説明

放電装置に用いる制御装置

【課題】構成がシンプルであるのに、環境の変動により一度火花放電などの異常放電が起きても、速やかに正常な放電を再開できる放電装置の制御装置を提供する。
【解決手段】1以上の電極3及び1以上の対電極4とで構成する放電部5と、放電部5に所定の電圧を印加する電源6とからなり、放電装置2に、印加電圧値並びに電流値の急激な変動を招く異常放電を検知する検知部7と、放電部5と電源6との間に並列に配置したn個の抵抗Rと、異常放電情報により抵抗を切り替える制御部8と、を付加させてなり、放電部5と電源6との間に抵抗R1を接続時に検知部7が異常放電を検知した際、放電部5と電源6とを一旦遮断し、その後放電部5と電源6との間に抵抗値の大なる抵抗R2に切り替え電圧を印加し、以後設置した(n−2)個の抵抗だけ順次抵抗値の大なる抵抗R3〜Rnに切り替えて、異常放電後にも正常放電を継続するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストリーマ放電やコロナ放電などを発生させる放電装置に用いる制御装置に関し、詳しくは、火花放電などの異常放電が発生した後、自動復帰して正常なストリーマ放電やコロナ放電などを継続出来る放電装置に用いる制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電装置は、通常、1以上の電極と該1以上の電極に所定のスペースを有して設置した1以上の対電極とで構成する放電部と、この放電部に所定の高電圧を印加する電源とからなる。そして、この放電装置は、ストリーマ放電やコロナ放電などを発生させ、これらの放電を利用し一定の効果、例えば、空気中の臭気や粉塵を除去して、室内環境を良好に保持するのに使用されている。ところが、この放電装置は、空気中の湿度が高かったり、使用により1以上の電極及びそれに対応する1以上の対電極に汚れなどが付着すると、これらが原因となり、正常なストリーマ放電やコロナ放電などから、両電極間に激しく火花が飛ぶ火花放電などの異常放電に移行することになる。
【0003】
一旦、火花放電などの異常放電に移行すると、この放電装置は、両電極間に対し電源からの高電圧の印加を停止しなければ、火花放電などの異常放電は継続することになり、上記の汚れが可燃物である場合、火災の原因になりかねない。したがって、両電極間に対し高電圧の印加を停止することになるが、高湿度や両電極の汚れなど異常放電の原因が解消されない限り、再び両電極間に対し高電圧の印加を開始しても、この放電装置は、正常なストリーマ放電やコロナ放電などを再開することなく、再び、火花放電などの異常放電に移行してしまう。このため、この放電装置は、異常放電の原因が解消されない間、期待されている、空気中の臭気や粉塵を除去して室内環境を良好に保持する機能が、失われたままになる。
【0004】
このような状況から、ストリーマ放電などを安定して継続出来、しかも、火花放電などの異常放電の発生を極力押さえることが出来る技術がある。このような技術の放電装置は、複数の放電部を複数の放電ブロックに分割し、各放電ブロックに対応する電流制御部を各々設けてなり、各電流制御部が放電ブロック毎に放電電流の総和を実質的に一定となるように制御するものである。この放電装置によれば、1つの放電部に電流が集中して、他の放電部でストリーマ放電などが行われなくなったり、逆に、電流が集中してしまった放電部で火花放電が発生することが抑制され、全体として、ストリーマ放電が安定的に行われようになる(例えば、特開2005−245613号公報参照)。
【0005】
また、放電装置における放電部の電源回路には、定電流制御をする電源本体と放電部の電極との間に抵抗器が設けられている。その結果、この電源回路には、第1出力電圧範囲内で出力電流値が一定となる第1出力特性と、第1出力電圧範囲の最大点から出力電流が小さくなる第2出力特性とが、付与される。この放電装置によれば、第1出力特性上では、放電部におけるストリーマ放電の放電電流が一定に制御され、火花放電を抑制し、安定的にストリーマ放電がなされ、一方、第2出力特性では、第1出力電圧範囲の最大点から電圧が上昇するにつれて、出力電流が小さくなるから、火花放電を起こす領域を避けることになって、その結果、火花放電を抑制し、安定的にストリーマ放電がなされる(例えば、特開2007−328949号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 特開2005−245613号公報
【特許文献2】 特開2007−328949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の放電装置は、複数の放電部を複数の放電ブロックに分割し、各放電ブロックに対応する電流制御部を各々設けて、しかも、各電流制御部が放電ブロック毎に放電電流の総和を実質的に一定となるように制御するものであるため、電流制御の構成が煩雑となる。また、この放電装置は、放電電流の総和を実質的に一定となるように制御するから、1放電ブロック中の一部の放電部の電圧が急上昇する虞があり、その結果火花放電を起こす危険性があって、その上、放電装置の環境の変動によっても火花放電が起き、一度火花放電が起きてしまうと、放電装置を一旦停止しても、その状況が解消されない限り、再起動しても再び火花放電を起こす結果になる。
【0008】
また、特許文献2の放電装置は、明細書に記載の通り、第1出力電圧範囲にはストリーマ放電が安定して生起出来且つ火花放電リスクの低い電圧範囲(定格出力電圧範囲)を設定するのが望ましいとあり、さらに、第1出力特性上で一定となる出力電流値はストリーマ放電の性能を十分確保出来る出力電流(定格出力電流)を設定するのが望ましいと、ある。実は、これらの定格出力電圧範囲及び定格出力電流をどのように設定するか、が問題であって、放電装置の環境の変動を予測することは困難であり、さらに、放電部の電極及び対電極の形態によっても、これら定格出力電圧範囲及び定格出力電流の設定値が変わってしまう。その上、一度火花放電が起きてしまうと、放電装置を一旦停止しても、その状況が解消されない限り、再起動しても再び火花放電を起こす結果になる。
【0009】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、構成がシンプルであるのに、環境の変動により一度火花放電などの異常放電が起きてしまっても、速やかに正常な放電を再開できる放電装置に用いる制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を達成するために提案されたものであって、下記の構成からなることを特徴とするものである。
すなわち、請求項1記載の発明は、放電装置が、1以上の電極及び該1以上の電極に所定のスペースを有して設置した1以上の対電極で構成する放電部と、該放電部に所定の電圧を印加する電源とからなり、前記放電装置に、印加電圧値並びに電流値の急激な変動を招く異常放電を検知する検知部と、前記放電部と前記電源との間に並列に配置したn個の抵抗(R1<R2…<Rn−1<Rn)と、前記検知部からの異常放電情報に基づき前記抵抗を切り替える制御部と、を付加させてなるものであり、前記放電部と前記電源との間に抵抗R1を接続している時に前記検知部が異常放電を検知した際、前記制御部にて、前記放電部と前記電源とを一旦遮断した後、前記放電部と前記電源との間に抵抗値の大なる抵抗R2に切り替えてから、所定の電圧を印加し、以後設置したn−2個の抵抗だけ順次抵抗値の大なる抵抗R3〜Rnに切り替えて、前記放電部における異常放電後にも正常放電を継続するようにしたことを特徴とする放電装置に用いる制御装置である。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、前記放電部が、主としてストリーマ放電を発生させるものであることを特徴とする放電装置に用いる制御装置である。
【0012】
また、請求項3記載の発明は、前記放電装置が、主としてコロナ放電を発生させるものであることを特徴とする放電装置に用いる制御装置である。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、主としてストリーマ放電を発生させる放電部が、導電性を有する担持体に光触媒を担持させ、且つその抵抗値を高抵抗とした光触媒担持体と、該光触媒担持体に互いにほぼ等間隔に立設した複数の針状電極と、該複数の針状電極の先端部から0.1〜30mm離れた位置に前記光触媒担持体とほぼ平行に設置した接地電極とからなり、前記光触媒担持体と前記接地電極との間に電源により正あるいは負の3〜30KVの電圧を印加し、前記複数の針状電極と前記接地電極との間に主としてストリーマ放電を発生させるものであることを特徴とする放電装置に用いる制御装置である。
【0014】
上記第1の課題解決手段による作用は次の通りである。すなわち、放電部と電源との間に抵抗R1を接続している時に、検知部にて印加電圧値並びに電流値の急激な変動を検知すると、放電部にて異常放電がなされているとして、制御部により放電部と電源とを一旦遮断した後、放電部と電源との間に抵抗R1よりも抵抗値の大なる抵抗R2に切り替えてから、印加電圧を下げ正常放電に移行させる。そして、再び、検知部にて印加電圧値並びに電流値の急激な変動を検知すると、放電部にて異常放電がなされているとして、制御部により放電部と電源とを一旦遮断した後、放電部と電源との間に抵抗R2よりも抵抗値の大なる抵抗R3に切り替えてから、印加電圧を下げ正常放電に移行させる。以後、設置したn−3個の抵抗R4〜Rnだけ順次抵抗値の大なる抵抗R4〜Rnに切り替えて、放電部における異常放電後にも正常放電を継続するようにする。
【0015】
上記第2の課題解決手段による作用は、放電部がストリーマ放電を発生させるものであっても、上記と同様に異常放電時に放電部と電源とを一旦遮断した後、順次抵抗値の大なる抵抗に切り替えることで、正常なストリーマ放電の発生を継続させる。
【0016】
上記第3の課題解決手段による作用は、放電部がコロナ放電を発生させるものであっても、上記と同様に異常放電時に放電部と電源とを一旦遮断した後、順次抵抗値の大なる抵抗に切り替えることで、正常なコロナ放電の発生を継続させる。
【0017】
上記第4の課題解決手段による作用は、放電部が、光触媒担持体に互いにほぼ等間隔に立設した複数の針状電極と、複数の針状電極の先端部から0.1〜30mm離れた位置に光触媒担持体とほぼ平行に設置した接地電極とからなり、ストリーマ放電を発生させるものであっても、上記と同様に異常放電時に放電部と電源とを一旦遮断した後、順次抵抗値の大なる抵抗に切り替えることで、正常なストリーマ放電の発生を継続させる。
【発明の効果】
【0018】
以上詳述したように、本発明によれば、以下のような効果がある。
請求項1記載の発明は、放電装置に、放電部の異常放電を検知する検知部と、放電部と電源との間に並列に配置したn個の抵抗と、n個の抵抗を順次切り替える制御部と、を付加させただけであるから、構成がシンプルであり、環境の変動により一度火花放電などの異常放電が起きてしまっても、速やかに正常な放電を再開することができる効果がある。
【0019】
また、請求項2記載の発明は、放電部がストリーマ放電を発生させるものであっても、上記の請求項1記載の発明と同様の効果を得ることが出来る。
【0020】
また、請求項3記載の発明は、放電部がコロナ放電を発生させるものであっても、上記の請求項1記載の発明と同様の効果を得ることが出来る。
【0021】
また、請求項4記載の発明は、ストリーマ放電を発生させる放電部が、光触媒担持体に立設した複数の針状電極と、複数の針状電極の先端部から0.1〜30mm離れた位置に光触媒担持体とほぼ平行に設置した接地電極と、からなっているものであっても、上記の請求項1記載の発明と同様の効果を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態を示す放電装置に用いる制御装置の概念図である(実施例1)。
【図2】本発明の放電装置における1つの放電部と制御装置との関係を示す結線図である(実施例1)。
【図3】本発明の他の実施の形態を示す放電装置に用いる制御装置の概念図である(実施例2)。
【図4】図3の放電装置の光触媒担持体に複数の針状電極を立設した状態の平面図である(実施例2)。
【図5】光触媒担持体に複数の針状電極を立設した状態の断面図である(実施例2)。
【図6】図5の担持体の説明図である(実施例2)。
【図7】図3の放電装置の接地電極の平面図である(実施例2)。
【図8】本発明の他の実施の形態を示す放電装置に用いる制御装置の図1と同状の概念図である(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
【実施例1】
【0024】
図1、2において、放電装置に用いる制御装置1(以下、単に制御装置1という)は、放電装置2が、1以上の電極3及びこの1以上の電極3に所定のスペースを有して設置した1以上の対電極4で構成する放電部5と、この放電部5に所定の電圧を印加する電源6とからなり、この放電装置2に、印加電圧値並びに電流値の急激な変動を招く異常放電を検知する検知部7と、放電部5と電源6との間に並列に配置したn個の抵抗R(R1<R2…<Rn−1<Rn)と、検知部7からの異常放電情報に基づき抵抗Rを切り替える制御部8と、を付加させてなるものであり、放電部5と電源6との間に抵抗R1を接続している時に検知部7が異常放電を検知した際、制御部8にて、放電部5と電源6とを一旦遮断した後、放電部5と電源6との間に抵抗値の大なる抵抗R2に切り替えてから、所定の電圧を印加し、以後設置した(n−2)個の抵抗だけ順次抵抗値の大なる抵抗R3〜Rnに切り替えて、放電部5における異常放電後にも正常放電を継続するようにしたものである。
【0025】
図2に示す放電装置2は、放電を起こす最も簡単な構成を示すものであり、1の電極3とこれに対応する1の対電極4とを組み合わせた放電部5と、電源6とからなる。一方、制御装置1は、上記の放電装置2に付加されたものであり、具体的には、放電装置2における電源6のプラス極9と、放電部5の電極3との間に、検知部7及びn個の抵抗Rが付加され、これらを制御する制御部を有してなるものである。
【0026】
前記放電部5は、図2で最も簡単な構成を示したが、その放電を利用して何らかのメリットを有するものであれば、特に限定しないが、例示すれば、後に詳述するコロナ放電、ストリーマ放電などを発生させるものである。
【0027】
前記電源6は、放電部5に対して必要な電圧及び電流を供給できるものであれば、特に限定がない。
【0028】
制御装置1の検知部7は、放電装置2の放電部5に対し印加している電圧値並びに電流値の急激な変動を検知するものであり、例えば、放電部5の電圧値が5,000Vで、電流値が0.4mAで正常な放電がなされている場合、何らかの原因で放電部5の環境が急激に変動して、電圧値が3,000〜4,500V、電流値が1.2mAに急激に変動するような場合を検知するものである。
【0029】
前記制御装置1のn個の抵抗Rは、それぞれ抵抗値が異なり、第1の抵抗をR1とし、第nの抵抗をRnとすると、これらの抵抗値は、数MΩの範囲内にあり、且つ、R1<R2…<Rn−1<Rnの関係にある。図2ではn=4である場合を示し、4個の抵抗RはR1<R2<R3<R4の関係にある。
【0030】
上記のように、放電部5の電圧値や電流値が急激に変動したことを検知部7が検知した場合は、放電部5の電極3と対電極4との間に、正常な放電から火花放電などの異常放電に移行したとする。この検知部7からの異常放電情報に対し、制御部8は、指令を出して電源6と放電部5とをスイッチにより一旦遮断し、しかる後、電源6と放電部5との間に抵抗値の大なる抵抗R2に切り替えてから、所定の電圧を印加し、放電部5における異常放電後にも正常な放電を回復させ、以後再び異常放電に移行しない限り、正常な放電を継続するようになる。
【0031】
再び、検知部7が放電部5の電圧値や電流値が急激に変動したことを検知すると、制御部8の指令により、電源6と放電部5とを一旦遮断し、その後、電源6と放電部5との間に抵抗値の大なる抵抗R3に切り替え、再び正常な放電を回復させ継続するようにする。以後設置した(n−3)個の抵抗Rだけ、順次抵抗値の大なる抵抗R3〜Rnに切り替えて、正常な放電を順次回復させ、継続するようにする。なお、最後の抵抗Rnに切り替えても、正常な放電を回復出来ない場合には、電源6と放電部5とを完全に遮断し、異常放電の原因を取り除き、その後、第1の抵抗R1に接続し直して正常な放電を回復させ、継続するようにする。
【実施例2】
【0032】
図3乃至7は、本発明の他の実施の形態を示す放電装置に用いる制御装置を示すものであり、図1、2の実施形態との相違点は、放電装置2Aが主にストリーマ放電を起こすものである点にあり、この放電装置2Aに制御装置1Aが付加されているのである。この制御装置1Aは、図1、2の実施形態とほぼ同様の構成である。放電装置2Aは、導電性を有する担持体10に光触媒11を担持させ、且つ、その抵抗値を高抵抗とした光触媒担持体12と、この光触媒担持体12に互いにほぼ等間隔に立設した複数の針状電極13と、これら複数の針状電極13の先端部13aから0.1〜30mm離れた位置に光触媒担持体12とほぼ平行に設置した接地電極14とで放電部5Aを構成し、この放電部5Aの光触媒担持体12と接地電極14との間に電源6Aを接続したものであり、この電源6Aにより正若しくは負の3〜30KV(以下、単に「±3〜±30KV」という)の電圧を印加し、上記複数の針状電極13と接地電極14との間にストリーマ放電若しくはコロナ放電(以下、単に「ストリーマ放電等」という)を発生させるものである。そして、光触媒担持体12、複数の針状電極13及び接地電極14は、筒体15内に収納され、空気などの流体が矢線A、B方向にいずれも流通自在である。
【0033】
前記光触媒担持体12の担持体10は、板状であり且つセラミック製のハニカム構造体16であるから、空気などの流体が流通自在であって、このハニカム構造体16の表面17に、粒径が1μmから50μmの範囲にある表層形成用セラミック粒子18を焼結して凸凹面19を新たに形成している。したがって、このハニカム構造体16の表面17には、良好な凹凸面19が形成され、充分な表面積を有することになって、光触媒誘起光や活性種が充分に行き渡り、高効率の光触媒作用を実現できる。
【0034】
なお、担持体10は、上記のハニカム構造体16に限定されず、三次元網目構造多孔質状、格子状、パンチング状などでも良く、流体が流通自在で且つ充分な表面積が確保出来るものであればどのようなものでも良い。また、その材質もセラミック製に限定されず、樹脂や紙でも採用可能である。
【0035】
また、前記担持体10は導電性が付与されているが、この導電性は、セラミック製のハニカム構造体16の表面17に新たに形成された凸凹面19に、活性炭20が塗布されることで、実現される。さらに、この活性炭20上に光触媒11が塗布されることにより担持される。そして、光触媒担持体12は、全体として、その抵抗値が高抵抗としているが、この高抵抗は抵抗値1〜100MΩの範囲であることで実現される。
【0036】
この光触媒11は、アナターゼ型の酸化チタン(TiO)の微粉末が主に使用されるが、特に限定されず、光触媒作用のあるものであればよい。そして、この光触媒11である酸化チタンは、これが主成分とされつつも、バインダーとしてSiOが約20%含有され、上記したハニカム構造体16の凸凹面19に焼き付けられて担持される。したがって、焼き付けられた酸化チタンは、凸凹面19のアンカー効果により脱落しづらく、酸化チタンの脱落による性能低下と発塵とを防ぐことが出来て、その性能が向上し且つ維持できると共に、再生可能となる。
【0037】
前記針状電極13は、既述のとおり、板状の光触媒担持体12上に互いにほぼ等間隔に複数立設される。これは、図4、5に示すように、正四角形の格子状のプラスチック製枠体21に針状電極13を貫設し、その状態のプラスチック製枠体21を、光触媒担持体12上に設置することで実現している。なお、プラスチック製枠体21は、格子状であるから当然空気などの流体が流通自在である。また、針状電極13の材質は、金属であれば特に限定がないが、ステンレススチールやタングステンが優れている。
【0038】
前記接地電極14は、アルミニウムなどの金属板に小孔22を開けてあり、空気などの流体が流通自在である。そして、この接地電極14は、複数の針状電極13の先端部13aから0.1〜30mm離れた位置に、光触媒担持体12とほぼ平行に設置される。ストリーマ放電等の利用面からは、接地電極14と針状電極13との距離は近ければ近いほど良いが、火花放電などの異常放電、すなわち、短絡の危険性があり0.1mm以上離れているのが望ましく、また、30mmよりも離れると、短絡の危険性は無くなるが、ストリーマ放電等の利用価値が低下し、その上装置も大きくなる。したがって、接地電極14と針状電極13との距離は、より好ましくは0.5〜10mmの範囲であり、より一層好ましくは1〜5mmの範囲である。なお、この接地電極14は、上記のものに限定されず、ハニカム状、格子状など流体が流通自在のものであれば使用できる。
【0039】
前記電源6Aは、光触媒担持体12及び接地電極14に電気的に接続し、光触媒担持体12と接地電極14との間に±3〜±30KVの範囲の電圧を印加するためのものであり、この電圧の印加によって、針状電極13と接地電極14との間にストリーマ放電等を発生させる。この電源6Aは、3〜30KVの直流電源、±3〜±30KVの交流電源、+3〜+30KV若しくは−3〜−30KVのパルス電源、±3〜±30KVの矩形波電源などである。そして、電源6Aの電圧は、ストリーマ放電等の利用面からは高ければ高いほど良いが、火花放電などの短絡の危険性が高くなり±30KV以下が望ましく、逆に、±3KVに満たない電圧では、短絡の危険性が無くなるが、ストリーマ放電等の利用価値が低下する。したがって、電源6Aの電圧は、より好ましくは±3〜±10KVの範囲であり、より一層好ましくは±5〜±8.5KVの範囲である。
【0040】
次に、上記構成になる放電装置2Aに用いる制御装置1Aの使用状況を説明する。
電源6Aをオンして、光触媒担持体12と接地電極14との間に±3〜±30KVの範囲の電圧を印加すると、光触媒担持体12に立設した複数の針状電極13と、これらから0.1〜30mm離れている接地電極14との間にストリーマ放電等が生ずる。このストリーマ放電等に伴い紫外線などの光触媒作用誘起光を発し、さらに、オゾン、イオン、高速電子などの活性種が生じる。紫外線などの光触媒作用誘起光は、光触媒11を活性化し、その表面に付着した物質を酸化還元して、より安全性を高めている。一方、オゾン、イオン、高速電子などの活性種も、複数の針状電極13と接地電極14との間を滞留ないし通過する空気中に含まれる物質を酸化還元して、より安全性を高めると共に、光触媒11の活性化にも寄与する。
【0041】
一方、放電装置2Aの環境変動、例えば、湿度の上昇、電圧変化や複数の針状電極13及び接地電極14に付着した物質などにより、火花放電などの短絡の可能性が生じるが、光触媒担持体12自体が1〜100MΩの高抵抗値を有するため、火花放電を未然に防ぐことになって、安定したストリーマ放電等を継続し、光触媒11の活性化をし続けると共に、他の活性種を生じ続けることになる。しかしながら、光触媒担持体12自体が有する1〜100MΩの高抵抗値による火花放電の防護レベルを超え、火花放電が発生すると、すかさず、制御装置1Aの検知部7が、放電装置2Aの放電部5Aの電圧値や電流値が急激に変動したことを検知した場合は、放電部5A、すなわち、針状電極13と接地電極14との間に、正常なストリーマ放電等から火花放電などの異常放電に移行したとする。この検知部7からの異常放電情報に対し、制御部8は、指令を出して電源6Aと放電部5Aとをスイッチにより一旦遮断し、しかる後、電源6Aと放電部5Aとの間に抵抗値の大なる抵抗R2に切り替えから、所定の電圧を印加し、放電部5Aにおける異常放電後にも正常なストリーマ放電等を回復させ、以後再び異常放電に移行しない限り、正常なストリーマ放電等を継続するようにする。
【実施例3】
【0042】
図8は、本発明の他の実施の形態を示す放電装置に用いる制御装置を示すものであり、図1、2の実施形態との相違点は、放電装置2Bが2段式の電気集塵機である点にあり、この2段式の電気集塵機である放電装置2Bに、制御装置1Bが付加されたものである。なお、制御装置1Bは、図1、2の実施形態とほぼ同様の構成である。
【0043】
2段式の電気集塵機である放電装置2Bは、コロナ放電等によって空気中の微粒子を荷電するためのイオン化線31及びイオン化電極32を有する荷電部30、並びに荷電した微粒子をクーロン力により捕集するための集塵電極板33及び集麈対電極板34を交互に配置し且つこれらをスペーサにて等間隔に備えてなる集塵部35、で構成される放電部5Bと、その電源6Bと、からなるものである。
【0044】
前記放電装置2Bにおける荷電部30のイオン化線31は、電源6Bのプラス極36に、イオン化電極32は、電源6Bのマイナス極37に、それぞれ接続されている。
【0045】
前記集塵部35は、集塵電極板33と集塵対電極板34との間に高電圧を印加することにより電荷を蓄積させるために電源6Bに接続しており、さらに、集塵電極板33と電源6Bとの間に高抵抗体38を並列に接続したものである。そして、集塵電極板33は電源6Aのプラス極36に、集塵対電極板34は電源6Bのマイナス極37にそれぞれ接続されている。
【0046】
上記構成の電気集塵機である放電装置2Bは、電源6Bをオンした状態で、図8の矢線K方向から塵や煙草の煙などの微粒子を含んだ空気が入ると、放電装置2Bにおける放電部5Bのイオン化線31とイオン化電極32とによるコロナ放電等によって、空気中の微粒子を荷電し、さらに、集塵部35に入り、複数の集塵電極板33及び複数の集塵対電極板34にて帯電した微粒子をクーロン力により捕集し、集塵部35から集塵後の清浄空気を排出する。しかしながら、放電装置2Bの環境の変動により、火花放電などの異常放電が生じ場合、すぐに制御装置1Bの検知部7が、放電装置2Bの放電部5Bの電圧値や電流値が急激に変動したことを検知し、放電部5Bに、正常なコロナ放電等から火花放電などの異常放電に移行したとする。この異常放電情報に対し、制御部8は、指令を出して電源6Bと放電部5Bとをスイッチにより一旦遮断し、しかる後、電源6Bと放電部5Bとの間に抵抗値の大なる抵抗R2に切り替え、所定の電圧を印加し、放電部5Bにおける異常放電後にも正常なコロナ放電等を回復させることになる。以後再び異常放電に移行しても、上記した実施例1及び2と同じ対応がなされ、正常なコロナ放電等を継続するようになる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の放電装置に用いる制御装置は、構成がシンプルであるのに、放電装置における環境の変動により、一度火花放電などの異常放電が起きてしまっても、速やかに正常な放電を再開して、放電装置の有するメリットを享受したいような場合に、利用可能性が極めて高くなる。
【符号の説明】
【0048】
1、1A、1B 制御装置
2、2A、2B 放電装置
3 電極
4 対電極
5、5A、5B 放電部
6、6A、6B 電源
7 検知部
8 制御部
9、36 プラス極
10 担持体
11 光触媒
12 光触媒担持体
13 針状電極
13a 先端部
14 接地電極
15 筒体
16 ハニカム構造体
17 表面
18 表層形成用セラミック粒子
19 凸凹面
20 活性炭
21 プラスチック製枠体
22 小孔
30 荷電部
31 イオン化線
32 イオン化電極
33 集塵電極板
34 集塵対電極板
35 集塵部
37 マイナス極
38 高抵抗体
R、R1−Rn 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電装置が、1以上の電極及び該1以上の電極に所定のスペースを有して設置した1以上の対電極で構成する放電部と、該放電部に所定の電圧を印加する電源とからなり、前記放電装置に、印加電圧値並びに電流値の急激な変動を招く異常放電を検知する検知部と、前記放電部と前記電源との間に並列に配置したn個の抵抗(R1<R2…<Rn−1<Rn)と、前記検知部からの異常放電情報に基づき前記抵抗を切り替える制御部と、を付加させてなるものであり、前記放電部と前記電源との間に抵抗R1を接続している時に前記検知部が異常放電を検知した際、前記制御部にて、前記放電部と前記電源とを一旦遮断した後、前記放電部と前記電源との間に抵抗値の大なる抵抗R2に切り替えてから、所定の電圧を印加し、以後設置したn−2個の抵抗だけ順次抵抗値の大なる抵抗R3〜Rnに切り替えて、前記放電部における異常放電後にも正常放電を継続するようにしたことを特徴とする放電装置に用いる制御装置。
【請求項2】
前記放電部が、主としてストリーマ放電を発生させるものである請求項1記載の放電装置に用いる制御装置。
【請求項3】
前記放電部が、主としてコロナ放電を発生させるものである請求項1記載の放電装置に用いる制御装置。
【請求項4】
主としてストリーマ放電を発生させる放電部は、導電性を有する担持体に光触媒を担持させ、且つその抵抗値を高抵抗とした光触媒担持体と、該光触媒担持体に互いにほぼ等間隔に立設した複数の針状電極と、該複数の針状電極の先端部から0.1〜30mm離れた位置に前記光触媒担持体とほぼ平行に設置した接地電極とからなり、前記光触媒担持体と前記接地電極との間に電源により正あるいは負の3〜30KVの電圧を印加し、前記複数の針状電極と前記接地電極との間に主としてストリーマ放電を発生させるものである請求項2記載の放電装置に用いる制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−14514(P2011−14514A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172549(P2009−172549)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000228028)株式会社トルネックス (25)
【Fターム(参考)】