説明

放熱器、及び放熱システム

【課題】フィンの放熱面を有効に利用して、冷却効果を高めることが可能な放熱器を提供する。
【解決手段】放熱器1は、平板状の基板2と放熱部3とを備えている。発熱体5は基板2の一方の面に取り付けられる。放熱部3は、基板2において発熱体5とは反対側の面に設けられている。放熱部3は、第1の放熱部31と第2の放熱部32とによって構成されている。第1の放熱部31には、高さが一定の複数の長尺フィン41が配置されている。第2の放熱部32には、長尺フィン41と、長尺フィン41よりも高さが低い短尺フィン42とが、配置されている。第1の放熱部31は、ファンから相対的に近い位置に配置され、第2の放熱部32は、ファンから相対的に遠い位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などの発熱体を冷却する放熱器、及びその放熱器を備えた放熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車や燃料電池自動車などの電動車両のように、電動機によって走行する車両が知られている。このような電動車両には、電動機の他に、充放電可能なバッテリ、電動機とバッテリとの間で授受される電力を制御するインバータなどが搭載されている。インバータは、半導体素子のスイッチング動作によって電力変換を行うものであり、スイッチング動作によって半導体素子が発熱する。半導体素子などの電子機器からの熱を除去して、電子機器の過熱を防止するために、放熱器が取り付けられる。
【0003】
従来技術に係る放熱器においては、板状の基板の一方の面に複数のフィンが一体的に形成されている。フィンの形状はすべて同じであり、各フィンは等間隔に設けられている。そして、基板においてフィンが設けられていない側の面に、電子機器などの発熱体(被冷却物)を密着させて取り付けることにより、熱が放熱器に伝わり、フィンから空気に熱伝導されて、電子機器が冷却される。この場合、フィンの面積が大きいほど大きな冷却効果が得られる。冷却効果を高めるために放熱器の周囲にファンで空気を流し、強制空冷を行う場合がある。この場合、フィンの面積に加えて、フィン表面での流速が速いほど冷却効果が高くなる。
【0004】
ところで、インバータなどの発熱体に対して強制空冷を行う場合には、車両内における高さ方向の搭載スペースの制約や、ダクト形状の簡素化のために、遠心ファンが用いられることがある。例えば、車両のラゲージルーム(荷室)のスペースを確保するために、リアシートの後にバッテリパックを重ねて搭載することがある。この場合、バッテリパックとリアシートとの間にスペースができてしまい、このスペースがデッドスペースとなる。このデッドスペースを活用するために、電子機器のための放熱器をデッドスペースに設置する場合には、放熱器は細長い形状となる。ファンを設置するためのスペース(例えば高さ方向の搭載スペース)が限られているため、ファンには遠心ファンが用いられる。この遠心ファンは、モータの回転軸方向から吸い込んだ空気を、回転軸に直交する径方向に排出する。
【0005】
しかしながら、各フィンが等間隔に配置された従来技術に係る放熱器では、各フィンでの通風抵抗が同じになる。遠心ファンからの空気の流れは旋回流であるため、遠心ファンの排出口の近く(排出口側)に配置されたフィンでは空気の流量が過剰となり、排出口から遠い位置(排出口とは反対側の位置)に配置されたフィンでは空気の流量が不足して、フィンの放熱面が有効に利用されていないという問題があった。このように、従来技術に係る放熱器では、空気が各フィンに均一に供給されず、送風による十分な冷却効果が得られなかった。
【0006】
一方、下記の特許文献1には、空気の流量が不足する中央部の通風抵抗を小さくし、空気が各フィンに均一に供給されることを目的とした放熱器が開示されている。図3を参照して、この従来技術に係る放熱器について説明する。図3は、従来技術に係る放熱器を示す図である。図3(a)は、従来技術に係る放熱器の正面図であり、図3(b)は、従来技術に係る放熱器を上から見た平面図である。従来技術に係る放熱器100は、平板状の基板110と放熱部120とを備えている。電子機器などの発熱体140は、基板110の一方の面に取り付けられる。放熱部120は、基板110において発熱体140とは反対側の面に設けられている。放熱部120は、板状の複数のフィン130によって構成されている。各フィン130は、その板面が、図示しないファンによって生成される空気流の流路と平行になるように一定間隔で配置されている。そして、放熱部120は、放熱部120の中央部121ではフィン130の間隔(ピッチ)が粗に、両方の端部122ではフィン130の間隔(ピッチ)が密になるように形成されている。すなわち、隣り合うフィン130間の距離が、両方の端部122よりも中央部121において長くなっている。発熱体140からの熱は、基板110を介して各フィン130に伝わるようになっている。このような構成において、ファンからの空気が放熱部120に供給されることにより、発熱体140の冷却が図れるようになっている。中央部121ではフィン130の間隔が長くなっているため、通風抵抗が小さくなって空気の一部が両方の端部122から回り込むことにより、空気が放熱部120に均一に供給される。
【0007】
また、特許文献1には、図4に示す放熱器が開示されている。図4は、従来技術に係る放熱器を上から見た平面図である。図4に示す放熱器100においては、中央部121に配置されたフィン130の流路方向の長さが、両方の端部122に配置されたフィン130の流路方向の長さよりも短くなっている。そのことにより、中央部121では通風抵抗が小さくなって空気の一部が両方の端部122から回り込み、空気が放熱部120に均一に供給される。
【0008】
また、下記の特許文献2に記載の放熱器においては、厚さが最も厚いフィンが放熱器の端部に配置され、厚さが最も薄いフィンが放熱器の中央に配置されている。このように厚さの異なるフィンを配置することにより、隣り合うフィンの間隔は、放熱器の端部よりも中央部において長くなるため、中央部の通風抵抗が小さくなる。その結果、中央部にも空気が十分に流れて放熱効果が高くなる。
【0009】
また、下記の特許文献3には、遠心ファンを用いたヒートシンクが開示されている。このヒートシンク内を通る空気の吹き出し口には、フィンが配置されていない空間が形成されている。遠心ファンからの空気流を、この空間を通すことにより速い流れに変えて、吹き出し口から筐体外に直接排出することにより、筐体内の周辺に位置する発熱体を冷却する。
【0010】
また、下記の特許文献4には、フィンの高さが、半導体素子が設置された受熱部の中心部分で最も高くなり、半導体素子から離れた位置では低くなっている半導体冷却装置が開示されている。半導体素子からの距離によって冷却に寄与する度合いがフィンによって異なるため、半導体素子から遠い位置に配置されたフィンの長さを短くすることにより、半導体冷却装置の小型化を図っている。
【0011】
また、下記の特許文献5には、冷却媒体の流入口から流出口に向かうに従って、フィンの高さを高くすることにより、流入口から流出口に向かうに従って冷却効果が高められた半導体冷却装置が開示されている。そのことにより、冷却媒体の流れ方向に沿って配置された半導体チップ間の温度差を小さくし、すべての半導体チップの温度を均一に近づけるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平9−64568号公報
【特許文献2】特開平5−206339号公報
【特許文献3】国際公開第2007/099662号
【特許文献4】特開2000−92819号公報
【特許文献5】特開2010−153785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
複数のフィンを備えた放熱器の冷却能力は、フィンの放熱面積と空気流量とに主に依存する。そのため、フィンの間隔(ピッチ)を狭くし、圧損の小さいストレートフィンが一般的に用いられる。ストレートフィンを備えた放熱器の製造方法としては、フィンの間隔をダイカスト等よりも狭くすることができ、製造コストが比較的安い押し出し製法が用いられる。
【0014】
押し出し製法では、フィンを等間隔に製造しないと、左右の金型からの応力の違いにより、フィンの根元に変形が生じる場合がある。上記の特許文献1,2に記載の放熱器では、フィンの間隔を部分的に変えているため、押し出し製法によって製造した場合には、フィンの根元に変形が生じるおそれがある。また、図4に示す放熱器を製造する場合、押し出し製法によって得られた製造物を加工する必要があるため、製造の工程数が増え、製造コストが高くなるおそれがある。また、流路方向に長さの異なるフィンを、押し出し製法によって形成することは困難である。また、特許文献1,2に記載の放熱器では、中央部に配置されたフィンの間隔が長いため、中央部における放熱面積が減少し、冷却能力の低下を招くおそれがある。
【0015】
また、特許文献3に記載のヒートシンクにおいては、フィンが配置されていない空間が形成されているが、この空間は、遠心ファンからの空気流を筐体外に直接排出するためのものである。各フィンでの通風抵抗については考慮されておらず、遠心ファンからの空気を、各フィンに対して均一に供給することは困難である。
【0016】
また、特許文献4に記載の半導体冷却装置においては、冷却に寄与する度合いが低いフィンの長さを短くしているが、各フィンでの通風抵抗については考慮されていない。そのため、遠心ファンからの空気を、各フィンに対して均一に供給することは困難である。
【0017】
また、特許文献5に記載の半導体冷却装置においては、冷却媒体の流入口から流出口に向かうに従ってフィンの高さを高くしているが、各フィンでの通風抵抗については考慮されていない。そのため、遠心ファンからの空気を、各フィンに対して均一に供給することは困難である。
【0018】
本発明の目的は、フィンの放熱面を有効に利用して、冷却効果を高めることが可能な放熱器、及びその放熱器を備えた放熱システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、ファンの排出口から供給される空気流の流路に配置され、前記空気流により冷却されて発熱体を冷却する放熱器において、一方の面に前記発熱体が取り付けられる基板と、前記基板において前記発熱体とは反対側の面に配置された複数のフィンを有する放熱部と、を備え、前記ファンの前記排出口から相対的に近い位置に前記流路の上流から下流にかけて配置されるフィンによる通風抵抗よりも、前記ファンの前記排出口から相対的に遠い位置に前記流路の前記上流から前記下流にかけて配置されるフィンによる通風抵抗が小さい、ことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る放熱器であって、前記放熱部は、高さが一定の複数の長尺のフィンが配置された第1の放熱部と、高さが前記長尺のフィンよりも低い短尺のフィンが配置された第2の放熱部と、を含み、前記ファンから相対的に近い位置に前記流路の前記上流から前記下流にかけて前記第1の放熱部が配置され、前記ファンから相対的に遠い位置に前記流路の前記上流から前記下流にかけて前記第2の放熱部が配置される、ことを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る放熱器であって、前記ファンは遠心ファンであることを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る放熱器であって、前記第2の放熱部には、短尺のフィンと長尺のフィンとが配置されていることを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る放熱器であって、前記フィンは一定の間隔で配置されていることを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、発熱体を冷却する放熱システムにおいて、排出口から空気流を供給するファンと、前記ファンから供給される前記空気流の流路に配置された放熱器と、を備え、前記放熱器は、一方の面に前記発熱体が取り付けられた基板と、前記基板において前記発熱体とは反対側の面に配置された複数のフィンを有する放熱部と、を備え、前記ファンの前記排出口から相対的に近い位置に前記流路の上流から下流にかけて配置されたフィンによる通風抵抗よりも、前記ファンの前記排出口から相対的に遠い位置に前記流路の前記上流から前記下流にかけて配置されたフィンによる通風抵抗が小さい、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、ファンから相対的に遠い位置に配置されるフィンによる通風抵抗が小さいため、ファンによって生成された空気流が旋回流であっても、ファンから相対的に遠い位置に配置されるフィンにも十分に空気が流れる。そのことにより、各フィンの放熱面を有効に利用して、冷却効果を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る放熱器を示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る放熱器を上から見た平面図である。
【図3】従来技術に係る放熱器の正面図である。
【図4】従来技術に係る放熱器を上から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る放熱器について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る放熱器を示す正面図である。図2は、本発明の実施形態に係る放熱器を上から見た平面図である。
【0028】
本実施形態に係る放熱器1は、一例として、モータとエンジンとの出力により走行するハイブリッド車両、モータの出力のみにより走行する電気自動車、又は燃料電池自動車などの電動車両に搭載される。
【0029】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る放熱器1は、平板状の基板2と放熱部3とを備えている。発熱体5は、基板2の一方の面に取り付けられる。発熱体5は、例えば、電動車両に搭載されるインバータやDC−DCコンバータに用いられる半導体素子である。インバータがバッテリに直結されていてもよいし、インバータが接続されたDC−DCコンバータがバッテリに直結されていてもよい。放熱部3は、基板2において発熱体5とは反対側の面に設けられている。一例として、基板2と放熱部3とは一体的に形成されている。放熱器1は、例えばアルミニウム製である。発熱体5からの熱は、基板2を介して放熱部3に伝わるようになっている。
【0030】
また、放熱部3と適宜な間隔を隔てて、送風ファンとして用いられる遠心ファン10が配置されている。本実施形態においては、車両内における高さ方向の搭載スペースの制約や、ダクト形状の簡素化のために、遠心ファン10を用いることが好ましい。遠心ファン10から発生する流体(空気)が放熱部3に供給され、発熱体5を冷却するようになっている。遠心ファン10には、例えば多翼ファンやラジアルファンなどを用いることができる。一例として、遠心ファン10に多翼ファンを用いた場合について説明する。多翼ファンである遠心ファン10は、図2に示すように、渦巻き型のケース11と、モータ12と、モータ12に取り付けられた羽根車13とを備えている。多翼ファンである遠心ファン10は、羽根車13を形成する多数枚の羽根14の外周での傾きが羽根車13の回転方向を向いて形成されている。排出ノズル(排出口)15は、ケース11から僅かに突出している。吸気口は、円形に配置された羽根14の中心部に、モータ12の回転軸方向に沿って形成されている。遠心ファン10は、モータ12の回転軸方向に形成された吸気口から吸気した空気を羽根車13の回転による遠心作用を利用して、回転軸に直交する径方向に排出する。ケース11は、遠心ファン10から径方向に排出される空気に方向性を持たせるための案内ガイドとしての機能を有する。ケース11によって案内された空気は、排出ノズル15から遠心ファン10の外部に排出される。このように、吸気口から吸気された空気は、流れが90度転向されて、排出ノズル15から排出される。なお、遠心ファン10の代わりに、軸流ファンを用いてもかまわない。
【0031】
放熱部3は、板状の複数のフィン4によって構成されている。各フィン4は、板状の面が互いに平行となるように配置されている。各フィン4は、一定の間隔(ピッチ)で配置されていることが好ましい。また、各フィン4は、板状の面が遠心ファン10によって生成される空気流の流路と平行になるように配置される。放熱部3は、一例として2種類のフィン4によって構成されている。具体的には、フィン4には、長尺フィン41と、長尺フィン41よりも高さが低い短尺フィン42とがある。フィン4の高さは、基板2に直交する方向のフィン4の長さに相当する。従って、短尺フィン42は、基板2からの長さが長尺フィン41よりも短い。
【0032】
放熱部3は、第1の放熱部31と第2の放熱部32とによって構成されている。第1の放熱部31には、高さが一定の複数の長尺フィン41が配置されている。各長尺フィン41は一定の間隔(ピッチ)で配置されていることが好ましい。第2の放熱部32は、第1の放熱部31の隣に設けられている。第2の放熱部32には、長尺フィン41と、長尺フィン41よりも高さが低い短尺フィン42とが、配置されている。長尺フィン41と短尺フィン42とは、一定の間隔(ピッチ)で配置されていることが好ましい。図1に示す例では、長尺フィン41と短尺フィン42とが交互に配置されている。この配置例は一例であり、例えば、隣り合う長尺フィン41の間に複数の短尺フィン42が配置されていてもよい。また、高さがそれぞれ異なる複数の短尺フィン42が、第2の放熱部32に配置されていてもよい。また、第2放熱部32において、基板2の中心部側から端部にかけて徐々にフィン4の高さが低くなっていてもよい。図2に示す例においては、第2の放熱部32は、基板2の一方の端部側に設けられている。このように、基板2の一方の端部側に配置された一部のフィン4(短尺フィン42)の高さが、他のフィン4の高さよりも低くなっている。
【0033】
図2に示す例においては、遠心ファン10は、第2の放熱部32よりも第1の放熱部31に近い位置に配置される。このように、遠心ファン10の排出ノズル15に相対的に近い位置には、空気流の流路の上流から下流にかけて第1の放熱部31が配置される。また、排出ノズル15から相対的に遠い位置には、空気流の流路の上流から下流にかけて第2の放熱部32が配置される。換言すると、排出ノズル15側には、空気流の流路の上流から下流にかけて第1の放熱部31が配置され、排出ノズル15の反対側には、空気流の流路の上流から下流にかけて第2の放熱部32が配置される。なお、放熱器1と遠心ファン10とによって、放熱システムの一例を構成する。
【0034】
以上のように放熱器1と遠心ファン10とを配置すると、遠心ファン10の排出ノズル15から排出された空気流は放熱器1に向かう。遠心ファン10によって生成される空気流は旋回流であるため、排出ノズル15の近傍に配置されたフィン4に供給される空気量は多くなるが、排出ノズル15から遠い位置に配置されたフィン4に供給される空気量は少なくなる。すなわち、排出ノズル15の近傍に配置された第1の放熱部31に供給される空気量は多くなるが、排出ノズル15から遠い位置に配置された第2の放熱部32に供給される空気量は少なくなる。
【0035】
本実施形態においては、第2の放熱部32には短尺フィン42が設けられているため、第2の放熱部32には、空気を流すためのスペースが確保される。そのことにより、第1の放熱部31よりも第2の放熱部32の方が、通風抵抗が小さくなる。第2の放熱部32は遠心ファン10の排出ノズル15から相対的に遠い位置に配置されているが、第1の放熱部31よりも通風抵抗が小さいため、遠心ファン10によって生成された空気流が旋回流であっても、第2の放熱部32にも十分に空気が流れる。このように第2の放熱部32にも十分に空気が流れ、第2の放熱部32のフィン4の表面の流速が速くなるため、第2の放熱部32における冷却効果が高くなる。
【0036】
以上のように、第2の放熱部32にも十分に空気が流れるため、第1の放熱部31と第2の放熱部32とを含めて、空気流を各フィン4に均一に供給することが可能となる。例えば、フィン4が板状の形状を有する場合には、各フィン4の板状の面に空気流を均一に供給することが可能となる。このように、空気流を各フィン4に均一に供給することが可能となるため、各フィン4の放熱面を有効に利用して、放熱器1の冷却効果を高めることが可能となる。
【0037】
なお、短尺フィン42の高さは、長尺フィン41の高さの半分程度であることが好ましい。そのことにより、短尺フィン42の表面積、すなわち放熱に寄与する面積(放熱面積)を確保しつつ、第2の放熱部32における通風抵抗を小さくして、第2の放熱部32に十分に空気を供給することが可能となる。
【0038】
また、長尺フィン41に挟まれた短尺フィン42の端部で空気流の渦が発生し、隣り合う長尺フィン41の間の空気の流れを拡散することが可能となる。そのことにより、放熱器1の冷却効果をさらに高めることが可能となる。
【0039】
また、本実施形態に係る放熱器1においては、隣り合うフィン4の間隔(ピッチ)は一定であることが好ましい。例えば、第1の放熱部31においては、隣り合う長尺フィン41の間隔は一定であり、第2の放熱部32においては、隣り合う長尺フィン41と短尺フィン42との間隔は一定であることが好ましい。このように、隣り合うフィン4の根元の間隔が一定であるため、フィン4の根元に無理な力が加わり難くなる。そのため、押し出し製法によって本実施形態に係る放熱器1を容易に製造することが可能となる。
【0040】
また、隣り合うフィン4の間隔(ピッチ)を一定にすることにより、第2の放熱部32における通風抵抗を小さくしつつ、フィン4の総表面積の減少が少ないという効果を奏する。上述した特許文献1,2に記載の放熱器においては、中央部においてフィンの間隔(ピッチ)を長くしているため、中央部におけるフィンの数が減少する。そのため、中央部におけるフィンの表面積、すなわち放熱に寄与する面積(放熱面積)が減少し、放熱器の冷却能力の低下を招く。一方、本実施形態に係る放熱器1では、隣り合うフィン4の間隔を一定にしてフィン4の総数を減らしていないため、フィン4の表面積(放熱面積)の減少を少なくすることが可能となる。そのため、本実施形態に係る放熱器1では、十分な放熱面積を確保することが可能となる。
【0041】
また、遠心ファン10からの空気流を放熱器1の各フィン4に均一に供給することができるため、遠心ファン10から供給される空気流を有効に利用することが可能となる。その結果、遠心ファン10を大型化せずに済むため、遠心ファン10の小型化、及び低コスト化を図ることが可能となる。すなわち、放熱器1と遠心ファン10とを含む放熱システムを大型化せずに、発熱体5を効率的に冷却することが可能となる。
【0042】
また、遠心ファン10からの空気流を放熱器1の各フィン4に均一に供給することができるため、空気流を整流化するためのエアチャンバを用いなくてもよい。その結果、放熱システムの小型化、及び低コスト化を図ることが可能となる。
【0043】
また、放熱器1と遠心ファン10とを含む放熱システムの小型化が可能となるため、車両のラゲージルーム(荷室)において、バッテリパックとリアシートとの間のスペースに、本実施形態に係る放熱システムを搭載することが可能となる。このように、デッドスペースとなり得るスペースを有効に利用することが可能となるため、ラゲージルームを拡大することが可能となる。
【0044】
なお、図1及び図2に示す例では、板状のフィン4が放熱器1に設けられているが、板状のフィン4の代わりに、柱状のフィンが放熱器1に設けられていてもよい。この場合、複数の柱状フィンが、2次元的に基板2の一方の面に設けられている。各柱状フィンの間隔(ピッチ)は一定であることが好ましい。上述した実施形態と同様に、第1の放熱部31には、高さが一定の長尺の複数の柱状フィンが配置されている。第2の放熱部32には、長尺の柱状フィンと、長尺の柱状フィンよりも高さが低い短尺の柱状フィンとが配置されている。例えば、第2の放熱部32では、長尺の柱状フィンの列と短尺の柱状フィンの列とが交互に配置されている。
【0045】
以上のように、板状フィンの代わりに柱状フィンを放熱器1に設けた場合であっても、第2の放熱部32には短尺の柱状フィンが設けられているため、第1の放熱部31よりも第2の放熱部32の方が、通風抵抗が小さくなる。その結果、第2の放熱部32にも十分に空気が流れるため、フィンの放熱面を有効に利用して、放熱器1の冷却効果を高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1 放熱器、2 基板、3 放熱部、4 フィン、5 発熱体、10 遠心ファン、11 ケース、12 モータ、13 羽根車、14 羽根、15 排出ノズル、31 第1の放熱部、32 第2の放熱部、41 長尺フィン、42 短尺フィン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンの排出口から供給される空気流の流路に配置され、前記空気流により冷却されて発熱体を冷却する放熱器において、
一方の面に前記発熱体が取り付けられる基板と、
前記基板において前記発熱体とは反対側の面に配置された複数のフィンを有する放熱部と、
を備え、
前記ファンの前記排出口から相対的に近い位置に前記流路の上流から下流にかけて配置されるフィンによる通風抵抗よりも、前記ファンの前記排出口から相対的に遠い位置に前記流路の前記上流から前記下流にかけて配置されるフィンによる通風抵抗が小さい、
ことを特徴とする放熱器。
【請求項2】
請求項1に記載の放熱器であって、
前記放熱部は、
高さが一定の複数の長尺のフィンが配置された第1の放熱部と、
高さが前記長尺のフィンよりも低い短尺のフィンが配置された第2の放熱部と、
を含み、
前記ファンから相対的に近い位置に前記流路の前記上流から前記下流にかけて前記第1の放熱部が配置され、
前記ファンから相対的に遠い位置に前記流路の前記上流から前記下流にかけて前記第2の放熱部が配置される、
ことを特徴とする放熱器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の放熱器であって、
前記ファンは遠心ファンである、
ことを特徴とする放熱器。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の放熱器であって、
前記第2の放熱部には、短尺のフィンと長尺のフィンとが配置されている、
ことを特徴とする放熱器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の放熱器であって、
前記フィンは一定の間隔で配置されている、
ことを特徴とする放熱器。
【請求項6】
発熱体を冷却する放熱システムにおいて、
排出口から空気流を供給するファンと、
前記ファンから供給される前記空気流の流路に配置された放熱器と、
を備え、
前記放熱器は、
一方の面に前記発熱体が取り付けられた基板と、
前記基板において前記発熱体とは反対側の面に配置された複数のフィンを有する放熱部と、
を備え、
前記ファンの前記排出口から相対的に近い位置に前記流路の上流から下流にかけて配置されたフィンによる通風抵抗よりも、前記ファンの前記排出口から相対的に遠い位置に前記流路の前記上流から前記下流にかけて配置されたフィンによる通風抵抗が小さい、
ことを特徴とする放熱システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−164887(P2012−164887A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25390(P2011−25390)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】