教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラム
【課題】教育機関で用いられる教育用教材について、情報入力等の手間を省きつつ、正誤判定の記入内容についての自動採点集計を可能とする。
【解決手段】教育用教材20から画像データを得る読み取り手段2と、解答欄への解答の記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされた教育用教材から得た画像データと前記解答欄が未記入の教育用教材20から得た画像データとの差分を抽出する追記情報抽出手段6と、その差分抽出結果から前記正誤判定の記入内容を認識する正誤判定認識手段8〜10と、その認識結果である前記正誤判定の記入内容に対する順番付けを行って当該認識結果と前記複数の問題との対応付けを行う追記順番算出手段11と、その対応付けの結果を基に前記教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行う採点集計手段12と、を備えて教材処理装置を構成する。
【解決手段】教育用教材20から画像データを得る読み取り手段2と、解答欄への解答の記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされた教育用教材から得た画像データと前記解答欄が未記入の教育用教材20から得た画像データとの差分を抽出する追記情報抽出手段6と、その差分抽出結果から前記正誤判定の記入内容を認識する正誤判定認識手段8〜10と、その認識結果である前記正誤判定の記入内容に対する順番付けを行って当該認識結果と前記複数の問題との対応付けを行う追記順番算出手段11と、その対応付けの結果を基に前記教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行う採点集計手段12と、を備えて教材処理装置を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、教育機関で用いられる教育用教材を取り扱う教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムに関し、特にその教育用教材についての採点処理を行う教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、学校や塾等の教育機関では、例えばペーパーテストや練習問題シートのような教育用教材を用いることが多い。すなわち、問題およびその解答欄を有した教育用教材を用いて、その教育用教材上に生徒に解答を記入させ、その記入された解答に対して教師が採点を行う、といったことが広く行われている。
【0003】
ところで、教育用教材については、その採点処理の省力化が強く求められている。これに応えるべく、採点処理の省力化を実現するものとしては、例えば、パーソナルコンピュータ(以下、単に「PC」という)に採点台および採点ペンを接続し、採点台の所定位置に教育用教材を載置した状態で採点ペンによって○×付けを実施することで、PCに対して教育用教材上に記入された解答の位置情報およびその正否情報を入力し得るようにし、これによりPCにて教育用教材上の解答についての自動採点を実施するように構成されたシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平6−266278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただし、教育用教材についての採点処理にあたり、採点台や採点ペン等といった専用の構成機器を必要とすることは、必ずしも好適とはいえない。専用の構成機器は、システム全体の構成の複雑化や高コスト化等を招く要因となり得るからである。また、専用の構成機器を必要とすると、対応可能な教育用教材が限定されてしまい、その教育用教材についての汎用性が制限されてしまうおそれもある。
【0006】
その一方で、近年、教育機関には、PCや複写機、あるいはスキャン機能、プリント機能およびネットワーク通信機能等を統合した、いわゆる複合機が設置されて用いられていることが一般的である。
このことから、教育用教材の採点処理については、例えば「○」または「×」といった正誤判定の記入がされた教育用教材について、これを複写機等のスキャン機能を用いて読み取り、その読み取り結果である画像データに対してPC等の画像処理機能を用いて画像処理を行うことで、特別な構成機器を必要とすることなく、教育用教材上の解答についての自動採点を可能にすることも考えられる。具体的には、教育用教材から画像データを得ると、その画像データから正誤判定の記入内容を抽出することで、教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行い、さらにはその画像データから教育用教材への解答記入者による記名内容を抽出して、OCR(Optical Character Reader)技術等によりその解答記入者の特定を行い、これらの採点集計結果と解答者特定結果とを互いに関連付けて出力することで、上述した特許文献1に開示されたものと同様の自動採点結果が得られるようになる。
【0007】
ところで、上述したような教育用教材の採点処理にあたっては、教育用教材上における解答欄の位置と、その解答欄に記入された解答に対する正誤判定の記入位置との対応を明確にする必要がある。正誤判定の記入は、教師等によって手書きでされるため、各解答欄に対する記入位置が必ずしも一義的に定まっている訳ではないのに対し、正誤判定の採点集計は、各解答欄に対応する正誤判定を記入結果を明確にした上で、その正誤判定の内容(正解か不正解か)と各解答欄についての配点とに基づいて行われるため、解答欄の位置と正誤判定の記入位置との対応が明確でないと、各解答に対する正誤や配点等が認識できずに、結果として採点集計が行えないおそれが生ずるからである。
【0008】
解答欄の位置と正誤判定の記入位置との対応付けは、それぞれの位置を教育用教材上における座標値で表し、その座標値を用いて行うことが考えられる。
しかしながら、座標値を用いた対応付けを行うためには、その座標値の入力処理が必要になったり、あるいはその座標値の自動算出処理が必要になってしまう。座標値の入力処理は、一般に教育用教材上に複数の問題およびその解答欄が配されていることや、教育用教材についても学科別や生徒の学年別等の如く様々な種類が存在すること等を考慮すると、そのための作業が非常に煩雑なものとなってしまい、作業ミス等も生じ得るため、極力回避すべきである。また、座標値の自動算出処理についても、その処理負荷等を考慮すると、必ずしも好ましいとは言えない。
【0009】
そこで、本発明は、教育機関で用いられる教育用教材について、配点情報の手入力等の手間を省きつつ、正誤判定の記入内容についての自動採点集計を行うことを可能とし、これによりその採点処理の省力化を実現することのできる、教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために案出された教材処理装置で、複数の問題それぞれについての解答欄を有した教育用教材に対する画像読み取りを行って当該教育用教材から画像データを得る読み取り手段と、前記解答欄への解答の記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされた教育用教材から得た画像データと前記解答欄が未記入の教育用教材についての画像データとを比較して差分を抽出する追記情報抽出手段と、前記追記情報抽出手段による差分抽出結果から前記正誤判定の記入内容を認識する正誤判定認識手段と、前記正誤判定認識手段での認識結果である前記正誤判定の記入内容に対する順番付けを行って当該認識結果と前記複数の問題との対応付けを行う追記順番算出手段と、前記正誤判定認識手段による認識結果および前記追記順番算出手段による対応付けの結果を基に、前記読み取り手段が画像読み取りを行った教育用教材について、当該教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行う採点集計手段とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明は、上記目的を達成するために案出された教材処理方法で、複数の問題それぞれについての解答欄を有した教育用教材に対する画像読み取りを行って当該教育用教材から画像データを得る読み取りステップと、前記解答欄への解答の記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされた教育用教材から得た画像データと前記解答欄が未記入の教育用教材についての画像データとを比較して差分を抽出する追記情報抽出ステップと、前記追記情報抽出ステップでの差分抽出結果から前記正誤判定の記入内容を認識する正誤判定認識ステップと、前記正誤判定認識ステップでの認識結果である前記正誤判定の記入内容に対する順番付けを行って当該認識結果と前記複数の問題との対応付けを行う追記順番算出ステップと、前記正誤判定認識ステップでの認識結果および前記追記順番算出ステップでの対応付けの結果を基に、前記読み取りステップで画像読み取りを行った教育用教材について、当該教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行う採点集計ステップとを含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記目的を達成するために案出された教材処理プログラムで、複数の問題それぞれについての解答欄を有した教育用教材に対する画像読み取りを行って当該教育用教材から画像データを得る画像読み取り装置と接続するコンピュータを、前記解答欄への解答の記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされた教育用教材から得た画像データと前記解答欄が未記入の教育用教材についての画像データとを比較して差分を抽出する追記情報抽出手段と、前記追記情報抽出手段による差分抽出結果から前記正誤判定の記入内容を認識する正誤判定認識手段と、前記正誤判定認識手段での認識結果である前記正誤判定の記入内容に対する順番付けを行って当該認識結果と前記複数の問題との対応付けを行う追記順番算出手段と、前記正誤判定認識手段による認識結果および前記追記順番算出手段による対応付けの結果を基に、前記画像読み取り装置が画像読み取りを行った教育用教材について、当該教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行う採点集計手段として機能させることを特徴とするものである。
【0013】
上記構成の教材処理装置、上記手順の教材処理方法、および、上記構成の教材処理プログラムでは、解答欄への解答の記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされた教育用教材から得た画像データと、解答欄が未記入の教育用教材についての画像データとの差分から、正誤判定の記入内容を認識する。そして、その認識結果である正誤判定の記入内容に対する順番付けを行って、当該認識結果と各問題との対応付けを行うようになっている。ここで、順番付けとしては、例えば教育用教材における上辺側から走査した場合の出現順に番号を付す、といったものが考えられる。すなわち、教育用教材上における複数の問題には問題番号が付されていることが一般的なので、その問題番号と正誤判定の記入の出現順の番号とを用いて、正誤判定の記入内容と各問題との対応付けを行うことが考えられる。
したがって、例えば教育用教材上に複数の問題およびその解答の記入欄が配されており、それぞれに対する配点が異なる場合であっても、正誤判定の記入内容と問題との対応関係が明確となるので、その正誤判定についての採点集計を行うことが可能となる。しかも、正誤判定の記入内容の認識結果に対する順番付けを行って各問題との対応付けを行うので、それぞれの教育用教材上における座標値の入力処理や自動算出処理等を必要とすることもない。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムでは、教育機関で用いられる教育用教材について、例えばその教育用教材上に複数の問題およびその解答の記入欄が配されており、それぞれに対する配点が異なる場合であっても、正誤判定の記入内容についての自動採点集計を行うことが可能であり、しかもそのために情報入力の手間や過大な処理負荷等を要してしまうこともなく、その採点処理の省力化を実現することができる。したがって、教育機関で用いるのにあたり非常に利便性の高いものとなり、信頼性の高い採点処理を円滑に行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づき本発明に係る教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムについて説明する。
【0016】
先ず、教材処理装置の概略構成について説明する。図1は本発明に係る教材処理装置の概略構成例を示すブロック図であり、図2はその要部の機能構成例を示すブロック図である。
【0017】
図例のように、ここで説明する教材処理装置は、データベース部1と、画像読み取り部2と、画像データ解析部3と、教材判別部4と、歪み補正部5と、差分抽出部6と、解答者抽出部7と、正誤判定抽出部8と、途切れ補正部9と、図形形状認識部10と、位置対応付け部11と、採点集計部12と、集計結果出力部13と、を備えて構成されている。さらに、手動修正部15を備えたものであってもよい。
【0018】
データベース部1は、教育用教材についての電子データを保持蓄積するものである。
【0019】
ここで、教育用教材について簡単に説明する。図3は、教育用教材の一具体例を示す説明図である。図例のように、教育用教材20は、複数の問題と各問題それぞれについての解答欄21を有したもので、具体的には教育機関で用いられるペーパーテストや練習問題シート等がこれに相当する。ただし、教育用教材20は、問題文については必ずしも記載されていなくともよい。
また、教育用教材20には、その教育用教材を識別特定するための識別情報欄22と、解答欄21への解答記入者に関する解答者情報欄23と、を有している。識別情報欄22には、例えば教育用教材の科目、タイトル、適用学年等が予め記載されるものとする。ただし、これらの記載に加えて、またはこれらの記載とは別に、教育用教材20を識別するためのコード情報が埋め込まれていてもよい。コード情報の埋め込みは、公知技術を利用して実現すればよいが、その一つの具体例として、例えば「iTone(登録商標)」と呼ばれるもののように、階調表現としての万線スクリーンまたはドットスクリーンを構成する画素の形態(位置、形状等)を変化させることで、ハーフトーン画像の中にデジタル情報を埋め込むようにする、といった技術を用いることが考えられる。一方、解答者情報欄23には、解答記入者の学級、出席番号、氏名等が記入され得るようになっている。
【0020】
このような教育用教材20についての電子データは、その教育用教材20おける解答欄21や識別情報欄22等のレイアウトを特定し得るものであり、かつ、データベース部1にて保持蓄積可能なものであれば、そのデータ形式を問わない。具体的には、例えば、後述する画像読み取り部2での画像読み取りによって得られるラスター形式の画像データを、教育用教材20についての電子データとして記憶保持することが考えられる。
【0021】
ただし、教育用教材20の電子データは、その教育用教材20についての答案情報を含んでいるものとする。図4は、答案情報の一具体例を示す説明図である。答案情報とは、教育用教材20毎の、教育用教材20上における各問題の番号、問題文および解答欄21の配置レイアウト、各問題それぞれの解答欄21についての配点を特定するための情報である。配置レイアウトを特定する情報としては、例えば、段組(段数、区分位置等)情報や横書き/縦書き情報が挙げられる。また、配点を特定する情報としては、教育用教材20上における各解答欄21について、それぞれの配点を示す配点情報が挙げられる。なお、配点は、各解答欄21毎に異なっていても、あるいは一律であっても構わない。
【0022】
また図1,2において、画像読み取り部2は、読み取り対象となる教育用教材20に対して、公知の光学的画像読み取り技術を用いた画像読み取りを行って、その教育用教材20から画像データを得るものである。すなわち、画像読み取り部2は、本発明における読み取り手段として機能するものである。読み取り対象となる教育用教材20としては、解答欄21への解答記入、解答者情報欄23への氏名等の記入および当該解答に対する正誤判定(具体的には、例えば「○」または「×」の図形)の記入がされたものが挙げられる。また、データベース部1内への電子データの記憶保持のために、各欄21,23が未記入であるもの(以下「原本」という)も、画像読み取り部2での読み取り対象となり得る。
【0023】
画像データ解析部3は、画像読み取り部2で得られた画像データについて、その解析処理を行うものである。解析処理としては、レイアウト解析、文字図形分離、文字認識、コード情報認識、図形処理、色成分認識等が挙げられるが、いずれも公知の画像処理技術を利用して実現すればよいため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0024】
教材判別部4は、タイトル解析部とコード情報解析部との少なくとも一方からなるもので、画像データ解析部3での解析処理の結果、特に識別情報欄22についてのタイトル解析部によるタイトル解析またはコード情報解析部によるコード解析の少なくとも一方の結果を基にして、画像読み取り部2で得られた画像データの元となった教育用教材を識別特定するものである。このとき、教材判別部4では、データベース部1が電子データを保持蓄積している教育用教材と照らし合わせ、該当する電子データがデータベース部1に保持蓄積されていなければ、教育用教材の識別特定エラーと判定するようになっている。
【0025】
歪み補正部5は、画像読み取り部2で得られた画像データに対して、その画像データにおける画像歪みの補正を行うものである。画像歪みの補正としては、傾き補正や主走査方向または副走査方向の拡縮補正等が挙げられるが、いずれも公知の画像処理技術を利用して実現すればよいため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0026】
差分抽出部6は、教材判別部4での教育用教材の識別特定の結果に基づいて、画像読み取り部2で得られた画像データで、歪み補正部5での画像歪みの補正処理後のものと、その比較対象となるデータベース部1内の電子データとを比較して、それぞれの間の差分を抽出するものである。すなわち、差分抽出部6は、本発明における追記情報抽出手段として機能するものである。なお、差分抽出処理の手法自体については、公知の画像処理技術を利用して実現すればよいため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0027】
解答者抽出部7は、出席番号情報切り出し部と手書きOCR(Optical Character Reader)部との少なくとも一方、好ましくは両方からなるもので、画像データ解析部3での解析処理の結果を基にしつつ、差分抽出部6に抽出された差分のうち、解答者情報欄23についての差分に対し、その差分からの出席番号情報切り出し部による文字情報抽出や手書きOCR部による文字認識処理等を通じて、画像読み取り部2で読み取り対象となった教育用教材における解答者情報を抽出するものである。解答者情報としては、解答記入者の学級、出席番号、氏名等といった、解答記入者を識別するための情報が挙げられる。
【0028】
正誤判定抽出部8は、画像データ解析部3での解析処理の結果を基にしつつ、差分抽出部6に抽出された差分から、さらに正誤判定の記入内容を抽出するものである。正誤判定の記入内容の抽出は、例えば差分抽出部6での抽出結果に対する色成分認識処理を通じて、所定色成分についてのものを抽出することによって行えばよい。一般に、正誤判定の記入は、赤色で行われるからである。
【0029】
途切れ補正部9は、正誤判定抽出部8での抽出結果に対して途切れ補正処理を行うものである。途切れ補正処理とは、抽出された線分同士を接続して、その抽出線分間の途切れを解消するための処理である。
【0030】
図形形状認識部10は、正誤判定抽出部8で抽出され、途切れ補正部9で途切れ補正がされた正誤判定の記入内容に対して、その形状認識を行って、その正誤判定の記入内容を認識するものである。形状認識は、例えば「○」または「×」の図形形状とのパターンマッチングによって行えばよい。すなわち、図形形状認識部10は、正誤判定の記入内容が「正解(○)」または「不正解(×)」であるかを認識するものである。すなわち、これら図形形状認識部10は、本発明における正誤判定認識手段として機能するものである。
【0031】
位置対応付け部11は、図形形状認識部10での認識結果である正誤判定の記入内容に対する順番付けを行って、その認識結果と教育用教材20上における各問題との対応付けを行うものである。すなわち、位置対応付け部11は、本発明における追記順番算出手段として機能するものである。この位置対応付け部11での対応付けの結果と、図形形状認識部10での認識結果(「○」または「×」の認識結果)と、データベース部1内に記憶保持されている配点情報を含む答案情報により、後述する教育用教材20についての採点集計処理を行うことが可能となるのである。
【0032】
採点集計部12は、図形形状認識部10による正誤判定の記入内容の認識結果と、記入位置認識部11による正誤判定の記入位置の認識結果と、データベース部1が保持蓄積している教育用教材の電子データに含まれる当該教育用教材の各解答欄21についての配点情報とを基にして、画像読み取り部2が画像読み取りを行った教育用教材について、その教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行うものである。すなわち、採点集計部12は、本発明における採点集計手段として機能するものである。
【0033】
集計結果出力部13は、採点集計部12による採点集計の結果を、解答者抽出部7が抽出した解答者情報と関連付けて出力するものであり、本発明における集計結果出力手段として機能するものである。なお、集計結果出力部13による出力先としては、教材処理装置と接続するデータベース装置31またはファイルサーバ装置32で、教育用教材についての採点集計結果を管理するものが挙げられる。
【0034】
手動修正部15は、位置対応付け部11や採点集計部12での処理結果に対して、必要に応じて教材処理装置の利用者が修正を加えるためのものである。なお、この手動修正部15は、必須ではないため、備えていなくともよい。
【0035】
なお、以上に説明した各部1〜15のうち、画像読み取り部2については、画像読み取り装置としての機能を有した複写機、複合機またはスキャナ装置を利用して実現することが考えられる。その場合に、自動原稿搬送装置(Automatic Document Feeder;ADF)が付設されていると、複数の教育用教材に対する画像読み取りを連続的に行うことができる。
また、画像読み取り部2を除く他の各部1,3〜15については、例えばPCのように、所定プログラムを実行することによって情報記憶処理機能、画像処理機能、演算処理機能等を実現するコンピュータ機器を利用して実現することが考えられる。その場合に、各部1,3〜15の実現に必要となる所定プログラムは、予めPC内にインストールしておくことが考えられるが、予めインストールされているのではなく、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納されて提供されるものであっても、または有線若しくは無線による通信手段を介して配信されるものであってもよい。つまり、上述した構成の教材処理装置は、画像読み取り装置と接続するコンピュータを教材処理装置として機能させる教材処理プログラムによっても実現可能である。
【0036】
次に、以上のように構成された教材処理装置(教材処理プログラムによっても実現される場合を含む)における処理動作例、すなわち本発明に係る教材処理方法の手順について説明する。図5は、本発明に係る教材処理装置における処理動作例を示す説明図である。
【0037】
教材処理装置を利用する場合には、予めデータベース部1内に採点集計処理の対象となる教育用教材20の原本についての電子データが保持蓄積されており、またその電子データには当該教育用教材20の配点情報を含む答案情報が含まれているものとする。これら電子データ、配点情報を含む答案情報の予めデータベース部1内への登録は、画像読み取り部2での画像読み取りや画像データ解析部3でのレイアウト(段組)解析等を利用して行えばよいが、その詳細については公知技術を利用して行えばよいため、ここではその説明を省略する。
【0038】
そして、採点集計処理にあたっては、先ず、生徒等によって解答者情報欄23への氏名等の記入および解答欄21への解答記入がされ、さらに教師等によって各解答欄21に記入された解答に対する「○」や「×」等の正誤判定の図形記入がされた教育用教材20について、画像読み取り部2が画像読み取りを行って、その教育用教材20からの画像データを得る(ステップ101、以下ステップを「S」と略す)。このとき、ADFを用いれば、例えば同一学級のような一つのグループに纏めて処理すべき複数の教育用教材20について、一括して画像読み取りを行って、各教育用教材20から連続的に画像データを得ることができる。そして、画像読み取りによって得られた画像データについては、一旦ワークエリアとして用いられるメモリ等に保持しておく。
【0039】
その後は、各教育用教材20から得られたそれぞれの画像データに対して、順次、以下のような自動採点処理が行われる(S102)。
【0040】
すなわち、ある一つの教育用教材20から得られた画像データについて、画像データ解析部3がその解析処理を行い、その解析処理の結果に基づいて教材判別部4が教育用教材20の識別特定を行う。この識別特定は、例えば「理科」「5年」「1.天気と気温の変化」といったタイトル解析または教材判別部4に埋め込まれたコード情報についてのコード解析を通じて行えばよい。この識別特定を経ることで、教材判別部4では、画像読み取り部2で得られた画像データとの比較対象となる電子データを特定することが可能となる。なお、この識別特定は、画像読み取り部2が画像読み取りを行った複数の教育用教材20のそれぞれについて順次行うことも考えられるが、一般に一つのグループに纏めて処理される教育用教材20は全て同一のものであるため、その纏めて処理される中で最初に処理される教育用教材20についてのみ行えばよい。
【0041】
教材判別部4が電子データを特定すると、データベース部1は、その特定結果に従いつつ、保持蓄積している中から該当する電子データを取り出して、これを差分抽出部6へ受け渡す。
【0042】
また、ある一つの教育用教材20から得られた画像データについては、歪み補正部5がその画像データにおける画像歪みの補正を行う。この画像歪みの補正は、画像読み取り部2での画像読み取りの際に生じ得る画像歪みを補正するために行うものであり、その後に行う電子データとの比較や差分抽出等の精度向上を図るためのものである。
【0043】
そして、差分抽出部6は、データベース部1から受け渡された電子データと、画像読み取り部2で得られ、歪み補正部5で画像歪みが補正された後の画像データとを、それぞれ比較して、その差分を抽出する。この差分抽出によって、解答者情報欄23および各解答欄21への記入内容並びに各解答欄21に対する正誤判定の記入内容が抽出されることになる。
【0044】
差分抽出部6が差分を抽出すると、その後は、解答者抽出部7が、その差分に対する文字認識処理等を通じて、画像読み取り部2で読み取り対象となった教育用教材における解答者情報を抽出する。これにより、ある一つの教育用教材20に解答を記入した解答記入者の学級、出席番号、氏名等を特定することが可能となる。
【0045】
また、差分抽出部6による差分抽出結果に対しては、各解答欄21への正誤判定の記入内容を抽出するために、その差分抽出結果から正誤判定抽出部8がさらに所定色成分についてのもの、具体的には例えば赤色成分のものを抽出する。所定色成分の抽出は、例えば差分抽出結果が画素データからなる場合であれば、その画素データを構成する色成分データに着目することで行うことができる。
【0046】
ただし、一般に、教育用教材20上での「○」や「×」等の正誤判定の図形記入は、問題文、各解答欄21を特定する枠、各解答欄21への解答記入内容等に重ねて行われることが多い。そのため、正誤判定抽出部8による所定色成分の抽出結果は、その重なり部分が除かれたもの、すなわち「○」や「×」等の図形に途切れ部分が生じたものとなるおそれがある。このことから、正誤判定抽出部8による所定色成分の抽出結果に対しては、途切れ補正部9が途切れ補正処理を行う。
【0047】
ここで、途切れ補正部9による途切れ補正処理について詳しく説明する。
【0048】
図6は、途切れ補正処理の一例を示す説明図である。
途切れ補正処理にあたっては、図6(a)に示すように、正誤判定抽出部8による所定色成分の抽出結果、すなわち「○」や「×」等の図形であるはずの抽出結果に対して、細線化処理を実行し(S201)、さらに端点抽出処理を実行する(S202)。これにより、「○」や「×」等の図形に途切れ部分が生じている場合に、その途切れ部分における端点が抽出されることになる。なお、このときに行う細線化処理および端点抽出処理は、公知技術を利用して行えばよいため、ここではその詳細な説明を省略する。
そして、端点を抽出したら、その抽出した全ての端点に対して、以下のような処理を実行する(S203)。すなわち、先ず、未処理の端点を一つ選択し(S204)、その選択した端点(以下「第一端点」という)から、予め設定されている所定距離内にあって、かつ、最も近傍にある未処理の端点(以下「第二端点」という)をさらに選択する(S205)。そして、第二端点があれば(S206)、第一端点と第二端点とを互いに接続するとともに(S207)、第一端点および第二端点をいずれも処理済みにする(S208)。一方、第二端点が存在しない場合には(S206)、端点間の接続は行わずに、第一端点を処理済みにする(S209)。このような処理を、未処理の端点がなくなるまで、全ての端点に対して行う(S203〜S209)。
これにより、例えば図6(b)に示す図形が抽出された場合には、端点Aに対して、所定距離内に端点B,Cが存在していても、その中で最も近傍の端点Bが端点Aと接続されることとなり、「○」の図形における途切れ部分が補正されることになる。
【0049】
図7は、途切れ補正処理の他の例を示す説明図である。
途切れ補正処理の他の例では、正誤判定抽出部8による所定色成分の抽出結果の他に、歪み補正部5による画像歪み補正後の画像データをも用いて、途切れ補正処理の精度向上を図っている。すなわち、途切れ補正処理の他の例では、図7(a)に示すように、歪み補正部5による画像歪み補正後の画像データに対して二値化処理を行う(S301)。ただし、差分抽出部6による差分抽出または正誤判定抽出部8による所定色成分の抽出の際に二値化処理をしていれば、その二値化処理後の画像データを使用しても構わない。
また、正誤判定抽出部8による所定色成分の抽出結果に対しては、細線化処理を実行し(S302)、さらに端点抽出処理を実行する(S303)。そして、端点を抽出したら、その抽出した全ての端点に対して、以下のような処理を実行する(S304)。
先ず、未処理の端点を一つ選択し(S305)、その選択した第一端点から、予め設定されている所定距離内にあって、かつ、最も近傍にある未処理の端点を第二端点として選択する(S306)。そして、第二端点があれば(S307)、第一端点と第二端点とを連結するような画素群が、二値化処理後の画像データ中にあるか否かを判断する(S308)。つまり、途切れの発生要因となった画像の重なり部分があるか否かを判断するのである。その結果、重なり部分があれば、第一端点と第二端点とを互いに接続するとともに(S309)、第一端点および第二端点をいずれも処理済みにする(S310)。一方、重なり部分がなければ、上述したステップ(S306)に戻り、第一端点から所定距離内にあって、かつ、最も近傍の端点の次に近距離にある端点を第二端点として選択する。このとき、選択すべき端点がなければ、端点間の接続は行わずに、第一端点を処理済みにする(S311)。このような処理を、未処理の端点がなくなるまで、全ての端点に対して行う(S304〜S311)。
これにより、例えば図7(b)に示す図形が抽出された場合に、端点Aに対して、所定距離内に端点B,Cが存在していると、その中で最も近傍の端点Cが選択されるが、二値化処理後の画像データ中に端点A,C間を連結する画素群がないので、端点A,C間は接続しない。そして、端点Cの次に距離の近い端点Bを選択されるが、その端点Bと端点Aとの間には二値化処理後の画像データ中に画素群が存在するので、端点Bが端点Aと接続されることになる。つまり、「○」と「×」とが誤って接続されてしまうことなく、「○」の図形における途切れ部分が補正されるのである。
【0050】
以上のような途切れ補正部9による途切れ補正処理の後は、図形形状認識部10が正誤判定の記入内容に対する形状認識、すなわち「○」または「×」の図形形状とのパターンマッチングを行って、その正誤判定の記入内容が「正解」であるか、あるいは「不正解」であるかを認識する。このときに行うパターンマッチングは、公知技術を利用して実現すればよいため、ここではその説明を省略する。
【0051】
そして、図形形状認識部10が正誤判定の記入内容に対する形状認識を行うと、続いて、位置対応付け部11は、その認識結果である正誤判定の記入内容に対する順番付けを行う。ここで、順番付けとしては、例えば教育用教材20における上辺側から走査した場合の出現順に番号を付す、といったものが考えられる。すなわち、教育用教材20上における複数の問題には問題番号が付されていることが一般的なので、その問題番号と正誤判定の記入の出現順の番号とを用いて、正誤判定の記入内容と解答欄21との対応付けを行うことが考えられる。なお、位置対応付け部11による順番付けの際には、「○」または「×」の図形を構成する連続画素群を一つに纏めて取り扱うために、その連続画素群の外接矩形領域を抽出し、その外接矩形領域に対して識別子を付与すべく、一般的な画像処理技術であるラベリング処理が行われている。このことから、記入位置認識部11による位置認識の際にも、そのラベリング処理の結果を利用して、「○」または「×」の図形を構成する連続画素群(領域)を一つの纏まりとして取り扱う。
【0052】
ここで、位置対応付け部11による正誤判定記入内容の順番付け処理について詳しく説明する。図8〜10は、正誤判定記入内容の順番付け処理手順の一例を示す説明図である。
【0053】
順番付け処理にあたって、位置対応付け部11は、先ず、データベース部1から答案情報を読み出して、処理対象である教育用教材20の段組有無や文章方向(縦書き/横書き)等を判別して、順番付けの方向を認識する。すなわち、教育用教材20上における解答欄21の配置レイアウトを判別するとともに、以下に述べるように、判別したレイアウトに対応した態様での順番付けを行うのである。
【0054】
具体的には、例えば図4に示したような横書き三段組みの教育用教材20であれば、図8に示すように、段組情報に基づき、ワークエリアとして用いられるメモリ上で、その三段組みの画像データを一段組に変更する。
【0055】
そして、位置対応付け部11は、その変更後の一段組みの画像データについて、図9に示すように、所定箇所(例えば上端または右端)から走査していき、「○」または「×」の図形領域が出現した順に、その図形領域に対して番号を付す。このとき、例えば上端から順に走査していき、同じ行に「○」または「×」の図形領域が見つかった場合には、答案情報の縦書き/横書きの別を認識して、左から右(または上から下)に順番を付ける。
【0056】
位置対応付け部11は、このような順番付けを、教育用教材20上に存在する全ての「○」または「×」の図形領域について行い、その順番付けの結果をデータベース部1内に登録する。このときの登録は、図10に示すように、順番付けの結果を、答案情報の一部として、その答案情報における各問題それぞれに関連付けるようにして行うことが考えられる。これにより、教育用教材20上における各問題(当該問題についての解答欄21)と、その解答欄21に記入された解答に対する正誤判定の記入内容(「○」か「×」か)と、各解答欄21についての配点とが、正誤判定の記入内容への順番付けを介して、それぞれ互いに対応付けられることになる。
【0057】
このようにして、位置対応付け部11が正誤判定記入内容に対する順番付けを行って、その正誤判定記入内容と各問題との対応付けを行った後は、採点集計部12が正誤判定の採点集計を行う。このとき、採点集計部12は、正誤判定図形が「○」であれば、これに対応する問題についての配点情報から特定される配点を加算し、また正誤判定図形が「×」であれば、これに対応する問題についての配点加算を行わず、このような採点集計を教育用教材20上の全ての正誤判定記入内容について行う。
【0058】
以上のような処理を経ることで、採点集計部12からは、教育用教材20上に記入された正誤判定の採点集計の結果が、問題別採点結果として出力されるのである。図11は、問題別採点結果の一具体例を示す説明図である。問題別採点結果は、教育用教材20上に存在する問題の番号と、その問題の解答に対する正誤判定と、その正誤判定に基づく得点とからなる情報で、図例のように、これらを互いに関連付けるテーブル形式で、採点集計部12から出力されるものである。
【0059】
採点集計部12から問題別採点結果が出力されると、その後は、集計結果出力部13が、その問題別採点結果、すなわち採点集計部12による採点集計の結果を、解答者抽出部7が抽出した解答者情報と関連付けて、教材処理装置と接続するデータベース装置31またはファイルサーバ装置32に対して出力する(図5におけるS103)。これにより、データベース装置31またはファイルサーバ装置32では、教育用教材20についての採点集計結果を、例えば一覧形式で、管理または利用することが可能となる。
【0060】
以上に説明したように、本実施形態における教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムでは、正誤判定の記入がされた教育用教材20から読み取った画像データと、その教育用教材20についての電子データ、すなわち解答欄21への解答記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされていない原本についてのデータとを比較し、互いの差分から正誤判定の記入内容を認識して、その正誤判定の採点集計を行うようになっている。したがって、正誤判定が記入された教育用教材20に対する画像読み取りを行えば、その記入された正誤判定について、採点結果の自動集計が行われるので、結果として教育用教材20についての採点処理が省力化されることとなる。しかも、教育用教材20から読み取った画像データを基にするため、例えば、複写機、複合機またはスキャナ装置によって実現されるスキャン機能と、PC等のコンピュータ機器が有する情報記憶処理機能、画像処理機能および演算処理機能とがあれば、装置構成を実現することができ、専用の構成機器を必要とすることもない。さらには、教育用教材20から読み取った画像データを、データベース部1が保持する電子データと比較するため、そのデータベース部1に各種教育用教材20についての電子データを保持蓄積しておけば、対応可能な教育用教材についての汎用性を十分に確保し得る。
【0061】
しかも、本実施形態における教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムでは、正誤判定記入内容に対する順番付けを行って、その正誤判定記入内容と各問題との対応付けを行うようになっている。したがって、例えば教育用教材20上に複数の問題およびその解答欄21が配されており、それぞれに対する配点が異なる場合であっても、順番付けによる対応付けの結果を基にすることで、各正誤判定記入内容とそれぞれに対する配点との対応関係が明確となるので、採点集計部13が正誤判定についての採点集計を確実に行うことが可能となる。その上、正誤判定記入内容の認識結果に対する順番付けを行って各問題との対応付けを行うので、それぞれの教育用教材上における座標値の入力処理や自動算出処理等を必要とすることもない。
【0062】
つまり、本実施形態における教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムによれば、教育機関で用いられる教育用教材20について、情報入力等の手間を省きつつ、正誤判定の記入内容についての自動採点集計を行うことが可能となるので、その採点処理の省力化を実現することのできる。したがって、教育機関で用いるのにあたり非常に利便性の高いものとなり、信頼性の高い採点処理を円滑に行えるようになる。
【0063】
なお、本実施形態では、本発明の好適な実施具体例を説明したが、本発明はその内容に限定されるものではない。例えば、上述した歪み補正処理や途切れ補正処理等は、必ずしも必須ではない。
【0064】
また、本実施形態では、データベース部1に保持蓄積されている答案情報に基づいて、教育用教材20上における解答欄21の配置レイアウトを判別し、その判別したレイアウトに対応した態様での順番付けを行うことで、どのような配置レイアウトの教育用教材20についても正誤判定記入内容に対する順番付けを行えるようにし、これにより処理対象とし得る教育用教材20についての汎用性や柔軟性等を確保した場合を例に挙げたが、例えば、教育用教材の種別と解答欄の配置レイアウトとが一義的な関係にある場合であれば、その教育用教材の種別に関する情報に基づいて、順番付けの態様を決定することも考えられる。具体的には、例えば教育用教材の教科種別が「算数」または「理科」であれば、図12(a)に示すように、三段組み・横書きの配置レイアウトに対応した態様での順番付けを行うことを決定し、また例えば教育用教材の教科種別が「国語」または「社会」であれば、図12(b)に示すように、二段組み・縦書きの配置レイアウトに対応した態様での順番付けを行うことを決定する、といった具合である。このように、教育用教材の種別に関する情報に基づいて順番付けの態様を決定すれば、その決定にあたって必要となる答案情報の情報量削減が実現可能となる。また、画像データ解析部3での解析結果から教育用教材20上における解答欄21の配置レイアウトを認識することができれば、その認識結果に基づいて順番付けの態様を決定してもよく、その場合には答案情報がデータベース部1内に保持蓄積されていなくとも、その順番付けを適切に行い得るようになる。
【0065】
また、本実施形態では、教育用教材20上における正誤判定の記入内容に対して直接的に順番付けを行う場合を例に挙げて説明したが、以下に述べるように、解答欄21を介して、間接的に正誤判定記入内容に対する順番付けを行うことも考えられる。すなわち、図13に示すように、先ず、差分抽出部6による差分抽出結果のうちの各解答欄21への記入内容の抽出結果に基づき、その記入内容を含む領域(例えば、外接矩形領域)を認識して、これらの各領域に対して上述した場合と同様に順番付けを行うとともに、その各領域と正誤判定の記入位置との対応付けを行う。この対応付けは、例えば、各解答欄21への記入内容を含む領域と正誤判定図形の外接矩形との重なり面積を求め、その重なり面積が所定閾値以上のものを対応付けるようにして行ったり、あるいはそれぞれの中心座標の距離から対応付けを行ったり、あるいは単にそれぞれの間で重なる部分があるか否かによって対応付けを行うことが考えられる。このように、各解答欄21への記入内容を含む領域の順番付けを介して、正誤判定の記入内容に対する間接的な順番付けを行えば、その正誤判定の記入内容に対して直接的に順番付けを行う場合よりも、その順番付けの処理精度向上が期待できる。正誤判定の記入は、教師等によって手書きでされるため、各解答欄21に対する記入位置が必ずしも一義的に定まっている訳ではないのに対し、各解答欄21への記入内容は、その解答欄21となる領域内に記入されることが一般的だからである。つまり、正誤判定の記入に比べると、各解答欄21への解答の記入のほうが、その記入位置のばらつき幅が小さいからである。
【0066】
これらのように、本発明は、本実施形態での説明に対し、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る教材処理装置の概略構成例を示すブロック図である。
【図2】図1の教材処理装置の要部構成例を示すブロック図である。
【図3】教育用教材の一具体例を示す説明図である。
【図4】答案情報の一具体例を示す説明図である。
【図5】本発明に係る教材処理装置における採点集計処理の処理動作例を示す説明図である。
【図6】途切れ補正処理の一例を示す説明図である。
【図7】途切れ補正処理の他の例を示す説明図である。
【図8】正誤判定記入内容の順番付け処理の一例を示す説明図(その1)である。
【図9】正誤判定記入内容の順番付け処理の一例を示す説明図(その2)である。
【図10】正誤判定記入内容の順番付け処理の一例を示す説明図(その3)である。
【図11】問題別採点結果の一具体例を示す説明図である。
【図12】教育用教材の種別と順番付けの態様との関係の具体例を示す説明図である。
【図13】正誤判定記入内容の順番付け処理の他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0068】
1…データベース部、2…画像読み取り部、3…画像データ解析部、4…教材判別部、5…歪み補正部、6…差分抽出部、7…解答者抽出部、8…正誤判定抽出部、9…途切れ補正部、10…図形形状認識部、11…位置対応付け部、12…採点集計部、13…集計結果出力部、15…手動修正部、20…教育用教材、21…解答欄、22…識別情報欄、23…解答者情報欄、31…データベース装置、32…ファイルサーバ装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、教育機関で用いられる教育用教材を取り扱う教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムに関し、特にその教育用教材についての採点処理を行う教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、学校や塾等の教育機関では、例えばペーパーテストや練習問題シートのような教育用教材を用いることが多い。すなわち、問題およびその解答欄を有した教育用教材を用いて、その教育用教材上に生徒に解答を記入させ、その記入された解答に対して教師が採点を行う、といったことが広く行われている。
【0003】
ところで、教育用教材については、その採点処理の省力化が強く求められている。これに応えるべく、採点処理の省力化を実現するものとしては、例えば、パーソナルコンピュータ(以下、単に「PC」という)に採点台および採点ペンを接続し、採点台の所定位置に教育用教材を載置した状態で採点ペンによって○×付けを実施することで、PCに対して教育用教材上に記入された解答の位置情報およびその正否情報を入力し得るようにし、これによりPCにて教育用教材上の解答についての自動採点を実施するように構成されたシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平6−266278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただし、教育用教材についての採点処理にあたり、採点台や採点ペン等といった専用の構成機器を必要とすることは、必ずしも好適とはいえない。専用の構成機器は、システム全体の構成の複雑化や高コスト化等を招く要因となり得るからである。また、専用の構成機器を必要とすると、対応可能な教育用教材が限定されてしまい、その教育用教材についての汎用性が制限されてしまうおそれもある。
【0006】
その一方で、近年、教育機関には、PCや複写機、あるいはスキャン機能、プリント機能およびネットワーク通信機能等を統合した、いわゆる複合機が設置されて用いられていることが一般的である。
このことから、教育用教材の採点処理については、例えば「○」または「×」といった正誤判定の記入がされた教育用教材について、これを複写機等のスキャン機能を用いて読み取り、その読み取り結果である画像データに対してPC等の画像処理機能を用いて画像処理を行うことで、特別な構成機器を必要とすることなく、教育用教材上の解答についての自動採点を可能にすることも考えられる。具体的には、教育用教材から画像データを得ると、その画像データから正誤判定の記入内容を抽出することで、教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行い、さらにはその画像データから教育用教材への解答記入者による記名内容を抽出して、OCR(Optical Character Reader)技術等によりその解答記入者の特定を行い、これらの採点集計結果と解答者特定結果とを互いに関連付けて出力することで、上述した特許文献1に開示されたものと同様の自動採点結果が得られるようになる。
【0007】
ところで、上述したような教育用教材の採点処理にあたっては、教育用教材上における解答欄の位置と、その解答欄に記入された解答に対する正誤判定の記入位置との対応を明確にする必要がある。正誤判定の記入は、教師等によって手書きでされるため、各解答欄に対する記入位置が必ずしも一義的に定まっている訳ではないのに対し、正誤判定の採点集計は、各解答欄に対応する正誤判定を記入結果を明確にした上で、その正誤判定の内容(正解か不正解か)と各解答欄についての配点とに基づいて行われるため、解答欄の位置と正誤判定の記入位置との対応が明確でないと、各解答に対する正誤や配点等が認識できずに、結果として採点集計が行えないおそれが生ずるからである。
【0008】
解答欄の位置と正誤判定の記入位置との対応付けは、それぞれの位置を教育用教材上における座標値で表し、その座標値を用いて行うことが考えられる。
しかしながら、座標値を用いた対応付けを行うためには、その座標値の入力処理が必要になったり、あるいはその座標値の自動算出処理が必要になってしまう。座標値の入力処理は、一般に教育用教材上に複数の問題およびその解答欄が配されていることや、教育用教材についても学科別や生徒の学年別等の如く様々な種類が存在すること等を考慮すると、そのための作業が非常に煩雑なものとなってしまい、作業ミス等も生じ得るため、極力回避すべきである。また、座標値の自動算出処理についても、その処理負荷等を考慮すると、必ずしも好ましいとは言えない。
【0009】
そこで、本発明は、教育機関で用いられる教育用教材について、配点情報の手入力等の手間を省きつつ、正誤判定の記入内容についての自動採点集計を行うことを可能とし、これによりその採点処理の省力化を実現することのできる、教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために案出された教材処理装置で、複数の問題それぞれについての解答欄を有した教育用教材に対する画像読み取りを行って当該教育用教材から画像データを得る読み取り手段と、前記解答欄への解答の記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされた教育用教材から得た画像データと前記解答欄が未記入の教育用教材についての画像データとを比較して差分を抽出する追記情報抽出手段と、前記追記情報抽出手段による差分抽出結果から前記正誤判定の記入内容を認識する正誤判定認識手段と、前記正誤判定認識手段での認識結果である前記正誤判定の記入内容に対する順番付けを行って当該認識結果と前記複数の問題との対応付けを行う追記順番算出手段と、前記正誤判定認識手段による認識結果および前記追記順番算出手段による対応付けの結果を基に、前記読み取り手段が画像読み取りを行った教育用教材について、当該教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行う採点集計手段とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明は、上記目的を達成するために案出された教材処理方法で、複数の問題それぞれについての解答欄を有した教育用教材に対する画像読み取りを行って当該教育用教材から画像データを得る読み取りステップと、前記解答欄への解答の記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされた教育用教材から得た画像データと前記解答欄が未記入の教育用教材についての画像データとを比較して差分を抽出する追記情報抽出ステップと、前記追記情報抽出ステップでの差分抽出結果から前記正誤判定の記入内容を認識する正誤判定認識ステップと、前記正誤判定認識ステップでの認識結果である前記正誤判定の記入内容に対する順番付けを行って当該認識結果と前記複数の問題との対応付けを行う追記順番算出ステップと、前記正誤判定認識ステップでの認識結果および前記追記順番算出ステップでの対応付けの結果を基に、前記読み取りステップで画像読み取りを行った教育用教材について、当該教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行う採点集計ステップとを含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記目的を達成するために案出された教材処理プログラムで、複数の問題それぞれについての解答欄を有した教育用教材に対する画像読み取りを行って当該教育用教材から画像データを得る画像読み取り装置と接続するコンピュータを、前記解答欄への解答の記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされた教育用教材から得た画像データと前記解答欄が未記入の教育用教材についての画像データとを比較して差分を抽出する追記情報抽出手段と、前記追記情報抽出手段による差分抽出結果から前記正誤判定の記入内容を認識する正誤判定認識手段と、前記正誤判定認識手段での認識結果である前記正誤判定の記入内容に対する順番付けを行って当該認識結果と前記複数の問題との対応付けを行う追記順番算出手段と、前記正誤判定認識手段による認識結果および前記追記順番算出手段による対応付けの結果を基に、前記画像読み取り装置が画像読み取りを行った教育用教材について、当該教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行う採点集計手段として機能させることを特徴とするものである。
【0013】
上記構成の教材処理装置、上記手順の教材処理方法、および、上記構成の教材処理プログラムでは、解答欄への解答の記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされた教育用教材から得た画像データと、解答欄が未記入の教育用教材についての画像データとの差分から、正誤判定の記入内容を認識する。そして、その認識結果である正誤判定の記入内容に対する順番付けを行って、当該認識結果と各問題との対応付けを行うようになっている。ここで、順番付けとしては、例えば教育用教材における上辺側から走査した場合の出現順に番号を付す、といったものが考えられる。すなわち、教育用教材上における複数の問題には問題番号が付されていることが一般的なので、その問題番号と正誤判定の記入の出現順の番号とを用いて、正誤判定の記入内容と各問題との対応付けを行うことが考えられる。
したがって、例えば教育用教材上に複数の問題およびその解答の記入欄が配されており、それぞれに対する配点が異なる場合であっても、正誤判定の記入内容と問題との対応関係が明確となるので、その正誤判定についての採点集計を行うことが可能となる。しかも、正誤判定の記入内容の認識結果に対する順番付けを行って各問題との対応付けを行うので、それぞれの教育用教材上における座標値の入力処理や自動算出処理等を必要とすることもない。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムでは、教育機関で用いられる教育用教材について、例えばその教育用教材上に複数の問題およびその解答の記入欄が配されており、それぞれに対する配点が異なる場合であっても、正誤判定の記入内容についての自動採点集計を行うことが可能であり、しかもそのために情報入力の手間や過大な処理負荷等を要してしまうこともなく、その採点処理の省力化を実現することができる。したがって、教育機関で用いるのにあたり非常に利便性の高いものとなり、信頼性の高い採点処理を円滑に行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づき本発明に係る教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムについて説明する。
【0016】
先ず、教材処理装置の概略構成について説明する。図1は本発明に係る教材処理装置の概略構成例を示すブロック図であり、図2はその要部の機能構成例を示すブロック図である。
【0017】
図例のように、ここで説明する教材処理装置は、データベース部1と、画像読み取り部2と、画像データ解析部3と、教材判別部4と、歪み補正部5と、差分抽出部6と、解答者抽出部7と、正誤判定抽出部8と、途切れ補正部9と、図形形状認識部10と、位置対応付け部11と、採点集計部12と、集計結果出力部13と、を備えて構成されている。さらに、手動修正部15を備えたものであってもよい。
【0018】
データベース部1は、教育用教材についての電子データを保持蓄積するものである。
【0019】
ここで、教育用教材について簡単に説明する。図3は、教育用教材の一具体例を示す説明図である。図例のように、教育用教材20は、複数の問題と各問題それぞれについての解答欄21を有したもので、具体的には教育機関で用いられるペーパーテストや練習問題シート等がこれに相当する。ただし、教育用教材20は、問題文については必ずしも記載されていなくともよい。
また、教育用教材20には、その教育用教材を識別特定するための識別情報欄22と、解答欄21への解答記入者に関する解答者情報欄23と、を有している。識別情報欄22には、例えば教育用教材の科目、タイトル、適用学年等が予め記載されるものとする。ただし、これらの記載に加えて、またはこれらの記載とは別に、教育用教材20を識別するためのコード情報が埋め込まれていてもよい。コード情報の埋め込みは、公知技術を利用して実現すればよいが、その一つの具体例として、例えば「iTone(登録商標)」と呼ばれるもののように、階調表現としての万線スクリーンまたはドットスクリーンを構成する画素の形態(位置、形状等)を変化させることで、ハーフトーン画像の中にデジタル情報を埋め込むようにする、といった技術を用いることが考えられる。一方、解答者情報欄23には、解答記入者の学級、出席番号、氏名等が記入され得るようになっている。
【0020】
このような教育用教材20についての電子データは、その教育用教材20おける解答欄21や識別情報欄22等のレイアウトを特定し得るものであり、かつ、データベース部1にて保持蓄積可能なものであれば、そのデータ形式を問わない。具体的には、例えば、後述する画像読み取り部2での画像読み取りによって得られるラスター形式の画像データを、教育用教材20についての電子データとして記憶保持することが考えられる。
【0021】
ただし、教育用教材20の電子データは、その教育用教材20についての答案情報を含んでいるものとする。図4は、答案情報の一具体例を示す説明図である。答案情報とは、教育用教材20毎の、教育用教材20上における各問題の番号、問題文および解答欄21の配置レイアウト、各問題それぞれの解答欄21についての配点を特定するための情報である。配置レイアウトを特定する情報としては、例えば、段組(段数、区分位置等)情報や横書き/縦書き情報が挙げられる。また、配点を特定する情報としては、教育用教材20上における各解答欄21について、それぞれの配点を示す配点情報が挙げられる。なお、配点は、各解答欄21毎に異なっていても、あるいは一律であっても構わない。
【0022】
また図1,2において、画像読み取り部2は、読み取り対象となる教育用教材20に対して、公知の光学的画像読み取り技術を用いた画像読み取りを行って、その教育用教材20から画像データを得るものである。すなわち、画像読み取り部2は、本発明における読み取り手段として機能するものである。読み取り対象となる教育用教材20としては、解答欄21への解答記入、解答者情報欄23への氏名等の記入および当該解答に対する正誤判定(具体的には、例えば「○」または「×」の図形)の記入がされたものが挙げられる。また、データベース部1内への電子データの記憶保持のために、各欄21,23が未記入であるもの(以下「原本」という)も、画像読み取り部2での読み取り対象となり得る。
【0023】
画像データ解析部3は、画像読み取り部2で得られた画像データについて、その解析処理を行うものである。解析処理としては、レイアウト解析、文字図形分離、文字認識、コード情報認識、図形処理、色成分認識等が挙げられるが、いずれも公知の画像処理技術を利用して実現すればよいため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0024】
教材判別部4は、タイトル解析部とコード情報解析部との少なくとも一方からなるもので、画像データ解析部3での解析処理の結果、特に識別情報欄22についてのタイトル解析部によるタイトル解析またはコード情報解析部によるコード解析の少なくとも一方の結果を基にして、画像読み取り部2で得られた画像データの元となった教育用教材を識別特定するものである。このとき、教材判別部4では、データベース部1が電子データを保持蓄積している教育用教材と照らし合わせ、該当する電子データがデータベース部1に保持蓄積されていなければ、教育用教材の識別特定エラーと判定するようになっている。
【0025】
歪み補正部5は、画像読み取り部2で得られた画像データに対して、その画像データにおける画像歪みの補正を行うものである。画像歪みの補正としては、傾き補正や主走査方向または副走査方向の拡縮補正等が挙げられるが、いずれも公知の画像処理技術を利用して実現すればよいため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0026】
差分抽出部6は、教材判別部4での教育用教材の識別特定の結果に基づいて、画像読み取り部2で得られた画像データで、歪み補正部5での画像歪みの補正処理後のものと、その比較対象となるデータベース部1内の電子データとを比較して、それぞれの間の差分を抽出するものである。すなわち、差分抽出部6は、本発明における追記情報抽出手段として機能するものである。なお、差分抽出処理の手法自体については、公知の画像処理技術を利用して実現すればよいため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0027】
解答者抽出部7は、出席番号情報切り出し部と手書きOCR(Optical Character Reader)部との少なくとも一方、好ましくは両方からなるもので、画像データ解析部3での解析処理の結果を基にしつつ、差分抽出部6に抽出された差分のうち、解答者情報欄23についての差分に対し、その差分からの出席番号情報切り出し部による文字情報抽出や手書きOCR部による文字認識処理等を通じて、画像読み取り部2で読み取り対象となった教育用教材における解答者情報を抽出するものである。解答者情報としては、解答記入者の学級、出席番号、氏名等といった、解答記入者を識別するための情報が挙げられる。
【0028】
正誤判定抽出部8は、画像データ解析部3での解析処理の結果を基にしつつ、差分抽出部6に抽出された差分から、さらに正誤判定の記入内容を抽出するものである。正誤判定の記入内容の抽出は、例えば差分抽出部6での抽出結果に対する色成分認識処理を通じて、所定色成分についてのものを抽出することによって行えばよい。一般に、正誤判定の記入は、赤色で行われるからである。
【0029】
途切れ補正部9は、正誤判定抽出部8での抽出結果に対して途切れ補正処理を行うものである。途切れ補正処理とは、抽出された線分同士を接続して、その抽出線分間の途切れを解消するための処理である。
【0030】
図形形状認識部10は、正誤判定抽出部8で抽出され、途切れ補正部9で途切れ補正がされた正誤判定の記入内容に対して、その形状認識を行って、その正誤判定の記入内容を認識するものである。形状認識は、例えば「○」または「×」の図形形状とのパターンマッチングによって行えばよい。すなわち、図形形状認識部10は、正誤判定の記入内容が「正解(○)」または「不正解(×)」であるかを認識するものである。すなわち、これら図形形状認識部10は、本発明における正誤判定認識手段として機能するものである。
【0031】
位置対応付け部11は、図形形状認識部10での認識結果である正誤判定の記入内容に対する順番付けを行って、その認識結果と教育用教材20上における各問題との対応付けを行うものである。すなわち、位置対応付け部11は、本発明における追記順番算出手段として機能するものである。この位置対応付け部11での対応付けの結果と、図形形状認識部10での認識結果(「○」または「×」の認識結果)と、データベース部1内に記憶保持されている配点情報を含む答案情報により、後述する教育用教材20についての採点集計処理を行うことが可能となるのである。
【0032】
採点集計部12は、図形形状認識部10による正誤判定の記入内容の認識結果と、記入位置認識部11による正誤判定の記入位置の認識結果と、データベース部1が保持蓄積している教育用教材の電子データに含まれる当該教育用教材の各解答欄21についての配点情報とを基にして、画像読み取り部2が画像読み取りを行った教育用教材について、その教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行うものである。すなわち、採点集計部12は、本発明における採点集計手段として機能するものである。
【0033】
集計結果出力部13は、採点集計部12による採点集計の結果を、解答者抽出部7が抽出した解答者情報と関連付けて出力するものであり、本発明における集計結果出力手段として機能するものである。なお、集計結果出力部13による出力先としては、教材処理装置と接続するデータベース装置31またはファイルサーバ装置32で、教育用教材についての採点集計結果を管理するものが挙げられる。
【0034】
手動修正部15は、位置対応付け部11や採点集計部12での処理結果に対して、必要に応じて教材処理装置の利用者が修正を加えるためのものである。なお、この手動修正部15は、必須ではないため、備えていなくともよい。
【0035】
なお、以上に説明した各部1〜15のうち、画像読み取り部2については、画像読み取り装置としての機能を有した複写機、複合機またはスキャナ装置を利用して実現することが考えられる。その場合に、自動原稿搬送装置(Automatic Document Feeder;ADF)が付設されていると、複数の教育用教材に対する画像読み取りを連続的に行うことができる。
また、画像読み取り部2を除く他の各部1,3〜15については、例えばPCのように、所定プログラムを実行することによって情報記憶処理機能、画像処理機能、演算処理機能等を実現するコンピュータ機器を利用して実現することが考えられる。その場合に、各部1,3〜15の実現に必要となる所定プログラムは、予めPC内にインストールしておくことが考えられるが、予めインストールされているのではなく、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納されて提供されるものであっても、または有線若しくは無線による通信手段を介して配信されるものであってもよい。つまり、上述した構成の教材処理装置は、画像読み取り装置と接続するコンピュータを教材処理装置として機能させる教材処理プログラムによっても実現可能である。
【0036】
次に、以上のように構成された教材処理装置(教材処理プログラムによっても実現される場合を含む)における処理動作例、すなわち本発明に係る教材処理方法の手順について説明する。図5は、本発明に係る教材処理装置における処理動作例を示す説明図である。
【0037】
教材処理装置を利用する場合には、予めデータベース部1内に採点集計処理の対象となる教育用教材20の原本についての電子データが保持蓄積されており、またその電子データには当該教育用教材20の配点情報を含む答案情報が含まれているものとする。これら電子データ、配点情報を含む答案情報の予めデータベース部1内への登録は、画像読み取り部2での画像読み取りや画像データ解析部3でのレイアウト(段組)解析等を利用して行えばよいが、その詳細については公知技術を利用して行えばよいため、ここではその説明を省略する。
【0038】
そして、採点集計処理にあたっては、先ず、生徒等によって解答者情報欄23への氏名等の記入および解答欄21への解答記入がされ、さらに教師等によって各解答欄21に記入された解答に対する「○」や「×」等の正誤判定の図形記入がされた教育用教材20について、画像読み取り部2が画像読み取りを行って、その教育用教材20からの画像データを得る(ステップ101、以下ステップを「S」と略す)。このとき、ADFを用いれば、例えば同一学級のような一つのグループに纏めて処理すべき複数の教育用教材20について、一括して画像読み取りを行って、各教育用教材20から連続的に画像データを得ることができる。そして、画像読み取りによって得られた画像データについては、一旦ワークエリアとして用いられるメモリ等に保持しておく。
【0039】
その後は、各教育用教材20から得られたそれぞれの画像データに対して、順次、以下のような自動採点処理が行われる(S102)。
【0040】
すなわち、ある一つの教育用教材20から得られた画像データについて、画像データ解析部3がその解析処理を行い、その解析処理の結果に基づいて教材判別部4が教育用教材20の識別特定を行う。この識別特定は、例えば「理科」「5年」「1.天気と気温の変化」といったタイトル解析または教材判別部4に埋め込まれたコード情報についてのコード解析を通じて行えばよい。この識別特定を経ることで、教材判別部4では、画像読み取り部2で得られた画像データとの比較対象となる電子データを特定することが可能となる。なお、この識別特定は、画像読み取り部2が画像読み取りを行った複数の教育用教材20のそれぞれについて順次行うことも考えられるが、一般に一つのグループに纏めて処理される教育用教材20は全て同一のものであるため、その纏めて処理される中で最初に処理される教育用教材20についてのみ行えばよい。
【0041】
教材判別部4が電子データを特定すると、データベース部1は、その特定結果に従いつつ、保持蓄積している中から該当する電子データを取り出して、これを差分抽出部6へ受け渡す。
【0042】
また、ある一つの教育用教材20から得られた画像データについては、歪み補正部5がその画像データにおける画像歪みの補正を行う。この画像歪みの補正は、画像読み取り部2での画像読み取りの際に生じ得る画像歪みを補正するために行うものであり、その後に行う電子データとの比較や差分抽出等の精度向上を図るためのものである。
【0043】
そして、差分抽出部6は、データベース部1から受け渡された電子データと、画像読み取り部2で得られ、歪み補正部5で画像歪みが補正された後の画像データとを、それぞれ比較して、その差分を抽出する。この差分抽出によって、解答者情報欄23および各解答欄21への記入内容並びに各解答欄21に対する正誤判定の記入内容が抽出されることになる。
【0044】
差分抽出部6が差分を抽出すると、その後は、解答者抽出部7が、その差分に対する文字認識処理等を通じて、画像読み取り部2で読み取り対象となった教育用教材における解答者情報を抽出する。これにより、ある一つの教育用教材20に解答を記入した解答記入者の学級、出席番号、氏名等を特定することが可能となる。
【0045】
また、差分抽出部6による差分抽出結果に対しては、各解答欄21への正誤判定の記入内容を抽出するために、その差分抽出結果から正誤判定抽出部8がさらに所定色成分についてのもの、具体的には例えば赤色成分のものを抽出する。所定色成分の抽出は、例えば差分抽出結果が画素データからなる場合であれば、その画素データを構成する色成分データに着目することで行うことができる。
【0046】
ただし、一般に、教育用教材20上での「○」や「×」等の正誤判定の図形記入は、問題文、各解答欄21を特定する枠、各解答欄21への解答記入内容等に重ねて行われることが多い。そのため、正誤判定抽出部8による所定色成分の抽出結果は、その重なり部分が除かれたもの、すなわち「○」や「×」等の図形に途切れ部分が生じたものとなるおそれがある。このことから、正誤判定抽出部8による所定色成分の抽出結果に対しては、途切れ補正部9が途切れ補正処理を行う。
【0047】
ここで、途切れ補正部9による途切れ補正処理について詳しく説明する。
【0048】
図6は、途切れ補正処理の一例を示す説明図である。
途切れ補正処理にあたっては、図6(a)に示すように、正誤判定抽出部8による所定色成分の抽出結果、すなわち「○」や「×」等の図形であるはずの抽出結果に対して、細線化処理を実行し(S201)、さらに端点抽出処理を実行する(S202)。これにより、「○」や「×」等の図形に途切れ部分が生じている場合に、その途切れ部分における端点が抽出されることになる。なお、このときに行う細線化処理および端点抽出処理は、公知技術を利用して行えばよいため、ここではその詳細な説明を省略する。
そして、端点を抽出したら、その抽出した全ての端点に対して、以下のような処理を実行する(S203)。すなわち、先ず、未処理の端点を一つ選択し(S204)、その選択した端点(以下「第一端点」という)から、予め設定されている所定距離内にあって、かつ、最も近傍にある未処理の端点(以下「第二端点」という)をさらに選択する(S205)。そして、第二端点があれば(S206)、第一端点と第二端点とを互いに接続するとともに(S207)、第一端点および第二端点をいずれも処理済みにする(S208)。一方、第二端点が存在しない場合には(S206)、端点間の接続は行わずに、第一端点を処理済みにする(S209)。このような処理を、未処理の端点がなくなるまで、全ての端点に対して行う(S203〜S209)。
これにより、例えば図6(b)に示す図形が抽出された場合には、端点Aに対して、所定距離内に端点B,Cが存在していても、その中で最も近傍の端点Bが端点Aと接続されることとなり、「○」の図形における途切れ部分が補正されることになる。
【0049】
図7は、途切れ補正処理の他の例を示す説明図である。
途切れ補正処理の他の例では、正誤判定抽出部8による所定色成分の抽出結果の他に、歪み補正部5による画像歪み補正後の画像データをも用いて、途切れ補正処理の精度向上を図っている。すなわち、途切れ補正処理の他の例では、図7(a)に示すように、歪み補正部5による画像歪み補正後の画像データに対して二値化処理を行う(S301)。ただし、差分抽出部6による差分抽出または正誤判定抽出部8による所定色成分の抽出の際に二値化処理をしていれば、その二値化処理後の画像データを使用しても構わない。
また、正誤判定抽出部8による所定色成分の抽出結果に対しては、細線化処理を実行し(S302)、さらに端点抽出処理を実行する(S303)。そして、端点を抽出したら、その抽出した全ての端点に対して、以下のような処理を実行する(S304)。
先ず、未処理の端点を一つ選択し(S305)、その選択した第一端点から、予め設定されている所定距離内にあって、かつ、最も近傍にある未処理の端点を第二端点として選択する(S306)。そして、第二端点があれば(S307)、第一端点と第二端点とを連結するような画素群が、二値化処理後の画像データ中にあるか否かを判断する(S308)。つまり、途切れの発生要因となった画像の重なり部分があるか否かを判断するのである。その結果、重なり部分があれば、第一端点と第二端点とを互いに接続するとともに(S309)、第一端点および第二端点をいずれも処理済みにする(S310)。一方、重なり部分がなければ、上述したステップ(S306)に戻り、第一端点から所定距離内にあって、かつ、最も近傍の端点の次に近距離にある端点を第二端点として選択する。このとき、選択すべき端点がなければ、端点間の接続は行わずに、第一端点を処理済みにする(S311)。このような処理を、未処理の端点がなくなるまで、全ての端点に対して行う(S304〜S311)。
これにより、例えば図7(b)に示す図形が抽出された場合に、端点Aに対して、所定距離内に端点B,Cが存在していると、その中で最も近傍の端点Cが選択されるが、二値化処理後の画像データ中に端点A,C間を連結する画素群がないので、端点A,C間は接続しない。そして、端点Cの次に距離の近い端点Bを選択されるが、その端点Bと端点Aとの間には二値化処理後の画像データ中に画素群が存在するので、端点Bが端点Aと接続されることになる。つまり、「○」と「×」とが誤って接続されてしまうことなく、「○」の図形における途切れ部分が補正されるのである。
【0050】
以上のような途切れ補正部9による途切れ補正処理の後は、図形形状認識部10が正誤判定の記入内容に対する形状認識、すなわち「○」または「×」の図形形状とのパターンマッチングを行って、その正誤判定の記入内容が「正解」であるか、あるいは「不正解」であるかを認識する。このときに行うパターンマッチングは、公知技術を利用して実現すればよいため、ここではその説明を省略する。
【0051】
そして、図形形状認識部10が正誤判定の記入内容に対する形状認識を行うと、続いて、位置対応付け部11は、その認識結果である正誤判定の記入内容に対する順番付けを行う。ここで、順番付けとしては、例えば教育用教材20における上辺側から走査した場合の出現順に番号を付す、といったものが考えられる。すなわち、教育用教材20上における複数の問題には問題番号が付されていることが一般的なので、その問題番号と正誤判定の記入の出現順の番号とを用いて、正誤判定の記入内容と解答欄21との対応付けを行うことが考えられる。なお、位置対応付け部11による順番付けの際には、「○」または「×」の図形を構成する連続画素群を一つに纏めて取り扱うために、その連続画素群の外接矩形領域を抽出し、その外接矩形領域に対して識別子を付与すべく、一般的な画像処理技術であるラベリング処理が行われている。このことから、記入位置認識部11による位置認識の際にも、そのラベリング処理の結果を利用して、「○」または「×」の図形を構成する連続画素群(領域)を一つの纏まりとして取り扱う。
【0052】
ここで、位置対応付け部11による正誤判定記入内容の順番付け処理について詳しく説明する。図8〜10は、正誤判定記入内容の順番付け処理手順の一例を示す説明図である。
【0053】
順番付け処理にあたって、位置対応付け部11は、先ず、データベース部1から答案情報を読み出して、処理対象である教育用教材20の段組有無や文章方向(縦書き/横書き)等を判別して、順番付けの方向を認識する。すなわち、教育用教材20上における解答欄21の配置レイアウトを判別するとともに、以下に述べるように、判別したレイアウトに対応した態様での順番付けを行うのである。
【0054】
具体的には、例えば図4に示したような横書き三段組みの教育用教材20であれば、図8に示すように、段組情報に基づき、ワークエリアとして用いられるメモリ上で、その三段組みの画像データを一段組に変更する。
【0055】
そして、位置対応付け部11は、その変更後の一段組みの画像データについて、図9に示すように、所定箇所(例えば上端または右端)から走査していき、「○」または「×」の図形領域が出現した順に、その図形領域に対して番号を付す。このとき、例えば上端から順に走査していき、同じ行に「○」または「×」の図形領域が見つかった場合には、答案情報の縦書き/横書きの別を認識して、左から右(または上から下)に順番を付ける。
【0056】
位置対応付け部11は、このような順番付けを、教育用教材20上に存在する全ての「○」または「×」の図形領域について行い、その順番付けの結果をデータベース部1内に登録する。このときの登録は、図10に示すように、順番付けの結果を、答案情報の一部として、その答案情報における各問題それぞれに関連付けるようにして行うことが考えられる。これにより、教育用教材20上における各問題(当該問題についての解答欄21)と、その解答欄21に記入された解答に対する正誤判定の記入内容(「○」か「×」か)と、各解答欄21についての配点とが、正誤判定の記入内容への順番付けを介して、それぞれ互いに対応付けられることになる。
【0057】
このようにして、位置対応付け部11が正誤判定記入内容に対する順番付けを行って、その正誤判定記入内容と各問題との対応付けを行った後は、採点集計部12が正誤判定の採点集計を行う。このとき、採点集計部12は、正誤判定図形が「○」であれば、これに対応する問題についての配点情報から特定される配点を加算し、また正誤判定図形が「×」であれば、これに対応する問題についての配点加算を行わず、このような採点集計を教育用教材20上の全ての正誤判定記入内容について行う。
【0058】
以上のような処理を経ることで、採点集計部12からは、教育用教材20上に記入された正誤判定の採点集計の結果が、問題別採点結果として出力されるのである。図11は、問題別採点結果の一具体例を示す説明図である。問題別採点結果は、教育用教材20上に存在する問題の番号と、その問題の解答に対する正誤判定と、その正誤判定に基づく得点とからなる情報で、図例のように、これらを互いに関連付けるテーブル形式で、採点集計部12から出力されるものである。
【0059】
採点集計部12から問題別採点結果が出力されると、その後は、集計結果出力部13が、その問題別採点結果、すなわち採点集計部12による採点集計の結果を、解答者抽出部7が抽出した解答者情報と関連付けて、教材処理装置と接続するデータベース装置31またはファイルサーバ装置32に対して出力する(図5におけるS103)。これにより、データベース装置31またはファイルサーバ装置32では、教育用教材20についての採点集計結果を、例えば一覧形式で、管理または利用することが可能となる。
【0060】
以上に説明したように、本実施形態における教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムでは、正誤判定の記入がされた教育用教材20から読み取った画像データと、その教育用教材20についての電子データ、すなわち解答欄21への解答記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされていない原本についてのデータとを比較し、互いの差分から正誤判定の記入内容を認識して、その正誤判定の採点集計を行うようになっている。したがって、正誤判定が記入された教育用教材20に対する画像読み取りを行えば、その記入された正誤判定について、採点結果の自動集計が行われるので、結果として教育用教材20についての採点処理が省力化されることとなる。しかも、教育用教材20から読み取った画像データを基にするため、例えば、複写機、複合機またはスキャナ装置によって実現されるスキャン機能と、PC等のコンピュータ機器が有する情報記憶処理機能、画像処理機能および演算処理機能とがあれば、装置構成を実現することができ、専用の構成機器を必要とすることもない。さらには、教育用教材20から読み取った画像データを、データベース部1が保持する電子データと比較するため、そのデータベース部1に各種教育用教材20についての電子データを保持蓄積しておけば、対応可能な教育用教材についての汎用性を十分に確保し得る。
【0061】
しかも、本実施形態における教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムでは、正誤判定記入内容に対する順番付けを行って、その正誤判定記入内容と各問題との対応付けを行うようになっている。したがって、例えば教育用教材20上に複数の問題およびその解答欄21が配されており、それぞれに対する配点が異なる場合であっても、順番付けによる対応付けの結果を基にすることで、各正誤判定記入内容とそれぞれに対する配点との対応関係が明確となるので、採点集計部13が正誤判定についての採点集計を確実に行うことが可能となる。その上、正誤判定記入内容の認識結果に対する順番付けを行って各問題との対応付けを行うので、それぞれの教育用教材上における座標値の入力処理や自動算出処理等を必要とすることもない。
【0062】
つまり、本実施形態における教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムによれば、教育機関で用いられる教育用教材20について、情報入力等の手間を省きつつ、正誤判定の記入内容についての自動採点集計を行うことが可能となるので、その採点処理の省力化を実現することのできる。したがって、教育機関で用いるのにあたり非常に利便性の高いものとなり、信頼性の高い採点処理を円滑に行えるようになる。
【0063】
なお、本実施形態では、本発明の好適な実施具体例を説明したが、本発明はその内容に限定されるものではない。例えば、上述した歪み補正処理や途切れ補正処理等は、必ずしも必須ではない。
【0064】
また、本実施形態では、データベース部1に保持蓄積されている答案情報に基づいて、教育用教材20上における解答欄21の配置レイアウトを判別し、その判別したレイアウトに対応した態様での順番付けを行うことで、どのような配置レイアウトの教育用教材20についても正誤判定記入内容に対する順番付けを行えるようにし、これにより処理対象とし得る教育用教材20についての汎用性や柔軟性等を確保した場合を例に挙げたが、例えば、教育用教材の種別と解答欄の配置レイアウトとが一義的な関係にある場合であれば、その教育用教材の種別に関する情報に基づいて、順番付けの態様を決定することも考えられる。具体的には、例えば教育用教材の教科種別が「算数」または「理科」であれば、図12(a)に示すように、三段組み・横書きの配置レイアウトに対応した態様での順番付けを行うことを決定し、また例えば教育用教材の教科種別が「国語」または「社会」であれば、図12(b)に示すように、二段組み・縦書きの配置レイアウトに対応した態様での順番付けを行うことを決定する、といった具合である。このように、教育用教材の種別に関する情報に基づいて順番付けの態様を決定すれば、その決定にあたって必要となる答案情報の情報量削減が実現可能となる。また、画像データ解析部3での解析結果から教育用教材20上における解答欄21の配置レイアウトを認識することができれば、その認識結果に基づいて順番付けの態様を決定してもよく、その場合には答案情報がデータベース部1内に保持蓄積されていなくとも、その順番付けを適切に行い得るようになる。
【0065】
また、本実施形態では、教育用教材20上における正誤判定の記入内容に対して直接的に順番付けを行う場合を例に挙げて説明したが、以下に述べるように、解答欄21を介して、間接的に正誤判定記入内容に対する順番付けを行うことも考えられる。すなわち、図13に示すように、先ず、差分抽出部6による差分抽出結果のうちの各解答欄21への記入内容の抽出結果に基づき、その記入内容を含む領域(例えば、外接矩形領域)を認識して、これらの各領域に対して上述した場合と同様に順番付けを行うとともに、その各領域と正誤判定の記入位置との対応付けを行う。この対応付けは、例えば、各解答欄21への記入内容を含む領域と正誤判定図形の外接矩形との重なり面積を求め、その重なり面積が所定閾値以上のものを対応付けるようにして行ったり、あるいはそれぞれの中心座標の距離から対応付けを行ったり、あるいは単にそれぞれの間で重なる部分があるか否かによって対応付けを行うことが考えられる。このように、各解答欄21への記入内容を含む領域の順番付けを介して、正誤判定の記入内容に対する間接的な順番付けを行えば、その正誤判定の記入内容に対して直接的に順番付けを行う場合よりも、その順番付けの処理精度向上が期待できる。正誤判定の記入は、教師等によって手書きでされるため、各解答欄21に対する記入位置が必ずしも一義的に定まっている訳ではないのに対し、各解答欄21への記入内容は、その解答欄21となる領域内に記入されることが一般的だからである。つまり、正誤判定の記入に比べると、各解答欄21への解答の記入のほうが、その記入位置のばらつき幅が小さいからである。
【0066】
これらのように、本発明は、本実施形態での説明に対し、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る教材処理装置の概略構成例を示すブロック図である。
【図2】図1の教材処理装置の要部構成例を示すブロック図である。
【図3】教育用教材の一具体例を示す説明図である。
【図4】答案情報の一具体例を示す説明図である。
【図5】本発明に係る教材処理装置における採点集計処理の処理動作例を示す説明図である。
【図6】途切れ補正処理の一例を示す説明図である。
【図7】途切れ補正処理の他の例を示す説明図である。
【図8】正誤判定記入内容の順番付け処理の一例を示す説明図(その1)である。
【図9】正誤判定記入内容の順番付け処理の一例を示す説明図(その2)である。
【図10】正誤判定記入内容の順番付け処理の一例を示す説明図(その3)である。
【図11】問題別採点結果の一具体例を示す説明図である。
【図12】教育用教材の種別と順番付けの態様との関係の具体例を示す説明図である。
【図13】正誤判定記入内容の順番付け処理の他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0068】
1…データベース部、2…画像読み取り部、3…画像データ解析部、4…教材判別部、5…歪み補正部、6…差分抽出部、7…解答者抽出部、8…正誤判定抽出部、9…途切れ補正部、10…図形形状認識部、11…位置対応付け部、12…採点集計部、13…集計結果出力部、15…手動修正部、20…教育用教材、21…解答欄、22…識別情報欄、23…解答者情報欄、31…データベース装置、32…ファイルサーバ装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の問題それぞれについての解答欄を有した教育用教材に対する画像読み取りを行って当該教育用教材から画像データを得る読み取り手段と、
前記解答欄への解答の記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされた教育用教材から得た画像データと前記解答欄が未記入の教育用教材についての画像データとを比較して差分を抽出する追記情報抽出手段と、
前記追記情報抽出手段による差分抽出結果から前記正誤判定の記入内容を認識する正誤判定認識手段と、
前記正誤判定認識手段での認識結果である前記正誤判定の記入内容に対する順番付けを行って当該認識結果と前記複数の問題との対応付けを行う追記順番算出手段と、
前記正誤判定認識手段による認識結果および前記追記順番算出手段による対応付けの結果を基に、前記読み取り手段が画像読み取りを行った教育用教材について、当該教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行う採点集計手段と
を備えることを特徴とする教材処理装置。
【請求項2】
前記追記順番算出手段は、前記教育用教材上における前記解答欄の配置レイアウトを判別するとともに、判別したレイアウトに対応した態様での順番付けを行うものである
ことを特徴とする請求項1記載の教材処理装置。
【請求項3】
前記追記順番算出手段は、前記教育用教材の種別と前記解答欄の配置レイアウトとが一義的な関係にある場合に、前記教育用教材の種別に関する情報に基づいて、前記順番付けの態様を決定するものである
ことを特徴とする請求項2記載の教材処理装置。
【請求項4】
複数の問題それぞれについての解答欄を有した教育用教材に対する画像読み取りを行って当該教育用教材から画像データを得る読み取りステップと、
前記解答欄への解答の記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされた教育用教材から得た画像データと前記解答欄が未記入の教育用教材についての画像データとを比較して差分を抽出する追記情報抽出ステップと、
前記追記情報抽出ステップでの差分抽出結果から前記正誤判定の記入内容を認識する正誤判定認識ステップと、
前記正誤判定認識ステップでの認識結果である前記正誤判定の記入内容に対する順番付けを行って当該認識結果と前記複数の問題との対応付けを行う追記順番算出ステップと、
前記正誤判定認識ステップでの認識結果および前記追記順番算出ステップでの対応付けの結果を基に、前記読み取りステップで画像読み取りを行った教育用教材について、当該教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行う採点集計ステップと
を含むことを特徴とする教材処理方法。
【請求項5】
複数の問題それぞれについての解答欄を有した教育用教材に対する画像読み取りを行って当該教育用教材から画像データを得る画像読み取り装置と接続するコンピュータを、
前記解答欄への解答の記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされた教育用教材から得た画像データと前記解答欄が未記入の教育用教材についての画像データとを比較して差分を抽出する追記情報抽出手段と、
前記追記情報抽出手段による差分抽出結果から前記正誤判定の記入内容を認識する正誤判定認識手段と、
前記正誤判定認識手段での認識結果である前記正誤判定の記入内容に対する順番付けを行って当該認識結果と前記複数の問題との対応付けを行う追記順番算出手段と、
前記正誤判定認識手段による認識結果および前記追記順番算出手段による対応付けの結果を基に、前記画像読み取り装置が画像読み取りを行った教育用教材について、当該教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行う採点集計手段
として機能させることを特徴とする教材処理プログラム。
【請求項1】
複数の問題それぞれについての解答欄を有した教育用教材に対する画像読み取りを行って当該教育用教材から画像データを得る読み取り手段と、
前記解答欄への解答の記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされた教育用教材から得た画像データと前記解答欄が未記入の教育用教材についての画像データとを比較して差分を抽出する追記情報抽出手段と、
前記追記情報抽出手段による差分抽出結果から前記正誤判定の記入内容を認識する正誤判定認識手段と、
前記正誤判定認識手段での認識結果である前記正誤判定の記入内容に対する順番付けを行って当該認識結果と前記複数の問題との対応付けを行う追記順番算出手段と、
前記正誤判定認識手段による認識結果および前記追記順番算出手段による対応付けの結果を基に、前記読み取り手段が画像読み取りを行った教育用教材について、当該教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行う採点集計手段と
を備えることを特徴とする教材処理装置。
【請求項2】
前記追記順番算出手段は、前記教育用教材上における前記解答欄の配置レイアウトを判別するとともに、判別したレイアウトに対応した態様での順番付けを行うものである
ことを特徴とする請求項1記載の教材処理装置。
【請求項3】
前記追記順番算出手段は、前記教育用教材の種別と前記解答欄の配置レイアウトとが一義的な関係にある場合に、前記教育用教材の種別に関する情報に基づいて、前記順番付けの態様を決定するものである
ことを特徴とする請求項2記載の教材処理装置。
【請求項4】
複数の問題それぞれについての解答欄を有した教育用教材に対する画像読み取りを行って当該教育用教材から画像データを得る読み取りステップと、
前記解答欄への解答の記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされた教育用教材から得た画像データと前記解答欄が未記入の教育用教材についての画像データとを比較して差分を抽出する追記情報抽出ステップと、
前記追記情報抽出ステップでの差分抽出結果から前記正誤判定の記入内容を認識する正誤判定認識ステップと、
前記正誤判定認識ステップでの認識結果である前記正誤判定の記入内容に対する順番付けを行って当該認識結果と前記複数の問題との対応付けを行う追記順番算出ステップと、
前記正誤判定認識ステップでの認識結果および前記追記順番算出ステップでの対応付けの結果を基に、前記読み取りステップで画像読み取りを行った教育用教材について、当該教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行う採点集計ステップと
を含むことを特徴とする教材処理方法。
【請求項5】
複数の問題それぞれについての解答欄を有した教育用教材に対する画像読み取りを行って当該教育用教材から画像データを得る画像読み取り装置と接続するコンピュータを、
前記解答欄への解答の記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされた教育用教材から得た画像データと前記解答欄が未記入の教育用教材についての画像データとを比較して差分を抽出する追記情報抽出手段と、
前記追記情報抽出手段による差分抽出結果から前記正誤判定の記入内容を認識する正誤判定認識手段と、
前記正誤判定認識手段での認識結果である前記正誤判定の記入内容に対する順番付けを行って当該認識結果と前記複数の問題との対応付けを行う追記順番算出手段と、
前記正誤判定認識手段による認識結果および前記追記順番算出手段による対応付けの結果を基に、前記画像読み取り装置が画像読み取りを行った教育用教材について、当該教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行う採点集計手段
として機能させることを特徴とする教材処理プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−235432(P2006−235432A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−52481(P2005−52481)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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