説明

放電ランプ

【課題】光束のランナップ時間を短縮し、発光効率を改善したカバー付き放電ランプを提供する。
【解決手段】カバー付き放電ランプは、バーナ21と、カバー22と、筺体23を備え、バーナとカバーは、ともにバーナがカバーによって包囲されるように筺体に取り付けられ、カバーは、バーナの冷点の端部を収容するための穴を備え、動作媒体は、高温アマルガム以外のアマルガムを採用して光束のランナップ時間を短縮することができ、冷点の温度が下がるため、高い発光効率も実現でき、よって、良好な省エネ効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置に関し、特に、カバー付き放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
長年、気体放電ランプは、特に、小型蛍光灯の形態で広く使用されている。従来では、一体化された安定器(CFLi)を有する小型蛍光灯を、白熱灯への後付部品として使用できることは知られている。CFLiは、寿命が長いこと、発光効率が高いことなどの利点を有する。特に、白熱灯の寿命が1500時間であるのに対し、CFLiの寿命は8000時間以上であり、また、白熱灯がワットあたり12〜15ルーメンの発光効率であるのに対し、CFLiは、ワットあたり60ルーメン以上の発光効率である。よって、CFLiの省エネのポテンシャルはかなり高い。統計データによると、照明による電力消費は、世界の電気エネルギー消費量の20%を占めており、CFLiは、省エネに対する要求に応えて広く適用されるようになってきている。
【0003】
伝統的に、小型蛍光灯は、バーナを囲うためのカバーを設けない。しかし、例えば、柔らかい光が必要な場合など、形態によっては、カバー付き小型蛍光灯(以後、カバー付きランプともいう)を採用することが必要である。図1は、螺旋バーナ11と、カバー12と、プラスチック筐体13と、基部14を有する、従来のカバーを設けた自己安定型小型蛍光灯を示す。電子安定器(図示せず)がプラスチック筐体の内部に配置されている。バーナに収容されているフィラメントは、フィラメントリードを介して電子安定器の出力ピンに接続されている。
【0004】
バーナが図1に示すような包囲型カバーの内部で作動すると、カバー内部の周囲温度は、非常に高くなり、作動中のランプのワット数やカバーの寸法により、典型的には80から90℃になる。バーナが作動する周囲温度は非常に高いため、一般的に高温アマルガムを、カバー付き小型蛍光灯用に採用し、適したHg蒸気圧を得て、高発光効率を維持する。一方、もし中温、または低温アマルガムを、カバー付きランプに採用した場合、中温、または低温アマルガムは、冷点の温度が比較的高いため、バーナの内部のHg蒸気圧が高くなる可能性がある。よって、高い発光効率を維持することが不可能である。
【0005】
しかし、高温アマルガムのHg蒸気圧は非常にゆっくり上昇する。その結果、小型蛍光灯を安定化させるのにかなりの時間がかかり、光束がランナップする時間(以後、ランナップ時間ともいう)が長くなる。
【0006】
高温アマルガムを設けたカバー付き蛍光灯のランナップ時間を短縮するため、フィラメントの近くに、ある種のインジウムの網シートを半田付けして短時間で適したHg蒸気圧に到達させる方法がある。ランナップアマルガムとして作動し、インジウムの網シートは、高温アマルガムより速くHgを解放して、適したHg蒸気圧に比較的早く到達させる。この方法により、問題を緩和し、比較的短時間で光束を最大の90%にすることができる。しかし、それでも、ランナップ時間は、中温アマルガムまたは低温アマルガムを設けた蛍光灯のそれより長い。高温アマルガムを中温アマルガムまたは低温アマルガムと比較すると、ランナップ時間が短い蛍光灯には中温アマルガムまたは低温アマルガムのほうが好ましい。
【0007】
ランナップ時間を短縮するための別の方法としては、ランプ内部に例えば、白熱電球、または発光ダイオードなどのような光源を増設して組み込むことが挙げられる。増設の光源は、蛍光灯が点灯すると作動し、より強い光を出力して蛍光灯の弱い光を補償する。よって、カバー付き小型蛍光灯の合計光束は、ランナップ時間で迅速に上昇する。蛍光灯が通常の状態で安定化すると、増設の光源装置の電源がオフになり、これは、ランプの電子安定器によって制御することができる。しかし、この方法を採用すると、製造工程が複雑化し、製造コストの増加を招く。
【0008】
さらに、特許文献1では、ランナップ時間の短い動作媒体を採用して蛍光灯の発光効率を上げる方法を開示している。特に、バーナの冷点を、シリカゲルを使ってカバーの底部に接着する。シリカゲルは、バーナで発生した熱を、カバーの底部、さらにはランプの外部まで伝達し、冷点の温度を下げることができる。この方法は、実際に効率を上げることができるが、それでも、輻射の放熱が非効率的なため、バーナの冷点は比較的高い。よって、蛍光灯は高い発光効率を達成することができない。
【0009】
これまで、カバー付き小型蛍光灯において高い発光効率と短いランナップ時間を維持できるような優れた材料が見つかっていない。カバー付きランプにとっては、ランナップ時間を短縮し、高い発光効率を維持することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許公開US7021985B2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記に鑑み、本発明の目的は、光束のランナップ時間を短縮し、発光効率を改善したカバー付き放電ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一局面によると、放電ランプ、特に、バーナと、カバーと、筺体とを含み、バーナとカバーは、バーナがカバーによって包囲されるようにともに筺体に取り付けられ、カバーにはバーナの冷点の端部を収容するための穴が設けられ、高温アマルガム以外の動作媒体がバーナ内に封止されている小型蛍光灯が提供される。
【0013】
一実施形態では、バーナに封止された動作媒体は、中温アマルガム、低温アマルガム、および液体Hgのうちの一つを含んでいてもよい。
【0014】
一実施形態では、冷点の端部とカバーの外面の間には、ランプ軸の方向に所定の間隔を有していてもよい。
【0015】
好ましくは、所定の距離は、0以上、2mm以下の範囲である。
【0016】
一実施形態では、さらに筺体の内部に配置されたバーナを点灯するための電子安定器を含んでいてもよい。
【0017】
一実施形態では、バーナは、透明な接着剤を介してカバーに固定されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施形態によると、冷点の温度をカバーの穴を使って下げることができる。よって、高い発光効率を実現し、光束のランナップ時間を短縮するために高温アマルガム以外のアマルガムを採用したとしても、良好な省エネ効果を得ることができる。
【0019】
さらに、本発明の実施形態による放電ランプを、単純、且つ経済的な方法で、電子要素、または物理的材料をさらに必要とすることなく製造することができる。
【0020】
また、本発明の実施形態による放電ランプが製造される工程の要件は、高温アマルガムを設けた放電ランプを製造する工程ほど多くない。さらにバーナの一貫した性能の制御性が改善される。
【0021】
本発明の上記および他の局面、特性、および利点は、図面に基づく下記の詳細な説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、従来の放電ランプを示す斜視図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態による放電ランプを示す斜視図である。
【図3A】図3Aは、図2に示す放電ランプのバーナを示す図である。
【図3B】図3Bは、図2に示す放電ランプのカバーを示す図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態の放電ランプによる、光束のランタイム時間を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明の一実施形態による放電ランプの結果としての環境温度とともに変化する発光効率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。説明と図面において、略同一、または同様の機能、および構成要素は、同様の参照番号で示し、構成要素の反復説明は省略していることを留意すべきである。
【0024】
理論的に、冷点の温度が下がると、たとえば、60℃以下で維持されると、上記のような問題は、中温アマルガムまたは低温アマルガムを利用することによって対処することができる。本発明の特定の実施形態を以下に説明する。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態による放電ランプを示す斜視図である。図3A、および図3Bは、図2に示す放電ランプのバーナとカバーをそれぞれ示す。
【0026】
図2は、小型蛍光灯として製作された、スパイラルバーナ21と、カバー22と、たとえば、プラスチックで形成した筺体23を含む放電ランプを示す図である。バーナ21とカバー22は、ともにバーナ21がカバー22によって包囲されるように筺体23に取り付けられている。さらに、カバー22の底部221には、バーナ21の冷点210の端部を収容する穴25が設けられている。
【0027】
バーナ21を点灯するための電子安定器(図示せず)が筺体23内部に配置されている。バーナ21内に収容されているフィラメントは、フィラメントリードを介して電子安定器の出力ピンに接続されている。バーナ21は、ランプ軸の周りを巻回して筺体23から下方(基部24から離れる方向)に延在し、その延長端部で互いに合流する2本の放電管から構成することができる。動作媒体、たとえば、アマルガムがそれぞれの放電管の内部に封止されている。本発明の一実施形態による動作媒体には、中温アマルガム、低温アマルガム、および液体水銀(Hg)のうちの少なくとも一つが含まれる。冷点210は、内部温度が最も低いバーナ21の領域であり、典型的にはバーナ21の底部、すなわち、筺体23から最も離れたバーナの部分に位置している。さらに、基部24は、筺体23を介してバーナ21に連結することができる。カバー22の端部は、たとえば、接着剤により筺体23の内壁に固定される。白熱電球と同様に、カバー22は、たとえば、ガラスなどのような設計の自由度が高い材料で、球形のカバーの形状に形成されている。
【0028】
図2に示すように、冷点210の端部が穴25に挿入されてカバー22の外部の空気に接触しているので、良好な放熱が実現される。穴25の寸法は、冷点210の挿入された端部と適合させる。図示のごとく、冷点210の端部は、カバー22の外表面と面一である。設計上の要件により、穴25に挿入された端部は、穴25のある個所に位置し、端部とカバー22の外表面との間にランプ軸の方向に所定の距離を保ってもよい。所定の距離は、良好な放熱効果が得られるよう、0から2mmの範囲内であるのが好ましい。この距離は、使用中の動作媒体や所望の発光効果によって予め設定することができる。低温アマルガムは、中温アマルガムと比較して光束のランナップ時間が短いカバー付きランプに対する耐性が高いが、低温アマルガムにとって、最適な冷点の温度(「冷点温度」ともいう)は中温アマルガムのそれより低いことは、当業者にとって明らかであろう。よって、冷点温度は、低温アマルガムを使ってランナップ時間を最短にするために、できるだけ低い方がよい。よって、低温アマルガムを使う場合には、冷点201の端部は、中温アマルガムを使ったカバー付きランプのそれよりカバー22の外表面からの距離が短くなる。一方、冷点210の端部は、冷点が損傷しないように保護する目的で、ランプから突出しないようにする。さらに、冷点は、手動で、または機械によって一般的な小型蛍光灯より長尺にして、穴25へ挿入しやすく、同時に、バーナ内のHgの蒸気圧の低減をしやすくすることができる。さらに、組み立てやすいように、透明で固形の接着剤、たとえば、透明なシリカゲルを塗布してバーナをカバーに固定することができる。
【0029】
本発明の効果を実証するために、多数のサンプルを作製し、多数の実験を行ってきた。下記の表1と図4は、実験データの一部と、図2に示す放電ランプから作製したサンプルからの光束のランナップ時間のグラフを示すものであり、Hgの含有率が10%の中温アマルガムBiSnHgを使用し、補助アマルガム(インジウムネット)を追加した。
【0030】
【表1】

【0031】
表1および図4から明らかなように、光束(単位:ルーメン)は急上昇し、サンプルが安定した光束の60%(ルーメン比60%)に達するまで、平均で49秒であった。これは、従来のカバー付きランプ(高温アマルガム、たとえばBiInHgを使った小型蛍光灯)のランナップ時間である約100秒のよりはるかに短い。
【0032】
図5は、本発明の一実施形態による、中温アマルガムを備えた放電ランプによる環境温度とともに変化する発光効率を示すグラフである。図示のごとく、標準的な環境温度25℃で試験した発光効率は比較的高く、最大の99%を超えており、省エネ効果を得やすい。
【0033】
上記のように、本発明の実施形態による小型蛍光灯の冷点が、空気に直接接触して放熱し、冷点の温度を下げるものである。本発明者らによって実施したいくつかの実験では、冷点の温度は、約60℃まで下がったが、これは、中温アマルガムを備えた小型蛍光灯に対して適したHg蒸気圧を達成するための最適な冷点温度である。よって、カバーの内側の周囲温度に関係なく中温アマルガムに対する最適な冷点が実現できるので、中温アマルガムを備えた小型蛍光灯に関しては、カバーの内部の周囲温度が非常に高くても、高い発光効率を実現できる。
【0034】
最適冷点温度が約40℃の低温アマルガム、または液体Hgに関しては、冷点温度が約60℃まで下がるので、ランプの発光効率も大幅に向上する。
【0035】
本発明によると、カバー付き放電ランプの冷点温度を、カバーの内部の周囲温度にさらされることのない比較的低温に維持することができる。よって、カバー付きの放電ランプについては、高い発光効率が実現できるだけでなく、高温アマルガム以外の動作媒体、たとえば、中温アマルガム、低温アマルガム、または液体Hgも採用して光束のランナップ時間を短縮することができる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態を図示および説明したが、当業者は、添付の特許請求の範囲の精神と範囲から逸脱することなく、本発明に対しさまざまな変更を加えることができると考えられる。
【符号の説明】
【0037】
21 バーナ
22 カバー
23 筺体
24 基部
25 穴
210 冷点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナと、カバーと、筺体を備え、前記バーナと前記カバーは、前記バーナが前記カバーによって包囲されるようにともに前記筺体に取り付けられた放電ランプであって、前記カバーは、前記バーナの冷点の端部を収容するための穴を備え、前記バーナ内に封止された動作媒体は高温アマルガムを備えていない放電ランプ。
【請求項2】
前記動作媒体は、中温アマルガム、低温アマルガムおよび液体Hgのうちの一つを含む請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記冷点の前記端部と前記カバーの外表面の間には、ランプの軸線の方向に所定の間隔を有する請求項1または2に記載の放電ランプ。
【請求項4】
前記所定の距離は、0mmより長く、2mm以下の範囲である請求項3に記載の放電ランプ。
【請求項5】
前記筺体の内部に配置された前記バーナを点灯させるための電子安定器を備えた請求項1または2に記載の放電ランプ。
【請求項6】
前記バーナが、透明な接着剤を介して前記カバーに固定されている請求項1または2に記載の放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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