説明

放電ランプ

【課題】点灯中、封止管の破裂を防ぐ信頼性の高い封止構造をもった放電ランプを得る。
【解決手段】放電ランプの封止管20内において、金属箔36と溶接する内側金属リング26を電極支持棒22と挿通させた状態で接合させ、内側金属リング26の周囲には外側巻き箔46を巻く。外側巻き箔46は、内側金属リング26を越えて電極側ガラス管24まで延在し、外側巻き箔46の電極側端部46Tは、内側金属リング26よりも電極軸Eに沿って電極側に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光管両端に連設される封止管内に電極保持構造を設けた放電ランプに関し、特に、放電ランプの封止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ショートアーク型等の放電ランプでは、電極を封じた発光管の両端にガラス製の封止管が一体的に形成されており、封止管内では、電極を支持する電極支持棒が筒状ガラス管によって保持される。金属箔による封止構造では、封止管を熱によって縮径させ、封止管をガラス管と溶着させる。これにより、金属箔が封着され、発光管内が気密状態になる。
【0003】
半導体、液晶製造分野では、生産効率を向上させるため、ショートアーク型放電ランプの大電力化が進んでいる。そのため、定格電力の大きな放電ランプでは、電極支持棒に金属リングなどの環状部材を固定させ、複数の金属箔を環状部材に溶着させる。そして、金属箔、環状部材、電極支持棒を介して電力が電極に供給される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
金属リングなどの熱膨張率は、ガラス管と異なる。そのため、封止工程でガラス管に封止管を溶着させると、環状部材とガラス管の接触面付近に歪みが生じ、この歪みがランプ破裂の原因となる。このような歪みの発生を防ぐため、例えば、環状部材の両面に同じ寸法同サイズの金属製円板箔を配置させ、ガラス部材と環状部材との溶着を防ぐ(特許文献2、3参照)。
【0005】
また、ガラスから成る封止管と金属リングが接触すると、封止工程において径方向熱膨張率の違いから封止管に応力がかかる。そのため、金属リングを覆うように巻き箔を設け、金属リングが封止管と接触するのを防ぐ(特許文献4参照)。巻き箔は金属リング周りだけを覆い、巻き箔の電極側端部は金属リングを超えず、電極側ガラス管まで延びていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−115414号公報
【特許文献2】特開平8−315780号公報
【特許文献3】特開2000−58000号公報
【特許文献4】特開2010−198947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガラス管、金属リング等は、加工作業において面取り作業などを行なうため、その周縁部分は僅かに丸みを帯びている。そのため、封止工程後に、金属リング、電極側ガラス管、封止管との間には微小な隙間が生じる。この隙間は、ガラスを熱して軟化させることにより成形されるので、その形状は安定せず、電極側ガラス管と封止管との間にクサビ状の隙間が生じやすい。
【0008】
この隙間の圧力は、電極支持棒、金属リングとガラス管、封止管との間で完全な密着状態にならないことから、放電空間内圧力と等しくなる。そのため、ランプ点灯時に、金属リングと電極側ガラス管との径方向熱膨張率の違いによって応力が生じると、クサビ状の隙間部分からクラックが発生し、封止管の破裂を招く恐れがある。
【0009】
したがって、熱膨張率の差によって生じる応力に起因した封止管の破裂を防ぐことが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の放電ランプは、発光管内の電極を支持する電極支持棒と、電極支持棒が挿通され、石英ガラスなどから成る封止管と溶着するガラス管と、電極支持棒が接続され、軸方向に沿って配設された金属箔と電極支持棒とを電気的に接続させる導電性円板部材とを備える。
【0011】
例えば、放電ランプはショートアーク型放電ランプとして構成される。導電性円板部材としては、ここでは穴のない板上部材あるいは穴のある環状部材を構成することが可能であり、例えば金属リングなどを電極支持棒に挿通させる。
【0012】
導電性円板部材とガラス管との間には、円板箔を接触配置させ、電極支持棒が円板箔に挿通するようにしてもよい。例えば、円板箔は、薄い金属箔によって構成することができる。
【0013】
本発明の放電ランプは、導電性円板部材の外周面を覆う金属箔等の巻き箔を備える。そして、巻き箔の電極側端部は、軸方向に沿って金属箔端部および導電性円板部材よりも電極側に位置する。
【0014】
本発明では、巻き箔が金属箔さらには導電性円板部材を超えてガラス管にまで延びており、巻き箔の電極側端部(周縁部)は、導電性円板部材の外周面の軸方向範囲に収まらない。これにより、ガラス管と導電性円板部材の熱膨張率の差によって応力が生じても、ガラス管と導電性円板部材との境界部分で発生する応力が、可撓性があって柔軟性のある巻き箔によって吸収される。
【0015】
特に、面取り加工などを行なうと、導電性円板部材、封止管、そしてガラス管との間に隙間、空隙が周方向に沿って形成される。しかしながら、巻き箔が露出している構成であれば、放電空間内の圧力が空隙に通じていても、封止管に直接応力がかかるのを防ぐことができる。また、面取り加工に関係なく、円板箔を設けた場合にも大きな空隙、隙間が形成されるが、巻き箔によって封止管に応力が集中することを防ぐことができる。
【0016】
また、巻き箔の電極側端部が、径方向に沿って導電性円板部材外周面よりも軸側に位置する、すなわち、巻き箔の電極側端部が軸側に近付くように構成することができる。これによって、封止工程において、巻き箔の電極側端部が封止管外周側に向かって入り込む構成となることを防ぎ、封止管へ応力が集中することによるクラック発生を確実に防ぐ。
【0017】
一方、本発明の他の局面による放電ランプは、封止管端部側の封止構造を特徴とし、外部の電源と電気的に接続された棒(ここでは、リード棒という)と、前記リード棒が挿通され、封止管と溶着するガラス管と、前記リード棒が接続され、軸方向に沿って配設された金属箔と前記リード棒とを電気的に接続させる導電性円板部材と、前記導電性円板部材の外周面を覆う巻き箔とを備え、前記巻き箔の電極反対側端部が、軸方向に沿って前記金属箔の端部および前記導電性円板部材よりも電極反対側に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、点灯中、封止管においてクラックが発生するのを防ぎ、信頼性の高い封止構造をもった放電ランプを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態であるショートアーク型放電ランプの概略的断面図である。
【図2】陽極側封止管の概略的断面図である。
【図3】図2の内側金属リング付近を拡大して示した断面図である。
【図4】図3の外側巻き箔付近を拡大して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態であるショートアーク型放電ランプの概略的断面図である。図2は、陽極側封止管の概略的断面図である。
【0022】
ショートアーク型放電ランプ10は、石英ガラスから成る球状発光管12内に陽極14、陰極16を対向配置させたランプであり、発光管12の両端には、石英ガラスの封止管20、60が対向するように連設されている。封止管20、60の両端は、口金80A、80Bで塞がれている。
【0023】
封止管20、60の内部には、陽極14、陰極16を支持するとともに、発光管12内の放電空間11を封止するパーツ(以下、マウント部品という)18A、18Bがそれぞれ封入されている。また、放電空間11には、水銀および希ガスが封入されている。
【0024】
図2に示すように、封止管20内部には、陽極14を支持する電極支持棒22が設けられ、電極軸E(封止管軸)の方向に沿って配設されている。電極支持棒22は、円筒状の肉厚ガラス管(以下、電極側ガラス管という)24に形成された軸穴24Aに挿通され、電極側ガラス管24によって保持される。電極側ガラス管24の発光管側端部には、封止管20との溶着を確実にするため、円筒状の凹部24Bが形成されている。
【0025】
電極支持棒22は、封止管20の端部まで延びておらず、所定間隔を置いて金属製のリード棒28が同軸的に対向配置されている。電極支持棒22、リード棒28は、円筒状のガラス管(以下、封止管端部側ガラス管という)34の両端に設けた挿入穴に軸挿され、封止管端部側ガラス管34は、電極支持棒22、リード棒28を保持する。リード棒28は、電源部(図示せず)と繋がった外部のリード線(図示せず)に接続されている。
【0026】
封止管端部側ガラス管34の両端には、金属リング26、32がそれぞれ配置され、電極支持棒22、リード棒28は金属リング26、32の軸穴26A、32Aに溶接されている。発光管12に近い金属リング(以下、内側金属リングという)26は、ディスク状の円板箔42、44に挟まれており、他方の金属リング(以下、外側金属リングという)32も同様に、ディスク状の円板箔(図示せず)を介して挟まれている。
【0027】
内側金属リング26と外側金属リング32の間には、複数の帯状金属箔36が封止管端部側ガラス管34の外表面に沿って軸方向に延び、その両端は、内側金属リング26、外側金属リング32の外周面に溶接されている。外側金属リング32は、リード棒28と金属箔36とを電気的に接続させ、内側金属リング26は、帯状金属箔36と電極支持棒22とを電気的に接続させる。これにより、電源部と接続するリード棒28から陽極14へ電力が供給される。
【0028】
内側金属リング26の両面に配置された円板箔42、44は電極支持棒22に挿通されており、それぞれ封止管端部側ガラス管34、電極側ガラス管24と密接している。円板箔42は内側金属リング26の封止管端部側表面と圧接し、円板箔44は内側金属リング26の発光管側表面と圧接している。
【0029】
内側金属リング26の外周面上には、筒状に巻かれた外側巻き箔46が設けられており、内側金属リング26とともに金属箔36の電極側端部を覆っている。一方、電極側ガラス管24の軸穴24Aと電極支持棒22との間には、内側巻き箔が巻かれている(ここでは図示せず)。
【0030】
封止管20は、封止工程時にガスバーナーなどで熱せられることによって縮径し、電極側ガラス管24、封止管端部側ガラス管34、固定ガラス管29と溶着している。これにより、封止管20内部が封止され、電極側ガラス管24、内側金属リング26、外側金属リング32、封止管端部側ガラス管34、そして固定ガラス管29を含むマウント部品18Aが、軸方向に動かないように固定される。なお、陰極側封止管60も同様に構成されている。
【0031】
図3は、図2の内側金属リング付近を拡大して示した断面図である。図4は、図3の外側巻き箔付近を拡大して示した図である。図3、4を用いて、外側巻き箔の配置構成について説明する。
【0032】
金属箔36は、軸方向に沿って内側金属リング26の外周面の軸方向範囲Tまでしか延びていない。外側巻き箔46は、金属箔36および内側金属リング26と密着するように内側金属リング26周りに巻き回されている。これにより、内側金属リング26、および金属箔36の電極側端部は、封止管20と直接接触していない。
【0033】
さらに外側巻き箔46は、内側金属リング26の外周面の軸方向範囲Tを超え、電極側ガラス管24まで延びている。したがって、外側巻き箔46の電極側端部(周縁部)46Tは、電極軸Eに沿って金属箔36さらには内側金属リング26よりも電極側、発光管側に位置する。
【0034】
このように、外側巻き箔46は、電極側端部46Tから他方の端部46Sに渡る幅をもち、内側金属リング26の軸方向範囲T、すなわちリングの厚さよりも十分に長い。このような構成により、封止管のクラック発生を防ぐことができる。
【0035】
詳述すると、内側金属リング26の電極側側面と接する円板箔44は、電極側ガラス管24よりも径が小さい。そのため、円板箔44の周囲には、空隙、隙間が僅かに形成されている。それに加え、内側金属リング26、電極側ガラス管24の面取り等の加工作業により、断面が楔状の大空隙、隙間Sが周方向に沿って形成されている。
【0036】
図4には、内側金属リング26、電極側ガラス管24、封止管20との間に形成される隙間Sが図示されている。面取り加工によって内側金属リング26、電極側ガラス管24の周縁部は丸みを帯びており、エッジ状になっていない。
【0037】
そして、この隙間Sの圧力は、放電空間内の圧力と等しい。これは、電極支持棒22と電極側ガラス管24との間に内側巻き箔48が設けられていることにより(図3参照)、材質、熱膨張率等の異なる電極側ガラス管24と電極支持棒22、円板箔44、そして内側巻き箔48とは完全に密着せずに隙間が生じる結果、隙間Sは放電空間11と連通するためである。
【0038】
このように大きな圧力のある隙間Sが形成されながらも、外側巻き箔46が隙間Sに露出することで封止管20が隙間Sに面していないため、隙間の形状は安定し、クサビ状の隙間が生じることがなく、封止管に直接圧力がかからない。また、外側巻き箔46は、その電極側端部46Tが封止管20と電極側ガラス管24との間に介在するように巻き回されており、電極側端部46Tの電極軸Eからの距離R1は、内側金属リング外周面20Mの電極軸Eからの距離R0よりも短い。すなわち、電極側端部46Tは、径方向に沿って内側金属リング外周面20Mよりも電極軸に近い位置にある。
【0039】
このような構成は、内側金属リング26の外径よりも電極側ガラス管24の外径を小さくマウント部材として用いることで形成することができる。また、内側金属リング26と電極側ガラス管24の外径を略同一として、封止工程において電極側ガラス管の外径を縮径することによっても形成することができる。このような構成とすることで、封止工程において、電極側端部46Tが封止管の外周面側に向かって入り込むことを防ぎ、電極側端部46Tを起点としたクラック発生を防ぐことができる。
【0040】
したがって、封止工程において封止管素材を縮径したときにクサビ状の隙間が生じることがなく、ランプ点灯・消灯時などの径方向の熱膨張率の相違によって内側金属リング26と封止管20との間に応力が生じても、可撓性のある外側巻き箔46が変形によって応力を吸収するため、隙間Sを起点としたクラック発生を防ぐことができる。また、内側金属リング26付近では、電極側ガラス管24、内側金属リング26、そして金属箔36すべてと密接しながらこれらをカバーしているため、内側金属リング26およびその近辺から封止管側へかかる応力集中を抑えることができる。
【0041】
このように本実施形態によれば、放電ランプ10の封止管20内において、金属箔36と溶接する内側金属リング26が電極支持棒22と挿通させた状態で接合しており、内側金属リング26の周囲には外側巻き箔46が巻かれている。外側巻き箔46は、内側金属リング26を越えて電極側ガラス管24まで延在し、外側巻き箔46の電極側端部46Tは、内側金属26よりも電極軸Eに沿って電極側に位置する。
【0042】
なお、内側金属リング26の側面に円板箔42、44を設けない構成にしてもよい。また、内側金属リング以外の導電性円板部材を金属箔および電極支持棒との間に介在させてもよい。外側巻き箔は、金属以外の導電性、あるいは絶縁性物質など任意の材料で構成してもよい。
【0043】
また、外側金属リング32に同様の外側巻き箔を構成してもよい。この場合、外側巻き箔の電極反対側端部は、金属箔36の電極反対側端部、そして外側金属リング32を越えて、環状の固定ガラス管29、口金80A側にまで延びるように構成される。
【符号の説明】
【0044】
10 放電ランプ
11 放電空間
12 発光管
20 封止管
22 電極支持棒
24 電極側ガラス管(ガラス管)
26 内側金属リング(導電性円板部材)
29 固定ガラス管(ガラス管)
32 外側金属リング(導電性円板部材)
34 封止管端部側ガラス管
36 金属箔
42、44 円板箔
46 外側巻き箔(巻き箔)
48 内側巻き箔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管内の電極を支持する電極支持棒と、
前記電極支持棒が挿通され、封止管と溶着するガラス管と、
前記電極支持棒が接続され、軸方向に沿って配設された金属箔と前記電極支持棒とを電気的に接続させる導電性円板部材と、
前記導電性円板部材の外周面を覆う巻き箔とを備え、
前記巻き箔の電極側端部が、軸方向に沿って前記金属箔の端部および前記導電性円板部材よりも電極側に位置することを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記導電性円板部材と、前記封止管と、前記ガラス管との間に形成された隙間に、前記巻き箔が露出していることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記巻き箔の電極側端部が、径方向に沿って前記導電性円板部材外周面よりも軸側に位置することを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の放電ランプ。
【請求項4】
前記電極支持棒が挿通され、前記導電性円板部材と前記ガラス管との間に接触配置される円板箔とをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の放電ランプ。
【請求項5】
外部の電源と電気的に接続されたリード棒と、
前記リード棒が挿通され、封止管と溶着するガラス管と、
前記リード棒が接続され、軸方向に沿って配設された金属箔と前記リード棒とを電気的に接続させる導電性円板部材と、
前記導電性円板部材の外周面を覆う巻き箔とを備え、
前記巻き箔の電極反対側端部が、軸方向に沿って前記金属箔の端部および前記導電性円板部材よりも電極反対側に位置することを特徴とする放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−69506(P2013−69506A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206382(P2011−206382)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000128496)株式会社オーク製作所 (175)
【Fターム(参考)】