説明

放射能量分布情報生成装置

【課題】位置精度を向上させた広範囲な地表の放射線量分布情報を生成する装置を提供する。
【解決手段】放射線量計測装置により、地表上空の複数の計測位置それぞれにおいて、または地表上空の連続的に変化する計測位置に沿って複数の方向への、複数のサブ領域に分割される計測領域の計測を行い複数の計測情報を取得して計測位置情報と計測方向情報と計測時刻をメモリに記憶し、計測情報が取得されたときに計測されたサブ領域を特定し、このサブ領域に関連付けられている計測情報を参照し、演算により地表の放射線量分布情報を生成する装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地表の放射能量分布を計測する装置に関する。特に、航空機等において上空から計測したγ線線量計測値を利用してするシステムおよび放射能量分布図を生成する装置に関し、また、地上の任意の点に対する放射線量を呈示または表示する装置に関する。。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線量を計測する技術としてγ線シンチレータによる定点観測用のモニタリングポスト、あるいはその変形としてγ線シンチレータをヘリコプターから吊下して地上ないし空中の放射線量を計測する方法がある。さらに、医療分野では、人体を対象にγ線に対する線量分布を求める技術がある。しかしながら地表広域の放射線分布を現場に立ち入らずに求める方法は調査した限りでは定点観測用のモニタリングポスト、あるいはその変形としてγ線シンチレータをヘリコプターから吊下して地上ないし空中の放射線量を計測する方法以外には存在しない。。これは、地表広域の放射能量分布を計測する必要があるのは公表されている範囲では、核実験場と、事故により周辺を汚染したチェルノブイリ原発と福島原発しかなく、核実験場は元々人口希薄地帯に設けられているため、それほど高精度・高分解能の計測ニーズが無いことが原因と思われる。以下、用語としてベクレルで放射能量を表すものとし、本発明で計測するのはベクレルに換算できる入社γ線カウント数とγ線のスペクトルであり、地表の放射能量はベクレル/m2である。γ線スペクトルも計測可能であるので、放射線量に変換することも可能である。
【0003】
放射能のうち、透過力が強いγ線の計測は放射線防護の上で重要であるが、γ線の特質から可視光のように光学系を構成して分布を撮像することが不可能であるため、指向性を得ることが容易でなかった。このため移動式ガンマ線シンチレータを線源に近接させるか、2次元ないし3次元に複数のガンマ線シンチレータを遮蔽体によりコリメータとして配置し、各々のシンチレータとの相対位置関係から線源の位置を求め、線量分布を求めたり、像を求めりする方法がある。
【0004】
特許文献1の方法は、三次元に広がる線源分布を画像化するために、あるいは、線源位置や放射線飛来方位を特定するために、γ線センサを3次元的に格子状に配列し、線源との相対位置関係より数値計算により線源の位置を確定するものである。特許文献2の方法は被検査構造物の表面および被検査構造物の材料内部の放射能による汚染を計測する走行する検査台車に 各種放射能汚染センサを搭載して、自ら放射能汚染部分に近接することにより放射能分布を測定するものである。
【0005】
特許文献3の方法は リフター台車に可変式取付マウントをとりつけた昇降マストを設けシンチレーション検出器を取り付けて、原子力発電所等の管理区域の放射能汚染区域で、従来サーベイが困難とされた天井及び高所壁面でも容易に対応できる高所の放射能汚染検査を行う装置である。 特許文献4の方法は、検査台上に置かれた人体を対象として医療用に複数γ線カメラで画像を得る方法である。
【0006】
特許文献5の方法は、検査台上に置かれた人体を対象としてγ線センサの情報を合算再構築して感度を向上させる方法である。特許文献6の方法は、航空機を使用して複数のカメラにより広域の写真を位置と撮影方向に関連づけて記憶し、任意の視点からの映像を生成する技術であるが、取得する情報がカメラによる写真映像である。
【0007】
特許文献2と特許文献3の方法は、対象物にγ線センサを近づけ、位置を変えながら計測して線量分布を求めるもので、近接することが前提で、航空機からの計測のように遠距離からの計測には利用できない。特許文献1の方法は、γ線センサを格子状に配置して線源の方向情報を計出する特徴があるが、測定系も対象も固定していることを前提としており、測定対象の存在位置が測定系に近接しており、測定対象が測定系の開口部の全面にあることが前提である。
【0008】
特許文献4と特許文献5は医療用であり、人体を検査台の上に固定してγ線の画像を近傍から得る技術である。遠方より広範囲のγ線量分布を計測する用途には適しない。特許文献6は航空機より広域かつ全周の画像を全ての点に対して網羅的に撮影する方法であり、航空機の管制と撮影制御の方法は航空機からの広域の測定に適した技術であるが、写真撮影を前提としており、航空管制方法、精密測地技術以外は地表のγ線量分布の計測には使用することができない。
【0009】
【特許文献1】特開2011-85418号
【特許文献2】特開2007-333419号
【特許文献3】特開2005-274367号
【特許文献4】WO-2009/051053号
【特許文献5】WO-2008/139625号
【特許文献6】WO-2008/139625号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、第一に、放射能に汚染された広域な地表の放射能量分布を地上に立ち入ることなく、上空より航空機でモートセンシングすることであり、パイロットの被ばく線量を制限値以下にし、さらに極力低減することである。第二は測定値を地図上に放射能量分布として測定後速やかに呈示することであり、放射能量分布の位置的精度と位置分解能を可能な限り高めることである。すなわち、リモートセンシングにより遠距離から、速い速度で地表を走査しながら地表からのγ線線量分布を高い位置精度と高い空間分解能で測定することである。
【0011】
γ線のセンサとして広く実用化されているヨウ化ナトリウム(NaI)のシンチレータを使用して、遠距離から指向性の鋭いビームを作ると、入射する光子数が減少し感度が下がり、測定に長い時間が必要となる。また、γ線シンチレータを航空機に搭載して高速で飛行すると、個別の地表領域に対する光子入射数が減り(感度が下がり)、移動しながらの長い時間の測定が必要となり、結果として分解能が悪くなる。さらに、入射光子数が減少すると、宇宙線等に由来する背景放射線線量により計測値に対するノイズが増大する。さらに、個別の地表領域に対する計測時間が短いと、γ線自体が原子核の崩壊に由来する確率的現象であるので確率的揺らぎが無視できなくなる。γ線に対しては有効な屈折あるいは反射の手段がなく、可視光線のようなレンス゛または反射鏡を構成することができないという状況の下、上記課題を解決するのが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
遠隔よりγ線線量の地表分布情報を得る為には、γ線シンチレータの感度に指向性を持たせる必要がある。指向性を得る方法は鉛遮蔽体で求める入射角以外の方向からのγ線を遮蔽することにより行う。γ線シンチレータの感度指向性を上げると、遠隔より同時に計測可能な地表領域が狭くなり、地表広域を測定する為には、飛行経路を稠密に設定しなくてはならなくなる。パイロットの放射線被曝を削減する為には好ましくないことであり、この問題を解決する為に複数の異なった方向を指向するγ線シンチレータを集合してγ線シンチレータ集合体を構成し、同時に多方向のγ線線量を計測できるようにする。また、γ線シンチレータを遮蔽体で囲む方法については、指向性をあげることにより入射光子数が減り感度が下がる為、S/N比を改善する目的で選択した指向性以外の方向からの環境放射線を遮蔽するようにする。各γ線シンチレータの配置は空間的に相互に一部重複し、時間的にも積分効果があるようにγ線計測を行うことにより、S/N比を改善する。、
【0013】
各γ線シンチレータの配置は空間的に相互に一部重複させ、時間的にも積分効果があるようにするためには、各γ線シンチレータの測定する地表の位置が正確であり、空間的、時間的積分効果が適切であることが必要がある。このため、測定精度を上げるために飛行経路をたとえば地表から等高度、等間隔に設定し、あるいはたとえば精密に計測する必要のある地域については飛行経路を地表からより低い等高度、より狭い等間隔に設定し、計画した飛行経路を正確に飛行することが不可欠である。
【0014】
この目的で、飛行経路を事前に地図上で計画策定し、航空機搭載の飛行管制γ線データ計測システムに飛行管制計測制御データとして出力し、DGPSにより位置をリアルタイムで高精度に計測し、計画航路から逸脱しないようにリアルタイムでパイロットに飛行指示できる飛行管制システムを具備する。さらに複数のγ線シンチレータより連続的に正確な位置で測定データを取得し、DGPSより取得した緯度経度データ、測定時刻とともに自動記録する。
【0015】
軽飛行機は姿勢に擾乱があり、測定中もピッチ、ヨー(前後左右傾き)が最大5度は変動する。また機首方向は進行方向から20度前後ずれることがある。この擾乱により各γ線シンチレータの測定値が地表のどの部分に対応するかの対応付けに誤差が生じることとなるので、これを補正する為に航空機機体の直下方向データを自動で継続的に取得し、測定時のγ線シンチレータ集合体の姿勢を計出し、測定後に複数のγ線シンチレータ測定値の指向方向と地図上の中心位置を自動較正して放射線線量の位置精度を確保する。測定時のγ線シンチレータ集合体の姿勢を計出する替わりに、γ線シンチレータ集合体を機体に設置した安定プラットフォーム上に固定することにより一定姿勢を維持させても良い。
【0016】
以上の方策により機上で測定記録した各γ線シンチレータ測定データと地図上の位置は正確に地図上に対応付けられるので、地図上の5〜50mの小領域に対してγ線シンチレータ測定値の時間的および空間的に積分を行い、γ線シンチレータ測定値の感度を向上させ、S/N比を改善する。このように較正したγ線シンチレータ測定値を用いて地図上に放射能量分布データとして表示する。このように放射能量分布を地図と対応させることにより、指定した緯度経度に対して、放射能量を表示することも可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、航空機により広範囲な地域に対して地上に立ち入ることなしにγ線線量分布を高速に計測することができるので、放射能汚染地域と汚染の程度を地図上に分布として呈示できる。このことにより、汚染されていない地域を示すこともできる。本発明になる放射能量分布計測方法はγ線線量分布を遠隔に高速に測定できる為、測定にあたるパイロットなどの被ばく線量を削減する安全面の効果もある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明を行なう。なお、本発明は以下の説明に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々に変形を加えて実施することが可能である。
本願発明者は原子力発電所事故等により放射能汚染された地表の放射能量分布情報生成装置の実現において、長時間かけて地表を広範囲に計測することが測定者の放射線被曝を削減する目的から困難であり最大の障壁となること、さらに放射能災害を防止する為にも迅速に地表の放射能量分布情報を得る必要があること認識した。一方、地表放射能量分布を測定する場合、γ線シンチレータを用いることが広く行われているが、遠隔から測定する場合には放射線源の位置を特定する為に指向性を絞る必要があるが、指向性を絞ると開口部へ入射する光子数が減少して感度が下がることになる。一般には、このような場合には、γ線シンチレータを一定時間固定し入射光子数を増大させる方法をとるが、航空機にγ線シンチレータを搭載して遠隔計測する場合にはγ線シンチレータを固定することはできず、この方法を採用することができない。この結果、レンス゛のような集光手段を欠いているγ線計測においては、航空機による遠隔測定でγ線量分布計測する場合には十分な感度が得られなく、感度の制約から十分な分解能を得る手段を欠いていることを認識するに至った。
【0019】
このため、本願発明者はγ線シンチレータの指向性をあげると同時に、空間的積分効果すなわちち、複数の一部重複しながら異なる地表領域を放射状に計測する複数のγ線シンチレータを同期して計測すると同時に、同一のγ線シンチレータに測定対象地表地域を一部重複させながら一定時間周期で連続して進行方向に計測していく方式を採用し、これらの計測数値について、対象地表地域位置を正確に計測した上で積分することにより計測感度を向上させ、S/N比を向上させることを着想した。
【0020】
γ線シンチレータの指向性をあげる為には、鉛の遮蔽体をホーン状(ラッパ状)に整形し、ヨウ化ナトリウム(NaI)結晶の前面開口部に設置し、側面と背面も鉛で遮蔽して側面と背後からの宇宙線由来等の環境放射線が測定されることを遮蔽して防ぐ。また、γ線シンチレータ測定値を正確に積分する為には、複数のγ線シンチレータの計測時の位置と測定方向が計画通りに正確に求められていなくてはならない。
【0021】
このため、航空機の飛行航路の設定には、γ線シンチレータ測定値の積分効果が十分得られるような高度と航路間隔を地図上で設定する。γ線シンチレータ集合体は指向性が航空機直下に対して進行方向に直角に、鉛直方向を中心として放射状、扇状に広がるようにする。この場合、隣接する航路とは地表での測定領域(フットプリントという)が一部重複するように航路と飛行高度を設定して地表の計測漏れが生じないようにし、あわせてγ線計測値に積分効果が出るようにする。
【0022】
γ線シンチレータは最短でも、0.5〜1秒間、入射光子を積分する必要があり、航空機で移動しながら計測せざるを得ない。γ線シンチレータの地表における測定範囲(フットプリントという)は航空機の進行方向に0.5〜1秒間の飛行距離ずつずれながら、重複して計測されていく。0.5〜1秒間ごとにγ線シンチレータより測定値を読み出し記憶装置に位置と方位、時刻とともに記憶する。
【0023】
全てのγ線シンチレータの測定値は地図上で正確に積分されなくてはならないので、飛行管制システムによりDGPSで航空機位置を正確に把握し、予め予定された航路に沿って飛行するようにパイロットに操縦指示を行う。γ線データ自動計測システムは航路上で予め決められた点に最も近接したときに自動的にγ線データ計測値を位置とγ線シンチレータ集合体方位、時刻とともに記憶する。
【0024】
予め決められた航路に沿って飛行し、予め決められた点でγ線データ計測値を付随データとともに全てを取得し記憶し終わった後、測定位置。測定方向を正確に特定し、各γ線シンチレータ開口特性からγ線データ計測値が地表のどの部分に該当するかを計出し、全てのγ線データ計測値に対して地表位置に対応して積分を行うことにより、地表でのγ線量分布を掲出する方法を考案した。
【0025】
図1は、本実施形態における放射能量分布情報生成装置の全体構成を概略的に示す図である。計測航路設定システム100は、上空より放射能量分布を測定しようとする地域が確定すると、計測の為の航路を設定するシステムであり、飛行経路上でのγ線シンチレータによる計測点を緯度、経度、高度により規定し、計測点の連鎖として飛行経路を規定して、放射線データ取得計画ファイル101として生成出力する。計測航路設定システム100は航空機に搭載する必要はなく、地上で公然実施されているGIS(地理情報システム)を用いて航路を設定しその結果を出力すればよい。図2は地図上に航路を設定した例であり、航路は相互に平行な直線であることが飛行姿勢の安定化と、計測データの正確な積分のために望ましい。計測航路設定システム100を地上システムとして実現する場合には、航空機上で飛行とデータ取得を制御する飛行管制・γ線データ自動計測システム102にたとえばUSBメモリに、放射線データ取得計画ファイル101を記録して入力する。
【0026】
飛行管制・γ線データ自動計測システム102は放射線データ取得計画ファイル101に基き
航空機上で航空機の飛行管制を行い、所定の航路上の所定の計測点でγ線シンチレータによる計測を行い、計測情報一次ファイル 103として、γ線データ計測値104、DGPS計測値 105、計測時刻 106、センサ姿勢計測情報107を記憶する。
【0027】
γ線データ較正・分布計算システム110は、飛行管制・γ線データ自動計測システム102の全ての計測後、地上で計測情報一次ファイル 103の内容に基いて地表の放射能量分布113を詳細計算するシステムである。γ線シンチレータ開口特性データ 260は測定器の指向性を記述し、Geoidファイル112はDGPS計測値 105を補正し、DEMファイル 111は地表の起伏に対応して、γ線シンチレータ開口特性データ 260に対応した地表でのγ線シンチレータのフットプリントを正確に求める。このようにして補正されたフットプリントデータを積分して放射能量分布113を計出し、グラフィックユーザインターフェイスシステム115により地図上に、公然実施されているGISソフトにより放射線量をたとえば色分けして表示する。放射能量分布113を公然実施されているインターネット116を介してユーザ 117の閲覧に供することができる。
【0028】
図3は、図1に示す放射能量分布情報生成装置おける飛行管制・γ線データ自動測システムのデータ取得の概念を示す図であり、航空機 120が、飛行経路 121に沿って、配置された計測ポイント 122でγ線シンチレータによる計測を行う。γ線シンチレータの特性から一定時間入射する光子を積分計測する必要があるので、計測ポイント 122では前回の計測ポイントからの積分データを読み出し、γ線シンチレータの蓄積値をクリアする処理を行う。航空機 120に搭載されている複数のγ線シンチレータはγ線シンチレータの中心軸方向 123に指向性を持たせる。各γ線シンチレータの地上での測定範囲は総合するとγ線シンチレータのフットプリント 124に示すようになり、航空機120の進行方向 125に時間とともに歩進する。
【0029】
図4は航空機としてヘリコプターを使用した例であって、吊下索 132にγ線センサ集合体 130を吊下することにより軽飛行機よりより低速に、地表に近い測定ができる。軽飛行機の場合は航空機の床に固定するか、あるいは公然実施されている姿勢安定化装置を使うことによって γ線センサ集合体 130の指向方向を安定化させることができるが、ヘリコプタで吊下する場合にはγ線センサ集合体 130 を安定化装置131に固定して吊下する必要がある。
図5は(0021)から(0026)の内容を機能フロー図で記述したものである。
【0030】
図6は本発明になる放射能量分布情報生成装置の飛行管制・γ線データ自動計測システム
102で使用するγ線シンチレータの構造および遮蔽構造を示すものである。図6(b)はγ線シンチレータの軸方向断面図であり、γ線シンチレータ中心軸 161に対して回転対称の形状を有する。NaI 156は円筒形のヨウ化ナトリウムの結晶を軸に直角な横方向から見たものであり、長さ3インチ、直径3インチのものが最も一般的に使用されるが、感度を上げるためにはより大型の結晶を使用する。光電子検出計数部 157は、NaI 156内に図6(b)上方より入射したγ線光子による発光を光電子倍増管で増幅し計数する装置で、NaI 156への入射光子数とγ線エネルギースペクトルを計数する、γ線シンチレータは公然実施され商品として販売されている。

【0031】
図6(b)において、指向性用遮蔽体159、側面遮蔽体158、および背面遮蔽体160の材質は鉛であり、γ線を遮蔽する目的でγ線シンチレータ 155を取り囲むように設置する。γ線に対する十分な遮蔽効果を持たせる為には、厚さを5cm以上とすることが望ましい。指向性用遮蔽体159は、ラッパ上の形状を有し、OA、OBよりなる円錐状の開口部を形成し、γ線シンチレータ中心軸 161を中心としたγ線感度指向性を持たせる。図6(a)はγ線シンチレータの軸方向感度指向性を示す図であり、図6(b)の断面図に対応する。指向性用遮蔽体159の存在により、OA、OBで囲まれる鋭角方向に指向特性162に示す感度指向性を持たせることができる。OA、OBで囲まれる鈍角方向の指向特性162が0でないのは、指向性用遮蔽体159の長さが有限であり指向性をOA、OBで囲まれる鋭角方向に限定できない為である。
【0032】
図7は図6のγ線シンチレータ155を複数、扇状に配置して構成したγ線シンチレータ集合体130の構成図である。図7(a)は、鉛直上方より見たγ線シンチレータ配置図であり、図7(b)は、図7(a)のAB軸を水平方向から見た図である。図3に示すγ線シンチレータの中心軸方向 123とγ線シンチレータのフットプリント 124を実現するためにγ線シンチレータを配置したものが図7である。図6に示すγ線シンチレータ 155 と周囲の遮蔽体を、γ線シンチレータ1 170、γ線シンチレータ2 171、γ線シンチレータ3 172、γ線シンチレータ4 173、およびγ線シンチレータ5 174に示すように、γ線シンチレータ3 中心軸 177 を扇の中心軸OCとして、左右対称に配置する。
【0033】
γ線シンチレータ1〜5 170〜174は、その各々の中心軸であるγ線シンチレータ1〜5 中心軸 175〜179をの左右に、γ線シンチレータ3 中心軸 177 と成す角がそれぞれγ線シンチレータ1,2偏角180,181およびγ線シンチレータ4,5偏角182,183となるように配置する。この放射状に配置する目的は、図3および図9のγ線シンチレータのフットプリント 124を地表で実現することが目的であるので、図7(a)においてγ線シンチレータ1〜5 170〜174が直線AB上に一列に並ぶことは必須要件ではなく、スペースが許さなければ図20(b)〜(c)のように、AB軸をAB軸とAABB軸の2列に分解し、さらに直下方向に指向性のあるγ線シンチレータ3 172を中央に配置するように変形しても良い。また、γ線シンチレータ1〜5
中心軸 175〜179が偏角中心O 184の1点に収束することを要しない。また、γ線シンチレータの数は5に限定されるものではなく、重量とスペースの許す範囲で増減させることができる。目的はγ線シンチレータのフットプリント 124の形状を地表放射能量分布を計出する為に行う後述のγ線測定値の地表における積分演算に適したように設定することである。
【0034】
γ線シンチレータのフットプリント 124の形状は地表放射能分布を掲出する為に行う後述のγ線測定値の地表における積分演算に適したように設定することである。図21の(b)(c)(d)に示すのは図6のγ線シンチレータの遮蔽体の変形例である。図5のγ線シンチレータ遮蔽体構造は図20では、(e)に対応する。すなわち、指向性用遮蔽体 159は円柱形状のNaI156の軸方向に回転対称であるが、かかる形状の指向性により地表に形成されるフットプリント(感度が高く、γ線データが測定できる領域)は航空機120の鉛直直下方向を除いて円とはならず、直下点から遠距離になるにつれ拡大する長円の歪んだ形状となる。図4および図9の測定方向 152に沿って各γ線シンチレータのフットプリントを地表放射能量分布を計出する為に行う後述のγ線測定値の地表における積分演算に適したようにするため、指向性用遮蔽体 159を変形した例が図21(b)(c)(d)である。
【0035】
図21(b)(c)(d)(e)は図21(a)γ線シンチレータ軸方向断面図に示されるγ線シンチレータおよび遮蔽体を開口部である上方より見た図である。図21(b)の直線AbBb,図21(c)の直線AcBc、および図21の(d))直線AdBに沿った横方向断面図が図21(a)γ線シンチレータ軸方向断面図となる。図21(e)以外はNaI156の軸方向に回転対称ではない。図21(d)は航空機120の鉛直直下点から計測方向 152にオフナディア角があるフットプリントが地表上で円となるように計測方向 152の指向性を圧縮したものである。直線CDででオフナディア角が大きくなるほど指向性は細くなるが、フットプリントの形状はオフナディア角が大きくなっても円を保つことができる。
【0036】
図21(c)は航空機120の鉛直直下点でのフットプリントを正方形にする為の指向性用遮蔽体 159をつけたγ線シンチレータを上方より見た図である。フットプリントを矩形にする場合も、オフナディア角が大きくなるとフットプリントが広がる。この場合も、指向性用遮蔽体 159をつけたγ線シンチレータを上方より見た図を図21(b)のようにすると、フットプリントの形状はオフナディア角が大きくなっても矩形を保つことができる。
【0037】
図7はγ線シンチレータを扇状に配置したが、各γ線シンチレータを偏角中心O 184から等距離に置く必要はない。図8は、γ線シンチレータ1〜5 170〜174の下面を平面CDにそろえた構成である。遮蔽体の鉛は重量物であるので、下面を平面上にそろえたほうが支持構造が軽量化できる。γ線は透過力が強く航空機下面を容易に透過するので、平面CDは航空機床面でよく、特に床面に撮影用の穴を必要としない。
【0038】
図9は、航空機120による飛行管制・γ線データ自動計測システム102の航路および計測ポイントの設定例を示したものである。図9(b)にて計測ポイント 122の設定例を示している。飛行経路121は空中に計測ポイント 122の網目を構成するために等間隔で平行な飛行航路121を、図9(b)において点線で結んであるようにUターンして往復しながら飛行する。この間、計測ポイント 122でガンマ線測定データ取得を行う。計測ポイント 122の相互間隔は、γ線シンチレータの感度と地表での放射能量分布の空間分解能要求値により決まる。すなわちγ線シンチレータは0.5秒から1秒間程度、入射光子を積分計測することが望ましいので、ガンマ線測定データ取得を行う計測ポイント 122は秒速約50mの場合、約20mから100m間隔に設定する。航路の高度は、フットプリントの大きさを半径100mに設定するならば、図9(a)のγ線シンチレータのフットプリント 124の最外縁部が相互に半分程度重複することが積分の一様化のため好ましいので、航路間隔は200mから500mとなる。
【0039】
図9(a)は、図9(b)の各計測ポイント
122におけるフットプリントを拡大表示したものである。γ線シンチレータのフットプリント 124は各γ線シンチレータごとにγ線シンチレータ
1の測定範囲(フットプリント)185、γ線シンチレータ 2の測定範囲(フットプリント)186、γ線シンチレータ 3の測定範囲(フットプリント)187、γ線シンチレータ
4の測定範囲(フットプリント)188、および、γ線シンチレータ 5の測定範囲(フットプリント)189を重ね合わせたものである。計測ポイント 122は各γ線シンチレータより測定データを取り込み記憶する位置であり、各γ線シンチレータは前回計測ポイント 122以降、入射ガンマ線を積分計測しているので、各γ線シンチレータの計測値は積分区間
127での総和となる。測定値を積分して感度を向上させると同時に空間分解能を演算により向上させるには、各γ線シンチレータのフットプリントを図9(a)のように相互に重複させることが好ましい。計測ポイント 122で得られる測定値は積分区間 127の積分値であるから、各γ線シンチレータのフットプリントは飛行経路 121の進行方向に積分区間 127の長さだけ長くなったものとなる。
【0040】
図10は飛行管制・γ線データ自動計測システム102の構成例を示した図である。飛行管制・γ線データ自動計測システム102は、フライトナビゲーションシステム部225とデータ取得記録システム部226とにより構成される。フライトナビゲーションシステム部225は図9(b)で規定される計測ポイント122に航空機120を飛行経路121に沿って誘導するための装置であり、DGPS210より航空機位置データが周期的に得られる。航空機の姿勢は姿勢センサ 223により姿勢取得コマンドにより姿勢較正用データとしてピッチ、ヨー、ロール、時刻を含むデータが得られる。(姿勢取得コマンドおよび姿勢較正用データ
224) 姿勢センサ 223はジャイロなどの慣性センサを用いるのが最も一般的であるが、航空機 120は直線航路をほぼ一定姿勢で飛行するので、空撮カメラ用床穴 219より機体下方の画像をデータ取得時に撮影し、地図と比較してDGPS位置データとあわせて写真測量により姿勢較正用データを求めることもできる。航空機の姿勢と、航空機に対するγ線シンチレータの相対的な位置、向きから、各γ線シンチレータの姿勢の情報を計算することができる。
【0041】
フライトナビゲーションシステム部225の機能は、図11の放射線データ取得計画ファイル 101
の内容に従い、図10の飛行管制・γ線データ自動計測システム102のフライトナビゲーションシステム部の図13の処理フローによって図12(b)のハ゜イロット用LED進路指示器 200によってパイロットを誘導するものである。フライトナビゲーションシステム自体は既に公然実施されていて何ら新規性はないかもしれないが、本発明の目的を実現するために計測ポイント 122に効率的に正確に航空機を誘導する部分が本発明に関係する部分である。まず飛行前に放射線量データを取得する地域を決定する。地図上でデータ取得範囲を決定し、飛行プランを策定する。飛行プランは飛行航路121を航空地図上で設定することによって行われる。図2はその実施例である。
【0042】
計測ポイント 122は本発明の目的を達成するように高密度な網目状に地表から50m以上2500m以下、好ましくは300m以上500m以下の範囲の高さで設定するのがよい。その設定の結果に基づき飛行経路121を平行線で構成されるように設定する。各直線部分に図11の放射線データ取得計画ファイル101に示される航路No.を割り振り、航路ごとに全体として網目を構成するように計測ポイント座標1〜nを割付け、各航路の開始座標と終了座標、さらにその間の計測ポイント数と各計測ポイント座標を緯度経度および高度で設定する。このようにして図11の放射線量データ取得計画ファイル 101が構築される。該放射線量データ取得計画ファイル101の構築に関わるグラフィックユーザインターフェイスは地図情報システムとして実施することができる。
【0043】
フライトナビゲーションシステム部225の機能は図13に記載の飛行管制・γ線データ自動計測システム102のフライトナビゲーションシステム部225の処理フローによって示される。処理ブロック220で放射線量データ取得計画ファイル101に登録されている航路No.の中から飛行予定の航路No.についてすべての計測が終了するまで図12(b)に示される表示を順次に行う。指定された航路No.には開始座標があるので、処理ブロック221で該航路NO.を開始するためにたとえば、航路開始点の現在位置からの方位、距離、高度差、航路進行方向を図12(b)の数値表示窓1〜4 202〜205に表示して航路入り口までのガイダンスを行い、航路を開始させる。自動測定を行うには、処理ブロック221で規定された条件を一定の誤差範囲、たとえば位置誤差で10mから30m以下の精度、飛行方向誤差で5°以下の精度で満足するのが好ましい。もし、満足しない場合には再度飛行航路をやり直してもよい。やり直す場合には、処理ブロック223で処理ブロック221のガイダンスを再度行う。
【0044】
処理ブロック222の条件を満足した場合には処理ブロック223で選択された航路No.の直近の計測ポイントのγ線計測データ取得を行う。処理ブロック224でγ線計測の付随データ(位置、時刻、姿勢)を取得し記憶する。さらに処理ブロック225で計測データと付随データを図14記載の計測情報一次ファイル 103に転送する。処理ブロック221から225までの処理は当該航路No.の終了計測ポイントないし、航路離脱まで順次繰り返し処理する。
【0045】
処理ブロック221から225までの処理と航空機の運動の関係を図示したものが、図12(a)である。飛行航路121に対して計測ポイント 122が1〜4の数値で示されている。航空機位置 150で示される点に航空機があると、1の数値で示される計測ポイント の計測許容範囲
193に近接中である。図12(b)の航空機進路偏差表示器201はLEDを並べた表示器で、LED中心表示器 206、LED左偏差表示部分 207およびLED右偏差表示部分
208より構成される。
【0046】
航空機位置 150が飛行航路 121の近傍(たとえば5m以内)の場合はLED中心表示器206が点灯し、飛行航路 121の右側に外れている場合は、LED右偏差表示部分 208 が偏差が拡大するにしたがってより右側のLEDが点灯する。LEDの点灯は中心から外側に向かって5〜10m、10〜20m、20〜30m、30〜40m、50〜70m、70〜100m、100〜150m、150〜200m、200m〜などと決めておけばよい。航路に対して航空機位置150が左側に偏差している場合は、LED左偏差表示部分 207 を同様に点灯させる。パイロットは航空機進路偏差表示器201を見ながら航路からの逸脱を修正することにより、図12(a)で各計測ポイント 122で計測許容範囲 193を通過させることができる。航空機位置 150はDGPS 210によりリアルタイムで計測されているから各計測ポイントに再接近した時点で各γ線シンチレータより測定値を読み出し、同時に測定値の積算をリセットする。以下、全ての計測ポイントが終了するまで繰り返して実施する。
【0047】
つぎに図10を参照し、データ取得記録システム部226につき記述する。図10において、航空機120には機体下方に航空写真機設置用の航空機床穴219がある。γ線シンチレータ集合体130を設置する場合には、この穴から機外に張り出さないように設置するのが好ましい。なおγ線自体は透過力が大きいので、γ線シンチレータはこの穴に関係なく床面に設置しても良いが、姿勢センサ 223として直下撮影用のカメラを使用する場合には、カメラ部分をこの穴から機外に出ないように設置する。図10のγ線シンチレータ集合体130を安定プラットフォームに設置し一定の姿勢を保つことも可能である。これの場合は航空機120の姿勢に拘らずγ線シンチレータ集合体130が常に地上直下に指向され、かつ方位が規定方向に固定される。なお、航空機のピッチ・ロールを常時5°以内に操縦で保てるのであれば安定プラットフォーム装置395を省略してもよい。
【0048】
データ取得記録システム部226には航空機120の姿勢を観測する姿勢センサ 223と、γ線シンチレータの制御と計測データ処理のためのプログラムを含むγ線データ自動計測制御システム212と、γ線計測データ214を含む各種データを記憶する大容量ディスク装置などのメモリ装置で構成される計測情報一次ファイル 103と、γ線シンチレータ集合体130を含む。γ線シンチレータ集合体130に対する制御コマンド 218は、フライトナビゲーションシステム部 225の飛行管制PC 212がDGPS
210による位置計測値と放射線データ取得計画ファイル 101内の計測ポイント位置を比較して、計測ポイントであると判断した場合に指令を出す。この結果取得されたデータは取得計測データ 217としてγ線データ自動計測制御システム212により取得され、計測情報一次ファイル 103 に付随データとともに格納される。
航空機120の位置計測用のDGPS210のアンテナは機外上方への視界の開ける場所に設置する。
【0049】
図14は、図13の処理ブロック225に示す計測情報一次ファイル103の構造を示したものである。計測情報一次ファイル103のデータ構造は、計測ポイント別データ 227として、計測ポイントごとに構造化される。計測ポイントの集合である計測ポイント別データ 227は、さらに上位構造として航路Noごとにグループ化される。図14に示されるように各計測ポイントごとに測定データ等が記憶される。航空機データ部分 222は計測ポイントごとに記録される計測位置(位置(緯度・経度・高度) 262)と機体姿勢ないしはγ線センサ集合体 130の姿勢データ 263および、DGPSにより位置計測を行った時刻をUTCで計測日時刻 261として記録する。測定データID 231は通常は、航路Noと航路内での計測ポイントNoを含む識別番号である。
【0050】
γ線シンチレータ別データ 228は、航空機データ部分 222に示される測定位置における各γ線シンチレータの測定値をγ線シンチレータ別に記録したものである。測定データヘッダ部分 220は各γ線シンチレータに対するデータを示し、γ線シンチレータ ID 230はγ線シンチレータの識別番号であり、スペクトル数 232は、γ線シンチレータの測定で得られるγ線スペクトル数を規定する。計測開始日時刻 233は個別のγ線シンチレータが計測を開始した時刻で、計測終了日時刻 234は、個別のγ線シンチレータが計測を開始した時刻であり、計測日時刻 261とは計算機処理時間によりms単位で異なることがある。γ線データ部分 221は、γ線のエネルギースペクトルを区分してスペクトルバンド毎に計数したカウント値と、全てのスペクトルバンドのカウント値を総和した総カウント数 246より構成される。
【0051】
以上、図1の飛行管制・γ線データ自動計測システム102までを記述したが、以下、γ線データ較正・分布計算システム110について記述する。γ線データ較正・分布計算システム110の機能は、飛行管制・γ線データ自動計測システム102で得られた計測情報一次ファイル 103から、放射能量分布113を計出する。図15は処理内容を示したものである。処理ブロック252、253では、図14記載の計測ポイント別データ 227γ線シンチレータ別データ 228の全てについて、
計測時間 235
計測開始点位置(緯度,経度,高度) 236
計測開始点姿勢(ピッチ,ヨー,ロール) 237
計測開始点正規化中心軸ベクトル t(X Y Z) 238
計測開始点フレーム回転角 239
計測開始点中心軸地表距離 240
計測終了点位置(緯度,経度,高度) 241
計測終了点姿勢(ピッチ,ヨー,ロール) 242
計測終了点正規化中心軸ベクトル t(X Y Z) 243
計測終了点フレーム回転角 244
計測終了点中心軸地表距離 245
を計出する。計出方法を図17を参照して説明する。
【0052】
各γ線シンチレータから測定データを読み出すと同時に測定カウントをリセットして測定データのカウントを再開するので、カウント計測時間 235は前回の計測データ読み出し時刻と今回の計測データ読み出し時刻の差が計測時間 235となる。航空機データ部分 222の位置(緯度・経度・高度) 262の時系列より計測開始日時刻 233および計測終了日時刻 234を内挿計算することにより 計測開始点位置(緯度,経度,高度) 236と 計測終了点位置(緯度,経度,高度) 241を計算することができる。同様に、航空機データ部分 222の姿勢データ 263の時系列より計測開始日時刻 233と計測終了日時刻 234の航空機姿勢が求められ、各γ線シンチレータのγ線シンチレータ1〜5偏角 180〜183より各γ線シンチレータの対地姿勢が計出でき、 計測開始点正規化中心軸ベクトル t(X Y Z) 238計測開始点フレーム回転角 239計測終了点正規化中心軸ベクトル t(X Y Z) 243計測終了点フレーム回転角 244を求めることができる。これらの計算は、quaternion(四元数)を用いて教科書的な手法で計算できる。
【0053】
計測開始点位置 236、および計測終了点位置 241をDEMファイル 111とGeoidファイル 112で補正することにより地表からの高度が求まるから、計測開始点正規化中心ベクトル 238と計測終了点正規化中心軸ベクトル 243がTerrain 265と交わる点をDEMファイル 111による補正をして求める。Terrain 265と交わる点の位置より、 計測開始点中心軸地表距離 240および計測終了点中心軸地表距離 245を求めることができる。、
【0054】
図18はγ線シンチレータの開口特性を示した図である。γ線シンチレータの感度は図6のNaI156 結晶に入射するγ線光子が結晶内部で発光することにより計測されるので、指向性用遮蔽体 159 とNaI 156 の相対的位置関係と、NaI 156の幾何諸元とNaI 156のγ線吸収特性より決まる。図6の形状のγ線シンチレータは航空機直下点を中心に図18(a)に示すγ線シンチレータ3の測定範囲 187 をもつ。γ線シンチレータ3の測定範囲 187は地表セル 264により区分することができて、その各々について感度特性を定義できる。γ線シンチレータ開口特性データ 260 をγ線シンチレータ3の測定範囲 187の直径方向で見たものが図18(d)に示すγ線シンチレータ開口特性データ 260 の例である。中央部がやや低くなっているのは、結晶が円柱形をしていることに由来する。図16(b)の開口特性データ260は計算機に記憶させる為にテーブル形式で記述したものである。
【0055】
航空機からの飛行しながらの実測では、たとえば直下方向を向いているγ線シンチレータ3の測定範囲 187 が計測中に計測開始終了間の航空機移動量 268 だけ移動する。図18(b)で計測開始点
γ線シンチレータの測定範囲 266は計測時間中に計測開始終了間の航空機移動量 268 移動し、計測終了点 γ線シンチレータの測定範囲 267に移動する。したがって、γ線シンチレータの測定中の測定範囲は図18(c)で示すように航空機の飛行方向に伸延した形状となる。図18(e)は計測開始終了間の航空機移動量 268を考慮した合成開口特性データ 269 であり、図18(c)の長径方向の特性を示した合成開口特性データ 269 である。この値は、γ線シンチレータ開口特性データ 260 を航空機移動方向に計測時間分積分することによって得られる。
【0056】
図15に戻り、処理ブロック254、255について説明する。図18の説明で各γ線シンチレータの開口特性は求まっているから、地表への投影(フットプリント)を各計測点の各γ線シンチレータに対して、計測情報二次ファイル108の情報を用いて計算する。ここで合成開口特性データ 269 を計測終了点に対応するものと定義しておく。計測終了点位置 241計測終了点正規化中心軸ベクトル 243計測終了点フレーム回転角 244計測終了点中心軸地表距離 とDEMファイル 111より図18の合成開口特性データ 269から、3次元空間の投影演算により、各計測点の各γ線シンチレータの開口特性の地表への投影が、フットプリントに含まれる各地表セル 264に対する値として求められる。処理ブロック254は上記演算を全てのγ線シンチレータ計測値に対して行うことを意味する。
【0057】
図15の処理ブロック256の処理は、処理ブロック254,255で求めた各計測ポイント、各γ線シンチレータに対する合成開口特性データ 269の地表への投影値に対して 当該計測ポイント、、γ線シンチレータ測定値を乗じ、計測時間で正規化した上で全てを積分することである。
より、分かりやすく説明する為に図19を用いて説明する。
飛行経路 121に沿い飛行する間、各γ線シンチレータは、γ線シンチレータ 1〜5の測定範囲185〜189に対してそれぞれの計測データを得る。飛行経路 121に飛行する間、相互にγ線シンチレータ
1〜5の測定範囲185〜189を重複させながら図19に示すように計測を繰り返す。得られる計測値は、処理ブロック255とその説明で示したように、合成開口特性データ 269
の実際の地表への投影値と計測データを乗じ、各地表セル 264に配分されている。処理ブロック256の処理は図19で示すと、全ての計測ポイント、全てのγ線シンチレータ測定データを各地表セル 264に対して積分して、計測時間に対する正規化を行って放射能量分布を求めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の放射能量分布情報生成装置は、γ線シンチレータを複数用いたγ線シンチレータ集合体により放射能量分布を移動体から測定する装置として一般的に利用することができる。γ線シンチレータ集合体を搭載するフ゜ラットフォームは軽飛行機、ヘリコプター、あるいは無人飛行機でも良い。さらに、平面または曲面より離れて設置した走査機構であっても良い。さらに、センサとしてγ線シンチレータの例を示したが、レンス゛または反射鏡のような集光機構を用いることができない電磁波等の放射エネルギーの発生源の分布を求める技術として、医療用、検査用計測設備として一般的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の放射能量分布情報生成装置の全体構成を概略的に示す図である。
【図2】本発明の放射能量分布情報生成装置の計測航路設定システムの航路データ例
【図3】図1に示す放射能量分布情報生成装置おける飛行管制・γ線データ自動測システムのデータ取得の概念を示す図である。
【図4】図1に示す放射能量分布情報生成装置おける飛行管制・γ線データ自動計測システムのデータ取得のもう一つの概念を示す図である。
【図5】本発明の放射能量分布情報生成装置の機能構成を概略的に示す図である。
【図6】本発明のγ線シンチレータの構造について説明する図である。
【図7】本発明のγ線シンチレータ集合体の構造例について説明する図である。
【図8】本発明のγ線シンチレータ集合体のもう1つの構造例について説明する図である。
【図9】本発明の放射能量分布情報生成装置の航空機によるデータ取得の運用例について説明する図である。
【図10】本発明の放射能量分布情報生成装置の飛行管制・γ線データ自動計測システムの構成例を示す図である。
【図11】本発明の放射能量分布情報生成装置の放射線データ取得計画ファイルの構成例を示す図である。
【図12】本発明の放射能量分布情報生成装置の飛行管制・γ線データ自動計測システムの飛行管制の表示機器例を示す図である。
【図13】本発明の放射能量分布情報生成装置の飛行管制・γ線データ自動計測システムの処理フローを示す図である。。
【図14】本発明の放射能量分布情報生成装置の計測情報一次ファイルの構成例を示す図である。
【図15】本発明の放射能量分布情報生成装置のγ線データ較正・分布計算システムの処理フローを示す図である。。
【図16】本発明の放射能量分布情報生成装置の計測情報二次ファイルの構成例を示す図である。
【図17】本発明の放射能量分布情報生成装置のγ線シンチレータの地表計測動作を幾何的に図示したものである。
【図18】本発明の放射能量分布情報生成装置のγ線シンチレータの開口特性を説明する図である。
【図19】本発明の放射能量分布情報生成装置のγ線シンチレータ集合体によるデータ取得と放射能量分布を計出するための様態を示す図である。
【図20】本発明のγ線シンチレータ集合体の別の構造例について説明する図である
【図21】本発明のγ線シンチレータの構造について別の指向性用遮蔽体の構造を説明する図である。
【符号の説明】
【0060】
100 計測航路設定システム
101 放射線量データ取得計画ファイル
102 飛行管制・γ線データ自動計測システム
103 計測情報一次ファイル
104
γ線データ計測値
105 DGPS計測値
106 計測時刻
107
センサ姿勢計測情報
108
計測情報二次ファイル
110 γ線データ較正・分布計算システム
111 DEMファイル
112
Geoidファイル
113 放射線量分布
115 グラフィックユーザインターフェイスシステム
116
インターネット
117
ユーザ
120
航空機
121
飛行経路
122 計測ポイント
123 γ線シンチレータの中心軸方向
124
γ線シンチレータのフットプリント
125
進行方向
126
前回計測ポイント
127 積分区間
130 γ線シンチレータ集合体
131 安定化装置
132
吊下索
140〜142 機能ブロック
150 航空機位置
151 飛行航路間間隔
152 計測方向
155 γ線シンチレータ
156 NaI
157 光電子検出計数部
158 側面遮蔽体
159 指向性用遮蔽体
160 背面遮蔽体
161 γ線シンチレータ中心軸
162 指向特性
163 γ線シンチレータ垂直面
170 γ線シンチレータ1
171 γ線シンチレータ2
172 γ線シンチレータ3
173 γ線シンチレータ4
174 γ線シンチレータ5
175 γ線シンチレータ1 中心軸
176 γ線シンチレータ2 中心軸
177 γ線シンチレータ3 中心軸
178 γ線シンチレータ4 中心軸
179 γ線シンチレータ5 中心軸
180 γ線シンチレータ1偏角
181 γ線シンチレータ2偏角
182 γ線シンチレータ4偏角
183 γ線シンチレータ5偏角
184 偏角中心O
185 γ線シンチレータ1の測定範囲
186 γ線シンチレータ2の測定範囲
187 γ線シンチレータ3の測定範囲
188 γ線シンチレータ4の測定範囲
189 γ線シンチレータ5の測定範囲
190 航路No.1計測座標ファイル
191 航路No.2計測座標ファイル
192 航路No.m計測座標ファイル
193 計測許容範囲
200 ハ゜イロット用LED進路指示器
201 航空機進路偏差表示器
202〜205 数値表示窓1〜4
206 LED中心表示器
207 LED左偏差表示部分
208 LED右偏差表示部分
210 DGPS
211 飛行管制PC
212 γ線データ自動計測制御システム
213 位置データ
214 γ線計測データ
215 時刻データ
216 姿勢較正用データ
217 取得データ
218 制御コマンド
219 空撮カメラ用床穴
220 測定データヘッダ部分
221 γ線データ部分
222 航空機データ部分
223 姿勢センサ
224 姿勢取得コマンドおよび姿勢較正用データ
225 フライトナビゲーションシステム部
226 データ取得記録システム部
227 計測ポイント別データ
228 γ線シンチレータ別データ
230 γ線シンチレータ ID
231 測定データID
232 スペクトル数
233 計測開始日時刻
234 計測終了日時刻
235 計測時間
236 計測開始点位置(緯度,経度,高度)
237 計測開始点姿勢(ピッチ,ヨー,ロール)
238 計測開始点正規化中心軸ベクトル t(X Y Z)
239 計測開始点フレーム回転角
240 計測開始点中心軸地表距離
241 計測終了点位置(緯度,経度,高度)
242 計測終了点姿勢(ピッチ,ヨー,ロール)
243 計測終了点正規化中心軸ベクトル t(X Y Z)
244 計測終了点フレーム回転角
245 計測終了点中心軸地表距離
246 総カウント数
247 スペクトルバンド0カウント数
248 スペクトルバンド1カウント数
249 スペクトルバンド2カウント数
250 スペクトルバンド3カウント数
251 スペクトルバンドNカウント数
252〜257 機能ブロック
260 γ線シンチレータ開口特性データ
261 計測日時刻
262 位置(緯度・経度・高度)
263 姿勢データ
264 地表セル
265 Terrain
266 計測開始点 γ線シンチレータの測定範囲
267 計測終了点 γ線シンチレータの測定範囲
268 計測開始終了間の航空機移動量
269 合成開口特性データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線量計測装置により、地表上空の複数の計測位置それぞれにおいて、または地表上空の連続的に変化する計測位置に沿って複数の方向への、複数のサブ領域に分割される計測領域の計測を行い複数の計測情報を取得してメモリに記憶し、
前記複数の計測情報それぞれを前記メモリ記憶する際に、前記計測情報が取得された時の計測位置情報と計測方向情報と計測時刻を含む付随情報を前記計測情報に関連付けて前記メモリに記憶し、
前記メモリに記憶された前記計測情報に関連付けられた計測位置情報と計測方向情報と計測時刻を含む付随情報を参照して前記計測情報が取得されたときに計測されたサブ領域を特定し、
前記特定されたサブ領域に、前記計測情報と、前記計測位置情報と、前記計測方向情報とを関連付けてデータベースに記憶し、
前記データベースに記憶されている、前記サブ領域に関連付けられている計測情報を参照し、演算により地表の放射線量分布情報を生成する装置。
【請求項2】
前記放射線量計測装置は複数の方向を向く複数のガンマ線シンチレータを含み、 前記複数の計測位置それぞれにおいて、または連続的に変化する計測位置に沿って前記複数ガンマ線シンチレータが同時に計測を行ない複数の計測情報が取得されることを特徴とする請求項1に記載の放射線量分布情報生成装置。
【請求項3】
前記放射線量計測装置は飛翔物体に搭載され、前記複数のガンマ線シンチレータは、前記飛翔物体から鉛直方向を含む地表へ向かう複数の方向に向けられて計測を行なうことを特徴とする請求項2に記載の放射線量分布情報生成装置。
【請求項4】
前記飛翔体は、前記複数の計測位置を通過し、または連続的に変化する計測位置に沿って飛行ルートまたは飛行ルートからの偏差を表示するユーザインターフェースを備える航空機であることを特徴とする請求項2に記載の放射線量分布情報生成装置。
【請求項5】
前記飛翔物体が地表から50m以上2500m以下の高度で飛行している間に前記計測装置による計測を行なうことを特徴とする請求項2に記載の放射線量分布情報生成装置。
【請求項6】
前記複数のサブ領域のそれぞれのサブ領域に対して、そのサブ領域が前記複数のガンマ線シンチレータにより重複複数回計測し、該計測値をガンマ線シンチレータの開口特性と、計測位置と計測方向情報を用いて積分演算を行い地表の放射能量分布を計出する請求項6に記載の地表放射能量分布情報生成装置。
【請求項7】
上方から下方へ向かう軸の周囲に、前記軸の方向を向きかつ斜め下方に中心軸が向いている複数のγ線シンチレータを配置し、 前記複数のγ線シンチレータそれぞれの中心軸と前記軸とがなす角度が実質的に同一であることを特徴とする撮影装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−251918(P2012−251918A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125914(P2011−125914)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(708002816)小平アソシエイツ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】