説明

放熱部材用塗料

【課題】放熱性に優れた放熱部材を提供すること。
【解決手段】金属からなる基材に塗布するための放熱部材用塗料であって、無機ガラス粒子と有機結合材とを含み、上記有機結合材は、電着樹脂を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱部材用塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンから排出された排ガス中に含まれる有害ガス等の有害物質を処理するため、排気管の経路には、触媒コンバータが設けられる。
触媒コンバータによる有害物質の浄化効率を高めるためには、排ガス、及び、排ガスが流通する排気管等の温度を触媒活性化に適した温度(以下、触媒活性化温度ともいう)に維持する必要がある。
しかしながら、エンジンの高速運転時には、一時的に排ガスの温度が1000℃を超えるような高温となる。従って、排ガスの温度が触媒活性化温度の上限値を逸脱することがある。その結果、排ガスを効率的に浄化することが困難になったり、触媒が劣化したりするという問題がある。
【0003】
そのため、自動車エンジンに接続される排気管は、自動車エンジンの高速運転時において、排気管内を通る排ガスの熱を外部に放熱することができることが要求されている。
【0004】
特許文献1及び特許文献2には、金属からなる筒状の基材の表面に結晶性無機材と非晶質無機材とからなる層を形成してなる排気管が開示されている。
特許文献1には、結晶性無機材と非晶質無機材とからなる層の赤外線放射率が基材の赤外線放射率よりも高い、放熱性に優れる排気管が開示されている。
また、特許文献2には、結晶性無機材よりも外周面側に位置する非晶質無機材の平均厚さが20μm以下である、放熱性に優れる排気管が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−133213号公報
【特許文献2】特開2009−133214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に記載の発明により、放熱性に優れた排気管を提供することが可能となった。しかしながら、依然として、一層放熱性に優れた排気管の登場が待ち望まれているという状況にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、更なる放熱性の向上を目指して、鋭意検討を重ねた。その結果、所定の塗料を塗布することにより、放熱性に優れた放熱部材を得ることができることを見出し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、請求項1に記載の放熱部材用塗料は、
金属からなる基材に塗布するための放熱部材用塗料であって、
無機ガラス粒子と有機結合材とを含み、
前記有機結合材は、電着樹脂を含むことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の放熱部材用塗料においては、放熱部材用塗料に含まれる有機結合材には、電着樹脂が含まれている。従って、放熱部材用塗料には電着樹脂が含まれているため、放熱部材用塗料を用いて電着塗装を行うことができる。そして、電着塗装により、放熱部材用塗料を金属からなる基材(金属基材)に塗装することができる。その後、放熱部材用塗料を塗装することにより形成された塗膜を加熱すると、表面に凹部を有する表面被覆層が形成される。
【0010】
図1(a)及び図1(b)、並びに、図2(a)〜図2(e)を用いて説明する。
図1(a)は、アニオン型電着塗装の様子を模式的に示す説明図である。
図1(b)は、カチオン型電着塗装の様子を模式的に示す説明図である。
図2(a)〜図2(e)は、本発明に係る放熱部材用塗料を用いて排気管が製造される様子の一例を模式的に示す説明図である。
図1(a)及び図1(b)に示すように、電着塗装としては、アニオン型電着塗装とカチオン型電着塗装とがある。
なお、図2(a)〜図2(e)に示す例では、電着樹脂としてアニオン型電着樹脂を使用することとしているが、電着樹脂としては、カチオン型電着樹脂を使用することもできる。また、塗料及び表面被覆層に無機粒子が含まれることとしているが、無機粒子は含まれていなくてもよい。
【0011】
アニオン型電着塗装においては、電着樹脂として、アニオン型電着樹脂が使用される。
アニオン型電着樹脂は、塩基と反応して塩を形成する官能基(例えば、カルボキシル基)を有しており、塩基(例えば、有機アミン)により中和されることにより、マイナスに帯電する(下記式参照)。
R‐COOH + NR → R‐COO + NR
金属基材と電極板を電着槽内に配置し、通電することにより、マイナスに帯電した電着樹脂が陽極に引き寄せられ(図1(a)参照)、塗料に含まれる無機ガラス粒子等が電着樹脂とともに、金属基材(被着体)の表面に運ばれる。そして、電着樹脂が金属基材の表面に触れた際に、下記(i)及び(ii)の反応が進む。
(i)2HO → 4H + 4e + O
(ii)R‐COO + H → R‐COOH
これにより、電着樹脂が不溶性に変わることで、無機ガラス粒子等が金属基材(陽極)の表面に析出される。
【0012】
これに対し、カチオン型電着塗装においては、電着樹脂として、カチオン型電着樹脂が使用される。
カチオン型電着樹脂は、プラスに帯電するため、陰極に引き寄せられ(図1(b)参照)、無機ガラス粒子等が金属基材(陰極)の表面に析出される。
【0013】
以上で説明したように、電着塗装においては、電着樹脂が無機ガラス粒子等を金属基材の表面まで運ぶ(図2(a)参照)。そして、電着樹脂は、金属基材の表面に触れることで、金属基材の表面に析出される(図2(b)及び図2(c)参照)。その際、塗膜には可溶性の電着樹脂が通過するためのパスが形成されている(図2(b)及び図2(c)参照)。上記(i)の反応式に示したように、電着樹脂が金属基材の表面に触れた際に、酸素ガスが発生する。パスは、当該酸素ガスが、既に形成された塗膜を押しのけて塗液中に抜ける際に形成される。電着塗装終了後、電着樹脂がパスに残存している場合があるが、当該電着樹脂は、金属基材の表面に析出しておらず可溶性であるため、水洗により流れ落ちる。
その後、塗膜を加熱すると、電着樹脂が焼失して、塗膜の体積が収縮する。その過程で、上記パスに基づいて凹部が形成されると考えられる(図2(d)及び図2(e)参照)。
以上のように、上記放熱部材用塗料を金属基材に塗装することにより得られた放熱部材は、表面被覆層の表面に凹部が形成されているため、放熱部材の表面積が大きく、見かけ上の放射率が高くなる。そのため、当該放熱部材は、放射伝熱が促進されることにより、放熱性に優れた放熱部材となる。このように、請求項1に記載の放熱部材用塗料によれば、放熱性に優れた放熱部材を得ることができる。
また、表面被覆層の表面に形成された凹部により、熱応力を分散させるための非固定端を多く設定することができる。また、表面被覆層の表面に形成された凹部により、表面被覆層のなかに膜厚の薄い部分ができ、その部分では厚み方向における温度差が小さくなるため、表面被覆層の内部において熱応力が生じ難い。そのため、熱衝撃による熱応力を緩和することが可能となり、表面被覆層の剥れを防止することができる。従って、請求項1に記載の放熱部材用塗料によれば、耐熱衝撃性に優れた表面被覆層を有する放熱部材を得ることができる。
なお、本明細書において、表面被覆層は、金属基材の表面に形成された層であり、塗膜に対して焼成処理(後述)を施すことによって得られる層である。金属基材の表面に形成された層のうち、焼成処理を施す前のものを、塗膜と呼び、焼成処理を施した後のものを、表面被覆層と呼ぶ。放熱部材は、金属基材と表面被覆層とによって構成される。
【0014】
請求項2に記載の放熱部材用塗料は、さらに無機粒子を含む。
無機粒子は、材料物性として放射率が高いために、加熱された際に赤外線が強く放射される。これは、次式で表されるステファン・ボルツマンの定義による。
q=εσ(T−T
(σ:ステファン・ボルツマン定数・・・5.67×10−8[W/m・K]、q:熱流束[W/m]、ε:放射率、T:加熱体温度[K]、T:受熱体温度[K])
従って、無機粒子を含む放熱部材用塗料を塗装して得られる放熱部材は、表面被覆層中の無機粒子からの赤外線の放射が生じるため、表面被覆層の放射率が高くなり、高温での放熱性に優れた放熱部材となると考えられる。
また、焼成の際に軟化した無機ガラス粒子の流動性が低くなり、凹部周辺部での塗膜の流動が抑制されるため、表面被覆層の表面に凹部が形成されやすくなると考えられる。
以上、高い放射率及び表面に形成された凹部により、放熱性に一層優れた放熱部材を得ることができると考えられる。
【0015】
請求項3に記載の放熱部材用塗料は、無機ガラス粒子と有機結合材とを含み、無機ガラス粒子の重量に対する電着樹脂の重量比が、1.0〜3.5である。
また、請求項4に記載の放熱部材用塗料は、無機粒子と無機ガラス粒子と有機結合材とを含み、無機粒子と無機ガラス粒子との合計重量に対する電着樹脂の重量比が、1.0〜3.5である。
放熱部材用塗料に含まれる電着樹脂の量が多すぎると、無機粒子及び無機ガラス粒子の体積率が低くなり、塗膜内において無機粒子及び無機ガラス粒子が各々離れた状態になる。従って、無機粒子及び無機ガラス粒子が連結されていないため、電着樹脂の脱脂の際に、加熱されて電着樹脂が焼失すると、無機粒子及び無機ガラス粒子は、崩れて脱落を生じやすくなる。
なお、脱脂とは、電着樹脂を加熱により焼失させることである。
逆に、放熱部材用塗料に含まれる電着樹脂の量が少なすぎると、放熱部材用塗料に含まれる無機粒子及び無機ガラス粒子の密度が高く、電着塗装により析出した塗膜内の固形分(粒子)の割合も高くなる。従って、電着通電中の塗膜の流動性が悪いために、パス形成及びパス周辺部での塗膜形成が進みにくい。その結果として、放熱部材の表面に所望の凹部も形成されにくくなる。また、放熱部材用塗料に含まれる無機粒子及び無機ガラス粒子が多すぎると、無機粒子及び無機ガラス粒子の沈降も生じやすくなり、塗液中の粒子濃度が変化しやすくなるため、塗装条件が変動してしまう。その結果、安定した膜形成をしにくくなる。また、電着槽底面への粒子の堆積も問題となる。
請求項3又は4に記載の放熱部材用塗料によれば、無機ガラス粒子の重量に対する電着樹脂の重量比、又は、無機粒子と無機ガラス粒子との合計重量に対する電着樹脂の重量比が所定範囲にあるため、このような問題を生じさせることなく、表面に所望の凹部が形成された放熱部材を提供することができる。
【0016】
請求項5に記載の放熱部材用塗料においては、無機ガラス粒子の平均粒子径が3μm以下である。
また、請求項6に記載の放熱部材用塗料は、無機粒子の平均粒子径が3μm以下であり、無機ガラス粒子の平均粒子径が3μm以下である。
無機ガラス粒子及び無機粒子の平均粒子径が大きい場合(例えば、平均粒子径が10μm程度の場合)、大きな粒子が含まれることにより、粒子の大きさが不均一になることがある。この場合、電着塗装中、局所的に塗膜の流動が妨げられるため、パスが形成されにくく、その結果、放熱部材の表面に凹部が形成されにくくなる。
これに対し、請求項5及び6に記載の放熱部材用塗料によれば、無機ガラス粒子及び無機粒子が小さいため、無機ガラス粒子及び無機粒子の分布を均一にすることができる。その結果、放熱部材の表面に凹部が形成されやすくなると考えられる。
また、無機ガラス粒子が大きい場合(例えば、平均粒子径が10μm程度の場合)、焼成の際に、軟化した無機ガラス粒子が放熱部材の表面の凹部を埋めてしまい、放熱部材の表面に凹部を良好に形成することができなくなると考えられる。
一方、無機粒子が大きい場合(例えば、平均粒子径が10μm程度の場合)にも、焼成の際に、軟化して液状となっている無機ガラス粒子の中に、固体の無機粒子が分散した状態となる。この際、無機粒子が大きい場合には、無機粒子が小さい場合と比較して、軟化した無機ガラス粒子と無機粒子との複合体の粘性が低く流動性がよいため、該複合体が放熱部材の表面の凹部を埋めてしまうと考えられる。
さらに、無機ガラス粒子及び無機粒子の平均粒子径が小さいため、電着塗装の際、無機ガラス粒子及び無機粒子を放熱部材用塗料の溶液中で安定化させることができると考えられる。
塗液中の粒子は、粒子径が小さい方が安定的に存在することができる。これは、ストークスの式で示される。
Vs=Dp(ρp−ρf)g/18η
(Vs:粒子の終端速度[m/s]、Dp:粒子径[m]、ρp:粒子の密度[kg/m]、ρf:流体の密度[kg/m]、g:重力加速度[m/s]、η:流体の粘度[Pa・s])
従って、無機ガラス粒子及び無機粒子として、粒径が小さな粒子を用いると、電着塗装の際、塗液中での沈降速度を小さくすることができ、無機ガラス粒子及び無機粒子を塗液中において安定させることができる。
以上の理由から、表面に所望の凹部が形成された放熱部材を得ることができると考えられる。
【0017】
請求項7に記載の放熱部材用塗料において、無機粒子は、遷移金属の酸化物である。
また、請求項8に記載の放熱部材用塗料において、無機ガラス粒子は、軟化点が300〜1000℃である。
【0018】
請求項9に記載の放熱部材用塗料において、電着樹脂は、アニオン型電着樹脂である。
放熱部材の表面に所望の凹部を形成するためには、塗料の安定性を高め、粒子の沈降を抑制する必要がある。塗料の安定性が悪く、粒子の沈降が著しい場合には、基材の水平面部分に多量の粒子が降り注ぐため、固形分の比率が高くなり、塗膜の流動性が阻害されるので、凹部を好適に形成することができない。
請求項9に記載の放熱部材用塗料によれば、電着樹脂として、アニオン型電着樹脂が使用されるため、無機粒子の表面電荷及び無機ガラス粒子の表面電荷の相性がよくなり、アニオン型電着樹脂が無機粒子及び無機ガラス粒子の沈降を抑制する働きをするため、放熱部材用塗料の安定性を高めることが可能になり、塗膜の形成を好適に行うことができる。
その結果、表面に所望の凹部が形成された放熱部材を得ることができると考えられる。
【0019】
請求項10に記載の放熱部材用塗料において、電着樹脂は、互いにTの異なる複数種類の電着樹脂からなる。
これにより、放熱部材用塗料の塗装時に温度の影響を受けにくくなり、比較的広い温度範囲で、安定した塗膜形成を行うことが可能になり、放熱部材用塗料の塗装時の温度依存性を緩和することができると考えられる。
その結果、表面に所望の凹部が形成された放熱部材を得ることができると考えられる。
【0020】
請求項11に記載の放熱部材用塗料において、電着樹脂は、Tが5〜50℃である。
電着樹脂のTが5℃未満である場合、塗膜としても粘性が低く、流動しやすいものとなる。従って、電着塗装中、一旦塗膜にパスが形成されても、周囲の電着樹脂が軟化し流動することにより、当該パスを塗膜が埋めてしまいやすくなる。また、電着樹脂のTが50℃を超えると、逆に室温において電着樹脂が硬すぎて流動しにくくなる。その結果、所望のパスが塗膜に形成されにくくなる。
これに対し、請求項11に記載の放熱部材用塗料によれば、電着樹脂のTが上記範囲にあるため、電着樹脂の流動性を適度なものとすることができる。これにより、電着塗装中、好適にパスを形成することができ、その結果、表面被覆層の表面に所望の凹部が形成された放熱部材を得ることができると考えられる。
【0021】
請求項12に記載の放熱部材用塗料は、自動車エンジン用排気管を塗装する塗料に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1(a)は、アニオン型電着塗装の様子を模式的に示す説明図である。図1(b)は、カチオン型電着塗装の様子を模式的に示す説明図である。
【図2】図2(a)〜図2(e)は、本発明に係る放熱部材用塗料を用いて排気管が製造される様子の一例を模式的に示す説明図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る無機ガラス粒子及び無機粒子について、pHの値と電荷との対応関係を模式的に示す説明図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る排気管を模式的に示す斜視図である。
【図5】図5は、図4に示す排気管をその長手方向に沿って切断した断面を模式的に示す一部拡大断面図である。
【図6】図6は、図4に示す排気管を基材の表面に対し垂直方向から撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
まず、本実施形態に係る放熱部材用塗料について説明する。
本実施形態に係る放熱部材用塗料には、無機ガラス粒子と電着樹脂とが含まれている。
【0024】
上記無機ガラス粒子は、軟化点が300〜1000℃の低融点ガラスであることが望ましい。上記低融点ガラスの種類は、特に限定されないが、ソーダ石灰ガラス、無アルカリガラス、硼珪酸ガラス、カリガラス、クリスタルガラス、チタンクリスタルガラス、バリウムガラス、ボロンガラス、ストロンチウムガラス、アルミナ珪酸ガラス、ソーダ亜鉛ガラス、ソーダバリウムガラス等が挙げられる。これらのガラスは、単独で用いてもよいし、2種類以上が混合されていてもよい。
【0025】
上記のような低融点ガラスは、軟化点が300〜1000℃の範囲にあると、低融点ガラスを融解させて基材(金属基材)の外周面に塗布(コート)した後、加熱焼成処理を施すことにより、基材の外周面に表面被覆層を容易にしかも強固に形成することができる。
上記低融点ガラスの軟化点が300℃未満では、放熱部材として排気管に使用する場合、排気管としての使用時に容易に軟化し、異物の付着が発生する原因となる。一方、上記低融点ガラスの軟化点が1000℃を超えると、熱処理に1000℃以上の加熱が必要になるため、放熱部材の表面被覆層を形成する際の熱処理において、高温暴露により基材が劣化する。
なお、軟化点は、JIS R 3103−1:2001に規定される方法に基づいて、例えば、有限会社オプト企業製の硝子自動軟化点・歪点測定装置(SSPM−31)を用いて測定することができる。
【0026】
上記硼珪酸ガラスの種類は、特に限定されないが、SiO−B−ZnO系ガラス、SiO−B−Bi系ガラス等が挙げられる。上記クリスタルガラスは、PbOを含むガラスであり、その種類は特に限定されないが、SiO−PbO系ガラス、SiO−PbO−B系ガラス、SiO−B−PbO系ガラス等が挙げられる。上記ボロンガラスの種類は、特に限定されないが、B−ZnO−PbO系ガラス、B−ZnO−Bi系ガラス、B−Bi系ガラス、B−ZnO系ガラス等が挙げられる。上記バリウムガラスの種類は、特に限定されないが、BaO−SiO系ガラス等が挙げられる。
【0027】
上記無機ガラス粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、3μm以下であることが望ましい。
無機ガラス粒子の平均粒子径が3μmを超えると、粒子の大きさが不均一になることがある。この場合、電着塗装中、局所的に塗膜の流動が妨げられるため、パスが形成されにくく、その結果、放熱部材の表面に凹部が形成されにくくなる。
また、無機ガラス粒子の平均粒子径が3μmを超えると、焼成の際に、軟化した無機ガラス粒子が放熱部材の表面の凹部を埋めてしまい、放熱部材の表面に凹部を良好に形成することができなくなる。
さらに、無機ガラス粒子の平均粒子径が3μmを超えると、電着塗装の際、無機ガラス粒子を放熱部材用塗料の溶液中で安定化させることができない。
また、上記無機ガラス粒子の平均粒子径は、0.1μm以上であることが望ましい。無機ガラス粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、ガラスの成分が塗料中に溶出してしまい、塗料の安定性を妨げてしまう。
【0028】
上記放熱部材用塗料には、無機粒子が含まれることが望ましい。
上記無機粒子としては、遷移金属の酸化物を用いることが望ましく、マンガン、鉄、銅、コバルト、クロム、ニッケルのうちの少なくとも一種の酸化物であることがより望ましい。
これらの無機粒子は、単独で用いてもよいし、2種類以上が混合されていてもよい。
これらの遷移金属の酸化物は、材料物性として放射率が高いために、加熱された際に赤外線が強く放射され、放射伝熱による放熱性の向上に寄与する。
【0029】
上記無機粒子の平均粒子径及び上記無機ガラス粒子の平均粒子径は、特に限定されず、上記無機粒子の平均粒子径及び上記無機ガラス粒子の平均粒子径の一方又は双方が3μmより大きくてもよいが、上記無機粒子の平均粒子径は3μm以下であり、かつ、上記無機ガラス粒子の平均粒子径は3μm以下であることが望ましい。
また、上記無機粒子の平均粒子径は1μm以下であり、かつ、上記無機ガラス粒子の平均粒子径は1μm以下であることがより望ましい。また、上記無機粒子の平均粒子径は0.9μm以下であり、かつ、上記無機ガラス粒子の平均粒子径は0.8μm以下であることがさらに望ましい。
無機粒子の平均粒子径及び無機ガラス粒子の平均粒子径の一方又は双方が3μmを超えると、粒子の大きさが不均一になることがある。この場合、電着塗装中、局所的に塗膜の流動が妨げられるため、パスが形成されにくく、その結果、放熱部材の表面に凹部が形成されにくくなる。
また、無機ガラス粒子の平均粒子径が3μmを超えると、焼成の際に、軟化した無機ガラス粒子が放熱部材の表面の凹部を埋めてしまい、放熱部材の表面に凹部を良好に形成することができなくなる。
また、無機粒子の平均粒子径が3μmを超えると、焼成の際に、軟化して液状となっている無機ガラス粒子の中に、固体の無機粒子が分散した状態となる。この際、無機粒子が大きい場合には、無機粒子が小さい場合と比較して、軟化した無機ガラス粒子と無機粒子との複合体の粘性が低く流動性がよいため、該複合体が放熱部材の表面の凹部を埋めてしまう。凹部が埋められてしまうと、表面被覆層の表面積が小さくなり、放射率が低くなる。
また、無機粒子の平均粒子径は、0.1μm以上であることが望ましい。無機ガラス粒子の平均粒子径は、0.1μm以上であることが望ましい。
無機粒子の平均粒子径及び無機ガラス粒子の平均粒子径は、例えば、株式会社島津製作所製の島津ナノ粒子径分布測定装置(SALD−7100)を用いて測定することができる。
【0030】
上記無機ガラス粒子の配合量は、無機ガラス粒子の粉末と無機粒子の粉末の合計重量に対して、望ましい下限が40重量%、望ましい上限が99.5重量%である。
無機ガラス粒子は、焼成工程において軟化してマトリックスを形成する材料である。
無機ガラス粒子の配合量が40重量%未満では、無機粒子の量に対する無機ガラス粒子の量が少なすぎるので、充分にマトリックスを形成することができないために、無機粒子の間を無機ガラス粒子が埋めることができず、空隙が多い表面被覆層となる。空隙が多い表面被覆層となると、表面被覆層の強度が低くなり、密着性を得ることができない。
また、無機ガラス粒子の配合量が40重量%未満では、金属基材に接する無機ガラス粒子が少なくなり、焼成時に軟化した無機ガラス粒子と金属基材との接触面積が小さくなり、金属基材上に表面被覆層が充分に接着されなくなる。従って、焼成時又は熱衝撃が負荷された時に表面被覆層の脱落(剥離)を生じやすくなる。
一方、無機ガラス粒子の配合量が99.5重量%を超えると、無機粒子の量が少なくなり、作製された放熱部材の放熱性が低下することがある。
無機ガラス粒子の配合量は、より望ましい下限が60重量%であり、より望ましい上限が80重量%である。
【0031】
上記放熱部材用塗料には、無機粒子が含まれていなくてもよい。この場合であっても、図2(a)〜図2(e)を用いて説明したように、放熱部材用塗料に電着樹脂が含まれることに起因して、一定程度放熱性に優れた放熱部材を得ることができる。
放熱部材用塗料に無機粒子が含まれる場合、上記無機粒子の配合量は、無機ガラス粒子の粉末と無機粒子の粉末の合計重量に対して、望ましい下限が0.5重量%、望ましい上限が60重量%である。
無機粒子の配合量が0.5重量%未満では、無機ガラス粒子に対する無機粒子の量が少なすぎるので、放熱部材の放熱性が低下することがある。一方、無機粒子の配合量が60重量%を超えると、表面被覆層と金属基材の接着に寄与する無機ガラス粒子の量が少なくなり、作製された放熱部材において表面被覆層が脱落することがある。
無機粒子の配合量は、より望ましい下限が20重量%であり、より望ましい上限が40重量%である。
【0032】
上記電着樹脂は、アニオン型電着樹脂であることが望ましい。
上記アニオン型電着樹脂は、アニオン性基を有している。アニオン性基は、塩基と反応して塩を形成する官能基である。アニオン性基としては、特に限定されないが、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。
また、上記アニオン型電着樹脂としては、特に限定されないが、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、マレイン化油、ポリエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。
上記アクリル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシル基含有エチレン重合性単量体及びその他のエチレン重合性単量体からなる単量体組成物を重合して得られる共重合アクリル樹脂が挙げられる。
上記カルボキシル基含有エチレン重合性単量体としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸二量体、クロトン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、イソクロトン酸、α−ハイドロ−ω−((1−オキソ−2−プロペニル)オキシ)ポリ(オキシ(1 −オキソ−1,6−ヘキサンジイル))、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、3−ビニルサリチル酸、3−ビニルアセチルサリチル酸等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記その他のエチレン重合性単量体としては、特に限定されないが、例えば、エステル部の炭素数1以上の(メタ)アクリレート(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジヒドロジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート等)、重合性アミド化合物( 例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N ,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジオクチル(メタ)アクリルアミド、N−モノブチル(メタ)アクリルアミド、N−モノオクチル(メタ)アクリルアミド、2,4−ジヒドロキシ−4′−ビニルベンゾフェノン、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等)、重合性芳香族化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、パラクロロスチレン及びビニルナフタレン等)、重合性ニトリル( 例えば、(メタ)アクリロニトリル等)、α−オレフィン( 例えば、エチレン、プロピレン等)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)、ジエン(例えば、ブタジエン、イソプレン等)、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、(メタ)アクリルアルコール、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンとの付加物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記エステル部の炭素数1以上の(メタ)アクリレートとして2種以上の(メタ)アクリレートを併用する場合、該2種以上の(メタ)アクリレートのなかに、エステル部の炭素数が1又は2の(メタ)アクリレートが含まれることが望ましい。
【0033】
特に、上記放熱部材用塗料に無機粒子が含まれる場合、上記電着樹脂は、アニオン型電着樹脂であることが望ましい。
以下、図3を用いて、その理由について説明する。
図3は、本実施形態に係る無機ガラス粒子及び無機粒子について、pHの値と電荷との対応関係を模式的に示す説明図である。
図3に示すように、無機ガラス粒子の等電点は、pH2程度である。従って、pHの値が2よりも小さな環境においては、無機ガラス粒子はプラスに帯電するのに対し、pHの値が2よりも大きな環境においては、無機粒子はマイナスに帯電する。
また、無機粒子の等電点は、pH7程度である。従って、pHの値が7よりも小さな環境においては、無機粒子はプラスに帯電するのに対し、pHの値が7よりも大きな環境においては、無機粒子はマイナスに帯電する。
すなわち、pH2〜7の酸性環境下において、無機ガラス粒子の有する電荷と無機粒子の有する電荷とは、異なるのに対し、アルカリ性環境下において、無機ガラス粒子の有する電荷と無機粒子の有する電荷とは、同一である。
従って、無機ガラス粒子と無機粒子との双方を同時に析出させるためには、アルカリ性環境下において電着塗装を行うのが望ましい。
ここで、上述したように、アニオン型電着塗装においては、アニオン型電着樹脂に対する中和剤として塩基が用いられるため、電着塗装は、アルカリ性環境下で行われる。一方、カチオン型電着塗装においては、カチオン型電着樹脂に対する中和剤として酸が用いられるため、電着塗装は、酸性環境下で行われる。
従って、アニオン型電着塗装とカチオン型電着塗装とでは、アルカリ性環境下で行われるアニオン型電着塗装の方が望ましい。すなわち、放熱部材用塗料に含まれる電着樹脂としては、カチオン型電着樹脂よりもアニオン型電着樹脂が望ましい。
【0034】
以上のように、上記電着樹脂は、アニオン型電着樹脂であることが望ましいが、カチオン型電着樹脂であってもよい。カチオン型電着樹脂を使用する場合、アニオン型電着樹脂を使用する場合と比較すると、塗料の安定性及び凹部形成のしやすさの点で劣るが、本実施形態において、カチオン型電着樹脂を使用することができないわけではない。
上記カチオン型電着樹脂は、カチオン性基を有している。カチオン性基は、酸と反応して塩を形成する官能基である。カチオン性基としては、特に限定されないが、アミノ基、スルフィド基、ホスフィン基等が挙げられる。
また、上記カチオン型電着樹脂としては、特に限定されないが、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
上記エポキシ樹脂がアミノ基含有エポキシ樹脂である場合、原料エポキシ樹脂分子内のエポキシ環を、1級アミン、2級アミン、3級アミン等のアミン類との反応によって、開環して製造することができる。
上記原料エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の多環式フェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物であるポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ジイソシアネート化合物、又は、ジイソシアネート化合物のNCO基をメタノール、エタノール等の低級アルコールでブロックして得られたビスウレタン化合物と、エピクロルヒドリンとの反応によって得られるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂等を挙げることができる。
上記アミン類としては、特に限定されないが、例えば、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酸塩、ケチミンブロック化アミノ基含有ポリアミン等を挙げることができる。
上記ケチミンブロック化アミノ基含有ポリアミンは、アミノ基がケチミンでブロック化されたアミンである。上記ケチミンブロック化アミノ基含有ポリアミンとしては、例えば、アミノエチルエタノールアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン類中のアミノ基がアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類との反応によってケチミンに変換されたもの等(例えば、ジエチレントリアミンメチルイソブチルケチミン、アミノエチルエタノールアミンメチルイソブチルケチミンのようなケチミンブロック1級アミノ基含有2級アミン等)を挙げることができる。
上記アクリル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリレートと、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリルエステルと、ε−カプロラクトンとの付加生成物)と、その他のアクリル系及び/又は非アクリルモノマーとを共重合することによって得られるもののオキシシラン環にアミンを反応させるものや、グリシジル(メタ)アクリレートを用いずに、アミノ基を持つアクリルモノマーを共重合させて得られるもの等を挙げることができる。
【0035】
上記電着樹脂としては、1種類の電着樹脂のみを使用することとしてもよいし、複数種類の電着樹脂を使用することとしてもよい。
また、上記放熱部材用塗料において、有機結合材は、電着樹脂のみから構成されていてもよいし、電着樹脂以外の有機結合材を含んでいてもよい。電着樹脂以外の有機結合材としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
上記複数種類の電着樹脂は、互いにTが異なっていることが望ましい。
電着塗装中、T付近の温度で電着樹脂の流動性が変化するが、複数種類の電着樹脂のTが互いに異なっていると、電着樹脂の流動性が急激に変化してしまうことが抑制される。このように、複数種類の電着樹脂のTが互いに異なっていると、塗料の塗装時に温度の影響を受けにくくなり、比較的広い温度範囲で、安定した塗膜形成を行うことが可能になり、塗料の塗装時の温度依存性を緩和することができる。その結果、表面被覆層の表面に所望の凹部が形成された排気管を得ることができると考えられる。
また、上記電着樹脂のTは、5〜50℃であることが望ましい。
電着樹脂のTが5℃未満である場合、塗膜としても粘性が低く、流動しやすいものとなる。従って、電着塗装中、一旦塗膜にパスが形成されても、周囲の電着樹脂が軟化し流動することにより、当該パスを塗膜が埋めてしまいやすくなる。そのため、好適な凹部が形成されず、高い放射率を有する表面被覆層を得ることができなくなる。一方、電着樹脂のTが50℃を超えると、逆に、室温において電着樹脂が硬すぎて流動しにくくなる。その結果、所望のパスが塗膜に形成されにくくなる。そのため、好適な凹部が形成されず、高い放射率を有する表面被覆層を得ることができなくなる。また、電着樹脂のTが50℃を超えると、電着樹脂の流動性が悪いため、乾燥及び硬化時に内部の水分が抜けにくく、乾燥及び硬化に時間を要する。そのため、作業効率が悪くなり、コストが上昇する。
もっとも、上記電着樹脂のTは、5〜50℃の範囲外であってもよい。複数種類の電着樹脂が使用される場合、該複数種類の電着樹脂のなかにTが5〜50℃の範囲外の電着樹脂が含まれていてもよく、全ての電着樹脂のTが5〜50℃の範囲外であってもよい。
なお、Tはガラス転移点であり、JIS K 7121:1987に準拠して、DSC(示差走査熱量測定装置)によって測定することができる。
【0037】
上記無機粒子と上記無機ガラス粒子との合計重量に対する上記電着樹脂の重量比は、1.0〜3.5であることが望ましい。
また、上記放熱部材用塗料に無機粒子が含まれない場合、上記無機ガラス粒子の重量に対する上記電着樹脂の重量比は、1.0〜3.5であることが望ましい。
無機粒子と無機ガラス粒子との合計重量に対する電着樹脂の重量比が3.5を超える場合(無機粒子の重量が0の場合を含む)、放熱部材用塗料に含まれる電着樹脂の量が多すぎるため、無機粒子及び無機ガラス粒子の体積率が低くなり、塗膜内において無機粒子及び無機ガラス粒子が各々離れた状態になる。従って、無機粒子及び無機ガラス粒子が連結されていないため、電着樹脂の脱脂の際に、加熱されて電着樹脂が焼失すると、無機粒子及び無機ガラス粒子は、崩れて脱落を生じやすくなる。その結果、高い放射率を有する表面被覆層を得ることができなくなる。
一方、無機粒子と無機ガラス粒子との合計重量に対する電着樹脂の重量比が1.0未満である場合(無機粒子の重量が0の場合を含む)、電着樹脂の量が少なすぎるため、放熱部材用塗料に含まれる無機粒子及び無機ガラス粒子の密度が高く、電着塗装により析出した塗膜内の固形分(粒子)の割合も高くなる。従って、電着通電中の塗膜の流動性が悪いために、パス形成及びパス周辺部での塗膜形成が進みにくい。その結果として、放熱部材の表面に所望の凹部も形成されにくくなる。そのため、高い放射率を有する表面被覆層を得ることができなくなる。また、放熱部材用塗料に含まれる無機粒子及び無機ガラス粒子が多すぎると、無機粒子及び無機ガラス粒子の沈降も生じやすくなり、塗液中の粒子濃度が変化しやすくなるため、塗装条件が変動してしまう。その結果、安定した膜形成をしにくくなる。また、電着槽底面への粒子の堆積も問題となる。
もっとも、上記無機粒子と上記無機ガラス粒子との合計重量に対する上記電着樹脂の重量比は、1.0〜3.5の範囲外であってもよい。また、上記放熱部材用塗料に上記無機粒子が含まれない場合、上記無機ガラス粒子の重量に対する上記電着樹脂の重量比は、1.0〜3.5の範囲外であってもよい。
【0038】
上記放熱部材用塗料には、上記無機ガラス粒子と上記無機粒子と上記有機結合材以外に、顔料、中和剤、硬化剤、分散媒、その他の各種添加剤等が含まれていてもよい。
【0039】
上記顔料としては、着色顔料、体質顔料、及び、防錆顔料等が挙げられる。
上記着色顔料としては、例えば、チタンホワイト、カーボンブラック、ベンガラ、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、ベンズイミダゾロンエロー、キナクリドンレッド、モノアゾレッド、ボリアゾレッド、ベリレンレッド等が挙げられる。
上記体質顔料としては、例えば、カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカ、クレー、シリカ等が挙げられる。
上記防錆顔料としては、例えば、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム、リンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛等が挙げられる。
【0040】
アニオン型電着樹脂に対する中和剤としては、アンモニア、有機アミン、アルカリ金属水酸化物等の塩基が挙げられる。
上記有機アミンとしては、ジエチルアミン、エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、エチルアミノエチルアミン、ヒドロキシエチルアミン、ジエチレントリアミン等が挙げられる。
上記アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
カチオン型電着樹脂に対する中和剤としては、塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸等の酸が挙げられる。
【0041】
アニオン型電着樹脂に対する硬化剤としては、メラミン樹脂、ブロックポリイソシアネート等が挙げられる。
カチオン型電着樹脂に対する硬化剤としては、ブロックポリイソシアネート等が挙げられる。
上記ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネートをブロック剤でブロックして得られる。ポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。
【0042】
上記分散媒としては、水、メタノール、エタノール、又は、アセトン等の有機溶媒等が挙げられる。
【0043】
上記その他の各種添加剤としては、電着塗装を行うために配合される添加剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
上記電着塗装を行うために配合される添加剤としては、ゼータ電位の制御及び/又は溶液の抵抗値を調製するための添加剤、無機ガラス粒子及び/又は無機粒子の分散性を確保するための安定化剤が挙げられる。
【0044】
本実施形態において、上記放熱部材用塗料は、自動車エンジン用排気管の塗装に用いることができる。すなわち、上記放熱部材として、自動車エンジン用排気管(本明細書では、単に、排気管とも言う)を用いることができる。
以下、本実施形態に係る排気管を製造する方法について説明する。
なお、以下では、上記放熱部材用塗料に無機粒子が含まれる場合について説明する。
【0045】
(1)放熱部材用塗料の作製
上述した無機ガラス粒子及び無機粒子を乾式混合し、混合粉末を作製する。
具体的には、無機ガラス粒子の粉末と、無機粒子の粉末とをそれぞれ所定の粒度、形状等になるように調製し、各粉末を所定の配合比率で乾式混合して混合粉末を調製する。
以上のようにして調製した混合粉末に、上述した電着樹脂及び水等の各種添加剤を添加し混合することにより、上記放熱部材用塗料を作製する。
【0046】
(2)基材の準備
金属からなる基材(金属基材)を出発材料とし、まず、金属基材の表面の不純物を除去すべく洗浄処理を行う。
【0047】
上記基材の材質としては、特に限定されないが、例えば、ステンレス、鋼、鉄、銅等の金属、インコネル、ハステロイ、インバー等のニッケル合金等が挙げられる。これらの金属材料は熱伝導率が高いため、排気管の放熱性の向上に寄与することができる。
【0048】
上記洗浄処理としては特に限定されず、従来公知の洗浄処理を用いることができ、例えば、アルコール溶媒中で超音波洗浄を行う方法等を用いることができる。
また、上記洗浄処理後には、必要に応じて、基材の表面の比表面積を大きくしたり、基材の表面の粗さを調整したりすべく、基材の表面に粗化処理を施してもよい。例えば、サンドブラスト処理、エッチング処理、高温酸化処理等の粗化処理を施してもよい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0049】
(3)塗膜の形成
上記(1)の工程で作製した放熱部材用塗料を、上記(2)の工程で準備した金属基材の表面に、電着塗装により塗装する。具体的には、上記放熱部材用塗料中に、上記金属基材と電極板を配置し、上記金属基材と電極板とのうち、一方を陽極として機能させ、他方を陰極として機能させて、電圧を印加する。
そうすると、可溶性の状態の電着樹脂が、無機ガラス粒子及び無機粒子を金属基材の表面まで運ぶ(図2(a)参照)。そして、電着樹脂は、金属基材の表面に触れることで、可溶性の状態から不溶性の状態へと変化して、金属基材の表面に析出される(図2(b)及び図2(c)参照)。なお、その際、塗膜には可溶性の電着樹脂が通過するためのパスが形成されている(図2(b)及び図2(c)参照)。パスは、電着樹脂が金属基材の表面に触れた際に発生する酸素ガスが、既に形成された塗膜を押しのけて塗液中に抜ける際に形成される。
電着塗装は、通常、50〜450Vの電圧を印加して、10〜45℃の浴温で、15秒〜20分間行うことが望ましく、上記電圧は60〜300Vであることがより望ましく、上記浴温は26〜32℃であることがより望ましく、通電時間は30秒〜10分であることがより望ましい。また、放熱部材用塗料の固形分濃度は5〜25重量%であることが望ましく、放熱部材用塗料のpHは8.0〜9.5であることが望ましい。
上記電圧が300Vを超えると、被着体(金属基材)の表面で発生する熱により、一旦被着体の表面に生成した放熱部材用塗料の塗膜が再溶解してしまう。その結果、通電した割には塗膜の膜厚が大きくならない。一方、上記電圧が60V未満であると、負荷電圧が低すぎるため、電着樹脂を被着体(金属基材)に引き寄せる力が弱くなり、放熱部材用塗料の塗膜の厚みが充分に得られない。その結果、高い放射率を有する表面被覆層を得ることができない。
上記浴温が32℃を超えると、熱により、塗液中の電着樹脂の劣化が起こりやすくなる。その結果、塗料の劣化による電着樹脂の交換の頻度が増えるため、製造コストが増加する。一方、上記浴温が26℃未満であると、電着樹脂の活性が低く、被着体(金属基材)の表面での反応速度が遅くなるため、放熱部材用塗料の塗膜が得られにくくなる。その結果、高い放射率を有する表面被覆層を得ることができなくなる。
上記通電時間が10分を超えると、通電時間が長すぎるために、放熱部材用塗料の固形分が堆積することにより、被着体(金属基材)の垂直面と水平面とで放熱部材用塗料の塗膜の膜厚に差が生じやすくなる。その結果、全面で均一な放熱性を有する表面被覆層を得られなくなる。一方、上記通電時間が30秒未満であると、通電時間が短すぎるために、膜成長を途中で止めてしまうことになり、放熱部材用塗料の塗膜の厚みが充分に得られない。その結果、高い放射率を有する表面被覆層を得ることができなくなる。
上記放熱部材用塗料の固形分濃度が25重量%を超えると、電着塗装により析出した塗膜の流動性が低くなり、被着体(金属基材)の表面で生成する熱や泡が逃げにくいため、局所的な温度上昇により、塗膜が塗液中に再溶解したり、塗膜中に残留した気泡が加熱時に熱膨張して突沸を招いたりして、放熱部材用塗料の塗膜の表面状態を悪化させる。その結果、高い放射率を有する表面被覆層を得ることができなくなる。一方、上記放熱部材用塗料の固形分濃度が5重量%未満であると、被着体(金属基材)において析出するのは主に電着樹脂であり、無機ガラス粒子及び無機粒子は極めて少量しか被着体(金属基材)に付着しないため、放熱部材用塗料の塗膜が形成されにくい。従って、焼成後に金属基材上に残る表面被覆層も薄くなる。その結果、高い放射率を有する表面被覆層を得ることができなくなる。
上記放熱部材用塗料のpHが9.5を超えると、放熱部材用塗料の塗膜の析出が生じにくく、放熱部材用塗料の塗着のために必要な電力消費が大きくなる。その結果、エネルギーの浪費となる。これは、電着塗装における塗膜形成のメカニズムとして、被着体(金属基材)の表面における電気反応によりpHが変化することに伴い、電着樹脂が可溶性から不溶性へと変化することで析出することに起因する。上記放熱部材用塗料のpHが9.5を超えると、pHが無駄に高過ぎるため、電気反応によりpHが低下しても、電着樹脂が可溶性のまま存在し析出しないか、又は、一旦析出した塗膜が塗液中に再溶解してしまう。さらに、上記放熱部材用塗料のpHが9.5を超えると、発泡により放熱部材用塗料の塗膜の状態が安定しにくい。その結果、塗膜に空隙が多く発生するため、表面被覆層の強度も低くなり、高い密着性を得ることができない。
一方、上記放熱部材用塗料のpHが8.0未満であると、電着樹脂自体が不溶性から水溶性に変わるpHの近傍であるため、電着樹脂の状態が可溶性の状態と不溶性の状態との境界にあり、pHの変動によって可溶性となったり不溶性となったりするため、電着樹脂が液中において安定に存在できない。その結果、塗料の劣化による電着樹脂の交換の頻度が増えるため、製造コストが増加する。
【0050】
なお、上記電着樹脂としてアニオン型電着樹脂を使用する場合には、上記金属基材を陽極として機能させ、上記電極板を陰極として機能させる。一方、上記電着樹脂としてカチオン型電着樹脂を使用する場合には、上記金属基材を陰極として機能させ、上記電極板を陽極として機能させて、電圧を印加する。
【0051】
(4)乾燥及び硬化
上記(3)の工程により放熱部材用塗料が塗布された金属基材を、所定温度に加熱することにより、金属基材の表面に形成された放熱部材用塗料の塗膜を乾燥させるとともに硬化させる。その際、水分や揮発性の樹脂添加剤等が上記(3)の工程において形成されたパスを通って蒸発することに伴い、塗膜の表面に凹部予備部が形成される(図2(d)参照)。ここで、凹部予備部とは、塗膜の表面に形成された凹んだ領域であり、塗膜を乾燥及び硬化させることに伴い、パスが変形して生じた領域をいう。
本工程における加熱温度は、100〜200℃であることが望ましく、110〜190℃であることがより望ましく、120〜180℃であることがさらに望ましい。
上記加熱温度が200℃を超えると、温度が高過ぎるため、放熱部材用塗料の塗膜が硬化し過ぎてしまう。その結果、エネルギーの浪費となる。一方、上記加熱温度が100℃未満であると、乾燥及び硬化が不充分となり、塗膜に水分又は溶剤が残留してしまう。その結果、脱脂工程又は焼成工程における加熱時に、残留している水分又は溶剤が突沸して、塗膜が弾け、部分的に未着部(表面被覆層中、空隙の存在する部分)を生じる。また、放熱部材用塗料の塗膜が充分に硬化されないため、塗膜と金属基材との密着性が低下し、ハンドリングによる剥れが生じやすくなる。
また、上記加熱温度で所定時間保持されることが望ましく、保持時間は5〜90分であることが望ましい。
上記保持時間が90分を超えると、放熱部材用塗料の塗膜が硬化し過ぎてしまい、時間の浪費となってしまう。一方、上記保持時間が5分未満であると、放熱部材用塗料の塗膜の乾燥及び硬化が不充分であり、塗膜に水分又は溶剤が残留してしまう。その結果、脱脂工程又は焼成工程における加熱時に、残留している水分又は溶剤が突沸して、塗膜が弾け、部分的に未着部を生じる。また、放熱部材用塗料の塗膜が充分に硬化されないため、塗膜と金属基材との密着性が低下し、ハンドリングによる剥れが生じやすくなる。
【0052】
(5)脱脂
上記(4)の工程の後、上記金属基材を、電着樹脂の焼失温度以上の温度に加熱することにより、電着樹脂を焼失させる。これにより、塗膜の体積が収縮し、上記(4)の工程において形成された塗膜の表面の凹部予備部に基づいて、塗膜の表面に凹部が形成される(図2(e)参照)。
電着樹脂の焼失温度とは、電着樹脂の重量が50%減少するときの温度であり、TG/DTA同時測定装置により測定することができる。
本工程における加熱温度は、配合した電着樹脂の種類にもよるが、300〜600℃であることが望ましく、325〜550℃であることがより望ましく、350〜500℃であることがさらに望ましい。
上記加熱温度が600℃を超えると、温度が高すぎるため、電着樹脂の脱脂が完了する前に無機ガラス粒子の軟化が生じてしまう。その結果、無機ガラス粒子が軟化してマトリックスの形成が始まった後に、電着樹脂が燃焼しガスを発生させて突沸を招くため、未着部を生じやすくなる。一方、上記加熱温度が300℃未満であると、電着樹脂の脱脂が不充分となり、樹脂成分が塗膜に残留してしまう。そのため、下記(6)焼成の工程における昇温の際に、突沸を招き、未着部を生じやすくなる。
また、上記加熱温度で所定時間保持されることが望ましく、保持時間は5〜90分であることが望ましい。
上記保持時間が90分あれば電着樹脂の脱脂は充分に完了するため、上記保持時間が90分を超えても、時間の浪費となってしまう。一方、上記保持時間が5分未満であると、電着樹脂の脱脂が不充分となり、樹脂成分が塗膜に残留してしまう。そのため、下記(6)焼成の工程における昇温の際に、軟化した無機ガラス粒子の中で電着樹脂が燃焼し、ガスを発生して突沸するため、表面被覆層の表面に金属基材が露出した穴を空けてしまう。その結果、高い放射率を有する表面被覆層を得られなくなる。
また、上記(4)乾燥及び硬化の工程における加熱温度から、本工程における加熱温度までの昇温速度は、1.7〜60.0℃/分であることが望ましく、2.0〜30.0℃/分であることがより望ましく、3.0〜15.0℃/分であることがさらに望ましい。
上記昇温速度が60.0℃/分を超えると、樹脂成分の突沸を招き、未着部を生じやすくなる。一方、上記昇温速度が1.7℃/分未満であると、昇温に時間がかかりすぎ、時間の浪費となってしまう。
【0053】
(6)焼成
上記(5)の工程の後、上記金属基材を、上記無機ガラス粒子の軟化点以上の温度に加熱する。
これにより、金属基材と無機ガラス粒子とを強固に密着させることができ、金属基材と強固に密着した表面被覆層を形成することができる。また、無機ガラス粒子が融解するため、塗膜の膜厚の低減率が大きくなり、表面に凹部を有する表面被覆層がより形成されやすくなる(図2(e)参照)。
さらに、塗膜中に無機粒子が存在する場合、軟化した無機ガラス粒子の流動性が低くなり、凹部周辺部での塗膜の流動が抑制されるため、表面に凹部を有する表面被覆層が形成されやすい。これに対し、塗膜中に無機粒子が存在しない場合、凹部周辺部での塗膜の流動が無機粒子によって抑制されることがないため、塗膜中に無機粒子が存在する場合と比較して、表面に凹部を有する表面被覆層が形成されにくい。
本工程における加熱温度は、配合した無機ガラス粒子の種類にもよるが、500〜1000℃であることが望ましく、600〜950℃であることがより望ましく、700〜900℃であることがさらに望ましい。
上記加熱温度が1000℃を超えると、高温暴露により金属基材の劣化を招いてしまう。一方、上記加熱温度が500℃未満であると、無機ガラス粒子の軟化が不充分となり、焼結が不充分なため、放熱部材用塗料の塗装が緻密化されず、金属基材と表面被覆層との密着性を充分に得ることができない。
なお、本工程における加熱温度は、上記(5)脱脂の工程における加熱温度よりも高い。
また、上記加熱温度で所定時間保持されることが望ましく、保持時間は1〜30分であることが望ましい。
上記保持時間が30分を超えると、金属基材の劣化を招いてしまう。一方、上記保持時間が1分未満であると、無機ガラス粒子の軟化が不充分となり、塗装が緻密化されず、金属基材と表面被覆層との密着性を充分に得ることができない。
また、上記(5)脱脂の工程における加熱温度から、本工程における加熱温度までの昇温速度は、3.3〜100.0℃/分であることが望ましく、4.0〜50.0℃/分であることがより望ましく、5.0〜25.0℃/分であることがさらに望ましい。
上記昇温速度が100.0℃/分を超えると、金属基材の熱容量が大きく、熱を奪われるため、金属基材の全体が均一に加熱されない。一方、上記昇温速度が3.3℃/分未満であると、昇温に時間がかかりすぎ、時間の浪費となってしまう。
【0054】
以上の工程を経ることにより、金属基材の表面上に表面被覆層が形成された排気管を製造することができる。
続いて、図4〜図6を用いて、金属基材の表面上に表面被覆層が形成された排気管について説明する。
【0055】
図4は、本実施形態に係る排気管を模式的に示す斜視図である。
図5は、図4に示す排気管をその長手方向に沿って切断した断面を模式的に示す一部拡大断面図である。
図6は、図4に示す排気管を基材の表面に対し垂直方向から撮影した写真である。
なお、図4においては、排ガスをGで示し、排ガスの流れる方向を矢印で示す。
また、図6に示す写真は、電子顕微鏡で撮影したものであり、加速電圧は15.0kV、倍率は200倍である。
【0056】
図4に示す排気管1は、円筒状の金属基材10と、金属基材10の外周面上に所定の厚さで形成された表面被覆層20とから構成される。
【0057】
図5に示すように、金属基材10の表面には、凹凸が形成されている。この凹凸が形成された金属基材の外周面の表面粗さRzJIS(JIS B 0601:2001)は、1.5〜15.0μmであることが望ましい。
金属基材の外周面の表面粗さRzJISが、1.5μm未満であると、金属基材の表面積が小さくなるため、金属基材と表面被覆層との密着性が不充分になる。一方、金属基材の外周面の表面粗さRzJISが、15.0μmを超えると、金属基材の表面と表面被覆層との間に空隙が形成されてしまう。これは、金属基材の外周面の表面粗さRzJISが大きすぎると、金属基材の表面に形成された凹凸の谷の部分に確実に放熱部材用塗料が入り込まないためであると考えられる。
【0058】
表面被覆層20は、電着塗装により金属基材10に塗布された放熱部材用塗料に対して、乾燥、硬化、脱脂、及び、焼成の各処理を施すことにより形成された層である。
【0059】
図5に示すように、表面被覆層20の表面は、凹部30と平坦部40とからなる。表面被覆層20の凹部30と金属基材10との距離は、平坦部40と基材10との距離よりも短い。
図6に示すように、表面被覆層20の凹部30は、金属基材10の表面に対し垂直方向から見た形状が丸みを帯びた形状となっている。
【0060】
表面被覆層20の凹部30が形成される理由は、以下のように考えられる。
電着塗装においては、可溶性の状態の電着樹脂が、無機ガラス粒子及び無機粒子を金属基材10の表面まで運ぶ(図2(a)参照)。そして、電着樹脂は、金属基材10の表面に触れることで、可溶性の状態から不溶性の状態へと変化して、金属基材10の表面に析出される(図2(b)及び図2(c)参照)。その際、放熱部材用塗料の塗膜には可溶性の電着樹脂が通過するためのパスが形成されている(図2(b)及び図2(c)参照)。パスは、電着樹脂が金属基材の表面に触れた際に発生する酸素ガスが、既に形成された塗膜を押しのけて塗液中に抜ける際に形成される。
その後、上記(4)乾燥及び硬化の工程において放熱部材用塗料の塗膜を加熱すると、水分及び揮発性の樹脂添加剤等が揮発する。その際、水分及び揮発性の樹脂添加剤等が上記パスを通って蒸発することに伴い、塗膜の表面に凹部予備部が形成される(図2(d)参照)。さらに、上記(5)脱脂の工程において塗膜中の電着樹脂を除去するために塗膜を加熱すると、電着樹脂が焼失して、塗膜の体積が収縮する。その後、上記(6)焼成の工程において塗膜に対して焼成処理を施すことにより、凹部30を有する表面被覆層20が形成される(図2(e)参照)。
【0061】
以上、本実施形態に係る放熱部材用塗料について説明した。
以下に、本実施形態に係る放熱部材用塗料の作用効果について列挙する。
【0062】
(1)本実施形態に係る放熱部材用塗料においては、放熱部材用塗料に電着樹脂が含まれている。従って、放熱部材用塗料には電着樹脂が含まれているため、放熱部材用塗料を用いて電着塗装を行うことができる。そして、電着塗装により、放熱部材用塗料を金属からなる基材に塗装することができる。その後、放熱部材用塗料を塗装することにより形成された塗膜を加熱すると、表面に凹部を有する表面被覆層が形成される。表面に凹部を有する表面被覆層が形成される理由については、上述した通りである。
本実施形態に係る放熱部材用塗料を基材に塗装することにより得られた排気管は、表面被覆層の表面に凹部が形成されているため、排気管の表面積が大きく、見かけ上の放射率が高くなる。そのため、当該排気管は、放射伝熱が促進されることにより、放熱性に優れた排気管となる。このように、本実施形態に係る放熱部材用塗料によれば、放熱性に優れた排気管を得ることができる。
また、表面被覆層の表面に形成された凹部により、熱応力を分散させるための非固定端を多く設定することができるため、熱衝撃による熱応力を緩和することが可能となり、表面被覆層の剥れを防止することができる。従って、本実施形態に係る放熱部材用塗料によれば、耐熱衝撃性に優れた排気管を得ることができる。
【0063】
(2)本実施形態に係る放熱部材用塗料には、無機粒子が含まれる。
無機粒子は、材料物性として放射率が高いために、加熱された際に赤外線が強く放射される。これは、次式で表されるステファン・ボルツマンの定義による。
q=εσ(T−T
(σ:ステファン・ボルツマン定数・・・5.67×10−8[W/m・K]、q:熱流束[W/m]、ε:放射率、T:加熱体温度[K]、T:受熱体温度[K])
従って、無機粒子を含む放熱部材用塗料を塗装して得られる排気管は、表面被覆層中の無機粒子からの赤外線の放射が生じるため、表面被覆層の放射率が高くなり、高温での放熱性に優れた排気管となると考えられる。
また、焼成の際に軟化した無機ガラス粒子の流動性が低くなり、凹部周辺部での塗膜の流動が抑制されるため、表面被覆層の表面に凹部が形成されやすくなると考えられる。
以上により、放熱性に一層優れた排気管を得ることができるのではないかと考えられる。
【0064】
(3)本実施形態に係る放熱部材用塗料においては、無機粒子と無機ガラス粒子との合計重量に対する電着樹脂の重量比が、1.0〜3.5である。
放熱部材用塗料に含まれる電着樹脂の量が多すぎると、無機粒子及び無機ガラス粒子の体積率が低くなり、塗膜内において無機粒子及び無機ガラス粒子が各々離れた状態になる。従って、無機粒子及び無機ガラス粒子が連結されていないため、電着樹脂の脱脂の際に、加熱されて電着樹脂が焼失すると、無機粒子及び無機ガラス粒子は、崩れて脱落を生じやすくなる。
逆に、放熱部材用塗料に含まれる電着樹脂の量が少なすぎると、放熱部材用塗料に含まれる無機粒子及び無機ガラス粒子の密度が高く、電着塗装により析出した塗膜内の固形分(粒子)の割合も高くなる。従って、電着通電中の塗膜の流動性が悪いために、パス形成及びパス周辺部での塗膜形成が進みにくい。その結果として、放熱部材の表面に所望の凹部も形成されにくくなる。また、放熱部材用塗料に含まれる無機粒子及び無機ガラス粒子が多すぎると、無機粒子及び無機ガラス粒子の沈降も生じやすくなり、塗液中の粒子濃度が変化しやすくなるため、塗装条件が変動してしまう。その結果、安定した膜形成をしにくくなる。また、電着槽底面への粒子の堆積も問題となる。
無機粒子と無機ガラス粒子との合計重量に対する電着樹脂の重量比が、1.0〜3.5であると、このような問題を生じさせることなく、表面に所望の凹部が形成された排気管を提供することができる。
【0065】
(4)本実施形態に係る放熱部材用塗料においては、無機粒子の平均粒子径が3μm以下であり、無機ガラス粒子の平均粒子径が3μm以下である。
無機ガラス粒子及び無機粒子の平均粒子径が大きい場合(例えば、平均粒子径が10μm程度の場合)、大きな粒子が含まれることにより、粒子の大きさが不均一になることがある。この場合、電着塗装中、局所的に塗膜の流動が妨げられるため、パスが形成されにくく、その結果、放熱部材の表面に凹部が形成されにくくなる。
これに対し、本実施形態に係る放熱部材用塗料によれば、無機ガラス粒子及び無機粒子が小さいため、無機ガラス粒子及び無機粒子の分布を均一にすることができる。その結果、放熱部材の表面に凹部が形成されやすくなると考えられる。
また、無機ガラス粒子が大きい場合(例えば、平均粒子径が10μm程度の場合)、焼成の際に、軟化した無機ガラス粒子が放熱部材の表面の凹部を埋めてしまい、放熱部材の表面に凹部を良好に形成することができなくなると考えられる。
一方、無機粒子が大きい場合(例えば、平均粒子径が10μm程度の場合)にも、焼成の際に、軟化して液状となっている無機ガラス粒子の中に、固体の無機粒子が分散した状態となる。この際、無機粒子が大きい場合には、無機粒子が小さい場合と比較して、軟化した無機ガラス粒子と無機粒子との複合体の粘性が低く流動性がよいため、該複合体が放熱部材の表面の凹部を埋めてしまうと考えられる。
さらに、無機ガラス粒子及び無機粒子の平均粒子径が小さいため、電着塗装の際、無機ガラス粒子及び無機粒子を放熱部材用塗料の溶液中で安定化させることができると考えられる。
塗液中の粒子は、粒子径が小さい方が安定的に存在することができる。これは、ストークスの式で示される。
Vs=Dp(ρp−ρf)g/18η
(Vs:粒子の終端速度[m/s]、Dp:粒子径[m]、ρp:粒子の密度[kg/m]、ρf:流体の密度[kg/m]、g:重力加速度[m/s]、η:流体の粘度[Pa・s])
従って、無機ガラス粒子及び無機粒子として、粒径が小さな粒子を用いると、電着塗装の際、塗液中での沈降速度を小さくすることができ、無機ガラス粒子及び無機粒子を塗液中において安定させることができる。
以上の理由から、表面に所望の凹部が形成された排気管を得ることができると考えられる。
【0066】
(5)本実施形態に係る放熱部材用塗料において、電着樹脂は、アニオン型電着樹脂である。
放熱部材の表面に所望の凹部を形成するためには、塗料の安定性を高め、粒子の沈降を抑制する必要がある。塗料の安定性が悪く、粒子の沈降が著しい場合には、基材の水平面部分に多量の粒子が降り注ぐため、凹部を好適に形成することができない。
本実施形態に係る放熱部材用塗料によれば、電着樹脂として、アニオン型電着樹脂が使用されるため、無機粒子の表面電荷及び無機ガラス粒子の表面電荷の相性がよくなり、アニオン型電着樹脂が無機粒子及び無機ガラス粒子の沈降を抑制する働きをするため、放熱部材用塗料の安定性を高めることが可能になり、塗膜の形成を好適に行うことができる。
その結果、表面に所望の凹部が形成された排気管を得ることができると考えられる。
【0067】
(6)本実施形態に係る放熱部材用塗料において、電着樹脂は、互いにTの異なる複数種類の電着樹脂からなる。
これにより、放熱部材用塗料の塗装時に温度の影響を受けにくくなり、比較的広い温度範囲で、安定した塗膜形成を行うことが可能になり、放熱部材用塗料の塗装時の温度依存性を緩和することができると考えられる。
その結果、表面に所望の凹部が形成された排気管を得ることができると考えられる。
【0068】
(7)本実施形態に係る放熱部材用塗料において、電着樹脂は、Tが5〜50℃である。
電着樹脂のTが5℃未満である場合、塗膜としても粘性が低く、流動しやすいものとなる。従って、電着塗装中、一旦塗膜にパスが形成されても、周囲の電着樹脂が軟化し流動することにより、当該パスを塗膜が埋めてしまいやすくなる。また、電着樹脂のTが50℃を超えると、逆に室温において電着樹脂が硬すぎて流動しにくくなる。その結果、所望のパスが塗膜に形成されにくくなる。
これに対し、本実施形態に係る放熱部材用塗料によれば、電着樹脂のTが上記範囲にあるため、電着樹脂の流動性を適度なものとすることができる。これにより、電着塗装中、好適にパスを形成することができ、その結果、表面被覆層の表面に所望の凹部が形成された排気管を得ることができると考えられる。
【0069】
(実施例)
以下、実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されない。
【0070】
(実施例1)
(1)放熱部材用塗料の作製
無機粒子の粉末として、MnO粉末24重量部、FeO粉末8重量部、CuO粉末4重量部、及び、CoO粉末4重量部からなる金属酸化物の粉末を準備した。無機粒子の平均粒子径は、0.8μmであった。
また、無機ガラス粒子の粉末として、旭硝子株式会社製K807(SiO−BaO−B系ガラス粉末、軟化点720℃)60重量部を準備した。無機ガラス粒子の平均粒子径は、0.9μmであった。
上記無機粒子の粉末と上記無機ガラス粒子の粉末とを乾式混合し、混合粉末を作製した。
さらに、反応容器に、単量体組成物と溶媒と重合開始剤とを添加し、単量体組成物を重合させることにより、アニオン型電着樹脂を作製した。具体的には、単量体組成物として、エチルアクリレート13重量部、2−エチルヘキシルメタクリレート30重量部、メチルメタクリレート31重量部、アクリル酸9重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート17重量部、及び、N−メチロールメタクリルアミド4重量部を添加した。また、溶媒として、イソプロピルアルコール(IPA)54重量部、及び、ブチルセロソルブ15重量部を添加した。また、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル3重量部を添加した。
上記混合粉末に、有機結合材として、上記重合により得られたアニオン型電着樹脂170重量部を添加し混合した。
その後、純水1500重量部、その他の各種添加剤を添加し混合することにより、放熱部材用塗料を作製した。
作製した放熱部材用塗料の固形分濃度は、15重量%であった。
DSC(示差走査熱量測定装置)(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製 EXSTAR DSC6220)を用いて、上記アニオン型電着樹脂のTを測定したところ、Tは25℃であった。
【0071】
(2)金属基材の準備
金属基材として、幅100mm、長さ100mm、厚さ2mmの板状のステンレス基材(SUS430製)を準備した。この金属基材を、アルコール溶媒中で超音波洗浄を行い、続いて、サンドブラスト処理を行って金属基材の表面を粗化した。サンドブラスト処理は、♯100のAl砥粒を用いて10分間行った。
表面粗さ測定機(株式会社東京精密製 HANDY SURF E−35B)を用いて、金属基材の表面の粗さを測定したところ、金属基材の表面の粗さは、RzJIS=8.8μmであった。
【0072】
(3)塗膜の形成
上記(1)の工程で作製した放熱部材用塗料0.7gを、上記(2)の工程で準備した金属基材の表面に、電着塗装により均一に塗装した。具体的には、上記放熱部材用塗料中に、上記金属基材と電極板を配置し、上記金属基材を陽極として機能させ、上記電極板を陰極として機能させて、電圧を印加した。
電着塗装は、電圧100V、浴温26〜32℃、通電時間3分間として、回転式攪拌機を使用して、放熱部材用塗料を攪拌状態にして行った。放熱部材用塗料の固形分濃度は15重量%であり、pHは8.0〜9.5であった。
【0073】
(4)乾燥及び硬化
上記(3)の工程により放熱部材用塗料が塗布された金属基材を、乾燥機内で、160℃で60分間加熱することにより、金属基材の表面に形成された放熱部材用塗料の塗膜を乾燥させ、硬化させた。
【0074】
(5)脱脂
上記(4)の工程の後、上記金属基材を、加熱炉で、400℃で60分間加熱することにより、塗膜に含まれる電着樹脂を焼失させた。
【0075】
(6)焼成
上記(5)の工程の後、上記金属基材を、加熱炉で、850℃で20分間加熱することにより、塗膜に焼成処理を施した。
【0076】
以上の工程を経ることにより、金属基材の表面上に表面被覆層が形成された放熱部材用塗料の焼付サンプルを作製した。
【0077】
(実施例2)
実施例1の(1)放熱部材用塗料の作製の工程において、無機粒子の粉末の配合量を0重量部とし、放熱部材用塗料に無機粒子を含めなかった点、及び、無機ガラス粒子の粉末の配合量を100重量部とした点以外は、実施例1と同様の工程を経ることにより、放熱部材用塗料の焼付サンプルを作製した。
【0078】
(実施例3)
実施例1の(1)放熱部材用塗料の作製の工程において、電着樹脂として、アニオン型電着樹脂の代わりにカチオン型電着樹脂(Tは25℃)を用いた点、及び、実施例1の(3)塗膜の形成の工程において、上記金属基材を陰極として機能させ上記電極板を陽極として機能させて電圧を印加した点以外は、実施例1と同様の工程を経ることにより、放熱部材用塗料の焼付サンプルを作製した。
上記カチオン型電着樹脂(Tは25℃)は、反応容器に、原料エポキシ樹脂とアミン類と溶媒とを添加し、原料エポキシ樹脂分子内のエポキシ環を、アミン類との反応によって開環することにより作製した。具体的には、原料エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製「YD−011」)72重量部を添加した。また、アミン類として、n−メチルエタノールアミン4重量部、及び、ジエチレントリアミンのメチルイソブチルケチミン75%メチルイソブチルケトン6重量部を添加した。また、溶媒として、メチルイソブチルケトン18重量部を添加した。
【0079】
(実施例4)
実施例1の(1)放熱部材用塗料の作製の工程において、電着樹脂として、Tの異なるアニオン型電着樹脂(Tは5℃)を用いた点以外は、実施例1と同様の工程を経ることにより、放熱部材用塗料の焼付サンプルを作製した。
上記アニオン型電着樹脂(Tは5℃)は、反応容器に、単量体組成物と溶媒と重合開始剤とを添加し、単量体組成物を重合させることにより作製した。具体的には、単量体組成物として、エチルアクリレート28重量部、2−エチルヘキシルメタクリレート32重量部、メチルメタクリレート14重量部、アクリル酸9重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート17重量部、及び、N−メチロールメタクリルアミド4重量部を添加した。また、溶媒として、イソプロピルアルコール(IPA)54重量部、及び、ブチルセロソルブ15重量部を添加した。また、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル3重量部を添加した。
【0080】
(実施例5)
実施例1の(1)放熱部材用塗料の作製の工程において、電着樹脂として、Tの異なるアニオン型電着樹脂(Tは50℃)を用いた点以外は、実施例1と同様の工程を経ることにより、放熱部材用塗料の焼付サンプルを作製した。
上記アニオン型電着樹脂(Tは50℃)は、反応容器に、単量体組成物と溶媒と重合開始剤とを添加し、単量体組成物を重合させることにより作製した。具体的には、単量体組成物として、エチルアクリレート4重量部、2−エチルヘキシルメタクリレート20重量部、メチルメタクリレート50重量部、アクリル酸9重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート17重量部、及び、N−メチロールメタクリルアミド4重量部を添加した。また、溶媒として、イソプロピルアルコール(IPA)54重量部、及び、ブチルセロソルブ15重量部を添加した。また、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル3重量部を添加した。
【0081】
(実施例6)
実施例1の(1)放熱部材用塗料の作製の工程において、電着樹脂として、互いにTの異なる2種類のアニオン型電着樹脂(アニオン型電着樹脂(Tは25℃)、及び、アニオン型電着樹脂(Tは50℃))を用いた点以外は、実施例1と同様の工程を経ることにより、放熱部材用塗料の焼付サンプルを作製した。なお、2種類のアニオン型電着樹脂の配合量は、それぞれ、85重量部、85重量部とした。
アニオン型電着樹脂(Tは25℃)は、実施例1と同様の方法により作製した。アニオン型電着樹脂(Tは50℃)は、実施例5と同様の方法により作製した。
【0082】
(実施例7)
実施例1の(1)放熱部材用塗料の作製の工程において、電着樹脂の配合量を350重量部とした点以外は、実施例1と同様の工程を経ることにより、放熱部材用塗料の焼付サンプルを作製した。
【0083】
(実施例8)
実施例1の(1)放熱部材用塗料の作製の工程において、電着樹脂の配合量を100重量部とした点以外は、実施例1と同様の工程を経ることにより、放熱部材用塗料の焼付サンプルを作製した。
【0084】
(参考例1)
実施例1の(1)放熱部材用塗料の作製の工程において、電着樹脂として、Tの異なるアニオン型電着樹脂(Tは−8℃)を用いた点以外は、実施例1と同様の工程を経ることにより、放熱部材用塗料の焼付サンプルを作製した。
上記アニオン型電着樹脂(Tは−8℃)は、反応容器に、単量体組成物と溶媒と重合開始剤とを添加し、単量体組成物を重合させることにより作製した。具体的には、単量体組成物として、エチルアクリレート37重量部、2−エチルヘキシルメタクリレート34重量部、メチルメタクリレート3重量部、アクリル酸9重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート17重量部、及び、N−メチロールメタクリルアミド4重量部を添加した。また、溶媒として、イソプロピルアルコール(IPA)54重量部、及び、ブチルセロソルブ15重量部を添加した。また、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル3重量部を添加した。
【0085】
(参考例2)
実施例1の(1)放熱部材用塗料の作製の工程において、電着樹脂として、Tの異なるアニオン型電着樹脂(Tは55℃)を用いた点以外は、実施例1と同様の工程を経ることにより、放熱部材用塗料の焼付サンプルを作製した。
上記アニオン型電着樹脂(Tは55℃)は、反応容器に、単量体組成物と溶媒と重合開始剤とを添加し、単量体組成物を重合させることにより作製した。具体的には、単量体組成物として、エチルアクリレート4重量部、2−エチルヘキシルメタクリレート16重量部、メチルメタクリレート54重量部、アクリル酸9重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート17重量部、及び、N−メチロールメタクリルアミド4重量部を添加した。また、溶媒として、イソプロピルアルコール(IPA)54重量部、及び、ブチルセロソルブ15重量部を添加した。また、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル3重量部を添加した。
【0086】
(参考例3)
実施例1の(1)放熱部材用塗料の作製の工程において、電着樹脂の配合量を380重量部とした点以外は、実施例1と同様の工程を経ることにより、放熱部材用塗料の焼付サンプルを作製した。
【0087】
(参考例4)
実施例1の(1)放熱部材用塗料の作製の工程において、電着樹脂の配合量を80重量部とした点以外は、実施例1と同様の工程を経ることにより、放熱部材用塗料の焼付サンプルを作製した。
【0088】
(参考例5)
実施例1の(1)放熱部材用塗料の作製の工程において、平均粒子径が3.8μmの無機粒子、及び、平均粒子径が4.3μmの無機ガラス粒子を用いた点以外は、実施例1と同様の工程を経ることにより、放熱部材用塗料の焼付サンプルを作製した。
【0089】
(比較例1)
実施例1の(1)放熱部材用塗料の作製の工程において、有機結合材としてアニオン型電着樹脂の代わりにメチルセルロース(キシダ化学製メチルセルロース25)を用いた点、及び、平均粒子径が3.8μmの無機粒子と平均粒子径が4.3μmの無機ガラス粒子を用いた点、並びに、実施例1の(3)塗膜の形成の工程において、放熱部材用塗料の電着塗装の代わりにスプレーコートを用いた放熱部材用塗料の霧化塗装により塗装を行った点以外は、実施例1と同様の工程を経ることにより、放熱部材用塗料の焼付サンプルを作製した。
【0090】
(比較例2)
実施例1の(1)放熱部材用塗料の作製の工程において、無機粒子の粉末の配合量を0重量部とし、放熱部材用塗料に無機粒子を含めなかった点、及び、無機ガラス粒子の粉末の配合量を100重量部とした点以外は、比較例1と同様の工程を経ることにより、放熱部材用塗料の焼付サンプルを作製した。
【0091】
実施例1〜8、参考例1〜5、及び、比較例1〜2のそれぞれの放熱部材用塗料の焼付サンプルについて、以下の評価を行った。
【0092】
(放射率の評価)
KEM社製放射率計D&S AERDを用いて、各放熱部材用塗料の焼付サンプルの放射率を計測した。結果を表1に示す。
表1では、放射率に対する判定結果も示している。判定は、「◎」、「○」、「△」、「−」、及び、「×」の5段階で行った。「−」は、比較例1(従来技術)と比較して、放射率に変化がなかったものを示す。「△」は、比較例1(従来技術)と比較して、放射率が僅かに(0.01)向上したことを示す。「○」は、比較例1(従来技術)と比較して、放射率が比較的(0.02〜0.05)向上したことを示す。「◎」は、比較例1(従来技術)と比較して、放射率が大きく(0.06以上)向上したことを示す。「×」は、比較例1(従来技術)と比較して、放射率が悪くなったことを示す。
放射率の評価の結果、「◎」は、実施例1、「○」は、実施例2〜8、「△」は、参考例5、「−」は、参考例1及び2、並びに、比較例1、「×」は、参考例3及び4、並びに、比較例2であった。
【0093】
(耐熱衝撃性の評価)
各放熱部材用塗料の焼付サンプルを加熱炉で850℃で10分間加熱して、冷却する間を置かずにそのまま25℃の水に投入し、表面被覆層(各放熱部材用塗料の焼き付けられた塗装)に脱落又はクラックが発生するか否かについて評価した。
表1では、耐熱衝撃性に対する判定結果を示している。判定は、「○」、「△」、及び、「×」の3段階で行った。「○」は、脱落及びクラックが発生しなかったことを示す。「△」は、脱落は発生しなかったがクラックが発生したことを示す。「×」は、脱落が発生したことを示す。脱落とクラックとでは、クラックよりも脱落の方が表面被覆層の損傷の程度が大きいため、脱落が発生していれば、「×」と判定した。
耐熱衝撃性の評価の結果、「○」は、実施例1〜8及び参考例1〜5、「△」は、比較例1、「×」は、比較例2であった。
【0094】
(総合判定)
放射率及び耐熱衝撃性の評価に基づいて、実施例1〜8、参考例1〜5、及び、比較例1〜2のそれぞれの結果について、表1に示すように、総合判定を行った。
判定は、「◎」、「○」、「△」、及び、「×」の4段階で行った。放射率の評価が「◎」であり耐熱衝撃性の評価が「○」のものを、「◎」と判定し、放射率の評価が「○」であり耐熱衝撃性の評価が「○」のものを、「○」と判定し、放射率の評価が「△」、「‐」又は「×」であり耐熱衝撃性の評価が「○」のものを、「△」と判定し、耐熱衝撃性の評価が「△」又は「×」のものを、「×」と判定した。
「◎」が最もよい評価であり、「○」が「◎」の次によい評価であり、「△」が「○」の次によい評価であり、「×」が最も悪い評価であることを示す。
【0095】
【表1】

【0096】
総合判定は、耐熱衝撃性の評価が「○」の実施例1〜8及び参考例1〜5が、評価が高かった。
評価が高かった。
これは、比較例1及び2では、有機結合材としてメチルセルロースを使用したのに対し、実施例1〜8及び参考例1〜5では、有機結合材として電着樹脂を使用したためであると考えられる。
すなわち、本実施形態に係る放熱部材用塗料の作用効果(1)で説明したように、実施例1〜8及び参考例1〜5では、電着樹脂を使用したことにより表面被覆層に凹部が形成されたためであると考えられる。
【0097】
また、放射率は、参考例1及び2よりも実施例1〜8の方が高かった。
これは、参考例1及び2では、Tが5〜50℃の範囲外(参考例1のTは−8℃、参考例2のTは55℃、)の電着樹脂を使用したのに対し、実施例1〜8では、Tが5〜50℃の範囲内の電着樹脂を使用したためであると考えられる。
すなわち、本実施形態に係る放熱部材用塗料の作用効果(7)で説明したように、実施例1〜8では、Tが5〜50℃の範囲内の電着樹脂を使用したことにより、電着樹脂の流動性が適度になり、電着塗装中パスが形成されやすくなったためであると考えられる。
【0098】
また、放射率は、参考例3及び4よりも実施例1〜8の方が高かった。
これは、参考例3及び4では、無機粒子と無機ガラス粒子との合計重量に対する電着樹脂の重量比を、1.0〜3.5の範囲外(参考例3は3.8、参考例4は0.8)としたのに対し、実施例1〜8では、無機粒子と無機ガラス粒子との合計重量に対する電着樹脂の重量比を、1.0〜3.5の範囲内としたためであると考えられる。
すなわち、本実施形態に係る放熱部材用塗料の作用効果(3)で説明したように、実施例1〜8では、無機粒子と無機ガラス粒子との合計重量に対する電着樹脂の重量比を、1.0〜3.5の範囲内としたことにより、表面被覆層の表面に所望の凹部が形成されたためであると考えられる。
【0099】
また、参考例3の放射率は、比較例1(従来技術)よりも、0.01悪かった。これは、参考例3では、無機粒子と無機ガラス粒子との合計重量に対する電着樹脂の重量比を、1.0〜3.5の範囲外(3.8)としたためであると考えられる。
すなわち、電着樹脂の量が多すぎたため、塗膜内において無機粒子及び無機ガラス粒子が各々離れた状態になり、電着樹脂の脱脂の際に、加熱されて電着樹脂が焼失すると、無機粒子及び無機ガラス粒子が崩れて脱落を生じてしまったためであると考えられる(本実施形態に係る放熱部材用塗料の作用効果(3)参照)。
また、参考例4の放射率は、比較例1(従来技術)よりも、0.02悪かった。これは、参考例4では、無機粒子と無機ガラス粒子との合計重量に対する電着樹脂の重量比を、1.0〜3.5の範囲外(0.8)としたためであると考えられる。
すなわち、電着樹脂の量が少なすぎたため、電着塗装により析出した塗膜内の固形分(粒子)の割合が高く、電着通電中の塗膜の流動性が悪いために、パス形成及びパス周辺部での塗膜形成が進みにくくなったためであると考えられる。また、放熱部材用塗料に含まれる無機粒子及び無機ガラス粒子が多すぎたため、無機粒子及び無機ガラス粒子の沈降が生じ、安定した膜形成をすることができなかったためであると考えられる(本実施形態に係る放熱部材用塗料の作用効果(3)参照)。
【0100】
また、参考例5の放射率は、0.01しか向上しておらず、評価は「△」であった。
これは、参考例5では、平均粒子径が4.3μmと大きな無機ガラス粒子、及び、平均粒子径が3.8μmと大きな無機粒子を使用したのに対し、実施例1〜8では、平均粒子径が0.9μmと小さな無機ガラス粒子を使用するとともに、放熱部材用塗料に無機粒子が含まれる場合には、平均粒子径が0.8μmと小さな無機粒子を使用したためであると考えられる。
すなわち、本実施形態に係る放熱部材用塗料の作用効果(4)で説明したように、実施例1〜8では、平均粒子径の小さな無機ガラス粒子及び無機粒子を使用したことにより、無機ガラス粒子及び無機粒子を塗液中において安定させること等が可能となり、その結果、表面被覆層の表面に所望の凹部が形成されたためであると考えられる。
【0101】
また、放射率は、実施例1が0.87、実施例2が0.84であり、実施例2よりも、実施例1の方が評価が高かった。
これは、実施例2では、無機粒子を含まない放熱部材用塗料を使用したのに対し、実施例1では、無機粒子を含む放熱部材用塗料を使用したためであると考えられる。
すなわち、本実施形態に係る放熱部材用塗料の作用効果(2)で説明したように、実施例1では、無機粒子を含む放熱部材用塗料を使用したことにより、表面被覆層中の無機粒子からの赤外線の放射が生じ、また、焼成の際に凹部周辺部での塗膜の流動が抑制されるため、表面被覆層の表面に凹部が形成されやすくなったためであると考えられる。
【0102】
また、放射率は、実施例1が0.87、実施例3が0.83であり、実施例3よりも、実施例1の方が評価が高かった。
これは、実施例3では、電着樹脂としてカチオン型電着樹脂を使用したのに対し、実施例1では、電着樹脂としてアニオン型電着樹脂を使用したためであると考えられる。
すなわち、本実施形態に係る放熱部材用塗料の作用効果(5)で説明したように、実施例1では、電着樹脂としてアニオン型電着樹脂を使用したことにより、無機粒子の表面電荷及び無機ガラス粒子の表面電荷の相性がよくなり、放熱部材用塗料の安定性が高まったためであると考えられる。
【0103】
(その他の実施形態)
本発明において、基材の形状は、特に限定されず、平板、半円筒状であってもよく、その断面の外縁の形状も、円形であってもよいし、楕円形、多角形等の形状であってもよい。
上述した実施形態のように、本発明における放熱部材用塗料が排気管を塗装するために用いられる場合、基材の形状は、円筒形状とすることが望ましい。
【0104】
本発明において、放熱部材用塗料を塗布する基材の面は、必ずしも基材の外周面上全体である必要はなく、基材の外周面上の一部であってもよい。
ただし、基材の外周面上の一部にのみ放熱部材用塗料が塗布される場合、放熱部材用塗料が塗布される部分の面積は、基材の外周面全体の面積の10%以上であることが望ましく、50%以上であることがより望ましく、80%以上であることがさらに望ましい。放熱部材用塗料が塗布される部分の面積が基材の外周面全体の面積の10%未満である場合、放熱部材用塗料の塗布面積が少なすぎて、放熱部材内部の温度上昇を効果的に抑制することができない。
【0105】
本発明において、放熱部材用塗料を塗布する面は、基材の外周面ではなく、基材の内周面であってもよい。なお、基材の外周面とは、基材の表面のうち、面積が大きい側の表面であり、基材の内周面とは、基材の表面のうち、面積が小さい側の表面のことをいう。
また、放熱部材用塗料を塗布する面は、基材の両面であってもよい。
【0106】
本発明の放熱部材用塗料は、無機ガラス粒子と有機結合材とを含み、有機結合材が電着樹脂を含むことが必須の構成要素である。
係る必須の構成要素に、上述した実施形態で詳述した種々の構成(例えば、無機ガラス粒子の種類、無機粒子の種類等)を適宜組み合わせることにより所望の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0107】
1 排気管
10 金属基材
20 表面被覆層
30 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなる基材に塗布するための放熱部材用塗料であって、
無機ガラス粒子と有機結合材とを含み、
前記有機結合材は、電着樹脂を含むことを特徴とする放熱部材用塗料。
【請求項2】
さらに無機粒子を含む請求項1に記載の放熱部材用塗料。
【請求項3】
前記無機ガラス粒子の重量に対する前記電着樹脂の重量比が、1.0〜3.5である請求項1に記載の放熱部材用塗料。
【請求項4】
前記無機粒子と前記無機ガラス粒子との合計重量に対する前記電着樹脂の重量比が、1.0〜3.5である請求項2に記載の放熱部材用塗料。
【請求項5】
前記無機ガラス粒子の平均粒子径が3μm以下である請求項1又は3に記載の放熱部材用塗料。
【請求項6】
前記無機粒子の平均粒子径が3μm以下であり、前記無機ガラス粒子の平均粒子径が3μm以下である請求項2又は4に記載の放熱部材用塗料。
【請求項7】
前記無機粒子は、遷移金属の酸化物である請求項2、4、又は、6に記載の放熱部材用塗料。
【請求項8】
前記無機ガラス粒子は、軟化点が300〜1000℃である請求項1〜7のいずれかに記載の放熱部材用塗料。
【請求項9】
前記電着樹脂は、アニオン型電着樹脂である請求項1〜8のいずれかに記載の放熱部材用塗料。
【請求項10】
前記電着樹脂は、互いにTの異なる複数種類の電着樹脂からなる請求項1〜9のいずれかに記載の放熱部材用塗料。
【請求項11】
前記電着樹脂は、Tが5〜50℃である請求項1〜10のいずれかに記載の放熱部材用塗料。
【請求項12】
自動車エンジン用排気管を塗装する塗料に用いられる請求項1〜11のいずれかに記載の放熱部材用塗料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−193269(P2012−193269A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57964(P2011−57964)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】