説明

放電管点灯装置

【課題】 圧電トランスを用いた場合の中輝度領域におけるトランス効率を改善するとともに、低輝度領域での調光も可能とした放電管点灯装置を提供する。
【解決手段】 調光信号108を検出する判別回路111を設け、調光信号108が閾値を越えているかどうかを判別する。電流調光回路109からの出力である電流制御信号は2値の信号であって、調光信号108が閾値を越えたかどうかにより値が変化する。また時分割調光回路110からのパルス制御信号は、そのデューティ比が調光信号108の強度に比例して変化する信号であるが、調光信号108が閾値を越えた場合にはデューティ比が不連続に変化する。この2種類の制御信号が電圧制御発振回路103にて重畳されて駆動回路104を制御し、放電管112では電流調光および時分割調光が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電管の点灯および調光を行うための放電管点灯装置に関するものであり、とくに圧電トランスを用いて冷陰極管の点灯および調光を行うために好適な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電管の一種である冷陰極管は、主として液晶ディスプレイなどのバックライトとして需要が増加している。これら放電管を点灯させる装置として、商用電源からの交流電流をスイッチング電源によって直流化した電流や、バッテリからの直流電流を、放電管点灯装置に供給して高電圧を生成させる装置が知られている。この放電管点灯装置としては、一対のスイッチング素子を交互にON・OFF制御させる回路と、インダクタンス素子およびキャパシタンス素子による共振回路とを有する構成が用いられる。そこで得られた交流電流は昇圧トランスに導かれてその出力側に高電圧の交流電圧を発生させ、それにより放電管を点灯させることができる。
【0003】
放電管点灯装置によって放電管の調光を行う方法としては、一般に電流調光方式と時分割調光方式が知られている。図9をもとに、これら2種類の調光方式について説明する。図9は放電管点灯装置によって放電管に印加される一般的な電流波形を示したグラフの例である。図9(a)は調光しない場合(輝度が最大)の電流波形、図9(b)は電流調光方式による調光を実施した場合の電流波形、図9(c)は時分割調光方式による調光を実施した場合の電流波形、図9(d)は図9(c)の電流波形の一部を時間軸方向に拡大したもの、図9(e)は電流調光方式と時分割調光方式の2種類の調光をともに実施した場合の電流波形をそれぞれ示したグラフである。
【0004】
図9(a)での1目盛りはそれぞれ1m秒(1ms)および5mAであり、調光しない場合のこの電流波形はおおよそ50kHz、18mAP-P(peak to peak)である。図9(d)以外の各グラフの1目盛りの単位は図9(a)の場合と同一であり、図9(d)での縦軸は他のグラフと同一、横軸のみ1目盛りが20μ秒である。なお図9(a)〜図9(c)および図9(e)ではグラフの波形が潰れてしまっているので、波形の繰り返し周期などはこれらのグラフからは読み取ることができない。
【0005】
図9(b)に示すように、電流調光を実施すると放電管に印加される電流値が一律に低下し、グラフの波形が低くなる。図9(b)での電流波形はおおよそ10mAP-Pであり、この場合は放電管に印加される電流値はもとの約56%に低下している。電流調光ではグラフの波形(正弦波)は変化しない。一方、時分割調光の場合には、図9(c)に示すようにグラフの波形の最大値が低くなることはないものの、電流が印加される期間(点灯期間)とほとんど印加されない期間(消灯期間)が交互に設けられることとなる。この点灯期間と消灯期間の比率を制御しながら放電管の点滅を行って、放電管の輝度の制御を実施する。なお電流調光および時分割調光では放電管の輝度は一般にその周波数に関連しないが、昇圧トランスとして圧電トランスを用いる場合は高圧側の最大出力電力とその周波数とが依存関係にあるために、電流調光の場合のみ調光による放電管の輝度の低下に従ってその周波数が変化(増加)する。
【0006】
なお本特許における放電管の輝度とは、放電管の瞬間的な明るさではなく、放電管の消灯期間も含めた平均的な明るさを意味する。図9(c)における点灯期間と消灯期間の比率は約1:3であり、またその繰り返し周期は約200Hzである。図9(c)の場合には放電管にて消費される単位時間当たりの平均電力は、図9(a)の場合の約25%に低下することになる。
【0007】
図9(e)はこの電流調光と時分割調光をともに実施した場合を示しており、図9(b)および図9(c)に示す各グラフの波形を重ね合わせたものとなっている。この場合に放電管にて消費される単位時間当たりの平均電力は、図9(a)に示した最初の場合の約14%に低下することになる。
【0008】
また図9(d)に示した電流波形は、時分割調光の場合に消灯状態から点灯状態に立ち上がる際の遷移領域における波形を時間軸方向に目盛りを拡大して示したものであり、放電管を流れる管電流は、消灯状態から波形のピークの最大値に達するまでに多少の時間を要することが示されている。
【0009】
このような電流調光方式と時分割調光方式の2種類の調光方式をともに実施する放電管点灯装置の従来例として、特許文献1に記載の方法について説明する。特許文献1の場合にこの2種類の調光方式を併用する理由は、電流調光方式や時分割調光方式がそれぞれ得意とする調光範囲が異なることによる。
【0010】
一般に電流調光方式は放電管が低輝度となる領域での調光能力が低く、放電管に流す管電流を無理に絞ると点灯が不安定となり、放電管を点灯し続けることが困難になる。電流調光方式によって十分に有効な調光が可能な範囲は、調光を行わない場合の放電管への印加電流値を100%とした場合に、おおよそ50%〜100%の範囲である。一方、時分割調光方式では放電管が低輝度の場合に点灯を維持できなくなる問題は生じないが、放電管や周囲の配線から高周波ノイズが多く輻射されるという問題があり、このノイズの強度は放電管に流される管電流の電流値とともに増加する。このことから、高輝度の場合には電流調光方式、低輝度の場合には時分割調光方式と、調光方式を輝度によって切り換えて放電管の調光を行う方式が特許文献1に記載の方法である。以下、図6〜図8に基づいて特許文献1に記載の放電管点灯装置における調光方式について説明する。
【0011】
図6は特許文献1に記載の放電管点灯装置の例における構成回路をブロック図として記したものである。図6において、放電管点灯装置601には直流電源602(VCCと表示)が供給されており、電圧制御発振回路603および駆動回路604にも電源が供給されているほか、図示していないものの昇圧トランス605および放電管612以外の各回路にも駆動電源として供給されている。放電管612の点灯により、放電管電流検出回路606は放電管612を流れる管電流を検出して、その電流値に応じた管電流信号を電圧制御発振回路603に入力し、電圧制御発振回路603はこの管電流信号によって制御された駆動信号を駆動回路604に入力する。なお下記の時分割制御が実施されている場合、この放電管電流検出回路606から出力される管電流信号は直流電圧信号ではなく、時分割制御の周波数に応じた矩形波である。
【0012】
電圧制御発振回路603は一対のスイッチング素子により構成されており、ON・OFF制御により一定周波数の駆動信号を生成している。この駆動信号が入力される駆動回路604はインダクタンス素子およびキャパシタンス素子を有しており、その共振回路からの出力電圧が入力されることで昇圧トランス605が駆動する。昇圧トランス605は高電圧の交流電流を放電管612に供給し、これによって放電管612が点灯する。以上の放電管電流検出回路606から始まる制御によって、放電管612の輝度は常に一定の値に保たれる。
【0013】
この放電管を含む装置の使用者が、放電管の輝度を変えるために外部から調光信号608に変更を加えた場合には、下記の手順によって調光のための信号が電圧制御発振回路603に加えられ、最終的に放電管612の輝度が変更される。まず外部からの調光信号608が判別回路611に入力され、この電圧値が放電管点灯装置601により予め定められている値(閾値)以上かどうかを判断する。特許文献1に記載の方法では、調光信号608の値が閾値以上の場合には放電管点灯装置601が電流調光を、閾値以下の場合には時分割調光を行うように定めている。ここで調光とは、何も行わない場合よりも放電管電流を小さくするか、あるいは消灯期間を設けることによって、放電管612の輝度を低くすることである。特許文献1記載の方法ではこの閾値によって電流調光方式と時分割調光方式の調光方式を切り換えることが特徴である。
【0014】
ここで調光信号608の値が閾値以上の場合には、電流調光回路609は入力された調光信号の強度に応じた電流制御信号を生成して電圧制御発振回路603に送る。この時には判別回路611からは時分割調光回路610に制御信号が入力されず、そのため時分割調光回路610はパルス制御信号としてON信号となる期間とOFF信号となる期間を有するパルス信号ではなく、OFF信号となる期間を有しない、一様なベース信号をそのまま電圧制御発振回路603に入力する。電圧制御発振回路603は、放電管電流検出回路606からの入力信号に前記電流調光回路609からの電流制御信号を重畳させ、次いで時分割調光回路610からのパルス制御信号を重畳させて、調光信号608の強度に見合った制御信号として駆動回路604を制御して、最終的に放電管612の輝度を制御する。ここで時分割調光回路610からのパルス制御信号は一様なベース信号であるので、実際は放電管電流検出回路606からの入力信号と、電流調光回路609からの電流制御信号のみによる制御がなされることとなる。
【0015】
一方、調光信号608の値が閾値以下の場合には、判別回路611は時分割調光回路610に対して制御信号を出力し、それによって時分割調光回路610は調光信号608の強度に基づいたパルス信号を発生させて、パルス制御信号として電圧制御発振回路603に入力する。このパルス制御信号は、調光信号608からの制御信号に基づいて、そのON信号となる期間とOFF信号となる期間の割合を変化させたON・OFFの2値制御の信号である。なお電流調光回路609では、閾値に関わらず調光信号の強度に応じた電流制御信号が常に生成されて電圧制御発振回路603に送られるが、調光信号608の値が閾値以下となる場合には、この電流制御信号の強度の情報は実際には電圧制御発振回路603にて無視されるように回路が構成されている。その代わりに、調光信号608の値が閾値である場合の電流制御信号の強度に相当する一定値の信号が、電圧制御発振回路603内にて生成されて重畳される。そのことから、判別回路611からの制御信号を電流調光回路609に入力する回路は不要となるために設けられていない。
【0016】
時分割調光回路610からのパルス制御信号は、ON信号となる期間とOFF信号となる期間の合計に対するON信号となる期間の比率であるデューティ比が、調光信号608の値に比例するように制御されているが、一方でこのデューティ比は調光信号608の値が閾値以上の場合には常に100%としている。以上の構成により調光信号608の値が閾値以下の場合には、電圧制御発振回路603は、放電管電流検出回路606からの入力信号に対してまず閾値の場合の電流制御信号の強度に相当する一定値の信号を重畳させる。次いで時分割調光回路610からのパルス制御信号を重畳させて、調光信号608の強度に見合った制御信号として駆動回路604に入力されて、最終的に放電管612の輝度を制御する。つまり放電管電流検出回路606からの入力信号と、時分割調光回路610からのパルス制御信号のみによる制御がなされることとなる。
【0017】
以上の回路構成により、特許文献1に記載の放電管点灯装置においては、調光信号が閾値以上の場合には電流調光が、閾値以下の場合には時分割調光が実施されて放電管の輝度が制御される。
【0018】
図7は特許文献1に記載の放電管点灯装置の例において、調光信号の強度とそれによる電流調光回路、時分割調光回路の出力信号強度の関係について示したグラフである。図7(a)は調光信号の強度とそれによる電流調光回路からの電流制御信号の強度との関係、図7(b)は調光信号の強度とそれによる時分割調光回路からのパルス制御信号のデューティ比との関係をそれぞれ示している。なお図7においては、その閾値は調光信号の強度の最大値(Max)の場合の50%の値に定めている。調光信号の強度が最大値(Max)の場合には電流制御信号の出力は最大値(Max)、パルス制御信号出力のデューティ比も100%であり、放電管電流検出回路からの信号がそのまま電圧制御発振回路に入力されることとなって調光は行われない。
【0019】
調光信号の強度がそれより低下して、最大値と閾値の間の値となった場合の調光動作は以下のようになる。まず図7(a)に示すように、調光信号の強度が低下した場合には、その信号強度に比例して電流制御信号の強度もまた低下する。一方、図7(b)に示すように、パルス制御信号のデューティ比は100%のままで変化せず、そのため放電管点灯装置の調光はこの場合には電流制御信号の強度の変化のみで制御され、電流調光のみが実施されることとなる。
【0020】
それに対し、調光信号の強度が閾値よりもさらに低下した場合の調光動作は以下のようになる。図7(a)の点線で示すように、調光信号の強度と電流制御信号の強度とは依然として比例関係にある。一方、図7(b)に示すように、調光信号の強度が閾値よりも低い場合にはパルス制御信号のデューティ比は100%よりも低下することとなり、両者は比例関係を保持したまま低下する。このため放電管点灯装置の調光は電流制御信号の強度とパルス制御信号のデューティ比の両方によって制御されることになるが、実際には回路上の構成によって、この場合には電流調光回路からの出力信号の値は放電管の輝度の制御に使用されることはない。その代わりに、閾値における電流制御信号の強度の値が電圧制御発振回路に常に入力されるよう構成されている。そのため、図7(a)の実線で示すように、調光信号となる電流制御信号の強度は一定値となっている。
【0021】
つまり調光信号の強度が閾値以上の場合には電流調光のみが行われ、一方、閾値以下の場合には電流調光と時分割調光の双方が実施される。ただし閾値以下の場合には電流調光においては常に一定値となる調光が行われており、その範囲内において時分割調光が実施される。時分割調光を実施することで放電管に流れる電流値は、その上限が閾値における電流制御信号の強度により決まる電流値に制限されているため、放電管や周囲の配線から輻射されるノイズの強度を抑えることが可能である。
【0022】
図8は特許文献1に示された放電管点灯装置にて調光を行った際に放電管に流れる電流(管電流)の波形のグラフを示したものであり、横軸は時間である。一番上の電流波形は調光しない場合(輝度が最大)の波形であり、上から順に調光信号の強度を次第に低下させた場合を示している。一番上の、調光しない場合の管電流(Io)は40mArms(rms=Root Mean Square:実効値)であり、次いでIo=20mArms、Io=17.5mArms、Io=15mArms、Io=7mArmsの場合を順に示している。上から2番目のIo=20mArmsの場合が閾値である。なお特許文献1に記載の方法では放電管として熱陰極管が想定されているために、冷陰極管を使用した場合よりも全般的に管電流の値が大きくなっている。
【0023】
管電流Ioが40mArmsから20mArmsに低下する過程では、調光信号の強度が閾値以上となることから時分割調光は行われず、電流調光によって電流波形の振幅のみが減少することで電流値が低下している。次いでIoが20mArmsから17.5mArmsに低下する過程では、電流波形の振幅の最大値は20mArmsの場合から変化しない。しかし時分割調光の実施によって、電流波形の振幅が小さくなる領域が周期的に生じた波形となっており、これによって管電流の実効値はIo=20mArmsの場合よりも低下している。管電流をIo=15mArms、Io=7mArmsとさらに低下させる場合でも、電流波形の振幅の最大値は20mArmsの場合と同一であって、代わりにパルス制御信号のデューティ比を順に小さくすることによって、管電流の実効値を低下させている。
【0024】
このように、時分割調光を行う領域を閾値以下の場合に限定して実施する方法には以下に記す利点もある。図9(d)に示すように、時分割調光によって管電流の電流波形の振幅が小さい領域から振幅が立ち上がり、最大振幅に達して安定するまでには一定の時間が必要である。しかしこの時間は最大振幅の大きさに関連しているので、閾値を設けて時分割調光の際の最大振幅を小さくすれば、この立ち上がり時間も短縮することができる。その結果、調光が可能な放電管の最低輝度の範囲をより引き下げて調光範囲を拡大することができ、このことは使用者がより低輝度の領域にて放電管を使用することを可能にして、結果的に放電管点灯装置の使用時の消費電力を少なくすることにもつながる。
【0025】
【特許文献1】特開平10−112396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
以上記した特許文献1に記載の方法では、昇圧トランスとして巻線式のトランスを使用する場合が示されているが、現在では放電管としてとくに冷陰極管を使用する場合には、圧電トランスを用いることが一般化している。圧電トランスは巻線を使用せず、圧電振動子の共振現象を利用して高電圧を発生させるデバイスであり、巻線を用いないことから信頼性が高く、低背化が可能であるなど、放電管点灯装置の昇圧トランスとして有利な特徴を備えている。以下ではこの用途に圧電トランスを使用する場合の問題点について検討する。一般に圧電トランスでは入力信号の周波数によって、その最大出力電力(ある周波数に対する負荷の消費電力の最大値)およびトランス効率(出力電力/入力電力)が変化することが知られている。図10に一般的な圧電トランスにおける入力信号の周波数と、最大出力電力およびトランス効率の関係についてのグラフの例を示す。
【0027】
図10のグラフにおいて、実線は圧電トランスの最大出力電力、点線はトランス効率を示している。このうち最大出力電力は入力信号の周波数が圧電トランスの共振周波数frの場合に最高となり、frから離れるにつれて低くなる。一方、圧電トランスのトランス効率はfrより若干高い周波数において最高となり、そこから離れるに従ってやはり低くなるが、図10に示されるようにトランス効率が高い周波数域の方が、その低下の割合が緩やかとなっている。このため、圧電トランスはfrよりも若干高い周波数域にて使用されることが一般的である。このときに放電管の電流調光を行って輝度を低下させる場合には、圧電トランスへの入力信号の駆動周波数を高くすることで放電管を駆動する最大出力電力を低くしている。そのため電流調光を行って放電管の輝度を低下させるにつれて圧電トランスでのトランス効率が低下していくこととなってしまい、閾値に達するまでの比較的消費電力の高い中輝度領域において、トランス効率の高い条件で調光を実施することができないという問題があった。
【0028】
従って、本発明の目的は、圧電トランスの特性が原因で従来の調光ではトランス効率が低下していた中輝度領域においても、閾値に達するまでのこの領域における調光方法の見直しを行うことにより、トランス効率の良い条件にて調光を実施することができ、しかも低輝度の場合においても放電管の調光を可能とする、放電管点灯装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記課題を解決するために、本発明においては、放電管点灯装置を従来と同じく電流調光および時分割調光の2種類の調光方式を実施する調光装置とする。その上で、これら2種類の調光方法をともに切り換えるための基準として予め閾値を与えておき、入力される調光信号が前記の閾値を越えているかどうかによって、電流調光方式のみではなく、時分割調光方式においてもその調光方法を切り換えることとする。その上で本発明では、このうち電流調光方式を2値のみの制御として、入力される調光信号が閾値を越えて変化する場合にのみ出力される電流制御信号の値が2値の間で変化するようにする。閾値を越えない場合であれば閾値を上回る場合も下回る場合も、いずれの場合でも電流制御信号の値が一定値となるように構成する。
【0030】
一方、時分割調光での出力信号はパルス制御信号であるが、特許文献1に記載の例の場合とは異なり、入力される調光信号の強度が最大値から閾値までの中輝度領域の場合にも、それ以外の場合と同じく、時分割調光を常に実施するよう構成する。このとき、入力される調光信号が変化しても閾値を越えない場合には、このパルス制御信号のデューティ比は調光信号の強度に比例した値をとりつつ変化するようにし、一方、調光信号が閾値を越えて変化する場合には、パルス制御信号のデューティ比は閾値の場合を挟んで不連続に変わるように構成する。
【0031】
以上の構成によって、放電管点灯装置に入力される調光信号の強度を変化させる場合には、調光信号の強度が閾値を越えない限りは電流調光の結果は一定値で変化せず、放電管の輝度の変化は時分割調光の結果によって与えられることとなる。一方、調光信号の強度が閾値を越えて変化した場合には、閾値を跨いだ瞬間に電流調光、時分割調光の両方の出力信号がともに不連続に変化する。しかし両者の変化が互いに打ち消し合うように各調光回路が構成されているために、放電管の輝度が不連続に変化することはなく、結果として放電管の輝度は調光信号の強度の変化に対して常に滑らかに変化することとなる。
【0032】
ところでこの場合には、調光信号の強度に関係なく時分割調光が常に実施されることとなるため、特許文献1に記載の例の場合のように、高輝度の調光領域にて時分割調光を停止して高周波ノイズの輻射を抑えることはできない。しかし放電管としてとくに冷陰極管を用いる場合には、放電管の駆動のために必要な電圧が熱陰極管などに比べて高いことから点灯に必要な管電流が逆に小さくなり、それによって高周波ノイズの輻射量も減少するため、発生する高周波ノイズは熱陰極管での低輝度領域における発生量と同等程度以下に抑えられる。従って、冷陰極管が高輝度で点灯する場合に時分割調光を実施することが、高周波ノイズの発生の面でとくに問題となることはない。また低輝度領域においては電流調光を行うため圧電トランスのトランス効率の低い領域を使用することになるが、この領域での放電管の消費電力はもともと小さいために、その影響は大きくはならない。
【0033】
即ち、本発明では、放電管点灯装置は、所定の共振周波数を有し、その出力が放電管に入力される圧電トランスと、前記共振周波数近傍の前記共振周波数より高い周波数の発振信号を発生させる発振回路と、前記発振信号に基づいて、前記圧電トランスを駆動する駆動回路と、前記放電管に流れる電流を検出する放電管電流検出回路とを備え、前記発振回路は、前記放電管電流検出回路からの出力信号によって制御され、調光信号に基づいて調光を行う調光回路と、前記調光信号の判別回路とを備え、前記調光回路が電流調光回路および時分割調光回路からなり、前記判別回路は、調光方法の切り換えを実施する基準である閾値を予め与えられており、前記判別回路により、前記調光信号が変化する際に前記閾値を越えるか否かが判定され、前記調光信号が前記閾値を越えずに変化する場合には、前記時分割調光回路からの出力が連続に変化し、前記電流調光回路からの出力は、絶対値が最大である第1の値と絶対値が前記第1の値よりも小さい第2の値のいずれかの値をとり、前記電流調光回路からの出力が前記第1の値をとる場合には、前記時分割調光回路からの出力は、絶対値が最大である第3の値と絶対値が前記第3の値よりも小さい第4の値との間のいずれかの値をとるとともに、前記調光信号が変化する場合の変化量に対する前記時分割調光回路からの出力の変化量の比率が一定であり、前記電流調光回路からの出力が前記第2の値をとる場合には、前記時分割調光回路からの出力は、絶対値が前記第4の値よりも大きい第5の値と絶対値が前記第5の値よりも小さい第6の値との間のいずれかの値をとるとともに、前記調光信号が変化する場合の変化量に対する前記時分割調光回路からの出力の変化量の比率が一定であることを特徴とする、放電管点灯装置である。
【0034】
また、本発明では、放電管点灯装置は、所定の共振周波数を有し、その出力が放電管に入力される圧電トランスと、前記共振周波数近傍の前記共振周波数より高い周波数の発振信号を発生させる発振回路と、前記発振信号に基づいて、前記圧電トランスを駆動する駆動回路と、前記放電管に流れる電流を検出する放電管電流検出回路とを備え、前記発振回路は、前記放電管電流検出回路からの出力信号によって制御され、調光信号に基づいて調光を行う調光回路と、前記調光信号の判別回路とを備え、前記調光回路が電流調光回路および時分割調光回路からなり、前記判別回路は、調光方法の切り換えを実施する基準である閾値を予め与えられており、前記判別回路により、前記調光信号が変化する際に前記閾値を越えるか否かが判定され、前記時分割調光回路からの出力がパルス信号であり、前記調光信号が前記閾値を越えずに変化する場合には、前記パルス信号がON信号となる期間とOFF信号となる期間の合計に対するON信号となる期間の比率である、デューティ比が連続に変化し、前記電流調光回路からの出力は、絶対値が最大である第1の値と絶対値が前記第1の値よりも小さい第2の値のいずれかの値をとり、前記電流調光回路からの出力が前記第1の値をとる場合には、前記時分割調光回路からの出力のデューティ比は、最大値である第3の値と前記第3の値よりも小さい第4の値との間のいずれかの値をとるとともに、前記調光信号が変化する場合の変化量に対する前記時分割調光回路からの出力のデューティ比の変化量の比率が一定であり、前記電流調光回路からの出力が前記第2の値をとる場合には、前記時分割調光回路からの出力のデューティ比は、前記第4の値よりも大きい第5の値と前記第5の値よりも小さい第6の値との間のいずれかの値をとるとともに、前記調光信号が変化する場合の変化量に対する前記時分割調光回路からの出力のデューティ比の変化量の比率は一定であることを特徴とする、放電管点灯装置である。
【0035】
さらに、本発明は、前記調光信号が変化して前記閾値を越えた場合であっても、前記放電管の輝度は連続的に変化することを特徴とする、放電管点灯装置である。
【0036】
さらに、本発明は、前記調光信号がパルス信号であることを特徴とする、放電管点灯装置である。
【0037】
さらに、本発明は、前記調光信号が直流電圧信号であることを特徴とする、放電管点灯装置である。
【0038】
さらに、本発明は、前記判別回路がコンパレータを含む回路により構成されていることを特徴とする、放電管点灯装置である。
【0039】
さらに、本発明は、前記判別回路がトランジスタを含む回路により構成されていることを特徴とする、放電管点灯装置である。
【0040】
さらに、本発明は、前記判別回路が前記放電管電流検出回路の動作状態をスイッチする、スイッチ回路により構成されていることを特徴とする、放電管点灯装置である。
【0041】
さらに、本発明は、前記放電管が冷陰極管であることを特徴とする、放電管点灯装置である。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、放電管がどのような輝度で点灯する場合でも常に時分割調光を実施する構成としたことにより、調光信号の強度が最大値から閾値までの中輝度領域にて調光を行う場合であっても、高輝度の場合と同じく、圧電トランスをその最大出力電力が高くてトランス効率の優れた領域において一貫して使用することが可能である。これによって放電管の輝度が中輝度領域にある場合に、圧電トランスでの消費電力を従来よりも低減させることができる。またこの放電管点灯装置においては、従来例の場合と同様に、低輝度領域の場合には電流調光による制御を常に一定値とした上で、そこに時分割調光の結果を重畳させる構成としている。これにより時分割調光のパルス信号におけるON信号の立ち上がり時間を短縮して、調光可能な放電管の最低輝度の範囲を引き下げることができ、それによって低輝度領域での放電管の調光範囲の拡大も可能にしている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明の実施の形態による放電管点灯装置について、図1ないし図5に基づいて説明する。
【0044】
図1は本発明における放電管点灯装置の構成回路のブロック図の例である。図1において、放電管点灯装置101には直流電源102(VCCと表示)が供給されており、電圧制御発振回路103および駆動回路104にも電源が供給されているほか、図示していないものの圧電トランス105および放電管112以外の各回路にも駆動電源として供給されている。放電管112の点灯により、放電管電流検出回路106は放電管112を流れる管電流を検出してその電流値に応じた管電流信号を発振周波数制御回路107に入力し、電圧制御発振回路103は生成する駆動信号の周波数をこの管電流信号によって制御する。なお本発明における放電管点灯装置では常に時分割制御が実施されているので、この放電管電流検出回路106から出力される管電流信号は直流電圧信号ではなく、時分割制御の周波数に応じた矩形波である。
【0045】
電圧制御発振回路103は一対のスイッチング素子により構成されており、ON・OFF制御により駆動信号を生成している。この駆動信号の周波数は、発振周波数制御回路107からの発振制御信号によって変化させられる。駆動回路104はインダクタンス素子およびキャパシタンス素子を有しており、それらの共振によって圧電トランス105を駆動する。圧電トランス105は電圧制御発振回路103が生成した駆動信号の周波数によって制御された高電圧の交流電流を放電管112に供給し、これにより放電管112が点灯する。以上の放電管電流検出回路106から始まる制御によって、放電管112の輝度は常に一定の値に保たれる。
【0046】
ここで、電圧制御発振回路103が生成する駆動信号の周波数は発振周波数制御回路107が決定している。発振周波数制御回路107は、放電管電流検出回路106からの管電流信号、およびそれに重畳された電流調光回路109からの電流制御信号によってこの駆動信号の周波数を決定する。なお発振周波数制御回路107には、この他に時分割調光回路110からのパルス制御信号が入力されている。これは、時分割制御によって放電管112には管電流が流れない消灯期間があることから、放電管電流検出回路106からの管電流信号は矩形波となっており、このうち信号強度が低い期間には、放電管112の管電流が不足して消灯していると発振周波数制御回路107が誤って判断する可能性があるためである。なおパルス制御信号はON信号となる期間とOFF信号となる期間の割合を変化させる、ON・OFFの2値制御の信号である。
【0047】
もし発振周波数制御回路107がこの誤判断を行ってしまうと、管電流を増加させるために圧電トランス105に対して周波数掃引が行われ、結果として圧電トランス105はその共振周波数に近い周波数にて駆動されることとなって、次の点灯期間には放電管112に非常に大きな管電流が流れてしまうことになる。この問題を解決するために、時分割調光回路110から発振周波数制御回路107に対してパルス制御信号を送る経路を設けておき、発振周波数制御回路107がこの消灯期間に得た情報をもとに駆動信号の周波数の決定を行わないように定める。これにより管電流信号の信号強度が低い期間があってもそれにより周波数掃引が行われることがないようにでき、消灯期間が終わって次の点灯期間が始まっても放電管112が安定した点灯を行えるようにしている。
【0048】
以上の構成によって、発振周波数制御回路107では、放電管電流検出回路106からの放電管112を流れる電流値の情報と、電流調光回路109からの電流制御の情報とが重畳された発振制御信号が生成されて、この2種類の情報が反映された電圧信号として電圧制御発振回路103に入力される。なお発振制御信号は、入力されたパルス制御信号によって放電管電流検出回路106からの管電流信号の信号強度が低い期間についての補完がなされているので、この信号は矩形波とはならない。
【0049】
発振制御信号が電圧制御発振回路103に入力されると、その信号強度に応じた周波数の高周波信号が生成されて、駆動信号として駆動回路104に入力される。一方、電圧制御発振回路103には時分割調光回路110からのパルス制御信号も入力されており、このため駆動信号は信号強度が低い期間を有している。その間は圧電トランス105からは高電圧の交流電流が放電管112に供給されることがなく、この期間は放電管112には管電流が流れずに消灯期間となる。放電管112の点灯期間の割合は、パルス制御信号のデューティ比と一致しており、従って放電管112の平均的な輝度に比例する。以上のように、放電管112の瞬間の明るさは電流調光回路109からの電流制御信号によって制御され、放電管112の点灯期間が時分割調光回路110からのパルス制御信号によって制御されることになるので、放電管112の輝度は電流調光、時分割調光の両方の調光方式によって制御を受けることになる。
【0050】
本発明における放電管点灯装置の使用者が、放電管の明るさを変化させるために外部から調光信号108を変化させた場合には、この信号は以下の手順によって電圧制御発振回路103に入力されて、最終的に放電管112の輝度が変えられる。調光信号108はまず判別回路111に入力されて、この信号と放電管点灯装置101において予め定められている値(閾値)との関係について判断される。ここで調光信号108は電圧信号でもパルス信号でもよい。また、調光の対象である放電管112の輝度を高くしたい場合に調光信号108の電圧を高くする(パルス信号の場合はそのデューティ比を大きくする)ように判別回路111や電流調光回路109、時分割調光回路110を構成してもよいし、逆に放電管112の輝度を高くしたい場合に、調光信号108の電圧を低くする(パルス信号の場合はそのデューティ比を小さくする)ようにこれら各回路を構成してもよい。
【0051】
電流調光回路109は判別回路111による判断に基づいて電流制御信号を生成し、この信号は放電管電流検出回路106に入力される。この電流制御信号は2種類の大きさの電圧信号のいずれかであって、調光信号108が変化しても閾値を越えない場合には一定の値をとる。一方、時分割調光回路110は調光信号108に基づいてパルス制御信号を生成するが、そのデューティ比は調光信号108の強度もしくはデューティ比とともに変化するものとなっていて、そのデューティ比の変化の比率は判別回路111による判断結果によって2種類から選択される。ここで電流制御信号は2つの一定値しか取り得ないために、電流制御信号には調光信号108の強度が反映されることがなく、そのため調光信号108から電流調光回路109に直接入力する回路は不要である。
【0052】
以下では調光信号108を電圧が変化する信号(電圧信号)として、放電管112の輝度を低下させるためにその電圧信号を低く変化させた場合について、図2に基づいて説明する。なお図2においては、その閾値を最大値(Max)の50%の値に定めている。
【0053】
図2は本発明における、調光信号の強度とそれによる電流調光回路、時分割調光回路の出力信号強度の関係について示したグラフの例である。図2(a)は調光信号の強度とそれによる電流調光回路からの電流制御信号の強度との関係、図2(b)は調光信号の強度とそれによる時分割調光回路からのパルス制御信号のデューティ比との関係をそれぞれ示している。調光信号の強度が最大値(Max)の場合には、電流制御信号の強度は最大値(Max)であり、放電管電流検出回路からの信号がそのまま発振周波数制御回路に入力されることとなる。また、パルス制御信号出力のデューティ比も100%であるため、電圧制御発振回路から駆動回路に入力される信号は消灯期間を持たず、無調光の場合の交流電流がそのまま放電管に流れることとなって調光は行われない。なおデューティ比が100%のパルス制御信号出力はON信号となる期間のみでOFF信号となる期間を有しない、一様なベース信号である。
【0054】
次に、調光信号の強度を最大値と閾値との間の中輝度領域に低下させた場合の調光動作は以下のようになる。まず図2(a)に示すように、調光信号の強度を最大値より低下させても電流制御信号の強度は変化せず、最大値のままである。一方、図2(b)に示すように、パルス制御信号のデューティ比は100%よりも下がるものの、調光信号の強度とは比例関係を有したままで変化する。このため放電管点灯装置の調光はパルス制御信号のデューティ比の変化のみで制御され、時分割調光が実施されることとなる。
【0055】
さらに、調光信号の強度を閾値を越えてさらに低下させる場合の調光動作は以下のようになる。図2(a)に示すように、調光信号の強度が閾値の場合に電流制御信号は不連続に大きく変化する。この変化後の閾値での値は調光信号の強度が最大値の場合の電流制御信号の強度と比例関係にある。ここで閾値は調光信号の強度の最大値の50%の値であるので、この時の電流制御信号の強度も最大値の50%の値となっている。調光信号の強度を閾値の値からさらに低下させる場合には、調光信号の強度に関わらず電流制御信号の強度は変化せずに、閾値の場合の電流制御信号の強度である、最大値の50%の値を維持し続けることとなる。
【0056】
一方、図2(b)に示すように、調光信号の強度が閾値の値となる場合に、パルス制御信号のデューティ比は不連続にもう一度100%に戻る。そして調光信号の強度を閾値よりもさらに低下させる場合には、100%の値から再度下がり始め、調光信号の強度との新たな比例関係を有した状態で変化する。以上の結果により、調光信号の強度が閾値を過ぎてさらに低下させる場合であっても、放電管点灯装置の調光はパルス制御信号のデューティ比の変化のみで制御され、時分割調光が実施されることとなる。なお調光信号の強度が閾値の場合に電流制御信号の強度が最大値の50%の値まで不連続に変化するため、パルス制御信号のデューティ比が100%に戻る不連続な変化とは互いに相殺し合うこととなる。従って調光信号の強度が閾値を越えて変化する場合であっても、放電管の輝度は連続的に変化する。
【0057】
つまり本発明においては調光信号の強度が閾値以上、閾値以下のいずれの場合においても電流調光では出力が一定値となる制御が行われ、一方時分割調光においてはそのデューティ比が調光信号の強度に比例する調光が実施される。閾値では電流調光、時分割調光のいずれの調光結果も不連続に変化するが、両者の変化がともに行われることによりその効果が相殺され、放電管の輝度は閾値を越える調光の場合であっても連続的に変化する。以上の効果は調光信号の電圧が負の値をとる場合や、放電管の輝度を低くする場合に調光信号や電流調光回路からの電流制御信号を逆に大きくするように各回路を構成する場合であっても同様に成り立つ。また調光信号がパルス信号であって、そのデューティ比を変化させることで放電管の調光を行う場合であってもやはり同様に成り立つ。
【0058】
図3および図4は本発明の放電管点灯装置における判別回路の構成を示す回路図の例である。このうち図3は判別回路がコンパレータを含む回路の場合の例、図4はトランジスタを含む回路の場合の例である。
【0059】
図3において、判別回路301は積分回路303、基準電圧を発生させる基準電圧発生器304、この基準電圧を分圧して所定の設定電圧を取り出すための分圧抵抗306,307、取り出された設定電圧を供給する回路素子である設定電圧回路305、およびコンパレータ308からなる。また調光信号302は電圧信号もしくはパルス信号である。調光信号302がパルス信号である場合には、判別回路301に入力された調光信号302はまず積分回路303によって電圧信号に変換される。調光信号302が電圧信号である場合には積分回路303は不要である。この電圧信号はコンパレータ308に入力され、設定電圧回路305から与えられる、基準電圧を分圧して取り出された所定の設定電圧と比較される。この所定の設定電圧がこの判別回路の有する閾値であり、コンパレータ308は電圧信号がこの閾値を上回っているかどうかによって2値の判別信号を発生させて、電流調光回路309および時分割調光回路310に対して出力する。この判別回路の閾値の設定は分圧抵抗306,307の抵抗値の組み合わせによって変更可能である。
【0060】
また図4において、判別回路401は積分回路403、積分回路403から出力された電圧信号を分圧して所定のレベルの電圧を取り出すための分圧抵抗406,407、およびトランジスタ408からなる。図3の場合と同じく調光信号402は電圧信号もしくはパルス信号であって、調光信号402がパルス信号である場合には、判別回路401に入力された調光信号402はまず積分回路403によって電圧信号に変換される。調光信号402が電圧信号である場合には積分回路403は不要である。トランジスタ408はPNP型のトランジスタであり、分圧抵抗406,407によって分圧されて所定のレベルの電圧となった電圧信号は、トランジスタ408のベースに入力される。トランジスタ408のコレクタは接地されていて、エミッタ−コレクタ間に電流(エミッタ電流)が流れるかどうかによって2値の判別信号を発生させて、電流調光回路409および時分割調光回路410に対して出力する。この判別回路の閾値の設定は分圧抵抗406,407の抵抗値の組み合わせによって変更可能である。
【0061】
なお上記の判別回路401は、調光信号402からの電圧信号の電圧値が高い場合に放電管の輝度が高くなるよう調光した場合の例である。逆に調光信号402からの電圧信号の電圧値が低いほど放電管の輝度が高くなるよう調光したい場合には、トランジスタ408としてNPN型のトランジスタを使用するとよい。この場合には調光信号402からの電圧信号による電圧値とエミッタ−コレクタ間に電流が流れるかどうかの関係が、図4に示す場合とは逆になり、電流調光回路409および時分割調光回路410に出力される2値の判別信号の出力レベルが、図4に示す場合とは逆になる。
【0062】
図5は本発明における放電管点灯装置にて調光を行った際に放電管に流れる電流(管電流)の波形のグラフの例を示したものであり、横軸は時間である。図5では本発明の実施の形態に従って、放電管に冷陰極管を用いた場合を示している。一番上の電流波形は調光しない場合(輝度が最大)の波形であり、上から順に調光信号の強度を次第に低下させた場合を示している。一番上の、調光しない場合の管電流(Io)は6mArms(実効値)であり、次いでIo=4.5mArms、Io=3mArms、Io=3mArms、Io=1.5mArms、Io=1mArmsの場合を順に示している。上から3番目と4番目のIo=3mArmsの場合が閾値であり、上から3番目は閾値に達した瞬間の波形のグラフ、上から4番目は閾値を過ぎた瞬間の波形のグラフを示したものである。放電管として冷陰極管を用いているために、熱陰極管を用いた前記の特許文献1の場合よりも全般的に管電流の値が小さくなっている。
【0063】
管電流Ioが6mArmsから4.5mArmsを経て3mArmsに低下する過程では、閾値以上であることから電流波形の振幅の最大値は変化せず、管電流が最大の場合と同じ振幅のままとなっている。一方で時分割調光を実施しているために、電流波形にはその振幅が小さくなる領域である消灯期間が周期的に生じており、管電流Ioが低下するとともにこの消灯期間の長さが増加して、それによって管電流の実効値を低下させている。そして閾値であるIo=3mArmsを越えると電流波形の振幅の最大値が急に半分となり、一方でパルス制御信号のデューティ比が100%に戻るために消灯期間は一旦消滅する。このときの上から3番目と4番目のグラフはその波形が互いに大きく異なるものの、放電管の管電流の実効値は同一である。次いでIoが1.5mArms、1mArmsとさらに下がっても電流波形の振幅の最大値は変化せず、一方でパルス制御信号のデューティ比の減少によって消灯期間が再び出現し、その領域はIoの低下とともに次第に拡大する。
【0064】
なお圧電トランスを用いて冷陰極管を点灯させるときには、その駆動周波数は40kHz〜60kHz程度とする場合が一般的であり、その際の時分割調光におけるON・OFFの2値制御での切り換えの周波数は、150Hz〜200Hz程度とすることが好適である。
【0065】
以上示したように、圧電トランスを使用した放電管点灯装置において、電流調光を2値制御とするとともに閾値によって時分割調光方法を切り換えて調光を行うことにより、中輝度領域における調光の場合でも、圧電トランスをそのトランス効率の優れた領域において駆動させることが可能である。なお、上記の説明は、本発明の実施の形態に係る放電管点灯装置を用いる場合の効果について説明するためのものであって、これによって特許請求の範囲に記載の発明を限定し、あるいは請求の範囲を減縮するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の放電管点灯装置における構成回路のブロック図の例。
【図2】本発明における調光信号と電流調光回路、時分割調光回路の出力信号の関係を示したグラフの例。図2(a)は調光信号の強度と電流制御信号の強度との関係、図2(b)は調光信号の強度とパルス制御信号のデューティ比との関係を示したグラフ。
【図3】本発明の判別回路がコンパレータを含む場合の回路図の例。
【図4】本発明の判別回路がトランジスタを含む場合の回路図の例。
【図5】本発明の調光における放電管に流れる電流(管電流)の波形のグラフの例。
【図6】従来例の放電管点灯装置における構成回路のブロック図。
【図7】従来例における調光信号と電流調光回路、時分割調光回路の出力信号の関係を示したグラフ。図7(a)は調光信号の強度と電流制御信号の強度との関係、図7(b)は調光信号の強度とパルス制御信号のデューティ比との関係を示したグラフ。
【図8】従来例の調光における放電管に流れる電流(管電流)の波形のグラフ。
【図9】放電管点灯装置により放電管に流れる一般的な電流波形のグラフの例。図9(a)は調光しない場合の電流波形、図9(b)は電流調光方式の調光の場合の電流波形、図9(c)は時分割調光方式の調光の場合の電流波形、図9(d)は図9(c)の電流波形の一部を時間軸方向に拡大したもの、図9(e)は電流調光方式と時分割調光方式の調光をともに行った場合の電流波形をそれぞれ示すグラフ。
【図10】一般的な圧電トランスにおける入力信号の周波数と、最大出力電力およびトランス効率の関係を示すグラフの例。
【符号の説明】
【0067】
101,601 放電管点灯装置
102,602 直流電源
103,603 電圧制御発振回路
104,604 駆動回路
105 圧電トランス
605 昇圧トランス
106,606 放電管電流検出回路
107 発振周波数制御回路
108,302,402,608 調光信号
109,309,409,609 電流調光回路
110,310,410,610 時分割調光回路
111,301,401,611 判別回路
112,612 放電管
303,403 積分回路
304 基準電圧発生器
305 設定電圧回路
306,307,406,407 分圧抵抗
308 コンパレータ
408 トランジスタ
fr 共振周波数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電管点灯装置は、所定の共振周波数を有し、その出力が放電管に入力される圧電トランスと、前記共振周波数近傍の前記共振周波数より高い周波数の発振信号を発生させる発振回路と、前記発振信号に基づいて、前記圧電トランスを駆動する駆動回路と、前記放電管に流れる電流を検出する放電管電流検出回路とを備え、
前記発振回路は、前記放電管電流検出回路からの出力信号によって制御され、
調光信号に基づいて調光を行う調光回路と、前記調光信号の判別回路とを備え、
前記調光回路が電流調光回路および時分割調光回路からなり、
前記判別回路は、調光方法の切り換えを実施する基準である閾値を予め与えられており、前記判別回路により、前記調光信号が変化する際に前記閾値を越えるか否かが判定され、
前記調光信号が前記閾値を越えずに変化する場合には、前記時分割調光回路からの出力が連続に変化し、
前記電流調光回路からの出力は、絶対値が最大である第1の値と絶対値が前記第1の値よりも小さい第2の値のいずれかの値をとり、
前記電流調光回路からの出力が前記第1の値をとる場合には、前記時分割調光回路からの出力は、絶対値が最大である第3の値と絶対値が前記第3の値よりも小さい第4の値との間のいずれかの値をとるとともに、前記調光信号が変化する場合の変化量に対する前記時分割調光回路からの出力の変化量の比率が一定であり、
前記電流調光回路からの出力が前記第2の値をとる場合には、前記時分割調光回路からの出力は、絶対値が前記第4の値よりも大きい第5の値と絶対値が前記第5の値よりも小さい第6の値との間のいずれかの値をとるとともに、前記調光信号が変化する場合の変化量に対する前記時分割調光回路からの出力の変化量の比率が一定であることを特徴とする、放電管点灯装置。
【請求項2】
放電管点灯装置は、所定の共振周波数を有し、その出力が放電管に入力される圧電トランスと、前記共振周波数近傍の前記共振周波数より高い周波数の発振信号を発生させる発振回路と、前記発振信号に基づいて、前記圧電トランスを駆動する駆動回路と、前記放電管に流れる電流を検出する放電管電流検出回路とを備え、
前記発振回路は、前記放電管電流検出回路からの出力信号によって制御され、
調光信号に基づいて調光を行う調光回路と、前記調光信号の判別回路とを備え、
前記調光回路が電流調光回路および時分割調光回路からなり、
前記判別回路は、調光方法の切り換えを実施する基準である閾値を予め与えられており、前記判別回路により、前記調光信号が変化する際に前記閾値を越えるか否かが判定され、
前記時分割調光回路からの出力がパルス信号であり、
前記調光信号が前記閾値を越えずに変化する場合には、前記パルス信号がON信号となる期間とOFF信号となる期間の合計に対するON信号となる期間の比率である、デューティ比が連続に変化し、
前記電流調光回路からの出力は、絶対値が最大である第1の値と絶対値が前記第1の値よりも小さい第2の値のいずれかの値をとり、
前記電流調光回路からの出力が前記第1の値をとる場合には、前記時分割調光回路からの出力のデューティ比は、最大値である第3の値と前記第3の値よりも小さい第4の値との間のいずれかの値をとるとともに、前記調光信号が変化する場合の変化量に対する前記時分割調光回路からの出力のデューティ比の変化量の比率が一定であり、
前記電流調光回路からの出力が前記第2の値をとる場合には、前記時分割調光回路からの出力のデューティ比は、前記第4の値よりも大きい第5の値と前記第5の値よりも小さい第6の値との間のいずれかの値をとるとともに、前記調光信号が変化する場合の変化量に対する前記時分割調光回路からの出力のデューティ比の変化量の比率は一定であることを特徴とする、放電管点灯装置。
【請求項3】
前記調光信号が変化して前記閾値を越えた場合であっても、前記放電管の輝度は連続的に変化することを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の放電管点灯装置。
【請求項4】
前記調光信号がパルス信号であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の放電管点灯装置。
【請求項5】
前記調光信号が直流電圧信号であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の放電管点灯装置。
【請求項6】
前記判別回路がコンパレータを含む回路により構成されていることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の放電管点灯装置。
【請求項7】
前記判別回路がトランジスタを含む回路により構成されていることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の放電管点灯装置。
【請求項8】
前記判別回路が前記放電管電流検出回路の動作状態をスイッチする、スイッチ回路により構成されていることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の放電管点灯装置。
【請求項9】
前記放電管が冷陰極管であることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の放電管点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−192341(P2008−192341A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22611(P2007−22611)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】