説明

放電灯駆動装置及び照明装置

【課題】 低い調光率でも誘電体バリア放電ランプをチラツキなく発光させる。
【解決手段】 誘電体バリア放電ランプLP1の電極に交流の高電圧を印加するための給電装置T1と、この給電装置の交流高電圧出力をスイッチング手段に基づいて制御しかつそのデューティー比を変更することによって誘電体バリア放電ランプの光出力を調光するPWM調光装置と、PWM調光装置による誘電体バリア放電ランプに対する電圧印加期間の最初のサイクルと最終サイクルとで管電流の極性が異極性になるように制御するPWM調光制御手段10を備えた放電灯駆動装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、液晶用ディスプレイ光源、OA用読み取り用光源として利用される誘電体バリア放電ランプを調光点灯させるための放電灯駆動装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平面状の誘電体バリア放電ランプとして、特許第3026416号公報(特許文献1)、特開平10−222083号公報(特許文献2)、特開2003−217517号公報(特許文献3)、実用新案登録第3015262号公報(特許文献4)に記載されたものが知られている。これらの従来の誘電体バリア放電ランプでは、少なくとも一方の電極は、平面形放電容器内に封入されている放電媒体と接触しないように電極と放電媒体との間に誘電体層または放電容器を構成するガラスを設けることで、放電媒体のガスがスパッタリングにより消耗する度合いを小さくし、長寿命化を図っている。
【0003】
他方、蛍光ランプに要求される性能の一つとして“調光性能”があり、ランプの明るさを自由に変化させることができなければならない。特に自動車用途に使用される場合は、調光率2%以下まで安定して点灯できることが要求される。この蛍光ランプの明るさを制御する調光方法としては、PWM調光法が知られている。
【0004】
特開平11−162690号公報(特許文献5)には、誘電体バリア放電ランプを調光する方法として、電圧印加期間τonと電圧休止期間を交互に生じさせて、電圧を印加している期間(発光している期間)τonと電圧を印加していない期間(発光していない期間)τoffとの比率D=τon/(τon+τoff)を変えることによってランプの明るさを変えるPWM調光方法について記載されている。
【0005】
図12は、誘電体バリア放電ランプをPWM調光法を用いて矩形波電圧で点灯させたときの電圧印加期間τonにおける管電圧と管電流を示したグラフである。長い電圧休止期間τoffの後に電圧印加期間τonが始まると管電圧は0Vから正極性に上昇し、4周期の矩形波電圧が印加されている。そして最後に、管電圧は負極性から0Vに上昇し、その後、再度、長い電圧休止期間τoffに入っている。管電流については、矩形波電圧の立上り部と立下り部で、パルス状の放電電流が流れている。電圧休止期間τoffの直後の電圧印加期間τonの最初には正極性の管電流が流れ、その後、負→正→負→正→負→正→負を繰り返し、電圧印加期間τonの終わりは正極性の放電電流で終了している。そして、長い電圧休止期間τoffの後に再度電圧印加期間τonが始まれば、同様に正極性の管電流でスタートする。
【0006】
誘電体バリア放電ランプは、放電によって生成された荷電粒子(正イオンや電子)が、電極を覆う誘電体層(ガラス〉表面で充放電を繰り返すことによって放電を維持するものであるため、正極性に流れる管電流の量と負極性に流れる管電流の量とは共に同程度で繰り返されることが好ましい。
【0007】
ところが従来の調光方法では、上述したように、電圧印加期間の最終放電で、正極性の放電電流が流れて放電が終了したあと、長い電圧休止期間を経て、再度、電圧印加期間になった時にも第1回目の放電電流は前回の電圧印加期間の第1回目と同じく正極性でスタートする。このため、従来の調光方法では、電圧印加期間の終了時の管電流と休止期間を与えた後の第1周期の管電流とが共に正極性であり、また、電流量も不足しているため、発光にちらつきを生じる問題点があった。
【特許文献1】特許第3026416号公報
【特許文献2】特開平10−222083号公報
【特許文献3】特開2003−217517号公報
【特許文献4】実用新案登録第3015262号公報
【特許文献5】特開平11−162690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来の技術的課題に鑑みてなされたもので、PWM調光において電圧印加期間の最初のサイクルと最終サイクルに流れる管電流の極性を異極性にすることで、低い調光率でも誘電体バリア放電ランプをチラツキなく発光させることができる放電灯駆動装置及び照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明の放電灯駆動装置は、放電媒体が充填され、当該放電媒体に放電現象を誘起するための少なくとも一対以上の電極を有し、当該電極の少なくとも一方と前記放電媒体との間に誘電体が介在する構造を有する誘電体バリア放電ランプと、前記電極に交流の高電圧を印加するための給電装置と、前記給電装置の交流高電圧出力をスイッチング手段に基づいて制御しかつそのデューティー比を変更することによって前記誘電体バリア放電ランプの光出力を調光するPWM調光装置と、前記PWM調光装置による前記誘電体バリア放電ランプに対する電圧印加期間の最初のサイクルと最終サイクルとで管電流の極性が異極性になるように制御するPWM調光制御手段とを備えたものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の放電灯駆動装置において、前記PWM調光制御手段は、前記電圧印加期間中に互いに逆極性のパルス状の第1の駆動信号と第2の駆動信号を生成し、かつ、前記電圧印加期間内の最初のサイクルで、前記トランスの1次巻線に正の電圧を印加し、前記誘電体バリア放電ランプへの電圧印加が負の電圧印加から開始する制御を行うことを特徴とするものである。
【0011】
請求項3の発明の照明装置は、請求項1又は2の放電灯駆動装置をケーシングに収容したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、調光時の誘電体バリア放電ランプに対する電圧印加期間の最初のサイクルと最終サイクルに流れる管電流の極性が異極性になるように制御するので、正極性に流れる管電流の量と負極性に流れる管電流の量とを同程度で繰り返すことができ、低い調光率でも誘電体バリア放電ランプをチラツキなく発光させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。図1、図2は本発明の1つの実施の形態の放電灯駆動装置の回路構成を示している。本実施の形態で用いられる誘電体バリア放電ランプLP1には、少なくとも一方が放電媒体に接触しないように配置された構造のもの、例えば、従来例で用いられているような構成のランプが採用される。このような誘電体バリア放電ランプLP1を点灯させるには、矩形波電圧を印加するのが最適であり、図1、図2に示す放電灯駆動装置を採用し、図3のフローチャートに示した制御によって図4のタイミングチャートに示した駆動信号(1)SG1、駆動信号(2)SG2を生成して直流電源VccをPWM制御する。
【0014】
図1、図2に示す放電灯駆動装置は、1対のインバータ駆動信号(1)SG1と駆動信号(2)SG2を生成する制御回路10を備えている。そして制御回路10の駆動信号(1)SG1によってスイッチング素子S1をスイッチング動作させ、駆動信号(2)SG2によってスイッチング素子S2をスイッチング動作させ、これらのスイッチング素子S1,S2のスイッチング動作によってパルストランスT1を駆動して誘電体バリア放電ランプLP1を点灯させる。図1、図2において、C1,C2はコンデンサ、Z1,Z2は抵抗、インダクタ、ダイオード、トランジスタ、FETフォトカプラあるいはこれらの複合素子である。例えば、Z1,Z2にはダイオードとインダクタを直列に接続した素子を用いることがある。
【0015】
図1は、駆動信号(1)SG1によりスイッチング素子S1がオフし、駆動信号(2)SG2によりスイッチング素子S2がオンすることで、正の管電流を作成する状態を示している。図2は、駆動信号SG1によりスイッチング素子S1がオンし、駆動信号SG2によりスイッチング素子S2がオフすることで、負の管電流を作成する状態を示している。すなわち、図4のタイミングチャートに示すように、駆動信号SG1,SG2のオン期間でランプ駆動用トランスT1の1次巻線電圧が「L→H→L→H→L…」を繰り返すことで、トランスT1の2次巻線に接続された誘電体バリア放電ランプLP1に正負の管電流IL,−ILを供給する。これらを繰り返すことで、誘電体バリア放電ランプLP1に矩形波電圧が継続的に印加され、出力効率の高いランプ点灯が実現できる。制御回路10は、調光信号CS1から調光率を判定し、本実施の形態のような適切な駆動信号(1)SG1、駆動信号(2)SG2を出力し、スイッチング素子S1,S2をオン・オフする。この制御回路10は、マイコンやカスタムICで構成することにより効率的で精度の高い制御が可能となる。
【0016】
制御回路10による調光信号CS1に対する調光率の判定と、PWM制御によるPWM駆動信号(1)SG1、PWM駆動信号(2)SG2の生成動作について、図3のフローチャート、図4のタイミングチャートを用いてさらに詳しく説明する。調光信号CS1が入力されると、制御回路10は調光率を判定し、電圧印加期間τon、休止期間τoffを求める(ステップS1,S3)。この電圧印加期間τonは、駆動信号SG1,SG2のオン・オフ1サイクル時間で割り切れる最大サイクル数Y(図4ではY=3)+1サイクルの期間とする。そして駆動信号SG1に対してはそのサイクル数(Y+1)だけ、オフタイミングから開始する信号を生成し(ステップS5)、駆動信号SG2に対してはサイクル数Yだけ、かつ駆動信号SG1よりも1サイクル遅れたオンタイミングから逆位相で開始させる信号を生成し(ステップS7)、これをPWM信号に重畳して出力する(ステップS9)。
【0017】
これによって、図4のタイミングチャートに示すようなトランス1次巻線電圧をトランスT1に印加し、誘電体バリア放電ランプLP1に対して図示の管電圧波形、管電流波形の電圧電流を印加することができる。図5はこの場合の管電圧、管電流の実波形を示している。
【0018】
このように本実施の形態の放電灯駆動装置による誘電体バリア放電ランプの調光方法では、図5に示すように、電圧印加期間τonの第1サイクルと最終サイクルに流れる管電流の極性を異極性にすることができる。休止期間τoffの直後の第1サイクル目の電圧波形Q1については、図12に示したように従来は0Vから正極性に印加されるのに対し、図5では0Vから負極性に変化する矩形波Q0を印加している。これにより、管電流は各電圧印加期間τonの最初は負極性、最後は正極性とすることができ、誘電体バリア放電ランプLP1を正極性に流れる管電流の量と負極性に流れる管電流の量とを同程度で繰り返すことができる。よって本実施の形態によれば、特に低調光率の範囲でもチラツキのない安定した点灯が得られ出力効率の高いランプ点灯が実現できる。
【0019】
なお、駆動信号SG1,SG2については、図6のタイミングチャートに示すように駆動信号SG1にはYサイクルの直前に短い時間オンとする信号M1を与える波形を生成するようにし、あるいは図7のタイミングチャートに示すように駆動信号SG1にはYサイクルの直前の1サイクルの任意のタイミングで短い時間オンする信号M2を与える波形を生成するようにしてもよい。これらによっても管電流は各電圧印加期間τonの最初は負極性、最後は正極性とすることができ、誘電体バリア放電ランプLP1を正極性に流れる管電流の量と負極性に流れる管電流の量とを同程度で繰り返すことができ、低調光率の範囲でもチラツキのない安定したランプ点灯が実現できる。
【0020】
図8は、図6のタイミングチャートによる制御によって得られる管電圧、管電流の実波形を示しており、第1サイクルQ0′の矩形波のパルス幅をその後の各サイクルの矩形波電圧のパルス幅より短くすることで、管電流は各電圧印加期間τonの最初は負極性、最後は正極性と異極性にすることができている。また図9は、図7のタイミングチャートによる制御によって得られる管電圧、管電流の実波形を示しており、電圧印加期間τonの最初の1サイクルの中間点でパルス幅が短い負極性の電圧Q0″を印加した後に、2サイクル目Q1を正極性からスタートする矩形波電圧を印加するように制御しても、管電流は各電圧印加期間τonの最初は負極性、最後は正極性と異極性にすることができている。
【0021】
なお、本発明は、前記構造の希ガスを使った外面電極型誘電体バリア放電ランプ全てに適応可能であり、回路方式、駆動方式にも依存しないため、一般的に公知のフルブリッジ方式、ハーフブリッジ方式、プッシュプル方式、片高圧駆動方式や両高圧駆動方式など全てに適応可能である。また、制御回路による駆動信号の生成方法も前述のものに限らず、同様の信号波形が生成できるものであれば他のデジタル方式やアナログ方式であってもかまわない。
【0022】
次に、本発明の第2の実施の形態の照明装置について、図10を用いて説明する。図10はバックライト方式の液晶ディスプレイの照明装置を示し、多数本の誘電体バリア放電ランプLP1を並設してバックライト用の平面光源102とし、筐体をなすバックフレーム101には第1の実施の形態の放電灯駆動装置の筐体を取り付け、このバックフレーム101とバックライト窓枠フレーム103との間に上記の平面光源102を収容し、バックライト窓枠フレーム103とその前方のフロントフレーム105との間に液晶ガラス基板104を収容した構造をなしている。
【0023】
このような照明装置では、第1の実施の形態として説明した放電灯駆動装置100を平面光源102の誘電体バリア放電ランプ群の点灯制御に採用しているので、液晶ガラス基板104を背面から照明するのに、大きく調光している時(全点灯の20%以下の調光時)にもチラツキなく照明することができ、液晶ディスプレイを暗くした場合にもその明るさを安定させることができる。
【0024】
次に、本発明の第3の実施の形態の照明装置を、図11を用いて説明する。図11に示す照明装置は、例えばスキャナやコピー機のようなOA機器に原稿読取光源として組み込まれたセンサー光源ユニット200であり、第1の実施の形態において説明した放電灯駆動装置201とこれにて調光制御される光源としての誘電体バリア放電ランプLP1と、光源である誘電体バリア放電ランプLP1から発せられ原稿面ガラス板210上の原稿211の面に当たって反射して来る反射光を集光するレンズ204と反射光の強度を検出するCCDセンサ203から構成されている。
【0025】
このようなOA機器の原稿読取光源としての照明装置でも、第1の実施の形態の放電灯駆動装置により光源としての誘電体バリア放電ランプを調光制御することで、大きく調光している時にも光源がちらつくことがなく、よって読取光源として安定し、OA機器の原稿読取性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の1つの実施の形態の放電灯駆動装置の回路で、正の管電流を流している状態を示すブロック図。
【図2】上記実施の形態の放電灯駆動装置の回路で、負の管電流を流している状態を示すブロック図。
【図3】上記実施の形態において制御回路が行うPWM調光方法のフローチャート。
【図4】上記実施の形態による各部の信号のタイミングチャート。
【図5】上記実施の形態による管電圧、管電流の実波形図。
【図6】上記実施の形態による別例の各部の信号のタイミングチャート。
【図7】上記実施の形態によるさらに別例の各部の信号のタイミングチャート。
【図8】上記実施の形態による前記別例による管電圧、管電流の実波形図。
【図9】上記実施の形態による前記さらに別例による管電圧、管電流の実波形図。
【図10】本発明の第2の実施の形態の照明装置の分解斜視図。
【図11】本発明の第3の実施の形態の照明装置の一部破断せる斜視図。
【図12】従来例による管電圧、管電流の実波形図。
【符号の説明】
【0027】
10 制御回路
100 放電灯駆動装置
101 バックフレーム
102 平面光源
103 バックライト窓枠フレーム
104 液晶ガラス基板
105 フロントフレーム
200 センサー光源ユニット
201 放電灯駆動装置
203 CCDセンサ
204 レンズ
LP1 誘電体バリア放電ランプ
T1 トランス
SG1 駆動信号(1)
SG2 駆動信号(2)
CS1 調光信号
S1 スイッチング素子
S2 スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電媒体が充填され、当該放電媒体に放電現象を誘起するための少なくとも一対以上の電極を有し、当該電極の少なくとも一方と前記放電媒体との間に誘電体が介在する構造を有する誘電体バリア放電ランプと、
前記電極に交流の高電圧を印加するためのトランスを含む給電装置と、
前記給電装置の交流高電圧出力をスイッチング手段に基づいて制御しかつそのデューティー比を変更することによって前記誘電体バリア放電ランプの光出力を調光するPWM調光装置と、
前記PWM調光装置による前記誘電体バリア放電ランプに対する電圧印加期間の最初のサイクルと最終サイクルとで管電流の極性が異極性になるように制御するPWM調光制御手段とを備えたことを特徴とする放電灯駆動装置。
【請求項2】
前記PWM調光制御手段は、前記電圧印加期間中に互いに逆極性のパルス状の第1の駆動信号と第2の駆動信号を生成し、かつ、前記電圧印加期間内の最初のサイクルで、前記トランスの1次巻線に正の電圧を印加し、前記誘電体バリア放電ランプへの電圧印加が負の電圧印加から開始する制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の放電灯駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2の放電灯駆動装置をケーシングに収容した照明装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−107890(P2006−107890A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291774(P2004−291774)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】