放電ランプおよびその製造方法
【課題】 ビーズレスの電極マウントを用いた場合において、耐久性が高い放電ランプおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明の放電ランプは、ガラスバルブ1の端部に電極31とインナーリード32とを有する電極マウント3が封着されており、電極マウント3は、インナーリード32周りにビーズが形成されていないビーズレスの電極マウント3であって、電極マウント3が封着されている封着部12のガラスバルブ1内部側の形状は、凹ないし凸の形状であり、その凹ないし凸の形状の管軸方向長さをLとしたとき、−0.3mm≦L≦1.5mm(ただし、凸を正とする)を満たしている。また、インナーリード32の表面には、過酸化層321が形成されており、過酸化層321の少なくとも一部が封着部12内に位置している。
【解決手段】
本発明の放電ランプは、ガラスバルブ1の端部に電極31とインナーリード32とを有する電極マウント3が封着されており、電極マウント3は、インナーリード32周りにビーズが形成されていないビーズレスの電極マウント3であって、電極マウント3が封着されている封着部12のガラスバルブ1内部側の形状は、凹ないし凸の形状であり、その凹ないし凸の形状の管軸方向長さをLとしたとき、−0.3mm≦L≦1.5mm(ただし、凸を正とする)を満たしている。また、インナーリード32の表面には、過酸化層321が形成されており、過酸化層321の少なくとも一部が封着部12内に位置している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶テレビやノートパソコンのバックライトの光源などに用いられる放電ランプおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、バックライトに用いられる光源は、冷陰極放電ランプが主流である。冷陰極放電ランプは、ガラスバルブの端部に、電極やインナーリードなどからなる電極マウントが封着された構造になっている。この電極マウントには、特許文献1〜特許文献4のように、インナーリードの周りにガラス玉(以下、ビーズ)を形成したビーズ付きの電極マウントを用いるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−151438号公報
【特許文献2】特開2003−229060号公報
【特許文献3】特開2004−335245号公報
【特許文献4】特許第4185539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このビーズは、ランプの強度上も製造上も重要な部材であるため、従来においては必須のものであったが、最近では、部品点数の削減のため、ビーズを使用しないで放電ランプを実現できないか検討が行われている。
【0005】
しかしながら、ビーズを使用しない場合、弱い衝撃で割れや剥離したり、熱膨張によって破損したりするなど、従来のランプよりも耐久性が低いという問題が発生しており、実用レベルのビーズレスの放電ランプを実現できていない状態であった。
【0006】
本発明の目的は、ビーズレスの電極マウントを用いた場合において、耐久性が高い放電ランプおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の放電ランプは、バルブの端部に電極とインナーリードとを有する電極マウントが封着された放電ランプにおいて、前記電極マウントは、前記インナーリード周りにビーズが形成されていないビーズレスの電極マウントであって、前記電極マウントが封着されている封着部の前記バルブ内部側の形状は、凹ないし凸の形状であり、その凹ないし凸の形状の管軸方向長さをLとしたとき、−0.3mm≦L≦1.5mm(ただし、凸を正とする)を満たしていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の放電ランプの製造方法は、バルブの端部に電極とインナーリードとを有する電極マウントが封着された放電ランプの製造方法において、前記インナーリード周りにビーズが形成されていないビーズレスの前記電極マウントを、前記バルブの封着予定部に位置させる電極マウント配置工程と、前記封着予定部を加熱して前記バルブを前記インナーリードに接触させるバルブ加熱工程と、前記インナーリードを管軸方向のバルブ中央側に前記バルブに対して相対的に移動させる電極マウント移動工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ビーズレスの電極マウントを用いた場合において、耐久性が高い放電ランプおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態の放電ランプの製造方法によって製造された放電ランプについて説明するための図。
【図2】図1の一点鎖線で囲ったXの範囲について説明するための図。
【図3】本実施の形態の放電ランプの製造方法について説明するための図。
【図4】比較例の放電ランプについて説明するための図。
【図5】実施例1、比較例、従来例の放電ランプの熱衝撃試験の結果について説明するための図。
【図6】実施例1、実施例2、比較例、従来例の放電ランプの評価について説明するための図。
【図7】実施例3の放電ランプについて説明するための図。
【図8】実施例4の放電ランプについて説明するための図。
【図9】実施例1、実施例3、実施例4、比較例の放電ランプの剥離率について説明するための図。
【図10】本発明の第2の実施の形態の放電ランプについて説明するための図。
【図11】本発明の第3の実施の形態の放電ランプの製造方法について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態の放電ランプの製造方法によって製造された放電ランプについて説明するための図である。
【0012】
本発明の実施の形態の放電ランプは、冷陰極蛍光ランプ(Cold Cathode Fluorescent Lamp)であり、主要部として、硬質ガラスや軟質ガラスからなるガラスバルブ1を備えている。ガラスバルブ1は、中央に筒状部11、両端に封着部12が形成された細長いガラスであり、その内部には放電空間111が形成されている。放電空間111には、水銀および希ガスからなる放電媒体が封入されている。希ガスとしてはネオン、アルゴン、キセノン、クリプトンなどの単体または混合ガスを用いることができる。ガラスバルブ1の内面には、少なくともランプの光放出領域を覆う範囲にRGBの3波長蛍光体からなる蛍光体層2が形成されている。
【0013】
封着部12には、電極マウント3が封着されている。この電極マウント3は、図からもわかるようにガラス製のビーズを有さない、いわゆるビーズレスタイプの電極マウントであり、電極31、インナーリード32、アウターリード33で構成されている。
【0014】
電極31は、底部と側部を備えた有底開口状(カップ状)を呈しており、その開口がガラスバルブ1の中央側になるように放電空間111の両側に対向配置されている。この電極31としては、例えば、ニッケル、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、レニウムなどのスパッタしにくい金属を使用することができる。
【0015】
インナーリード32は、封着部12に封着されており、その一端は放電空間111に導出され、電極31の底部と溶接により接合されている。インナーリード32としては、ガラスバルブ1の熱膨張係数に対し、±10×10−7/℃以内の材料を用いるのが望ましい。この例としては、コバール(ニッケル、鉄、コバルトなどを含む合金)、鉄−ニッケル合金、モリブデン、タングステンなどがあるが、本発明ではコバール、鉄−ニッケル合金などの表面に鉄が析出している材料を使用するのが特に望まれる。
【0016】
アウターリード33は、例えばジュメットからなり、ランプ軸に沿って外部空間方向に延出するように、ガラスバルブ1の外部に導出されたインナーリード32と溶接により接合されている。
【0017】
ここで、本実施の形態の放電ランプの封着部付近の構成について、図2を用いてさらに詳しく説明する。図2は、図1の一点鎖線で囲ったXの範囲について説明するための図であり、(a)は外観図、(b)は断面図である。なお、図2(a)およびこれ以降の外観図において、封着部12付近のインナーリード321が膨張ないし縮小しているのは、ガラスによるレンズ効果の影響を考慮して図示したためである。
【0018】
図からもわかるように、封着部12は、内部にビーズはなく、インナーリード32にガラスバルブ1が直接封着された構成である。その内側形状はほぼフラットな形状となっていて、インナーリード32に対してガラスが略垂直になるように封着されているため、熱によりガラス等が膨張しても当該部分に応力が集中しにくい形状となっている。また、インナーリード32のバルブ端部側の表面には過酸化層321が形成されており、その一部が封着部12に封着されている。この過酸化層321は、ガラスとの封着性を向上させる。過酸化層321とは、目視において黒化して見える程度の酸化層のことであり、拡散濃度が15%〜50%のものである。なお、拡散濃度はインナーリード中の鉄の検出濃度を100%としたときの拡散開始時点での鉄の濃度の相対値であり、インナーリード32の加熱温度、加熱時間などの条件により調整可能である。
【0019】
次に、図2のような放電ランプの製造方法、特に封止側(1st側)の電極マウント3の封着工程について、図3を参照しながら詳しく説明する。
【0020】
まず、(a)のように、内面に蛍光体層2を形成が形成されたガラスバルブ1を管軸が地面に対して略垂直になるように配置するとともに、電極マウント3をガラスバルブ1の下端部に配置する電極マウント配置工程を行い、ガラスバルブ1を固定部材4で固定、電極マウント3を押し上げ手段5で支持する。ここで、この工程でガラスバルブ1内に配置される電極マウント3は、水素還元などの方法により、インナーリード32と電極31やアウターリード33の接合時など、製造過程時の熱により発生した金属表面の酸素成分を除去した、いわゆる還元処理済みの電極マウントである。
【0021】
次に、(b)のように、インナーリード32とアウターリード33の一部を覆っているバルブ部分である封着予定部13をバーナー6で加熱して、(c)のように、ガラスの一部をインナーリード32に接触させ、封着部12を形成するバルブ加熱工程を行う。そして、本実施の形態では、バルブ加熱工程に連続して過酸化層形成工程を行っている。すなわち、封着部12が形成された後、封着部12の外部に突出しているインナーリード32をバーナー6で加熱して、表面に過酸化層321を形成している。
【0022】
インナーリード32の表面に過酸化層321が形成されたら、バーナー6をガラスバルブ1から離し、封着部12の温度が高いうちに(d)のように、例えば、D=1mmだけ押し上げ手段5を上側に移動させることでアウターリード33を上側に持ち上げる電極マウント移動工程を行う。この電極マウント移動工程により、インナーリード32付近のガラスが管軸方向の中央側に移動して、封着部12の形状が矯正されるとともに、封着部12の外部にあった過酸化層321が封着部12の内部に押し込まれるため、(e)のように、封着部32の内側形状がほぼフラットで、かつ封着部12内に過酸化層321が存在する放電ランプを形成することができる。
【0023】
なお、上記方法よりランプを製造したかどうかは、ビーズの有無、封着部12の内側の形状、封着部12内の過酸化層321の有無等を観察することで確認することができる。
【0024】
下記に本実施の形態の放電ランプの一実施例を示す。
【0025】
(実施例1)
ガラスバルブ1;軟質ガラス、全長=833.5mm、外径=4.0mm、内径=3.0mm、肉厚=0.5mm、熱膨張係数=92×10−7/℃、
放電媒体;水銀、ネオン80%とアルゴン20%の混合ガス=30torr、
蛍光体層2;RGB蛍光体で構成、
電極31;ニッケル製、管軸方向長さ=10mm、底部厚み=0.12mm、外径=2.7mm、内径=2.5mmのカップ状、
インナーリード32;52アロイ(ニッケル=52%、鉄=48%の合金)製、直径=0.8mm、熱膨張係数=98×10−7/℃、
過酸化層321;拡散距離=2.4μm、拡散濃度=31.6%、
アウターリード33;ジュメット製、直径=0.6mm、
封着長L1=1.484mm、電極−封着部間距離L2=0.722mm、封着部32の内部形状=フラット。
【0026】
この実施例のランプ(実施例1)と、図4のような図3(c)の工程後で、(d)の工程は行っていない放電ランプ(比較例)と、従来のビーズ付きの放電ランプ(従来例)について熱衝撃試験を行った。その結果を図5に示す。この熱衝撃試験は、ランプを管端から約5mmまでを半田槽(270℃〜430℃)に1秒かけて浸漬させ、その状態を5秒間半田槽内で維持した後、半田槽から取り出して常温で自然冷却を行うことを1サイクルとする動作を1〜5サイクル行ったのち、グロー検査・顕微鏡でクラックを検査する試験である。
【0027】
図5からわかるように、実施例1は430℃の高温であってもほとんどクラックが発生することがないのに対し、従来例は300℃、比較例は360℃でクラックが発生してしまっている。この結果から、実施例は、従来例や比較例よりも格段に熱衝撃に対して強いことがわかる。
【0028】
また、ガラスバルブ1を固定した状態でアウターリード33を管軸方向の外側に徐々に強く引っ張っていき、引っ張り強さが15kgfに達するまでに、インナーリード32とガラスが剥離するかどうかを確認する引っ張り強度試験を行ったところ、実施例1は約7%、従来例は約44%、比較例は全てで全面が剥離するという結果になった。この結果から、実施例1は引っ張り強度が高いことがわかる。
【0029】
以上から、製造過程において、電極マウント移動工程や過酸化層形成工程を行い、封着部形状の改善、過酸化を封着部内に配置させることで、従来例や比較例よりも格段に耐久性が高い放電ランプを実現できることがわかる。
【0030】
次に、実施例1と、還元処理後、インナーリード32の表面が黒化しない程度の軽度の酸化処理(事前酸化)を行った電極マウント3を封着したランプ(実施例2)の垂直方向の強度について垂直強度試験を行った。なお、垂直方向強度は、ガラスバルブ1をアウターリード33が略垂直に曲げられた状態で固定し、アウターリード33にランプの管軸に対して垂直方向の荷重を加え、封着部12が破損したときのプッシュプルゲージの値である。
【0031】
結果、実施例1の垂直方向強度は3.09kgf、実施例2は3.58kgfであった。このことから、過酸化と事前酸化の両方を行うことで、さらに強度の高い放電ランプを実現することができることがわかる。ちなみに、比較例は1.00kgf、従来例は3.41kgfであったから、実施例1も実施例2も十分に実用的なレベルであるといえる。
【0032】
次に、これらのランプについて点灯寿命試験を行った。その結果、実施例1と従来例は寿命特性が良好であったが、比較例は途中でリークが発生した。一方、実施例2は、寿命中にランプ電圧が変化したり、水銀が偏るなどの現象が見られた。これは、事前酸化により放電空間111内に酸化層が持ち込まれたことが原因と考えられる。
【0033】
以上の試験から、それぞれのランプの耐久性や寿命特性を評価すると、図6のようになる。すなわち、耐久性、寿命特性、コスト・工程を考慮すると、ビーズレスの電極マウントの場合には、実施例1が最良、実施例2は良、比較例は不可という結果になった。
【0034】
(実施例3)
図7は、実施例3の放電ランプについて説明するための図であり、(a)は外観図、(b)は断面図である。これ以降の実施の形態の各部については、第1の実施の形態の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0035】
実施例3では、封着部12の内側形状が凹の形状になっている。具体的には、インナーリード32に沿って隙間状の凹部121が形成されている。その管軸方向長さL=−0.1mmであり、図4の従来例の管軸方向長さL=−1.2mmより短い。なお、凹部121の管軸方向長さLは、インナーリード32とガラスの接触点〜インナーリード32のレンズ効果がほとんどなくなる部分までの距離とする。また、封着部12内には、過酸化層321が存在しているが、その管軸方向の形成長さは実施例1より短くなっている。
【0036】
この実施例3のような形状は、図3(d)の工程において、実施例1よりも短めに押し上げることで形成することができる。
【0037】
(実施例4)
図8は、実施例4の放電ランプについて説明するための図であり、(a)は外観図、(b)は断面図である。
【0038】
実施例4では、封着部12の内側形状が凸の形状になっている。具体的には、放電空間111に突出するように、封着部12に半球状の凸部122が形成されている。その管軸方向長さL=0.6mmである。また、封着部12内には、過酸化層321が存在しているが、その管軸方向の形成長さは実施例1より長くなっていて、このランプでは凸部122内の一部まで存在している。
【0039】
この実施例4のような形状は、図3(d)の工程において、実施例1よりも距離Dが長めに押し上げることで形成することができる。
【0040】
次に、実施例1、実施例3、実施例4、従来例のランプについて、引っ張り強度試験を行った。その結果を、図9に示す。
【0041】
図9から、実施例1、すなわち封着部形状がフラットな場合が最も引っ張り強度が高く、凹部や凸部の管軸方向長さが長くなるほど引っ張り強度が低下することがわかる。また、その剥離率の傾きから封着部12の内側の形状は、フラット形状、凸形状、凹形状の順で望ましいこともわかる。この結果から、封着部12の内側の形状は、凹ないし凸の形状の管軸方向長さLが、−1.0mm≦L≦1.5mmの範囲になるようにすれば、十分な引っ張り強度を維持できるという結果になった。
【0042】
また、実施例1、実施例3、実施例4、従来例のランプについて、熱衝撃試験を行ったところ、上記の引っ張り試験と同様に、フラットな状態が最も熱衝撃に強いという結果になった。凸形状の場合には、フラット形状の場合とほぼ同等であり、管軸方向長さLが長くなっても熱衝撃耐性はそれほど低下しないことがわかった。一方、凹形状の場合には、熱衝撃に対して極端に弱くなり、特に管軸方向長さLが0.3mmより長くなると低温でもクラックが発生しやすくなってしまうことがわかった。この結果から、封着部12の内側の形状は、凹の形状の管軸方向長さLが0.3mmよりも大きくならないようにすれば、十分な熱衝撃耐性を維持できるという結果になった。
【0043】
以上から、インナーリード32が封着されている封着部12のバルブ内部側の形状は、管軸方向長さLが−0.3mm≦L≦1.5mmとなる凹ないし凸の形状であるのが望ましい。また、−0.2mm≦L≦1.0mm、さらには−0.1mm≦L≦0.5mmとすれば、信頼性の高い放電ランプを実現可能となる。
【0044】
過酸化層321については、封着部12内に少しでも存在していれば、存在しないものよりも格段に耐久性、特に引っ張り強度が向上し、さらに封着部12内の存在範囲が大きいほど耐久性が向上することが確認されている。したがって、過酸化層321は、少なくとも一部が封着部12内に存在しているのがよく、さらには管軸方向長さが長いほどよい。ただし、過酸化層321が封着部12を越えて放電空間111内に存在してしまうと、ランプ電圧の変化、水銀偏りのほか、スローリークなどの影響が懸念されるので、過酸化層321は封着部12の内端側を越えない程度とするのが望ましい。
【0045】
ここで、過酸化層321の封着部12内における長さは、図3(a)におけるガラスバルブ1の開口端とインナーリード32の相対位置、(c)における封着部12の外部に位置するインナーリード32の長さ、(d)における電極マウント3の押し上げ距離Dなどにより、調整が可能である。
【0046】
なお、本発明は、上記実施例の材料の組み合わせに限らず、例えばガラスバルブ1に熱膨張係数が約51×10−7/℃である硼珪酸ガラス、インナーリード32に熱膨張係数が約52×10−7/℃であるコバールを使用した場合であっても同様の効果を得られることを確認済みである。
【0047】
したがって、本実施の形態では、封着部12のガラスバルブ1内部側の形状を凹ないし凸の形状とし、その凹ないし凸の管軸方向長さをLとしたとき、−0.3mm≦L≦1.5mmを満たすようにするとともに、インナーリード32の表面に過酸化層321を形成し、その過酸化層321の少なくとも一部を封着部12内に位置させたことにより、ビーズレスの電極マウントであっても、引っ張り強度が高く、かつ熱衝撃に強くなり、ビーズを備えた従来の電極マウントと同等か、それ以上の耐久性のある放電ランプを実現することができる。
【0048】
また、本実施の形態では、インナーリード32周りにビーズが形成されていないビーズレスの電極マウント3を、管軸が地面に対して略垂直に固定された状態のガラスバルブ1の下端部の封着予定部13に位置させる電極マウント配置工程を行い、封着予定部32を加熱してガラスバルブ1をインナーリード32に接触させるバルブ加熱工程を行ったのちに、インナーリード32を管軸方向の中央側にガラスバルブ1に対して相対的に移動させる電極マウント移動工程として、電極マウント3を上側に押し上げる工程を行うことにより、封着部12の耐久性を向上させることができる。
【0049】
また、インナーリード32は、コバールや鉄−ニッケル合金などの表面に鉄が析出している材料からなり、バルブ加熱工程後、封着部12の外部に位置しているインナーリード32の表面を加熱して過酸化層321を形成する過酸化層形成工程を行ったのちに、電極マウント移動工程を行うことで、過酸化層321を封着部12の内部に位置させることができる。
【0050】
(第2の実施の形態)
図10は、本発明の第2の実施の形態の放電ランプについて説明するための図である。
【0051】
第2の実施の形態では、一端はビーズレス封着、他端はビーズ封着している。本放電ランプのように、排気チップを用いないで封止・排気をするランプでは、一端側の封着工程と、他端側の封着工程が異なっている。例えば、排気側(2nd側)の封着工程は、ガラスバルブ1内が1気圧以下の状態で行ったり、バルブ端に水銀放出媒体を配置したりするなどの違いがあり、このような工程を含む場合にはビーズレス封着は不向きである。そこで、製造を容易にするために、封止側(1st側)はビーズレスの電極マウント、排気側(2nd側)はビーズ付きの電極マウントを用いるようにしてもよい。
【0052】
(第3の実施の形態)
図11は、本発明の第3の実施の形態の放電ランプの製造方法について説明するための図である。
【0053】
第3の実施の形態では、(d)の電極マウント移動工程において、電極マウント3を固定部材8で固定した状態で、押し下げ手段7によりガラスバルブ1を下側に押し下げることで、インナーリード32を管軸方向の中央側にガラスバルブ1に対して相対的に移動させるようにしている。この方法であっても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
なお、本発明の実施の形態は上記に限られるわけではなく、例えば次のように変更してもよい。
【0055】
本発明は、冷陰極蛍光ランプに限らず、熱陰極蛍光ランプ(Hot Cathode Fluorescent Lamp)などのランプに適用してもよい。
【0056】
封着部12の外部の過酸化層321は除去してもよい。つまり、電極マウント3を封着後に還元処理を行うことで封着部12内の過酸化層321は残しつつ、余分な過酸化層321は除去しても問題はない。
【0057】
図3(a)の電極マウント配置工程において、蛍光体層2のラインを電極マウント3の配置調整に利用してもよい。例えば、蛍光体層2の端部に電極31の開口部を合わせるようにすることで、(d)の電極マウント移動工程を経たあとの蛍光体層2と電極31の重複距離のランプ毎のばらつきを小さくすることができる。
【0058】
図3(d)の電極マウント移動工程は、同じ押し上げ距離Dでも、ガラスバルブ1の内径、肉厚、インナーリード32の線径、加熱量、加熱時間などによって、最終的な封着部12の形状が変化するため、それらを考慮して適宜調整するのが望ましい。
【符号の説明】
【0059】
1 ガラスバルブ
11 筒状部
12 封着部
13 封着予定部
2 蛍光体層
3 電極マウント
31 電極
32 インナーリード
321 過酸化層
33 アウターリード
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶テレビやノートパソコンのバックライトの光源などに用いられる放電ランプおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、バックライトに用いられる光源は、冷陰極放電ランプが主流である。冷陰極放電ランプは、ガラスバルブの端部に、電極やインナーリードなどからなる電極マウントが封着された構造になっている。この電極マウントには、特許文献1〜特許文献4のように、インナーリードの周りにガラス玉(以下、ビーズ)を形成したビーズ付きの電極マウントを用いるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−151438号公報
【特許文献2】特開2003−229060号公報
【特許文献3】特開2004−335245号公報
【特許文献4】特許第4185539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このビーズは、ランプの強度上も製造上も重要な部材であるため、従来においては必須のものであったが、最近では、部品点数の削減のため、ビーズを使用しないで放電ランプを実現できないか検討が行われている。
【0005】
しかしながら、ビーズを使用しない場合、弱い衝撃で割れや剥離したり、熱膨張によって破損したりするなど、従来のランプよりも耐久性が低いという問題が発生しており、実用レベルのビーズレスの放電ランプを実現できていない状態であった。
【0006】
本発明の目的は、ビーズレスの電極マウントを用いた場合において、耐久性が高い放電ランプおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の放電ランプは、バルブの端部に電極とインナーリードとを有する電極マウントが封着された放電ランプにおいて、前記電極マウントは、前記インナーリード周りにビーズが形成されていないビーズレスの電極マウントであって、前記電極マウントが封着されている封着部の前記バルブ内部側の形状は、凹ないし凸の形状であり、その凹ないし凸の形状の管軸方向長さをLとしたとき、−0.3mm≦L≦1.5mm(ただし、凸を正とする)を満たしていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の放電ランプの製造方法は、バルブの端部に電極とインナーリードとを有する電極マウントが封着された放電ランプの製造方法において、前記インナーリード周りにビーズが形成されていないビーズレスの前記電極マウントを、前記バルブの封着予定部に位置させる電極マウント配置工程と、前記封着予定部を加熱して前記バルブを前記インナーリードに接触させるバルブ加熱工程と、前記インナーリードを管軸方向のバルブ中央側に前記バルブに対して相対的に移動させる電極マウント移動工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ビーズレスの電極マウントを用いた場合において、耐久性が高い放電ランプおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態の放電ランプの製造方法によって製造された放電ランプについて説明するための図。
【図2】図1の一点鎖線で囲ったXの範囲について説明するための図。
【図3】本実施の形態の放電ランプの製造方法について説明するための図。
【図4】比較例の放電ランプについて説明するための図。
【図5】実施例1、比較例、従来例の放電ランプの熱衝撃試験の結果について説明するための図。
【図6】実施例1、実施例2、比較例、従来例の放電ランプの評価について説明するための図。
【図7】実施例3の放電ランプについて説明するための図。
【図8】実施例4の放電ランプについて説明するための図。
【図9】実施例1、実施例3、実施例4、比較例の放電ランプの剥離率について説明するための図。
【図10】本発明の第2の実施の形態の放電ランプについて説明するための図。
【図11】本発明の第3の実施の形態の放電ランプの製造方法について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態の放電ランプの製造方法によって製造された放電ランプについて説明するための図である。
【0012】
本発明の実施の形態の放電ランプは、冷陰極蛍光ランプ(Cold Cathode Fluorescent Lamp)であり、主要部として、硬質ガラスや軟質ガラスからなるガラスバルブ1を備えている。ガラスバルブ1は、中央に筒状部11、両端に封着部12が形成された細長いガラスであり、その内部には放電空間111が形成されている。放電空間111には、水銀および希ガスからなる放電媒体が封入されている。希ガスとしてはネオン、アルゴン、キセノン、クリプトンなどの単体または混合ガスを用いることができる。ガラスバルブ1の内面には、少なくともランプの光放出領域を覆う範囲にRGBの3波長蛍光体からなる蛍光体層2が形成されている。
【0013】
封着部12には、電極マウント3が封着されている。この電極マウント3は、図からもわかるようにガラス製のビーズを有さない、いわゆるビーズレスタイプの電極マウントであり、電極31、インナーリード32、アウターリード33で構成されている。
【0014】
電極31は、底部と側部を備えた有底開口状(カップ状)を呈しており、その開口がガラスバルブ1の中央側になるように放電空間111の両側に対向配置されている。この電極31としては、例えば、ニッケル、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、レニウムなどのスパッタしにくい金属を使用することができる。
【0015】
インナーリード32は、封着部12に封着されており、その一端は放電空間111に導出され、電極31の底部と溶接により接合されている。インナーリード32としては、ガラスバルブ1の熱膨張係数に対し、±10×10−7/℃以内の材料を用いるのが望ましい。この例としては、コバール(ニッケル、鉄、コバルトなどを含む合金)、鉄−ニッケル合金、モリブデン、タングステンなどがあるが、本発明ではコバール、鉄−ニッケル合金などの表面に鉄が析出している材料を使用するのが特に望まれる。
【0016】
アウターリード33は、例えばジュメットからなり、ランプ軸に沿って外部空間方向に延出するように、ガラスバルブ1の外部に導出されたインナーリード32と溶接により接合されている。
【0017】
ここで、本実施の形態の放電ランプの封着部付近の構成について、図2を用いてさらに詳しく説明する。図2は、図1の一点鎖線で囲ったXの範囲について説明するための図であり、(a)は外観図、(b)は断面図である。なお、図2(a)およびこれ以降の外観図において、封着部12付近のインナーリード321が膨張ないし縮小しているのは、ガラスによるレンズ効果の影響を考慮して図示したためである。
【0018】
図からもわかるように、封着部12は、内部にビーズはなく、インナーリード32にガラスバルブ1が直接封着された構成である。その内側形状はほぼフラットな形状となっていて、インナーリード32に対してガラスが略垂直になるように封着されているため、熱によりガラス等が膨張しても当該部分に応力が集中しにくい形状となっている。また、インナーリード32のバルブ端部側の表面には過酸化層321が形成されており、その一部が封着部12に封着されている。この過酸化層321は、ガラスとの封着性を向上させる。過酸化層321とは、目視において黒化して見える程度の酸化層のことであり、拡散濃度が15%〜50%のものである。なお、拡散濃度はインナーリード中の鉄の検出濃度を100%としたときの拡散開始時点での鉄の濃度の相対値であり、インナーリード32の加熱温度、加熱時間などの条件により調整可能である。
【0019】
次に、図2のような放電ランプの製造方法、特に封止側(1st側)の電極マウント3の封着工程について、図3を参照しながら詳しく説明する。
【0020】
まず、(a)のように、内面に蛍光体層2を形成が形成されたガラスバルブ1を管軸が地面に対して略垂直になるように配置するとともに、電極マウント3をガラスバルブ1の下端部に配置する電極マウント配置工程を行い、ガラスバルブ1を固定部材4で固定、電極マウント3を押し上げ手段5で支持する。ここで、この工程でガラスバルブ1内に配置される電極マウント3は、水素還元などの方法により、インナーリード32と電極31やアウターリード33の接合時など、製造過程時の熱により発生した金属表面の酸素成分を除去した、いわゆる還元処理済みの電極マウントである。
【0021】
次に、(b)のように、インナーリード32とアウターリード33の一部を覆っているバルブ部分である封着予定部13をバーナー6で加熱して、(c)のように、ガラスの一部をインナーリード32に接触させ、封着部12を形成するバルブ加熱工程を行う。そして、本実施の形態では、バルブ加熱工程に連続して過酸化層形成工程を行っている。すなわち、封着部12が形成された後、封着部12の外部に突出しているインナーリード32をバーナー6で加熱して、表面に過酸化層321を形成している。
【0022】
インナーリード32の表面に過酸化層321が形成されたら、バーナー6をガラスバルブ1から離し、封着部12の温度が高いうちに(d)のように、例えば、D=1mmだけ押し上げ手段5を上側に移動させることでアウターリード33を上側に持ち上げる電極マウント移動工程を行う。この電極マウント移動工程により、インナーリード32付近のガラスが管軸方向の中央側に移動して、封着部12の形状が矯正されるとともに、封着部12の外部にあった過酸化層321が封着部12の内部に押し込まれるため、(e)のように、封着部32の内側形状がほぼフラットで、かつ封着部12内に過酸化層321が存在する放電ランプを形成することができる。
【0023】
なお、上記方法よりランプを製造したかどうかは、ビーズの有無、封着部12の内側の形状、封着部12内の過酸化層321の有無等を観察することで確認することができる。
【0024】
下記に本実施の形態の放電ランプの一実施例を示す。
【0025】
(実施例1)
ガラスバルブ1;軟質ガラス、全長=833.5mm、外径=4.0mm、内径=3.0mm、肉厚=0.5mm、熱膨張係数=92×10−7/℃、
放電媒体;水銀、ネオン80%とアルゴン20%の混合ガス=30torr、
蛍光体層2;RGB蛍光体で構成、
電極31;ニッケル製、管軸方向長さ=10mm、底部厚み=0.12mm、外径=2.7mm、内径=2.5mmのカップ状、
インナーリード32;52アロイ(ニッケル=52%、鉄=48%の合金)製、直径=0.8mm、熱膨張係数=98×10−7/℃、
過酸化層321;拡散距離=2.4μm、拡散濃度=31.6%、
アウターリード33;ジュメット製、直径=0.6mm、
封着長L1=1.484mm、電極−封着部間距離L2=0.722mm、封着部32の内部形状=フラット。
【0026】
この実施例のランプ(実施例1)と、図4のような図3(c)の工程後で、(d)の工程は行っていない放電ランプ(比較例)と、従来のビーズ付きの放電ランプ(従来例)について熱衝撃試験を行った。その結果を図5に示す。この熱衝撃試験は、ランプを管端から約5mmまでを半田槽(270℃〜430℃)に1秒かけて浸漬させ、その状態を5秒間半田槽内で維持した後、半田槽から取り出して常温で自然冷却を行うことを1サイクルとする動作を1〜5サイクル行ったのち、グロー検査・顕微鏡でクラックを検査する試験である。
【0027】
図5からわかるように、実施例1は430℃の高温であってもほとんどクラックが発生することがないのに対し、従来例は300℃、比較例は360℃でクラックが発生してしまっている。この結果から、実施例は、従来例や比較例よりも格段に熱衝撃に対して強いことがわかる。
【0028】
また、ガラスバルブ1を固定した状態でアウターリード33を管軸方向の外側に徐々に強く引っ張っていき、引っ張り強さが15kgfに達するまでに、インナーリード32とガラスが剥離するかどうかを確認する引っ張り強度試験を行ったところ、実施例1は約7%、従来例は約44%、比較例は全てで全面が剥離するという結果になった。この結果から、実施例1は引っ張り強度が高いことがわかる。
【0029】
以上から、製造過程において、電極マウント移動工程や過酸化層形成工程を行い、封着部形状の改善、過酸化を封着部内に配置させることで、従来例や比較例よりも格段に耐久性が高い放電ランプを実現できることがわかる。
【0030】
次に、実施例1と、還元処理後、インナーリード32の表面が黒化しない程度の軽度の酸化処理(事前酸化)を行った電極マウント3を封着したランプ(実施例2)の垂直方向の強度について垂直強度試験を行った。なお、垂直方向強度は、ガラスバルブ1をアウターリード33が略垂直に曲げられた状態で固定し、アウターリード33にランプの管軸に対して垂直方向の荷重を加え、封着部12が破損したときのプッシュプルゲージの値である。
【0031】
結果、実施例1の垂直方向強度は3.09kgf、実施例2は3.58kgfであった。このことから、過酸化と事前酸化の両方を行うことで、さらに強度の高い放電ランプを実現することができることがわかる。ちなみに、比較例は1.00kgf、従来例は3.41kgfであったから、実施例1も実施例2も十分に実用的なレベルであるといえる。
【0032】
次に、これらのランプについて点灯寿命試験を行った。その結果、実施例1と従来例は寿命特性が良好であったが、比較例は途中でリークが発生した。一方、実施例2は、寿命中にランプ電圧が変化したり、水銀が偏るなどの現象が見られた。これは、事前酸化により放電空間111内に酸化層が持ち込まれたことが原因と考えられる。
【0033】
以上の試験から、それぞれのランプの耐久性や寿命特性を評価すると、図6のようになる。すなわち、耐久性、寿命特性、コスト・工程を考慮すると、ビーズレスの電極マウントの場合には、実施例1が最良、実施例2は良、比較例は不可という結果になった。
【0034】
(実施例3)
図7は、実施例3の放電ランプについて説明するための図であり、(a)は外観図、(b)は断面図である。これ以降の実施の形態の各部については、第1の実施の形態の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0035】
実施例3では、封着部12の内側形状が凹の形状になっている。具体的には、インナーリード32に沿って隙間状の凹部121が形成されている。その管軸方向長さL=−0.1mmであり、図4の従来例の管軸方向長さL=−1.2mmより短い。なお、凹部121の管軸方向長さLは、インナーリード32とガラスの接触点〜インナーリード32のレンズ効果がほとんどなくなる部分までの距離とする。また、封着部12内には、過酸化層321が存在しているが、その管軸方向の形成長さは実施例1より短くなっている。
【0036】
この実施例3のような形状は、図3(d)の工程において、実施例1よりも短めに押し上げることで形成することができる。
【0037】
(実施例4)
図8は、実施例4の放電ランプについて説明するための図であり、(a)は外観図、(b)は断面図である。
【0038】
実施例4では、封着部12の内側形状が凸の形状になっている。具体的には、放電空間111に突出するように、封着部12に半球状の凸部122が形成されている。その管軸方向長さL=0.6mmである。また、封着部12内には、過酸化層321が存在しているが、その管軸方向の形成長さは実施例1より長くなっていて、このランプでは凸部122内の一部まで存在している。
【0039】
この実施例4のような形状は、図3(d)の工程において、実施例1よりも距離Dが長めに押し上げることで形成することができる。
【0040】
次に、実施例1、実施例3、実施例4、従来例のランプについて、引っ張り強度試験を行った。その結果を、図9に示す。
【0041】
図9から、実施例1、すなわち封着部形状がフラットな場合が最も引っ張り強度が高く、凹部や凸部の管軸方向長さが長くなるほど引っ張り強度が低下することがわかる。また、その剥離率の傾きから封着部12の内側の形状は、フラット形状、凸形状、凹形状の順で望ましいこともわかる。この結果から、封着部12の内側の形状は、凹ないし凸の形状の管軸方向長さLが、−1.0mm≦L≦1.5mmの範囲になるようにすれば、十分な引っ張り強度を維持できるという結果になった。
【0042】
また、実施例1、実施例3、実施例4、従来例のランプについて、熱衝撃試験を行ったところ、上記の引っ張り試験と同様に、フラットな状態が最も熱衝撃に強いという結果になった。凸形状の場合には、フラット形状の場合とほぼ同等であり、管軸方向長さLが長くなっても熱衝撃耐性はそれほど低下しないことがわかった。一方、凹形状の場合には、熱衝撃に対して極端に弱くなり、特に管軸方向長さLが0.3mmより長くなると低温でもクラックが発生しやすくなってしまうことがわかった。この結果から、封着部12の内側の形状は、凹の形状の管軸方向長さLが0.3mmよりも大きくならないようにすれば、十分な熱衝撃耐性を維持できるという結果になった。
【0043】
以上から、インナーリード32が封着されている封着部12のバルブ内部側の形状は、管軸方向長さLが−0.3mm≦L≦1.5mmとなる凹ないし凸の形状であるのが望ましい。また、−0.2mm≦L≦1.0mm、さらには−0.1mm≦L≦0.5mmとすれば、信頼性の高い放電ランプを実現可能となる。
【0044】
過酸化層321については、封着部12内に少しでも存在していれば、存在しないものよりも格段に耐久性、特に引っ張り強度が向上し、さらに封着部12内の存在範囲が大きいほど耐久性が向上することが確認されている。したがって、過酸化層321は、少なくとも一部が封着部12内に存在しているのがよく、さらには管軸方向長さが長いほどよい。ただし、過酸化層321が封着部12を越えて放電空間111内に存在してしまうと、ランプ電圧の変化、水銀偏りのほか、スローリークなどの影響が懸念されるので、過酸化層321は封着部12の内端側を越えない程度とするのが望ましい。
【0045】
ここで、過酸化層321の封着部12内における長さは、図3(a)におけるガラスバルブ1の開口端とインナーリード32の相対位置、(c)における封着部12の外部に位置するインナーリード32の長さ、(d)における電極マウント3の押し上げ距離Dなどにより、調整が可能である。
【0046】
なお、本発明は、上記実施例の材料の組み合わせに限らず、例えばガラスバルブ1に熱膨張係数が約51×10−7/℃である硼珪酸ガラス、インナーリード32に熱膨張係数が約52×10−7/℃であるコバールを使用した場合であっても同様の効果を得られることを確認済みである。
【0047】
したがって、本実施の形態では、封着部12のガラスバルブ1内部側の形状を凹ないし凸の形状とし、その凹ないし凸の管軸方向長さをLとしたとき、−0.3mm≦L≦1.5mmを満たすようにするとともに、インナーリード32の表面に過酸化層321を形成し、その過酸化層321の少なくとも一部を封着部12内に位置させたことにより、ビーズレスの電極マウントであっても、引っ張り強度が高く、かつ熱衝撃に強くなり、ビーズを備えた従来の電極マウントと同等か、それ以上の耐久性のある放電ランプを実現することができる。
【0048】
また、本実施の形態では、インナーリード32周りにビーズが形成されていないビーズレスの電極マウント3を、管軸が地面に対して略垂直に固定された状態のガラスバルブ1の下端部の封着予定部13に位置させる電極マウント配置工程を行い、封着予定部32を加熱してガラスバルブ1をインナーリード32に接触させるバルブ加熱工程を行ったのちに、インナーリード32を管軸方向の中央側にガラスバルブ1に対して相対的に移動させる電極マウント移動工程として、電極マウント3を上側に押し上げる工程を行うことにより、封着部12の耐久性を向上させることができる。
【0049】
また、インナーリード32は、コバールや鉄−ニッケル合金などの表面に鉄が析出している材料からなり、バルブ加熱工程後、封着部12の外部に位置しているインナーリード32の表面を加熱して過酸化層321を形成する過酸化層形成工程を行ったのちに、電極マウント移動工程を行うことで、過酸化層321を封着部12の内部に位置させることができる。
【0050】
(第2の実施の形態)
図10は、本発明の第2の実施の形態の放電ランプについて説明するための図である。
【0051】
第2の実施の形態では、一端はビーズレス封着、他端はビーズ封着している。本放電ランプのように、排気チップを用いないで封止・排気をするランプでは、一端側の封着工程と、他端側の封着工程が異なっている。例えば、排気側(2nd側)の封着工程は、ガラスバルブ1内が1気圧以下の状態で行ったり、バルブ端に水銀放出媒体を配置したりするなどの違いがあり、このような工程を含む場合にはビーズレス封着は不向きである。そこで、製造を容易にするために、封止側(1st側)はビーズレスの電極マウント、排気側(2nd側)はビーズ付きの電極マウントを用いるようにしてもよい。
【0052】
(第3の実施の形態)
図11は、本発明の第3の実施の形態の放電ランプの製造方法について説明するための図である。
【0053】
第3の実施の形態では、(d)の電極マウント移動工程において、電極マウント3を固定部材8で固定した状態で、押し下げ手段7によりガラスバルブ1を下側に押し下げることで、インナーリード32を管軸方向の中央側にガラスバルブ1に対して相対的に移動させるようにしている。この方法であっても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
なお、本発明の実施の形態は上記に限られるわけではなく、例えば次のように変更してもよい。
【0055】
本発明は、冷陰極蛍光ランプに限らず、熱陰極蛍光ランプ(Hot Cathode Fluorescent Lamp)などのランプに適用してもよい。
【0056】
封着部12の外部の過酸化層321は除去してもよい。つまり、電極マウント3を封着後に還元処理を行うことで封着部12内の過酸化層321は残しつつ、余分な過酸化層321は除去しても問題はない。
【0057】
図3(a)の電極マウント配置工程において、蛍光体層2のラインを電極マウント3の配置調整に利用してもよい。例えば、蛍光体層2の端部に電極31の開口部を合わせるようにすることで、(d)の電極マウント移動工程を経たあとの蛍光体層2と電極31の重複距離のランプ毎のばらつきを小さくすることができる。
【0058】
図3(d)の電極マウント移動工程は、同じ押し上げ距離Dでも、ガラスバルブ1の内径、肉厚、インナーリード32の線径、加熱量、加熱時間などによって、最終的な封着部12の形状が変化するため、それらを考慮して適宜調整するのが望ましい。
【符号の説明】
【0059】
1 ガラスバルブ
11 筒状部
12 封着部
13 封着予定部
2 蛍光体層
3 電極マウント
31 電極
32 インナーリード
321 過酸化層
33 アウターリード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブの端部に電極とインナーリードとを有する電極マウントが封着された放電ランプにおいて、
前記電極マウントは、前記インナーリード周りにビーズが形成されていないビーズレスの電極マウントであって、
前記電極マウントが封着されている封着部の前記バルブ内部側の形状は、凹ないし凸の形状であり、その凹ないし凸の形状の管軸方向長さをLとしたとき、−0.3mm≦L≦1.5mm(ただし、凸を正とする)を満たしていることを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記インナーリードの表面には、過酸化層が形成されており、前記過酸化層の少なくとも一部が前記封着部内に位置していることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記バルブの一端にはビーズレスの電極マウント、他端にはビーズ付きの電極マウントが封着されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放電ランプ。
【請求項4】
バルブの端部に電極とインナーリードとを有する電極マウントが封着された放電ランプの製造方法において、
前記インナーリード周りにビーズが形成されていないビーズレスの前記電極マウントを、前記バルブの封着予定部に位置させる電極マウント配置工程と、
前記封着予定部を加熱して前記バルブを前記インナーリードに接触させるバルブ加熱工程と、
前記インナーリードを管軸方向のバルブ中央側に前記バルブに対して相対的に移動させる電極マウント移動工程と、を具備することを特徴とする放電ランプの製造方法。
【請求項5】
前記電極マウント移動工程では、前記バルブを管軸が地面に対して略垂直になるように維持した状態で、前記電極マウントを上側に押し上げることを特徴とする請求項4に記載の放電ランプの製造方法。
【請求項6】
前記インナーリードは表面に鉄が析出している材料からなり、前記バルブ加熱工程後、前記封着部の外部に位置している前記インナーリードの表面を加熱して過酸化層を形成する過酸化層形成工程を行ったのちに、前記電極マウント移動工程を行って前記過酸化層を前記封着部の内部に位置させることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の放電ランプの製造方法。
【請求項1】
バルブの端部に電極とインナーリードとを有する電極マウントが封着された放電ランプにおいて、
前記電極マウントは、前記インナーリード周りにビーズが形成されていないビーズレスの電極マウントであって、
前記電極マウントが封着されている封着部の前記バルブ内部側の形状は、凹ないし凸の形状であり、その凹ないし凸の形状の管軸方向長さをLとしたとき、−0.3mm≦L≦1.5mm(ただし、凸を正とする)を満たしていることを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記インナーリードの表面には、過酸化層が形成されており、前記過酸化層の少なくとも一部が前記封着部内に位置していることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記バルブの一端にはビーズレスの電極マウント、他端にはビーズ付きの電極マウントが封着されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放電ランプ。
【請求項4】
バルブの端部に電極とインナーリードとを有する電極マウントが封着された放電ランプの製造方法において、
前記インナーリード周りにビーズが形成されていないビーズレスの前記電極マウントを、前記バルブの封着予定部に位置させる電極マウント配置工程と、
前記封着予定部を加熱して前記バルブを前記インナーリードに接触させるバルブ加熱工程と、
前記インナーリードを管軸方向のバルブ中央側に前記バルブに対して相対的に移動させる電極マウント移動工程と、を具備することを特徴とする放電ランプの製造方法。
【請求項5】
前記電極マウント移動工程では、前記バルブを管軸が地面に対して略垂直になるように維持した状態で、前記電極マウントを上側に押し上げることを特徴とする請求項4に記載の放電ランプの製造方法。
【請求項6】
前記インナーリードは表面に鉄が析出している材料からなり、前記バルブ加熱工程後、前記封着部の外部に位置している前記インナーリードの表面を加熱して過酸化層を形成する過酸化層形成工程を行ったのちに、前記電極マウント移動工程を行って前記過酸化層を前記封着部の内部に位置させることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の放電ランプの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−40356(P2011−40356A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205158(P2009−205158)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】
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