説明

放熱体

【課題】発熱体との接触部における放熱体を厚くして、飽和温度に達するまでの時間を遅らせるとともに、飽和温度自体も低くする放熱フィンの構造を提供する。
【解決手段】放熱体1は、発熱体を接触させる接触部と、接触部の周囲に形成された周縁部12とを備えた放熱体において、接触部は、周縁部より厚く形成され、放熱体の厚さは、接触部から周縁部に向かって徐々に薄く形成され、接触部の近傍に形成される放熱フィンは、周縁部に形成される放熱フィンの高さより低く形成され、且つ、周縁部に形成される放熱フィンより密に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体などの発熱体に取り付けられて、前記発熱体からの熱を放熱するように多数の放熱フィンが形成された放熱体の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の放熱体の特性としては、飽和温度に達するまでの時間をできるだけ遅らせることと、飽和温度自体ができるだけ低いことが望まれている。
飽和温度に達するまでの時間を遅らせるためには、放熱体の厚みを増やすことが好ましいが、ダイカスト製などの放熱体では、厚みを増やすことはコスト上昇の問題や、重量増加の問題がある。
また、飽和温度自体を低くするためには、放熱フィン等による表面積を増やすことが望ましいが、表面積を増やすためには、放熱体の外形を大きくする必要があるので、近年の小型された無線機器等には採用することが困難である。
【0003】
放熱体の重量を小さくしても放熱効果の低下を防ぐために、放熱体の厚さが、周縁に近づく程徐々に薄くなる肉薄部が設けた放熱器が、特許文献1において提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−242670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の放熱器では、放熱体の厚さを、周縁に近づく程徐々に薄くすることにより、確かに、発熱体との接触部の厚さを相対的に厚くできるので、放熱体の重量増加を防ぐとともに、飽和温度に達するまでの時間をある程度は遅らせることが期待できるが、発熱体との接触部の厚さを積極的に厚くするものではないので、飽和温度に達するまでの時間を十分に遅らせることはできなかった。
また、発熱体との接触部の近傍では放熱体が厚いので、放熱フィンを含めた放熱体の外形が膨らまないようにするためには、発熱体との接触部の近傍に設けられた放熱フィンの長さが周縁部に設けられた放熱フィンの長さより短くなり、発熱体との接触部の近傍における表面積が小さくなり飽和温度が高くなるという問題がある。
【0006】
本発明においては、以上の問題に鑑みて、発熱体との接触部における放熱体を厚くして、飽和温度に達するまでの時間を遅らせるとともに、飽和温度自体も低くできる構造を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る請求項1の放熱体は、
発熱体を接触させる接触部と、前記接触部の周囲に形成された周縁部とを備えた発熱体において、
前記接触部は、前記周縁部より厚く形成され、当該発熱体の厚さは、前記接触部から前記周縁部に向かって徐々に薄く形成され、
前記接触部の近傍に形成される放熱フィンは、前記周縁部に形成される放熱フィンの高さより低く形成され、且つ、前記周縁部に形成される放熱フィンより密に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る放熱体よれば、接触部は、周縁部より厚く形成され、当該発熱体の厚さは、前記接触部から前記周縁部に向かって徐々に薄く形成されているので、前記接触部においては飽和温度に達するまでの時間を遅らせることができる。
また、前記接触部の近傍に形成される放熱フィンは、前記周縁部に形成される放熱フィンの高さより低く形成されているので、前記接触部が厚いにも関わらず、前記接触部においては、放熱フィンを含めた放熱体の外形が膨らまない。加えて、前記接触部の近傍においては、放熱フィンが密に形成されているので、放熱フィンが低いために1つの放熱フィン当たりの表面積が小さいが、全体としての表面積は大きくすることができ、放熱体の飽和温度自体を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る放熱体の斜視図である。
【図2】前記放熱体のA−A線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
本発明に係る放熱体の斜視図を示した図1において、
1はアルミダイカスト製の放熱体であり、図上の上面が外面であり、当該放熱体の中央部11と周縁部12には多数の放熱フィン2が形成されている。
前記中央部11は、図上の上面側が盛り上がって形成されており、前記中央部11に形成された複数の放熱フィン21は、高さは低いが互いに若干近接させて配設されており、密に配設されている。
【0011】
前記周縁部12は前記中央部11より図上低くなっており、前記周縁部12に形成された複数の放熱フィン22は、高さは前記中央部11の放熱フィン21より高いが、互いに若干離して配設されており、前記中央部11の放熱フィン21より相対的に粗に配設されている。
【0012】
次に、本発明に係る放熱体1を、その断面図を示した図2を参照して、さらに説明する。
放熱体1の下面のほぼ中央部には、発熱体としての半導体3を取り付けるための接触部13が形成されており、前記接触部13には半導体3が接触させた状態で取り付けられている。なお、図中の矢印は、熱の伝達を模式的に示したものである。
前記放熱体1の前記接触部13の近傍は、前記周縁部12より厚く形成され、当該発熱体1の厚さは、前記中央部11の前記接触部13から前記周縁部12に向かって徐々に薄く形成されている。
【0013】
前記接触部13の上面の中央部11には、複数の放熱フィン21が形成されている。これらの放熱フィン21の先端は、前記周縁部12に形成された放熱フィン22の先端と、ほぼ同じ高さに揃えられている。
しかし、前記接触部13の上面は盛り上がっているため、この部分の放熱フィン21の基部が盛り上がり、この部分の放熱フィン21の実質的な高さは、前記周縁部12に形成された放熱フィン22より低くなっている。
前記中央部11に形成された複数の放熱フィン21は、前述したように周縁部12より密に配設されている。
また、隣接する放熱フィン21、21の間、および隣接する放熱フィン22、22の間、および隣接する放熱フィン21と放熱フィン22との間の少なくとも何れかには、低い凸条4が形成されている。
【0014】
前記周縁部12に形成される放熱フィン22の高さは、前記中央部11に形成される放熱フィン21より相対的に高く形成されている。
【0015】
前記周縁部12の最も外側の放熱フィン23の先端には、隣接する内側の放熱フィン22より若干低い段差5が形成されている。
【0016】
本発明に係る放熱体1は、上述したように、
前記接触部13の厚さは厚く形成されているので、前記半導体3の初期の発熱を十分に吸収することができ、当該放熱体1が飽和温度に達するまでの時間を遅らせることができる。
また、前記放熱体1の厚みは、前記接触部13から前記周縁部12に向かって徐々に薄く形成されているので、前記半導体3から前記接触部13に伝わった熱は速やかに周縁部12まで伝わる。
【0017】
前記中央部11においては、放熱フィン21の高さは相対的に低いが、密に配設されているので、全体的な表面積は十分に大きくなり、十分な放熱効果が得られる。したがって、前記中央部11における飽和温度自体を低くすることができる。
また、前記中央部11には、凸条4が形成されているので、中央部11の表面積がさらに広くなり、飽和温度自体を十分に低くすることができる。
なお、凸条4は、中央部11だけでなく周縁部12にも形成されているので、周縁部12の表面積もさらに広くなり、飽和温度自体を十分に低くすることができる。凸条4は、当該放熱体1のどの部分に設けても、その分だけ表面積をさらに広くすることができる。
【0018】
前記周縁部12においては、放熱フィン22は相対的に粗に配設されているが、個々の放熱フィン22が相対的に高いため、全体的な表面積は十分に大きくなり、十分な放熱効果が得られる。したがって、前記周縁部12においても飽和温度自体を低くすることができる。
前記接触部13の前記中央部11の放熱フィン21の先端は、前記周縁部12の放熱フィン22の先端とほぼ同じ高さに揃えられているので、意匠的に問題がない。
【0019】
さらに、前記周縁部12の最も外側の放熱フィン23の先端には、隣接する内側の放熱フィン22より若干低い段差5が形成されているので、放熱効果を高めるためにファン等が設けられた際に、前記段差5を通って周囲との間に空気の流れが形成されやすくなり、放熱効果を高めることができる。
【0020】
以上の説明においては、前記接触部は、放熱体のほぼ中央部に形成された例で説明したが、放熱体の中央部以外の部分に接触部を形成しても、その部分の放熱体を厚くすればよい。
また、前記放熱体の一方の面(図1、2においては下面)に接触部を設け、他方の面に放熱フィンを設けたが、何れか一方の面に接触部を設け、同じ面に放熱フィンを設けてもよい。また、放熱フィンは両面に設けると、さらに放熱効果が向上し、飽和温度自体を低くすることができる。
また、前記接触部においては、放熱体の一方の面を盛り上がらせて厚く形成したが、放熱体の両面共に盛り上がらせて厚く形成すると、さらに、飽和温度に達するまでの時間を遅らせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明に係る放熱体は、無線機器における半導体の放熱に限らず、種々の発熱体の放熱のための放熱体に採用することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 放熱体
11 中央部
12 周縁部
13 接触部
2 放熱フィン
21 中央部の放熱フィン
22 周縁部の放熱フィン
23 最も外側の放熱フィン
3 半導体
4 凸条
5 段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体を接触させる接触部と、前記接触部の周囲に形成された周縁部とを備えた発熱体において、
前記接触部は、前記周縁部より厚く形成され、当該発熱体の厚さは、前記接触部から前記周縁部に向かって徐々に薄く形成され、
前記接触部の近傍に形成される放熱フィンは、前記周縁部に形成される放熱フィンの高さより低く形成され、且つ、前記周縁部に形成される放熱フィンより密に形成されていることを特徴とする放熱体。
【請求項2】
前記接触部の近傍に形成された放熱フィンの先端と、前記周縁部に形成された放熱フィンの先端とは、ほぼ同じ高さに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の放熱体。
【請求項3】
前記放熱フィンの間には、低い凸条が形成されていることを特徴とする請求項1または2の何れか1項に記載の放熱体。
【請求項4】
前記周縁部の最も外側の放熱フィンの先端には、隣接する内側の放熱フィンより若干低い段差が形成されていることを特徴とする請求項1、2、3の何れか1項に記載の放熱体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−77606(P2013−77606A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215040(P2011−215040)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】