説明

放射能測定システム

【課題】ユーザが自分で放射能濃度を簡単に測定できるシステムを提供する。
【解決手段】検体が入れられた検体容器2を収容して検体の放射能濃度を測定する放射能測定装置6と、測定料金の支払機5を備える。支払機5により料金の支払いがあることを条件に、放射能測定装置6により放射能濃度を測定して出力する。検体容器2を放射能測定装置6に入れる前に、放射線測定器11により放射線量を測定すると共に検体重量計4により検体重量を測定し、放射線量が上限値を超えず且つ検体重量が設定重量を超えない場合に、放射能測定装置6により放射能濃度を測定するのがよい。検体容器2の自動販売機をさらに備え、検体容器2は使い捨て容器とするのがよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、農産物、土壌、液体などの放射能濃度を測定するための放射能測定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食品などに含まれる放射能を測定するには、高価な機器が必要であり、それ故、通常、専門の検査機関に依頼しているのが実情である。ところが、検査機関に依頼しても、依然として安くはない費用がかかる上、検査に要する期間も長かった。また、検査機関では、日々、専任者が検査に従事するため、その専任者への被ばくのおそれもあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、専門家でなくても、簡易に安価に、しかも迅速に、放射能濃度を測定できる放射能測定システムを提供することにある。また、ユーザが必要時に自分で放射能測定することで、特定の者(検査機関の専任者)への被ばくを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、検体が入れられた検体容器を収容して検体の放射能濃度を測定する放射能測定装置と、測定料金の支払機または支払確認機とを備え、前記支払機により料金の支払いがあるか、または前記支払確認機により支払いが確認されることを条件に、前記放射能測定装置により放射能濃度を測定してその結果を出力することを特徴とする放射能測定システムである。
【0005】
請求項1に記載の発明によれば、料金を支払いつつ放射能測定装置を一時的に利用するシステムとすることができる。つまり、あたかもコインランドリーと同様に、放射能測定装置を一時的に利用することができる。これにより、放射能濃度を測定したいユーザは、自前で放射能測定装置を購入する必要がなく、また検査機関に依頼する必要もなく、簡易に安価に、しかも迅速に、放射能濃度の測定が可能となる。また、ユーザが必要時に自分で放射能測定することで、特定の者(検査機関の専任者)へ被ばくが集中するのを防止することもできる。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記検体容器がセットされる検体棚と、検体重量を測定する検体重量計と、前記支払機または支払確認機と、検体重量が設定重量を超え、且つ料金の支払いがあるか支払いが確認されることを条件に、前記検体容器を前記放射能測定装置に移動する検体移動機構と、この検体移動機構により前記検体容器が移動して収容された後、検体の放射能量を複数の放射性核種について測定し、前記検体重量計による検体重量に基づき、放射性核種ごとの放射能濃度を測定する前記放射能測定装置と、この放射能測定装置による測定結果の出力装置とを備え、前記放射能測定装置による放射能濃度の測定後、前記検体移動機構により前記検体容器を前記検体棚へ戻すことを特徴とする請求項1に記載の放射能測定システムである。
【0007】
請求項2に記載の発明によれば、放射性核種ごとの放射能濃度を測定することができる。その際、検体重量が設定重量(検査可能最低重量)を超えない限り放射能濃度を測定しないので、検体重量が少なくて信頼性の低い測定結果が出力されるのを未然に防止することができる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、検体の放射線量を測定する放射線測定器をさらに備え、前記検体棚において、前記放射線測定器により放射線量を測定すると共に、前記検体重量計により検体重量を測定し、放射線量が上限値を超えず、検体重量が設定重量を超え、且つ料金の支払いがあるか支払いが確認されることを条件に、前記検体移動機構により前記検体容器を前記放射能測定装置に移動して放射能濃度を測定することを特徴とする請求項2に記載の放射能測定システムである。
【0009】
請求項3に記載の発明によれば、検体棚において放射線量と検体重量とを測定し、放射線量が所定より高い場合や、検体重量が所定より小さい場合には、放射能濃度の測定を受け付けない構成とすることができる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記放射能測定装置は、扉との間で前記検体容器を収容する測定台を備え、前記検体容器は、前記測定台に設けられたシンチレーション検出器へのはめ込み部を有するマリネリ容器であり、前記検体棚と前記測定台との間で前記検体容器を移動させる際、扉開閉機構により前記測定台の扉を開閉することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の放射能測定システムである。
【0011】
請求項4に記載の発明によれば、測定台とその扉とで形成される閉鎖空間内に、マリネリ容器を収容して、容器内の検体の放射能濃度を測定することができる。
【0012】
さらに、請求項5に記載の発明は、前記検体容器の自動販売機をさらに備え、前記検体容器は、容器本体に蓋がねじ込まれて固定されることで密閉可能な使い捨て容器であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射能測定システムである。
【0013】
請求項5に記載の発明によれば、使い捨て容器を用いて、簡易に放射能濃度を測定することができる。しかも、その使い捨て容器を自動販売機により容易に入手することができる。さらに、検体容器は、容器本体に蓋がねじ込まれて固定されることで密閉可能であるから、検体の漏れを防止して、放射能測定装置などの保護を図ると共に、放射能測定に不慣れな者でも容易に取り扱うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、専門家でなくても、簡易に安価に、しかも迅速に、放射能濃度を測定することができる。また、ユーザが必要時に自分で放射能測定することで、特定の者(検査機関の専任者)への被ばくを防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の放射能測定システムの一実施例を示す概略斜視図である。
【図2】図1の放射能測定システムのシステムブロック図である。
【図3】図1の放射能測定システムに好適に利用できる検体容器の一例を示す概略斜視図である。
【図4】図1の放射能測定システムの処理フローの一例を示すフローチャートである。
【図5】図4のフローチャートの続きを示す図である。
【図6】図5のフローチャートの続きを示す図である。
【図7】図1の放射能測定システムによる測定結果を示す印刷物の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1および図2は、本発明の放射能測定システム1の一実施例を示す概略図であり、図1は斜視図、図2はシステムブロック図である。
【0017】
本実施例の放射能測定システム1は、検体容器2に入れられた検体(試料)の放射能濃度を測定する装置である。検体とは、放射能濃度を測定したい対象物であり、典型的には、固体、液体、または両者の混合物である。検体は、その内容を特に問わないが、たとえば、食品、食材、食肉、農産物、液体(水など)、草木、土壌などである。これらは、所望により適宜粉砕されて、所定の検体容器2に入れられて、放射能測定システム1により放射能濃度が測定される。なお、検体容器2については、後述する。
【0018】
本実施例の放射能測定システム1は、検体容器2がセットされる検体棚3と、検体重量を測定する検体重量計4と、利用料金の支払機5と、検体の放射能濃度を測定する放射能測定装置6と、その測定結果を出力する出力装置(たとえばプリンタ7)と、検体棚3と放射能測定装置6との間で検体容器2を移動させる検体移動機構8などを備える。そして、これらは、図1に示すようにボックス型のケーシング9内に収容されている。
【0019】
検体棚3は、ケーシング9の正面に設けられ、扉(図示省略)によって開閉可能とされる。この扉は、扉開閉機構10によって開閉される。扉開閉機構10は、その構成を特に問わないが、たとえばモータの駆動力で扉を上下動させる。
【0020】
検体棚3には、スクリーニング用の放射線測定器11と、検体重量計4とが設けられる。本実施例の放射能測定システム1では、放射線量が上限値を超えず、且つ検体重量が設定重量(放射能測定装置6による検査可能最低重量)を超える場合にのみ、放射能測定装置6に検体容器2を移動して放射能濃度を測定する。なお、検体重量が多すぎる場合については特に確認しないが、これは、所定の検体容器2を使用する関係で、検体容器2の容量から検体重量は制約を受けるからである。
【0021】
放射線測定器11は、その構成を特に問わないが、本実施例ではシンチレーション検出器が用いられる。検体を入れた検体容器2を検体棚3に置いた状態で、放射線測定器11は検体棚3内の放射線量を測定する。
【0022】
検体重量計4は、検体の重量(kg)を測定する。検体重量計4は、本実施例では検体棚3の下部に設けられており、検体棚3に検体容器2を載せると、その検体容器2内の検体の重量を測定する。検体容器2は共通品が使用され、検体容器2の重量は予め分かっているので、検体容器2の重量を除いた検体の重量を測定することができる。
【0023】
支払機5は、放射能測定装置6の利用料金を徴収する装置であり、本実施例では現金による支払いを受ける装置である。この場合、図1に示すように、ケーシング9の正面に、料金投入口12と釣銭口13とが設けられる。支払機5は、料金投入口12から入れられた金銭を計数し、所定の料金を徴収する。そして、釣銭が出た場合には、その釣銭を釣銭口13へ排出する。
【0024】
放射能測定装置6は、検体容器2を収容して、検体の放射能濃度を測定する。本実施例では、検体に含まれる放射性核種からの微量なガンマ(γ)線を検出して、それぞれの放射能濃度を測定する。つまり、検体の放射能量を複数の放射性核種について測定し、検体重量計4による検体重量に基づき、放射性核種ごとの放射能濃度(Bq/kg)を測定する。但し、本実施例の放射能測定システム1では、複数の放射性核種それぞれについての放射能濃度を測定して出力する以外に、各放射性核種からの放射能をまとめた合計の放射能濃度を測定して出力するようにしてもよい。
【0025】
放射能測定装置6は、放射能の検出方法を特に問わないが、本実施例ではシンチレーション検出器、たとえばタリウム活性化ヨウ化ナトリウム(NaI(Tl))シンチレーション検出器が用いられる。
【0026】
検出対象の放射性核種は、適宜に変更可能であるが、本実施例では、たとえば、ヨウ素131(131I)、セシウム134(134Cs)、セシウム137(137Cs)を検出対象とする。但し、これは一例であり、放射性核種の数や組合せは変更可能であり、しかも前述したとおり放射性核種ごとではなく全体としての放射能濃度を出力するようにしてもよい。
【0027】
放射能測定装置6は、その構成を特に問わないが、本実施例では、放射能検出部(シンチレーション検出器)6Aを備えた測定台14と、その上部を覆う扉15とから構成される。測定台14の扉15を閉じた状態では、測定台14とその扉15との間に、検体容器2を収容する閉鎖空間が形成され、この閉鎖空間は、鉛により外部と遮蔽される。外部と遮蔽されるので、検体の放射能濃度を正確に測定することができる。
【0028】
測定台14の扉15について説明すると、本実施例では、測定台14の上に被せられる下方へ開口する円筒材が左右に二つ割りされて、左右二つの扉15,15を有する。そして、各扉15は、後方においてヒンジで結合されており、図1において二点鎖線で示すように、左右方向外側へ開く構成とされている。このような扉15は、扉開閉機構16によって開閉される。扉開閉機構16は、その構成を特に問わないが、たとえばモータの駆動力で扉15を開閉させる。
【0029】
出力装置は、放射能測定装置6によって測定した放射能濃度を出力する。出力形式は特に問わないが、本実施例ではプリンタ7である。但し、プリンタ7での測定結果の印刷に限らず、ディスプレイなどからなる表示装置17への表示、電子メールなどによる電子データでの送信、USBメモリなどの記録媒体への書き込みなどにより、測定結果の出力を行ってもよい。
【0030】
検体移動機構8は、検体棚3と放射能測定装置6との間で検体容器2を移動させる。本実施例では、検体棚3と測定台14との間で検体容器2を移動させる。この際、検体棚3と測定台14直上との間の移動機構と、測定台14直上から放射能検出部6Aへのセットおよびその取り外し機構とから構成してもよい。検体移動機構8は、ロボットアーム、コンベア、クレーンの他、ネジ棒の回転によるナット部材の上下動装置など、従来公知の各種の搬送機構を用いて構成される。
【0031】
その他、放射能測定システム1は、図1に示すように、液晶ディスプレイ(タッチスクリーンでもよい)などの表示装置17を備える。この表示装置17は、操作案内などを行う表示部17Aと、放射能濃度測定完了までの残り時間の表示部17Bとに分けてもよい。
【0032】
また、放射能測定システム1の利用の開始ボタン18(スクリーニング開始ボタン)、強制終了したい場合に押される途中終了ボタン19(カバー付き)が設けられている。
【0033】
さらに、音声スピーカ20や、プリンタ7からの印刷物の取出口21も設けられている。この取出口21には、印刷物が取り出されたか否かを確認するための用紙取出しチェックセンサ22が設けられている。用紙取出しチェックセンサ22は、たとえば重量センサや用紙への接触センサ、または赤外線センサなどの非接触センサが用いられる。
【0034】
図2に示すように、支払機5、検体棚3の扉開閉機構10、スクリーニング用の放射線検出部(放射線測定器)11、操作メッセージなどを発する音声案内部(音声スピーカを含む)20、用紙切れや扉開閉を知らせるアラーム部23、表示装置17、プリンタ7、用紙取出しチェックセンサ22、開始ボタン18、途中終了ボタン19、検体重量計4、検体移動機構8、測定台14の扉開閉機構16、インターネットに接続可能なインターフェース24、放射能検出部6A(放射能測定装置6)などは、制御器25に接続されて制御可能とされると共に、これらは電源装置26から電源が供給される。そして、制御器25は、予め格納された所定の手順(プログラム)に従い、前記各手段を制御して、後述するように、検体のスクリーニング、放射能濃度の測定、測定結果の出力などの処理を行う。
【0035】
図3は、本実施例の放射能測定システム1に好適に利用できる検体容器2の一例を示す概略斜視図である。検体容器2としては、従来公知の各種の容器を使用してもよいが、図3のようなマリネリ容器を用いるのが好ましい。
【0036】
従来公知のマリネリ容器について念のため説明すると、従来のマリネリ容器は、繰り返しの利用が前提で、やや厚みのある透明なアクリル樹脂により形成され、容器本体と蓋とから構成される。そして、容器本体は、上方へ開口する円筒形状であり、その底壁中央には放射能検出部6Aへのはめ込み部なる円形の凹部が上方へ凹んで形成されている。また、容器本体は、周側壁の上端部において、上部全域で開口しており、その上部開口に円板状の蓋が載せられる。ところが、このような構成では、検体容器を密閉できないので、液漏れなどが発生し、放射能検出部6Aへの付着のおそれがあり、取り扱いには慎重さが求められる。
【0037】
これに対し、本実施例の検体容器2は、使い捨てが前提であり、好適にはペットボトル(PET材料を用いた容器)により構成される。また、検体容器2は、容器本体2Aとキャップ(蓋)2Bとから構成される。そして、容器本体2Aは、円筒形状であり、その底壁中央には放射能検出部6Aへのはめ込み部となる円形の凹部2Cが上方へ凹んで形成されている。さらに、容器本体2Aは、上部全域で開口することなく、上壁2Dが形成されており、その上壁2Dの中央部に設けた上方への円筒状の口部2Eにおいてのみ開口する。この口部2Eには、外周面にねじが形成されており、キャップ2Bを着脱可能にねじ込んで装着可能である。キャップ2Bを最後まで締めることで、検体容器2内は密閉される。これにより、放射能測定システム1内での液漏れなどを防止することができる。よって、放射能測定装置6などの保護を図ると共に、放射能測定に不慣れな者でも容易に取り扱うことができる。
【0038】
なお、口部2Eの直径は、図示例では凹部2Cの直径より僅かに小さいが、これに限定されることなく、適宜に変更可能である。また、容器本体2Aの周側壁には、適宜、液体量を把握するための目盛を付してもよい。たとえば100mlごとに上下に目盛を付すことで、検体容器2内に入れた液体の量を把握可能としてもよい。
【0039】
ところで、図示例の検体容器2の場合、容器本体2Aの上壁2Dは、径方向内側へ行くに従って下方へ傾斜して形成されている。そして、容器本体2Aにキャップ2Bを締めた状態で、キャップ2Bの上面は、容器本体2Aの上端部と同一かやや低くなるよう形成されている(図1)。このような構成の場合、容器本体2Aの大きさを従来のマリネリ容器に合わせておけば、従来公知の既存の放射能測定装置6にも対応可能となる。
【0040】
図4から図6は、本実施例の放射能測定システム1の処理フローを順に示すフローチャートである。本実施例の放射能測定システム1を用いて検体の放射能濃度を測定したいユーザは、予め検体容器2を入手して、その検体容器2内に検体を入れておく。なお、検体容器2は、放射能測定システム1に付属の自動販売機により購入したり、通信販売などにより購入したりできるようにしておくのがよい。検体容器2を自動販売する場合、自動販売機は、複数の検体容器2を貯えており、所定料金が投入されると、検体容器2を一つ排出する。
【0041】
放射能測定システム1を利用する際、まず、ユーザは開始ボタン18を押す。制御器25は、開始ボタン18が押されたことを検出すると、検体棚3の扉開閉機構10を制御して、検体棚3の扉を開ける(S1,S2)。また、表示装置17への表示や音声案内部20からの音声により、検体を入れた検体容器2を検体棚3にセットするようユーザに案内する。これに応じてユーザは、検体棚3に検体容器2をセットする。本実施例では、検体棚3に検体容器2を載せればよい。これにより、検体重量計4に検体の重量がかかるので、検体棚3に検体がセットされたことを検出できる。但し、検体棚3への検体容器2のセットは、検体重量計4によらず、赤外線センサやマイクロスイッチなどの各種センサを用いて検出してもよい。
【0042】
いずれにしても、制御器25は、検体棚3に検体容器2がセット(つまり検体がセット)されたことを検出すると、数十秒間のスクリーニングを実行する(S3,S4)。このスクリーニングでは、放射線測定器11により放射線量を測定すると共に、検体重量計4により検体重量を測定する。
【0043】
制御器25は、放射線量の測定結果と予め定めた上限値とを比較し、放射線量が上限値を超える場合、放射線量が高いために検査できない旨の案内を出力する(S5,S6)。また、制御器25は、検体を検体棚3から取り出すよう案内する(S7)。これらの案内は、表示装置17への表示や、音声案内部20からの音声により行うことができる。
【0044】
そして、制御器25は、検体棚3に検体がセットされたか否かの検出と同様に、検体重量計4などにより、検体が取り出されたか否かを検出する(S8)。検体が取り出されるまで、ステップS6に戻って、検体の取り出しをユーザに促す。検体が取り出されたことを検出すると、制御器25は、検体棚3の扉を閉じて処理を終了する(S8,S9)。
【0045】
また、制御器25は、検体重量の測定結果と予め定めた設定重量(検査可能最低重量)とを比較し、検体重量が設定重量を下回る場合、重量不足のために検査できない旨の案内を出力する(S10,S11)。また、制御器25は、検体を検体棚3から取り出すよう案内する(S12)。これらの案内は、表示装置17への表示や、音声案内部20からの音声により行うことができる。
【0046】
そして、制御器25は、検体棚3に検体がセットされたか否かの検出と同様に、検体重量計4などにより、検体が取り出されたか否かを検出する(S13)。検体が取り出されるまで、ステップS11に戻って、検体の取り出しをユーザに促す。検体が取り出されたことを検出すると、制御器25は、検体棚3の扉を閉じて処理を終了する(S13,S14)。
【0047】
制御器25は、スクリーニングにより、放射線量が上限値を超えず、且つ検体重量が設定重量を超える場合、表示装置17への表示や音声案内部20からの音声により、検査できる旨の案内を出力する(S5,S10,S15)。また、同様に、表示装置17への表示や音声案内部20からの音声により、規定の料金の支払いを促す案内を出力する(S16)。これに伴い、ユーザは支払機5に料金を投入する。支払機5により規定料金の支払いが確認されると、制御器25は、検体棚3の扉開閉機構10を制御して、検体棚3の扉を閉じる(S17,S18)。
【0048】
その後、制御器25は、検体移動機構8を制御して、検体容器2を放射能測定装置6の測定台14に移動し、放射能検出部6Aにセットする(S19)。この際、測定台14の扉15は予め開かれている。また、検体容器2がマリネリ容器である場合には、検体容器2下部の凹部2Cを放射能検出部6Aにはめ込めばよく、検体容器2がマリネリ容器でない場合には、検体容器2を放射能検出部6Aの上に載せればよい。
【0049】
万一、検体容器2を放射能検出部6Aに適正にセットできない場合、制御器25は、表示装置17への表示や音声案内部20からの音声により、ユーザに故障である旨の案内を行い、支払機5から料金を払い戻すという返金処理を行う(S20〜S22)。なお、故障である旨は、インターネット用インターフェース24を介して、管理センタにも通知され、故障現場へのメンテナンス員の派遣などが行われる。
【0050】
検体が放射能検出部6Aに適正にセットされた場合、制御器25は、測定台14の扉開閉機構16を制御して、測定台14の扉15を閉じる(S20,S23)。そして、制御器25は、放射能測定装置6を作動させて検体の放射能濃度を測定する(S24)。放射能濃度の測定は、本実施例ではたとえば1000秒(約17分)を要するが、その測定完了までの残り時間は、残り時間表示部17Bに表示される。また、放射能濃度の測定中、途中終了ボタン19が押されると、制御器25は、放射能測定処理を中止し、検体移動機構8などを制御して、検体容器2を検体棚3へ戻して、処理を終了する。なお、この場合は、返金処理は行わない。
【0051】
制御器25は、放射能測定装置6による放射能濃度の測定が終了すると、測定台14の扉開閉機構16を制御して、測定台14の扉15を開けた後、検体移動機構8を制御して、検体容器2を放射能測定装置6から検体棚3へ移動させる(S25,S26)。
【0052】
その後、制御器25は、検体棚3の扉開閉機構10を制御して検体棚3の扉を開ける(S27)。そして、表示装置17への表示や音声案内部20からの音声により、ユーザに検体棚3から検体を取り出すよう案内する(S28)。検体重量計4などにより検体棚3から検体容器2が取り出されたことを検出すると、制御器25は、検体棚3の扉開閉機構10を制御して検体棚3の扉を閉じる(S29,S30)。
【0053】
その後、制御器25は、プリンタ7を制御して、測定結果を所定の用紙に印刷して、その印刷物を取出口へ排出し、表示装置17への表示や音声案内部20からの音声により、ユーザに印刷物を受け取るよう案内する(S31,S32)。
【0054】
制御器25は、用紙取出しチェックセンサ22の検出信号に基づき、取出口21から印刷物が取り出されたことを検出すると、表示装置17への表示や音声案内部20からの音声により、ユーザに、ご利用ありがとうございました、というような終了案内を行う(S33,S34)。
【0055】
図7は、測定結果を示す印刷物の一例を示す図であるが、この図に示すように、本実施例では、測定年月日および測定開始時刻、検体重量(g)、測定時間(s)の他、ヨウ素131(131I)、セシウム134(134Cs)およびセシウム137(137Cs)の各放射能濃度(Bq/kg)が表示される。また、この用紙下部には、試料名称を記載できる空欄があり、ユーザが適宜試料名称などを記載することができる。
【0056】
なお、定期的(たとえば1日1回)に、制御器25は検体容器2のない状態で放射能濃度の測定を自動で実行し、その結果を管理センタへ送信し、放射能測定システム1の状況を管理センタにて把握可能としてもよい。また、ユーザによる測定結果を記憶手段に保存しておいたり、その内容を定期的(たとえば1日1回)に管理センタにデータ送信したりしてもよい。
【0057】
本実施例の放射能測定システム1によれば、料金を支払いつつ放射能測定装置6を一時的に利用することができる。つまり、あたかもコインランドリーと同様に、放射能測定装置6を一時的に利用することができる。測定時間も10〜20分程度に抑えることで、生活圏内において気軽に放射能を測定できる装置となり、各個人が放射能に対する迅速な回避行動をとることができる。このように、放射能濃度を測定したいユーザは、自前で高価な放射能測定装置6を購入する必要がなく、また検査機関に依頼する必要もない。よって、簡易に安価に、しかも迅速に、放射能濃度の測定が可能となる。また、ユーザが必要時に自分で放射能測定することで、特定の者(検査機関の専任者)へ被ばくが集中するのを防止することもできる。農業や製造業に従事する者に限らず一般消費者も、食品、水、草木、土壌などの放射能を、信頼性のある数値で容易に確認することができ、安全対策を迅速に起こすことができる。
【0058】
本発明の放射能測定システム1は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。特に、前記実施例では、利用料金を現金により徴収する例を示したが、利用料金の支払方法は適宜に変更可能であり、現金以外で利用料金を徴収する構成としてもよい。たとえば、支払機5において、プリペイドカード、クレジットカード、デビットカード、電子マネーなどにより支払いを受ける構成としてもよい。また、支払機5をキャッシュレジスタとし、レジにより精算した後、放射能濃度の測定が可能となる構成としてもよい。
【0059】
また、事前(放射能測定システム1の使用前)に支払いをユーザにしてもらい、その支払い確認を放射能測定システム1の支払確認機27にて行ってもよい。たとえば、ユーザが携帯端末(携帯電話を含む)やパソコンを用いてインターネットを介して所定のウェブサイト上で放射能濃度測定の事前の申し込み(予約)および支払いを行い、その代わりにユーザにQRコードを付与する。そして、ユーザは、携帯端末に表示されたQRコード、またはパソコンからプリンタを用いて印刷したQRコードを、支払確認機27(ここではQRコードリーダ)にかざして、制御器25が事前の決済の確認を行うことで、放射能濃度の測定を可能としてもよい。
【0060】
あるいは、各ユーザに事前に会員カード(ユーザID)を割り当て、支払確認機27(ここでは会員カード読取装置)に会員カードを差し込んでユーザを把握した後、放射能濃度の測定を可能としてもよい。その場合、利用料金は、即日または後日、利用ユーザから料金を徴収することになる。たとえば、ユーザ宛てに請求書を送って振り込んでもらったり、予め設定しておいた口座から引き落としたりすることができる。
【0061】
また、前記実施例では、検体棚3に検体容器2をセットして所定のスクリーニングを実施した後、放射能測定装置6に検体容器2を移動してセットする例を説明したが、所望により、検体移動機構8を省略して、検体容器2を放射能測定装置6に直接にユーザがセットする構成としてもよい。また、スクリーニングのための重量測定と放射線測定との一方または双方は、場合により省略したり、検体棚3で行わず放射能測定システム1内ではあるが他の箇所で行ったりしてもよい。また、検体重量は、ユーザが予め測定しておいた数値を入力する構成としてもよい。
【0062】
さらに、前記実施例では、単位重量当たりの放射能濃度(Bq/kg)を測定したが、単位容積当たりの放射能濃度(Bq/l)を測定してもよい。その場合、検体容器2内の検体の容積は、液位検出センサによる液位から制御器25が算出してもよいし、ユーザからの入力で受け付けてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 放射能測定システム
2 検体容器
2A 容器本体
2B キャップ(蓋)
2C 凹部
2D 上壁
2E 口部
3 検体棚
4 検体重量計
5 支払機
6 放射能測定装置
6A 放射能検出部
7 プリンタ
8 検体移動機構
9 ケーシング
10 扉開閉機構
11 放射線測定器
12 料金投入口
13 釣銭口
14 測定台
15 扉
16 扉開閉機構
17 表示装置
17A 操作案内表示部
17B 残り時間表示部
18 開始ボタン
19 途中終了ボタン
20 音声案内部(音声スピーカ)
21 取出口
22 用紙取出チェックセンサ
23 アラーム部
24 インターネット用インターフェース
25 制御器
26 電源装置
27 支払確認機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体が入れられた検体容器を収容して検体の放射能濃度を測定する放射能測定装置と、測定料金の支払機または支払確認機とを備え、
前記支払機により料金の支払いがあるか、または前記支払確認機により支払いが確認されることを条件に、前記放射能測定装置により放射能濃度を測定してその結果を出力する
ことを特徴とする放射能測定システム。
【請求項2】
前記検体容器がセットされる検体棚と、
検体重量を測定する検体重量計と、
前記支払機または支払確認機と、
検体重量が設定重量を超え、且つ料金の支払いがあるか支払いが確認されることを条件に、前記検体容器を前記放射能測定装置に移動する検体移動機構と、
この検体移動機構により前記検体容器が移動して収容された後、検体の放射能量を複数の放射性核種について測定し、前記検体重量計による検体重量に基づき、放射性核種ごとの放射能濃度を測定する前記放射能測定装置と、
この放射能測定装置による測定結果の出力装置とを備え、
前記放射能測定装置による放射能濃度の測定後、前記検体移動機構により前記検体容器を前記検体棚へ戻す
ことを特徴とする請求項1に記載の放射能測定システム。
【請求項3】
検体の放射線量を測定する放射線測定器をさらに備え、
前記検体棚において、前記放射線測定器により放射線量を測定すると共に、前記検体重量計により検体重量を測定し、放射線量が上限値を超えず、検体重量が設定重量を超え、且つ料金の支払いがあるか支払いが確認されることを条件に、前記検体移動機構により前記検体容器を前記放射能測定装置に移動して放射能濃度を測定する
ことを特徴とする請求項2に記載の放射能測定システム。
【請求項4】
前記放射能測定装置は、扉との間で前記検体容器を収容する測定台を備え、
前記検体容器は、前記測定台に設けられたシンチレーション検出器へのはめ込み部を有するマリネリ容器であり、
前記検体棚と前記測定台との間で前記検体容器を移動させる際、扉開閉機構により前記測定台の扉を開閉する
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の放射能測定システム。
【請求項5】
前記検体容器の自動販売機をさらに備え、
前記検体容器は、容器本体に蓋がねじ込まれて固定されることで密閉可能な使い捨て容器である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射能測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−79914(P2013−79914A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221184(P2011−221184)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(311014624)
【出願人】(511241424)
【Fターム(参考)】