説明

放送送受信システム、放送送信装置および放送受信装置

【課題】放送送信装置が映像データや音声データを送信してから放送受信装置が映像や音声を出力するまでに遅延時間があり、この遅延時間が放送受信装置毎に異なっている場合においても、正確な時刻に合わせた時報を出力することができる。
【解決手段】放送送信装置1の送信部11は、特定の時刻を報知する時報データを送信する。放送受信装置2の受信部21は、放送送信装置1から送信された時報データを受信する。放送受信装置2の記憶部26は、受信された時報データを記憶する。放送受信装置2の時報データ出力部27は、時計部25の時刻に基づいて、記憶部26に記憶された時報データを当該特定の時刻に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送送受信システム、放送送信装置および放送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アナログ放送においては、送受信機における処理遅延がほとんどないことを前提として、秒単位の誤差を生じることなくテレビ画面に秒針を含む時計の表示を行うなどの方法で時報を出力している。しかし、デジタル放送においては、送受信機における処理遅延や伝送路の伝搬遅延が増大し、秒単位で誤差が生じるため、受信機は正確な時報を出力することができない。
【0003】
この問題を解決するため、送信機は、遅延のない手段で基準となる時刻情報を受信機に送ることにより補正値を算出し、当該補正値を用いてあらかじめ補正した時刻情報を受信機に送信することにより、受信機において正確な時刻に合わせた時報を出力する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−69513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、送信機側で遅延時間を補正しているため、受信機の復調回路や復号回路等において生じる処理遅延、あるいは受信機の場所による伝搬遅延に個体差がある場合には、すべての受信機において正確な時刻に合わせた時報を出力することができないという問題がある。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、放送送信装置が映像データや音声データを送信してから放送受信装置が映像や音声を出力するまでに遅延時間があり、この遅延時間が放送受信装置毎に異なっている場合においても、正確な時刻に合わせた時報を出力することができる放送送受信システム、放送送信装置および放送受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、放送送信装置と放送受信装置とを備えた放送送受信システムにおいて、前記放送送信装置は、特定の時刻を報知する時報データを送信する送信部を備え、前記放送受信装置は、前記放送送信装置から送信された時報データを受信する受信部と、前記受信された時報データを記憶する記憶部と、時計と、前記時計の時刻に基づいて、前記記憶部に記憶された時報データを当該特定の時刻に出力する時報データ出力部と、を備えた事を特徴とする放送送受信システムである。
【0008】
また、本発明は、特定の時刻を報知する時報データを放送受信装置に送信する送信部を備えた事を特徴とする放送送信装置である。
【0009】
また、本発明は、放送送信装置から送信された時報データを受信する受信部と、前記受信された時報データを記憶する記憶部と、時計と、前記時計の時刻に基づいて、前記記憶部に記憶された時報データを当該特定の時刻に出力する時報データ出力部と、を備えた事を特徴とする放送受信装置である。
【0010】
また、本発明は、テレビ放送の受信映像と前記時報データの映像とを合成する映像合成部を備えた事を特徴とする放送受信装置である。
【0011】
また、本発明は、テレビ放送の受信音声と前記時報データの音声とを合成する音声合成部を備えた事を特徴とする放送受信装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、放送送信装置が映像データや音声データを送信してから放送受信装置が映像や音声を出力するまでに遅延時間があり、この遅延時間が放送受信装置毎に異なっている場合においても、正確な時刻に合わせた時報を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態における放送送受信システムの構成を示した構成図である。
【図2】本実施形態において、放送受信装置がテレビ放送の一部として時報を再生する際のデータの流れを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。図1は本実施形態の放送送受信システムの構成を示した構成図である。図示する例では、放送送受信システムは、放送送信装置1と放送受信装置2とを備えている。
【0015】
放送送信装置1は、送信部11を備えている。送信部11は、放送受信装置2に対して、符号化された映像データと音声データとマルチメディアコンテンツデータとを送信する。映像データは、テレビ放送の映像データである。音声データは、テレビ放送の音声データである。
【0016】
マルチメディアコンテンツデータは、時報データを含んだデータである。時報データは、放送受信装置2がテレビ放送の一部として時刻を画像や音声などで出力する時刻、すなわち時報を再生する時刻を指示する時報再生指示情報と、時刻を示す映像データと、時刻を示す音声データとを含んだデータである。時刻を示す映像データは、例えば、針が動くアナログ時計の映像である。また、時刻を示す音声データは、例えば、1秒間隔の発振音である。放送受信装置2は、時刻を示す映像データと時刻を示す音声データとに基づいて時報を再生する。
【0017】
放送受信装置2は、受信部21と、音声デコーダ部22と、映像デコーダ部23と、マルチメディアコンテンツデコーダ部24と、時計部25と、記憶部26と、時報データ出力部27と、映像合成部28と、音声再生部29(音声合成部)と、映像再生部30とを備えている。
【0018】
受信部21は、放送送信装置1から送信された、符号化された映像データと音声データとマルチメディアコンテンツデータとを受信する。音声デコーダ部22は、受信部21が受信した符号化された音声データを復号し、音声再生部29に入力する。映像デコーダ部23は、受信部21が受信した符号化された映像データを復号し、映像合成部28に入力する。マルチメディアコンテンツデコーダ部24は、受信部21が受信した符号化されたマルチメディアコンテンツデータを復号し、マルチメディアコンテンツデータに含まれる時報データを記憶部26に入力する。
【0019】
記憶部26は、入力された時報データを記憶する。時計部25は、時計である。時報データ出力部27は、時計部25の時刻を参照し、時報データに含まれる時報再生指示情報で指示された時刻に達した場合、時報データを出力する。具体的には、時報データに含まれる時刻を示す映像データを映像合成部28に入力する。また、時報データに含まれる時刻を示す音声データを音声再生部29に入力する。
【0020】
映像合成部28は、映像デコーダ部23から入力された映像データと、時報データ出力部27から入力された時刻を示す映像データと合成し、合成した映像データを映像再生部30に入力する。
【0021】
音声再生部29は、スピーカーなどを備え、音声デコーダ部22から入力された音声データと、時報データ出力部27から入力された時刻を示す音声データとに基づいて音声を再生する。映像再生部30は、液晶ディスプレイなどを備え、映像合成部28から入力された映像データに基づいて、映像を再生する。
【0022】
次に、図2を参照して、本実施形態の放送送受信システムの動作について説明する。図2は、本実施形態において、放送受信装置2がテレビ放送の一部として時報を再生する際のデータの流れを示した図である。
【0023】
なお、放送送信装置1は、テレビ放送用の映像データと音声データとを放送受信装置2に送信しており、放送受信装置2は、受信したテレビ放送用の映像データと音声データとに基づいて映像と音声を再生しているとする。
【0024】
(ステップS101)放送受信装置2の時計は、電波時計やGPS(Global Positioning System、グローバル・ポジショニング・システム)を用いて、時刻を校正する。
【0025】
(ステップS102)テレビ放送の一部として放送受信装置2に時報を再生させる場合、時報を再生させる時刻より前に、放送送信装置1の送信部11は、時報を再生させる時刻を指示する時報再生指示情報と、時刻を示す映像データと、時刻を示す音声データとを含んだマルチメディアコンテンツデータ(時報データ)を、テレビ放送用の映像データと音声データと共に放送受信装置2に送信する。
【0026】
例えば、テレビ放送の一部として、放送受信装置2に6時59分57秒から7時0分3秒までの時報を再生させる場合、放送送信装置1の送信部11は、6時59分57秒から時報の再生を開始することを指示する時報再生指示情報と、6時59分57秒から7時0分3秒までの時刻を示す映像データと、6時59分57秒から7時0分3秒までの時刻を示す音声データとを含んだマルチメディアコンテンツデータを放送受信装置2に送信する。
【0027】
なお、デジタル放送のデータ放送において、時報データ出力部27の動作を開始させる関数を定義し、放送受信装置2に時報を出力させる時刻をイベントメッセージなどで規定する。そして、放送送信装置1が、放送受信装置2に対して、時報データ出力部27の動作を開始させる関数と放送受信装置2に時報を再生させる時刻を示すイベントメッセージとを送信することで、放送受信装置2に対して時報を再生する時刻を指示することができるようにしてもよい。
【0028】
(ステップS103)放送受信装置2の受信部21は、テレビ放送用の映像データと音声データと共に送信されたチメディアコンテンツデータを受信する。すなわち、受信部21は、マルチメディアコンテンツデータに含まれる時報再生指示情報を受信する。また、受信部21は、受信したマルチメディアコンテンツデータをマルチメディアコンテンツデコーダ部24に入力する。
【0029】
(ステップS104)マルチメディアコンテンツデコーダ部24は、入力されたマルチメディアコンテンツデータを復号する。また、マルチメディアコンテンツデコーダ部24は、マルチメディアコンテンツデータに含まれる、時刻を示す映像データと、時刻を示す音声データとを記憶部26に入力する。記憶部26は、入力された時刻を示す映像データと、時刻を示す音声データとを記憶する。
【0030】
また、マルチメディアコンテンツデコーダ部24は、マルチメディアコンテンツデータに含まれる、時報を再生させる時刻を指示する時報再生指示情報を時報データ出力部27に入力する。これにより、時報データ出力部27に対して、時報を構成する映像データと音声データを出力する準備を行うように指示する。
【0031】
(ステップS105)時報データ出力部27は、時報を構成する映像データと音声データを出力する準備を行う。具体的には、時計部25の時刻を参照し、時報再生指示情報で指示された時報を再生する時刻に達するまで準備状態として処理を中断する。
【0032】
(ステップS106)時報データ出力部27は、時計部25の時刻を参照し、時報再生指示情報で指示された時報を再生する時刻に達した場合、記憶部26が記憶する時刻を示す映像データを読み出して映像合成部28に入力し、記憶部26が記憶する時刻を示す音声データを読み出して音声再生部29に入力する。すなわち、時報データ出力部27は、時刻を示す情報を出力する。
【0033】
(ステップS107)音声再生部29は、時報データ出力部27から時刻を示す音声データの入力を受け付け、音声デコーダ部22からテレビ放送の音声データの入力を受け付ける。また、映像合成部28は、時報データ出力部27から時刻を示す映像データの入力を受け付け、映像デコーダ部23からテレビ放送の映像データの入力を受け付け、2種類の映像データを合成して映像再生部30に入力する。
【0034】
(ステップS108)映像再生部30は、入力された映像データに基づいて映像を再生する。
(ステップS109)音声再生部29は、入力された時刻を示す音声データとテレビ放送の音声データとに基づいて音声を再生する。
【0035】
上述したとおり、放送受信装置2は時計を参照して正確な時刻を取得する。また、放送送信装置1は、放送受信装置2に対して、時報を再生する時刻を指示する。また、放送受信装置2は、取得した正確な時刻に基づいて、放送送信装置1から指示された時刻に、テレビ放送の一部として、テレビ放送の映像とテレビ放送の音声と時報とを合成して再生する。
【0036】
これにより、放送受信装置2が複数存在しており、放送送信装置1が映像データや音声データを送信してから放送受信装置2が映像や音声を出力するまでに遅延時間があり、この遅延時間が放送受信装置2毎に異なっている場合においても、放送受信装置2は、正確な時刻に合わせて、時刻を示す映像や音声、すなわち時報を再生することができる。
【0037】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0038】
例えば、本実施形態では、放送送信装置1が放送受信装置2に時刻を示す映像データと時刻を示す音声データとを送信しているが、これに限らず、予め放送受信装置2が時刻を示す映像データと時刻を示す音声データとの両方または一方を記憶していてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1・・・放送送信装置、2・・・放送受信装置、11・・・送信部、21・・・受信部、22・・・音声デコーダ部、23・・・映像デコーダ部、24・・・マルチメディアコンテンツデコーダ部、25・・・時計部、26・・・記憶部、27・・・時報データ出力部、28・・・映像合成部、29・・・音声再生部、30・・・映像再生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送送信装置と放送受信装置とを備えた放送送受信システムにおいて、
前記放送送信装置は、
特定の時刻を報知する時報データを送信する送信部
を備え、
前記放送受信装置は、
前記放送送信装置から送信された時報データを受信する受信部と、
前記受信された時報データを記憶する記憶部と、
時計と、
前記時計の時刻に基づいて、前記記憶部に記憶された時報データを当該特定の時刻に出力する時報データ出力部と、
を備えた事を特徴とする放送送受信システム。
【請求項2】
特定の時刻を報知する時報データを放送受信装置に送信する送信部
を備えた事を特徴とする放送送信装置。
【請求項3】
放送送信装置から送信された時報データを受信する受信部と、
前記受信された時報データを記憶する記憶部と、
時計と、
前記時計の時刻に基づいて、前記記憶部に記憶された時報データを当該特定の時刻に出力する時報データ出力部と、
を備えた事を特徴とする放送受信装置。
【請求項4】
テレビ放送の受信映像と前記時報データの映像とを合成する映像合成部
を備えた事を特徴とする請求項3に記載の放送受信装置。
【請求項5】
テレビ放送の受信音声と前記時報データの音声とを合成する音声合成部
を備えた事を特徴とする請求項3または請求項4のいずれか1項に記載の放送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−226673(P2010−226673A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74624(P2009−74624)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】