説明

放線菌由来の殺虫性発酵ブロス

殺虫性組成物の調製方法および組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年11月6日出願の米国特許出願第61/258,716号および2009年11月9日出願の米国特許出願第61/259,549号(それぞれの内容は参照により本明細書に組み入れられるものとする)に基づく特典を請求する。
【0002】
連邦政府委託研究または開発のもとでなされた発明の権利に関する陳述
該当なし
【0003】
コンパクトディスクで提出された「配列リスト」、表、またはコンピュータープログラムリストの添付物の参照
該当なし
【背景技術】
【0004】
昆虫は、米国だけでも220億ドル超の作物被害を引き起こす。広く使用されている殺虫剤の多くは、古くからある神経毒性化合物であり、新しくより安全な化学物質について大きな必要性が存在する。株NRRL No.30232は、とくに鱗翅目(Lepidoptera)(芋虫・毛虫)に対して殺虫活性を呈するデュナイマイシンと呼ばれる一群の近縁マクロライドを産生する米国特許第6,682,925号に記載のストレプトマイセス・ガルバス(Streptomyces galbus)の所有権付き株である。デュナイマイシンは、Abbott Laboratoriesの研究グループにより1990代初頭に最初に報告された放線菌により産生される24員のマクロライドである。Abbottの研究者らは、種々のデュナイマイシン種A1、C1、C2、D2、D2S、D3、およびD4Sの構造を解明し、それらの抗微生物活性および免疫抑制活性を研究し、産生生物であるストレプトマイセス・ジアスタトクロモゲネス(Streptomyces diastatochromogenes)の2種の株の分類を記載した。Karwowski, J.P., et al. Journal of Antibiotics Dec. 1991, p. 1312-1317、Hochlowski, J.E.. Journal of Antibiotics, Dec. 1991 , pp. 1318-1330、およびBurres, N.S., et al, Journal of Antibiotics, Dec. 1991, pp. 1331-1341。いくつかの後続の出版物には、特定のデュナイマイシンの殺虫活性または殺ダニ活性が記載された。
【0005】
文献には特定のデュナイマイシンの精製ならびにそれらの構造および活性の解明が記載されているが、種々のデュナイマイシン種間の相互作用および種々のデュナイマイシンの殺虫活性の比較に関する開示が欠如している。それに加えて、商業的に利用可能な殺虫性産物を形成するには1リットルあたりグラム範囲のデュナイマイシンを含有する発酵ブロスの産生が必要であるが、デュナイマイシン関連の出版物には、1リットルあたりミリグラムレベルのデュナイマイシンの産生が記載されている。背景文献には、デュナイマイシン産生を増大させる方法は開示されておらず、対応するスケールアップの問題が認識されていない。
【0006】
本出願人は、抗生物質耐性突然変異体のライブラリーのスクリーニングを介してストレプトマイセス・ガルバス(Streptomyces galbus)NRRL No.30232のデュナイマイシン産生を増大させるための実験を行い、かつ発酵条件を最適化して、発酵ブロス(濃縮前)1リットルあたり少なくとも2.5グラムのデュナイマイシンというこれまで報告されていないレベルまでデュナイマイシン産生を増大させた。しかしながら、驚くべきことに、本出願人は、デュナイマイシン産生の増大が必ずしも殺虫活性の増大に比例しないことを見いだした。本出願人は、種々のデュナイマイシン種間の相互作用をより詳細に分析し、特定のデュナイマイシン種は殺虫活性であるが、他のものは不活性であるかまたは殺虫活性に対して拮抗することを見出した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、殺虫活性デュナイマイシンと殺虫不活性デュナイマイシンとの最適比を有する放線菌の培養物を含む組成物に関する。一実施形態では、そのような培養物は、1リットルあたりグラムレベルのデュナイマイシンを含有する。
【0008】
本発明はまた、発酵ブロス1リットルあたり少なくとも全量約1グラムのデュナイマイシンが産生されるまで最適化培養培地中で活性デュナイマイシンおよび不活性デュナイマイシンの両方を産生可能な放線菌を培養することによる、殺虫活性デュナイマイシンに富んだ発酵ブロスの産生方法に関する。一実施形態では、最適化培養培地は、重量基準で少なくとも10:1のC:N比で炭素源および窒素源を含有する。C:Nの重量比は、発酵培地の全混合物中のCおよびNの質量に基づいて公知の方法により計算可能である。したがって、C部分およびN部分のそれぞれに異なる量で複数の成分を添加することが可能であるが、混合物中の全体比は指定の比を有するものとする。
【0009】
本発明はまた、殺虫活性デュナイマイシンに富んだ純粋または半純粋な発酵産物を得るための上記の方法および標準的な精製技術を用いたデュナイマイシン含有発酵産物の産生方法を包含する。
【0010】
本発明の他の態様は、デュナイマイシン過剰産生放線菌のライブラリーにより産生された活性および不活性なデュナイマイシンの量を測定することによる殺虫活性に関する放線菌のスクリーニング方法である。この方法の一実施形態では、スクリーニング工程よりも先行して親デュナイマイシン産生株から突然変異型デュナイマイシン過剰産生放線菌のライブラリーを作製する工程が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】A1、C1、C2、C2S、D2、D2S、D3、D3S、およびD4Sとして同定されるものを含む本明細書に記載のデュナイマイシンの一般構造を提供する。
【図2】本明細書に記載のデュナイマイシンの番号付けスキームを提供する。
【図3】リファンプシン耐性突然変異型と野生型との第1段階スクリーニングアッセイの生物活性の結果を提供する。
【図4】LD50データを用いた、リファンプシン耐性突然変異型と野生型との第3段階スクリーニングアッセイの生物活性の結果を提供する。
【図5】リファンピシン耐性突然変異型の第3段階スクリーニングのAI比のHPLC測定の結果を提供する。
【図6】本明細書で参照されるデュナイマイシンの特定構造を提供する。
【図7】野生型を用いたAQ6047の典型的なバッチプロセスのマクロライド産生を示すグラフを提供する。
【図8】野生型を用いたAQ6047の典型的なフェドバッチプロセスのマクロライド産生を示すグラフを提供する。
【図9】突然変異型を用いたAQ6047の典型的なフェドバッチプロセスのマクロライド産生を示すグラフを提供する。
【図10】フェドバッチ発酵でのM1064のデュナイマイシン産生および対応する生物活性を示すグラフを提供する。
【図11】発酵最適化によるデュナイマイシン産生の改良を示すグラフを提供する。
【図12】Javelin(バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringensis)産物)、Spintor(スピノシン系産物)および未処理の対照(UTC)と共にRF1694およびRF1696の発酵ブロスによるシロイチモジヨトウに対する生物活性を示すグラフを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、最適比の殺虫活性デュナイマイシンと殺虫不活性デュナイマイシンとを含む殺虫性放線菌産生発酵ブロスおよび関連発酵固体に関する。「発酵ブロス」という用語は、微生物の発酵後に得られる培養培地を意味し、微生物およびその構成部分、未使用の原料基質、ならびにとくに発酵時に微生物により産生された代謝物を包含する。本明細書で用いられる「発酵固体」という用語は、濃縮および/または乾燥された発酵ブロスを意味する。本明細書で用いられる「粗抽出物」という用語は、エチルアセテート抽出物などの発酵ブロスの有機抽出物を意味する。本明細書で用いられる「半精製」という用語は、発酵ブロスから単離された約50%〜約90%の純度の代謝物を意味する。本明細書で用いられる「精製」という用語は、発酵ブロスから単離された約91%〜約100%の純度の代謝物を意味する。
【0013】
発酵ブロス中の放線菌は、殺虫活性デュナイマイシンおよび殺虫不活性デュナイマイシンの両方を産生し、ストレプトマイセス属(Streptomyces)の株でありうる。いくつかのすでに同定されているストレプトマイセス属(Streptomyces)の株は、複数のデュナイマイシン種を産生する。そのような株としては、米国特許第6,682,925号に記載のストレプトマイセス・ガルバス(Streptomyces galbus)NRRL No.30232ならびにKarwowski, J.P., et al, Journal of Antibiotics Dec. 1991, p. 1312に記載のストレプトマイセス・ジアスタトクロモゲネス(Streptomyces diastatochromogenes)株AB1691Q−321およびAB1711J−452が含まれる。それに加えて、ストレプトマイセス属(Streptomyces)の株は、本明細書に記載のおよび当技術分野で公知の技術を用いて活性および不活性なデュナイマイシンを産生する能力に関して容易にスクリーニング可能である。
【0014】
デュナイマイシン産生放線菌はまた、単離された野生型株などのデュナイマイシン産生親株の突然変異体でありうる。突然変異体は、当技術分野で公知の物理的および化学的な方法により取得可能である。たとえば、突然変異株は、N−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジンなどの化学物質による処理により取得可能である。自然突然変異体は、たとえば、親が影響を受けやすい特定の抗生物質の存在下で親株を増殖させ、親と比較して改良された生物活性または本出願ではデュナイマイシンの過剰産生に関していずれかの耐性突然変異体を試験するなどの古典的方法により、突然変異原の意図的使用を伴うことなく取得可能である。突然変異体はまた、Keiser, T., et al. Practical Streptomyces Genetics, 2000, pp. 57-58に記載の技術を用いて、デュナイマイシンを産生する株のプロトプラスト融合体を産生することにより取得可能である。親株よりも多くのデュナイマイシンを産生する突然変異体は、本明細書では「デュナイマイシン過剰産生株」として参照される。いくつかの実施形態では、そのようなデュナイマイシン過剰産生株は、親株の約2〜約20倍のデュナイマイシンを産生する。
【0015】
一実施形態では、そのような突然変異体は、ストレプトマイセス・ガルバス(Streptomyces galbus)M1064である。この突然変異体は、実施例1に詳述されるように、ストレプトマイセス・ガルバス(Streptomyces galbus)NRRL No.30232の抗生物質耐性デュナイマイシン過剰産生突然変異体をスクリーニングすることにより得られた。M1064は、Budapest Treaty on the International Recognition of the Deposit of Microorganisms for the Purpose of Patent Procedure and the Regulations thereunder(ブダペスト条約)に従って1815 N. University Street Peoria, Ill. 61604 U.S.A. (NRRL)にあるUSDA's Agricultural Research Service Patent Culture Collectionに2009年11月5日に寄託され、受託番号NRRL50334が付与された。この株は、本出願の係属中に培養物の利用が可能であることを保証する条件下で寄託されている。しかしながら、寄託物の利用可能性は、行政措置により付与される特許権の減損で本発明の実施許諾を構成するとはみなされないものとする。
【0016】
デュナイマイシンの一般構造および種々のデュナイマイシン種は、図1に示される。本明細書で用いられる「活性デュナイマイシン」という用語は、殺虫活性なデュナイマイシン種を意味する。一実施形態では、精製活性デュナイマイシン種は、約1000ppm未満の濃度で、他の実施形態では約500ppm未満の濃度で、さらに他の実施形態では約200ppm未満の濃度で、少なくともいくつかの昆虫に対して殺虫活性である。活性デュナイマイシンとしては、D3S、C2S、D2、D2S、D4S、およびC2が含まれる。本明細書で用いられる「不活性デュナイマイシン」という用語は、殺虫不活性なデュナイマイシン種を意味する。精製不活性デュナイマイシン種は、いくつかまたはすべての昆虫に対して殺虫活性を示さず、約1000ppmまで不活性である。不活性デュナイマイシンとしては、A1およびC1が含まれる。一実施形態では、殺虫活性は、鱗翅類に対する活性により決定される。他の実施形態では、活性および不活性なデュナイマイシンは、シロイチモジヨトウに対して200ppm以下のLD50で殺虫活性を示すそれぞれの能力により区別される。
【0017】
いくつかの実施形態では、活性デュナイマイシンは、D2S、C2S、D2、D2S、およびC2のように、位置C18−C19にビニログ性エノールエーテル部分またはヘミアセタール部分またはアセタール部分を有する。デュナイマイシン中の炭素の番号付けは、図2に示される。そのような実施形態では、不活性デュナイマイシンは、A1およびC1のように、これらの部分が欠如しており、その代わりに位置C19にケトンを有する。いかなる特定の理論によっても拘束しようとするものではないが、本出願人らの考えによれば、ビニログ性エノールエーテル部分またはヘミアセタール部分またはアセタール部分の存在は生物活性に必要とされる一方、図2に示されるR位置のアミノ糖部分の存在または不在は、活性に不可欠ではないが分子の水溶性を増大させる。もう1つの考慮点として、活性デュナイマイシンは、昆虫内で特定のタンパク質標的に作動的に(すなわち、活性化剤として)結合し、一方、不活性デュナイマイシンは、活性種の結合を競合的に阻害するが、それ自体、これらのタンパク質標的に対して弱い影響を呈するにすぎない。
【0018】
一実施形態では、発酵ブロスは、1リットルあたり少なくとも全量約0.5gのデュナイマイシンを含む。他の実施形態では、それは、1リットルあたり少なくとも全量約1グラムのデュナイマイシンを含む。さらに他の実施形態では、それは、ブロス1リットルあたり少なくとも全量3グラムのデュナイマイシンを含む。さらに他の実施形態では、それは、ブロス1リットルあたり少なくとも全量7グラムのデュナイマイシンを含む。他の実施形態では、発酵ブロスは、ブロス1リットルあたり全量約1グラム〜約7グラムのデュナイマイシンを含む。
【0019】
一実施形態では、活性デュナイマイシンと不活性デュナイマイシンとの最適比は、少なくとも約1:1である。他の実施形態では、活性デュナイマイシンと不活性デュナイマイシンとの最適比は、少なくとも約2:1である。比は、デュナイマイシンのモル比または重量比のいずれかに基づいて計算可能である。たとえば、デュナイマイシンA1およびC1は、糖成分を有しておらず、一方、デュナイマイシンD2SおよびD3Sは、結合糖を有している。糖含有デュナイマイシンは、糖を含まないものよりも約10重量%重く、活性デュナイマイシンと不活性デュナイマイシンとの全体比にそれほど影響を及ぼさない。
【0020】
本発明に係る組成物は、以上に記載の発酵ブロス(そのまま使用してもよいし乾燥および/または濃縮してもよい)を含む。発酵ブロスまたは発酵固体は、1種以上の担体と共に製剤化可能である。最終使用に必要であれば、発酵ブロスは、製剤化前に熱、化学物質、または照射手段により微生物を不活性化するように処理可能である。担体は、回収率、有効性、もしくは物理的性質を改良するためにかつ/または包装および投与を補助するために発酵ブロスに添加される不活性製剤成分である。そのような担体は、単独または組合せで添加可能である。いくつかの実施形態では、担体は、固化防止剤、酸化防止剤、充填剤(bulking agent)、および/または保護剤である。有用な担体の例としては、多糖類(デンプン、マルトデキストリン、メチルセルロース、ホエータンパク質などのタンパク質、ペプチド、ガム)、糖(ラクトース、トレハロース、スクロース)、脂質(レシチン、植物油、鉱油)、塩(塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、クエン酸ナトリウム)、およびシリケート(クレー、アモルファスシリカ、ヒュームド/沈降シリカ、ケイ酸塩)が含まれる。いくつかの実施形態では、担体は、発酵ブロスの濃縮後ならびに乾燥時および/または乾燥後に添加される。
【0021】
一実施形態では、組成物は、発酵固体が約1重量%〜約90重量%の濃度で存在する水和剤(wettable powder)または水分散性顆粒剤として製剤化された発酵固体を含む。
【0022】
他の実施形態では、組成物は、濃縮された発酵ブロスが水混和性溶媒または水非混和性有機溶媒と乳化剤との混合物のいずれかの不活性担体に溶解された乳化性濃厚剤として製剤化可能である。濃縮された発酵ブロスは、約10%〜約90%の濃度で存在する。
【0023】
他の実施形態では、組成物は、濃縮された発酵ブロスまたは発酵固体が約0.1重量%〜約50重量%の範囲内の濃度で水性媒体中に分散された水性懸濁液として製剤化可能である。
【0024】
特定の方法は、活性デュナイマイシンと不活性デュナイマイシンとの最適比を有する発酵ブロスを調製するのに有用である。本発明の一態様では、以上に記載の発酵ブロスは、活性デュナイマイシンの産生を増強するようにかつ不活性デュナイマイシンの産生を最小限に抑えるように最適化された好適な培養培地中でデュナイマイシン産生放線菌を培養することにより産生される。好適な培養培地は、培養培地中で炭素よりも多くの窒素が利用可能になるように窒素源と炭素源との比を調節することにより取得可能である。一実施形態では、炭素と窒素との比は、約1:1〜約200:1である。他の実施形態では、比は、約10:1〜約30:1である。他の実施形態では、比は、約20:1である。以上の概要で述べたように、指定の比は、供給源中のCおよびNの相対重量に対するものである。一実施形態では、秤取時(発酵開始前)に比が設定されかつ発酵時に調整されないバッチプロセスが行われる。他の実施形態では、C源およびN源の消費をモニターして、プロセス時に発酵培地への添加が行われる。
【0025】
活性デュナイマイシンと不活性デュナイマイシンとの比を最適化するために、特定の炭素源および窒素源の選択を利用することが可能である。好適な炭素源としては、単糖類、二糖類、および多糖類、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、糖蜜、マルトデキストリン、およびデンプン、ならびに大豆油および綿実油などの植物由来の脂肪酸および油が含まれる。好適な窒素源は、微生物、動物、および植物に由来するタンパク質およびアミノ酸またはタンパク質を含有する物質であり得る。一実施形態では、窒素源は、大豆粉、ソイトン、大豆加水分解物、および粗挽き大豆などの大豆由来の産物から得られる。他の実施形態では、窒素源としては、PROFLO(Traders Protein, Lubbock, Texas)およびマートン(martone)(Marcor Development Corporation, Carlstadt, NJ)などの綿実由来の産物、コーンスティープパウダー、麦芽エキス、およびジャガイモ抽出物(potato extract)が含まれる。さらに他の実施形態では、窒素源は、カゼイン由来の産物(脱脂乳、カゼインペプトン、カゼイン加水分解物、カザミノ酸)およびペプトンなどの動物由来のものである。さらに他の実施形態では、窒素源は、酵母エキスまたは酵母菌体などの微生物由来のものである。また、生物の成長および発生に必要な他の必須元素を培養培地に組み込むことも可能であり、当業者には周知であろう。
【0026】
発酵培地中のCおよびNのレベルのモニタリングは、炭素源および/または窒素源をモニターする従来の方法を用いて実施可能である。たとえば、グルコースレベルは、Beckman Glucose Analyzerを用いてモニター可能であり、スクロースは、酵素(インベルターゼ)法を用いてモニター可能であり、一方、より複雑な供給源(たとえば、糖蜜および麦芽エキス)は、発酵培地アリコートの酸加水分解後に比色還元糖法により分析可能である。
【0027】
液内発酵、固形発酵、または液面培養をはじめとする従来の大規模微生物培養方法は、デュナイマイシン産生放線菌を培養するために使用可能である。デュナイマイシンは、約20℃〜32℃の温度で増殖させたときに産生される。一実施形態では、発酵ブロスのpHは、約6〜約8に保持される。
【0028】
一実施形態では、デュナイマイシン産生放線菌は、発酵ブロス1リットルあたり少なくとも約1グラムのデュナイマイシンが産生されるまで、他の実施形態では、1リットルあたり少なくとも約2グラムのデュナイマイシンが産生されるまで、さらに他の実施形態では、発酵ブロス1リットルあたり少なくとも約3グラムのデュナイマイシンが産生されるまで、さらに他の実施形態では、1リットルあたり約1グラム〜約7グラムのデュナイマイシンが産生されるまで、培養される。デュナイマイシンの産生は、ブロスの抽出物を試験することにより発酵時に追跡可能である。産生の追跡方法の1つは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)による抽出物の分析である。
【0029】
一実施形態では、活性デュナイマイシンと不活性デュナイマイシンとの最適比を有する殺虫性発酵ブロスの上記の産生方法は、遠心分離、膜濾過、平行流濾過、深層濾過、および蒸発などの従来の工業的方法によりブロスを濃縮するさらなる工程を含む。いくつかの実施形態では、濃縮された発酵ブロスは、残留発酵ブロスを除去するために、たとえば、膜透析プロセスまたは限外濾過プロセスを介して洗浄される。
【0030】
他の実施形態では、発酵ブロスまたはブロス濃縮物は、担体を添加してまたは添加せずずに、従来の乾燥方法、すなわち、スプレー乾燥、凍結乾燥、トレー乾燥、流動床乾燥、またはドラム乾燥などの方法を用いて、乾燥可能である。得られた発酵固体は、特定の粒子サイズまたは物理的形態を達成するために、粉砕処理(milling)または顆粒化などによりさらに処理可能である。
【0031】
本発明の他の態様では、上記方法により産生された殺虫性発酵ブロスは、生物学的関連結合部位もしくは標的で活性デュナイマイシンの妨害やそれとの競合が不可能になるようにまたは活性デュナイマイシンに変換されるように不活性デュナイマイシンを修飾すべく化学処理される。一実施形態では、選択されたデュナイマイシンを混合物から除去可能である。たとえば、デュナイマイシンA1およびC1の除去は、第一級アミン、オキシム、セミカルバジド、またはヒドラジンなどのペンダントアミノ官能基を有する樹脂にすべてのデュナイマイシンの全混合物を通すことにより達成可能である。A1およびC1中に存在するC19−ケト基は、ペンダントアミノ基と優先的に反応し、残留デュナイマイシンは、適切な溶媒で単に洗浄するだけでカラムから取り出すことが可能である。たとえばオッサミン糖部分を含有するデュナイマイシンは、デュナイマイシン混合物を陽イオン交換樹脂に通すことにより取り出すことが可能である。オッサミン糖上に存在するアミノ基は、糖を有する活性デュナイマイシン分子をカラム上に保持するのに役立ち、不活性デュナイマイシンの通過を可能にする。次に、活性オッサミン糖デュナイマイシンは、塩基性緩衝液を用いて樹脂から溶出させることが可能である。
【0032】
他の実施形態では、不活性デュナイマイシンは、古典的遺伝学によるかまたは分子的手段によるかのいずかで不活性デュナイマイシンの発現を特異的にノックアウトするように放線菌株を遺伝子操作することにより低減可能である。
【0033】
本発明のさらに他の態様では、上記方法により産生された殺虫性発酵ブロスは、不活性デュナイマイシンから活性デュナイマイシンを分離して半精製または精製デュナイマイシンを得るために標準的精製技術に付される。
【0034】
本発明はまた、活性デュナイマイシンを優先的に産生する能力に関して放線菌をスクリーニングする方法を包含する。一実施形態では、対象の放線菌により産生される活性デュナイマイシンと不活性デュナイマイシンとの比は、約1:1よりも大きい。他の実施形態では、不活性デュナイマイシンは、産生されない。本発明の他の態様では、スクリーニング工程よりも先行してデュナイマイシン過剰産生株のライブラリーの作製が行われる。たとえば、実施例1および2には、突然変異体のライブラリーを作製しクロマトグラフィー法を用いてデュナイマイシンを過剰産生するものを同定することが記載されている。デュナイマイシンのオーバープロデューサーである突然変異体の他の迅速なスクリーニング法は、比色レポーター株を形成することを含む。
【0035】
本発明に係る組成物は、昆虫の防除(control)に有用である。したがって、本発明のさらなる態様は、有効量の本発明に係る組成物を昆虫の場所に施用することによる昆虫の防除方法に関する。本明細書で用いられる場合、「防除」または「 防除する」という用語は、昆虫を死滅させることまたは生存可能な昆虫卵の数を減少させることを意味する。「場所」という用語は、昆虫が摂食または生息する可能性のある植物部分または植物周辺領域などの、昆虫が生存する環境またはその卵が存在する環境を意味する。「有効量」とは、処理された昆虫の測定可能な減少を引き起こすのに必要とされる量のことである。いくつかの実施形態では約50%超、他の実施形態では約60%超、他の実施形態では約70%超、他の実施形態では約75%超、他の実施形態では約80%超の防除が達成される。
【0036】
一実施形態では、1エーカーあたり約100ppm〜約10000ppmの量の発酵固体が使用される。他の実施形態では、1エーカーあたり約1〜約50gの製剤化発酵固体が適用される。
【0037】
一実施形態では、組成物は、タバコバッドワーム(ヘリオティス・ビレセンス(Heliothis virescens))、シロイチモジヨトウ(スポドプテラ・エキシグア(Spodoptera exigua))、イラクサギンウワバ(トリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni))、およびコナガ(プルテラ・キシロステラ(Plutella xylostella))などの鱗翅目類(Lepidoptera)を防除するために使用される。他の典型的な鱗翅目類(Lepidoptera)は、エジプトワタハムシ、ハスオビハマキ、タマナヤガ、パンデミスリーフローラー(pandemis leafroller)、コドリンガ、ツマジロクサヨトウ、およびオオタバコガである。
【実施例】
【0038】
実施例1 − 突然変異体の産生
QST6047(ストレプトマイセス・ガルバス(Steptomyces galbus)NRRL No.30232)は、一連のデュナイマイシンを産生するストレプトマイセス・ガルバス(Streptomyces galbus)の野生株である。QST6047により産生されるデュナイマイシンは、鱗翅目類(Lepidoptera)に対して殺虫活性を有する。デュナイマイシンの産生および生物活性を増大させる目的で、個別の抗生物質(ゲンタマイシン、リファンピシン、ストレプトマイシン、パロモマイシン、またはトブラマイシン)に耐性の突然変異体のライブラリーを作製する抗生物質耐性突然変異体スクリーニングプログラムを介して、野生株QST6047からデュナイマイシン過剰産生突然変異体M1064を形成した。リファンピシン耐性ライブラリー(これからさらなる改良のためにデュナイマイシン過剰産生株が最終的に選択される)の作製およびスクリーニングの詳細な説明は、以下に記載される。
【0039】
20%グリセロール中に懸濁されたS.ガルバス(S.galbus)QST6047のSFM(マンニトール20g/L、大豆粉20g/L、寒天20g/L)平板培養物の胞子に50℃の水バッチ中で10分間ヒートショックを与えた。次に、5μl/mlのリファンピシンが追加されたGYM(グルコース4g/L、酵母エキス4g/L、麦芽エキス10g/L、および寒天12g/L)上に100μlの胞子懸濁液をプレーティングした。少なくとも300個の個別コロニーを単離、精製、およびスクリーニングするのに十分な胞子懸濁液をプレーティングした。
【0040】
リファンピシン耐性細菌を含有する寒天プラグを用いて31−3C培地(Proflo 20g/L、麦芽エキス20g/L、KHPO第一塩6g/L、KHPO第二塩4.8g/L)を含有する培養管に接種し、28℃で6日間増殖させた。次に、培養ブロスを逐次希釈し、次のようにシロイチモジヨトウ卵添加バイオアッセイ(BAW卵添加バイオアッセイ)を用いて生物活性に関して試験した。シロイチモジヨトウ(BAW)卵を含有する96ウェルマイクロプレートに試験サンプルを分配した。マイクロプレートの各ウェルは、食餌およびほぼ既知数のシロイチモジヨトウ卵を含有していた。卵を孵化するのに最適な条件下でマイクロプレートをインキュベートした。7日後、依然として生存している幼虫の数をカウントし、ブレイクポイント(break point)の評価値を求めた。野生型のブレイクポイントに対する突然変異型のブレイクポイントに注目した。各ブレイクポイントは、野生型の2倍の活性を示した。次に、野生型を超える生物活性を呈する任意の突然変異体を振盪フラスコ中で培養した。スクリーニングされた300種の突然変異体のうち、20種は、増大された生物活性を示した(図3)。
【0041】
より高い生物活性および寒天プレート上での胞子形成能を有する選択された突然変異体を1Lバッフル付き振盪フラスコ中で増殖させ、続いて、31−3C培地を含有する20Lバイオリアクターにスケールアップした。生物活性(図4)およびデュナイマイシン産生(図5)の両方を各突然変異体について測定した。驚くべきことに、突然変異体は、野生型よりも高レベルのデュナイマイシンを産生したが、生物活性は、比例して増大しなかった。
【0042】
実施例2 − 種々のデュナイマイシンの生物活性の効力差の同定(HPLC同定およびバイオアッセイ)
M1064と呼ばれる突然変異体または野生型(ストレプトマイセス・ガルバス(Streptomyces galbus)QST6047)のいずれかから種々のデュナイマイシン種を活性分析のために単離した。上記の培地を用いてM1064または野生型のいずれかを2Lフラスコ中で増殖させた。全ブロス培養物を1Lのエチルアセテートで2回抽出し、合わせた有機抽出物を減圧下で濃縮した。ヘキサン中で平衡化されたシリカゲルカラム上に粗抽出物を充填し、ヘキサンおよび続いてヘキサン−エチルアセテートの段階的溶媒勾配を用いてカラムから溶出させた。デュナイマイシンを含有する画分を分析用HPLC逆相C8カラムおよびBAW卵添加バイオアッセイにより決定した。
【0043】
分取用逆相C8カラム[Zorbax Exclipse XDB-C8、5μm、9.4×25cm、2.0mL/minの流量、および220nmでのUV検出。溶離溶媒系は、水(10mM NHOAc):メタノール混合物からなるものであった]を用いて活性画分をさらに分画することにより、純粋なデュナイマイシンを得た。UVおよび質量分析を用いてすべての単離されたデュナイマイシンを確定した。同定されたデュナイマイシンの構造は、図6に示される。
【0044】
次に、分離同定されたデュナイマイシンを次のようにシロイチモジヨトウ卵に対する生物活性に関して試験した。単独または組合せのいずれかの種々の半精製デュナイマイシンの15%水性エタノール溶液としてストック溶液を提供した。参照目的で、Javelin WDG(バチルス・チューリンゲンシス・サブスピーシーズ・クルスタキ(Bacillus thuringiensis subspecies Kurstaki);ThermoTrilogy Inc)を秤取して希釈し、1,000ppmのストック溶液(陽性化学物質標準)を得た。これらのストック溶液をディープウェルマイクロタイタープレートに移した。すなわち、上側の並び(Aのウェル1〜12)にわたる2mlウェル中に1.4mlの各ストック溶液を入れた。次に、Packard Multiprobe II液体ハンドリングシステム(Perkin Elmer Inc.)により希釈プログラムを実施し、最初に残りの84個のウェル(B〜Hの1〜12)に700μlのDI HOを添加した。次に、四先端アームにより一連の吸引工程および分配工程を行ってサンプルを混合し、次に、それを隣接ウェル中に移してウェル1個あたり700μlを含有する8つの50%逐次希釈サンプルを得た。次に、ロボットにより移動プログラムを用いて、ピペット操作で逐次希釈サンプルのすべてをラベル付き96ウェルプレートに移した。40μlの各希釈液を含有するアリコートを約200μlの人工餌料/ウェルを含有する6個のウェル中にマイクロタイタープレートにわたって分配した。96ウェルプレートごとに2つのサンプル、すなわち、Aのウェル1〜6でストック濃度のサンプル1、Aのウェル7〜12でサンプル2を試験した。Bの並びは、Bの並びのウェル1〜6にサンプル1およびBの並びのウェル7〜12にサンプル2の50%希釈シリーズすなわち1/2倍溶液サンプルを含有する。各セット中の最後の2つのサンプルは、化学物質標準およびDI水を含有する未処理の対照であった。サンプルを強制空気下室温で急速乾燥させ、次に、反復ピペットを用いて各ウェルに寒天中の5〜10個の同調シロイチモジヨトウ卵を添加した。卵:寒天混合物を強制空気下で乾燥させ、プレートを有孔Mylarでカバーした。16:8の明:暗周期でプレートを28℃培養した。5〜7日後、各並びの生存昆虫の数を表にまとめた。死滅率を死滅数/処理数として記録し、対照補正死滅率パーセントとして表した。データをExcelからPolo PC(LeOra Software 1987)にエクスポートし、自然応答および95%信頼区間を用いてLC10、50、および90を計算した。結果は、表1に示される。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例3 − 発酵最適化(発酵および関連バイオアッセイを含む)
初期発酵最適化研究では、以下に記載されるように、全デュナイマイシン産生を増大させるようにQST6047および突然変異体M1064の発酵プロセスを改良することに重点をおいた(同様に以下に記載されるM1064を用いたさらなる研究では、活性デュナイマイシンの産生を最適化することに重点をおいた)。殺虫活性に関してはバイオアッセイによりおよびデュナイマイシン産生に関してはHPLCにより、株改良および発酵最適化の研究に伴う改良を同時に追跡した。バイオアッセイでは、MultiPROBE(登録商標)II自動液体ハンドリングシステム、人工餌料上でシロイチモジヨトウを用いた96ウェルプレートアッセイ、および続いて生データのプロビット解析を利用した。生物活性は、幼虫集団の50%を死滅させるのに必要とされるサンプルの致死濃度(LC50)として報告される。HPLCアッセイでは、全ブロスの分配抽出および続いてC−18逆相クロマトグラフィーおよびピーク積分解析(mAU)を利用した。
【0047】
最適な温度、pH、通気、および撹拌のもとで、元のバッチ発酵プロセスに対してQST6047株のデュナイマイシン産生の3倍増大を達成した。最適化バッチプロセスでのQST6047の典型的な増殖パラメーターおよびデュナイマイシン産生のプロファイルは、図7に示される(図中、マクロライドという用語は、デュナイマイシンと等価であり、リード候補という用語は、M1064と等価である)。マクロライド産生をさらに改良するために、フェドバッチプロセスを開発した。いくつかの異なる栄養補給戦略を研究した。滅菌時に炭水化物を秤取し、その後、残留炭水化物レベルを1g/L未満の濃度に保持するようにプロセス時に追加の炭水化物および窒素を可変供給速度で導入開始するプロセスを開発した。このフェドバッチプロセスにより、最適化バッチプロセスに対してQST6047株のデュナイマイシン産生の2倍増大がもたらされた。野生型最適化フェドバッチプロセスの典型的な増殖パラメーターおよびマクロライド産生のプロファイルは、図8に示される。
【0048】
発酵条件はまた、M1064のデュナイマイシン産生の増大ために最適化された。マクロライド産生の最適条件を決定するためにバッチプロセスパラメーターの再調整および精密化を行う培地が必要であり、野生型バッチプロセスに対してマクロライド産生の1.5倍増大が達成された。マクロライド産生の最も顕著な増大は、フェドバッチプロセスを利用することによりM1064を用いて達成された。野生型フェドバッチプロセスと同様に、いくらかの炭水化物は、プロセスの開始時に最初から存在していた。その後、残留炭水化物レベルを1g/L未満の濃度に保持するようにプロセス時に追加の炭水化物および窒素を可変供給速度で導入開始した。突然変異体による炭水化物消費速度は遅いので、野生型のときよりも遅い供給速度を使用した。フェドバッチプロセスでは、元の野生型バッチプロセスに対してデュナイマイシン産生の13倍増大が達成された。M1064を用いたフェドバッチプロセスの典型的なデュナイマイシン産生、増殖パラメーター、および炭水化物利用のプロファイルは、図9に示される。M1064のデュナイマイシン産生のプロファイルおよび対応する生物活性は、図10に示される。図11は、最適化プロセス時のデュナイマイシン産生の増大を示している。
【0049】
活性デュナイマイシンと不活性デュナイマイシンとの比を最適化することによりM1064の生物活性を増大させるべく、さらなる培地開発および工程研究を行った。種々の炭素源および窒素源を用いて突然変異体M1064および野生型を培養した。炭素源および窒素源が異なると活性および不活性なデュナイマイシンの産生に及ぼす影響も異なり、活性と不活性との相対比は、殺虫活性に有意な影響を及ぼしうることが判明した。グルコースおよび大豆粉は、活性デュナイマイシンと不活性デュナイマイシンとの比を改良するのにとくに有用な炭素源および窒素源であった。以下の表2および3を参照されたい。
【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
最適な炭素源および窒素源の同定後、さらなるバイオリアクター研究では、発酵プロセス、とくにバッチプロセスおよびフェドバッチプロセスの最適化に重点をおいた。炭素源および窒素源に加えて、発酵培地のC:N比もまた、活性デュナイマイシンの産生レベルおよび生物活性に有意な影響を及ぼすことを見いだした。
【0053】
【表4】

【0054】
以下は、以上のC:N比を用いたM1064の最適化バッチおよびフェドバッチプロセスの説明である。
【0055】
バッチ発酵プロセス種菌手順
培養物の凍結バイアルを解凍し、その内容物の半分を50mlの殺菌31−3C種菌培地(表5)を含有する2つの250mlバッフル付きフラスコ中に分配することにより、第1段階種菌を調製した。振盪機上、220rpm、28℃で、培養物を3日間インキュベートした。
【0056】
10mlの3日間経過した第1段階種菌を250mlの31−3C種菌培地を含有する2リットルバッフル付きフラスコ中に移すことにより、第2段階種菌を調製した。振盪機上、220rpm、28℃で、培養物を3日間インキュベートした。15リットルの実効体積を有する各発酵に対して3つの2リットルフラスコを準備した。
【0057】
発酵培地および条件
15L発酵プロセス用の培地成分を秤量し、バイオリアクター内の14リットルの蒸溜水中に懸濁させた。M1064プロセス352用の培地成分は、表6に示される。培地を十分に混合し、pHを7.3に調整した。滅菌後、培地をpH6.8に再調整した。
【0058】
発酵プロセス − 20リットルバイオリアクター
3日間経過した第2段階種菌の3つの2リットルフラスコの内容物(750ml)をプールし、殺菌バイオリアクターに接種するために使用した。培養物を栄養寒天上に筋状として培養物純度を確認した。発酵全体を通じてpHを6.8に制御した。培養温度は25℃であり、曝気速度は15L/minであった。300〜850rpmの撹拌カスケードを用いて溶存酸素濃度を50%に制御した。サンプルを1日2回採取してプロセスをモニターしながら発酵を90〜95時間行った。
【0059】
増殖、デュナイマイシン、および生物活性の分析方法
固形分%、細胞乾燥重量%、およびときにはコロニー形成単位により、増殖をモニターした。Beckmanグルコースアナライザーを用いて、グルコース濃度をモニターした。
【0060】
全ブロス1mlあたりに存在する全デュナイマイシンをHPLCにより定量した。5mlの全ブロスを3mlのエチルアセテートおよび2gの硫酸マグネシウムと組み合わせることにより、サンプル抽出物を調製した。
【0061】
実施例1に記載のBAW卵添加バイオアッセイを用いることにより、全ブロスの生物活性を測定した。Javelinを1000ppmの初期濃度で陽性対照として試験した。次に、LD50を計算した。
【0062】
【表5】

【0063】
【表6】

【0064】
フェドバッチ発酵プロセス
種菌手順
培養物の凍結バイアルを解凍し、その内容物の半分を50mlの殺菌31−3Cの種菌培地(表7)を含有する2つの250mlバッフル付きフラスコ中に分配することにより、第1段階種菌を調製した。振盪機上、220rpm、28℃で、培養物を3日間インキュベートした。
【0065】
10mlの3日間経過した第1段階種菌を250mlの31−3C種菌培地を含有する2リットルバッフル付きフラスコ中に移すことにより、第2段階種菌を調製した。15リットルの使用体積を有する各発酵実験に対して3つの2リットルフラスコを接種した。振盪機上、220rpm、28℃で、培養物を3日間インキュベートした。
【0066】
発酵培地および条件
15L発酵プロセス用の培地成分を秤量し、バイオリアクター内の14リットルの蒸溜水中に懸濁させた。6047野生型プロセス328用の培地成分は、表8に示される。培地を十分に混合し、pHを7.3に調整した。滅菌後、培地のpHを6.8に再調整した。
【0067】
発酵プロセス − 20リットルApplikonバイオリアクター
3日間経過した第2段階種菌の3つの2リットルフラスコの内容物(750ml)をプールし、殺菌バイオリアクターに接種するために使用した。培養物を栄養寒天上に画線して培養物純度を確認した。発酵全体を通じてpHを6.8に制御した。培養温度は25℃であり、曝気速度は15L/minであった。300〜850rpmの撹拌カスケードを用いて溶存酸素濃度を50%に制御した。サンプルを1日2回採取して以下に記載の分析方法を用いてプロセスをモニターしながら発酵を90〜95時間行った。
【0068】
供給レジーム
培養の開始時、30%グルコースの供給を開始した。目的は、ほとんどまたはまったくグルコースがバイオリアクターで検出されないようにグルコースを積極的に供給することであった。24時間後、30%グルコースおよび3%グルタミン酸一ナトリウムの供給を行った。供給速度は、グルコース消費に基づき、培地の残留グルコース濃度に基づいて増大または減少させた。
【0069】
増殖、デュナイマイシン産生、および生物活性の分析方法
固形分%、細胞乾燥重量%により、増殖をモニターした。Sartorius モイスチャバランスを用いることにより、洗浄ペレットの細胞乾燥重量をモニターした。Beckmanグルコースアナライザーを用いて、グルコース濃度をモニターした。
【0070】
全ブロス1mlあたりに存在する全デュナイマイシンをHPLCにより定量した。5mlの全ブロスを3mlのエチルアセテートおよび2gの硫酸マグネシウムと組み合わせることにより、サンプル抽出物を調製した。
【0071】
実施例1でこの実施例のバッチ発酵プロセスの節に記載のBAW卵添加バイオアッセイを用いて、シロイチモジヨトウに対する全ブロスの生物活性を測定した。
【0072】
【表7】

【0073】
【表8】

【0074】
発酵最適化(C:N比に関する研究を含む)の後で得られたバイオアッセイ結果から、M1064の生物活性は、野生型6047と比較して実質的に増大されることが確認された。株改良および以上に記載の最適化フェドバッチプロセスにより、6047を用いた元の発酵プロセスと比較してデュナイマイシン産生の13倍増大および6047を用いた元の発酵プロセスからの全ブロスと比較してBAW卵添加アッセイに基づく生物活性の35倍増大が達成された。
【0075】
実施例4 − 大豆粉を用いておよび用いずに増殖させたM1064の生物活性比較
大豆粉が添加されたバッチ発酵RF1694および大豆粉を含まないRF1696を実施例3の最後に記載されたのと同一の条件下でM1064で行った。両者の発酵実験からの全ブロスを、デュナイマイシン産生(表9)に関してはHPLCにより、シロイチモジヨトウに対する殺虫活性に関してはリーフディスクアッセイ(図12)を用いて、分析した。リーフディスクアッセイは、ライマメ葉上で行った。大豆粉を含むRF1694からの全ブロスは、バイオアッセイにおいて1:32および1:64の希釈の両方でRF1694よりも高い生物活性を有していた。アッセイは、未処理の対照(UTC)を用いておよび市販の殺虫剤Javelin(Bt由来産物)およびSpintor(Dow AgroSciences;スピノシン系産物)と共に行った。
【0076】
産生された全デュナイマイシンは、2つの実験間で類似していたが、活性および不活性なデュナイマイシンの量は異なっていた。大豆粉を含有していたバッチRF1694ではより少ない不活性形のデュナイマイシンが産生され、より大きい活性対不活性の比が得られた。
【0077】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放線菌由来の殺虫性の発酵ブロスまたは発酵固体を含む組成物であって、前記発酵ブロスまたは発酵固体が最適比の活性デュナイマイシンと不活性デュナイマイシンとを含む、組成物。
【請求項2】
前記活性デュナイマイシンと不活性デュナイマイシンとの最適比が少なくとも約1:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
活性デュナイマイシンおよび不活性デュナイマイシンの濃度が少なくとも約1g/L(発酵ブロス)である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記活性デュナイマイシンおよび不活性デュナイマイシンの濃度が少なくとも約3g/L(発酵ブロス)である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記活性デュナイマイシンおよび不活性デュナイマイシンの濃度が少なくとも約7g/L(発酵ブロス)である、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記放線菌が、活性デュナイマイシンおよび不活性デュナイマイシンの両方を産生可能なストレプトマイセス属種(Streptomyces sp.)の株である、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記ストレプトマイセス属種(Streptomyces sp.)の株がストレプトマイセス・ガルバス(Streptomyces galbus)である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ストレプトマイセス属種(Streptomyces sp.)の株がストレプトマイセス属種(Streptomyces sp.)M1064である、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
担体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記活性デュナイマイシンがC18−C19の位置にビニログ性エノールエーテル部分またはヘミアセタール部分またはアセタール部分を有し、かつ前記不活性デュナイマイシンがC19の位置にケトンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記活性デュナイマイシンがC2、C2S、D2、D2S、およびD3Sの1つ以上であり、かつ前記不活性デュナイマイシンがA1およびC1の1つ以上である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
培養培地1リットルあたり少なくとも約0.5ミリグラムの活性デュナイマイシンが産生されるまで、炭素源および窒素源を含有する培養培地中で、活性デュナイマイシンおよび不活性デュナイマイシンを産生する放線菌を培養することを含む、殺虫活性デュナイマイシンに富んだ発酵産物の産生方法であって、炭素源と窒素源との重量比が少なくとも約10:1である、方法。
【請求項13】
前記炭素源が、植物性または動物性材料由来の単糖類、二糖類、多糖類、および複合糖質よりなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記炭素源が、スクロース、グルコース、マルトース、デンプン、マルトデキストリン、糖蜜、および麦芽エキスよりなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記窒素源が、植物由来または動物由来のタンパク質およびアミノ酸、大豆粉、ソイトン、ペプトン、大豆加水分解物、粗挽き大豆、綿実粉、コーンスティープパウダー、およびジャガイモ抽出物よりなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記炭素源がグルコースであり、前記窒素源が大豆粉である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記炭素源がグルコースであり、前記窒素源が綿実粉と大豆粉との組合せである、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
活性デュナイマイシンおよび不活性デュナイマイシンの産生に関してデュナイマイシン過剰産生放線菌のライブラリーをスクリーニングする初期工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記発酵ブロスおよびバイオマスから活性デュナイマイシンを精製することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記発酵ブロスおよびバイオマスを濃縮することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記発酵ブロスおよびバイオマスを乾燥することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
活性デュナイマイシンと不活性デュナイマイシンとの比が少なくとも約1:1である、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
請求項12〜16のいずれか一項に記載の方法により産生される、発酵産物。
【請求項24】
デュナイマイシン過剰産生放線菌のライブラリーを作製することと、前記デュナイマイシン過剰産生放線菌を培養することと、前記デュナイマイシン過剰産生放線菌により産生された活性および不活性デュナイマイシンの量を測定することと、不活性デュナイマイシンよりも多くの活性デュナイマイシンを産生するデュナイマイシン過剰産生放線菌を選択することと、を含む、増強された殺虫活性に関する放線菌のスクリーニング方法。
【請求項25】
放線菌がストレプトマイセス・ガルバス(Streptomyces galbus)である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
放線菌がストレプトマイセス属種(Streptomyces sp.)の株である、請求項24に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2013−509865(P2013−509865A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537227(P2012−537227)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/055499
【国際公開番号】WO2011/057006
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(500281006)アグラクエスト インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】