説明

放電装置及び画像形成装置

【課題】放電生成物を排除するための気流の形成及び像担持体との間隙のシールを行いながら、簡易な構成で、放電生成物が像担持体に与える影響を低減可能な放電装置及びこれを有する複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置の提供。
【解決手段】像担持体20に対向して配設されたワイヤ43を覆ったケース46と、ワイヤ43の放電によって生成された組成物をケース46外に排出するための空気流を形成する空気流形成手段47と、ケース46の、空気流の流れる方向における上流側の端部にその一端が一体化され、その他端が像担持体20に当接し、かかる端部と像担持体20との間からの空気流の漏れを封じるためのシール部材48と、空気流形成手段47の停止時に、ケース46内の組成物を、放電装置40の、空気流の流れる方向の上流側の部分からケース46外に漏れ出させるための開口部49とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に備えられ、放電ワイヤにより放電を行って感光体等の像担持体の帯電等を行う帯電装置等の放電装置及びこれを有するかかる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、かかる放電装置が知られている(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献7〕参照)。またかかる放電装置を備えたかかる画像形成装置が知られている(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献7〕参照)。
【0003】
かかる放電装置においては、放電に起因して生じるオゾン等の放電生成物が像担持体に与える影響を考慮して、かかる放電生成物を排除するための気流を形成するように構成されている場合がある(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献4〕参照)。
【0004】
この場合、かかる気流が画像形成装置の他の部分に漏れると、かかる放電生成物の作用によって部材の劣化等の問題が生じ得る。これを防止するための方策として、放電装置と像担持体との間隙のシールを行うことが考えられる。
【0005】
ところが、放電生成物は、放電ワイヤへの通電を停止しても、ワイヤ等に付着していたものが拡散するため、放電後の気流停止時、たとえば、画像形成装置の電源オフ時には、かかるシールを行うことで、却って、像担持体への影響が大きくなることとなる。
【0006】
この点、放電ワイヤと像担持体との間を遮断する機構を用いる技術が知られており(たとえば、〔特許文献5〕参照)、この技術を用いれば、かかるシールを行っても、かかる影響が回避され得ると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、かかる機構を設けると、構造が複雑となって装置の大型化、高価格化の原因となり得る。また、放電ワイヤと像担持体との間には、一般に、僅かな隙間しかないため、かかる機構を設けること自体が困難な場合が予想される。
【0008】
本発明は、放電生成物を排除するための気流の形成及び像担持体との間隙のシールを行いながら、簡易な構成で、放電生成物が像担持体に与える影響を低減可能な放電装置及びこれを有する複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、像担持体に対向して配設された放電ワイヤと、この放電ワイヤを覆い、像担持体に対向した開口を備えたケースと、前記放電ワイヤの放電によって生成された前記ケース内の組成物を前記ケース外に排出するための空気流を前記ケース内に形成する空気流形成手段と、前記ケースの、前記空気流の流れる方向における上流側の端部にその一端が一体化され、その他端が像担持体に当接し、前記端部と像担持体との間からの前記空気流の漏れを封じるためのシール部材と、前記空気流形成手段の停止時に、前記ケース内の前記組成物を、当該放電装置の、前記上流側の部分から同ケース外に漏れ出させるための開口部とを有する放電装置及びこれを有する画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、像担持体に対向して配設された放電ワイヤと、この放電ワイヤを覆い、像担持体に対向した開口を備えたケースと、前記放電ワイヤの放電によって生成された前記ケース内の組成物を前記ケース外に排出するための空気流を前記ケース内に形成する空気流形成手段と、前記ケースの、前記空気流の流れる方向における上流側の端部にその一端が一体化され、その他端が像担持体に当接し、前記端部と像担持体との間からの前記空気流の漏れを封じるためのシール部材と、前記空気流形成手段の停止時に、前記ケース内の前記組成物を、当該放電装置の、前記上流側の部分から同ケース外に漏れ出させるための開口部とを有するので、放電生成物を排除するための気流の形成及び像担持体との間隙のシールを行いながら、空気流の流れる方向における上流側の部分から空気流形成手段の停止時に放電生成物を漏れ出させる開口部を備えた簡易な構成で、放電生成物が像担持体その他の部材に与える影響を、大型化、高価格化を抑制しながら低減可能な放電装置及びこれを有する画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用した画像形成装置の一例の概略正面図である。
【図2】図1に示した画像形成装置に備えられた放電装置である帯電装置の一例の概略正断面図である。
【図3】図2に示した帯電装置に備えられた開口部の構成の一例を示した概略図である。
【図4】図3に示した開口部の機能を説明するための、図2に示した帯電装置の概略正断面図である。
【図5】図4に示し説明した開口部の機能によって形成される画像が良化することを説明するための概略図である。
【図6】図1に示した画像形成装置に備えられた放電装置である帯電装置の他の例の概略正断面図である。
【図7】図6に示した帯電装置に備えられた開口部を説明するための概略図である。
【図8】図1に示した画像形成装置に備えられた放電装置である帯電装置のさらに他の例の概略正断面図である。
【図9】開口部が備えられていない場合の不具合を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に本発明を適用した画像形成装置の概略を示す。画像形成装置100は、カラーレーザプリンタであるが、他のタイプのプリンタ、ファクシミリ、複写機、印刷機、複写機とプリンタとの複合機等、他の画像形成装置であっても良い。画像形成装置100は、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。画像形成装置100は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体として画像形成を行なうことが可能である。
【0013】
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を像形成物質としてのトナーを担持することで形成可能な第1の像担持体としての潜像担持体である感光体たる感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKを平行配設したタンデム構造、言い換えるとタンデム方式を採用している。
【0014】
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKは、画像形成装置100の本体99の図示しないフレームに回転自在に支持された可撓性を有する第2の像担持体としての中間転写体である無端ベルト状の転写ベルト11の移動方向であって図1において時計回り方向であるA1方向の上流側からこの順で並んでいる。各符号の数字の後に付されたY、M、C、BKは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒用の部材であることを示している。
【0015】
各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKはそれぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の画像を形成するための作像ユニットである画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKに備えられている。
【0016】
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKは、本体99の内部のほぼ中央部に配設された無端のベルトとして構成された転写ベルト11の外周面側すなわち作像面側に位置している。
【0017】
転写ベルト11は、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに対峙しながら矢印A1方向に移動可能となっている。各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに形成された可視像すなわちトナー像は、矢印A1方向に移動する転写ベルト11に対しそれぞれ重畳転写され、その後、記録媒体である記録材としての用紙たる転写紙Sに一括転写されるようになっている。よって画像形成装置100は中間転写方式言い換えると間接転写方式の画像形成装置となっている。したがって画像形成装置100はタンデム型間接転写方式の画像形成装置である。
【0018】
転写ベルト11は、その上側の部分が各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに対向しており、この対向した部分が、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BK上のトナー像を転写ベルト11に転写する1次転写部58を形成している。
【0019】
転写ベルト11に対する重畳転写は、転写ベルト11がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに形成されたトナー像が、転写ベルト11の同じ位置に重ねて転写されるよう、転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに対向する位置に配設された一次転写手段としての1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKによる電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【0020】
転写ベルト11は、ベース層を伸びの少ない材質で構成し、ベース層の表面を平滑性の良い材質によって覆ったコート層とし、ベース層にコート層を重ねて形成した多層構造となっている。ベース層の材質としては、たとえばフッ素樹脂、PVDFシート、ポリイミド系樹脂が挙げられ、本形態ではポリイミドを使用している。コート層の材質としては、たとえばフッ素系樹脂等が挙げられる。
【0021】
転写ベルト11は、その縁部にそれぞれ、寄り止め部材としての図示しない寄り止めガイドを有している。寄り止めガイドは、転写ベルト11がA1方向に回転するときに、主走査方向に対応した、図1における紙面と垂直な幅方向のうちの何れかの方向に偏倚することを防止するために配設されている。寄り止めガイドは、ウレタンゴム製であるが、その他、シリコンゴムなど各種ゴム材料により構成することができる。
【0022】
転写ベルト11は、幅方向において、A4横サイズの転写紙Sに対応した幅を有している。よって、画像形成装置100は、最大でA3縦サイズの転写紙Sに対する画像形成が可能となっている。
【0023】
画像形成装置100は、本体99内に、4つの画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKと、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKの下方に対向して配設され、転写ベルト11を備えた中間転写ユニットとしての転写ベルトユニット10と、図1における転写ベルト11の左側において転写ベルト11に対向して配設された2次転写手段としての2次転写装置5と、画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKの上方に対向して配設された潜像形成手段としての光書込みユニットである書き込みユニットとしての露光装置たる光走査装置8とを有している。
【0024】
画像形成装置100はまた、本体99内に、転写ベルト11と2次転写装置5との間の2次転写部57に向けて搬送される転写紙Sを多数枚積載可能な給紙カセットとしての給紙トレイであるシート給送装置61と、シート給送装置61から搬送されてきた転写紙Sを、画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、2次転写部57に向けて繰り出すレジストローラ対4と、転写紙Sの先端がレジストローラ対4に到達したことを検知する図示しないセンサとを有している。
【0025】
画像形成装置100はまた、本体99内に、トナー像を転写された転写紙Sに同トナー像すなわち未定着トナー画像を定着させるための定着手段であるベルト定着方式の定着ユニットとしての定着装置6と、シート給送装置61から送り出された転写紙Sを搬送する搬送ローラ14を備え、転写紙Sの搬送方向において搬送ローラ14より下流側の中途部にレジストローラ対4、定着装置6をこれらの順で配設された給紙路32と、給紙路32の終端に位置し定着済みの転写紙Sである画像出力物を本体99の外部に排出する排出ローラである排紙ローラ対としての排紙ローラ7と、転写ベルトユニット10の下方に配設され、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色の補給用のトナーを充填されたトナーボトル9Y、9M、9C、9BKと、本体99の上側に配設され排出ローラ7により本体99の外部に排出された転写紙Sを積載する排紙部としての排紙トレイ17とを有している。
【0026】
画像形成装置100はまた、本体99内に、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKを回転駆動する図示しない駆動手段としての駆動装置と、画像形成装置100の動作全般を制御する図示しないCPU、メモリ等を含む制御手段91と、画像形成装置100に各種の情報の入力を可能とした操作パネル92とを有している。
【0027】
転写ベルトユニット10と、画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKと、光走査装置8と、定着装置6とは、シート給送装置61の上方に位置する画像形成部を構成している。
【0028】
転写ベルトユニット10は、転写ベルト11の他に、1次転写バイアスローラとしての1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKと、転写ベルト11を巻き掛けられた、駆動部材である駆動ローラ72と、張架ローラとしてのクリーニング対向ローラ74と、駆動ローラ72及びクリーニング対向ローラ74とともに転写ベルト11を張架する支持ローラとしての張架ローラ75、33と、転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11表面をクリーニングする中間転写体クリーニング装置であるベルトクリーニング装置としてのクリーニング装置13とを有している。
【0029】
転写ベルトユニット10はまた、駆動ローラ72を回転駆動する図示しない駆動モータを備えた図示しない駆動系と、1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKにそれぞれ独立して1次転写バイアスを印加する図示しない第1の転写バイアス印加手段としての電源及び制御手段91の一機能として実現された第1の転写バイアス制御手段とを有している。
【0030】
駆動ローラ72、クリーニング対向ローラ74、張架ローラ75、33は、転写ベルト11を回転搬送可能に掛け回した支持ローラとなっている。クリーニング対向ローラ74、張架ローラ75、33は、駆動ローラ72によって回転駆動される転写ベルト11に連れ回りする従動ローラとなっている。1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKは、転写ベルト11をその裏面から感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに向けて押圧してそれぞれ転写部である1次転写ニップを形成する。この1次転写ニップは、転写ベルト11の、クリーニング対向ローラ74、張架ローラ75の間に張り渡した部分において形成されている。クリーニング対向ローラ74、張架ローラ75は、1次転写ニップを安定化する機能を有する。
【0031】
各1次転写ニップには、1次転写バイアスの影響により、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKと1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKとの間に1次転写電界が形成される。感光体ドラム20Y、20M、20C、20BK上に形成された各色のトナー像は、この1次転写電界やニップ圧の影響によって転写ベルト11上に1次転写される。
【0032】
駆動ローラ72は、ゴムローラであって、転写ベルト11を介して2次転写装置5を当接されており、2次転写部57を形成している。よって駆動ローラ72は2次転写対向ローラを兼ねている。
クリーニング対向ローラ74は、転写ベルト11に、転写に適した所定の張力を与える加圧部材としてのテンションローラたる機能を有している。
【0033】
クリーニング装置13は、クリーニング対向ローラ74に対向する位置に配設されている。クリーニング装置13は、A1方向において2次転写部57の下流側且つ1次転写部58の上流側の位置で転写ベルト11に当接するように配設されたクリーニングブレード76と、クリーニングブレード76をその内部に収容したケース77とを有している。
【0034】
クリーニング装置13は、転写ベルト11上の残留トナー等の異物をクリーニングブレード76で掻き取り、除去して、転写ベルト11をクリーニングするようになっている。
転写ベルトユニット10は、本体99に対して一体で着脱可能となっている。
【0035】
シート給送装置61は、転写紙Sを複数枚重ねた転写紙束の状態で収容するものであり、本体99の下部においてトナーボトル9Y、9M、9C、9BKの下方に配設されている。シート給送装置61により、本体99の底部に給紙テーブルたる給紙部としてのペーパーバンク31が形成されている。
【0036】
シート給送装置61は、最上位の転写紙Sの上面に押圧される給紙ローラとしての給送ローラ3を有しており、給送ローラ3が所定のタイミングで時計回り方向に回転駆動されることにより、最上位の転写紙Sを1枚ずつ分離してレジストローラ対4に向けて給送するようになっている。この点、給紙ローラ3は分離ローラとしても機能する。
シート給送装置61から送り出された転写紙Sは、搬送ローラ14によって給紙路32を搬送されてレジストローラ対4に至り、レジストローラ対4のローラ間に挟まれる。
【0037】
2次転写装置5は、駆動ローラ72に対向して配置されている。2次転写装置5は、駆動ローラ72との間で転写ベルト11を挟むようにして配設され、転写ベルト11との間を通過する転写紙Sに転写ベルト11上のトナー像を転写可能とするための2次転写部材である転写部材としての2次転写ローラ64と、2次転写ローラ64をクリーニングするクリーニング装置65と、2次転写ローラ64を駆動ローラ72に向けて付勢した付勢部材としての図示しないバネとを有している。
【0038】
2次転写ローラ64と、転写ベルト11の2次転写部57近傍の一部とは、給紙路32に臨むように配設されている。2次転写ローラ64は、駆動ローラ72との間で2次転写バイアスを印加する図示しない第2の転写バイアス印加手段としての電源及び制御手段91の一機能として実現された第2の転写バイアス制御手段を接続されている。
【0039】
電源は、2次転写ローラ64に、転写ベルト11上に担持されたトナー像を構成するトナーの帯電極性と逆極性のバイアスを印加する。よって2次転写ローラ64は、電源によるバイアス印加により転写ベルト11上に担持されたトナー像に対する引力を発生させ、これによってかかるトナー像を転写紙S上に静電転写する。この点、2次転写ローラ64は引力ローラとして機能する。
【0040】
クリーニング装置65は、2次転写ローラ64に先端が当接したブレードを主に有しており、2次転写ローラ64に付着した紙粉やトナー等の異物を除去し、2次転写ローラ64をクリーニングするようになっている。
2次転写装置5は、トナー像を転写された後の転写紙Sを定着装置6へと搬送するシート搬送機能も有するように、転写部材として無端ベルト状の2次転写ベルトを用いても良い。
【0041】
定着装置6は、第1の加熱手段たる第1の加熱源としての加熱ローラヒータであるヒータ66と、ヒータ66を内部に有する中空の金属ローラである加熱ローラ62と、加熱ローラ62に巻き掛けられた定着ベルト63と、加熱ローラ62とともに定着ベルト63を巻き掛けたゴム製の定着ローラ68と、定着ローラ68との間で定着ベルト63に圧接し圧接部であるニップ部としての定着ニップ70を形成する中空のローラである加圧ローラ69と、加圧ローラ69の内部に配設された第2の加熱手段たる第2の加熱源としての加圧ローラヒータとしてのヒータ84と、定着装置6に備えられた以上の構成を囲繞し内包したケーシングとしての定着ケース85とを有している。
【0042】
定着装置6は、トナー像を担持した転写紙Sを定着ニップ70に挟み込む態様で通すことで、熱と圧力との作用により、転写紙Sに担持されたトナー像を同転写紙Sの表面に定着するようになっている。
【0043】
トナーボトル9Y、9M、9C、9BK内のイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーは、ワックス成分が内部に均一に分散した重合トナーであって、転写ベルト11に付着した際、ワックス成分の外部への析出が少なくなっている。かかる各色のトナーは、図示しない搬送経路を経て、所定の補給量だけ、画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKに備えられた現像装置80Y、80M、80C、80BKに補給される。トナーは乾式トナーであるため、現像装置80Y、80M、80C、80BKでは乾式現像方式が採用されている
【0044】
図1に示すように、画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKは互いに同様の構成となっている。画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKはそれぞれ、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKの周囲に、図1中時計方向であるその回転方向B1に沿って、1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKと、クリーニング手段としてのクリーニング装置71Y、71M、71C、71BKと、除電手段としての除電装置78Y、78M、78C、78BKと、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKを放電により均一に帯電する放電手段としての放電装置である帯電手段としての帯電装置40Y、40M、40C、40BKと、2成分現像剤により現像を行う現像手段としての現像装置80Y、80M、80C、80BKとを有している。
【0045】
画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKはそれぞれ、本体99に固定された図示しないガイドレールに沿って本体99に対して引き出し自在であるとともに、本体99に押し込むことが可能であり、本体99に対して着脱自在に設置されたプロセスカートリッジとなっている。プロセスカートリッジとしての画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKはそれぞれ、本体99に押し込むと、画像形成に適した所定の位置に装填され、位置決めされるようになっている。このようにプロセスカートリッジ化することは、交換部品として取り扱うことが可能であるため、メンテナンス性が著しく向上し、大変好ましい。またプロセスカートリッジの要素である各部の寿命が同等とされているため、不要な交換が防止、抑制され、さらに好ましい構成となっている。
【0046】
このような構成の画像形成装置100において、カラー画像を形成すべき旨の信号が入力されると、制御手段91において形成すべき所望の画像であるフルカラー画像に対応した画像情報を含む印刷ジョブである画像形成ジョブがメモリに記憶され保持されるとともに、駆動ローラ72が駆動され、転写ベルト11、クリーニング対向ローラ74、張架ローラ75、33が従動回転するとともに、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKがB1方向に回転駆動される。
【0047】
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKはそれぞれ、B1方向への回転に伴い、帯電装置40Y、40M、40C、40BKにより表面を所定の極性に一様に帯電され、レーザスキャナである光走査装置8からの、同図の紙面垂直方向に略一致する主走査方向への、上方へ向けた、光変調されたレーザー光の露光走査すなわち照射により、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応した静電潜像による潜像を光書き込みによって形成され、この露光工程で形成された静電潜像を現像装置80Y、80M、80C、80BKによりイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーにより現像されて顕像化され、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像によって構成された単色画像が形成される。
【0048】
なお、制御手段91は、光走査装置8を駆動して各色に対応した静電潜像を形成するにあたり、メモリに記憶した画像情報をイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の色情報に分解し、各色に分解された単色の画像情報である各色画像情報に基づいて光走査装置8を駆動する。また、画像形成装置100が原稿読取装置を備えた複写機である場合に複写を行う場合には、光走査装置8は、原稿読取装置で読み取った原稿の光像に基づいて露光を行う。光走査装置8はLED等を用いた他の方式で露光を行うものであっても良い。
【0049】
現像による可視像化により得られたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像は、A1方向の最上流側に位置するイエロートナー画像から、マゼンタトナー画像、シアントナー画像、ブラックトナー画像の順で、順次、1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKによって形成される1次転写バイアスにより、A1方向に回転している転写ベルト11上の同じ位置に1次転写され、この1次転写工程により転写ベルト11上にはフルカラーのトナー画像である合成カラー画像が形成され担持される。
【0050】
一方、カラー画像を形成すべき旨の信号の入力に伴い、ペーパーバンク31のシート給送装置61に備えられた給送ローラ3が回転して転写紙Sを繰り出すとともに1枚ずつ分離して給紙路32に送り込み、給紙路32に送り込まれた転写紙Sは搬送ローラ14でさらに搬送され、レジストローラ対4に突き当てられた状態で停止する。
【0051】
転写ベルト11上に重ね合わされた合成カラー画像が転写ベルト11のA1方向の回転に伴って2次転写部57まで移動するタイミングに合わせて、言い換えると給紙タイミングを計られて、レジストローラ対4が回転し、2次転写部57では、合成カラー画像が、2次転写部57に送り込まれた転写紙Sに密着し、2次転写バイアス及びニップ圧の作用によって転写紙Sに一括して2次転写され、この2次転写工程によって転写紙Sに記録される。
【0052】
転写紙Sは2次転写装置5によって搬送されて定着装置6に送り込まれ、定着装置6において定着ベルト63と加圧ローラ69との間の定着ニップ70すなわち定着部を通過する際、熱と圧力との作用により、担持したトナー像が溶融され、合成カラー画像を定着される。
【0053】
定着装置6を通過した、合成カラー画像を定着済みの転写紙Sは、排紙ローラ7を経て本体99外に排出され、本体99の上部の排紙トレイ17上にスタックされる。
【0054】
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKは、転写後に残留した数%の残留トナーである転写残トナーをクリーニング装置71Y、71M、71C、71BKにより表面から除去され、除電装置78Y、78M、78C、78BKによって除電され、表面電位を初期化されて、帯電装置40Y、40M、40C、40BKによる次の帯電に供される。
【0055】
2次転写を終えた2次転写部57通過後の転写ベルト11は、クリーニング装置13に備えられたクリーニングブレード76によって転写後にその表面に残留した転写残トナーを除去されてクリーニングされ、次の転写に備える。
【0056】
帯電装置40Y、40M、40C、40BKの詳細について説明する。帯電装置40Y、40M、40C、40BKはそれぞれ互いに同様の構成であるため、以下においては、帯電装置40Y、40M、40C、40BKを区別することなく、単に帯電装置40として説明する。感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKについても同様に感光体ドラム20として記載する。その他の部材についても同様である。
【0057】
図2に示すように、帯電装置40は、感光体ドラム20の上方に配設されている。帯電装置40は、放電部としてのコロナ帯電器である帯電チャージャーとしての帯電部41と、帯電部41を覆った被覆部42とを有している。
【0058】
帯電部41は、高電圧の印加によりコロナ放電を行う放電ワイヤとしてのワイヤ43と、ワイヤ43のハウジングであるケーシング44と、ケーシング44の感光体ドラム20に対向した開口44aに配設されたグリッド45と、ワイヤ43に高電圧を印加する、制御手段91によって制御される図示しない高電圧電源とを有している。
【0059】
ワイヤ43は、開口44a側において、グリッド45を挟んで、感光体ドラム20に対向して配設されている。ワイヤ43の張設方向は、図2における紙面に垂直な方向であって、感光体ドラム20の軸方向に一致している。
【0060】
ワイヤ43は、高電圧電源によって高電圧を印加され、B1方向に回転する感光体ドラム20の周面を一様に所定の電圧に帯電する。このとき、ワイヤ43により、放電生成物として、オゾン、NOxすなわち窒素酸化物等の組成物が生成される。
【0061】
被覆部42は、帯電部41を上方から覆うことでワイヤ43を覆った、感光体ドラム20に対向した開口46aを有するハウジングであるケース46と、ケース46内からケース46外に向けた、図2において矢印で示す空気流を形成する空気流形成手段としての送風ファンであるファン47と、ケース46の、感光体ドラム20に対向する端縁部に固定されたシール部材としての遮風マイラ48と、ケース46に一体化されファン47によって形成された空気流をケース46外、より具体的には本体99外に導くための図示しないダクトと、ダクト内においてかかる空気流に含まれる放電生成物を除去する図示しないフィルタとを有している。
【0062】
ファン47は、かかる組成物をケース46外に排出して、かかる組成物が感光体ドラム20に与える影響を防止ないし緩和するための空気流を、ケース46内に形成する。そのため、ファン47は、ケース46内において、開口44aの部分すなわちケーシング44と感光体ドラム20との対向領域などの、帯電部41の周囲に空気流を形成する。
【0063】
ダクトは、かかる空気流の流れる方向における下流側である図2におけるケース46の左側端部に接続されている。よって、放電生成物を含んだ空気流はダクトを通じてケース46外に排出される。
【0064】
ファン47は、制御手段91によって駆動を制御され、ワイヤ43への高電圧の印加時に駆動されるようになっている。よって、ワイヤ43の作動時に発生する放電生成物が感光体ドラム20に与える影響が高度に抑制される。ただし、画像形成装置100の電源OFF時やスリープモード時には、ファン47への給電が停止されるため、ファン47の駆動は停止する。
【0065】
なお、本形態において、ファン47は、帯電部41に吹き付けられ放電生成物を吹き飛ばす空気流を形成するが、ファン47をダクト内に設けるなどして、吸引によって放電生成物を運ぶ空気流を形成するようにしても良い。
【0066】
遮風マイラ48は、かかる空気流の流れる方向における上流側である図2におけるケース46の左側端部にその一端である基端が固定され、その他端である先端が感光体ドラム20に当接している。よって、遮風マイラ48は、ケース46の左側端部の端縁と感光体ドラム20の表面とにまたがるように配設されている。
【0067】
かかる空気流の流れる方向における上流側から下流側に向けた方向、すなわち図2における右方から左方に向けた方向は、感光体ドラム20の回転する方向であるB1方向における上流側から下流側に向けた方向に対応している。よって、かかる空気流の流れる方向における上流側は、B1方向における上流側に対応している。遮風マイラ48は、ケース46の、B1方向上流側の端部に取り付けられている。
【0068】
図3に示すように、遮風マイラ48は、その先端、すなわち感光体ドラム20側の端部に段差を有している。遮風マイラ48は、感光体ドラム20の軸方向に平行な方向に延在している。遮風マイラ48の段差は、遮風マイラ48が延在している方向における両端が凸となることによって形成されている。
【0069】
具体的には、遮風マイラ48は、感光体ドラム20の画像形成領域外に当接した一対の当接部48aと、感光体ドラム20の画像形成領域から離間した離間部48bとを有しており、各当接部48aと離間部48bとによって段差が形成されている。当接部48aと離間部48bとの段差の大きさDは、1.5mmとなっている。
【0070】
感光体ドラム20の画像形成領域とは、感光体ドラム20の軸方向において、トナー像が形成され得る領域である。すなわち、たとえば、図5に示すように、A3縦サイズの転写紙Sにベタ画像を形成する際において、感光体ドラム20の軸方向でトナーが付着する領域である。なお、本形態では、各当接部48aと離間部48bとの境界位置を、画像形成領域の両端位置に一致させているが、当接部48aが画像形成領域外に当接していれば、離間部48bは画像形成領域の内外にわたって対向していても良い。
【0071】
遮風マイラ48は、ウレタンシートによって形成されており、ケース46への取り付け前の状態では、図3(a)に示されているように平板状となっており、この状態で、D=1.5mmであるが、図2に示すように、ケース46に取り付けられた状態では、感光体ドラム20のB1方向への回転に伴い、その先端部すなわち感光体ドラム20に当接した側の端部がB1方向下流側に向けて沿う状態で撓む。
【0072】
この撓んだ状態で、遮風マイラ48の感光体ドラム20への食い込み量は1.0mmであって、図3(b)に示すように、離間部48bと感光体ドラム20との間隙δは、0.5mmの微小空隙となり、この状態が保持される。この微小空隙により、離間部48bと感光体ドラム20との間の部分には開口部49が形成されている。この開口部49は、より具体的には、離間部48bと感光体ドラム20と各当接部48aとの間の空間によって形成されている。
【0073】
開口部49において、離間部48bと感光体ドラム20との間隙δは微小空隙であるため、ファン47の動作により上述した空気流が形成されても、この空気流によりケース46内が負圧に保たれ、この開口部49で極大な圧力損失を生じさせることと相俟って、開口部49から空気流が漏れることは数%程度に抑制されている。よって、かかる空気流に含まれる放電生成物が画像形成装置100内に拡散して各部材の劣化等の問題を生じないようにするためのオゾン等の濃度の目標値がクリアされている。
【0074】
このように、遮風マイラ48は、ケース46の、遮風マイラ48が取り付けられている端部と感光体ドラム20との間からの、かかる空気流の漏れを封じ、シールを行うために設けられている。
【0075】
その一方で、開口部49は、ファン47の停止時に、ケース46内の、ワイヤ43の放電生成物を、帯電装置40の、かかる空気流の流れる方向における上流側の部分から、ケース46外に漏れ出させるために設けられている。
【0076】
ここで、かりに、図9(a)に示すように、開口部49が形成されていないとすると、遮風マイラ48は、その取り付け位置において、ケース46と感光体ドラム20との間の間隙を密閉することとなる。そうすると、画像形成時に、感光体ドラム20上に形成されたトナー像を乱し得る他、ファン47の停止時に、放電停止後にもワイヤ43等から放出される放電生成物をケース46と感光体ドラム20との間の空間に閉じ込めてしまい、遮風マイラ48によるシールが、感光体ドラム20に与える影響を大きくしてしまうこととなる。
【0077】
この影響について説明する。すでに述べたように、放電生成物には、オゾン、窒素酸化物が含まれる。オゾン、窒素酸化物の比重は何れも空気の比重よりも重いため、とくに、本形態のように、感光体ドラム20の上方に放電装置40が位置している場合には、かかる放電生成物が感光体ドラム20にじわじわと降り注ぐようにして作用することとなる。放電生成物は感光体ドラム20に浸透して、感光体ドラム20の電荷輸送層の静電感度に変化をもたらし、横黒帯画像といわれるような黒ずんだ画像となって現れる。この横黒帯画像は、B1方向において、帯電装置40から放電生成物が降り注ぎやすい、帯電部41の直下部分及びその周辺において発生する。オゾンは、ワイヤ43、ケーシング44等、放電装置40の構成部品への蓄積が少ないが、窒素酸化物はかかる構成部品への蓄積が生じ易いという特性がある。
【0078】
ワイヤ43の作動時には、ファン47が駆動されるため、かかる放電生成物による感光体ドラム20への影響は防止され、又は極めて小さいが、電源OFF時等にはファン47が停止するため、蓄積された窒素酸化物が感光体ドラム20に降り注ぐこととなる。
【0079】
遮風マイラ48が配設されてない場合には、窒素酸化物はケース46と感光体ドラム20との間からケース46外に自由に拡散するため、感光体ドラム20への影響は限定的であり、次に述べる横黒帯画像のレベルは著しく良好となる。ただし、放電生成物の、本体99内の濃度が著しく上昇し、転写ベルト11の駆動ローラ72等のゴムローラやその他の部材がオゾン等に暴露されて著しく材質劣化が進み、当該部材の劣化のみならず、画像形成装置100の低寿命化を引き起こす。
【0080】
そこで、このような不具合を回避するために、本形態では、遮風マイラ48を設けているのであるが、上述のように、かりに、開口部49のない遮風マイラ48が取り付けられていると、遮風マイラ48と感光体ドラム20との当接部において窒素酸化物が塞き止められて停滞するため、電荷輸送層の静電感度に変化をもたらし、図9(b)に示すように、かかる塞き止められた位置aをシャープな境界とする横黒帯画像を形成することとなってしまう。塞き止められた位置を境として、放電生成物が浸透する領域とそうでないところの領域がくっきりと分かれるためである。このようなシャープな境界は、異常画像のレベルを悪化させるものであり、好ましくないものである。
【0081】
窒素酸化物が降り注ぐ現象は数時間にわたって起こるため、図9(b)に示したような画像を回避するにはワイヤ43の動作停止後にファン47の駆動を継続し続ける必要がある。この点、スリープモード時には、ファン47を動作させるように制御することも可能であり、このような画像を回避することも可能である。ところが、電源OFF時には、ファン47を停止させざるを得ない。よって、たとえば、電源OFF後の翌朝の電源ON後に形成する画像では、開口部49のない遮風マイラ48を設けた構成では、図9(b)に示したような画像を回避することが困難である。
【0082】
しかしながら、本形態では、開口部49を設けているため、図4(a)に示すように、窒素酸化物の一部は開口部49から漏れ出て行く。よって、開口部49がなく、遮風マイラ48が全幅にわたって感光体ドラム20表面に当接している場合に比べて、感光体ドラム20に浸透する窒素酸化物の量が減少することとなり、電荷輸送層の静電感度の変化が抑制され、横黒帯画像の濃度が低下するなど、横黒帯画像の異常レベルが良化される。
【0083】
また、窒素酸化物の一部が開口部49から漏れ出て行くため、感光体ドラム20に浸透する窒素酸化物の量がB1方向において分散される。よって、図9(b)に示した位置aを境界とする横黒帯画像の有無による画像のコントラストがぼかされ、図4(b)に示すように、濃度が徐々に変化する画像となり、横黒帯画像のシャープな境界が無くなるか低減されて、異常画像のレベルまでに至らずにすむ。
【0084】
遮風マイラ48は、帯電装置40の、空気流の流れる方向における上流側の端部位置に配設されており、感光体ドラム20のB1方向への回転に伴い、その先端部がB1方向下流側に向けて沿う状態で撓むので、開口部49の微小空隙を精度良く形成し、かかるレベルを精度良く設定可能とする利点がある。
【0085】
図6、図7に示すように、遮風マイラ48は、複数の部材で構成しても良い。この遮風マイラ48は、緩やかに折り曲げた第1の部材としてのマイラ48cと、マイラ48cの折り曲げた部分に貼り付けられた第2の部材としての一対のマイラ48dとを有している。
【0086】
当接部48aは、マイラ48dによって形成されている。
離間部48bは、マイラ48cの、マイラ48dが貼り付けられず露出した部分のうち、感光体ドラム20表面に最も近接した稜線部分によって形成されている。
【0087】
開口部49は、マイラ48cによって形成された離間部48bと感光体ドラム20との間の部分によって形成されている。この開口部49は、より具体的には、マイラ48cによって形成された離間部48bと感光体ドラム20と各マイラ48dによって形成された当接部48aとの間の空間によって形成されている。
【0088】
各マイラ48dの厚みは0.5mmであり、この厚みによって、開口部49を形成する0.5mmの微小空隙が設定されている。このように、この構成では、マイラ48dの厚みによって高精度に微小空隙が設定される。
【0089】
図8に示すように、開口部49は、遮風マイラ48でなく、ケース46の、ファン47によって形成される空気流の流れる方向における上流側の部分、すなわち、B1方向上流側の端部に形成しても良い。開口部49は、かかる端部の、可能な限り下端縁近傍すなわち感光体ドラム20に近い位置に形成されている。
【0090】
この構成例では、ファン47の動作時に開口部49からの空気流の漏れを封じるためのシール機構50を有している。シール機構50は、ケース46に支持され、開口部49を開閉する開閉部材としてのシャッタ51を有している。シャッタ51は、ゴム材料で形成され、外力を加えない状態すなわち無負荷の状態で湾曲した形状をなすようになっている。シャッタ51は、その一端の上端が基端としてケース46に固定されているとともに、その他端である下端が自由端となっている。
【0091】
シャッタ51は、図8(a)に示すように、ファン47の停止時にその湾曲形状によって開口部49を開放した状態となり、図8(b)に示すように、ファン47の動作時に空気流によって形成されるケース46内の負圧によって自由端がケース46に密着するように弾性変形して平板状となり開口部49を閉じた状態となる。
【0092】
シャッタ51は、ファン47の動作時に、開口部49を塞いでほぼ密閉するため、ワイヤ43の作動時に、放電生成物が開口部49から漏れ出ることを、遮風マイラ48によって開口部49を形成した上述の構成よりも、高精度に抑制ないし防止する。
【0093】
シャッタ51はその下端側の自由端が変形することで開口部49を開閉する。窒素酸化物の比重は空気の比重より重いため、感光体ドラム20表面側から堆積していくが、シャッタ51が開口部49の感光体ドラム20側を開き開口部49の下端側を大きく開放することから、開口部49が感光体ドラム20に可能な限り近い下方位置に形成されていることと相俟って、ファン47の停止時において窒素酸化物がケース46内にこもることが抑制され、ファン47の停止時における窒素酸化物の開口部49からの放出効率が高くなっている。これにより、図9(b)に示した横黒帯画像のシャープな境界が緩和される。
【0094】
また、シャッタ51は、ファン47の動作時に、空気流に起因する負圧で、それ自身の変形により開口部49を閉じた状態となるので、簡易な構成となっており、シール機構50を設けることによる装置の大型化、高価格化が大きく抑制されている。ただし、シール機構50は、開閉部材を駆動して開口部49を開閉するためのソレノイド、モータ等の駆動源を有する構成であっても良い。帯電部41よりも空間的に余裕があるためである。しかしながら、シャッタ51のように、空気流に起因する負圧及びそれ自身の形状で開口部49を開閉する構成のほうが、装置の小型化、低廉化の観点において有利である。
【0095】
遮風マイラ48は、帯電装置40の、空気流の流れる方向における上流側の端部位置に配設されており、感光体ドラム20のB1方向への回転に伴い、その先端部がB1方向下流側に向けて沿う状態で撓むので、その先端部を感光体ドラム20の表面に精度良く当接させる利点がある。
【0096】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0097】
たとえば、上述の形態では、放電装置を帯電装置としたが、これに代えて、あるいはこれとともに、放電装置は、除電装置78Y、78M、78C、78BK等の除電装置であっても良い。
【0098】
放電装置によって除電や帯電が行われる像担持体は転写ベルト11のような中間転写体であっても良い。
シール部材に開口部を設ける構成と、ケースに開口部を設ける構成とを組み合わせて用いても良い。
【0099】
上述の形態では、被覆部42を、放電装置に備えられた構成としたが、被覆部42は画像形成装置本体側に備えられた構成であっても良い。被覆部42を放電装置に備えられた構成とする場合、放電ワイヤのハウジングを、その内部に空気流形成手段によって空気流が形成され、またシール部材が配設されるケースとしても良い。
【0100】
上述のように開口部を有する構成は、上述の例のように、放電装置が像担持体の上方に位置している構成において、比重が空気より重い放電生成物を、気流停止時に排出するのに有利であるが、放電装置は像担持体の下方に位置していても良い。
【0101】
本発明を適用する画像形成装置は、タンデム型であっても、上述した間接転写方式でなく、直接転写方式を採用可能である。また、画像形成装置は、いわゆるタンデム方式の画像形成装置ではなく、1つの感光体ドラム(像担持体)上に順次各色のトナー像を形成して各色トナー像を順次重ね合わせてカラー画像を得るいわゆる1ドラム方式の画像形成装置にも同様に適用することが可能であるし、他にも、中間転写体(像担持体)を複数用いる方式、中間色トナーを用いる方式等の画像形成装置にも同様に適用することが可能である
【0102】
その他、画像形成装置は、近年では、市場からの要求にともない、カラー複写機やカラープリンタなど、カラーのものが多くなってきているが、画像形成装置は、モノカラー画像のみを形成可能なものであっても良い。
【0103】
このような画像形成装置に用いる画像形成物質としての現像剤は、二成分現像剤に限らず、一成分現像剤であっても良いし、画像形成物質は定着を必要とする他のものであっても良い。
【0104】
画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリの複合機でなく、これらの単体であっても良いし、その他、複写機とプリンタとの複合機等の他の組み合わせの複合機であっても良い。
【0105】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0106】
20、20Y、20M、20C、20BK 像担持体
40、40Y、40M、40C、40BK 放電装置、帯電装置
43 放電ワイヤ
46 ケース
46a 開口
47 空気流形成手段
48 シール部材
48a 当接部
48b 離間部
49 開口部
50 シール機構
51 開閉部材
78Y、78M、78C、78BK 除電装置
100 画像形成装置
B1 像担持体の移動方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0107】
【特許文献1】特開2004−45569号公報
【特許文献2】特開2006−53233号公報
【特許文献3】特開2009−151121号公報
【特許文献4】特開2006−317820号公報
【特許文献5】特開平5−173459号公報
【特許文献6】特開2007−225770号公報
【特許文献7】特開2010−181480号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に対向して配設された放電ワイヤと、
この放電ワイヤを覆い、像担持体に対向した開口を備えたケースと、
前記放電ワイヤの放電によって生成された前記ケース内の組成物を前記ケース外に排出するための空気流を前記ケース内に形成する空気流形成手段と、
前記ケースの、前記空気流の流れる方向における上流側の端部にその一端が一体化され、その他端が像担持体に当接し、前記端部と像担持体との間からの前記空気流の漏れを封じるためのシール部材と、
前記空気流形成手段の停止時に、前記ケース内の前記組成物を、当該放電装置の、前記上流側の部分から同ケース外に漏れ出させるための開口部とを有する放電装置。
【請求項2】
請求項1記載の放電装置において、
前記シール部材は、像担持体の画像形成領域外に当接した当接部と、像担持体の画像形成領域から離間した離間部とを有し、
前記開口部は、前記離間部と像担持体との間の部分によって形成されていることを特徴とする放電装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の放電装置において、
前記開口部は、前記ケースの、前記上流側の部分に形成されており、
前記空気流形成手段の動作時に前記開口部からの前記空気流の漏れを封じるためのシール機構を有することを特徴とする放電装置。
【請求項4】
請求項3記載の放電装置において、
前記シール機構は、前記ケースに支持され、前記停止時にその形状によって前記開口部を開放した状態となり、前記動作時に前記空気流によって形成される前記ケース内の負圧によって変形して前記開口部を閉じる開閉部材を有することを特徴とする放電装置。
【請求項5】
請求項4記載の放電装置において、
前記開閉部材は、前記開口部を開放するとき、像担持体側が開くことを特徴とする放電装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つに記載の放電装置において、
前記上流側は、像担持体の移動方向における上流側に対応していることを特徴とする放電装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか1つに記載の放電装置において、
像担持体の上方に位置していることを特徴とする放電装置。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか1つに記載の放電装置において、
像担持体の帯電装置及び/又は除電装置であることを特徴とする放電装置。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか1つに記載の放電装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−20138(P2013−20138A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154046(P2011−154046)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】