説明

放電ランプ用電極、高圧放電ランプ、ランプユニットおよび投射型画像表示装置

【課題】高圧放電ランプの封止部および電極の破損を防止する。
【解決手段】一端が放電ランプの発光管の封止部に封止され、他端が前記発光管の放電空間内に配置される棒状部101を有する放電ランプ用電極100であって、棒状部101の前記一端側の端面の線粗さの最大高さをRy1とし、棒状部101の長手方向に沿う面のうち、前記一端側の端面から前記他端側に棒状部101の長手方向の長さの3分の1の位置において、棒状部101の周回方向の線粗さの最大高さをRy2としたとき、Ry1が40[μm]以下であり、Ry2が10[μm]以上40[μm]以下の範囲内である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプ用電極、高圧放電ランプ、ランプユニットおよび投射型画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の高圧放電ランプの要部拡大断面図を図20に示す。従来の高圧放電ランプ(以下、「高圧放電ランプ1」という。)は、例えばショートアーク型超高圧放電ランプの場合、内部に一対の電極2が対向配置され、かつ、0.15[mg/mm3]以上の水銀が封入された発光部3と、その両側に延在して電極2の一部を封止する封止部4とを備える。また、電極2の表面には凹凸6が設けられており、封止部4内において、電極2の表面と封止部4の構成材料である石英ガラスとの間には微少空隙5が存在する(例えば、特許文献1等参照。)。
【0003】
高圧放電ランプ1の場合、ランプ製造時における電極2封止の際、封止部4に振動を与えて、電極2の表面の凹凸6の凹部6aに位置する溶融した石英ガラスを振動により凹部6aの外に飛び出させ、封止部4と電極2との間に隙間を形成している。この隙間によって電極2の表面と石英ガラスとの界面における応力集中が緩和されるため、封止部4が破損し難い。電極2の表面の凹凸6は、前記隙間を形成するために設けられているものであり、単に、電極2の表面に凹部6aが形成されてさえいればよいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3480453号公報
【特許文献2】特開2008−282554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、凹凸6を形成するための旋盤加工や円筒切削加工は、加工制御そのものが困難であり、それら加工によって適度な隙間が生じる凹凸6を形成することは容易でない。
発明者らが検討したところ、電極2の表面に適度な凹凸6が形成されていなければ封止部の破損の原因となることがわかった。すなわち、適度な凹凸6が形成されていなければ、封止部4と電極2との間に図20に示すような空隙5ができてしまうため、電極2を十分に封止することが困難となり、封止部4が破損しやすくなる。さらに、発光部3の内部に封入された水銀が空隙5内に侵入し溜まってしまうと、その水銀が点灯時に蒸発して空隙5内が高圧になってしまうため、電極2が発光部3側に押し出されて電極2や封止部4が破損してしまう。
【0006】
そこで、本発明に係る放電ランプ用電極および放電ランプ用電極の製造方法は、高圧放電ランプに用いた場合に、高圧放電ランプの封止部および電極の破損を防止することを目的とする。
また、本発明に係る高圧放電ランプは、封止部および電極の破損を防止することを目的とする。
【0007】
さらに、本発明に係るランプユニットおよび投射型画像表示装置は、封止部および電極の破損を防止した高圧放電ランプを備えることで、信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る放電ランプ用電極は、一端が放電ランプの発光管の封止部に封止され、他端が前記発光管の放電空間内に配置される棒状部を有する放電ランプ用電極であって、前記棒状部の前記一端側の端面の線粗さの最大高さをRy1とし、前記棒状部の長手方向に沿う面のうち、前記一端側の端面から前記他端側に前記棒状部の長手方向の長さの3分の1の位置において、前記棒状部の周回方向の線粗さの最大高さをRy2としたとき、前記Ry1が40[μm]以下であり、前記Ry2が10[μm]以上40[μm]以下の範囲内であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る高圧放電ランプは、前記放電ランプ用電極と、ガラス製の発光管とを備え、前記発光管は、内部に封入物が封入され、かつ放電空間が形成されている発光部と、前記発光部に連設された封止部とを有し、前記封止部には、前記棒状部の前記一端側が封止されていることを特徴とする。
さらに、本発明に係るランプユニットは、前記高圧放電ランプと、凹状の反射面を有する反射鏡とを備え、前記高圧放電ランプは、前記高圧放電ランプからの射出光が前記反射面によって反射されるように前記反射鏡の内部に取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る投射型画像表示装置は、前記ランプユニットと、前記ランプユニットからの照明光が変調して光学像を形成する光学ユニットと、前記光学像を拡大投射する投射装置とを備えることを特徴とする。
また、本発明に係る放電ランプ用電極の製造方法は、一端が発光管の封止部に封止され、他端が前記発光管の放電空間内に配置される棒状部を有する放電ランプ用電極の製造方法であって、前記棒状部となる棒状部材を化学エッチングする化学エッチング工程と、前記化学エッチング後の棒状部材の少なくとも前記一端側の端部を除去する除去工程とを有し、化学エッチング後の棒状部材の少なくとも前記一端側の端部を除去する除去工程を有し、前記化学エッチング工程では、前記熱処理された棒状部材の長手方向に沿う面のうち、前記一端側の端部が除去された後に前記一端側の端面から前記他端側に前記棒状部の長手方向の長さの3分の1の位置になる予定の位置において、前記棒状部の周回方向の線粗さの最大高さRy2が10[μm]以上40[μm]以下の範囲内となるように、棒状部材をエッチングすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る放電ランプ用電極および放電ランプ用電極の製造方法は、高圧放電ランプに用いた場合に、高圧放電ランプの封止部および電極の破損を防止することができる。
また、本発明に係る高圧放電ランプは、封止部および電極の破損を防止することができる。
さらに、本発明に係るランプユニットおよび画像表示装置は、封止部および電極の破損を防止した高圧放電ランプを備えることで、信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る放電ランプ用電極の正面図
【図2】本発明の第1の実施形態に係る放電ランプ用電極の約150[倍]の電子顕微鏡写真
【図3】従来の放電ランプ用電極の他端部の約150[倍]の電子顕微鏡写真
【図4】本発明の第1の実施形態に係る放電ランプ用電極の他端部の約150[倍]の電子顕微鏡写真
【図5】実験試料の表面の結晶粒の結晶方位を示す図
【図6】実験試料の約100[倍]の電子顕微鏡写真
【図7】エッチングされていることが確認できる部分を示す図
【図8】実験試料の表面において[001]方位を有する結晶粒を示す図
【図9】(a)エッチング工程の概念図、(b)除去工程の概念図、(c)コイル体装着行程の概念図、(d)溶融行程の概念図
【図10】熱処理工程およびエッチング工程を行わなかった棒状部材の約100[倍]の電子顕微鏡写真
【図11】Ry1およびRy2の値における電極破損の有無を示す図
【図12】本発明の第2の実施形態に係る高圧放電ランプの長手方向の中心軸を含む断面図
【図13】(a)本発明の第3の実施形態に係る高圧放電ランプの長手方向の中心軸を含む正面断面図、(b)同じく高圧放電ランプの左側面断面図
【図14】本発明の第4の実施形態に係るランプユニットの一部切欠き斜視図
【図15】本発明の第5の実施形態に係る投射型画像表示装置の斜視図
【図16】本発明の第6の実施形態に係る投射型画像表示装置の斜視図
【図17】(a)本発明の第1の実施形態に係る放電ランプ用電極の変形例1の正面図、(b)同じく放電ランプ用電極の変形例1aの正面図、(c)同じく放電ランプ用電極の変形例1bの正面図、(d)同じく放電ランプ用電極の変形例1cの正面図
【図18】(a)同じく放電ランプ用電極の変形例2の正面図、(b)同じく放電ランプ用電極の変形例3の正面図
【図19】(a)本発明の第2の実施形態に係る高圧放電ランプの変形例1の長手方向の中心軸を含む断面図、(b)(a)のA−A´断面図
【図20】従来の高圧放電ランプの長手方向の中心軸を含む要部拡大断面図
【図21】従来の高圧放電ランプの長手方向の中心軸X1を含む要部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る高圧放電ランプ用電極の正面図を図1に示す。本発明の第1の実施形態に係る放電ランプ用電極(以下、「電極100」という。)は、一端が放電ランプの発光管の封止部に封止され、他端が前記発光管の放電空間内に配置される棒状部101を有する高圧放電ランプ用の電極である。
【0014】
図1に示す電極100は、例えば線径が0.5[mm]の略円柱形状のタングステン製の棒状部101と、棒状部101の他端側の端部(以下、「他端部」という。)に形成された電極部102とを有する。電極部102は、例えば、棒状部101の他端部に、線径0.3[mm]の2重巻のコイル103(コイル巻数6[ターン])を外嵌および固定したものである。なお、電極部102の先端部は、例えばレーザー等を照射することにより、溶融された略半球状の形状となっている。電極部102は、予め略半球状、略球状または略円錐状に削り出したもの、もしくは、そのような形状で焼結したものであってもよい。また、棒状部101は、略円柱形状に限らず、略多角柱形状であってもよい。
【0015】
なお、棒状部101および電極部102の材料としては、副成分組成Al、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Ni、Si、Sn、Na、K、Mo、UおよびThの元素の総含有量を10[ppm]以下に抑えた高純度タングステンを用いてもよい。このような高純度タングステン材料を採用した電極100を高圧放電ランプに用いた場合、ランプ寿命中の発光管(図示せず。)の黒化を抑制して光束維持率の改善に効果的である。
【0016】
また、電極100は、図1に示すような棒状部101および電極部102を有するものに限らず、例えば、棒状部101のみであってもよい。
棒状部101の約150[倍]の電子顕微鏡写真を図2に示す。電極100は、棒状部101の表面に異なる結晶方位を有する結晶粒が複数存在し、かつ、前記結晶方位の違いにより前記結晶粒が存在する各領域の表面状態がそれぞれ異なることによって、棒状部101の表面に凹凸が形成されている。これにより、棒状部101の表面には、適度にばらついた凹凸が形成されているため電極100を高圧放電ランプに用いた場合、高圧放電ランプの封止部および電極の破損を防止することができる。
【0017】
棒状部101の一端側の端面101a(以下、「一端面101a」という。)の線粗さの最大高さをRy1とし、棒状部101の長手方向に沿う面のうち、一端面101aから他端側に電極100の長手方向の長さの3分の1の位置Pにおいて、棒状部101の周回方向の線粗さの最大高さをRy2としたとき、Ry1が40[μm]以下であり、Ry2が10[μm]以上40[μm]以下の範囲内となっている。「棒状部101の長手方向に沿う面」とは、図1に示す略円柱形状の棒状部101の場合には、長手方向に延びる面、すなわち周面のことをいう。なお、棒状部101が略多角柱形状の場合においても同様に、長手方向に延びる面のことをいう。
【0018】
従来の高圧放電ランプのランプ軸を含む断面図を図21に示す。従来の高圧放電ランプ(以下、「ランプ11」という。)は、例えば一対の電極12が対向配置され、光透過性材料からなる放電容器13内に0.15[mg/mm]以上の水銀が封入され、放電容器13の両端に形成した封止部14に埋設された金属箔15に該電極12の端部が溶接され、該金属箔15と、電極12の一部とが、ガラスに封着されたショートアーク型の超高圧放電ランプにおいて、電極12は、全周に亘ってランプ軸X1に略軸対象の大径部13aと、大径部13aに連接する縮径部13bとを持ち、大径部13aと縮径部13bとが連続した外表面を介して一体的に形成された電極12であり、電極12のガラスに封着されている部分の表面は、電極12の軸X1方向に沿ったスジ状部であって、軸X1方向に直交する断面円周全体に亘って凹凸部が形成されている。電極12は、例えばφ1.4[mm]の純タングステン棒材をNC旋盤等で切削加工後に全体を化学薬品によりエッチングしたものである(例えば、特許文献2等参照。)。
【0019】
しかしながら、発明者らの検討により、ランプ11のように、化学薬品によりエッチングすると、電極12の長手方向に沿う面に対して、電極12の端面のほうがエッチングにより浸食されやすく、端面に大きな凹凸が形成されることがわかった。
本発明に係る電極100の製造工程においても、棒状部101をエッチングすると棒状部101に沿う面101aに対して棒状部101の一端面101aがエッチングにより過度に浸食されてしまい、図3に示すように、棒状部の端面に、例えば線粗さRy1が40[μm]を超えるような、大きな凹凸が形成されてしまう場合がある。この場合、その端面をそのままにしておくと、高圧放電ランプの製造に用いる際、その端面の凹凸の窪みに水銀が入り込みやすく、かつ、その窪みに入り込んだ水銀がその端面に溜まりやすく、点灯時に水銀の溜まっている部分が高温となり、高圧になってしまうと、その力に封止部が耐えきれずに破損したり、電極が放電容器側に押し出されて破損してしまう。よって、図4に示すように、棒状部101は、凹凸の大きな端面をその端部ごと除去する等して、Ry1を40[μm]以下とすることで、電極100の棒状部101の一端面101aに水銀が付着したままになることを防止し、高圧放電ランプに用いた場合に、封止部や電極100が破損するのを防止することが好ましい。
【0020】
「一端面101aの線粗さの最大高さをRy1」としたのは、棒状部101の一端面101aにおける水銀の溜まりやすさは、凹凸の差が影響するためである。また、一端面101aは、棒状部101の長手方向に沿う面に対して面積が小さいため、面粗さではなく線粗さとした。
なお、Ry1は、一端面101aの中心から外縁に向かう線上において測定した。
【0021】
Pを、「棒状部101の長手方向に沿う面のうち、一端面101aから他端側に電極100の長手方向の長さの3分の1の位置」としたのは、電極100を高圧放電ランプに用いた場合に、封止部に封止される部分であり、棒状部101の長手方向に沿う面において、封止の性能を左右する部分であるためである。
また、「棒状部101の周回方向の線粗さ」としたのは、棒状部101は、引き伸ばされて加工されることが多く、その長手方向に沿う方向に溝が形成されやすく、仮に、棒状部101の長手方向とした場合には、測定位置によって溝の有無によりRy2の値が大きく変わるおそれがあるためである。
【0022】
また、「最大高さRy2」としたのは、最大高さは、エッチングの程度によって変化するため、表面の状態をより適確に把握することができるためである。
Ry1およびRy2は、株式会社キーエンス製の表面粗さ測定装置(VK−8700)により、100[μm]の長さを約50[倍]の倍率により測定した。
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る電極100は、棒状部101の表面に異なる結晶方位を有する結晶粒が複数存在し、かつ、前記結晶方位の違いにより前記結晶粒が存在する各領域の表面状態がそれぞれ異なることによって、棒状部101の表面に凹凸が形成されているという第1の特徴と、棒状部101の一端面101aの線粗さの最大高さをRy1とし、棒状部101の長手方向に沿う面のうち、一端面101aから他端側に棒状部101の長手方向の長さの3分の1の位置において、棒状部101の周回方向の線粗さの最大高さをRy2としたとき、前記Ry1が40[μm]以下であり、前記Ry2が10[μm]以上40[μm]以下の範囲内であるという第2の特徴とを有する。
【0023】
但し、本発明の第1の実施形態に係る電極100の変形例として、上記2つの特徴のうちのいずれか1つの特徴を有さない電極としても良い。すなわち、第1の特徴は有するが、第2の特徴は有さない電極としても良いし、第2の特徴は有するが、第1の特徴は有さない電極としても良い。いずれの変形例に係る電極も、高圧放電ランプに用いた場合に、高圧放電ランプの封止部および電極の破損を防止することができる。
【0024】
なお、本発明の第1の実施形態に係る電極100の変形例としての、第2の特徴は有するが、第1の特徴は有さない電極とは、具体的には、一端が放電ランプの発光管の封止部に封止され、他端が前記発光管の放電空間内に配置される棒状部を有する放電ランプ用電極であって、前記棒状部の前記一端側の端面の線粗さの最大高さをRy1とし、前記棒状部の長手方向に沿う面のうち、前記一端側の端面から前記他端側に前記棒状部の長手方向の長さの3分の1の位置において、前記棒状部の周回方向の線粗さの最大高さをRy2としたとき、前記Ry1が40[μm]以下であり、前記Ry2が10[μm]以上40[μm]以下の範囲内であることを特徴とする放電ランプ用電極である。
【0025】
(実験1)
発明者らは、棒状部101の表面に異なる結晶方位を有する結晶粒が存在し、かつ、前記結晶方位の違いにより結晶粒が存在する各領域の表面状態がそれぞれ異なることによって、棒状部101の表面に凹凸が形成されていること、すなわち電極100が第1の特徴を有すること、を確認するために、検証実験を行った。なお、より広範囲の結晶方位を確認しやすくするために、平板状の部材について、その表面が電極100と同様の状態としたものを実験試料とした。
【0026】
実験試料の表面の結晶方位を示す図を図5に、同じく実験試料の約100[倍]の電子顕微鏡写真を図6に、それぞれ示す。図5に示すように、実験試料の表面には、異なる結晶方位を有する結晶粒が存在することが確認できた。さらに、図5に示す結晶方位によって、図6に示すように凹凸の状態が異なることが確認できた。なお、図5においては、実験試料の表面において、[001]、[114]、[103]、[225]および[102]の結晶方位を有する結晶粒について詳細に図示し、[111]などのその他の結晶方位を有する結晶粒については、まとめて図示を省略している。図5に示す結晶方位は、EBSD法によるマッピングに基づくものである。EBSD法で得られるマッピングは、通常、数千〜数十万のピクセル(測定点)で構成されており、各々のピクセルがその位置での結晶方位情報を持っている。EBSD法において、粒界は、ピクセル間の方位差(回転角)が指定した角度以上の値の場合に、このピクセル間の境界をいう。角度は任意に指定できるが、一般的には、15[°]以上あるいは5[°]以上を粒界とする場合が多い。本発明においては、10[°]以上を粒界とした。
【0027】
さらに、実験試料の表面のうち、エッチングされていることが確認できる部分を示す図を図7に示す。ここで、「エッチングされている」とは、約100[倍]の電子顕微鏡写真において確認できる程度に、エッチングにより侵食されていることをいう。
また、実験試料の表面において、[001]方位を有する結晶粒を示す図を図8に示す。図8は、図5のうち、実験試料の表面において、[001]方位を有する結晶粒のみを図示したものである。図7および8に示すように、棒状部101の表面において、少なくとも[001]方位を有する結晶粒がエッチングされていることが好ましい。この場合、化学エッチングにより凹凸を形成しやすくすることができる。
【0028】
また、図5および6において図示していないが、棒状部101の表面において、[111]方位を有する結晶粒が、他の結晶方位を有する結晶粒に対してエッチングされていないことが好ましい。発明者らの検討により、[111]方位の結晶粒は、エッチングされ難いことがわかったため、[111]方位の結晶粒がエッチングされすぎると、棒状部101の表面がエッチングされ過ぎ、棒状部101の線径を制御し難くなるためである。
【0029】
なお、棒状部101の表面の結晶方位および凹凸の状態は、以下の手順で確認することが好ましい。
(i)棒状部101を、その長手方向に対して略垂直に切る。
(ii)(i)で切った棒状部101の断面を研磨し、その断面をEBSPシステム(テクセム ラボラトリーズ インコーポレイテッド製OIMシステム〔Ver.5.2〕)で測定することで、その断面における棒状部101の外表面の結晶粒の結晶方位および凹凸の状態を測定する。なお、測定条件は、加速電圧25[kV]、測定エリア350[μm]×600[μm]、測定間隔1.5[μm]である。
【0030】
以上の(i)、(ii)手順により、棒状部101の表面の結晶方位および凹凸の状態を確認することができる。
(放電ランプ用電極の製造方法)
本発明の第1の実施形態に係る電極100の製造方法について、以下に説明する。
本発明の第1の実施形態に係る電極100の製造方法は、棒状部材を熱処理して、その表面に異なる方位を有する結晶粒を形成する工程(熱処理工程)と、前記熱処理された棒状部材を化学エッチングする工程(エッチング工程)と、棒状部の少なくとも一方の端部を除去する工程(除去工程)とを有する。また、エッチング工程では、棒状部の長手方向に沿う面のうち、除去工程によって一端側の端部が除去された後に一端側の端面から他端側に前記棒状部の長手方向の長さの3分の1の位置になる予定の位置において、前記棒状部の周回方向の線粗さの最大高さRy2が10[μm]以上40[μm]以下の範囲内となるように、棒状部材をエッチングする。熱処理工程およびエッチング工程の概念図を図9(a)に、除去工程の概念図を図9(b)にそれぞれ示す。
【0031】
なお、本発明の第1の実施形態に係る電極100の製造方法の変形例について説明すると、上記第1の特徴は有するが、上記第2の特徴は有さない電極の製造方法に関しては、棒状部の少なくとも一方の端部を除去する除去工程を省略可能である。さらに、エッチング工程において、棒状部の長手方向に沿う面のうち、除去工程によって一端側の端部が除去された後に一端側の端面から他端側に前記棒状部の長手方向の長さの3分の1の位置になる予定の位置において、前記棒状部の周回方向の線粗さの最大高さRy2が10[μm]以上40[μm]以下の範囲内となるように、棒状部材をエッチングする必要もない。
【0032】
また、本発明の第1の実施形態に係る電極100の製造方法の別の変形例として、上記第2の特徴は有するが、上記第1の特徴は有さない電極の製造方法に関しては、棒状部材を熱処理して、その表面に異なる方位を有する結晶粒を形成する熱処理工程を省略可能である。
なお、本発明の第1の実施形態に係る電極100の製造方法の変形例としての、上記第2の特徴は有するが、上記第1の特徴は有さない電極の製造方法とは、具体的には、一端が発光管の封止部に封止され、他端が前記発光管の放電空間内に配置される棒状部を有する放電ランプ用電極の製造方法であって、前記棒状部の材料である棒状部材の長手方向に沿う面のうち、前記一端側の端部が除去された後に前記一端側の端面から前記他端側に前記棒状部の長手方向の長さの3分の1の位置になる予定の位置において、前記棒状部の周回方向の線粗さの最大高さRy2が10[μm]以上40[μm]以下の範囲内となるように、前記棒状部材をエッチングする工程と、前記棒状部材の少なくとも一方の端部を除去する工程とを有することを特徴とする放電ランプ用電極の製造方法である。
1.熱処理工程
まず、図9(a)に示すように、棒状部材104を準備する。棒状部材104は、例えば線径0.5[mm]のタングステン製で、電極100の完成後に棒状部101となるものである。
【0033】
続いて、棒状部材104を熱処理する。熱処理は、例えば、棒状部材を真空雰囲気中、1800[℃]、60[min]の条件下で行う。この熱処理により、棒状部材の表面に、異なる結晶方位を有する結晶粒が形成される。なお、熱処理は、1800[℃]、60[min]の条件下で行うことに限らず、例えば1000[℃]〜2400[℃]、10[min]〜120[min]の条件下等で行うこともできる。
2.化学エッチング工程
続いて、熱処理された棒状部材を、化学エッチングする。化学エッチングは、例えば25[℃]の過酸化水素水(H22)の溶液に60[min]浸して行う。この化学エッチングによって、棒状部材の表面において、結晶粒の方位により凹凸状態を異ならせることができる。
【0034】
このエッチングの一態様では、棒状部の長手方向に沿う面のうち、一端面から他端側に棒状部の長手方向の長さの3分の1の位置において、棒状部の周回方向の線粗さの最大高さRy2が10[μm]以上40[μm]以下の範囲内とすることができる。
電極100が棒状部101のみで形成される場合には、以上の工程により、電極100を形成することができる。なお、化学エッチングに用いる溶液は、25[℃]の過酸化水素水に限られず、例えば過酸化水素水の沸騰液、ヘキサシアノ鉄酸カリの溶液、または苛性ソーダとヘキサシアノ鉄酸カリとの混合液等を用いることができる。また、過酸化水素水を用いる場合には、その濃度は10[wt%]以上30[wt%]以下の範囲内であることが好ましい。この場合、適度な時間で適度に凹凸を形成して化学エッチングを行うことができる。
【0035】
また、エッチングのための溶液に浸す時間は、60[min]に限られず、例えば60[min]〜300[min]浸してもよい。
3.除去行程
棒状部材104の一端面104aおよび一端面104bに、過度のエッチングにより大きな凹凸が形成された場合は、図9(b)に示すように、エッチング工程後の棒状部材104の少なくとも一端側の端部(以下、「一端部」という。)を例えば刃物で切除することにより、除去することが好ましい。この除去工程により、棒状部の一端面の線粗さの最大高さRy1を、40[μm]以下とすることができる。なお、除去する部分は、棒状部材の一端面および他端面のうち、除去工程を施した側において、凹凸の大きな部分が、無くなる程度でよい。例えば、除去予定の端面から、棒状部材の長手方向に1[mm]の位置まで除去すればよい。
【0036】
なお、除去の方法は、刃物での切除に限らず、例えばレーザーによる切除や研磨等でもよい。
以上の工程を経ることにより、電極100が棒状部101のみの場合には、電極100を完成することができる。
4.その他の工程
なお、電極100が棒状部101のみではなく、電極部102も有する場合には、さらに以下の工程を行う。以下、図9(c)および(d)を用いて順に説明する。
4−1.コイル体装着工程
まず、図9(c)に示すように、棒状部101に、例えば線径0.3[mm]のタングステン製の金属線を密に巻回してコイル体105を形成する。なお、コイル体105は、電極100の完成後に電極部102となるものである。
4−2.溶融工程
続いて、図9(d)に示すように、コイル体105の先端部を溶融させる。具体的には、例えば、コイル体105の先端から、アルゴンプラズマ溶接装置(図示せず)の電極(陰極)の先端までの距離を、1.0[mm]に設定および保持し、アーク放電を行う。このアーク放電によってコイル体105の先端部が溶融され、電極部102が完成する。なお、この溶融工程において、複数回の間欠的なアーク放電を行い、アーク放電の合間に少なくとも1[回]の冷却期間を設けることが好ましい。これにより、連続的な1[回]のアーク放電で溶融させて電極部102の形状を制御する場合に比して、その制御を行いやすく、電極部102の先端部に空洞が発生するのを抑制することができる。
【0037】
以上の工程を経ることにより、電極部102を有する電極100が完成される。
(実験2)
発明者らは、電極100を高圧放電ランプに用いた場合、封止部の破損を防止できることを確認するために、実験を行った。実験で使用したのは、上記第1の特徴を有するが、上記第2の特徴は有さない電極100である。実験では、実験試料として作製した高圧放電ランプの封止部が目視で破損しているかどうかを確認した。各実験試料は、20[個]ずつ作製し、初期点灯後の状態を目視にて確認し、20[個]中破損しているものがなかった場合には「○」と判定し、20[個]中1[個]でも破損があった場合には、[×]と判定した。
【0038】
実験試料は、以下の手順で作製した。
(1)500[℃]、1000[℃]、1200[℃]、1400[℃]、1600[℃]、1800[℃]、2000[℃]、2200[℃]または2400[℃]で真空雰囲気中、60[min]タングステン製の棒状部材に熱処理工程を行う。なお、比較用に、熱処理工程を行わないものを作製する。
【0039】
(2)上記(1)で作製したものに対して、それぞれ10[wt%]または30[wt%]の25[℃]の過酸化水素水に1[h]、もしくは10[wt%]または30[wt%]の50[℃]の過酸化水素水に1[h]浸し、エッチング工程を行う。なお、比較用に、エッチング工程を行わないものを作製する。
(3)上記(2)で作製したものに対して、真空雰囲気中、1800[℃]、30[min]の条件で熱処理を行う。なお、この熱処理は、本発明において必須の熱処理ではなく、金属部材の表面の不純物除去および脱ガスを目的として行うものであり、棒状部材の表面の凹凸にはほとんど影響を及ぼさないものである。
【0040】
(4)上記(1)〜(3)を経た棒状部材を電極として発光管の封止部に封止し、高圧放電ランプを作製する。
実験結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

表1に示すように、熱処理工程のみ行っていないもの、熱処理工程およびエッチング工程を行っていないもの、ならびにエッチング工程のみ行っていないものは封止部が破損したものがある。これらの棒状部材の約100[倍]の電子顕微鏡写真を図10に示す。図10に示すように、これらの棒状部材は、その表面に適度な凹凸が形成されておらず、封止部と適度に接触することができず、封止部に棒状部材を封止する際に発生する熱応力により歪みが発生し、封止部が破損したものと考えられる。
【0042】
一方、熱処理工程を行った後にエッチング工程を行ったものは、500[℃]および2400[℃]で熱処理を行ったものを除いて、封止部が破損していなかった。これは、熱処理により、棒状部材の表面に異なる結晶方位を有する結晶粒が形成されるため、その結晶方位ごとにエッチングの度合いを異ならせることができ、棒状部材の表面に適度な凹凸を形成することができるためと考えられる。そして、熱処理の温度は、500[℃]を超え2400[℃]未満が好適であり、1000[℃]以上2200[℃]以下がさらに好適であると考えられる。
【0043】
なお、500[℃]で熱処理を行った後にエッチング工程を行ったものは、加熱温度の不足した500[℃]で熱処理を行ったために、棒状部材の表面に異なる結晶方位を有する結晶粒が形成されず、その後にエッチング工程を行っても、電極の表面に適度な凹凸が形成され難いためと考えられる。一方、2400[℃]で熱処理を行った後にエッチング工程を行ったものは、加熱温度が過多な2400[℃]で熱処理を行ったために、棒状部材の表面に異なる結晶方位を有する結晶粒が形成されず、その後にエッチング工程を行っても、電極の表面に適度な凹凸が形成され難いためと考えられる。
【0044】
よって、実験2より、電極100を高圧放電ランプに用いた場合、封止部の破損を防止できることがわかった。
(実験3)
さらに、発明者らは、電極100を高圧放電ランプに用いた場合、電極の破損を防止できることを確認するために、実験を行った。実験で使用したのは、上記第1の特徴を有するが、上記第2の特徴は有さない電極100である。実験では、実験2において、○の評価だったもの(実施例)について、10[min]点灯、10[min]不点灯を繰り返して、1000[回]点滅させた後の電極の状態を目視で確認し、電極が封止部から外れているものの本数を数えた。なお、図20に示す高圧放電ランプ1のように、電極の表面に旋盤加工の凹凸を形成し、電極と封止部との間に微小空間が形成されているものを比較例とした。実験結果を表2に示す。
【0045】
【表2】

表2に示すように、実施例では、電極が破損したものはなかった。一方、比較例は、20[本]中17[本]が破損した。これは、比較例のものは、電極の凹凸の凹部に水銀が溜まり、ランプが点灯されることによって、電極と封止部との間に形成された微小空間が高圧となり、電極が封止部から押し出されることで、電極が封止部に留まることができず、破損したものと考えられる。
【0046】
実施例の場合、電極の棒状部の表面に異なる結晶方位を有する結晶粒が存在し、かつ結晶方位により凹凸状態が異なることで、棒状部と封止部との間が適度に接触し、棒状部と封止部との間に水銀が侵入し難くすることで、電極が破損するのを防止することができたものと考えられる。
よって、実験3より、電極100を高圧放電ランプに用いた場合、電極の破損を防止できることがわかった。
【0047】
上記のとおり、本発明の第1の実施形態に係る放電ランプ用電極の構成によれば、高圧放電ランプに用いた場合に、高圧放電ランプの封止部および電極の破損を防止することができる。
なお、棒状部101の表面において、結晶粒の最小粒径が5[μm]以上でかつ最大粒径が200[μm]以下の範囲内であることが好ましい。この場合、棒状部101の表面に適度な凹凸を形成しやすくすることができる。さらには、棒状部101の表面において、結晶粒の最小粒径が5[μm]以上でかつ最大粒径が100[μm]以下の範囲内であることがより好ましい。この場合、棒状部101の表面にさらに適度な凹凸を形成しやすくすることができる。
【0048】
棒状部101の表面の結晶粒の最小粒径および最大粒径は、例えば棒状部101の表面の約150[倍]の電子顕微鏡写真や、棒状部101の表面をエッチングした後の約150[倍]の光学顕微鏡写真により測定することができる。
(実験4)
さらに、発明者らは、棒状部101の一端面101aの線粗さの最大高さをRy1とし、棒状部101の長手方向に沿う面のうち、一端面101aから他端側に棒状部101の長手方向の長さの3分の1の位置において、棒状部101の周回方向の線粗さの最大高さをRy2としたとき、前記Ry1が40[μm]以下であり、前記Ry2が10[μm]以上40[μm]以下の範囲内である電極100、すなわち上記第2の特徴を有する電極100を高圧放電ランプに用いた場合、電極の破損を防止できることを確認するために、実験を行った。実験で使用したのは、上記第2の特徴を有するが、上記第1の特徴は有さない電極100である。
【0049】
発明者らは、棒状部材のエッチング条件、エッチングの後の棒状部材の端部の除去の有無の条件を変えてRy1およびRy2の値を変えた種々の放電ランプ用電極を作製し、それを用いた高圧放電ランプを実験試料として作製した。なお、棒状部材の一端部が除去されているものは、除去された側の端部が高圧放電ランプの封止部に位置するように高圧放電ランプを作製した。
【0050】
そして各実験試料について、10[min]点灯、10[min]不点灯を繰り返して、1000[回]点滅させた後、電極および封止部が破損しているものがあるか否かを目視で確認した。各実験試料について、20[本]全ての電極および封止部が破損していない場合に「●」と評価し、20[本]中1[本]でも破損しているものがある場合に「▲」と評価した。実験結果を図11に示す。
【0051】
図11に示すように、Ry1=2[μm]かつRy2=10[μm]の場合、Ry1=2[μm]かつRy2=27[μm]の場合、Ry1=2[μm]かつRy2=40[μm]の場合、Ry1=40[μm]かつRy2=10[μm]の場合、Ry1=40[μm]かつRy2=27[μm]の場合、かつRy1=40[μm]かつRy2=40[μm]の場合に「●」と評価され、電極および封止部の破損を防止できていることがわかった。これらの実験試料は、棒状部材をエッチングした後に、棒状部材の少なくとも一方の端部を除去したものを放電ランプ用電極として用いたものである。この場合、棒状部材の除去された側の端部が高圧放電ランプの封止部に位置しているため、棒状部材の端面に水銀が付着して溜まる現象が起こり難く、高圧放電ランプが点灯、不点灯を繰り返しても、水銀の蒸気圧により電極が破損するのを防止することができる。
【0052】
一方、Ry1=70[μm]かつRy2=10[μm]、Ry1=100[μm]かつRy2=27[μm]、Ry1=106[μm]かつRy2=40[μm]、Ry1=120[μm]かつRy2=50[μm]の場合、電極の破損を防止できていないことがわかった。これらの実験試料は、棒状部材をエッチングした後に、棒状部材の端部を除去していないものである。この場合、高圧放電ランプの封止部に位置する棒状部材の端面に水銀が付着して溜まりやすく、高圧放電ランプが点灯、不点灯を繰り返したときに、水銀の蒸気圧によって、電極が発光管の中央部側に押し出される力によって破損してしまうことがわかった。
【0053】
また、Ry1=2[μm]かつRy2=6[μm]、Ry1=12[μm]かつRy2=6[μm]、Ry1=20[μm]かつRy2=50[μm]の場合においても、電極の破損を防止できないことがわかった。この場合、棒状部材の長手方向に沿う面のエッチングが不十分または過度であるために、棒状部材と高圧放電ランプの封止部との間の熱膨張係数の違いにより生じる応力を逃がすことができずに封止部が破損するのに伴い、電極が破損するためであると考えられる。
【0054】
よって、Ry1が40[μm]以下であり、Ry2が10[μm]以上40[μm]以下の範囲内であることで、電極の破損を防止できることがわかった。なお、実験結果においては、Ry1の最小値が2[μm]となっているが、棒状部の除去の方法によってさらに小さくすることは可能であり、棒状部の端面に水銀が付着して溜まりにくくするためには、Ry1の値をできるだけ小さくすることがよいことは、実験結果から容易に推察することができる。
【0055】
なお、Ry1が2[μm]以上40[μm]以下の範囲内であることがより好ましい。この場合、棒状部材の端部を刃物で切除する等、簡易的な方法により除去できるため、放電ランプ用電極の生産性を向上することができる。
さらに、例えば、端部を除去した後に、バレル研磨等の研磨加工を施すことで、Ry1の値を20[μm]以下としやすくすることができる。
【0056】
上記のとおり、Ry1が40[μm]以下であり、Ry2が10[μm]以上40[μm]以下の範囲内であれば、高圧放電ランプに用いた場合に、高圧放電ランプの封止部および電極100の破損をより確実に防止することができる。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る高圧放電ランプの長手方向の中心軸を含む断面図を図12に示す。本発明の第2の実施形態に係る高圧放電ランプ(以下、「高圧放電ランプ200」という。)は、内部に電極100が配置されたガラス製の発光管201を備え、発光管201は、内部に封入物が封入され、かつ放電空間が形成されている発光部202と、発光部202に連設された封止部203とを有する。なお、図示の便宜上、図12における電極100、後述する金属箔204およびリード線205は、断面で切らずに図示している。
【0057】
発光部202は、放電空間が形成される部分であり、透光性材料である石英ガラスで形成された球状体または楕円球状体の部材である。発光部202の形状は、例えば、外径が約12[mm]、内径が約5[mm]の略球状であって、内部に内容積が約0.1[cm3]の放電空間を有する。なお、発光部202の外径、内径、および放電空間の内容積等
は特に限定されず、高圧放電ランプ200の仕様によって適宜設計変更してよい。また、本実施形態では、両端が封止されているダブルエンド型の高圧放電ランプを示したが、封止の形態は特に限定されず、例えば、シングルエンド型であってもよい。
【0058】
発光部202の内部には、発光物質である水銀(Hg)、始動補助用の希ガス、およびハロゲン物質がそれぞれ所定量封入されている。
容量が0.1[cm3]程度の発光部202の中に、発光物質として約0.3[mg/mm3]の水銀と、始動補助用として約30[kPa]の希ガスと、ハロゲン物質として約10-7[μmol/mm3]〜10-2[μmol/mm3]程度の臭素を封入すれば、ランプ点灯中の水銀蒸気圧は300[気圧]程度になる。
【0059】
希ガスは、例えばアルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)のいずれか、またはそれらの中から少なくとも2種以上の混合ガス等を用いることができる。ハロゲン物質は、例えばヨウ素(I)、臭素(Br)、塩素(Cl)のいずれか、またはそれらの少なくとも2種以上の混合物質等を用いることができる。また、本発明のランプ点灯中の水銀蒸気圧は300[気圧]程度に限定されず、発光部202に封入する水銀の量などを適宜変更することにより、任意に調整してもよい。
【0060】
封止部203は、発光部202に連設されている。封止部203は、石英ガラスを溶融状態で圧着することにより形成された略円柱形状の部材であり、発光部202を気密に封止する。封止部203を形成する方法は、例えば、公知のシュリンクシール法などが挙げられるが、特に限定されない。封止部203の外径、長さ、形状等も特に限定されず、高圧放電ランプ200の仕様に応じて適宜変更してもよい。
【0061】
発光部202の内部には、例えばタングステンで形成された一対の電極100が対向して配置されている。電極100は、例えば電極部102側の他端部が放電空間の内部に位置し、かつ棒状部101側の一端部が後述する金属箔204と例えば溶接によって接続された状態で封止部203に封止されるように配置されている。高輝度化等の観点から、一対の電極100間の距離Ldは、例えば、ショートアーク型の高圧放電ランプの場合、点光源に近づけるために、0.5[mm]以上2.0[mm]以下の範囲内で適宜調整されることが好ましい(図12参照)。
【0062】
封止部203には、電極100の棒状部101の少なくとも一端側が封止されている。封止部203において、棒状部101における電極部102の反対側の端部は、例えば、棒状部101の周面において、金属箔204の一端部と接続されている。金属箔204は、例えば、長方形状であって、モリブデン等の金属部材である。金属箔204は、発光部202側の一端部が棒状部101の端部と重ねられた状態で封止部203に埋設されており、他端部がリード線205の一端部に接続されている。棒状部101と金属箔204との接続、および金属箔とリード線との接続は、例えば抵抗溶接、レーザー溶接、アーク溶接等により行うことができる。このように棒状部101と金属箔204とを接続した状態で封止部203に埋設すると、放電空間の気密性が向上するため好ましい。なお、棒状部101と金属箔204とが接続される箇所は、特に限定されるものではないが、接続部分の長さ、すなわち金属箔204の電極100側の端部から棒状部101の金属箔204側の端部までの最短距離dは、1.0[mm]以上1.5[mm]以下の範囲内で適宜調整することが好ましい。
【0063】
本実施形態における高圧放電ランプの具体的数値は、例えば、次の通りである。
発光部の中央部における内径φai:5[mm]
外径φao:12[mm]
発光部の内容積:0.1[cm3
電極間距離Ld:1.2[mm]
水銀封入量:0.35[mg/mm3
アルゴンガス封入量:30[kPa](25[℃])
臭素封入量:0.5×10-3[μmol]
なお、図12において、電極100は、棒状部101および電極部102からなるものを用いたが、棒状部101のみからなる電極100であってもよい。
【0064】
上記のとおり、本発明の第2の実施形態に係る高圧放電ランプ200の構成によれば、封止部203および電極100の破損を防止することができる。
(第3の実施形態)
本発明に係る第3の実施形態に係る高圧放電ランプの管軸を含む正面断面図を図13(a)に、その左側面断面図を図13(b)にそれぞれ示す。本発明の第3の実施形態に係る高圧放電ランプ(以下、「高圧放電ランプ300」という。)は、少なくとも一方の封止部203にキャビティ301が形成され、その外部にアンテナ302が設けられている点を除いては、高圧放電ランプ200と実質的に同じ構成を有する。よって、キャビティ301およびアンテナ302について詳細に説明し、その他の点については説明を省略する。なお、図示の便宜上、図13(a)における電極100、金属箔204およびリード線205、ならびに図13(b)における電極100およびリード線205は、断面で切らずに図示している。
【0065】
少なくとも一方の封止部203には、キャビティ301が形成されている。キャビティ301の内部には、少なくとも希ガスが封入されている。なお、発光部202の内部と同様のガス(例えば、希ガスおよび水銀)が封入されていてもよい。また、キャビティ301の内部に酸化バリウムやトリウムタングステンを配置してもよい。この場合、酸化バリウムやトリウムタングステンが電子を放出しやすいため、金属箔204とアンテナ302との間の放電を容易に起こすことができる。
【0066】
キャビティ301が位置する封止部203の外周には、アンテナ302が設けられている。アンテナ302は、例えば鉄とクロムとの合金製で、一端部側が封止部の外周に3[ターン]巻きつけられ、他端部側が外部リード線205に接続されている。なお、アンテナ302は、鉄とクロムとの合金製に限らず、例えばモリブデンやタングステン等の金属線も用いることができる。
【0067】
なお、いわゆるトリガー線の役割を果たす第2のアンテナ(図示せず。)が、封止部203と発光部202側の端部(おおよそ、棒状部101が埋め込まれている封止部203の外周)に設けられていてもよい。
上記のとおり、本発明の第3の実施形態に係る高圧放電ランプ300の構成によれば、封止部203および電極100の破損を防止することができる。また、キャビティ301およびアンテナ302により、容易に放電を開始することができる。
【0068】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係るランプユニットの一部切欠き斜視図を図14に示す。図14に示すように、本発明の第4の実施形態に係るランプユニット(以下、「ランプユニット400」という。)は、高圧放電ランプ200と、高圧放電ランプ200からの射出光が反射面401によって反射されるように高圧放電ランプ200が内部に取り付けられた、凹状の反射面401を有する反射鏡402とを備える。
【0069】
反射鏡402の内面には、凹面の反射面401が形成されており、反射面401によって高圧放電ランプ200からの射出光を反射させる。また、反射鏡402は、反射鏡402による高圧放電ランプ200の集光効率を高めるために、高圧放電ランプ200の長手方向の中心軸Xと反射鏡402の光軸Yとが略一致するように高圧放電ランプ200と組み合わされている。なお、反射面401は、例えば回転楕円体面や回転放物体面からなり、多層干渉膜等が蒸着されたものが一般的に使用されるが、本発明では特に限定されない。
【0070】
反射鏡402のネック部403側に位置する封止部203は、口金404に挿入され、反射鏡402に対して固定されている。口金404は、例えば、円筒形であって、反射鏡402に対して接着剤405等を介して固着されている。また、この口金404には、電源接続用端子406が付設されている。
また、高圧放電ランプ200のうち、口金404とは反対側のリード線205は、電力供給線407に接続されており、電力供給線407は、反射鏡402に設けられた貫通孔408に挿通されている。
【0071】
なお、図14では、高圧放電ランプ200を用いたが、高圧放電ランプ300を用いることもできる。
上記のとおり、本発明の第4の実施形態に係るランプユニット400の構成によれば、封止部203および電極100の破損を防止した高圧放電ランプ200、300を備えることで、信頼性を向上させることができる。
【0072】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係る投射型画像表示装置の斜視図を図15に示す。本発明の第5の実施形態に係る投射型画像表示装置(以下、「画像表示装置500」という。)は、その前方に設置したスクリーン(図示しない)に向けて画像を投影するタイプのプロジェクタである。
【0073】
画像表示装置500は、ランプユニット400と、ランプユニット400からの照明光が変調して光学像を形成する光学ユニット502と、光学像を拡大投射する投射装置504とを備える。
具体的には、筐体501と、筐体501に収納されたランプユニット400と、光学ユニット502と、制御ユニット503と、投射装置504と、冷却ファンユニット505と、電源ユニット506とを備える。
【0074】
電源ユニット506は、DC電源回路と高圧放電ランプ点灯装置(いずれも図示しない)を含み、商用電源から供給される電力を、制御ユニット503、ランプユニット400、および冷却ファンユニット505に適した電力に変換してそれぞれ供給する。なお、図15は、画像表示装置500の構成を見易くするため、筐体501の天板が取り除かれた状態で示されている。
【0075】
上記のとおり、本発明の第5の実施形態に係る画像表示装置500の構成によれば、封止部203および電極100の破損を防止した高圧放電ランプ200、300を備えることで、信頼性を向上させることができる。
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態に係る投射型画像表示装置の斜視図を図16に示す。本発明の第6の実施形態に係る投射型画像表示装置(以下、「画像表示装置600」という。)は、リアプロジェクタであって、高圧放電ランプが組み込まれたランプユニット400と、光学ユニット、投射装置およびミラー(いずれも図示せず。)等が収納された筐体601とを有する。
【0076】
画像表示装置600は、投射レンズ(図示せず。)から投射され、ミラー(図示せず。)で反射された画像が、筐体601の開口部に設けられた透過式スクリーン602の裏側から投影されて画像表示される。
上記のとおり、本発明の第6の実施形態に係る投射型画像表示装置600の構成によれば、封止部203および電極100の破損を防止した高圧放電ランプ200、300を備えることで、信頼性を向上させることができる。
【0077】
<変形例>
以上、本発明を上記した各実施形態に示した具体例に基づいて説明したが、本発明の内容が各実施形態に示した具体例に限定されないことは勿論であり、種々の放電ランプ用電極、放電ランプ用電極の製造方法、高圧放電ランプ、ランプユニットおよび投射型画像表示装置に適用することができる。
【0078】
例えば、以下の変形例に係る構成を、上記第1の特徴および上記第2の特徴のうちの少なくとも一方の特徴を備えた電極に適用することができる。
1.電極の変形例
1−1.放電ランプ用電極の変形例1
本発明の第1の実施形態に係る放電ランプ用電極の変形例1の正面図を図17(a)に示す。本発明の第1の実施形態に係る放電ランプ用電極(以下、「電極106」という。)は、棒状部107の一方の端部に切欠き部108が形成されている点を除いて、電極100と実質的に同じ構成を有する。よって、切欠き部について詳細に説明し、それ以外の点については説明を省略する。
【0079】
電極106は、棒状部107の電極部102とは反対側の端部に切欠き部108を有する。切欠き部108は、棒状部107の端部において、半割りされた形状となっている。
この場合、棒状部107の電極部102とは反対側を金属箔に接続する際、切欠き部108によって、金属箔と接続される部分が大きくなるため、金属箔と接続しやすくすることができる。
【0080】
なお、切欠き部108の形状は、図17(a)に示すものに限られず、例えば図17(b)の変形例1aに示すように、棒状部107における切欠かれた残部(以下、「切欠き残部109」という。)の端面109aは、切欠き部108から離れている側が電極部102側に傾斜していてもよい。この場合、棒状部107の切欠き部108を金属箔と接続した後に、高圧放電ランプの封止部に封止する際、封止部のガラスが切欠き残部109の端面109aにつきやすく、封止部の歪みを低減することができる。
【0081】
また、図17(c)の変形例1bに示すように、棒状部107における切欠かれた端面107aは、切欠き残部109から離れている側が電極部102側に傾斜していてもよい。この場合、棒状部107における切欠き部108を金属箔と接続した後に、高圧放電ランプの封止部に封止する際、封止部のガラスが棒状部107における切欠かれた端面107aにつきやすく、封止部の歪みを低減することができる。
【0082】
さらに、図17(d)の変形例1cに示すように、切欠き残部109の端面109aは、切欠き部108から離れている側が電極部102側に傾斜し、かつ棒状部107における切欠かれた端面107aは、切欠き残部109から離れている側が電極部102側に傾斜していてもよい。この場合、棒状部107における切欠き部108を金属箔と接続した後に、高圧放電ランプの封止部に封止する際、封止部のガラスが、切欠き残部109の端面109aおよび棒状部107における切欠かれた端面107aにつきやすく、封止部の歪みをさらに低減することができる。
【0083】
また、切欠き部108における棒状部107の径方向の深さmと、切欠き残部109における棒状部107の径方向の長さnとの比は、1:0.25以上1:4以下の範囲内であることが好ましい。この場合、切欠き残部109が破損するのを防止しつつ、高圧放電ランプに用いる際、封止部への封着性を向上させることができる。さらには、mとnとの比は、1:0.3以上1:3以下の範囲内であることがより好ましい。
【0084】
また、電極106を製造する際、切欠き部108をどの時点で形成してもよいが、熱処理工程およびエッチング工程の前に形成することが好ましい。この場合、切欠き部108の表面においても、適度な凹凸が形成され、切欠き部108と金属箔とを抵抗溶接で接続する際、その抵抗値を適度に高めることができ、溶接しやすくすることができる。
なお、図17(a)〜(d)における「一端側の端面」とは、棒状部の軸方向から見たときに見える端面のことであり、Ry1は、本発明の第1の実施形態で述べた場合と同様に、端面の中心から周縁に向かう線上において測定することができる。
1−2.放電ランプ用電極の変形例2
本発明の第1の実施形態に係る放電ランプ用電極の変形例2の正面図を図18(a)に示す。本発明の第1の実施形態に係る放電ランプ用電極(以下、「電極110という。)は、棒状部101の少なくとも一部が金属部材111により覆われている点を除いて電極100と実質的に同じ構成を有する。よって、金属部材111について詳細に説明し、それ以外の点については説明を省略する。
【0085】
金属部材111は、例えばモリブデン製の略円筒形のスリーブ形状であって、その長手方向にスリットを有する。棒状部101は、金属部材111に覆われているが、金属部材111のスリットの部分から棒状部101の表面が露出している。
電極110は、棒状部101の少なくとも一部が金属部材111に覆われていることで、高圧放電ランプに用いる場合、金属部材111および金属部材111のスリットの部分から露出する棒状部101の表面の凹凸により、封止部の応力を低減しやくすることができる。
【0086】
なお、図18(a)において、金属部材111の一端は、棒状部101の電極部102とは反対側の端に揃えられているが、これに限らず、金属部材111の一端が棒状部101の電極部とは反対側の端よりも電極部102側に位置していてもよい。
また、図18(b)の変形例3に示すように、金属部材111の電極部102とは反対側の端部が切欠かかれていてもよい。この場合、棒状部101の電極部102とは反対側の端部を金属箔に接続する際、その接続部分に金属部材111が当り難くなり、棒状部101と金属箔とを接続しやすくすることができる。
【0087】
また、金属部材111は、モリブデン製に限らず、耐熱性の観点から、例えばモリブデン、ニオブ、タンタルおよびタングステンのうちのいずれか1種、またはそれを主成分とする合金等を用いることができる。
さらに、図17(a)〜(d)に示す電極106のように、棒状部101の一方の端部に切欠き部(図示せず。)が形成されていてもよい。
2.高圧放電ランプの変形例
本発明の第2の実施形態に係る高圧放電ランプの変形例の長手方向の中心軸を含む断面図を図19(a)に、そのA−A´線で切った断面図を図19(b)にそれぞれ示す。本発明の第2の実施形態に係る高圧放電ランプの変形例(以下、「ランプ206」という。)は、金属箔207の形状が異なる点を除いてランプ200と実質的に同じ構成を有する。よって、金属箔207について詳細に説明し、それ以外の点については説明を省略する。なお、図示の便宜上、図19(a)における電極100、金属箔207およびリード線205は、断面で切らずに図示している。
【0088】
金属箔207は、その長手方向に沿うよう折り曲げられている。具体的には、図19(b)に示すように、その短手方向の略中央部において、棒状部101の外周面を半分程度覆うように折り曲げられている。この場合、金属箔207を封止部203に封着させる際、金属箔207が不用意に湾曲して電極100を封止する位置がずれるのを防止することができる。
【0089】
なお、金属箔207の形状は、図19(a)および(b)に示すものに限らず、金属箔207の短手方向で切った断面において、鋸歯形状、ジグザグ形状、コの字形状、U字形状等、金属箔207の長手方向に沿うように折り曲げられたものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、放電ランプ用電極、放電ランプ用電極の製造方法、高圧放電ランプ、ランプユニットおよび投射型画像表示装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
100、106、110 放電ランプ用電極
101、107 棒状部
102 電極部
103 コイル
104 棒状部材
105 コイル体
200、206、300 高圧放電ランプ
201 発光管
202 発光部
203 封止部
204、207 金属箔
205 リード線
400 ランプユニット
401 反射面
402 反射鏡
500、600 投射型画像表示装置
502 光学ユニット
504 投射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が放電ランプの発光管の封止部に封止され、他端が前記発光管の放電空間内に配置される棒状部を有する放電ランプ用電極であって、
前記棒状部の前記一端側の端面の線粗さの最大高さをRy1とし、
前記棒状部の長手方向に沿う面のうち、前記一端側の端面から前記他端側に前記棒状部の長手方向の長さの3分の1の位置において、前記棒状部の周回方向の線粗さの最大高さをRy2としたとき、
前記Ry1が40[μm]以下であり、
前記Ry2が10[μm]以上40[μm]以下の範囲内であることを特徴とする放電ランプ用電極。
【請求項2】
請求項1に記載の放電ランプ用電極と、
ガラス製の発光管とを備え、
前記発光管は、内部に封入物が封入され、かつ放電空間が形成されている発光部と、前記発光部に連設された封止部とを有し、
前記封止部には、前記棒状部の前記一端側が封止されていることを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項3】
請求項2に記載の高圧放電ランプと、
凹状の反射面を有する反射鏡とを備え、
前記高圧放電ランプは、前記高圧放電ランプからの射出光が前記反射面によって反射されるように前記反射鏡の内部に取り付けられていることを特徴とするランプユニット。
【請求項4】
請求項3に記載のランプユニットと、
前記ランプユニットからの照明光が変調して光学像を形成する光学ユニットと、
前記光学像を拡大投射する投射装置とを備えることを特徴とする投射型画像表示装置。
【請求項5】
一端が発光管の封止部に封止され、他端が前記発光管の放電空間内に配置される棒状部を有する放電ランプ用電極の製造方法であって、
前記棒状部となる棒状部材を化学エッチングする化学エッチング工程と、
前記化学エッチング後の棒状部材の少なくとも前記一端側の端部を除去する除去工程とを有し、
前記化学エッチング工程では、前記棒状部材の長手方向に沿う面のうち、前記一端側の端部が除去された後に前記一端側の端面から前記他端側に前記棒状部の長手方向の長さの3分の1の位置になる予定の位置において、前記棒状部の周回方向の線粗さの最大高さRy2が10[μm]以上40[μm]以下の範囲内となるように、棒状部材をエッチングすることを特徴とする放電ランプ用電極の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−43804(P2012−43804A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215296(P2011−215296)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【分割の表示】特願2011−526345(P2011−526345)の分割
【原出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】