説明

放送用送信装置

【課題】電力増幅器が故障した影響を最小限に抑える放送用送信装置を提供する。
【解決手段】第2の電力増幅器105が故障すると、第2の電力増幅器105から故障情報の監視信号が自動制御装置114に出力され、自動制御装置114は、内蔵する可変コンデンサ115と可変コンデンサ116の容量を大きくするための制御信号を生成し、第2のLPF106に出力する。第2のLPF106はこの制御信号により可変コンデンサ115と可変コンデンサ116の通過特性を変化させることで可変コンデンサ115と可変コンデンサ116の容量を大きくし、故障した第2の電力増幅器105の出力電力における通過帯域の周波数を低く抑え、故障した第2の電力増幅器105の減衰量を大きくする。このように減衰量を大きくすることで、合成器113の入力端113bを開放端と見なすことで合成器113は第2の電力増幅器105を擬似的に切り離す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送用送信装置に係り、特に複数の電力増幅器を備えた放送用送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数台の電力増幅器を備えた放送用送信装置は、複数台の電力増幅器から出力された信号を合成して送信している。図4に従来の放送用送信装置における信号を合成する信号合成部30の構成を示す。図4に示すように、放送用送信装置の信号合成部30は、第1の前段部101、第1の電力増幅器102、第2の前段部104、第2の電力増幅器105、第3の前段部107、第3の電力増幅器108、第4の前段部110、第4の電力増幅器111、及び合成器113から構成されている。また、合成器113には、入力端113a、入力端113b、入力端113c、入力端113d、及び出力端113fの端子を備えている。入力端113a、入力端113b、入力端113c、及び入力端113dからの信号を合成する点が結合点113eであり、結合点113eは出力端113fに接続されている。
【0003】
第1の前段部101、第2の前段部104、第3の前段部107、及び第4の前段部110は、信号を発生したり、受信した信号の周波数変換などを行う。第1の電力増幅器102は、第1の前段部101から入力した信号を増幅し、合成器113の入力端113aに出力する。同様に、第2の電力増幅器105は、第2の前段部104から入力した信号を増幅し、合成器113の入力端113bに出力する。第3の電力増幅器108は、第3の前段部107から入力した信号を増幅し、合成器113の入力端113cに出力する。第4の電力増幅器111は、第4の前段部110から入力した信号を増幅し、合成器113の入力端113dに出力する。
【0004】
このような従来の放送用送信装置における各機器を接続する接続ケーブルは、各機器の特性インピーダンス及び通過電力に応じて選択される。第1の電力増幅器102、第2の電力増幅器105、第3の電力増幅器108、及び第4の電力増幅器111については、一般的にその特性インピーダンスは50Ωである。しかし、放送用送信設備の基幹局レベルでは、第1の電力増幅器102、第2の電力増幅器105、第3の電力増幅器108、及び第4の電力増幅器111の出力電力は数百Wとなる。このため、第1の前段部101、第2の前段部104、第3の前段部107、及び第4の前段部110から第1の電力増幅器102、第2の電力増幅器105、第3の電力増幅器108、及び第4の電力増幅器111までは、通常は高周波領域で特性インピーダンスが一定となる5D−2Wケーブルが使用されている。また、第1の電力増幅器102、第2の電力増幅器105、第3の電力増幅器108、及び第4の電力増幅器111から合成器113の入力端113a〜113dまでは、通常は高周波用機器の接続に用いられる20D給電管が使用される。
【0005】
合成器113は、入力端113a、入力端113b、入力端113c、及び入力端113dから結合点113eまで接続するケーブル長を1/2波長とした一般的な不平衡形並列方式合成器である。また、合成器113の結合点113eから出力端113fまでのケーブル長は1/4波長である。合成器113の合成方式の特徴は、各入力間のアイソレーション特性は良くないが、入力端113a、入力端113b、入力端113c、及び入力端113dから同相、同レベルの信号が入力された状態であれば効率的な合成出力を得ることができることである。また、入力端113a、入力端113b、入力端113c、及び入力端113dを結合点113eに接続するケーブル長はそれぞれ1/2波長とするため、入力端113a、入力端113b、入力端113c、又は入力端113dのいずれかを未接続とすると、合成器113は、未接続とした入力端は擬似的に開放端と見なすことができる。このため、合成器113の他の入力端に入力される信号が開放端と見なされた未接続の入力端に流れ込むことがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−102777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、第1の電力増幅器102、第2の電力増幅器105、第3の電力増幅器108、及び第4の電力増幅器111のいずれかが故障した場合には、故障した電力増幅器に対応する入力端は開放端とは見なされないため、故障した電力増幅器は合成器113に接続されたままの状態となる。また、第1の電力増幅器102、第2の電力増幅器105、第3の電力増幅器108、及び第4の電力増幅器111の特性インピーダンスは50Ωであるので、故障した電力増幅器の特性インピーダンスの50Ωが合成器113に接続されたままの状態となる。このように、合成器113に特性インピーダンスの50Ωが接続されたままの状態となることで、合成器113の出力電力が低下してしまうという現象が発生していた。
【0008】
従来の放送用送信装置の信号合成部30における第1の電力増幅器102、第2の電力増幅器105、第3の電力増幅器108、及び第4の電力増幅器111のいずれか1台が故障し、合成器113にそのまま接続されている場合と、故障した電力増幅器を合成器113から取り外した場合における合成器113の出力電力について比較する。
(1) 故障した電力増幅器を合成器に接続したままの場合
合成器の定格出力をP、実合成出力をP、合成器113における電力増幅器の台数をn、故障した台数をmとすると、下式により求められる。
={(n−m)^2/n^2}×P・・・(式1)
この(式1)を図4に示す従来の信号合成部30において1台の電力増幅器が故障した場合に適用すると、P=1000W、n=4、m=1となり、合成器113の出力電力は下記となる。
={(4−1)^2/4^2}×1000=562.5W
(2) 故障した電力増幅器を合成器から外した場合
合成器の定格出力をP、実合成出力をP'、電力増幅器の台数をn、故障した台数をmとすると、下式により求められる。
={(n−m)/n}×P・・・(式2)
この(式2)を図4に示す従来の信号合成部30において1台の電力増幅器が故障した場合適用すると、P=1000W、n=4、m=1となり、合成器113の出力電力は下記となる。
={(4−1)/4}×1000=750W
【0009】
以上により、電力増幅器が故障した場合は、故障した電力増幅器を合成器に接続したままの状態よりも合成器から外した方が合成器の出力電力に与える影響は小さくすることができる。従って、故障した電力増幅器は速やかに合成器から外した方がよい。しかし、実際に故障した電力増幅器は合成器から取り外すには、放送用送信装置が設置されている場所まで作業員が出向き、手動で取り外す作業を行う必要がある。また、この問題に対処するため、電力増幅器と合成器との間に同軸スイッチやPINダイオードを用いたスイッチを設け、放送用送信装置が電力増幅器の故障を検知した時点で、放送用送信装置が自動でそのスイッチにより故障した電力増幅器を合成器から切り離す方法も考えられた。しかし、合成器の出力電力は大電力であるので、スイッチを用いて電力増幅器を合成器から切り離しを行うと、スイッチを通すことによる合成器の電力損失を発生させ、またスイッチの誤作動により合成器の信頼性を低下させる場合があるので、スイッチを用いて故障した電力増幅器を合成器から切り離すことは通過損失、信頼性の点で問題であった。
【0010】
特許文献1のインピーダンス整合回路とを有する分配器又は合成器は、電力増幅器を複数使用する場合に、インピーダンス整合回路を複数のλ/4長ケーブルで構成し、分配数または合成数に応じてλ/4長ケーブルを選択して使用することで、分配数又は合成数が変化してもインピーダンス整合回路にてインピーダンスを整合できるようにした例である。特許文献1の分配器又は合成器、また前述の従来技術の放送用送信装置では、電力増幅器が故障した場合、電力増幅器出力は合成器に接続されたままとなり、電力増幅器の特性インピーダンスにより必要以上に出力電力を低下させてしまう。このため、電力増幅器の故障により合成器の出力電力が大きく低下したときに正常な他の電力増幅器の出力電力を大きくすることで、放送用送信装置としての定格出力電力をできるたけ確保するように制御を行う場合がある。しかし、正常な電力増幅器の出力電力を大きくすることで正常な電力増幅器の負担が大きくなる。更にこのように放送用送信装置が運転を続けると、正常な電力増幅器の寿命が短くなり、故障する可能性が高くなる。また、正常な電力増幅器の出力電力を大きくすることで電力増幅器の歪特性が悪化することになり、放送信号の品質の劣化を招く可能性も高く、放送を受信しているサービスエリアへの影響が懸念される。しかし、放送用送信装置は、山間部に建設された局舎に設置され、無人で運用されていることが多い。このため、故障した電力増幅器を合成器から取り外すには、山間部の局舎まで作業員が行かなければならないので、作業員の人件費や交通費などの費用がかかる。
【0011】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決できる無線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の放送用送信装置は、複数の電力増幅器と前記電力増幅器の出力電力を合成する合成器とを有する放送用送信装置において、前記電力増幅器と前記合成器の間に前記電力増幅器毎に設けられ前記電力増幅器の出力電力を入力する複数のローパスフィルタを備え、前記電力増幅器が故障したときに、故障した前記電力増幅器から出力電力を入力する前記ローパスフィルタにより故障した前記電力増幅器の出力電力を減衰することで故障した前記電力増幅器を前記合成器から切り離された状態にすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の電力増幅器を備えた放送用送信装置において、電力増幅器が故障した場合に、電力増幅器を合成器から擬似的に自動で切り離す構造とすることで、電力増幅器の故障による合成器の出力電力の低下を抑えることが可能な放送用送信装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る放送用送信装置の信号合成部の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る放送用送信装置における自動制御装置を備えた信号合成部の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る放送用送信装置の信号合成部における周波数対減衰量特性の変化を示すグラフである。
【図4】従来の放送用送信装置の信号合成部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、放送用送信装置の本発明の実施形態に係る信号合成部10の構成を示す図である。図1に示す放送用送信装置の信号合成部10は、第1の前段部101、第1の電力増幅器102、第1のLPF103、第2の前段部104、第2の電力増幅器105、第2のLPF106、第3の前段部107、第3の電力増幅器108、第3のLPF109、第4の前段部110、第4の電力増幅器111、第4のLPF112、及び合成器113から構成されている。また、合成器113には、入力端113a、入力端113b、入力端113c、入力端113d、結合点113e、及び出力端113fを備えている。第1の前段部101、第2の前段部104、第3の前段部107、及び第4の前段部110は、図4に示す従来の放送用送信装置の信号合成部30に同じである。第1の電力増幅器102、第2の電力増幅器105、第3の電力増幅器108、及び第4の電力増幅器111は、図4に示す従来の放送用送信装置の信号合成部30に同じである。合成器113は、図4に示す従来の放送用送信装置の信号合成部30に同じである。
【0017】
第1のLPF103、第2のLPF106、第3のLPF109、及び第4のLPF112は、出力インピーダンスが50Ωに設計された全て同等の特性を有するπ型の低域ろ波フィルタ或いは整合回路であり、2つの可変コンデンサ115、可変コンデンサ116を内蔵している。この可変コンデンサ115及び可変コンデンサ116は、例えば大電力に耐えられる構造のコンデンサであり、放送用の無停波切替器の移相部で使用している可変形コンデンサ(トロンボーン状線路)、または高耐圧の可変容量形ダイオードとすることも可能である。このような第1のLPF103、第2のLPF106、第3のLPF109、及び第4のLPF112は、同軸スイッチやPINダイオードを用いたスイッチと比べて信頼性が良く、特にPINダイオードを用いて電力信号を直接に開閉するに比べて通過損失が少なく、発熱による劣化・故障が起こりにくく、劣化・故障した場合の悪影響も少ない。
【0018】
第1のLPF103は、第1の電力増幅器102から信号を入力すると合成器113の入力端113aに出力する。第2のLPF106は、第2の電力増幅器105から信号を入力すると合成器113の入力端113bに出力する。第3のLPF109は、第3の電力増幅器108から信号を入力すると合成器113の入力端113cに出力する。第4のLPF112は、第4の電力増幅器111から信号を入力すると合成器113の入力端113dに出力する。第1のLPF103、第2のLPF106、第3のLPF109、及び第4のLPF112は、内蔵する可変コンデンサ115及び可変コンデンサ116を機械的に変位させ或いはバイアス電流を変化させることで可変コンデンサ115及び可変コンデンサ116の容量を大きくし、第1の電力増幅器102、第2の電力増幅器105、第3の電力増幅器108、及び第4の電力増幅器111の出力電力において通過帯域の上限(又は下限)の周波数を低くすることができる。つまり、第1の電力増幅器102、第2の電力増幅器105、第3の電力増幅器108、又は第4の電力増幅器111のいずれかが故障した場合に、それに接続されている第1のLPF103、第2のLPF106、第3のLPF109、又は第4のLPF112により故障した電力増幅器の出力電力における通過帯域を、電力増幅器102等からの信号の周波数から外れさせることで、入力端113a等から見た第1のLPF103等の出力インピーダンスが50Ωよりも十分大きくなる。この結果、電力増幅器は疑似的に合成器113から切り離されたと見なされる。
【0019】
次に、自動制御装置114を備えた放送用送信装置の信号合成部20の構成を図2に示す。信号合成部20の構成は、自動制御装置114を設けている以外は、信号合成部10の構成に同じである。自動制御装置114は、信号合成部20の各機器とケーブルを介して接続し、信号合成部20の各機器を監視し制御を行う装置である。自動制御装置114は、第1の電力増幅器102から故障情報などの信号(以下、監視信号という)を入力し、監視信号により第1の電力増幅器102の故障を検出した場合に、第1のLPF103に対して制御を行うための信号(以下、制御信号)を出力する。同様に、第2の電力増幅器105、第3の電力増幅器108、及び第4の電力増幅器111から監視信号を入力し、監視信号により第2の電力増幅器105、第3の電力増幅器108、又は第4の電力増幅器111のいずれかの故障を検出した場合に、対応する第2のLPF106、第3のLPF109、又は第4のLPF112に対して制御信号を出力する。
【0020】
このような、図2に示す放送用送信装置の信号合成部20を用いて、第2の電力増幅器105が故障した場合の信号の流れについて、具体的に説明する。
【0021】
第2の電力増幅器105が故障すると、まず、第2の電力増幅器105から故障情報の監視信号が自動制御装置114に出力される。次いで、自動制御装置114が第2の電力増幅器105から故障情報の監視信号を入力すると、自動制御装置114はその監視信号の故障情報に基づいて故障個所を把握する。次いで、自動制御装置114は、内蔵する可変コンデンサ115の容量を大きくするために通過特性を変化させる制御信号を生成し、第2のLPF106に出力する。この制御信号は可変コンデンサ115のコンデンサの可変部を駆動させるための接点信号等である。このように、第2のLPF106の通過帯域を低周波数側にシフトすることで、故障した第2の電力増幅器105の減衰量を大きくすることができる。つまり、通常時においては、通過帯域を高い周波数とすることで、出力電力が高い周波数で減衰(以下、カットオフという)されるので通過帯域の出力電力の減衰量が小さくなる。しかし、第2の電力増幅器105が故障したときには、通過帯域を低い周波数とすることで、信号帯域が通過帯域から外れ出力電力の減衰量が大きくなる。
【0022】
図3は、信号合成部20における周波数対減衰量特性の変化を示すグラフ200である。破線は正常時の特性、実線は故障時の特性、斜線の矩形領域は本例の放送用送信装置が扱う信号の帯域を示す。通過特性を矢印200aの方向に移動すると減衰量が大きくなり始める周波数(以下、カットオフ周波数という)が低くなり、信号帯域での減衰量が大きくなる。このように信号帯域での減衰量が大きくなると、故障した第2の電力増幅器105が接続されている入力端113bは開放端と見なされる。これにより、合成器113は、故障した第2の電力増幅器105を擬似的に切り離されたと見なすことができるので、合成器113は合成出力の低下を最小限に抑えることができるようになる。
【0023】
尚、実施形態では、第1のLPF103等はパイ型フィルタ1段としたが、2段、3段と段数を増加させてもよく、第二種チェビシェフフィルタ等として構成することも可能である。複数の段数を一斉に切り替えた場合には、図3に示す周波数対減衰量特性の変化を示すグラフ200において、遮断特性が急峻になる。第1のLPF103等は、単に信号遮断手段としてではなく、隣接帯域への不要輻射を抑圧する目的を兼ねることができる。第1のLPF103等の通過帯域の可変幅は、少なくとも使用する所定の信号周波数において電力増幅器をアイソレーション状態とみなせる程度に有していればよい。更に複数のチャンネルに共通に利用可能な放送用送信装置とする場合、それら複数のチャンネル分の可変幅を有すると良い。第1のLPF103等は、入力インピーダンスと出力インピーダンスが異なるもの(つまり整合回路)であっても良い。その場合、故障時には整合状態から外れさせれば良いので、可変コンデンサ115等の容量を変化させる方向は任意である。
また、第1のLPF103等に数100Wの信号を通過させる必要があり、可変コンデンサ115、可変コンデンサ116を電子的に実現する場合、静電容量の小さい高周波大電力用コンデンサと、容量の大きい低圧用コンデンサを直列にし、後者の低圧用コンデンサを可変容量ダイオード(バラクタ)、又は短絡用PINダイオードと固定コンデンサの並列回路で構成する。低圧用コンデンサは更に複数のコンデンサを直列或いは並列接続して可変範囲(可変数)を増やすことができる。可変コンデンサ115、可変コンデンサ116を構成するのに可変容量ダイオードを用いる場合は、可変容量ダイオードに通常時は逆のバイアス電圧をかけておき、コンデンサの容量を小さくする。そして、第2の電力増幅器105が故障したときには、第2のLPF106が内蔵する可変容量ダイオードのバイアス電圧を断または小さくすることでコンデンサの容量が大きくなる。このように、可変容量ダイオードのコンデンサの容量を制御することで、可変容量ダイオードは可変コンデンサ115と同様の機能を実現することが可能となる。
また、通過特性が望ましい方向に確実に変化するのであれば、第1のLPF103等を破壊させる或いは破壊する可能性を高める様な制御をしても良い。また、第1のLPF103等の回路の内部或いは入力端113a等との接続部に、高周波用のヒューズを設けても良い。入力端113a等との接続部には、同軸リレー、サイラトロン等の遮断手段を更に設けても良い。
【0024】
このような実施形態によれば、電力増幅器と合成器の間にLPFを設けることで、電力増幅器が故障した場合に、LPFが合成器から電力増幅器を擬似的に自動で切り離すことで電力損失を低減することができる。また、電力増幅器が故障した場合における放送用送信装置の保全性や可用性の低下を抑えるので、保守費用を低減することができる。
【0025】
以上により、複数の電力増幅器を備えた放送用送信装置において、電力増幅器が故障した場合に、電力増幅器を合成器から擬似的に自動で切り離す構造とすることで、電力増幅器の故障による合成器の出力電力の低下を抑えることが可能な放送用送信装置を提供できる。
【0026】
以上、具体的な実施の形態により本発明を説明したが、上記実施の形態は本発明の例示であり、この実施の形態に限定されないことは言うまでもない。
【0027】
以上をまとめると、本発明は次のような特徴を有する。
(1) 本発明の放送用送信装置は、複数の電力増幅器と前記電力増幅器の出力電力を合成する合成器とを有する放送用送信装置において、前記電力増幅器と前記合成器の間に前記電力増幅器毎に設けられ前記電力増幅器の出力電力を入力する複数のローパスフィルタを備え、前記電力増幅器が故障したときに、故障した前記電力増幅器から出力電力を入力する前記ローパスフィルタにより故障した前記電力増幅器の出力電力を減衰することで故障した前記電力増幅器を前記合成器から切り離された状態にすることを特徴としている。
(2) (1)の本発明の放送用送信装置の前記ローパスフィルタは、容量を可変にすることができる可変形コンデンサを内蔵していることを特徴としている。
(3) (2)の本発明の放送用送信装置は、前記可変形コンデンサの容量を大きい方向に変化させることで、故障した前記電力増幅器のカットオフ周波数を低くし、前記電力増幅器の出力電力の減衰量が大きくなるように制御することを特徴としている。
(4) (1)の本発明の放送用送信装置の前記ローパスフィルタは、容量を可変にすることができる可変容量形ダイオードを内蔵していることを特徴としている。
(5) (4)の本発明の放送用送信装置は、前記可変容量形ダイオードの容量を大きい方向に変化させることで、故障した前記電力増幅器のカットオフ周波数を低くし、前記電力増幅器の出力電力の減衰量が大きくなるように制御することを特徴としている
(6) (1)から(5)のいずれかの本発明の放送用送信装置の前記ローパスフィルタは、前記容量を切り替える複数段を備えることを特徴としている。
(7) (1)から(6)のいずれかの本発明の放送用送信装置は、前記電力増幅器から故障情報を入力する自動制御装置を備え、前記自動制御装置は前記故障情報により故障している前記電力増幅器を検出し、前記自動制御装置は、故障が検出された前記電力増幅器から出力電力を入力する前記ローパスフィルタの前記容量が大きくなるように制御することを特徴としている。
(8) 本発明の放送用送信装置の制御方法は、複数の電力増幅器と前記電力増幅器の出力電力を合成する合成器とを有する放送用送信装置の制御方法において、前記電力増幅器と前記合成器の間に前記電力増幅器毎に設けられ前記電力増幅器の出力電力を入力する複数のローパスフィルタを備えることで、前記電力増幅器が故障したときに、故障した前記電力増幅器から出力電力を入力する前記ローパスフィルタにより故障した前記電力増幅器の出力電力を減衰することで故障した前記電力増幅器を前記合成器から切り離された状態にすることを特徴としている。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、放送用送信装置に好適であるが、放送用送信装置に限られるものではなく、信号を合成する装置一般に適用可能である。
【符号の説明】
【0029】
10・・・信号合成部
20・・・信号合成部
30・・・信号合成部
101・・・第1の前段部
102・・・第1の電力増幅器(第1のPA)
103・・・第1のLPF
104・・・第2の前段部
105・・・第2の電力増幅器(第2のPA)
106・・・第2のLPF
107・・・第3の前段部
108・・・第3の電力増幅器(第3のPA)
109・・・第3のLPF
110・・・第4の前段部
111・・・第4の電力増幅器(第4のPA)
112・・・第4のLPF
113・・・合成器
113a・・入力端
113b・・入力端
113c・・入力端
113d・・入力端
113e・・結合点
113f・・出力端
114・・・自動制御装置
115・・・可変コンデンサ
116・・・可変コンデンサ
200・・・周波数対減衰量特性の変化を示すグラフ
200a・・矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電力増幅器と前記電力増幅器の出力電力を合成する合成器とを有する放送用送信装置において、
前記電力増幅器と前記合成器の間に前記電力増幅器毎に設けられ前記電力増幅器の出力電力を入力する複数のローパスフィルタを備え、
前記電力増幅器が故障したときに、故障した前記電力増幅器から出力電力を入力する前記ローパスフィルタにより故障した前記電力増幅器の出力電力を減衰することで故障した前記電力増幅器を前記合成器から切り離された状態にすることを特徴とする放送用送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−48363(P2013−48363A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186093(P2011−186093)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】