説明

放送受信装置

【課題】車両が移動中に今までの受信エリアから外れても容易に同一番組を受信可能にするとともに、受信局を切り換えても、受信状態が良くならなかったとき、前に受信していた局に簡単に戻せるようにする。
【解決手段】 受信レベル検出部10aが、現在の受信レベル低下を検出すると、放送局検索部10bは、現在位置検出部7によって得られる現在位置情報から、受信可能な放送局を局情報記憶部8から検索し、直前まで受信していた放送局と同系列の放送局を検索する。そして、受信切換部10cは、受信周波数を、直前まで受信していた放送局と同系列の放送局の周波数に切り換えるが、切り換えた受信周波数の受信レベルが所定以下になったときは、受信周波数を、直前に受信していた周波数に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテレビ、カーラジオ等、放送電波を移動体において受信する放送受信装置に関するものであり、特に、車両の移動に伴って系列局を検索して継続的に放送を受信できるようにした放送受信装置において、受信状態が不安定で新たに検索した系列局の電波の受信状態が悪い場合に簡単な操作で直前に受信していた局の受信に戻れるようにした放送受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では電子機器の小型化や低価格化が進み、種々の電子機器が自動車に搭載されるようになってきている。例えば、カーラジオやカーテレビなどの放送受信装置、MD・DVDプレイヤーなどのオーディオ・ビデオ装置、カーナビゲーション装置など種々の機器が多くの自動車に搭載されて利用されている。
【0003】
例えば、最近では地上波デジタル放送の商業放送が開始され、徐々に普及しつつあるが、地上波デジタル放送では、OFDMと呼ばれるゴーストに強い伝送方式が採用されており、自動車などの移動体においてもデジタル放送受信機が使用されようとしている。
【0004】
例えば、下記の特許文献1(特開2004−320406号公報)には、放送地域をまたがって移動しても地域ごとのデジタル放送を継続的に選局する地上デジタル自動選局方法を有する放送受信装置が開示されている。
【0005】
この特許文献1に開示された放送受信装置は、ダブルチューナー搭載のダイバーシティアンテナ受信機を備え、2個のチューナーで状態の良い方の信号を用いて受信を行う。電波が安定しているときは、片方のチューナーをもちいてチャンネルサーチを行い、受信地域の全チャンネル情報を受信機に記憶させる。また、放送で隣接地域のチャンネル情報を放送し、それを片方のチューナーで受信して、隣接地域のチャンネル情報を記憶させることにより、隣接地域に移動したときにその地域の放送チャンネルをサーチすることなく、シームレスな放送受信を可能としたものである。
【0006】
しかしながら、これらの放送受信装置においては、移動体の宿命として移動とともに現在受信しているチャンネルの受信エリアから外れてしまい、受信できなくなるという現象が生じる。その際、画面上には、受信不可である旨のメッセージが表示され、利用者に対して、選局のし直しを促す。その場合、選局動作に時間を要し、特に、利用者が運転中の時は選局動作が困難である。
【0007】
このような問題を解消するため、例えば、下記の特許文献2(特開2001−285101号公報)には、現在の受信エリアから外れても容易に同一番組を受信可能にする放送受信装置が開示されている。
【0008】
この特許文献2に開示された放送受信装置は、カーナビゲーション・システムから現在位置情報などを受け取ると、移動体上のデジタル放送受信機は、メモリ内に予め格納された受信範囲情報と現在位置情報とを比較し、受信可能範囲内の放送局をメモリ内でサーチし、直前まで受信していた番組を探す動作を行うように構成したものである。
【特許文献1】特開2004−320406号公報
【特許文献2】特開2001−285101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、放送受信装置では、二つの放送エリアの境界部では、いずれのエリアにある局の電波も受信状態が不安定になりやすい。特に、山間部を走行する場合は、電波が山に遮られる等して、電波状態が著しく変化する。そのため、特許文献1に示される放送受信装置のようにして受信チャンネルを切り換えても、走行に伴い、新たな局よりその前に受信していた局の方が、受信状態が良くなることも起こりうる。そのような場合、上記特許文献2に開示された放送受信装置では、前に受信していた局の方が、電波状態が良いにもかかわらず、電波状態が悪い新たな局から受信し続けることになるという問題点があった。
【0010】
本願の発明者は、上記の問題点を解消すべく種々検討を重ねた結果、放送受信装置に、受信レベルが所定以下に低下したことを検出する受信レベル検出手段と、受信周波数を、直前に受信していた周波数に戻す受信切換手段と、を設け、受信レベル低下を検出すると、前記現在位置検出手段によって得られる現在位置情報に基づいて、現在位置において受信可能で、直前まで受信していた放送局と同系列の放送局を検索し、その放送局の周波数に切り換え、切り換えた受信周波数の受信レベルが所定以下になったことが検出されたときは、受信切換手段により直前に受信していた周波数に戻すようになせば、上記問題点を解消し得ることに想到し、本発明を完成するに至ったものである。
【0011】
すなわち、本発明は上記の問題点を解消することを課題とし、車両が移動中に今までの受信エリアから外れても容易に同一番組を受信可能にするとともに、受信局を切り換えても、受信状態が良くならなかったとき、前に受信していた局に簡単に戻すことができる放送受信装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、
放送電波を移動体において受信する放送受信装置であって、各放送局に対応させて、放送の受信範囲情報,周波数情報及び放送局の系列情報を記憶する局情報記憶手段と、前記移動体の現在位置を検出する現在位置検出手段と、受信レベルが所定以下に低下したことを検出する受信レベル検出手段と、前記受信レベル検出手段が現在の受信レベル低下を検出すると、前記現在位置検出手段によって得られる現在位置情報に基づいて、前記局情報記憶手段から現在位置において受信可能で、直前まで受信していた放送局と同系列の放送局を検索する放送局検索手段と、前記放送局検索手段により検索された放送局の周波数に切り換えるとともに、切り換えた受信周波数の受信レベルが所定以下になったことが前記受信レベル検出手段により検出されたときは、受信周波数を、直前に受信していた周波数に戻す受信切換手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる放送受信装置において、前記受信切換手段は、切り換えた受信周波数の受信レベルが所定以下になったとき、タッチパネル式指示ボタンを表示し、該指示ボタンが押されたとき、受信周波数を、直前に受信していた周波数に戻すことを特徴とする。
【0014】
また、本願の請求項3にかかる発明は、請求項1または請求項2にかかる放送受信装置において、前記周波数が地上波デジタル放送の電波であり、受信レベルの低下を受信信号の誤り率で判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の放送受信装置は、次のような効果を奏する。
【0016】
すなわち、請求項1にかかる発明においては、現在の受信レベル低下を検出すると、現在位置情報から受信可能な放送局を検索して、直前まで受信していた放送局と同系列の放送局が存在するかどうかを判定し、直前まで受信していた放送局と同系列の放送局の周波数に切り換えるが、切り換えた受信周波数の受信レベルが所定低下になったときは、受信周波数を、直前に受信していた周波数に戻すようにした。
【0017】
その結果、車両が移動中に今までの受信エリアから外れても容易に同一番組を受信可能になるとともに、受信局を切り換えても、受信状態が良くならなかったとき、前に受信していた局に簡単に戻すことができるようになる。
【0018】
また、請求項2にかかる発明においては、請求項1にかかる放送受信装置において、切り換えた受信周波数の受信レベルが所定低下になったとき、タッチパネル式指示ボタンを表示し、該指示ボタンが押されたとき、受信周波数を、直前に受信していた周波数に戻すようにしたので、利用者の意志により直前に受信していた周波数に戻すか否かを選択できるようになる。
【0019】
また、請求項3にかかる発明においては、請求項1又は2にかかる放送受信装置において、地上波デジタル放送の電波に適用し、受信レベルの低下を受信信号の誤り率で判定するようにしたので、受信レベル低下の判定が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための一実施の形態を例示するものであって、本発明をこの実施の形態に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0021】
図1は、本発明の放送受信装置周辺全体のブロック図である。ここでは、地上波デジタルテレビ放送を、自動車などの移動体において受信する場合で説明する。アンテナ3でキャッチされた地上波デジタル放送信号は放送受信装置1で受信され、その映像はモニタ5に表示される。
【0022】
一方、GPSアンテナ4で受信されたGPS信号はカーナビゲーション・システム2に供給され、現在の位置情報はモニタ5に表示される。放送受信装置1とカーナビゲーション・システム2とは外部インターフェースを介して接続されている。
【0023】
図2は、本発明の放送受信装置1の構成を示すブロック図である。図2に示すように放送受信装置1は、TV受信部6、現在位置検出部7、局情報記憶部8、入力部9、制御部10、ROM11、RAM12、表示部13、音声出力部14などを備えて構成されている。
【0024】
制御部10は、受信レベル検出部10a、放送局検索部10b、受信切換部10cを有しており、放送受信装置の各部を制御する。ROM11は、制御部10で使う制御プログラム等を格納し、RAM12は、制御部10で必要な各種データを格納する。
【0025】
TV受信部6は、アンテナ3で受信した地上波デジタルテレビ信号を制御部10に入力する。表示部13は、制御部10で地上波デジタルテレビ信号から生成された映像信号を処理してモニタ5に表示する。音声出力部14は、制御部10で地上波デジタルテレビ信号から生成された音声信号を処理してスピーカ(図示せず)から出力する。
【0026】
局情報記憶部8は、本放送受信装置を搭載した移動体が移動する範囲内に存在する全ての放送局名と、その放送を受けられる受信範囲情報と、それらが放送する信号の周波数情報と、放送局の系列情報とを記憶して管理する。現在位置検出部7は、カーナビゲーション・システム2から位置情報を取得して、制御部10に入力する。9は、モニタ5にタッチパネル式のボタンを表示して、指示入力を受け付ける。
【0027】
制御部10の受信レベル検出部10aは、受信レベルが所定以下に低下したことを検出する。放送局検索部10bは、受信レベル検出部10aが現在の受信レベル低下を検出すると、現在位置検出部7からの現在位置情報に基づいて、局情報記憶部8から現在位置において受信可能で、直前まで受信していた放送局と同系列の放送局を検索する。受信切換部10cは、放送局検索部10bにより検索された放送局の周波数に切り換えるとともに、切り換えた受信周波数の受信レベルが所定以下になったことが受信レベル検出部10aにより検出されたときは、受信周波数を、直前に受信していた周波数に戻す。
【0028】
以上のように本実施例においては、放送受信装置1に、受信レベルが所定以下に低下したことを検出する受信レベル検出手段(受信レベル検出部10a)と、受信周波数を、直前に受信していた周波数に戻す受信切換手段(受信切換部10c)と、を設け、受信レベル低下を検出すると、前記現在位置検出手段(現在位置検出部7)によって得られる現在位置情報に基づいて、現在位置において受信可能で、直前まで受信していた放送局と同系列の放送局を検索し、その放送局の周波数に切り換え、切り換えた受信周波数の受信レベルが所定以下になったことが検出されたときは、受信切換手段により直前に受信していた周波数に戻すことができるように構成している。
【0029】
以上のような放送受信装置1の動作手順を図3のフローチャートに基づいて詳細に説明する。図3は、本発明の実施例にかかる放送受信装置1の選局動作を示すフローチャートである。
【0030】
利用者がスイッチを入れると、選局された放送局の電波を受信する(ステップS1)。受信レベル検出部10aにより、受信した地上波デジタルテレビ信号のビット誤りを検出し、誤り率を算出して、それが所定以上になったか否かを判別する(ステップS2)。誤り率が所定以上でなければステップS2の処理を繰り返す。
【0031】
ステップS2の判別処理において、誤り率が所定以上になったら、今まで受信していた地上波デジタルテレビ信号の受信エリアから外れて受信状態が悪くなったと判定し、まず、受信中の周波数をRAM12に記憶する(ステップS3)。続いて、現在位置検出部7を通してカーナビゲーション・システム2から現在位置の情報を取得し(ステップS4)、放送局検索部10bにより、局情報記憶部8を検索して現在位置に対応する放送局の情報を読み出す(ステップS5)。
【0032】
読み出した放送局の中に、今まで受信していた放送局と同じ系列の局があるか否かを判別し(ステップS6)、同じ系列の局があったら、受信切換部10cにより受信周波数を切り換えて、同じ系列の局の周波数を受信する(ステップS7)。
【0033】
次に、切り換えて受信している地上波デジタルテレビ信号の誤り率を算出して、それが所定以上になったか否かを判別し(ステップS8)、誤り率が所定以上であれば、直前まで受信していた局の電波の方が、受信状態が良い可能性がある。そこで、入力部9により、図4に示すように、モニタ5に「直前の受信局に戻す」と表示したタッチパネル式指示ボタンを表示し(ステップS9)、その指示ボタンが押下げられたか否かを判別して(ステップS10)、押下げられたら、直前に受信していた周波数、すなわち、ステップS3で記憶した周波数に切り換えて受信する(ステップS11)。
【0034】
一方、ステップS6の判別処理において、同じ系列の局がなかったら、当該受信エリアで受信が可能な局のタッチパネル式選局ボタンをモニタ5に表示し(ステップS12)、選局ボタンが押下げられたか否かを判別する(ステップS13)。そして、いずれかの選局ボタンが押下げられたら、その選局ボタンに対応する周波数を受信する(ステップS14)。
【0035】
このような処理によって、先に述べたように、受信レベル低下を検出すると、前記現在位置検出手段(現在位置検出部7)によって得られる現在位置情報に基づいて、現在位置において受信可能で、直前まで受信していた放送局と同系列の放送局を検索し、その放送局の周波数に切り換え、切り換えた受信周波数の受信レベルが所定以下になったことが検出されたときは、受信切換手段により直前に受信していた周波数に戻すことができるようになる。
【0036】
なお、上記実施例では、地上波デジタルテレビの場合で説明したが、本発明はそれに限定されず、地上波デジタルラジオ,アナログテレビ,アナログラジオでも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の放送受信装置、周辺装置を含む全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の放送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の放送受信装置の選局動作を示すフローチャートである。
【図4】直前に受信していた周波数に戻すことを指示するためのタッチパネル式指示ボタンを表示した表示画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1…放送受信装置
2…カーナビゲーション・システム
3…アンテナ
4…GPSアンテナ
5…モニタ
6…TV受信部
7…現在位置検出部
8…局情報記憶部
9…入力部
10…制御部
11…ROM
12…RAM
13…表示部
14…音声出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送電波を移動体において受信する放送受信装置であって、各放送局に対応させて、放送の受信範囲情報,周波数情報及び放送局の系列情報を記憶する局情報記憶手段と、前記移動体の現在位置を検出する現在位置検出手段と、受信レベルが所定以下に低下したことを検出する受信レベル検出手段と、前記受信レベル検出手段が現在の受信レベル低下を検出すると、前記現在位置検出手段によって得られる現在位置情報に基づいて、前記局情報記憶手段から現在位置において受信可能で、直前まで受信していた放送局と同系列の放送局を検索する放送局検索手段と、前記放送局検索手段により検索された放送局の周波数に切り換えるとともに、切り換えた受信周波数の受信レベルが所定以下になったことが前記受信レベル検出手段により検出されたときは、受信周波数を、直前に受信していた周波数に戻す受信切換手段とを備えたことを特徴とする放送受信装置。
【請求項2】
前記受信切換手段は、切り換えた受信周波数の受信レベルが所定以下になったとき、タッチパネル式指示ボタンを表示し、該指示ボタンが押されたとき、受信周波数を、直前に受信していた周波数に戻すことを特徴とする請求項1に記載の放送受信装置。
【請求項3】
前記周波数が地上波デジタル放送の電波であり、受信レベルの低下を受信信号の誤り率で判定することを特徴とする請求項1または2に記載の放送受信装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−215138(P2007−215138A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35648(P2006−35648)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】