説明

放電ランプ

【課題】発光管とこれに連設された封止管とからなる放電容器と、前記封止管内に配設されたガラス部材と、前記電極の電極軸が前記ガラス部材の外周に沿って配置された金属箔によって外部リードと電気的に接続されてなる放電ランプにおいて、金属箔と電極軸との接合強度を増して、特に、封止工程時に金属箔が電極軸から剥離することのない構造を提供することにある。
【解決手段】前記金属箔が長尺帯状で、その長手方向の中央部で電極軸に機械的に固着され、その両端側が折曲されてガラス部材に沿って延在し、後端が外部リードに接合されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放電ランプに関するものであり、特に、金属箔を用いて電極に大電流を流す放電ランプに係わるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板、液晶ディスプレイ用の液晶基板、プリント基板などを露光する露光装置の紫外線照射光源としては、金属箔を用いて電極に給電する放電ランプが用いられている。
この種のランプにおいては、電極に大電流を流すために複数枚の金属箔を用いたものが知られている。
たとえば、特開平8−77975号公報がそれであって、図8にその構造が示されている。
【0003】
図8において、発光管52と封止管53とからなる放電容器51内に電極54(他方の電極は不図示)が対向配置され、その電極軸55の後端には集電板56が取り付けられている。該集電板56に端部で溶接された複数枚の金属箔57が、封止管53内のガラス部材58の外周に沿って後方に延在している。
前記金属箔57と集電板56は、通常、両部材間にタンタル箔を挟み、抵抗溶接によって接合される。
一方、外部リード59には断面コ字状の後部集電板60が取り付けられていて、前記金属箔57はこの集電板60の外周に溶接接合されている。
また、61は電極軸55を保持するための保持用ガラス筒体であり、62は外部リード59を保持するための保持用ガラス部材である。
なお、図9に示すように、前記金属箔57の後端は、集電板を用いずに直接外部リード59に溶接接合する構造も知られている。
【0004】
ところで上記構造の放電ランプにおいては、その封止管53の封止工程においては、封止管内に電極マウントを挿入し、電極中心軸を中心として放電容器51を回転させながら、封止管53を外部からバーナーで加熱して焼き絞り、金属箔57を挟んでガラス部材58と溶着させていくものである。
この工程において、電極54および電極軸55とともに、電極軸55に取り付けられた集電板56も回転するが、その際、該集電板56に振動が加わり、集電板56と金属箔57の溶接部に負荷がかかり、その溶接部が外れて金属箔56が剥離してしまうという問題があった。
また、図8における封止管53の後端における金属箔57と後部集電板60の溶接接合部や、図9における外部リード59との溶接接合部にも同様の付加がかかり、外れる心配もあるが、重量の大きな電極54が回転振動することによる影響が大きく、上記した集電板56と金属箔57の接合部での剥離のほうがより深刻となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−77975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、電極軸と外部リードとをガラス部材の外周に沿って延在する金属箔によって電気的に接合して、該金属箔を介して電極に給電する放電ランプにおいて、特に、製造工程中に電極軸と金属箔の接合部位で剥離することがないような構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明では、前記金属箔を長尺帯状として、その長手方向の中央部で電極軸に機械的に固着するとともに、その両端側は折曲されて前記ガラス部材の外周に沿って延在し、その後端で前記外部リードに接合されていることを特徴とする。
また、前記金属箔の長手方向の中央部に係合口が穿設されており、該係合口に挿通される係合子によって前記電極軸に機械的に固着されていることを特徴とする。
また、前記係合子が、固着ネジであることを特徴とする。
【0008】
また、前記金属箔は、その後端部に端部係合口が穿設されており、該端部係合口に挿通される係合子によって前記外部リードに機械的に固着されていることを特徴とする。
また、前記電極軸が、電極に取り付けられた電極軸本体と、該本体の後端に着脱可能に取り付けられた後部軸部材とからなり、前記係合子が該後部軸部材あって、前記金属箔は該後部軸部材によって電極軸本体に機械的に固着されているとともに、前記後部軸部材が前記ガラス部材の前面開口内に挿入されていることを特徴とする。
更には、前記金属箔は、電極軸の後端に一対の集電板に挟まれて固着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属箔の長手方向中央部を電極軸に機械的に固着し、その両側を折曲してその両端を外部リードに取り付ける構造としたから、製造工程中に振動が加わっても金属箔が電極軸から剥離することがないという効果を奏する。
そして、2枚の集電板で金属箔を挟んで電極軸に固着したことで、より一層その固着強度が増し、電気的接続も確実となり、また、金属箔に局所的な応力がかかることもない。
さらには、金属箔の後端の外部リードに対する固着も、金属箔の前端の固着手段と同様に、機械的に固着する構造としたことにより、この部分での金属箔の剥離も防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る放電ランプの部分断面図。
【図2】図1の電極マウントの分解説明図。
【図3】本発明の金属箔端部の接合構造の他の例の部分断面図。
【図4】図3の実施形態の電極マウントの分解説明図。
【図5】機械的固着手段の他の例の説明図。
【図6】他の実施例の部分断面図。
【図7】図6の要部拡大断面図。
【図8】従来技術の部分断面図。
【図9】他の従来技術の部分断面。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1はこの発明の放電ランプの封止部構造を示し、図2はその電極マウントの分解説明図である。
図1において、放電容器1は発光管2とこれに連設された封止管3とからなり、その内部の放電空間Sには、一対の電極4(他の電極は不図示)が対向配置されている。該電極4の電極軸5の後端、即ち、放電空間の反対側端、には一対の集電板6、7が設けられ、その間には金属箔8a、8bが挟持されている。
なお、以下本明細書では、特段のことわりがない限り、「前端」とは放電空間側の端をいい、「後端」とは放電空間の反対側端をいうものとする。
前記金属箔8の取り付け構造を図2で説明する。同図では、電極マウントは縦方向に記載されていて、図の下方側に電極4が位置するように描かれている。
先端に電極4が設けられた電極軸5の後端には、一対の集電板6、7が設けられている。金属箔8(8a、8b)は長尺帯状であり、その長手方向の中央部に係合口9(9a、9b)が穿設されている。これらの金属箔8a、8bは、上記一対の集電板6、7に挟まれて、係合口9を挿通して固着ネジ10を電極軸5の係合雌ネジ11に係合することによって、電極軸5に機械的に固着される。
なお、前記集電板6、7のうちの一方の集電板6は、電極軸5の後端に溶接等により予め取り付けられていてもよいし、或いは、固着ネジ10によって他方の集電板7とともに電極軸5に取り付けられるものであってもよい。
【0012】
前記金属箔8はその両端側が後方に折曲されてガラス部材12の外周に沿って後方に延在する。そして、ガラス部材12の後端には外部リード14に取り付けられた後部集電板15が当接されていて、該後部集電板15に前記金属箔8の後端が溶接等によって取り付けられている。この構造については、図8に示す従来例の構造と同様である。
上記構造によって、外部リード14→後部集電板15→金属箔8→集電板6、7→電極軸5→電極4という給電経路が形成される。
なお、図において、13は電極軸5を保持する保持用ガラス筒体であり、16は外部リード14を保持する保持用ガラス部材である。
更には、金属箔8の後端は、集電板を用いることなく、図9で示すような、外部リード14に直接溶接等により取り付ける構造であってもよい。
また、図1、2においては、金属箔8は従来例でいう4枚箔のものを示したが、これに限られるものでもなく、2枚箔構造、あるいは6枚箔構造等であってもよい。
【0013】
上記構成により、金属箔8は電極軸5に機械的に固着されるので、特に、封止工程中に振動等により負荷がかかっても電極軸5から外れるようなことがない。
【0014】
図3には、金属箔8の後端の外部リード14への従来例とは異なる取り付け構造が示されている。ただし、その基本構造は金属箔8の電極軸5への取り付け構造と同様で、金属箔8a、8bは、後部集電板21、22に挟まれて外部リード14に機械的に固着されている。
図4に示すように、金属箔8a、8bの端部には端部係合口20a、20bが穿設されている。そして、ガラス部材12の後端には一対の後部集電板21、22が設けられていて、そのうちの一方の後部集電板21には取り付け筒体21aが設けられており、該筒体21aには固着雌ネジ21bが刻設形成されている。該後部集電板21の取り付け筒体21aは保持用ガラス筒体12の後部開口12b内に挿入される。
また、外部リード14の前端には固着ネジ14aが刻設されていて、前記後部集電板21の取り付け筒体21のネジ21bに螺合する。
そして、前記金属箔8a、8bは中央部から折曲されて保持用ガラス筒体12の外周に沿って延在し、その後端を一対の後部集電板21、22間に挟まれるように位置される。そして、外部リード14の固着ネジ14aを金属箔8a、8bの端部係合口20a、20bに挿通し、後部集電板21の固着雌ネジ21bに螺合して取り付けるものである。
【0015】
こうすることにより、金属箔8の後端での外部リード14への取り付け部も、前記前端での電極軸5への取り付け部と同様に、固着強度が増し、特に、封止工程中に振動等によって金属箔8が外部リード14から剥離するようなことがない。
【0016】
なお、上記各実施例においては、金属箔8を電極軸5に固着する手段として、電極軸5に雌ネジを刻設し、金属箔8を集電板6、7で挟んで雄ネジ10により固着する構造を示したが、固着ネジの形態はこれに限られず、例えば、図5に示すように、電極軸5に植込ネジ25を植設し、集電板6、7で金属箔8a、8bを挟んでナット26によって固着する構造であってもよい。
【0017】
更には、金属箔8を電極軸5に固着する係合子として固着ネジ10を例示したが、これに限られず、リベットを用いることもできる。この場合、電極軸5に形成した係合孔にリベットを打ち込むことによって固着するものである。
また、金属箔8に形成する係合口9は穴とは限られず、金属箔8の側方からスリットを形成するものであってもよい。
【0018】
また、金属箔8は、集電板6、7を介して電極軸5に固着する構造としたが、必ずしも集電板6、7を必要とするわけではなく、ランプが小型である場合などには直接金属箔8を固着する構造であってもよい。
なお、この点については、図4に示す、金属箔8の後端部の外部リード14への固着構造でも同様である。
【0019】
図6、7に更に別の実施例が示されている。
この実施例では、電極軸が集電板の後方にまで延びていて、ガラス部材に設けた開口内にまで挿入されている構造である。
図6において、電極軸5は、電極4に取り付けられた電極軸本体5aと後部軸部材5bとからなり、これらは、図7に示すように、後部軸部材5bに形成したネジ部5cによって互いに着脱自在に取り付けられている。該後部軸部材5bは金属箔8を電極軸5に取り付ける際の係合子としても機能し、該後部軸部材5bを電極軸本体5aに係合するとき、それらの間に集電板6、7と、更にこれらの間に金属箔8a、8bを挟んで係合するものである。
また、前記後部軸部材8bはガラス部材12の前面に形成した開口12a内に挿入される。
【0020】
このような構造とすることにより、ガラス部材12の開口12aと後部軸部材8bの寸法関係を適宜に選択することによって、電極軸5がガラス部材12によって動きが抑制されて、特に、封止工程時に不必要に動くことがない。
【0021】
なお、上記各実施例の構造を示す各図面の記載は、模式的なものであって、各部材の寸法等を正確に表すものではなく、特に、金属箔8の厚さは図面上で明瞭にするために誇張されて描かれている。実際の厚さは20〜50μm程度であって、集電板6、7間に挟んだ構造のとき、両集電板間には金属箔の枚数分の間隙しかできず、その間にガラスが侵入していくようなことはない。
【0022】
以上のように、本発明によれば、長尺帯状の金属箔の中央部で電極軸に機械的に固着し、その両端側を折曲してガラス部材の外周に沿って延在させ、その後端部でリード部に接合する構成としたので、金属箔と電極軸との接合強度が強固になり、特に、封止工程時に回転させてバーナー加熱する際にも金属箔が電極軸から剥離するようなことがない。
その機械的固着手段として、係合子を金属箔の係合口に挿通させて電極軸に取り付ける構造であるので、その固着作業がきわめて容易になる。
更に、金属箔を電極軸に固着する際に、一対の集電板に金属箔を挟んでいるので、固着強度が強く、電気的接続も確実なものとなり、金属箔に局部的な応力がかかることもない。
【符号の説明】
【0023】
1 放電容器
2 発光管
3 封止管
4 電極
5 電極軸
5a 電極軸本体
5b 後部軸部材(係合子)
5c ネジ部
6、7 集電板
8(8a、8b) 金属箔
9(9a、9b) 係合口
10 固着ネジ(係合子)
11 係合雌ネジ
12 ガラス部材
12a 前面開口
13 電極軸保持用ガラス筒体
14 外部リード
15 後部集電板
16 外部リード保持用ガラス筒体
21、22 後部集電板
25 植込ネジ(係合子)





【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に一対の電極が対向配置された発光管とこれに連設された封止管とからなる放電容器と、前記封止管内に配設されたガラス部材と、前記電極の電極軸が前記ガラス部材の外周に沿って配置された金属箔によって外部リードと電気的に接続されてなる放電ランプにおいて、
前記金属箔は長尺帯状であって、その長手方向の中央部で電極軸に機械的に固着されるとともに、両端側が折曲されて前記ガラス部材の外周に沿って延在し、その後端で前記外部リードに接合されていることを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記金属箔は、長手方向の中央部に係合口が穿設されており、該係合口を挿通する係合子によって前記電極軸に機械的に固着されていることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記係合子が、固着ネジであることを特徴とする請求項2に記載の放電ランプ。
【請求項4】
前記金属箔は、その後端部に端部係合口が穿設されており、該端部係合口に挿通する係合子によって前記外部リードに機械的に固着されていることを特徴とする請求項2に記載の放電ランプ。
【請求項5】
前記電極軸が、電極に取り付けられた電極軸本体と、該本体の後端に着脱可能に取り付けられた後部軸部材とからなり、前記係合子が該後部軸部材あって、前記金属箔は該後部軸部材によって電極軸本体に機械的に固着されているとともに、前記後部軸部材が前記ガラス部材の前面開口内に挿入されていることを特徴とする請求項2に記載の放電ランプ。
【請求項6】
前記金属箔は、電極軸の後端に一対の集電板に挟まれて固着されていることを特徴とする請求項2に記載の放電ランプ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−113784(P2011−113784A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268455(P2009−268455)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】