説明

放音装置

【課題】複数の方向へ向けて音を放音すること。
【解決手段】第1の壁部と、第1の壁部に対向する第2の壁部と、第1の壁部及び第2の壁部の間の周囲を囲む第3の壁部とを有する中空の筐体110と、第1の壁部に取り付けられて、第2の壁部に向けて音を放射する音源120と、第2の壁部の音源120と対向する位置に設けられて、音源120から放射された音を、第3の壁部に向けて反射させる音反射部140と、第3の壁部に設けられて、音反射部140で反射した音を、筐体110の外部へ放音するための開口部130a〜dとを備え、音反射部140を、角錐形状とし、開口部130a〜dを、第3の壁部における音反射部140の各角錐面が向いている方向の位置に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放音装置に関する。特に本発明は、複数の方向へ向けて音を発する放音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小売店や飲食店等においては、現金を用いずに電子的にデータを交換することにより商品やサービスの代価を支払う電子決済システムの利用が拡大してきている。一般に、電子決済システムにおいては、カードの内部にアンテナを持ち、外部の電子決済用端末が発信する弱い電波を利用してデータを送受信する非接触式IC(Integrated Circuit)カードが用いられる。即ち、客は、商品やサービスの代価を支払うにあたり、非接触式ICカードを外部の電子決済用端末に近づけることによって、電子決済の処理を行うことができる。その際、電子決済用端末の機種によっては、非接触式ICカードを電子決済用端末に近づけるよう客に促したり、電子決済処理が正常に行われたことを通知したり、あるいは、電子決済処理が正常に行われていないことを通知したりするために、チャイム音や音声等を放音する音源を備えたものがある。
【0003】
図11は、音源を備えた既知の電子決済用端末900を示す。電子決済用端末900は、中空の箱型の筐体910の内部に音源920を収納している。具体的には、音源920は、筐体910の内部の一側面に取り付けられている。そして、音源920が取り付けられている面と対向する面には、開口部930が設けられている。そして、電子決済用端末900は、図中の矢印によって示されるように、音源920から放射された音を、対向する面の開口部930から放音することになる。
【0004】
一方、一つの筐体乃至ハウジング内にスピーカとマイクロフォンを収め、手を離してテーブル等の上に据置いた状態のまま、通話を可能とする電話機用のスピーカ・フォン構造が知られている(例えば、特許文献1)。この電話機用のスピーカ・フォン構造によれば、上半部乃至スピーカ室の内部上方の部分には、スピーカが上向きに据え付けられ、放射音は下向きの円錐形をした360°全方向反射板にて反射した後、音抜き孔を介して放射方向全方向に無指向性的に拡散されていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−010900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図11に示すような音源を備えた機知の電子決済用端末900は、通常、電子決済用端末900から放音される音を、客が聞き取り易いように、開口部930が設けられている面を客に向けてレジカウンターに設置される。しかし、このように電子決済用端末900が設置される場合には、レジカウンターを挟んで客の対面にいる店員が、開口部930から音が放音される方向とは反対方向に位置しているため、電子決済用端末900から放音される音を聞き取り難いという問題があった。
【0007】
これに対し、特許文献1に記載されている電話機用のスピーカ・フォン構造によれば、スピーカから放射された放射音は、下向きの円錐形をした360°全方向反射板にて反射した後、音抜き孔を介して放射方向全方向に無指向性的に拡散されていく。この構造を電子決済用端末に採用した場合には、電子決済用端末から放音される音を、客及び店員のいずれに対しても、共に聞き易くすることができる。しかし、この構造によれば、スピーカから放射された放射音は、円錐形をした360°全方向反射板にて反射されるが、その反射した音が向かっていく方向の全面に亘って音抜き孔が設けられているわけではない。したがって、この構造によれば、スピーカから放射された放射音は、円錐形をした360°全方向反射板にて反射されるが、その一部は音抜き孔が設けられていない筐体の壁部において反射し、反響してしまう。その結果、音抜き孔から放音される音は、こもったような音になってしまうという問題があった。また、筐体が吸音性の高い材質である場合には、筐体の壁部に当たった音が吸音されて、音抜き孔から放音される音が小さくなってしまうという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、上記の課題を解決することのできる放音装置を提供することを目的とする。この目的は、特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また、従属項は、本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明の第1の形態によると、複数の方向へ向けて音を放音する放音装置であって、第1の壁部と、第1の壁部に対向する第2の壁部と、第1の壁部及び第2の壁部の間の周囲を囲む第3の壁部とを有する中空の筐体と、第1の壁部に取り付けられて、第2の壁部に向けて音を放射する音源と、第2の壁部の音源と対向する位置に設けられて、音源から放射された音を、第3の壁部に向けて反射させる音反射部と、第3の壁部に設けられて、音反射部で反射した音を、筐体の外部へ放音するための開口部とを備え、音反射部を、角錐形状とし、開口部を、第3の壁部における音反射部の各角錐面が向いている方向の位置に設けた。
【0010】
なおまた、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、この発明では、音反射部を角錐形状とし、その各角錐面が向いている方向の位置に開口部を設けているため、音源から放射された音を、音反射部の各角錐面で反射させ、各開口部に向けて積極的に誘導することができる。その結果、この発明によれば、音源から放射される音は、筐体内部の壁部においてほとんど反射することなく、明瞭な音として各開口部から放音されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の一例に係る電子決済用端末100の構成の一例を示す図である。
【図2】電子決済用端末100のA−A断面を示す図である。
【図3】電子決済用端末100のB−B断面を示す図である。
【図4】電子決済用端末100における音の進行方向を示す図である。
【図5】本発明の実施形態の別の例に係る電子決済用端末200の構成の一例を示す図である。
【図6】電子決済用端末200のC−C断面を示す図である。
【図7】電子決済用端末200のD−D断面を示す図である。
【図8】本発明の実施形態の更に別の例に係る電子決済用端末300の構成の一例を示す図である。
【図9】電子決済用端末300のE−E断面を示す図である。
【図10】電子決済用端末300のF−F断面を示す図である。
【図11】音源を備えた既知の電子決済用端末を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は、特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
図1は、本発明の実施形態の一例に係る電子決済用端末100の構成の一例を示す。図2は、電子決済用端末100のA−A断面を示す。図3は、電子決済用端末100のB−B断面を示す。
【0015】
電子決済用端末100は、非接触式ICカードが近づけられることによって、現金を用いずに電子的にデータを交換することにより商品の代価を支払うための処理を行う端末である。なお、電子決済用端末100は、この発明における「放音装置」の実施形態の一例であってよい。
【0016】
電子決済用端末100は、リーダ/ライタ機構を有する上部筐体150と、スピーカ機構を有する下部筐体110とを備えている。リーダ/ライタ機構は、非接触式ICに対して弱い電波を発信し、非接触式ICカードとの間においてデータを送受信するための機構である。スピーカ機構は、非接触式ICカードを電子決済用端末に近づけるよう客に促したり、電子決済処理が正常に行われたことを通知したり、あるいは、電子決済処理が正常に行われていないことを通知したりするために、チャイム音や音声等を放音するための機構である。なお、下部筐体110は、この発明における「筐体」の一例であってよい。
【0017】
上部筐体150は、上壁150aと、側壁150bとを備えている。そして、上部筐体150の上壁150aには、図示しないリーダ/ライタ機構が取り付けられている。例えば、リーダ/ライタ機構は、上部筐体150の上壁150aの下面に取り付けられる。このような構成により、電子決済用端末100においては、非接触式ICカードが上部筐体150の上壁150aの上面に近づけられると、リーダ/ライタ機構と非接触式ICカードとの間において、電子決済処理のためのデータの送受信が行われることになる。
【0018】
下部筐体110は、上壁110aと、側壁110bと、下壁110cとを備えており、内部が中空になっている。そして、下部筐体110の上壁110aの上面には、上部筐体150が載置された状態で取り付けられている。なお、下部筐体110上壁110aは、この発明における「第1の壁部」の一例であってよい。また、下部筐体110の側壁110bは、この発明における「第3の壁部」の一例であってよい。また、下部筐体110の下壁110cは、この発明における「第2の壁部」の一例であってよい。
【0019】
下部筐体110の上壁110aには、複数の孔部160が設けられている。また、下部筐体110の上壁110aの上面には、複数の孔部160と接するように、スピーカ120が取り付けられている。具体的には、スピーカ120は、音の放射面が複数の孔部160と接するように取り付けられている。なお、スピーカ120は、この発明における「音源」の一例であってよい。
【0020】
また、下部筐体110の下壁110cの上面には、スピーカ120から放射された音を、下部筐体110の側壁110bへ向けて反射させるための音反射部140が設けられている。具体的には、音反射部140は、スピーカ120と対向する位置に設けられている。また、音反射部140は、四角錐形状を成している。また、音反射部140は、音の反射性が高い部材によって形成される。なお、四角錐形状は、この発明における「角錐形状」の一例であってよい。
【0021】
また、下部筐体110の側壁110bには、音反射部140で反射した音を、下部筐体110の外部へ放音するための開口部130a〜dが設けられている。具体的には、開口部130a〜dは、音反射部140の各角錐面140a〜dが向いている方向の位置にそれぞれ設けられている。
【0022】
図4は、電子決済用端末100における音の進行方向を示す。具体的には、図4中の矢印が音の進む進行方向を示している。上記のような構成により、スピーカ120から放射された音は、複数の孔部160を通り抜けて下部筐体110の内部に放射される。そして、下部筐体110の内部に放射された音は、音反射部140の各角錐面140a〜dによって、下部筐体110の側壁110bに設けられた各開口部130a〜dの方向に反射する。そして、音反射部140の各角錐面140a〜dで反射した音は、各開口部130a〜dから下部筐体110の外部へ放出される。このように、スピーカ120から放射された音は、下部筐体110の内部の側壁110における各開口部130a〜dが設けられていない方向には反射しない。したがって、この構成では、下部筐体110の内部の側壁110の内部において、音があまり反射することがないので、こもることなく明瞭な音を、各開口部130a〜dから放出することができる。
【0023】
また、例えば、電子決済用端末100は、商店や飲食店のカウンターに設置される。カウンターの一方側には、商店や飲食店の店員がいて、その反対側に客がいるような環境を想定する。このとき、開口部130cを店員側に向けて電子決済用端末100を設置する場合には、開口部130cから放出された音が店員に聞き取りやすく伝達されることになる。また、この場合には、開口部130aから放出された音が店員の反対側にいる客に聞き取り易く伝達されることになる。
【0024】
また、上記の構成においては、下部筐体110の内部にスピーカ120が設けられていない。そのため、上記構成においては、各開口部130a〜dから下部筐体110の内部に水が浸入しても、スピーカ120が水没する虞がない。したがって、上記構成による電子決済用端末100においては、下部筐体110の各開口部130a〜dに防滴加工を施す必要がない。
【0025】
また、上記の構成において、好ましくは、音反射部140の大きさは、その底面の大きさがスピーカ120の音の放射面の大きさ以上の大きさとなるようにする。このような構成にすることによって、スピーカ120から放射された音は、音反射部140が設けられていない下部筐体110の下壁110cで垂直方向に反射したり、吸音されたりすることがない。したがって、スピーカ120から放射された音は、より効率的に、各開口部130a〜dの方向に反射されることになる。
【0026】
また、上記の構成において、好ましくは、各開口部130a〜dの周方向(水平方向)の長さは、それぞれ相対する角錐面140a〜dの底辺の長さ以上の長さとなるようにする。また、好ましくは、各開口部130の周方向と直交する方向(垂直方向)の長さは、音反射部140の高さ以上の長さとなるようにする。このような構成にすることによって、各開口部130a〜dの開口部分の大きさは、各角錐面140a〜dの水平視の大きさよりも大きくなる。したがって、各角錐面140a〜dで反射した音は、下部筐体110の側壁110bの内部において、ほとんど反射することなく、各開口部130a〜dから下部筐体110の外部へ放出されることになる。
【0027】
図5は、本発明の実施形態の別の例に係る電子決済用端末200の構成の一例を示す。図6は、電子決済用端末200のC−C断面を示す。図7は、電子決済用端末200のD−D断面を示す。
【0028】
電子決済用端末200の構成における、上記の電子決済用端末100と異なる点は、音反射部240の形状である。電子決済用端末200における音反射部240以外の構成は、上記の電子決済用端末100と同じであるため、その具体的な説明を省略する。
【0029】
上記の音反射部140の形状は、一般的な角錐形状をなしている。これに対し、音反射部240の形状は、各角錐面240a〜dが凹状に湾曲している角錐形状をなしている。このような構成にすることによって、スピーカ220から放射された音は、下部筐体210の側壁210bに設けられた各開口部130a〜dに向かって、より積極的に誘導されるように、各角錐面240a〜dで反射することになる。
【0030】
図8は、本発明の実施形態の更に別の例に係る電子決済用端末300の構成の一例を示す。図9は、電子決済用端末300のE−E断面を示す。図10は、電子決済用端末300のF−F断面を示す。
【0031】
電子決済用端末300における、上記電子決済用端末100と異なる点は、音反射部340の形状である。電子決済用端末300における音反射部340以外の構成は、上記の電子決済用端末100と同じであるため、その具体的な説明を省略する。
【0032】
上記の音反射部140は、下部筐体110の下壁110cにおける、スピーカ120と対向する位置に局所的に設けられている。これに対し、音反射部340は、下部筐体310の下壁310cの全面に亘って形成されている。このような構成にすることによって、スピーカ120から放射された音は、下部筐体310の下壁310cで垂直方向に反射したり、吸音されたりしない。したがって、各角錐面340a〜dで反射した音は、より効率的に各開口部330a〜dから下部筐体310の外部へ放出されることになる。
【0033】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は、上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることができる。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0034】
100 電子決済用端末
110 下部筐体
120 スピーカ
130 開口部
140 音反射部
150 上部筐体
160 孔部
200 電子決済用端末
210 下部筐体
220 スピーカ
230 開口部
240 音反射部
250 上部筐体
260 孔部
300 電子決済用端末
310 下部筐体
320 スピーカ
330 開口部
340 音反射部
350 上部筐体
360 孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の方向へ向けて音を放音する放音装置であって、
第1の壁部と、前記第1の壁部に対向する第2の壁部と、前記第1の壁部及び前記第2の壁部の間の周囲を囲む第3の壁部とを有する中空の筐体と、
前記第1の壁部に取り付けられて、前記第2の壁部に向けて音を放射する音源と、
前記第2の壁部の前記音源と対向する位置に設けられて、前記音源から放射された音を、前記第3の壁部に向けて反射させる音反射部と、
前記第3の壁部に設けられて、前記音反射部で反射した音を、前記筐体の外部へ放音するための開口部と
を備え、
前記音反射部を、角錐形状とし、前記開口部を、前記第3の壁部における前記音反射部の各角錐面が向いている方向の位置に設けたことを特徴とする放音装置。
【請求項2】
前記第1の壁部の前記音源が取り付けられる位置に設けられて、前記音源から放射された音を通すための複数の孔部
を更に備え、
前記音源は、音の放射面が前記複数の孔部と接するように、前記第1の壁部の上面に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の放音装置。
【請求項3】
前記角錐の底面の大きさは、前記音源の音の放射面の大きさ以上の大きさであることを特徴とする請求項1又は2に記載の放音装置。
【請求項4】
前記開口部の周方向の長さは、相対する前記角錐面の底辺の長さ以上の長さであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の放音装置。
【請求項5】
前記開口部の周方向と直交する方向の長さは、前記音反射部の高さ以上の長さであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の放音装置。
【請求項6】
前記各角錐面は、凹状に湾曲していることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の放音装置。
【請求項7】
前記音反射部は、前記第2の壁部に局所的に設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の放音装置。
【請求項8】
前記音反射部は、前記第2の壁部の全面に亘って設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の放音装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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