着剤を添加し、凝集処理することにより、油分、COD成分及び放射性物質を効果的に除去できることがわかる。
【0091】
(実施例2)
最終処分場からの浸出水に放射性物質が含まれた放射能汚染水を処理した。
先ず、放射性物質吸着剤として、粉末活性炭と粉末ゼオライトの混合物(株式会社ノアテック製「スーパーナミットNAC−04」)を汚染水に対し1.0重量%添加し、10分間撹拌した。
【0092】
次いで、無機系粉末凝集剤(株式会社ノアテック製「スーパーナミットTN315NY−T3」)を、放射能汚染水に対し500ppm添加し、撹拌しながら粉末活性炭及び粉末ゼオライトの凝集沈殿処理を行った。強撹拌開始後15秒〜30秒でフロックの形成が認められた。強撹拌を1分間行った後、弱撹拌を2分間行い、凝集沈殿処理を終了した。凝集沈澱処理が終了した後、約5分間静置し、フロックを完全に沈降させた。次いで、目開き20μmの不織布で濾過し、濾液を分析に供した。分析結果を表4に示す。
【0093】
【表4】

【0094】
上記の結果から明らかなように、本発明の放射能汚染廃水処理方法にあっては、油分吸着剤及び放射性物質吸着剤を添加し、凝集処理することにより、放射性物質を効果的に除去できることがわかる。
【0095】
(実施例3)
図3に示す車載型放射能汚染土壌洗浄装置を利用して放射能汚染土壌を洗浄処理した。
放射能汚染土壌をロータリーミキサー型の撹拌槽84に投入し、所定量の洗浄液を加えて混合撹拌し、放射性物質を洗浄液中に溶出させたスラリー状物を得た。
次いで、これをデカンターに送って遠心脱水し、放射性物質を除去した土壌と放射能汚染廃水に分離し、この放射能汚染廃水を車載型放射能汚染廃水処理装置により処理した。
車載型の放射能汚染土壌洗浄装置と、車載型の放射能汚染廃水処理装置を並送させながら順次移動して処理を行った。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の処理方法及び処理システムは、放射能で汚染された廃液に好ましく利用できる他、油分やイオン性物質を含有する家庭や事業所、工場からの排水の処理にも適用することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 放射能汚染水
2 油分吸着剤
3 粉末活性炭と粉末ゼオライトの混合物
4 無機系粉末凝集剤
5 上澄み水
6 凝集フロック
7 濾過水
8 処理水
10 原水槽(兼予備水槽)
20 凝集反応槽
25 凝集沈殿装置
30 沈殿槽
40 スラッジ脱水ボックス
41 濾過フィルター
42 スラッジ保管容器
50 最終吸着濾過槽
60 予備水槽
70 車載型放射能汚染廃水処理装置
71 発電機
80 車載型放射能汚染土壌洗浄装置
81 洗浄用水タンク
84 撹拌槽
85 遠心脱水機
86 投入口
87 モーター
88 発電機
89 土砂ピット
90 フォークリフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質を含有する廃水からなる原水に、粉末活性炭を添加して撹拌した後、放射性物質を吸着する粉末吸着剤を添加して撹拌する、又は、粉末活性炭と放射性物質を吸着する粉末吸着剤を同時添加して撹拌することにより、放射性物質を吸着処理した後、
活性二酸化ケイ素及びアルミナを主成分とする無機粉粒体からなる無機系粉末凝集剤を添加して撹拌し、次いで静置して、凝集フロックを沈殿させた後、
凝集フロックを脱水濾過し、そのスラッジを、放射能遮蔽効果のある保管容器に保管することを特徴とする放射能汚染廃水処理方法。
【請求項2】
放射性物質を吸着する粉末吸着剤が、粉末ゼオライトであることを特徴とする請求項1に記載の放射能汚染廃水処理方法。
【請求項3】
放射性物質を含有する廃水からなる原水に、粉末活性炭を添加して撹拌した後、放射性物質を吸着する粉末吸着剤を添加して撹拌する、又は、粉末活性炭と放射性物質を吸着する粉末吸着剤を同時添加して撹拌することにより、放射性物質を吸着処理する吸着処理工程(a)と、
吸着処理後の原水に、活性二酸化ケイ素及びアルミナを主成分とする無機粉粒体からなる無機系粉末凝集剤を添加する凝集反応工程(b)と、
凝集反応後の原水を静置して凝集フロックを沈殿させ、上澄み水と分離する分離工程(c)と、
凝集フロックを濾過することにより、凝集フロックと水とを分別する濾過工程(d)と、
を有し、
濾過工程(d)で得たスラッジを、放射能遮蔽効果のある保管容器に保管することを特徴とする放射能汚染廃水処理システム。
【請求項4】
前記濾過工程(d)で分別された水について、水質検査を行い、所定の基準値以下の水を処理水として排出すると共に、所定の基準値を超える水を吸着処理工程(a)に戻すことを特徴とする請求項3に記載の放射能汚染廃水処理システム。
【請求項5】
放射性物質を含有する廃水に油分が含有される場合に、粉末活性炭及び放射性物質を吸着する粉末吸着剤による吸着処理を行う前に、予め油分を除去する処理を行い、油分による粉末活性炭及び放射性物質を吸着する粉末吸着剤の吸着阻害を防止することを特徴とする請求項3又は4に記載の放射能汚染廃水処理システム。
【請求項6】
放射性物質を含有する廃水からなる原水を貯留するとともに、該原水中の放射性物質を、粉末活性炭及び放射性物質を吸着する粉末吸着剤を用いて吸着処理する原水槽と、
吸着処理後の原水に、活性二酸化ケイ素及びアルミナを主成分とする無機粉粒体からなる無機系粉末凝集剤を添加して凝集反応させる凝集反応槽と、
凝集反応後の原水を静置して凝集フロックを沈殿させ、上澄み水と分離する沈殿槽と、
を備えたことを特徴とする車載型放射能汚染廃水処理装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−88278(P2013−88278A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228739(P2011−228739)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(509198907)株式会社ノアテック (9)
【出願人】(000137074)株式会社ホクコン (40)
【出願人】(511237760)株式会社アクアプロダクト (2)
【出願人】(511237265)株式会社テクノブレインズ (4)
【Fターム(参考)】