説明

放電ランプ

【課題】発光管の封止部内の封止用ガラス部材の側面に配置された複数の金属箔と、前記ガラス部材の発光部側端面に配置された集電ディスクとを有し、該集電ディスクは、前記電極が固定された内部リードと、前記金属箔とを電気的に接続してなる放電ランプにおいて、前記集電ディスクとリードとをロウ材を用いることなく強固に接合できる構造を提供することである。
【解決手段】前記集電ディスクは、前記金属箔を挟むように重ね合せられた2枚の集電ディスクからなり、前記内部リードは、外周面に凹部が形成され、前記集電ディスクに形成された貫通孔に挿入されており、前記集電ディスクを、前記貫通孔近傍において両側から塑性変形させて、当該集電ディスクの一部を前記内部リードの凹部に挿入させて、当該集電ディスクを前記内部リードにカシメ固定したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は放電ランプに関し、特に、封止部内で金属箔と内部リードを集電ディスクを介して電気的に接続してなる放電ランプに係わるものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体基板や液晶ディスプレイ用の液晶基板を露光するのに使用する露光装置の紫外線光源として、放電ランプが使用されている。
この種の放電ランプでは、特開2007−115498号公報(引用文献1)に示されるような、封止部内で金属箔と内部リードとを集電ディスクを介して電気的に接続する構造のものが多用されている。
【0003】
図6は、従来の放電ランプの全体断面図であり、図7はその部分拡大図である。
図6に示すように、この放電ランプにおいて、石英ガラスにより形成される発光管1は、発光空間Sを囲繞する球形状の発光部2と、この発光部2の両端から外方に伸びるよう連設された筒状の封止部3とにより構成されている。
該発光管1の発光部2内には、陽極4および陰極5が互いに対向するよう配置されており、その各々は、封止部3から発光部2に管軸に沿って伸びる、例えばタングステンよりなる円柱状の内部リード6、6の先端に固定されて支持されている。そして、前記発光管1の発光部2内には、キセノン、アルゴン、クリプトン等の希ガス若しくはこれらの混合物よりなる封入ガスおよび水銀などの発光物質が封入されている。
【0004】
前記発光管1の封止部3内においては、発光部2に接近した位置に、石英ガラスよりなる内部リード保持用筒体7が配設され、前記内部リード6はこの内部リード保持用筒体7を貫通・支持されている。
上記内部リード保持用筒体7の後方には石英ガラスよりなる封止用ガラス部材8が配置されている。
そして、この封止用ガラス部材8の前端面には、前記内部リード保持用筒体7との間に挟まれるように、内部集電ディスク12が設けられている。
【0005】
そして、電極4、5を保持した内部リード6は、前記内部リード保持用筒体7を貫通し、前記内部集電ディスク12に接続されている。
一方、前記封止用ガラス部材8には、その後端面から軸方向に沿って伸びる有底孔8aが形成されており、この有底孔8aには外部リード9が挿入され、該外部リード9は封止部3の後方に延出している。
前記封止用ガラス部材8の後端面には外部集電ディスク13が配置され、前記外部リード9は、この外部集電ディスク13を貫通して接続されている。
【0006】
前記封止用ガラス部材8の外周面には、モリブデンよりなる複数の帯状の金属箔11が、当該封止用ガラス部材8の周方向に互いに離間して長手方向に伸びるように配置されており、該金属箔11の各々の内端部は、前記内部集電ディスク12に接続されて内部リード6と電気的に接続されており、一方、前記金属箔11の各々の外端部は、前記外部集電ディスク13に接続されて外部リード9と電気的に接続されている。
これにより、前記内部リード6と外部リード9とは、内部集電ディスク12、金属箔11および外部集電ディスク13を介して電気的に接続される。
そして、封止用ガラス部材8の外周面は、金属箔11を介して封止部3の内面に気密に溶着されている。
なお、前記封止用ガラス部材8の外端側には、外部リード保持用筒体10が配置され、前記外部リード9がこの外部リード保持用筒体10に挿通・支持されていて、該外部リード保持用筒体10の外周面は、封止部3の内面に気密に溶着されている。
【0007】
図7に詳細が示されるように、前記内部集電ディスク12の中心には、内部リード6の外径に適合する内径の貫通孔12aが形成されており、前記内部リード6は該貫通孔12aに挿入されていて、該内部リード6と内部集電ディスク12とはロウ材14によるロウ付けによって接続されている。
さらに、金属箔11と内部集電ディスク12は、タンタルバインダ15によって抵抗溶接されている。抵抗溶接する際に、高温となったタンタルバインダ15が溶けて、金属箔11と内部集電ディスク12が接続されることになる。
【0008】
このように、内部リード6と集電ディスク12をロウ付けにより接合する構造の場合、以下のような問題がある。
この種の放電ランプにおいては、ロウ材14としては、濡れ性が良好で、かつ、耐熱性を有する材料として、プラチナ(Pt)が好適に使用されている。
ところで、発光部2に封入された水銀は、内部リード6と保持用筒体7の貫通部分の間隙を介して内部集電ディスク12の表面にまで到達する。このとき、ロウ材14の材料であるプラチナが水銀と反応してアマルガムを形成してしまい、この反応により体積膨張して、封止部が破裂するという問題があった。
さらには、内部集電ディスク12は、加工性と耐熱性の観点からモリブデンが使用されることが多いが、ロウ材であるプラチナの融点は、内部集電ディスク12のモリブデンの再結晶温度(〜1200℃)を上回るものである。そのため、ロウ付け工程においてプラチナを溶かす際に、内部集電ディスク12の温度が再結晶温度以上に上がり、その構成材料であるモリブデンの再結晶化が生じてしまい、これらが脆化し、割れやすくなる。その結果、内部リード6を介して内部集電ディスク12に荷重などの負荷が過剰に加わった場合には、当該内部集電ディスクが脆性破壊する可能性がある。
更には、ロウ材構成材料がプラチナであり、製造コストがかかるという問題もあった。
【0009】
また、金属箔11と内部集電ディスク12はタンタルバインダ15によって抵抗溶接されているが、該タンタルバインダを用いた接合では接続強度があまり大きくなく、金属箔11に内部集電ディスク12から剥がれる方向に力が加わると、金属箔が内部集電ディスクから浮いて剥がれてしまうという問題があった。
【0010】
ところで、この金属箔と内部集電ディスクのタンタルバインダによる接合の剥がれの問題を解消するために、集電ディスクを2枚のディスクから構成し、その間に金属箔を挟持するものが、特開2007−242579号公報(特許文献2)で提案されている。
図8に示すように、内部リード6と内部集電ディスク12をロウ材14によるロウ付けにより接合し、さらに、内部集電ディスク12の発光管側に補助ディスク16を配置し、内部集電ディスク12と補助ディスク16の間に金属箔11を挟み込み、補助ディスク16にレーザを照射し、補助ディスク16と金属箔11と内部集電ディスク12を溶融して一体接合する構造である。
【0011】
しかしながら、この場合も、内部リード6と内部集電ディスク12はロウ材14により接合されており、さらに、補助ディスク16と内部リード6もロウ材17によって接続されていので、前述した図6に示す従来構造の内部集電ディスク12と内部リード6とをロウ材14で接合する際に発生する構造と全く同じ問題が発生し、その不具合は解消されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−115498号公報
【特許文献1】特開2007−242579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この発明が解決しようとする課題は、発光管の封止部内で、電極に繋がる内部リードに集電ディスクが接続され、該集電ディスクが金属箔によって接続されてなる放電ランプにおいて、内部リードと集電ディスクとの接続構造としてロウ材を用いることなく、強固に接合された放電ランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、この発明に係る高圧放電ランプでは、前記集電ディスクは、前記金属箔を挟むように重ね合せられた2枚の集電ディスクからなり、前記内部リードは、外周面に凹部が形成されていて、前記集電ディスクに形成された貫通孔に挿入されており、前記集電ディスクを、前記貫通孔近傍において両側から塑性変形させて、当該集電ディスクの一部を前記内部リードの凹部に挿入させて、当該集電ディスクを、前記金属箔を挟持した状態で、前記リードにカシメ固定したことを特徴とする。
また、前記集電ディスクにおいて、一方のディスクと他方のディスクは、前記金属箔が存在する位置において、該集電ディスクの半径方向で異なる位置で塑性変形させることを特徴とする。
また、前記集電ディスクにおいて、前記貫通孔近傍のカシメ位置とは異なる位置で、一方のディスクと他方のディスクは、前記金属箔が存在する位置において、該集電ディスクの半径方向で異なる位置で塑性変形させることを特徴とする。
また、前記凹部は、前記内部リードの外周面に円周方向に間隔をあけて形成されていることを特徴とする。
また、前記凹部は、前記内部リードの外周面に円周方向に連続して溝状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、内部リードと集電ディスクとの接合構造として、金属箔を挟持した2枚の集電ディスクの一部を塑性変形して内部リードの外周面に形成した凹部に挿入してカシメ固定したので、接合のためのロウ材を用いることなく強固に接合でき、ロウ材を用いることによる封止部の破損や、集電ディスクの脆性破壊、更にはコスト高といった数々の弊害を除去できる。
また、金属箔は2枚の集電ディスクに挟持されることにより、強固に接続されて集電ディスクから離脱することがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例の断面図。
【図2】本発明の製造工程図。
【図3】図1における接合構造の部分拡大図。
【図4】本発明の他の実施例の断面図。
【図5】本発明の更に他の実施例の断面図。
【図6】従来の放電ランプの全体図。
【図7】図6の部分拡大断面図。
【図8】他の従来例の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、内部リード6と集電ディスク20との接合構造を示す要部断面図である。
図1に示すように、集電ディスク20は第1のディスク21と第2のディスク22の2枚からなり、その間には金属箔11が挟まれている。
そして、内部リード6の端部近傍には、その外周面の軸方向で異なる位置に凹部23、24が形成されている。該凹部23、24はそれぞれ円周方向で間隔をあけて形成された独立の凹部であっても、また、円周方向に連続した溝状の凹部であってもよい。
この内部リード6は内部集電ディスク20の貫通孔20a内に挿入される。このとき、前記内部リード6に形成した凹部23、34は、この貫通孔20a内に位置するとともに、それぞれ前記第1のディスク21と第2のディスク22に対応した位置にある。
そして、前記第1のディスク21および第2のディスク22は、貫通孔20a近傍での両側からのパンチングによりその一部が塑性変形されて前記凹部23、24内に挿入されている。
【0018】
その製造方法を図2により説明する。
集電ディスク20の第1のディスク21と第2のディスク22が内部リード6に嵌挿され、その間には金属箔11が挟まれている。この時、第1のディスク21および第2のディスク22はそれぞれ内部リードに形成した凹部23、24にそれぞれ対応した位置にある。
この集電ディスク20を下部パンチ治具25上に載置し、上方から上部パンチ治具26を押圧することによって両側からパンチングする。
図3に詳細が示されるように、上下のパンチ治具25、26は第1のディスク21および第2のディスク22の貫通孔20a部分の近傍を両側からパンチングするものであって、それにより、第1のディスク21と第2のディスク22はその材料の一部27、28が塑性変形して、内部リード6の凹部23、24内に侵入し、第1のディスク21および第2のディスク22は、その間に金属箔11を挟持した状態で、内部リード6にカシメ止めされる。
【0019】
図4には、他の実施例が示されていて、上下のディスク21、22で、パンチ位置が異なるものである。即ち、金属箔11の存在する位置において、上下ディスク21、22で、半径方向の位置が異なる個所をパンチングするものである。
このとき、第1のディスク21と第2のディスク22には、金属箔11の位置する個所で、半径方向に異なる位置にそれぞれ他の第2の凹部31、32が形成されている。
この状態でディスク21、22の両側からパンチングすると、その材料の一部27、28がそれぞれ内部リードの凹部23、24内に侵入してディスク21、22が内部リード6にカシメ固定されることは同様である。それとともに、更に別の一部の材料が前記他の第2の凹部31、32内に侵入するので、その間に挟まれた金属箔11は上下に波打つように変形する。これにより、金属箔11は集電ディスク20の半径方向、即ち、金属箔11の長さ方向への引張力が働いても抜け出ることがなくなるという効果を奏する。
なお、この第2の凹部31、32へのディスク材料の侵入量は、金属箔11を僅かに変形させるだけで効果を奏するので、カシメ固定を目的とする前記内部リード6の凹部23、24への材料の侵入量よりも小さくてよい。
【0020】
図5には、更に他の実施例が示されていて、図4に示す金属箔11の抜け落ち防止機能を、集電ディスク20のカシメ手段としての貫通孔近傍でのパンチング位置とは別の位置でパンチングを施すことにより得るものである。即ち、集電ディスク20(21、22)の外周方向近傍でパンチするものであって、第1のディスク21および第2のディスク22の外周近傍にそれぞれ半径方向位置の異なる第2の凹所31、32を形成し、この位置でこれらディスク21、22をパンチするものである。
勿論、この外周部でのパンチングは、貫通孔20a近傍でのパンチングと同じパンチ治具によって同時に施されるものとすることができる。
この場合も、前記図4の実施例と同様、金属箔11がその長手方向に抜け出ることが防止されるものである。
【0021】
こうして、内部リード6と集電ディスク20はカシメ固定されるが、内部リード6に形成する凹部23、24は、円周方向で間隔をあけた独立した複数個の凹部であってもよいし、また、円周方向の連続した溝状の凹部であってもよい。独立した凹部の場合、ディスクが回転することが防止され、また、溝状凹部の場合、集電ディスクにおけるパンチング位置と内部リードの凹部の位置との円周方向での整合が全く気にならずにカシメ加工できる。
同様に、ディスク21、22に形成する第2の凹部31、32も、独立した複数の凹部であってもよいし、連続した溝状の凹部であってもよい。
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、内部リードと2枚のディスクからなる集電ディスクとをカシメ固定することにより、ロウ材を用いた固定構造のもつ各種の不具合を解消して、より簡便に確実な固定ができるものである。
しかも、該カシメ工程で金属箔を2枚のディスク間に挟持することになるので、作業工程が簡略化され強固な接続構造が得られる。
【符号の説明】
【0023】
1 発光管
2 発光部
3 封止部
4 陽極
5 陰極
6 内部リード
7 内部リード保持用筒体
8 封止用ガラス部材
11 金属箔
20 集電ディスク
20a 貫通孔
21 第1のディスク
22 第2のディスク
23、24 内部リードの凹部
27、28 ディスクの一部変形部
31、32 ディスクの第2の凹部





【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に一対の電極が配置された発光部とその両端の封止部とからなる発光管と、前記封止部の内部に配置された封止用ガラス部材と、該ガラス部材の側面に沿って長手方向に伸びるように配置された複数の金属箔と、前記ガラス部材の発光部側端面に配置された集電ディスクとからなり、該集電ディスクは、前記電極が固定された内部リードと、前記金属箔とを電気的に接続してなる放電ランプにおいて、
前記集電ディスクは、前記金属箔を挟むように重ね合せられた2枚の集電ディスクからなり、
前記内部リードは、外周面に凹部が形成され、前記集電ディスクに形成された貫通孔に挿入されており、
前記集電ディスクを、前記貫通孔近傍において両側から塑性変形させて、当該集電ディスクの一部を前記内部リードの凹部に挿入させて、当該集電ディスクを、前記金属箔を挟持した状態で、前記内部リードにカシメ固定したことを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記集電ディスクにおいて、一方のディスクと他方のディスクは、前記金属箔が存在する位置において、前記該ディスクの半径方向で異なる位置で塑性変形させることを特徴とする請求項1の放電ランプ。
【請求項3】
前記集電ディスクにおいて、前記貫通孔近傍のカシメ位置とは異なる位置で、一方のディスクと他方のディスクは、前記金属箔が存在する位置において、該集電ディスクの半径方向で異なる位置で塑性変形させることを特徴とする請求項1の放電ランプ。
【請求項4】
前記凹部は、前記内部リードの外周面に円周方向に間隔をあけて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項5】
前記凹部は、前記内部リードの外周面に円周方向に連続して溝状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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