説明

故障電流制限HTSケーブルおよびその構成方法

低温冷却HTSケーブルが、その低温冷却HTSケーブルがない場合に生じることになる最大故障電流を有する電力公益事業電力格子内に含まれるように構成されている。この低温冷却HTSケーブルは、液体冷媒を循環させるための連続液体低温冷媒経路を備えている。HTSワイヤの連続可撓性構造が、最大故障電流を少なくとも10%減衰させるインピーダンス特性を有している。HTSワイヤのこの連続可撓性構造は、最大故障状態が発生している間、HTSワイヤ内の最大温度上昇が、液体冷媒中のガス気泡の形成を防止するだけの十分に小さい状態で低温冷却HTSケーブルを動作させることができるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年2月9日に出願した米国特許出願第11/673,281号の優先権を主張した、2007年3月20に出願した一部継続米国特許出願第11/688,827号の優先権を主張した、2007年3月20日に出願した一部継続米国特許出願第11/688,817号の優先権を主張した、2007年3月20日に出願した一部継続米国特許出願第11/688,802号の優先権を主張するものである。
【0002】
本開示はHTSデバイスに関し、より詳細には故障電流制限デバイスとして動作するように構成されたHTSデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
電力の需要は世界的な規模で著しく増加し続けており、したがって電力公益事業は、発電の観点ならびに配電の観点の両方から、増加する一方のこれらの需要に合致するべく懸命な努力を続けている。既存の設置済み送電および配電インフラストラクチャの容量が限られており、また、従来の追加送電線および配電線ならびに送電ケーブルおよび配電ケーブルを追加するために利用することができる空間が限られているため、電力公益事業による送電ネットワークおよび配電ネットワークを介した使用者への電力の引渡しには、重大な課題が依然として存在している。この課題は、容量を拡張するために利用することができる既存の空間が極めて限られている混雑した都市および首都圏地域にとりわけ関連している。
【0004】
電力公益事業の電力送電ネットワークおよび配電ネットワークにおける電力容量を増し、その一方で設置をより容易にするために比較的小さいフットプリントを維持し、かつ、冷却のために環境的にきれいな液体窒素を使用した、高温超伝導(HTS)ワイヤを使用した可撓性長距離電力ケーブルが開発されている。本開示では、HTS材料は、臨界温度が30°ケルビン(マイナス243°センチグレード)以上の超伝導体として定義されており、希土類すなわちイットリウム・バリウム・銅・酸化物(本明細書においてはYBCOと呼ばれている)、タリウム・バリウム・カルシウム・銅・酸化物、ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・銅・酸化物(本明細書においてはBSCCOと呼ばれている)、水銀・バリウム・カルシウム・銅・酸化物およびマグネシウム・ジボライドなどの材料が含まれている。YBCOは、約90Kの臨界温度を有している。BSCCOは、1つの組成において約90Kの臨界温度を有しており、また、第2の組成において約110Kの臨界温度を有している。MgBは、最大約40Kの臨界温度を有している。材料には置換、付加および不純物が可能であり、臨界温度を30°K未満に下げない限り、これらの組成族には、これらの可能な置換、付加および不純物が包含されているものとして理解されたい。このようなHTSケーブルを使用することにより、電力公益事業電力ネットワークの混雑した地域に、より多くの電力を経済的に、かつ、高い信頼性で提供することができ、ひいては混雑が緩和され、電力公益事業は、それらの送電および配電容量の問題に対処することができる。
【0005】
HTS電力ケーブルには、電気を送電し、かつ、配電するためのケーブルの一次導体としてHTSワイヤが使用されている(つまり従来の銅導体の代わりに)。HTSケーブルの設計により、従来の架空線路および地下ケーブルと比較すると、それらの超伝導動作状態における直列インピーダンスが著しく小さくなっている。ここでは、ケーブルまたは線路の直列インピーダンスは、電力を運ぶ導体の抵抗性インピーダンスと、ケーブルアーキテクチャまたは架空線路と結合した無効(誘導性)インピーダンスとの組合せとして参照されている。ケーブルの断面積が同じである場合、HTSワイヤを使用することにより、従来の交流(AC)ケーブルと比較すると電流容量を3倍乃至5倍にすることができ、また、従来の直流(DC)ケーブルと比較すると電流容量を最大10倍にすることができる。
【0006】
HTSケーブルは、連続可撓性波形巻型の周囲に螺旋状に巻かれたHTSワイヤを使用して設計することができ、あるいは様々なスタックおよびねん回構成の複数のHTSワイヤをそれらに持たせることができる。これらのいずれの場合においても、ケーブルは、輸送のためにドラムに便利に巻き付けることができ、また、電線管の中、あるいは他の電力デバイス間で、湾曲またはねじることによって設置することができるよう、連続した可撓性のあるものにすることができる。HTSケーブルは、HTSワイヤと接触し、かつ、ケーブルの長さに沿って展開している液体冷媒を使用して設計することができる。液体窒素は、最も一般的な液体冷媒であるが、液体水素または液体ネオンを使用して、マグネシウム・ジボライドのような超伝導材料の温度を低くすることも可能である。
【0007】
容量の問題に加えて、電力需要の増加(したがって発電され、かつ、送電ネットワークおよび配電ネットワークを介して送電される電力のレベルが高くなること)に起因する電力公益事業の他の重大な問題は、故障によって生じる「故障電流」の増加である。故障は、場合によっては、ネットワークデバイスの故障、自然の作用(例えば雷)、人間による作用(例えば自動車事故による電柱の破損)、または接地への短絡、あるいは電力公益事業ネットワークの1つの相から他の相への短絡をもたらす他の何らかのネットワークの問題によって生じる。通常、このような故障は、電力公益事業ネットワーク上で即座に有形化する極端に大きい負荷として出現する。ネットワークは、この負荷の出現に応答して、負荷への大量の電流の引渡しを試行する(つまり故障)。電力格子のネットワーク内における所与のリンクは、すべて、最大故障状態に突如として陥らせることになる短絡の間、故障電流制限手段がない場合に流れることになる最大故障電流によって特性化することができる。故障電流制限手段がない大きな電力格子の場合、故障電流が非常に大きく、格子内のほとんどの電気設備が損傷または破壊されることになる。故障電流から保護する従来の方法は、遮断器を速やかに開路し、電流および電力の流れを完全に遮断することである。
【0008】
遮断器に結合された検出器回路がネットワークを監視し、故障(または過電流)状況の出現を検出する。故障(または過電流)状況の出現が検出されると、数ミリ秒以内に検出器回路から起動信号を発信して遮断器を開路し、様々なネットワークコンポーネントの破壊を防止することができる。既存の遮断器デバイスの最大能力は、現在、80,000アンペアであり、これらは送電レベル電圧専用である。20世紀に構築された電力公益事業ネットワークの多くのセクションは、40,000アンペア乃至63,000アンペアの故障電流しか耐えることができないネットワークデバイスを使用して構築されている。残念なことには、電力公益事業ネットワーク上の発電レベルおよび送電レベルが高くなっている現在、故障電流レベルは、配電レベル電圧および送電レベル電圧の両方に対して、現在設置されている遮断器デバイスあるいは最新技術の遮断器デバイスの能力を超えるポイントまで(つまり80,000アンペアを超えるレベルまで)高くなっている。たとえもっと小さい故障電流レベルであっても、あるレベルからもっと高いレベルへ格子全体にわたって遮断器をアップグレードするコストは、場合によっては極めて高くなる。したがって電力公益事業は、高くなる一方の故障電流レベルに対処するための新しい解決法を探し求めている。ほとんどの場合、格子の動作の改善を有意義なものにするためには、故障電流を少なくとも10%小さくすることが望ましい。開発中のこのような解決法の1つは、HTS故障電流制限器(FCL)と呼ばれているデバイスである。
【0009】
HTS FCLは、電力公益事業ネットワークに相互接続された専用デバイスであって、容易に入手することができ、あるいは既に設置されている従来の遮断器が取り扱うことができるレベルまで故障電流の大きさを小さくするための専用デバイスである。High−Temperature Superconductor Fault Current Limiters by Noe and M.Steurer、Supercond.Sci.Technol.20(2007)R15〜R29を参照されたい。このようなHTS FCLは、通常、HTS材料の固体バーすなわちシリンダでできた短い剛直モジュールで構成されており、このモジュールは、それらの超伝導臨界電流で抵抗状態に駆動されると極めて大きい抵抗を有することになる。残念なことには、このような独立型HTS FCLは、現在、極めて大型で、かつ、高価である。空間は、とりわけ、HTSケーブルを最も必要とする密集した都市環境における変電所内では極めて高価である。また、電力公益事業は、大型インダクタを使用することも可能であるが、それらは、余計な損失、電圧調整および格子安定性の問題の原因になることがある。また、残念なことには、花火電流制限器(例えばヒューズ)の場合、故障が発生する毎に交換が必要である。さらに、新しい電力エレクトロニックFCLも開発中であるが、それらをフェイルセーフにすることができるかどうか、また、それらを高い信頼性で送電電圧レベルまで拡張することができるかどうか疑問である。
【0010】
HTSケーブルを故障電流の流れに耐えることができるようにするために、かなりの量の銅がHTSワイヤと共に導入されるが、そのためにケーブルの重量が重くなり、また、サイズが大きくなっている。Development and Demonstration of a Long Length HTS Cable to Operate in the Long Island Power Authority Transmission Grid by J.F.Maguire、F.Schmidt、S.Bratt、T.E.Welsh、J.Yuan、A.Allais、and F.Hamber、to be published in IEEE Transaction on Applied Superconductivityを参照されたい。しばしば、周囲にHTSワイヤが螺旋状に巻き付けられたHTSケーブルのコア中の中央巻型に銅が充填されるが、これは、液体窒素が流れる通路としてコアが使用されるのを防止している。別法としては、とりわけ多相ケーブルの場合、螺旋状に巻かれたケーブルの層の中で銅線とHTSワイヤが混合される。これらの銅線または構造は、HTSワイヤと電気的に並列にすることができ、HTSケーブル内の「銅分路」と呼ぶことができる。ケーブルのHTSワイヤの臨界電流を超える大きな故障電流が存在すると、HTSワイヤは、抵抗性IR損失によって加熱することができる抵抗状態に急冷すなわちスイッチする(Iは電流であり、Rはケーブルの抵抗である)。これらの銅分路は、HTSワイヤの過熱を防止するために、故障電流を吸収して運ぶように設計することができる。銅の量は非常に多く、したがってケーブル中におけるその総合抵抗は比較的小さく、したがって故障電流を小さくする効果は無視し得る程度のものである。銅は、純粋な銅または少量の不純物を含有した銅であり、したがって77〜90Kの温度範囲におけるその抵抗率が比較的小さいこと(例えば<0.5マイクロオーム−cmあるいは0.2マイクロオーム−cm程度の小さい抵抗率であること)を意味するものとして定義することができる。
【0011】
欧州SUPERPOLIプログラム(SUPERPOLI Fault−Current Limiters Based on YBCO−Coated Stainless Steel Tapes by A.Usoskin et al.、IEEE Trans.on Applied Superconductivity、Vol.13、No.2、2003年6月、1972〜5頁、Design Performance of a Superconducting Power Link by Paasi et al.、IEEE Trans.on Applied Superconductivity、Vol.11、No.1、March 2001年3月、1928〜31頁、HTS Materials of AC Current Transport and Fault Current Limitation by Verhaege et al.、IEEE Trans.on Applied Superconductivity、Vol.11、No.1、2001年3月、2503〜6頁、および「Superconductive Electrical Transmission Line」という名称の米国特許第5,859,386号参照)では、同じく電流を制限することができる超伝導電力リンクが調査された。
【0012】
初期の独立型FCLのための典型的な手法に引き続いて、このプログラムでは、電力リンクのためのモジュールすなわち母線を形成していたHTS材料の剛直固体ロッドすなわちシリンダが調査された。モジュールすなわち母線の典型的な長さは50cm乃至2メートルであった。第2の手法では、コーティングが施された導体ワイヤが使用され、抵抗の大きいステンレス鋼基板の上にYBCO材料がコーティングされた。金スタビライザ層が使用されたが、長さ当たりの抵抗を可能な限り大きい値に維持するために、この金スタビライザ層は極めて薄い状態で維持された。ワイヤは、電力リンクのためのモジュールすなわち母線のための他のオプションを形成していた剛直な円筒状コアの上に螺旋状に巻き付けられた。故障電流に応答してこれらのモジュールの両方が極めて大きい抵抗状態に切り換わり、それにより電流を制限する。SUPERPOLIプログラムの中で提案されている、長さがより長いケーブルを生成するための概念は、剛直モジュールと可撓性編組銅相互接続部を相互接続することであった。「Superconductive Electrical Transmission Line」という名称の米国特許第5,859,386号を参照されたい。故障電流制限機能を備えた長距離連続可撓性ケーブルを、抵抗がより小さく、かつ、熱容量がより大きいワイヤ、つまり局部加熱のレベルがより低いワイヤを使用して設計し、かつ、製造する可能性については考慮されなかった。また、リンクの機能を最適化することができる追加格子エレメントの可能性についても考慮されなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願第11/673,281号
【特許文献2】一部継続米国特許出願第11/688,827号
【特許文献3】一部継続米国特許出願第11/688,817号
【特許文献4】一部継続米国特許出願第11/688,802号
【特許文献5】米国特許第5,859,386号
【特許文献6】同時係属米国特許出願第11/459,167号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】High−Temperature Superconductor Fault Current Limiters by Noe and M.Steurer、Supercond.Sci.Technol.20(2007)R15〜R29
【非特許文献2】Development and Demonstration of a Long Length HTS Cable to Operate in the Long Island Power Authority Transmission Grid by J.F.Maguire、F.Schmidt、S.Bratt、T.E.Welsh、J.Yuan、A.Allais、 and F.Hamber、to be published in IEEE Transaction on Applied Superconductivity.
【非特許文献3】SUPERPOLI Fault−Current Limiters Based on YBCO−Coated Stainless Steel Tapes by A.Usoskin et al.、IEEE Trans.on Applied Superconductivity、Vol.13、No.2、2003年6月、1972〜5頁
【非特許文献4】Design Performance of a Superconducting Power Link by Paasi et al.、IEEE Trans.on Applied Superconductivity、Vol.11、No.1、March 2001年3月、1928〜31頁
【非特許文献5】HTS Materials of AC Current Transport and Fault Current Limitation by Verhaege et al.、IEEE Trans.on Applied Superconductivity、Vol.11、No.1、2001年3月、2503〜6頁
【非特許文献6】Switching Behavior of YBCO Thin Film Conductors in Resistive Fault Current Limiters by H.−P.Kraemer et al.、IEEE Trans.on Applied Superconductivity、vol.13、No.2、2003年6月、2044〜7頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
HTSケーブルが故障電流を処理する方法が改善され、また、電力リンクを形成している、長さ当たりの抵抗が大きい故障電流制限モジュールなどの独立型FCLまたは他の故障電流制限デバイスの使用に取って代わる改良型代替が提供されることが望ましい。故障電流制限機能を組み込んだ実用的な長距離連続可撓性HTS電力ケーブルは、容量が大きく、フットプリントが小さく、かつ、環境的にきれいな電力送電および配電の確立に大きな利点を提供することができ、また、それと同時に、込み合った電力公益事業変電所における高価な個別の故障電流制限デバイスの必要性を回避することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示の第1の実施態様では、低温冷却HTSケーブルが、その低温冷却HTSケーブルがない場合に生じることになる最大故障電流を有する電力公益事業電力格子内に含まれるように構成されている。この低温冷却HTSケーブルは、液体冷媒を循環させるための連続液体低温冷媒経路を備えている。HTSワイヤの連続可撓性構造が、最大故障電流を少なくとも10%減衰させるインピーダンス特性を有している。HTSワイヤのこの連続可撓性構造は、最大故障状態が発生している間、HTSワイヤ内の最大温度上昇が、液体冷媒中のガス気泡の形成を防止するだけの十分に小さい状態で低温冷却HTSケーブルを動作させることができるように構成されている。
【0017】
以下の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。低温冷却HTSケーブルは、連続可撓性巻線支持構造を備えることができる。複数のHTSワイヤのうちの1つまたは複数は、連続可撓性巻線支持構造に対して同軸で配置することができる。連続可撓性巻線支持構造は、軸方向の中空コアを備えることができる。連続可撓性巻線支持構造は、波形ステンレス鋼管を備えることができる。
【0018】
遮蔽層は、連続可撓性巻線支持構造に対して同軸で配置することができる。絶縁層は、連続可撓性巻線支持構造に対して同軸で配置することができ、また、1つまたは複数の導電層と遮蔽層の間に配置することができる。液体冷媒は液体窒素であってもよい。液体窒素は大気圧より高い圧力に加圧することができ、また、77K未満に過冷することができる。液体冷媒は液体水素であってもよい。
【0019】
低温冷却HTSケーブルは、1つまたは複数のHTSワイヤを備えることができる。複数のHTSワイヤのうちの少なくとも1つは、イットリウムすなわち希土類・バリウム・銅・酸化物、タリウム・バリウム・カルシウム・銅・酸化物、ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・銅・酸化物、水銀・バリウム・カルシウム・銅・酸化物およびマグネシウム・ジボライドからなるグループから選択されるHTS材料で構築することができる。1つまたは複数のHTSワイヤのうちの少なくとも1つは、100〜600マイクロメートルの範囲内の総合スタビライザ厚さと、90°Kで0.8〜15.0マイクロオーム−cmの範囲内の抵抗率とを有する少なくとも1つのスタビライザ層を備えることができる。1つまたは複数のHTSワイヤのうちの少なくとも1つは、200〜500マイクロメートルの範囲内の総合スタビライザ厚さと、90°Kで1〜10.0マイクロオーム−cmの範囲内の抵抗率とを有する少なくとも1つのスタビライザ層を備えることができる。故障状態の間のインピーダンス特性および最大温度上昇は、複数のHTSワイヤのうちの1つまたは複数の1つまたは複数の設計パラメータを構成することによって画定することができる。1つまたは複数の設計パラメータには、スタビライザ抵抗率係数、スタビライザ厚さ係数、ワイヤ比熱係数および動作臨界電流密度係数のうちの1つまたは複数を含めることができる。
【0020】
1つまたは複数の高速スイッチを低温冷却HTSケーブルに直列に結合することができる。この1つまたは複数の高速スイッチは、故障状態が発生した後に開くように構成することができる。低温冷却HTSケーブルは、複数の変電所をリンクするバス・タイアプリケーションに使用されるように構成することができる。
【0021】
本開示のもう1つの実施態様では、低温冷却HTSケーブルを構成する方法には、低温冷却HTSケーブルのための最大許容動作温度を決定することが含まれている。低温冷却HTSケーブルは可撓性巻線支持構造を備えており、該可撓性巻線支持構造は、該可撓性巻線支持構造に対して同軸で配置された超伝導材料の1つまたは複数の導電層を支持するように構成されている。低温冷却HTSケーブルの1つまたは複数の設計パラメータは、最大故障状態が生じている間、低温冷却HTS超伝導ケーブルの実際の動作温度が最大許容動作温度未満のレベルに維持され、最大故障電流が少なくとも10%小さくなるように構成されている。
【0022】
以下の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。最大許容動作温度は、本質的に、低温冷却HTSケーブルの少なくとも一部の中を循環する冷媒が液体の状態からガス状の状態に変化する温度に対応させることができる。この冷媒は、加圧された液体窒素であってもよい。1つまたは複数の設計パラメータには、ワイヤ抵抗率係数、スタビライザ厚さ係数、比熱係数、故障電流継続期間係数および単位幅当たりのワイヤ動作臨界電流係数のうちの1つまたは複数を含めることができる。低温冷却HTSケーブルの実際の動作温度は決定することができる。低温冷却HTSケーブルの実際の動作温度は、低温冷却HTSケーブルのための最大許容動作温度と比較することができる。
【0023】
1つまたは複数の設計パラメータの構成には、低温冷却HTSケーブルのインピーダンスの調整を含めることができる。低温冷却HTS超伝導ケーブルのインピーダンスの調整には、最短値より長い低温冷却HTSケーブルの長さの調整、低温冷却HTSケーブルの抵抗率の調整、低温冷却HTSケーブル内のHTSワイヤに結合されたスタビライザ層の厚さの調整、低温冷却HTSケーブル内のカプセル封じ剤によるHTSワイヤの比熱の調整、および低温冷却HTSケーブル内に含まれているHTSワイヤの動作臨界電流密度の調整のうちの1つまたは複数を含めることができる。
【0024】
スタビライザ層は、少なくとも部分的に黄銅材料で構築することができる。低温冷却HTS超伝導ケーブルは、1つまたは複数のHTSワイヤを備えることができる。複数のHTSワイヤのうちの少なくとも1つは、イットリウムすなわち希土類・バリウム・銅・酸化物、タリウム・バリウム・カルシウム・銅・酸化物、ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・銅・酸化物、水銀・バリウム・カルシウム・銅・酸化物およびマグネシウム・ジボライドからなるグループから選択される材料で構築することができる。低温冷却HTS超伝導ケーブルは、電圧源インピーダンスを有する電圧源に結合することができる。電圧源の電圧源インピーダンスは決定することができる。
【0025】
添付の図面は、1つまたは複数の実施態様の詳細を示したものであり、以下、それらについて説明する。他の特徴および利点は、以下の説明、図面および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】電力公益事業電力格子内に設置された銅コアHTSケーブルシステムの略図である。
【図2】図1の銅コアHTSケーブルの等角図である。
【図3】中空コアHTSケーブルの等角図である。
【図4】電力公益事業電力格子内に設置された図3の中空コアHTSケーブルの略図である。
【図5A】HTSワイヤの横断面図である。
【図5B】代替実施形態HTSワイヤの横断面図である。
【図6】電力公益事業電力格子の略図である。
【図7】電力公益事業電力格子内に設置された図3の中空コアHTSケーブルのモデルを示す図である。
【図8】図3の中空コアHTSケーブルを構成する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
すべての図を通して、同様の参照記号は同様の構成要素を表している。
概説
図1を参照すると、電力公益事業電力格子10の一部は、高温超伝導体(HTS)ケーブル12を備えることができる。HTSケーブル12は、数百メートルまたは数千メートルの長さにすることができ、また、発電所(図示せず)から電力を引き渡すための、あるいは遠隔の電力公益事業(図示せず)から電力を引き入れるための、電流が比較的大きく/抵抗が比較的小さい電気経路を提供することができる。
【0028】
HTSケーブル12の断面積は、従来の銅コアケーブルの断面積のほんの数分の1にすることができ、また、同じ量の電流を運ぶことができる。上で説明したように、HTSケーブルは、同じ断面積以内で従来のACケーブルの3倍乃至5倍の電流容量を提供することができ、また、従来のDCケーブルの最大10倍の電流容量を提供することができる。HTSの技術が発達するにつれて、これらの比率を大きくすることができる。
【0029】
以下でより詳細に説明するように、HTSケーブル12は、同様のサイズの銅線の150倍程度の電流を処理することができるHTSワイヤを備えている。したがって、比較的少量のHTSワイヤを使用して(従来のACケーブルのコア内でより合わされた大量の銅導体ではなく)、同様のサイズの従来の銅導体電力ケーブルの3倍乃至5倍程度の電力を提供することができるHTS電力ケーブルを構築することができる。
【0030】
HTSケーブル12は、例えば138kVのレベルで電圧を運ぶ送電格子セグメント14内で接続し、格子セグメント14から、この電圧を受け取り、かつ、受け取った電圧のレベルを例えば69kVのより低いレベルに変換することができる格子セグメント16まで展開させることができる。例えば、送電格子セグメント14は、765kVの電力を受け取ることができ(架空線路すなわちケーブル18を介して)、また、この送電格子セグメント14は、138kV変電所20を備えることができる。138kV変電所20は、ケーブル18上で受け取った765kVの電力を138kVに逓降させるための765kV/138kV変圧器(図示せず)を備えることができる。次に、この「逓降された」138kVの電力を例えばHTSケーブル12を介して送電格子セグメント16に提供することができる。送電格子セグメント16は、HTSケーブル12を介して受け取った138kVの電力を69kVの電力に逓降させるための138kV/69kV変圧器(図示せず)を備えることができる69kV変電所24を備えることができ、69kVに逓降された電力を例えばデバイス26、28、30、32に配電することができる。デバイス26、28、30、32の例には、それには限定されないが34.5kV変電所を含むことができる。
【0031】
上で説明した電圧レベルは、説明を目的としたものにすぎず、本開示を制限することを意図したものではない。したがって本開示は、送電システムおよび配電システムの両方における様々な電圧レベルおよび電流レベルに等しく適用することができる。同様に、本開示は、産業用電力配電または車両用電力配電(例えば船舶、列車、航空機および宇宙船)などの非公益事業アプリケーションにも等しく適用することができる。
【0032】
1つまたは複数の遮断器34、36を例えばHTSケーブル12の各末端で接続することができ、また、電力公益事業電力格子10からHTSケーブル12を速やかに開放することができる。故障管理システム38は、HTSケーブル12が損傷することになるポイント未満の温度にHTSケーブル12が確実に維持されるよう、HTSケーブル12のための過電流保護を提供することができる。
【0033】
故障管理システム38は、HTSケーブル12が結合されている電力公益事業格子のセグメントに流入する電流を監視することによってこのような過電流保護を提供することができる。例えば故障管理システム38は、138kV変電所20を通って流れる電流を知覚することができ(例えば電流センサ40を使用して)、また、電流センサ40によって提供される信号に少なくとも部分的に基づいて遮断器34、36の動作を制御することができる。
【0034】
この実施例の場合、HTSケーブル12は、大きさが51kA程度で、継続期間が200msの故障電流(つまり12サイクルの60Hz電力)に耐えるように設計することができる。2006年7月21日に出願した、Fault Management of HTS Power Cableという名称の同時係属米国特許出願第11/459,167号に、故障管理システム38の詳細が記載されている。通常、このレベルの故障電流に耐えるために、HTSケーブルは、大きい故障電流の運搬を補助することができ、したがってHTSワイヤを保護することができるかなりの量の銅を含有することができる。銅は、HTSケーブルを保護するために提供されるが、抵抗が極めて小さいため、電流の制限に関しては有意な効果は有していない。
【0035】
また、図2を参照すると、より合わされた銅コア100を備えることができる単相銅コアHTSケーブル12の典型的な実施形態が示されており、第1のHTS層102、第2のHTS層104、高電圧誘電体絶縁層106、銅遮蔽層108、HTS遮蔽層110、冷媒通路112、内部クライオスタット壁114、熱絶縁116、真空空間118、外部クライオスタット壁120および外部ケーブルシース122が、半径方向に連続的にこのより合わされた銅コア100を取り囲んでいる。HTS層102およびHTS層104は、「相導体」と呼ぶことも可能である。銅遮蔽層108は、別法として、HTS遮蔽層110の外側に配置することも可能である。動作中、冷媒すなわち液体冷媒(例えば液体窒素、図示せず)を外部冷媒源(図示せず)から供給することができ、また、冷媒通路112内で、その長さに沿って循環させることができる。ケーブルのすべてのコンポーネントは、HTSケーブル12の可撓性を可能にするように設計されている。例えば、より合わされた銅コア100(その上に第1のHTS層102および第2のHTS層104が巻かれている)は可撓性である。したがって、より合わされた可撓性銅コア100を利用することによって、その長さに沿って連続的に可撓性であるHTSケーブル12が実現されている。任意選択で、螺旋状に巻かれたHTSワイヤを波形金属巻型を使用して支持し、連続した可撓性をケーブルの長さに沿って提供することができる。
【0036】
追加/別法として、追加同軸HTSおよび絶縁層を利用することも可能である。例えば、3層以上のHTSワイヤを単相に使用することができる。また、絶縁層(図示せず)によって分離された3つのグループのHTS層を利用して3相電力を運ぶことも可能である。Ultera(つまりジョージア州キャロルトン在所のSouthwire Companyと、ドイツのケルン在所のnktケーブルの合弁会社)によって提案されたTriax HTS Cable構造は、このようなケーブル構造の一例である。HTSケーブル12の他の実施形態は、それらに限定されないが、暖および/または冷誘電体構成、単相対多相構成および様々な遮蔽構成(例えば非遮蔽およびクライオスタットに基づく遮蔽)を備えることができる。
【0037】
銅コア100および銅遮蔽層108は、ケーブル12内に出現し得る故障電流(例えば故障電流124)を運ぶように構成することができる。例えば、ケーブル12内に故障電流124が出現すると、HTS層102、104内の電流が、場合によってはHTS層102、104の臨界電流レベル(つまりI)を超えるレベルまで劇的に大きくなり、そのためにHTS層102、104がそれらの超伝導特性を失う原因になることがある(つまりHTS層102、104が「通常の状態」になることがある)。臨界電流レベルIの典型的な値は、定格が3000Armsのケーブルの場合、4,242Apeakである(Armsは、電流のルート平均二乗アンペアと呼ばれている)。
【0038】
HTS材料の臨界電流レベルは、場合によっては電界レベルの選択で決まる。従来、臨界電流レベルIは、1マイクロボルト/cmの電界レベルとして定義されているが、もっと小さい値を使用することも可能である。しかしながら、典型的な超伝導体は、ゼロ抵抗(つまり超伝導)状態と電流レベルを関数とした完全な抵抗性(つまり非超伝導)状態の間の移行領域を示す。この移行領域での動作によって生じる導体損失は、完全な抵抗性状態での動作によって生じる導体損失より小さい。したがって、実際には、HTSケーブル中の導体の一部は、場合によっては、1マイクロボルト/cmの基準で定義されている従来の臨界電流レベルIの係数(「f」)倍の臨界電流レベルで完全な抵抗性状態に切り換わることがある。YBCO薄膜を備えた蛇行線ワイヤの場合、この係数は約2になるように決定されたが、この係数は時間と共に若干変化することが分かった。Switching Behavior of YBCO Thin Film Conductors in Resistive Fault Current Limiters by H.−P.Kraemer et al.、IEEE Trans.on Applied Superconductivity、vol.13、No.2、2003年6月、2044〜7頁を参照されたい。同様のYBCO薄膜を備えたHTSワイヤのf−係数は、同様の範囲(例えば1〜4)になることが期待される。
【0039】
したがって、臨界電流レベル(上で定義した)とf−係数の積が超過すると、場合によってはHTS層102、104の抵抗が著しく大きくなることがあり、また、かなり大きくなることがある(つまり銅コア100と比較すると)。複数の並列導体を通って流れる電流は、個々の導体の抵抗に反比例して分配されるため、HTS層102、104に並列に接続されている銅コア100に故障電流124の大部分を向けることができる。銅コア100を通る故障電流124のこの流れは、故障電流124が減退するか、あるいはHTSケーブル12を通る故障電流124の流れを適切な遮断器(例えば遮断器34、36)が遮断するまで継続することができる。
【0040】
HTSケーブル12内のHTS導体の過熱は、銅コア100によって提供される2つの利点によって回避することができる。第1に、故障電流124(または少なくともその一部)をHTS層102、104から銅コア100へ向けることにより、HTSケーブル12内のHTS導体の過熱を回避することができる。また、第2に、銅コア100によって熱容量が追加され、それによりHTS層102および104の温度上昇が抑制される。故障電流124(または少なくともその一部)がHTS層102、104から銅コア100へ向けられなかった場合、HTS層102、104の抵抗が大きいため、故障電流124によってHTSケーブル12内のHTS導体が著しく加熱されることになり、ひいては液体窒素のガス状「気泡」が形成されることになる(つまり冷媒通路112内で液体窒素が液体の状態から気体の状態に変換されるため)。残念なことには、液体窒素のガス状「気泡」が形成されると、誘電体層の絶縁耐力が低下し、ひいては電圧破壊によってHTSケーブル12が破壊されることになる。暖誘電体ケーブル構成の場合(図示せず)、HTS層102、104から方向転換されなかった故障電流は、HTS層102、104を単純に過熱し、破壊することになる。
【0041】
HTSケーブル12の例には、それらに限定されないが、フランスのパリ在所のNexans、日本の大阪在所の住友電気工業株式会社およびUltera(つまりジョージア州キャロルトン在所のSouthwire Companyと、ドイツのケルン在所のNKTケーブルの合弁会社)から入手することができるHTSケーブルを含むことができる。
【0042】
銅コア100は、故障電流(またはその一部)を周囲のHTS層102、104に向けているが、このような「内部」銅コアを利用することには欠点がある。例えば銅コア100には、場合によってはHTSケーブル12を物理的により大きく、かつ、より重くする必要があり、そのためにコストが高くなり、また、より多くの熱がHTSケーブル12内に保持されることになる。したがって余分に保持される熱を補償するためにはより多くの冷凍が必要になり、ひいては総合システムコストおよび運転コストがより高くなることになる。さらに、銅コア100の熱容量が大きく、また、誘電体層のためにHTS層102、104と冷媒との間の熱抵抗が大きく、そのために場合によっては回復時間が著しく長くなり、したがって故障電流のエネルギーによって、HTS層102、104の超伝導性を維持することができるポイントを超えて温度が上昇することになる。例えば、故障電流が銅コア100を介して方向転換される場合、HTSケーブル12を適切な動作温度範囲内(例えば65〜77°ケルビン)に冷却するためには、冷凍システム(図示せず)は場合によっては数時間を要することになる。HTSケーブル12をケーブルの動作範囲内に冷却するために要する時間は、一般に「回復時間」と呼ばれており、電力公益事業は、場合によってはこの回復時間を可能な限り短くしなければならない(例えば数秒)。別法としては、独立型故障電流制限器をHTSケーブル12と共に使用して故障電流を制限することも可能であるが、それには、大型で、かつ、コストのかかる他の電気設備をHTSケーブル12にリンクされた変電所内に設置しなければならない欠点がある。
【0043】
図3を参照すると、本開示による可撓性中空コアHTSケーブル150が示されている。HTSケーブル150は、従来技術による銅コアHTSケーブル12の様々なコンポーネントを備えることができるが、HTSケーブル150は、より合わされた銅コア100(図2)を備えていない。より合わされた銅コア100は、可撓性中空コア(例えば内部冷媒通路152)に置き換えられた。内部冷媒通路152の一実施例は、それには限定されないが可撓性波形ステンレス鋼管を備えることができる。また、すべての銅遮蔽層が除去されている。冷媒(例えば液体窒素)は、内部冷媒通路152を通って流れることができる。
【0044】
銅コアHTSケーブル12の場合と同様の方法で、第1のHTS層102、第2のHTS層104(通常、層102とは逆のヘリシティで螺旋状に巻かれている)、高電圧誘電体絶縁層106、HTS遮蔽層110、冷媒通路112、内部クライオスタット壁114、熱絶縁116、真空空間118、外部クライオスタット壁120および外部ケーブルシース122によって、半径方向に連続的にこの内部冷媒通路152を取り囲むことができる。動作中、冷媒(例えば液体窒素、図示せず)を外部冷媒源(図示せず)から供給することができ、また、冷媒通路112内および内部冷媒通路152内で、それらの長さに沿って循環させることができる。MgBのように転位温度がより低い材料の場合、代替冷媒(例えば液体ネオンまたは液体水素)を使用することも可能である。
【0045】
HTSケーブル12の場合と同様、HTSケーブル150のすべてのコンポーネントは、ケーブルの長さに沿った連続的な可撓性を可能にするように設計されている。例えば、上で説明したように、内部冷媒通路152(その上に第1のHTS層102および第2のHTS層104が巻かれている)は可撓性である。したがって、可撓性内部冷媒通路152を利用することによって可撓性HTSケーブル150が実現されている。
【0046】
図4を参照すると、電力公益事業電力格子部分10’は、可撓性長距離HTSケーブル150を備えることができる。ここでは、長距離は、200mより長い距離として定義されている。また、電力公益事業電力格子部分10’は、HTSケーブル150に並列に接続された従来のケーブル(つまり非超伝導ケーブル、図示せず)を備えることも可能である。従来のケーブルの例には、それには限定されないが、コネチカット州シーモア在所のThe Kerite Companyから入手することができる500kcmil、138kV Shielded Triple Permashield(TPS)電力ケーブルを含むことができる。従来のケーブルは、レトロフィットアプリケーションにおける既存のケーブルであってもよく、例えば電気格子の電力容量を増すためにHTSケーブル150が追加され、1つまたは複数の従来のケーブルと置換される。別法としては、従来のケーブルは、HTSケーブル150と同時に設置され、かつ、適切なバスワークおよび遮断器に相互接続される新しい従来のケーブルであってもよい。
【0047】
HTSケーブル150および/または追加HTSケーブル(図示せず)は、電力公益事業電力格子の一部を含むことができる超伝導電気経路200内に含めることができる。さらに、超伝導電気経路200は、母線(図示せず)、変圧器(図示せず)、故障電流制限器(図示せず)および変電所(図示せず)などの他の超伝導電力配電デバイスを備えることができる。
【0048】
高速スイッチアセンブリ202は、HTSケーブル150に直列に結合することができる。ペンシルベニア州グリーンズバーグ在所のABB社が製造している138kV Type PM Power Circuit Breakerは、高速スイッチアセンブリ202の一例である。高速スイッチアセンブリ202(例えば4サイクルで開くことができるスイッチ)は、故障管理システム38によって制御することができる。例えば、故障管理システム38は、故障電流332(図3)を知覚すると高速スイッチアセンブリ202を開くことができ、それによりHTSケーブル150を本質的に故障電流124から分離することができる。多相電力の場合、複数の高速スイッチアセンブリ202を利用することができる。別法としては、いくつかの高速スイッチアセンブリまたは遮断器を単一の3相デバイスとして構築することができる。高速スイッチアセンブリ202は、HTSケーブル150がその超伝導状態に復帰することができるよう、十分な時間が経過した後、再度閉じることができる。既存の電力公益事業遮断器34、36が十分な速さでスイッチし、以下で説明する加熱要求事項に合致する場合、高速スイッチアセンブリ202は、場合によっては不要である。
【0049】
従来のケーブル(図示せず)および/または従来の追加ケーブル(図示せず)は、電力公益事業電力格子の一部を含むことができる非超伝導電気経路内に含めることができる。さらに、非超伝導電気経路は、母線(図示せず)、変圧器(図示せず)、故障電流制限器(図示せず)および変電所(図示せず)などの他の配電デバイスを備えることができる。非超伝導電気経路は、非低温温度(例えば0℃に相当する少なくとも273Kの温度)に維持することができる。例えば、非超伝導電気経路を冷却することは不可能であり、したがって周囲温度にあることを前提にすることができる。
【0050】
以下でより詳細に説明するように、銅コア100(図2)および銅遮蔽層108(図2)を可撓性長距離HTSケーブル150の内側から除去し、かつ、HTSケーブル150のインピーダンスを制御することにより、HTSケーブル150を物理的により小さくすることができ、ひいては製造コストを低減し、また、HTSケーブル150からの熱損失をより少なくすることができる。したがって、HTSケーブル150は、必要な冷凍をより少なくすることができ(銅コアHTSケーブル12と比較すると)、ひいては総合システムコストおよび運転コストをより少なくすることができる。さらに、銅コア100をHTSケーブル150の内側から除去することにより、HTSケーブル150の熱容量およびHTS層102、104と冷媒との間の熱抵抗の両方を小さくすることができ、したがって故障電流124によって、HTS層102、104の超伝導性を維持することができるポイントを超えてHTSケーブル150の温度が上昇した場合に、その回復時間をより短くすることができる。銅コア100を可撓性長距離HTSケーブル150の内側から除去し、かつ、HTSケーブル150のインピーダンスを制御することにより、故障電流制限機能をHTSケーブル150に直接組み込むことができ、したがって、HTSケーブルまたは下流側の電力公益事業設備を故障電流から保護することを望む場合に、個別の独立型故障電流制限器の必要性が除去される。
【0051】
HTSケーブルおよび故障電流制限器
もう一度図1を参照すると、格子セクション10内の故障電流によって、HTSケーブル12を通って流れる電流が従来の遮断器34、36の制限を超えて大きくなる場合、HTS FCLデバイス42(仮想線で示されている)または従来のリアクトル技術(図示せず)を格子セクション10内に組み込むことができ、それにより、HTSケーブル12を通って流れる故障電流の大きさを従来の遮断器34、36が遮断することができるレベルに制限することができる。通常の状態の下で公称電流レベルが格子セクション10に流入する場合、電力潮流に直列に接続されるHTS FCLデバイス42は、極めて小さいインピーダンスが格子に導入されるように設計することができる(他の格子インピーダンスと比較して)。しかしながら、故障電流が格子セクション10に出現すると、その電流によってHTS FCL42内の超伝導体が瞬時に「通常」すなわち非超伝導状態(つまり抵抗性)になり、そのために極めて大きいインピーダンスが格子セクション10に追加されることになる。HTS FCL42は、故障電流を従来の遮断器34、36の遮断能力の範囲内である所定のレベルに制限するように設計することができる。
【0052】
独立型HTS FCLデバイス42は、Siemens AG(ドイツ)と共にAmerican Superconductor Corporation(マサチューセッツ州ウェストバラ在所)を始めとする様々な会社によって開発されている。残念なことには、HTS FCLデバイス42を格子セクション10に追加することは、場合によってはコストが高くつき、また、場合によってデバイス42を収容するためのかなりの量の空間が必要であり、そのためにとりわけ都市地域における収容が場合によっては困難である。故障電流制限能力を備えた短い母線すなわちモジュールは、Nexans(フランス)およびEHTS(ドイツ)を始めとする様々な会社によって開発されている。故障電流制限母線は、特定のアプリケーションを有することができるが、それらは、送電および配電アプリケーションのための長距離連続可撓性ケーブルによって提供される、必要とされる大きい容量、小さいフットプリントおよび可撓性を提供していない。
【0053】
本開示によれば、HTSデバイス、例えば連続可撓性長距離HTSケーブル150(図3)は、適切に設計されると、HTS FCLデバイス42(図1)などの個別のHTS FCLを組み込む必要のない故障電流制限器自体として使用することができる。例えばHTSケーブル150の通常状態(抵抗性)インピーダンスを制御することにより、HTSケーブル自体を利用して、典型的な独立型HTS FCLデバイス(例えばHTS FCL42)の望ましい効果(例えば故障電流の減衰)を得ることができ、かつ、典型的な独立型HTS FCLデバイスの望ましくない効果が(例えばコストおよびサイズ)が回避される。詳細には、以下でより詳細に説明するように、HTSケーブル150の長さが十分な長さであり、また、HTSケーブル150が望ましいインピーダンス特性を示すように製造されている場合、連続可撓性長距離HTSケーブル150は、それだけで、液体冷媒中にガス気泡が生成され、誘電体が破壊する危険のあるポイントまで加熱することなく、故障電流124(図3)の著しい減衰を提供することができる。
【0054】
故障電流制限(FCL)HTSケーブルの概説およびFCLケーブルのためのHTSワイヤの設計
以下でより詳細に説明するように、可撓性長距離HTSケーブル150の様々なパラメータ(例えばケーブル150内のHTSワイヤの電気抵抗率およびスタビライザ厚さ)を制御することにより、同時に1)ケーブル中の故障電流の著しい低減を達成するために必要な正味抵抗を提供し、かつ、2)故障電流によってHTSケーブル150全体に誘導される温度上昇を、ケーブル内を循環する液体窒素冷媒の泡立ちを防止する最大値未満のレベルに維持するHTSケーブルを実現することができる。上で説明したように、液体窒素のガス状「気泡」が形成されると、HTSケーブル150の誘電体層の絶縁耐力が低下し、ひいては電圧破壊によってHTSケーブル150が破壊されることになる。
【0055】
場合によっては比電気抵抗としても知られている電気抵抗率は、電流の流れを阻止する材料の強さの程度を表す測度である。詳細には、小さい電気抵抗率は、電荷の移動を容易に許容する材料を表すことができる。抵抗率の便利な測度はマイクロオーム−cmである。
【0056】
以下でより詳細に説明するように、HTSケーブル150の構造およびHTSケーブル150内のHTSワイヤの設計は、独立型HTS FCLまたは故障電流制限母線のために提案されている設計とは基本的に異なっている。
【0057】
また、図5を参照すると、故障電流制限HTSケーブル150のHTS層102、104を構築するために使用される1本のHTSワイヤ250の横断面図が示されている。このワイヤアーキテクチャは、緩衝基板の上に超伝導体の薄い層(すなわちHTS層)がコーティングされているため、「コーティングが施されたワイヤ」アーキテクチャと呼ぶことも可能である。通常、HTS層は、上で定義した、詳細にはYBaCuの組成の超伝導体YBCOを備えており、Yを希土類元素に置換することができる。不純物相を層の中に存在させることができるため、総合組成はこの組成とは異なっていてもよいことは理解されよう。コーティングが施された導体アーキテクチャには他のHTS材料を使用することも可能である。
【0058】
この実施例では、HTS層102、104の中に使用されているHTSワイヤ250は、2つのスタビライザ層252、253および基板層254を備えていることが分かる。基板層254の一実施例は、それらに限定されないが、ニッケル・タングステン、ステンレス鋼およびHastelloyを備えることができる。スタビライザ層252と基板層254の間に、バッファ層256、HTS層258(例えばイットリウム・バリウム・銅・酸化物すなわちYBCO層)およびキャップ層260を配置することができる。バッファ層256の一実施例は、酸化イットリウム、酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムおよび酸化セリウム(CeO)の組合せであり、また、キャップ層260の一実施例は銀である。はんだ層262(例えばSnPbAg層)を使用して、スタビライザ層252および253をキャップ層260および基板層254に結合することができる。
【0059】
上で説明したワイヤ構成に加えて、他のワイヤ構成も本開示の範囲に包含されるものと見なされている。例えば単一のスタビライザ層を使用することができる。別法としては、第2のHTS層(そのバッファ層およびキャップ層と共に、図示せず)を第2のスタビライザ層253と基板254の下面との間に配置することができる。任意選択で、HTSワイヤは、2つの基板(それぞれバッファ層、HTS層およびキャップ層を備えている)が、2つの基板層の間に配置された第3のスタビライザ層で分離される状態で、HTSワイヤの外側に配置された2つのスタビライザ層からなっていてもよい。はんだ層を使用することにより、必要なあらゆる結合を容易にすることができる(場合によっては基板層254、バッファ層256、HTS層258およびキャップ層260の間を除く)。
【0060】
また、図5Bを参照すると、HTSワイヤ250の一代替実施形態であるHTSワイヤ250’が示されている。HTSワイヤ250’は、第2のスタビライザ層253と第3のスタビライザ層282の間に配置された第2の基板層280を備えることができる。スタビライザ層253(および/またはスタビライザ層282)と基板層280の間に、バッファ層、HTS層(例えばイットリウム・バリウム・銅・酸化物すなわちYBCO層)、キャップ層およびはんだ層を配置することができる。
【0061】
HTSワイヤのスタビライザ層
HTSワイヤは、HTSワイヤの熱容量が大きく、また、HTSワイヤの電気抵抗率が最適レベルにある場合、故障電流制限器として最も有効かつ経済的に機能する。スタビライザ層252は、これらの特性を達成するためには場合によっては不可欠である。スタビライザ層252に場合によってはとりわけ適した合金の例は、例えばZnの範囲が3〜40重量%である低合金黄銅(例えばCu−Zn)ならびに場合によっては例えばCu−Sn合金系に基づく他の黄銅合金である。抵抗率の範囲が0.8〜15マイクロオームcmである合金の場合、場合によっては77〜110Kの範囲の温度が最適である。特定の黄銅合金には、それらに限定されないが、黄銅210(95Cu−5Zn)、220(90Cu−10Zn)および230(85Cu−15Zn)、240(80Cu−20Zn)および260(70Cu−30Zn)を含むことができる。他の銅ベース合金には、例えば、上で説明した範囲の抵抗率を提供することもできるモネルシリーズ(Cu−Ni)を含むことができる。磁気移行の範囲が70〜110KのCu−Ni合金または他の合金を使用することができ、また、この温度範囲における比熱ピークが大きい追加利点を有することができる。しかしながら、これらの合金を使用する場合、保磁度を最小化することによって磁気AC損失を最小化するよう注意しなければならない。
【0062】
ケーブル敷設に適切な柔軟性を提供するために、スタビライザ層252、253を軟焼きもどし状態にすることができ、例えば1/2の硬さまたは1/4の硬さにすることができる。所与のHTSワイヤのスタビライザ層252、253の典型的な総合厚さは、100〜600マイクロメートルの範囲にすることができ、200〜500マイクロメートルの範囲であることがより好ましい。ワイヤが分厚く、かつ、剛直になりすぎると、場合によってはそれらをより合わせて連続可撓性ケーブルの螺旋状巻線にすることが困難になる。スタビライザ層252、253の熱伝導率は、故障の初期段階の間のHTS層(例えばHTS層102、104)の過熱を抑制し、かつ、十分に迅速な回復を提供するために、77〜110Kの温度範囲で0.1W/cmKより大きくすることができる。スタビライザ層252、253は、例えばはんだ積層または粘着結合によって加えることができる。さらに、スタビライザ層252、253は、金属または複合物のいずれかとして、浸漬、めっき、気相成長、電着、金属有機液相成長または噴霧などのコーティング方法によって加えることも可能である。
【0063】
HTSワイヤのためのカプセル封じ剤
安定化HTSワイヤの周囲に付着し、あるいは安定化HTSワイヤを覆っている、安定化HTSワイヤをカプセル封じするための、導電性に乏しい「絶縁体」層を任意選択で追加することによって追加比熱を提供することができる。導電性に乏しいこの絶縁体層は、カプセル封じ剤264と呼ぶことができる。カプセル封じ剤264は、熱伝達係数が概ね制限された液体不浸透層を形成することができ、それにより周囲の液体冷媒(例えば液体窒素)への熱の導入を遅延させ、ひいてはHTSワイヤの温度を熱化させる、つまりHTSワイヤの断面全体をより一様になるようにすることができ、したがってホットスポットの発生を最少化し、また、液体冷媒中のガス気泡の形成を最少化することができる。また、HTSワイヤの表面を最適化し(例えば表面特徴および界面化学を使用して)、液体冷媒の泡立ちまたは沸騰の発生を抑制することも可能である。
【0064】
カプセル封じ剤264は、共通の電気絶縁材料を含有した重合体(例えばポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、エポキシ、ポリメタクリル酸メチル、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリウレタン)であってもよい。カプセル封じ剤264の厚さは、周囲の液体冷媒への熱伝達によってHTSワイヤを冷却する必要性と、周囲の液体冷媒中におけるガス気泡の形成を伴うことなくHTSワイヤの温度を最低化する必要性とが平衡するように選択することができる。カプセル封じ剤264の一般的な厚さの範囲は、25〜300マイクロメートルであり、また、カプセル封じ剤264の望ましい厚さの範囲は、50〜150マイクロメートルである。
【0065】
好ましい形態では、恐らくは金属、黒鉛または炭素粉末などの導電性粒子を加えることによってカプセル封じ剤264に若干の導電性を持たせることも可能であり、あるいは部分的に導電性であるいくつかの重合体からカプセル封じ剤264を選択することも可能である。カプセル封じ剤264の正味電気抵抗率は、0.0001〜100オームcmの範囲にすることができる。この控え目な導電率は、HTSワイヤのその抵抗性状態すなわち通常の状態における故障電流制限抵抗を著しく小さくすることは不可能であるが、この導電率によってHTSケーブル内のHTSワイヤが個々の断面で確実に等電位を維持し、それによりHTSケーブル150内の異なるHTSワイヤ間における電流共有を確実に可能にすることができる。電流がサージする場合、等電位を維持することが重要であり、さもなければHTSワイヤ間に電位差が誘導的に誘導され、それにより絶縁破壊が生じて場合によってはHTSワイヤが損傷することになる。カプセル封じ剤264は、任意選択で、抵抗率が大きい金属であるか、またはこの範囲の抵抗を有する半導電性材料であるか、あるいは導電率改善材料を含有することもできるエナメル、ガラスまたは結晶性酸化物材料であってもよい。
【0066】
カプセル封じ剤264の外部表面は、カプセル封じ剤264と周囲の液体冷媒(例えば液体窒素)との間の熱伝達係数を小さくする材料でコーティングすることができる。別法としては、カプセル封じ剤264の表面をテクスチャード加工し、カプセル封じ剤264と周囲の液体冷媒(例えば液体窒素)との間の熱伝達係数を改善することも可能である。さらに、カプセル封じ剤264の表面は、周囲の液体冷媒に向かって外側に急激に散逸する熱による核形成を抑制するために、例えば導電率がより大きい金属粒子または押出し金属繊維でコーティングすることができる。しかしながら、このような表面処理は、すべて、同じく液体状態における絶縁耐力の低下を回避しなければならない。
【0067】
カプセル封じ剤264は、例えば、単一パス手法と比較すると貫通の発生率が統計的に減少するマルチパス手法を始めとする様々なラッピング/コーティング方法を使用して加えることができる。別法としては、カプセル封じ剤264は、浸漬、押出し、めっき、気相成長または噴霧などのコーティング方法によって加えることができる。
【0068】
カプセル封じ剤264は、例えば最大0.3%のワイヤ引張りひずみの軸方向張力(例えば100メガパスカル程度)がHTSワイヤにかかっている間に加えることができ、したがって塗布プロセスが終了すると圧縮状態でカプセル封じ剤264を置くことができるため、カプセル封じ剤264中における貫通の可能性が減少する。したがって完成すると、カプセル封じ剤264中のHTSワイヤに軸方向の張力がかかっている間に、カプセル封じ剤264を軸方向に圧縮することができる(それらの初期状態と比較して)。
【0069】
ラッピング手順を使用してカプセル封じ剤264を加える場合、カプセル封じ剤264中のあらゆる隙間/開口から不浸透性材料のラップ層に浸入する追加含浸コーティング(例えば重合体、ペイントまたはワニス、図示せず)を加えることができ、したがって気密封止カプセル封じ剤が形成される。別法としては、ラップされたカプセル封じ剤を上で参照した隙間/開口を密閉するローリングプロセスまたは圧縮プロセス(例えばアイソスタティック圧縮)によって気密にすることも可能である。ワイヤの金属スタビライザ層に向かって浸入する液体冷媒は、故障中、ガス気泡核形成および沸騰を開始させることになるため、隙間または開口を回避することは重要である。
【0070】
他の等級のカプセル封じ剤またはスタビライザは、融解構造相転移または結晶構造相転移などの吸熱相転移する材料である。HTSワイヤの動作温度より高い何らかの温度で(かつ、HTSワイヤの最大許容温度未満で)このような吸熱相変化する材料が使用されることが好ましい。吸熱相変化の一例は、例えば、複合物補強材料中の離散埋込み粒子としてカプセル封じ剤264に加えることができ、カプセル封じ剤264の表面/界面に加えることができるゲル/ペイントとしてカプセル封じ剤264に加えることができ、あるいはカプセル封じ剤264の特定の領域(例えば内部コンジット領域の縁、フィレットまたは中)に選択的に加えることができる低融解温度有機材料または低融解温度無機材料の融解である。また、吸熱相変化には、例えば、特定の金属間相変化、順序相変化または他の二次相転移を含むことも可能である。例えば、カプセル封じ剤264用に選択される材料は、−160℃乃至−70℃の範囲で融解させることができ、約−50℃より高い温度で沸騰する(好ましい沸点は周囲温度より高い温度である)ため、液体または複合物の状態で(つまりペイント、膜コーティング、乳濁液またはゲルとして)比較的容易に、かつ、経済的にカプセル封じ剤264に加えることができる。
【0071】
ワイヤおよびケーブル設計基準の概要
上で説明したHTSワイヤ設計基準(つまりスタビライザ層がより分厚いこと、抵抗率の値が中間であること、カプセル封じ剤を備えていること)は、第1世代のHTSワイヤを使用し、また、導電率が大きい(77Kの温度範囲で<0.5マイクロオーム−cm)銀のマトリックスを備えたマルチフィラメンタリ複合物を使用している従来の故障電流保護HTSケーブルの基準とは基本的に異なっている。このような従来の故障電流保護HTSケーブルの場合、その目的は、可能な限り導電率が大きい材料をHTSワイヤに使用するか、あるいは大量の銅をケーブル内に含んだHTSケーブル構造に使用することであった。また、FCLケーブルに使用するためのHTSワイヤ設計も、短距離モジュールにおける大きい抵抗を保証するために抵抗率が極めて大きい材料が使用され、かつ、すべてのスタビライザ層が可能な限り薄い状態に維持される独立型FCLまたはSUPERPOLI母線のための設計基準とは基本的に異なっている。詳細には、独立型FCLまたはSUPERPOLI母線の場合、バルク超伝導体(これらのバルク超伝導体は、それらがそれらの通常の状態つまり抵抗性の状態まで急冷されると、90〜110Kの温度範囲で100マイクロオーム−cmの抵抗率を有することができる)か、あるいはコーティングが施された導体ワイヤのいずれかが、ステンレス鋼のように抵抗が大きい基板と共に使用される。これらの基板は、20マイクロオーム−cmを超える抵抗率を有することができ、いくつかのケースでは、77Kの温度範囲で70マイクロオーム−cm程度の大きい抵抗率を有することができる。
【0072】
電力公益事業格子における動作
また、図6を参照すると、電力公益事業電力格子300のコンテキスト内における故障電流制限HTSケーブル150の動作が示されている。この特定の実施例の場合、図に示されている電力公益事業電力格子300は、765kV母線302、69kV母線304および34.5kV母線306を備えている。さらに、図に示されている電力公益事業電力格子300は、3つの138kV変電所20、308、310を備えており、それらの各々は、3つの69kV変電所24、312、314を介して69kV母線304に電力を提供している。3つの34.5kV変電所316、318、320は、69kV母線304から34.5kV母線306に電力を提供することができる。図に示されている故障電流制限HTSケーブル150は、変電所20と24の間に結合されている。
【0073】
故障電流(例えば故障電流124)が電力公益事業電力格子300内に存在している場合、様々な電流成分322、324、326、328、330、332(つまり故障電流124のうちのHTSケーブル150を通って流れる部分)は、すべての相互接続変電所から利用可能なすべての経路を通って流れ、場合によっては電力公益事業電力格子300上に置かれた極めて大きい負荷として出現する故障電流124を供給することができる。故障状態の間に実現可能な電流成分を計算する場合、故障電流124は、接地への短絡としてモデル化することができる。
【0074】
また、図7および8を参照すると、特定の変電所(例えば変電所20)が例えば故障電流124に寄与する故障電流の量を決定する場合、開路が発生する電圧を理想電圧源350としてモデル化することができる。さらに、上流側インピーダンス(つまりHTSケーブル150から上流側を見たインピーダンス)は、変圧器インピーダンス(つまり変電所20のインピーダンス)と組み合わせることができ、電源インピーダンス352として表すことができる。このコンテキストにおけるインピーダンスは、実成分および無効成分からなる複素ベクトル量であってもよい。数学的にはインピーダンス(Z)はR+jXに等しく、Rは実(つまり抵抗性)成分であり、Xは無効(つまり誘導性/容量性)成分である。この実施例では、無効成分は誘導性インピーダンスであり、jωLに等しい。ω=2πfであり、fは電流の周波数(例えば北アメリカでは60Hz)である。
【0075】
図に示されているHTSケーブル150は、上で説明したように故障電流124は接地への短絡としてモデル化されているため、接地354に終端されている。オームの法則を使用して、変電所20によって提供される故障電流の期待レベル(つまり電流成分332)を決定することができる。この手法を格子300内の他の変電所に対して使用して、総合故障電流寄与(つまり、例えば電流成分322、324、326、328、330の値)を計算することができ、また、HTSケーブル150を通って流れることが期待される故障電流成分(つまり電流成分332)を決定することができる。残念なことには、電流成分332は、遮断器34、36が取り扱うことができるレベルを超えることがある。したがってHTSケーブル150は、このさもなければ期待される故障電流成分332を、遮断器34、36が取り扱うことができるもっと低い所定のレベルに制限するように設計することができる。
【0076】
故障電流制限HTSケーブルのもう1つの重要なアプリケーションは、変電所内にバス・タイを確立するアプリケーション、より詳細には、図6の線路304および306によって示されているように、異なる変電所におけるバス・タイ間の相互接続を確立するアプリケーションに存在している。これらの相互接続により、異なる変電所間で、あるいは変電所内における異なる変圧器間で、格子負荷要求事項に応じて電力を共有することができ、また、それと同時に、さもなければこのような相互接続の構築が増加することになる故障電流の制御を維持することができる。
【0077】
故障電流制限HTSケーブルの設計
故障電流制限HTSケーブル150を設計する場合、故障電流が流れている間にHTSケーブル150内に生じるあらゆる温度上昇(ΔT)が最大温度上昇(つまりΔTmax)より低いレベルになるように、HTSケーブル150の1つまたは複数の設計特性を構成することができる(ΔTmaxを超えると、場合によってはガス状の窒素気泡が形成されることになるため)。上で説明したように、ガス状の窒素気泡が生成されると、場合によっては誘電体層の絶縁耐力が低下し、ひいては電圧破壊によってHTSケーブル150が損傷することになる。また、それと同時に、HTSケーブル150は、故障電流を制限するための適切な抵抗を提供するために、HTSケーブル150内のHTSワイヤがその通常の状態(つまり抵抗性の状態)に駆動されると適切な長さになるように(つまり最短の長さより長くなるように)設計することができる。
【0078】
したがってHTSケーブル150を設計する場合、決定400は、例えばHTSケーブル150の最大許容動作温度に関連して実施することができる。15バールの圧力の液体窒素で冷却されるHTSケーブルの場合、最大許容動作温度は、110°K(つまり15バールにおける液体窒素の沸点)に近い。したがって72°Kに過冷される液体窒素の場合、ΔTmaxは38°Kであり、あるいは何らかの設計マージンを提供するために、ΔTmaxは、30°Kになるように選択される。これらは、実用的なHTSケーブルに対する典型的な値であるが、圧力および温度上昇は、特定の設計に応じて変更することができる。
【0079】
上で説明したように、すべてのケーブルは実インピーダンスおよび無効インピーダンスを有しているため、すべてのケーブル(従来のケーブルおよびHTSケーブルの両方)は、ある程度故障電流を減衰させる。しかしながら、大量の銅を含有している典型的な故障電流保護HTSケーブルは、HTSワイヤがたとえその通常の状態に急冷されても、極めて小さい抵抗性インピーダンスを有している。したがって、急冷されたHTSワイヤの抵抗による最大故障電流の低減は極めて小さく、恐らく1%以下であり、電力公益事業格子の動作を著しく改善するための最小レベルである10%よりはるかに小さい。また、上で説明したように、HTSケーブル(例えばHTSケーブル150)の実インピーダンス成分および(たいした大きさではないが)無効インピーダンス成分は、HTSケーブル150を通って流れる電流が臨界電流レベル(上で定義した)を超えると、数桁大きくすることができる。したがって、銅が排除され、かつ、そのスタビライザを備えたワイヤの抵抗が最適化されるように適切に設計されると、HTSケーブル150は、故障電流制限デバイスとして機能することができ、また、超伝導臨界電流の数倍未満のレベルまで故障電流を減衰させることができ、したがって10%を超える最大故障電流レベルの低減を提供することができる。詳細には、HTSケーブル150は、臨界電流のf−係数(上で定義した)倍の値まで故障電流を制限するように設計することができる。
【0080】
これまでに明らかにされている従来技術によるすべての重要なHTSケーブルには、超伝導体の低温温度のかなりの量の銅が含まれており、ほぼ超伝導体に近くなっている。したがって故障電流が臨界電流レベルを超えると、故障電流の大部分が銅を通って流れ、したがって従来技術によるHTSケーブルの熱容量が大きくなり、従来技術によるHTSケーブル内の温度上昇が制限される。これは、従来技術によるHTSケーブルを損傷から保護しているが、導電率が大きく、かつ、抵抗が小さい大量の銅のため、この構造は故障電流の大きさを極めて小さくしている。
【0081】
HTSケーブル150の場合、導電率が大きい銅(および/または導電率が大きい他の金属)が除去されており、また、比較的分厚い(例えば総合厚さが100〜600マイクロメートル、好ましくは200〜500マイクロメートル)、比較的大きい抵抗率(0.8〜15マイクロオーム−cm、好ましくは1〜10マイクロオーム−cm)を有するスタビライザを有するHTSワイヤ(上で説明した)が利用されている。急冷された安定化HTSケーブル150の総合抵抗を十分に大きくし、最大故障電流を臨界電流のほぼ係数f倍まで小さくするためには、HTSケーブル150の長さを十分に長くしなければならない(例えば典型的には200mより長くしなければならない)。
【0082】
この望ましい結果を達成し、かつ、それと同時に、容量が大きい可撓性HTSケーブル150を提供する能力の基本は、コーティングが施されたHTS導体ワイヤ250(上で説明し、また、図5に示されている)を使用していることである。HTS層258は比較的薄くしなければならず、また、比較的分厚い(つまり典型的にはHTS層258および基板層254より分厚い)スタビライザ層252、253を備えていなければならない。HTS層258は、大きい電流容量(例えば77Kで1平方センチメートル当たり1メガアンペアより大きい電流容量)を有していなければならない。動作温度における単位ワイヤ幅当たりの典型的な臨界電流Ic、wは350A/cm−幅であるが、異なる研究所または商用製造者からの異なるワイヤの値は、100A/cm−幅から1000A/cm−幅までの範囲にすることができる。この場合、HTSワイヤ250が抵抗性状態に切り換わると、HTSワイヤ250の抵抗が比較的大きくなり、その結果、ほとんどすべての電流がスタビライザ層252、253を通って流れることになる。HTSワイヤ250は、HTSケーブル150内で螺旋状に巻くことができるようにするためには、十分に可撓性でなければならない。実際には、可撓性要求事項は、場合によっては、スタビライザ層252および253を組み合わせた総合厚さを約600マイクロメートルに制限している。
【0083】
ここでは、説明を目的として、変電所20は3相13.8kV変電所であると仮定する。したがって変電所20によって提供される線路−接地電圧は7.97kVである。さらに、故障電流成分332の非制限値は40kAであり、また、X/R電源インピーダンス比は5(つまり典型的な値)であることが仮定されている。したがって、電源インピーダンス352の実(R)インピーダンス値および無効(X)インピーダンス値は、次のように0.039+j0.195Ωになるように決定することができる402。40kA=7.97kV/(R+X1/2およびX/R=5。この計算および後続する計算のために、所与の線路−線路電圧(VLL)の3相システムは、線路−接地電圧(VLG)を使用した等価単相モデルとしてモデル化されており、VLL=VLG(3)1/2である。
【0084】
この実施例の場合、さらに、HTSケーブル150は、その長さ(Lcable)が1,200メートルであり、定格が3,000アンペアrmsすなわち3000Arms(つまりルート平均二乗アンペア単位のIrated)であることが仮定されている。上で説明したように、HTSケーブル150の内部冷媒通路152は、第1のHTS層102および第2のHTS層104によって半径方向に連続的に取り囲むことができる。第1のHTS層102および第2のHTS層104のワイヤは、内部冷媒通路152の周囲に螺旋状に巻かれているため、HTS層102、104内に含まれている個々のHTSワイヤ(例えばHTSワイヤ250)の実際の長さは、HTSケーブル150の長さより長い。この実施例の場合、螺旋係数は1.08であることが仮定されており、HTSワイヤの実際の長さは、HTSケーブル150の長さより8.00%長い。
【0085】
さらに、この実施例の場合、HTSケーブル150は、Iratedの1.6倍で通常の状態になるように設計されていることが仮定されている。この係数は、トリップ電流係数ftcと呼ぶことができる。したがってHTSケーブル150は、4,800Armsまで超伝導特性を示すように設計することができる。したがってケーブルの臨界電流は、その動作温度で4800×1.414=6787Aである。
【0086】
HTSケーブル150を構築する場合、多数の設計パラメータを構成することができ404、これらのパラメータの例には、それらに限定されないが、HTSワイヤ幅(W)、単位幅当たりの臨界電流(Lc、w)、トリップ電流係数ftc、f−係数(以下を参照)、スタビライザまたは複合物の抵抗率(ρ)、スタビライザまたは複合物の厚さ(t)、導体比熱(C)、故障電流継続期間(τ)、個々の相におけるワイヤ数(N)およびケーブルインダクタンス(X)を含めることができる。総HTSケーブル臨界電流は、場合によってはIc、wWNである。これらの設計パラメータを構成することにより404、HTSケーブル150のインピーダンスを調整することができ406、および/またはHTSケーブルを流れる故障電流を総ケーブル臨界電流のf−係数倍に減衰させるようにHTSケーブル150を構成することができ、典型的な格子状態の場合、元の最大故障電流の10%をはるかに超えて減衰させることができる。
【0087】
HTSワイヤ幅(W):この設計パラメータは、HTS層102、104の中に利用される個々のHTSワイヤ(例えばHTSワイヤ250)の幅を表している。この実施例の場合、American Superconductorから商用的に入手することができる0.44cmのHTSワイヤ幅(W)(344超伝導体)であることが仮定されている。この幅は、主として、電力ケーブルの可撓性巻型の周囲にHTSワイヤを螺旋状に巻き付ける機械的要求事項によって決定される。
【0088】
単位幅当たりの臨界電流(Ic、w):この設計パラメータは、上で説明した標準電界基準において個々のHTSワイヤによって実現可能なテープ形導体の幅当たりの最大電流レベルを表している。この実施例の場合、単位幅当たりの臨界電流(Ic、w)は、動作温度で1cm−幅当たり350アンペア(つまり350A/cm−幅)であることが仮定されている。このパラメータは、主として、ケーブルの必要な定格によって決定され、また、HTSケーブルを製造するために使用されるHTSワイヤの数(N)を最少化する必要性によって決定される。
【0089】
トリップ電流係数ftc。上で説明したように、典型的な電力公益事業設計要求事項は、ftc=1.6である。
【0090】
f−係数(f)。最初にKraemerらによって提案されたこの設計パラメータ(Switching Behavior of YBCO Thin Film Conductors in Resistive Fault Current Limiters by H.−P.Kraemer et al.、IEEE Trans.on Applied Superconductivity、vol.13、No.2、2003年6月、2044〜7頁参照)は、HTS層102、104が完全に通常の状態つまり抵抗性の状態になった場合の電流と臨界電流の間の比率を表している。上で説明したように、この実施例の場合、HTSケーブル150は、4,800Arms(または約6,790Aピーク)で通常の状態になる。このピーク値(つまり6,790A)にf−係数を掛け合わせることにより、HTSケーブル150が完全に通常(つまり非超伝導)状態になる値を決定することができる。YBCO薄膜のためにSiemensによって実施された最初の決定(Switching Behavior of YBCO Thin Film Conductors in Resistive Fault Current Limiters by H.−P.Kraemer et al.、IEEE Trans.on Applied Superconductivity、vol.13、No.2、2003年6月、2044〜7頁参照)により、約2のf−係数値が得られた。このf−係数は、コーティングが施されたYBCO導体ワイヤの範囲と同じ範囲(例えば1から4までの範囲)になることが期待される。この実施例および後続する実施例に対して、ここではSiemensの結果に従ってf−係数が2であることが仮定されている。したがって上で説明した実施例の場合、本発明者らは、HTSケーブル150は、約6,790アンペア×2(つまりf−係数)すなわち13,580アンペアで完全に通常(つまり非超伝導)状態になるであろうことを予測した。したがって、適切に構成された408ケーブル(以下を参照)を使用することにより、40,000Arms(56,600Apeak)の故障電流を13,580Apeakに制限することができる。これは、故障電流を76%低減し、電力格子の動作を有効に改善するために必要な最低レベルである10%より著しく大きいことを表している。
【0091】
抵抗率(ρ):この設計パラメータ(場合によっては比電気抵抗としても知られている)は、電流の流れを阻止する材料の強さの程度を表す測度である。通常、抵抗率(ρ)は温度の関数であり、ρxxで表すことができる。「xx」は、抵抗率が計算される温度を画定している。この実施例の場合、90°Kの温度における抵抗率(ρ90)は4.0マイクロオーム−cmであることが仮定されており、また、分かり易くするために、ここでは、以下の予測においては70Kから110Kまでの範囲における温度依存性は無視し得ることが仮定されている。このような抵抗率は、例えば黄銅に見出すことができる。亜鉛の濃度を変化させることによって抵抗率を制御することができ、合金中の亜鉛の量が多いほど抵抗率が大きくなる。他の多くの合金も、場合によっては合金組成を変化させることによって同様の抵抗率変化を示すため、スタビライザ材料のための多くの選択肢が存在している。
【0092】
スタビライザ厚さ(t):この設計パラメータは、HTSワイヤ250の中に含まれているスタビライザ層252の厚さを表している。この実施例の場合、総合スタビライザ厚さ(t)は約350マイクロメートルであることが仮定されている。より正確には、基板層、超伝導体層、キャップ層、はんだ層、スタビライザ層およびカプセル封じ剤を備えたHTSワイヤは多層複合物であってもよく、また、正味複合物抵抗率およびHTSワイヤの厚さによって特性化することができる。スタビライザ層はワイヤのうちの優勢な部分であるため、多層複合物の抵抗率はスタビライザ層の抵抗率に近くすることができる。しかしながら以下の予測を分かり易くするために、ここではその急冷状態では電流は主としてスタビライザ層の中を流れることが仮定されている。このタイプのさらなる改善は、当業者には明らかであろう。
【0093】
体積当たりの比熱(C):この設計パラメータは、基板層、HTS層、キャップ層、はんだ層およびスタビライザ層を備えた複合HTSワイヤの体積当たりの比熱を表している。HTSワイヤに使用される典型的な材料の場合、Cは、約77Kの温度に対して2ジュール/cmKに近い。Cは、特定の材料によっては70〜110Kの温度範囲で場合によっては10〜20%だけ変化することがあるが、分かり易くするために、ここでは、この温度範囲全体を通してこの2ジュール/cmKの値が仮定されている。HTSワイヤが導電性に乏しいカプセル封じ剤を備えている場合、そのカプセル封じ剤は、熱拡散によってワイヤを熱化し、ワイヤを一定の温度にすることができる数秒後に、そのワイヤの比熱を大きくすることができる。以下の温度上昇計算のための単純な近似として、複合物の比熱が係数1+(C/Ct)だけ大きくなると仮定することによってカプセル封じ剤の効果を近似することができる。添字iはカプセル封じ剤を表している。ほとんどの場合、77Kの温度範囲ではカプセル封じ剤の熱容量も約2ジュール/cmKであり、したがってカプセル封じ剤の厚さが複合ワイヤの厚さと同じである場合、この係数は2である。
【0094】
故障電流継続期間(τ):この設計パラメータは、高速スイッチアセンブリ202または遮断器34、36がHTSケーブル150を格子部分10’から開放するまでの間の時間を表している。ケーブル内に熱として蓄積されるエネルギーを最小化し、ひいては熱上昇を最小化するためには、この時間を可能な限り短くすることが望ましい。4サイクル(つまり67msec)で開く最も速いスイッチをそれらの知覚回路と共に商用的に容易に入手することができる。したがって故障電流継続期間は67msecであると見なすことができる。将来的にもっと速いスイッチを入手することができるようになると、それらを使用することが望ましい。
【0095】
ワイヤ数(N):このパラメータは、HTSケーブルの個々の相の相導体の中に含まれているワイヤの総数を表している。通常、これらのワイヤは、2つのHTS層(例えばHTS層102、104)の中に配置されており、2つの層の巻線の方向を逆にして螺旋状に巻かれている(つまりヘリシティ)。定格が3,000Armsで、動作温度における幅当たりの臨界電流が350A/cm−幅、レットスルー電流係数が1.6およびワイヤ幅が0.44cmのケーブルの場合、必要な導体数Nは44である。
【0096】
リアクタンス(X):この設計パラメータは、単位長さ当たりのインダクタンスを表しており、単位長さ当たりの所与の電流に対して生成される磁束の量によって決定される。この実施例の場合、以下で説明するTriaxケーブルのその超伝導状態における特性である0.017mH/kmのインダクタンス(X)が仮定されている。
【0097】
変電所20(この実施例の場合)は3相13.8kV変電所であるため、HTSケーブル150は、Triaxケーブル(例えばジョージア州キャロルトン在所のSouthwire Companyと、ドイツのケルン在所のnktケーブルの合弁会社であるUlteraによって提案されているTriax HTSケーブル構造)であってもよい。相の各々は、螺旋状巻線の2つの層からなっており、すべて同軸で構成され、かつ、誘電体によって分離されている。Ulteraからの現在のTriaxケーブル中の銅より線には、それを除去する必要があり、また、上で説明したワイヤを使用するためには、TriaxケーブルをFCLケーブルに修正する必要がある。
【0098】
図7に示されているHTSケーブル150のその急冷状態におけるインピーダンス(Z)の抵抗性成分Rhts(quenched)は、上で与えられたパラメータを使用して、以下のように計算することができる。
【数1】

【0099】
ケーブルの誘導性インピーダンスは、この比較的大きい抵抗性インピーダンスと比較すると、無視することができる。典型的なケーブルの場合、0.017mH/kmの仕様書値が与えられると、0.017mH/km1.2km=0.0204mHとして等価インダクタンスLhtsを計算することができる。無効インピーダンスは、ω=2πfであり、また、fが電流の周波数(例えば北アメリカでは60Hz)であるX=jωLであり、したがってXhts=0.00769Ωであり、これはRhts(quenched)より100倍小さい。
【0100】
オームの法則および図7に示されている等価回路を、上で与えられた電源インピーダンス0.039+j0.195Ωと共に使用することにより、標準キルヒホッフの法則を使用して、7,348VrmsになるようにHTSケーブル150の1つの相の両端間の電圧降下(Vcable)を計算することができる。HTSケーブル150を通って流れる対応するrms電流(Icable)356は、Vrms/Rhts(quenched)=9,604Armsであり、これは9604×1.414すなわち13,580Aのピーク電流に対応している。したがって電流成分332は、40,000Armsから9,604Armsに低減された(つまり76.0%の低減)。
【0101】
上で説明したように、故障電流が流れている間にHTSケーブル150内に生じる温度上昇(ΔT)は、最大温度上昇(つまりΔTmax)より低いレベルに維持しなければならない(ΔTmaxを超えると、場合によってはガス状の窒素気泡が形成されることになるため)。
【0102】
HTSケーブル150の実際の動作温度を決定する場合410、HTSケーブル150によって実現される温度上昇(ΔT)は、生成される熱ρ90τ(急冷された超伝導体ワイヤ中のrms電流密度Jは、Icable/WNt=fIc、w/√2tである)を吸収される熱CΔTに等化する単純な断熱計算によって決定することができる。この関係から、上で与えられたパラメータを使用して以下のようにΔTを計算することができる。
【数2】

【0103】
したがって、HTSケーブル150によって実現される温度上昇(ΔT)は、最大許容温度上昇(ΔTmax)未満であるため、ガス状の窒素気泡が形成されることも、誘電体層の絶縁耐力が低下することもなく、また、HTSケーブル150が絶縁破壊する危険にさらされることもなく、したがってケーブルが永久的に損傷することもない。詳細には、圧力が15バールのHTSケーブルの場合、液体窒素の沸点は110°Kである。したがって、72°Kまで過冷される液体窒素で動作するケーブルの場合、26.9°Kの温度上昇(ΔT)によって実際の動作温度が98.9°Kになり、これは、液体窒素の沸点である110°Kと比較する412と、安全な動作温度である。
【0104】
上の式を吟味すると、分母の値が大きくなると温度上昇(ΔT)が小さくなり、また、分子の値が大きくなると温度上昇(ΔT)が大きくなることが分かる。したがって故障電流継続期間(τ)が長くなり、かつ/または抵抗率(ρ90)が大きくなると温度上昇(ΔT)が大きくなることになる。一方、スタビライザの厚さ(t)が分厚くなるか、あるいは比熱(C)が大きくなると温度上昇(ΔT)が小さくなることになる。ワイヤ幅Wおよびワイヤの数Nは、ケーブルをより合わせる実用的要求事項によって、また、ワイヤの幅当たりの臨界電流と結合したケーブル定格によって既に決定済みである。
【0105】
それと同時に、必要な抵抗を達成するためには、ケーブル内のHTSワイヤの長さを十分な長さにしなければならない。a)最大制限電流は、f−係数×幅当たりのワイヤ臨界電流Ic、w×すべてのワイヤの総合幅WNであり、また、b)抵抗はρL/WNtであるため、HTSケーブル150内のワイヤの最短長さは、
min=(Vpeak)(t)/(f)(Ic、w)(ρ)[式1]
である。
【0106】
上の値を使用すると、
min=(1.414×7348V)(0.035cm)/(2)(350A/cm)(0.000004Ωcm)
min=1,300m
である。
【0107】
1.08の螺旋係数を考慮すると、この長さは、最初に仮定された1200mのケーブル長に対応している。長さがもっと長い場合、最大温度上昇(ΔT)は、電流がfIc、wWNに制限される限り、ケーブルのいたる所で、上で計算されたレベルを維持することができることに留意されたい。その場合、Siemensによって示されている方法(Switching Behavior of YBCO Thin Film Conductors in Resistive Fault Current Limiters by H.−P.Kraemer et al.、IEEE Trans.on Applied Superconductivity、vol.13、No.2、2003年6月、2044〜7頁参照)で急冷することができるのはHTSワイヤの一部にすぎず、また、レベルfIc、wWNを維持するのは限られた電流である。しかしながら、長さがもっと短い場合、I=V/Rhts、quenchedに従う所与の電圧に対して、急冷された状態のHTSワイヤの抵抗が小さくなり、また、電流が大きくなる。そのために、上で与えられたΔTの式に従って、より大きい加熱および大きい温度上昇がもたらされることになる。したがって、ケーブルの長さは、上で計算された長さ(つまり1,300メートル)より長くしなければならない。
【0108】
また、温度上昇は、以下のように計算することも可能であることに留意されたい。
ΔT=ρ(fIc、w/t)τ/2C[式2]
【0109】
式1および2で表されているこれらの最後の2つの式から、抵抗率ρまたは臨界電流密度Ic、wを大きくすることによって、あるいはスタビライザの厚さを薄くすることによって最短ワイヤ長および最短ケーブル長を短くしたい場合、温度上昇ΔTが大きくなることが分かる。別法としては、カプセル封じ剤を使用することによってもたらされる熱容量の増加によって温度上昇を小さくすることも可能である。例えば、熱容量を2倍にすることによって同じ温度上昇で抵抗率を2倍にすることができ、また、熱容量を2倍にすることによって最短ケーブル長を2分の1にすることができる。これらの式は、ワイヤの幅Wまたはワイヤの数Nがケーブルの動作定格および幅当たりの臨界電流Ic、wまたはHTSワイヤによって決定されている場合のみを除き、ワイヤの幅Wまたはワイヤの数Nには無関係であることに留意されたい。
【0110】
このケーブル設計解析の結論は、すべての故障電流がHTSケーブル150を通って流れるアプリケーションの場合、FCL HTSケーブルの最短長は、13.8kVクラスの配電システムの場合、キロメートルの範囲に存在していることである。これは、例えば上で説明したより大きい熱容量を使用することによってさらに短くすることができる。当業者は、上で与えられた式から、あるいはすべてのパラメータの温度依存性を考慮したもっと完全な解析から、他の電圧およびパラメータに対する最短長を計算することができる。
【0111】
しかしながら、ケーブル150の両端間に並列インピーダンスが直接提供される場合(例えば図4の遮断器34から遮断器36へ)、ケーブル150上の電圧が場合によっては著しく小さくなる。例えば、本発明者らは、13.8kVシステムにおける電源インピーダンスは、単相電圧が8kVrmsである13.8kVrms格子における40kArmsの単相故障電流に対応する0.2Ω(誘導性)であると見なしている。HTSケーブル150と並列の0.046Ωの従来の誘導性インピーダンスは、場合によってはケーブル150上の電圧を1500Vrmsに低減し、32.5kAの故障電流をもたらすことがある。低減されたこの電圧および上記パラメータ(図5のカプセル封じ剤264を使用した熱容量の2倍の増加を含む)を使用すると、臨界長数式によって約100mの最短ケーブル長が得られる。したがって、13.8kV格子の場合、並列インピーダンスを使用することができることを条件として、長さが100mの短いFCLケーブルを設計することができる。
【0112】
長さがもっと長いケーブルの場合、抵抗率を小さくし、それに応じて温度上昇を小さくすることができる。これには、場合によっては、ケーブルがその元の動作温度に復帰する回復時間を短くする利点がある。例えば、長さが4.8kmのケーブルの場合、上記実施例の抵抗率を1マイクロオーム−cmまで小さくすることができ、また、温度上昇を26.9K(図5のカプセル封じ剤264がない場合)から6.7Kに小さくすることができる。
【0113】
将来的には、もっと速いスイッチアセンブリを入手することが可能である。その場合、故障継続期間τを短くすることができ、また、もっと大きい抵抗率が可能になる。例えば故障継続期間が27msecの場合、抵抗率を10マイクロオーム−cmまで大きくすることができ、また、ケーブルの最短長を2.5分の1(10マイクロオーム−cm÷4マイクロオーム−cm)だけ短くすることができる(カプセル封じ剤がない場合)。
【0114】
したがって、ここで開示されているFCLケーブルの概念は、上で考察したパラメータに何らかの他の調整を加えながら、1マイクロオーム−cmから10マイクロオーム−cmまでの抵抗率の範囲で実践することができ、この範囲は、0.8マイクロオーム−cmから15マイクロオーム−cmまで拡張することができる。しかしながら、銅の低77K抵抗率(0.2マイクロオーム−cm)あるいはステンレス鋼の大きい抵抗率(50マイクロオーム−cm)は、実用的な連続可撓性長距離FCLケーブルにとっては範囲外である。
【0115】
スタビライザ厚さtおよびIc、wのパラメータには対応する変化が可能であるが、いずれの場合においても、ケーブル敷設要求事項によってこれらを拘束することができ(つまりHTSワイヤがケーブルに対して過度に硬くなることを回避するためには、スタビライザを過度に分厚くすることはできない)、また、電力公益事業電流定格に合致する必要性によってこれらを拘束することができる。
【0116】
138kVなどの送電レベル電圧の場合、熱容量を2倍にし、かつ、抵抗率を4マイクロオームcmから8マイクロオームcmに大きくするカプセル封じ剤を含めて最短長を予測することができる。長さの数式(上で説明した)によれば、2倍の大きさの抵抗率に結合された13.8kVクラスの配電システムと比較すると、10倍の大きさの電圧は、(10/2)×1.2kmすなわち6kmの最短長を意味している。送電レベルケーブルの場合、このような長さが一般的であり、この場合、FCLケーブル設計も可能であることを示している。
【0117】
本開示の他の実施形態は、複数のタイプのHTSワイヤ、例えばHTS材料BSCCO(ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・銅・酸化物)に基づくワイヤ、およびにHTS材料YBCO(希土類すなわちイットリウム・バリウム・銅・酸化物)に基づくワイヤを備えたHTSケーブルである。異なる超伝導材料は、超伝導状態から通常状態への異なる移行特性を有することができる。これらの材料はいずれも、FCL特性を立証するために過去に使用されたものではあるが(例えばSUPERPOLIプログラムで)、例えばYBCOはBSCCOよりはるかに急峻な移行を有しており、FCLアプリケーションにおける有効性をより優れたものにしている。この実施形態の場合、BSCCOワイヤでできたHTSケーブルを設計することができ、また、YBCOがコーティングされた導体ワイヤでできた超伝導ケーブルの適切な長さのセクションを追加することによって故障電流制限ケーブルとして作用するように動作させることができる。これは、FCL動作のために設計されたケーブルのYBCOセクション内におけるスプライス接続によって達成することができる。通常の動作条件では、両方のセクションが超伝導である。
【0118】
以上、多くの実施態様について説明した。しかしながら、様々な修正を加えることができることは理解されよう。したがって他の実施態様は、以下の特許請求の範囲の範疇である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温冷却HTSケーブルであって、当該低温冷却HTSケーブルがない場合に生じることになる最大故障電流を有する電力公益事業電力格子内に含まれるように構成され、
液体冷媒を循環させるための連続液体低温冷媒経路と、
前記最大故障電流を少なくとも10%減衰させるインピーダンス特性を有するHTSワイヤの連続可撓性構造であって、最大故障状態が発生している間、前記HTSワイヤ内の最大温度上昇が、前記液体冷媒中のガス気泡の形成を防止するだけの十分に小さい状態で前記低温冷却HTSケーブルを動作させることができるように構成されたHTSワイヤの連続可撓性構造と
を備えた低温冷却HTSケーブル。
【請求項2】
連続可撓性巻線支持構造をさらに備え、前記複数のHTSワイヤのうちの1つまたは複数が前記連続可撓性巻線支持構造に対して同軸で配置された、請求項1に記載の低温冷却HTSケーブル。
【請求項3】
前記連続可撓性巻線支持構造が軸方向の中空コアを備えた、請求項2に記載の低温冷却HTSケーブル。
【請求項4】
前記連続可撓性巻線支持構造が波形ステンレス鋼管を備えた、請求項2に記載の低温冷却HTSケーブル。
【請求項5】
連続可撓性巻線支持構造に対して同軸で配置された遮蔽層と、
前記連続可撓性巻線支持構造に対して同軸で配置され、かつ、1つまたは複数の導電層と前記遮蔽層の間に配置された絶縁層と
をさらに備えた、請求項2に記載の低温冷却HTSケーブル。
【請求項6】
前記液体冷媒が液体窒素である、請求項1に記載の低温冷却HTSケーブル。
【請求項7】
前記液体窒素が大気圧より高い圧力に加圧され、かつ、77K未満に過冷される、請求項6に記載の低温冷却HTSケーブル。
【請求項8】
前記液体冷媒が液体水素である、請求項1に記載の低温冷却HTSケーブル。
【請求項9】
前記低温冷却HTSケーブルが1つまたは複数のHTSワイヤを備えた、請求項1に記載の低温冷却HTSケーブル。
【請求項10】
前記複数のHTSワイヤのうちの少なくとも1つが、イットリウムすなわち希土類・バリウム・銅・酸化物、タリウム・バリウム・カルシウム・銅・酸化物、ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・銅・酸化物、水銀・バリウム・カルシウム・銅・酸化物およびマグネシウム・ジボライドからなるグループから選択されるHTS材料で構築される、請求項5に記載の低温冷却HTSケーブル。
【請求項11】
前記1つまたは複数のHTSワイヤのうちの少なくとも1つが、100〜600マイクロメートルの範囲内の総合スタビライザ厚さと、90°Kで0.8〜15.0マイクロオーム−cmの範囲内の抵抗率とを有する少なくとも1つのスタビライザ層を備えた、請求項1に記載の低温冷却HTSケーブル。
【請求項12】
前記1つまたは複数のHTSワイヤのうちの少なくとも1つが、200〜500マイクロメートルの範囲内の総合スタビライザ厚さと、90°Kで1〜10.0マイクロオーム−cmの範囲内の抵抗率とを有する少なくとも1つのスタビライザ層を備えた、請求項1に記載の低温冷却HTSケーブル。
【請求項13】
故障状態の間のインピーダンス特性および最大温度上昇が、前記複数のHTSワイヤのうちの1つまたは複数の1つまたは複数の設計パラメータを構成することによって画定される、請求項1に記載の低温冷却HTSケーブル。
【請求項14】
前記1つまたは複数の設計パラメータが、スタビライザ抵抗率係数、スタビライザ厚さ係数、ワイヤ比熱係数および動作臨界電流密度係数のうちの1つまたは複数を含む、請求項13に記載の低温冷却HTSケーブル。
【請求項15】
前記低温冷却HTSケーブルに直列に結合された1つまたは複数の高速スイッチをさらに備え、前記1つまたは複数の高速スイッチが、故障状態が発生した後に開くように構成される、請求項1に記載の低温冷却HTSケーブル。
【請求項16】
前記低温冷却HTSケーブルが、複数の変電所をリンクするバス・タイアプリケーションに使用されるように構成される、請求項1に記載の低温冷却HTSケーブル。
【請求項17】
低温冷却HTSケーブルを構成する方法であって、
前記低温冷却HTSケーブルのための最大許容動作温度を決定する処理であって、前記低温冷却HTSケーブルが可撓性巻線支持構造を備え、前記可撓性巻線支持構造が、前記可撓性巻線支持構造に対して同軸で配置された超伝導材料の1つまたは複数の導電層を支持するように構成された、最大許容動作温度を決定する処理と、
最大故障状態が生じている間、前記低温冷却HTS超伝導ケーブルの実際の動作温度が前記最大許容動作温度未満のレベルに維持され、最大故障電流が少なくとも10%小さくなるように、前記低温冷却HTSケーブルの1つまたは複数の設計パラメータを構成する処理と
を含む方法。
【請求項18】
前記最大許容動作温度が、本質的に、前記低温冷却HTSケーブルの少なくとも一部の中を循環する冷媒が液体の状態からガス状の状態に変化する温度に対応する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記冷媒が加圧液体窒素である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記1つまたは複数の設計パラメータが、ワイヤ抵抗率係数、スタビライザ厚さ係数、比熱係数、故障電流継続期間係数および単位幅当たりのワイヤ動作臨界電流係数のうちの1つまたは複数を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記低温冷却HTSケーブルの前記実際の動作温度を決定する処理をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記低温冷却HTSケーブルの前記実際の動作温度を前記低温冷却HTSケーブルのための前記最大許容動作温度と比較する処理をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
1つまたは複数の設計パラメータを構成する処理が、前記低温冷却HTSケーブルのインピーダンスを調整することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記低温冷却HTS超伝導ケーブルの前記インピーダンスを調整する処理が、
最短値より長い前記低温冷却HTSケーブルの長さを調整する処理と、
前記低温冷却HTSケーブルの抵抗率を調整する処理と、
前記低温冷却HTSケーブル内のHTSワイヤに結合されたスタビライザ層の厚さを調整する処理と、
前記低温冷却HTSケーブル内のカプセル封じ剤によってHTSワイヤの比熱を調整する処理と、
前記低温冷却HTSケーブル内に含まれているHTSワイヤの動作臨界電流密度を調整する処理
とのうちの1つまたは複数を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記スタビライザ層が少なくとも部分的に黄銅材料で構築される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記低温冷却HTS超伝導ケーブルが1つまたは複数のHTSワイヤを備え、前記複数のHTSワイヤのうちの少なくとも1つが、イットリウムすなわち希土類・バリウム・銅・酸化物、タリウム・バリウム・カルシウム・銅・酸化物、ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・銅・酸化物、水銀・バリウム・カルシウム・銅・酸化物およびマグネシウム・ジボライドからなるグループから選択される材料で構築される、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記低温冷却HTS超伝導ケーブルが、電圧源インピーダンスを有する電圧源に結合され、前記方法が、
前記電圧源の前記電圧源インピーダンスを決定する処理
をさらに含む、請求項17に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2010−519679(P2010−519679A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549169(P2009−549169)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/052290
【国際公開番号】WO2008/097759
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(509225166)アメリカン スーパーコンダクター コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】