放熱樹脂筐体、電気電子デバイス実装装置の製造方法、LED照明装置
【課題】LED照明装置等の電気電子デバイス実装装置の組立効率性を高めるのに好適な筐体部品構造ならびに組立の手法を提案すること。
【解決手段】嵌合相手方の樹脂成形部品との接着領域に配される溶着性樹脂層と、電気電子デバイスの発熱を散逸する機能を有する放熱樹脂層とを有する電気電子デバイス用の放熱性の樹脂筐体であって、
1)放熱樹脂層は、層内のいずれかの方向における熱伝導率が少なくとも5W/mK以上の熱伝導性樹脂から構成され、平均厚みが0.3〜6mmであり、
2)溶着性樹脂層は、嵌合相手方の樹脂成形部品と1MPa以上の引張強度で振動溶着可能であることを特徴とする放熱樹脂筐体。
【解決手段】嵌合相手方の樹脂成形部品との接着領域に配される溶着性樹脂層と、電気電子デバイスの発熱を散逸する機能を有する放熱樹脂層とを有する電気電子デバイス用の放熱性の樹脂筐体であって、
1)放熱樹脂層は、層内のいずれかの方向における熱伝導率が少なくとも5W/mK以上の熱伝導性樹脂から構成され、平均厚みが0.3〜6mmであり、
2)溶着性樹脂層は、嵌合相手方の樹脂成形部品と1MPa以上の引張強度で振動溶着可能であることを特徴とする放熱樹脂筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED照明装置等の電気電子デバイス実装装置の効率的組立を可能とする放熱樹脂筐体、ならびに組立・製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
各種の電気電子デバイス、特に発熱の大きな電気電子デバイスを実装した装置、例えばIGBT素子等のインバータ素子を備える電子制御装置や電源装置、レーザーダイオード素子を配した光通信装置、省エネルギー、長寿命の特徴を有した発光ダイオード(LED)を光源に用いたLED照明装置(例えば特許文献1、2)では、デバイスの放熱冷却機能を有する放熱性筐体が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−93926号公報
【特許文献2】特開2001−243809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放熱性筐体としては従来、熱伝導率の高いアルミ等の金属の成形部品が多く用いられているが、装置の組立において、放熱性筐体と勘合される相手方部品は、軽量性、成形性、電気絶縁性、透明性等の用途要求より、熱可塑性樹脂を射出成形してなる樹脂成形部品が多く用いられるため、金属と樹脂といった性質の大きく異なる異種材料間の部品接合になる場合が多い。
【0005】
こうした金属/樹脂等の異種材料間の接着固定には、部品の一部に予めネジ勘合構造を設けて、ネジ締結により固定する方法や、部品間の界面を接着剤で固定する方法が一般的である。
【0006】
しかしながら、組立工程の効率化という観点では、接着剤の使用は塗布ならびに硬化に時間を要するとの課題があり、また組立構造の簡略化という観点では、ネジ孔形成は金型成形の複雑化やデザイン自由度の低下させる等の課題がある。また接着剤の塗布や硬化に係るバラツキにより、部品間の接合強度、気密性、防水性等の信頼性低下の懸念がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するものであり、嵌合相手方の樹脂成形部品との接着領域に配される溶着性樹脂層と、電気電子デバイスの発熱を散逸する機能を有する放熱樹脂層とを有する電気電子デバイス用の放熱性の樹脂筐体であって、
1)放熱樹脂層は、層内のいずれかの方向における熱伝導率が少なくとも5W/mK以上の熱伝導性樹脂から構成され、平均厚みが0.3〜6mmであり、
2)溶着性樹脂層は、嵌合相手方の樹脂成形部品と1MPa以上の引張強度で振動溶着可能であることを特徴とする放熱樹脂筐体である。
【0008】
また本発明は、上記の放熱樹脂筐体が、嵌合相手方の樹脂成形部品と振動溶着法により相互固定される電気電子デバイス実装装置の製造方法を包含する。
更に本発明は、上記の放熱樹脂筐体を用い、更に上記の製造方法を用いて作成されるLED照明装置に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の放熱樹脂筐体、および/または電気電子デバイス実装装置の製造方法により、接着剤固定の時間短縮やネジ固定用構造形成の省略等に基づく、LED照明装置その他の各種電気電子デバイス実装装置の組立効率性を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の放熱樹脂筐体の形態の一例(電気電子デバイス実装装置がLED照明装置である場合を例示)
【図2】本発明の放熱樹脂筐体の形態の一例(電気電子デバイス実装装置がLED照明装置である場合を例示)
【図3】図1、図2に示す放熱樹脂筐体の上面図
【図4】図1、図2に示す放熱樹脂筐体の下面図
【図5】図1、図2に示す放熱樹脂筐体の正面断面図
【図6】本発明の放熱樹脂筐体に、LED実装基板、ならびにLED駆動用電源回路基板を組み込んだ形態例を示す正面断面図
【図7】図6に示す形態例において、中空状突起樹脂層の加熱変形を利用してLED実装基板が固定された状態を例示する正面断面図
【図8】図7に示すLED実装基板固定形態の上面図
【図9】本発明の放熱樹脂筐体と、嵌合相手方の樹脂成形部品(本図面では光透過性グローブ、口金ガイシを例示)との組立形態の例を示す模式図(正面断面図)
【図10】振動溶着用リブ構造を有する嵌合相手方の樹脂成形部品(光透過性グローブ)の形態例
【図11】図10に示す樹脂成形部品の振動溶着リブ構造を設けた部位の拡大図
【図12】振動溶着用リブ構造を有する嵌合相手方の樹脂成形部品(口金ガイシ)の形態例
【図13】図12に示す樹脂成形部品の振動溶着リブ構造を設けた部位の拡大図
【図14】振動溶着による構成部品の接合方法を例示する模式図(正面断面図)
【図15】本発明の放熱樹脂筐体、製造方法を用いたLED照明装置の完成模式図(正面断面図)
【図16】本発明の放熱樹脂筐体の形態の異なる一例(電気電子デバイス実装装置がLED照明装置である場合を例示)
【図17】本発明の放熱樹脂筐体の形態の異なる一例(電気電子デバイス実装装置がLED照明装置である場合を例示)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の主な目的は、電気電子デバイス実装装置の組立・製造工程において、従来の接着剤やネジ締結による部品固定ではなく、部品間の振動溶着や部品の局部的な加熱変形により、部品間の瞬間的な固定が可能となる新規構造を採用することにより、組立工程の時間的負荷となる接着剤塗布・硬化、ネジ孔加工・ネジ締結等の工程を簡略化し、効率的な装置組立を実現するところにある。
【0012】
本発明は、嵌合相手方の樹脂成形部品との接着領域に配される溶着性樹脂層と、電気電子デバイスの発熱を散逸する機能を有する放熱樹脂層とを有する電気電子デバイス用の放熱性の樹脂筐体であって、
1)放熱樹脂層は、層内のいずれかの方向における熱伝導率が少なくとも5W/mK以上の熱伝導性樹脂から構成され、平均厚みが0.3〜6mmであり、
2)溶着性樹脂層は、嵌合相手方の樹脂成形部品と1MPa以上の引張強度で振動溶着可能であることを特徴とする放熱樹脂筐体である。放熱樹脂層は電気電子デバイスに近い側に配置される。
【0013】
溶着性樹脂層と放熱樹脂層とは、別々の層からなり積層されているか、溶着性樹脂層と放熱樹脂層とが同一の樹脂材料からなり連続層として成形されている形態が挙げられる。溶着性樹脂層と放熱樹脂層が積層される場合も、接着剤等の使用なく、成形時に積層一体成形されていることが好ましい。その際に放熱樹脂層と溶着性樹脂層が二色成形ないしインサート成形により放熱樹脂層と積層一体成形されてなることが好ましい。
【0014】
また放熱樹脂層の少なくとも一部の部位に電気絶縁樹脂層をさらに有することも好ましい。電気絶縁樹脂層は、厚み方向の絶縁破壊電圧が1kV/mm以上であり、最小厚みが0.1mm以上であることが好ましい。また電気絶縁樹脂層が二色成形ないしインサート成形により放熱樹脂層と積層一体成形されてなることが好ましい。
【0015】
放熱樹脂層、および溶着性樹脂層のマトリックスとなる樹脂は、いずれもポリカーボネートおよび/またはその変性体および/またはそのアロイからなることが好ましい。また電気絶縁樹脂層のマトリックスとなる樹脂も、ポリカーボネートおよび/またはその変性体および/またはそのアロイからなることが好ましい。
【0016】
以下に本発明の実施の形態について、具体的実施形態を示す図面例を用いて、順次説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
図1、図2は本発明の放熱樹脂筐体の構造の一例を示すものである。放熱樹脂筐体の主要骨格を為す放熱樹脂層(符号1)は、実装される電気電子デバイスの発熱を効率的に散逸し、放熱させる為の層である。
【0017】
一般の樹脂の熱伝導率は0.1〜0.4W/mK程度と小さい値を示すが、本発明の放熱樹脂層には、高熱伝導率を有する熱伝導性フィラーをマトリックスの熱可塑性樹脂に分散混合してなる高熱伝導性樹脂が好ましく用いられる。
前述のデバイス放熱の目的に関し、放熱樹脂層の熱伝導率は層内のいずれかの方向に対して、少なくとも5W/mK以上であることが好ましく、より好ましくは8W/mK以上、更に好ましくは11W/mK以上、最も好ましくは14W/mK以上である。
【0018】
使用される熱伝導性フィラーとしては、大きな限定はなく、また複数種のフィラーを組み合わせて用いることも好ましいが、樹脂の熱伝導率を高める性能効率(添加効率)の高い熱伝導性フィラーを主に用いるのが好ましく、特に熱伝導率が300W/mK以上のフィラーが好ましく。またフィラーの形状として、ある程度の形状異方性を有していることが添加効率を高める上で好ましく、アスペクト(繊維長/繊維径、もしくは粒子径/粒子厚)が少なくとも5以上のフィラーが好ましい。
【0019】
具体的には、例えば、高結晶性(結晶サイズが大きく、結晶面の面間隔が小さい)の鱗状黒鉛、膨張黒鉛、黒鉛炭素短繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等が挙げられる。黒鉛炭素短繊維としては、異方性ピッチを出発原料とし、2300℃以上、より好ましくは2700℃以上、最も好ましくは3000℃で黒鉛化焼結された熱伝導率が300W/mK以上、より好ましくは500W/mK以上のピッチ系炭素短繊維(例えば帝人株式会社製「ラヒーマ(登録商標)」等)が好ましく例示される。
【0020】
熱伝導性フィラーの添加比率としては目標とする樹脂熱伝導率の値により異なるが、マトリックス100体積部に対し、15〜60体積部が概ね好ましい。
マトリックスの熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ナイロン樹脂(PA)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、液晶ポリマー(LCP)、ABS樹脂、およびそれらの変性体やアロイによる樹脂等が挙げられるが、例えばLED照明装置に応用する場合には、LED素子発光時の高温に対応できる耐熱性(連続耐熱温度、加重撓み温度)を有し、寸法変化の原因となる吸水性の小さいポリカーボネート、ポリフェニレサルファイド、液晶ポリマー等が好ましい場合が多い。
【0021】
溶着性樹脂層(符号2B)は、嵌合相手の樹脂部品と振動溶着による溶着が行われる部位である。振動溶着は熱可塑性の樹脂部材に振動を付与することにより溶着させる方法である。振動の手段としては、超音波を用いる超音波溶着法や、超音波より低い周波数の振動を伝える方法が好ましく挙げられるが、なかでも超音波溶着法が好ましい。
【0022】
超音波溶着法は、高出力の超音波の発振部と溶着対象となる成形部品への超音波の効率的伝播を為すホーン形状を組み合わせた超音波溶着装置を用い、超音波が誘起する部品界面の摩擦熱で界面近傍の樹脂が加熱変形され、部品間で相互に溶け合うことにより、部品を溶着させる手法である。このように相互に溶け合うことが本質である為、嵌合される部品の樹脂種が同一である場合が最も安定に超音波溶着を行うことができる。すなわち溶着性樹脂層は、嵌合相手先部品と同種もしくは相溶性の熱可塑性樹脂をマトリックスとする樹脂層であることが好ましい。ただし樹脂種が同一である場合であっても、フィラーの高率充填等により、樹脂の熱的変形性が低い場合には振動溶着が安定に実現できない場合もある。
【0023】
なお振動溶着による部品間の接合強度は、安定な溶着接合を実現する観点で、1MPa以上であることが好ましく、より好ましくは2.5MPa以上、更に好ましくは5MPa以上である。
【0024】
本発明の放熱樹脂層の場合も、熱伝導性フィラーの添加比率が低い場合等にはそのまま溶着性樹脂層として用いることも可能ではあるが、層の熱伝導率を高める目的で熱伝導性フィラーの添加比率が高めた場合等では振動溶着を安定に行うのが困難になる場合がある。
【0025】
このような理由より、図1、図2では溶着性樹脂層は、放熱樹脂層と異なる層として設けられる場合として例示されており、放熱樹脂層上に図5に示す要領で積層形成される電気絶縁樹脂層(符号2)の一部分として設けられている。
【0026】
電気絶縁樹脂層は、放熱筐体内での電気電子デバイスの駆動回路・部品類の電気的絶縁信頼性を確保することを主旨とする層であり、本目的において、IEC60243短時間法に準拠して測定される、層の厚み方向の絶縁破壊電圧が1kV/mm以上、より好ましくは5kV/mm以上、更に好ましくは10kV/mm以上であって、層の最小厚みが0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.6mm以上であることが好ましい。
【0027】
本発明の目的とする組立工程簡略化の観点より、電気絶縁樹脂層は放熱樹脂層と接着剤等の使用なく、成形時に一体積層形成されることが好ましく、例えば二色成形、多色成形およびインサート成形からなる群から選択される少なくとも1種の成形方法により一体積層成形されることが好ましい。更に電気絶縁樹脂層はこれら一体成形を安定に行い、界面の接着強度を高める為には、放熱樹脂層と同種もしくは相溶性の熱可塑性樹脂をマトリックスとすることが好ましい。
【0028】
なおここで二色成形法、多色成形法とは、例えば二つ以上の樹脂または樹脂組成物を、それぞれ独立に樹脂押出用ノズルから溶融吐出させた後、金型やダイス内で一体化させ、その後に冷却固化することにより、界面で溶融接合し一体化した、二つ以上の樹脂または樹脂組成物からなる複合成形体を得る手法を意味する。
【0029】
二色成形、多色成形に用いる成形法に特に制限は無いが、具体的には、射出成形法、押出成形法などが挙げられる。射出成形の際には例えば2つ以上の金型をスライドさせ、放熱樹脂層を構成する樹脂組成物と、電気絶縁樹脂層を構成する樹脂もしくは樹脂組成物とを交互に射出し、1基の金型内で一体化させ、その後に冷却固化することによって成形できる。押出成形の際には例えば、相異なる複数の押出機から溶融押出した後に、それら複数の押出機に接続された1基のダイス内で一体化させ、その後に冷却固化することによって成形できる。
【0030】
またインサート成形とは、予め成形の為された成形物を樹脂金型内に配置した状態で、成形物に覆い被せるように新たに樹脂の射出成形を行う手法であり、インモールド成形と称する場合もある。本発明においては、例えば、まず放熱樹脂層を射出成形等により成形し、樹脂金型内部の所定箇所にセットした後に、金型を閉じ、熱伝導層と金型内壁(樹脂が打ち込まれるキャビティの内壁を意味する)との間にできる空間内に、電気絶縁樹脂層を射出成形することにより、熱伝導層に電気絶縁樹脂層を覆い被せ、一体化、複合する方法が採られる。またもしくはこの逆に、電気絶縁樹脂層を先に成形して、金型内部にセットした後に、放熱樹脂層を射出成形する方法も採ることができる。
【0031】
先に成形が為され、金型内部に配置される成形体は、射出成形や注型成形のように型を用いて成形されたものでもよいし、押し出し成形、キャスト成形等によってフィルム状ないしシート状に成形されたものを用いても良い。
【0032】
さて図5に示すように電気絶縁樹脂層は放熱樹脂層を貫通する、電気電子デバイス用の電気配線の配線孔(符号3)の周囲を完全に被覆する形で形成されている。このように形成することで、電気絶縁樹脂層は電気配線(金属導線)では通常必要となる絶縁被覆層(電気絶縁性樹脂チューブ等)を兼ねることができるため、絶縁被覆層を有する電線を使用せず、金属導線をそのまま裸線で利用することができる。絶縁被覆層を有する場合は配線端子との接合時に絶縁被覆層を部分的に除去する工程が必要となり、組立工程の効率性を低めるが、図5に例示する本構造の場合には裸線を用いることでこうした工程負荷を削減することができる。
【0033】
また図1に示す中空状突起樹脂層(符号2A)は電気絶縁樹脂層(符号2)の一部分として形成されている。中空状突起樹脂層は、放熱樹脂筐体を貫通する配線孔の孔と連続して形成され、その連続方向(図では上下方向)に沿って電気配線が配される中空部分と、それを周囲から取り囲む樹脂層からなり、放熱樹脂筐体の電気電子デバイス実装面に対し、凸状突起構造体として形成される樹脂層である。
【0034】
本例示では、電気電子デバイスの実装基板(場合によっては電気電子デバイスそれ自身でも良い)に、中空状突起樹脂層の外径に相当する孔径および孔形状を有する貫通孔が予め形成されており、本貫通孔には中空状突起樹脂層が差し込まれる形で、電気電子デバイスの実装基板は放熱樹脂筐体に実装される。ここで中空状突起樹脂層の高さ(放熱樹脂筐体の電気電子デバイス基板の実装面の表面から、中空状突起樹脂層の最先端までの鉛直距離をいう)は、電気電位デバイスの実装基板の厚みと少なくとも同等以上、より好ましくは電気電位デバイスの実装基板の厚みよりも0.5〜10mm前後高くしておくことが好ましい。このような形を採ることにより、後述するように、電気電子デバイス実装基板のアライメントを容易くするのみならず、実装基板に導電性の金属ベースと絶縁被覆層からなる金属ベース基板(放熱性の高いアルミベース基板等)を用いた場合等には、金属ベース基板に予め設けた貫通孔内に電気配線を通す場合に貫通孔内壁への電気絶縁層の形成もしくは電気配線への絶縁被覆が不要になり、裸線配線がそのまま使用可能となることより、組立工程の簡略化につながる。
【0035】
具体例としては、図6に例示するように、LED実装基板(符号4)の一部部位には、中空状突起樹脂層の外径とほぼ同一径の貫通孔(符号4A)を予め形成しておき、貫通孔を中空状突起樹脂層に嵌め込む形でLED実装基板を放熱樹脂層上に配置可能とする。これによりLED実装基板のセルフアライメントが可能になり、放熱樹脂層上のLED実装基板の固定位置を一定に保てる他、基板固定に要する工程の時間短縮を図ることができる。
【0036】
また図7に例示するように、中空状突起樹脂層を、図上上方より局所的に加熱変形させて熱変形層を作成し、放熱樹脂層に積層配置された電気電子デバイス実装基板の一部を該熱変形層により被覆せしめ、電気電子デバイス実装基板を放熱樹脂層と熱変形層で両面から挟み込む形として固定することが可能になる。これにより、LED実装基板と放熱樹脂層の面的な密着性を高め、放熱性を高めるとともに、組立工程上のバラツキ等に伴うLED実装基板の浮き等の不良発生を抑えることができる。
【0037】
放熱設計上の要求もあり、LED実装基板と放熱樹脂層の固定方法としては、これまで放熱接着剤による固定方法、あるいは放熱グリス、放熱シートとネジ締結併用による固定方法のいずれかが多く用いられている。前記方法によれば、放熱グリス、放熱シートの挟み込みは場合により必要であるが、LED実装基板を固定する目的で接着剤やネジ締結を利用する必要が無くなり、ここでも組立の工程負荷を削減することができる。
尚、中空状突起樹脂層の加熱変形は、樹脂層のガラス転移温度前後の温度に加熱した熱板等を用いて行うことが好ましい。
【0038】
図9は放熱樹脂筐体と嵌合相手方の樹脂成形部品との実際の組立形態の一例を示すものである。本例はLED照明装置を例示しており、嵌合相手方の樹脂成形部品として、LED照明装置では一般的に使用される光透過性グローブ、口金ガイシの2部品を例示している。
【0039】
図10、図12では、放熱樹脂筐体の嵌合相手方の樹脂成形部品(本例示では光透過性グローブ、口金ガイシ)の放熱樹脂筐体との嵌合部位(本例では円周状)に振動溶着、なかでも超音波溶着用のリブ構造を形成した例を示した。図11、図13に示すように、本リブ構造は超音波ホーンから伝播された振動エネルギーを被溶着部位に集中させ、超音波溶着の効率を高める目的で形成される。実際の溶着条件に応じ、リブは必ずしも必須という訳ではなく、その形状も大きな制限はないが、例えば、断面形状として、頂角45°、高さ0.5mm程度のリブが多く用いられる。
【0040】
図14は振動溶着装置、なかでも超音波溶着装置による部品間の溶着加工の様子を例示している。本例示において、超音波溶着の為されるべき部位は、光透過性グローブ/放熱樹脂筐体間、ならびに放熱樹脂筐体/口金ガイシ間、の2箇所であるが、本図では、光透過性グローブ上面(図中上面側)に超音波発振ホーンを接触させ、部品間に一定の圧力をかけた状態で、超音波溶着装置に備えられた超音波発振素子を電気的に励振し、超音波発振することによって、光透過性グローブ内部に超音波伝播させる配置を取っている。尚、口金ガイシ側は部品間アライメント用(位置ずれ防止用)の受け台座と接触させる。
【0041】
この場合、超音波発振ホーンより発振された超音波は、直接接触する光透過性グローブ内に伝播された後、光透過性グローブの内部を伝播して、放熱筐体の溶着性樹脂層形成部分(本図の場合、電気絶縁樹脂層と連続層を為し、放熱樹脂層と一体成形された層)との部品界面(本図の場合、光透過性グローブ側に超音波溶着用リブが形成されている)に到達するが、この際、両部品の界面では、超音波エネルギーにより部品間での強い摩擦振動が励起される。そして、この摩擦発熱により、両部品の界面近傍にある樹脂層が局所的に高温に熱せられ、相互に融け合う形で一体化し、部品間の溶着固定が為される。
【0042】
もう一箇所の超音波溶着部分、すなわち放熱樹脂筐体と口金ガイシ間の溶着加工については、前記配置(光透過性グローブと超音波発振ホーンを接触させる配置)のまま実施し、超音波発振ホーンより発した超音波を、光透過性グローブ内部、放熱樹脂筐体内部を順に伝播させた後に、放熱樹脂筐体/口金ガイシ間の界面に到達させ、この界面で再度、超音波による摩擦発熱を誘起して溶着を行う方法を採っても良いが、超音波伝播距離が長くなって、エネルギーが散逸し、溶着界面に十分なエネルギーが供給されないことにより、溶着強度が不十分になる場合もある。
【0043】
こうした場合には、光透過性グローブ/放熱樹脂筐体間、と放熱樹脂筐体/口金ガイシ間、の二箇所の超音波溶着を二回に分けて行い、すなわち放熱樹脂筐体/口金ガイシ間の超音波溶着については、超音波発振ホーンを直接口金ガイシに接触させ、光透過性グローブは受け台座側と接触する配置にて、別個に実施する形が好ましい。
【0044】
さて本例示のように本発明をLED照明装置に応用する場合には、装置構成上、放熱樹脂層の嵌合相手方の樹脂成形部品として、光透過性グローブが使用されるケースが極めて多いものと推定される。光透過性グローブは透明性が非常に重要となる部品であり、その観点より使用できる樹脂材料の種類にもある程度の制約がある。実際、現状の市場ではポリカーボネート樹脂もしくはアクリル樹脂のいずれかが用いられている実情である。
【0045】
これら実情を勘案すると、本発明をLED照明装置に応用する場合には、放熱樹脂層、電気絶縁樹脂層、および溶着性樹脂層のマトリックス用樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、もしくはアクリル樹脂が好ましいということになる。ただしLED素子の高温発熱に対応した耐熱性や筐体として必要な耐衝撃性等も考慮すると、ポリカーボネートがより好ましい。
【0046】
すなわちLED照明装置への応用では、放熱樹脂層、電気絶縁樹脂層、および溶着性樹脂層のマトリックス用樹脂としてはいずれも、ポリカーボネートおよび/またはその変性体および/またはそのアロイからなる樹脂が好ましく用いられる。
【0047】
また図16、17は、本発明の放熱樹脂筐体の別の形態例である。本例の特徴としては、1)溶着性樹脂層と電気絶縁樹脂層が連続層として放熱樹脂層上に積層する形で形成されており、2)厚み方向の絶縁破壊電圧が1kV/mmであって、厚みが0.1〜2mmの電気絶縁樹脂層がLED実装基板と放熱樹脂層に挟持される位置に積層されており、3)電気絶縁樹脂層の光反射率は70%以上であって、LED素子出射光の指向性を制御する為の三次元形状が付与された光指向性制御層として、LED実装基板の周縁に配されている事である。
【0048】
2)の特徴に関し、電気絶縁樹脂層をLED実装基板と放熱樹脂層に挟持される位置に配置する事により、LED素子もしくはLED実装基板と、放熱樹脂層(導電性を有する場合)との間の電気絶縁性を高める事ができ、LED照明装置としての電気的安全性(電流漏れ、放電スパーク、感電等の防止)を確保する上で好ましい。
【0049】
この位置での使用においては、電気絶縁樹脂層の厚みはおよそ0.1〜2mmの範囲にある事が好ましい。厚みが2mm超であると、電気絶縁樹脂層を通過する熱流に対し、層内の損失量(熱抵抗)が大きくなり、LED素子に対する放熱性を低下させるので好ましくない。層の放熱性を高める観点で、電気絶縁樹脂層の厚み方向の熱伝導率は少なくとも0.1W/mK以上であり、好ましくは0.3W/mK以上、より好ましくは0.5W/mK以上、更に好ましくは1W/mK以上、最も好ましくは1.5W/mK以上である。層の熱伝導率を高めるには、熱伝導率が高く、電気絶縁性にも優れた無機フィラー類を層を構成する樹脂マトリクス内に充填する方法が挙げられる。具体的には酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化珪素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化珪素等の無機フィラー類が好ましく挙げられる。
【0050】
また3)の特徴に関し、電気絶縁樹脂層表面が高い光反射率を有することにより、LED素子出射光の光利用効率を高めたり(電気絶縁樹脂層による光吸収の低減)、LED素子出射光の出射方向(指向性)を制御する光指向性制御層(光反射層、光散乱層等)として機能させる事ができる。このような意図で用いる場合、電気絶縁樹脂層表面の光反射率は少なくとも50%以上である事が好ましく、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上である。尚、ここで光反射率は、用いられる発光デバイス(LED、レーザーダイオード等)の主発光波長に対して、もしくは主発光波長帯に対して測定された値とする。
【0051】
層の光反射率を高める目的では、光反射率、屈折率が高く、電気絶縁性に優れた無機フィラー等を層を構成するマトリクス樹脂内に充填する方法が挙げられる。具体的には酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、酸化セリウム、その他白色顔料等のフィラーが挙げられ、場合によっては白色染料等も使用可能である。尚、層の光反射率を更に高める目的において、酸化チタン等の高屈折率の薄膜を層の表面に真空蒸着、スパッタ等により形成しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の放熱樹脂筐体は、LED照明装置等の電気電子デバイス実装装置の組立効率性を高めるのに好適であり、本分野の産業において幅広く利用が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 放熱樹脂層
2 電気絶縁樹脂層
2A 中空状突起樹脂層
2B 溶着性樹脂層(本図では電気絶縁樹脂層と一体成形)
2C 熱変形層
2D 光指向性制御層(本図では電気絶縁樹脂層と一体成形)
3 配線孔
4 LED実装基板
4A LED実装基板内の貫通孔
5 LED素子
6 配線(配線被覆層ない裸線)
7 はんだ付け用配線端子(LED実装基板上)
8 LED駆動用電源回路基板
9 熱プレス装置
10 嵌合相手方の樹脂成形部品(光透過性グローブ)
10A 超音波溶着用リブ構造
11 嵌合相手方の樹脂成形部品(口金ガイシ)
11A 超音波溶着用リブ構造
12 超音波溶着部位(放熱樹脂筐体/光透過性グローブ間)
13 超音波溶着部位(放熱樹脂筐体/口金ガイシ間)
14A 超音波溶着用端子(超音波発振ホーンもしくは受け台座)
14B 超音波溶着用端子(超音波発振ホーンもしくは受け台座)
15 口金部品
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED照明装置等の電気電子デバイス実装装置の効率的組立を可能とする放熱樹脂筐体、ならびに組立・製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
各種の電気電子デバイス、特に発熱の大きな電気電子デバイスを実装した装置、例えばIGBT素子等のインバータ素子を備える電子制御装置や電源装置、レーザーダイオード素子を配した光通信装置、省エネルギー、長寿命の特徴を有した発光ダイオード(LED)を光源に用いたLED照明装置(例えば特許文献1、2)では、デバイスの放熱冷却機能を有する放熱性筐体が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−93926号公報
【特許文献2】特開2001−243809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放熱性筐体としては従来、熱伝導率の高いアルミ等の金属の成形部品が多く用いられているが、装置の組立において、放熱性筐体と勘合される相手方部品は、軽量性、成形性、電気絶縁性、透明性等の用途要求より、熱可塑性樹脂を射出成形してなる樹脂成形部品が多く用いられるため、金属と樹脂といった性質の大きく異なる異種材料間の部品接合になる場合が多い。
【0005】
こうした金属/樹脂等の異種材料間の接着固定には、部品の一部に予めネジ勘合構造を設けて、ネジ締結により固定する方法や、部品間の界面を接着剤で固定する方法が一般的である。
【0006】
しかしながら、組立工程の効率化という観点では、接着剤の使用は塗布ならびに硬化に時間を要するとの課題があり、また組立構造の簡略化という観点では、ネジ孔形成は金型成形の複雑化やデザイン自由度の低下させる等の課題がある。また接着剤の塗布や硬化に係るバラツキにより、部品間の接合強度、気密性、防水性等の信頼性低下の懸念がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するものであり、嵌合相手方の樹脂成形部品との接着領域に配される溶着性樹脂層と、電気電子デバイスの発熱を散逸する機能を有する放熱樹脂層とを有する電気電子デバイス用の放熱性の樹脂筐体であって、
1)放熱樹脂層は、層内のいずれかの方向における熱伝導率が少なくとも5W/mK以上の熱伝導性樹脂から構成され、平均厚みが0.3〜6mmであり、
2)溶着性樹脂層は、嵌合相手方の樹脂成形部品と1MPa以上の引張強度で振動溶着可能であることを特徴とする放熱樹脂筐体である。
【0008】
また本発明は、上記の放熱樹脂筐体が、嵌合相手方の樹脂成形部品と振動溶着法により相互固定される電気電子デバイス実装装置の製造方法を包含する。
更に本発明は、上記の放熱樹脂筐体を用い、更に上記の製造方法を用いて作成されるLED照明装置に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の放熱樹脂筐体、および/または電気電子デバイス実装装置の製造方法により、接着剤固定の時間短縮やネジ固定用構造形成の省略等に基づく、LED照明装置その他の各種電気電子デバイス実装装置の組立効率性を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の放熱樹脂筐体の形態の一例(電気電子デバイス実装装置がLED照明装置である場合を例示)
【図2】本発明の放熱樹脂筐体の形態の一例(電気電子デバイス実装装置がLED照明装置である場合を例示)
【図3】図1、図2に示す放熱樹脂筐体の上面図
【図4】図1、図2に示す放熱樹脂筐体の下面図
【図5】図1、図2に示す放熱樹脂筐体の正面断面図
【図6】本発明の放熱樹脂筐体に、LED実装基板、ならびにLED駆動用電源回路基板を組み込んだ形態例を示す正面断面図
【図7】図6に示す形態例において、中空状突起樹脂層の加熱変形を利用してLED実装基板が固定された状態を例示する正面断面図
【図8】図7に示すLED実装基板固定形態の上面図
【図9】本発明の放熱樹脂筐体と、嵌合相手方の樹脂成形部品(本図面では光透過性グローブ、口金ガイシを例示)との組立形態の例を示す模式図(正面断面図)
【図10】振動溶着用リブ構造を有する嵌合相手方の樹脂成形部品(光透過性グローブ)の形態例
【図11】図10に示す樹脂成形部品の振動溶着リブ構造を設けた部位の拡大図
【図12】振動溶着用リブ構造を有する嵌合相手方の樹脂成形部品(口金ガイシ)の形態例
【図13】図12に示す樹脂成形部品の振動溶着リブ構造を設けた部位の拡大図
【図14】振動溶着による構成部品の接合方法を例示する模式図(正面断面図)
【図15】本発明の放熱樹脂筐体、製造方法を用いたLED照明装置の完成模式図(正面断面図)
【図16】本発明の放熱樹脂筐体の形態の異なる一例(電気電子デバイス実装装置がLED照明装置である場合を例示)
【図17】本発明の放熱樹脂筐体の形態の異なる一例(電気電子デバイス実装装置がLED照明装置である場合を例示)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の主な目的は、電気電子デバイス実装装置の組立・製造工程において、従来の接着剤やネジ締結による部品固定ではなく、部品間の振動溶着や部品の局部的な加熱変形により、部品間の瞬間的な固定が可能となる新規構造を採用することにより、組立工程の時間的負荷となる接着剤塗布・硬化、ネジ孔加工・ネジ締結等の工程を簡略化し、効率的な装置組立を実現するところにある。
【0012】
本発明は、嵌合相手方の樹脂成形部品との接着領域に配される溶着性樹脂層と、電気電子デバイスの発熱を散逸する機能を有する放熱樹脂層とを有する電気電子デバイス用の放熱性の樹脂筐体であって、
1)放熱樹脂層は、層内のいずれかの方向における熱伝導率が少なくとも5W/mK以上の熱伝導性樹脂から構成され、平均厚みが0.3〜6mmであり、
2)溶着性樹脂層は、嵌合相手方の樹脂成形部品と1MPa以上の引張強度で振動溶着可能であることを特徴とする放熱樹脂筐体である。放熱樹脂層は電気電子デバイスに近い側に配置される。
【0013】
溶着性樹脂層と放熱樹脂層とは、別々の層からなり積層されているか、溶着性樹脂層と放熱樹脂層とが同一の樹脂材料からなり連続層として成形されている形態が挙げられる。溶着性樹脂層と放熱樹脂層が積層される場合も、接着剤等の使用なく、成形時に積層一体成形されていることが好ましい。その際に放熱樹脂層と溶着性樹脂層が二色成形ないしインサート成形により放熱樹脂層と積層一体成形されてなることが好ましい。
【0014】
また放熱樹脂層の少なくとも一部の部位に電気絶縁樹脂層をさらに有することも好ましい。電気絶縁樹脂層は、厚み方向の絶縁破壊電圧が1kV/mm以上であり、最小厚みが0.1mm以上であることが好ましい。また電気絶縁樹脂層が二色成形ないしインサート成形により放熱樹脂層と積層一体成形されてなることが好ましい。
【0015】
放熱樹脂層、および溶着性樹脂層のマトリックスとなる樹脂は、いずれもポリカーボネートおよび/またはその変性体および/またはそのアロイからなることが好ましい。また電気絶縁樹脂層のマトリックスとなる樹脂も、ポリカーボネートおよび/またはその変性体および/またはそのアロイからなることが好ましい。
【0016】
以下に本発明の実施の形態について、具体的実施形態を示す図面例を用いて、順次説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
図1、図2は本発明の放熱樹脂筐体の構造の一例を示すものである。放熱樹脂筐体の主要骨格を為す放熱樹脂層(符号1)は、実装される電気電子デバイスの発熱を効率的に散逸し、放熱させる為の層である。
【0017】
一般の樹脂の熱伝導率は0.1〜0.4W/mK程度と小さい値を示すが、本発明の放熱樹脂層には、高熱伝導率を有する熱伝導性フィラーをマトリックスの熱可塑性樹脂に分散混合してなる高熱伝導性樹脂が好ましく用いられる。
前述のデバイス放熱の目的に関し、放熱樹脂層の熱伝導率は層内のいずれかの方向に対して、少なくとも5W/mK以上であることが好ましく、より好ましくは8W/mK以上、更に好ましくは11W/mK以上、最も好ましくは14W/mK以上である。
【0018】
使用される熱伝導性フィラーとしては、大きな限定はなく、また複数種のフィラーを組み合わせて用いることも好ましいが、樹脂の熱伝導率を高める性能効率(添加効率)の高い熱伝導性フィラーを主に用いるのが好ましく、特に熱伝導率が300W/mK以上のフィラーが好ましく。またフィラーの形状として、ある程度の形状異方性を有していることが添加効率を高める上で好ましく、アスペクト(繊維長/繊維径、もしくは粒子径/粒子厚)が少なくとも5以上のフィラーが好ましい。
【0019】
具体的には、例えば、高結晶性(結晶サイズが大きく、結晶面の面間隔が小さい)の鱗状黒鉛、膨張黒鉛、黒鉛炭素短繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等が挙げられる。黒鉛炭素短繊維としては、異方性ピッチを出発原料とし、2300℃以上、より好ましくは2700℃以上、最も好ましくは3000℃で黒鉛化焼結された熱伝導率が300W/mK以上、より好ましくは500W/mK以上のピッチ系炭素短繊維(例えば帝人株式会社製「ラヒーマ(登録商標)」等)が好ましく例示される。
【0020】
熱伝導性フィラーの添加比率としては目標とする樹脂熱伝導率の値により異なるが、マトリックス100体積部に対し、15〜60体積部が概ね好ましい。
マトリックスの熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ナイロン樹脂(PA)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、液晶ポリマー(LCP)、ABS樹脂、およびそれらの変性体やアロイによる樹脂等が挙げられるが、例えばLED照明装置に応用する場合には、LED素子発光時の高温に対応できる耐熱性(連続耐熱温度、加重撓み温度)を有し、寸法変化の原因となる吸水性の小さいポリカーボネート、ポリフェニレサルファイド、液晶ポリマー等が好ましい場合が多い。
【0021】
溶着性樹脂層(符号2B)は、嵌合相手の樹脂部品と振動溶着による溶着が行われる部位である。振動溶着は熱可塑性の樹脂部材に振動を付与することにより溶着させる方法である。振動の手段としては、超音波を用いる超音波溶着法や、超音波より低い周波数の振動を伝える方法が好ましく挙げられるが、なかでも超音波溶着法が好ましい。
【0022】
超音波溶着法は、高出力の超音波の発振部と溶着対象となる成形部品への超音波の効率的伝播を為すホーン形状を組み合わせた超音波溶着装置を用い、超音波が誘起する部品界面の摩擦熱で界面近傍の樹脂が加熱変形され、部品間で相互に溶け合うことにより、部品を溶着させる手法である。このように相互に溶け合うことが本質である為、嵌合される部品の樹脂種が同一である場合が最も安定に超音波溶着を行うことができる。すなわち溶着性樹脂層は、嵌合相手先部品と同種もしくは相溶性の熱可塑性樹脂をマトリックスとする樹脂層であることが好ましい。ただし樹脂種が同一である場合であっても、フィラーの高率充填等により、樹脂の熱的変形性が低い場合には振動溶着が安定に実現できない場合もある。
【0023】
なお振動溶着による部品間の接合強度は、安定な溶着接合を実現する観点で、1MPa以上であることが好ましく、より好ましくは2.5MPa以上、更に好ましくは5MPa以上である。
【0024】
本発明の放熱樹脂層の場合も、熱伝導性フィラーの添加比率が低い場合等にはそのまま溶着性樹脂層として用いることも可能ではあるが、層の熱伝導率を高める目的で熱伝導性フィラーの添加比率が高めた場合等では振動溶着を安定に行うのが困難になる場合がある。
【0025】
このような理由より、図1、図2では溶着性樹脂層は、放熱樹脂層と異なる層として設けられる場合として例示されており、放熱樹脂層上に図5に示す要領で積層形成される電気絶縁樹脂層(符号2)の一部分として設けられている。
【0026】
電気絶縁樹脂層は、放熱筐体内での電気電子デバイスの駆動回路・部品類の電気的絶縁信頼性を確保することを主旨とする層であり、本目的において、IEC60243短時間法に準拠して測定される、層の厚み方向の絶縁破壊電圧が1kV/mm以上、より好ましくは5kV/mm以上、更に好ましくは10kV/mm以上であって、層の最小厚みが0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.6mm以上であることが好ましい。
【0027】
本発明の目的とする組立工程簡略化の観点より、電気絶縁樹脂層は放熱樹脂層と接着剤等の使用なく、成形時に一体積層形成されることが好ましく、例えば二色成形、多色成形およびインサート成形からなる群から選択される少なくとも1種の成形方法により一体積層成形されることが好ましい。更に電気絶縁樹脂層はこれら一体成形を安定に行い、界面の接着強度を高める為には、放熱樹脂層と同種もしくは相溶性の熱可塑性樹脂をマトリックスとすることが好ましい。
【0028】
なおここで二色成形法、多色成形法とは、例えば二つ以上の樹脂または樹脂組成物を、それぞれ独立に樹脂押出用ノズルから溶融吐出させた後、金型やダイス内で一体化させ、その後に冷却固化することにより、界面で溶融接合し一体化した、二つ以上の樹脂または樹脂組成物からなる複合成形体を得る手法を意味する。
【0029】
二色成形、多色成形に用いる成形法に特に制限は無いが、具体的には、射出成形法、押出成形法などが挙げられる。射出成形の際には例えば2つ以上の金型をスライドさせ、放熱樹脂層を構成する樹脂組成物と、電気絶縁樹脂層を構成する樹脂もしくは樹脂組成物とを交互に射出し、1基の金型内で一体化させ、その後に冷却固化することによって成形できる。押出成形の際には例えば、相異なる複数の押出機から溶融押出した後に、それら複数の押出機に接続された1基のダイス内で一体化させ、その後に冷却固化することによって成形できる。
【0030】
またインサート成形とは、予め成形の為された成形物を樹脂金型内に配置した状態で、成形物に覆い被せるように新たに樹脂の射出成形を行う手法であり、インモールド成形と称する場合もある。本発明においては、例えば、まず放熱樹脂層を射出成形等により成形し、樹脂金型内部の所定箇所にセットした後に、金型を閉じ、熱伝導層と金型内壁(樹脂が打ち込まれるキャビティの内壁を意味する)との間にできる空間内に、電気絶縁樹脂層を射出成形することにより、熱伝導層に電気絶縁樹脂層を覆い被せ、一体化、複合する方法が採られる。またもしくはこの逆に、電気絶縁樹脂層を先に成形して、金型内部にセットした後に、放熱樹脂層を射出成形する方法も採ることができる。
【0031】
先に成形が為され、金型内部に配置される成形体は、射出成形や注型成形のように型を用いて成形されたものでもよいし、押し出し成形、キャスト成形等によってフィルム状ないしシート状に成形されたものを用いても良い。
【0032】
さて図5に示すように電気絶縁樹脂層は放熱樹脂層を貫通する、電気電子デバイス用の電気配線の配線孔(符号3)の周囲を完全に被覆する形で形成されている。このように形成することで、電気絶縁樹脂層は電気配線(金属導線)では通常必要となる絶縁被覆層(電気絶縁性樹脂チューブ等)を兼ねることができるため、絶縁被覆層を有する電線を使用せず、金属導線をそのまま裸線で利用することができる。絶縁被覆層を有する場合は配線端子との接合時に絶縁被覆層を部分的に除去する工程が必要となり、組立工程の効率性を低めるが、図5に例示する本構造の場合には裸線を用いることでこうした工程負荷を削減することができる。
【0033】
また図1に示す中空状突起樹脂層(符号2A)は電気絶縁樹脂層(符号2)の一部分として形成されている。中空状突起樹脂層は、放熱樹脂筐体を貫通する配線孔の孔と連続して形成され、その連続方向(図では上下方向)に沿って電気配線が配される中空部分と、それを周囲から取り囲む樹脂層からなり、放熱樹脂筐体の電気電子デバイス実装面に対し、凸状突起構造体として形成される樹脂層である。
【0034】
本例示では、電気電子デバイスの実装基板(場合によっては電気電子デバイスそれ自身でも良い)に、中空状突起樹脂層の外径に相当する孔径および孔形状を有する貫通孔が予め形成されており、本貫通孔には中空状突起樹脂層が差し込まれる形で、電気電子デバイスの実装基板は放熱樹脂筐体に実装される。ここで中空状突起樹脂層の高さ(放熱樹脂筐体の電気電子デバイス基板の実装面の表面から、中空状突起樹脂層の最先端までの鉛直距離をいう)は、電気電位デバイスの実装基板の厚みと少なくとも同等以上、より好ましくは電気電位デバイスの実装基板の厚みよりも0.5〜10mm前後高くしておくことが好ましい。このような形を採ることにより、後述するように、電気電子デバイス実装基板のアライメントを容易くするのみならず、実装基板に導電性の金属ベースと絶縁被覆層からなる金属ベース基板(放熱性の高いアルミベース基板等)を用いた場合等には、金属ベース基板に予め設けた貫通孔内に電気配線を通す場合に貫通孔内壁への電気絶縁層の形成もしくは電気配線への絶縁被覆が不要になり、裸線配線がそのまま使用可能となることより、組立工程の簡略化につながる。
【0035】
具体例としては、図6に例示するように、LED実装基板(符号4)の一部部位には、中空状突起樹脂層の外径とほぼ同一径の貫通孔(符号4A)を予め形成しておき、貫通孔を中空状突起樹脂層に嵌め込む形でLED実装基板を放熱樹脂層上に配置可能とする。これによりLED実装基板のセルフアライメントが可能になり、放熱樹脂層上のLED実装基板の固定位置を一定に保てる他、基板固定に要する工程の時間短縮を図ることができる。
【0036】
また図7に例示するように、中空状突起樹脂層を、図上上方より局所的に加熱変形させて熱変形層を作成し、放熱樹脂層に積層配置された電気電子デバイス実装基板の一部を該熱変形層により被覆せしめ、電気電子デバイス実装基板を放熱樹脂層と熱変形層で両面から挟み込む形として固定することが可能になる。これにより、LED実装基板と放熱樹脂層の面的な密着性を高め、放熱性を高めるとともに、組立工程上のバラツキ等に伴うLED実装基板の浮き等の不良発生を抑えることができる。
【0037】
放熱設計上の要求もあり、LED実装基板と放熱樹脂層の固定方法としては、これまで放熱接着剤による固定方法、あるいは放熱グリス、放熱シートとネジ締結併用による固定方法のいずれかが多く用いられている。前記方法によれば、放熱グリス、放熱シートの挟み込みは場合により必要であるが、LED実装基板を固定する目的で接着剤やネジ締結を利用する必要が無くなり、ここでも組立の工程負荷を削減することができる。
尚、中空状突起樹脂層の加熱変形は、樹脂層のガラス転移温度前後の温度に加熱した熱板等を用いて行うことが好ましい。
【0038】
図9は放熱樹脂筐体と嵌合相手方の樹脂成形部品との実際の組立形態の一例を示すものである。本例はLED照明装置を例示しており、嵌合相手方の樹脂成形部品として、LED照明装置では一般的に使用される光透過性グローブ、口金ガイシの2部品を例示している。
【0039】
図10、図12では、放熱樹脂筐体の嵌合相手方の樹脂成形部品(本例示では光透過性グローブ、口金ガイシ)の放熱樹脂筐体との嵌合部位(本例では円周状)に振動溶着、なかでも超音波溶着用のリブ構造を形成した例を示した。図11、図13に示すように、本リブ構造は超音波ホーンから伝播された振動エネルギーを被溶着部位に集中させ、超音波溶着の効率を高める目的で形成される。実際の溶着条件に応じ、リブは必ずしも必須という訳ではなく、その形状も大きな制限はないが、例えば、断面形状として、頂角45°、高さ0.5mm程度のリブが多く用いられる。
【0040】
図14は振動溶着装置、なかでも超音波溶着装置による部品間の溶着加工の様子を例示している。本例示において、超音波溶着の為されるべき部位は、光透過性グローブ/放熱樹脂筐体間、ならびに放熱樹脂筐体/口金ガイシ間、の2箇所であるが、本図では、光透過性グローブ上面(図中上面側)に超音波発振ホーンを接触させ、部品間に一定の圧力をかけた状態で、超音波溶着装置に備えられた超音波発振素子を電気的に励振し、超音波発振することによって、光透過性グローブ内部に超音波伝播させる配置を取っている。尚、口金ガイシ側は部品間アライメント用(位置ずれ防止用)の受け台座と接触させる。
【0041】
この場合、超音波発振ホーンより発振された超音波は、直接接触する光透過性グローブ内に伝播された後、光透過性グローブの内部を伝播して、放熱筐体の溶着性樹脂層形成部分(本図の場合、電気絶縁樹脂層と連続層を為し、放熱樹脂層と一体成形された層)との部品界面(本図の場合、光透過性グローブ側に超音波溶着用リブが形成されている)に到達するが、この際、両部品の界面では、超音波エネルギーにより部品間での強い摩擦振動が励起される。そして、この摩擦発熱により、両部品の界面近傍にある樹脂層が局所的に高温に熱せられ、相互に融け合う形で一体化し、部品間の溶着固定が為される。
【0042】
もう一箇所の超音波溶着部分、すなわち放熱樹脂筐体と口金ガイシ間の溶着加工については、前記配置(光透過性グローブと超音波発振ホーンを接触させる配置)のまま実施し、超音波発振ホーンより発した超音波を、光透過性グローブ内部、放熱樹脂筐体内部を順に伝播させた後に、放熱樹脂筐体/口金ガイシ間の界面に到達させ、この界面で再度、超音波による摩擦発熱を誘起して溶着を行う方法を採っても良いが、超音波伝播距離が長くなって、エネルギーが散逸し、溶着界面に十分なエネルギーが供給されないことにより、溶着強度が不十分になる場合もある。
【0043】
こうした場合には、光透過性グローブ/放熱樹脂筐体間、と放熱樹脂筐体/口金ガイシ間、の二箇所の超音波溶着を二回に分けて行い、すなわち放熱樹脂筐体/口金ガイシ間の超音波溶着については、超音波発振ホーンを直接口金ガイシに接触させ、光透過性グローブは受け台座側と接触する配置にて、別個に実施する形が好ましい。
【0044】
さて本例示のように本発明をLED照明装置に応用する場合には、装置構成上、放熱樹脂層の嵌合相手方の樹脂成形部品として、光透過性グローブが使用されるケースが極めて多いものと推定される。光透過性グローブは透明性が非常に重要となる部品であり、その観点より使用できる樹脂材料の種類にもある程度の制約がある。実際、現状の市場ではポリカーボネート樹脂もしくはアクリル樹脂のいずれかが用いられている実情である。
【0045】
これら実情を勘案すると、本発明をLED照明装置に応用する場合には、放熱樹脂層、電気絶縁樹脂層、および溶着性樹脂層のマトリックス用樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、もしくはアクリル樹脂が好ましいということになる。ただしLED素子の高温発熱に対応した耐熱性や筐体として必要な耐衝撃性等も考慮すると、ポリカーボネートがより好ましい。
【0046】
すなわちLED照明装置への応用では、放熱樹脂層、電気絶縁樹脂層、および溶着性樹脂層のマトリックス用樹脂としてはいずれも、ポリカーボネートおよび/またはその変性体および/またはそのアロイからなる樹脂が好ましく用いられる。
【0047】
また図16、17は、本発明の放熱樹脂筐体の別の形態例である。本例の特徴としては、1)溶着性樹脂層と電気絶縁樹脂層が連続層として放熱樹脂層上に積層する形で形成されており、2)厚み方向の絶縁破壊電圧が1kV/mmであって、厚みが0.1〜2mmの電気絶縁樹脂層がLED実装基板と放熱樹脂層に挟持される位置に積層されており、3)電気絶縁樹脂層の光反射率は70%以上であって、LED素子出射光の指向性を制御する為の三次元形状が付与された光指向性制御層として、LED実装基板の周縁に配されている事である。
【0048】
2)の特徴に関し、電気絶縁樹脂層をLED実装基板と放熱樹脂層に挟持される位置に配置する事により、LED素子もしくはLED実装基板と、放熱樹脂層(導電性を有する場合)との間の電気絶縁性を高める事ができ、LED照明装置としての電気的安全性(電流漏れ、放電スパーク、感電等の防止)を確保する上で好ましい。
【0049】
この位置での使用においては、電気絶縁樹脂層の厚みはおよそ0.1〜2mmの範囲にある事が好ましい。厚みが2mm超であると、電気絶縁樹脂層を通過する熱流に対し、層内の損失量(熱抵抗)が大きくなり、LED素子に対する放熱性を低下させるので好ましくない。層の放熱性を高める観点で、電気絶縁樹脂層の厚み方向の熱伝導率は少なくとも0.1W/mK以上であり、好ましくは0.3W/mK以上、より好ましくは0.5W/mK以上、更に好ましくは1W/mK以上、最も好ましくは1.5W/mK以上である。層の熱伝導率を高めるには、熱伝導率が高く、電気絶縁性にも優れた無機フィラー類を層を構成する樹脂マトリクス内に充填する方法が挙げられる。具体的には酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化珪素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化珪素等の無機フィラー類が好ましく挙げられる。
【0050】
また3)の特徴に関し、電気絶縁樹脂層表面が高い光反射率を有することにより、LED素子出射光の光利用効率を高めたり(電気絶縁樹脂層による光吸収の低減)、LED素子出射光の出射方向(指向性)を制御する光指向性制御層(光反射層、光散乱層等)として機能させる事ができる。このような意図で用いる場合、電気絶縁樹脂層表面の光反射率は少なくとも50%以上である事が好ましく、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上である。尚、ここで光反射率は、用いられる発光デバイス(LED、レーザーダイオード等)の主発光波長に対して、もしくは主発光波長帯に対して測定された値とする。
【0051】
層の光反射率を高める目的では、光反射率、屈折率が高く、電気絶縁性に優れた無機フィラー等を層を構成するマトリクス樹脂内に充填する方法が挙げられる。具体的には酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、酸化セリウム、その他白色顔料等のフィラーが挙げられ、場合によっては白色染料等も使用可能である。尚、層の光反射率を更に高める目的において、酸化チタン等の高屈折率の薄膜を層の表面に真空蒸着、スパッタ等により形成しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の放熱樹脂筐体は、LED照明装置等の電気電子デバイス実装装置の組立効率性を高めるのに好適であり、本分野の産業において幅広く利用が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 放熱樹脂層
2 電気絶縁樹脂層
2A 中空状突起樹脂層
2B 溶着性樹脂層(本図では電気絶縁樹脂層と一体成形)
2C 熱変形層
2D 光指向性制御層(本図では電気絶縁樹脂層と一体成形)
3 配線孔
4 LED実装基板
4A LED実装基板内の貫通孔
5 LED素子
6 配線(配線被覆層ない裸線)
7 はんだ付け用配線端子(LED実装基板上)
8 LED駆動用電源回路基板
9 熱プレス装置
10 嵌合相手方の樹脂成形部品(光透過性グローブ)
10A 超音波溶着用リブ構造
11 嵌合相手方の樹脂成形部品(口金ガイシ)
11A 超音波溶着用リブ構造
12 超音波溶着部位(放熱樹脂筐体/光透過性グローブ間)
13 超音波溶着部位(放熱樹脂筐体/口金ガイシ間)
14A 超音波溶着用端子(超音波発振ホーンもしくは受け台座)
14B 超音波溶着用端子(超音波発振ホーンもしくは受け台座)
15 口金部品
【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵌合相手方の樹脂成形部品との接着領域に配される溶着性樹脂層と、電気電子デバイスの発熱を散逸する機能を有する放熱樹脂層とを有する電気電子デバイス用の放熱性の樹脂筐体であって、
1)放熱樹脂層は、層内のいずれかの方向における熱伝導率が少なくとも5W/mK以上の熱伝導性樹脂から構成され、平均厚みが0.3〜6mmであり、
2)溶着性樹脂層は、嵌合相手方の樹脂成形部品と1MPa以上の引張強度で振動溶着可能であることを特徴とする放熱樹脂筐体。
【請求項2】
溶着性樹脂層と放熱樹脂層とが積層一体成形されてなる請求項1に記載の放熱樹脂筐体。
【請求項3】
放熱樹脂層と溶着性樹脂層が二色成形、多色成形およびインサート成形からなる群から選択される少なくとも1種の成形方法により放熱樹脂層と積層一体成形されてなる請求項2に記載の放熱樹脂筐体。
【請求項4】
溶着性樹脂層と放熱樹脂層とが同一の樹脂材料からなり、連続層として成形されてなる請求項1に記載の放熱樹脂筐体。
【請求項5】
厚み方向の絶縁破壊電圧が1kV/mm以上であり、最小厚みが0.1mm以上の電気絶縁樹脂層を、放熱樹脂層の少なくとも一部部位にさらに有する請求項1〜3のいずれかに記載の放熱樹脂筐体。
【請求項6】
電気電子デバイスと放熱樹脂層とに挟持される位置に、厚み0.1〜2mmの電気絶縁樹脂層が配置されている事を特徴とする請求項5に記載の放熱樹脂筐体。
【請求項7】
溶着性樹脂層と電気絶縁樹脂層とが同一の樹脂材料からなり、連続層として成形されてなる請求項5または6に記載の放熱樹脂筐体。
【請求項8】
溶着性樹脂層およびまたは電気絶縁樹脂層の表面の光反射率が70%以上である請求項5〜7のいずれかに記載の放熱樹脂筐体。
【請求項9】
電気絶縁樹脂層が二色成形、多色成形およびインサート成形からなる群から選択される少なくとも1種の成形方法により放熱樹脂層と積層一体成形されてなる請求項5〜8のいずれかに記載の放熱樹脂筐体。
【請求項10】
放熱樹脂層、および溶着性樹脂層のマトリックスとなる樹脂は、いずれもポリカーボネートおよび/またはその変性体および/またはそのアロイからなる請求項1〜3もしくは請求項8のいずれかに記載の放熱樹脂筐体。
【請求項11】
電気絶縁樹脂層のマトリックスとなる樹脂が、ポリカーボネートおよび/またはその変性体および/またはそのアロイからなる請求項5〜9のいずれかに記載の放熱樹脂筐体。
【請求項12】
電気配線用の貫通孔が、その内壁層を電気絶縁樹脂層とする形で、放熱樹脂層の一部部位に形成されてなる請求項5、6、7、8、9、11のいずれかに記載の放熱樹脂筐体。
【請求項13】
貫通孔の内壁層は、放熱樹脂層の片面もしくは両面上に、内壁層から連続的に形成される中空状突起樹脂層を有している請求項12に記載の放熱樹脂筐体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の放熱樹脂筐体を、嵌合相手方の樹脂成形部品と振動溶着法により相互固定する電気電子デバイス実装装置の製造方法。
【請求項15】
振動溶着法が超音波溶着法である請求項14に記載の電気電子デバイス実装装置の製造方法。
【請求項16】
電気電子デバイス実装基板および/または配線用端子の、請求項13に記載の中空状突起樹脂層を嵌め込み可能な位置に貫通孔を形成する工程、貫通孔を中空状突起樹脂層に嵌め込む形で電気電子デバイス実装基板を放熱樹脂層の一定位置に積層配置する工程を含む請求項14または15に記載の電気電子デバイス実装装置の製造方法。
【請求項17】
請求項13に記載の中空状突起樹脂層を局所的に加熱変形させて熱変形層を作成し、放熱樹脂層に積層配置された電気電子デバイス実装基板の一部を熱変形層により被覆せしめ、電気電子デバイス実装基板を放熱樹脂層と熱変形層で両面から挟み込む形として固定する工程を含む請求項14または15に記載の電気電子デバイス実装装置の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜13のいずれかに記載の放熱樹脂筐体を用い、更に請求項14〜17のいずれかに記載の製造方法を用いて作成されるLED照明装置。
【請求項1】
嵌合相手方の樹脂成形部品との接着領域に配される溶着性樹脂層と、電気電子デバイスの発熱を散逸する機能を有する放熱樹脂層とを有する電気電子デバイス用の放熱性の樹脂筐体であって、
1)放熱樹脂層は、層内のいずれかの方向における熱伝導率が少なくとも5W/mK以上の熱伝導性樹脂から構成され、平均厚みが0.3〜6mmであり、
2)溶着性樹脂層は、嵌合相手方の樹脂成形部品と1MPa以上の引張強度で振動溶着可能であることを特徴とする放熱樹脂筐体。
【請求項2】
溶着性樹脂層と放熱樹脂層とが積層一体成形されてなる請求項1に記載の放熱樹脂筐体。
【請求項3】
放熱樹脂層と溶着性樹脂層が二色成形、多色成形およびインサート成形からなる群から選択される少なくとも1種の成形方法により放熱樹脂層と積層一体成形されてなる請求項2に記載の放熱樹脂筐体。
【請求項4】
溶着性樹脂層と放熱樹脂層とが同一の樹脂材料からなり、連続層として成形されてなる請求項1に記載の放熱樹脂筐体。
【請求項5】
厚み方向の絶縁破壊電圧が1kV/mm以上であり、最小厚みが0.1mm以上の電気絶縁樹脂層を、放熱樹脂層の少なくとも一部部位にさらに有する請求項1〜3のいずれかに記載の放熱樹脂筐体。
【請求項6】
電気電子デバイスと放熱樹脂層とに挟持される位置に、厚み0.1〜2mmの電気絶縁樹脂層が配置されている事を特徴とする請求項5に記載の放熱樹脂筐体。
【請求項7】
溶着性樹脂層と電気絶縁樹脂層とが同一の樹脂材料からなり、連続層として成形されてなる請求項5または6に記載の放熱樹脂筐体。
【請求項8】
溶着性樹脂層およびまたは電気絶縁樹脂層の表面の光反射率が70%以上である請求項5〜7のいずれかに記載の放熱樹脂筐体。
【請求項9】
電気絶縁樹脂層が二色成形、多色成形およびインサート成形からなる群から選択される少なくとも1種の成形方法により放熱樹脂層と積層一体成形されてなる請求項5〜8のいずれかに記載の放熱樹脂筐体。
【請求項10】
放熱樹脂層、および溶着性樹脂層のマトリックスとなる樹脂は、いずれもポリカーボネートおよび/またはその変性体および/またはそのアロイからなる請求項1〜3もしくは請求項8のいずれかに記載の放熱樹脂筐体。
【請求項11】
電気絶縁樹脂層のマトリックスとなる樹脂が、ポリカーボネートおよび/またはその変性体および/またはそのアロイからなる請求項5〜9のいずれかに記載の放熱樹脂筐体。
【請求項12】
電気配線用の貫通孔が、その内壁層を電気絶縁樹脂層とする形で、放熱樹脂層の一部部位に形成されてなる請求項5、6、7、8、9、11のいずれかに記載の放熱樹脂筐体。
【請求項13】
貫通孔の内壁層は、放熱樹脂層の片面もしくは両面上に、内壁層から連続的に形成される中空状突起樹脂層を有している請求項12に記載の放熱樹脂筐体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の放熱樹脂筐体を、嵌合相手方の樹脂成形部品と振動溶着法により相互固定する電気電子デバイス実装装置の製造方法。
【請求項15】
振動溶着法が超音波溶着法である請求項14に記載の電気電子デバイス実装装置の製造方法。
【請求項16】
電気電子デバイス実装基板および/または配線用端子の、請求項13に記載の中空状突起樹脂層を嵌め込み可能な位置に貫通孔を形成する工程、貫通孔を中空状突起樹脂層に嵌め込む形で電気電子デバイス実装基板を放熱樹脂層の一定位置に積層配置する工程を含む請求項14または15に記載の電気電子デバイス実装装置の製造方法。
【請求項17】
請求項13に記載の中空状突起樹脂層を局所的に加熱変形させて熱変形層を作成し、放熱樹脂層に積層配置された電気電子デバイス実装基板の一部を熱変形層により被覆せしめ、電気電子デバイス実装基板を放熱樹脂層と熱変形層で両面から挟み込む形として固定する工程を含む請求項14または15に記載の電気電子デバイス実装装置の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜13のいずれかに記載の放熱樹脂筐体を用い、更に請求項14〜17のいずれかに記載の製造方法を用いて作成されるLED照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図17】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図17】
【図16】
【公開番号】特開2012−199503(P2012−199503A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130220(P2011−130220)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】
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