説明

救助者が患者を蘇生させるのを支援する蘇生装置

【課題】救助者が患者を蘇生させるのを支援する蘇生装置を提供する。
【解決手段】蘇生装置は、蘇生中に患者の胸部に付着されるように構成されたCPR支援要素を備える。CPR支援要素は、蘇生が必要ではない期間中に非蘇生機能を行うように構成されたハンドヘルド型演算/通信装置と通信するように構成されている。CPR支援要素は患者に関するデータをハンドヘルド型演算/通信装置と通信し、ハンドヘルド型演算/通信装置は、少なくとも部分的にはCPR支援要素から受信したデータに基づきCPRプロンプトを提供する。CPR支援要素は薄いカード状の装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除細動治療および蘇生プロンプトを組み込んだ蘇生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蘇生は、患者の気道を確保し、患者の換気、胸部圧迫、および除細動を支援することを含み得る。
米国心臓協会の医療従事者のための一次救命処置の教科書は、第4章の4〜14頁目で、救助者が容易にアクセス可能な除細動器がない状況での、気道確保、換気、および循環(A、B、およびCとして知られている)の工程をリストにしたフローチャートを提供している。自動体外式除細動器(AED)の使用によって、除細動(時折、工程Dとして知られている)が行われることもある。殆どの自動体外式除細動器は、実際には半自動の体外式除細動器(SAED)であり、臨床医がスタートボタンを押すことを必要とする。その後、除細動器は患者の状態を分析し、ショックが有効な電気的なリズムである場合には患者にショックを加え、それに続くショックの前に使用者の介在を待機する。一方、完全に自動の体外式除細動器は、使用者の介在を待機せずに続くショックを加える。以下では、自動体外式除細動器(AED)には半自動体外式除細動器(SAED)を含む。
【0003】
両方の種類の除細動器は、典型的には、各ショックを加える前に音声による「離れ」警告を出す。このとき、臨床医は患者から離れることが期待され、また、臨床医が患者から離れていることを示すボタンを押すことを要求される場合もある。自動体外式除細動器用の制御機器は、典型的には、蘇生制御ボックスに配置されている。
【0004】
AEDは、典型的には、医師、看護師、消防署員、および警官など、訓練された従事者によって使用される。AEDを有する所定の施設において、救急サービスが到着する前の除細動蘇生に指定されているのは1〜2人である。AEDを操作するように訓練された救助者を伴う現場でのAEDの可用性は重要である。なぜならば、患者が除細動ショックを受ける前に4分を超える遅れを経験した場合には、患者の生存の可能性が劇的に低下するからである。多くの大都市および農村地域では、救急対応が遅いため除細動に対する生存率は低いが、多くの郊外では、交通量が少ないことや、病院および二次救命処置の可用性により救急対応が速いため、生存率はより高い。
【0005】
訓練された一般の従事者は、AEDオペレータの新しいグループではあるが、除細動する機会はめったにない。例えば、心臓発作を起こした患者の配偶者は、一般の従事者になり得るが、これらの一般の従事者は、救急医療中のAEDに容易に恐れをなしてしまう可能性がある。このため、そのような一般の従事者は、AEDを購入することに気乗りがせず、あるいは、一般の従事者は何か間違ったことをしてしまうとの懸念から、利用可能なAEDを使用することよりも、救急車の到着を待つ傾向にある可能性がある。
【0006】
多くの異なる種類の心臓リズムがあるが、そのうちの幾つかはショックが有効であると考えられ、そのうちの幾つかはショックが有効でないと考えられる。例えば、正常なリズムはショックが有効でないと考えられるが、さらに、ショックが有効でない異常なリズムも多く存在する。さらには、ショックが有効でない幾つかの生存不可能な異常な場合もある。これは患者がそのリズムを伴って生存し続けることは不可能であることを意味するが、それでもショックを加えることでリズムの変化が助けられることはない。
【0007】
ショックが有効でないリズムの例として、患者が収縮不全を経験した場合には、心臓は脈動せず、ショックを加えることは効果がない。収縮不全に対してはペーシングが推奨さ
れ、また、薬剤の使用など、そのような患者を支援するために二次救命チームが可能なことが他にもある。第1対応者の任務は、二次救命チームが到着するまでCPRおよび場合によれば除細動の使用を通じて単に患者を生存させておくことである。徐脈(心拍が遅すぎるとき)は、ショックが有効ではなく、さらに場合によれば、生存不可能である。患者が徐脈中に意識を喪失している場合には、ペーシングが利用可能になるまで胸部圧迫を行うことは助けになることがある。電気収縮解離(EMD:心臓に電気的な活動はあるが、心筋収縮をしていない)は、ショックが有効ではなく生存不可能であり、第1の対応としてCPRを必要とする。心室固有リズム(正常な電気的な活動が心室には生じるが、心房には生じない)もまた、ショックが有効ではなく生存不可能である可能性がある(通常、異常な電気的なパターンが心房で始まる)。心室固有リズムは、典型的には、毎分30乃至40拍の遅い心臓リズムを生じ、しばしば患者の意識を失わせる。通常、心室は心房の活動に対応するので遅い心臓リズムが生じるが、心房がそれらの電気的な活動を止めるとき、心室に遅い補助リズムが生じる。
【0008】
第1対応者が除細動を行うべきである、ショックが有効なリズムの主な例には、心室細動、心室頻拍、および心室粗動が含まれる。
ショックが有効な電気的なリズムを有する患者に除細動器を使用して1回以上のショックを加えた後でも、ショックが有効であるリズムまたはショックが有効でないリズムで、患者が意識を喪失したままである場合がある。その後は、救助者は、胸部圧迫に頼ることが可能である(代わりに、最初のショックを加えるのに先立って、胸部圧迫が加えられてもよい)。患者が意識を喪失しているままである限り、救助者は、(電気的なリズムを分析し、場合によればショックを加える)除細動器の使用と、心肺蘇生法(CPR)の実行とを交互に行うことが可能である。
【0009】
一般に、CPRは、5乃至15回の胸部圧迫と、それに続く休止との繰り返しパターンを伴う。CPRは、一般に、異常なリズムに対して効果がないが、二次救命チームが到着するまで、患者の生命の維持に重要な器官に対し或るレベルの血流を確保する。長時間に亘ってCPRを行うことは困難である。或る研究は、数分間に亘って、救助者が適切な血液を脳に供給するのに充分な強さに満たない胸部圧迫を行う傾向があることを示している。CPRプロンプト装置は、胸部圧迫および換気ごとにプロンプトを出すことによって救助者を支援することが可能である。
【0010】
ハートストリーム社(Heartstream,Inc.)出願の特許文献1には、PCRおよびACLS(二次救命処置)のプロンプトを有する体外式除細動器が開示されている。
【0011】
特許文献2には、自動車事故のような緊急事態を検出するのに使用されるモーション・センサを備えた無線電話機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第99/24114号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0037730号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
救助者が患者を蘇生させるのを支援する蘇生装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様では、本発明は、救助者が患者を蘇生させるのを支援する蘇生装置を特徴と
する。この装置は、蘇生が必要ではない期間中に非蘇生機能を行うように構成されたハンドヘルド型演算/通信装置を含む。さらに、このハンドヘルド型装置は、蘇生を支援するために救助者によって使用される期間中、CPRプロンプトを提供するように構成されている。このハンドヘルド型装置は、心臓蘇生の実行に関するパラメータを計測するように構成されたセンサを備える。
【0015】
本発明のこの態様の好適な実施形態には、次のうちの1つ以上が含まれてよい。この装置は、携帯電話機として機能する回路を備える。この装置は、携帯情報端末(PDA)として機能する回路を備える。この装置は、CPRプロンプト機能を作動させるための専用ボタンを含む。センサはモーション・センサを含み、この装置によって胸部圧迫が予測される胸部動作を検出するように構成されている。携帯電話機は、救助者の手と患者の胸部との間に配置され、胸部圧迫のために加えられる力が携帯電話機を通じて加えられるように構成されている。この装置は、空間位置を出力する回路要素を含む。空間位置を出力する回路要素はGPS回路を含む。センサは、ECG計測、循環計測、換気計測のうちの1つ以上を行うセンサを含む。循環計測用のセンサは、パルスオキシメトリ、超音波、インピーダンス、心臓または血流音のうちの1つ以上を含む。換気計測用のセンサは、経胸腔インピーダンス、気道内圧、または呼吸音の計測のうちの1つ以上を行うセンサを含む。センサは、ECG、オキシメトリ、または経胸腔インピーダンス計測のうちの1つ以上を行う要素を含む。ハンドヘルド型演算/通信装置は救急医療班と通信する機能を有する。ハンドヘルド型装置は一般の救助者が救助中に救急医療班と話すことを可能にするスピーカホン機能を有する。この装置は、治療実行装置と通信するように構成されている。治療実行装置は除細動器を含む。ハンドヘルド型演算/通信装置は、この装置を通じて胸部に力が加えられることを可能にするように、その一部を囲む構造要素を備える。
【0016】
第2の態様では、本発明は、救助者が患者を蘇生させるのを支援する蘇生装置を特徴とする。この装置は、蘇生中に患者の胸部に付着されるように構成されたCPR支援要素を含む。このCPR支援要素は、蘇生が必要ではない期間中に非蘇生機能を行うように構成されたハンドヘルド型演算/通信装置と通信するように構成されている。
【0017】
本発明のこの態様の好適な実施形態には、次のうちの1つ以上が含まれてよい。CPR支援要素は患者に関するデータをハンドヘルド型演算/通信装置と通信し、ハンドヘルド型演算/通信装置は少なくとも部分的にはCPR支援要素から受信したデータに基づきCPRプロンプトを提供するように構成されている。CPR支援要素はモーション・センサを含み、胸部圧迫が予測される胸部動作を検出するために患者の胸部に配置されるように構成されている。CPR支援要素は、ECG計測、循環計測、換気計測のうちの1つ以上を行う1つ以上のセンサを含む。CPR支援要素はハンドヘルド型演算/通信装置と無線で通信する回路を備える。CPR支援要素はハンドヘルド型演算/通信装置を自動的に作動させるように構成されている。CPR支援要素は薄いカード状の装置である。CPR支援要素は、剥離層を剥がすことによって作動するように構成されている。CPR支援要素から剥離層を剥がすことによって粘着剤が露出され、露出された粘着剤はこの要素を患者の胸部に粘着すべく用いられるように構成されている。剥離層を剥がす際に電極が露出され、この電極およびCPR支援要素内の回路は、ECGを検出するか、または、患者の他の計測を行うべく用いられるように構成されている。CPR支援要素は患者の胸部に配置され、そこに救助者によって胸部圧迫力が加えられるように構成されている。CPR支援要素が通信するハンドヘルド型演算/通信装置は携帯電話機である。CPR支援要素は患者によって着用可能であるように構成されている。CPR支援要素はCPR中に粘着剤によって胸骨へ粘着され、そこに胸部圧迫力が加えられる。
【0018】
第3の態様では、本発明は、救助者が患者を蘇生させるのを支援する、または、患者を蘇生させるために救助者を訓練する蘇生装置を特徴とする。この装置は、蘇生中に患者の
胸部に配置され、使用者が押下して患者の胸部に圧迫力を加えるように構成されているハンドヘルド型装置と、この装置内に支持され、患者の胸部の加速度を計測する加速度計と、計測された加速度から胸部変位を予測し、使用者に音声プロンプトを出して使用者が胸部圧迫を行うのを支援する、この装置内の処理回路と、使用者にプロンプトを出すスピーカと、からなる。
【0019】
本発明のこの態様の好適な実施形態には、次のうちの1つ以上が含まれてよい。プロンプトは使用者に、使用者が良い圧迫を行っていること、または、使用者がより強く押すべきことを通知する。さらに、この装置は、圧迫を行うタイミングを使用者に提供するように繰り返し音を提供する。さらに、この装置は、圧迫を行う際に適切な圧迫深さが達成されたか否かについて使用者にフィードバックを与える1つ以上の視覚的表示を提供する。さらに、この装置は患者のECGを計測するECG電極を含み、処理回路は患者を治療するために除細動器が使用されるべきか否かを判断するように構成されている。この装置は外部装置と(例えば、携帯電話機または他のハンドヘルド型演算/通信装置と)通信するように構成されている。
【0020】
本発明の幾つかの実施形態は、蘇生のプロンプトを出すことの可能なユニットのより広い流通および可用性を可能にすることができる。広く利用可能なユニットを使用した除細動に対し患者は落ち着き、心構えができるので、蘇生ユニットのより広い流通は、より良好な救助を意味し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】患者の胸部の上に配置された除細動電極パッドの図。
【図2】電子回路を収容し、音声および視覚でのプロンプトを提供する蘇生制御ボックスの前面表示パネルの図。
【図3】3−3線に沿って得られた図1の除細動電極パッドの断面図。
【図4】4−4線に沿って得られた図1の除細動パッドの断面図。
【図5】図1の除細動電極パッドと図2の蘇生制御ボックスとの間の回路相互接続を示す回路図。
【図6A】蘇生システムの初期のルーチンを示すフローチャート。
【図6B】蘇生システムの初期のルーチンを示すフローチャート。
【図7A】蘇生システムの「循環支援」ルーチンを示すフローチャート。
【図7B】蘇生システムの「循環支援」ルーチンを示すフローチャート。
【図7C】蘇生システムの「循環支援」ルーチンを示すフローチャート。
【図8】蘇生システムの「換気支援」ルーチンを示すフローチャート。
【図9A】蘇生システムの「気道支援」ルーチンを示すフローチャート。
【図9B】蘇生システムの「気道支援」ルーチンを示すフローチャート。
【図10】蘇生システムの電子回路のブロック図。
【図11】除細動電極アセンブリの図。
【図12A】第1および第2のユニットの可能な実施形態の線図。
【図12B】第1および第2のユニットの可能な実施形態の線図。
【図12C】第1および第2のユニットの可能な実施形態の線図。
【図13A】ハンドルが救助者に提供される電極パッド・アセンブリの代替の実施形態の図。
【図13B】ハンドルが救助者に提供される電極パッド・アセンブリの代替の実施形態の図。
【図14】携帯電話機を備えた実施の電子回路のブロック図。
【図15A】図14の実施形態の外側の斜視図。
【図15B】図14の実施形態の外側の斜視図。
【図16】さらなる実施形態の斜視図。
【図17】さらなる実施形態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照すると、高電圧心尖除細動電極12および高電圧胸骨除細動電極14を備える除細動電極パッド10は患者の胸部16の上に配置されており、使用者が押してCPRを行い得る領域18を備える。パッド10上の説明は、患者の鎖骨および胸部中心線に対するパッドの適切な配置と、救助者の手の付け根の適切な配置とを示している。
【0023】
電極アセンブリ上には、薄型ボタン・パネル20が設けられている。ボタン・パネル20は、ボタンA(気道支援)、B(換気支援)、C(循環支援)および「一時停止」を含むボタン22を有し、さらに、どのボタンが最後に押されたかを示す、隣接した発光ダイオード(LED)24を備えてもよい。ボタン・パネル20は、ケーブル23によって、図2に示されるリモート蘇生制御ボックス26に接続されている。電極が患者の上に置かれているときに良好なスイッチの接続を確実にするために、ボタン・パネル20はボタンA、B、C、および「一時停止」の下に剛性支持部を提供し、スイッチが剛性支持部に対して押されることを可能とする。ボタン・パネル20は、下に詳述されるように、除細動電極パッド10のポリエステル下地上にスクリーン印刷された銀/塩化銀製の電気回路コンポーネントと電気的な接触を行うコンポーネントを備える。
【0024】
除細動電極パッド10には、患者の血管床を通じて輝く光に基づく脈拍検出システム(例えば、パルスオキシメトリシステム52)が組み込まれている。パルスオキシメトリシステム52は、患者の胸部16の表面と接触するように除細動電極パッド10に組み込まれた赤色発光ダイオード、近赤外線発光ダイオード、および光検出器ダイオードを備える(図5を参照)。赤色および近赤外線発光ダイオードは、2つの異なる波長で発光し、その光が患者の組織を通じて拡散的に散乱し、光検出器ダイオードによって検出される。既知の非侵襲性光学モニタリング技術によって、光検出器ダイオードから得られる情報を用いて、患者の血液に酸素が含まれているか否かを判断することが可能である。
【0025】
別の実施形態では、脈拍検出システムは、パルスオキシメトリシステムではなく、患者の心臓の音を聞くための心音図システムである。心音図システムは、電極パッド内に組み込まれたマイクロホンおよびアンプを備える。心音がマイクロホンの雑音と混同されることがあるので、パルスオキシメトリ測定システムよりも心音図システムにおける方が、制御ボックス内のマイクロプロセッサによって実行されることの必要な信号処理は、より困難となる。しかしながら、マイクロホンの雑音に対してECG信号が存在するか否かをマイクロプロセッサが判断することを可能とし得るプログラムが利用可能である。
【0026】
パルスオキシメトリは、充分に開発され、確立された技術であるが、光が患者の血管床を照らすことができるように、光源と患者の皮膚との間の良好な接触を必要とする。多くの患者はたくさんの胸毛を有しており、それによって良好な接触が阻害されることがある。救助者が患者の性質によって適切な電極パッドを選択することができるように、所与の場所において異なる種類の電極パッド(1つはパルスオキシメトリシステムを有し、1つは心音図システムを有する)が利用可能となることが望ましい場合がある。
【0027】
別の実施形態においては、薄型ボタン・パネルを提供する代わりに、除細動電極の縁に添付されるボタンハウジングを設けることができる。このハウジングは、単一成形されたプラスチック要素から形成されたクラムシェルの形態をなすことが可能であり、その周囲でプラスチックが曲がっているクラムシェルの縁にヒンジを有する。クラムシェルの両半部は、電極アセンブリの周囲で互いにスナップ留めされることができる。
【0028】
蘇生制御ボックス(図2)は、内部電荷蓄積用コンデンサと、マイクロプロセッサを含
む付随回路とを備え、さらに、オフ/オン・ダイヤル28と、救助者が患者と物理的接触していないことを確実にするために、除細動ショックを加える直前に救助者が押す「準備完了」ボタン30とを備える。マイクロプロセッサは、ディスプレイおよびキーボードと良好に接続可能な日立SH−3などのRISCプロセッサ、または、より一般的には、DSP式(デジタル信号処理)動作を処理することの可能なプロセッサであることが可能である。
【0029】
蘇生制御ボックスは、患者を蘇生させるための、また、患者の上に除細動電極パッドを配置する基礎的な指示を与えるための基本的な工程A、B、およびCをリストにした、印刷された指示32をその前面に有する。スピーカ32は、下に詳述されるように、様々な工程を行うよう音声で使用者に促す。
【0030】
例えば、蘇生制御ボックスは、音声指示によって、さらには、蘇生制御ボックス上のディスプレイ34を通じて、患者の気道を確認してマウス・ツー・マウス人口呼吸法を行うように、使用者に指示を与える。また、患者の気道が依然として塞がれている場合には、ボタン・パネル(図1)上のA(気道支援)ボタンを押すように使用者に指示を与え、その際、蘇生制御ボックスは患者の気道を確保するための詳細なプロンプトを出す。患者の気道は確保されたが、初期のマウス・ツー・マウス人口呼吸法の後、患者は脈があるが呼吸をしていない場合、蘇生制御ボックスは使用者にB(換気支援)ボタンを押すように指示を与え、その際、蘇生制御ボックスは詳細なマウス・ツー・マウス人口呼吸法のプロンプトを出す。詳述なマウス・ツー・マウス人工呼吸法手順中、救助者が患者の脈を確認し、患者に脈がないことを発見した場合、蘇生制御ボックスはC(循環支援)ボタンを押すように使用者に指示を与える。
【0031】
循環手順中、蘇生制御ボックスは除細動電極から電気信号を受信し、除細動またはCPRが行われるべきか否かを判断する。蘇生制御ボックスは、除細動が望ましいと判断した場合、蘇生制御ボックス上の「準備完了」ボタンを押して患者から離れるように使用者に指示する。短い休止の後で、蘇生制御ボックスは、電極間に除細動パルスを与える。電極から受信した電気信号に基づき、CPRが望ましいと蘇生制御ボックスが判断した時点で、蘇生制御ボックスは、CPRを行うように使用者に指示する。
【0032】
したがって、システムのための重要な制御は、蘇生制御ボックスではなく、患者に貼り付けられた電極上にある。これは、救助者が制御ボックスではなく患者に集中し続けることができるため、重要である。蘇生制御ボックスは、電極および電極上の制御から、直接、電極の情報を入手する。
【0033】
蘇生制御ボックスは、CPR圧迫間の休止中に患者の体からの電気信号を検出することができる。また、下に記述されるように、加速度計または力センサ要素のような圧迫検出要素は、使用者がCPRを行うために押す除細動電極パッドの領域に設けられている。圧迫検出または力検出要素の目的は、蘇生制御ボックスが、付加的な圧迫または力を与えるように使用者にプロンプトを出すか、または、使用者が不適切な時点でCPRを行っている場合にCPRを止めるように使用者にプロンプトを出すことを可能にすることである。
【0034】
図4を参照すると、1つの実施形態では、除細動電極パッド10の各電極12,14(電極12のみが示されている)は、銀/塩化銀懸濁液を含有するポリマー・ベースのインクを含んでおり、このインクはポリエステルまたはプラスチック・ベース36上にスクリーン印刷されている。インクは除細動電流を伝えるために使用される。スクリーン印刷処理は、まず、ポリエステル・ベース36にレジスト層を塗布することを伴う。このレジスト層は、基本的には、ナイロンまたは同種のものからなる緩いメッシュであり、メッシュの幾つかの位置で穴が埋められたものである。その後、銀/塩化銀インクは、絞ることな
どによってレジスト層を通じてペーストとして塗布される。インクは、スクリーンを通じて絞られ、固層となる。その後、インクは硬化されてもよく、乾燥されてもよい。銀/塩化銀インクは、良好な導電性および良好なモニタリング機能を提供する。
【0035】
したがって、インクは、ポリエステル・ベース全体を覆う固体シートに対するパターンとして塗布され得る。例えば、米国特許第5,330,526号には、導体部分が導体部分の周囲を増大させ、且つ、患者の火傷を低減する、ホタテガイの縁のように波を打った、または、ヒナギクの形状を有した電極が記述している。導電性の粘着ゲル38は、各電極の露出した表面を覆っている。
【0036】
加えて、電気回路コンポーネントは、膜で覆われた、積層パネル制御機器の平坦な回路コンポーネントと同じようにして、ベース上でスクリーン印刷される。
図3を参照すると、PVCまたはポリカーボネートのような硬質プラスチックの硬質片40は、基板36の下に積層され、ボタンA、B、C、および「一時停止」を支持している。硬質プラスチック片40は、基板36上に接着されている。ボタンA、B、C、および「一時停止」は、上側の導電性インク・トレース42と下側の導電性インク・トレース44,46,48,および50との間を接触させる小さい金属製のドーム形スナップ・スイッチからなる。ボタンA、B、C、および「一時停止」は、電極アセンブリ自体の上、または、直ちに隣接して物理的に位置する、使用者によって作動されることができる制御機器として作用する。ボタンA、B、C、および「一時停止」のそれぞれは、隣接した発光ダイオード(LED)に関連付けられてもよい。例えば、LEDは、基板36上の銀/塩化銀トレース上に、導電性のエポキシ樹脂を使用して接着されてよい。エンボス加工されたポリエステル・ラミネート層54は、ボタンA、B、C、および「一時停止」の導電性のインク・トレース42を覆い、発泡層56は、硬質プラスチック片40の下に積層される。
【0037】
図4を再び参照すると、除細動電極パッド10は、救助者が胸部圧迫を行う患者の体の位置の直上に配置される拡張片を備える。この拡張片は、基板36と、基板36の下に積層され、胸部圧迫領域を覆う半硬質プラスチック支持部材58とを備えている。半硬質支持部材58は、ボタンA、B、C、および「一時停止」の位置(図3に示されている)に設けられた硬質プラスチック片409よりも若干硬さが劣る。
【0038】
力センサ要素を有する実施形態では、ポリエステル・ラミネート60と、炭素めっきした材料62,64の2つの層を有する力検出抵抗器とは、ポリエステル基板36と半硬質支持部材58との間に積層されている。力検出抵抗器の適切な構造は、インターリンク・エレクトロニクス社(Interlink Electronics)によるFSR総合ガイド&評価パーツ・カタログおよび推奨される電気的なインターフェース(FSR Integration Guide & Evaluation Parts Catalog with Suggested Electrical Interfaces)に示されている。2つの炭素めっき材料層間の電気的な接触は、圧力の増加と共に増加し、力検出抵抗材料層は、抵抗と力との間の一般的な線形の関係を提供することができる。導電性のインク・トレース66,68は、力検出抵抗器の2つの層に電気的な接続を提供する。
【0039】
胸部圧迫中、救助者の手は拡張片上に配置され、拡張片の力検出抵抗器は、力と胸部圧迫のタイミングとを検出するために使用される。力検出抵抗器は、救助者が充分な力を加えていない場合に蘇生制御ボックスが救助者にフィードバックを与えることができるように、蘇生制御ボックスに情報を供給する。また、蘇生制御ボックスは、CPRが行われる速さに関して指導を与える。一定の状況では、蘇生制御ボックスは、除細動ショックを加える直前など救助者の手が患者に触れているべきでない不適切な時点で行われているため
CPRを止めるべきであることを、救助者に示す。また、その場合、蘇生制御ボックスは、患者が除細動ショックを受けるため救助者は患者から離れているべきであることを示す。
【0040】
上述のように、CPR中、救助者は電極近傍の拡張片を通じて患者の胸部を押す。蘇生制御ボックスが胸部圧迫中に分析を行うとすると、検出される電気的なリズムに胸部圧迫が影響を与える可能性がある。これに代えて、圧迫のセット間の休止中(例えば、5回毎の胸部圧迫後の休止)に、蘇生制御ボックスが心電図(ECG)分析を行うことが可能である。蘇生制御ボックスは、例えば、CPRを行われている患者が、徐脈などショックが有効でないリズムになっていることを発見することがある。その場合、患者を生存させておくためにはCPRが必要であるが、その後、CPR中にリズムが心室細動に変わったことを蘇生制御ボックスが発見する場合がある。その場合、蘇生制御ボックスは、より多くの分析を行い、場合によっては1回以上のショックを患者に与えることを可能にするように、救助者にCPRを行うことを止めるように指示する。このように、救助者は、複雑な治療の組合せを可能にする洗練された手法に統合される。
【0041】
別の実施形態では、力検出要素の代わりに加速度計など圧迫検出要素が使用されてもよい。救助者が胸部圧迫を行う位置に、ソリッド・ステートADXL202加速度計などの加速度計が配置される。この実施形態では、マイクロプロセッサは、1ミリ秒間隔などの固定時間間隔で加速度計から加速度計測値を取得し、マイクロプロセッサは、胸部圧迫の計測値を提供するために加速度計測値を積算する。加速度計の使用は、どれくらい強く救助者が押しているかについて計測するよりも、どれくらい深く救助者が胸部を圧迫しているかについて計測する方が重要であるという発見に基づいている。実際には、すべての患者の胸部は異なるコンプライアンスを有するであろうから、患者の胸部のコンプライアンスに拘わらず標準的なサイズの成人で約3.81cm〜約5.08cm(1インチ半から2インチ)程度、胸部が圧迫されることが重要である。
【0042】
図5は、ケーブルを通じた図1の除細動電極パッドと図2の蘇生制御ボックスとの間の回路相互接続を示す回路図である。胸骨電極14は蘇生制御ボックスにてHV+に接続され、心尖電極12はHV−に接続されている。接地GNDは、ボタンA、B、C、および「一時停止」の上側の導電性インク・トレースと、力検出抵抗器の層のうちの1つに接続されている。力検出抵抗器の他の層は、CPR_FORCEに接続され、ボタンA、B、C、および「一時停止」に関連付けられた下側の導電性インク・トレースは、抵抗器R1,R2,R3,およびR4を通じてBUTTON_DETECTに接続されている。力検出抵抗器の使用に代えて、圧迫検出加速度計76を使用することが可能であり、その場合、CPR_FORCEが、加速度計76に接続されたCPR_ACCELと置き換えられる。パルスオキシメトリシステムの赤色発光ダイオード70、近赤外線発光ダイオード72、および光検出器ダイオード74は、それぞれRLED、ILED、およびISENSEと、接地AGNDとに接続されている。パルスオキシメトリシステムの使用に代えて、心音図システムを使用することが可能であり、その場合、RLED、ILED、およびISENSEは、マイクロホン78およびアンプ80に接続されたSENSEと置き換えられる。
【0043】
図6〜9には、工程A、B、およびC(気道、換気、および循環)に基づく蘇生システムのルーチンを示す。工程Cは胸部圧迫や除細動を含むので、蘇生の態様のすべては1つの手順に一体に結び付けられる(実際には、除細動が工程Cとは異なる工程Dと考えられる場合、工程の順序はA、B、D、Cとなる)。
【0044】
患者のところに到着した際に救助者が最初にしなければならないことは、患者が意識を喪失しているか否か、および、呼吸をしているか否かを判断することである。救助者は患
者の気道を開き、患者が呼吸をしていない場合には患者の換気を管理し、脈があるか否かを判断すべく確認する。脈がない場合には、標準的なCPRにおけるように胸部圧迫を行うのではなく、救助者は蘇生制御ボックスが患者の電気的なリズムを分析することを可能とする。次いで、ショックが有効なリズムであると蘇生制御ボックスが判断した場合、蘇生制御ボックスは患者に1回以上のショックを加えてから、救助者が胸部圧迫を行う。したがって、二次救命時間が到着し、ペーシング、さらなる除細動、および薬物治療を含む高度な手法を行うまで、患者を生存させておくことができる第1対応システムが提供される。
【0045】
蘇生制御ボックスが患者に1回以上の除細動ショックを加えるべきであると判断した場合、ショックが患者に加えられるときに救助者が患者の近傍には居ないことが重要である。各ショックの印加に先立って、蘇生制御ボックスは、全員が患者から離れているときに「準備完了」ボタンを押してください、と救助者に指示を与える。「準備完了」ボタンを押すことによって、救助者の手が患者から離れていることが確認される。
【0046】
蘇生制御ボックスは、ショックが有効なリズムを検出したとき、適切な継続時間およびエネルギのショックを加える(200ジュールから300ジュール、最高の設定で360ジュールまでエネルギを増加させる一連のショックなど。蘇生制御ボックスは各ショックの後で分析を行い、別のショックが必要であるか否かを判断する)。除細動治療が成功した場合には、患者のリズムは、典型的には、心室細動、心室頻拍、または心室粗動から、徐脈、心室固有リズム、または収縮不全に変えられる(それらのすべてには、CPRが必要である)。正常なリズムに変わることは稀である。蘇生制御ボックスは、患者に除細動ショックを加えると、自動的に患者の状態を検出し、患者の状態に依存して、対応者にCPRを行うようにプロンプトを出すか、または、対応者にCPRを行うようにプロンプトを出さない。
【0047】
除細動器は、愛する人の生命を救わなければならないという責任を救助者に感じさせるので、医療専門家でない救助者を幾分怖がらせることがある。除細動器がこの責任の感覚を低減することは重要である。詳細には、救助者が「準備完了」ボタンを押したとき、直ちに患者の体を劇的に跳ね上がらせるショックを与えるのではなく、蘇生制御ボックスは救助者に感謝を示し、患者から離れたまま約2秒間待機するように救助者に指示する(この時間について、蘇生制御ボックスは実質的な安全点検が行われていなくても、内部安全点検中であると救助者に説明してもよい)。この処理には、ショックを加えるべきか否かの決断を下す責任を蘇生制御ボックスに渡す会話と同様の効果がある。このように、このシステムでは、救助者が各ショックの前に「準備完了」ボタンを押す必要があるものの、各ショックの直前の時間遅延によって装置の操作が救助者の手から離れたという印象を救助者に与えるため、より完全に自動の体外式除細動器として動作するように見えるので、半自動体外式除細動器の救助者安全機能は維持される。さらに、CPRプロンプトを除細動と組み合わせて使用することによって、救助者が単に蘇生制御ボックスからの指示に従っているという感覚が付加される。
【0048】
図6〜9を参照すると、救助者が蘇生制御ボックスをオンにしたとき(工程101)、蘇生制御ボックスは最初に、救助者が一時停止ボタンを押すことによってプロンプトを出すのを一時的に停止できることを救助者に通知し(工程102)、次に休止後に、患者の反応を確認し、患者が無反応である場合には救急医療班(EMS)を呼ぶように救助者に指示する(工程103,104)。その後、蘇生制御ボックスは、患者の気道を確認して患者が呼吸をしているか否かを判断するように救助者に指示する(工程105〜107)。
【0049】
次いで、休止後、蘇生制御ボックスは、患者が呼吸をしている場合には外傷が疑われな
ければ患者を横臥させることと、救助者が一時停止ボタンを押すこととの指示を救助者に与える(工程108〜109)。その後、蘇生制御ボックスは、患者が呼吸をしていない場合にはマウス・ツー・マウス人口呼吸法を行うように救助者に指示する(工程110〜114)。その後、蘇生制御ボックスは、患者の気道が塞がっている場合には気道支援ボタンAを押すように救助者に指示し、その結果、蘇生制御ボックスは閉塞された気道を確保するためのプロンプトを出すことが可能である(図6Bの工程115および図9A〜9Bの工程147〜158)。
【0050】
次いで、休止後(工程116a)、蘇生制御ボックスがパルスオキシメトリまたは心音図機能を備えていない場合(工程116b)、蘇生制御ボックスは患者の脈を確認するように救助者に指示する(工程117)。別の休止後、蘇生制御ボックスは、患者の脈はOKであるが患者が呼吸をしていない場合、換気支援ボタンBを押すように救助者に指示し、その結果、蘇生制御ボックスは患者の換気を支援するためのプロンプトを出すことが可能である(図7Aの工程118,119および図8の工程140〜146)。様々なボタンに隣接した発光ダイオードは、どのボタンが最後に押されたかを示す(一度に1つの光源だけがオンのままになる)。次に、蘇生制御ボックスは、救急医療体制に連絡を取るように(工程120)、また、患者のシャツまたはブラウスを開いて粘着パッドを取り付けるように(工程122f〜122h)、救助者にプロンプトを出す。
【0051】
蘇生制御ボックスが、パルスオキシメトリまたは心音図機能を備えている場合(工程116b)、蘇生制御ボックスは、患者のシャツまたはブラウスを開いて粘着パッドを取り付けるように救助者にプロンプトを出す(工程121,122a)。パルスオキシメトリまたは心音図システムが有効な脈拍計測値を与えない場合(工程122b)、フローチャートは工程117に進む。パルスオキシメトリまたは心音図システムが有効な脈拍計測値を与え、脈を検出した場合(工程122b,122c)、蘇生制御ボックスは換気支援ルーチンを開始する(図7Bの工程122dおよび図8の工程140)。パルスオキシメトリまたは心音図システムが脈を検出しない場合、蘇生制御は救急医療体制に連絡を取るように救助者にプロンプトを出し(工程122e)、患者のインピーダンスを計測してショックを加える許容範囲内にあるか否かを判断し(工程123)、ショックが有効な患者のリズムであるか否かを判断する(工程124)。ショックが有効なリズムである場合、蘇生制御ボックスは患者に一連のショックを加える。各ショックでは、最初に蘇生制御ボックス上の「準備完了」ボタンを押すことが救助者に要求される(工程124〜131)。一連ショックにおける最後のショックを加えた後、または、ショックが有効なリズムではない場合、蘇生制御ボックスは救助者にCPRプロンプトを出す(工程132〜139)。その後、フローチャートは工程117に戻る。
【0052】
図8には、患者の換気を支援するように救助者にプロンプトを出す工程140〜146を示す。12回の換気の完了後(工程144)、パルスオキシメトリまたは心音図システムはパルスの検出を試みる(工程145a)。あるいは、システムがパルスオキシメトリまたは心音図システムを備えていない場合、蘇生制御ボックスは、患者の脈を確認するように救助者にプロンプトを出す。脈がない場合、蘇生制御ボックスは、救助者をフローチャートの循環部分に戻す循環支援ボタンCを押すように、救助者にプロンプトを出す(工程145b)。あるいは、脈が検出された場合、図8のフローチャートは工程142に戻る。
【0053】
提供される除細動およびCPR蘇生を組み合わせたアセンブリは、除細動専用のものではないので、従来のAEDほど恐れられることはない。さらに、この蘇生アセンブリは、胸部圧迫の適切な速さ、圧迫を行う適切な位置、患者の頭を傾ける適切な方法を含め、マウス・ツー・マウス人口呼吸法およびCPRなど除細動に付随する必要な技術に関する共通の技術維持の問題に適応するので、より恐れられるものではない。加えて、蘇生アセン
ブリの使用中に除細動ショックを加える必要がない場合もあることを救助者が知っているので、救助者は、より快適に、マウス・ツー・マウス人口呼吸法およびCPR用の蘇生アセンブリを使用し得る。従来のCPRプロンプト装置とは異なり、救助者が患者の上に電極アセンブリを配置する必要があるが、救助者は、蘇生アセンブリが患者の状態を検出し、蘇生アセンブリが実際にショックを加える可能性は低いと信じてこれを行う。この蘇生過程中、蘇生制御ボックスが、除細動ショックを加えられるように「準備完了」ボタンを押すことを救助者に指示した場合、恐らく救助者は、ショックが患者に加えられることを可能にすることを快適に感じる。基本的に、蘇生アセンブリは救助者に単に何を行うかを伝える。その時点で、救助者が既にアセンブリを使用している場合、救助者は単に救助者がするように命じられたことを行う。本質的に、救助者は蘇生アセンブリを単に付加的な機能が組み込まれた新型のCPRプロンプト装置と考える。救助者がCPRプロンプト装置を恐れる可能性はAEDよりも低いので、必要な場合、救助者は蘇生アセンブリを使用する。
【0054】
図10、11、および12A〜12Cには、代替の実施形態を示す。この実施形態では、電極パッド・アセンブリ10は、CPRプロンプトおよび蘇生制御用の電子機器を含む第1のユニット214に、ケーブル212を通じて接続されている。別のケーブル216は、第1のユニットを除細動およびペーシング治療用の電子機器を含む別のユニット218に接続している。第2のユニットから電極への直接接続を行うために第3のケーブル220を提供することができる(図12B)。第1のユニット214は第2のユニット218を挿入されたモジュールとして受け入れるように構成されることができ(図12C)、その場合、ユニット間の電気的な接続はケーブル216を用いることなく内部的に行われる。第1のユニット214の主な機能は、CPRプロンプトなどのCPR機能のための処理および制御を提供することである。第2のユニット218の主な機能は、電気治療機能の処理および制御を提供することである。第1のユニットは、CPRプロセッサ170と、バッテリ178と、除細動パッド12,14から得られるECG信号を増幅およびフィルタリングするECG回路177と、救助者の声や周囲の音を記録するマイクロホン78と、加速度計76と、リアルタイム時計187と、救助者にプロンプトを出すスピーカ182とを備える。第2のユニットは、治療プロセッサ171と、バッテリ179と、ボタンおよび制御機器180と、メモリ191とを備える。
【0055】
第1のユニットは、別個の箱体である必要はなく、電極パッド・アセンブリに組み込むこともできる。電子機器は、電極パッド・アセンブリの硬質基板40上に設けられることができる(図1)。
【0056】
第1(CPR)および第2(治療)のユニット用に別個のバッテリ178,179および制御機器180,181が設けられることによって、第1のユニット内の電子機器が第2のユニットを必要とせずにオペレータにCPRプロンプトを出すことが可能になる。第1および第2のユニットを接続するケーブル216は、着脱可能であってもよい。第1のユニット内には、音声録音、ECGデータ、胸部圧迫データ、またはリアルタイム時計回路によって開始される電子機器の毎日の自己チェック中に生じる装置故障のような電子装置状態などの情報を格納するためにメモリ189が設けられる。
【0057】
除細動電極パッド・アセンブリ10は、長時間(例えば、最大30日)患者の皮膚に保持可能な材料からなる除細動電極を組み込むことが可能である。
図13Aおよび13Bに示すように、パッド・アセンブリ10は、救助者に面したその上面の機構を組み込むことも可能である。この機構は、CPR実行中、救助者にハンドル195を提供する。このハンドルは、繊維のループ(図13B)またはより硬質なポリマー製部材(図13A)の形態を取ることができる。繊維は、パッド10に縫い付けられるか、または接着剤もしくは超音波接合によって接着されることが可能である(図13B)
。また、ポリマー製ハンドルも接着剤または超音波接合によってパッドに接合され得る(図13A)。研究では、胸部圧迫の減圧段階中、胸部に対する圧力を維持することによって、胸部圧迫の有効性が著しく減少することが示されている。ハンドル195は、減圧段階中、救助者が少なくとも僅かに引き上げるように動機づける。電極パッドの粘着ゲルまたは他の粘着剤は、圧迫中に救助者の手が配置される領域の下まで延びることができるため、皮膚に対するパッドの粘着を提供するが、一方、救助者は減圧段階中にハンドルを引っ張る。減圧段階中に胸部の上で引き上げることで、負の胸腔内圧を高め、静脈還流を増加させることによって、胸部圧迫中の血流を増加させることが示されている。
【0058】
別の実施形態では、第1のユニットは、長時間患者に支持されるように構成されることが可能である。このユニットは、上に示唆されるような電極パッド・アセンブリに組み込まれることができるか、または、患者によって着用されるように構成された別個のユニットであることができる。そのような実施形態では、第1のユニットの電子機器は、ECG177および生理学的モニタリング176回路を介して患者の状態の長期的な監視を可能にするように設計されている。ECGおよび他の生理学的パラメータの分析に基づいて、CPRプロセッサ170によって患者に危険であると考えられる生理学的な状態が検出された場合には、アラームが、スピーカ182を介して患者に鳴らされる。
【0059】
活動センサおよび関連する回路は、患者が動いているか否かについてCPRプロセッサに通知することができる。例えば、加速度計76は、活動センサとして作用し、患者が動いているか否かを検出することができる。患者の動きは、例えば、次のようなものを含む様々な異なるアルゴリズムを使用して検出されることが可能である:加速度信号を1秒間隔で積算し、速度の予測を提供する。同じ1秒間隔で速度を積算し、変位の予測を提供する。1秒ごとに二乗平均速度を算出する。二乗平均速度が0.2cm/sを超えるか、または、ピーク変位が0.5cmを超える場合、患者は動いていると判断する。
【0060】
心臓緊急状態が発生しているとアルゴリズムが判断した場合、第1のユニットは、911など、救急医療対応体制に直接メッセージを送信することができる。これは、様々な公知の通信技術(例えば、ブルートゥース(登録商標)、携帯電話機、UWB(ウルトラワイドバンド)を使用して行うことができる。心臓緊急時に患者が依然として動いていると活動センサが判断した場合、ユニットは「911に直ちに電話してください!」と示すプロンプトをさらに出すこともできる。
【0061】
第1のユニットは、例えば、加速度計の出力に基づいて、患者の向きを判断することができる。第1のユニットは、患者が倒れたか否かを検出し、非常通報システムへのメッセージを開始することができる。さらに、患者が、CPRを行うための適切な向きである仰向けに横たわっているか否かを判断することができる。したがって、装置が患者の不適切な向きを検出した場合、CPRを開始する前に患者の背中を下にするように患者を回転させるべく救助者に指示する特定のプロンプトが提供されることができる。
【0062】
他の実施形態では、心臓発作の危険を予測する信号分析ソフトウェアを備えることが可能である。その危険の確率値が閾値を超えた場合、救急医療体制と連絡を取るようにスピーカ182を介して患者に音声プロンプトが提供されることが可能である。加速度計の動き検出機能を使用して患者の活動レベル(PAL)を計測および追跡することによって、また、活動レベル演算(例えば、ST上昇(STE))をECG177の計測と組み合わせることによって、第1のユニットは差し迫った心臓発作または心停止の危険性についての予測器を提供することができる。ECGに対し300μVなど、閾値を超えるST上昇は、差し迫った心臓発作の指標を提供する。好ましい実施形態では、身体活動が増加する状態のST上昇は、潜在的な心停止のさらなる危険性の表示である。危険性の確率の演算は、24時間以内の心停止の予測器としてのSTEおよびPALのような変数のロジステ
ィック回帰を最初に行うことによって達成されることが可能である。演算は、次のような線形回帰式の形態を取ることがある。
0.24STE+0.12PAL=RISK
これに代えて、次のような乗法項を可能にするために非線形回帰が行われてもよい。
0.24STE+0.12PAL+0.54(STE*PAL)=RISK
乗法項は、PALの存在時のSTEの重要性を高める。
【0063】
STE、PAL、およびRISKのようなパラメータは、メモリに付加的に蓄積され、時間を通じて複数の計測および演算が行われることが可能である。その後、一連の計測値は、単一の時点で得られるRISK演算を増大させることができる患者の生理学的状態における傾向に対して分析されることが可能である。例えば、STEが一連の計測値に亘って着実に増加していると認められる場合、300μVの固定閾値よりも早く音声プロンプトのトリガが行われることがある。
【0064】
さらに、ECGは、QRS群のうちの隣接するR波間の間隔を判断するために分析され、この間隔を使用して、隣接するR−R間隔の間の移動差として心拍数の変動性を演算することが可能である。R−R間隔が異所性心拍または心室期外収縮(VPC)に従って変化することは知られている。健康な心臓ではR−R間隔はVPCの直後に減少し、徐々に定常状態に戻るが、心臓発作の危険性の増加した心臓では、減少したレベルの変動性が示される。この効果は、時折、心拍数不整と呼ばれる。2つの変数が演算される:(1)VPB前後のR−R間隔の間のR−R間隔相対変化(RCRR)、
RCRR=((VPB前のR−R)−(VPB後のR−R))/VPB前のR−R
および、(2)VPB後の減少を被っているときのR−R間隔の変化の傾き(SRR)である。RCRRが負でなく、傾きSRRが−2ミリ秒/R−R間隔よりも急でない場合には、患者は、危険であるものと見なされる。これに代えて、前の段落で議論したように、積算計測値ベクトルを生成するために、STEおよびPALと共に個々の演算を含むことが可能である。他の信号分析アルゴリズムは、周波数領域、ウェーブレット領域における、または非線形力学に基づく方法を用いる、心拍変動分析を組み込むことが可能である。
【0065】
VPBがしばしば稀な事象であるので、除細動電極パッド10は、患者の管理下で、患者に対する過度の不快感なく、VPBをもたらすのに充分小さい振幅の単一パルスで患者を刺激する回路を備えることが可能である。付加的な制御は、患者がそれらの制御の下でパルスを開始するように薄型ボタン・パネル20上に設けられる。これに代えて、この装置は、午前中など、患者が装置への便利なアクセスを有する時間に、24時間間隔、1日1回など、定まった間隔で自動的にパルスを与えるようにプログラムされる。パルス発生器186は、第2の(治療)ユニットに位置することが可能であり、好ましくは、第1の(CPR)ユニットの一部として含まれる。
【0066】
別の実施形態では、第1のユニットの活動モニタリング機能は、患者の活動状態を連続的に監視するように利用されることが可能である。活動モニタリング機能およびリアルタイム時計187を使用して、第1のユニットは、患者が朝いつ目覚めたかを検出することが可能である。10分間の通常の活動の検出があった後、ユニットは、テストを行いたい患者にプロンプトを出すことが可能である。患者が薄型ボタン・パネル20上の「テスト」ボタンを押すことによって示される、テストに同意した場合、ユニットは、不整脈を生じずR波の前かつT波の後に約200mSを生じるように、患者のECGと同期される小さい電流のパルス、好ましくは、振幅75mAの40ミリ秒のパルスを加える。このパルスによって患者にVPBが安全に引き起こされ、次いで、VPBへの自律神経系反応を計測し、以下に限定されないが、STEおよびPALなどのパラメータによって計測されるVPBに対する自律神経系反応の通常演算を提供するために用いられ、RISK演算の日々の更新を提供することが可能である。
【0067】
付加的な生理学的計測、好適には血圧の計測は、RISK演算に組み込まれることが可能である。心臓収縮期における、または、10〜15ポイントよりも大きい平均動脈圧の突然の変化は、心停止の危険性の増加を示している。好ましい実施形態では、血圧計測装置は、ハンドヘルド型の膨張カフ血圧装置188である。血圧カフ188は、CPRプロセッサ170による無線通信機能を備える。各計測の終わりには、血圧計測値は、日付およびタイムスタンプと共に、RISKの演算において後に使用するために、CPRプロセッサ170のメモリ189に格納される。この手法によって、患者は自身の毎日の活動中、小さい血圧カフを自身と共に運び、家に返る必要なく、決まった間隔で血圧計測を行うことが可能になる。これに代えて、血圧計測装置は、治療プロセッサと通信することが可能であり、ケーブルによって第2の(治療)ユニットから付加的に電力を得て、このユニットに物理的に接続されることが可能である。その後、典型的には、可搬型のまたは可搬型でない第2のユニットである、大型の装置で、患者は通常の血圧計測値を計測することを要求される。血圧計測値の通信は、第1の(CPR)ユニットおよび第2の(治療)ユニット間のケーブル(例えば、ケーブル216)を通じて、または、ブルートゥースのような技術を使用して無線で達成されることが可能である。
【0068】
幾つかの実施形態では、第2のユニット218はエネルギ運搬ユニット(EDU)と見なされてよる場合があり、その場合、第2のユニットは、除細動器172、ペースメーカ173、または他の電気治療器174を組み込む。幾つかの実施形態では、EDUは、患者によって継続的に持ち運べるようにハーネスまたはベルトで着用可能であるほど充分に小さく軽い。幾つかの場合には、EDU218は治療プロセッサ171を含まないことが可能であるが、患者に電気治療を与えるために、(例えば、除細動器パッド10上の)第1の(CPR)ユニット内のプロセッサへの接続によって提供される制御を要求する、「データ処理能力のない(dumb)」装置である。
【0069】
幾つかの場合には、患者は、必要な高電圧コンポーネントに固有の著しいコストによって、EDUを所有さえしていないことがある。患者は、それらに組み込まれたコンポーネントがそれほど高価でないので、第1のユニットおよび除細動器パッドだけを所有する(例えば、それらは、それほど高価でない消費者型の電子機器から製造されることができる)。そのような場合に、患者がEDUを所有せず、心臓発作の持病があるときには、心停止の患者に遭遇した近くにいる人または家族の人は、CPRを開始するようにプロンプトを出される。幾つかの研究において、ショックを加えるのに先立って長い時間良好なCPRを行うことが長期間の生存に不利ではないだけでなく、実際に生存率を増加させることが示されている。このように、CPRは、内蔵プロンプトから始まるであろうし、また、救急救命士が除細動器と共に到着したときに、それが電気治療を与えるようにパッドに接続されることができる。第1の(CPR)ユニットが電極パッド・アセンブリから分離されている場合には、電極へのEDUの接続は、直接またはケーブルを介して第1の(CPR)ユニットに行われることができる。除細動器がEDUまたは他の互換装置である場合、第1の(CPR)ユニットに格納された患者および実行データが、除細動器にダウンロードされてよい。
【0070】
除細動パッド10,12は、CPRプロンプトを出す第1のユニットから分離可能であり、EDUが現場に持って行かれたときに接続されることが可能である。除細動パッドは、そのときにCPRプロンプトを出す第1のユニットに電気的および機械的に接続されることが可能である。第1のユニットには大量の制御機能が入れられてよく、第2のユニットには、本質的に除細動パルスを与える回路のみが残される。第1のユニットが除細動電極パッド・アセンブリに組み込まれてもよく、1つ以上のケーブルによって別個のユニットがパッド・アセンブリに接続されてもよい。第2のユニットは、1つ以上のケーブルまたは無線接続によって第1のユニットに接続されてよい。除細動パルスは、第1のユニッ
トを通過するか(図12A)、または、第2のユニットから電極まで走る1つ以上のケーブルを介して除細動電極に直接的に送られることが可能である(図12B)。第2のユニットは、ケーブルの必要無しに第1のユニットに差し込まれることによって第1のユニットに接続されることが可能である(図12C)(例えば、第2のユニットは、第1のユニットに差し込む除細動モジュールであることが可能である)。
【0071】
幾つかの実施形態では、第2の(治療)ユニットは、除細動治療と同様にペーシング治療も提供することができる。パルスオキシメトリおよび心音図以外の脈拍検出方法が使用されることも可能である。患者の脈を検出することができる任意の方法が、脈拍検出に使用されることができる。
【0072】
図14〜16には、CPRプロンプトを出す第1のユニットが除細動ユニットへの接続用に構成されている実施形態のほか、第1のユニットが除細動ユニットへの接続用に構成されていない実施形態を含む、他の実施形態が記載されている。後者の場合、除細動ユニットは、CPRプロンプトを出すユニットに接続されずに使用されることが可能である。
【0073】
図14を参照して、CPRプロンプトを出すユニットは、携帯電話機、または、携帯情報端末(PDA)もしくは無線のスマートホン(例えば、ブラックベリー(BlackBerry))など他のハンドヘルド型演算/通信装置であることが可能である。ハンドヘルド型演算/通信装置は、処理、データ格納、およびスピーカ要素と共に、動き検出要素(例えば、マサチューセッツ州のアナログ・デバイシーズ社によって製造されたMEMSベースの半導体慣性検出システム)を組み込むことが可能である。さらに、ハンドヘルド型装置は、装置が携帯電話機である場合のように、RF通信回路およびマイクロホンを組み込むことが可能である。動き検出要素は、加速度計、圧力検出要素(例えば、圧電性歪ゲージまたは感圧式抵抗器)のうちの1つ以上を備えることが可能である。
【0074】
装置が携帯電話機である場合、スピーチおよびベースバンド信号処理を扱うために使用される同一のDSP処理ユニットは、加速度計または圧力センサの出力を処理するために、例えば、胸部圧迫の変位計測値を得るために、使用されることが可能である。
【0075】
幾つかの実施形態では、携帯電話機400は、それ自体、CPR中に患者の胸骨上に配置され、救助者の手は、患者の胸部に力を加えるために電話機の上に配置される。構造要素は、効果的な胸部圧迫に必要な力を救助者に出させるために、携帯電話機400に組み込まれるか、または、隣接されることが可能である。この構造要素は、電話機用の外部記憶装置ケースの形態を取ってもよく、電話機内の内部要素410、例えば、支柱409および硬質側壁411(図15A)であってもよい。あるいは、電話機が電話機上をスライドする硬質なクラムシェル408内に支持されてもよい(図15B)。
【0076】
専用心停止キー412が携帯電話機上に設けられてもよく、CPRプロンプト機能が電話機の標準的なスクロールおよびメニュー機能を使用することによって作動されてもよい。さらに、CPRプロンプトの作動は、救急医療班(例えば、「911」)への電話を開始することが可能である。緊急の作動および911への接続の開始の際、スピーカホンは、救助者と救急医療班との間の通信を行うために、携帯電話機と連動することが可能である。
【0077】
発光ダイオードおよびセンサ70,72,74またはECG電極12,14は、電話機が患者の胸骨に配置されるときに脈の存在または不存在が検出されるように、電話機の表面に組み込まれることが可能である。ECGシステムは、小さい高周波信号(好ましくは、振幅2μAおよび周波数60〜100kHz)を使用することによってなど、経胸腔インピーダンス計測方法を組み込むことが可能である。この信号を同期して復調し、電流お
よび電圧の両方を計測することによって、インピーダンス計測が行われ得る。インピーダンス計測、呼吸数およびデューティ・サイクルの利用が判断され得る。
【0078】
蘇生が進行するにつれて、救助者は、付加的な自信および勇気を獲得するために911オペレータと対話することがある。携帯電話機は、GPS(全地球測位システム)など地理的位置特定技術を含むことが可能である。
【0079】
さらに、携帯電話機(または、他のハンドヘルド型演算/通信装置)のCPRプロンプトおよびフィードバック機能は、患者に着用されるか、または、貼り付けられる別個のCPR支援要素と併せて使用されることが可能である。CPR支援要素は、携帯電話機と(例えば、無線で)通信する。CPR支援要素は、心停止のとき、または、それ以前に患者に貼り付けられることが可能である(患者によって継続的に着用されることもできる)。この要素は、(例えば、ニューヨーク州のポーラー・ハート・レート・モニターズ社(Polar Heart Rate Monitors)によって製造されるような)時計であってもよく、患者の胸骨に沿って(例えば、垂直に)粘着される自己粘着性の長片に組み込まれた平坦な要素であってもよい。
【0080】
図16には、そのようなCPR支援要素の1つの可能な実施形態である、ほぼクレジット・カード厚(約1.02ミリメートル(0.04インチ))の薄いカード414を示す。この薄いカード414は、加速度計、プロセッサおよび必要なメモリ、バッテリ、ならびに無線通信(例えば、携帯電話機との通信用のブルートゥース)を収容する。カードの一方の側には、取り除かれるときに装置をオンにする(例えば、カード上の1組の接点416および自己粘着リリース・ライナの対向面上に配置された短片417を介して)自己粘着ラベル415がある。自己粘着面が露出されるとき、カードは患者の胸骨に貼り付けられ、胸部圧迫力が患者に加えられる位置として作用する。
【0081】
CPR支援要素414は、心停止または差し迫った心停止が検出または予測されるとき、携帯電話機と通信し、CPRの手順を開始する無線通信機能(例えば、ブルートゥース)を組み込むことが可能である。CPRプロンプトを出すユニットの嵩張る要素(例えば、スピーカ、電力を消費するDSP信号プロセッサ、RF通信回路、およびより大きいバッテリ)が携帯電話機(または、他のハンドヘルド型演算/通信装置)に組み込まれるので、患者の胸部に貼り付けられるCPR支援要素(例えば、加速度計または圧力センサ、およびECGセンサを備える)は、充分に薄くすることができる。これは、CPRフィードバック機能を財布に収容できるほど充分に小さくすることを可能にする。
【0082】
ハンドヘルド型演算/通信装置は、別個の除細動ユニットと通信することが可能である(または、CPR支援要素は、除細動ユニットと通信することが可能である)。ECG分析は、除細動ユニット、ハンドヘルド型装置、またはCPR支援要素内で実行されることが可能である。除細動ユニットは、ハンドヘルド型装置によって制御されることが可能である。
【0083】
図17には、CPR支援要素の機能のうちの少なくとも幾つかと、ハンドヘルド型演算/通信装置の蘇生機能のうちの少なくとも幾つかとが、1つのハンドヘルド型蘇生装置600内に組み合わせられた別の実施形態を示す。この装置はバッテリ駆動であり、CPR訓練と、救助中のCPR指導装置との両方に使用されることができる。図14〜16の実施形態に関連して記述されたものと同様の回路要素は、マイクロプロセッサ、メモリ、スピーカ、視覚的表示要素、および加速度計を備えた装置内に設けられる。この装置は、適切なCPR技術の音声での注意と、胸部圧迫の速さおよび深さに対するリアルタイム・フィードバックとを提供する。オン/オフ・スイッチ602は、装置を作動させるために押される。最初、装置は適切な蘇生工程を使用者に指摘する一連のプロンプトを出す。これ
らは、次のものを含んでいる。
落ち着いてください
反応を確認してください
助けを呼んでください
気道を確認してください
呼吸を確認してください
CPRを開始してください
その後、装置は胸部圧迫のタイミングについて使用者を支援するため、毎分100回の割合で一連のビープ音を発する。装置に内蔵された加速度計によって胸部圧迫が検出されるとき、装置は加速度計の出力の積算処理を行って、胸部圧迫の深さを推定する。10秒の圧迫後、装置は次のメッセージのうちの1つを与える。
良い圧迫です
より強く押してください
この装置によって行われる処理のアルゴリズムは、圧迫の合計回数のうちの割合として良い(例えば、最低3.75cmの胸部変位)圧迫の回数の標準を設定している。この割合が良好なCPRのための最小値を超えた場合、「良い圧迫です」というメッセージが再生される。そうでない場合、「より強く押してください」が再生される。20秒後、「人工呼吸を行ってください」というメッセージが再生される。その後、装置は同じ状態に戻り、「CPRを開始してください」というメッセージが続く。ビープが鳴るごとに、複数の明かり604が最後の圧迫の深さを示すためにオンにされる。例えば、最後の圧迫が良い圧迫であった場合、4つの明かりすべてをオンにすることができる。あるいは、1つの明かりだけをオンにすることが可能である(または、1〜3つの明かりをオンにして、圧迫が良い圧迫として適格でなかった程度を示すことができる)。
【0084】
装置600に様々な他の特徴を備えることが可能である。スイッチ602は、モードを切り換えるために使用されることができる。例えば、スイッチ・ボタンが2秒を超えて押された場合、音声プロンプトによって、成人モード、小児モード、訓練モード、他または他のモードの選択が可能になる。装置には、(例えば、この装置を使用する方法および助けを呼ぶ必要を示す)ラベルを配置することができる。患者への配置を可能にするために、使い捨ての粘着性の粘着パッドを提供することができる。GPS回路によって、救助の位置を提供し、装置の位置特定を補助することが可能である。胸部の適切な解放の触覚的なフィードバックを使用者に与えるために、上面または下面に機械式のドーム形スイッチを備えることが可能である(例えば、スナップ音が聞こえたら解放を示している)。装置は、胸部の解放が正しかったか否かを判断し、その結果について使用者にプロンプトを出すように構成されることができる。異なる種類の表示を用いて、圧迫が良かったか悪かったかについて使用者にプロンプトを出すことができる。無線通信(例えば、ブルートゥース)によって、外部装置との通信を可能にすることができる(装置は、例えば、図16の装置が行うように、携帯電話機または他のハンドヘルド型演算/通信装置と通信するように構成されることができる)。ECGは、(図16の実施に関連して記述されたように)装置の表面の電極を通じて検出されることが可能であり、ECG処理は「AEDの呼び出し」のプロンプトを提供することがでる。グラフィック・ディスプレイ(例えば、LCD)は、圧迫深さ、ECG分析、心拍数、圧迫速さ、呼吸のタイミングについての情報を提供することができる。圧迫速さのビープ注意音は、使用者が無効にできる。後の再生のためにデータ記録機能を備えることができる。救助中に音声および周囲音を録音するために、マイクロホンを付加することができる。AEDまたは他の装置へ有線接続を行うために、コネクタを提供されることができる。処理は、圧迫が安全な変位を超えること(例えば、約5.08cm(2インチ)よりも大きい)を判断することができ、適切な警告プロンプトを出す。使用者が圧迫からの休止中に自身の実行結果を観察することを可能にするために、圧迫深さの視覚的な表示を圧迫停止後の短い時間(例えば、10秒)維持することができる。使用者がヘッドホンを通じてプロンプトを聞くために、ヘッドホン・ジャック
を提供することができる。付加的な処理および異なる胸部圧迫のプロンプト(例えば、「遅すぎる」、「速すぎる」、「浅すぎる」、「深すぎる」、および「不完全な解放」)が提供されることができる。
【0085】
上述の実施形態以外の本発明の多くの他の実施形態が、本発明の範囲内にあり、それは、添付の特許請求の範囲によって規定される。例えば、心停止または他の状態のために特定の手順について言及を行ったが、本発明は言及した手順に限定されるものではない。換気センサは換気についての情報を提供して蘇生を支援することができる(例えば、携帯電話機への信号を提供する)。換気センサは、経胸腔インピーダンス、呼吸音、または気道内圧の計測を行うように構成されたセンサであることができる(例えば、「換気を検出することおよびプロンプトを出すことを備えた自動蘇生装置(Automated Resuscitation Device with Ventilation Sensing and Prompting)」と題する2006年3月17日に共同出願した米国特許出願に記載の呼吸管またはアダプタに管によって接続された圧力センサ)。ハンドヘルド型の大きさであり、演算または通信を伴う何らかの種類の非蘇生機能を行うように構成されている限り、与えられた特定の例ではなく、様々な他の種類のハンドヘルド型演算/通信装置を使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
救助者が患者を蘇生させるのを支援する蘇生装置であって、
蘇生中に患者の胸部に付着されるように構成されたCPR支援要素を備え、
同CPR支援要素は、蘇生が必要ではない期間中に非蘇生機能を行うように構成されたハンドヘルド型演算/通信装置と通信するように構成されており、
CPR支援要素は患者に関するデータをハンドヘルド型演算/通信装置と通信し、ハンドヘルド型演算/通信装置は、少なくとも部分的にはCPR支援要素から受信したデータに基づきCPRプロンプトを提供するようにさらに構成されており、
CPR支援要素は薄いカード状の装置である、蘇生装置。
【請求項2】
CPR支援要素はハンドヘルド型演算/通信装置を自動的に作動させるように構成されている請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項3】
前記カード状の装置は、ほぼクレジット・カードのサイズを有する、請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項4】
前記カード状の装置は、加速度計、プロセッサ、メモリ、バッテリ、および無線通信装置を収容している、請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項5】
前記要素は剥離層を剥がすことによって作動するように構成されている請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項6】
CPR支援要素から剥離層を剥がすことによって粘着剤が露出されることと、露出された粘着剤は同要素を患者の胸部に粘着すべく用いられるように構成されている請求項5に記載の蘇生装置。
【請求項7】
剥離層を剥がす際に電極が露出されることと、同電極およびCPR支援要素内の回路は、ECGを検出するか、または、患者の他の計測を行うべく用いられるように構成されている請求項6に記載の蘇生装置。
【請求項8】
CPR支援要素は患者の胸部に配置され、そこに救助者によって胸部圧迫力が加えられるように構成されている請求項6に記載の蘇生装置。
【請求項9】
CPR支援要素が通信するハンドヘルド型演算/通信装置は携帯電話機である請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項10】
CPR支援要素は患者によって着用可能であるように構成されている請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項11】
CPR支援要素はCPR中に粘着剤によって胸骨へ粘着され、そこに胸部圧迫力が加えられる請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項12】
治療実行装置と通信するように構成されている請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項13】
治療実行装置は除細動器を含む請求項12に記載の蘇生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−56203(P2013−56203A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−256614(P2012−256614)
【出願日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【分割の表示】特願2008−503273(P2008−503273)の分割
【原出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(504242032)ゾール メディカル コーポレイション (42)
【氏名又は名称原語表記】ZOLL Medical Corporation
【Fターム(参考)】