放熱性フィラー組成物、樹脂組成物、放熱性グリース及び放熱性塗料組成物

【課題】優れた放熱性能を得ることができる放熱性フィラー組成物を得、それによって優れた放熱性能を有する性樹脂組成物、グリース、塗料組成物を得る。
【解決手段】平均長径が0.1μm〜10μm、平均短径が0.025μm〜2.5μmであり、平均長径/平均短径で定義されるアスペクト比が4以上で、かつBET法による比表面積が50m/g以下である針状酸化亜鉛1〜50体積%及びその他の放熱性フィラー50〜99体積%からなることを特徴とする放熱性フィラー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱性フィラー組成物、樹脂組成物、放熱性グリース及び放熱性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱の蓄積を防ぐことが必要とされる電気製品等においては、放熱性樹脂組成物、放熱性グリース、放熱性塗料組成物等が使用されている。これらは、熱伝導性が高い無機粒子を放熱性フィラーとして使用し、樹脂や油剤等と混合して得られたものである。このような目的で使用される放熱性フィラーは、より高い放熱性を発揮することができるよう、熱伝導度が高い組成物とするための検討がなされている。
【0003】
放熱性フィラーとしては、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の熱伝導性が高い各種のフィラーが知られている(特許文献1,2)。近年、更に高い放熱性能が要求されていることから、粒子径が相違する複数の粒子を組み合わせて使用することによって、組成物中での放熱性材料の充填率を高くすることも行われている(特許文献3,4)。
【0004】
これらのように、粒子径が相違する粒子を複数種組み合わせることによって放熱性能を向上させることは公知であるが、更に粒子形状として特異的なものを一部に使用することによって放熱性能を向上させる試みはなされていない。
【0005】
一方では、針状形状を有する酸化亜鉛は公知である(特許文献5)。しかし、これをその他の放熱性フィラーと組み合わせて使用することに関する検討は一切なされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−246885号公報
【特許文献2】特開2005−330426号公報
【特許文献3】特開2002−201483号公報
【特許文献4】特開2007−70492号公報
【特許文献5】特開2008−94695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記に鑑み、優れた放熱性能を得ることができる放熱性フィラー組成物を得、それによって優れた放熱性能を有する放熱性樹脂組成物、放熱性グリース、放熱性塗料組成物を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、平均長径が0.1〜10μm、平均短径が0.025〜2.5μmであり、平均長径/平均短径で定義されるアスペクト比が4以上で、かつBET法による比表面積が50m/g以下である針状酸化亜鉛1〜50体積%及びその他の放熱性フィラー50〜99体積%からなる放熱性フィラー組成物である。
【0009】
上記その他の放熱性フィラーは、酸化亜鉛、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明は、上述した放熱性フィラー組成物を含有することを特徴とする樹脂組成物でもある。
本発明は、上述した放熱性フィラー組成物を含有することを特徴とする放熱性グリースでもある。
本発明は、上述した放熱性フィラー組成物を含有することを特徴とする放熱性塗料組成物でもある。
【発明の効果】
【0010】
本発明の放熱性フィラー組成物は、顕著に優れた放熱性を有するものであり、これによって放熱性に優れた放熱性樹脂組成物、放熱性グリース組成物、放熱性塗料組成物等を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、針状形状を有する酸化亜鉛を放熱性フィラー組成物の一成分として使用することによって、放熱性能が向上することを見出すことによって完成されたものである。すなわち、針状形状を有する針状酸化亜鉛を他の放熱性粒子と組み合わせて使用することによって、全体としての熱伝導性を向上させ、これによって、優れた放熱性能を有する放熱性フィラー組成物を得るものである。
【0012】
本発明の放熱性フィラー組成物において必須成分となる針状酸化亜鉛は、平均長径が0.1〜10μm、平均短径が0.025〜2.5μmであり、平均長径/平均短径で定義されるアスペクト比が4以上で、かつBET法による比表面積が50m/g以下である。このような針状形状は、針状形状の長さ方向への熱の伝導が容易であることから、熱の拡散を容易に生じさせることができる。なおかつ、その形状のために、他の粒子が充填された隙間に充填され、これによって粒子の充填率を高める上でも役に立つ。そして、放熱性を高める機能においても優れている。よって、上述したような針状酸化亜鉛は、他の放熱材料と組み合わせて使用した時に、特に優れた放熱特性を発現することができる。
【0013】
上記針状酸化亜鉛は、平均長径が0.15〜5μmの範囲にあることがより好ましい。上記針状酸化亜鉛は、平均短径が0.035〜1.25μmの範囲にあることがより好ましい。上記針状酸化亜鉛は、アスペクト比が4〜20の範囲にあることがより好ましい。上記針状酸化亜鉛は、BET法による比表面積が1〜40m/g以下の範囲にあることがより好ましい。
【0014】
上記針状酸化亜鉛は、上述した範囲よりも粒子径が大きいものであると、組み合わせた際、他の粒子の隙間に入り難く、放熱特性の向上の効果が少ないという点で好ましくない。上記針状酸化亜鉛は、アスベクト比が4未満であると、充分な針状形状を有するとはいえず、針状形状に由来する上述した放熱性能向上の効果が得られない。更に、BET比表面積が50m/gを超えると、粒子サイズが小さすぎ凝集が酷くなり、針状由来の放熱特性を発揮できないという点で好ましくない。
【0015】
上記針状酸化亜鉛は、その製造方法を特に限定されるものではないが、例えば、超音波照射下、亜鉛塩水溶液とアルカリ水溶液を反応槽に同時に加えて反応させる方法によって製造することができる。より具体的には、例えば、3L容量の反応槽に温度55℃の水300mLを張り込み、十分な攪拌下に超音波照射機(日本精機(株)製US−600T)を用いて周波数20kHzの超音波を照射しながら、反応槽に亜鉛塩水溶液1500mL(亜鉛として1.48モル)とアルカリ水溶液750mL(水酸化物イオンとして2.07モル)を2分間かけて同時に投入して、沈殿を生成させることにより製造することができる。
【0016】
上記針状酸化亜鉛の製造に用いる上記亜鉛塩としては、水溶性であれば、特に限定されるものではないが、好ましくは、塩化物、硝酸塩、硫酸塩等のような無機酸塩や、また、ギ酸亜鉛や酢酸亜鉛のような有機酸塩が好ましく用いられる。このような亜鉛塩は、通常、0.01〜6.0モル/L濃度の水溶液として用いられる。上記針状酸化亜鉛の製造に用いる上記アルカリとしては、通常、アルカリ金属水酸化物が好ましく用いられ、特に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が好ましく用いられる。このようなアルカリは、通常、0.01〜18モル/L濃度の水溶液として用いられる。
【0017】
上記針状酸化亜鉛は、上記亜鉛塩水溶液とアルカリ水溶液を、水酸化物イオン/亜鉛イオンモル比を1.30〜1.85の範囲に保つと共に、得られる混合物のpHを6.0から8.0の範囲、好ましくは、6.5から7.5の範囲に保ちながら、55℃以下の温度にて、好ましくは、55〜35℃の範囲の温度にて、反応槽に同時に加えることによって得ることができる。詳しくは、例えば、バッチ方式による場合は、予め、反応槽に水を張っておき、この水に同時に加えられる亜鉛塩水溶液とアルカリ水溶液が速やかに混合され、接触するように、十分に攪拌しながら、これに亜鉛塩水溶液とアルカリ水溶液とをそれぞれ所定の割合にて同時に加えることによって、上記針状酸化亜鉛を得ることができる。このように亜鉛塩水溶液とアルカリ水溶液を反応槽に同時に加えることは、連続方式でも同様に行うことができる。
【0018】
一般に、亜鉛塩とアルカリとの反応は実質的に瞬時に完了する。ある量の亜鉛塩水溶液とある量のアルカリ水溶液とを上述したようにして反応槽に同時に加えて反応させて、目的とする針状酸化亜鉛を工業的に効率よく製造するには、上記亜鉛塩水溶液とアルカリ水溶液のそれぞれ全量を、ある程度の時間をかけて反応槽に加えてもよいし、短時間で加えてもよい。具体的には、反応に供する亜鉛塩水溶液とアルカリ水溶液のそれぞれの濃度や量にもよるが、例えば、1モル/L程度の濃度の亜鉛塩水溶液1Lと3.6モル/L程度の濃度のアルカリ水溶液0.75Lとを同時中和するために要する時間は、通常、3分以内であり、例えば、2分以内である。
【0019】
上記針状酸化亜鉛の製造において、上記亜鉛塩水溶液とアルカリ水溶液を反応槽に同時に加える際に、水酸化物イオン/亜鉛イオンモル比は、1.30〜1.85であることが好ましい。上記モル比を1.30よりも小さくすると、余剰の亜鉛イオンが多量となり、生産性が悪くなる。また、1.85を超えると、得られる針状酸化亜鉛のアスペクト比が小さくなる傾向がある。他方、針状酸化亜鉛の製造において、上記亜鉛塩水溶液とアルカリ水溶液を反応槽に同時に加える際に、水酸化物イオン/亜鉛イオンモル比が1.85よりも大きいときは、針状酸化亜鉛を得ることができない場合がある。
【0020】
上記針状酸化亜鉛の製造において、上記亜鉛塩水溶液とアルカリ水溶液を反応槽に同時に加える際に、得られる混合物のpHが8.0よりも大きいときは、得られる針状酸化亜鉛が小さくなる傾向があり、目的とする平均長径と平均短径と比表面積を有する酸化亜鉛を得ることができない。
【0021】
更に、針状酸化亜鉛の製造において、上記亜鉛塩水溶液とアルカリ水溶液を反応槽に同時に加える際に、反応温度が55℃を超えるときは、得られる針状酸化亜鉛が大きくなる傾向があり、目的とする平均長径と平均短径と比表面積を有する針状酸化亜鉛を得ることができない場合がある。
【0022】
本発明の放熱性フィラー組成物は、上述したような針状酸化亜鉛を1〜50体積%の割合で含有するものである。すなわち、本発明の放熱性フィラー組成物は、上述した針状酸化亜鉛とその他の放熱性フィラーとを含有する組成物である。上述したように、上記針状酸化亜鉛は、その他の放熱性材料と併用して使用した場合に特に放熱性能を向上させる機能を有するものである。上記針状酸化亜鉛が1体積%未満であると、その形状由来の、放熱性能向上が十分発揮できないという問題を生じ、50体積%を超えると針状酸化亜鉛が飽和状態となり、添加分の放熱性向上が期待できないという問題を生じる。上記針状酸化亜鉛は、2体積%以上の割合で配合することがより好ましい。また上記針状酸化亜鉛は、40体積%以下の割合で配合することがより好ましい。
【0023】
本発明の放熱性フィラー組成物は、その他の放熱性フィラーを50〜99体積%含有するものである。上記の放熱性材料としては特に限定されず、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム等の金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化チタン、金属シリコン、ダイヤモンド等を挙げることができる。上記その他の放熱性フィラーとしては、公知の任意のものを使用することができる。
【0024】
上記針状酸化亜鉛と組み合わせる上記その他の放熱性フィラーとしては、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の熱伝導性が高いフィラーを使用することが特に好ましい。上記針状酸化亜鉛と他の放熱性フィラーを組み合わせる場合は、他の放熱性フィラーは一種類に限定されることはなく、粒子サイズの異なる同一の物質であっても、粒子サイズの異なる他物質の二種類以上の組み合わせであってもよい。
【0025】
上記その他の放熱性フィラーとして、2種類の放熱性フィラーを組み合わせる場合、後述する電子顕微鏡写真撮影装置にて撮影した画像を用いる測定方法によって求められた1次粒子径が1〜15μmの放熱性フィラー(a)と、0.05〜4μmの放熱性フィラー(b)をその粒径比が4≦(a)/(b)≦20となる割合で選択し、(a):(b)が5:5〜9:1の体積比率で混合することによって得られた混合放熱性フィラーと針状酸化亜鉛を5:5〜99:1の体積比率で混合したものを用いることができる。このような割合で組み合わせた場合に、特に好適に本発明の効果を得ることができる。上記その他の放熱性フィラーの形状としては、特に限定はなく、真球状、粒状、立方体状、棒状、六角板状、鱗片状等を上げることができる。
【0026】
本発明の放熱性フィラー組成物は、通常、放熱性樹脂組成物や放熱性グリース、放熱性塗料等において使用される。このような用途については、多くの公知文献が存在しており、本発明の放熱性フィラー組成物は、このような放熱性樹脂組成物や放熱性グリース、放熱性塗料において使用することができる。上記放熱性樹脂組成物や放熱性グリース、放熱性塗料もそれぞれ本発明の一部である。
【0027】
本発明の放熱性フィラー組成物は、樹脂と混合した樹脂組成物として使用することができる。このような樹脂組成物も本発明の一つである。この場合、使用する樹脂は、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよく、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、ポリメタクリル酸メチル、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、液晶樹脂(LCP)、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の樹脂を挙げることができる。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と上記放熱性フィラー組成物とを溶融状態で混練することによって得られた熱成型用の樹脂組成物;熱硬化性樹脂と上記放熱性フィラー組成物とを混練後、加熱硬化させることによって得られた樹脂組成物;等のいずれの形態であってもよい。
【0029】
本発明の樹脂組成物中の上記放熱性フィラー組成物の配合量は、目的とする熱伝導率や樹脂組成物の硬度等、樹脂組成物の性能に合わせて任意に決定することができる。上記放熱性フィラー組成物の放熱性能を充分に発現させるためには、樹脂組成物中の固形分全量に対して5〜90体積%含有する事が好ましい。上記配合量は必要とされる放熱性能に応じて配合量を調整して使用することができ、より高い放熱性が要求される用途においては、30体積%以上含有することが好ましく、50体積%以上とすることが更に好ましい。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、用途によって樹脂成分を自由に選択することができる。例えば、熱源と放熱板の間に装着し密着させる場合には、シリコーン樹脂やアクリル樹脂のような接着性が高く硬度の低い樹脂を選択すればよい。
【0031】
本発明の樹脂組成物が熱成型用の樹脂組成物である場合、熱可塑性樹脂と上記放熱性フィラー組成物を、例えば、スクリュー型二軸押出機を用いた溶融混練によって、樹脂組成物をペレット化し、その後射出成型等の任意の成形方法によって所望の形状に成型する方法等によって製造することができる。
【0032】
本発明の樹脂組成物が熱硬化性樹脂と上記放熱性フィラー組成物とを混練後、加熱硬化させることによって得られた樹脂組成物である場合、例えば、加圧成形等によって成形するものであることが好ましい。このような樹脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物をトランスファー成型により成型し、製造することができる。
【0033】
本発明の樹脂組成物の用途は、電子部品の放熱部材、熱伝導性充填剤、温度測定用等の絶縁性充填剤等がある。例えば、本発明の樹脂組成物は、MPU、パワートランジスタ、トランス等の発熱性電子部品からの熱を放熱フィンや放熱ファン等の放熱部品に伝熱させるために使用することができ、発熱性電子部品と放熱部品の間に挟み込まれて使用することができる。これによって、発熱性電子部品と放熱部品間の伝熱が良好となり、長期的に発熱性電子部品の誤作動を軽減させることができる。ヒートパイプとヒートシンクの接続や、種々の発熱体の組込まれたモジュールとヒートシンクとの接続に好適に用いることもできる。
【0034】
上記放熱性フィラー組成物は、鉱油又は合成油を含有する基油と混合した放熱性グリースとして使用することもできる。このような放熱性グリースも本発明の一つである。
【0035】
本発明の放熱性グリース中の上記放熱性フィラー組成物の配合量は、目的とする熱伝導率に合わせて任意に決定する事ができる。上記放熱性フィラー組成物の放熱性能を充分に発現させるためには、放熱性グリース中の全量に対して10〜90体積%以上含有する事が好ましい。上記配合量は必要とされる放熱性能に応じて配合量を調整して使用することができ、より高い放熱性が要求される用途においては、30体積%以上含有することが好ましく、50体積%以上とすることが更に好ましい。
【0036】
上記基油は、鉱油、合成油、シリコーンオイル、フッ素系炭化水素油等の各種油性材料を1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。合成油としては特に炭化水素油がよい。合成油としてα−オレフィン、ジエステル、ポリオールエステル、トリメリット酸エステル、ポリフェニルエーテル、アルキルフェニルエーテルなどが使用できる。
【0037】
本発明の放熱性グリースは、必要に応じて界面活性剤を含有するものであってもよい。上記界面活性剤としては、非イオン系界面活性剤が好ましい。非イオン系界面活性剤の配合により、高熱伝導率化を図り、ちょう度を好適に制御することができる。
【0038】
非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールエチレンジアミン、デカグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンジ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリ脂肪酸エステル、エチレングリコールモノ脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノ脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ペンタエリトリットモノ脂肪酸エステル、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンセスキ脂肪酸エステル、ソルビタントリ脂肪酸エステルが挙げられる。
【0039】
非イオン系界面活性剤の添加の効果は、放熱性フィラーの種類、配合量、及び親水性と親油性のバランスを示すHLB(親水親油バランス)によって異なる。本実施の形態で使用される非イオン系界面活性剤には、室温においても良好なちょう度を得るにはHLBが9以下の液状界面活性剤が好ましい。また、高放熱性グリース等の電気絶縁性や電気抵抗の低下を重視しない用途では、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤を使用することができる。
【0040】
本発明の放熱性グリースは、前述した成分をドウミキサー(ニーダー)、ゲートミキサー、プラネタリーミキサーなどの混合機器を用いて混合することによって調製することができる。
【0041】
本発明の放熱性グリースは、発熱体や放熱体に塗布することによって使用される。発熱体としては、例えば、一般の電源;電源用パワートランジスタ、パワーモジュール、サーミスタ、熱電対、温度センサなどの電子機器;LSI、CPU等の集積回路素子などの発熱性電子部品などが挙げられる。放熱体としては、例えば、ヒートスプレッダ、ヒートシンク等の放熱部品;ヒートパイプ、放熱板などが挙げられる。塗布は、例えば、スクリーンプリントによって行うことができる。スクリーンプリントは、例えば、メタルマスクもしくはスクリーンメッシュを用いて行うことができる。本発明の組成物を発熱体及び放熱体の間に介在させて塗布することにより、上記発熱体から上記放熱体へ効率よく熱を伝導させることができるので、上記発熱体から効果的に熱を取り除くことができる。
【0042】
上記放熱性フィラーは、樹脂溶液又は分散液中に分散させた塗料組成物として使用することもできる。このような放熱性塗料組成物も本発明の一つである。この場合、使用する樹脂は硬化性を有するものであっても、硬化性を有さないものであってもよい。上記樹脂として具体的には、上述した樹脂組成物において使用することができる樹脂として例示した樹脂を挙げることができる。塗料は、有機溶剤を含有する溶剤系のものであっても、水中に樹脂が溶解又は分散した水系のものであってもよい。
【0043】
上記塗料の製造方法は、特に限定されないが、例えば、ディスパーやビーズミル等を使用し、必要とする原料及び溶剤を混合・分散することによって製造することができる。
【0044】
本発明の放熱性塗料組成物中の上記放熱性フィラー組成物の配合量は、目的とする熱伝導率に合わせて任意に決定する事ができる。上記放熱性フィラー組成物の放熱性能を充分に発現させるためには、塗料組成物全量に対して10〜90体積%以上含有する事が好ましい。上記配合量は必要とされる放熱性能に応じて配合量を調整して使用することができ、より高い放熱性が要求される用途においては、30体積%以上含有することが好ましく、50体積%以上とすることが更に好ましい。
【実施例】
【0045】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0046】
実験に先立って、長径、短径、アスペクト比の測定方法を詳述する。
(長径、短径、アスペクト比の測定方法)
透過型電子顕微鏡写真撮影装置(JEM-100SX 日本電子製)において、一つの酸化亜鉛サンプルについて、80000倍の倍率で5視野撮影し、画像部分が短辺12cm、長辺16.5cmの写真とした。それぞれの写真1枚に付き、それぞれの短辺及び長辺の中間点から、それぞれ短辺、長辺に対して平行線を引き、さらに、対角線を2本引き、合計4本の直線に重なっている粒子の短径及び長径をノギスを用いて測定した。なお、同一粒子に複数の線が重なっている場合は、重複して測定しないこととした。5枚全てで、100〜150個の粒子を測定し、短径及び長径の測定値の平均値を、その酸化亜鉛サンプルの平均短径及び平均長径とし、その平均長径の値を平均短径の値で割った値をその酸化亜鉛のアスペクト比とした。なお、この倍率では、0.125μmが1cmで表される写真となり、測定値は、0.01cmまで読み取り、平均の際には、0.00001μmの桁を四捨五入した。また、アスペクト比は、有効数字2桁とし、3桁目を四捨五入した。(SSAはmicromeritics製 GEMINI2360にて測定。X線回折装置は、リガク製 RAD IICを用いて測定した。)
【0047】
(比較例において使用した酸化亜鉛粒子の粒子径の測定方法)
比較例において使用した酸化亜鉛粒子は、SEM写真から1次粒子径を以下の方法により求めた。走査型電子顕微鏡写真撮影装置(JEOL製 JSM840F)にて、一種類の酸化亜鉛粒子に付き50000倍の倍率で5視野撮影し、画像部分が短辺9cm、長辺12cmの写真とした。それぞれの写真1枚に付き、それぞれの短辺及び長辺の中間点からそれぞれ短辺、長辺に対して平行線を引き、さらに、対角線を2本引き、計4本の直線に重なっている粒子の短径及び長径の値をノギスを用いて測定した。これらの値の平均値をその画像の平均1次粒子径とし、5枚全ての値の平均をSEM観察1次粒子径(SEM径)とした。測定値は、0.01μmまで測定し、平均の際には、小数点第3桁目を四捨五入した。得られた結果を以下の表1に示す。併せてBET比表面積及び真比重から算出した粒子径(SSA粒子径)も表1中に示した。なお、FINEX−30の粒子径測定においては、同様の手法によって0.001μmまで測定し、平均の際には、小数点第4桁目を四捨五入した。
【0048】
【表1】

【0049】
(酸化マグネシウムの1次粒子径の測定方法)
まず、BET比表面積及び真比重から粒子径(SSA粒子径)を求める。そして走査型電子顕微鏡写真撮影装置(JEOL製 JSM840F)にて、SSA粒子径が10μm程度の場合は、2000倍、SSA粒子径が1μm及び2μm程度の場合は5000倍、SSA粒子径が0.1μm程度の場合は、50000倍の倍率で各々5視野撮影し、画像部分が短辺9cm、長辺12cmの写真とする。それぞれの写真1枚に付き、それぞれの短辺及び長辺の中間点からそれぞれ短辺、長辺に対して平行線を引き、さらに、対角線を2本引き、計4本の直線に重なっている粒子の短径及び長径の値をノギスを用いて測定し、これらの値の平均値をその画像のSEM観察1次粒子径(SEM径)とした。
【0050】
調製例1 針状酸化亜鉛粒子aの調製
3L容量の反応槽に温度55℃の水300mLを張り込み、十分な攪拌下に超音波照射機(日本精機(株)製US−600T)を用いて周波数20kHzの超音波を照射しながら、反応槽に135g/L濃度の塩化亜鉛水溶液1500mL(塩化亜鉛として1.48モル)と110g/L濃度の水酸化ナトリウム水溶液750mL(水酸化ナトリウムとして2.07モル)を2分間かけて同時に投入して、沈殿を生成させた。
【0051】
このようにして生成した沈殿を濾過、水洗、乾燥して、白色粉体を得た。この粉体についてX線回折を行って、酸化亜鉛であることを確認した。この酸化亜鉛の窒素吸着法による比表面積(以下、同じ)は4m/gであった。また、平均短径は0.2427μm、平均長径は0.9894μm、アスペクト比は4.1であった。
【0052】
調製例2 針状酸化亜鉛粒子bの調製
調製例1において、142g/L濃度の水酸化ナトリウム水溶液750mL(水酸化ナトリウムとして2.66モル)を用いた以外は、同様にして、白色粉体を得た。この粉体も、X線回折から、酸化亜鉛であることを確認した。この酸化亜鉛の比表面積は40m/gであった。また、この酸化亜鉛の平均短径は0.0295μm、平均長径は0.1534μm、アスペクト比は5.2であった。
【0053】
(実施例1〜6)
表2に示す割合でEEA樹脂(A−1150 日本ポリエチレン社製)及び調製例1又は2の針状酸化亜鉛粒子及び、表2に示す各種放熱性フィラーを160℃に加熱しながら混合した後、加圧成形により樹脂成型体を得た。これを直径50mm×厚み2mmの形状の成型体とした。これらの熱伝導率を測定した。なお、熱伝導率は、熱流計法により25℃で測定した。結果を表2に示す
【0054】
(比較例1)
放熱性フィラーを配合しないこと以外は実施例1と同様にして、熱伝導率を測定した。結果を表2に示す。
【0055】
(比較例2)
表2に示す割合で、針状酸化亜鉛粒子bを堺化学工業製微細酸化亜鉛FINEX−30に変更した以外は、実施例4と同じ配合とし、実施例1と同様にして熱伝導率を測定した。結果を表2に示す
【0056】
(比較例3、4)
表2に示す割合で、アルミナ粒子20μmのみ、又は、10μmと0.8μmの組み合わせの配合に変更した以外は、実施例1と同様にして、熱伝導率を測定した。結果を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
表2の結果より、本発明の放熱性フィラー組成物は、フィラーの体積%が同一又はほぼ同等の比較例の放熱性フィラー組成物と比べて、顕著に優れた熱伝導率を有することが明らかである。
【0059】
(実施例7)
表3に示す割合でエポキシ樹脂(jER828 ジャパンエポキシレジン社製)、エポキシ樹脂硬化剤(jERキュアST12 ジャパンエポキシレジン社製)と、針状酸化亜鉛粒子a、SEM径がそれぞれ10μm、1μmである酸化マグネシウム(いずれも堺化学工業製)を混合し、直径50mm×深さ2mmの型に注入後、80℃で3時間熱処理することで成型体を得た。この成型体の熱伝導率を測定した結果を表3に示す。
【0060】
(比較例5)
表3に示す割合で、針状酸化亜鉛粒子aを堺化学工業製酸化亜鉛1種に変更した以外は、実施例7と同様にして、熱伝導率を測定した。結果を表3に示す。
【0061】
(比較例6)
表3に示す割合で放熱性フィラーをアルミナ10μmと0.8μmに変更したこと以外は実施例7と同様にして、熱伝導率を測定した。結果を表3に示す。
【0062】
【表3】

【0063】
(実施例8)
表4に示す割合でシリコーン樹脂(KE−103 信越化学工業社製)、シリコーン樹脂硬化剤(CAT−103 信越化学工業社製)と、針状酸化亜鉛粒子a、SEM径がそれぞれ10μm、1μmである2種の酸化マグネシウム(いずれも堺化学工業製)を混合し、150℃に加熱しながら30分間加圧成形する事で樹脂組成物を得た。これを直径50mm×厚み2mmの形状の成型体とし、熱伝導率を測定した結果を表4に示す。
【0064】
(比較例7)
表4に示す割合で、針状酸化亜鉛粒子aを堺化学工業製酸化亜鉛1種に変更した以外は、実施例8と同様にして、熱伝導率を測定した。結果を表4に示す。
【0065】
(比較例8)
表4に示す割合で放熱性フィラーをアルミナ10μmと0.8μmに変更したこと以外は実施例8と同様にして、熱伝導率を測定した。結果を表4に示す。
【0066】
【表4】

【0067】
(実施例9)
表5に示す割合でシリコーンオイル(KF−99 信越化学工業社製)と、針状酸化亜鉛粒子a、SEM径がそれぞれ10μm、1μmである2種の酸化マグネシウム(いずれも堺化学工業製)を混合し、放熱性グリースを作製した。この放熱性グリースの熱伝導率を測定した結果を表5に示す。
【0068】
(比較例9)
表5に示す割合で、針状酸化亜鉛粒子aを堺化学工業製酸化亜鉛1種に変更した以外は、実施例9と同様にして、熱伝導率を測定した。結果を表5に示す。
【0069】
(比較例10)
表5に示す割合で放熱性フィラーをアルミナ10μmと0.8μmに変更したこと以外は実施例9と同様にして、熱伝導率を測定した。結果を表5に示す。
【0070】
【表5】

【0071】
(実施例10)
表6に示す割合でエポキシ樹脂(jER828 ジャパンエポキシレジン社製)、トルエンと、針状酸化亜鉛粒子a、SEM径がそれぞれ10μm、1μmである2種の酸化マグネシウム(いずれも堺化学工業製)を混合し、ディスパー分散することで放熱性塗料を作製した。この放熱性塗料組成物の熱伝導率を測定した結果を表6に示す。
【0072】
(比較例11)
表6に示す割合で、針状酸化亜鉛粒子aを堺化学工業製酸化亜鉛1種に変更した以外は、実施例10と同様にして、熱伝導率を測定した。結果を表6に示す。
【0073】
(比較例12)
表6に示す割合で放熱性フィラーをアルミナ10μmと0.8μmに変更したこと以外は実施例10と同様にして、熱伝導率を測定した。結果を表6に示す。
【0074】
【表6】

【0075】
表3〜6に示した結果からも、本発明の放熱性フィラー組成物は、フィラーの体積%が同一又はほぼ同等の比較例の放熱性フィラー組成物と比べて、顕著に優れた熱伝導率を有することが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の放熱性フィラー組成物は、樹脂組成物、放熱性グリース、放熱性塗料組成物における放熱性フィラーとして好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均長径が0.1μm〜10μm、平均短径が0.025μm〜2.5μmであり、平均長径/平均短径で定義されるアスペクト比が4以上で、かつBET法による比表面積が50m/g以下である針状酸化亜鉛1〜50体積%及びその他の放熱性フィラー50〜99体積%からなることを特徴とする放熱性フィラー組成物。
【請求項2】
その他の放熱性フィラーは、酸化亜鉛、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1記載の放熱性フィラー組成物。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載の放熱性フィラー組成物を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜2のいずれかに記載の放熱性フィラー組成物を含有することを特徴とする放熱性グリース。
【請求項5】
請求項1〜2のいずれかに記載の放熱性フィラー組成物を含有することを特徴とする放熱性塗料組成物。

【公開番号】特開2011−21069(P2011−21069A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165302(P2009−165302)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000174541)堺化学工業株式会社 (96)
【Fターム(参考)】