説明

放熱シート及び該放熱シートの製造方法

【課題】発熱素子とヒートシンクの間に挿入して使用するカーボンナノチューブを使用した放熱シートの熱伝導性を向上させる。
【解決手段】シリコン基板1の上にカーボンナノチューブ4を成長させて形成したカーボンナノチューブの束の上に、ナノシリカ11を8〜70wt%で含有させたシート状の樹脂6を置き、これを加熱してカーボンナノチューブ4の隙間に含浸させた後に硬化してシート状のカーボンナノチューブ40を形成し、カーボンナノチューブ40の表面をアルカリ処理して樹脂6の表面にあるナノシリカ11を溶出させ、樹脂6の表面に現れた空孔12内にカーボンナノチューブ4の先端部を露出させることにより、カーボンナノチューブ4と発熱体との間の熱伝導性を良くした放熱シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は放熱シート及び該放熱シートの製造方法に関する。以下に説明される実施の形態では、実施例として放熱素子としてカーボンナノチューブを用いた放熱シート及び該放熱シートの製造方法が説明される。
【背景技術】
【0002】
シリコンを用いた大規模集積回路(LSI)に代表される半導体デバイスは、微細化により速度、消費電力の面などで性能向上が図られてきた。しかしながら、これらの半導体デバイスが動作する際に生じる熱が半導体デバイスの動作に影響し、最終的には半導体デバイスの破壊の原因になることがある。このため、パーソナルコンピュータの中央処理装置(CPU)には半導体デバイスの温度監視機能が付いており、半導体デバイスが一定の温度を超えるとCPUは動作を停止する。(非特許文献1参照)
【0003】
このようなことから、半導体デバイスの発生する熱を効率良く放熱するための方法が検討されている。この方法の1つとして、半導体デバイスに放熱フィンを備えた放熱部品であるヒートシンクを取り付けることが行われている。この場合、半導体デバイスとヒートシンクの間に、熱伝導性及び密着性の良い放熱シートを設けることが特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示の放熱シートは、金属製短繊維を抄造し、焼結した薄い金属繊維シートの多孔質の空間部分に、熱伝導性接着剤を含浸、充填したものである。これに対して、近年、高い熱伝導性を持つカーボンナノチューブ(CNT:Carbon Nano Tube)を利用した放熱シートの検討が進められている。カーボンナノチューブ(以後CNTと記す)は、炭素原子からなる材料である。
【0005】
ここで、図1(a)から図1(e)と図2(a)に示す断面図により、CNTを用いた放熱シートの製造方法の一例の関連技術を説明する。図1(a)は、放熱シートを製造するために用いるシリコン基板1を示している。シリコン基板1の上には二酸化シリコン膜2が形成されており、二酸化シリコン膜2の上に触媒(例えば鉄の薄膜)3がスパッタリング等で製膜されている。CNTはこの触媒3の上に設けられる。
【0006】
触媒3と二酸化シリコン膜2が形成されたシリコン基板1は図示しない成長炉の中に入れられ、図1(b)に示すように、成長炉内で触媒3が凝集し、そこからCNT4が、シリコン基板1に対して垂直な方向に成長される。CNT4は、基本的には一様な平面のグラファイトを丸めて円筒状にしたチューブ構造であり、その直径は0.4〜50nmであって、成長後の長さは数〜数百μm程度である。即ち、CNT4は、電子顕微鏡によって観察できる程度の極小のものである。従って、触媒3の上に成長したCNT4は肉眼では目視できないが、ここでは、チューブ構造のCNT4を1本の線で表して本数を減らし、各CNT4の間には隙間(CNTの密度は1平方センチメートルあたり109〜1010本程度なので隙間は140nm程度)があることを示すために、その間隔を実際よりも非常に大きく描いてある。
【0007】
CNT4が成長したシリコン基板1上には、CNT4が束になって存在する。CNT4が成長したシリコン基板1は成長炉から取り出され、図1(c)に示すようにCNT4の先端部に金薄膜5が蒸着される。次いでシート状の樹脂6がCNT4の上に置かれ、加熱されて樹脂6が溶かされ、溶けた樹脂6をCNT4の束の隙間に含浸させる。樹脂6を加熱によってCNT4の束の隙間に含浸させただけでは、樹脂6はCNT4の根元部までは含浸しない。そして、樹脂6が含浸したCNT4を冷却して硬化すると、CNT4の束は樹脂6によってシート状のCNT40になる。シート状のCNT40は、シリコン基板1から剥離して取り出される。シート状のCNT40を図1(d)に示す。
【0008】
シート状のCNT40は、図1(e)に示すように、発熱素子7とヒートシンク9で挟み込み、ボルト8で締め付けて加圧すると共に加熱する。樹脂6が含浸したシート状のCNT40を加圧・加熱することにより、余分な樹脂6が外部に排出され、図2(a)に示すように放熱シート10ができあがる。この状態では、CNT4の先端部が発熱素子7に接触し、CNT4の基部がヒートシンク4に接触し、発熱素子7で発生した熱は、CNT4を介してヒートシンク9に伝わり、発熱素子7が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−101004号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】日経PC on line「熱暴走」とは:パソコン関連用語の意味・解説 (http://pc.nikkeibp.co.jp/word/page/10117151/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
放熱シート10は、図2(a)に示したように、圧力を加えて発熱素子7とヒートシンク9の間に介在させ、発熱素子7で発生した熱をヒートシンク9に逃がしている。ところが、図2(b)に示すように、発熱素子7とヒートシンク9の間に介在させた放熱シート10において、樹脂6がCNT4の先端部に残っていると、伝熱性が悪くなり、冷却効率が低下するという問題点があった。即ち、樹脂6がCNT4の先端部に残ると、CNT4と放熱素子7が接触できず、全体として熱抵抗が増し、冷却効率が低下する問題点があった。そして、CNT4の両端面に接触抵抗として樹脂6が介在しない構造を可能にする材料選定や作製方法の最適化は困難であった。
【0012】
本発明者らは、CNT4を使用した放熱シート10を発熱素子7とヒートシンク9の間に設置する際に、圧力や温度(樹脂の硬化温度)を変えて検討したが、CNT4の先端部に樹脂6が残る問題点は解決できなかった。更に、CNT4に樹脂6を加熱して含浸させた後に、カッターでCNT4の先端部側の樹脂6を削り取る方法も試みたが、作業工数を考えると量産化に対して最適な方法ではなかった。従って、シート状のCNT40の製造後に、簡単にCNT4の先端部分の樹脂6を取り除く方法が求められていた。
【0013】
本出願は、CNTを使用した放熱シートにおいて、発熱素子とヒートシンクの間にこれを介在させて熱圧着する際に、簡単にCNTの先端部分の樹脂を削減することが可能な放熱シート及び該放熱シートの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本出願の放熱シートは、成長炉内でシリコン基板に対して垂直な方向にカーボンナノチューブを成長させて形成したカーボンナノチューブの束に、樹脂を加熱して含浸させた後に硬化させてシート状のカーボンナノチューブを形成し、これをシリコン基板から剥離して形成した放熱シートにおいて、樹脂には、所定の除去処理によって樹脂内から溶出させて樹脂内に空孔を形成可能なナノ微粒子を、8〜70wt%で含有させたことを特徴とする。
【0015】
本出願の放熱シートの製造方法の第1の形態は、シリコン基板の表面に触媒を成膜し、シリコン基板を成長炉に入れて、触媒の上に垂直方向に、カーボンナノチューブを成長させてカーボンナノチューブの束を作り、カーボンナノチューブの束の上にナノ微粒子を、8〜70wt%で含有させた樹脂を置き、樹脂を加熱してカーボンナノチューブの束に含浸させた後に冷却し、樹脂が含浸してシート状になったカーボンナノチューブの束を前記シリコン基板から剥離し、剥離したカーボンナノチューブのシートに対してナノ微粒子の除去処理を行って、カーボンナノチューブの表面近傍に位置するナノ微粒子を溶かし出して表面に空孔を形成し、樹脂表面に空孔が形成されたカーボンナノチューブのシートを発熱素子と放熱部材とで挟み込み、この状態で加熱すると共に、発熱素子と放熱部材との間に圧力を加えてカーボンナノチューブのシートを加熱圧縮して余分な樹脂を発熱素子と放熱部材との間から排出して、発熱素子と放熱部材との間に放熱シートを形成することを特徴とする。
【0016】
本出願の放熱シートの製造方法の第2の形態は、シリコン基板の表面に触媒を成膜し、シリコン基板を成長炉に入れて、触媒の上に垂直方向に、カーボンナノチューブを成長させてカーボンナノチューブの束を作り、カーボンナノチューブの束の上にナノ微粒子を、8〜70wt%で含有させた樹脂を置き、樹脂を加熱して前記カーボンナノチューブの束に含浸させた後に冷却し、樹脂が含浸して形成されたシート状のカーボンナノチューブを、シリコン基板を剥離して取り出し、シート状のカーボンナノチューブを、加熱しても樹脂と溶け合わない材料で作られた2枚の押圧板の間に挟んで加圧、加熱処理を行って余分な樹脂をシート状のカーボンナノチューブから排出し、加圧、加熱処理後に冷却して2枚の押圧板を取り外してシート状のカーボンナノチューブを取り出し、取り出したシート状のカーボンナノチューブにナノ微粒子の除去処理を施して、樹脂表面に含まれるナノ微粒子を溶かし出して樹脂表面に空孔が形成されたシート状のカーボンナノチューブを製造することを特徴とする。
【0017】
本出願の放熱シートの製造方法の第3の形態は、酸化膜付きシリコン基板の表面に触媒を成膜し、シリコン基板を成長炉に入れて、触媒の上に垂直方向に、カーボンナノチューブを成長させてカーボンナノチューブの束を作り、カーボンナノチューブの束の上にナノ微粒子を、8〜70wt%で含有させた樹脂を置き、樹脂を加熱してカーボンナノチューブの束に含浸させた後に冷却し、樹脂が含浸して形成されたシート状のCNTを、シリコン基板に設置したまま、シート状のカーボンナノチューブにナノ微粒子の除去処理を施して樹脂表面に含まれるナノ微粒子を溶かし出して樹脂表面に空孔を形成し、樹脂表面に空孔を形成されたシート状のカーボンナノチューブからシリコン基板を除去してシート状のカーボンナノチューブを製造することを特徴とする。
【0018】
本出願の放熱シートの製造方法の第4の形態は、シリコン基板の表面に触媒を成膜し、シリコン基板を成長炉に入れて、触媒の上に垂直方向に、カーボンナノチューブを成長させてカーボンナノチューブの束を作り、カーボンナノチューブの束の上にナノ微粒子を、8〜70wt%で含有させた樹脂を置き、樹脂を加熱してカーボンナノチューブの束に含浸させた後に冷却し、樹脂が含浸して形成されたシート状のカーボンナノチューブを、シリコン基板に設置したまま、シート状のカーボンナノチューブの表面にレジストを塗布してレジスト層を形成し、レジスト層が形成されたシート状のカーボンナノチューブの上に、電極形成部に孔が開けられたマスクを被せ、紫外線を照射してレジスト剥離部を形成し、紫外線照射後にマスクを除去したシート状のカーボンナノチューブに対して、レジストの溶解及びナノ微粒子の除去処理を施して前記レジスト剥離部内に露出する樹脂表面に含まれるナノ微粒子を溶かし出して樹脂表面に空孔を形成し、シート状のカーボンナノチューブに導電性金属を蒸着して金属蒸着部を形成する処理を行い、シート状のカーボンナノチューブからレジスト層を剥離すると共に、シリコン基板を除去してシート状のCNTを製造することを特徴とする。レジストの溶解は、アルカリ処理により行う。レジストの現像液は強アルカリ(例えば東京応化工業のNMD−W)であるので、これで樹脂内部のナノ微粒子が溶かし出す材料の樹脂を用いれば現像液で不要なレジストを溶かし、樹脂表面に含まれるナノ微粒子を溶かし出して樹脂表面に空孔を形成できる。所定のパターンにレジスト層を剥離すると、この所定のパターンのCNTに接続された電極を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)はCNT層を形成するための二酸化シリコン膜付きのシリコン基板の上に触媒を製膜した基板の構成を示す断面図、(b)は(a)に示した基板上に成長炉内でCNTを成長させた状態を示す断面図、(c)は基板上に成長させたCNTの先端部に金薄膜を施し、その上にシート状の樹脂を置く動作を示す断面図、(d)はCNTを成長させた基板を、樹脂が置かれた状態で加熱して樹脂をCNTに含浸させた後に基板を剥離した状態を示す断面図、(e)は(d)に示した樹脂が含浸したCNTを発熱素子とヒートシンクで挟み込んで余分な樹脂を加圧・加熱して外部に排出する工程を示す断面図である。
【図2】(a)は図1(e)に示した樹脂が含浸した状態のCNTを発熱素子とヒートシンクで挟み込んで加圧・加熱して余分な樹脂を外部に排出してCNTの先端部を発熱素子に接触させ、CNTの基部をヒートシンクに接触させた状態を示す断面図、(b)は(a)に示すB部の部分拡大断面図である。
【図3】本出願に係る放熱シートの製造方法の第1の実施例を示すものであり、(a)は表面にシリコン層と触媒層を形成したシリコン基板の断面図、(b)は(a)のシリコン基板上に成長炉内でCNTを成長させた状態を示す断面図、(c)はCNTが成長したシリコン基板を成長炉から取り出してCNTの先端部に金薄膜を施した後にナノ微粒子を含ませたシート状の樹脂をCNTの上に置く様子を示す断面図、(d)は樹脂が載置されたCNTを加熱して樹脂をCNTの隙間に含浸させ、基板を除去した状態を示す断面図、(e)は(d)に示した状態のシート状のCNTにアルカリ処理を施して樹脂表面に含まれるナノ微粒子溶かし出して樹脂表面に空孔を形成した状態を示す断面図である。
【図4】(a)は図3(e)に示したシート状のCNTを発熱素子とヒートシンクの間に取り付けてボルトで固定した状態を示す断面図、(b)は(a)の状態で加圧と加熱とを行い、余分な樹脂をシート状のCNTから排出した状態を示す断面図、(c)は(b)のC部の部分拡大断面図である。
【図5】(a)は樹脂を含浸させた後の2本のCNT間に存在するナノ微粒子の状態の一例を示す説明図、(b)は樹脂中のナノ微粒子の体積比の一例を示す斜視図である。
【図6】(a)は樹脂中に粒径の異なるナノ微粒子を混入した場合の図3(c)の工程の変形実施例を示す断面図、(b)は(a)に示した樹脂が載置されたCNTを加熱して樹脂をCNTの隙間にしみ込ませた時の、樹脂中の粒径の異なるナノ微粒子の状態を説明する説明図である。
【図7】本出願に係る放熱シートの製造方法の第2の実施例を示すものであり、(a)は第1の実施例の図3(d)までの手順で製造されたシート状のCNTを、加熱しても樹脂と溶け合わない材料で作られた2枚の押圧板の間に挟み込んだ状態を示す断面図、(b)は(a)の状態で加圧、加熱処理を行って余分な樹脂をシート状のCNTから排出した状態を示す断面図、(c)は(b)に示した2枚の押圧板を取り外した状態のシート状のCNTを示す断面図、(d)は(c)に示したシート状のCNTにアルカリ処理を施して樹脂表面に含まれるナノ微粒子を溶かし出して樹脂表面に空孔を形成した状態のシート状のCNTの断面とその部分拡大断面を示す断面図である。
【図8】本出願に係る放熱シートの製造方法の第3の実施例を示すものであり、(a)は表面にシリコン層と触媒層を形成したシリコン基板の断面図、(b)は(a)のシリコン基板上に成長炉内でCNTを成長させた状態を示す断面図、(c)はCNTが成長したシリコン基板を成長炉から取り出しCNTの線端部に金薄膜を施した後にナノ微粒子を含ませたシート状の樹脂をCNTの上に置く様子を示す断面図、(d)は樹脂が載置されたCNTを加熱して樹脂をCNTの隙間にしみ込ませた状態を示す断面図、(e)は(d)に示した状態のシート状のCNTにアルカリ処理を施して樹脂表面に含まれるナノ微粒子を溶かし出し、樹脂表面に空孔を形成したシート状のCNT示す断面図、(f)は(a)の状態からシリコン基板を除去したシート状のCNTを示す断面である。
【図9】本出願に係る放熱シートの製造方法の第4の実施例を示すものであり、(a)は第3の実施例の図3(e)の状態のシリコン基板上に形成されたシート状のCNTの表面にレジスト層を施した状態を示す部分拡大断面図、(b)は(a)のレジスト層の上に電極形成部に孔が開けられたマスクを被せ、紫外線を照射する状態を示す部分拡大断面図、(c)は紫外線照射後にマスクを除去した状態のシート状のCNTの部分拡大断面図、(d)は(c)の状態のシート状のCNTに対してアルカリ処理を施した状態を示す部分拡大断面図である。
【図10】(a)は図9(d)の状態のシート状のCNTに導電性金属を蒸着させた状態を示す部分拡大断面図、(b)は(a)の状態のシート状のCNTからレジスト層を剥離した状態のシート状のCNTを示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を用いて本出願の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。なお、図1、図2で説明した放熱シートの構成部材と同じ構成部材については同じ符号を付して説明する。
【0021】
図3は、本出願に係る放熱シートの製造方法の第1の実施例の工程を説明する断面図である。第1の実施例では、図1(a)に示すように、表面にシリコン層2と触媒層3を形成したシリコン基板1を用意する。触媒層3は、例えば、Fe、Co、Ni等で構成される。シリコン基板1は図示しない成長炉の中に入れ、図3(b)に示すように、シリコン基板1の触媒3の上にCNT4を成長させる。図1で説明したように、CNT4はチューブ構造であり、その直径は0.4〜50nmであって、成長後の長さは例えば1〜200μm程度である。第1の実施例でもチューブ構造のCNT4を1本の線で表し、各CNT4の間には隙間(CNTの密度は、1平方センチメートルあたり109〜1010本程度なので、実際の隙間は140nm程度)があることを示すために、その間隔を実際よりも非常に大きく描いてある。
【0022】
CNT4が成長したシリコン基板1の上には、CNT4が束になって存在する。CNT4が成長したシリコン基板1は成長炉から取り出され、図3(c)に示すようにCNT4の先端部に金薄膜5が施される。次いでシート状の樹脂6がCNT4の上に置かれる。第1の実施例では樹脂6の中に、ナノ微粒子11が分散されて混入されている。樹脂6に分散するナノ粒子11のサイズは、第1の実施例ではCNT4の間隔より小さい。ナノ微粒子11については後述する。ナノ微粒子11が混入された樹脂6は、CNT4の上に置かれた状態で加熱されて溶かされ、溶けた樹脂6をCNT4の隙間に含浸させる。樹脂6を加熱によってCNT4の隙間に含浸させただけでは、樹脂6はCNT4の根元部までは達しない。そして、樹脂6が含浸したCNT4は冷えて硬化すると、CNT4の束は樹脂6によってシート状のCNT40になる。シート状のCNT40は、シリコン基板1から剥離して取り出される。シート状のCNT40を図3(d)に示す。図3(a)〜(d)の工程は、樹脂6の中にナノ微粒子11が混入されている以外は図1(a)〜(d)の工程と同じである。
【0023】
ここで、樹脂6に混入するナノ微粒子11について説明する。ナノ微粒子11としては、これを含ませた樹脂6に対してアルカリ性溶液を接触させるアルカリ処理、酸性溶液を接触させる酸処理、又は急速昇温する高温処理を行った時に、樹脂11から溶け出すか蒸発して後に空孔12が残る材料を使用する。このようなナノ微粒子11には、例えば、Ni、Co、Fe、Cu、Ru、Ti、Ta、Mo、W、Re、Vの何れか、又はNi、Co、Fe、Cu、Ru、Ti、Ta、Mo、W、Re、Vの何れかを含む合金を使用することができる。第1の実施例ではこのナノ微粒子11にナノシリカを使用している。よって、以後の説明では、ナノ微粒子11はナノシリカ11として説明する。ナノシリカを含む樹脂としては、例えば荒川化学工業のポミラン(登録商標)がある。一般に、金属微粒子に対しては酸処理か高温処理が行われ、ナノシリカに対してはアルカリ処理が行われる。
【0024】
図5(a)は、図3(d)に示した樹脂6を含浸させた後の2本のCNT4の間に存在するナノシリカ11の状態の一例を示すものである。CNT4の直径は約25nm、高さが50μmであり、CNT4の間隔は140nm以内である。また、図5(b)は、第1の実施例における樹脂6の中のナノシリカ11の体積比の割合を示すものであり、11.6nm立方の樹脂6の中に直径5nmのナノシリカ11が1個あることを示している。ナノシリカ11の比重は樹脂6の2倍(体積比で4%)であるので、第1の実施例におけるナノシリカ11の樹脂内重量比は8wt%である。なお、ナノシリカ11の直径は55nmまで可能であり、凝集すればその直径が数百μmも可能である。また、図5(a)では樹脂6の中のナノシリカ11は整然と整列しているが、実際には樹脂6の中のナノシリカ11はこのように整列された状態で分散してはいない。
【0025】
シリコン基板1から剥離して取り出された図3(d)に示されるシート状のCNT40に対しては、その表面をアルカリ溶液に浸すアルカリ処理を行う。アルカリ処理を行うと樹脂6の表面に露出するナノシリカ11、或いは樹脂6の表面近傍に位置するナノシリカ11は、アルカリ溶液に溶けて樹脂6から出て行く。そして、ナノシリカ11が溶け出した後の樹脂6の中には、図3(e)に示すように空孔12が残る。空孔12の中にCNT4の先端部が露出することもある。
【0026】
樹脂6の中のナノシリカ11の含有率を8wt%にした場合は、アルカリ処理時間を長くして、樹脂6の表面から数μm深い位置にあるナノシリカ11を溶融する。また、樹脂6の中のナノシリカ11の体積を大きくしたり、含有率を増加したりすれば、アルカリ処理時間を短くしてアルカリ処理の深さを浅くすることができる。樹脂6の中のナノシリカ11の含有率の最大値は、製造メーカーによって異なるが、ある製造メーカーの製品では、最大75wt%まで可能であり、他の製造メーカーの製品では、最大50wt%まで可能であって、推奨値は20wt%である。
【0027】
シート状のCNT40は、図4(a)に示すように、発熱素子7とヒートシンク9で挟み込み、ボルト8で締め付けて加圧すると共に加熱する。樹脂6が含浸したシート状のCNT40を加圧、加熱することにより、余分な樹脂6が外部に排出され、図4(b)に示すように放熱シート10Aができあがる。このとき、空孔12の数が多いと、図4(c)に示すように、樹脂6が外部に排出された状態で空孔12が繋がって空孔連結部13が形成され、CNT4の先端部が空孔連結部13の中に露出して直接発熱素子7に接触するようになる。CNT4の基部はヒートシンク4に接触しているので、発熱素子7で発生した熱は、CNT4を介してヒートシンク9に伝わり、発熱素子7が効率良く冷却される。
【0028】
ヘンケルジャパン社製の6880樹脂(登録商標)で検討したところ、CNT4の長さが成長時に比べて80%になるように加圧、加熱すれば熱抵抗を最小にできることが分かった。この時の加圧、加熱後の樹脂6のみの部分の厚さは4〜5μm程度であった。以上のことから樹脂6の厚さが表面からCNT4の長さの20%だけ減少するようにナノシリカ11を溶出すれば良いので、この時間だけアルカリ処理を行えば良いことが分かった。
【0029】
以上説明した第1の実施例では、図5(a)に示したように、樹脂6の中に分散させるナノシリカ11の粒径は揃えてあり、ナノシリカ11の粒径はCNT4の間隔よりも小さい。一方、図4(c)に示すような空孔連結部13を形成するために、変形例として、図6(a)に示すように、樹脂6の中に、粒径の小さなナノシリカ11Sと粒径の大きなナノシリカ11Lを混在させても良い。この場合、ナノシリカ11Lの粒径を隣接するCNT4の間隔よりも大きくしておけば、樹脂6を加熱してCNT4の束に含浸させた時に、図6(b)に示すように、粒径の大きなナノシリカ11LがCNT4の先端部近傍に集まり、アルカリ処理によって図4(c)に示すような空孔連結部13を容易に形成することができる。空孔連結部13が多く形成されるとCNT4の先端近傍の樹脂の厚さが薄くなるため、より多くのCNT4の先端部が直接発熱素子7に接触し、放熱シートの放熱効果が向上する。
【0030】
次に、図7(a)〜(d)に示す断面図を用いて本出願に係る放熱シートの製造方法の第2の実施例を説明する。なお、第2の実施例の放熱シートの製造方法では、図3(d)に示したシート状のCNT40を作るまでは第1の実施例と同じであるので、ここではその説明を省略する。第2の実施例では、図7(a)に示すように、第1の実施例の図3(a)〜(d)の手順で製造されたシート状のCNT40を、加熱しても樹脂と溶け合わない材料で作られた2枚の押圧板13,14の間に挟み込む。2枚の押圧板13,14は、例えばテフロン(登録商標)等の樹脂で作ることができる。
【0031】
この状態で加圧、加熱処理を行って更に樹脂6をシート状のCNTに含浸させると共に、余分な樹脂6をシート状のCNT40から排出すると図7(b)に示す状態となる。そして、図7(b)の状態で樹脂6を硬化させた後に2枚の押圧板13,14を取り外すと、図7(c)に示す状態となる。この状態でシート状のCNT40にアルカリ処理を施して樹脂6の表面に含まれるナノシリカ11を溶かし出して樹脂6の表面に空孔12、或いは空孔連結部13を形成すると図7(d)に示すシート状のCNT40が出来上がり、放熱シートとなる。図7(d)に示すシート状のCNT40は、このまま図4(b)に示したように、発熱素子7とヒートシンク8の間に挿入してボルト8で締結すると放熱シートとして機能する。
【0032】
図8(a)〜(f)は、本出願に係る放熱シートの製造方法の第3の実施例を示すものである。第3の実施例では、図8(a)に示す酸化シリコン層2と触媒層3を形成したシリコン基板1を図示しない成長炉に入れてシリコン基板1の触媒3の上に、図8(b)に示すCNT4を成長させる。そして、図8(c)に示すように、CNT4が成長したシリコン基板1を成長炉から取り出しCNTの線端部に金薄膜を施した後に、ナノシリカ11を分散させたシート状の樹脂6をCNTの上に置き、加熱してナノシリカ11をCNT4の隙間に含浸させる。図8(d)はナノシリカ11を含浸させて出来上がったシート状のCNT40を示すものである。
【0033】
第1の実施例では、図8(d)に示す状態のシリコン基板1からシート状のCNT40を剥離していたが、第3の実施例ではシリコン基板1からシート状のCNT40を剥離せず、このままの状態でアルカリ処理を施す。そして、樹脂6の表面に含まれるナノシリカ11を溶かし出して、図8(e)に示すように、樹脂6の表面に空孔12、或いは空気孔連結部13が形成されたシート状のCNT40を製造する。この状態でシリコン基板1からシート状のCNT40を剥離すれば、図8(f)に示すような樹脂6の表面に空孔12、或いは空気孔連結部13が形成されたシート状のCNT40が製造でき、放熱シートとして使用できる。図8(f)に示すシート状のCNT40は、このまま図4(b)に示したように、発熱素子7とヒートシンク9の間に挿入してボルト8で締結して放熱シートとして使用することができる。
【0034】
図9(a)〜(d)と図10(a)、(b)は、本出願に係る放熱シートの製造方法の第4の実施例の工程を示す部分拡大断面図である。なお、第4の実施例の放熱シートの製造方法では、図8(d)に示したシート状のCNT40を作るまでは第3の実施例と同じであるので、ここではその説明を省略する。図9(a)は、第3の実施例の図3(d)の状態のシリコン基板1の上に形成されたシート状のCNT40の表面に、レジストを塗布してレジスト層21を形成した状態を示している。
【0035】
第4の実施例では、シート状のCNT40の表面に電極を形成する。このため、図9(b)に示すように、電極形成が必要な箇所に孔22Aが開けられたマスク22をレジスト層21の上に被せ、マスク22の上から紫外線23を照射する。レジスト層21は、紫外線23が照射された部分だけが溶けてシート状のCNT40が露出する。図9(c)は紫外線23を照射した後にマスク22を除去した状態のシート状のCNT40を示すものであり、紫外線照射部にはレジスト剥離部24が形成されている。第4の実施例では、この状態でシート状のCNT40に対してアルカリ処理を施す。図9(d)はアルカリ処理により、レジスト剥離部24内のシート状のCNT40に、空孔12又は空孔連結部13が現れた状態を示している。空孔12又は空孔連結部13内には、多くの場合、CNT4の先端部が露出、或いは突出している。
【0036】
第4の実施例では、図9(d)に示した状態のシート状のCNT40に、導電性金属を蒸着させて金属蒸着部25を形成する。シート状のCNT40に金属蒸着部25が形成された状態を図10(a)に示す。金属蒸着部25はレジスト層21の上側と、レジスト剥離部24内のシート状のCNT40の露出部の上側に形成される。この状態で、シート状のCNT40からレジスト層21を剥離すると、レジスト剥離部24内のシート状のCNT40の露出部の上側に形成された金属蒸着部25だけが残って電極部26となる。
【0037】
空孔12又は空孔連結部13内にCNT4の先端部が露出、或いは突出している場合、電極部26はCNT4の先端部に電気的に結合しているので、電極部26は、CNT4を通じてシート状のCNT40の裏面側の電極部26に重なる部分に電気的に接続する。このように、第4の実施例では、任意の場所に電極部26を形成したシート状のCNT40を製造することができる。なお、第4の実施例では、シート状のCNT40の表面に形成した電極部26とCNT4の先端部とを確実に電気的に接続する必要があるので、樹脂6へのナノシリカ11の含有率を、電極部を形成しない場合に比べて大きくすれば良い。
【0038】
以上、本出願を特にその好ましい実施の形態を参照して詳細に説明した。本出願の容易な理解のために、本出願の具体的な形態を以下に付記する。
【0039】
(付記1) 成長炉内でシリコン基板に対して垂直な方向にカーボンナノチューブを成長させて形成したカーボンナノチューブの束に、樹脂を加熱して含浸させた後に硬化させてシート状のカーボンナノチューブを形成し、これを前記シリコン基板から剥離して形成した放熱シートにおいて、
前記樹脂には、所定の除去処理によって前記樹脂内から溶出させて前記樹脂内に空孔を形成可能なナノ微粒子を、8〜70wt%で含有させたことを特徴とする放熱シート。
(付記2) 前記ナノ微粒子は、0.5〜100nmの直径範囲にあることを特徴とする付記1に記載の放熱シート。
(付記3) 前記ナノ微粒子として、前記カーボンナノチューブの間隔よりも直径が小さいナノ微粒子と直径が大きい微粒子とを混ぜ合わせたことを特徴とする付記2に記載の放熱シート。
(付記4) 前記除去処理が、前記樹脂の表面にアルカリ性の溶液を接触させるアルカリ処理、前記樹脂の表面に酸性の溶液を接触させる酸性処理、及び急速昇温して前記ナノ微粒子を蒸発させる処理の何れかであることを特徴とする付記1から3の何れかに記載の放熱シート。
(付記5) 前記ナノ微粒子がNi、Co、Fe、Cu、Ru、Ti、Ta、Mo、W、Re、Vの何れか、又はNi、Co、Fe、Cu、Ru、Ti、Ta、Mo、W、Re、Vの何れかを含む合金からなることを特徴とする付記1から4の何れかに記載の放熱シート。
【0040】
(付記6) 前記ナノ微粒子がナノシリカであることを特徴とする付記5に記載の放熱シート。
(付記7) 前記シリコン基板上に成長させて形成されたカーボンナノチューブの各個の先端部に金薄膜が施されていることを特徴とする付記1から6の何れかに記載の放熱シート。
(付記8) シリコン基板の表面に触媒を成膜し、
前記シリコン基板を成長炉に入れて、前記触媒の上に垂直方向に、カーボンナノチューブを成長させてカーボンナノチューブの束を作り、
前記カーボンナノチューブの束の上に、ナノ微粒子を8〜70wt%で含有させたシート状の樹脂を置き、
前記樹脂を加熱して前記カーボンナノチューブの束に含浸させた後に硬化させ、
前記樹脂が含浸して形成されたシート状のカーボンナノチューブを前記シリコン基板から剥離し、
剥離した前記シート状のカーボンナノチューブに対して前記ナノ微粒子の除去処理を行って、前記カーボンナノチューブの表面近傍に位置する前記ナノ微粒子を溶出して前記表面に空孔を形成し、
前記樹脂表面に空孔が形成された前記シート状のカーボンナノチューブを発熱素子と放熱部材とで挟み込み、
この状態で加熱すると共に、前記発熱素子と前記放熱部材との間に圧力を加えて前記シート状のカーボンナノチューブを加熱圧縮して余分な樹脂を前記発熱素子と前記放熱部材との間から排出して、前記発熱素子と前記放熱部材との間に放熱シートを製造することを特徴とする放熱シートの製造方法。
(付記9) シリコン基板の表面に触媒を成膜し、
前記シリコン基板を成長炉に入れて、前記触媒の上に垂直方向に、カーボンナノチューブを成長させてカーボンナノチューブの束を作り、
前記カーボンナノチューブの束の上にナノ微粒子を、8〜70wt%で含有させた樹脂を置き、
前記樹脂を加熱して前記カーボンナノチューブの束に含浸させた後に冷却し、
前記樹脂が含浸して形成されたシート状のカーボンナノチューブを、前記シリコン基板を剥離して取り出し、
前記シート状のカーボンナノチューブを、加熱しても樹脂と溶け合わない材料で作られた2枚の押圧板の間に挟んで加圧、加熱処理を行って余分な樹脂をシート状のCNTから排出し、
加圧、加熱処理後に冷却して2枚の押圧板を取り外して前記シート状のCNTを取り出し、
取り出したシート状のCNTに前記ナノ微粒子の除去処理を施して、樹脂表面に含まれるナノ微粒子を溶かし出して樹脂表面に空孔が形成されたシート状のCNTを製造することを特徴とする放熱シートの製造方法。
(付記10) 酸化膜付きシリコン基板の表面に触媒を成膜し、
前記シリコン基板を成長炉に入れて、前記触媒の上に垂直方向に、カーボンナノチューブを成長させてカーボンナノチューブの束を作り、
前記カーボンナノチューブの束の上にナノ微粒子を、8〜70wt%で含有させた樹脂を置き、
前記樹脂を加熱して前記カーボンナノチューブの束に含浸させた後に冷却し、
前記樹脂が含浸して形成されたシート状のCNTを、前記シリコン基板に設置したまま、シート状のCNTに前記ナノ微粒子の除去処理を施して樹脂表面に含まれるナノ微粒子を溶かし出して樹脂表面に空孔を形成し、
樹脂表面に空孔を形成されたシート状のCNTから前記シリコン基板を除去してシート状のCNTを製造することを特徴とする放熱シートの製造方法。
【0041】
(付記11) シリコン基板の表面に触媒を成膜し、
前記シリコン基板を成長炉に入れて、前記触媒の上に垂直方向に、カーボンナノチューブを成長させてカーボンナノチューブの束を作り、
前記カーボンナノチューブの束の上にナノ微粒子を、8〜70wt%で含有させた樹脂を置き、
前記樹脂を加熱して前記カーボンナノチューブの束に含浸させた後に冷却し、
前記樹脂が含浸して形成されたシート状のカーボンナノチューブを、前記シリコン基板に設置したまま、シート状のカーボンナノチューブの表面にレジストを塗布してレジスト層を形成し、
レジスト層が形成されたシート状のカーボンナノチューブの上に、電極形成部に孔が開けられたマスクを被せ、紫外線を照射してレジスト剥離部を形成し、
紫外線照射後にマスクを除去したシート状のカーボンナノチューブに対して、レジストの溶解及び前記ナノ微粒子の除去処理を施して前記レジスト剥離部内に露出する樹脂表面に含まれるナノ微粒子を溶かし出して前記樹脂表面に空孔を形成し、
前記シート状のカーボンナノチューブに導電性金属を蒸着して金属蒸着部を形成する処理を行い、
前記シート状のカーボンナノチューブからレジスト層を剥離すると共に、前記シリコン基板を除去してシート状のCNTを製造することを特徴とする放熱シートの製造方法。
(付記12) 前記ナノ微粒子は、0.5〜100nmの直径範囲にあることを特徴とする付記8に記載の放熱シートの製造方法。
(付記13) 前記ナノ微粒子として、前記カーボンナノチューブの間隔よりも直径が小さいナノ微粒子と直径が大きい微粒子とを混ぜ合わせたことを特徴とする付記12に記載の放熱シートの製造方法。
(付記14) 前記除去処理が、前記樹脂の表面にアルカリ性の溶液を接触させるアルカリ処理、前記樹脂の表面に酸性の溶液を接触させる酸性処理、及び急速昇温して前記ナノ微粒子を蒸発させる処理の何れかであることを特徴とする付記8から11の何れかに記載の放熱シートの製造方法。
(付記15) 前記ナノ微粒子がNi,Co,Fe,Cu,Ru,Ti,Ta,Mo,W,Re,Vの何れか、又はNi,Co,Fe,Cu,Ru,Ti,Ta,Mo,W,Re,Vの何れかを含む合金からなることを特徴とする付記8から14の何れかに記載の放熱シートの製造方法。
【0042】
(付記16) 前記ナノ微粒子がナノシリカであることを特徴とする付記15に記載の放熱シートの製造方法。
(付記17) 前記カーボンナノチューブの束が作られた後、各カーボンナノチューブの各個の先端部に金薄膜を施すことを特徴とする付記8に記載の放熱シートの製造方法。
【符号の説明】
【0043】
1 シリコン基板
2 二酸化シリコン層
3 触媒
4 カーボンナノチューブ(CNT)
5 金薄膜
6 樹脂
7 発熱素子
9 ヒートシンク
10 放熱シート
11 ナノ微粒子
12 空孔
21 レジスト層
22 マスク
23 紫外線
24 レジスト剥離部
25 金属蒸着部
26 電極部
40 シート状のCNT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成長炉内でシリコン基板に対して垂直な方向にカーボンナノチューブを成長させて形成したカーボンナノチューブの束に、樹脂を加熱して含浸させた後に硬化させてシート状のカーボンナノチューブを形成し、これを前記シリコン基板から剥離して形成した放熱シートにおいて、
前記樹脂には、所定の除去処理によって前記樹脂内から溶出させて前記樹脂内に空孔を形成可能なナノ微粒子を、8〜70wt%で含有させたことを特徴とする放熱シート。
【請求項2】
前記ナノ微粒子として、前記カーボンナノチューブの間隔よりも直径が小さいナノ微粒子と直径が大きい微粒子とを混ぜ合わせたことを特徴とする請求項1に記載の放熱シート。
【請求項3】
前記除去処理が、前記樹脂の表面にアルカリ性の溶液を接触させるアルカリ処理、前記樹脂の表面に酸性の溶液を接触させる酸性処理、及び急速昇温して前記ナノ微粒子を蒸発させる処理の何れかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の放熱シート。
【請求項4】
シリコン基板の表面に触媒を成膜し、
前記シリコン基板を成長炉に入れて、前記触媒の上に垂直方向に、カーボンナノチューブを成長させてカーボンナノチューブの束を作り、
前記カーボンナノチューブの束の上に、ナノ微粒子を8〜70wt%で含有させたシート状の樹脂を置き、
前記樹脂を加熱して前記カーボンナノチューブの束に含浸させた後に硬化させ、
前記樹脂が含浸して形成されたシート状のカーボンナノチューブを前記シリコン基板から剥離し、
剥離した前記シート状のカーボンナノチューブに対して前記ナノ微粒子の除去処理を行って、前記カーボンナノチューブの表面近傍に位置する前記ナノ微粒子を溶出して前記表面に空孔を形成し、
前記樹脂表面に空孔が形成された前記シート状のカーボンナノチューブを発熱素子と放熱部材とで挟み込み、
この状態で加熱すると共に、前記発熱素子と前記放熱部材との間に圧力を加えて前記シート状のカーボンナノチューブを加熱圧縮して余分な樹脂を前記発熱素子と前記放熱部材との間から排出して、前記発熱素子と前記放熱部材との間に放熱シートを製造することを特徴とする放熱シートの製造方法。
【請求項5】
前記除去処理が、前記樹脂の表面にアルカリ性の溶液を接触させるアルカリ処理、前記樹脂の表面に酸性の溶液を接触させる酸性処理、及び急速昇温して前記ナノ微粒子を蒸発させる処理の何れかであることを特徴とする請求項4に記載の放熱シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−98245(P2013−98245A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237584(P2011−237584)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】