放電ランプ
【課題】発光管に予定外の荷重が加わった際に、発光管が破損し難い放電ランプを提供する。
【解決手段】放電ランプ1において、二重渦巻き形状の発光管3の両管端部17が、接着部材31によって、それの内周側に隣り合う管端内周側部37に架橋されている。さらに、連結部材7によって旋回最外周部51と次外周部53とを架橋することにより、2つの旋回最外周部51、52が2つの接着部材31同士を結ぶ直線を回転軸線として相対回転することを抑制している。そのため、灯具から放電ランプ1を取り外す際に、旋回最外周部51、52が不適切に引張られたような場合でも、発光管3が破損しにくくされている。
【解決手段】放電ランプ1において、二重渦巻き形状の発光管3の両管端部17が、接着部材31によって、それの内周側に隣り合う管端内周側部37に架橋されている。さらに、連結部材7によって旋回最外周部51と次外周部53とを架橋することにより、2つの旋回最外周部51、52が2つの接着部材31同士を結ぶ直線を回転軸線として相対回転することを抑制している。そのため、灯具から放電ランプ1を取り外す際に、旋回最外周部51、52が不適切に引張られたような場合でも、発光管3が破損しにくくされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管中央部を旋回中心として両管端部の各々に向かって平面視二重渦巻状に1周以上旋回する形状の発光管を備えた放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図15に示すように、一般照明に用いられる放電ランプ201として、管の中央部を旋回中心Dとして平面形状で、かつ渦巻状に旋回する形状の発光管203(以下、「渦巻き型発光管」と称する場合がある)を備えたものが知られている。
このような渦巻き型発光管203を備えた放電ランプ201は、灯具への着脱時に破損しやすいという問題があった。具体的には、発光管203の両管端部217に設けられた口金225が灯具のソケットに差し込まれ、あるいは引き抜かれる際に、両管端部を相対変位させる大きな荷重が加わる場合があり、発光管203が破損する虞があった。
【0003】
このような問題に対し、下記特許文献1に記載の放電ランプにおいては、渦巻き型発光管203の各管端部217と、その管端部217と隣り合う内周側を旋回する部分237とを、シリコーン樹脂系接着剤231によって架橋することにより、発光管203の両管端部217の相対変位を抑制し、灯具に着脱する際の破損を防いでいる。
また、下記特許文献2には、一本の放電路が形成された環形二重管型の蛍光ランプについて、外周側の管と内周側の管とをシリコーン接着剤によって架橋することが記載されている。それは、環形二重管型の蛍光ランプは、ランプ点燈時の発熱による熱応力やランプ交換時に加わる外力により、外周と内周とをつなぐブリッジ部が破損しやすいため、補強する必要があるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−198493号公報
【特許文献2】特許3219013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の放電ランプは、適切な取り扱いがなされていれば破損する虞はないが、誤った取り扱いによって予定外の荷重が加わると発光管が破損する虞がある。
図16には、発光管203の両管端部217(詳細には、口金225)が灯具のソケット270に挿入されている状態、つまり、放電ランプ201が灯具に取り付けられている状態の一例を示す。この例では、灯具から放電ランプ201を取り外すには、放電ランプを回転させ、発光管203の両管端部217をソケット270から引き抜く操作が必要である。
【0006】
しかし、例えば、使用者が、適切な取り外し方が分からないために、誤って、発光管203の両管端部217が灯具のソケット270に挿入されたままの状態で、発光管203の最外周部のSを掴んで発光管203を取り外せない方向(例えば、図において下方)に引っ張るような状況が考えられる。そのような場合には、発光管3に予定外の荷重が加わり、発光管203が破損する虞がある。
【0007】
このような破損が生じることを解決するために、発光管203の両管端部217を保持するホルダ221や、それを連結する連結板部223等を大型化することにより、両管端部217をより強固に保持し、あるいは両管端部217の各々とその内周側を旋回する部分237とを架橋する幅を増加させることが考えられる。しかし、コストの増加や、発光管の背面に位置する連結板部223による悪影響が問題となる。なお、上記コストの増加は、ホルダ221等の大型化による材料使用量の増加や、発光管203の外径に応じた寸法のホルダ221等を製造するためのコストの増加によるもの等がある。また、上記連結板部223の大型化による悪影響は、例えば、放電ランプの背面から放射された光が灯具の笠に反射されて被照射面に向かって進む際の妨げとなることがある。
【0008】
本発明は、上記した課題に鑑み、平面形の二重渦巻き型の発光管において、旋回最外周部に予定外の荷重が加わった場合でも、発光管が破損し難い放電ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る放電ランプは、管中央部を旋回中心として両管端部の各々に向かって平面視二重渦巻状に1周以上旋回する形状の発光管と、前記両管端部の各々と前記発光管のうちの前記両管端部の各々の内周側を旋回する部分とを架橋してそれらの相対変位を制限する1対の第1架橋部材と、前記発光管の旋回最外周部とそれの内周側を旋回する部分とを架橋してそれらの相対変位を制限する2つの部材であって、旋回方向において前記1対の第1架橋部材の両方と離間し、かつ、平面視において前記旋回中心を通る直線である基準直線上の2つの箇所に設けられた1対の第2架橋部材とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る放電ランプは、発光管の旋回最外周部と、それの内周側を旋回する部分(「次外周部」と称する場合がある)とを、1対の第1架橋部材と旋回方向において離間した2つの箇所で架橋する1対の第2架橋部材を備えており、発光管の旋回最外周部に予定外の荷重が加わった場合でも、発光管が破損し難い放電ランプを得ることができる。
さらに、本発明に係る放電ランプを、前記基準直線が、前記1対の第1架橋部材同士を結ぶ直線との交差角度が45度以上になるものとすることができる。1対の第1架橋部材を結ぶ直線との交差角度が45度以上になる基準直線上の箇所は、旋回最外周部と次外周部との相対変位量が大きい箇所である(実施形態参照)。したがって、上記構成を採用すれば、相対変位量が大きい箇所の相対変位を制限することにより、効果的に発光管の変形を抑制し、発光管を破損し難くすることができる。
【0011】
さらに、本発明に係る放電ランプを、前記基準直線が、前記1対の第1架橋部材同士を結ぶ直線と略直交するものとすることができる。1対の第1架橋部材を結ぶ直線と略直交する基準直線上の箇所は、旋回最外周部と次外周部との相対変位量が非常に大きい箇所である(実施形態参照)。したがって、上記構成を採用すれば、非常に効果的に発光管の変形を抑制し、発光管を破損し難くすることができる。
【0012】
さらに、本発明に係る放電ランプを、前記第2架橋部材の旋回方向における両端部間の距離が、平面視において、前記両端部と前記旋回中心とを結ぶ2つの直線のなす角度が4度以上15度以下になるものとすることができる。上記2つの直線のなす角度を4度以上にすることにより、使用者が放電ランプの取り外し方が分からずに、試しに発光管の両管端部が灯具に固定された状態のままで、発光管の旋回外周部を被照射面側に引っ張ったような状況において、発光管が非常に壊れにくくされている。また、上記2つの直線のなす角度を15度以下にすることにより、第2架橋部材が過大にならず、コストの上昇を抑制することができる。
【0013】
さらに、本発明に係る放電ランプを、前記第2架橋部材が、前記発光管のうちの径方向に隣り合う部分同士の管径方向の中心線を結ぶ平面である中央断面に沿って前記隣り合う部分同士間に設けられるとともに前記中央断面によって二等分される中央架橋部と、被照射面に対向しない背面側において前記中央架橋部に隣接して前記隣り合う部分同士間に設けられる背面側架橋部とによって構成され、前記中央断面に垂直な方向における前記中央架橋部の厚さが、前記背面側架橋部の厚さよりも小さくすることができる。
【0014】
この特長により、発光管のうちの径方向に隣り合う部分同士の間に、第2架橋部材を背面側に偏って設けることで、発光管の被照射面に対向する側を遮らないため、照度の低下を抑制できる。また、中央架橋部によって中央断面付近を架橋することで、効果的に上記隣り合う部分同士の相対変位を抑制することができる。
さらに、本発明に係る放電ランプを、さらに、前記両管端部の各々を保持するとともに灯具に接続される1対の管端保持部材を含み、前記1対の管端保持部材が灯具に接続された状態で、前記旋回最外周部の前記1対の第1架橋部材同士を結ぶ直線と前記旋回中心において直交する直交線上の2箇所をそれぞれ被照射面側に変位させて前記発光管を変形させる荷重を変形荷重とした場合において、前記1対の管端保持部材が、前記変形荷重の値が設定値以上になった場合に、前記両管端部の少なくとも一方の保持を解除するものであり、前記1対の第2架橋部材によって前記2箇所が架橋されていない場合には、前記発光管が破損する前記変形荷重の値が前記設定値以下になり、前記1対の第2架橋部材によって前記2箇所が架橋されている場合には、前記発光管が破損する前記変形荷重の値が前記設定値よりも大きくなるものとすることができる。
【0015】
この特長により、予定外の荷重が加わった場合に、発光管が破損する前に両管端部の少なくとも一方の保持を解除することで、発光管の破損を防ぐことができる。これにより、発光管の破片が床に散らばることを防ぎ、掃除の手間を省くことができる。なお、1対の管端保持部材が灯具に接続された状態では、1対の管端保持部材は灯具によって少なくとも被照射面側への移動を阻止されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態における放電ランプの平面図
【図2】放電ランプの背面図
【図3】ホルダを発光管の管軸方向から見た図
【図4】接着部材の開き角度θを示す平面図
【図5】接着部材の断面図
【図6】引張り力測定試験結果のグラフを示す図
【図7】引張り力測定試験結果の統計値を示す図
【図8】変形荷重による発光管の変形を示す図
【図9】強度試験結果のグラフを示す図
【図10】強度試験結果の統計値を示す図
【図11】強度試験結果の数値を示す図
【図12】連結部材の変形例を示す図
【図13】連結部材の別の変形例を示す図
【図14】発光管の外径を示す図
【図15】従来の放電ランプの平面図
【図16】従来の放電ランプの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る一の放電ランプの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
<構成>
(放電ランプ)
図1、図2は、それぞれ放電ランプの平面図、背面図である。ここで、放電ランプ1の平面図(図1)は、放電ランプ1を灯具に装着した状態で被照射面側から放電ランプ1を見た図であり、背面図(図2)とは灯具側から放電ランプ1を見た図である。なお、放電ランプ1の平面図(図1)に表されている面を「前面」、背面図(図2)に表されている面を「背面」と称する場合がある。
【0018】
放電ランプ1は、内部に一本の放電路を有する発光管3と、この発光管3の両管端部を連結する管端連結具5と、発光管3の2つの箇所を架橋する1対の連結部材7とを含む。なお、放電ランプ1は対称的な構造を成しており、以後の説明において、互いに対称的に形成された同じ2つの構成部材等について、一方の構成部材を代表的に説明する場合がある。また、互いに対称的に形成された同じ2つの構成部材に異なる番号を付してそれらを区別する場合もある。
【0019】
(1)発光管について
発光管3は、ガラス管が平面二重渦巻き形状に湾曲させられており、全体の輪郭が略円盤状をなしている。その発光管3は、渦巻きの中心に位置する管中央部11と、その管中央部11の両端から延び出して旋回半径を増加させながら渦巻状に旋回する形状の2つの旋回部15と、旋回部15の外周側の終端に位置する管端部17とを含む。
【0020】
管中央部11は、長さは短いが一直線に沿って延びる形状とされ、中央部分が管径方向に膨らんでおり、特に放電ランプ1の前面側に膨出している。この膨出している部分に、ランプ点灯時の最冷点箇所が形成される。また、管中央部11の中心には旋回中心Dが位置している。
2つの旋回部15は、管中央部11の両端の各々から、両管端部17の各々まで、旋回中心Dを中心とする対称形状にされている。なお、2つの旋回部15は、それぞれ一平面に沿って旋回中心D廻りに旋回させられた形状とされているが、旋回中心Dを通る旋回軸線廻りに旋回させられた形状であるということもできる。本実施形態において、旋回軸線は上記一平面と垂直(図1において紙面と垂直)になる。旋回部15を湾曲管部と称することもできる。
【0021】
2つの旋回部15のうち、異なる周回上において互いに隣り合う部分の間には、所定の間隙(図3の「L」)が確保されている。この図において、各旋回部15は、1.75周(1と4分の3周)旋回させられている。
なお、管中央部11と旋回部15とがつながる部分は、旋回部15よりも曲率半径が小さく、屈曲させられた屈曲部19とされている。この屈曲部19は、屈曲によってガラス管壁の外周部と内周部との距離が小さくされている。
【0022】
両管端部17の各々には、所謂、ビードガラスマウント方式の電極が封着されている(図示を省略)。また、封着の際に管端部17の先端部分が旋回軸線方向に扁平に圧潰されて発光管3内部を気密に封止する封止部が形成されている。電極は、フィラメントコイルと、フィラメントコイルを支持するとともに管端部17から旋回方向に突出する1対のリード線と、1対のリード線を結束するビードガラスとを含む。
【0023】
発光管3内部には、水銀(水銀単体、水銀と亜鉛や錫等との合金)および緩衝ガス(アルゴンガス、ネオンガス、あるいはそれらの混合ガス等)が封入されている。発光管3の内周面には、蛍光体層が形成されている。この蛍光体層は、例えば、赤、緑、青発光の3種類の希土類の蛍光体を焼成してなる。このように、本実施形態の発光管3は蛍光管として構成され、放電ランプ1は蛍光ランプとして構成されている。
【0024】
発光管3を構成するガラス管の管径方向の断面は、略円形状をしているが、それに限定されるものではなく、例えば、楕円形状であっても、多角形状であっても良い。発光管3の構成材料であるガラス管には、例えば、バリウム・ストロンチウムシリケイトガラス(鉛フリーガラスでもあり、軟質ガラスである。)を用いることができる。
(2)管端連結具について
管端連結具5は、管端部17を保持する1対のホルダ21と、それら1対のホルダ21同士を連結する連結板部23と、1対のホルダ21の各々に取着された口金25とを含む。
【0025】
図3に、図1の管端部17の周辺Aの発光管3をXZ平面によって切断した断面を、Y方向(図1において下方から上方へ向かう方向)に眺めた図を示す。なお、Z方向は、X方向およびY方向と直交し、放電ランプ1の前面から背面に向かう方向である。
ホルダ21は、管端部17を保持する筒状部27を有している。具体的には、筒状部27の内周に管端部17が挿入されており、それらの間に接着部材31が充填され、筒状部27の内周壁と管端部17の外周壁とが接着されている。本実施形態において、接着部材31はシリコーン樹脂系接着剤(以後、「シリコーン接着剤」と称する場合がある。)によって構成されている。なお、この図では、把握しやすくするために接着部材31に格子状の模様を付しており、接着部材31の断面を表しているわけではない。
【0026】
筒状部27の軸方向の旋回中心D側の部分には、部分的に切り欠かれた切欠き部29が形成されている。なお、切欠き部29は、筒状部27の開口側(口金25が取り付けられていない側)に形成されている。
ホルダ21は、背面側の部分が平らにされており、その背面側の部分から旋回中心側に延び出す延出部33を有している。その延出部33には、発光管3側に突出する支持突起35が設けられている。その支持突起35は、ホルダ21の軸方向(概ね旋回部15の旋回方向)に延びている。支持突起35の先端部は、発光管3のうちの管端部17の内周側を旋回する部分である管端内周側部37に当接している。
【0027】
接着部材31は、管端部17の周囲から、切欠き部29を通って延出部33沿いに支持突起35まではみ出している。そして、延出部33、支持突起35および管端内周側部37によって囲まれた部分に接着部材31が充填されることで、管端部17と管端内周側部37とが接着されている。なお、接着部材31が管端内周側部37の背面側の部分に接着されており、管端内周側部37の前面側の部分から放射される光を遮らないようにされている。
【0028】
上述の接着部材31が前記「第1架橋部材」の一例である。なお、本実施形態において、接着部材31は、管端部17と管端内周側部37との各々をホルダ21の延出部33に接着している。このことから、接着部材31は、管端部17と管端内周側部37とを、延出部33を介して間接的に架橋していると考えることもできる。その場合には、ホルダ21と接着部材31とによって前記「第1架橋部材」が構成されている。また、接着部材31が、管端部17とホルダ21の筒状部27とを接着する部分と、管端内周側部37と延出部33とを接着する部分とに分離していてもよい。
【0029】
上記1対の接着部材31により、両管端部17の各々と2つの管端内周側部37の各々とが架橋されると、2つの旋回部15の相対変位が外周側および内周側(管中央部11と連続していることによるもの)の両方で制限され、発光管3の変形が抑制される。すなわち、発光管3の強度が高まることとなる。よって、適切な取り扱いがなされていれば、放電ランプ1の灯具への取り付け、灯具からの取り外しの際に発光管3が破損する虞はない。
【0030】
口金25(図1)は、カップ状の口金本体41と、それの底面から突出する2つのピン43とを有している。口金本体41は、開口部側においてホルダ21と一体的に形成されている。2つのピン43は、口金本体41の底面を貫通しており、管端部17から突出して設けられた電極のリード線と接続されている。
連結板部23(図2)は、2つのホルダ21同士を直線的に連結し、それらの相対変位を制限している。具体的には、2つのホルダ21同士の接近および離間、相対回転等が制限される。また、連結板部23は、2つのホルダ21と一体的に形成され、延出部33の延長線上に配されている。
【0031】
上記ホルダ21、口金本体41および連結板部23は樹脂製(ポリブチレン・テレフタレート)とされている。なお、2つのピン43は、導電部材であればよく、例えば金属製とすることができる。
本実施形態において、ホルダ21と口金25とによって、前記「管端保持部材」が構成されている。
【0032】
(1対の連結部材7(1対の第2架橋部材)について)
(1)連結部材7の位置等.
放電ランプ1は、2つの旋回部15の最外周を旋回する部分である旋回最外周部51、52と、それらの内周側を旋回する部分である次外周部53、54とを架橋する「1対の第2架橋部材」たる1対の連結部材7を有している(図1、図2)。
【0033】
連結部材7は、互いに隣り合う旋回最外周部51(52)と次外周部53(54)との相対変位を制限している。なお、連結部材7は、シリコーン樹脂系接着剤(シリコーン接着剤)によって構成されており、弾性変形できるため、旋回最外周部51(52)と次外周部53(54)とが連結部材7の弾性力に抗してわずかに相対変位することが可能である。
【0034】
図4に示すように、1対の連結部材7は、2つのホルダ21同士(2つの接着部材31)を結ぶ直線Jと、旋回中心Dにおいて直角に交差する直線K上の互いに対向する位置に設けられている。また、連結部材7の中心が直線K上に位置するようにされている。
上記直線Kが、前記「基準直線」の一例である。また、「1対の第2架橋部材」たる1対の連結部材7の各々は、「1対の第1架橋部材」たる1対の接着部材31の両方と離間して設けられている。
【0035】
(2)連結部材7の形状等.
図5に、図2におけるC部をYZ平面によって切断した断面を、−X方向(図2において左から右に向かう方向)に眺めた図を示す。
連結部材7は、旋回最外周部51と次外周部53との間隙55に設けられている。また、連結部材7は、発光管3の背面側に偏った位置に設けられている。そのため、発光管3の前面側の部分から放射される照射光が、連結部材7によって遮られないようにされている。
【0036】
連結部材7の形状を詳細に説明する。連結部材7は、上記間隙55のうち、中央領域57と背面側領域59とに配置されている。中央領域57は、旋回最外周部51と次外周部53との管径方向の中心線O,Pを結ぶ面である中央断面Eに沿って広がり、かつ、その中央断面Eによって二等分される領域である。背面側領域59は、発光管3の背面側において中央領域57に隣接するとともに、旋回最外周部51と次外周部53との両方に接する領域である。そして、中央領域57の厚さHc(中央面に垂直な方向の長さ)は、背面側領域59の厚さHbよりも小さくされている。さらに、上記間隙55のうち、中央領域57の前面側に隣接する領域は、接着部材が設けられておらず、照射光を遮らずに通過させる光通過領域とされている。
【0037】
また、中央領域57は、旋回最外周部51と次外周部53とが最も接近している箇所(「2つの最接近箇所」と称する場合がある)同士を直線的に結ぶ領域である。すなわち、連結部材7のうちの中央領域57に位置する部分は、2つの最接近箇所およびそれらの近傍に固着させられている。そのため、光透過領域を確保しつつ、旋回最外周部51と次外周部53との相対変位を効果的に制限するものとされている。また、被照射面側(下方)から連結部材7が見えにくくなるため、放電ランプ1の外観に影響しにくくなるというメリットもある。
【0038】
連結部材7のうち、中央領域57に位置する部分が、前記「中央架橋部」に該当し、背面側領域59に位置する部分が前記「背面側架橋部」に該当する。なお、本実施形態において、中央架橋部と背面側架橋部とが一体的に形成されている。
(3)連結部材7の架橋幅について.
連結部材7の旋回方向の長さ(以後、「架橋幅」と称する場合がある)について説明する。
【0039】
本実施形態において、図4に示すように、架橋幅は、旋回中心Dを中心とする開き角度で規定される。つまり、連結部材7の両端部61の各々と、旋回中心Dとを結ぶ2つの直線N1,N2のなす角度である「開き角度θ」で架橋幅が規定されるのである。
この開き角度θは、発光管3に予定外の荷重が加わった場合でも、発光管3が破損しにくくなるように、2種類の試験の結果に基づいて決定される。2種類の試験は、「引張り力測定試験」と「強度試験」とであり、前者の結果に基づいて放電ランプ1の強度がどれくらい必要であるか、すなわち「必要強度」が決定され、後者の結果に基づいて必要強度を達成するための「開き角度θ」が決定される。
【0040】
(3−1)引張り力測定試験について.
引張り力測定試験は、被験者が、上方に設置された灯具に口金25が固定された放電ランプ1をどれくらいの力で引っ張るかを測定する試験である。この試験では、放電ランプ1が壊れそうだと被験者が判断した時点で手を離してもらうようにされている。つまり、灯具から放電ランプ1を取り外す方法を知らない使用者が、放電ランプ1を取り外そうと試みて発光管3を前面側(下方)に引っ張る状況を模している。その際に、発光管3を前面側に引っ張る力が、上記「予定外の荷重」の具体例とされている。なお、上記試験時において、各口金25が径方向および軸方向へ移動しないように固定されている。
【0041】
この試験において、被験者が、旋回最外周部51のうち、前述の直線K上に位置する部分である直交位置部65を掴んで、前面側(この場合は下方)に引っ張るようにされる。それは、直交位置部65がホルダ21等から離れた位置にあり、他の部分よりも持ちやすいと推測されるからである。
図6、図7に、試験結果のグラフと統計値を示す。また、図6には参考値として正規分布を曲線66で示す。棒グラフで表した試験結果は、概ね正規分布に従っていることが分かる。平均値は45.3(N)であるが、個人差を考慮して、標準偏差(σ)を3倍した値を平均値に加えた値(図において「平均値+3σ」と記載)である75.2(N)が、放電ランプ1の「必要強度」とされる。すなわち、放電ランプ1の強度が75.2(N)であれば、上述の状況で発光管3が被照射面側に引っ張られても、統計的に99.87%の確率で発光管3の破損を防ぐことができるのである。なお、上記試験結果によって得られた荷重は、2つの直交位置部65に加わる荷重の合計値に相当する。
【0042】
(3−2)発光管3の破損について
ここで、直交位置部65に被照射面側(前面側)に向かう荷重が加わった場合に、発光管3がどのような挙動を示すかについて説明する。
図8に、連結部材7が設けられていない放電ランプ63を示す。この放電ランプ63は、連結部材7の有無以外は放電ランプ1と同じ構成とされている。この放電ランプ63において、発光管3の各部分がどのように変位するかを概略的に示す。なお、図8において、灯具が有する1対のソケット70を二点鎖線で模式的にあらわし、灯具本体の図示を省略する。また、1対のソケット70は、灯具に固定されて動かないものとする。
【0043】
図8において、各直交位置部65に、紙面裏側から表側に向かう方向の荷重が加わっているものとする。この荷重によって発光管3が変形させられるため、この荷重を「変形荷重」と称する。なお、通常、放電ランプ1は背面が上方に向けられるため、紙面裏側から表側に向かう方向を「下向き」あるいは「下方」と表現し、紙面表側から裏側に向かう方向を「上向き」あるいは「上方」と表現する場合がある。さらに、下向きの変位を「下降」、上向きの変位を「上昇」と表現する場合がある。
【0044】
上記変形荷重により、2つの直交位置部65は両方とも下方(図において紙面裏側から表側に向かう向き)に変位させられる。その際に、2つの旋回最外周部51,52は、わずかであるが、前述の直線J廻りに回転させられる。
その理由を具体的に説明する。2つの旋回最外周部51、52の各々は、接着部材31によって、2つのホルダ21のうちの一方に管端部17が架橋され、他方に管端内周側部37が架橋されている。詳細には、管端部17において一方のホルダ21の筒状部27に架橋され、管端内周側部37において他方のホルダ21の延出部33に架橋されている。つまり、2つの旋回最外周部51、52は、互いの管端部17と管端内周側部37とが架橋され、円環状をなしている。しかしながら、接着部材31の剛性は発光管3よりも低いため、管端部17と管端内周側部37との架橋部分において折れ曲がりやすくなっているのである。なお、接着部材31を構成するシリコーン接着剤は弾性変形するため、2つの旋回最外周部51が接着部材31の弾性力に抗してわずかに回転することとなる。
【0045】
すなわち、上述の予定外の荷重が加わった場合には、接着部材31は、旋回最外周部51、52の直線J廻りの回転を十分に抑制することが困難なのである。
そして、直交位置部65が下降する向きに旋回最外周部51(52)が回転変位させられると、その旋回最外周部51(52)と連続する次外周部54(53)も同方向に回転変位させられるため、直交位置部65の内周側に隣り合う部分67が上昇させられる。同様な回転変位は回転角度が小さくなりつつもさらに内周へと伝達され、上記部分67の内周側に隣り合う部分69が下降する向きに、回転変位させられる。全体的に見ると、2つの旋回部15が、主に外周側の部分において互いに逆方向に回転変位させられている。
【0046】
しかしながら、2つの旋回部15は管中央部11と連続しており、2つの旋回部15が互いに逆方向に回転変位することが内周側で制限されている。そのため、回転量は外周側ほど大きく、内周側ほど小さくなる。つまり、2つの旋回部15が互いに逆の向きに回転するように、発光管3が撓んでいるのである。さらに変形荷重が大きくなり、発光管3の撓みによって変形可能な限度を超えると、発光管3が破損してしまう。なお、上述の状況において、屈曲部19が破損する場合が多い。以上で述べたように、連結部材7が設けられていない場合、誤った取り扱いによって発光管3が破損する虞がある。
【0047】
本実施形態において、発光管3の破損は、発光管3の構成材料たるガラス管が割れることであるものとする。よって、電極の構成部品たるリード線が断線したり、発光管3内に塗布された蛍光体層が破損したりすることは、発光管3の破損に含まれないものとする。
なお、発光管3の外径(図14のα)が小さい場合(例えば、200mm以下)は、上述の破損は生じにくい。それは、半径が小さく管中央部11付近(例えば、屈曲部19)に加わるモーメントが小さいためだと考えられる。それに対して、発光管3の外径が大きい場合(例えば、200mm以上)は、半径が大きく管中央部11付近(例えば、屈曲部19)加わるモーメントが大きくなるため、上述の破損が生じやすい。したがって、発光管3の外径が200mm以上の(2つの直交位置部65の離間距離(図14のβ)が、160mm)の放電ランプ1に、連結部材7を設けることが好適である。
【0048】
なお、外径の上限は特にはないが、例えば、発光管3の次外周部53,54の内周側に連結部材を設けない態様とするためには、発光管3の外径が500mm以下であることが望ましい。
発光管3の外径は、両管端部17同士(詳細には、2つの旋回部15の終端部同士)を結ぶ直線上の長さ寸法(図14の「α」)とされる。
【0049】
(3−3)強度試験について.
強度試験は、2つの口金25を固定した状態で、2つの旋回最外周部51を前面側に変位させる荷重(変形荷重)を加え、発光管3が破損する荷重の大きさを測定する試験である。また、この試験において、上記引張り力測定試験と同様の理由で、2つの直交位置部65に互いに等しい大きさの荷重が加えられる。具体的には、2つのフックをそれぞれ対向する直交位置部65に引掛け、2つのフックを紐で前面側(被照射面側)に引張り、所定の荷重を加えるというものである。
【0050】
下記試験結果には、総荷重(2つの直交位置部65に加わる荷重の合計)を示す。
図9に、強度試験結果のグラフを、図10、図11に強度試験結果の数値を示す。なお、開き角度θが「0度」になっているデータは、第2架橋部材たる連結部材7が設けられていない状態のデータである。
図9において、横軸は開き角度θ、縦軸は荷重の大きさFを示している。
【0051】
(3−2−1)開き角度θが0度〜6度の範囲について.
まず、連結部材7の開き角度θが0度以上6度以下の範囲の結果について説明する。
折れ線71は、放電ランプ1の平均強度を示している。連結部材7の開き角度θが0度以上6度以下の範囲において、開き角度θの増加に伴い放電ランプ1の平均強度が増加している。この平均強度は、4回の試験によって得られた4つの値(図11)を平均したものである。また、折れ線71には、誤差範囲73を付している。
【0052】
折れ線75は、平均強度から標準偏差σを3倍した値を引いたものであり、99.87%の確率で強度が保証される値であるため「保証強度」と称する。この折れ線75によって示される保証強度が、前述の「必要強度:75.2(N)」以上になるように開き角度θが決定される。すなわち、折れ線75が75.2(N)以上になるのは、開き角度θが4度以上の範囲である。
【0053】
そして、連結部材7の開き角度θを4度以上にすることにより、灯具から放電ランプ1を取り外す方法を知らない使用者が、発光管3を被照射面側(前面側)に引っ張ることによって放電ランプ1を取り外そうと試みる状況で、ほぼ確実に発光管3の破損を防ぐことができる。なお、開き角度θが4度未満であっても、発光管3を破損しにくくするという効果は生じる。しかし、4度以上であれば、より効果的に発光管3の破損を防ぐことができ、また、発光管3が破損する強度のばらつきを低くすることができる。
【0054】
さらに、連結部材7の開き角度θを大きくすれば、より確実に発光管3の破損を防ぐことができる。そのため、連結部材7の開き角度θを4.76度以上、5.95度以上と大きくすることが望ましい。その反面、連結部材7の使用量が増えること、連結部材7が照明光を遮ること、見栄えが悪くなること等のデメリットが生じる。したがって、連結部材7の開き角度θを15度以下にすることが望ましく、10度以下、7度以下と小さくすることがさらに望ましい。
【0055】
図10において、開き角度θが3.3度のデータの標準偏差σが他と比較して大きい値になっている。これは、連結部材7の開き角度θが小さく、旋回方向の長さが7mmほどであり、連結部材7のわずかな量の違いによって放電ランプ1の強度が大きく変わるためだと考えられる。したがって、開き角度θを大きくすれば、ばらつきを小さくできると考えられる。
【0056】
(3−2−2)開き角度θが7度以上の範囲について.
折れ線71から分かるように、開き角度θが7度の平均強度は、6度の場合と同様な値となっている。
これは、発光管3が破損する前に、2つのホルダ21のうちの少なくとも一方のものから発光管3の管端部17が抜けてしまうためである。なお、ホルダ21と管端部17との接着面積は比較的大きくされているが、接着部材31に用いられているシリコーン接着剤と樹脂製のホルダ21との間の接着力が、シリコーン接着剤とガラス(発光管3)との接着力に比べて弱いため、ホルダ21内周部から接着部材31が外れやすいという事情がある。
【0057】
上記管端部17の抜けに対しては、例えば、ホルダ21の軸方向の長さ寸法と、ホルダ21に挿入される管端部17の長さ寸法とを大きくし、接着面積を増やすことで、管端部17の抜けを防止することができる。それにより、例えば、変形荷重の大きさが250(N)まで管端部17が抜けないようにした場合には、開き角度θを7度以上にしても管端部17が抜けず、発光管3が破損する荷重が高まるという試験結果が得られると考えられる。
【0058】
このような事実に基づけば、例えば、連結部材7の開き角度θを7度未満にすることにより、連結部材7に使用するシリコーン接着剤の過剰な使用を防止してコストの増加を抑制しうる。すなわち、発光管3が破損する荷重が、ホルダ21による管端部17の保持が解除される荷重以下、あるいは、保持が解除される荷重よりも少し大きくなるように、連結部材7の開き角度θの上限を設定することで、コストの増加を抑制しうるのである。
【0059】
ところで、発光管3が破損するよりも、ホルダ21から発光管3の管端部17が抜けてしまうほうが好ましいと考えることもできる。発光管3が破損すると、ガラスの破片が床に落下することとなるので、掃除をする必要が生じる。それに対して、発光管3が破損する前にホルダ21から管端部17が抜ければ、そのような掃除の手間が省ける。発光管3が破損しても、管端部17が抜けても、いずれにせよ放電ランプ1は使用できなくなるのであるから、掃除が不要となるほうが好ましいのである。したがって、強度試験では、開き角度θを6度以上にしても、放電ランプ1の強度が変わらないという結果となっているが、発光管3の破損を防ぐという点では、7度以上でも目的は達成できる。
【0060】
さらに、本実施形態の放電ランプ1は、予定外の荷重が大きい場合に、積極的に管端部17の保持を解除するようにされていると考えることもできる。
強度試験において、開き角度θが7度の平均強度が約190(N)であるので、ホルダ21による管端部17の保持が解除される荷重である保持解除荷重が約190(N)になっている。そして、開き角度θが7度以上にされた発光管3に約190(N)未満の荷重が加わった場合、管端部17の保持が解除されず、かつ、発光管3が破損しない。一方、約190(N)以上の荷重が加わった場合、管端部17の保持が解除され、発光管3の破損が未然に防止されることとなる。
【0061】
保持解除荷重の大きさは約190(N)に限られず、目的に応じて変更することができる。例えば、ホルダ21および管端部17の接着面積を減少させることにより、保持解除荷重を低くして(例えば、150(N))、より小さな荷重で保持が解除されるようにすることもできる。
なお、連結部材7が設けられていない場合、発光管3の平均強度は51(N)であるため、51(N)を超え、かつ、保持解除荷重約190(N)よりも小さい変形荷重が加わると、管端部17の保持が解除される前に発光管3が破損することとなる。
【0062】
(3−2−3)発光管3の外径の影響について.
この強度試験において、発光管3が破損するのは、連結部材7が弾性変形し、発光管3が弾性的に撓める限度を超えて変形させられたからである。
ここで、直交位置部65に作用する力について検討する。まず、直交位置部65を下降させる向きに荷重Fdが加えられている。その荷重によって旋回最外周部51,52が回転させられると、その回転を抑制して発光管3の変形を抑制する3種類の変形抑制力が発生する。その3種類の変形抑制力とは、発光管3の撓みによる変形抑制力Fa、接着部材31の弾性変形による変形抑制力Fbおよび連結部材7の弾性変形による変形抑制力Fcである。これら3種類の変形抑制力Fa,Fb,Fcは、直交位置部65を上昇させる向きの力(下降を抑制する向きの力)であり、また、直交位置部65に作用する大きさとする。
【0063】
そして、発光管3が弾性的に撓める限度内の変形で、上記変形抑制力Fa,Fb,Fcの和が、荷重Fdと等しくなる場合には、発光管3は破損しないこととなる。この試験では、発光管3および接着部材31は同一の条件にされているので、連結部材7の開き角度θを変えることによって、連結部材7が発生させる弾性力の大きさを変化させ、変形抑制力Fcの大きさを変化させることができる。なお、発光管3の変形時に、連結部材7が弾性変形(せん断変形)させられることから、連結部材7の開き角度θを変えることによって、連結部材7のばね定数(せん断ばね定数)を変えることができると考えられる。
【0064】
すなわち、連結部材7の開き角度θを大きくすれば、連結部材7のばね定数が大きくなり、荷重Fdが加わった際の発光管3の変形(具体的には、直交位置部65とその内周側の部分67との相対変位)に対して発生する変形抑制力Fcが大きくなるため、発光管3の変形量を小さくすることができるのである。
さらに、発光管3の外径を変えた場合について検討する。
【0065】
発光管3の外径が大きい場合は、外径が小さい場合と比べて、発光管3の変形に対して発生する変形抑制力Fa,Fbが小さくなる。それは、旋回最外周部51,52は、それの回転軸線となる直線J上(あるいはその近傍)で接着部材31によって支持されており、直交位置部65が直線Jから離れるほど、モーメントの影響によって直交位置部65を上昇させる変形抑制力Fbが小さくなるためである。
【0066】
また、発光管3の撓みによる変形抑制力Faについても同様にモーメントの影響を受ける。具体的には、次外周部53等およびその内周部分の撓みを解消しようとする弾性力は、直線J上に位置する管端内周側部37において、旋回最外周部51等の回転を抑制する向きに作用するのであるが、モーメントの影響によって直交位置部65を上昇させる変形抑制力Faが小さくなるのである。さらに、発光管3の外径が大きくなるほど、発光管3の周長が長くなり、特に、次外周部53等およびその内周部分が小さい荷重で撓みやすくなることも影響する。
【0067】
したがって、発光管3の外径が大きくなるにつれて、連結部材7による架橋幅を増やすことにより、変形抑制力Fa,Fbが減少する影響を受けにくくなると考えられる。例えば、発光管3の変形量が比較的小さい状態でも、その変形を抑制する連結部材7の弾性力が比較的大きくなり、変形を抑制しやすくなる。本実施形態において、連結部材7による架橋幅は、開き角度θによって規定されている。そのため、発光管3の外径に応じて連結部材7による架橋幅を適切なものとすることができ、前述のような予定外の荷重が旋回最外周部51,52に加わった場合でも、発光管3を破損しにくくすることができる。
【0068】
(3−2−4)連結部材7の位置の影響について.
本実施形態の放電ランプ1では、基準直線たる直線Kが、直線Jと直交するものとされている。これは、前述のように変形荷重が加わった際に旋回最外周部51,52が直線J廻りに回転するため、その回転を効率よく抑制するためには直線Jから可及的に遠い箇所を架橋することが望ましいためである。
【0069】
しかしながら、直線Kが直線Jと直角に交差していることは必要不可欠な事項ではなく、略直角に交差していれば、直角に交差している場合と同等の結果が得られると考えられる。
ここで、単純にモデル化するために、旋回中心Dを中心とする仮想的な半円と直線Kとの交点と、直線Jとの離間距離Uを考える。上記半円の半径をR、直線Kと直線Jとの交差角度をφとすると、次式の関係が得られる。
【0070】
離間距離U=R・sinφ ・・・ (式1−1)
正弦値は、角度変化に対する変化が、0度、90度、180度等の付近において、他と比較して(例えば、45度付近)小さいものとなる。よって、90度付近での交差角度の変化が上記離間距離Uに与える影響は比較的小さくなっている。例えば、交差角度φが80度である場合、離間距離Uは0.985・Rとなる。
【0071】
離間距離Uの減少により、以下の2つの理由によって前記変形抑制力Fcが低下する。ここでは交差角度φが80度である場合を例にして説明する。
第1に、離間距離Uの減少により、連結部材7の弾性力によって発生する直線J廻りのモーメントが0.985倍とやや小さくなる。したがって、交差角度φが90度の状態と同じモーメントを発生させるためには、連結部材7の開き角度θを1.015倍(=1/0.985)にすればよい。
【0072】
第2に、離間距離Uの減少により、連結部材7が架橋している箇所において、旋回最外周部51等と次外周部53等との相対変位量も0.985倍とやや小さくなる。そうすると、連結部材7の変形量も小さくなり、弾性力が小さくなる。したがって、交差角度φが90度の状態と同じ弾性力を発生させるためには、連結部7のせん断ばね定数を1.015倍(=1/0.985)にすればよい。つまり、連結部材7の開き角度θを1.015倍(=1/0.985)にすればよいのである。
【0073】
上記第1および第2の2つの理由による変形抑制力Fcの低下を補うには、概算であるが、連結部材7の開き角度θを1.031倍(=1.015の2乗)にすればよいこととなる。つまり、開き角度θを約3%増やすこととなる。そうすると、例えば、交差角度φが80度の場合に、交差角度φが90度で開き角度θが5度の場合と同等の変形抑制力Fcを得るためには、開き角度θを5.15度にすればよく、その差0.15度は概ね誤差とみなせる程度といえる。
【0074】
上述の単純なモデルが、本実施形態における連結部材7の位置の変化の影響を正確に反映しているわけではない。しかしながら、旋回最外周部51等は半円状をなしており、直線Kと直線Jとの交差角度が90度の付近において、交差角度の変化に対して連結部材7の直線Jからの離間距離の変化が小さい点は共通している。
したがって、直線Kと直線Jとの交差角度が80度以上であれば、連結部材7の開き角度θを変えなくとも、あるいは、開き角度θをわずかに増やすだけで、交差角度が直角の場合と同等の強度が得られると考えられる。よって、本実施形態において、「略直角」とは、交差角度が80度以上(80度〜90度)であるものとする。なお、「略直角」を交差角度が85度以上とすることもできる。
【0075】
このように、直線Kと直線Jとの交差角度が80度以上になるように連結部材7を設けることができれば、発光管3の変形を効果的に抑制するとともに、製造工程の自由度を高め、製造時の労力やコストを抑制することができる。
なお、交差角度が80度未満であっても、上記離間距離Rや旋回最外周部51等と次外周部53等との相対変位量の減少分を補うように開き角度θを設定すれば、上記交差角度が80度以上の場合と同等の変形抑制効果が得られると考えられる。
【0076】
(3−2−5)放電ランプ1の各部の寸法について.
試験に用いた放電ランプ1は、発光管3の外径α(図14参照)が312mm、2つの直交位置部65の離間距離β(図14参照)が250mm(2つの連結部材7の外周側の部分間の距離でもある)とされている。また、2つの旋回部15の旋回数は2周、発光管3の管径は20mm、管壁厚さが1.0mmである。なお、発光管3は、湾曲させられることによって旋回径方向の管径がわずかに(0.5mm程度)小さくなることがある。屈曲部19において、発光管3を構成するガラス管のアスペクト比は、0.8(旋回軸線方向の管径は20mm)とされている。
【0077】
また、2つの旋回部15の互いに隣り合う部分の間隙(例えば、図5のL)は6.5mm(5.5mm〜7.5mm)とされている。さらに、連結板部23の幅と厚さは、それぞれ17mm、2mmとされている。
連結部材7の中央領域57の厚さHc(図5)は、1mm、背面側領域59の厚さHbは、8mmとされている。硬化したシリコーン接着剤の「デュロメータ硬さ」は、JIS6253準拠の硬度計(タイプA)による測定結果が「50〜60」とされている。なお、硬度計は、「ミツトヨ社製ハードマチックHH−332」が使用されている。
【0078】
なお、図1,図2等に示した放電ランプ1は、発光管3の外径が283mmのものであり、試験に用いたものと外径や旋回部15の旋回数が異なるものとされている。しかし、発光管3の管径、管壁厚さ等は同じであり、図1,図2等に示した放電ランプ1の旋回部15を延長して旋回数を2周にすれば、試験に用いたものと同様の寸法となる。
(4)連結部材7の形成方法について.
連結部材7の形成方法について説明する。
【0079】
連結部材7の両端部61の各々の面を形成する2つの側板部材と、連結部材7の前面を形成する底板部材とを有する冶具を準備する。2つの側板部材の前面側の部分は、底板部材によって連結されている。
その冶具を、旋回最外周部51と次外周部53との間隙55であって、直線K上に位置する箇所である架橋箇所に設置する。冶具と旋回最外周部51および次外周部53とによって包囲された間隙にシリコーン接着剤を設定量流し込む。シリコーン接着剤は、硬化する際に、旋回最外周部51および次外周部53の両方の外周面と固着する。したがって、シリコーン接着剤が硬化した後、冶具を取り外せば連結部材7の形成が完了する。
【0080】
なお、2つの側板部材の離間距離は、上記箇所に設置された場合に、2つの側板部材と旋回中心Dとを結ぶ2つの直線のなす角度が、設定された開き角度になる距離とされている。また、底板部材の旋回径方向の長さは、旋回最外周部51と次外周部53との間隙55の距離Lよりも小さくされている。
上記底板部材を、2つの側板部材の背面側を連結する天板部材に代えることもできる。その場合は、放電ランプ1の背面側を下にして、シリコーン接着剤の充填が行われることとなる。また、天板部材の旋回径方向の長さは、旋回最外周部51と次外周部53との間隙55の距離Lよりも大きくされている。
【0081】
<作用効果>
上述のように、放電ランプ1が灯具に取り付けられた状態で2つの直交位置部65が下方に引っ張られた場合に、2つの旋回部15が互いに逆方向に回転変位させられる。その際、管中央部11付近の回転変位量は小さく、旋回最外周部51の回転変位量が最も大きくなる。また、旋回最外周部51の直交位置部65と、それの内周側に隣り合う部分67との相対変位量も、部分67とそれの内周側に隣り合う部分69との相対変位量に比べて大きくなる。
【0082】
本実施形態において、連結部材7によって、旋回最外周部51(52)と、次外周部53(54)との相対変位(特に、旋回軸線方向の相対変位)が制限されている。そのため、上述の予定外の荷重が加わった場合でも、2つの旋回部15(詳細には、旋回最外周部51、52)の直線Jを回転軸線とする互いに逆方向の回転変位が抑制され、発光管3の変形量を比較的小さくすることができる。したがって、発光管3を破損しにくくすることができるのである。
【0083】
また、連結部材7は、前述の直線K上に設けられているため、旋回最外周部51と、それの内周側を旋回する次外周部53との相対回転変位を効果的に制限することができる。それは、旋回最外周部51および次外周部53は、前述したように直線J廻りに回転変位するため、直線Jから最も遠い箇所を架橋することで、他の箇所に比して小さい力で相対回転変位を制限することができるからである。
【0084】
なお、本実施形態において、発光管3のうちの異なる周回上において互いに隣り合う部分を架橋する部材(連結部材7,接着部材31と同様の機能を有する部材)は、旋回最外周部51、52と次外周部53、54との間にのみ設けられ(連結部材7,31)、次外周部53、54よりも内周側には設けられていない(例えば、部分67と部分69との間には設けられていない)。これは、第1架橋部材たる接着部材31に加えて、第2架橋部材たる連結部材7を設けることにより、効果的に発光管3の変形を抑制することができるからである。
【0085】
[変形例]
<補強部材を含む架橋部材>
上記実施形態において、連結部材7はシリコーン接着剤のみで構成されていた。それに対して、図12に示すように、第2架橋部材たる連結部材101を、補強部材103と接着部材105とによって構成することができる。補強部材103の旋回方向の長さは、前記連結部材7と同様にされている。また、補強部材103は、旋回最外周部51(52)等に沿って湾曲させられている。この補強部材103を接着部材105中に埋め込むことによって、連結部材101の剛性が増し、旋回最外周部51、52の直線Jを回転軸線とする互いに逆方向の回転変位を効果的に抑制することができる。
【0086】
補強部材103は、剛性の高い部材とすることができ、例えば、金属製(ステンレス、鋼材等)、セラミック製、ガラス製、強度の高い樹脂製(エンジニアリングプラスティック等)等とすることができる。接着部材105は、例えば、シリコーン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤等の樹脂系接着剤を用いることができる。
なお、補強部材103の長さを前記連結部材7よりも短くすることや、補強部材103を複数に分割することもできる。さらに、補強部材103を空洞にしてもよいし、補強部材103が接着部材105の前面側まで貫通していてもよいし、接着部材105が補強部材103を挟んで二分されていてもよい。
【0087】
<板状部材を含む架橋部材>
さらに、図13に示すように、第2架橋部材たる連結部材111を板状部材113と、接着部材115とによって構成することもできる。板状部材113は、旋回径方向において、旋回最外周部51および次外周部53との中心線O,P上まで延びている。また、旋回最外周部51等の外周面に沿って湾曲させられた湾曲面部117において、接着部材115によって旋回最外周部51等に接着されている。
【0088】
この連結部材111は、板状部材113の剛性を高くすることができ、旋回最外周部51、52の直線Jを回転軸線とする互いに逆方向の回転変位を効果的に抑制することができる。板状部材113は、径方向の長さを旋回最外周部51と次外周部53との離間距離Lよりも長くされている。板状部材113は、V字状に曲げられた形状とされているが、板状部材113に代えて、三角柱状の部材や、その他の形状の部材にすることができる。
【0089】
板状部材113は、剛性の高い部材とすることができ、例えば、金属製(ステンレス、鋼材等)、セラミック製、ガラス製、比較的強度の高い樹脂製(エンジニアリングプラスティック等)等とすることができる。接着部材115は、例えば、樹脂系接着材、無機系接着剤等の接着剤とすることができる。
<充填材を含む架橋部材>
図示を省略するが、第2架橋部材として、繊維が混合された樹脂系接着剤(例えば、シリコーン接着剤)によって前記連結部材7と同じ形状の架橋部材である繊維強化接着部材を形成することができる。繊維は、例えば、ガラス繊維、樹脂繊維、炭素繊維等とすることができる。シリコーン接着剤に繊維を混合することにより、架橋部材の剛性が高まり、発光管3の変形を効果的に抑制することができる。
【0090】
<その他>
(1)前記実施形態において、直線Kが直線Jと直交するものとされていたが、直角以外の交差角度にすることができる。例えば、交差角度を60度にした場合には、交差角度が90度の場合よりも発光管3の変形を抑制する効果が低下するため、架橋幅(開き角度θ)を大きくする等により効果の低下分を補うことが望ましい。なお、直線Kと直線Jとの交差角度は、45度以上が望ましく、60度以上、75度以上と90度に近いほうがさらに望ましい。
【0091】
(2)前記実施形態において、連結部材7の中心が直線K上に位置するようにされていたが、旋回方向にずれていてもよい。具体的には、連結部材7の両端部61が直線Kを挟むように設置されていればよい。
(3)前記実施形態において、連結部材7が、直交位置部65と部分67との間隙55に設けられていたが、その他の部分に設けることもできる。例えば、部分67と部分69との間に設けることができる。
【0092】
(4)連結部材7は、シリコーン接着剤以外の接着剤で形成されていてもよく、例えば、エポキシ樹脂等の樹脂系接着剤で形成することができる。
(5)発光管3の外形は、扁平な円盤状に限られず、例えば、円錐状にすることもできる。その場合には、2つの旋回部は、旋回中心を通り旋回径方向と交差する(例えば、直交する)方向に変位しながら渦巻状に旋回する形状に湾曲させられた形状とされる。
【0093】
(6)前記実施形態において、管端部17が、旋回方向に沿って形成されていたが、旋回方向と異なる方向に延びるものとされていてもよい。例えば、旋回部の外周側端部において発光管を屈曲させ、管端部が旋回径方向の外周側に向かって延びる形状とすることや、発光管の背面側に向かって延びる形状とすることができる。また、管端部が長い場合、ホルダから管端部の一部分がはみ出していてもよい。
【0094】
(7)前記実施形態において、発光管3のうちの旋回径方向において互いに隣り合う部分の間隙は均等にされていたが、均等でなくともよい。例えば、外周側の間隙を内周側と比して大きくしたり、小さくしたりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の放電ランプは、管中央部を中心として渦巻状に旋回する形状の平面視二重渦巻形の発光管を備えた放電ランプに利用できる。
【符号の説明】
【0096】
1:放電ランプ
3:発光管
5:管端連結具
7:連結部材(第2架橋部材)
11:管中央部
15:旋回部
17:管端部
21:ホルダ
25:口金
31:接着部材(第1架橋部材)
37:管端内周側部
51、52:旋回最外周部
53、54:次外周部
61:両端部
65:直交位置部
70:ソケット
101:連結部材
111:連結部材
D:旋回中心
【技術分野】
【0001】
本発明は、管中央部を旋回中心として両管端部の各々に向かって平面視二重渦巻状に1周以上旋回する形状の発光管を備えた放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図15に示すように、一般照明に用いられる放電ランプ201として、管の中央部を旋回中心Dとして平面形状で、かつ渦巻状に旋回する形状の発光管203(以下、「渦巻き型発光管」と称する場合がある)を備えたものが知られている。
このような渦巻き型発光管203を備えた放電ランプ201は、灯具への着脱時に破損しやすいという問題があった。具体的には、発光管203の両管端部217に設けられた口金225が灯具のソケットに差し込まれ、あるいは引き抜かれる際に、両管端部を相対変位させる大きな荷重が加わる場合があり、発光管203が破損する虞があった。
【0003】
このような問題に対し、下記特許文献1に記載の放電ランプにおいては、渦巻き型発光管203の各管端部217と、その管端部217と隣り合う内周側を旋回する部分237とを、シリコーン樹脂系接着剤231によって架橋することにより、発光管203の両管端部217の相対変位を抑制し、灯具に着脱する際の破損を防いでいる。
また、下記特許文献2には、一本の放電路が形成された環形二重管型の蛍光ランプについて、外周側の管と内周側の管とをシリコーン接着剤によって架橋することが記載されている。それは、環形二重管型の蛍光ランプは、ランプ点燈時の発熱による熱応力やランプ交換時に加わる外力により、外周と内周とをつなぐブリッジ部が破損しやすいため、補強する必要があるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−198493号公報
【特許文献2】特許3219013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の放電ランプは、適切な取り扱いがなされていれば破損する虞はないが、誤った取り扱いによって予定外の荷重が加わると発光管が破損する虞がある。
図16には、発光管203の両管端部217(詳細には、口金225)が灯具のソケット270に挿入されている状態、つまり、放電ランプ201が灯具に取り付けられている状態の一例を示す。この例では、灯具から放電ランプ201を取り外すには、放電ランプを回転させ、発光管203の両管端部217をソケット270から引き抜く操作が必要である。
【0006】
しかし、例えば、使用者が、適切な取り外し方が分からないために、誤って、発光管203の両管端部217が灯具のソケット270に挿入されたままの状態で、発光管203の最外周部のSを掴んで発光管203を取り外せない方向(例えば、図において下方)に引っ張るような状況が考えられる。そのような場合には、発光管3に予定外の荷重が加わり、発光管203が破損する虞がある。
【0007】
このような破損が生じることを解決するために、発光管203の両管端部217を保持するホルダ221や、それを連結する連結板部223等を大型化することにより、両管端部217をより強固に保持し、あるいは両管端部217の各々とその内周側を旋回する部分237とを架橋する幅を増加させることが考えられる。しかし、コストの増加や、発光管の背面に位置する連結板部223による悪影響が問題となる。なお、上記コストの増加は、ホルダ221等の大型化による材料使用量の増加や、発光管203の外径に応じた寸法のホルダ221等を製造するためのコストの増加によるもの等がある。また、上記連結板部223の大型化による悪影響は、例えば、放電ランプの背面から放射された光が灯具の笠に反射されて被照射面に向かって進む際の妨げとなることがある。
【0008】
本発明は、上記した課題に鑑み、平面形の二重渦巻き型の発光管において、旋回最外周部に予定外の荷重が加わった場合でも、発光管が破損し難い放電ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る放電ランプは、管中央部を旋回中心として両管端部の各々に向かって平面視二重渦巻状に1周以上旋回する形状の発光管と、前記両管端部の各々と前記発光管のうちの前記両管端部の各々の内周側を旋回する部分とを架橋してそれらの相対変位を制限する1対の第1架橋部材と、前記発光管の旋回最外周部とそれの内周側を旋回する部分とを架橋してそれらの相対変位を制限する2つの部材であって、旋回方向において前記1対の第1架橋部材の両方と離間し、かつ、平面視において前記旋回中心を通る直線である基準直線上の2つの箇所に設けられた1対の第2架橋部材とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る放電ランプは、発光管の旋回最外周部と、それの内周側を旋回する部分(「次外周部」と称する場合がある)とを、1対の第1架橋部材と旋回方向において離間した2つの箇所で架橋する1対の第2架橋部材を備えており、発光管の旋回最外周部に予定外の荷重が加わった場合でも、発光管が破損し難い放電ランプを得ることができる。
さらに、本発明に係る放電ランプを、前記基準直線が、前記1対の第1架橋部材同士を結ぶ直線との交差角度が45度以上になるものとすることができる。1対の第1架橋部材を結ぶ直線との交差角度が45度以上になる基準直線上の箇所は、旋回最外周部と次外周部との相対変位量が大きい箇所である(実施形態参照)。したがって、上記構成を採用すれば、相対変位量が大きい箇所の相対変位を制限することにより、効果的に発光管の変形を抑制し、発光管を破損し難くすることができる。
【0011】
さらに、本発明に係る放電ランプを、前記基準直線が、前記1対の第1架橋部材同士を結ぶ直線と略直交するものとすることができる。1対の第1架橋部材を結ぶ直線と略直交する基準直線上の箇所は、旋回最外周部と次外周部との相対変位量が非常に大きい箇所である(実施形態参照)。したがって、上記構成を採用すれば、非常に効果的に発光管の変形を抑制し、発光管を破損し難くすることができる。
【0012】
さらに、本発明に係る放電ランプを、前記第2架橋部材の旋回方向における両端部間の距離が、平面視において、前記両端部と前記旋回中心とを結ぶ2つの直線のなす角度が4度以上15度以下になるものとすることができる。上記2つの直線のなす角度を4度以上にすることにより、使用者が放電ランプの取り外し方が分からずに、試しに発光管の両管端部が灯具に固定された状態のままで、発光管の旋回外周部を被照射面側に引っ張ったような状況において、発光管が非常に壊れにくくされている。また、上記2つの直線のなす角度を15度以下にすることにより、第2架橋部材が過大にならず、コストの上昇を抑制することができる。
【0013】
さらに、本発明に係る放電ランプを、前記第2架橋部材が、前記発光管のうちの径方向に隣り合う部分同士の管径方向の中心線を結ぶ平面である中央断面に沿って前記隣り合う部分同士間に設けられるとともに前記中央断面によって二等分される中央架橋部と、被照射面に対向しない背面側において前記中央架橋部に隣接して前記隣り合う部分同士間に設けられる背面側架橋部とによって構成され、前記中央断面に垂直な方向における前記中央架橋部の厚さが、前記背面側架橋部の厚さよりも小さくすることができる。
【0014】
この特長により、発光管のうちの径方向に隣り合う部分同士の間に、第2架橋部材を背面側に偏って設けることで、発光管の被照射面に対向する側を遮らないため、照度の低下を抑制できる。また、中央架橋部によって中央断面付近を架橋することで、効果的に上記隣り合う部分同士の相対変位を抑制することができる。
さらに、本発明に係る放電ランプを、さらに、前記両管端部の各々を保持するとともに灯具に接続される1対の管端保持部材を含み、前記1対の管端保持部材が灯具に接続された状態で、前記旋回最外周部の前記1対の第1架橋部材同士を結ぶ直線と前記旋回中心において直交する直交線上の2箇所をそれぞれ被照射面側に変位させて前記発光管を変形させる荷重を変形荷重とした場合において、前記1対の管端保持部材が、前記変形荷重の値が設定値以上になった場合に、前記両管端部の少なくとも一方の保持を解除するものであり、前記1対の第2架橋部材によって前記2箇所が架橋されていない場合には、前記発光管が破損する前記変形荷重の値が前記設定値以下になり、前記1対の第2架橋部材によって前記2箇所が架橋されている場合には、前記発光管が破損する前記変形荷重の値が前記設定値よりも大きくなるものとすることができる。
【0015】
この特長により、予定外の荷重が加わった場合に、発光管が破損する前に両管端部の少なくとも一方の保持を解除することで、発光管の破損を防ぐことができる。これにより、発光管の破片が床に散らばることを防ぎ、掃除の手間を省くことができる。なお、1対の管端保持部材が灯具に接続された状態では、1対の管端保持部材は灯具によって少なくとも被照射面側への移動を阻止されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態における放電ランプの平面図
【図2】放電ランプの背面図
【図3】ホルダを発光管の管軸方向から見た図
【図4】接着部材の開き角度θを示す平面図
【図5】接着部材の断面図
【図6】引張り力測定試験結果のグラフを示す図
【図7】引張り力測定試験結果の統計値を示す図
【図8】変形荷重による発光管の変形を示す図
【図9】強度試験結果のグラフを示す図
【図10】強度試験結果の統計値を示す図
【図11】強度試験結果の数値を示す図
【図12】連結部材の変形例を示す図
【図13】連結部材の別の変形例を示す図
【図14】発光管の外径を示す図
【図15】従来の放電ランプの平面図
【図16】従来の放電ランプの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る一の放電ランプの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
<構成>
(放電ランプ)
図1、図2は、それぞれ放電ランプの平面図、背面図である。ここで、放電ランプ1の平面図(図1)は、放電ランプ1を灯具に装着した状態で被照射面側から放電ランプ1を見た図であり、背面図(図2)とは灯具側から放電ランプ1を見た図である。なお、放電ランプ1の平面図(図1)に表されている面を「前面」、背面図(図2)に表されている面を「背面」と称する場合がある。
【0018】
放電ランプ1は、内部に一本の放電路を有する発光管3と、この発光管3の両管端部を連結する管端連結具5と、発光管3の2つの箇所を架橋する1対の連結部材7とを含む。なお、放電ランプ1は対称的な構造を成しており、以後の説明において、互いに対称的に形成された同じ2つの構成部材等について、一方の構成部材を代表的に説明する場合がある。また、互いに対称的に形成された同じ2つの構成部材に異なる番号を付してそれらを区別する場合もある。
【0019】
(1)発光管について
発光管3は、ガラス管が平面二重渦巻き形状に湾曲させられており、全体の輪郭が略円盤状をなしている。その発光管3は、渦巻きの中心に位置する管中央部11と、その管中央部11の両端から延び出して旋回半径を増加させながら渦巻状に旋回する形状の2つの旋回部15と、旋回部15の外周側の終端に位置する管端部17とを含む。
【0020】
管中央部11は、長さは短いが一直線に沿って延びる形状とされ、中央部分が管径方向に膨らんでおり、特に放電ランプ1の前面側に膨出している。この膨出している部分に、ランプ点灯時の最冷点箇所が形成される。また、管中央部11の中心には旋回中心Dが位置している。
2つの旋回部15は、管中央部11の両端の各々から、両管端部17の各々まで、旋回中心Dを中心とする対称形状にされている。なお、2つの旋回部15は、それぞれ一平面に沿って旋回中心D廻りに旋回させられた形状とされているが、旋回中心Dを通る旋回軸線廻りに旋回させられた形状であるということもできる。本実施形態において、旋回軸線は上記一平面と垂直(図1において紙面と垂直)になる。旋回部15を湾曲管部と称することもできる。
【0021】
2つの旋回部15のうち、異なる周回上において互いに隣り合う部分の間には、所定の間隙(図3の「L」)が確保されている。この図において、各旋回部15は、1.75周(1と4分の3周)旋回させられている。
なお、管中央部11と旋回部15とがつながる部分は、旋回部15よりも曲率半径が小さく、屈曲させられた屈曲部19とされている。この屈曲部19は、屈曲によってガラス管壁の外周部と内周部との距離が小さくされている。
【0022】
両管端部17の各々には、所謂、ビードガラスマウント方式の電極が封着されている(図示を省略)。また、封着の際に管端部17の先端部分が旋回軸線方向に扁平に圧潰されて発光管3内部を気密に封止する封止部が形成されている。電極は、フィラメントコイルと、フィラメントコイルを支持するとともに管端部17から旋回方向に突出する1対のリード線と、1対のリード線を結束するビードガラスとを含む。
【0023】
発光管3内部には、水銀(水銀単体、水銀と亜鉛や錫等との合金)および緩衝ガス(アルゴンガス、ネオンガス、あるいはそれらの混合ガス等)が封入されている。発光管3の内周面には、蛍光体層が形成されている。この蛍光体層は、例えば、赤、緑、青発光の3種類の希土類の蛍光体を焼成してなる。このように、本実施形態の発光管3は蛍光管として構成され、放電ランプ1は蛍光ランプとして構成されている。
【0024】
発光管3を構成するガラス管の管径方向の断面は、略円形状をしているが、それに限定されるものではなく、例えば、楕円形状であっても、多角形状であっても良い。発光管3の構成材料であるガラス管には、例えば、バリウム・ストロンチウムシリケイトガラス(鉛フリーガラスでもあり、軟質ガラスである。)を用いることができる。
(2)管端連結具について
管端連結具5は、管端部17を保持する1対のホルダ21と、それら1対のホルダ21同士を連結する連結板部23と、1対のホルダ21の各々に取着された口金25とを含む。
【0025】
図3に、図1の管端部17の周辺Aの発光管3をXZ平面によって切断した断面を、Y方向(図1において下方から上方へ向かう方向)に眺めた図を示す。なお、Z方向は、X方向およびY方向と直交し、放電ランプ1の前面から背面に向かう方向である。
ホルダ21は、管端部17を保持する筒状部27を有している。具体的には、筒状部27の内周に管端部17が挿入されており、それらの間に接着部材31が充填され、筒状部27の内周壁と管端部17の外周壁とが接着されている。本実施形態において、接着部材31はシリコーン樹脂系接着剤(以後、「シリコーン接着剤」と称する場合がある。)によって構成されている。なお、この図では、把握しやすくするために接着部材31に格子状の模様を付しており、接着部材31の断面を表しているわけではない。
【0026】
筒状部27の軸方向の旋回中心D側の部分には、部分的に切り欠かれた切欠き部29が形成されている。なお、切欠き部29は、筒状部27の開口側(口金25が取り付けられていない側)に形成されている。
ホルダ21は、背面側の部分が平らにされており、その背面側の部分から旋回中心側に延び出す延出部33を有している。その延出部33には、発光管3側に突出する支持突起35が設けられている。その支持突起35は、ホルダ21の軸方向(概ね旋回部15の旋回方向)に延びている。支持突起35の先端部は、発光管3のうちの管端部17の内周側を旋回する部分である管端内周側部37に当接している。
【0027】
接着部材31は、管端部17の周囲から、切欠き部29を通って延出部33沿いに支持突起35まではみ出している。そして、延出部33、支持突起35および管端内周側部37によって囲まれた部分に接着部材31が充填されることで、管端部17と管端内周側部37とが接着されている。なお、接着部材31が管端内周側部37の背面側の部分に接着されており、管端内周側部37の前面側の部分から放射される光を遮らないようにされている。
【0028】
上述の接着部材31が前記「第1架橋部材」の一例である。なお、本実施形態において、接着部材31は、管端部17と管端内周側部37との各々をホルダ21の延出部33に接着している。このことから、接着部材31は、管端部17と管端内周側部37とを、延出部33を介して間接的に架橋していると考えることもできる。その場合には、ホルダ21と接着部材31とによって前記「第1架橋部材」が構成されている。また、接着部材31が、管端部17とホルダ21の筒状部27とを接着する部分と、管端内周側部37と延出部33とを接着する部分とに分離していてもよい。
【0029】
上記1対の接着部材31により、両管端部17の各々と2つの管端内周側部37の各々とが架橋されると、2つの旋回部15の相対変位が外周側および内周側(管中央部11と連続していることによるもの)の両方で制限され、発光管3の変形が抑制される。すなわち、発光管3の強度が高まることとなる。よって、適切な取り扱いがなされていれば、放電ランプ1の灯具への取り付け、灯具からの取り外しの際に発光管3が破損する虞はない。
【0030】
口金25(図1)は、カップ状の口金本体41と、それの底面から突出する2つのピン43とを有している。口金本体41は、開口部側においてホルダ21と一体的に形成されている。2つのピン43は、口金本体41の底面を貫通しており、管端部17から突出して設けられた電極のリード線と接続されている。
連結板部23(図2)は、2つのホルダ21同士を直線的に連結し、それらの相対変位を制限している。具体的には、2つのホルダ21同士の接近および離間、相対回転等が制限される。また、連結板部23は、2つのホルダ21と一体的に形成され、延出部33の延長線上に配されている。
【0031】
上記ホルダ21、口金本体41および連結板部23は樹脂製(ポリブチレン・テレフタレート)とされている。なお、2つのピン43は、導電部材であればよく、例えば金属製とすることができる。
本実施形態において、ホルダ21と口金25とによって、前記「管端保持部材」が構成されている。
【0032】
(1対の連結部材7(1対の第2架橋部材)について)
(1)連結部材7の位置等.
放電ランプ1は、2つの旋回部15の最外周を旋回する部分である旋回最外周部51、52と、それらの内周側を旋回する部分である次外周部53、54とを架橋する「1対の第2架橋部材」たる1対の連結部材7を有している(図1、図2)。
【0033】
連結部材7は、互いに隣り合う旋回最外周部51(52)と次外周部53(54)との相対変位を制限している。なお、連結部材7は、シリコーン樹脂系接着剤(シリコーン接着剤)によって構成されており、弾性変形できるため、旋回最外周部51(52)と次外周部53(54)とが連結部材7の弾性力に抗してわずかに相対変位することが可能である。
【0034】
図4に示すように、1対の連結部材7は、2つのホルダ21同士(2つの接着部材31)を結ぶ直線Jと、旋回中心Dにおいて直角に交差する直線K上の互いに対向する位置に設けられている。また、連結部材7の中心が直線K上に位置するようにされている。
上記直線Kが、前記「基準直線」の一例である。また、「1対の第2架橋部材」たる1対の連結部材7の各々は、「1対の第1架橋部材」たる1対の接着部材31の両方と離間して設けられている。
【0035】
(2)連結部材7の形状等.
図5に、図2におけるC部をYZ平面によって切断した断面を、−X方向(図2において左から右に向かう方向)に眺めた図を示す。
連結部材7は、旋回最外周部51と次外周部53との間隙55に設けられている。また、連結部材7は、発光管3の背面側に偏った位置に設けられている。そのため、発光管3の前面側の部分から放射される照射光が、連結部材7によって遮られないようにされている。
【0036】
連結部材7の形状を詳細に説明する。連結部材7は、上記間隙55のうち、中央領域57と背面側領域59とに配置されている。中央領域57は、旋回最外周部51と次外周部53との管径方向の中心線O,Pを結ぶ面である中央断面Eに沿って広がり、かつ、その中央断面Eによって二等分される領域である。背面側領域59は、発光管3の背面側において中央領域57に隣接するとともに、旋回最外周部51と次外周部53との両方に接する領域である。そして、中央領域57の厚さHc(中央面に垂直な方向の長さ)は、背面側領域59の厚さHbよりも小さくされている。さらに、上記間隙55のうち、中央領域57の前面側に隣接する領域は、接着部材が設けられておらず、照射光を遮らずに通過させる光通過領域とされている。
【0037】
また、中央領域57は、旋回最外周部51と次外周部53とが最も接近している箇所(「2つの最接近箇所」と称する場合がある)同士を直線的に結ぶ領域である。すなわち、連結部材7のうちの中央領域57に位置する部分は、2つの最接近箇所およびそれらの近傍に固着させられている。そのため、光透過領域を確保しつつ、旋回最外周部51と次外周部53との相対変位を効果的に制限するものとされている。また、被照射面側(下方)から連結部材7が見えにくくなるため、放電ランプ1の外観に影響しにくくなるというメリットもある。
【0038】
連結部材7のうち、中央領域57に位置する部分が、前記「中央架橋部」に該当し、背面側領域59に位置する部分が前記「背面側架橋部」に該当する。なお、本実施形態において、中央架橋部と背面側架橋部とが一体的に形成されている。
(3)連結部材7の架橋幅について.
連結部材7の旋回方向の長さ(以後、「架橋幅」と称する場合がある)について説明する。
【0039】
本実施形態において、図4に示すように、架橋幅は、旋回中心Dを中心とする開き角度で規定される。つまり、連結部材7の両端部61の各々と、旋回中心Dとを結ぶ2つの直線N1,N2のなす角度である「開き角度θ」で架橋幅が規定されるのである。
この開き角度θは、発光管3に予定外の荷重が加わった場合でも、発光管3が破損しにくくなるように、2種類の試験の結果に基づいて決定される。2種類の試験は、「引張り力測定試験」と「強度試験」とであり、前者の結果に基づいて放電ランプ1の強度がどれくらい必要であるか、すなわち「必要強度」が決定され、後者の結果に基づいて必要強度を達成するための「開き角度θ」が決定される。
【0040】
(3−1)引張り力測定試験について.
引張り力測定試験は、被験者が、上方に設置された灯具に口金25が固定された放電ランプ1をどれくらいの力で引っ張るかを測定する試験である。この試験では、放電ランプ1が壊れそうだと被験者が判断した時点で手を離してもらうようにされている。つまり、灯具から放電ランプ1を取り外す方法を知らない使用者が、放電ランプ1を取り外そうと試みて発光管3を前面側(下方)に引っ張る状況を模している。その際に、発光管3を前面側に引っ張る力が、上記「予定外の荷重」の具体例とされている。なお、上記試験時において、各口金25が径方向および軸方向へ移動しないように固定されている。
【0041】
この試験において、被験者が、旋回最外周部51のうち、前述の直線K上に位置する部分である直交位置部65を掴んで、前面側(この場合は下方)に引っ張るようにされる。それは、直交位置部65がホルダ21等から離れた位置にあり、他の部分よりも持ちやすいと推測されるからである。
図6、図7に、試験結果のグラフと統計値を示す。また、図6には参考値として正規分布を曲線66で示す。棒グラフで表した試験結果は、概ね正規分布に従っていることが分かる。平均値は45.3(N)であるが、個人差を考慮して、標準偏差(σ)を3倍した値を平均値に加えた値(図において「平均値+3σ」と記載)である75.2(N)が、放電ランプ1の「必要強度」とされる。すなわち、放電ランプ1の強度が75.2(N)であれば、上述の状況で発光管3が被照射面側に引っ張られても、統計的に99.87%の確率で発光管3の破損を防ぐことができるのである。なお、上記試験結果によって得られた荷重は、2つの直交位置部65に加わる荷重の合計値に相当する。
【0042】
(3−2)発光管3の破損について
ここで、直交位置部65に被照射面側(前面側)に向かう荷重が加わった場合に、発光管3がどのような挙動を示すかについて説明する。
図8に、連結部材7が設けられていない放電ランプ63を示す。この放電ランプ63は、連結部材7の有無以外は放電ランプ1と同じ構成とされている。この放電ランプ63において、発光管3の各部分がどのように変位するかを概略的に示す。なお、図8において、灯具が有する1対のソケット70を二点鎖線で模式的にあらわし、灯具本体の図示を省略する。また、1対のソケット70は、灯具に固定されて動かないものとする。
【0043】
図8において、各直交位置部65に、紙面裏側から表側に向かう方向の荷重が加わっているものとする。この荷重によって発光管3が変形させられるため、この荷重を「変形荷重」と称する。なお、通常、放電ランプ1は背面が上方に向けられるため、紙面裏側から表側に向かう方向を「下向き」あるいは「下方」と表現し、紙面表側から裏側に向かう方向を「上向き」あるいは「上方」と表現する場合がある。さらに、下向きの変位を「下降」、上向きの変位を「上昇」と表現する場合がある。
【0044】
上記変形荷重により、2つの直交位置部65は両方とも下方(図において紙面裏側から表側に向かう向き)に変位させられる。その際に、2つの旋回最外周部51,52は、わずかであるが、前述の直線J廻りに回転させられる。
その理由を具体的に説明する。2つの旋回最外周部51、52の各々は、接着部材31によって、2つのホルダ21のうちの一方に管端部17が架橋され、他方に管端内周側部37が架橋されている。詳細には、管端部17において一方のホルダ21の筒状部27に架橋され、管端内周側部37において他方のホルダ21の延出部33に架橋されている。つまり、2つの旋回最外周部51、52は、互いの管端部17と管端内周側部37とが架橋され、円環状をなしている。しかしながら、接着部材31の剛性は発光管3よりも低いため、管端部17と管端内周側部37との架橋部分において折れ曲がりやすくなっているのである。なお、接着部材31を構成するシリコーン接着剤は弾性変形するため、2つの旋回最外周部51が接着部材31の弾性力に抗してわずかに回転することとなる。
【0045】
すなわち、上述の予定外の荷重が加わった場合には、接着部材31は、旋回最外周部51、52の直線J廻りの回転を十分に抑制することが困難なのである。
そして、直交位置部65が下降する向きに旋回最外周部51(52)が回転変位させられると、その旋回最外周部51(52)と連続する次外周部54(53)も同方向に回転変位させられるため、直交位置部65の内周側に隣り合う部分67が上昇させられる。同様な回転変位は回転角度が小さくなりつつもさらに内周へと伝達され、上記部分67の内周側に隣り合う部分69が下降する向きに、回転変位させられる。全体的に見ると、2つの旋回部15が、主に外周側の部分において互いに逆方向に回転変位させられている。
【0046】
しかしながら、2つの旋回部15は管中央部11と連続しており、2つの旋回部15が互いに逆方向に回転変位することが内周側で制限されている。そのため、回転量は外周側ほど大きく、内周側ほど小さくなる。つまり、2つの旋回部15が互いに逆の向きに回転するように、発光管3が撓んでいるのである。さらに変形荷重が大きくなり、発光管3の撓みによって変形可能な限度を超えると、発光管3が破損してしまう。なお、上述の状況において、屈曲部19が破損する場合が多い。以上で述べたように、連結部材7が設けられていない場合、誤った取り扱いによって発光管3が破損する虞がある。
【0047】
本実施形態において、発光管3の破損は、発光管3の構成材料たるガラス管が割れることであるものとする。よって、電極の構成部品たるリード線が断線したり、発光管3内に塗布された蛍光体層が破損したりすることは、発光管3の破損に含まれないものとする。
なお、発光管3の外径(図14のα)が小さい場合(例えば、200mm以下)は、上述の破損は生じにくい。それは、半径が小さく管中央部11付近(例えば、屈曲部19)に加わるモーメントが小さいためだと考えられる。それに対して、発光管3の外径が大きい場合(例えば、200mm以上)は、半径が大きく管中央部11付近(例えば、屈曲部19)加わるモーメントが大きくなるため、上述の破損が生じやすい。したがって、発光管3の外径が200mm以上の(2つの直交位置部65の離間距離(図14のβ)が、160mm)の放電ランプ1に、連結部材7を設けることが好適である。
【0048】
なお、外径の上限は特にはないが、例えば、発光管3の次外周部53,54の内周側に連結部材を設けない態様とするためには、発光管3の外径が500mm以下であることが望ましい。
発光管3の外径は、両管端部17同士(詳細には、2つの旋回部15の終端部同士)を結ぶ直線上の長さ寸法(図14の「α」)とされる。
【0049】
(3−3)強度試験について.
強度試験は、2つの口金25を固定した状態で、2つの旋回最外周部51を前面側に変位させる荷重(変形荷重)を加え、発光管3が破損する荷重の大きさを測定する試験である。また、この試験において、上記引張り力測定試験と同様の理由で、2つの直交位置部65に互いに等しい大きさの荷重が加えられる。具体的には、2つのフックをそれぞれ対向する直交位置部65に引掛け、2つのフックを紐で前面側(被照射面側)に引張り、所定の荷重を加えるというものである。
【0050】
下記試験結果には、総荷重(2つの直交位置部65に加わる荷重の合計)を示す。
図9に、強度試験結果のグラフを、図10、図11に強度試験結果の数値を示す。なお、開き角度θが「0度」になっているデータは、第2架橋部材たる連結部材7が設けられていない状態のデータである。
図9において、横軸は開き角度θ、縦軸は荷重の大きさFを示している。
【0051】
(3−2−1)開き角度θが0度〜6度の範囲について.
まず、連結部材7の開き角度θが0度以上6度以下の範囲の結果について説明する。
折れ線71は、放電ランプ1の平均強度を示している。連結部材7の開き角度θが0度以上6度以下の範囲において、開き角度θの増加に伴い放電ランプ1の平均強度が増加している。この平均強度は、4回の試験によって得られた4つの値(図11)を平均したものである。また、折れ線71には、誤差範囲73を付している。
【0052】
折れ線75は、平均強度から標準偏差σを3倍した値を引いたものであり、99.87%の確率で強度が保証される値であるため「保証強度」と称する。この折れ線75によって示される保証強度が、前述の「必要強度:75.2(N)」以上になるように開き角度θが決定される。すなわち、折れ線75が75.2(N)以上になるのは、開き角度θが4度以上の範囲である。
【0053】
そして、連結部材7の開き角度θを4度以上にすることにより、灯具から放電ランプ1を取り外す方法を知らない使用者が、発光管3を被照射面側(前面側)に引っ張ることによって放電ランプ1を取り外そうと試みる状況で、ほぼ確実に発光管3の破損を防ぐことができる。なお、開き角度θが4度未満であっても、発光管3を破損しにくくするという効果は生じる。しかし、4度以上であれば、より効果的に発光管3の破損を防ぐことができ、また、発光管3が破損する強度のばらつきを低くすることができる。
【0054】
さらに、連結部材7の開き角度θを大きくすれば、より確実に発光管3の破損を防ぐことができる。そのため、連結部材7の開き角度θを4.76度以上、5.95度以上と大きくすることが望ましい。その反面、連結部材7の使用量が増えること、連結部材7が照明光を遮ること、見栄えが悪くなること等のデメリットが生じる。したがって、連結部材7の開き角度θを15度以下にすることが望ましく、10度以下、7度以下と小さくすることがさらに望ましい。
【0055】
図10において、開き角度θが3.3度のデータの標準偏差σが他と比較して大きい値になっている。これは、連結部材7の開き角度θが小さく、旋回方向の長さが7mmほどであり、連結部材7のわずかな量の違いによって放電ランプ1の強度が大きく変わるためだと考えられる。したがって、開き角度θを大きくすれば、ばらつきを小さくできると考えられる。
【0056】
(3−2−2)開き角度θが7度以上の範囲について.
折れ線71から分かるように、開き角度θが7度の平均強度は、6度の場合と同様な値となっている。
これは、発光管3が破損する前に、2つのホルダ21のうちの少なくとも一方のものから発光管3の管端部17が抜けてしまうためである。なお、ホルダ21と管端部17との接着面積は比較的大きくされているが、接着部材31に用いられているシリコーン接着剤と樹脂製のホルダ21との間の接着力が、シリコーン接着剤とガラス(発光管3)との接着力に比べて弱いため、ホルダ21内周部から接着部材31が外れやすいという事情がある。
【0057】
上記管端部17の抜けに対しては、例えば、ホルダ21の軸方向の長さ寸法と、ホルダ21に挿入される管端部17の長さ寸法とを大きくし、接着面積を増やすことで、管端部17の抜けを防止することができる。それにより、例えば、変形荷重の大きさが250(N)まで管端部17が抜けないようにした場合には、開き角度θを7度以上にしても管端部17が抜けず、発光管3が破損する荷重が高まるという試験結果が得られると考えられる。
【0058】
このような事実に基づけば、例えば、連結部材7の開き角度θを7度未満にすることにより、連結部材7に使用するシリコーン接着剤の過剰な使用を防止してコストの増加を抑制しうる。すなわち、発光管3が破損する荷重が、ホルダ21による管端部17の保持が解除される荷重以下、あるいは、保持が解除される荷重よりも少し大きくなるように、連結部材7の開き角度θの上限を設定することで、コストの増加を抑制しうるのである。
【0059】
ところで、発光管3が破損するよりも、ホルダ21から発光管3の管端部17が抜けてしまうほうが好ましいと考えることもできる。発光管3が破損すると、ガラスの破片が床に落下することとなるので、掃除をする必要が生じる。それに対して、発光管3が破損する前にホルダ21から管端部17が抜ければ、そのような掃除の手間が省ける。発光管3が破損しても、管端部17が抜けても、いずれにせよ放電ランプ1は使用できなくなるのであるから、掃除が不要となるほうが好ましいのである。したがって、強度試験では、開き角度θを6度以上にしても、放電ランプ1の強度が変わらないという結果となっているが、発光管3の破損を防ぐという点では、7度以上でも目的は達成できる。
【0060】
さらに、本実施形態の放電ランプ1は、予定外の荷重が大きい場合に、積極的に管端部17の保持を解除するようにされていると考えることもできる。
強度試験において、開き角度θが7度の平均強度が約190(N)であるので、ホルダ21による管端部17の保持が解除される荷重である保持解除荷重が約190(N)になっている。そして、開き角度θが7度以上にされた発光管3に約190(N)未満の荷重が加わった場合、管端部17の保持が解除されず、かつ、発光管3が破損しない。一方、約190(N)以上の荷重が加わった場合、管端部17の保持が解除され、発光管3の破損が未然に防止されることとなる。
【0061】
保持解除荷重の大きさは約190(N)に限られず、目的に応じて変更することができる。例えば、ホルダ21および管端部17の接着面積を減少させることにより、保持解除荷重を低くして(例えば、150(N))、より小さな荷重で保持が解除されるようにすることもできる。
なお、連結部材7が設けられていない場合、発光管3の平均強度は51(N)であるため、51(N)を超え、かつ、保持解除荷重約190(N)よりも小さい変形荷重が加わると、管端部17の保持が解除される前に発光管3が破損することとなる。
【0062】
(3−2−3)発光管3の外径の影響について.
この強度試験において、発光管3が破損するのは、連結部材7が弾性変形し、発光管3が弾性的に撓める限度を超えて変形させられたからである。
ここで、直交位置部65に作用する力について検討する。まず、直交位置部65を下降させる向きに荷重Fdが加えられている。その荷重によって旋回最外周部51,52が回転させられると、その回転を抑制して発光管3の変形を抑制する3種類の変形抑制力が発生する。その3種類の変形抑制力とは、発光管3の撓みによる変形抑制力Fa、接着部材31の弾性変形による変形抑制力Fbおよび連結部材7の弾性変形による変形抑制力Fcである。これら3種類の変形抑制力Fa,Fb,Fcは、直交位置部65を上昇させる向きの力(下降を抑制する向きの力)であり、また、直交位置部65に作用する大きさとする。
【0063】
そして、発光管3が弾性的に撓める限度内の変形で、上記変形抑制力Fa,Fb,Fcの和が、荷重Fdと等しくなる場合には、発光管3は破損しないこととなる。この試験では、発光管3および接着部材31は同一の条件にされているので、連結部材7の開き角度θを変えることによって、連結部材7が発生させる弾性力の大きさを変化させ、変形抑制力Fcの大きさを変化させることができる。なお、発光管3の変形時に、連結部材7が弾性変形(せん断変形)させられることから、連結部材7の開き角度θを変えることによって、連結部材7のばね定数(せん断ばね定数)を変えることができると考えられる。
【0064】
すなわち、連結部材7の開き角度θを大きくすれば、連結部材7のばね定数が大きくなり、荷重Fdが加わった際の発光管3の変形(具体的には、直交位置部65とその内周側の部分67との相対変位)に対して発生する変形抑制力Fcが大きくなるため、発光管3の変形量を小さくすることができるのである。
さらに、発光管3の外径を変えた場合について検討する。
【0065】
発光管3の外径が大きい場合は、外径が小さい場合と比べて、発光管3の変形に対して発生する変形抑制力Fa,Fbが小さくなる。それは、旋回最外周部51,52は、それの回転軸線となる直線J上(あるいはその近傍)で接着部材31によって支持されており、直交位置部65が直線Jから離れるほど、モーメントの影響によって直交位置部65を上昇させる変形抑制力Fbが小さくなるためである。
【0066】
また、発光管3の撓みによる変形抑制力Faについても同様にモーメントの影響を受ける。具体的には、次外周部53等およびその内周部分の撓みを解消しようとする弾性力は、直線J上に位置する管端内周側部37において、旋回最外周部51等の回転を抑制する向きに作用するのであるが、モーメントの影響によって直交位置部65を上昇させる変形抑制力Faが小さくなるのである。さらに、発光管3の外径が大きくなるほど、発光管3の周長が長くなり、特に、次外周部53等およびその内周部分が小さい荷重で撓みやすくなることも影響する。
【0067】
したがって、発光管3の外径が大きくなるにつれて、連結部材7による架橋幅を増やすことにより、変形抑制力Fa,Fbが減少する影響を受けにくくなると考えられる。例えば、発光管3の変形量が比較的小さい状態でも、その変形を抑制する連結部材7の弾性力が比較的大きくなり、変形を抑制しやすくなる。本実施形態において、連結部材7による架橋幅は、開き角度θによって規定されている。そのため、発光管3の外径に応じて連結部材7による架橋幅を適切なものとすることができ、前述のような予定外の荷重が旋回最外周部51,52に加わった場合でも、発光管3を破損しにくくすることができる。
【0068】
(3−2−4)連結部材7の位置の影響について.
本実施形態の放電ランプ1では、基準直線たる直線Kが、直線Jと直交するものとされている。これは、前述のように変形荷重が加わった際に旋回最外周部51,52が直線J廻りに回転するため、その回転を効率よく抑制するためには直線Jから可及的に遠い箇所を架橋することが望ましいためである。
【0069】
しかしながら、直線Kが直線Jと直角に交差していることは必要不可欠な事項ではなく、略直角に交差していれば、直角に交差している場合と同等の結果が得られると考えられる。
ここで、単純にモデル化するために、旋回中心Dを中心とする仮想的な半円と直線Kとの交点と、直線Jとの離間距離Uを考える。上記半円の半径をR、直線Kと直線Jとの交差角度をφとすると、次式の関係が得られる。
【0070】
離間距離U=R・sinφ ・・・ (式1−1)
正弦値は、角度変化に対する変化が、0度、90度、180度等の付近において、他と比較して(例えば、45度付近)小さいものとなる。よって、90度付近での交差角度の変化が上記離間距離Uに与える影響は比較的小さくなっている。例えば、交差角度φが80度である場合、離間距離Uは0.985・Rとなる。
【0071】
離間距離Uの減少により、以下の2つの理由によって前記変形抑制力Fcが低下する。ここでは交差角度φが80度である場合を例にして説明する。
第1に、離間距離Uの減少により、連結部材7の弾性力によって発生する直線J廻りのモーメントが0.985倍とやや小さくなる。したがって、交差角度φが90度の状態と同じモーメントを発生させるためには、連結部材7の開き角度θを1.015倍(=1/0.985)にすればよい。
【0072】
第2に、離間距離Uの減少により、連結部材7が架橋している箇所において、旋回最外周部51等と次外周部53等との相対変位量も0.985倍とやや小さくなる。そうすると、連結部材7の変形量も小さくなり、弾性力が小さくなる。したがって、交差角度φが90度の状態と同じ弾性力を発生させるためには、連結部7のせん断ばね定数を1.015倍(=1/0.985)にすればよい。つまり、連結部材7の開き角度θを1.015倍(=1/0.985)にすればよいのである。
【0073】
上記第1および第2の2つの理由による変形抑制力Fcの低下を補うには、概算であるが、連結部材7の開き角度θを1.031倍(=1.015の2乗)にすればよいこととなる。つまり、開き角度θを約3%増やすこととなる。そうすると、例えば、交差角度φが80度の場合に、交差角度φが90度で開き角度θが5度の場合と同等の変形抑制力Fcを得るためには、開き角度θを5.15度にすればよく、その差0.15度は概ね誤差とみなせる程度といえる。
【0074】
上述の単純なモデルが、本実施形態における連結部材7の位置の変化の影響を正確に反映しているわけではない。しかしながら、旋回最外周部51等は半円状をなしており、直線Kと直線Jとの交差角度が90度の付近において、交差角度の変化に対して連結部材7の直線Jからの離間距離の変化が小さい点は共通している。
したがって、直線Kと直線Jとの交差角度が80度以上であれば、連結部材7の開き角度θを変えなくとも、あるいは、開き角度θをわずかに増やすだけで、交差角度が直角の場合と同等の強度が得られると考えられる。よって、本実施形態において、「略直角」とは、交差角度が80度以上(80度〜90度)であるものとする。なお、「略直角」を交差角度が85度以上とすることもできる。
【0075】
このように、直線Kと直線Jとの交差角度が80度以上になるように連結部材7を設けることができれば、発光管3の変形を効果的に抑制するとともに、製造工程の自由度を高め、製造時の労力やコストを抑制することができる。
なお、交差角度が80度未満であっても、上記離間距離Rや旋回最外周部51等と次外周部53等との相対変位量の減少分を補うように開き角度θを設定すれば、上記交差角度が80度以上の場合と同等の変形抑制効果が得られると考えられる。
【0076】
(3−2−5)放電ランプ1の各部の寸法について.
試験に用いた放電ランプ1は、発光管3の外径α(図14参照)が312mm、2つの直交位置部65の離間距離β(図14参照)が250mm(2つの連結部材7の外周側の部分間の距離でもある)とされている。また、2つの旋回部15の旋回数は2周、発光管3の管径は20mm、管壁厚さが1.0mmである。なお、発光管3は、湾曲させられることによって旋回径方向の管径がわずかに(0.5mm程度)小さくなることがある。屈曲部19において、発光管3を構成するガラス管のアスペクト比は、0.8(旋回軸線方向の管径は20mm)とされている。
【0077】
また、2つの旋回部15の互いに隣り合う部分の間隙(例えば、図5のL)は6.5mm(5.5mm〜7.5mm)とされている。さらに、連結板部23の幅と厚さは、それぞれ17mm、2mmとされている。
連結部材7の中央領域57の厚さHc(図5)は、1mm、背面側領域59の厚さHbは、8mmとされている。硬化したシリコーン接着剤の「デュロメータ硬さ」は、JIS6253準拠の硬度計(タイプA)による測定結果が「50〜60」とされている。なお、硬度計は、「ミツトヨ社製ハードマチックHH−332」が使用されている。
【0078】
なお、図1,図2等に示した放電ランプ1は、発光管3の外径が283mmのものであり、試験に用いたものと外径や旋回部15の旋回数が異なるものとされている。しかし、発光管3の管径、管壁厚さ等は同じであり、図1,図2等に示した放電ランプ1の旋回部15を延長して旋回数を2周にすれば、試験に用いたものと同様の寸法となる。
(4)連結部材7の形成方法について.
連結部材7の形成方法について説明する。
【0079】
連結部材7の両端部61の各々の面を形成する2つの側板部材と、連結部材7の前面を形成する底板部材とを有する冶具を準備する。2つの側板部材の前面側の部分は、底板部材によって連結されている。
その冶具を、旋回最外周部51と次外周部53との間隙55であって、直線K上に位置する箇所である架橋箇所に設置する。冶具と旋回最外周部51および次外周部53とによって包囲された間隙にシリコーン接着剤を設定量流し込む。シリコーン接着剤は、硬化する際に、旋回最外周部51および次外周部53の両方の外周面と固着する。したがって、シリコーン接着剤が硬化した後、冶具を取り外せば連結部材7の形成が完了する。
【0080】
なお、2つの側板部材の離間距離は、上記箇所に設置された場合に、2つの側板部材と旋回中心Dとを結ぶ2つの直線のなす角度が、設定された開き角度になる距離とされている。また、底板部材の旋回径方向の長さは、旋回最外周部51と次外周部53との間隙55の距離Lよりも小さくされている。
上記底板部材を、2つの側板部材の背面側を連結する天板部材に代えることもできる。その場合は、放電ランプ1の背面側を下にして、シリコーン接着剤の充填が行われることとなる。また、天板部材の旋回径方向の長さは、旋回最外周部51と次外周部53との間隙55の距離Lよりも大きくされている。
【0081】
<作用効果>
上述のように、放電ランプ1が灯具に取り付けられた状態で2つの直交位置部65が下方に引っ張られた場合に、2つの旋回部15が互いに逆方向に回転変位させられる。その際、管中央部11付近の回転変位量は小さく、旋回最外周部51の回転変位量が最も大きくなる。また、旋回最外周部51の直交位置部65と、それの内周側に隣り合う部分67との相対変位量も、部分67とそれの内周側に隣り合う部分69との相対変位量に比べて大きくなる。
【0082】
本実施形態において、連結部材7によって、旋回最外周部51(52)と、次外周部53(54)との相対変位(特に、旋回軸線方向の相対変位)が制限されている。そのため、上述の予定外の荷重が加わった場合でも、2つの旋回部15(詳細には、旋回最外周部51、52)の直線Jを回転軸線とする互いに逆方向の回転変位が抑制され、発光管3の変形量を比較的小さくすることができる。したがって、発光管3を破損しにくくすることができるのである。
【0083】
また、連結部材7は、前述の直線K上に設けられているため、旋回最外周部51と、それの内周側を旋回する次外周部53との相対回転変位を効果的に制限することができる。それは、旋回最外周部51および次外周部53は、前述したように直線J廻りに回転変位するため、直線Jから最も遠い箇所を架橋することで、他の箇所に比して小さい力で相対回転変位を制限することができるからである。
【0084】
なお、本実施形態において、発光管3のうちの異なる周回上において互いに隣り合う部分を架橋する部材(連結部材7,接着部材31と同様の機能を有する部材)は、旋回最外周部51、52と次外周部53、54との間にのみ設けられ(連結部材7,31)、次外周部53、54よりも内周側には設けられていない(例えば、部分67と部分69との間には設けられていない)。これは、第1架橋部材たる接着部材31に加えて、第2架橋部材たる連結部材7を設けることにより、効果的に発光管3の変形を抑制することができるからである。
【0085】
[変形例]
<補強部材を含む架橋部材>
上記実施形態において、連結部材7はシリコーン接着剤のみで構成されていた。それに対して、図12に示すように、第2架橋部材たる連結部材101を、補強部材103と接着部材105とによって構成することができる。補強部材103の旋回方向の長さは、前記連結部材7と同様にされている。また、補強部材103は、旋回最外周部51(52)等に沿って湾曲させられている。この補強部材103を接着部材105中に埋め込むことによって、連結部材101の剛性が増し、旋回最外周部51、52の直線Jを回転軸線とする互いに逆方向の回転変位を効果的に抑制することができる。
【0086】
補強部材103は、剛性の高い部材とすることができ、例えば、金属製(ステンレス、鋼材等)、セラミック製、ガラス製、強度の高い樹脂製(エンジニアリングプラスティック等)等とすることができる。接着部材105は、例えば、シリコーン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤等の樹脂系接着剤を用いることができる。
なお、補強部材103の長さを前記連結部材7よりも短くすることや、補強部材103を複数に分割することもできる。さらに、補強部材103を空洞にしてもよいし、補強部材103が接着部材105の前面側まで貫通していてもよいし、接着部材105が補強部材103を挟んで二分されていてもよい。
【0087】
<板状部材を含む架橋部材>
さらに、図13に示すように、第2架橋部材たる連結部材111を板状部材113と、接着部材115とによって構成することもできる。板状部材113は、旋回径方向において、旋回最外周部51および次外周部53との中心線O,P上まで延びている。また、旋回最外周部51等の外周面に沿って湾曲させられた湾曲面部117において、接着部材115によって旋回最外周部51等に接着されている。
【0088】
この連結部材111は、板状部材113の剛性を高くすることができ、旋回最外周部51、52の直線Jを回転軸線とする互いに逆方向の回転変位を効果的に抑制することができる。板状部材113は、径方向の長さを旋回最外周部51と次外周部53との離間距離Lよりも長くされている。板状部材113は、V字状に曲げられた形状とされているが、板状部材113に代えて、三角柱状の部材や、その他の形状の部材にすることができる。
【0089】
板状部材113は、剛性の高い部材とすることができ、例えば、金属製(ステンレス、鋼材等)、セラミック製、ガラス製、比較的強度の高い樹脂製(エンジニアリングプラスティック等)等とすることができる。接着部材115は、例えば、樹脂系接着材、無機系接着剤等の接着剤とすることができる。
<充填材を含む架橋部材>
図示を省略するが、第2架橋部材として、繊維が混合された樹脂系接着剤(例えば、シリコーン接着剤)によって前記連結部材7と同じ形状の架橋部材である繊維強化接着部材を形成することができる。繊維は、例えば、ガラス繊維、樹脂繊維、炭素繊維等とすることができる。シリコーン接着剤に繊維を混合することにより、架橋部材の剛性が高まり、発光管3の変形を効果的に抑制することができる。
【0090】
<その他>
(1)前記実施形態において、直線Kが直線Jと直交するものとされていたが、直角以外の交差角度にすることができる。例えば、交差角度を60度にした場合には、交差角度が90度の場合よりも発光管3の変形を抑制する効果が低下するため、架橋幅(開き角度θ)を大きくする等により効果の低下分を補うことが望ましい。なお、直線Kと直線Jとの交差角度は、45度以上が望ましく、60度以上、75度以上と90度に近いほうがさらに望ましい。
【0091】
(2)前記実施形態において、連結部材7の中心が直線K上に位置するようにされていたが、旋回方向にずれていてもよい。具体的には、連結部材7の両端部61が直線Kを挟むように設置されていればよい。
(3)前記実施形態において、連結部材7が、直交位置部65と部分67との間隙55に設けられていたが、その他の部分に設けることもできる。例えば、部分67と部分69との間に設けることができる。
【0092】
(4)連結部材7は、シリコーン接着剤以外の接着剤で形成されていてもよく、例えば、エポキシ樹脂等の樹脂系接着剤で形成することができる。
(5)発光管3の外形は、扁平な円盤状に限られず、例えば、円錐状にすることもできる。その場合には、2つの旋回部は、旋回中心を通り旋回径方向と交差する(例えば、直交する)方向に変位しながら渦巻状に旋回する形状に湾曲させられた形状とされる。
【0093】
(6)前記実施形態において、管端部17が、旋回方向に沿って形成されていたが、旋回方向と異なる方向に延びるものとされていてもよい。例えば、旋回部の外周側端部において発光管を屈曲させ、管端部が旋回径方向の外周側に向かって延びる形状とすることや、発光管の背面側に向かって延びる形状とすることができる。また、管端部が長い場合、ホルダから管端部の一部分がはみ出していてもよい。
【0094】
(7)前記実施形態において、発光管3のうちの旋回径方向において互いに隣り合う部分の間隙は均等にされていたが、均等でなくともよい。例えば、外周側の間隙を内周側と比して大きくしたり、小さくしたりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の放電ランプは、管中央部を中心として渦巻状に旋回する形状の平面視二重渦巻形の発光管を備えた放電ランプに利用できる。
【符号の説明】
【0096】
1:放電ランプ
3:発光管
5:管端連結具
7:連結部材(第2架橋部材)
11:管中央部
15:旋回部
17:管端部
21:ホルダ
25:口金
31:接着部材(第1架橋部材)
37:管端内周側部
51、52:旋回最外周部
53、54:次外周部
61:両端部
65:直交位置部
70:ソケット
101:連結部材
111:連結部材
D:旋回中心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管中央部を旋回中心として両管端部の各々に向かって平面視二重渦巻状に1周以上旋回する形状の発光管と、
前記発光管の前記両管端部の各々と、前記発光管のうちの前記両管端部の各々の内周側を旋回する部分とを架橋してそれらの相対変位を制限する1対の第1架橋部材と、
前記発光管の旋回最外周部とそれの内周側を旋回する部分とを架橋してそれらの相対変位を制限する2つの部材であって、旋回方向において前記1対の第1架橋部材の両方と離間し、かつ、平面視において前記旋回中心を通る直線である基準直線上の2つの箇所に設けられた1対の第2架橋部材と
を含むことを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記基準直線が、前記1対の第1架橋部材同士を結ぶ直線との交差角度が45度以上になるものである請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記基準直線が、前記1対の第1架橋部材同士を結ぶ直線と略直交するものである請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項4】
前記第2架橋部材の旋回方向両端部間の距離が、平面視において、前記両端部と前記旋回中心とを結ぶ2つの直線のなす角度が4度以上15度以下になるものとされた請求項3に記載の放電ランプ。
【請求項5】
前記第2架橋部材が、
前記発光管のうちの径方向に隣り合う部分同士の管径方向の中心線を結ぶ平面である中央断面に沿って前記隣り合う部分同士間に設けられるとともに前記中央断面によって二等分される中央架橋部と、
被照射面に対向しない背面側において前記中央架橋部に隣接して前記隣り合う部分同士間に設けられる背面側架橋部とによって構成され、
前記中央断面に垂直な方向における前記中央架橋部の厚さが、前記背面側架橋部の厚さよりも小さくされた請求項1〜4の何れか1項に記載の放電ランプ。
【請求項6】
さらに、前記両管端部の各々を保持するとともに灯具に接続されて管径方向への変位が制限される1対の管端保持部材を含み、
前記1対の管端保持部材が灯具に接続された状態で、前記旋回最外周部の前記1対の第1架橋部材同士を結ぶ直線と前記旋回中心において直交する直交線上の2箇所をそれぞれ被照射面側に変位させて前記発光管を変形させる荷重を変形荷重とした場合において、
前記1対の管端保持部材が、前記変形荷重の値が設定値以上になった場合に、前記両管端部の少なくとも一方の保持を解除するものであり、
前記1対の第2架橋部材によって前記2箇所が架橋されていない場合には、前記発光管が破損する前記変形荷重の値が前記設定値以下になり、
前記1対の第2架橋部材によって前記2箇所が架橋されている場合には、前記発光管が破損する前記変形荷重の値が前記設定値よりも大きくなる請求項1〜5の何れか1項に記載の放電ランプ。
【請求項7】
さらに、前記両管端部の各々を保持するとともに灯具に接続されて管径方向への変位が制限される1対の管端保持部材を含む請求項1〜5の何れか1項に記載の放電ランプ。
【請求項1】
管中央部を旋回中心として両管端部の各々に向かって平面視二重渦巻状に1周以上旋回する形状の発光管と、
前記発光管の前記両管端部の各々と、前記発光管のうちの前記両管端部の各々の内周側を旋回する部分とを架橋してそれらの相対変位を制限する1対の第1架橋部材と、
前記発光管の旋回最外周部とそれの内周側を旋回する部分とを架橋してそれらの相対変位を制限する2つの部材であって、旋回方向において前記1対の第1架橋部材の両方と離間し、かつ、平面視において前記旋回中心を通る直線である基準直線上の2つの箇所に設けられた1対の第2架橋部材と
を含むことを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記基準直線が、前記1対の第1架橋部材同士を結ぶ直線との交差角度が45度以上になるものである請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記基準直線が、前記1対の第1架橋部材同士を結ぶ直線と略直交するものである請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項4】
前記第2架橋部材の旋回方向両端部間の距離が、平面視において、前記両端部と前記旋回中心とを結ぶ2つの直線のなす角度が4度以上15度以下になるものとされた請求項3に記載の放電ランプ。
【請求項5】
前記第2架橋部材が、
前記発光管のうちの径方向に隣り合う部分同士の管径方向の中心線を結ぶ平面である中央断面に沿って前記隣り合う部分同士間に設けられるとともに前記中央断面によって二等分される中央架橋部と、
被照射面に対向しない背面側において前記中央架橋部に隣接して前記隣り合う部分同士間に設けられる背面側架橋部とによって構成され、
前記中央断面に垂直な方向における前記中央架橋部の厚さが、前記背面側架橋部の厚さよりも小さくされた請求項1〜4の何れか1項に記載の放電ランプ。
【請求項6】
さらに、前記両管端部の各々を保持するとともに灯具に接続されて管径方向への変位が制限される1対の管端保持部材を含み、
前記1対の管端保持部材が灯具に接続された状態で、前記旋回最外周部の前記1対の第1架橋部材同士を結ぶ直線と前記旋回中心において直交する直交線上の2箇所をそれぞれ被照射面側に変位させて前記発光管を変形させる荷重を変形荷重とした場合において、
前記1対の管端保持部材が、前記変形荷重の値が設定値以上になった場合に、前記両管端部の少なくとも一方の保持を解除するものであり、
前記1対の第2架橋部材によって前記2箇所が架橋されていない場合には、前記発光管が破損する前記変形荷重の値が前記設定値以下になり、
前記1対の第2架橋部材によって前記2箇所が架橋されている場合には、前記発光管が破損する前記変形荷重の値が前記設定値よりも大きくなる請求項1〜5の何れか1項に記載の放電ランプ。
【請求項7】
さらに、前記両管端部の各々を保持するとともに灯具に接続されて管径方向への変位が制限される1対の管端保持部材を含む請求項1〜5の何れか1項に記載の放電ランプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−251262(P2010−251262A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102451(P2009−102451)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]