救援物資の配布システム
【課題】 救援物資の配布元である自治体やボランティア団体と、地域における被災者の救援活動を取りまとめる自主防災組織員や民生委員などとが連携して効率の良い救援物資配布活動を行うことができるシステムを提供する。
【解決手段】 被災者への救援物資の配布システムであって、災害弱者を含む被災者の安否情報、災害弱者とその支援者とを関連付けた情報、並びに救援物資の配布計画に関する情報を含んだデータベースと、被災者に対する救援物資の配布計画に関する情報を提供する手段とを含み、災害弱者にはその支援者を通じた救援物資配布に関する情報を提供し、災害弱者の支援者にはその災害弱者に対する救援物資配布に関する情報を提供することを特徴とする救援物資の配布システム。
【解決手段】 被災者への救援物資の配布システムであって、災害弱者を含む被災者の安否情報、災害弱者とその支援者とを関連付けた情報、並びに救援物資の配布計画に関する情報を含んだデータベースと、被災者に対する救援物資の配布計画に関する情報を提供する手段とを含み、災害弱者にはその支援者を通じた救援物資配布に関する情報を提供し、災害弱者の支援者にはその災害弱者に対する救援物資配布に関する情報を提供することを特徴とする救援物資の配布システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害の被災者やその支援者に食料、水、医薬品などの救援物資を配布するためのシステムに関し、特に、救援物資の配布元である自治体やボランティア団体と、地域における被災者の救援活動を取りまとめる自主防災組織員や民生委員などとが連携して効率の良い救援物資配布活動を行うことができるシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
災害の被災者に対する救援活動として、自治体やボランティア団体などにより、食料、水、医薬品等の救援物資が被災地域に配布される。救援物資は、これを積んだ車両が被災地域を巡回して配布するのが一般的である。この車両が被災地域を巡回するに当たって、被災地域及び被災者の状況に関するリアルタイムな情報を入手することができれば、救援物資を本当に必要としている被災者の居る場所を優先的に巡回するなどして、効果的な救援活動を行うことが可能となる。
【0003】
インターネットを通じて、災害の被災地域及び被災者の状況に関する情報を収集し、配信する技術としては、特許文献1に記載の発明がある。特許文献1に記載されている災害情報提供システムは、例えば、災害時に管轄地域内で発生した地震、火災や、建造物倒壊のような災害に関する情報をサーバコンピュータ上のウェブページに表示するとともに、それらの情報をメールにより被災者や関連職員に通知するものである。また、この災害情報提供システムは、消防隊員などの災害対策要員に対して出動指令を発令する自動出動指令装置と連動しており、災害対策要員から得られる被災情報に基づいてサーバコンピュータのデータベースを更新することにより、最新の災害情報をリアルタイムに提供することができるものである。被災者は、サーバコンピュータ上のウェブページにアクセスして、公開されている災害情報を閲覧することにより、災害の種別、発生時刻、発生場所などに関するリアルタイムな情報を取得することができる。また、災害情報に応じて、所定のメッセージを含んだメールを、予め登録してある特定の利用者の端末に自動配信することができる。
【特許文献1】特開2003−99883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被災者救助の現場においては、地域ごとの自主防災組織や民生委員などが被災者の救援活動を取りまとめている場合が少なくない。特に、高齢者、乳幼児、病人、障害者などの一般に災害弱者と呼ばれる被災者達への救援は、自主防災組織や民生委員などを通じて行うのが効果的である。一般的に、災害弱者は、救援物資の配布が行われるという情報を取得したとしても、その配布場所に自力で到達することが困難なため、自主防災組織や民生委員などを通じて救援物資を入手することが多い。
【0005】
特許文献1に記載の災害情報提供システムなどでは、災害情報をリアルタイムで被災者や災害対策要員などに提供することはできるが、自主防災組織員や民生委員などに優先的に救援物資を配布したり、自主防災組織員や民生委員などが地域における被災者の救援活動を取りまとめる上で特に必要とする情報を提供したりすることはできない。また、自主防災組織員や民生委員などが把握している各地域の被災状況や災害弱者などに関するより具体的な情報を収集することもできない。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、救援物資の配布元である自治体やボランティア団体と、地域における被災者の救援活動を取りまとめる自主防災組織員や民生委員などとが連携して効率の良い救援物資配布活動を行うことができるシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記解決課題に鑑みて鋭意研究の結果、本発明者は、災害弱者とその担当者とを関連付けて登録しておき、救援物資を配布するにあたっては、担当者を通じて災害弱者に救援物資が配布されることを想定して計画を行うことに想到した。
【0008】
すなわち、本発明は、被災者への救援物資の配布システムであって、災害弱者を含む被災者の安否情報、災害弱者とその支援者とを関連付けた情報、並びに救援物資の配布計画に関する情報を含んだデータベースと、被災者に対する救援物資の配布計画に関する情報を提供する手段とを含み、災害弱者にはその支援者を通じた救援物資配布に関する情報を提供し、災害弱者の支援者にはその災害弱者に対する救援物資配布に関する情報を提供することを特徴とする救援物資の配布システムを提供するものである。
【0009】
本発明の救援物資の配布システムは、また、被災者に対する救援物資の配布実績に関する情報を被災者から取得する手段をさらに含んでおり、災害弱者からはその支援者を通じた救援物資の配布実績に関する情報を取得し、災害弱者の支援者からはその災害弱者に対する救援物資の配布実績に関する情報を取得することを特徴とする。
【0010】
これにより、被災者に救援物資が実際に配布されたのかどうかをシステム運営側で把握することができる。特に、災害弱者に関しては、災害弱者自身とその支援者との両方から情報を取得するので、配布が行われたかどうかを厳しくモニタすることができる。
【0011】
本発明の救援物資の配布システムは、また、取得された被災者に対する救援物資の配布実績に関する情報に基づいて、救援物資の配布計画を作成又は修正する手段をさらに含んでいることを特徴とする。
【0012】
これにより、救援物資の配布対象となっているのに実際には配布がされていない被災者に対しては次回以降優先的に配布するよう計画するなどして、より効果的な救援物資の配布計画を立案することが可能となる。
【0013】
本発明の救援物資の配布システムは、また、被災者からの救援物資の配布希望を受け付ける手段をさらに含んでおり、被災者からの救援物資の配布希望と、その被災者に対する救援物資の配布実績とから、その被災者に関する救援物資配布の重要度を決定し、該重要度に基づいて救援物資の配布計画を作成又は修正することを特徴とする。
【0014】
本発明の救援物資の配布システムにおいて、前記データベースは、被災者のうち災害弱者とその他の被災者とにそれぞれ重み付けを設定した情報を含んでおり、該重み付けに基づいて被災者に対する救援物資の配布計画を作成又は修正することを特徴とする。特に救援物資に窮乏しがちな災害弱者に対して優先的に救援物資の配布を行うよう計画を立てるのが好ましい。
【0015】
本発明の救援物資の配布システムは、また、救援物資の運搬手段からその位置情報を取得する手段をさらに含んでおり、被災者に救援物資の運搬手段の位置情報を提供することを特徴とする。また、前記救援物資の運搬手段は車両であり、GPS及びGISを利用して該車両の位置情報を取得することを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の救援物資の配布システムは、前記救援物資の運搬手段に対しても救援物資の配布計画に関する情報を提供し、また、前記救援物資の運搬手段からも救援物資の配布実績に関する情報を取得することを特徴とする。
【0017】
本発明の救援物資の配布システムにおいて、被災者は、インターネットにアクセス可能な情報端末を用いて、救援物資の配布計画に関する情報を受信し、救援物資の配布実績に関する情報を送信することを特徴とする。例えば、携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistants)端末、パーソナルコンピュータ端末などを利用することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上、説明したように、本発明の救援物資の配布システムによれば、災害発生後の救援物資の配布活動において、救援物資の配給を受ける機会を逸しやすい災害弱者と、その災害弱者の支援者(自主防災組織や民生委員など)とに、救援物資の配布計画に関してそれぞれの立場に応じた必要な情報が提供されるので、支援者を通じて災害弱者への救援物資の配布を効率よく確実に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の救援物資の配布システムを実施するための最良の形態を詳細に説明する。図1〜図20は、本発明の実施の形態を例示する図であり、これらの図において、同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成及び動作は同様であるものとする。
【0020】
図1は、本発明の救援物資配布システムの一実施形態について、全体的な構成を概略的に示す図である。図1において、本実施形態の救援物資配布システムは、救援物資配布のための情報を集約する情報センタ10と、被災者が所有する情報端末21と、被災者に水を配布する給水車31とを含んでいる。被災者の情報端末21、給水車31は、それぞれインターネットを通じて情報センタ10と通信することができる。給水車31に関しては車載の情報端末を用いるか、あるいは給水作業者が有する情報端末を用いてインターネットにアクセスすることができる。
【0021】
情報センタ10は、GIS(Geographical Information System)サーバ11、メインサーバ12、メールサーバ13、データベース14を含んでいる。GISサーバ11は、地図(地形)データと地図上の位置に関する属性情報とを関連付けた情報を提供するサーバであり、例えば、GPS(Global Positioning System)やPHSの位置情報サービスから得られる位置情報から地図上の位置を特定し、その位置についての様々な情報を提供することができる。メインサーバ12は、被災者の情報端末21、給水車31などとの間で情報の授受を行うことにより、救援物資の配布をコントロールし、被災者に必要な情報を提供し、被災者からの情報を取得する。メールサーバ13は、情報センタ10と被災者の情報端末21や給水車31などとの間で電子メールを送受信するためのサーバである。データベース14は、被災者、被災者支援団体、被災地域、給水車などに関する所定の情報を記憶している。
【0022】
被災者の情報端末21は、電子メールの送受信が可能な端末、例えば、携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistants)端末、パーソナルコンピュータ端末などを利用することができる。給水車31は、被災地域に配布するための水を運搬する車両であり、自車両の位置を認識するためのGPSと、VICS(Vehicle Information and Communication System)センタから道路交通情報を受信するための機能とを備えている。例えば、これらの機能を搭載したカーナビゲーションシステムを備えていればよい。尚、VICSとは、道路を走行中の車両に対して、渋滞、交通規制、工事等の道路交通情報をリアルタイムで提供するシステムである。給水車31は、VICSセンタから取得した道路交通情報に基づいて、目的地までの最適ルートや到着予定時刻などを計算することができる。
【0023】
図2は、情報センタ10のデータベース14に含まれている情報を概略的に示す模式図である。ユーザ登録データベースは、本実施形態の救援物資配布システムがカバーする対象地域の住民(災害発生時には被災者となりうる)についての基本的な属性情報を含んでいる。災害弱者担当データベースは、ユーザ登録データベースに登録された住民のうち災害弱者である住民とその災害弱者の支援を担当している民生委員や自主防災組織員などとを関連付けて記憶している。災害弱者担当データベースのデータ構成を図3に例示する。安否情報データベースは、登録された各住民の災害発生後の安否情報や、給水を受ける場所に関する情報などを含んでいる。尚、災害発生下では利用者端末21などから得られた情報に基づいて、安否情報データベースのデータが随時更新されるようになっている。安否情報データベースのデータ構成を図4に例示する。給水ルート情報データベースは、給水車が巡回するルートや給水量、給水対象についての詳細な情報を含んでいる。給水ルート情報データベースのデータ構成を図5に例示する。給水実施調査データベースは、登録された住民から受信した給水希望やそれに対する給水実施記録に関する情報を含んでいる。給水実施調査データベースのデータ構成を図6に例示する。図6に示すテーブル中、重要度とは、次回給水希望、給水希望回数、給水実施回数から決定される住民が給水を必要とする程度を表す指標である。
【0024】
メール雛形ファイルは、情報センタ10から登録された住民に送信される各種電子メールの雛形である。メール雛形ファイルの具体例として、図7〜15に雛形ファイルa〜iを示す。設定ファイルは、情報センタ10の動作に関する様々な設定を保持するものであり、例えば、情報センタ10から被災者の情報端末21や給水車31に電子メールを送信する時間間隔や、一般被災者と災害弱者との間で設定された重み付けなどに関する情報を含んでいる。設定ファイルのデータ構成を図16に例示する。その他、データベース14には、給水車から随時受信される給水車の位置情報などが記憶されている。
【0025】
次に、以上のように構成された本実施形態の救援物資の配布システムの利用形態について、図17〜図21を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、システム側で行われる各処理は、特に記載がない限り情報センタのメインサーバにより実行されるものとする。
【0026】
図17は、本システムにおいて、災害発生時に住民の安否確認を行う処理の流れを示すフローチャートである。図17において、まず、災害発生を感知したシステム管理者が本システムの安否確認機能を起動する(ステップS1701)。あるいは災害情報センタなどからの信号により自動的に安否確認機能が起動されるようになっていてもよい。ユーザ登録データベースなどのデータを用いて、被災地域の住民の安否情報データベースを生成する(ステップS1702)。既に安否情報データベースが生成されている場合には、そのデータを初期化する。ユーザ登録データベースから登録されている被災地域の住民(自主防災組織、民生委員、災害弱者を含む)のメールアドレスを取得し(ステップS1703)、図7に示す雛形ファイルaを取得して(ステップS1704)、安否情報の登録・照会を促す電子メールを作成し(ステップS1705)、各住民に送信する(ステップS1706)。この電子メールを受信した被災地域の住民は、自身の安否情報を電子メールで情報センタに送信するか、あるいは情報センタが開設しているウェブページにアクセスして自身の安否情報を入力することができる。こうして住民から随時得られる安否情報は、安否情報データベースに登録されることとなる。また、住民は、情報センタに対して他人の安否情報を照会することもできるようになる。
【0027】
図18は、本システムにおいて、災害発生後に住民に給水情報の通知を行う処理の流れを示すフローチャートである。ここで、給水情報とは、主に給水車の出動予定、給水ポイント、給水量、給水を受けるための条件その他の情報を言うものとする。一般被災者のほか、自主防災組織、民生委員、災害弱者、給水車などに対して、それぞれ必要な給水情報が電子メールなどで適時配信される。この給水情報の通知機能は、災害発生後に断水や水質汚染などにより給水の必要が生じた際に、本システムの管理者により起動されるものである。
【0028】
図18において、まず、データベースから給水車の位置情報を取得する(ステップS1801)。この位置情報は給水車のGPSから取得されたデータを含むものであるが、このデータを基にGISサーバに問い合わせることにより、給水車の地図上の位置を特定することが可能である。続いて、安否情報データベースから、安否情報が既に登録されている被災者の情報を取得する(ステップS1802)。以降の処理は、通知対象者のユーザ種別により異なっている。
【0029】
通知対象者が一般被災者である場合には、図8に示す雛形ファイルbを用いて、給水車の出動予定、給水ポイント、給水量、給水を受けるための条件、その他の情報を含んだ電子メールを作成し送信する(ステップS1803)。通知対象者が災害弱者である場合には、図9に示す雛形ファイルcを用いて、給水車の出動予定、給水ポイント、給水量、給水を受けるための条件などの給水情報に加えて、当該災害弱者の担当者である民生委員などによる個別の配給予定に関する情報を含んだ電子メールを作成し送信する(ステップS1804)。これにより、災害弱者は自らが給水ポイントまで水の配給を受けに行くことができなくとも、民生委員などから水を受け取れるのを知ることができる。
【0030】
通知対象者が給水車(給水作業者)である場合には、災害弱者担当データベースから災害弱者とその担当者とを関連付ける情報を取得し(ステップS1805)、安否情報データベースから、災害弱者の担当者の給水ポイントをその災害弱者に対する給水ポイントとして取得し(ステップS1806)、給水ルート情報データベースから具体的な給水場所を特定する(ステップS1807)。図10に示す雛形ファイルdを用いて、民生委員などの担当者経由で給水を受ける災害弱者に関する給水情報を含んだ電子メールを作成し送信する(ステップS1808)。
【0031】
通知対象者が民生委員である場合には、図11に示す雛形ファイルeを用いて、給水車の出動予定、給水ポイント、給水量、給水を受けるための条件などの給水情報に加えて、当該民生委員が担当する災害弱者への水の配給を依頼する内容を含んだ電子メールを作成し送信する(ステップS1809)。通知対象者が自主防災組織である場合には、図12に示す雛形ファイルfを用いて、給水車の出動予定、給水ポイント、給水量、給水を受けるための条件などの給水情報に加えて、当該自主防災組織が担当する災害弱者への水の配給を依頼する内容を含んだ電子メールを作成し送信する(ステップS1810)。
【0032】
ステップS1803〜S1810において電子メールを配信した記録は、情報センタの給水実施調査データベースに格納される。各通知対象者に給水情報を電子メールで送信した後、データベースの設定ファイルから給水情報の通知間隔や各被災者に設定された重み付けなどを取得し(ステップS1811)、システム管理者により給水情報の通知処理が終了されていなければ、通知間隔の時間分待機した後(ステップS1812)、再びステップS1801から同様の処理を繰り返す。
【0033】
このようにして、給水対象である被災者と給水作業者とにこれから行われる給水についての必要な情報が通知される。給水作業者は、通知された給水情報に基づいて各給水場所を巡回して給水を行い、給水実施に関する情報(各地での配給対象人数、給水場所に集まった人数、配給できなかった対象者の人数など)を情報センタに送信し、給水実施データベースに登録する。
【0034】
図19は、本システムにおいて、給水車による給水活動が完了した後に、災害弱者に給水が行われたかどうかを確認する処理の流れを示すフローチャートである。図19において、まず、安否情報データベースから、安否情報が既に登録されている被災者の情報を取得する(ステップS1901)。給水実施確認対象者が災害弱者である場合には、図13に示す雛形ファイルgを用いて、民生委員や自主防災組織を通じて給水を受けることができたかどうかを調査する電子メールを作成し送信する(ステップS1902)。給水実施確認対象者が民生委員である場合には、図14に示す雛形ファイルhを用いて、担当の災害弱者に給水を行ったかどうかを調査する電子メールを作成し送信する(ステップS1903)。給水実施確認対象者が自主防災組織である場合には、図15に示す雛形ファイルiを用いて、担当の災害弱者に給水を行ったかどうかを調査する電子メールを作成し送信する(ステップS1904)。ステップS1902〜S1904において電子メールを配信した記録は、情報センタの給水実施調査データベースに格納される(ステップS1905)。
【0035】
このような電子メールを受信した災害弱者、民生委員、自主防災組織は、それぞれ、返信の電子メールなどにより給水を受けた/行ったかどうかを情報センタに通知する。それらの情報は情報センタの給水実施調査データベースに格納される。これにより、被災者に対して給水が確実に行われたかどうかの情報が情報センタの給水実施調査データベースに集約されるので、次回の給水車出動を計画する際にはこの情報を利用することにより、給水を必要としているにもかかわらず給水を受けることができなかった一般被災者や災害弱者に優先的に給水が行われるような給水計画を立案することが可能となる。例えば、図6に示す給水実施調査データベースにおいて、給水希望回数と給水実施回数との差を重要度の値として設定すればよい。
【0036】
図20は、本システムにおいて、給水車出動の計画を決定する処理の流れを示すフローチャートである。図20において、まず、給水実施調査データベースから各利用者の給水希望や重要度についての情報を取得する(ステップS2001)。利用者のうち災害弱者については、災害弱者担当データベースからその担当者を特定する(ステップS2002)。安否情報データベースから一般被災者や災害弱者の給水場所等に関する情報を取得する(ステップS2003)。給水ルート情報データベースから一般被災者や災害弱者の担当者の給水場所を特定する(ステップS2004)。設定ファイルから一般被災者や災害弱者に設定された重み付けに関する情報を取得する(ステップS2005)。以上の処理において取得された各利用者の給水希望や重要度と重み付けとを考慮して、給水ルートを生成する(ステップS2006)。生成した給水ルートは給水ルート情報データベースに登録される。
【0037】
このようにして、給水を必要としているにもかかわらず給水を受けることができなかった一般被災者や災害弱者に優先的に給水が行われ、さらに、災害弱者に特に優先的に給水が行われるような給水ルートが生成されることとなる。
【0038】
以上、本発明の救援物資の配布システムについて、具体的な実施の形態を示して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上記各実施形態又は他の実施形態にかかる発明の構成及び機能に様々な変更・改良を加えることが可能である。特に、上記では救援物資として水を配布する実施形態について説明したが、他の救援物資、例えば、食料、医薬品、衣料品、燃料などについても同様に実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の救援物資の配布システムは、サーバとして機能する情報センタと、クライアントとして機能する利用者(あるいは給水作業者を含んでいてもよい)の情報端末とからなるネットワークシステムとして構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の救援物資配布システムの一実施形態について、全体的な構成を概略的に示す図である。
【図2】図1に示す情報センタのデータベースに含まれている情報を概略的に示す模式図である。
【図3】図2に示す災害弱者担当データベースのデータ構成を例示する図である。
【図4】図2に示す安否情報データベースのデータ構成を例示する図である。
【図5】図2に示す給水ルート情報データベースのデータ構成を例示する図である。
【図6】図2に示す給水実施調査データベースのデータ構成を例示する図である。
【図7】図2に示すメール雛形ファイルに含まれるメール雛形の具体例として、住民に安否情報の登録・照会を促すメールの雛形を示す図である。
【図8】図2に示すメール雛形ファイルに含まれるメール雛形の具体例として、一般被災者に給水情報を通知するメールの雛形を示す図である。
【図9】図2に示すメール雛形ファイルに含まれるメール雛形の具体例として、災害弱者に給水情報を通知するメールの雛形を示す図である。
【図10】図2に示すメール雛形ファイルに含まれるメール雛形の具体例として、給水車(給水作業者)に給水情報を通知するメールの雛形を示す図である。
【図11】図2に示すメール雛形ファイルに含まれるメール雛形の具体例として、民生委員に給水情報を通知するメールの雛形を示す図である。
【図12】図2に示すメール雛形ファイルに含まれるメール雛形の具体例として、自主防災組織に給水情報を通知するメールの雛形を示す図である。
【図13】図2に示すメール雛形ファイルに含まれるメール雛形の具体例として、災害弱者への給水実施を確認するために災害弱者に対して送信されるメールの雛形を示す図である。
【図14】図2に示すメール雛形ファイルに含まれるメール雛形の具体例として、災害弱者への給水実施を確認するために民生委員に対して送信されるメールの雛形を示す図である。
【図15】図2に示すメール雛形ファイルに含まれるメール雛形の具体例として、災害弱者への給水実施を確認するために自主防災組織に対して送信されるメールの雛形を示す図である。
【図16】図2に示す設定ファイルのデータ構成を例示する図である。
【図17】本発明の救援物資の配布システムにおいて、災害発生時に住民の安否確認を行う処理の流れを示すフローチャートである。
【図18】本発明の救援物資の配布システムにおいて、災害発生後に住民に給水情報の通知を行う処理の流れを示すフローチャートである。
【図19】本発明の救援物資の配布システムにおいて、給水車による給水活動が完了した後に、災害弱者に給水が行われたかどうかを確認する処理の流れを示すフローチャートである。
【図20】本発明の救援物資の配布システムにおいて、給水車出動の計画を決定する処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
10 情報センタ
11 GISサーバ
12 メインサーバ
13 メールサーバ
14 データベース
21 利用者の情報端末
31 給水車
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害の被災者やその支援者に食料、水、医薬品などの救援物資を配布するためのシステムに関し、特に、救援物資の配布元である自治体やボランティア団体と、地域における被災者の救援活動を取りまとめる自主防災組織員や民生委員などとが連携して効率の良い救援物資配布活動を行うことができるシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
災害の被災者に対する救援活動として、自治体やボランティア団体などにより、食料、水、医薬品等の救援物資が被災地域に配布される。救援物資は、これを積んだ車両が被災地域を巡回して配布するのが一般的である。この車両が被災地域を巡回するに当たって、被災地域及び被災者の状況に関するリアルタイムな情報を入手することができれば、救援物資を本当に必要としている被災者の居る場所を優先的に巡回するなどして、効果的な救援活動を行うことが可能となる。
【0003】
インターネットを通じて、災害の被災地域及び被災者の状況に関する情報を収集し、配信する技術としては、特許文献1に記載の発明がある。特許文献1に記載されている災害情報提供システムは、例えば、災害時に管轄地域内で発生した地震、火災や、建造物倒壊のような災害に関する情報をサーバコンピュータ上のウェブページに表示するとともに、それらの情報をメールにより被災者や関連職員に通知するものである。また、この災害情報提供システムは、消防隊員などの災害対策要員に対して出動指令を発令する自動出動指令装置と連動しており、災害対策要員から得られる被災情報に基づいてサーバコンピュータのデータベースを更新することにより、最新の災害情報をリアルタイムに提供することができるものである。被災者は、サーバコンピュータ上のウェブページにアクセスして、公開されている災害情報を閲覧することにより、災害の種別、発生時刻、発生場所などに関するリアルタイムな情報を取得することができる。また、災害情報に応じて、所定のメッセージを含んだメールを、予め登録してある特定の利用者の端末に自動配信することができる。
【特許文献1】特開2003−99883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被災者救助の現場においては、地域ごとの自主防災組織や民生委員などが被災者の救援活動を取りまとめている場合が少なくない。特に、高齢者、乳幼児、病人、障害者などの一般に災害弱者と呼ばれる被災者達への救援は、自主防災組織や民生委員などを通じて行うのが効果的である。一般的に、災害弱者は、救援物資の配布が行われるという情報を取得したとしても、その配布場所に自力で到達することが困難なため、自主防災組織や民生委員などを通じて救援物資を入手することが多い。
【0005】
特許文献1に記載の災害情報提供システムなどでは、災害情報をリアルタイムで被災者や災害対策要員などに提供することはできるが、自主防災組織員や民生委員などに優先的に救援物資を配布したり、自主防災組織員や民生委員などが地域における被災者の救援活動を取りまとめる上で特に必要とする情報を提供したりすることはできない。また、自主防災組織員や民生委員などが把握している各地域の被災状況や災害弱者などに関するより具体的な情報を収集することもできない。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、救援物資の配布元である自治体やボランティア団体と、地域における被災者の救援活動を取りまとめる自主防災組織員や民生委員などとが連携して効率の良い救援物資配布活動を行うことができるシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記解決課題に鑑みて鋭意研究の結果、本発明者は、災害弱者とその担当者とを関連付けて登録しておき、救援物資を配布するにあたっては、担当者を通じて災害弱者に救援物資が配布されることを想定して計画を行うことに想到した。
【0008】
すなわち、本発明は、被災者への救援物資の配布システムであって、災害弱者を含む被災者の安否情報、災害弱者とその支援者とを関連付けた情報、並びに救援物資の配布計画に関する情報を含んだデータベースと、被災者に対する救援物資の配布計画に関する情報を提供する手段とを含み、災害弱者にはその支援者を通じた救援物資配布に関する情報を提供し、災害弱者の支援者にはその災害弱者に対する救援物資配布に関する情報を提供することを特徴とする救援物資の配布システムを提供するものである。
【0009】
本発明の救援物資の配布システムは、また、被災者に対する救援物資の配布実績に関する情報を被災者から取得する手段をさらに含んでおり、災害弱者からはその支援者を通じた救援物資の配布実績に関する情報を取得し、災害弱者の支援者からはその災害弱者に対する救援物資の配布実績に関する情報を取得することを特徴とする。
【0010】
これにより、被災者に救援物資が実際に配布されたのかどうかをシステム運営側で把握することができる。特に、災害弱者に関しては、災害弱者自身とその支援者との両方から情報を取得するので、配布が行われたかどうかを厳しくモニタすることができる。
【0011】
本発明の救援物資の配布システムは、また、取得された被災者に対する救援物資の配布実績に関する情報に基づいて、救援物資の配布計画を作成又は修正する手段をさらに含んでいることを特徴とする。
【0012】
これにより、救援物資の配布対象となっているのに実際には配布がされていない被災者に対しては次回以降優先的に配布するよう計画するなどして、より効果的な救援物資の配布計画を立案することが可能となる。
【0013】
本発明の救援物資の配布システムは、また、被災者からの救援物資の配布希望を受け付ける手段をさらに含んでおり、被災者からの救援物資の配布希望と、その被災者に対する救援物資の配布実績とから、その被災者に関する救援物資配布の重要度を決定し、該重要度に基づいて救援物資の配布計画を作成又は修正することを特徴とする。
【0014】
本発明の救援物資の配布システムにおいて、前記データベースは、被災者のうち災害弱者とその他の被災者とにそれぞれ重み付けを設定した情報を含んでおり、該重み付けに基づいて被災者に対する救援物資の配布計画を作成又は修正することを特徴とする。特に救援物資に窮乏しがちな災害弱者に対して優先的に救援物資の配布を行うよう計画を立てるのが好ましい。
【0015】
本発明の救援物資の配布システムは、また、救援物資の運搬手段からその位置情報を取得する手段をさらに含んでおり、被災者に救援物資の運搬手段の位置情報を提供することを特徴とする。また、前記救援物資の運搬手段は車両であり、GPS及びGISを利用して該車両の位置情報を取得することを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の救援物資の配布システムは、前記救援物資の運搬手段に対しても救援物資の配布計画に関する情報を提供し、また、前記救援物資の運搬手段からも救援物資の配布実績に関する情報を取得することを特徴とする。
【0017】
本発明の救援物資の配布システムにおいて、被災者は、インターネットにアクセス可能な情報端末を用いて、救援物資の配布計画に関する情報を受信し、救援物資の配布実績に関する情報を送信することを特徴とする。例えば、携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistants)端末、パーソナルコンピュータ端末などを利用することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上、説明したように、本発明の救援物資の配布システムによれば、災害発生後の救援物資の配布活動において、救援物資の配給を受ける機会を逸しやすい災害弱者と、その災害弱者の支援者(自主防災組織や民生委員など)とに、救援物資の配布計画に関してそれぞれの立場に応じた必要な情報が提供されるので、支援者を通じて災害弱者への救援物資の配布を効率よく確実に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の救援物資の配布システムを実施するための最良の形態を詳細に説明する。図1〜図20は、本発明の実施の形態を例示する図であり、これらの図において、同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成及び動作は同様であるものとする。
【0020】
図1は、本発明の救援物資配布システムの一実施形態について、全体的な構成を概略的に示す図である。図1において、本実施形態の救援物資配布システムは、救援物資配布のための情報を集約する情報センタ10と、被災者が所有する情報端末21と、被災者に水を配布する給水車31とを含んでいる。被災者の情報端末21、給水車31は、それぞれインターネットを通じて情報センタ10と通信することができる。給水車31に関しては車載の情報端末を用いるか、あるいは給水作業者が有する情報端末を用いてインターネットにアクセスすることができる。
【0021】
情報センタ10は、GIS(Geographical Information System)サーバ11、メインサーバ12、メールサーバ13、データベース14を含んでいる。GISサーバ11は、地図(地形)データと地図上の位置に関する属性情報とを関連付けた情報を提供するサーバであり、例えば、GPS(Global Positioning System)やPHSの位置情報サービスから得られる位置情報から地図上の位置を特定し、その位置についての様々な情報を提供することができる。メインサーバ12は、被災者の情報端末21、給水車31などとの間で情報の授受を行うことにより、救援物資の配布をコントロールし、被災者に必要な情報を提供し、被災者からの情報を取得する。メールサーバ13は、情報センタ10と被災者の情報端末21や給水車31などとの間で電子メールを送受信するためのサーバである。データベース14は、被災者、被災者支援団体、被災地域、給水車などに関する所定の情報を記憶している。
【0022】
被災者の情報端末21は、電子メールの送受信が可能な端末、例えば、携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistants)端末、パーソナルコンピュータ端末などを利用することができる。給水車31は、被災地域に配布するための水を運搬する車両であり、自車両の位置を認識するためのGPSと、VICS(Vehicle Information and Communication System)センタから道路交通情報を受信するための機能とを備えている。例えば、これらの機能を搭載したカーナビゲーションシステムを備えていればよい。尚、VICSとは、道路を走行中の車両に対して、渋滞、交通規制、工事等の道路交通情報をリアルタイムで提供するシステムである。給水車31は、VICSセンタから取得した道路交通情報に基づいて、目的地までの最適ルートや到着予定時刻などを計算することができる。
【0023】
図2は、情報センタ10のデータベース14に含まれている情報を概略的に示す模式図である。ユーザ登録データベースは、本実施形態の救援物資配布システムがカバーする対象地域の住民(災害発生時には被災者となりうる)についての基本的な属性情報を含んでいる。災害弱者担当データベースは、ユーザ登録データベースに登録された住民のうち災害弱者である住民とその災害弱者の支援を担当している民生委員や自主防災組織員などとを関連付けて記憶している。災害弱者担当データベースのデータ構成を図3に例示する。安否情報データベースは、登録された各住民の災害発生後の安否情報や、給水を受ける場所に関する情報などを含んでいる。尚、災害発生下では利用者端末21などから得られた情報に基づいて、安否情報データベースのデータが随時更新されるようになっている。安否情報データベースのデータ構成を図4に例示する。給水ルート情報データベースは、給水車が巡回するルートや給水量、給水対象についての詳細な情報を含んでいる。給水ルート情報データベースのデータ構成を図5に例示する。給水実施調査データベースは、登録された住民から受信した給水希望やそれに対する給水実施記録に関する情報を含んでいる。給水実施調査データベースのデータ構成を図6に例示する。図6に示すテーブル中、重要度とは、次回給水希望、給水希望回数、給水実施回数から決定される住民が給水を必要とする程度を表す指標である。
【0024】
メール雛形ファイルは、情報センタ10から登録された住民に送信される各種電子メールの雛形である。メール雛形ファイルの具体例として、図7〜15に雛形ファイルa〜iを示す。設定ファイルは、情報センタ10の動作に関する様々な設定を保持するものであり、例えば、情報センタ10から被災者の情報端末21や給水車31に電子メールを送信する時間間隔や、一般被災者と災害弱者との間で設定された重み付けなどに関する情報を含んでいる。設定ファイルのデータ構成を図16に例示する。その他、データベース14には、給水車から随時受信される給水車の位置情報などが記憶されている。
【0025】
次に、以上のように構成された本実施形態の救援物資の配布システムの利用形態について、図17〜図21を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、システム側で行われる各処理は、特に記載がない限り情報センタのメインサーバにより実行されるものとする。
【0026】
図17は、本システムにおいて、災害発生時に住民の安否確認を行う処理の流れを示すフローチャートである。図17において、まず、災害発生を感知したシステム管理者が本システムの安否確認機能を起動する(ステップS1701)。あるいは災害情報センタなどからの信号により自動的に安否確認機能が起動されるようになっていてもよい。ユーザ登録データベースなどのデータを用いて、被災地域の住民の安否情報データベースを生成する(ステップS1702)。既に安否情報データベースが生成されている場合には、そのデータを初期化する。ユーザ登録データベースから登録されている被災地域の住民(自主防災組織、民生委員、災害弱者を含む)のメールアドレスを取得し(ステップS1703)、図7に示す雛形ファイルaを取得して(ステップS1704)、安否情報の登録・照会を促す電子メールを作成し(ステップS1705)、各住民に送信する(ステップS1706)。この電子メールを受信した被災地域の住民は、自身の安否情報を電子メールで情報センタに送信するか、あるいは情報センタが開設しているウェブページにアクセスして自身の安否情報を入力することができる。こうして住民から随時得られる安否情報は、安否情報データベースに登録されることとなる。また、住民は、情報センタに対して他人の安否情報を照会することもできるようになる。
【0027】
図18は、本システムにおいて、災害発生後に住民に給水情報の通知を行う処理の流れを示すフローチャートである。ここで、給水情報とは、主に給水車の出動予定、給水ポイント、給水量、給水を受けるための条件その他の情報を言うものとする。一般被災者のほか、自主防災組織、民生委員、災害弱者、給水車などに対して、それぞれ必要な給水情報が電子メールなどで適時配信される。この給水情報の通知機能は、災害発生後に断水や水質汚染などにより給水の必要が生じた際に、本システムの管理者により起動されるものである。
【0028】
図18において、まず、データベースから給水車の位置情報を取得する(ステップS1801)。この位置情報は給水車のGPSから取得されたデータを含むものであるが、このデータを基にGISサーバに問い合わせることにより、給水車の地図上の位置を特定することが可能である。続いて、安否情報データベースから、安否情報が既に登録されている被災者の情報を取得する(ステップS1802)。以降の処理は、通知対象者のユーザ種別により異なっている。
【0029】
通知対象者が一般被災者である場合には、図8に示す雛形ファイルbを用いて、給水車の出動予定、給水ポイント、給水量、給水を受けるための条件、その他の情報を含んだ電子メールを作成し送信する(ステップS1803)。通知対象者が災害弱者である場合には、図9に示す雛形ファイルcを用いて、給水車の出動予定、給水ポイント、給水量、給水を受けるための条件などの給水情報に加えて、当該災害弱者の担当者である民生委員などによる個別の配給予定に関する情報を含んだ電子メールを作成し送信する(ステップS1804)。これにより、災害弱者は自らが給水ポイントまで水の配給を受けに行くことができなくとも、民生委員などから水を受け取れるのを知ることができる。
【0030】
通知対象者が給水車(給水作業者)である場合には、災害弱者担当データベースから災害弱者とその担当者とを関連付ける情報を取得し(ステップS1805)、安否情報データベースから、災害弱者の担当者の給水ポイントをその災害弱者に対する給水ポイントとして取得し(ステップS1806)、給水ルート情報データベースから具体的な給水場所を特定する(ステップS1807)。図10に示す雛形ファイルdを用いて、民生委員などの担当者経由で給水を受ける災害弱者に関する給水情報を含んだ電子メールを作成し送信する(ステップS1808)。
【0031】
通知対象者が民生委員である場合には、図11に示す雛形ファイルeを用いて、給水車の出動予定、給水ポイント、給水量、給水を受けるための条件などの給水情報に加えて、当該民生委員が担当する災害弱者への水の配給を依頼する内容を含んだ電子メールを作成し送信する(ステップS1809)。通知対象者が自主防災組織である場合には、図12に示す雛形ファイルfを用いて、給水車の出動予定、給水ポイント、給水量、給水を受けるための条件などの給水情報に加えて、当該自主防災組織が担当する災害弱者への水の配給を依頼する内容を含んだ電子メールを作成し送信する(ステップS1810)。
【0032】
ステップS1803〜S1810において電子メールを配信した記録は、情報センタの給水実施調査データベースに格納される。各通知対象者に給水情報を電子メールで送信した後、データベースの設定ファイルから給水情報の通知間隔や各被災者に設定された重み付けなどを取得し(ステップS1811)、システム管理者により給水情報の通知処理が終了されていなければ、通知間隔の時間分待機した後(ステップS1812)、再びステップS1801から同様の処理を繰り返す。
【0033】
このようにして、給水対象である被災者と給水作業者とにこれから行われる給水についての必要な情報が通知される。給水作業者は、通知された給水情報に基づいて各給水場所を巡回して給水を行い、給水実施に関する情報(各地での配給対象人数、給水場所に集まった人数、配給できなかった対象者の人数など)を情報センタに送信し、給水実施データベースに登録する。
【0034】
図19は、本システムにおいて、給水車による給水活動が完了した後に、災害弱者に給水が行われたかどうかを確認する処理の流れを示すフローチャートである。図19において、まず、安否情報データベースから、安否情報が既に登録されている被災者の情報を取得する(ステップS1901)。給水実施確認対象者が災害弱者である場合には、図13に示す雛形ファイルgを用いて、民生委員や自主防災組織を通じて給水を受けることができたかどうかを調査する電子メールを作成し送信する(ステップS1902)。給水実施確認対象者が民生委員である場合には、図14に示す雛形ファイルhを用いて、担当の災害弱者に給水を行ったかどうかを調査する電子メールを作成し送信する(ステップS1903)。給水実施確認対象者が自主防災組織である場合には、図15に示す雛形ファイルiを用いて、担当の災害弱者に給水を行ったかどうかを調査する電子メールを作成し送信する(ステップS1904)。ステップS1902〜S1904において電子メールを配信した記録は、情報センタの給水実施調査データベースに格納される(ステップS1905)。
【0035】
このような電子メールを受信した災害弱者、民生委員、自主防災組織は、それぞれ、返信の電子メールなどにより給水を受けた/行ったかどうかを情報センタに通知する。それらの情報は情報センタの給水実施調査データベースに格納される。これにより、被災者に対して給水が確実に行われたかどうかの情報が情報センタの給水実施調査データベースに集約されるので、次回の給水車出動を計画する際にはこの情報を利用することにより、給水を必要としているにもかかわらず給水を受けることができなかった一般被災者や災害弱者に優先的に給水が行われるような給水計画を立案することが可能となる。例えば、図6に示す給水実施調査データベースにおいて、給水希望回数と給水実施回数との差を重要度の値として設定すればよい。
【0036】
図20は、本システムにおいて、給水車出動の計画を決定する処理の流れを示すフローチャートである。図20において、まず、給水実施調査データベースから各利用者の給水希望や重要度についての情報を取得する(ステップS2001)。利用者のうち災害弱者については、災害弱者担当データベースからその担当者を特定する(ステップS2002)。安否情報データベースから一般被災者や災害弱者の給水場所等に関する情報を取得する(ステップS2003)。給水ルート情報データベースから一般被災者や災害弱者の担当者の給水場所を特定する(ステップS2004)。設定ファイルから一般被災者や災害弱者に設定された重み付けに関する情報を取得する(ステップS2005)。以上の処理において取得された各利用者の給水希望や重要度と重み付けとを考慮して、給水ルートを生成する(ステップS2006)。生成した給水ルートは給水ルート情報データベースに登録される。
【0037】
このようにして、給水を必要としているにもかかわらず給水を受けることができなかった一般被災者や災害弱者に優先的に給水が行われ、さらに、災害弱者に特に優先的に給水が行われるような給水ルートが生成されることとなる。
【0038】
以上、本発明の救援物資の配布システムについて、具体的な実施の形態を示して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上記各実施形態又は他の実施形態にかかる発明の構成及び機能に様々な変更・改良を加えることが可能である。特に、上記では救援物資として水を配布する実施形態について説明したが、他の救援物資、例えば、食料、医薬品、衣料品、燃料などについても同様に実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の救援物資の配布システムは、サーバとして機能する情報センタと、クライアントとして機能する利用者(あるいは給水作業者を含んでいてもよい)の情報端末とからなるネットワークシステムとして構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の救援物資配布システムの一実施形態について、全体的な構成を概略的に示す図である。
【図2】図1に示す情報センタのデータベースに含まれている情報を概略的に示す模式図である。
【図3】図2に示す災害弱者担当データベースのデータ構成を例示する図である。
【図4】図2に示す安否情報データベースのデータ構成を例示する図である。
【図5】図2に示す給水ルート情報データベースのデータ構成を例示する図である。
【図6】図2に示す給水実施調査データベースのデータ構成を例示する図である。
【図7】図2に示すメール雛形ファイルに含まれるメール雛形の具体例として、住民に安否情報の登録・照会を促すメールの雛形を示す図である。
【図8】図2に示すメール雛形ファイルに含まれるメール雛形の具体例として、一般被災者に給水情報を通知するメールの雛形を示す図である。
【図9】図2に示すメール雛形ファイルに含まれるメール雛形の具体例として、災害弱者に給水情報を通知するメールの雛形を示す図である。
【図10】図2に示すメール雛形ファイルに含まれるメール雛形の具体例として、給水車(給水作業者)に給水情報を通知するメールの雛形を示す図である。
【図11】図2に示すメール雛形ファイルに含まれるメール雛形の具体例として、民生委員に給水情報を通知するメールの雛形を示す図である。
【図12】図2に示すメール雛形ファイルに含まれるメール雛形の具体例として、自主防災組織に給水情報を通知するメールの雛形を示す図である。
【図13】図2に示すメール雛形ファイルに含まれるメール雛形の具体例として、災害弱者への給水実施を確認するために災害弱者に対して送信されるメールの雛形を示す図である。
【図14】図2に示すメール雛形ファイルに含まれるメール雛形の具体例として、災害弱者への給水実施を確認するために民生委員に対して送信されるメールの雛形を示す図である。
【図15】図2に示すメール雛形ファイルに含まれるメール雛形の具体例として、災害弱者への給水実施を確認するために自主防災組織に対して送信されるメールの雛形を示す図である。
【図16】図2に示す設定ファイルのデータ構成を例示する図である。
【図17】本発明の救援物資の配布システムにおいて、災害発生時に住民の安否確認を行う処理の流れを示すフローチャートである。
【図18】本発明の救援物資の配布システムにおいて、災害発生後に住民に給水情報の通知を行う処理の流れを示すフローチャートである。
【図19】本発明の救援物資の配布システムにおいて、給水車による給水活動が完了した後に、災害弱者に給水が行われたかどうかを確認する処理の流れを示すフローチャートである。
【図20】本発明の救援物資の配布システムにおいて、給水車出動の計画を決定する処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
10 情報センタ
11 GISサーバ
12 メインサーバ
13 メールサーバ
14 データベース
21 利用者の情報端末
31 給水車
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被災者への救援物資の配布システムであって、
災害弱者を含む被災者の安否情報、災害弱者とその支援者とを関連付けた情報、並びに救援物資の配布計画に関する情報を含んだデータベースと、
被災者に対する救援物資の配布計画に関する情報を提供する手段とを含み、
災害弱者にはその支援者を通じた救援物資配布に関する情報を提供し、災害弱者の支援者にはその災害弱者に対する救援物資配布に関する情報を提供することを特徴とする救援物資の配布システム。
【請求項2】
請求項1に記載の救援物資の配布システムにおいて、
被災者に対する救援物資の配布実績に関する情報を被災者から取得する手段をさらに含んでおり、
災害弱者からはその支援者を通じた救援物資の配布実績に関する情報を取得し、災害弱者の支援者からはその災害弱者に対する救援物資の配布実績に関する情報を取得することを特徴とする救援物資の配布システム。
【請求項3】
請求項2に記載の救援物資の配布システムにおいて、
取得された被災者に対する救援物資の配布実績に関する情報に基づいて、救援物資の配布計画を作成又は修正する手段をさらに含んでいることを特徴とする救援物資の配布システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の救援物資の配布システムにおいて、
被災者からの救援物資の配布希望を受け付ける手段をさらに含んでおり、
被災者からの救援物資の配布希望と、その被災者に対する救援物資の配布実績とから、その被災者に関する救援物資配布の重要度を決定し、該重要度に基づいて救援物資の配布計画を作成又は修正することを特徴とする救援物資の配布システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の救援物資の配布システムにおいて、
前記データベースは、被災者のうち災害弱者とその他の被災者とにそれぞれ重み付けを設定した情報を含んでおり、
該重み付けに基づいて被災者に対する救援物資の配布計画を作成又は修正することを特徴とする救援物資の配布システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の救援物資の配布システムにおいて、
救援物資の運搬手段からその位置情報を取得する手段をさらに含んでおり、
被災者に救援物資の運搬手段の位置情報を提供することを特徴とする救援物資の配布システム。
【請求項7】
請求項6に記載の救援物資の配布システムにおいて、
前記救援物資の運搬手段は車両であり、GPS及びGISを利用して該車両の位置情報を取得することを特徴とする救援物資の配布システム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の救援物資の配布システムにおいて、
前記救援物資の運搬手段に対しても救援物資の配布計画に関する情報を提供し、また、前記救援物資の運搬手段からも救援物資の配布実績に関する情報を取得することを特徴とする救援物資の配布システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の救援物資の配布システムにおいて、
被災者は、インターネットにアクセス可能な情報端末を用いて、救援物資の配布計画に関する情報を受信し、救援物資の配布実績に関する情報を送信することを特徴とする救援物資の配布システム。
【請求項1】
被災者への救援物資の配布システムであって、
災害弱者を含む被災者の安否情報、災害弱者とその支援者とを関連付けた情報、並びに救援物資の配布計画に関する情報を含んだデータベースと、
被災者に対する救援物資の配布計画に関する情報を提供する手段とを含み、
災害弱者にはその支援者を通じた救援物資配布に関する情報を提供し、災害弱者の支援者にはその災害弱者に対する救援物資配布に関する情報を提供することを特徴とする救援物資の配布システム。
【請求項2】
請求項1に記載の救援物資の配布システムにおいて、
被災者に対する救援物資の配布実績に関する情報を被災者から取得する手段をさらに含んでおり、
災害弱者からはその支援者を通じた救援物資の配布実績に関する情報を取得し、災害弱者の支援者からはその災害弱者に対する救援物資の配布実績に関する情報を取得することを特徴とする救援物資の配布システム。
【請求項3】
請求項2に記載の救援物資の配布システムにおいて、
取得された被災者に対する救援物資の配布実績に関する情報に基づいて、救援物資の配布計画を作成又は修正する手段をさらに含んでいることを特徴とする救援物資の配布システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の救援物資の配布システムにおいて、
被災者からの救援物資の配布希望を受け付ける手段をさらに含んでおり、
被災者からの救援物資の配布希望と、その被災者に対する救援物資の配布実績とから、その被災者に関する救援物資配布の重要度を決定し、該重要度に基づいて救援物資の配布計画を作成又は修正することを特徴とする救援物資の配布システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の救援物資の配布システムにおいて、
前記データベースは、被災者のうち災害弱者とその他の被災者とにそれぞれ重み付けを設定した情報を含んでおり、
該重み付けに基づいて被災者に対する救援物資の配布計画を作成又は修正することを特徴とする救援物資の配布システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の救援物資の配布システムにおいて、
救援物資の運搬手段からその位置情報を取得する手段をさらに含んでおり、
被災者に救援物資の運搬手段の位置情報を提供することを特徴とする救援物資の配布システム。
【請求項7】
請求項6に記載の救援物資の配布システムにおいて、
前記救援物資の運搬手段は車両であり、GPS及びGISを利用して該車両の位置情報を取得することを特徴とする救援物資の配布システム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の救援物資の配布システムにおいて、
前記救援物資の運搬手段に対しても救援物資の配布計画に関する情報を提供し、また、前記救援物資の運搬手段からも救援物資の配布実績に関する情報を取得することを特徴とする救援物資の配布システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の救援物資の配布システムにおいて、
被災者は、インターネットにアクセス可能な情報端末を用いて、救援物資の配布計画に関する情報を受信し、救援物資の配布実績に関する情報を送信することを特徴とする救援物資の配布システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2006−85354(P2006−85354A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268462(P2004−268462)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
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