説明

放熱部材及びこれからなる照明器具用部品

【課題】溶融成形に適した流動性を維持しつつ、良好な熱伝導性を発現し、熱伝導性の異方性が小さくて軽い放熱部品用発泡成形体及びこれからなる照明器具用部品を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂45質量%〜89.5質量%と、炭素繊維10質量%〜50質量%と、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性された変性ポリオレフィン0.5質量%〜5.0質量%とを含有し(これら3成分の合計を100質量%とする)、JIS−K−7210に準拠して230℃、2.16kg荷重にて測定されるメルトフローレートが5g/10分以上である樹脂組成物からなり、レーザーフラッシュ法によって測定される面内方向の熱伝導率が1W/mK以上であり、レーザーフラッシュ法で測定される厚み方向の熱伝導率が0.6W/mK以上であり、発泡倍率が1.05倍以上1.7倍未満である発泡体からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱部材及びこれからなる照明器具用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの観点から、白熱電灯や蛍光灯からLED照明への転換が進みつつある。LED素子からの発熱に対する放熱対策が不十分であると、LED素子の性能低下や寿命の短縮が生じることになる。したがって、LED素子の放熱には、熱伝導率の高いアルミ系合金等で作られたヒートシンクが用いられている。しかしながら、アルミ系合金には、ポリオレフィンに代表される熱可塑性樹脂のような易加工性は望めず、また、金属では低比重のアルミ系合金であっても樹脂からなる成形体と比較すると重い。そのため加工が容易で軽い放熱部品が求められている。
特許文献1には、マトリックス樹脂100重量部に対して、樹脂粒子とこの樹脂粒子の表面に形成された熱伝導率10W/m・K以上のフィラー層からなる高熱伝導性樹脂粒子を100重量部〜250重量部含有する樹脂組成物が記載されている。
また特許文献2には、(A)熱可塑性樹脂と、(B)アスペクト比が10〜20であり、重量平均粒子径が10μm〜200μmであり、かつ、固定炭素量が98質量%以上の黒鉛粒子と、(D)耐衝撃性改良剤が所定量添加された熱伝導性樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−69284号公報
【特許文献2】特開2007−238917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では成形加工性については一定の考慮がなされているが、記載の樹脂組成物から得られる成形体の熱伝導率は十分ではなく、また熱伝導率の異方性については考慮されていない。熱伝導率の異方性が大きいと、放熱フィンを持つような比較的複雑な形状の放熱部品から効率よく放熱することが困難となる。特許文献2では、成形体の熱伝導率の異方性が考慮されているが、成形加工性については、十分な検討がなされていない。
以上の課題に鑑み、本発明の目的は、良好な熱伝導性を発現し、熱伝導性の異方性が小さくて軽い発泡体からなる放熱部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は熱可塑性樹脂45質量%〜89.5質量%と、炭素繊維10質量%〜50質量%と、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性された変性ポリオレフィン0.5質量%〜5.0質量%とを含有し(これら3成分の合計を100質量%とする)、JIS−K−7210に準拠して230℃、2.16kg荷重にて測定されるメルトフローレートが5g/10分以上である樹脂組成物からなり、レーザーフラッシュ法によって測定される面内方向の熱伝導率が1W/mK以上であり、レーザーフラッシュ法で測定される厚み方向の熱伝導率が0.6W/mK以上であり、発泡倍率が1.05倍以上1.7倍未満である発泡体からなる放熱部材及びこれからなる照明器具用部品を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、溶融成形に適した流動性を維持しつつ、良好な熱伝導性を発現し、熱伝導性の異方性が小さくて軽い放熱部材及びこれからなる照明器具用部品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例で製造した成形体の面内方向の熱伝導率を測定する際に使用した試験片を示す図である。
【図2】本発明の実施例で製造した成形体の厚さ方向の熱伝導率を測定する際に使用した試験片を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る放熱部材は、熱可塑性樹脂(A)と、炭素繊維(B)と、変性ポリオレフィン(C)とを含有する樹脂組成物を発泡させた発泡体からなる。以下詳細に説明する。
〔樹脂組成物〕
<熱可塑性樹脂(A)>
上記樹脂組成物に含有される熱可塑性樹脂(A)は、後述する変性ポリオレフィン(C)以外の樹脂であって、200℃〜450℃の温度で成形可能な熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。具体的には、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアミド、ハロゲン化ビニル樹脂、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリールスルホン、ポリアリールケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイドスルフォン、ポリアリレート、液晶ポリエステル、フッ素樹脂等が挙げられる。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いることが可能である。
これらのうち、成形加工性の観点からポリオレフィンやポリスチレンを用いることが好ましい。これによって比較的複雑な形状の電気・電子部品を成形する際の成形加工性が良好となる。
【0009】
本発明で好ましく用いられるポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、炭素数4以上のα−オレフィンを主な成分とするα−オレフィン樹脂が挙げられる。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いることが可能である。
【0010】
ポリプロピレンとしては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレンを単独重合した後にエチレンとプロピレンを共重合して得られるプロピレンブロック共重合体等が挙げられる。
ポリエチレンとしては、例えば、エチレン単独重合体、炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体であるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体等が挙げられる。
炭素数4以上のα−オレフィンを主な成分とするα−オレフィン樹脂としては、例えば、α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体等が挙げられる。
【0011】
ポリオレフィンに用いられる炭素数4以上のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、1−ペンテン2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられる。好ましくは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
【0012】
オレフィンの重合方法としては、例えば、バルク重合、溶液重合、スラリー重合又は気相重合が挙げられる。ここでバルク重合とは、重合温度において液状のオレフィンを媒体として重合を行う方法をいい、溶液重合又はスラリー重合とは、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の不活性炭化水素溶媒中で重合を行う方法をいう。また気相重合とは、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中で気体状態の単量体を重合する方法をいう。
これらの重合方法は、バッチ式、複数の重合反応槽を直列に連結させた多段式のいずれでもよく、また、これらの重合方法を任意に組み合わせてもよい。工業的かつ経済的な観点から、連続式の気相重合法又はバルク重合法と気相重合法を連続的に行うバルク−気相重合法による方法が好ましい。
なお、重合工程における各種条件(重合温度、重合圧力、モノマー濃度、触媒投入量、重合時間等)は、適宜決定すればよい。
【0013】
また、ポリオレフィンの製造に用いられる触媒としては、マルチサイト触媒やシングルサイト触媒が挙げられる。マルチサイト触媒として、好ましくは、チタン原子、マグネシウム原子及びハロゲン原子を含有する固体触媒成分を用いて得られる触媒が挙げられ、また、シングルサイト触媒として、好ましくは、メタロセン触媒が挙げられる。
【0014】
本発明で用いられるポリオレフィンがポリプロピレンの場合、ポリプロピレンの製造方法に用いられる好ましい触媒として、上記のチタン原子、マグネシウム原子及びハロゲン原子を含有する固体触媒成分を用いて得られる触媒が挙げられる。
本発明で用いられるポリオレフィンがポリプロピレンの場合、プロピレン単独重合体とプロピレン−エチレン共重合体との混合物である、所謂プロピレン−エチレンブロック共重合体であることが好ましい。
【0015】
プロピレン単独重合体(A−1)の13C−NMRによって測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率は0.95以上が好ましく、さらに好ましくは0.98以上である。
アイソタクチック・ペンタッド分率とは、プロピレン重合体分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率であり、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖(以下、mmmmと表す。)の中にあるプロピレンモノマー単位の分率である。アイソタクチック・ペンタッド分率の測定方法は、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に記載されている方法、すなわち13C−NMRによって測定される方法である。
【0016】
具体的には、13C−NMRスペクトルによって測定されるメチル炭素領域の吸収ピークの面積に対する、mmmmピークの面積の割合が、アイソタクチック・ペンタッド分率である。
【0017】
上記熱可塑性樹脂のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは30g/10分〜200g/10分であり、より好ましくは50g/10分〜100g/10分である。但し、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgである。本発明におけるメルトフローレート(MFR)の測定は、JIS K7210に規定された方法に準じて行う。
【0018】
本発明における熱可塑性樹脂の含有量は、45質量%〜89.5質量%であり、55質量%〜79.5質量%であることが好ましく、60質量%〜74.5質量%であることがより好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が45質量%未満であると樹脂組成物の発泡成形が困難となり、発泡体の熱伝導率の異方性が大きくなる。89.5質量%を超えると発泡体の熱伝導率が不十分となる。
【0019】
<炭素繊維(B)>
本発明で用いられる炭素繊維(B)は、熱伝導率が200W/mKを越えるピッチ系炭素繊維が好ましい。具体的には、三菱樹脂株式会社製 商標ダイアリード、帝人株式会社製 商標ラヒーマ等が挙げられる。
また、この炭素繊維(B)は、その表面が収束剤で処理されていてもよい。収束剤としては、上記のポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル、エポキシ樹脂、澱粉、植物油等が挙げられる。さらに、収束剤に、酸変性ポリオレフィン、シラン系カップリング剤等の表面処理剤、パラフィンワックス等の潤滑剤が配合されていてもよい。
炭素繊維(B)を収束剤で処理する方法としては例えば、収束剤を溶解させた水溶液に浸漬させる法、前記水溶液をスプレーで繊維に塗布する方法等が挙げられる。
【0020】
本発明における樹脂組成物中の炭素繊維(B)の数平均繊維長は、0.5mm以上であることが好ましく、0.7mm以上であることがより好ましい。繊維長をこのような範囲とすることにより、熱伝導率の異方性を小さくすることができる。炭素繊維の数平均繊維長(単位:mm)は、ソックスレー抽出法(溶媒:キシレン)で評価用サンプルより樹脂を除去して、繊維を回収し、特開2002−5924号公報に記載されている方法により測定することができる。
また、炭素繊維(B)の繊維径は5μm以上であることが好ましい。
【0021】
炭素繊維の含有量は10質量%〜50質量%であり、20質量%〜40質量%であることが好ましく、25質量%〜35質量%であることがより好ましい。炭素繊維の含有量が10質量%未満であると発泡体の十分な熱伝導率が得られず、50質量%を超えると樹脂組成物の発泡成形性が劣る場合がある。
【0022】
<変性ポリオレフィン(C)>
本発明で用いられる変性ポリオレフィン(C)は不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性された変性ポリオレフィンである。なお、この変性ポリオレフィン(C)は上記熱可塑性樹脂(A)とは異なる樹脂である。
この変性ポリオレフィン(C)としては具体的には次の(C−a)〜(C−d)の変性ポリオレフィンが挙げられる。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いることが可能である。
(C−a)オレフィンの単独重合体に、不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をグラフト重合して得られる変性ポリオレフィン。
(C−b)少なくとも二種のオレフィンを共重合して得られる共重合体に、不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をグラフト重合して得られる変性ポリオレフィン。
(C−c)オレフィンを単独重合した後に、少なくとも2種のオレフィンを共重合して得られるブロック共重合体に、不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をグラフト重合して得られる変性ポリオレフィン。
(C−d)少なくとも1種のオレフィンと、不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共重合して得られる変性ポリオレフィン。
【0023】
変性ポリオレフィンに用いられるポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、炭素数4以上のα−オレフィンを主な成分とするα−オレフィン樹脂が挙げられる。
【0024】
変性ポリオレフィンに用いられる不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
また、不飽和カルボン酸の誘導体としては、前記の不飽和カルボン酸の酸無水物、エステル化合物、アミド化合物、イミド化合物、金属塩等が挙げられる。具体的には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸モノアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、メタクリル酸ナトリウム等が挙げられる。また、クエン酸やリンゴ酸のように、ポリオレフィンにグラフトする工程で脱水して不飽和カルボン酸を生じるものを用いてもよい。
【0025】
不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物として、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸のグリシジルエステル、無水マレイン酸、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルである。
【0026】
変性ポリオレフィンの製造方法としては、溶液法、バルク法、溶融混練法等の方法が挙げられる。また、これらの少なくとも2種の方法を組み合わせた製造方法であってもよい。溶液法、バルク法、溶融混練法等の方法としては、例えば、“実用 ポリマーアロイ設計”(井出文雄著、工業調査会(1996年発行))、Prog.Polym.Sci.,24,81−142(1999)、特開2002−308947号公報、特開2004−292581号公報、特開2004−217753号公報、特開2004−217754号公報等に記載されている方法が挙げられる。
【0027】
また変性ポリオレフィン(C)は、市販されている変性ポリオレフィンを用いてもよい。例えば、商品名モディパー(日本油脂(株)製)、商品名ブレンマーCP(日本油脂(株)製)、商品名ボンドファースト(住友化学(株)製)、商品名ボンダイン(住友化学(株)製)、商品名レクスパール(日本ポリエチレン(株)製)、商品名アドマー(三井化学(株)製)、商品名モディックAP(三菱化学(株)製)、商品名ポリボンド(クロンプトン(株)製)、商品名ユーメックス(三洋化成(株)製)等が挙げられる。
【0028】
変性ポリオレフィンの含有量は0.5質量%〜5.0質量%であり、0.5質量%〜3.0質量%であることが好ましく、0.5質量%〜2.0質量%であることがより好ましい。変性ポリオレフィンの含有量が0.5質量%未満であると、金属部品に対する放熱部材の貼合性能に劣る場合があり、また、LED素子と放熱部材との密着が不十分になる場合がある。該密着が不十分になると、その隙間から空気が入り、LED素子から放熱部材への熱伝導が空気によって阻害され、十分な放熱性能が得られないことがある。5.0質量%を超えると得られる発泡体の熱伝導率が低下する場合がある。
【0029】
<有機繊維(D)>
本発明で用いられる樹脂組成物は、有機繊維(D)を含有していてもよい。有機繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維、ポリイミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ケナフ等の植物繊維が挙げられる。中でも熱可塑性樹脂(A)がポリオレフィンであるときに含有していることが好ましく、ポリエステル繊維を用いることが好ましい。
本発明において、有機繊維は好ましくは、上記熱可塑性樹脂(A)や変性ポリオレフィン(C)、エラストマーのような樹脂を混合させた有機繊維含有樹脂組成物として用いられる。有機繊維含有樹脂組成物の製造方法として、特開2006−8995号公報や特開平3−121146号公報に記載された方法が挙げられる。有機繊維含有樹脂組成物中の有機繊維の含有量は10質量%〜60質量%であることが好ましい。有機繊維含有樹脂組成物を、本発明に係る熱可塑性樹脂又は変性ポリオレフィンを使用して製造する場合、それらの使用量は、本発明に係る熱可塑性樹脂の含有量(45.0質量%〜89.5質量%)や、変性ポリオレフィンの含有量(0.5質量%〜5.0質量%)にカウントされる。
本発明における樹脂組成物中の、任意成分としての有機繊維の含有量は、熱可塑性樹脂(A)と炭素繊維(B)と変性ポリオレフィン(C)の合計を100質量部として、3質量部〜10質量部であることが好ましく、3質量部〜5質量部であることがより好ましい。
【0030】
<充填材・添加剤(E)>
本発明で用いられる樹脂組成物は、充填材や添加剤(E)を含有していてもよい。このような充填剤としては、ガラス繊維、タルク、ワラストナイト、ガラスフレーク等が挙げられる。また、樹脂組成物の加工特性、機械特性、電気的特性、熱的特性、表面特性及び光安定性を改良するため、各種添加剤を配合してもよい。このような添加剤の例としては、中和剤、可塑剤、滑剤、離型剤、付着防止剤、酸化防止剤、熱及び光安定剤、難燃材、顔料、染料等が挙げられる。
【0031】
<樹脂組成物の製造方法>
樹脂組成物の製造方法は限定されるものではないが、熱可塑性樹脂(A)、炭素繊維(B)、変性ポリオレフィン(C)、及び必要に応じて用いられる有機繊維(D)、充填材・添加剤(E)等をヘンシェルミキサー、タンブラー等を用いて均一に混合した後、可塑化装置を用いて溶融混練する方法が挙げられる。溶融混練に当たっては、炭素繊維(B)が折れて短くなることを抑制するために、可塑化装置の温度、攪拌を適宜調整することが好ましい。
特に、有機繊維を加える際には、例えば、特開2006−8995号公報に開示されている方法のようにで予め有機繊維を含有する樹脂組成物を作成し、その樹脂組成物と、熱可塑性樹脂、炭素繊維、変性ポリオレフィン、及び必要に応じて用いられる充填材・添加剤をヘンシェルミキサー、タンブラー等を用いて均一に混合した後、可塑化装置を用いて溶融混練してもよい。
【0032】
可塑化装置を用いて溶融混練する際は、上記の各成分を同一の供給口又は別の供給口から、更に、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、PVC系エラストマー等のゴム等を供給し、樹脂組成物に含有させてもよい。ここで可塑化装置とは、熱可塑性樹脂をその融点以上に加熱し、溶融状態になった熱可塑性樹脂に攪拌を加える装置のことである。例えば、バンバリーミキサー、単軸押出し機、2軸同方向回転押出し機(例えば、東芝機械(株)製 TEM[登録商標]、日本製鋼所(株)製 TEX[登録商標]等が挙げられる。)、2軸異方向回転押出し機(神戸製鋼所(株)製 FCM[登録商標]、日本製鋼所(株)製 CMP[登録商標]等が挙げられる。)が挙げられる。
【0033】
〔発泡体〕
本発明に係る発泡体は、上記の樹脂組成物に発泡剤を添加し、成形することによって得られるものである。使用される発泡剤は、化学発泡剤、物理発泡剤等の発泡剤が挙げられる。発泡剤の添加量は、本発明の樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜10質量部であり、より好ましくは0.2質量部〜8質量部である。
発泡体とすることにより、炭素繊維の配向が乱れ、得られる発泡体の熱伝導率の異方性を小さくすることができる。特に、発泡体の厚さ方向の熱伝導率を発泡成形によって向上させることが可能となる。
化学発泡剤は、無機化合物であっても有機化合物であってもよい。これらは単独又は2種以上を併用してもよい。無機化合物としては、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩等が挙げられる。有機化合物としては、クエン酸等のポリカルボン酸、アゾジカルボンアミド(ADCA)等のアゾ化合物が挙げられる。
物理発泡剤としては、窒素、二酸化炭素等の不活性ガスや揮発性有機化合物等が挙げられる。中でも超臨界状態の二酸化炭素、窒素、あるいはこれらの混合物を使用することが好ましい。物理発泡剤も化学発泡剤と同様に単独又は2種以上を併用してもよい。さらに、化学発泡剤と物理発泡剤とを併用してもよい。
なお、物理発泡剤を用いる場合は、物理発泡剤を超臨界状態で溶融状態の樹脂組成物に混合することが好ましい。超臨界状態の物理発泡剤は樹脂への溶解性が高く、短時間で溶融状態の樹脂組成物に均一に拡散することができるため、発泡倍率が高く、均一な発泡セル構造をもつ放熱部材(発泡体)を得ることができる。溶融状態の樹脂組成物に物理発泡剤を混合する工程としては、物理発泡剤を射出成形装置のノズル又はシリンダ内に注入する工程が挙げられる。
樹脂組成物を発泡成形する方法としては具体的には、射出発泡成形法、プレス発泡成形法、押出発泡成形法、スタンパブル発泡成形法等の方法が挙げられる。この中でも、プレス発泡成形と射出発泡成形が好ましい。
【0034】
上記の方法により得られる発泡体は、その発泡倍率が1.05倍以上1.7倍未満であり、1.05倍以上1.5倍未満であることが好ましい。前述のように、発泡体とすることにより熱伝導率の異方性を小さくすることができるが、発泡倍率が1.7倍以上では、発泡体の単位体積あたりの炭素繊維の絶対量が少なくなり、放熱体に必要な熱伝導率が得られなくなる。
【0035】
発泡倍率は、A.S.T.MD792に従って測定された樹脂組成物の密度及び発泡体の密度について、樹脂組成物の密度を発泡体の密度で除して求めることができる。
発泡体は発泡層の少なくとも片面に平滑なスキン層が一体的に形成されていることが好ましい。スキン層が形成されていないと、例えば、成形品表面に平行方向の熱伝導率を高めるためにアルミ等の金属の薄膜を貼合した場合に、薄膜と該成形品との間に空気が入り、厚さ方向の熱伝導を阻害してしまう可能性がある。
また、発泡体は表面の一部に表皮材が貼合されていてもよい。表皮材としては、公知の表皮材を使用できるが、成形品の表面に平行方向の熱伝導率を更に高めるために、アルミ等の高熱伝導率の金属の薄膜を貼合してもよい。
【0036】
本発明に係る発泡体は、熱伝導率の異方性が小さく軽いため、例えば照明器具用部品のような熱を放出する電気・電子部品に用いることが好適である。樹脂組成物から得られる発泡体は、上述のように、熱伝導率の異方性が小さくなるという放熱に有利な特性を有している。したがって、発泡体を電気・電子部品に使用したとき、熱伝導率の異方性が小さいために、当該部品が比較的複雑な形状であったとしても、電気・電子部品の発熱を効率よく放熱して、当該部品を備えた電気・電子機器の安定的な稼動を実現できる。
例えば、LED照明では、LED素子からの発熱を十分に放熱できなければ、LED素子の寿命が数分の1に短くなる。ヒートシンクの放熱効率を高めるために様々なフィンデザインが提案されているが、成形加工性に優れる樹脂組成物を使えば、複雑な形状でも成形しやすい。また、成形加工性に優れることは、LED照明の意匠性にも有利である。
【実施例】
【0037】
以下、本発明について実施例を用いて説明するが、本発明は、かかる実施例により限定されるものではない。
【0038】
(1)樹脂組成物
発泡体に用いられる樹脂組成物には、以下の成分を使用した。
熱可塑性樹脂(A):
住友化学製 ノーブレン(登録商標) AU161C (メルトフローレート=90g/10分、プロピレン単独重合体部分のアイソタクチック・ペンタッド分率=0.98、プロピレン−エチレンブロック共重合体中のプロピレン−エチレン共重合体量=12質量%のプロピレン−エチレンブロック共重合体)
なお、上記プロピレン−エチレン共重合体のプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する質量比率(X)は、プロピレン単独重合体部分とプロピレン−エチレンブロック共重合体全体の結晶融解熱量をそれぞれ測定し、次式を用いて計算により求めた。結晶融解熱量は、示唆走査型熱分析(DSC)により測定した。
X=1−(ΔHf)T/(ΔHf)P
(ΔHf)T:ブロック共重合体全体の融解熱量(cal/g)
(ΔHf)P:プロピレン単独重合体部分の融解熱量(cal/g)
【0039】
炭素繊維(B):
三菱樹脂製 登録商標 ダイアリードK223HE 繊維長6mm、直径11ミクロン、熱伝導率550W/mK(カタログ値)
【0040】
変性ポリオレフィン(C):
無水マレイン酸変性ポリプロピレン(メルトフローレート=70g/10分、無水マレイン酸グラフト量=0.6質量%)
上記変性ポリオレフィンは、特開2004−197068号公報の実施例1に記載された方法に従って作成した。なお、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体に由来する単量体単位の含有量は、赤外吸収スペクトル又はNMRスペクトルによって、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体に基づく吸収を定量して算出した値を用いた。
【0041】
有機繊維(D)
本実施例では、有機繊維を含有する有機繊維含有樹脂組成物を使用した。
固有粘度0.62dL/gのポリエチレン−2,6−ナフタレートのチップから溶融紡糸法によって製造された繊維径35μmのポリエチレンナフタレート繊維(帝人ファイバー株式会社製、この繊維の表面にはポリウレタン樹脂が2.0質量%付着している)を、特開平3−121146号公報に掲載された方法に従って、クロスヘッドダイを通じて引きながらクロスヘッドダイに接続された押出機から供給される約200℃の溶融樹脂に含浸させ、次いで賦形ダイを通してストランドとした後、引取り速度13m/分で引き取り、その後裁断して有機繊維含有樹脂組成物からなる長さ11mmのペレットを得た。なお、前述の溶融樹脂は、プロピレン単独重合体 住友化学株式会社製ノーブレンU501E−1(MFR120g/10分)と、変性ポリオレフィン(MFR70g/10分、無水マレイン酸グラフト量0.6質量%;特開2004−197068号公報の実施例1に記載の方法で作成)が、質量比で95/5で混合されたものである。
有機繊維含有樹脂組成物は、有機繊維30.0質量%、熱可塑性樹脂66.5質量%及び変性ポリオレフィン3.5質量%を含有していた(有機繊維と熱可塑性樹脂と変性ポリオレフィンとの合計を100質量%とする)。
充填材(E):
ティムカル グラファイト アンド カーボン社製 カーボンブラック 登録商標 ENSACO350G
【0042】
添加剤(F):
添加剤としては以下の酸化防止剤を用いた。
商品名:スミライザーGA80(住友化学(株)製)
化学名:3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン
商品名:ウルトラノックス626(GEスペシャリティケミカルズ製)
化学名:ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト
これらの添加剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂(A)、炭素繊維(B)、変性ポリオレフィン(C)及び充填材(E)の合計100質量部に対し、GA80が0.05質量部、ウルトラノックス626が0.10質量部であった。
【0043】
〔実施例1〜4、比較例1〜3〕
上記熱可塑性樹脂(A)、炭素繊維(B)、変性ポリオレフィン(C)及び有機繊維含有樹脂組成物を表1に示す組成で所定量計量し、(A)、(B)、(C)及び有機繊維含有樹脂組成物の合計100質量部に対し、更に添加剤(F)を加え、ポリ袋に入れて強く振って均一に混合した後、田辺プラスチックス機械製20mm単軸押出機VS20−26を用い、シリンダ温度180℃で溶融混練した後、約3mmのペレット状に裁断して樹脂組成物を製造した。
【0044】
次いで、得られたペレット100質量部に、表2に示した割合で、化学発泡剤(三協化成株式会社製、セルマイクC−1)を混合し、射出成形機((株)東洋精機 TOYO SI−30III)を用いて、シリンダ温度220℃、金型温度50℃、射出速度20mm/秒、保圧25MPaで、評価用サンプル(80mm×10mm×4mm(厚さ))を射出成形した。
化学発泡剤を混合していない場合には、成形機の計量値を53mmとし、稠密な成形体を得た。化学発泡剤を混合した場合には、目的の発泡倍率を得るために計量値を減じた。実施例1〜4では計量値44mm、比較例2では35mm、比較例3では46mmである。
なお、以下では実施例及び比較例で評価した評価用試料を、単に成形体とする。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
〔物性の評価〕
実施例及び比較例で作成した成形体の評価項目及びその測定方法は下記の通りである。評価結果を表3に示す。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
成形体の製造に用いられる樹脂組成物のメルトフローレートは、JIS K7210に規定された方法に従って測定した。測定温度は230℃で、荷重は2.16kg荷重で測定した。
(2)炭素繊維の数平均繊維長(単位:mm)
炭素繊維の数平均繊維長は、ソックスレー抽出法(溶媒:キシレン)で80mm×10mm×厚み4mmの発泡体より樹脂を除去して、繊維を回収し、特開2002−5924号公報に記載されている方法により測定した。
(3)比重及び発泡倍率
試料の比重はA.S.T.M D792に従って、測定した。また発泡倍率は、上記の密度測定法により測定された樹脂組成物の密度及び発泡体の密度について、樹脂組成物の密度を、発泡体の密度で除して求めた。
【0048】
(4)熱伝導率
成形体の熱伝導率はレーザーフラッシュ法を用いて測定した。
(ア)成形体の面内方向の熱伝導率
上記の80mm×10mm×厚み4mmの発泡体を3枚重ねて接着して、図1(a)に示すような積層体を得た(厚さ12mm)。この積層体の略中央部分を2箇所(図1(a)の破線部分参照)、接着面に対して垂直な方向から切断し、各切断面を研磨して10mm×12mm×厚さ1mmの試験片を作成した(図1(b)参照)。
この試験片を用いて、レーザーフラッシュ法熱定数測定装置(アルバック理工株式会社製 TC−7000)により成形体面内方向の熱伝導率(図1(b)の矢印方向の熱伝導率)を求めた。この値を熱伝導率1とした。
(イ)成形体厚さ方向の熱伝導率
上記の80mm×10mm×厚み4mmの発泡体(図2(a))から、10mm×12mm×厚さ1mmの試験片を削りだし、試験片を作成した(図2(b))。この試験片を用いて、上記の熱定数測定装置により、発泡体の厚み方向の熱伝導率を求めた。この値を熱伝導率2とした。
【0049】
(5)曲げ弾性率(FM、単位:MPa)
実施例及び比較例の成形体の曲げ弾性率は、JIS K7171に規定された方法に従い、スパン長さ100mm、幅10mm、荷重速度2.0mm/min、23℃で評価した。
(6)アイゾット衝撃強度(Izod、単位:kJ/m2)
実施例及び比較例の成形体のアイゾット衝撃強度は、JIS K7110に規定された方法に従い、成形後にノッチ加工し、ノッチ付き衝撃強度を評価した。測定温度は23℃で行った。
【0050】
【表3】

【0051】
本発明の要件を満たす実施例1〜4では、比重が小さく、熱伝導率1と熱伝導率2が高い。発泡倍率が過大な比較例2では熱伝導率2が小さい。同じ組成で発泡倍率の異なる実施例1と比較例1、実施例2と比較例3をそれぞれ比較すると、いずれも実施例において熱伝導率2が高い。有機繊維を含有する組成2、4、5では、含有しない組成3よりアイゾット衝撃強度が高い。
熱伝導率の異方性を、熱伝導率1を熱伝導率2で除した値で評価すると、下記表に示すように、発泡倍率が1.04の比較例3の熱伝導率の異方性は5.5であり、同じ組成で発泡倍率が1.07の実施例2の異方性は3.3である。発泡倍率が本発明の要件を満たす実施例2で、比較例3より熱伝導率の異方性が小さい。
【0052】
【表4】

【0053】
〔実施例5、比較例4〜7〕
上記熱可塑性樹脂(A)、炭素繊維(B)、変性ポリオレフィン(C)、充填材(E)を表5に示す組成で所定量計量し、(A)、(B)、(C)、(E)の合計100質量部に対し、更に添加剤(F)を加え、ポリ袋に入れて強く振って均一に混合した後、テストロール機(日新科学株式会社製、HR−20F型)を用い、180℃で溶融混練した後、10mm角のフレーク状に裁断して樹脂組成物を製造した。樹脂組成物のMFRを表5に示す。
【0054】
次いで、得られたペレット(フレーク)100質量部に、表6に示した割合で、化学発泡剤(三協化成株式会社製、セルマイクC−1)を混合し、射出成形機((株)東洋精機 TOYO SI−30III)を用いて、シリンダ温度220℃、金型温度50℃、射出速度20mm/秒、保圧25MPaで、評価用サンプル(80mm×10mm×4mm(厚さ))を射出成形した。
化学発泡剤を混合していない場合には、計量値を53mmとし、稠密な成形体を得た。化学発泡剤を混合した場合には、目的の発泡倍率を得るために計量値を減じた。実施例1〜4では計量値44mm、比較例2では35mm、比較例3では46mmである。
【0055】
【表5】

【0056】
【表6】

【0057】
このようにして得た成形体について、比重、発泡倍率、炭素繊維の数平均繊維長を測定した。測定の方法は、射出成形体に代えて、80mm×80mm×5mmのプレス成形平板を使った以外は、前述の方法と同じである。
また、成形体の熱の伝わりが組成と発泡状態によって異なることを具体的に検証するために、以下の方法で試料表面の温度変化を熱画像で捉えた。
(7)熱画像
熱画像撮影装置:NEC三栄株式会社製 サーモトレーサー TH5104
熱源:75℃に設定したホットプレート
評価用試料:80mm×80mm×5mm厚の成形体から切り出した20mm×20mm×5mm厚の平板
測定は、ガラスシャーレの上に試料を並べて、23℃の恒温室に1時間静置した。75℃に設定したホットプレートの上にガラスシャーレごと置いた時間を0として、熱画像を5秒間隔で撮影した。表2に、熱画像で見た成形体表面温度上昇の順位を、早い順1から4で示した。
【0058】
更に、金属部品との貼合性も下記の方法にて評価した。
(8)金属部品との貼合性
80mm×80mm×5mmのプレス成形をする際に、型内にアルミ箔を置き、成形体への貼合を行った。アルミ箔の端をカッターナイフで5mmほど剥ぎ取ってから、剥ぎ取った部分を指で摘みアルミ箔を引き剥がした。容易に引き剥がせない場合は○、容易に引き剥がせる場合を×とした。
全ての評価結果を表7に示す。
【0059】
【表7】

【0060】
本発明の要件を満たす実施例5は、比重が小さく、熱画像で捉えた表面温度変化が早く、金属部品との貼合性に優れる。また、発泡させていない比較例4では比重が高く、同一組成の実施例5より表面温度変化が遅い。
成分(C)を含まない比較例5、6、7では金属部品との貼合性に劣り、成分(B)を含まない比較例6と7では、表面温度変化が遅い。
また熱画像で捉えた表面温度変化の早さを、成分(B)を含まない比較例6と比較例7で比較すると、発泡した比較例7が遅いことがわかった。これは、一般に知られている「発泡による断熱効果」を示している。成分(B)を含む実施例5と比較例4では、発泡した実施例5の温度変化が早いことと対照的である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂45質量%〜89.5質量%と、炭素繊維10質量%〜50質量%と、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された変性ポリオレフィン0.5質量%〜5.0質量%とを含有し(これら3成分の合計を100質量%とする)、JIS−K−7210に準拠して230℃、2.16kg荷重にて測定されるメルトフローレートが5g/10分以上である樹脂組成物からなり、
レーザーフラッシュ法によって測定される面内方向の熱伝導率が1W/mK以上であり、レーザーフラッシュ法で測定される厚み方向の熱伝導率が0.6W/mK以上であり、発泡倍率が1.05倍以上1.7倍未満である発泡体からなる放熱部材。
【請求項2】
熱可塑性樹脂がポリオレフィンである請求項1に記載の放熱部材。
【請求項3】
発泡体の発泡倍率が1.05倍以上1.5倍未満である請求項1又は2に記載の放熱部材。
【請求項4】
炭素繊維の数平均繊維長が0.5mm以上である請求項1〜3いずれかに記載の放熱部材。
【請求項5】
熱可塑性樹脂がポリオレフィンであって、ポリオレフィンと炭素繊維と、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された変性ポリオレフィンの合計を100質量部として、更に、有機繊維を3質量部〜10質量部を含有する請求項2〜4いずれかに記載の放熱部材。
【請求項6】
請求項1〜5いずれかに記載の放熱部材からなる照明器具用部品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−241375(P2011−241375A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289622(P2010−289622)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】