説明

放熱部材

【解決手段】 (A)下記一般式(1)
【化1】


(R1は脂肪族不飽和基以外の1価炭化水素基、R2は1価の脂肪族不飽和基、R3は1価炭化水素基、m/(m+n)=0.0005〜0.5、m+n=50〜2,000。)で示され、側鎖に脂肪族不飽和基を有するオルガノポリシロキサンに熱伝導性付与剤、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、白金金属系触媒を含むシリコーンゴム組成物の硬化物よりなり、アスカーC硬度が1〜50の範囲にあることを特徴とする放熱部材。
【効果】 本発明の放熱部材によれば、低硬度熱伝導性シリコーンゴム(アスカーC硬度で50以下)が安定して得られ、大量に熱伝導性付与剤を配合しても低硬度化でき、硬度がばらつかないのでシート等の成形品を発熱性部品に用いた場合の熱抵抗が安定する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、発熱性部品の放熱に有効に用いられる低硬度熱伝導性シリコーンゴムよりなる放熱シート等の放熱部材に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来、パワートランジスタ、サイリスタ等の発熱性部品は、熱の発生により特性が低下するので、設置の際、ヒートシンクを取り付け熱を放散したり、機器の金属製のシャーシに熱を逃がす対策が取られている。このとき、電気絶縁性と熱伝導性を向上させるため、発熱性部品とヒートシンクの間にシリコーンゴムに熱伝導性充填剤を配合した放熱絶縁性シートが用いられる。
【0003】また、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサ、CD−ROMドライブ等の電子機器の高集積化が進み、装置内のLSI、MPU等の集積回路素子の発熱量が増加したため、従来の冷却方法では不十分な場合がある。特に、携帯用のノート型のパーソナルコンピューターの場合、機器内部の空間が狭いので、大きなヒートシンクや冷却ファンを取り付けることができない。これらの機器ではプリント基板上に集積回路素子が搭載されており、基板の材質に熱伝導性の悪いガラス補強エポキシ樹脂やポリイミド樹脂が用いられるので、従来のように放熱絶縁シートを介して基板に熱を逃がすことができない。
【0004】そこで、集積回路素子の近傍に自然冷却タイプ或いは強制冷却タイプの放熱部品を設置し、素子で発生した熱を放熱部品に伝える方式が用いられる。この方式で、素子と放熱部品を直接接触させると表面の凹凸のため熱の伝わりが悪くなり、更に放熱絶縁シートを介して取り付けても放熱絶縁シートの柔軟性がやや劣るため、熱膨張により素子と基板との間に応力がかかり、破損するおそれがある。また、各回路素子ごとに放熱部品を取り付けようとすると、余分なスペースが必要となり、機器の小型化が難しくなるので、いくつかの素子をひとつの放熱部品に組み合わせて冷却する方式がとられる。特にノート型のパーソナルコンピューターで用いられているTCPタイプのMPUは、高さが他の素子に比べて低く、発熱量が大きいため、冷却方式を十分考慮する必要がある。
【0005】また、年々駆動周波数の高周波化に伴いMPUの性能は向上するが、発熱量が増大するため、より高熱伝導性の材料が求められている。
【0006】そこで、素子ごとに高さが異なることに対して、種々の隙間を埋められる低硬度の高熱伝導性シートが必要になる。このような課題に対して、熱伝導性に優れ、柔軟性があり、種々の隙間に対応できる熱伝導性シートが提案されている。
【0007】特開平2−196453号公報には、シリコーン樹脂に金属酸化物等の熱伝導性材料を混入したものを成形したシートで、取り扱いに必要な強度を持たせたシリコーン樹脂層の上に柔らかく変形し易いシリコーン層が積層されているシートが開示されている。
【0008】特開平7−266356号公報には、熱伝導性充填剤を含有し、アスカーC硬度が5〜50であるシリコーンゴム層と直径0.3mm以上の孔を有する多孔性補強材層を組み合わせた熱伝導性複合シートが開示されている。
【0009】特開平8−238707号公報には、可撓性の三次元網状体又はフォーム体の骨格格子表面を熱伝導性シリコーンゴムで被覆したシートが開示されている。
【0010】特開平9−1738号公報には、補強性を有したシート或いはクロスを内蔵し、少なくとも一方の面が粘着性を有してアスカーC硬度が5〜50である厚さ0.4mm以下の熱伝導性複合シリコーンシートが開示されている。
【0011】特開平9−296114号公報には、付加反応型液状シリコーンゴムと熱伝導性絶縁性セラミック粉末を含有し、その硬化物のアスカーC硬度が25以下で熱抵抗が3.0℃/W以下である放熱スペーサーが開示されている。
【0012】特開平10−150132号公報には、熱伝導性フィラーを含有するシリコーン固化物からなり、荷重30g/cm2時の圧縮率が10%以上で、熱伝導率が0.8W/mK以上である放熱スペーサーが開示されている。
【0013】しかし、このような低硬度熱伝導性シリコーンゴムシートを高熱伝導化するため、熱伝導性充填剤を多量に配合すると、硬化後の硬さが硬くなり易く、安定して低硬度品を得るのが難しくなる。つまり、付加硬化型の低硬度熱伝導性シリコーンゴム組成物では、SiH基とビニル基のモル比の僅かな違いにより硬度が大きく変化する。
【0014】本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、大量に熱伝導性付与剤を配合しても低硬度であり、しかも硬度のばらつきが少ないので、熱抵抗が少なく、放熱特性の安定した放熱部材を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、ベースポリマーとして、下記一般式(1)で示される側鎖にビニル基等の脂肪族不飽和基を有するオルガノポリシロキサン(A)と、必要に応じ下記一般式(2)で示される両末端にビニル基等の脂肪族不飽和基を有するオルガノポリシロキサン(B)及び下記一般式(3)で示されるビニル基等の脂肪族不飽和基を含まないか又は片末端のみに1個含有するオルガノポリシロキサン(C)とを使用することにより、SiH基とビニル基等の脂肪族不飽和基のモル比の違いによる硬度変化を小さくすることができることを知見した。即ち、大量の熱伝導性付与剤を配合した付加硬化型低硬度熱伝導性シリコーンゴム組成物において、ベースポリマーとして分子鎖両末端にビニル基を有するオルガノポリシロキサンのみを用いると、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの添加量により硬さが大きく変動し、安定して低硬度品を得ることができない。これに対し、上記のようにベースポリマーに側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサンを用いることにより、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの添加量による硬度変化が小さくなり、熱特性が安定した低硬度熱伝導性シリコーンゴム(アスカーC硬度で50以下)が得られ、大量に熱伝導性付与剤を配合しても低硬度化できると共に、硬度がばらつかないので成形品を発熱性部品に用いた場合の熱抵抗が安定することを知見し、本発明をなすに至った。
【0016】従って、本発明は、(A)下記一般式(1)で示され、側鎖に脂肪族不飽和基を有するオルガノポリシロキサン 100〜2重量部、(B)下記一般式(2)で示される両末端に脂肪族不飽和基を有するオルガノポリシロキサン 0〜98重量部、(C)下記一般式(3)で示され、脂肪族不飽和基を含まないか又は1個含有するオルガノポリシロキサン 0〜90重量部、(D)熱伝導性付与剤 (A)、(B)、(C)成分の合計100重量部に対し100〜2, 000重量部、(E)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン (E)成分に含まれるSiH基と(A)成分、(B)成分及び(C)
成分に含まれる全脂肪族不飽和基とのモル比が0.02/1〜3/1 の範囲となる量(F)白金金属系触媒 触媒量を主成分とするシリコーンゴム組成物の硬化物よりなり、アスカーC硬度が1〜50の範囲にあることを特徴とする放熱部材を提供する。
【0017】
【化4】


(式中、R1は脂肪族不飽和基以外の1価炭化水素基、R2は1価の脂肪族不飽和基、R3は1価炭化水素基を示し、m,nは、m/(m+n)=0.0005〜0.5、m+n=50〜2,000を満足する数を示す。)
【0018】
【化5】


(式中、R1,R2,R3は上記と同じであり、kは50〜2,000の数を示す。)
【0019】
【化6】


(式中、R1,R3は上記と同じであり、pは50〜2,000の数を示す。)
【0020】以下、本発明につき更に詳しく説明する。本発明の放熱部材において、ベースポリマーとしては下記(A)成分のみ、(A)成分と(B)成分の混合系、(A)成分と(C)成分の混合系又は(A)成分と(B)成分と(C)成分との混合系である。
【0021】(A)下記一般式(1)で示され、側鎖に脂肪族不飽和基を有するオルガノポリシロキサン。
【0022】
【化7】


(式中、R1は脂肪族不飽和基以外の1価炭化水素基、R2は1価の脂肪族不飽和基、R3は1価炭化水素基を示し、m,nは、m/(m+n)=0.0005〜0.5、m+n=50〜2,000を満足する数を示す。)
【0023】(B)下記一般式(2)で示される両末端に脂肪族不飽和基を有するオルガノポリシロキサン。
【0024】
【化8】


(式中、R1,R2,R3は上記と同じであり、kは50〜2,000の数を示す。)
【0025】(C)下記一般式(3)で示され、脂肪族不飽和基を含まないか又は1個含有するオルガノポリシロキサン。
【0026】
【化9】


(式中、R1,R3は上記と同じであり、pは50〜2,000の数を示す。)
【0027】ここで、R3の1価炭化水素基は、特に炭素数1〜12、より好ましくは1〜10のものであり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などの非置換1価炭化水素基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、シアノ基、アミノ基などで置換した置換1価炭化水素基が挙げられるが、メチル基、フェニル基、ビニル基、トリフルオロプロピル基が好ましい。
【0028】また、R1は、上記R3の非置換又は置換1価炭化水素基のうち、アルケニル基を除いたものが挙げられ、好ましくはメチル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基である。R2は、上記アルケニル基が典型的な例として挙げられ、特にビニル基が好ましい。
【0029】m,nは、上記した通り、m/(m+n)=0.0005〜0.5、好ましくは0.001〜0.1であり、m+n=50〜2,000、好ましくは100〜1,000を満足する数である。m/(m+n)が0.0005未満では硬さ変化が大きくなり、0.5を超えると低硬度化が難しくなると共にビニル基が酸化され易く、耐熱性が低下する。また、m+nが50未満では重合度が低すぎ、低硬度化が難しくなり、2,000を超えると粘度が高くなり、組成物の流動性が低下し加工性が悪くなる。
【0030】また、k、pは、上述した通り、50〜2,000の数であり、好ましくは100〜1,000である。50未満では重合度が低すぎ、低硬度化が難しくなり、2,000を超えると粘度が高くなり、組成物の流動性が低下し加工性が悪くなる。
【0031】上記(A)成分の側鎖に脂肪族不飽和基を有するオルガノポリシロキサンは、SiH基とビニル基等の脂肪族不飽和基のモル比の違いによる硬度変化を小さくする目的で使用するものであり、これは液状オルガノポリシロキサンである。また分子鎖末端がトリオルガノシリル基で封鎖されたもので、このトリオルガノシリル基としてはトリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、トリビニルシリル基などが例示される。一方、(B)、(C)成分のオルガノポリシロキサンも液状である。
【0032】本発明の組成物においては、(A)成分、(B)成分及び(C)成分のオルガノポリシロキサンを合計で100重量部使用する。この場合、(A)成分、(B)成分、(C)成分の配合割合は、(A)成分を100〜2重量部、好ましくは100〜5重量部、より好ましくは95〜5重量部、(B)成分を0〜98重量部、好ましくは0〜95重量部、より好ましくは5〜95重量部、(C)成分を0〜90重量部、好ましくは0〜80重量部、より好ましくは0〜70重量部の範囲で添加する。なお、(C)成分の配合により組成物の低硬度化が可能になる。(C)成分の配合量が90重量部を超えると組成物が硬化しにくくなる。(C)成分を配合する場合、その下限は5重量部とすることが好ましい。
【0033】本発明において、(D)成分の熱伝導性付与剤は、従来放熱シート等の放熱部材で使用されているものでよく、具体的には酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素等のセラミックス粉末、導電性を有していても問題のない箇所で用いられる場合はアルミニウム、銅、銀等の金属粉末、カーボンブラック、グラファイト等から選択することができる。好ましくは上記セラミックス粉末である。また、2種以上の熱伝導性付与剤を組み合わせて使用してもよい。この配合量は熱伝導性付与剤の種類により比重、粒径、粒子形状等が異なるので一概に決められないが、上記オルガノポリシロキサンの合計量100重量部に対し、100〜2,000重量部の範囲、好ましくは150〜1,500重量部の範囲とすればよい。100重量部未満では十分な熱伝導性が得られず、2,000重量部を超えると配合が困難になり、組成物の流動性が低下し加工性が悪くなる。
【0034】(E)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子に直接結合している水素原子を2個以上含んでいる直鎖状、分岐状又は環状の分子からなるものであり、25℃における粘度が1〜1,000csの範囲であることが好ましい。
【0035】この(E)成分は、上記オルガノポリシロキサンの脂肪族不飽和基と付加反応する架橋剤として作用する。(E)成分の添加量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の脂肪族不飽和基1個に対して通常0.02〜3当量、好ましくは0.05〜2当量(即ち、(E)成分に含まれるSiH基と(A)、(B)、(C)成分に含まれる全脂肪族不飽和基とのモル比が0.02/1〜3/1、好ましくは0.05/1〜2/1の範囲となる量)である。0.02当量より少ない場合には架橋密度が低くなりすぎ、硬化した組成物の硬さが低くなり、成形及び取り扱いが難しくなる。3当量より多い場合は硬化した組成物の硬さが高くなり、低硬度の放熱部材ができなくなる。
【0036】(F)成分の白金金属系触媒は付加反応を促進するためのものであり、具体的には白金ブラック、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン、ビニルシロキサン或いはアセチレンアルコールとの錯体等の白金又は白金化合物などが例示される。この(F)成分の添加量は、希望する硬化速度及び可使時間に応じて選択すればよいが、通常はオルガノポリシロキサンベースに対して白金量で0.1〜1,000ppm、好ましくは1〜200ppmの範囲とすればよい。
【0037】その他添加成分として、組成物の硬化速度、保存安定性を調節する付加反応制御剤、例えば、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等の低分子量ビニル基含有オルガノポリシロキサン、トリアリルイソシアヌレート、アセチレンアルコール及びそのシロキサン変性物、エチニルシクロヘキサノールなどが挙げられる。また、本発明の効果を損なわない程度の補強性シリカ、着色剤、酸化鉄、酸化セリウム等の耐熱性向上剤、シランカップリング剤等の接着助剤を添加してもよい。
【0038】本発明の組成物の製造方法は、最初に(A)成分、(B)成分及び(C)成分のオルガノポリシロキサンと(D)成分の熱伝導性付与剤をプラネタリミキサー、ニーダー、品川ミキサー等の混合機で室温或いは加熱しながら混練りする。次に、組成物の冷却後、(E)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンと(F)成分の白金金属系触媒を添加配合することにより低硬度熱伝導性シリコーンゴム組成物を製造することができる。
【0039】本発明に係る放熱部材は、上記シリコーンゴム組成物の硬化物(低硬度熱伝導性シリコーンゴム成形品)からなるものであるが、この場合、この硬化物の硬さは、アスカーC硬度計で1〜50の範囲、好ましくは1〜40の範囲である。ここで、アスカーC硬度とは、SRIS0101(日本ゴム協会規格)及びJISS6050に基づき、スプリング式硬さ試験機アスカーC型を使用して厚さ6mmのシートを2枚重ねて測定した硬度である。硬度1未満ではゴム層の強度が乏しいため成形が難しくなり、量産性が悪くなる。硬度50を超えると硬くなり、発熱性部品との密着性が低下し、部品形状への追従性が悪くなるため、接触熱抵抗が上昇する。
【0040】なお、本発明の放熱部材の内部に、ガラスクロス、ポリエステル、ナイロン等からなるクロス或いは不織布、ポリイミド、ナイロン、ポリエステル等からなる樹脂フィルム等を入れて、補強してもよい。これにより成形品の強度が向上すると共に、成形品の伸びが抑制されるので取り扱い易くなり、作業性が向上する。
【0041】低硬度熱伝導性シリコーンゴム成形品の成形方法としては次の方法が例示される。
モールド成形:金型中に未硬化の液状組成物を流し込み、金型を締めてから熱プレス機により圧力と熱をかけ、液状組成物を硬化させる。
射出成形:射出成形機上の加熱した金型の中にノズルから未硬化の液状組成物を射出して金型のキャビティ内に充填する。硬化後金型を開け、成形品を取り出す。
コーティング成形:コーティング装置に連続的にセパレータフィルム(例えば、PET)を供給し、この上に未硬化の液状組成物をナイフコータ等により一定の厚さに塗布してから加熱炉を通して液状組成物を硬化させる。
【0042】ここで、硬化条件は適宜選定されるが、通常100〜170℃の温度で1〜15分間の加熱である。
【0043】
【実施例】以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0044】[実施例1〜3、比較例1,2](A)成分として下記平均組成式(i)で示される側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサンと、(B)成分として下記平均組成式(ii)、(iii)で示される分子鎖両末端にビニル基を有するオルガノポリシロキサンと、(C)成分として下記平均組成式(iv)で示されるビニル基を含まないオルガノポリシロキサンと、(D)成分として高純度球状アルミナであるアドマファインAO−41R(株式会社アドマテック製)を表1の配合量でプラネタリミキサーを用いて室温で30分間混練りした後、温度120℃で加熱しながら1時間混練りした。
【0045】
【化10】


【0046】各組成物を冷却後、塩化白金酸のビニルシロキサン錯体(白金含有量1%)0.36重量部を均一に混合し、次いでエチニルシクロヘキサノール0.09重量部を添加混合し、更に25℃の粘度が18csの下記平均組成式(v)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(SiH含有量0.0031mol/g)を表1の添加量で均一に混合して、低硬度熱伝導性シリコーンゴム組成物を調製した。
【0047】
【化11】


【0048】これらの低硬度熱伝導性シリコーンゴム組成物をモールド成形により150℃で10分間加熱して、厚さ6mmのシートを作製し、アスカーC硬度計で硬さを測定した。
【0049】また、次の方法で熱抵抗及び熱伝導率を測定した。
(a)厚さ1mmのシートをモールド成形で作製し、これをトランジスタTO−3タイプの形状に打抜き、ヒーター(TO−3形状)とヒートシンクの間に挟む。圧縮荷重300gf/cm2をかけた状態でヒーターに28Wの電力を印加してからヒーター温度T1とヒートシンク温度T2を測定し、次式から熱抵抗Kを求める。
K=(T1−T2)/28(b)厚さ20mmのブロック体をモールド成形で作製し、熱伝導率計(商品名:Shotherm QTM迅速熱伝導率計、昭和電工株式会社製)を使用して熱伝導率を測定する。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】


【0051】[実施例4,5](A)成分として下記平均組成式(vi)で示される側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサン90重量部と、(B)成分として下記平均組成式(vii)で示される分子鎖両末端にビニル基を有するオルガノポリシロキサン10重量部と、(D)成分として球状アルミナAS−30(昭和電工株式会社製)、酸化亜鉛粉末亜鉛華1号(三井金属鉱業株式会社製)及び窒化ホウ素粉末KBN(h)−10(信越化学工業株式会社製)を表2の配合量でプラネタリミキサーを用いて室温で30分間混練りした後、温度120℃で加熱しながら1時間混練りした。
【0052】
【化12】


【0053】各組成物を冷却後、塩化白金酸のビニルシロキサン錯体(白金含有量1%)0.36重量部を均一に混合し、次いでエチニルシクロヘキサノール0.09重量部を添加混合し、更に25℃の粘度が20csの下記平均組成式(viii)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(SiH含有量0.00136mol/g)を表2の添加量で均一に混合して、低硬度熱伝導性シリコーンゴム組成物を調製した。これらを実施例1〜3と同様に成形し、硬さ及び熱伝導率を測定した。結果を表2に示す。
【0054】
【化13】


【0055】
【表2】


【0056】[実施例6](A)成分として実施例1〜3で用いた側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサン(i)30重量部と、(C)成分として下記平均組成式(ix)で示される分子鎖片末端にビニル基を有するオルガノポリシロキサン70重量部と、(D)成分として二酸化ケイ素粉末クルスタライトVX−ST(株式会社龍森製)150重量部をプラネタリミキサーを用いて室温で30分間混練りした後、温度150℃で加熱しながら1時間混練りした。
【0057】
【化14】


【0058】冷却後、塩化白金酸のビニルシロキサン錯体(白金含有量1%)0.2重量部を均一に混合し、次いでエチニルシクロヘキサノール0.1重量部を添加混合し、更にオルガノハイドロジェンポリシロキサン(v)を表3の添加量で均一に混合して、低硬度熱伝導性シリコーンゴム組成物を調製した。これらを実施例1〜3と同様に成形し、硬さ及び熱伝導率を測定した。結果を表3に示す。
【0059】
【表3】


【0060】
【発明の効果】本発明の放熱部材によれば、低硬度熱伝導性シリコーンゴム(アスカーC硬度で50以下)が安定して得られ、大量に熱伝導性付与剤を配合しても低硬度化でき、硬度がばらつかないのでシート等の成形品を発熱性部品に用いた場合の熱抵抗が安定する。
【0061】従って、本発明はパーソナルコンピューター、ワードプロセッサ、CD−ROMドライブ等の電子機器のLSI、MPU等の集積回路素子の放熱に最適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)下記一般式(1)
【化1】


(式中、R1は脂肪族不飽和基以外の1価炭化水素基、R2は1価の脂肪族不飽和基、R3は1価炭化水素基を示し、m,nは、m/(m+n)=0.0005〜0.5、m+n=50〜2,000を満足する数を示す。)
で示され、側鎖に脂肪族不飽和基を有するオルガノポリシロキサン 100〜2重量部、(B)下記一般式(2)
【化2】


(式中、R1,R2,R3は上記と同じであり、kは50〜2,000の数を示す。)
で示される両末端に脂肪族不飽和基を有するオルガノポリシロキサン 0〜98重量部、(C)下記一般式(3)
【化3】


(式中、R1,R3は上記と同じであり、pは50〜2,000の数を示す。)
で示され、脂肪族不飽和基を含まないか又は1個含有するオルガノポリシロキサン 0〜90重量部、(D)熱伝導性付与剤 (A)、(B)、(C)成分の合計100重量部に対し100〜2, 000重量部、(E)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン (E)成分に含まれるSiH基と(A)成分、(B)成分及び(C)
成分に含まれる全脂肪族不飽和基とのモル比が0.02/1〜3/1 の範囲となる量(F)白金金属系触媒 触媒量を主成分とするシリコーンゴム組成物の硬化物よりなり、アスカーC硬度が1〜50の範囲にあることを特徴とする放熱部材。
【請求項2】 熱伝導性シリコーンゴム組成物の硬化物の熱伝導率が0.6W/mK以上であることを特徴とする請求項1記載の放熱部材。
【請求項3】 (D)成分の熱伝導性付与剤が、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、アルミニウム、銅、銀、カーボンブラック、グラファイトから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の放熱部材。
【請求項4】 放熱部材が放熱シートである請求項1乃至3のいずれか1項記載の放熱部材。