説明

放電ランプの電極間距離の測定方法、放電ランプの製造方法および放電ランプの電極間距離測定ユニット

【課題】 従来、遮光膜や絶縁チューブとの関係によっては、電極間距離が測定しにくい場合があった。
【解決手段】本発明の放電ランプの電極間距離の測定方法は、発光管11、発光管11内に封入された非点灯時に固体状又は液体状の放電媒体112、発光管11内で先端部が対向して離間配置された一対の電極121、122を具備する放電ランプ1の電極間距離の測定方法であって、放電ランプ1を点灯させ、その安定点灯時に一対の電極121、122間に形成されるアーク像5を減光手段3を介して受像し、一対の電極121、122間の先端部に残存するアークスポットを測定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の前照灯、プロジェクタ等に使用される放電ランプの電極間距離の測定方法および測定ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
放電ランプは、基本構成として、発光管の内部に金属ハロゲン化物やキセノンなどの希ガス、場合によっては水銀などの放電媒体が封入され、さらに所定の電極間距離を保った状態で一対の電極が配設される構成となっている。このような放電ランプは、ランプの性能、品質向上、特性バラツキの抑制等のためには、ランプ構成部品が精度よく組み立てられ、かつ自動車工業規格等に定められたそれぞれの規格に適合しているかどうかを検査することは重要になる。その検査が必要なランプ構成の中で、特に重要なのは電極の位置、電極間距離である。
【0003】
この電極に関する検査としては、図5に示すように、バックライトBLとCCDカメラCAを測定目標の放電ランプLAを挟むように一直線に配置し、バックライトBLの光によって明確になった放電ランプLAの一対の電極間をCCDカメラCAによって受像し、画像表示装置に受像した映像を表示することで計測を行なっていた。また、同様に電極間距離等を測定する発明としては、X線照射装置からX線を測定部分に向けて照射し、その透視像をCCDカメラで受像することで測定する発明などがある。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2002−324518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術のようにバックライトの光やX線を測定対象の電極等に照射した像をCCDカメラに受像して電極間距離等の測定を行なう方式の場合、図5(b)のように、バックライトまたはX線照射装置と測定対象との間に、放電媒体や遮光膜等が介在する位置関係になってしまうと、測定対象の像がはっきりしなくなり、測定をすることができなかった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、電極間距離の測定の際に、電極およびその他の構成要件との位置関係に影響されにくい放電ランプの電極間距離の測定方法および測定ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、放電ランプの電極間距離の測定方法は、発光管、前記発光管内に封入された非点灯時に固体状又は液体状の放電媒体、前記発光管内で先端部が対向して離間配置された一対の電極を具備する放電ランプの電極間距離の測定方法であって、前記放電ランプを点灯させ、その前記一対の電極間に形成されるアーク像を減光手段を介して受像し、前記一対の電極の先端部に残存するアークスポットを測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電極間距離の測定の際に、測定装置と電極との位置関係に影響されにくい放電ランプの電極間距離の測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下に、本発明の実施の形態の放電ランプの電極間距離の測定方法について図面を参照して説明する。図1は、本発明の放電ランプの電極間距離の測定方法の第1の実施の形態について説明するための斜視図である。
【0009】
本発明の放電ランプの電極間距離の測定ユニットは、少なくとも放電ランプ1、CCDカメラ2、減光フィルタ3、ディスプレイ4で構成される。
【0010】
まず、放電ランプ1について説明する。図2は、放電ランプの構造を説明するための図であり、(a)は水平方向から見た放電ランプの図、(b)は(a)の直線A−A’において、矢印方向から見た放電ランプの断面図である。
【0011】
放電ランプ1は、例えば、耐火性で透光性の石英ガラスからなる発光管11を主要な部品として有する。その発光管11は、略中央部には球状の放電部、その両端には管軸に沿って一対の封止部が形成された構成となっており、放電部の内部には放電空間111が形成されている。この放電空間111の内容積は、ショートアーク型の高圧放電ランプではおよそ0.1cc以下であり、自動車用として構成する場合には、特に0.01cc〜0.03ccとされる。
【0012】
放電空間111には、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化スカンジウム、ヨウ化亜鉛、キセノン等からなる放電媒体112が封入されている。なお、本実施の形態では、水銀を全く含まない水銀フリー構造となっている。放電媒体112は、非点灯時、固体状又は液体状であって、有形で目視でもその存在を確認することができる。なお、放電媒体112はランプを点灯させると徐々に蒸気化し、気体に変化するが、放電空間111の容積に対して放電媒体112の量が多い場合には、完全に蒸気化しないで形を残したまま存在することがある。
【0013】
発光管11の封止部には、電極121、122と外部リード線131、132を両端部に接続した金属箔141、142が封着されている。電極21、22は、タングステンからなり、その先端は放電空間12内に延出し、所定の電極間距離を保った状態で内在している。この一対の電極121、122によって形成される電極間距離は、ショートアーク型高圧放電ランプでは5mm以下、特に自動車の前照灯に使用する場合では、自動車用前照灯の規格等が定められたReg.99によると、4.2mm程度に管理されなければならない。さらに、この電極間距離は、0.1mm程度の大小によってもランプ特性に大きな影響を与えるため、製品ごとに決定した仕様の許容範囲内に入るようにしなければならない。
【0014】
外部リード線131、132の他端側は、封止部の外部に延出され、特にそのうちの外部リード線131には、封止部外で給電端子133と接続される。そして、その給電端子133の一部には、点灯時の給電端子133に生じる電位が放電媒体13等に影響を与えないように、セラミック等からなる絶縁チューブ15が被覆されている。
【0015】
これらを備えた発光管11の外側には、筒状の外管16が、その管軸方向に沿って発光管11の大部分を覆うように設けられており、外管16の両端部を両封止部の一部に溶着することによって接続がなされている。そして、この外管16と発光管11とにより形成された空間内には、水分を含みにくくする目的で、例えば、窒素やアルゴン等の不活性ガスを封入することができる。
【0016】
ここで、本実施の形態のような自動車前照灯においては、外管16の外表面に遮光膜17が形成されている。この遮光膜17は、反射鏡等を備える灯具によって放電ランプの配光を制御するのではなく、ランプ自身によって配光を制御するために形成されるものである。すなわち、遮光膜17は、ランプを投影したときに、自動車の通行が左側通行である日本国においては、対向車が通過する右側前方は相手がグレアを受けないように比較的暗く保ち、左側前方は運転者が歩行者等を確認できやすいように明るく保つカットラインを形成する。このような遮光膜17の形成位置は、Reg.99に定められており、放電ランプの管軸方向に垂直な断面である図2(b)において、α1=15°、α2=25°±5°、α3=25°±5°になるように形成される。
【0017】
そして、外管16により外部を覆われた状態の発光管11は、ソケット18に接続される。この接続については、外管16の外側に装着された金属バンド191を、ソケット18に形成、延出された4本の金属製の舌片192により挟み込むことによって行なわれている。なお、ソケット18の端部には、点灯回路からの電力を供給するための金属端子181がその外周面に沿って形成されており、金属端子181は外部リード線152に給電端子153を介して電気的に接続されている。また、図示していないが、外部リード線132側と電気的に接続される他方の端子は、ソケット18の底部部分に形成されている。
【0018】
これらで構成された放電ランプ1は、そのソケット18が放電ランプ点灯装置(図示しない)に嵌合接続され、ランプが水平に、かつ絶縁チューブ15が最も下方にくるように配置される。そして、放電ランプ1に電力をかけることで点灯し、上側に湾曲したアーク5が形成される。なお、このアーク5を形成する電極121、122の先端部のアークの起点を「アークスポット」と呼ぶ。このアークスポットは、一般に点灯中、最も高温となる電極121、122の表面に形成され、温度が不安定になったりするとそのスポットが移動し、ちらつきの原因となる。このちらつきには、トリウムなどの放射性物質をドープしたタングステン材料の電極を用いることが有効である。
【0019】
次に、受像手段であるCCDカメラについて説明する。CCDカメラ2には例えば、東芝テリー社製、型番CS8550i−01を使用することができる。なお、受像手段としてはCCDカメラ2に限定されるものでなく、例えばデジタルカメラ等であっても良い。さらには、受像の手段としては、静止画および動画のどちらかが撮影できればよい。
【0020】
放電ランプ1に対するCCDカメラ2の配置については、図3のCCDカメラの配置を説明するための図を用いて説明する。(a)は上方向から見た放電ランプの図、(b)は(a)の直線B−B’において、矢印方向から放電ランプを見た図である。
【0021】
CCDカメラ2の管軸方向の配置は、図3(a)のように、放電ランプ1の一対の電極121、122の中央から管軸に対して略法線方向上に配置されるのが最も望ましい。また、周方向の位置は(a)の断面である(b)のように、一対の電極121、122と給電端子133および絶縁チューブ15を一直線に結ぶ線に対して略法線方向、かつ遮光膜17が電極121、122とCCDカメラ2との間に介在しない方向に配置するのが望ましい。これは、放電ランプ1を点灯させ、そのアークスポットによって電極間距離を測定する本発明の測定方法において、最も安定して、かつ正確に電極間距離を測定できる最良の配置である。なお、上記の「略」は、多少の角度誤差を許容するということを意味している。
【0022】
減光手段である減光フィルタ3について説明する。減光フィルタ3には、例えば、ケンコー社製、型番ND−8−25.5mmを使用することができる。この減光フィルタ3は、放電ランプ1の一対の電極121、122と上記のように配置したCCDカメラ2との間に配置される。ここで、図1および図3では、減光フィルタ3はCCDカメラ2と離間配置されているが、CCDカメラ2のレンズに一体的に接続して構成してもよい。
【0023】
表示手段であるディスプレイ4について説明する。ディスプレイ4には例えば、東芝製、型番IPCD005Aの液晶ディスプレイを使用することができるが、もちろん、表示手段としては、アークの像を確認できるものであればどのような方式の表示装置を使用しても構わない。また、ディスプレイ4とCCDカメラ2との接続は、カメラで入力した画像が表示される周知の接続であれば問題はないので説明は省略する。
【0024】
放電ランプの電極間距離の測定方法について説明する。
【0025】
本発明においては、放電ランプ1を点灯した状態で電極間距離を測定することを一つの特徴とする。したがって、アークスポットが安定し、移動しにくくなる安定点灯時に測定を行なうことができる。ここで、「安定点灯時」とは、放電ランプに定格電力がかかっているときの状態をいう。そして、安定したアーク5を減光フィルタ3を介してCCDカメラ2により受像し、それをディスプレイ4に表示する。
【0026】
なお、この放電ランプの電極間距離の測定方法は、放電ランプの製造工程に組み込むと様々な利点がある。例えば、周知の製造方法によって、発光管11に放電媒体112を封入し、封止部に電極121、122、外部リード線131、132、金属箔141、142を封着する工程後、すなわち、ランプとして放電可能となった工程後に、本発明の電極間距離の測定を行うと、その時点で電極間距離の規格はずれ品やアークスポットが不安定な特性異常品を早期発見できる。したがって、それ以降の工程を行うことなく、不良品として除去できるため、外管6やソケット18等を無駄に使用することがない。
【0027】
また、放電ランプ1に外管6等が取り付けられたほぼ完成品に近い状態となった後に本発明の電極間距離の測定を行えば、製品の特性として最も近い状態のアークを対象として測定するため、さらに信頼度が高い測定結果が得られる。
【0028】
図4は、図2(a)の放電ランプを安定させ、そのときのアークをCCDカメラで受像し、ディスプレイに表示した状態を説明するための図である。そして、図の(a)〜(d)は減光フィルタの減光率を変化させたときのアーク像であり、(a)は減光フィルタを使用していないとき、(b)は減光率72%、(c)は減光率75%、(d)は減光率78%のときである。ここで、本来はディスプレイにはほとんどアーク5のみしか移らないが、わかりやすくするために電極等も明確に表示している。なお、減光率は、減光フィルタ3の枚数を増減することで変化をさせている。
【0029】
全く減光をしていない(a)では、アーク5全体がはっきりと太く表示されるため、電極表面のアークスポットも太く表示されている。したがって、アークスポットの厳格な位置を特定できず、電極間距離を正確に測定することができない。そして、(b)から(d)のように減光率が高くするにつれて、アーク5が細く局所的に表示されていくことになり、アークスポットもはっきりと確認できるようになっていくのがわかる。これは、アーク5の発光は電極の表面のアークスポット付近が最も強いという特性を利用したものである。そして、減光フィルタ3の減光率が75%よりも大きくなったとき以降、およそ正確な電極間距離を測定することができるようになり、特に図4(d)における状態となったとき最もアークスポットを正確に測定できる。なお、減光率を高くしすぎると、アーク5の全てが遮光され、電極間距離を測定できなくなるため、その測定限界としての減光フィルタ3の減光率は80%よりも低くなければならない。
【0030】
また、図3(b)において、CCDカメラ2および減光フィルタ3の周方向の配置場所を変え、様々な角度から同様のアークスポットの測定を行なった。その結果、電極間距離が測定できないのは、電極121、122とCCDカメラ2および減光フィルタ3の間に放電媒体112、絶縁チューブ15および遮光膜17が直接重なる場合に限られ、従来の方法と比較して約半分になる改善が見られた。また、測定の精度もいずれの場合も悪くはなかった。
【0031】
したがって、本実施の形態では、前記放電ランプを点灯させ、その安定点灯時に前記一対の電極間に形成されるアークを減光手段によって減光し、前記一対の電極先端部に残存するアークスポット間を測定するため、電極間距離の測定の際に、測定装置と電極との位置関係に影響されにくく、放電ランプの電極間距離が測定しやすい。
【0032】
また、従来よりも電極間距離の測定が簡単であり、特に、減光フィルタ3の減光率を72%以上、80%以下とすれば、アークスポットをはっきりと確認できるため測定が更に簡単となる。
【0033】
また、アーク点灯させた状態で測定し、かつアークスポットのみをはっきり見ているため、アークスポットの移動によるちらつきなどの異常を同時に発見することができる。
【0034】
なお、実施の形態は上記に限られるわけではなく、例えば次のように変更してもよい。
【0035】
減光率の微調整に、例えば、アクリル板などを使用してもよい。
【0036】
放電ランプ1の電極間距離を測定するに、電極121、122が製造過程において多少曲がり、電極間距離測定時にも管軸上に乗っていない状態となる場合がある。したがって、電極間距離の測定では、CCDカメラ2と減光フィルタ3とのセットを複数配置するのが、品質管理上さらに望ましい。
【0037】
また、第1の実施の形態では、遮光膜付の放電ランプの例を挙げたが、遮光膜17が形成されていない放電ランプにおいても高い効果が得られる。すなわち、遮光膜なしの放電ランプでは、電極間とCCDカメラ2、減光フィルタ3との間に絶縁チューブ15等が介在しなければ、電極間距離を測定することができるので、それらの位置にさらに影響されることなく測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の放電ランプの電極間距離の測定方法の第1の実施の形態について説明するための斜視図。
【図2】放電ランプの構造を説明するための図。
【図3】CCDカメラの配置を説明するための図を。
【図4】安定点灯時のアークをCCDカメラで受像し、ディスプレイに表示した状態を説明するための図。
【図5】従来の電極間距離測定の例。
【符号の説明】
【0039】
1 放電ランプ
2 CCDカメラ
3 減光フィルタ
4 ディスプレイ
11 発光管
111 放電空間
112 放電媒体
121、122 電極
15 絶縁チューブ
16 外管
17 遮光膜
5 アーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管、前記発光管内に封入された非点灯時に固体状又は液体状の放電媒体、前記発光管内で先端部が対向して離間配置された一対の電極を具備する放電ランプの電極間距離の測定方法であって、
前記放電ランプを点灯させ、その前記一対の電極間に形成されるアーク像を減光手段を介して受像し、前記一対の電極の先端部に残存するアークスポットを測定することを特徴とする放電ランプの電極間距離の測定方法。
【請求項2】
発光管の放電部に放電媒体を封入し、かつ前記放電部内で互いの先端部が離間配置されるよう前記発光管に一対の電極を封着することでランプが点灯可能となる工程以降に、請求項1に記載の放電ランプの電極間距離の測定を行う工程を具備していることを特徴とする放電ランプの製造方法。
【請求項3】
発光管、前記発光管内に封入され、非点灯時に固体状又は液体状の放電媒体、前記発光管内で先端部が対向して離間配置された一対の電極を具備する放電ランプの電極間距離の測定方法であって、
前記一対の電極間の略法線方向に配置され、点灯時に前記一対の電極間に形成されるアーク像を入力する受像手段と、
前記一対の電極間と前記受像手段との間に設けられた減光手段と、
前記受像手段により入力されたアーク像を出力する表示手段とを具備することを特徴とする放電ランプの電極間距離測定ユニット。
【請求項4】
前記減光手段は、減光率が72%以上、80%以下であることを特徴とする請求項2に記載の放電ランプの電極間距離測定ユニット。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−344536(P2006−344536A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−170360(P2005−170360)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】