放電ランプ用の電極および放電ランプ並びに電極を製造するための方法
本発明は、放電ランプ用の電極、殊に高圧放電ランプ用の電極に関する。ここでこの電極は、金属ワイヤー(50)から成るコイル(5)が巻き付けられている区間を有する金属ピン(4)を有する。本発明では、この金属ワイヤー(50)は平らにされており、これによって、金属ピン(4)上へのコイル(5)の密着して接している、遊びの無い配置が保証される。さらに本発明は、この種の電極を備えた放電ランプ並びにこの種の電極の製造方法にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載された放電ランプ用の電極および少なくとも1つのこの種の電極を備えた放電ランプ並びにこの種の電極製造方法に関する。
【0002】
I.従来技術
この種の電極は例えば、WO2005/096334号に開示されている。WO2005/096334号は、石英ガラスからなる放電容器と同じ様式の2つの電極を備えた高圧放電ランプを開示している。ここでこの電極は、放電容器の内部空間においてガス放電を形成する。これらの電極はそれぞれ、金属製のピンから成る。この金属製ピンはコイルが巻き付けられた区間を有している。これらの電極のこの区間はそれぞれ、放電容器のシーリングされた端部内に突出しており、放電容器の石英ガラス内に埋め込まれている。コイルには固定手段が設けられており、この固定手段によって、電極の金属製ピンに沿ってコイルの位置が滑りずれることが阻止される。
【0003】
II.本発明の説明
本発明の課題は、上位概念に記載された電極を、より容易に製造可能であり、かつ電極ピン上でのコイルの良好な固着が保証されるように、改善することである。さらに、本発明の課題は、このような電極の製造方法を提供することである。
【0004】
上述の課題は本発明と相応に、請求項1の特徴部分に記載された構成を有する電極によって、および請求項13の特徴部分に記載された構成を有する方法によって解決される。本発明の特に有利な構成は従属請求項に記載されている。
【0005】
本発明の電極は金属ピンを有しており、この金属ピンは、金属ワイヤーから成るコイルが巻き付けられている区間を有している。ここでこのコイルの金属ワイヤーは平らにされている。コイルの金属ワイヤーを平らにすることによって機械的な応力が金属ワイヤー内に形成される。この機械的な応力は、コイルワイヤーが金属ピン上に巻かれていり間は得られ続け、金属ピンへコイルを押し付ける。この押し付けによって、遊びの無い、金属ピンにぴったり接するコイルが生じる。コイルが金属ピン上で滑りずれるのを阻止するための、別の固定手段および製造ステップ、例えば溶接は必要ない。このコイルは、自身が金属ピンの中央区間に配置されている実施形態では次のことを保証する。すなわち、放電容器材料内に亀裂が形成されないことを保証する。この亀裂は、電極材料と放電容器材料の熱膨張係数が異なることによって生じ、この亀裂によって、ランプが早期に故障してしまう恐れがある。コイルが少なくとも、金属ピンの終端部上に配置される別の実施形態では、コイルは、この終端部ないし金属ピン終端部から熱が放出されることを保証する。
【0006】
コイルの金属ワイヤーは有利には、自身の全長にわたって平らに形成され、これによって、コイルの全ての巻きが密着して、かつ遊び無く、電極の金属ピンに接することが保証される。コイルないしはコイルの個々の巻きの内径は、コイルが巻き付けられる金属ピン区間の厚さに相応する。これによって、この区間上にコイルを遊び無く配置することができる。
【0007】
有利にはコイルの金属ワイヤーはタングステンワイヤーまたはモリブデンワイヤーである。これによって、この電極を、熱的に非常に高い負荷がかかる放電ランプ、殊に高圧放電ランプ内で使用することができる。なぜならタングステンおよびモリブデンは非常に高い溶融温度を有しているからである。モリブデンワイヤーは、コイルが金属ピンの中央区間上に配置されている実施形態では、付加的に次のような利点を有している。すなわち、モリブデンワイヤーから成るコイルがゲッターとして機能し、高圧放電ランプの放電容器の密閉された終端部部分のモリブデンフィルム溶融を、放電容器内の腐食を起こす物質から保護するという、利点を有している。
【0008】
上述のコイルが巻き付けられている電極の金属ピンは有利にはタングステンピンであり、電極を熱的に非常に高い負荷がかかる放電ランプ、殊に高圧放電ランプ内で使用することを可能にする。
【0009】
コイルの金属ワイヤーの厚さは有利には、10マイクロメーター〜1000マイクロメーターの範囲にある。
【0010】
電極の金属ピンの厚さは有利には、0.10ミリメーター〜2.00ミリメーターの範囲にある。このような金属ピン厚さは、高圧放電ランプ用の電極の電流負担能力に合うように調整されている。
【0011】
有利には、コイルの2つの隣接する巻きの間の間隔Lとコイルワイヤーの厚さDとから、S=(L+D)/Dで計算されるコイルの勾配ファクターSおよび、コア直径D1とコイルワイヤーの厚さDとから、K=D1/Dで計算されるコイルのコアファクターは、1.0〜10.0の値領域にある。概念「コア直径」とは、コイルワイヤーが巻かれているピンの直径である。
【0012】
図1から4に示された、本発明の実施形態では、比較的大きい勾配ファクターが有利である。なぜなら比較的大きい勾配ファクターに基づいて、コイルの巻きは相互に離れて位置し、放電ランプの放電容器の密閉時に、軟化した放電容器材料が、コイルの隣接する巻きの間に入り込み、電極の表面を濡らすからである。さらにこのコイルは、自身の大きい勾配ファクターに基づいて、低い熱容量を有する。従って、放電容器材料はコイルが周りを囲む際にゆっくりと冷却され、これによって良好な密閉が実現される。コイル終端部に配置される最初の巻きおよび最後の巻きは、製造技術的な理由で、低い勾配ファクターを有する。
【0013】
図5〜8に示された本発明の実施形態では、コイルの勾配ファクターおよびコアファクターは次のように選択されている。すなわち、電極の放電側終端部からの良好な熱導出が保証されるように選択されている。
【0014】
図1〜4に示された実施例の電極は、特に良好に、石英ガラスから成る放電容器を備えた放電ランプ内での使用に適している。殊にこれは、無水銀充填物を有する、高圧放電ランプ、有利にはハロゲン金属蒸発高圧放電ランプである。後者は、自身の高い始動時電流故に、高い電流負担能力を有する比較的厚い電極を必要とする。この電極はさらに、高い温度に対する耐性を有する金属、例えばタングステンから製造されなければならない。タングステンと石英ガラスと比較的厚い電極の熱膨張係数は異なっているので、無水銀充填物を有する、ハロゲン金属蒸発高圧放電ランプでは、放電容器内の亀裂形成によって早期にランプが故障してしまうという上述の問題は特に緊急の問題である。
【0015】
コイルが巻き付けられた、本発明による電極の金属ピンの区間は、放電容器の密閉された終端部の放電容器材料内に埋め込まれている。これによって、モリブデンフィルム溶融部を介して、密閉された終端部内で、電気的なコンタクトが外部電流供給に対して製造される。本発明による電極上のコイルによって、上述したランプタイプの場合にも、放電容器内の亀裂形成によって起こる、早期のランプ故障が回避される。
【0016】
図5〜8に図示された実施例に相応する、本発明の電極は、種々異なるタイプの高圧放電ランプにおいて使用される。殊に、この電極の使用は、石英ガラスから成る放電容器を有する高圧放電ランプに制限されず、この電極は、光を通すセラミックから成る放電容器を有する高圧放電ランプにも使用される。相応する例は、図5に概略的に示されている。
【0017】
放電ランプの上述した電極のための本発明による製造方法は、電極の金属ピンないし金属ピンの区間に、本発明による製造方法のステップの間に、平らにされた金属ワイヤーが巻き付けられ、これによってコイルは、密着して、かつ遊び無く、電極の金属ピンないしは電極の金属ピンの区間上に配置されるように形成される。コイルワイヤーを本発明と相応に平らにすることによって、機械的な応力がコイルの金属ワイヤー内に形成される。この機械的な応力は、電極の金属ピン上に巻かれている間は得られ続け、コイルの巻きを金属ピンに押し付ける。これによって、コイルを電極の金属ピンに固定するためのさらなる固定手段は必要ない。殊に、コイルを金属ピンに溶接する、または金属ピンをコイル内に圧入させる等の製造ステップは省かれる。従って本発明の製造方法は、電極の局部的な損傷並びにコイルの溶接によるコイル組織の変化も回避する。全体として本発明によって、電極の製造方法が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施例による電極
【図2】図1に示された電極の一部分の拡大図
【図3】本発明の第2の実施例による電極
【図4】図3に示された電極を伴う高圧放電ランプの、石英ガラスから成る放電容器の密閉された終端部
【図5】本発明の第3の実施例に相応する電極を伴う高圧放電ランプの、光を通すセラミックから成る放電容器の密閉された終端部
【図6】本発明の第4の実施例に相応する電極
【図7】本発明の第5の実施例に相応する電極を伴う高圧放電ランプの、石英ガラスから成る放電容器の密閉された終端部
【図8】本発明の第6の実施例に相応する電極を伴う高圧放電ランプの、石英ガラスから成る放電容器の密閉された終端部
【図9】本発明の第7の実施例に相応する電極
【図10】図9に示された電極の区間の拡大図
【図11】本発明の第8の実施例に相応する電極
【0019】
III.有利な実施例の説明
以下に本発明を、有利な実施例に基づいてより詳細に説明する。
【0020】
図4は、モリブデンフィルムシーリングによって封鎖された終端部11を示している。この終端部は、2つの側で密閉された、高圧放電ランプ用の石英ガラスから成る放電容器1の終端部である。この高圧放電ランプは自動車投光器用のものであり、本発明の第2の実施例に従った電極を有している。またこれは、放電容器1の封鎖された終端部11を通って案内される電流供給部を含んでいる。このランプは殊に、35ワットの消費電力を有する無水銀のハロゲン金属蒸発高圧放電ランプである。放電容器1の内部空間10内には、イオン化可能な充填物が入れられる。この充填物はキセノンおよび金属のハロゲン化物、ナトリウム、スカンジウム、亜鉛およびインジウムから成る。放電容器の容積は24mm3である。
【0021】
電流供給部は、気密性に、放電容器1の封鎖された終端部11内に埋設されたモリブデンフィルム2を有している。このモリブデンフィルム2は、6.5mmの長さ、2mmの幅および25μmの厚さを有している。放電容器1の内部空間10と反対の、モリブデンフィルム2の終端部には、モリブデンワイヤー3が溶接されている。ここでこのモリブデンワイヤー3は、放電容器1の密閉された終端部11から突出している。放電容器1の内部空間10の方を向いている、モリブデンフィルム2の終端部には、タングステンピン4が溶接されている。ここでこのタングステンピンは、高圧放電ランプの2つの電極のうちの1つを構成し、放電空間10内に突出している。タングステンピン4の長さは7.5mmであり、その厚さないし直径D1=0.30mmである。タングステンピン4とモリブデンフィルム2との重なりは、1.30mm±0.15mmである。タングステンピン4には、コイル5’が中央に配置されている。従って、タングステンピン4の2つの終端部からのコイルの間隔はそれぞれ、2.25mmである。コイル5’は、3mmの長さを有している。コイルは、平らにされたタングステンワイヤー50から成り、このタングステンワイヤーの最大ワイヤー強度ないし最大厚Dは60μmである。平らにされた部分500に対して垂直な方向では、コイルワイヤー50は薄い。コイル5’の内径は、タングステンピン4の直径ないし厚さに相応する。コイル5’の隣接する2つの巻きの間隔は、340μmである。従ってコイル5’の勾配ファクターSは6.67である。コイル5’のコアファクターKは、ここではタングステンピン4の直径D1に相応するコア直径と、コイルワイヤーの最大厚さDとから計算され、K=5である。コイル5’は、図4に示されている本発明の第2の実施形態では、モリブデンフィルム2と重ならない、放電容器1の封鎖された終端部11内に配置された区間にわたってのみ延在する。モリブデン2とコイル5’との間隔は、0.95mmである。しかしコイル5’が放電空間10内に突出してもよい。これによって、自身の作用が損傷を被らない。放電容器1の図示されていない終端部は、終端部11と同じである。殊にこれは同じように、図1〜3に示されたような電極を有する。放電容器1の内部空間10内に突出する、2つのタングステンピン4ないし電極の終端部の間隔は、4.2mmである。2つの電極は相互に対向して、放電容器1の長手軸内に配置されている。
【0022】
図1には、第1の実施例に相応する電極が拡大して示されている。電極はタングステンピン4と、このタングステンピン4上に巻き付けられているコイル5から成る。上述のように、コイル5は、タングステンピン4の中央に配置された区間上にしか延在していない。コイル5は、平らにされたタングステンワイヤー50から成る。図2は、コイル5の巻きの拡大された詳細図を示しており、ここではコイルワイヤー50の平坦部500が概略的に示されている。コイル5の最初の巻き51と最後の巻き52を除いて、2つの隣接する巻きの間の間隔Lは340μmである。コイルの勾配ファクターSはこの間隔Lとコイルワイヤー直径Dから計算され、S=(L+D)/Dである。従ってコイル5の勾配ファクターは、最初の巻きと最後の巻きを除いて、6.67%ないしは667%であり、そのコアファクターKは5である。
【0023】
本発明の電極を製造するために、通常の粉末冶金製造方法および針金製造方法に即して製造されたタングステンピン4に、タングステンワイヤー50が巻き付けられる。ここでこのタングステンワイヤーは、少なくとも、自身の長さの部分上で平らにされている。タングステンワイヤー50を製造するために同じように、上述した通常の粉末冶金製造方法および針金製造方法が使用される。タングステンワイヤー50をタングステンピン4上に巻き付けるために、一重フィラメントを製造するのに通常使用される巻回方法が使用される。
【0024】
図3には、本発明の第2の実施例に相応する電極が示されている。この実施例は、第1の有利な実施例とは、コイル5’だけにおいて異なる。コイル5’では最初と最後の巻きも、自身の隣接する巻きに対して340μmの間隔で配置されている。従って、コイル5’は一貫して、6.67ないし667%の勾配ファクターを有する。全ての別の細部においてはコイル5および5’は一致しており、電極も一致している。
【0025】
図4に示された実施例の高圧放電ランプはさらに、外球とランプ口金を有している。この外球は放電容器1を、放電空間10の領域において取り囲んでいる。この詳細は例えばEP1465237A2号に説明および図示されている。
【0026】
図5には、高圧放電ランプの、光を通す酸化アルミニウムセラミックから成る放電容器が示されている。これは本発明の第3の実施例に即した電極を有している。電極の終端部51は、グローブトップ52によって、セラミック毛管53内に密閉されている。終端部51には金属ピン54が続いており、この金属ピンはタングステンワイヤーから成るコイル55が巻き付けられている。コイル55は、第1の巻き部分55aを含んでいる。この巻き部分は、金属ピン54の放電側終端部に配置されており、約6つの巻きを有している。付加的にコイル55は、第2の巻き部分55bを含んでいる。この巻き部分はセラミック毛管53内に延在している、金属ピン54の区間を取り囲んでおり、約30の巻きを有している。終端部51に続いている、金属ピン54の終端部と第2の巻き部分55bの相応する終端部は、同じようにグローブトップ52内に埋め込まれている。コイル55の巻き部分55a、55bは相互に、コイルワイヤー55cによって接続されている。コイルワイヤー55cは少なくとも、第1の巻き部分55aまたは第2の巻き部分55bの領域において平らに構成されており、これによって、金属ピン54上のコイル55の遊びのない配置が保証される。有利にはコイルワイヤー55cは、2つの巻き部分55a、bの領域において平らに構成されている。セラミック毛管53内に配置された、第2の巻き部分55bによって包囲されている、金属ピン54のより厚い区間はモリブデンから成る。放電容器の放電空間56内に突出している、第1の巻き部分55aによって包囲されている、金属ピン54のより薄い区間はタングステンから成る。コイルワイヤー55cの直径ないし厚さは0.15mm〜0.19mmの領域にある。コイル55ないしその巻き部分55a、55bのコアファクターは0.2〜0.5の領域にある。
【0027】
図6は、本発明の第4の実施例に即した電極を示している。この電極はラングステンピン4と2つのコイル5’’から成る。これらのコイルは、タングステンピン4の両端に巻かれている。これらのコイル5’’はそれぞれ、平らにされたタングステンワイヤーから成る。これは、タングステンピン4の相応する終端部に巻き付けられている。この電極は、例えば図5に示された金属ピン54およびコイル55の代わりに、高圧放電ランプにおける、セラミックから成る放電容器内で使用される。
【0028】
図7には、石英ガラスから成る放電容器1の密閉された終端部11が示されている。ここでこれは、本発明の第5の実施例に相応する電極を有している。放電容易器の密閉された終端部11内には、モリブデンフィルム2が気密して溶かし入れられている。放電容器1の放電空間10と反対の、モリブデンフィルム2の終端部は、モリブデンから成る電流供給部3と接続されている。放電容器10の方を向いている、モリブデンフィルム2の終端部は、タングステンピン4と接続されている。このタングステンピンは、放電容器10内に突出する終端部を有している。放電容器10内に突出した、タングステンピン4の終端部には、タングステンワイヤーからなるコイル5’’’が巻き付けられている。コイル5’’’のタングステンワイヤーは、平らなワイヤーとして構成されている。平らにされたコイルワイヤーは、0.17mm〜0.40mmの領域の厚さを有しており、コイル5’’’のコアファクターは0.3〜0.6の範囲にある。コイル5’’’の個々の巻きは、狭い間隔で、タングステンピン4の放電側終端部上に巻き付けられており、従って、コイル5’’’の勾配ファクターは1近傍である。タングステンピン4およびコイル5’’’は、高圧放電ランプに対するガス放電電極を構成する。コイル5’’’は、ガス放電電極の放電側終端部からの熱放出に寄与する。
【0029】
図8には、高圧放電ランプの石英ガラスから成る放電容器の密閉された終端部11が図示されている。これは本発明の第7の実施例に相応する電極を伴う。放電容器1の密閉された終端部11内には、モリブデンフィルム2が気密性に溶融して入れられている。放電容器の放電空間10と反対の方を向いている、モリブデンフィルム2の終端部は、モリブデンから成る電流供給部3と接続されている。放電空間10の方を向いている、モリブデンフィルム2の終端部は、タングステンピン4と接続されている。ここでこのタングステンピンは、放電空間10内に突出している終端部10を有している。タングステンピン4の放電空間10内に突出している終端部には、タングステンワイヤーから成るコイル5’’’’が巻き付けられている。コイル5’’’’のタングステンワイヤーは、平らにされたワイヤーとして構成されている。
【0030】
平らにされたコイルワイヤーは0.3mm〜0.6mmの範囲の厚さを有しており、コイル5’’’’のコアファクターは0.35〜0.8の範囲にある。コイル5’’’’の個々の巻きは、2つの長さで、僅かな間隔で、放電空間10内に突出しているタングステンピン4の終端部上に巻き付けられており、コイル5’’’’の勾配ファクターは約1である。タングステンピン4およびコイル5’’’’は、高圧放電ランプのためのガス放電電極を構成する。コイル5’’’’は、ガス放電電極の放電側終端部から熱を放出するために用いられる。
【0031】
図9および10では、本発明の第7の実施形態に相応する電極が概略的に、拡大して示されている。これらの電極は、第1の実施例に相応する図1および2に示された電極と、タングステンピン4に巻き付けられた後のコイルワイヤー50の平らな部分500の配向においてだけ異なっている。従って、図9および10において、相応する電極部分に対しては、図1および図2と同じ参照番号が用いられている。本発明の第7の実施例では、コイルワイヤー50の平らな部分500は、タングステンピン4とは別の方向を指すように配向されている。
【0032】
図11には、本発明の第8の実施例に相応する電極が概略的に、かつ拡大して示されている。この電極は、第2の実施例に相応する図3に示された電極と、タングステンピン4に巻き付けられた後のコイルワイヤーの平らな部分の配向においてだけ異なっている。従って、図11において、相応する電極部分に対しては、図3と同じ参照番号が用いられている。本発明の第8の実施形態では、コイルワイヤーの平らな部分、これがタングステンピン4とは別の方向を指し、タングステンピン4と反対方向になるように配向されている。
【0033】
本発明は、上述した実施例に制限されるものではない。例えば、第1、第2、第7または第8の実施例に相応するコイル5ないし5’を、平らにされたタングステンワイヤーの代わりに、平らにされたモリブデンワイヤーから製造してもよい。これによって、上述したゲッター効果が得られる。さらにコイル5ないし5’の巻きを、上述した実施例で記載されたものよりも、相互により狭くまたはより幅広く配置することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載された放電ランプ用の電極および少なくとも1つのこの種の電極を備えた放電ランプ並びにこの種の電極製造方法に関する。
【0002】
I.従来技術
この種の電極は例えば、WO2005/096334号に開示されている。WO2005/096334号は、石英ガラスからなる放電容器と同じ様式の2つの電極を備えた高圧放電ランプを開示している。ここでこの電極は、放電容器の内部空間においてガス放電を形成する。これらの電極はそれぞれ、金属製のピンから成る。この金属製ピンはコイルが巻き付けられた区間を有している。これらの電極のこの区間はそれぞれ、放電容器のシーリングされた端部内に突出しており、放電容器の石英ガラス内に埋め込まれている。コイルには固定手段が設けられており、この固定手段によって、電極の金属製ピンに沿ってコイルの位置が滑りずれることが阻止される。
【0003】
II.本発明の説明
本発明の課題は、上位概念に記載された電極を、より容易に製造可能であり、かつ電極ピン上でのコイルの良好な固着が保証されるように、改善することである。さらに、本発明の課題は、このような電極の製造方法を提供することである。
【0004】
上述の課題は本発明と相応に、請求項1の特徴部分に記載された構成を有する電極によって、および請求項13の特徴部分に記載された構成を有する方法によって解決される。本発明の特に有利な構成は従属請求項に記載されている。
【0005】
本発明の電極は金属ピンを有しており、この金属ピンは、金属ワイヤーから成るコイルが巻き付けられている区間を有している。ここでこのコイルの金属ワイヤーは平らにされている。コイルの金属ワイヤーを平らにすることによって機械的な応力が金属ワイヤー内に形成される。この機械的な応力は、コイルワイヤーが金属ピン上に巻かれていり間は得られ続け、金属ピンへコイルを押し付ける。この押し付けによって、遊びの無い、金属ピンにぴったり接するコイルが生じる。コイルが金属ピン上で滑りずれるのを阻止するための、別の固定手段および製造ステップ、例えば溶接は必要ない。このコイルは、自身が金属ピンの中央区間に配置されている実施形態では次のことを保証する。すなわち、放電容器材料内に亀裂が形成されないことを保証する。この亀裂は、電極材料と放電容器材料の熱膨張係数が異なることによって生じ、この亀裂によって、ランプが早期に故障してしまう恐れがある。コイルが少なくとも、金属ピンの終端部上に配置される別の実施形態では、コイルは、この終端部ないし金属ピン終端部から熱が放出されることを保証する。
【0006】
コイルの金属ワイヤーは有利には、自身の全長にわたって平らに形成され、これによって、コイルの全ての巻きが密着して、かつ遊び無く、電極の金属ピンに接することが保証される。コイルないしはコイルの個々の巻きの内径は、コイルが巻き付けられる金属ピン区間の厚さに相応する。これによって、この区間上にコイルを遊び無く配置することができる。
【0007】
有利にはコイルの金属ワイヤーはタングステンワイヤーまたはモリブデンワイヤーである。これによって、この電極を、熱的に非常に高い負荷がかかる放電ランプ、殊に高圧放電ランプ内で使用することができる。なぜならタングステンおよびモリブデンは非常に高い溶融温度を有しているからである。モリブデンワイヤーは、コイルが金属ピンの中央区間上に配置されている実施形態では、付加的に次のような利点を有している。すなわち、モリブデンワイヤーから成るコイルがゲッターとして機能し、高圧放電ランプの放電容器の密閉された終端部部分のモリブデンフィルム溶融を、放電容器内の腐食を起こす物質から保護するという、利点を有している。
【0008】
上述のコイルが巻き付けられている電極の金属ピンは有利にはタングステンピンであり、電極を熱的に非常に高い負荷がかかる放電ランプ、殊に高圧放電ランプ内で使用することを可能にする。
【0009】
コイルの金属ワイヤーの厚さは有利には、10マイクロメーター〜1000マイクロメーターの範囲にある。
【0010】
電極の金属ピンの厚さは有利には、0.10ミリメーター〜2.00ミリメーターの範囲にある。このような金属ピン厚さは、高圧放電ランプ用の電極の電流負担能力に合うように調整されている。
【0011】
有利には、コイルの2つの隣接する巻きの間の間隔Lとコイルワイヤーの厚さDとから、S=(L+D)/Dで計算されるコイルの勾配ファクターSおよび、コア直径D1とコイルワイヤーの厚さDとから、K=D1/Dで計算されるコイルのコアファクターは、1.0〜10.0の値領域にある。概念「コア直径」とは、コイルワイヤーが巻かれているピンの直径である。
【0012】
図1から4に示された、本発明の実施形態では、比較的大きい勾配ファクターが有利である。なぜなら比較的大きい勾配ファクターに基づいて、コイルの巻きは相互に離れて位置し、放電ランプの放電容器の密閉時に、軟化した放電容器材料が、コイルの隣接する巻きの間に入り込み、電極の表面を濡らすからである。さらにこのコイルは、自身の大きい勾配ファクターに基づいて、低い熱容量を有する。従って、放電容器材料はコイルが周りを囲む際にゆっくりと冷却され、これによって良好な密閉が実現される。コイル終端部に配置される最初の巻きおよび最後の巻きは、製造技術的な理由で、低い勾配ファクターを有する。
【0013】
図5〜8に示された本発明の実施形態では、コイルの勾配ファクターおよびコアファクターは次のように選択されている。すなわち、電極の放電側終端部からの良好な熱導出が保証されるように選択されている。
【0014】
図1〜4に示された実施例の電極は、特に良好に、石英ガラスから成る放電容器を備えた放電ランプ内での使用に適している。殊にこれは、無水銀充填物を有する、高圧放電ランプ、有利にはハロゲン金属蒸発高圧放電ランプである。後者は、自身の高い始動時電流故に、高い電流負担能力を有する比較的厚い電極を必要とする。この電極はさらに、高い温度に対する耐性を有する金属、例えばタングステンから製造されなければならない。タングステンと石英ガラスと比較的厚い電極の熱膨張係数は異なっているので、無水銀充填物を有する、ハロゲン金属蒸発高圧放電ランプでは、放電容器内の亀裂形成によって早期にランプが故障してしまうという上述の問題は特に緊急の問題である。
【0015】
コイルが巻き付けられた、本発明による電極の金属ピンの区間は、放電容器の密閉された終端部の放電容器材料内に埋め込まれている。これによって、モリブデンフィルム溶融部を介して、密閉された終端部内で、電気的なコンタクトが外部電流供給に対して製造される。本発明による電極上のコイルによって、上述したランプタイプの場合にも、放電容器内の亀裂形成によって起こる、早期のランプ故障が回避される。
【0016】
図5〜8に図示された実施例に相応する、本発明の電極は、種々異なるタイプの高圧放電ランプにおいて使用される。殊に、この電極の使用は、石英ガラスから成る放電容器を有する高圧放電ランプに制限されず、この電極は、光を通すセラミックから成る放電容器を有する高圧放電ランプにも使用される。相応する例は、図5に概略的に示されている。
【0017】
放電ランプの上述した電極のための本発明による製造方法は、電極の金属ピンないし金属ピンの区間に、本発明による製造方法のステップの間に、平らにされた金属ワイヤーが巻き付けられ、これによってコイルは、密着して、かつ遊び無く、電極の金属ピンないしは電極の金属ピンの区間上に配置されるように形成される。コイルワイヤーを本発明と相応に平らにすることによって、機械的な応力がコイルの金属ワイヤー内に形成される。この機械的な応力は、電極の金属ピン上に巻かれている間は得られ続け、コイルの巻きを金属ピンに押し付ける。これによって、コイルを電極の金属ピンに固定するためのさらなる固定手段は必要ない。殊に、コイルを金属ピンに溶接する、または金属ピンをコイル内に圧入させる等の製造ステップは省かれる。従って本発明の製造方法は、電極の局部的な損傷並びにコイルの溶接によるコイル組織の変化も回避する。全体として本発明によって、電極の製造方法が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施例による電極
【図2】図1に示された電極の一部分の拡大図
【図3】本発明の第2の実施例による電極
【図4】図3に示された電極を伴う高圧放電ランプの、石英ガラスから成る放電容器の密閉された終端部
【図5】本発明の第3の実施例に相応する電極を伴う高圧放電ランプの、光を通すセラミックから成る放電容器の密閉された終端部
【図6】本発明の第4の実施例に相応する電極
【図7】本発明の第5の実施例に相応する電極を伴う高圧放電ランプの、石英ガラスから成る放電容器の密閉された終端部
【図8】本発明の第6の実施例に相応する電極を伴う高圧放電ランプの、石英ガラスから成る放電容器の密閉された終端部
【図9】本発明の第7の実施例に相応する電極
【図10】図9に示された電極の区間の拡大図
【図11】本発明の第8の実施例に相応する電極
【0019】
III.有利な実施例の説明
以下に本発明を、有利な実施例に基づいてより詳細に説明する。
【0020】
図4は、モリブデンフィルムシーリングによって封鎖された終端部11を示している。この終端部は、2つの側で密閉された、高圧放電ランプ用の石英ガラスから成る放電容器1の終端部である。この高圧放電ランプは自動車投光器用のものであり、本発明の第2の実施例に従った電極を有している。またこれは、放電容器1の封鎖された終端部11を通って案内される電流供給部を含んでいる。このランプは殊に、35ワットの消費電力を有する無水銀のハロゲン金属蒸発高圧放電ランプである。放電容器1の内部空間10内には、イオン化可能な充填物が入れられる。この充填物はキセノンおよび金属のハロゲン化物、ナトリウム、スカンジウム、亜鉛およびインジウムから成る。放電容器の容積は24mm3である。
【0021】
電流供給部は、気密性に、放電容器1の封鎖された終端部11内に埋設されたモリブデンフィルム2を有している。このモリブデンフィルム2は、6.5mmの長さ、2mmの幅および25μmの厚さを有している。放電容器1の内部空間10と反対の、モリブデンフィルム2の終端部には、モリブデンワイヤー3が溶接されている。ここでこのモリブデンワイヤー3は、放電容器1の密閉された終端部11から突出している。放電容器1の内部空間10の方を向いている、モリブデンフィルム2の終端部には、タングステンピン4が溶接されている。ここでこのタングステンピンは、高圧放電ランプの2つの電極のうちの1つを構成し、放電空間10内に突出している。タングステンピン4の長さは7.5mmであり、その厚さないし直径D1=0.30mmである。タングステンピン4とモリブデンフィルム2との重なりは、1.30mm±0.15mmである。タングステンピン4には、コイル5’が中央に配置されている。従って、タングステンピン4の2つの終端部からのコイルの間隔はそれぞれ、2.25mmである。コイル5’は、3mmの長さを有している。コイルは、平らにされたタングステンワイヤー50から成り、このタングステンワイヤーの最大ワイヤー強度ないし最大厚Dは60μmである。平らにされた部分500に対して垂直な方向では、コイルワイヤー50は薄い。コイル5’の内径は、タングステンピン4の直径ないし厚さに相応する。コイル5’の隣接する2つの巻きの間隔は、340μmである。従ってコイル5’の勾配ファクターSは6.67である。コイル5’のコアファクターKは、ここではタングステンピン4の直径D1に相応するコア直径と、コイルワイヤーの最大厚さDとから計算され、K=5である。コイル5’は、図4に示されている本発明の第2の実施形態では、モリブデンフィルム2と重ならない、放電容器1の封鎖された終端部11内に配置された区間にわたってのみ延在する。モリブデン2とコイル5’との間隔は、0.95mmである。しかしコイル5’が放電空間10内に突出してもよい。これによって、自身の作用が損傷を被らない。放電容器1の図示されていない終端部は、終端部11と同じである。殊にこれは同じように、図1〜3に示されたような電極を有する。放電容器1の内部空間10内に突出する、2つのタングステンピン4ないし電極の終端部の間隔は、4.2mmである。2つの電極は相互に対向して、放電容器1の長手軸内に配置されている。
【0022】
図1には、第1の実施例に相応する電極が拡大して示されている。電極はタングステンピン4と、このタングステンピン4上に巻き付けられているコイル5から成る。上述のように、コイル5は、タングステンピン4の中央に配置された区間上にしか延在していない。コイル5は、平らにされたタングステンワイヤー50から成る。図2は、コイル5の巻きの拡大された詳細図を示しており、ここではコイルワイヤー50の平坦部500が概略的に示されている。コイル5の最初の巻き51と最後の巻き52を除いて、2つの隣接する巻きの間の間隔Lは340μmである。コイルの勾配ファクターSはこの間隔Lとコイルワイヤー直径Dから計算され、S=(L+D)/Dである。従ってコイル5の勾配ファクターは、最初の巻きと最後の巻きを除いて、6.67%ないしは667%であり、そのコアファクターKは5である。
【0023】
本発明の電極を製造するために、通常の粉末冶金製造方法および針金製造方法に即して製造されたタングステンピン4に、タングステンワイヤー50が巻き付けられる。ここでこのタングステンワイヤーは、少なくとも、自身の長さの部分上で平らにされている。タングステンワイヤー50を製造するために同じように、上述した通常の粉末冶金製造方法および針金製造方法が使用される。タングステンワイヤー50をタングステンピン4上に巻き付けるために、一重フィラメントを製造するのに通常使用される巻回方法が使用される。
【0024】
図3には、本発明の第2の実施例に相応する電極が示されている。この実施例は、第1の有利な実施例とは、コイル5’だけにおいて異なる。コイル5’では最初と最後の巻きも、自身の隣接する巻きに対して340μmの間隔で配置されている。従って、コイル5’は一貫して、6.67ないし667%の勾配ファクターを有する。全ての別の細部においてはコイル5および5’は一致しており、電極も一致している。
【0025】
図4に示された実施例の高圧放電ランプはさらに、外球とランプ口金を有している。この外球は放電容器1を、放電空間10の領域において取り囲んでいる。この詳細は例えばEP1465237A2号に説明および図示されている。
【0026】
図5には、高圧放電ランプの、光を通す酸化アルミニウムセラミックから成る放電容器が示されている。これは本発明の第3の実施例に即した電極を有している。電極の終端部51は、グローブトップ52によって、セラミック毛管53内に密閉されている。終端部51には金属ピン54が続いており、この金属ピンはタングステンワイヤーから成るコイル55が巻き付けられている。コイル55は、第1の巻き部分55aを含んでいる。この巻き部分は、金属ピン54の放電側終端部に配置されており、約6つの巻きを有している。付加的にコイル55は、第2の巻き部分55bを含んでいる。この巻き部分はセラミック毛管53内に延在している、金属ピン54の区間を取り囲んでおり、約30の巻きを有している。終端部51に続いている、金属ピン54の終端部と第2の巻き部分55bの相応する終端部は、同じようにグローブトップ52内に埋め込まれている。コイル55の巻き部分55a、55bは相互に、コイルワイヤー55cによって接続されている。コイルワイヤー55cは少なくとも、第1の巻き部分55aまたは第2の巻き部分55bの領域において平らに構成されており、これによって、金属ピン54上のコイル55の遊びのない配置が保証される。有利にはコイルワイヤー55cは、2つの巻き部分55a、bの領域において平らに構成されている。セラミック毛管53内に配置された、第2の巻き部分55bによって包囲されている、金属ピン54のより厚い区間はモリブデンから成る。放電容器の放電空間56内に突出している、第1の巻き部分55aによって包囲されている、金属ピン54のより薄い区間はタングステンから成る。コイルワイヤー55cの直径ないし厚さは0.15mm〜0.19mmの領域にある。コイル55ないしその巻き部分55a、55bのコアファクターは0.2〜0.5の領域にある。
【0027】
図6は、本発明の第4の実施例に即した電極を示している。この電極はラングステンピン4と2つのコイル5’’から成る。これらのコイルは、タングステンピン4の両端に巻かれている。これらのコイル5’’はそれぞれ、平らにされたタングステンワイヤーから成る。これは、タングステンピン4の相応する終端部に巻き付けられている。この電極は、例えば図5に示された金属ピン54およびコイル55の代わりに、高圧放電ランプにおける、セラミックから成る放電容器内で使用される。
【0028】
図7には、石英ガラスから成る放電容器1の密閉された終端部11が示されている。ここでこれは、本発明の第5の実施例に相応する電極を有している。放電容易器の密閉された終端部11内には、モリブデンフィルム2が気密して溶かし入れられている。放電容器1の放電空間10と反対の、モリブデンフィルム2の終端部は、モリブデンから成る電流供給部3と接続されている。放電容器10の方を向いている、モリブデンフィルム2の終端部は、タングステンピン4と接続されている。このタングステンピンは、放電容器10内に突出する終端部を有している。放電容器10内に突出した、タングステンピン4の終端部には、タングステンワイヤーからなるコイル5’’’が巻き付けられている。コイル5’’’のタングステンワイヤーは、平らなワイヤーとして構成されている。平らにされたコイルワイヤーは、0.17mm〜0.40mmの領域の厚さを有しており、コイル5’’’のコアファクターは0.3〜0.6の範囲にある。コイル5’’’の個々の巻きは、狭い間隔で、タングステンピン4の放電側終端部上に巻き付けられており、従って、コイル5’’’の勾配ファクターは1近傍である。タングステンピン4およびコイル5’’’は、高圧放電ランプに対するガス放電電極を構成する。コイル5’’’は、ガス放電電極の放電側終端部からの熱放出に寄与する。
【0029】
図8には、高圧放電ランプの石英ガラスから成る放電容器の密閉された終端部11が図示されている。これは本発明の第7の実施例に相応する電極を伴う。放電容器1の密閉された終端部11内には、モリブデンフィルム2が気密性に溶融して入れられている。放電容器の放電空間10と反対の方を向いている、モリブデンフィルム2の終端部は、モリブデンから成る電流供給部3と接続されている。放電空間10の方を向いている、モリブデンフィルム2の終端部は、タングステンピン4と接続されている。ここでこのタングステンピンは、放電空間10内に突出している終端部10を有している。タングステンピン4の放電空間10内に突出している終端部には、タングステンワイヤーから成るコイル5’’’’が巻き付けられている。コイル5’’’’のタングステンワイヤーは、平らにされたワイヤーとして構成されている。
【0030】
平らにされたコイルワイヤーは0.3mm〜0.6mmの範囲の厚さを有しており、コイル5’’’’のコアファクターは0.35〜0.8の範囲にある。コイル5’’’’の個々の巻きは、2つの長さで、僅かな間隔で、放電空間10内に突出しているタングステンピン4の終端部上に巻き付けられており、コイル5’’’’の勾配ファクターは約1である。タングステンピン4およびコイル5’’’’は、高圧放電ランプのためのガス放電電極を構成する。コイル5’’’’は、ガス放電電極の放電側終端部から熱を放出するために用いられる。
【0031】
図9および10では、本発明の第7の実施形態に相応する電極が概略的に、拡大して示されている。これらの電極は、第1の実施例に相応する図1および2に示された電極と、タングステンピン4に巻き付けられた後のコイルワイヤー50の平らな部分500の配向においてだけ異なっている。従って、図9および10において、相応する電極部分に対しては、図1および図2と同じ参照番号が用いられている。本発明の第7の実施例では、コイルワイヤー50の平らな部分500は、タングステンピン4とは別の方向を指すように配向されている。
【0032】
図11には、本発明の第8の実施例に相応する電極が概略的に、かつ拡大して示されている。この電極は、第2の実施例に相応する図3に示された電極と、タングステンピン4に巻き付けられた後のコイルワイヤーの平らな部分の配向においてだけ異なっている。従って、図11において、相応する電極部分に対しては、図3と同じ参照番号が用いられている。本発明の第8の実施形態では、コイルワイヤーの平らな部分、これがタングステンピン4とは別の方向を指し、タングステンピン4と反対方向になるように配向されている。
【0033】
本発明は、上述した実施例に制限されるものではない。例えば、第1、第2、第7または第8の実施例に相応するコイル5ないし5’を、平らにされたタングステンワイヤーの代わりに、平らにされたモリブデンワイヤーから製造してもよい。これによって、上述したゲッター効果が得られる。さらにコイル5ないし5’の巻きを、上述した実施例で記載されたものよりも、相互により狭くまたはより幅広く配置することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ランプ用の電極であって、
当該電極は、金属ワイヤー(50、55c)から成るコイル(5、5’、5’’、5’’’、5’’’’、55)が巻き付けられている区間を有する金属ピン(4、54)を有する形式のものにおいて、
前記金属ワイヤー(50、55c)は平らにされている、
ことを特徴とする電極。
【請求項2】
前記コイル(5、5’、5’’、5’’’、5’’’’、55)の前記金属ワイヤー(50、55c)は、金属ワイヤー自身の長さの少なくとも一部分が平らにされている、請求項1記載の電極。
【請求項3】
前記金属ワイヤー(50、55c)は、タングステンワイヤーまたはモリブデンワイヤーである、請求項1または2記載の電極。
【請求項4】
前記金属ピン(4)はタングステンピンである、請求項1から3までのいずれか1項記載の電極。
【請求項5】
前記金属ワイヤー(50、55c)の厚さは、10マイクロメーター〜1000マイクロメーターの範囲にある、請求項1から4までのいずれか1項記載の電極。
【請求項6】
前記金属ピン(4、54)の厚さは、0.1ミリメーター〜2.0ミリメーターの範囲にある、請求項1から5までのいずれか1項記載の電極。
【請求項7】
前記コイル(5、5’、5’’、5’’’、5’’’’、55)の前記コアファクターおよび勾配ファクターは実質的に、1.0〜10.0の値の範囲にある、請求項1から6までのいずれか1項記載の電極。
【請求項8】
前記コイル(5、5’、5’’、5’’’、5’’’’、55)の内径は、少なくとも自身の長手延在方向部分の一部に沿って、前記金属ピン区間の厚さに相応する、請求項1から7までのいずれか1項記載の電極。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載された電極を少なくとも1つ伴う放電ランプ。
【請求項10】
石英ガラスから成る放電容器(1)を有しており、
少なくとも1つの電極が、当該放電容器(1)の密閉された終端部(11)内に突出しており、前記コイル(5、5’、5’’、5’’’、5’’’’)が巻き付けられている、前記少なくとも1つの電極の前記金属ピン(4)の区間は、自身の長さの少なくとも一部分で、前記放電容器(1)の密閉された終端部(11)の石英ガラス内に埋め込まれている、請求項9記載の放電ランプ。
【請求項11】
無水銀充填物を有する高圧放電ランプとして構成されている、請求項10記載の放電ランプ。
【請求項12】
前記コイル(5’’、5’’’、5’’’’、55)は、前記少なくとも1つの電極の放電側終端部上に配置されている、請求項9記載の放電ランプ。
【請求項13】
放電ランプ用の電極の製造方法であって、
前記電極は金属ピン(4、54)を有し、
当該製造プロセス中に前記金属ピン(4、54)に、平らにされた金属ワイヤー(50、55c)を巻き付ける、
ことを特徴とする、放電ランプ用の電極の製造方法。
【請求項14】
前記金属ピン(4)はタングステンピンである、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記金属ワイヤー(50、55c)はタングステンワイヤーまたはモリブデンワイヤーである、請求項12または13記載の方法。
【請求項1】
放電ランプ用の電極であって、
当該電極は、金属ワイヤー(50、55c)から成るコイル(5、5’、5’’、5’’’、5’’’’、55)が巻き付けられている区間を有する金属ピン(4、54)を有する形式のものにおいて、
前記金属ワイヤー(50、55c)は平らにされている、
ことを特徴とする電極。
【請求項2】
前記コイル(5、5’、5’’、5’’’、5’’’’、55)の前記金属ワイヤー(50、55c)は、金属ワイヤー自身の長さの少なくとも一部分が平らにされている、請求項1記載の電極。
【請求項3】
前記金属ワイヤー(50、55c)は、タングステンワイヤーまたはモリブデンワイヤーである、請求項1または2記載の電極。
【請求項4】
前記金属ピン(4)はタングステンピンである、請求項1から3までのいずれか1項記載の電極。
【請求項5】
前記金属ワイヤー(50、55c)の厚さは、10マイクロメーター〜1000マイクロメーターの範囲にある、請求項1から4までのいずれか1項記載の電極。
【請求項6】
前記金属ピン(4、54)の厚さは、0.1ミリメーター〜2.0ミリメーターの範囲にある、請求項1から5までのいずれか1項記載の電極。
【請求項7】
前記コイル(5、5’、5’’、5’’’、5’’’’、55)の前記コアファクターおよび勾配ファクターは実質的に、1.0〜10.0の値の範囲にある、請求項1から6までのいずれか1項記載の電極。
【請求項8】
前記コイル(5、5’、5’’、5’’’、5’’’’、55)の内径は、少なくとも自身の長手延在方向部分の一部に沿って、前記金属ピン区間の厚さに相応する、請求項1から7までのいずれか1項記載の電極。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載された電極を少なくとも1つ伴う放電ランプ。
【請求項10】
石英ガラスから成る放電容器(1)を有しており、
少なくとも1つの電極が、当該放電容器(1)の密閉された終端部(11)内に突出しており、前記コイル(5、5’、5’’、5’’’、5’’’’)が巻き付けられている、前記少なくとも1つの電極の前記金属ピン(4)の区間は、自身の長さの少なくとも一部分で、前記放電容器(1)の密閉された終端部(11)の石英ガラス内に埋め込まれている、請求項9記載の放電ランプ。
【請求項11】
無水銀充填物を有する高圧放電ランプとして構成されている、請求項10記載の放電ランプ。
【請求項12】
前記コイル(5’’、5’’’、5’’’’、55)は、前記少なくとも1つの電極の放電側終端部上に配置されている、請求項9記載の放電ランプ。
【請求項13】
放電ランプ用の電極の製造方法であって、
前記電極は金属ピン(4、54)を有し、
当該製造プロセス中に前記金属ピン(4、54)に、平らにされた金属ワイヤー(50、55c)を巻き付ける、
ことを特徴とする、放電ランプ用の電極の製造方法。
【請求項14】
前記金属ピン(4)はタングステンピンである、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記金属ワイヤー(50、55c)はタングステンワイヤーまたはモリブデンワイヤーである、請求項12または13記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−506111(P2012−506111A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531434(P2011−531434)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062576
【国際公開番号】WO2010/043490
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(508096703)オスラム アクチエンゲゼルシャフト (92)
【氏名又は名称原語表記】OSRAM AG
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Str. 1, 81543 Muenchen Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062576
【国際公開番号】WO2010/043490
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(508096703)オスラム アクチエンゲゼルシャフト (92)
【氏名又は名称原語表記】OSRAM AG
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Str. 1, 81543 Muenchen Germany
【Fターム(参考)】
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