放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンク
【課題】 石油など危険物の液体を貯蔵するコンクリート側壁と鋼製屋根板を有する鋼板ライニング常圧コンクリートタンク内の圧力が急激に上昇する異常時に、圧力を速やかに逃がして、タンクの爆発や急激な火災およびタンクの崩壊を防止する放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクを提供する。
【解決手段】 コンクリート底版3と該底版3外周に立設した筒体状の防液堤兼用のコンクリート側壁4とを一体化形成し、底版内面および側壁内面に液密構造の鋼板ライニング材6、7を設けるとともに、側壁4の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板5を設けてなる鋼板ライニング常圧コンクリートタンクであって、側壁上端縁と屋根板外周縁の接合部近傍にタンク内圧力を開放する放爆構造5Aを設けて形成したことを特徴とする。
【解決手段】 コンクリート底版3と該底版3外周に立設した筒体状の防液堤兼用のコンクリート側壁4とを一体化形成し、底版内面および側壁内面に液密構造の鋼板ライニング材6、7を設けるとともに、側壁4の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板5を設けてなる鋼板ライニング常圧コンクリートタンクであって、側壁上端縁と屋根板外周縁の接合部近傍にタンク内圧力を開放する放爆構造5Aを設けて形成したことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タンク内の異常上昇圧力を開放する放爆構造を備えた石油など危険物の液体を貯蔵する鋼板ライニング常圧コンクリートタンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油など危険物の液体を貯蔵する鋼製の屋外貯蔵タンクは、消防法により危険物の爆発等によりタンク内の圧力が異常に上昇した場合に内部のガス又は蒸気を上部に放出することが出来る構造とすることが決められている。一般にはタンク上部のトップアングルと屋根板との接合部を弱くして、圧力が異常に上昇した場合に、この部分の溶接線が破壊する放爆構造としている。
通常の水タンクや低温タンクに採用されているコンクリート側壁と鋼製屋根からなる複合構造の貯槽は鋼製屋根を放爆構造にする必要はないが、石油など危険物の液体を貯蔵する防液堤一体型の鋼板ライニング常圧コンクリートタンクの場合には、鋼製屋根を放爆構造にする必要がある。
【0003】
タンクの放爆構造に関する出願特許がある。例えば特許文献1(特開平08−217192号公報)「タンクの放爆構造」には、従来例1の図8に示すように、側板1の上部フランジ部3aと屋根板2の外周上面に環状の放爆板4を溶接固定した構成が開示されている。
【0004】
特許文献2(特開平08−324687号公報)「タンクの放爆構造」には、従来例2の図9に示すように、屋根板5の外屋根板5aと内屋根板5bとの間に、筒状部材8を立設し、タンク内部圧力が所定の圧力を超えたときに、筒状部材8と内屋根板5bとの接合部が破断して放爆する構成が開示されている。
【0005】
特許文献3(特開2000−142884号公報)「ドームルーフタンクの放爆構造」には、従来例3の図10に示すように、側板3のトップアングル4とドームルーフ5bの間に、所定幅で上り勾配の調整板7を隅肉溶接により接合して介在させた構成が開示されている。
【0006】
特許文献4(特開2008−105742号公報)「外骨式固定屋根タンクの放爆構造」には、従来例4の図11に示すように、側壁2上部のトップチャンネル11に屋根板3の外周縁が固定され、このトップチャンネル11に固定された受け部材13に対して移動可能に面している外骨4(屋根板3上面に固定)の外方端部に切欠き10を設ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08−217192号公報
【特許文献2】特開平08−324687号公報
【特許文献3】特開2000−142884号公報
【特許文献4】特開2008−105742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
石油など危険物の液体を貯蔵する鋼製の屋外貯蔵タンクの場合は、タンク上部のトップアングルと屋根板との接合部を弱くして、圧力が異常に上昇した場合にこの溶接線が破壊内部のガス又は蒸気を上部に放出することにより、タンク全体の爆発崩壊による災害を防止するものである。
また、通常の水タンクや低温タンクに採用されているコンクリート側壁と鋼製屋根からなる複合構造の貯槽は、鋼製屋根を放爆構造にする必要はないが、石油など危険物の液体を貯蔵するために防液堤一体型のコンクリート側壁と鋼製屋根を有する常圧コンクリートタンクとする場合には、タンク内の圧力が異常に上昇した場合にガス又は蒸気を上部に放出することにより、タンク全体の爆発崩壊による災害を防止するために、鋼製屋根を放爆構造にする必要がある。
【0009】
図8に示す特許文献1(特開平08−217192号公報)「タンクの放爆構造」は、側板1の上部フランジ部3aと屋根板2の外周上面に環状の放爆板4を溶接固定した構成が開示されているが、別途放爆板4を必要としコンクリート側壁の上部を被覆する屋根に設けたものではない。
【0010】
図9に示す特許文献2(特開平08−324687号公報)「タンクの放爆構造」には、屋根板5の外屋根板5aと内屋根板5bとの間に、筒状部材8を立設し、タンク内部圧力が所定の圧力を超えたときに、筒状部材8と内屋根板5bとの接合部が破断して放爆する構成が開示されているが、別途筒状部材8を設置する必要がありコンクリート側壁の上部を被覆する屋根に対応したものではなかった。
【0011】
図10に示す特許文献3(特開2000−142884号公報)「ドームルーフタンクの放爆構造」には、側板3のトップアングル4とドームルーフ5bの間に、所定幅で上り勾配の調整板7を隅肉溶接により接合して介在させた構成が開示されているが、別途調整板7を必要としコンクリート側壁の上部を被覆する屋根に対応したものではなかった。
【0012】
図11に示す特許文献4(特開2008−105742号公報)「外骨式固定屋根タンクの放爆構造」には、側壁2上部のトップチャンネル11に屋根板3の外周縁が固定され、このトップチャンネル11に固定された受け部材13に対して移動可能に面している外骨4(屋根板3上面に固定)の外方端部に切欠き10を設ける構成が開示されているが、別途受け部材13及び外骨4を必要としコンクリート側壁の上部を被覆する屋根に対応したものではなかった。
【0013】
このように従来の技術は、いずれも鋼板製の側板を有する屋根に設ける放爆構造であって、地震や津波、洪水などに対応する防液堤一体型のコンクリート側壁を有する石油など危険物の液体を貯蔵する鋼板ライニング常圧コンクリートタンクに放爆構造を備えたものではなかった。
【0014】
この発明は上述のような従来技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、石油など危険物の液体を貯蔵する防液堤一体型のコンクリート側壁と鋼製屋根板を有する鋼板ライニング常圧コンクリートタンク内の圧力が急激に上昇する異常時に、圧力を速やかに逃がして、タンクの爆発や急激な火災およびタンクの崩壊を防止する放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、コンクリート底版と該底版外周に立設した筒体状の防液堤兼用のコンクリート側壁とを一体化形成し、底版内面および側壁内面に液密構造の鋼板ライニング材を設けるとともに、側壁の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板を設けてなる鋼板ライニング常圧コンクリートタンクであって、側壁上端縁と屋根板外周縁の接合部近傍にタンク内圧力を開放する放爆構造を設けて形成したことを特徴とする。
【0016】
請求項2の発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、上記放爆構造を、上記屋根板の外周縁を側壁上端縁に円環状に配設したリングプレートに溶接して接続し、このリングプレート下部に設けたアンカーピンが側壁上端縁から抜けてタンク内圧力を開放する構造に形成したことを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、上記放爆構造を、上記側壁の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板の外周縁近傍を略水平となるように上方に向けて折り曲げてその周縁を側壁上端縁のリングプレート上面へ溶接し、この溶接部が破断してタンク内圧力を開放する構造に形成したことを特徴とする。
【0018】
請求項4の発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、上記放爆構造を、上記側壁の上端縁に固着したリングプレートの上面に調整プレートを設置し、この調整プレート上面の外周縁近傍に屋根板の外周縁を溶接し、かつ調整プレートの内周縁をリングプレートの上面に溶接脚長を短くして固着し、さらに調整プレートの外周縁はリングプレートの上面にシール施工し、この調整プレートの外側シール部が浮き上がり内側の溶接部が破断してタンク内圧力を開放する構造に形成したことを特徴とする。
【0019】
請求項5の発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、上記放爆構造を、上記屋根板の外周部近傍に扉状の取付板を設け、この取付板が開閉してタンク内圧力を開放する構造に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、コンクリート底版と該底版外周に立設した筒体状の防液堤兼用のコンクリート側壁とを一体化形成し、底版内面および側壁内面に液密構造の鋼板ライニング材を設けるとともに、側壁の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板を設けてなる鋼板ライニング常圧コンクリートタンクであって、側壁上端縁と屋根板外周縁の接合部近傍にタンク内圧力を開放する放爆構造を設けて形成したので、
コンクリート構造の底版と側壁の上部を覆う鋼製屋根を有するタンク内の圧力が急激に上昇する異常時に、側壁上端縁と屋根板外周縁の接合部近傍を開放してタンク内圧力を速やかに逃がすことによって、タンクの爆発や急激な火災、タンクの崩壊を防止することができる。
【0021】
請求項2の発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、上記屋根板の外周縁を側壁上端縁に円環状に配設したリングプレートに溶接して接続し、このリングプレート下部に設けたアンカーピンが側壁上端縁から抜けてタンク内圧力を開放する構造に形成したので、
確実、迅速に側壁上端縁と屋根板外周縁の接合部近傍を開放して蓋を開けるようにタンク内圧力を逃がすことができる。
【0022】
請求項3の発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、上記側壁の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板の外周縁近傍を略水平となるように上方に向けて折り曲げてその周縁を側壁上端縁のリングプレート上面へ溶接し、この溶接部が破断してタンク内圧力を開放する構造に形成したので、
鋼製屋根板の外周縁近傍の折り曲げ部が膨らんで溶接部を破断して内圧に対応することができる。
【0023】
請求項4の発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、上記側壁の上端縁に固着したリングプレートの上面に調整プレートを設置し、この調整プレート上面の外周縁近傍に屋根板の外周縁を溶接し、かつ調整プレートの内周縁をリングプレートの上面に溶接脚長を短くして固着し、さらに調整プレートの外周縁はリングプレートの上面にシール施工し、この調整プレートの外側シール部が浮き上がり内側の溶接部が破断してタンク内圧力を開放する構造に形成したので、
調整プレートの浮き上がりで膨張を吸収し段階的に緩衝し溶接部を破断して内圧に対応することができる。
【0024】
請求項5の発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、上記屋根板の外周部近傍に扉状の取付板を設け、この取付板が開閉してタンク内圧力を開放する構造に形成したので、
タンク稼動時や修理点検時に、上記扉状の取付板の開閉と調整を行うことにより、放爆機能の確認を行うことができる。この扉状の取付板よりなる放爆構造は、上昇する圧力に対応して作動する圧力調整弁や破裂板などの機器が対応できない異常昇圧時に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクの全体側面説明図である。
【図2】第1の事例の放爆構造を示す一部を欠除した側面説明図である。
【図3】図2の一部平面説明図である。
【図4】第2の事例の放爆構造を示す一部を欠除した側面説明図である。
【図5】第3の事例の放爆構造を示す一部を欠除した側面説明図である。
【図6】第4の事例の放爆構造を示す一部を欠除した側面説明図である。
【図7】比較例の放爆構造を示す説明図である。
【図8】従来例1の放爆構造を示す説明図である。
【図9】従来例2の放爆構造を示す説明図である。
【図10】従来例3の放爆構造を示す説明図である。
【図11】従来例4の放爆構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る石油など危険物の液体を貯蔵する放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクの実施形態例について図1から図7を参照しながら説明する。本発明は下記の実施形態にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記の実施形態に変更(例えば構成要素の省略または付加、構成要素の形状の変更等)を加えることが出来るのはもちろんである。なお、図は概略を示すもので、一部のみを描き詳細構造は省略し、また符号の説明も一部記載を省略した。
【0027】
図1は、本発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクの全体側面説明図を示す。
この鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、地震や津波、洪水などタンク防液堤の外部からの災害に対して、タンク側板の座屈変形の防止、タンクが浮いたり流されたりすることがないように防液堤一体型構造とした石油など危険物の液体を貯蔵するタンクである。
複数の杭2を地中へ打込み、この杭2上に平版状基礎の底版3打設し、この底版3外周に筒体状の防液堤兼用側壁4を立設してコンクリート構造に一体化形成する。底版3内面に底部ライニング材6を張設し、側壁4内面に側部ライニング材7を設けて液密構造とする。この側壁4の上端縁に、上部を気密に被覆する鋼製の屋根板5を接続して設ける。
付属配管9は屋根板5からとり、石油類の貯蔵液8は、タンク内に設置された油払出装置、例えばサブマージドポンプ10で屋根板5より排出する。
さらに、屋根板5より立上がった配管6には、貯蔵液8がサイホン現象によって流出することがないように緊急遮断弁11を設置する。或いはサイホン切れをさせるための遠隔操作可能な開放弁を設置する。
【0028】
貯蔵液8は石油などの危険物であるため、鋼製の屋根板5には放爆構造5Aを設けて、タンク内圧が上昇した時に爆発が生じないように、屋根板5の一部が開口する構造とする。
このように、コンクリート製の側壁上端縁と鋼製の屋根板5外周縁の接合部近傍を開放する放爆構造5Aを設けたので、コンクリート構造の底版と側壁の上部を覆う鋼製屋根を有するタンク内の圧力が急激に上昇する異常時に、側壁上端縁と屋根板5外周縁の接合部近傍を開放してタンク内圧力を速やかに逃がすことによって、タンクの爆発や急激な火災、タンクの崩壊を防止することができる。
【0029】
図2は、放爆構造5Aの第1の事例を示す一部を欠除した側面説明図である。
鋼製屋根板5は、コンクリート製側壁4の上端面に設置したリングプレート12を介して接続する。このリングプレート12の下端部にはアンカーピン13を固着し、パッキン材を介してコンクリート製側壁4の上端面に気密構造に設置し、アンカーピン13は太さと長さの関係の表面積で決まるコンクリートとの付着力に対抗して、上方向への所定以上の引抜き力によって抜ける構造に形成する。
コンクリート製側壁4内面の鋼製のライニング材7上端縁は、シール取付部材7bを介してシール材7aによって側壁4内面上端肩コーナー部からリングプレート12の近傍まで接続する。
【0030】
上記のようにリングプレート12とアンカーピン13を設けた放爆構造とすることによって、タンク内の圧力Pが異常に上昇した時に、図の一点鎖線で示すように、リングプレート12とアンカーピン13が上方に移動して上部を開放し、タンク内圧力を速やかに逃がす。よって、タンクの爆発や急激な火災を防ぎ、タンクの崩壊を防止することができる。
【0031】
図3は、図2の一部平面説明図である。
リングプレート12とアンカーピン13を設けた放爆構造5Aは、タンク内圧が異常に高くなった際に、屋根板5の略扇形状となる一部分、所定範囲の両側端縁の溶接部が破断して持ち上がるように形成した場合を示す。
【0032】
図4は、放爆構造5Aの第2の事例を示す一部を欠除した側面説明図である。
アンカー部材15は抜けないように側壁4に埋設し、このアンカー部材15の上部にリングプレート12を浮き上がらないように固着し、屋根板5の外周縁5bを略水平となるように上方へ向けて折り曲げてその周縁を側壁上端縁のリングプレート12の上面へ隅肉溶接部14で溶接脚長を短く形成して固着する。タンク内の異常圧力Pによって屋根板5の外周縁5bが膨らんで、図の破線で示すように隅肉溶接14で破断し、屋根板5の外周部が開放されるように形成する。
【0033】
図5は、放爆構造5Aの第3の事例を示す一部を欠除した側面説明図である。
アンカー部材15を埋設して側壁上端縁に固着したリングプレート12の上面に調整プレート16を設置し、この調整プレート16上面の外周縁近傍に屋根板5の外周縁5cを隅肉溶接14aで溶接し、かつリングプレート12の上面に調整プレート16の内周縁を隅肉溶接14bで溶接脚長を短く形成して固着する。さらに調整プレート16の外周縁には、リングプレート12の上面に雨水浸入防止用の弾力性を有するシール材を施工する。
タンク内の異常圧力Pによって図の破線で示すように屋根板5が膨らんで調整プレート16の外側シール部が浮き上がり、次いで、図の破線で示すように隅肉溶接部14bで破断し、屋根板5の外周部が開放されるように形成する。
【0034】
図6は、放爆構造5Aの第4の事例を示す一部を欠除した側面説明図である。
防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクの側壁4の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板5を設け、この屋根板5の外周部近傍に取付板5aを扉状のヒンジ構造5dに取り付ける。タンク内の圧力が大幅かつ急激に上昇する異常時には、この扉状の取付板5aが開いて圧力を逃がしタンクの爆発崩壊による災害を防止する。
この扉状の取付板5aよりなる放爆構造5Aは、上昇する圧力に対応して作動する圧力調整弁や安全弁などの一般的な機器が対応できない異常昇圧時に作動するように形成する。
【0035】
図7は、一般的な放爆構造5Aの比較例を示す一部を欠除した側面説明図である。
コンクリート製の側壁4にプレート17を埋設した鋼製で筒体状の胴板18を有し、その上端フランジの上面に鋼製の屋根板5の外周縁を隅肉溶接19で気密固着したタンクの場合を示す。このタンクの放爆構造5Aは、タンク内の圧力が急激に上昇する異常時に、上記隅肉溶接19が破断して屋根板5の外周部が開放されるように形成している。
【産業上の利用可能性】
【0036】
上記放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、地震時の耐震性能の向上、殊に外部からの津波対策などが望まれる石油など危険物の液体を貯蔵する種々の常圧タンクに適用し火災や爆発がない安全性の高いタンクとなる。
【符号の説明】
【0037】
1タンク
2杭
3底版
4側壁
5屋根板
5A放爆構造
6底部ライニング材
7側部ライニング材
8貯蔵液
9配管
10ポンプ
11緊急遮断弁
12リングプレート
13アンカーピン
14隅肉溶接部
15アンカー部材
16調整プレート
17プレート
18胴板
19隅肉溶接
【技術分野】
【0001】
この発明は、タンク内の異常上昇圧力を開放する放爆構造を備えた石油など危険物の液体を貯蔵する鋼板ライニング常圧コンクリートタンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油など危険物の液体を貯蔵する鋼製の屋外貯蔵タンクは、消防法により危険物の爆発等によりタンク内の圧力が異常に上昇した場合に内部のガス又は蒸気を上部に放出することが出来る構造とすることが決められている。一般にはタンク上部のトップアングルと屋根板との接合部を弱くして、圧力が異常に上昇した場合に、この部分の溶接線が破壊する放爆構造としている。
通常の水タンクや低温タンクに採用されているコンクリート側壁と鋼製屋根からなる複合構造の貯槽は鋼製屋根を放爆構造にする必要はないが、石油など危険物の液体を貯蔵する防液堤一体型の鋼板ライニング常圧コンクリートタンクの場合には、鋼製屋根を放爆構造にする必要がある。
【0003】
タンクの放爆構造に関する出願特許がある。例えば特許文献1(特開平08−217192号公報)「タンクの放爆構造」には、従来例1の図8に示すように、側板1の上部フランジ部3aと屋根板2の外周上面に環状の放爆板4を溶接固定した構成が開示されている。
【0004】
特許文献2(特開平08−324687号公報)「タンクの放爆構造」には、従来例2の図9に示すように、屋根板5の外屋根板5aと内屋根板5bとの間に、筒状部材8を立設し、タンク内部圧力が所定の圧力を超えたときに、筒状部材8と内屋根板5bとの接合部が破断して放爆する構成が開示されている。
【0005】
特許文献3(特開2000−142884号公報)「ドームルーフタンクの放爆構造」には、従来例3の図10に示すように、側板3のトップアングル4とドームルーフ5bの間に、所定幅で上り勾配の調整板7を隅肉溶接により接合して介在させた構成が開示されている。
【0006】
特許文献4(特開2008−105742号公報)「外骨式固定屋根タンクの放爆構造」には、従来例4の図11に示すように、側壁2上部のトップチャンネル11に屋根板3の外周縁が固定され、このトップチャンネル11に固定された受け部材13に対して移動可能に面している外骨4(屋根板3上面に固定)の外方端部に切欠き10を設ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08−217192号公報
【特許文献2】特開平08−324687号公報
【特許文献3】特開2000−142884号公報
【特許文献4】特開2008−105742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
石油など危険物の液体を貯蔵する鋼製の屋外貯蔵タンクの場合は、タンク上部のトップアングルと屋根板との接合部を弱くして、圧力が異常に上昇した場合にこの溶接線が破壊内部のガス又は蒸気を上部に放出することにより、タンク全体の爆発崩壊による災害を防止するものである。
また、通常の水タンクや低温タンクに採用されているコンクリート側壁と鋼製屋根からなる複合構造の貯槽は、鋼製屋根を放爆構造にする必要はないが、石油など危険物の液体を貯蔵するために防液堤一体型のコンクリート側壁と鋼製屋根を有する常圧コンクリートタンクとする場合には、タンク内の圧力が異常に上昇した場合にガス又は蒸気を上部に放出することにより、タンク全体の爆発崩壊による災害を防止するために、鋼製屋根を放爆構造にする必要がある。
【0009】
図8に示す特許文献1(特開平08−217192号公報)「タンクの放爆構造」は、側板1の上部フランジ部3aと屋根板2の外周上面に環状の放爆板4を溶接固定した構成が開示されているが、別途放爆板4を必要としコンクリート側壁の上部を被覆する屋根に設けたものではない。
【0010】
図9に示す特許文献2(特開平08−324687号公報)「タンクの放爆構造」には、屋根板5の外屋根板5aと内屋根板5bとの間に、筒状部材8を立設し、タンク内部圧力が所定の圧力を超えたときに、筒状部材8と内屋根板5bとの接合部が破断して放爆する構成が開示されているが、別途筒状部材8を設置する必要がありコンクリート側壁の上部を被覆する屋根に対応したものではなかった。
【0011】
図10に示す特許文献3(特開2000−142884号公報)「ドームルーフタンクの放爆構造」には、側板3のトップアングル4とドームルーフ5bの間に、所定幅で上り勾配の調整板7を隅肉溶接により接合して介在させた構成が開示されているが、別途調整板7を必要としコンクリート側壁の上部を被覆する屋根に対応したものではなかった。
【0012】
図11に示す特許文献4(特開2008−105742号公報)「外骨式固定屋根タンクの放爆構造」には、側壁2上部のトップチャンネル11に屋根板3の外周縁が固定され、このトップチャンネル11に固定された受け部材13に対して移動可能に面している外骨4(屋根板3上面に固定)の外方端部に切欠き10を設ける構成が開示されているが、別途受け部材13及び外骨4を必要としコンクリート側壁の上部を被覆する屋根に対応したものではなかった。
【0013】
このように従来の技術は、いずれも鋼板製の側板を有する屋根に設ける放爆構造であって、地震や津波、洪水などに対応する防液堤一体型のコンクリート側壁を有する石油など危険物の液体を貯蔵する鋼板ライニング常圧コンクリートタンクに放爆構造を備えたものではなかった。
【0014】
この発明は上述のような従来技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、石油など危険物の液体を貯蔵する防液堤一体型のコンクリート側壁と鋼製屋根板を有する鋼板ライニング常圧コンクリートタンク内の圧力が急激に上昇する異常時に、圧力を速やかに逃がして、タンクの爆発や急激な火災およびタンクの崩壊を防止する放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、コンクリート底版と該底版外周に立設した筒体状の防液堤兼用のコンクリート側壁とを一体化形成し、底版内面および側壁内面に液密構造の鋼板ライニング材を設けるとともに、側壁の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板を設けてなる鋼板ライニング常圧コンクリートタンクであって、側壁上端縁と屋根板外周縁の接合部近傍にタンク内圧力を開放する放爆構造を設けて形成したことを特徴とする。
【0016】
請求項2の発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、上記放爆構造を、上記屋根板の外周縁を側壁上端縁に円環状に配設したリングプレートに溶接して接続し、このリングプレート下部に設けたアンカーピンが側壁上端縁から抜けてタンク内圧力を開放する構造に形成したことを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、上記放爆構造を、上記側壁の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板の外周縁近傍を略水平となるように上方に向けて折り曲げてその周縁を側壁上端縁のリングプレート上面へ溶接し、この溶接部が破断してタンク内圧力を開放する構造に形成したことを特徴とする。
【0018】
請求項4の発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、上記放爆構造を、上記側壁の上端縁に固着したリングプレートの上面に調整プレートを設置し、この調整プレート上面の外周縁近傍に屋根板の外周縁を溶接し、かつ調整プレートの内周縁をリングプレートの上面に溶接脚長を短くして固着し、さらに調整プレートの外周縁はリングプレートの上面にシール施工し、この調整プレートの外側シール部が浮き上がり内側の溶接部が破断してタンク内圧力を開放する構造に形成したことを特徴とする。
【0019】
請求項5の発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、上記放爆構造を、上記屋根板の外周部近傍に扉状の取付板を設け、この取付板が開閉してタンク内圧力を開放する構造に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、コンクリート底版と該底版外周に立設した筒体状の防液堤兼用のコンクリート側壁とを一体化形成し、底版内面および側壁内面に液密構造の鋼板ライニング材を設けるとともに、側壁の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板を設けてなる鋼板ライニング常圧コンクリートタンクであって、側壁上端縁と屋根板外周縁の接合部近傍にタンク内圧力を開放する放爆構造を設けて形成したので、
コンクリート構造の底版と側壁の上部を覆う鋼製屋根を有するタンク内の圧力が急激に上昇する異常時に、側壁上端縁と屋根板外周縁の接合部近傍を開放してタンク内圧力を速やかに逃がすことによって、タンクの爆発や急激な火災、タンクの崩壊を防止することができる。
【0021】
請求項2の発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、上記屋根板の外周縁を側壁上端縁に円環状に配設したリングプレートに溶接して接続し、このリングプレート下部に設けたアンカーピンが側壁上端縁から抜けてタンク内圧力を開放する構造に形成したので、
確実、迅速に側壁上端縁と屋根板外周縁の接合部近傍を開放して蓋を開けるようにタンク内圧力を逃がすことができる。
【0022】
請求項3の発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、上記側壁の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板の外周縁近傍を略水平となるように上方に向けて折り曲げてその周縁を側壁上端縁のリングプレート上面へ溶接し、この溶接部が破断してタンク内圧力を開放する構造に形成したので、
鋼製屋根板の外周縁近傍の折り曲げ部が膨らんで溶接部を破断して内圧に対応することができる。
【0023】
請求項4の発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、上記側壁の上端縁に固着したリングプレートの上面に調整プレートを設置し、この調整プレート上面の外周縁近傍に屋根板の外周縁を溶接し、かつ調整プレートの内周縁をリングプレートの上面に溶接脚長を短くして固着し、さらに調整プレートの外周縁はリングプレートの上面にシール施工し、この調整プレートの外側シール部が浮き上がり内側の溶接部が破断してタンク内圧力を開放する構造に形成したので、
調整プレートの浮き上がりで膨張を吸収し段階的に緩衝し溶接部を破断して内圧に対応することができる。
【0024】
請求項5の発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、上記屋根板の外周部近傍に扉状の取付板を設け、この取付板が開閉してタンク内圧力を開放する構造に形成したので、
タンク稼動時や修理点検時に、上記扉状の取付板の開閉と調整を行うことにより、放爆機能の確認を行うことができる。この扉状の取付板よりなる放爆構造は、上昇する圧力に対応して作動する圧力調整弁や破裂板などの機器が対応できない異常昇圧時に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクの全体側面説明図である。
【図2】第1の事例の放爆構造を示す一部を欠除した側面説明図である。
【図3】図2の一部平面説明図である。
【図4】第2の事例の放爆構造を示す一部を欠除した側面説明図である。
【図5】第3の事例の放爆構造を示す一部を欠除した側面説明図である。
【図6】第4の事例の放爆構造を示す一部を欠除した側面説明図である。
【図7】比較例の放爆構造を示す説明図である。
【図8】従来例1の放爆構造を示す説明図である。
【図9】従来例2の放爆構造を示す説明図である。
【図10】従来例3の放爆構造を示す説明図である。
【図11】従来例4の放爆構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る石油など危険物の液体を貯蔵する放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクの実施形態例について図1から図7を参照しながら説明する。本発明は下記の実施形態にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記の実施形態に変更(例えば構成要素の省略または付加、構成要素の形状の変更等)を加えることが出来るのはもちろんである。なお、図は概略を示すもので、一部のみを描き詳細構造は省略し、また符号の説明も一部記載を省略した。
【0027】
図1は、本発明に係る放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクの全体側面説明図を示す。
この鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、地震や津波、洪水などタンク防液堤の外部からの災害に対して、タンク側板の座屈変形の防止、タンクが浮いたり流されたりすることがないように防液堤一体型構造とした石油など危険物の液体を貯蔵するタンクである。
複数の杭2を地中へ打込み、この杭2上に平版状基礎の底版3打設し、この底版3外周に筒体状の防液堤兼用側壁4を立設してコンクリート構造に一体化形成する。底版3内面に底部ライニング材6を張設し、側壁4内面に側部ライニング材7を設けて液密構造とする。この側壁4の上端縁に、上部を気密に被覆する鋼製の屋根板5を接続して設ける。
付属配管9は屋根板5からとり、石油類の貯蔵液8は、タンク内に設置された油払出装置、例えばサブマージドポンプ10で屋根板5より排出する。
さらに、屋根板5より立上がった配管6には、貯蔵液8がサイホン現象によって流出することがないように緊急遮断弁11を設置する。或いはサイホン切れをさせるための遠隔操作可能な開放弁を設置する。
【0028】
貯蔵液8は石油などの危険物であるため、鋼製の屋根板5には放爆構造5Aを設けて、タンク内圧が上昇した時に爆発が生じないように、屋根板5の一部が開口する構造とする。
このように、コンクリート製の側壁上端縁と鋼製の屋根板5外周縁の接合部近傍を開放する放爆構造5Aを設けたので、コンクリート構造の底版と側壁の上部を覆う鋼製屋根を有するタンク内の圧力が急激に上昇する異常時に、側壁上端縁と屋根板5外周縁の接合部近傍を開放してタンク内圧力を速やかに逃がすことによって、タンクの爆発や急激な火災、タンクの崩壊を防止することができる。
【0029】
図2は、放爆構造5Aの第1の事例を示す一部を欠除した側面説明図である。
鋼製屋根板5は、コンクリート製側壁4の上端面に設置したリングプレート12を介して接続する。このリングプレート12の下端部にはアンカーピン13を固着し、パッキン材を介してコンクリート製側壁4の上端面に気密構造に設置し、アンカーピン13は太さと長さの関係の表面積で決まるコンクリートとの付着力に対抗して、上方向への所定以上の引抜き力によって抜ける構造に形成する。
コンクリート製側壁4内面の鋼製のライニング材7上端縁は、シール取付部材7bを介してシール材7aによって側壁4内面上端肩コーナー部からリングプレート12の近傍まで接続する。
【0030】
上記のようにリングプレート12とアンカーピン13を設けた放爆構造とすることによって、タンク内の圧力Pが異常に上昇した時に、図の一点鎖線で示すように、リングプレート12とアンカーピン13が上方に移動して上部を開放し、タンク内圧力を速やかに逃がす。よって、タンクの爆発や急激な火災を防ぎ、タンクの崩壊を防止することができる。
【0031】
図3は、図2の一部平面説明図である。
リングプレート12とアンカーピン13を設けた放爆構造5Aは、タンク内圧が異常に高くなった際に、屋根板5の略扇形状となる一部分、所定範囲の両側端縁の溶接部が破断して持ち上がるように形成した場合を示す。
【0032】
図4は、放爆構造5Aの第2の事例を示す一部を欠除した側面説明図である。
アンカー部材15は抜けないように側壁4に埋設し、このアンカー部材15の上部にリングプレート12を浮き上がらないように固着し、屋根板5の外周縁5bを略水平となるように上方へ向けて折り曲げてその周縁を側壁上端縁のリングプレート12の上面へ隅肉溶接部14で溶接脚長を短く形成して固着する。タンク内の異常圧力Pによって屋根板5の外周縁5bが膨らんで、図の破線で示すように隅肉溶接14で破断し、屋根板5の外周部が開放されるように形成する。
【0033】
図5は、放爆構造5Aの第3の事例を示す一部を欠除した側面説明図である。
アンカー部材15を埋設して側壁上端縁に固着したリングプレート12の上面に調整プレート16を設置し、この調整プレート16上面の外周縁近傍に屋根板5の外周縁5cを隅肉溶接14aで溶接し、かつリングプレート12の上面に調整プレート16の内周縁を隅肉溶接14bで溶接脚長を短く形成して固着する。さらに調整プレート16の外周縁には、リングプレート12の上面に雨水浸入防止用の弾力性を有するシール材を施工する。
タンク内の異常圧力Pによって図の破線で示すように屋根板5が膨らんで調整プレート16の外側シール部が浮き上がり、次いで、図の破線で示すように隅肉溶接部14bで破断し、屋根板5の外周部が開放されるように形成する。
【0034】
図6は、放爆構造5Aの第4の事例を示す一部を欠除した側面説明図である。
防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクの側壁4の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板5を設け、この屋根板5の外周部近傍に取付板5aを扉状のヒンジ構造5dに取り付ける。タンク内の圧力が大幅かつ急激に上昇する異常時には、この扉状の取付板5aが開いて圧力を逃がしタンクの爆発崩壊による災害を防止する。
この扉状の取付板5aよりなる放爆構造5Aは、上昇する圧力に対応して作動する圧力調整弁や安全弁などの一般的な機器が対応できない異常昇圧時に作動するように形成する。
【0035】
図7は、一般的な放爆構造5Aの比較例を示す一部を欠除した側面説明図である。
コンクリート製の側壁4にプレート17を埋設した鋼製で筒体状の胴板18を有し、その上端フランジの上面に鋼製の屋根板5の外周縁を隅肉溶接19で気密固着したタンクの場合を示す。このタンクの放爆構造5Aは、タンク内の圧力が急激に上昇する異常時に、上記隅肉溶接19が破断して屋根板5の外周部が開放されるように形成している。
【産業上の利用可能性】
【0036】
上記放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、地震時の耐震性能の向上、殊に外部からの津波対策などが望まれる石油など危険物の液体を貯蔵する種々の常圧タンクに適用し火災や爆発がない安全性の高いタンクとなる。
【符号の説明】
【0037】
1タンク
2杭
3底版
4側壁
5屋根板
5A放爆構造
6底部ライニング材
7側部ライニング材
8貯蔵液
9配管
10ポンプ
11緊急遮断弁
12リングプレート
13アンカーピン
14隅肉溶接部
15アンカー部材
16調整プレート
17プレート
18胴板
19隅肉溶接
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート底版と該底版外周に立設した筒体状の防液堤兼用のコンクリート側壁とを一体化形成し、底版内面および側壁内面に液密構造の鋼板ライニング材を設けるとともに、側壁の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板を設けてなる鋼板ライニング常圧コンクリートタンクであって、側壁上端縁と屋根板外周縁の接合部近傍にタンク内圧力を開放する放爆構造を設けて形成したことを特徴とする放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンク。
【請求項2】
上記放爆構造は、上記屋根板の外周縁を側壁上端縁に円環状に配設したリングプレートに溶接して接続し、このリングプレート下部に設けたアンカーピンが側壁上端縁から抜けてタンク内圧力を開放する構造に形成したことを特徴とする請求項1記載の放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンク。
【請求項3】
上記放爆構造は、上記側壁の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板の外周縁近傍を略水平となるように上方に向けて折り曲げてその周縁を側壁上端縁のリングプレート上面へ溶接し、この溶接部が破断してタンク内圧力を開放する構造に形成したことを特徴とする請求項1記載の放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンク。
【請求項4】
上記放爆構造は、上記側壁の上端縁に固着したリングプレートの上面に調整プレートを設置し、この調整プレート上面の外周縁近傍に屋根板の外周縁を溶接し、かつ調整プレートの内周縁をリングプレートの上面に溶接脚長を短くして固着し、さらに調整プレートの外周縁はリングプレートの上面にシール施工し、この調整プレートの外側シール部が浮き上がり内側の溶接部が破断してタンク内圧力を開放する構造に形成したことを特徴とする請求項1記載の放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンク。
【請求項5】
上記放爆構造は、上記屋根板の外周部近傍に扉状の取付板を設け、この取付板が開閉してタンク内圧力を開放する構造に形成したことを特徴とする請求項1記載の放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンク。
【請求項1】
コンクリート底版と該底版外周に立設した筒体状の防液堤兼用のコンクリート側壁とを一体化形成し、底版内面および側壁内面に液密構造の鋼板ライニング材を設けるとともに、側壁の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板を設けてなる鋼板ライニング常圧コンクリートタンクであって、側壁上端縁と屋根板外周縁の接合部近傍にタンク内圧力を開放する放爆構造を設けて形成したことを特徴とする放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンク。
【請求項2】
上記放爆構造は、上記屋根板の外周縁を側壁上端縁に円環状に配設したリングプレートに溶接して接続し、このリングプレート下部に設けたアンカーピンが側壁上端縁から抜けてタンク内圧力を開放する構造に形成したことを特徴とする請求項1記載の放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンク。
【請求項3】
上記放爆構造は、上記側壁の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板の外周縁近傍を略水平となるように上方に向けて折り曲げてその周縁を側壁上端縁のリングプレート上面へ溶接し、この溶接部が破断してタンク内圧力を開放する構造に形成したことを特徴とする請求項1記載の放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンク。
【請求項4】
上記放爆構造は、上記側壁の上端縁に固着したリングプレートの上面に調整プレートを設置し、この調整プレート上面の外周縁近傍に屋根板の外周縁を溶接し、かつ調整プレートの内周縁をリングプレートの上面に溶接脚長を短くして固着し、さらに調整プレートの外周縁はリングプレートの上面にシール施工し、この調整プレートの外側シール部が浮き上がり内側の溶接部が破断してタンク内圧力を開放する構造に形成したことを特徴とする請求項1記載の放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンク。
【請求項5】
上記放爆構造は、上記屋根板の外周部近傍に扉状の取付板を設け、この取付板が開閉してタンク内圧力を開放する構造に形成したことを特徴とする請求項1記載の放爆構造を備えた鋼板ライニング常圧コンクリートタンク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−95452(P2013−95452A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238286(P2011−238286)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000147729)株式会社石井鐵工所 (67)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000147729)株式会社石井鐵工所 (67)
【Fターム(参考)】
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