説明

敏感なエナメル質のケアのための口腔ケア製品

侵食保護を提供する一方で適切な洗浄性能を維持する抗侵食口腔ケア配合物および方法を開示する。抗侵食口腔ケア配合物には、粘膜接着性ポリマーおよび酸性pHにおいてより可溶性になる亜鉛化合物または塩が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] この出願は2010年1月29日に出願された米国仮特許出願第61/299,637号に対して優先権を主張し、それを本明細書に援用する。
[0002] これらの態様は、侵食保護を提供する一方で適切な洗浄性能を維持している抗侵食口腔ケア組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
[0003] 歯のエナメル質の侵食は、痛み、変色、機械的故障、およびより齲食(dental carries)にかかりやすくなることにつながり得る。歯のエナメル質の化学的侵食は、口腔中の酸の存在の結果として生じる可能性がある。主にタンパク質および鉱質である唾液の成分は、ペリクルと共に、侵食的負荷に対する保護において不可欠である。唾液中の鉱質およびタンパク質は化学的障壁を提供して硬組織の脱灰の複雑な動的平衡を減速する、または変化させるのを助け、一方でペリクルは拡散障壁を提供して同じプロセスを成し遂げるであろう。
【0003】
[0004] 口腔ケア組成物は歯を様々な方法で保護することができる。多くの口腔ケア組成物は、口腔中のpHを上昇させるように設計されている。口のpHを制御することを試みる場合の一般的な戦略は、口腔ケア組成物の配合においてアルカリ化剤を含ませることである。アルカリ化剤は酸と反応して酸を中和し、水および塩を形成する。このプロセスは口腔中のpHを上げる。しかし、たとえ口腔中のpHが高い時でも、齲食原性細菌が存在している可能性のある歯の表面におけるpHは、一般に細菌の活動により口腔よりも局所的に低い可能性がある。可溶性塩基は、酸が歯に最も大きな損傷を与える場所である歯の表面に優先的に位置することができない。
【0004】
[0005] 酸に基づく侵食の歯への影響を低減するための方法は、口腔ケア組成物中に可溶性金属イオンを添加することである。亜鉛およびカルシウムイオンは、歯の表面に結合して歯の酸による損傷への耐性を増大させるために用いられてきた。亜鉛塩類は、抗細菌、抗歯石(antitartar)、および抗歯石(anticalculus)剤としても用いられてきた。可溶性金属塩類は、酸が歯に最も大きな損傷を与える場所である歯の表面に優先的に位置することができない。加えて、可溶性亜鉛塩類は口腔ケア組成物における不快な味の特徴につながる可能性がある。
【0005】
[0006] 不溶性亜鉛化合物は、口腔中でより長い滞留時間を有する金属源として研究されてきた。アミンポリマー類は、亜鉛化合物の口腔中での滞留時間を増大させるために利用されてきた。これらの組成物は、亜鉛イオンが唾液中に見出される時間を増大させる。唾液中の亜鉛イオン濃度は、酸による侵食が起こる歯の表面における局所的な亜鉛濃度に取り組まない(does not address)。従って、長時間にわたって(over time)歯の表面に位置する亜鉛の源を提供して酸に基づく侵食を予防することができる向上した歯磨剤に関する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
[0007] 1態様の特徴に従って、口に許容できるビヒクル、粘膜接着性ポリマー、酸性pHにおいてより可溶性になる亜鉛化合物または塩、ならびに研磨剤、が含まれる口腔ケア組成物を含む、歯の侵食の予防および/または処置のための組成物および方法を提供する。いずれかの動作原理により束縛されることを意図するわけではないが、当該組成物の歯への適用は、歯の表面においてポリマーおよび亜鉛化合物の障壁を形成することにより、歯のエナメル質を侵食から保護すると信じられる。亜鉛化合物は酸により侵食され、それはそうでなければ、歯において起こる可能性のある侵食の代わりになる。亜鉛化合物を歯の表面に空間的に位置づけるのを助けるのに加え、本発明者らは、粘膜接着性ポリマーは歯の表面における細菌の接着も低減する可能性があると信じる。
【0007】
[0008] 追加の態様に従って、本発明には、口に許容できるビヒクル、粘膜接着性ポリマー、酸性pHにおいてより可溶性になる亜鉛化合物または塩、ならびに研磨剤、からなる口腔ケア組成物を投与すること、ならびに場合により組成物に剪断応力を適用して粘膜接着性ポリマーおよび亜鉛化合物の層を剪断して整列させ(shear−align)、その層をより均質にすることを含む、歯の酸に基づく侵食を低減する方法が含まれる。剪断応力を用いて組成物を適用する場合、増進された侵食保護は組成物の追加の均質性に由来する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0009] 全体において用いられるように、範囲はその範囲内にあるそれぞれおよび全ての値を記述するための略記として用いられる。範囲内のあらゆる値は、範囲の末端として選択することができる。加えて、本明細書において引用される全ての参考文献をそのまま本明細書に援用する。本開示における定義および引用された参考文献の定義において不一致がある場合には、本開示が統制する。
【0009】
[0010] 本明細書で用いられる見出し(例えば“背景技術”および“発明の概要”)は、本発明の開示内の題目の全体的な組織化のためだけを意図しており、本発明またはそのいずれかの観点の開示を制限することを意図していない。特に、“背景技術”において開示されている主題には本発明の範囲内の技術の観点が含まれていてよく、先行技術の列挙を構成してはならない。“発明の概要”において開示されている主題は、本発明の範囲全体またはそのあらゆる態様の余すところのない、または完全な開示では無い。
【0010】
[0011] 本明細書における参考文献の引用は、それらの参考文献が先行技術である、または本明細書で開示される本発明の特許性に何らかの関連を有するという自認を構成しない。この明細書の発明を実施するための形態の節において引用されている全ての参考文献を、本明細書にそのまま援用する。
【0011】
[0012] その記述および具体的な実施例は本発明の態様を示すものであるが、説明の目的のみを意図しており、本発明の範囲を限定することは意図していない。明記された特徴を有する多数の態様の列挙は、追加の特徴を有する他の態様またはその明記された特徴の異なる組み合わせを組み込む他の態様を除外することを意図していない。具体的な実施例は、この発明の組成物および方法をどのように作る、用いる、および実施するかの説明的な目的のために提供されており、なされた行為を列挙すると明示的に記載(すなわち過去形を使用)しない限り、この発明の所与の態様が実施された、または実施されていないという表現であることを意図していない。
【0012】
[0013] 本明細書で用いられる際、語“好ましい”および“好ましくは”は、特定の状況の下で特定の利益を与える本発明の態様を指す。しかし、同じ、または他の状況の下で他の態様も好ましくてよい。さらに、1個以上の好ましい態様の列挙は他の態様が有用ではないことを暗に意味せず、本発明の範囲から他の態様を除外することを意図していない。本明細書で用いられる際、語“含まれる”およびその変形は、リスト中の品目の列挙が、それもこの発明の材料、組成物、装置、および方法において有用である可能性がある他の同様の品目の除外では無いように限定的で無いことを意図している。類似の様式で、既知の物質および方法の特定の利点または不利な点の記述は、その態様の範囲をそれらの除外に限定することを意図するものではない。実際、特定の態様には、本明細書で論じられる不利な点に悩まされることなく1種類以上の既知の物質または方法が含まれてよい。
【0013】
[0014] 本明細書で用いられる際、用語“含む”は、最終結果に影響を及ぼさない他の工程および他の構成要素を利用することができることを意味する。用語“含む”は表現“からなる”および“本質的に〜からなる”を含む。表現“有効量”は、本明細書で用いられる際、明確な利益、好ましくは口の健康の利益を有意に誘導するのに十分であるが、重篤な副作用を避けるのに十分に低い、すなわち理にかなった利益のリスクに対する比率を提供する化合物または組成物の量を意味し、それは当業者の適切な判断の範囲内である。単数形の識別子、例えば“the”、“a”、または“an”の使用は、単に単数の構成要素の使用に限定することを意図しておらず、複数の構成要素が含まれてよい。
【0014】
[0015] 本明細書で用いられる全ての百分率および比率は、別途明記されない限り口腔ケア組成物の重量によるものである。全ての測定は、別途明記されない限り25℃においてなされる。
【0015】
[0016] この記述および特許請求の範囲全体において、特定の数値(例えば温度、構成要素の重量パーセント等)の開示は、その値、プラス又はマイナスの、その値と典型的に関係する変数および測定誤差の程度に依存する、当業者には理解されるであろう追加の値を表すことを意味する。例えば、所与の温度には、温度を測定するために用いられる機器を考慮すれば、10%までの変動性が含まれるものと当業者には理解されるであろう。
【0016】
[0017] 本発明の歯磨剤は、亜鉛の不溶性化合物を粘膜接着性ポリマーおよび研磨剤と、全て口に許容できるビヒクル中で組み合わせて、歯の酸に基づく侵食と戦う組成物を形成する。粘膜接着性ポリマーは不溶性亜鉛化合物を歯の表面の近くに局在させる。歯の表面におけるより長い滞留時間を有する粘膜接着性物質は、増進された保護を提供する。粘膜接着性物質は金属化合物を局在させ、歯の表面上の細菌の接着も防ぐ。亜鉛化合物は、口腔中のpHが下がった際に侵食され、そのようにして、金属化合物を歯のエナメル質の健康のために犠牲にすると信じられる。亜鉛化合物の酸による侵食は結果として酸の中和をもたらし、今度は歯の表面の近くのpHを上げる。歯の表面における亜鉛イオンは、あらゆる齲食原性(carriogenic)細菌に関する抗細菌物質としても機能することができる。歯の表面における不溶性亜鉛化合物の滞留時間を増大させることにより、亜鉛イオンの貯蔵器はより長く適所に留まり、有効なままであることができる。
【0017】
[0018] いずれかの動作原理により束縛されることを意図するわけではないが、本発明者らは、粘膜接着性ポリマーは、本明細書で記述される組成物および方法において用いられた場合、齲蝕原性(carriogenic)細菌のエナメル質への接着を妨げ、エナメル質表面における長い滞留時間を有すると信じる。粘膜接着性ポリマーは亜鉛化合物の一部を歯の表面に空間的に閉じ込めることも信じられる。歯の周囲の局所的な環境が酸性になるにつれて、亜鉛化合物はより可溶性になると信じられる。本発明者らは、亜鉛化合物を可溶化するプロセスは酸を中和し、有益な可溶性亜鉛イオンも提供すると信じる。粘膜接着性物質のエナメル質表面における長い滞留時間は、金属化合物のより長い滞留時間を提供すると信じられる。
【0018】
[0019] 本発明の組成物および使用の方法は、剪断応力を加えられた際により整えられた(ordered)表面薄膜を形成することにより増進された酸保護も提供する。ブラッシング、ごしごしこすること(scrubbing)、指でこすること(rubbing)、および同様のことのような行為から生じる剪断応力は、結果として組成物の剪断整列をもたらす。本明細書および特許請求の範囲において用いられる表現“剪断整列”は、物質が加えられた剪断応力に応じて少なくとも部分的により整えられた状態になるプロセスを指す。剪断整列は、少なくとも部分的な秩序化(ordering)の結果としてより均質な組成物を作り出すことと理解されるであろう。本発明において、向上した秩序化は、ポリマーのより規則的な配列、ポリマー中の金属のより規則的な配列の形成、またはより整えられたポリマーおよび金属の両方の組み合わせにより起こる可能性がある。
【0019】
[0020] 本発明の抗侵食口腔ケア組成物を調製するため、粘膜接着性ポリマー、酸性pHにおいてより可溶性になる亜鉛化合物または塩、ならびに研磨剤が口に許容できるビヒクル中に組み込まれる。
【0020】
[0021] 様々な態様の口腔ケア組成物は、好ましくは歯磨剤の形である。この記述全体において用いられる用語“歯磨剤”は、ペースト、ゲル、または液体配合物を意味する。歯磨剤は、あらゆる望まれる形、例えば練り歯磨き;(深い筋が入ったもの(deep striped)、表面に筋が入ったもの、多層のもの、ペーストを取り巻くゲルを有するものが含まれる);粉末;ビーズ;マウスウォッシュ(mouthwash);マウスリンス(mouth rinses);ロゼンジ;歯用ゲル;歯周用ゲル;歯の表面に塗布するのに適した液体;チューインガム;溶解可能な、部分的に溶解可能な、または溶解不能な薄膜または細片;ウェファー;ワイプ(wipe)またはタオレット(towelette);インプラント;泡状物質;トローチ;デンタルフロス、またはそれらのあらゆる組み合わせであってよい。好ましくは、歯磨剤は練り歯磨きである。
【0021】
[0022] 本発明の文脈において用いられる表現“口に許容できるビヒクル”は、上記で記述した歯磨剤のいずれかの配合において有用なあらゆるビヒクルを意味する。適切な口に許容できるビヒクルには、例えば以下のものの1種類以上が含まれる:溶媒;アルカリ化剤;湿潤剤;シックナー;界面活性剤;研磨剤;抗歯石剤;着色剤;香味剤;染料;カリウム含有塩;抗細菌剤;脱感作剤;汚れを低減する薬剤;およびそれらの混合物。
【0022】
[0023] 本明細書および特許請求の範囲において用いられる表現“粘膜接着性ポリマー”には、その意味の範囲内に親水性ポリマーおよびヒドロゲル類が含まれる。本発明の実施において有用ないくつかのポリマーには、以下のものが含まれる:セルロース誘導体;ポリビニルピロリドン類;ポリアクリレート類;ポリエーテル類;ポリ無水物類;多糖類;ポリビニルホスフェート類;およびこれらの官能性(functionalities)を組み込むコポリマー。
【0023】
[0024] 粘膜接着性ポリマーの好ましい種類はポリカルボキシレート類である。用語ポリカルボキシレートは、カルボキシレート官能基を有する繰り返し単位を有するオリゴマーまたはポリマーを意味する。特に好ましい粘膜接着性ポリマーは、周知の商業的に入手可能なコポリマーであるGANTREZ(登録商標)として知られているメチルビニルエーテルおよび無水マレイン酸のコポリマー、またはポリメチルビニルエーテルおよび無水マレイン酸のコポリマー(PVM/MA)であるGANTREZ(登録商標)ANである。Gantrezポリマー類は、ISP Technologies, Inc.(ニュージャージー州バウンドブルック08805)から商業的に入手可能である。Gantrezポリマー類は口腔ケア製剤において知られ、用いられてきており、特に米国特許第4,521,551号、第4,373,036号、および第4,485,090号において記述されており、そのそれぞれの開示を本明細書にそのまま援用する。Gantrezポリマー類は、エナメル質表面における長い滞留時間およびエナメル質への細菌の接着を妨げるその能力のため、好都合である。不溶性またはわずかに可溶性の金属化合物との組み合わせで用いられると、Gantrezは歯に空間的に近接した位置に金属イオンの源を配置し、一方で金属化合物の歯に近接した位置でのより長い滞留時間を維持することができる。
【0024】
[0025] 粘膜接着性ポリマー、例えばポリカルボキシレートは、本発明の口に許容できるビヒクル中にその構成要素の0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、最も好ましくは0.5〜7重量%の範囲の量で組み込まれてよい。粘膜接着性ポリマーの混合物を用いてもよい。Gantrezが好ましい粘膜接着性ポリマーである。
【0025】
[0026] 本明細書および特許請求の範囲において用いられる表現“金属化合物または塩”には、その意味の範囲内に、亜鉛の塩類および化合物が含まれる。これらの塩類および化合物には以下のものが含まれる:酸化亜鉛、炭酸亜鉛、クエン酸亜鉛、ケイ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、安息香酸亜鉛、テトラフルオロホウ酸亜鉛、ヘキサフルオロケイ酸亜鉛、および他の亜鉛化合物。亜鉛化合物は好ましくは酸化亜鉛である。
【0026】
[0027] 一部の不溶性亜鉛化合物は、溶液中で酸と反応して亜鉛イオンを形成する能力を有する。酸化亜鉛は溶液中で酸と反応して亜鉛イオンを形成する能力を有する:
ZnO + HCl → Zn2+ + 2Cl + H
この反応は、酸を消費して亜鉛塩および水を生じる。ZnOのpHはおおよそ6.95であり、それは6.95より酸性である(よりpHの低い)環境においてZnOが酸を消費して溶解してpHを上げるであろうことを示している。
【0027】
[0028] 本明細書および特許請求の範囲において用いられる表現“不溶性またはわずかに可溶性”は、金属塩類および化合物の溶解性を指す。pHは化合物の溶解性に影響を及ぼす可能性があり、それはこれらの化合物を異なるpHにおいてより可溶性に、またはより不溶性にする可能性があることが知られている。溶解性は沈殿および溶解の間の動的平衡を含み、それは可溶性のキレート剤またはキレートする酸の存在が含まれるがそれらに限定されない要因により影響を受ける可能性があることも理解されている。不溶性またはわずかに可溶性であることは、pH7の水中で溶解度が1重量%未満である化合物を意味すると理解することができる。より低いpHまたはより高いpHにおいて、化合物は著しくより可能性になることができ、語句“酸性pHにおいてより可能性になる金属化合物または塩”は、局所的なpHの低下の際により可溶性になることができる不溶性またはわずかに可溶性の化合物、好ましくは酸化亜鉛を指すであろうことも理解されるであろう。
【0028】
[0029] アルカリ化剤、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、N−ケイ酸ナトリウム(PQ Corporationから入手可能な、34.6%水中3.22重量比のケイ酸ナトリウム)が含まれるアルカリ金属化合物を、本発明の口に許容できるビヒクル中に、その構成要素の0.5〜15重量%、好ましくは1〜8重量%、最も好ましくは1〜5重量%の範囲の量で組み込むことができる。上記のアルカリ金属化合物の混合物を用いてもよい。水酸化ナトリウムが好ましいアルカリ化剤である。
【0029】
[0030] 研磨剤を本発明の口に許容できるビヒクル中に組み込むことができ、好ましい研磨剤はケイ酸含有(siliceous)物質、例えばシリカである。好ましいシリカは、沈降非晶質水和シリカ、例えばCrosfield Chemicalsにより市場に出されているSorbosil AC−35、またはHuber CompanyからのZeodent 115であるが、ヒドロキシアパタイト、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、リン酸三カルシウム、リン酸カルシウム二水和物、無水リン酸水素カルシウム、ピロリン酸カルシウム、オルトリン酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、アルミナ三水和物、ケイ酸アルミニウム、か焼アルミナ、チタニア、およびベントナイトが含まれる他の研磨剤を用いてもよい。本発明の練り歯磨き組成物中の研磨剤の濃度は、通常は5〜40重量%、好ましくは10〜25重量%の範囲であろう。
【0030】
[0031] 口に許容できるビヒクルの調製において用いられる湿潤剤は、グリセロール、ソルビトールおよび200〜1000の範囲の分子量のポリエチレングリコールのような湿潤剤の混合物であってよいが、他の湿潤剤の混合物および単一の湿潤剤を用いてもよい。湿潤剤の含有量は、歯磨剤構成要素の10〜50重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲である。水の含有量は、20〜50重量%、好ましくは30〜40重量%の範囲である。
【0031】
[0032] 口に許容できるビヒクルの調製において用いられるシックナーには、有機および無機シックナーが含まれる。口に許容できるビヒクル中に含ませることができる無機シックナーには非晶質シリカ類が含まれる。無機シックナーは、本発明の口に許容できるビヒクル中に0.5〜5重量%、好ましくは1〜3重量%の濃度で組み込むことができる。
【0032】
[0033] 天然および合成ガム類ならびにコロイド類の有機シックナーも、本発明の口に許容できるビヒクルを調製するために用いることができる。そのようなシックナーの例は、カラギーナン(アイリッシュモス(Irish moss))、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースである。有機シックナーは、本発明の口に許容できるビヒクル中に0.1〜3重量%、好ましくは0.4〜1.5重量%の濃度で組み込むことができる。
【0033】
[0034] 発泡特性を提供するために、口に許容できるビヒクル中に界面活性剤を組み込むことができる。界面活性剤は、好ましくは本質的に陰イオン性または非イオン性である。陰イオン性界面活性剤の適切な例は、高級アルキルサルフェート類、例えば、好まれるのはラウリル硫酸カリウムまたはナトリウム、高級脂肪酸モノグリセリドモノサルフェート類、例えば硬化ヤシ油脂肪酸の一硫化(monosulfated)モノグリセリドの塩、アルキルアリールスルホネート類、例えばナトリウム ドデシルベンゼンスルホネート、高級脂肪スルホアセテート類(higher fatty sulfoacetates)、1,2 ジヒドロキシプロパンスルホネートの高級脂肪酸エステル類である。界面活性剤は一般に本発明の口に許容できるビヒクル組成物中に0.5〜10.0重量%、好ましくは1.0〜5.0重量%の濃度で存在していてよい。
【0034】
[0035] 脱感作カリウムイオンの源は一般に硝酸カリウム、クエン酸カリウム、塩化カリウム、重炭酸カリウムおよびシュウ酸カリウムが含まれる水溶性カリウム塩であってよく、硝酸カリウムが好ましい。カリウム塩は一般に、歯磨剤構成要素の1種類以上の中に1〜約20重量%、好ましくは3〜10重量%の濃度で組み込まれる。
【0035】
[0036] 本発明の実施において有用な抗歯石の効能を有するピロリン酸塩類には、水溶性塩類、例えば二アルカリまたは四アルカリ金属ピロリン酸塩類、例えばNa(TSPP)、K、Na、NaおよびKが含まれる。ポリリン酸塩類には、水溶性アルカリ金属トリポリリン酸塩類、例えばトリポリリン酸ナトリウムおよびトリポリリン酸カリウムが含まれる。ピロリン酸塩類は本発明の歯磨組成物中に0.5〜2重量%、好ましくは1.5〜2重量%の濃度で組み込まれてよく、ポリリン酸塩類は本発明の歯磨組成物中に1〜7重量%の濃度で組み込まれてよい。
【0036】
[0037] 着色剤、例えば顔料および染料を本発明の実施において用いることができる。顔料には、非毒性の水に不溶性の無機顔料、例えば二酸化チタンおよび酸化クロムの緑色、群青色、および桃色、ならびに酸化第二鉄類、ならびにFD&C染料のカルシウムまたはアルミニウム塩類をアルミナ上で延ばす(extending)ことにより調製される水に不溶性の染料レーキ類(dye lakes)、例えばFD&C緑色1号レーキ、FD&C青色2号レーキ、FD&C R&D30号レーキおよびFD&C黄色15号(#Yellow 15)レーキが含まれる。顔料は5〜1000ミクロン、好ましくは250〜500ミクロンの範囲の粒径を有し、0.5〜3重量%の濃度で存在する。
【0037】
[0038] 本発明の実施において用いられる染料は一般に、現在食品医薬品化粧品法(Food Drug & Cosmetic Act)の下で食品および摂取される薬物における使用に関して保証されている食品着色添加物であり、それにはFD&C赤色3号(テトラヨードフルオロセインのナトリウム塩)、FD&C黄色5号(4−p−スルホフェニルアゾ−1−p−スルホフェニル−5−ヒドロキシピラゾール−3カルボン酸のナトリウム塩)、FD&C黄色6号(p−スルホフェニルアゾ−B−ナフトール−6−モノスルホネートのナトリウム塩)、FD&C緑色3号(4−{[4−(N−エチル−p−スルホベンジノ)−フェニル]−(4−ヒドロキシ−2−スルホニウムフェニル)メチレン}−[1−(N−エチル−N−p−スルホベンジル)−G)−3,5−シクロヘキサジエンイミン](4−{[4−(N−ethyl−p−sulffobenzyno)−phenyl]−(4−hydroxy−2−sulfoniumphenyl)mewthylene}−[1−(N−ethyl−N−p−sulfobenzyl)−G)−3,5cyclohexadienimine])の二ナトリウム塩(slat))、FD&C青色1号(インジゴチン(indigo tin)のジベンジルジエチルジアミノトリフェニルカルビノールトリスルホン酸の二ナトリウム塩)のような染料およびそれらの様々な割合での混合物が含まれる。本発明における最も有効な結果のための染料の濃度は、総重量の0.0005パーセントから2パーセントまでの量で歯磨組成物中に存在する。
【0038】
[0039] あらゆる適切な香味または甘味物質も本発明の歯磨組成物に組み込むことができる。適切な香味成分の例は、香味油、例えば、スペアミント、ペパーミント、ウィンターグリーン、サッサフラス、チョウジ、セージ、ユーカリ、マヨラマ、桂皮、レモン、およびオレンジの油、ならびにサリチル酸メチルである。適切な甘味剤には、スクロース、ラクトース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、シクラミン酸ナトリウム、ペリラチン(perillatine)、およびサッカリンナトリウムが含まれる。適切には、香味および甘味剤は合わせて製剤の0.01から5%以上までを構成することができる。
【0039】
[0040] 抗細菌剤は、フェノールおよびビスフェノール化合物、ハロゲン化ジフェニルエーテル類、例えばトリクロサン、安息香酸エステル類およびカルバニリド類に基づく非陽イオン性抗細菌剤、ならびに陽イオン性抗細菌剤、例えばクロルヘキシジンジグルコネートである。そのような抗細菌剤は、特定の構成要素の0.03から1重量%までの量で存在することができる。
【0040】
[0041] 非陽イオン性抗細菌剤または抗細菌剤が歯磨剤構成要素のいずれかの中に含まれる場合、好ましくは、0.05から5%までの、薬剤の口の表面への送達および保持、ならびにそれの口の表面上での保持を増進する薬剤も含まれる。本発明において有用なそのような薬剤は、米国特許第5,188,821号および第5,192,531号において開示されており;合成陰イオン性ポリマー性ポリカルボキシレート類、例えば無水マレイン酸またはマレイン酸と別の重合可能なエチレン的に(ethylenically)不飽和な単量体の1:4〜4:1コポリマー類、好ましくは、約30,000〜約1,000,000、最も好ましくは約30,000〜約800,000の分子量(M.W.)を有するメチルビニルエーテル/無水マレイン酸が含まれる。これらのコポリマー類は、例えばISP Technologies, Inc.(ニュージャージー州バウンドブロック08805)から入手可能なGANTREZ(登録商標)の例えばAN 139(M.W.500,000)、AN 119(M.W.250,000)および好ましくはS−97医薬グレード(M.W.700,000)として入手可能である。増進剤は、存在する場合、0.05から3重量%までの範囲の量で存在する。
【0041】
[0042] 本発明の歯磨剤構成要素を調製するために、一般に湿潤剤、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール成分を、いずれかの有機性シックナー、甘味料、顔料、例えば二酸化チタンおよび抗歯石成分として含まれるいずれかのポリホスフェート類と共に分散させる。次いで水をこの分散物中に、いずれかの抗細菌剤、例えばトリクロサン、いずれかの抗細菌増進剤、例えばGantrezおよびいずれかの抗歯石性の追加の薬剤と共に添加する。次いで、粘膜接着性ポリマーおよび酸性pHにおいてより可溶性になる亜鉛化合物または塩を、分散物の中に混合する。これらの成分を、均質な相が得られるまで混合する。その後、無機性シックナー、シリカ研磨剤、香味および界面活性剤成分を添加し、その成分を約20から100mmHgまでの真空の下で高速で混合する。その結果として得られた製品は均質の半固体の押し出し可能なペースト製品である。
【0042】
[0043] 歯磨組成物の調製は当技術で周知である。本明細書に援用する米国特許第3,996,863号、第3,980,767号、第4,328,205号、および第4,358,437号は、練り歯磨きおよびその製造の方法を記述しており、それを本発明に従う歯磨剤の製造に利用することができる。
【0043】
[0044] 本明細書および特許請求の範囲において用いられる用語“剪断整列”は、物質が加えられた剪断応力に応じて少なくとも部分的により整えられた状態になるプロセスを指す。剪断整列は、少なくとも部分的な秩序化(ordering)の結果としてより均質な組成物を作り出すことと理解されるであろう。本発明において、向上した秩序化は、ポリマーのより規則的な配列、ポリマー中の金属のより規則的な配列の形成、またはより整えられたポリマーおよび金属の両方の組み合わせにより起こる可能性がある。
【実施例】
【0044】
[0045] 本発明は、以下の実施例においてさらに記述される。実施例は単に説明的なものであり、記述され、特許請求される本発明の範囲を決して制限しない。
[0046] 実施例−不溶性亜鉛化合物がZnOであり、フッ化物の源がNaFであり、高洗浄シリカを研磨剤として用いた抗侵食練り歯磨きを調製した。表1は、この抗侵食練り歯磨き組成物の成分を含有する。
【0045】
【表1】

【0046】
エナメル質溶解度低減(ESR)の定量化のための、広く用いられているFDA法#34への改変を用いて、表1で記述した配合物の抗侵食可能性を決定した。この改変された方法は、15分間持続する1回の酸負荷(pH=2.8、クエン酸)およびその後溶解されたエナメル質の量を分光光度的に定量化することで構成されていた。エナメル質表面をそのZnO含有配合物(表1)で処理し、上記の評価を実施した際、エナメル質の溶解度における5.6%の低減が観察された。この結果は、口の硬組織の化学的に誘導される脱灰(すなわち侵食)に関するZnO含有歯磨配合物の利益の可能性を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)口に許容できるビヒクル、(b)粘膜接着性ポリマー、(c)酸性pHにおいてより可溶性になる亜鉛化合物または塩、ならびに(d)研磨剤、
を含む口腔ケア組成物であって、当該組成物が歯のエナメル質の侵食に対する保護を提供する、前記口腔ケア組成物。
【請求項2】
亜鉛化合物または塩が酸化亜鉛である、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項3】
粘膜接着性ポリマーがメチルビニルエーテルおよび無水マレイン酸のコポリマーである、請求項1または2に記載の口腔ケア組成物。
【請求項4】
以下:1)(a)口に許容できるビヒクル、(b)粘膜接着性ポリマー、(c)酸性pHにおいてより可溶性になる亜鉛化合物または塩、ならびに(d)研磨剤を含む組成物を提供し;そして
2)当該組成物を対象の口腔に送達する
ことを含む、歯の酸に基づく侵食を低減する方法であって、
組成物の送達が粘膜接着性ポリマーおよび亜鉛化合物または塩の層を歯のエナメル質上に沈着させる、
前記方法。
【請求項5】
亜鉛化合物または塩が酸化亜鉛である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
粘膜接着性ポリマーがメチルビニルエーテルおよび無水マレイン酸のコポリマーである、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
さらに組成物に剪断応力を適用することを含み、それが歯の上に沈着した粘膜接着性ポリマーおよび亜鉛化合物または塩の層を剪断して整列させ、剪断されて整列した層がより均質になる、請求項4、5または6に記載の方法。
【請求項8】
剪断応力の適用が結果として、粘膜接着性ポリマーがより整った状態になることをもたらす、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
剪断応力の適用が結果として、亜鉛化合物または塩がより整った状態になることをもたらす、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
亜鉛化合物または塩が異方的に形作られた粒子を含む、請求項4、5、6、7、8または9に記載の方法。
【請求項11】
亜鉛化合物または塩が等方的に形作られた粒子を含む、請求項4、5、6、7、8または9に記載の方法。
【請求項12】
剪断応力が歯を器具でこすることにより適用される、請求項7、8または9に記載の方法。
【請求項13】
器具が歯ブラシを含む、請求項15に記載の方法。

【公表番号】特表2013−520402(P2013−520402A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551309(P2012−551309)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2011/022875
【国際公開番号】WO2011/094505
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(590002611)コルゲート・パーモリブ・カンパニー (147)
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
【Fターム(参考)】