説明

放熱ユニット

【課題】熱伝導率と絶縁性とを両立させつつ、劣化に強く低コストの中間体を有し、発熱体の熱を効率的に放熱できる放熱ユニットを提供する。
【解決手段】本発明の放熱ユニット1は、発熱体2から伝導される熱を放出する放熱部5と、前記発熱体2からの熱を前記放熱部5に伝導する中間体4と、を備え、前記中間体4は、無機物粒子の相と、該無機物粒子の相の周囲に配せられる無機結合相を有し、前記無機結合相は、金属アルコキシドが加水分解および脱水重合されて形成される無機材質を含み、前記金属アルコキシドをなす金属元素は、Al、Mg,Si、Ti、Zr、Beの群から選択される1以上であり、前記中間体4は、前記放熱部5の表面に接合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明機器、電子機器、輸送機器および製造機器など、電子部品や機械部品などの発熱体を備える機器や装置にフレキシブルに適用され、発熱体からの熱を放熱部に効率的に伝導しつつ使用劣化の少ない中間層を備える放熱ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
照明機器、電子機器、輸送機器および製造機器などは、様々な電子部品や機械部品を有しており、これら電子部品や機械部品は、性能の向上や機能の拡張に伴って高い発熱を生ずるようになっている。すなわち、照明機器、電子機器、輸送機器および製造機器などは、発熱体を備えている状態である。例えば、近年の照明機器は、省エネや長寿命などを目的として、発光ダイオード(以下、「LED」という)を用いるようになっている。LEDの単位発熱量は小さいが、一つの照明機器は、多くのLEDを高密度に実装するので、照明機器が備える発熱体全体の発熱量は大きくなっている。また、LEDは、付与される電流値が大きいほどに、その発光する光量を大きくできるが、付与される電流値が大きければ、当然に発熱量も大きくなる。しかしながら、大きな光量がLEDに対して求められている。
【0003】
また、半導体集積回路の集積度の増加、パワーデバイスの普及によって、電子機器、輸送機器なども、大きな発熱量を生じさせる発熱体を備えるようになっている。製造機器は、製造する対象物によっては高い熱を発生させる必要があり、製造機器内部に、高い発熱を生じさせなくてはならない。
【0004】
このような大きな発熱量を生じさせる発熱体(単数の発熱体および発熱体の集合体を含む)による発熱は、照明機器、電子機器、輸送機器および製造機器などの性能劣化、故障などの悪影響を与える。このため、発熱体から生じる熱を放熱する放熱ユニットや放熱機器が用いられている。この放熱ユニットや放熱機器は、発熱体から伝導された熱を外部に放出するヒートシンクや放熱板などを備えて、発熱体の熱を放出する。
【0005】
ヒートシンクや放熱板は、発熱体から伝導された熱を、最終的に外部へ放出できる。ここで、発熱体となる電子部品や機械部品は、回路基板や回路層に実装される必要があるため、発熱体をヒートシンクや放熱板に直接実装することは難しい。また、ヒートシンクや放熱板は、熱伝導性の高さから銅やアルミニウムなどの金属であることが好ましい。しかし、ヒートシンクや放熱板の表面に電子部品、回路基板、回路層が実装される必要があるので、ヒートシンクや放熱板と回路基板や回路層との間には、絶縁層が設けられる必要がある。この絶縁層は、絶縁機能を有すると共に発熱体の熱をヒートシンクや放熱板に効率的に伝導することが求められる。
【0006】
このように、発熱体となる電子部品や機械部品を備える照明機器、電子機器、輸送機器および製造機器では、ヒートシンクや放熱板と発熱体との間に介在する中間体を有する放熱ユニットを用いていた。ヒートシンクを備えるLEDパッケージが提案されたり(例えば、特許文献1参照)、中間体の技術が提案されたりしている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平11−346029号公報
【特許文献2】特開2009−212495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は、半導体レーザーチップの構造をヒートシンクと熱的に接続することで、半導体レーザーチップからの熱を放出する技術を開示する。しかしながら、特許文献1は、半導体レーザーチップと周辺構造が複雑になり、多くの発熱体を実装する機器の放熱には適さない。
【0009】
特許文献2は、樹脂を主成分とする中間体(熱的接合剤)を発熱体と放熱板との間に介在させる放熱可能な放熱部品を開示する。
【0010】
この特許文献2に開示される技術のように、発熱体(電子部品や回路層など、電気信号をやり取りする)と放熱板(ヒートシンク含む)との間に介在する中間体は、樹脂が主成分となることが多い。現在では、樹脂を主成分とする熱的接合剤が中間体として様々に利用され提案されている。樹脂は、絶縁性と熱伝導性を両立させる適当な素材だからである。このように、絶縁性と熱伝導性とを両立させることは、発熱体から放熱板等への熱伝導に必要な条件であり、次の2つの解決方向がある。
【0011】
(方向1)樹脂を主成分とする熱的接合剤を、発熱体と放熱板等との間に介在させる中間体として用いる。
【0012】
(方向2)絶縁性と熱伝導性を両立する素材で放熱板やヒートシンクを形成する。
【0013】
方向1にあるように、中間体に樹脂を主成分とする熱的接合剤を用いる場合には、発熱体の熱(当然ながら放熱板からの熱も)によって劣化しやすい問題がある。樹脂はその特性上熱に弱く、LEDのように100℃を超えるような発熱体からの発熱を繰り返し受けることで、樹脂が劣化する。劣化が進むと当然ながら破損することになり、発熱体からの熱を十分にヒートシンクや放熱板に伝導できなくなって、機器そのものの劣化、性能低減、故障などが引き起こされる問題がある。
【0014】
一方、方向2にあるように、絶縁性と熱伝導率とを両立してヒートシンクなどを形成できる素材としては、AlN系セラミックスが知られているが、このAlN系セラミックス以外で実用用途のあるものはほとんど見つかっていない。このAlN系セラミックスの熱伝導率は180〜250W/m・Kであり、熱伝導率の点ではヒートシンクや放熱板として十分に実用可能である。また、AlN系セラミックスは、電気抵抗が1014(Ω・cm)と非常に高く絶縁性に優れている。しかしながら、AlN系セラミックスは、銅やアルミニウムといった金属に比べて非常に高価であり、コスト要請の厳しい照明機器や電子機器には適用が困難である。
【0015】
以上より、熱伝導率の高い金属で形成されたヒートシンクや放熱板と発熱体との間を、絶縁性および熱伝導性を両立させる中間体が照明機器や電子機器には必要となっている。当然ながら中間体は、ヒートシンクや放熱板に結合可能であることも必要である。
【0016】
また、ヒートシンクや放熱板の熱膨張係数と中間体の熱膨張係数との相違が大きいと、中間体が剥離したりクラックを生じさせたりする問題がある。以上の問題を考慮して、次の要件を充足する中間体を備えた放熱ユニットが求められている。
【0017】
(要件1)高い熱伝導率を有すること。
(要件2)適用箇所の必要性に応じて絶縁性を有すること。
(要件3)金属面と確実に結合すること。
(要件4)十分な弾性特性を有すること。
(要件5)コストが低く、劣化に強いこと。
【0018】
すなわち、従来技術の樹脂やAlN系セラミックスとは異なるアプローチで、これら要件1〜要件5を充足する中間体を備える放熱ユニットが求められている。
【0019】
本発明は、上記課題に鑑み、熱伝導率と絶縁性とを両立させつつ、劣化に強く低コストの中間体を有し、発熱体の熱を効率的に放熱できる放熱ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題に鑑み、本発明の放熱ユニットは、発熱体から伝導される熱を放出する放熱部と、発熱体からの熱を放熱部に伝導する中間体と、を備え、中間体は、無機物粒子の相と、該無機物粒子の相の周囲に配せられる無機結合相を有し、無機結合相は、金属アルコキシドが加水分解および脱水重合されて形成される無機材質を含み、金属アルコキシドをなす金属元素は、Al、Mg,Si、Ti、Zr、Beの群から選択される1以上であり、中間体は、放熱部の表面に接合している。
【発明の効果】
【0021】
本発明の放熱ユニットは、発熱体と放熱部との間に、金属アルコキシドの加水分解および脱水重合により形成された無機材質の中間体を用いるので、絶縁性と熱伝導性を両立させて、発熱体からの熱を放熱部に伝導できる。加えて、無機材質の中間体であることで、樹脂のような劣化を生じることもない。中間体の劣化が生じないことで、放熱ユニットそのものの劣化や性能低下も防止される。また、コストも低い。
【0022】
また、金属アルコキシドの加水分解および脱水重合により形成された無機材質の中間体は、金属製の放熱部の表面に塗布可能であり、特に、金属アルコキシドの加水分解および脱水重合により形成された無機材質の中間体は、金属製の放熱部の表面と確実に結合できる。この結果、発熱体と放熱部との間の熱抵抗が下がり、発熱体の熱が効率的に放出できる。
【0023】
また、中間体は、十分な弾性特性(接合している放熱部や回路層の熱膨張に追従して、剥離や損傷を生じさせない特性)を有しているので、放熱部の熱膨張によって中間体が破壊されたり放熱部と剥離したりすることもない。加えて、中間体は、無機物粒子を含むことができるので、無機物粒子の特性に基づいた特性を発揮することができる。このため、適用用途に応じた適用のフレキシビリティをも有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1における放熱ユニットの側面図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるLEDが実装された放熱ユニットの側面図である。
【図3】本発明の実施の形態1における中間体の構造を示す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態1における中間体の正面図である。
【図5】本発明の実施の形態1における放熱ユニットの実装状態を示す側面図である。
【図6】本発明の実施の形態1における放熱ユニットの実装状態を示す側面図である。
【図7】本発明の実施の形態1におけるフィンを有する放熱部の側面図である。
【図8】本発明の実施の形態2における照明機器のブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態2における照明機器の底面図である。
【図10】本発明の実施例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第1の発明に係る放熱ユニットは、発熱体から伝導される熱を放出する放熱部と、発熱体からの熱を放熱部に伝導する中間体と、を備え、中間体は、無機物粒子の相と、該無機物粒子の相の周囲に配せられる無機結合相を有し、無機結合相は、金属アルコキシドが加水分解および脱水重合されて形成される無機材質を含み、金属アルコキシドをなす金属元素は、Al、Mg,Si、Ti、Zr、Beの群から選択される1以上であり、中間体は、放熱部の表面に接合している。
【0026】
この構成により、中間体は、無機結合相が生じさせる十分な弾性特性、結合性、絶縁性に加えて、無機物粒子の相が生じさせる熱伝導性とを、両立できる。この中間体は、効率的に発熱体の熱を放熱部に伝導できるので、放熱ユニットは、発熱体の熱を効率よく放出できる。
【0027】
本発明の第2の発明に係る放熱ユニットでは、第1の発明に加えて、無機物粒子は、AlN、cBN、hBN、Al、MgO,ダイヤモンドおよびグラファイトの群から選択される少なくとも一つである。
【0028】
この構成により、中間体は、十分な弾性特性を維持しつつ、高い熱伝導性を有することができる。
【0029】
本発明の第3の発明に係る放熱ユニットでは、第1又は第2の発明に加えて、無機物粒子は、中間体に対して、40体積%以上であり、好ましくは50体積%以上であり、更に好ましくは70体積%以上である。
【0030】
この構成により、中間体は、無機物粒子の生じさせる熱伝導性を確実に有することができる。
【0031】
本発明の第4の発明に係る放熱ユニットでは、第1から第3のいずれかの発明に加えて、無機物粒子は、中間体における面方向の長さが、中間体における垂直方向の長さよりも長い。
【0032】
この構成により、中間体は、平面方向に対する高い熱伝導性を生じさせるようになり、中間体内部で熱を平面方向(場合によっては垂直方向)に熱を拡散できるので、放熱部5を通じた放熱能力がたかまる。
【0033】
本発明の第5の発明に係る放熱ユニットでは、第1から第4のいずれかの発明に加えて、中間体は、放熱部の表面に塗布された後、100〜300℃で熱処理されて形成される。
【0034】
この構成により、中間体は、確実に放熱部に接合される。
【0035】
本発明の第6の発明に係る放熱ユニットでは、第1から第5のいずれかの発明に加えて、中間体は、100kPa以上のせん断接合強度を有すると共に100kPa以上のせん断接合強度の1000倍以下の剛性率を有して、放熱部に接合している。
この構成により、中間体は、ストレス負荷があっても、十分な弾性特性を発揮して、剥離や損傷を防止できる。
【0036】
本発明の第7の発明に係る放熱ユニットでは、第1から第6のいずれかの発明に加えて、中間体および放熱部の少なくとも一方の表面は、発熱体と電気的に接続する回路基板および回路層の少なくとも一つを設ける。
【0037】
この構成により、発熱体が電気信号を必要とする場合にも、放熱ユニットは対応できる。
【0038】
以下、図面を用いながら実施の形態について説明する。
【0039】
(実施の形態1)
【0040】
実施の形態1について説明する。
【0041】
本発明は、樹脂を主成分とする中間体によって発熱体の熱を放熱部に伝導する放熱ユニットの従来の技術に対して、樹脂を用いない中間体の新しいアプローチでの放熱ユニットを提案する。発熱体と放熱部とは、絶縁性と熱伝導性の両立のために、樹脂を主成分とする中間体で介在されていた。樹脂は、使いやすい素材であるが、耐久性や耐劣化に問題があり、近年の発熱体に対応することが難しい。しかし、現在の技術開発においては、樹脂の性能改善が主として行われ、中間体において樹脂を主成分とすることから離れていない問題がある。
【0042】
本発明は、樹脂を主成分とせずに、絶縁性と熱伝導性を両立させて、発熱体と放熱部とを介在する中間体を軸とした、今までのアプローチと全く異なる新しい放熱ユニットを提案する。
【0043】
(全体概要)
図1を用いて、実施の形態1の放熱ユニットの全体概要を説明する。図1は、本発明の実施の形態1における放熱ユニットの側面図である。図1は、放熱ユニット1と、放熱ユニット1が用いられる電子部品が実装されている状態を示している。
【0044】
放熱ユニット1は、放熱部5と中間体4を備える。放熱部5は、発熱体2から伝導される熱を外部に放出する。例えば、放熱部5が外気に露出している場合には、放熱部5は、伝導された熱を外気に放出する。あるいは、放熱部5が他の冷却部材(例えば液冷ジャケットや冷風ファンなど)と組み合わされている場合には、この組み合わされる冷却部材に対して熱を放出する。放熱部5は、金属や合金製のヒートシンクや放熱板が好適に用いられる。
【0045】
中間体4は、発熱体2が生じる熱を放熱部5に伝導する。この中間体4は、従来技術の主流である樹脂を主成分としない。中間体4は、無機物粒子の相と、無機物粒子の相の周囲に配せられる無機結合相とが組み合わされた構造を有している。無機物粒子の相とこの周囲の無機結合相の組み合わせであるので、当然ながら絶縁性を有している。また、無機物粒子の相は、その無機物粒子の特性に基づいて、高い熱伝導性を生じさせる。このため、中間体4は、絶縁性と熱伝導性とを両立できる。また、無機物粒子と無機結合相の組み合わせであるので、中間体4は、樹脂と異なり耐熱性が高く、発熱体2の熱による劣化も少ない。このように、無機物粒子の相と、この周囲に配せられる無機結合相の組み合わせを有する中間体4は、従来技術の問題を解消しつつ、発熱体2の熱を効率的に放熱部5に伝導する。
【0046】
(放熱ユニットの動作)
放熱ユニット1は、電子部品や機械部品などの発熱体2を実装できる。発熱体2は、電気信号のやり取りによって動作するので、必要な回路層3に実装される。回路層3は、回路基板や回路パターンであってもよい。発熱体2は、電気信号のやり取りによって動作し、この動作によって、熱を生じる。発生した熱は、回路層3から中間体4に伝導する。中間体4は、無機物粒子の特性に基づいて高い熱伝導性を有するので、発熱体2の熱を放熱部5に伝導する。放熱部5は、外気や他の冷却部材に対して、伝導された熱を放出できる。特に、放熱部5は、金属や合金で形成されているので、受け取った熱を3次元的に伝導して、その表面から外部に放出できる。
【0047】
中間体4は、金属や合金製の放熱部5に対して発熱体2や回路層3の電気信号の漏洩を防止する必要があるが、中間体4は、絶縁性を有しているので、電気信号の漏洩を防止できる。
【0048】
図2を用いて、発熱体2の一例として、LEDが実装される照明機器や電子機器に、放熱ユニット1が組み込まれる場合について説明する。図2は、本発明の実施の形態1におけるLEDが実装された放熱ユニットの側面図である。発熱体2の例として、複数のLED21が回路層3に実装されている。LED21では、正負の電極および制御信号が、端子6(例えばバンプやグリッドアレイ)で回路層3と接続されることで、発光動作を行う。この発光動作を行う際に、LED21は、熱を生じる。また、照明機器や電子機器は、複数のLED21を実装していることが多く、複数のLEDのそれぞれが熱を発生させる。このため、複数のLEDの発熱が積算されると、非常に大きな熱になってしまう。また、少数のLEDが実装される照明機器や電子機器は、照度を上げるために、高い電圧がLEDに与えられる。この結果、少数のLEDの実装領域である狭い領域に、発熱が集中してしまう。放熱ユニット1は、このような狭い領域での放熱にも適している。
【0049】
複数のLED21からの熱(回路層3からも熱は発生する)は、中間体4に到達し、中間体4は、この熱を放熱部5に伝導する。このとき、中間体4は、LED21や回路層3の電気信号を、放熱部5に導電させることはない。放熱部5は、伝導された熱を外気や他の冷却部材に放出する。このような、中間体4を介した伝導と放熱部5による放熱の繰り返しによって、LEDの熱が外部に放出されて、照明機器や電子機器の性能劣化や故障が防止できる。
【0050】
次に各部の詳細について説明する。
【0051】
(中間体)
中間体4は、無機物粒子の相と、無機物粒子の相の周囲に配せられる無機結合相を有する。この無機結合相は、金属アルコキシドが加水分解および脱水重合されて形成される。金属アルコキシドをなす金属元素は、Al,Mg、Si、Ti、Zr、Beの群から選択される1以上である。無機結合相は、十分な弾性特性を有している。ここで、十分な弾性特性とは、中間体4が放熱部5や回路層3に接合される場合に、放熱部5や回路層3の熱膨張に十分に追従でき、中間体4が剥離したり損傷したりすることの無い特性を言う。このような十分な弾性特性を有することで、中間体4は、接合される放熱部5などの熱膨張や熱収縮に追従して、熱伝導の役割を維持できる。
【0052】
この無機結合相に無機物粒子の相が組み合わさった場合でも、無機結合相の原子結合の十分な弾性特性は維持されるので、中間体4は、十分な弾性特性を有することになる。また、中間体4は、乾燥して固化するまでは、液状であるので、放熱部5の表面に塗布が可能である。
【0053】
金属アルコキシドが加水分解・脱水重合されて得られる無機結合相は、(1)十分な弾性特性、(2)金属との結合性(放熱部5との結合性)、(3)絶縁性、の全てを有している。中間体4は、この無機結合相に無機物粒子を含んでいるが、無機物粒子の相の周囲に無機結合相が配せられるので、これら(1)〜(3)の特性を維持したままである。すなわち、中間体4の第1要素である金属アルコキシドが加水分解・脱水重合されて得られる無機結合相は、中間体4に対して、(1)〜(3)の特性を生じさせる。
【0054】
中間体4は、更に無機物粒子の相を有しており、この無機物粒子の相は、その周囲を無機結合相によって囲まれている。
【0055】
無機物粒子は、AlN、cBN、hBN、Al、MgO,ダイヤモンドおよびグラファイトの群から選択される少なくとも一つである。中間体において、金属アルコキシドが加水分解・脱水重合されて得られる無機結合相は、上述の通り、(1)〜(3)の特性を生じさせる。中間体4は、発熱体2および回路層3の少なくとも一方の熱を放熱部5に伝導する必要がある。この無機結合相は、熱伝導性を有していないわけではないが、無機物粒子は、その素材が本来的に有している特性に基づいて、中間体4に高い熱伝導性を与える。当然ながら、無機物粒子は、セラミックス粒子も含む。
【0056】
図3は、本発明の実施の形態1における中間体の構造を示す模式図である。図3においては、無機物粒子の周囲に、O元素を介して実線が繋がっている。この実線は、無機物粒子の周囲に配せられる無機粒子の相である。無機物粒子の相は、無機結合相と結合しているので、中間体4は、この無機物粒子の特性を生じさせるようになる。加えて、無機物粒子の周囲を無機結合相が配されているので、無機結合相によって生じる上述の(1)〜(3)の特性も維持される。
【0057】
AlN、cBN、hBN、Al、MgO,ダイヤモンド、グラファイト、の群から選択される少なくとも一つである無機物粒子は、高い熱伝導性を示す特性を有している。図3の結合のように、これらの無機物粒子が中間体4を構成しているので、中間体4は、高い熱伝導性を示すようになる。この結果、中間体4は、発熱体2および回路層3の少なくとも一方の熱を、効率的に放熱部5に伝導できる。なお、回路層3の熱は、回路層4そのものが生じさせる熱および発熱体2から伝導される熱を含む。発熱体2の熱は、効率的に放熱部5に伝導されるので、放熱部5はその能力を効果的に発揮でき、外部に熱を放出できる。
【0058】
また、上述のAlN、cBN、hBN、Al、MgO,ダイヤモンド、グラファイトの群から選択される少なくとも一つである無機物粒子は、いずれも高い熱伝導性を、その特性として有しているので、これらが好適に選択される。
これらの無機物粒子のそれぞれは、次に示すように、高い熱伝導性の特性を有している。無機物粒子のそれぞれは、異なる熱伝導率を有するので、製造の容易性、コストなどを考慮して、無機物粒子が選択されればよい。
AlN : 170〜250W/(m・K)
cBN : 1300W/(m・K)
hBN : 60W/(m・K)
Al : 36W/(m・K)
MgO : 42W/(m・K)
ダイヤモンド : 2300W/(m・K)
グラファイト : 230W/(m・K)
【0059】
当然ながら、中間体4は、金属アルコキシドが加水分解・脱水重合されて得られる無機結合相と無機物粒子の相との結合体であるので、コストは小さい。例えば従来技術にあるAlN系セラミックスによって放熱部を形成するのに比較すればコストは小さくなる。また、中間体4は、従来技術の樹脂とは異なり、耐熱性や十分な弾性特性を有しているので、熱や経年による劣化が生じにくい。これは、中間体4が、その素材の特性に基づいて、耐熱性や光に対して劣化しない耐光劣化特性を有するからである。
【0060】
このように、金属アルコキシドが加水分解・脱水重合されて得られる無機結合相と無機物粒子の相との結合による中間体4が導入されることで、放熱部5の性能が十分に引き出されて、放熱ユニット1は、発熱体2の熱を、効率的に放出できる。
【0061】
また、無機物粒子は、中間体4に対して、40体積%以上であることが好適である。40体積%以上であることで、中間体4に対して無機物粒子の特性を生じさせることができるようになるからである。逆に無機物粒子が、中間体4に対して40体積%未満であると、無機物粒子の特性がほとんど発揮できず、中間体4は、高い熱伝導性を発揮できなくなる。
【0062】
また好ましくは、無機物粒子は、中間体4に対して50体積%以上であることが好適である。更に好ましくは、無機物粒子は、中間体4に対して70体積%以上であることが好ましい。このような比率であることで、無機物粒子の有する熱伝導性が、中間体4に強く寄与することになり、中間体4の熱伝導性が高まるからである。
【0063】
また、無機物粒子は、中間体4における面方向の長さが、中間体4における垂直方向の長さよりも長いことが好適である。図4は、本発明の実施の形態1における中間体の正面図である。図4は、中間体4を上方から見た状態である。すなわち、図4の面は、中間体4の平面方向を示しており、図4を貫く方向は、中間体4の垂直方向を示している。また、中間体4の内部構造が可視状態であるとして示している。
【0064】
中間体4は、無機物粒子42を有している。図4では、楕円形の無機物粒子42が示されているが、楕円形に限られるものではない。また、図4は、把握を容易にするために、無機物粒子42を大きく表しているが、このような大きさである必要はない。
【0065】
図4に示されるとおり、無機物粒子42は、中間体4における平面方向の長さが、中間体4における垂直方向の長さよりも長いことも好適である。このように平面方向における長さが長いことで、無機物粒子42の平面方向における熱伝導性が高まる。すなわち、中間体4は、平面方向に高い熱伝導性を生じさせることになる。
【0066】
(中間体の他の特性)
中間体4は、金属アルコキシドが加水分解および脱水重合されて得られる無機接合相と無機物粒子の相を有しており、形成された際には、液状もしくはジェル状である。すなわち、中間体4は、この製造直後の液状もしくはジェル状の素材が放熱部5の表面に塗布される。あるいは、製造直後の液状もしくはジェル状の素材は、回路層3の表面(底面)に塗布されても良い。液状もしくはジェル状の素材が塗布された後、100℃〜300℃で熱処理されて、中間体4が形成される。中間体4を形成する素材は、製造直後は液状もしくはジェル状であって加熱および乾燥によって固化するので、放熱部5や回路層3に接合させることができる。接合すると、中間体4は、放熱部5に十分な強度をもって接続するので、放熱ユニット1の全体構成が、高い強度で形成されるようになる。
【0067】
加熱や乾燥においては、ヒーターなどの加熱機器が用いられる。塗布、加熱を経て形成された中間体4は、高い強度で放熱部5や回路層3と接合すると共に十分な弾性特性を有するので、熱膨張や他のストレスの付加による剥離や破壊を受けることが少なくなる。
【0068】
中間体4は、100kPa以上のせん断接合強度を有すると共に100kPa以上のせん断接合強度の1000倍以下の剛性率を有することが好ましい。中間体4のせん断強度が、100kPa以上であって100kPa以上のせん断接合強度の1000倍以下の剛性率を有すると、放熱部5や回路層3に接合されている中間体4が、剥離や破壊などの損傷を生じさせることが少なくなるからである。中間体4のせん断強度が、100kPaよりも小さく、剛性率が100kPa以上のせん断接合強度の1000倍以上の剛性率である場合には、せん断強度が不十分となり、製造中、運搬中、使用中における熱や外部からのストレスによって、中間体4が剥離や破壊されるなどの問題が生じうる。このため、中間体4のせん断強度が、100kPa以上であって、100kPa以上のせん断接合強度の1000倍以下の剛性率を有することが好ましい。
【0069】
中間体4は、発熱をする発熱体2(および回路層3)と放熱を行う放熱部5の中間に配置される。すなわち、熱の発生と熱の放出の間を取り持つ必要があり、絶縁性や熱伝導性といった基本性能だけでなく、せん断強度や剛性率など中間体4が接合される部材(放熱部5など)の熱膨張や熱収縮に対して追従できる十分な弾性特性も求められる。中間体4は、これらの性能を確保できるように、加工、製造、塗布、接合される必要がある。必要に応じて、無機物粒子の混合比率、塗布の厚み、熱処理の温度や時間が調整されれば良い。
【0070】
中間体4は、従来の樹脂(例えばグリースなど)を主成分とする熱的接合剤と異なり、無機結合相と無機物粒子の相の結合であることで、十分な弾性特性、結合性、絶縁性、熱伝導性のそれぞれを実現しつつ、劣化や損傷も生じさせにくい。このような中間体4が、発熱体2からの熱を放熱部5に伝導するように構成されることで、放熱ユニット1は、発熱体2の放熱を効率的に行える。特に、発熱体2は、電子部品、機械部品、半導体集積回路など様々であるので、放熱ユニット1は、電子機器や輸送機器など様々な分野に好適に適用できる。
【0071】
以上のように、中間体4は、金属アルコキシドが加水分解および脱水重合されて得られる無機結合相によって生じる十分な弾性特性、絶縁性、金属との結合性というベーシックな機能に加えて、無機物粒子の相によって生じる高い熱伝導性という付加的な機能を有する。これら2つの相の適切な混合によって、中間体4は、樹脂のような劣化を生じさせることもなく、発熱体2の熱を放熱部5に伝導できる部材としての役割を果たせる。
【0072】
(発熱体)
発熱体2は、自己動作や他からのエネルギー供給によって、熱を発生させる部材である。様々な電気部品、電子部品、機械部品、化学部品などを含む。一例として、発熱体2は、発光素子、ディスクリート素子、電子部品、半導体集積回路およびパワーデバイスの少なくとも一つを含む。すなわち、照明機器、電子機器、輸送機器および製造機器の少なくとも一つに用いられる要素を含んでいる。
【0073】
発光素子、ディスクリート素子、電子部品などは、電力の供給を受けて動作する。この動作によって、発熱が生じる。近年の照明機器や電子機器は、多くの発光素子を実装している。このため、LEDのような発光素子の一つ一つは、発熱や消費電力が小さくても、多くの発光素子が集まると大きな熱を発生させてしまう。あるいは、ディスクリート素子、半導体集積回路、パワーデバイスは、集積度の向上や性能の向上によって発熱量が高まっている。
【0074】
放熱ユニット1は、このような発熱量の高い発熱体2の熱を、放熱部5を通じて放出できる。このとき、複数の発熱体2の一つ一つに対応するように放熱ユニット1が配置されても良いし、複数の発熱体2に対応するように放熱ユニット1が配置されても良い。
【0075】
図5は、本発明の実施の形態1における放熱ユニットの実装状態を示す側面図である。図5は、上記前者の複数の発熱体の一つ一つに対応するように、放熱ユニットが配置された状態を示している。図5では、照明機器や電子機器が複数の発熱体2A〜2Dを有している(図示の都合であっても、もちろん、更に多くの発熱体を備えていても良い)。発熱体2A〜2Dに対応する回路層3は、共通であるが、もちろん個々でも良い。放熱ユニット1A〜1Dのそれぞれは、発熱体2A〜2Dのそれぞれに対応して実装される。放熱ユニット1Aは、中間体4Aと放熱部5Aを有しており、放熱ユニット1Bは、中間体4Bと放熱部5Bを有している。
【0076】
放熱ユニット1Aは主として発熱体2Aの熱を放出し、放熱ユニット1Bは主として発熱体2Bの熱を放出し、放熱ユニット1Cは主として発熱体2Cの熱を放出し、放熱ユニット1Dは主として発熱体2Dの熱を放出する。複数の発熱体2のそれぞれに対応する放熱ユニット1が設けられることで、発熱体2全体の放熱効果が高まるメリットがある。
【0077】
図6は、本発明の実施の形態1における放熱ユニットの実装状態を示す側面図である。図6は、図5と異なり、複数の発熱体2全体に対応して実装される。このため、発熱体2A〜2Dの全てに対応して、中間体4と放熱部5が設けられている。中間体4は、複数の発熱体2A〜2D全体からの熱を放熱部5に伝導する。放熱部5は、伝導された複数の発熱体2A〜2Dの熱を放出する。放熱ユニット1が複数の発熱体2に対応するように設けられることで、放熱ユニット1は、発熱体2全体を一度に放熱できて効率的である。もちろん、実装に関するコストも低減できる。
【0078】
発熱体2は、実装される機器の種類や仕様に応じて密集して実装されたり、緩やかな隙間をもって実装されたりする。あるいは、複数の発熱体2の全てが一様に発熱する場合と、発熱する発熱体2と発熱しない発熱体2とが、時間や動作によって入れ替わる場合とがある。放熱ユニット1は、これらの違いに応じて、図5のように個々の発熱体2に実装されたり、複数の発熱体2の全体に対応するように実装されたりする。
【0079】
(回路層)
回路層3は、電子部品や発光素子などの発熱体2との電気信号のやり取りのために設けられる。回路層3は、発熱体2との電気信号のやり取りを行う配線がプリントされたプリント基板でもよいし、電極と導電線とが実装された回路基板であってもよい。プリント基板である場合には、インクジェット形式やスクリーン印刷によって金属成分をパターニングすることで、電極や配線が形成される。あるいは金属箔が蒸着されて電極や配線が形成されても良い。あるいはめっきによって電極や配線が形成されても良い。
【0080】
回路層3は、このように電気信号をやり取りする電極や配線を形成し、この電極や配線と発熱体2とを電気的に接続する。また、回路層3は、必要に応じて発熱体2とワイヤーで接続される。ワイヤーは、金、白金、銅、アルミニウムなど、導電性の高い素材で形成される。
【0081】
回路層3は、発熱体2と対向する位置に設けられてもよいし、発熱体2と対向する位置以外において設けられても良い。回路層3は、発熱体2への電気信号の供給を目的としているので、発熱体2と対向する位置に必ずしも設けられなくても良いからである。
【0082】
すなわち、中間体4おおよび放熱部5の少なくとも一方の表面は、発熱体2と電気的に接続する回路層3および回路基板の少なくとも一方を備えることになる。発熱体2や発熱体2に電気信号を与える場合に、回路層3が発熱体2の底面に必要な場合とそうでない場合があるので、回路層3は、中間体4に積層される領域と放熱部5の表面に積層される領域とが生じうる。
【0083】
(放熱部)
放熱部5は、中間体4から伝導された発熱体2および回路層3の少なくとも一方の熱を放出する。ここで、熱源は、発熱体2であるが、回路層3そのものも発熱することもありえるし、発熱体2の熱を回路層3が受けることもありえる。このため、中間体4は、発熱体2および回路層3の熱を伝導する。この伝導される熱は、発熱体2由来である場合と回路層3由来である場合とを含みうる。
【0084】
放熱部5は、金属や合金などの熱伝導率の高い素材で形成されており、中間体4によって伝導された熱を外部に放出する。熱伝導率の高い素材の例として、銅やアルミニウムが好適に採用される。これらの素材は、熱伝導率が高いだけでなく、コストも低く加工性も高いからである。
【0085】
放熱部5は、板材や立体形状を有しており、伝導された熱をその内部を平面方向や垂直方向に拡散し、その表面から外部に放出する。放熱部5は、その表面積を大きくするために、板状であったり、表面に凹凸を有していたりすることも好適である。放熱部5は、放熱板やヒートシンクなど、様々な要素を備えても良い。
【0086】
また、表面に多数のフィンが設けられていても良い。図7は、本発明の実施の形態1におけるフィンを有する放熱部の側面図である。放熱部5は、基体51とフィン52を備えている。基体51の表面(裏面)に多数のフィン52が取り付けられている。多数のフィン52が備わっていると、放熱部5全体の表面積が大きくなり、放熱部5の放熱能力が高まる。また、フィン52は、隣接するフィン52との間に狭小な空間を形成する。このフィン52同士に囲まれる空間は、基体51からの熱によって空気の対流を生じさせる。この空気対流によって、基体51やフィン52に伝導された熱が外部へ放出される。このように、放熱部5が多数のフィン52を備えていることで、放熱部5の放熱能力は更に高まる。
【0087】
また、放熱部5は、外気にさらされて外気へ熱を放出するだけでなく、液冷ジャケットに熱的に接続して、液冷ジャケットを通じて熱を放出することでも良い。あるいは、液体の冷却シートに放熱部5が熱的に接続することで、放熱部5は、伝導された熱を放出しても良い。更には、放熱部5は、別の部材を用いて熱を更なる別の場所に移動させて、移動させた位置において放出することもよい。放熱部5に対して冷却風を吹き付ける冷却ファンが設けられても良い。
【0088】
放熱部5は、ここに列挙した様々な構成に限られず、公知技術として知られている放熱の構造やシステムを備えていれば良い。このような放熱部5が備わることによって、放熱ユニット1は、発熱体2の熱を効率的に放出できる。当然ながら、樹脂ではない中間体4が放熱部5に備わって熱を伝導することで、発熱体2からの熱が効率的に放熱部5に到達するので、放熱部5はその放熱性能を遺憾なく発揮できるようになる。
【0089】
実施の形態1で説明した中間体4は、金属アルコキシドに基づく無機結合相にある種の無機物粒子の相が付加されることで、熱伝導を実現できる。この熱伝導に加えて、十分な弾性特性、絶縁性、金属との結合性が高く、耐久性にも優れている。このような中間体4が実現されることで、様々な発熱体2の熱を放出する放熱ユニット1が実現できる。
【0090】
このため、中間体4は、それ単体として流通したり、利用されたりしてもよい。
【0091】
(実施の形態2)
【0092】
次に実施の形態2について説明する。実施の形態2では、実施の形態1で説明した放熱ユニット1が適用される機器について説明する。
【0093】
放熱ユニット1が放熱を行いたい対象となる発熱体は、発光素子、ディスクリート素子、電子部品、半導体集積回路、機械部品、パワーデバイスおよび化学品の少なくとも一つである。もちろん、ここに列挙したものに限定されることを意図するのではなく、あくまでも例示である。熱を発生する発熱体であれば、実施の形態1で説明した放熱ユニット1は、様々に適用される。
【0094】
図8は、本発明の実施の形態2における照明機器のブロック図である。省エネや環境保護の観点から、多数のLED21が実装された照明機器10が、多く用いられるようになっている。多数のLED21が実装されると、個々の発熱が総計されるので、かなりの熱が発生する。また、LED21の発光を強くするためには、大きな電流を付与する必要があり、この場合にもLED21からの発熱が大きくなる。
【0095】
照明機器10は、複数のLED21に放熱ユニット1を実装している。また、複数のLED21のそれぞれに放熱ユニット1が実装されている。もちろん、複数のLED21に対してまとめた形態で放熱ユニット1が実装されても良い。また、照明機器10は、LED21などを格納する筐体11と、回路層3(回路基板も同じ)を制御する制御部6と、電力を供給する電源7を備えている。電源7は、外部電源(AC電源など)からの電力を制御部6などに供給したり、自らが蓄電する電力を制御部6などに供給したりする。制御部6は、複数のLED21の発光パターンや発光量を制御する制御信号を生成して、回路層3に出力する。回路層3は、この制御信号に基づいて、必要な電気信号を複数のLED21に付与する。電気信号を受けた複数のLED21は、電気信号の特性に応じて発光したり消灯したりする。
【0096】
複数のLED21A〜21Dのそれぞれには、放熱ユニット1A〜1Dが設けられている。放熱ユニット1Aは、中間体4Aと放熱部5Aを有しており、LED21Aの熱を放出する。同様に放熱ユニット1Bは、中間体4Bと放熱部5Bとを備えており、LED21Bの熱を放出する。放熱ユニット1C、1Dも同様である。
【0097】
照明機器10が備える複数のLED21に放熱ユニット1が実装されることで、照明機器10は、その発熱を抑えることができ、性能劣化や故障を防止できる。発熱体となるLED21の熱は、金属アルコキシドが加水分解・脱水重合されて得られる無機結合相と無機物粒子の相とを備える中間体4によって放熱部5に伝導される。中間体4は、樹脂と異なり光に対する劣化に強く、熱伝導も良い。このため、中間体4は、LED21の熱を確実かつ効率的に放熱部5に伝導する。中間体4はその十分な弾性特性によって、加わる熱やストレスによって剥離したり損傷したりしにくい。このため、照明機器10のように、点灯と消灯が繰り返される場合でも放熱ユニット1が劣化することが低減される。
【0098】
図8では、LED21A〜21Dのそれぞれに放熱ユニット1A〜1Dが実装されているが、LED21A〜21D全体に一つの放熱ユニット1A〜1Dが実装されても良い。あるいは、LED21がマトリクス状に配置されている場合には、列ごとに放熱ユニット1が実装されても良い。図9は、本発明の実施の形態2における照明機器の底面図である。図9は、照明機器10を底面側から内部を透視した状態を示している。
【0099】
照明機器10は、マトリクス状に配置されたLED21を備えている。放熱ユニット1は、このマトリクス状のLEDの各列に設けられている。放熱ユニット1Aは最上位列に実装される複数のLED21の熱を放出する。このとき、放熱ユニット1Aは、中間体4と放熱部5を備えており、中間体4が、最上位列に実装される複数のLED21の熱を放熱部5に伝導し、放熱部5がこの熱を外部に放出する。他の列に設けられる放熱ユニット1B〜1Dも、同様である。
【0100】
放熱ユニット1は、照明機器10だけではなく、様々な電子機器にも適用される。例えば、ディスクリート素子、電子部品、半導体集積回路およびパワーデバイスの少なくとも一つであるような発熱体2が実装されている電子機器に、放熱ユニット1は、好適に適用される。
【0101】
電子機器は、例として、パーソナルコンピュータ、サーバー機器、ノートブック型パソコン、液晶画像装置、計測機器など、発熱体となりうる上述の要素が様々に実装されている機器を含む。これらの電子機器は、その仕様状態によって、発熱体が高い熱を発生させることが多い。ヒートシンクなどの放熱部材を備えていても、発熱体からの熱が放熱部材に効率的に伝導されないことも多い。このような電子機器に実施の形態1で説明した放熱ユニット1が実装されると、中間体4によって発熱体の熱が放熱部5に伝導されて放出される。電子機器も、照明機器10と同様に発熱を繰り返すので、発熱体から熱を伝導する中間体4には、ストレス付加が大きい。しかし、実施の形態1で説明した中間体4は、十分な弾性特性があり、ストレス付加に対する耐久性も高いので、損傷等を生じさせること無く熱を伝導できる。この結果、電子機器全体の発熱を抑えることができる。当然ながら、電子機器の性能劣化や故障を防止できる。
【0102】
また、放熱ユニット1は、電子機器だけでなく、航空機、自動車や大型車両などの輸送機器にも適用できる。これらの輸送機器は、エンジンや照明など、発熱を生じさせる発熱体を様々に実装している。放熱ユニット1は、これら発熱体に適用される。この場合にも、中間体4は、高い十分な弾性特性をもって劣化等することなく、効率的に放熱部5に熱を伝導できる。すなわち、放熱ユニット1は、高い耐久性をもって発熱体の熱を放出できる。結果として、輸送機器の性能劣化や故障を防止できる。
【0103】
放熱ユニット1は、製造機器や製造装置に適用されることも好適である。製造機器や製造装置は、熱を用いるものがある。例えばアーク装置やアニール装置は、加工する素材へ熱を与える。このため、アーク装置やアニール装置は、筐体を備えている。筐体内部は、熱を有している。放熱ユニット1は、この筐体内壁に設けられて、内部の熱を筐体外部や特定の放出路に放出できる。
【0104】
以上のように、放熱ユニット1を備える照明機器、電子機器、輸送機器および製造機器は、熱による性能劣化や故障を防止できる。
【0105】
(実施例)
LEDが実装されるLED基板に放熱ユニット1が実装される実施例について説明する。この場合、放熱ユニット1は、LEDからの熱を放出するのに適したデバイスである。図10は、本発明の実施例のブロック図である。図10は、LED用放熱ユニット100を底面から透視状態で示している。このため、図10では、中間体4や放熱部5が重なってしまっている。発熱体は、単数または複数のLED29である。ただし、狭い領域に大きな熱が生じやすい少数のLEDが狭い領域に実装されている状態に最適に適用される。
【0106】
回路層3は、LEDに電気信号を与える金属パターン33である。中間体4は、無機物粒子の相と、該無機物粒子の相の周囲に配せられる無機結合相を有する。ここで、無機結合相は、金属アルコキシドが加水分解および脱水重合されて得られるSi−Oネットワークである。このSi−Oネットワークにより、無機結合相およびこれを含む中間体4は、十分な弾性特性、金属との結合性、絶縁性を有するようになる。
【0107】
無機物粒子は、主として粒子径0.01〜10μmの範囲に入るダイヤモンド粒子である。この粒子径0.01〜10μmの範囲に入るダイヤモンド粒子によって、これを含む中間体4は、高い熱伝導性を有するようになる。このとき、無機物粒子であるダイヤモンド粒子の比率が中間体4に対して55体積%である場合には、中間体4の熱伝導率は、8W/m・Kである。ダイヤモンド粒子の比率が中間体4に対して70体積%である場合には、中間体4の熱伝導率は、25W/m・Kである。ダイヤモンド粒子の比率が中間体4に対して90体積%である場合には、中間体4の熱伝導率は、400W/m・Kである。このように、ダイヤモンド粒子が無機物粒子として用いられる中間体4は、高い熱伝導性を示す。
【0108】
また、放熱部5は、銅合金で形成されているヒートシンクである。図10では、底面から示す都合上、ヒートシンクの形状を明示できないが、市販されている板状であったりフィンが設けられている一般的なヒートシンクであったりする。また、中間体4は、金属である放熱部5に確実に結合する。
【0109】
LED放熱ユニット100は、発熱体であるLED29で発生する熱を、中間体4を介して放熱部5に伝導させる。放熱部5は、伝導された熱を、外部に放出する。このとき、中間体4は、高い熱伝導性を有すると共に、十分な弾性特性などの特性も有する。この結果、効率よくLED29の熱を放熱部5に伝導できる。もちろん、十分な弾性特性や金属との結合性を有しているので、中間体4は、放熱部5と剥離したり損傷したりすることもない。このように、LED放熱ユニット100は、実装されているLED29の熱を効率的に放出できる。
【0110】
本発明の放熱ユニット1は、このようにLED放熱ユニット100などにおいて実用される。
【0111】
以上、実施の形態1〜2で説明された放熱ユニットは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0112】
1 放熱ユニット
2 発熱体
3 回路層
4 中間体
5 放熱部
6 制御部
7 電源
10 照明機器
11 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体から伝導される熱を放出する放熱部と、
前記発熱体からの熱を前記放熱部に伝導する中間体と、を備え、
前記中間体は、無機物粒子の相と、該無機物粒子の相の周囲に配せられる無機結合相を有し、
前記無機結合相は、金属アルコキシドが加水分解および脱水重合されて形成される無機材質を含み、
前記金属アルコキシドをなす金属元素は、Al、Mg,Si、Ti、Zr、Beの群から選択される1以上であり、
前記中間体は、前記放熱部の表面に接合している、放熱ユニット。
【請求項2】
前記無機物粒子は、AlN、cBN、hBN、Al、MgO,ダイヤモンドおよびグラファイトの群から選択される少なくとも一つである、請求項1記載の放熱ユニット。
【請求項3】
前記無機物粒子は、前記中間体に対して、40体積%以上であり、好ましくは50体積%以上であり、更に好ましくは70体積%以上である、請求項1又は2記載の放熱ユニット。
【請求項4】
前記無機物粒子は、前記中間体における面方向の長さが、前記中間体における垂直方向の長さよりも長い、請求項1から3のいずれか記載の放熱ユニット。
【請求項5】
前記中間体は、前記放熱部の表面に塗布された後、100〜300℃で熱処理されて形成される、請求項1から4のいずれか記載の放熱ユニット。
【請求項6】
前記中間体は、100kPa以上のせん断接合強度を有すると共に100kPa以上のせん断接合強度の1000倍以下の剛性率を有して、前記放熱部に接合している、請求項1から5のいずれか記載の放熱ユニット。
【請求項7】
前記中間体および前記放熱部の少なくとも一方の表面は、前記発熱体と電気的に接続する回路基板および回路層の少なくとも一つを設ける、請求項1から6のいずれか記載の放熱ユニット。
【請求項8】
前記発熱体は、発光素子、ディスクリート素子、電子部品、半導体集積回路およびパワーデバイスの少なくとも一つを含む、請求項1から7のいずれか記載の放熱ユニット。
【請求項9】
前記発熱体は、照明機器、電子機器、輸送機器および製造機器の少なくとも一つに用いられる要素を含む、請求項1から8のいずれか記載の放熱ユニット。
【請求項10】
発熱体と、
前記発熱体と電気的に接続する回路層と、
前記回路基板と熱的に接続する請求項1から11のいずれか記載の放熱ユニットと、
前記回路基板を制御する制御部と、を備え、
前記発熱体は、発光素子である照明機器。
【請求項11】
発熱体と、
前記発熱体と電気的に接続する回路層と、
前記回路基板と熱的に接続する請求項1から9のいずれか記載の放熱ユニットと、
前記回路基板を制御する制御部と、を備え、
前記発熱体は、ディスクリート素子、電子部品、半導体集積回路およびパワーデバイスの少なくとも一つである電子機器。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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