説明

放電灯点灯装置

【課題】装置を小型化するとともに検査時間を短縮させ、且つ検査時においてノイズの影響を低減することが可能な放電灯点灯装置を提供する。
【解決手段】放電灯点灯装置1は、管内における放電により点灯する放電灯11と、放電灯11の点灯状態を制御する点灯装置10とが一体に構成されてなり、放電灯11と点灯装置10とを接続する二つのリード部12のうちの一方とともに点灯装置10を密閉する筐体13を備える。また、筐体13において、直方体ケース14の外側面の一つには、点灯装置10の検査時に放電灯11の代わりに用いられる固定抵抗に接続される接続端子17が設けられている。この構成によれば、点灯装置10の検査時に、点灯装置10が筐体13に密閉された状態で、放電灯11を点灯装置10から取り外すことなく、固定抵抗18を接続端子17に取り付けることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯とその点灯状態を制御する点灯装置とを備える放電灯点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車等の車両に搭載される放電灯点灯装置としては、車両の前方を照射するヘッドライトである放電灯と、その放電灯の点灯状態を制御する点灯装置とが着脱可能に構成されたヘッドライト点灯装置が一般的に用いられている。
【0003】
そして、この種のヘッドライト点灯装置においては、その生産時や出荷時といった点灯装置の検査が必要なときに、放電灯の代わりに擬似的な負荷(擬似負荷)を用いることにより、その検査時間を短縮させることが行われている。
【0004】
その理由は、放電灯には、点灯開始時に比較的大きな電圧(始動電圧)を印加する必要があり、また、点灯開始直後は管内のガス温度が低く、インピーダンスが高い状態にあり、ガス温度(ひいてはインピーダンス)が安定状態になるまで、点灯装置が放電灯に印加される電力(ランプ電力)を比較的大きな始動電力から所望の安定電力に漸減させる必要があるからである。
【0005】
このため、例えば安定状態における放電灯のインピーダンスを有する擬似負荷を、放電灯の代わりに点灯装置に取り付けることにより、上記の必要性が緩和され(例えば始動電圧を印加させる必要がなく)、安定電力の検査や調整に必要な作業時間を短縮することが可能となる。
【0006】
また、このような作業負担をより軽減させるには、本願出願人が既に開示したように、例えば、放電灯の代わりに擬似負荷が接続されていることを点灯装置が自動的に検出し、その検出時にはランプ電力が安定電力で制御開始するまでの時間を短縮する制御を行う回路構成を採用するとよい(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3412421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年の回路の集積化技術に伴い、点灯装置の小型化が可能となり、これにより、小型化された放電灯点灯装置の開発が進められている。
このような放電灯点灯装置の開発においては、放電灯を点灯装置から取り外すことができるように構成すると、その着脱に必要なソケットやコネクタ等の着脱用部品を放電灯や点灯装置に設ける必要があるので、より小型化させるためには、これらの着脱用部品を設けることなく、放電灯と点灯装置とを一体に構成することが検討されている。
【0009】
しかし、このように構成された放電灯点灯装置では、擬似抵抗を接続しやすいように点灯装置を外部に露出して構成すると、点灯装置を構成する回路からのノイズによって検査の精度が低下する可能性があった。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するために、装置を小型化するとともに検査時間を短縮させ、且つ検査時においてノイズの影響を低減可能な放電灯点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するためになされた発明である放電灯点灯装置は、管内における放電により点灯する放電灯と、この放電灯の点灯状態を制御する点灯装置とを備える装置である。
【0012】
本発明では、このような放電灯点灯装置において、放電灯と点灯装置とを接続する二つのリード部のうち少なくとも一つとともに点灯装置を密閉する筐体を備え、その筐体の外側面に、点灯装置の検査時に放電灯の代わりに用いられる擬似的な負荷である擬似負荷に接続される接続端子を設けて構成した。
【0013】
このように構成された放電灯点灯装置では、例えばインピーダンスが点灯開始時における放電灯のインピーダンスよりも低い値の擬似負荷を用いることにより、点灯装置の検査時に、放電灯を点灯装置から取り外すことなく、擬似負荷を接続端子に取り付けるだけで、安定電力の検査や調整に必要な作業時間を短縮することが可能となる。そして、放電灯を点灯装置から取り外す必要がないことから、放電灯と点灯装置とを一体に構成することができるので、放電灯点灯装置をより小型化することが可能となる。
【0014】
さらに、本発明の放電灯点灯装置では、点灯装置が筐体に密閉された状態で擬似負荷を接続端子に取り付けることができるので、検査時に点灯装置を構成する回路から発せられるノイズが筐体によって遮られ、このようなノイズが外部に漏れにくくなる。
【0015】
したがって、本発明の放電灯点灯装置によれば、装置を小型化するとともに検査時間を短縮させ、且つ検査時においてノイズの影響を低減することができる。
また、本発明の放電灯点灯装置においては、筐体の外側面に、外部電源に接続される電極を収容するコネクタ部を設け、そのコネクタ部の内側面に接続端子を配置する構成にしてもよい。
【0016】
このように構成された放電灯点灯装置によれば、コネクタ部を介して外部電源と点灯装置とが接続されると、接続端子を外部に露出させないようにすることが可能になるで、当該放電灯点灯装置の実装時に塵や埃から接続端子を保護することができる。
【0017】
また、このように構成された放電灯点灯装置では、電極と接続端子とを近接して配置されることが可能になるので、検査時に電源を電極に接続させる際に接続端子を検査員に容易に視認させることができ、ひいては作業効率を向上させることができる。なお、検査時に用いる電源については、例えば専用のケーブル等を介して電極に接続することにより、接続端子が外部に露出する状態を維持させ、擬似負荷を接続端子に接続させやすくしてもよい。
あるいは、本発明の放電灯点灯装置では、筐体の外側面においてコネクタ部から離間した箇所に接続端子を配置する構成にしてもよい。
この場合、検査用の電源やケーブルを必要とせず、コネクタ部を介して外部電源と点灯装置とを接続させた状態でも点灯装置の検査を行うことができ、且つ、コネクタ部の形状の自由度を向上させることができる。
【0018】
また、本発明の放電灯点灯装置においては、リード部の一つを、点灯装置の検査時に擬似負荷の一方端に接続されるように筐体の外部に露出して配線されたリード線によって構成し、接続端子を、点灯装置の検査時に擬似負荷の他方端に接続されるように筐体の外側面に一つだけ設けて構成してもよい。
【0019】
このように構成された放電灯点灯装置によれば、点灯装置の検査時に擬似負荷の両端に接続されるように接続端子を二つ設けて構成する場合と比較して、接続端子の一つとしてリード線を代用することによって接続端子の数を半減させた分、製造コストを抑制することができる。
【0020】
また、本発明の放電灯点灯装置においては、点灯装置が、放電灯に接続される変換回路と、変換回路を制御する制御回路とを備えるとよい。具体的には、変換回路が、外部電源から供給される電力を放電灯に印加されるランプ電力に変換し、制御回路が、放電灯の点灯開始時にランプ電力が予め設定された始動電力から安定電力に集束するよう変換回路を制御する。さらに、制御回路は、擬似負荷の印加電圧又は放電灯の印加電圧が、所定電圧以上に達しなかったことを検出することにより、擬似負荷が接続端子に接続されていると判断し、この判断時にランプ電力が安定電力で制御開始するまでの時間を短縮する時間短縮手段を有する。
【0021】
このように構成された放電灯点灯装置によれば、擬似負荷が接続されていることを点灯装置が自動的に検出し、放電灯の点灯開始から安定電力になるまでの時間を短縮するため、点灯装置の検査時に検査員の作業を軽減し、効率よく検査作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明が適用された放電灯点灯装置の回路構成を示す回路図である。
【図2】制御回路8の概略構成を示すブロック図である。
【図3】放電灯11の点灯開始時に制御回路8によって制御されるランプ印加電力等の波形を示すグラフである。
【図4】放電灯11の接続時の始動電圧と擬似負荷12の接続時の印加電圧との波形をそれぞれ示すグラフである。
【図5】本実施形態における放電灯点灯装置1の外観構成を示す外観図である。
【図6】コネクタ部15と固定抵抗18及び電源19との配線を示す概略図である。
【図7】他の実施形態における放電灯点灯装置1の外観構成を示す外観図である。
【図8】コネクタ部15の変形例を示す概略図である。
【図9】他の実施形態における放電灯点灯装置1の外観構成を示す側面図および背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[放電灯点灯装置の回路構成]
図1は、本発明が適用された放電灯点灯装置の回路構成を示す回路図である。なお、放電灯点灯装置1は、例えば乗用車等の車両に搭載され、この車両の前方を照射するヘッドライトである放電灯11(バルブまたはランプともいう。)と、放電灯11を点灯させるための点灯装置10とから構成される。
【0024】
図1に示すように、点灯装置10は、この装置10外に配置された外部電源としてのバッテリ2からスイッチ3を介して電力が供給されるよう構成されており、例えば運転者がスイッチ3をON状態にすることにより点灯装置10にバッテリ2による電力が供給される。
【0025】
点灯装置10は、バッテリ2から得られる電源電圧を平滑化するための入力コンデンサ4の他に、DC/DCコンバータ回路5、Hブリッジ回路6、始動回路7、および制御回路8を備えている。なお、入力コンデンサ4とスイッチ3(バッテリ2のプラス側)との接続点をPa、入力コンデンサ4とバッテリのマイナス端子(グランド側)との接続点をPbとする。
【0026】
DC/DCコンバータ回路5は、DC/DCトランス51、パワー素子であるパワーMOSトランジスタ52、ダイオード53およびコンデンサ54を有している。そして、このDC/DCコンバータ回路5は、バッテリ2からの電源電圧(例えば12V)をランプ供給電圧(例えば35V〜90V)まで昇圧するコンバータ回路として構成されている。
【0027】
なお、パワーMOSトランジスタ52は、制御回路8を構成するPWM制御部84(図2参照)からのPWM信号に応じてON/OFFが制御される。よって、ランプ供給電圧は、PWM制御部84にて出力されるPWM信号のデューティ比によって決定される。
【0028】
Hブリッジ回路6は、4つのパワートランジスタ61および電流検出抵抗として配置された抵抗器62を備えている。そして、Hブリッジ回路6は、制御回路8を構成するブリッジ制御部85(図2参照)からの作動信号を受けてこれらのパワートランジスタ61をスイッチングする駆動IC9によって制御され、この制御によってHブリッジ回路6からの出力が、直流から交流(ただし矩形波)に変換される。
【0029】
始動回路7は、始動駆動回路70、及び、放電灯11の点灯を開始するためにランプ供給電圧に付加する始動電圧(例えば約20kV)を発生するスタータトランス71を有している。
【0030】
このうち、始動駆動回路70は、例えば、昇圧回路と、放電灯11の点灯開始時に昇圧回路を制御することによって放電灯11に一時的な高電圧が印加されるよう制御し、放電灯11の点灯を開始させる始動制御部と、スタータトランス71の1次コイル側に流す電流を充電する高電圧発生用コンデンサと、高電圧発生用コンデンサの放電をスイッチングするスパークギャップとを有して構成される。なお、スパークギャップは、始動制御部からの作動信号を受けた昇圧回路から高電圧が供給され、スパークギャップの電圧が所定の電圧に達したタイミングで導通する。
【0031】
以下、放電灯11における低圧側端子と始動回路7との接続点をPc、放電灯における高圧側端子と始動回路7におけるスタータトランス71との接続点をPd、スタータトランス71と始動回路7における始動駆動回路70との接続点をPe、Hブリッジ回路6と始動回路7におけるスタータトランス71との接続点をPfとする。
【0032】
[制御回路8の構成]
次に、制御回路8について図2および図3を用いて説明する。
図2は制御回路8の概略構成を示すブロック図、図3は放電灯11の点灯開始時に制御回路8によって制御されるランプ印加電力等の波形を示すグラフである。
【0033】
制御回路8は、図2に示すように、ランプ電圧検出部81と、ランプ電流検出部82と、ランプパワー制御部83と、PWM制御部84と、ブリッジ制御部85とを備えている。なお、本実施形態の制御回路8を構成する各部81〜85は、回路として構成されている。
【0034】
なお、ランプ電圧検出部81、ランプ電流検出部82、ランプパワー制御部83、PWM制御部84、ブリッジ制御部85について、それぞれの詳細構成は、周知技術(例えば特許第4085801号公報、特許第4350810号公報、特許第3412421号公報等に記載の技術)と概ね同様であるため、本発明と関係する機能だけを説明する。
【0035】
ブリッジ制御部85は、放電灯11に印加される電圧の極性を周期的に変化させるものであり、具体的には、Hブリッジ回路6を構成する複数組のパワートランジスタ61を順にON状態とすることにより放電灯11に印加される電圧の極性を周期的に変化させるよう構成されている。
【0036】
ランプ電圧検出部81は、例えば、DC/DCコンバータ回路5からの出力電圧Vの電位を入力し、この電位が高くなるほど大きな電流を出力する周知の回路として構成されている。そして、ランプ電圧検出部81からの出力は、出力電圧Vの電位を示す値として、ランプパワー制御部83に入力される。
【0037】
ランプ電流検出部82は、放電灯11に流れる電流(ランプ電流)によって電位が変化するHブリッジ回路6の端子Iの電位を入力し、この電位が高くなるほど大きな電流を出力する周知の回路として構成されている。そして、ランプ電流検出部82からの出力は、ランプ電流を表す値としてランプパワー制御部83に入力される。
【0038】
ランプパワー制御部83は、ランプ電圧検出部81およびランプ電流検出部82からの出力を入力し、放電灯11が点灯されてからの時間に応じた電流を生成するとともに、出力電圧Vの変化率に応じて電流を生成し、これらの電流を合成した電流を生成する。具体的には、放電灯11が点灯されてからの時間に応じた電流としては、放電灯11が点灯されてから放電灯11の発光状態が安定すると推定されるまでの一定時間(安定時間:約30秒)内において、電流値を大きく設定し、その後、電流値が徐々に小さくなるようにする。
【0039】
そして、ランプパワー制御部83は、上記の各電流値、ランプ電圧検出部81およびランプ電流検出部82からの電流値をそれぞれ加算した合計電流値に基づく電圧を比較器に入力し、予め設定された基準電圧との比較を行い、比較結果に応じた出力をPWM制御部84に入力させる。ここで、比較器による比較結果は、合計電流値が大きくなるにつれて高い電位が出力されるよう設定されており、この設定では、放電灯11の点灯直後、および放電灯11に印加される電力値が低いときに、高い電位の信号が出力されることになる。
【0040】
PWM制御部84は、ランプパワー制御部83から入力される電位に応じたデューティ比を有するPWM信号を生成し、このPWM信号をDC/DCコンバータ回路5に送る。つまり、PWM制御部84は、ランプパワー制御部83から入力される信号の電位が高くなるにつれてデューティ比を高く設定することになる。
【0041】
このようなランプパワー制御部83およびPWM制御部84では、図3に示すように、ランプ点灯開始直後から一定時間の間、ランプ印加電力(供給電力の目標値、図1の端子Vにおける電位に基づく電圧と端子Iにて検出される電流の積)を通常のランプ印加電力(例えば35W)よりも高い始動電力値(例えば50W)に設定し、その後、徐々にランプ印加電力を低くし、最終的に通常のランプ印加電力(安定電力)で収束させる。
【0042】
ランプ点灯開始直後においては、放電灯11の内部のガスの温度が低く、放電灯内のガスが活性化し難いため、インピーダンスが高くなり、図3に示すように、ランプ印加電圧(図1の接続点Pdの電位)は比較的低い状態となる。このとき、ランプ印加電力は通常よりも高く設定されているので、ランプ印加電流(接続点Pdに流れる電流)は比較的大きくなり、放電灯11が消灯してしまうことを防止し易くしている。
【0043】
その後、放電灯11の内部のガスの温度が高くなるにつれて、ランプ印加電圧は上昇する。すると、図3に示すように、ランプ印加電力は徐々に減少し、ランプ印加電流も減少する。このようにして、ランプパワー制御部83を介してPWM制御部84が出力するPWM信号のデューティ比を制御する場合には、フィードバック制御が実施されることになる。
【0044】
また、ランプパワー制御部83は、ランプ電圧検出部81からの出力電圧Vに基づいて、接続点Pcの電位(ランプ電圧)を算出する。そして、図4に示すように、スイッチ3がオンされてから所定時間内にランプ電圧が、第1閾値電圧VLoを上回り、且つ第2閾値電圧VHi以上に達しなかったことを検出すると、後述する固定抵抗18(図6参照)の両端が接続点PfおよびPcに接続されていると判断する。
【0045】
なお、第1閾値電圧VLo及び第2閾値電圧VHiは、放電灯11の特性に基づいて予め設定される電圧値であり、このうち、第2閾値電圧VHiは点灯開始時に放電灯11に印加される開始電圧よりも小さく、放電灯11の安定時に印加される安定電圧よりも大きい値に予め設定されていればよい。また、第1閾値電圧VLoは、上記の安定電圧を検出するための値として予め設定されていればよい。
【0046】
そして、ランプパワー制御部83は、このように擬似負荷が接続されていると判断すると、安定時のランプ印加電力(安定電力)が得られるように予め設定された電位の信号をPWM制御部に出力することにより、上記の安定時間を短縮するように構成されている。
【0047】
なお、ランプパワー制御部83は、ランプ印加電圧(Pd)の値に基づいて、スイッチ3がオンされてバッテリ2から電源電圧(Pa)が入力されたことを検出すると、始動駆動回路70およびブリッジ制御部85を作動させるための制御信号を出力するように構成されている。
【0048】
[放電灯点灯装置の外観構成]
次に、図5は、本発明が適用された放電灯点灯装置の外観構成を示す外観図である。
図5に示すように、放電灯点灯装置1は、管内における放電により点灯する放電灯11と、放電灯11の点灯状態を制御する点灯装置10とが一体に構成され(換言すれば、着脱不可に固着され)てなり、放電灯11と点灯装置10とを接続する二つのリード部12のうちの一方とともに点灯装置10を密閉する筐体13を備えている。
【0049】
なお、放電灯点灯装置1において、リード部12の一方は、放電灯11の高圧側端子とスタータトランス71(図1参照)とに接続されるリード線(図示せず)を構成し、リード部12の他方は、放電灯11の低圧側端子と二つのパワートランジスタ61(図1参照)とに接続されるリード線12aを構成している。
【0050】
筐体13は、点灯装置10を構成する基板(図示せず)の両辺にマージンを付加した大きさを形成する底面及び上面と、この基板やリード線12a等を収納可能な高さを形成する四つの側面とからなる直方体ケース14を有して構成されている。なお、直方体ケース14は、例えば金属を主原料として製造される。
【0051】
また、筐体13において、直方体ケース14の側面(詳細には外側面)の一つには、バッテリ2に接続されたコネクタ(図示せず)と一体に取り付けされる(換言すれば、着脱可能に接続される)コネクタ部15が設けられている。
【0052】
コネクタ部15は、直方体ケース14の外側面を底面として開放口を有するケース状に形成され、その底面から開放口側に突設された二つの電極16と、その底面に封止された二つの接続端子17とを有して構成されている。
【0053】
このうち、電極16は、バッテリ2に接続されてバッテリ2から点灯装置10に電力供給するためのものであり、点灯装置10の接続点Paに接続された電極16aと、点灯装置10の接続点Pbに接続された電極16bとからなる。
【0054】
接続端子17は、点灯装置10の検査時に放電灯11の代わりに用いられる擬似負荷としての固定抵抗18(図6参照)に接続される端子であり、点灯装置10の接続点Pcに接続された接続端子17aと、点灯装置10の接続点Pfに接続された接続端子17bとからなる。
【0055】
なお、固定抵抗18は、放電灯11の特性に基づいて予め決められた抵抗値(インピーダンス)を有し、例えば放電灯11の特性において、ランプ印加電圧の範囲が35V(Emin)〜90V(Emax)、ランプ印加電力の範囲が20W(Wmin)〜90V(Wmax)である場合、インピーダンスが15Ω(Rmin=Emin×Emin÷Wmax)〜405Ω(Rmax=Emax×Emax÷Wmin)の範囲のいずれかの値であればよい。
【0056】
そして、点灯装置10の検査時には、図6に示すように、固定抵抗18の一方端に接続されたケーブルのプラグが接続端子17aに、固定抵抗18の他方端に接続されたケーブルのプラグが接続端子17bにそれぞれ差し込まれることにより、固定抵抗18が点灯装置10に接続される。次に、検査用の電源19が電極16に接続されると、固定抵抗18のインピーダンスが、放電灯11の点灯開始時におけるインピーダンスよりも小さいので、放電灯11の代わりに固定抵抗18が通電することになる。
【0057】
また、固定抵抗18は、接続点Pcおよび接続点Pfに接続されているので、始動回路7からの始動電圧が固定抵抗18の印加電圧(接続点Pcの電位)に反映されない。このため、放電灯点灯装置1において、図4に示したように、固定抵抗18の印加電圧は、電源19が電極16に接続されると、直ちに安定電圧を示すことになり、この安定電圧と端子Iの電位(ランプ電流)との積から安定時のランプ印加電力(安定電力)を検査することが可能となる。
【0058】
[本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態の放電灯点灯装置1では、インピーダンスが点灯開始時における放電灯11のインピーダンスよりも低い値の固定抵抗18を接続端子17に接続することにより、点灯装置10の検査時に、放電灯11を点灯装置10から取り外すことなく、固定抵抗18を接続端子17に取り付けるだけで、安定電力の検査や調整に必要な作業時間を短縮することが可能となる。
【0059】
そして、本実施形態の放電灯点灯装置1では、放電灯11と点灯装置10とを一体に構成することができる分、より小型化することが可能となり、点灯装置10が筐体13に密閉された状態で固定抵抗18を接続端子17に取り付けることができるので、検査時に点灯装置10を構成する各回路から発せられるノイズが筐体13によって遮られる。
【0060】
したがって、本実施形態の放電灯点灯装置1によれば、装置を小型化するとともに検査時間を短縮させ、且つ検査時においてノイズの影響を低減することができる。
また、放電灯点灯装置1では、固定抵抗18が接続点Pcおよび接続点Pfに接続されるので、始動回路7からの始動電圧が固定抵抗18の印加電圧(接続点Pcの電位)に反映されずに済み、これにより、固定抵抗18の印加電圧を容易に検出すること可能となり、ひいては回路構成を簡易にすることができる。
【0061】
さらに、放電灯点灯装置1では、コネクタ部15に電極16と接続端子17とが配置されているため、検査時に電源19を電極16に接続させる前に、接続端子17を検査員に容易に視認させることができ、ひいては作業効率を向上させることができる。
【0062】
[本実施形態と特許請求の範囲との対応関係]
なお、本実施形態において、ランプパワー制御部83が時間短縮手段に相当する。
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0063】
例えば、上記実施形態の放電灯点灯装置1では、コネクタ部15に二つの接続端子17a,17bが設けられているが、この構成に限定されるものではなく、図7に示すように、点灯装置10の接続点Pfに接続された接続端子17bだけがコネクタ部15に設けられてもよい。
【0064】
この場合、点灯装置10の接続点Pcにリード線12aが接続されているので、点灯装置10の検査時に固定抵抗18の両端各部を接続端子17bとリード線12aとにそれぞれ取り付けることにより、検査時間を短縮させることができる。
【0065】
また、接続端子17の形状は、図8に示すように、電極16と同様に、直方体ケース14の外側面を底面としてその底面から開放口側に突設された形状であってもよい。
また、上記実施形態の放電灯点灯装置1では、接続端子17bが点灯装置10の接続点Pfに接続されているが、この構成に限定されるものではなく、例えば点灯装置10の接続点Pc(図1参照)に接続されていてもよい。
【0066】
この場合、制御回路8の構成を、例えば特許第3412421号に記載の「電力演算回路」を備える構成にすることにより、検査時間を短縮させることができる。
なお、制御回路8において、ランプパワー制御部83は、ランプ電圧検出部81およびランプ電流検出部82を備えた構成としてもよい。
また、上記実施形態の放電灯点灯装置1では、コネクタ部15の内側面に接続端子17が配置されているが、この構成に限定されるものではなく、例えば、図9に示すように、筐体13の直方体ケース14の背面(底面)に接続端子17が配置されてもよい。つまり、筐体13の外側面においてコネクタ部15から離間した箇所に接続端子17を配置してもよい。この場合、検査用の電源19等を必要とせず、コネクタ部15を介してバッテリ2と点灯装置10とを接続させた状態でも点灯装置10の検査を行うことができ、且つ、コネクタ部15の形状の自由度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0067】
1…放電灯点灯装置、2…バッテリ、3…スイッチ、4…入力コンデンサ、5…DC/DCコンバータ回路、6…Hブリッジ回路、7…始動回路、8…制御回路、9…駆動IC、10…点灯装置、11…放電灯、12…リード部、13…筐体、15…コネクタ部、16…電極、17…接続端子、18…固定抵抗、19…電源、70…始動駆動回路、71…スタータトランス、81…ランプ電圧検出部、82…ランプ電流検出部、83…ランプパワー制御部、84…PWM制御部、85…ブリッジ制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内における放電により点灯する放電灯と、
前記放電灯の点灯状態を制御する点灯装置と、
を備える放電灯点灯装置において、
前記放電灯と前記点灯装置とを接続する二つのリード部のうち少なくとも一つとともに前記点灯装置を密閉する筐体を備え、
前記筐体の外側面には、前記点灯装置の検査時に前記放電灯の代わりに用いられる擬似的な負荷である擬似負荷に接続される接続端子が設けられていることを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記筐体の外側面には、前記外部電源に接続される電極を収容するコネクタ部が設けられており、
前記接続端子は、前記コネクタ部の内側面に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記筐体の外側面には、前記外部電源に接続される電極を収容するコネクタ部が設けられており、
前記接続端子は、前記コネクタ部から離間した箇所に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記リード部の一つは、前記点灯装置の検査時に前記擬似負荷の一方端に接続されるように前記筐体の外部に露出して配線されたリード線であり、
前記接続端子は、前記点灯装置の検査時に前記擬似負荷の他方端に接続されるよう前記筐体の外側面に一つだけ設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記放電灯および前記点灯装置は、前記リード部を介して固着されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
前記点灯装置は、
前記放電灯に接続され、外部電源から供給される電力を該放電灯に印加されるランプ電力に変換する変換回路と、
前記放電灯の点灯開始時に前記ランプ電力が予め設定された始動電力から安定電力に集束するよう前記変換回路を制御する制御回路と
を備え、
前記制御回路は、前記擬似負荷の印加電圧又は前記放電灯の印加電圧が、所定電圧以上に達しなかったことを検出することにより、前記擬似負荷が前記接続端子に接続されていると判断し、この判断時に前記ランプ電力が前記安定電力で制御開始するまでの時間を短縮する時間短縮手段を有することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−129018(P2012−129018A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278237(P2010−278237)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】