散布器、散布方法および処理方法
【課題】シロアリ防除剤を、シロアリの加害部や蟻道などの内部に、効率よく供給することのできる散布器および散布方法を提供すること。
【解決手段】散布器は、木材保存剤を供給するための供給部と、供給部から供給される木材保存剤を吐出するための吐出部と、を備え、吐出部は、先細形状に形成されており、吐出部の吐出方向下流端に形成されている吐出口の外径が、2mm以下である。散布方法は、散布器を用いて、被害部、または被害が予想される部位の隙間に、木材保存剤を散布する。
【解決手段】散布器は、木材保存剤を供給するための供給部と、供給部から供給される木材保存剤を吐出するための吐出部と、を備え、吐出部は、先細形状に形成されており、吐出部の吐出方向下流端に形成されている吐出口の外径が、2mm以下である。散布方法は、散布器を用いて、被害部、または被害が予想される部位の隙間に、木材保存剤を散布する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散布器、散布方法および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロチアニジンなどのネオニコチノイド系化合物は、シロアリに対する防除剤として、広く知られている(特許文献1参照)。
また、特許文献2には、ネオニコチノイド系化合物のマイクロカプセルを含有し、長期に亘って効力を持続できる有害生物防除組成物が記載されている。
また、特許文献2には、ネオニコチノイド系化合物のマイクロカプセルを含有する水懸濁液を、土壌表面に散布することが記載されている。
【0003】
また、従来、シロアリ防除剤の処理(施工)方法としては、例えば、液剤としてのシロアリ防除剤に空気を送り込み泡立てる起泡装置を、床板の点検口などの開口部に設置し、シロアリ防除剤の泡を床板と基礎部との間などに散布するといった処理方法や、例えば、液剤としてのシロアリ防除剤を、断熱材、床下部、天井部などに直接塗布するといった処理方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3349551号公報
【特許文献2】特開2000−95621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、クロチアニジンなどのネオニコチノイド系化合物は、高温(例えば、40℃以上)かつ多湿の環境下で、水への溶解度が高くなり、シロアリに対する防除効果の持続性が低下する。
このため、ネオニコチノイド系化合物を単にマイクロカプセル化した上で、例えば、土壌や木材の表面または内部に散布または注入したり、モルタル、石こうなどの硬化物に含有させたり、塗膜、樹脂成形体などに含有させたりしても、高温多湿の環境下にさらされることで、ネオニコチノイド系化合物の溶脱が生じ、シロアリの防除効果が比較的短期間に低下する。
【0006】
また、シロアリによる食害部や、シロアリの蟻道などは、径の小さな空間であるため、例えば、ネオニコチノイド系化合物などのシロアリ防除剤をエアゾール剤として調製し、圧をかけて散布したとしても、上記食害部や蟻道などの内部にまでシロアリ防除剤を十分に供給できない場合がある。
また、液剤としてのシロアリ防除剤を泡立てるための起泡装置は大掛かりな装置であるため、例えば、断熱材、天井部などへのシロアリ防除剤の処理(例えば、散布、注入、塗布など)に適用することは困難である。さらに、例えば、床下部への処理において、シロアリ防除剤をくまなく行き渡らせることは困難である。
【0007】
一方、液剤としてのシロアリ防除剤を、断熱材、天井部などに対し、直接に散布し、または注入するといった処理(施工)方法では、液ダレによって居住空間内がシロアリ防除剤で汚染されるおそれがある。特に、断熱材が発泡体である場合において、シロアリ防除剤は、断熱材に既に滲み込んでいる部位やシロアリによる被害が生じている部位に偏って浸透するため、断熱材全体にシロアリ防除剤を行き渡らせることが困難であり、場合によっては、液剤が偏って浸透することで断熱材の破損を生じるおそれがある。また、断熱材がガラスウールである場合には、液剤がガラスウールの繊維自体に吸収されるため、断熱材全体にシロアリ防除剤を行き渡らせることが困難であり、断熱効果の低下を招くおそれもある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、高温多湿の環境下であっても、防蟻効果を効率よく発揮させ、かつ、長期にわたって持続させることのできるネオニコチノイド製剤と、それを用いた硬化性シロアリ防除組成物、防蟻性塗料組成物および防蟻性樹脂成形体と、を提供することである。
本発明の他の目的は、シロアリ防除剤を、シロアリの加害部や蟻道などの内部に、効率よく供給することのできる散布器と、散布方法とを提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、液ダレによる居住空間の汚染を抑制しつつ、簡易な方法により、シロアリ防除剤を建物の断熱材、床下部、天井部、基礎部などで効率よく処理することのできる処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために、マイクロカプセル化されたネオニコチノイド製剤について鋭意検討したところ、マイクロカプセルの壁膜の厚みを制御することで、高温多湿環境下でのネオニコチノイド系化合物の溶脱を抑制し、シロアリの防除効果を長期に亘って発揮できるとの知見を見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1) ネオニコチノイド系化合物が、壁膜の厚みが1.8〜4μmであるマイクロカプセルに内包されていることを特徴とする、ネオニコチノイド製剤、
(2) 前記ネオニコチノイド系化合物が、クロチアニジンであることを特徴とする、前記(1)に記載のネオニコチノイド製剤、
(3) 木材を保存するための木材保存剤であることを特徴とする、前記(1)または(2)に記載のネオニコチノイド製剤、
(4) シロアリを防除するための防蟻剤であることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のネオニコチノイド製剤、
(5) 土壌の表面または内部に散布または注入するための防蟻剤であることを特徴とする、前記(4)に記載のネオニコチノイド製剤、
(6) 木材の表面または内部に散布または注入するための防蟻剤であることを特徴とする、前記(3)または(4)に記載のネオニコチノイド製剤、
(7) 前記(1)または(2)に記載のネオニコチノイド製剤と、水硬性成分と、土砂成分とを含有することを特徴とする、硬化性シロアリ防除組成物、
(8) 前記(1)または(2)に記載のネオニコチノイド製剤と、樹脂エマルションとを含有していることを特徴とする、防蟻性塗料組成物、
(9) 前記(1)または(2)に記載のネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂とを含有していることを特徴とする、防蟻性樹脂成形体、
(10) 防蟻シートまたは防蟻性フィルムであることを特徴とする、前記(9)に記載の防蟻性樹脂成形体、
(11) 電線、ケーブルまたはこれらのシースを被覆するための被覆部材であることを特徴とする、前記(9)に記載の防蟻性樹脂成形体、
を提供するものである。
【0012】
また、本発明者らは、上記他の目的を達成するために、シロアリ防除剤の散布器と、散布方法について鋭意検討したところ、シロアリによる加害部やシロアリの蟻道に対するシロアリ防除剤の散布に適した散布器の構造を見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(12) 木材保存剤を供給するための供給部と、前記供給部から供給される木材保存剤を吐出するための吐出部と、を備え、前記吐出部は、先細形状に形成されており、前記吐出口の吐出方向下流端に形成されている吐出口の外径が、2mm以下であることを特徴とする、散布器、
(13) さらに、前記供給部と前記吐出部とに連結される可撓性の供給管を備えていることを特徴とする、前記(12)に記載の散布器、
(14) 前記供給部は、前記木材保存剤を圧力により供給することを特徴とする、前記(12)または(13)に記載の散布器、
(15) 前記供給部が、ポンプディスペンサ、エアゾール缶、またはポンプ式スプレーであることを特徴とする、前記(14)に記載の散布器、
(16) 前記木材保存剤が、ムース剤であることを特徴とする、前記(14)または(15)に記載の散布器、
(17) 前記供給部は、前記木材保存剤を自重により供給することを特徴とする、前記(12)または(13)に記載の散布器、
(18) 前記(12)〜(17)のいずれかに記載の散布器を用いて、被害部、または被害が予想される部位の隙間に、前記木材保存剤を散布することを特徴とする、散布方法、
(19) 前記隙間に合わせて、前記吐出部の吐出方向途中を切断して使用することを特徴とする、前記(18)に記載の散布方法、
を提供するものである。
【0013】
さらに、本発明者らは、上記のさらに他の目的を達成するために、シロアリ防除剤の処理(施工)方法について鋭意検討したところ、特定の部位においてシロアリ防除剤の好適な処理(散布、注入、塗布など)方法を見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(20) 建物の壁、床または天井に配置される断熱材に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理することを特徴とする、処理方法、
(21) 建物の床下部に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理することを特徴とする、処理方法、
(22) 建物の天井部に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理することを特徴とする、処理方法。
(23) 建物の基礎部に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理することを特徴とする、処理方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のネオニコチノイド製剤によれば、高温多湿環境下におけるマイクロカプセルからのネオニコチノイド系化合物の溶脱を抑制することができ、このような環境下においても、シロアリの防除効果を長期に亘って発揮できる。
また、本発明の硬化性シロアリ防除組成物、防蟻性塗料組成物および防蟻性樹脂成形体によれば、高温多湿環境下でのネオニコチノイド系化合物の溶脱を抑制でき、シロアリの防除効果を長期に亘って維持できる。
【0015】
また、本発明の散布器、散布方法、および処理方法によれば、シロアリによる食害部やシロアリの蟻道の内部にまで、シロアリ防除剤を十分に供給することができ、効率よくシロアリを防除できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】電線またはケーブル用被覆部材の一実施形態を示す断面図である。
【図2】電線またはケーブル用被覆部材の他の実施形態を示す断面図である。
【図3】電線またはケーブル用被覆部材のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の散布器の一実施形態を示す外観図である。
【図5】図4に示す散布器の使用状態を示す模式図である。
【図6】図4に示す散布器の使用状態における一部拡大断面図である。
【図7】本発明の散布器の他の実施形態を示す外観図である。
【図8】図7に示す散布器の使用状態を示す模式図である。
【図9】本発明の散布器のさらに他の実施形態を示す外観図である。
【図10】図9に示す散布器の使用方法を示す模式図である。
【図11】本発明の散布器のさらに他の実施形態を示す外観図である。
【図12】本発明の処理方法の一実施形態を示す模式図である。
【図13】本発明の処理方法の他の実施形態を示す模式図である。
【図14】本発明の処理方法のさらに他の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のネオニコチノイド製剤は、ネオニコチノイド系化合物をマイクロカプセルに内包したものであり、上記マイクロカプセルの壁膜の厚みが、1.8〜4μmである。
ネオニコチノイド系化合物としては、例えば、(E)−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(一般名:クロチアニジン)、N−アセチル−N−(2−クロロチアゾール−5−イル)メチル−N’−メチル−N”−ニトログアニジン、N−(2−クロロチアゾール−5−イル)メチル−N−メトキシカルボニル−N’−メチル−N”−ニトログアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリン−2−イリデンアミン(一般名:イミダクロプリド)、3−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−5−[1,3,5]オキサジアジナン−4−イルインデン−N−ニトロアミン(一般名:チアメトキサム)、(RS)−1−メチル−2−ニトロ−3−(テトラヒドロ−3−フリルメチル)グアニジン(一般名:ジノテフラン)、(E)−N1−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N2−シアノ−N1−メチルアセトアミジン(一般名:アセタミプリド)などが挙げられる。これらネオニコチノイド系化合物は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。また、上記ネオニコチノイド系化合物のなかでも、好ましくは、クロチアニジンが挙げられる。
【0018】
マイクロカプセルの調製方法としては、特に限定されず、化学的方法、物理化学的方法、物理的および機械的方法など、各種の方法が挙げられる。
化学的方法としては、例えば、界面重合法、in situ 重合法、液中硬化被覆法などが挙げられる。
界面重合法としては、例えば、多塩基酸ハライドとポリオールとを界面重合させてポリエステルからなる膜を形成する方法、多塩基酸ハライドとポリアミンとを界面重合させてポリアミドからなる膜を形成する方法、ポリイソシアネートとポリオールとを界面重合させてポリウレタンからなる膜を形成する方法、ポリイソシアネートとポリアミンとを界面重合させてポリウレアからなる膜を形成する方法などが挙げられる。
【0019】
in situ 重合法としては、例えば、スチレンとジビニルベンゼンとを共重合させてポリスチレン共重合体からなる膜を形成する方法、メチルメタクリレートとn−ブチルメタクリレートとを共重合させてポリメタクリレート共重合体からなる膜を形成する方法などが挙げられる。
液中硬化被覆法としては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、アルギン酸ソーダなどを液中で硬化させて被膜を形成する方法が挙げられる。
【0020】
物理化学的方法としては、例えば、単純コアセルベーション法、複合コアセルベーション法、pHコントロール法、非溶媒添加法などの水溶液系からの相分離法、例えば、有機溶媒系からの相分離法、液中乾燥法などが挙げられる。この物理化学的方法における膜形成成分には、例えば、ゼラチン、セルロース、ゼラチン−アラビアゴムなどが挙げられる。また、ポリスチレンなどを用いる界面沈降法などを採用することもできる。
【0021】
物理的および機械的方法としては、例えば、スプレードライ(噴霧乾燥)法、気中懸濁被膜法、真空蒸着被覆法、静電的合体法、融解分散冷却法、無機質壁カプセル化法などが用いられる。この物理的および機械的方法における膜形成成分には、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0022】
マイクロカプセルの調製方法は、ネオニコチノイド系化合物をマイクロカプセルに高濃度で内包させるという観点より、上記例示の調整方法の中でも特に、界面重合法が好適である。
次に、界面重合法によるマイクロカプセルの調製方法について、より詳細に説明する。
界面重合法によるマイクロカプセルの調製では、まず、有効成分としてのネオニコチノイド系化合物と、油溶性膜形成成分と、溶媒とを含む油相成分を調製する。
【0023】
油溶性膜形成成分としては、例えば、ポリイソシアネート、ポリカルボン酸クロライド、ポリスルホン酸クロライドなどが挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート、例えば、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。また、これらポリイソシアネートの誘導体、例えば、ダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレットジオン、オキサジアジントリオンなどや、これらポリイソシアネートの変性体、例えば、トリメチロールプロパンなどの低分子量のポリオールやポリエーテルポリオールなどの高分子量のポリオールを予め反応させることにより得られるポリオール変性ポリイソシアネートなども挙げられる。
【0024】
ポリカルボン酸クロライドとしては、例えば、セバシン酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、アゼライン酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド、トリメシン酸ジクロライドなどが挙げられる。
ポリスルホン酸クロライドとしては、例えば、ベンゼンスルホニルジクロライドなどが挙げられる。
【0025】
上記例示の油溶性膜形成成分は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記例示の油溶性膜形成成分の中では、特に、ポリイソシアネートを用いることが好ましく、さらには、脂肪族および脂環族のポリイソシアネート、とりわけ、ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートのトリマーやポリオール変性ポリイソシアネートを用いることが好ましい。
【0026】
溶媒としては、上記の有効成分や油溶性膜形成成分を溶解しまたは分散し得るものであればよく、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソオクチル、アジピン酸ジノニル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジドデシル、アジピン酸ジテトラデシル、アジピン酸ジヘキサデシル、アジピン酸ジオクタデシル、アジピン酸デシルイソオクチル、スベリン酸ジオクチル、スベリン酸ジイソノニル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジイソノニルなどの脂肪酸エステル類、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエチレングリコールエステル類、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、例えば、ヘキサノール、オクタノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコールなどのアルコール類、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール類、例えば、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドなどの含窒素化合物類、例えば、アルキルベンゼン類、アルキルナフタレン類、アルキルフェノール類、フェニルキシリルエタンなどの石油系溶媒(より具体的には、石油留分より得られる種々の市販の有機溶媒、例えば、サートレックス48(高沸点芳香族系溶剤、蒸留範囲254〜386℃、モービル石油(株)製)、アルケンL(アルキルベンゼン、蒸留範囲285〜309℃、日本石油化学(株)製)、ソルベッソ150(アルキルベンゼン、蒸留範囲188〜209℃、エクソン化学(株)製)、ソルベッソ200(アルキルナフタレン、蒸留範囲226〜286℃、エクソン化学(株)製)、KMC−113(ジイソプロピルナフタレン、沸点300℃、呉羽化学工業(株)製)、SAS296(フェニルキシリルエタン、蒸留範囲290〜305℃、日本石油化学(株)製)など)、なたね油などの油類などが挙げられる。
【0027】
上記例示の溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
油相成分における各成分の配合割合は、特に限定されるものではないが、例えば、有効成分(ネオニコチノイド系化合物)の配合割合は、油相成分の総量100重量部に対して、0.02〜99.9重量部、好ましくは、0.05〜99重量部である。
油溶性膜形成成分の配合割合は、油相成分100重量部に対して、0.1〜99.9重量部の範囲において配合可能である。なお、油溶性膜形成成分の配合割合が多くなると、得られるマイクロカプセルの壁膜が厚くなりすぎて、有効成分であるネオニコチノイド系化合物による防蟻効果が低下するおそれがあり、逆に、油溶性膜形成成分の配合割合が少なくなると、マイクロカプセルの壁膜を形成できなくなるおそれがある。
【0028】
また、溶媒の配合割合は、各成分の残余の割合でよい。
油相成分は、有効成分および油溶性膜形成成分を溶媒に配合して、攪拌混合することにより調製することができる。
また、油相成分には、有効成分の分散性を向上させるべく、分散剤を配合してもよい。分散剤は特に限定されるものではなく、例えば、エチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、エステルゴム、フローレンDOPA・15B(変性アクリル共重合物、共栄社製)、フローレン700(分岐カルボン酸の部分エステル、共栄社製)などが挙げられる。また、本発明においては、分散剤として、例えば、3級アミンを含む分子量1000以上のものが好ましく用いられる。
【0029】
3級アミンを含む分子量1000以上の分散剤としては、3級アミンを含有するカチオン系の高分子重合体、例えば、3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン系高分子重合体、3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体などが挙げられる。より具体的には、市販の分散剤、例えば、Disperbyk−161(3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量100000、ビッグケミー(株)製)、Disperbyk−163(3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量50000、ビッグケミー(株)製)、Disperbyk−164(3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量10000〜50000、ビッグケミー(株)製)、EFKA46(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量8000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA47(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量13000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA48(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量18000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA4050(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量12000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA4055(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量12000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA4009(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量5000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA4010(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量5000、EFKAケミカル(株)製)などが挙げられる。
【0030】
このような分散剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記した市販の分散剤は、通常、上記した溶媒などに、その濃度が50重量%以上となるような割合で希釈されている。
分散剤は、有効成分と、油溶性膜形成成分と、溶媒と、分散剤との、総量100重量部に対して、0.01〜99.99重量部の範囲において配合可能である。特に、20重量部以下、さらには10重量部以下で配合することが好ましい。
【0031】
油相成分の調製において、有効成分に防蟻防虫剤が配合される場合には、例えば、有効成分と、溶媒と、分散剤とを含むスラリーを調製し、さらに、スラリーを湿式粉砕した後、このスラリーに油溶性膜形成成分を配合することが好ましい。
湿式粉砕は、例えば、ビーズミル、ボールミル、またはロッドミルなどの公知の粉砕機を用いて、所定時間実施すればよい。湿式粉砕することにより、有効成分を微細な粒子として分散させることができ、カプセル化率の向上、製剤安定性の向上、および効力増強を図ることができる。
【0032】
また、このような湿式粉砕においては、有効成分の平均粒子径を、例えば、5μm以下、さらには2.5μm以下とすることが好ましい。平均粒子径がこれより大きいと、マイクロカプセルに良好に内包できない場合がある。
そして、湿式粉砕されたスラリーに、油溶性膜形成成分を配合するには、油溶性膜形成成分をスラリーに加えて攪拌混合すればよい。
【0033】
界面重合法によるマイクロカプセルの調製では、次いで、このようにして調製された油相成分を、水相成分に配合して、攪拌により界面重合させる。
水相成分は、例えば、水に、必要により、分散安定剤を配合することによって調製することができる。
分散安定剤としては、例えば、アラビヤガムなどの天然多糖類、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの半合成多糖類、ポリビニルアルコールなどの水溶性合成高分子、例えば、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン重縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩などのアニオン界面活性剤、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステルなどのノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。これら分散安定剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
なお、分散安定剤の配合割合は、例えば、水相成分100重量部に対して、例えば、20重量部以下、好ましくは、10重量部以下である。
油相成分を水相成分に配合するには、油相成分を水相成分中に加えて、常温下、微小滴になるまでミキサーなどによって攪拌すればよい。
そして、攪拌により界面重合させるには、例えば、油相成分の分散後に、水溶性膜形成成分を水溶液として滴下すればよい。
【0035】
水溶性膜形成成分としては、油溶性膜形成成分と反応して界面重合するものであれば、特に制限されず、例えば、ポリアミンやポリオールなどが挙げられる。
ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノトルエン、フェニレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ピペラジンなどが挙げられる。
【0036】
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0037】
これら水溶性膜形成成分は、単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。好ましくは、ポリアミンが用いられる。
また、水溶性膜形成成分を水溶液とするには、約50重量%以下の濃度とすることが好ましく、このような水溶液を、例えば、水溶性膜形成成分が、油溶性膜形成成分に対してほぼ等しい当量(例えば、ポリイソシアネートとポリアミンとが用いられる場合では、イソシアネート基/アミノ基の当量比がほぼ1となる割合)となるまで滴下する。
【0038】
このような水溶性膜形成成分の滴下により、水溶性膜形成成分と油溶性膜形成成分とが、油相成分(溶媒)と水相成分(水)との界面で反応することにより、有効成分が内包されるマイクロカプセルを、水分散液として得ることができる。
この反応を促進するために、例えば、約25〜85℃、好ましくは、約40〜80℃で、約30分〜24時間、好ましくは、約1〜3時間攪拌しつつ加熱することが好ましい。
【0039】
そして、このようにして得られるマイクロカプセル(水分散液として調製されるものを含む。)には、必要により、増粘剤、凍結防止剤、比重調節剤などの公知の添加剤を適宜配合する。
上記ネオニコチノイド製剤においては、高温多湿環境下でのネオニコチノイド系化合物の溶脱を抑制し、シロアリの防除(防蟻)効果を長期に亘って発揮させる観点より、マイクロカプセルの壁膜の厚さを1.8〜4μm、とりわけ、1.8〜3.5μmとすることが好ましい。
【0040】
マイクロカプセルを、その壁膜の厚さが1.8〜4μm、とりわけ、1.8〜3.5μmとなるように調製するには、例えば、界面重合法によるマイクロカプセルの調製において、油相成分を水相成分に配合した後の攪拌速度を適宜調節すればよい。
マイクロカプセルの壁膜の平均膜厚T(μm)は、後述するマイクロカプセルの体積平均粒子径D(μm)より、下記式(1)に基づいて求められる。
【0041】
T=(D/6)×(W1/W2)×(D2/D1) …(1)
(式(1)中、W1は、壁膜形成物質の重量(g)を示し、W2は、膜内物質の重量(g)を示し、D1は、壁膜形成物質の平均密度(g/cm3)を示し、D2は、膜内物質の平均密度(g/cm3)を示す。
マイクロカプセルの粒子径は、体積基準の平均粒子径(体積平均粒子径)を1〜200μm、とりわけ、6〜100μmに調整することが好ましい。また、マイクロカプセルの粒度分布は、特に限定されないが、正規分布に近く、かつ分布の幅が狭いことが好ましい。
【0042】
マイクロカプセルの体積平均粒子径は、例えば、レーザ回折/散乱式粒度分布装置により測定された粒子径の大きさとその分布状態(粒度分布)に基づいて、求めることができる。
なお、粒子径分布が正規分布となるマイクロカプセルを、目的とする平均粒子径に調整する方法は、マイクロカプセルの調製方法によって異なる。例えば、マイクロカプセルを界面重合法により調製する場合には、油相成分を水相成分に配合した後の攪拌速度を調節することで、平均粒子径を適宜調整することができる。例えば、平均粒子径が1〜200μmのマイクロカプセルを得るには、水相成分の粘度が例えば、0.1〜1Pa・s、好ましくは0.3〜0.6Pa・sである場合において、その攪拌速度を、周速13m/s未満、好ましくは0.1〜12m/sに設定すればよい。
【0043】
上記ネオニコチノイド製剤は、例えば、界面重合法によって製造されたマイクロカプセルのままの状態(水懸濁剤)で用いることができる。
また、上記ネオニコチノイド製剤は、マイクロカプセルを含む水懸濁液に、必要により、分散剤、界面活性剤、沈降防止剤などを適宜配合した上で、得られた水分散液を乾燥させることにより、あるいは、適当な溶媒に溶解、分散させて、スプレードライ法などで乾燥させることにより、例えば、粉状物(粉剤)、粒状物(粒剤)などとして用いることができる。
【0044】
上記ネオニコチノイド製剤を粉状物または粒状物として調製した場合には、その平均粒子径を0.1〜2000μm、好ましくは、1〜500μmに調整することが好ましい。粉状物または粒状物の平均粒子径は、例えば、マイクロカプセルの場合と同様にして、求めることができる。
上記ネオニコチノイド製剤は、例えば、防腐防カビ剤を含有する製剤と混合して用いることができる。この場合において、上記ネオニコチノイド製剤は、防蟻効果だけでなく、防腐防カビ効果を発揮できることから、木材保存剤として好適である。
【0045】
防腐防カビ剤は、防腐剤および/または防カビ剤であること以外は、特に限定されないが、具体的には、例えば、有機ヨード系化合物、トリアゾール系化合物、スルファミド系化合物、ビス四級アンモニウム塩系化合物、四級アンモニウム塩系化合物、フタロニトリル系化合物、ジチオール系化合物、チオフェン系化合物、チオカルバメート系化合物、ニトリル系化合物、フタルイミド系化合物、ハロアルキルチオ系化合物、ピリジン系化合物、ピリチオン系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、トリアジン系化合物、グアニジン系化合物、尿素系化合物、イミダゾール系化合物、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、フェニルウレア系化合物などが挙げられる。
【0046】
有機ヨード系化合物としては、例えば、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート(慣用名:IPBC)、パラクロロフェニル−3−ヨードプロパギルホルマール(商品名:IF−1000、長瀬産業(株)製)、3−ブロモ−2,3−ジヨード−2−プロペニルエチルカーボナート(商品名:サンプラス、(株)三共製)などが挙げられる。
トリアゾール系化合物としては、例えば、1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−プロピル−1、3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(慣用名:プロピコナゾール)、α−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−α(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:テブコナゾール)、α−(4−クロロフェニル)−α−(1−シクロプロピル−エチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:シプロコナゾール)などが挙げられる。
【0047】
スルファミド系化合物としては、例えば、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−フェニルスルファミド(商品名:プリベントールA4/S、バイエル製)、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−4−トリルスルファミド(商品名:プリベントールA5、バイエル製)などが挙げられる。
ビス四級アンモニウム塩系化合物としては、例えば、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド)(商品名:ダイマー38、イヌイ社製)、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムアセテート)(商品名:ダイマー38A、イヌイ社製)、4,4’−(テトラメチレンジカルボニルジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムブロマイド)(商品名:ダイマー136、イヌイ社製)、4,4’−(テトラメチレンジカルボニルジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムアセテート)(商品名:ダイマー136A、イヌイ社製)などが挙げられる。
【0048】
四級アンモニウム塩系化合物としては、例えば、ジ−n−デシル−ジメチルアンモニウムクロライド、1−ヘキサデシルピリジニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、コータミンD10EPR(花王製)などが挙げられる。
フタロニトリル系化合物としては、例えば、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル(商品名:ノプコサイドN−96、サンノプコ(株)製)などが挙げられる。
【0049】
ジチオール系化合物としては、例えば、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンなどが挙げられる。
チオフェン系化合物としては、例えば、3,3,4−トリクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシドなどが挙げられる。
【0050】
チオカルバメート系化合物としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィドなどが挙げられる。
ニトリル系化合物としては、例えば、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルなどが挙げられる。
フタルイミド系化合物としては、例えば、N−1,1,2,2−テトラクロロエチルチオ−テトラヒドロフタルイミド(Captafol)、N−トリクロロメチルチオ−テトラヒドロフタルイミド(Captan)、N−ジクロロフルオロメチルチオフタルイミド(Fluorfolpet)、N−トリクロロメチルチオフタルイミド(Folpet)などが挙げられる。
【0051】
ハロアルキルチオ系化合物としては、例えば、N−ジメチルアミノスルホニル−N−トリル−ジクロロフルオロメタンスルファミド(Tolylfluanide)、N−ジメチルアミノスルホニル−N−フェニル−ジクロロフルオロメタンスルファミド(Dichlofluanide)、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−N、N’−ジメチル−N−フェニル−スルファミドなどが挙げられる。
【0052】
ピリジン系化合物としては、例えば、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジンなどが挙げられる。
ピリチオン系化合物としては、例えば、ジンクピリチオン、ナトリウムピリチオンなどが挙げられる。
ベンゾチアゾール系化合物としては、例えば、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
【0053】
トリアジン系化合物としては、例えば、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジンなどが挙げられる。
グアニジン系化合物としては、例えば、1,6−ジ−(4’−クロロフェニルジグアニド)−ヘキサン、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩などが挙げられる。
尿素系化合物としては、例えば、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレアなどが挙げられる。
【0054】
イミダゾール系化合物としては、例えば、メチル−2−ベンズイミダゾールカルバメート、メチル−2−ベンズイミダゾールカルバメート塩酸塩、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾールなどが挙げられる。
イソチアゾリン系化合物としては、例えば、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
【0055】
ニトロアルコール系化合物としては、例えば、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−エタノールなどが挙げられる。
フェニルウレア系化合物としては、例えば、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレアなどが挙げられる。
これら防腐防カビ剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、これら防腐防カビ剤のなかでは、有機ヨード系化合物やトリアゾール系化合物を用いることが好ましく、とりわけ、IPBC、プロピコナゾール、テブコナゾールを用いることが好ましい。
【0056】
防腐防カビ剤を含有する製剤としては、例えば、懸濁剤、液剤などが挙げられる。
懸濁剤は、固体の粒子状の有効成分(防腐防カビ剤)が、水および/または有機溶媒中に分散した製剤形態であって、このような懸濁剤としては、例えば、フロアブル剤、マイクロカプセル剤、担体担持剤などが挙げられる。
なお、担体担持剤は、通常、有効成分を担持した、水および/または有機溶媒に不溶の固体の担体を、水および/または有機溶媒中に分散させた水および/または有機溶媒系製剤であって、担体としては、担持能または吸着能を有する固形の担体、具体的には、例えば、層状ケイ酸塩(モンモリロナイトなど)、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、ゼオライト、活性炭、ホワイトカーボン、シクロデキストリン(例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンなど)などが挙げられる。
【0057】
液剤は、液状の有効成分(防腐防カビ剤)が、水および/または有機溶媒中に溶解または液滴として分散した製剤形態であって、このような液剤としては、例えば、水(または溶解共力剤(コソルベント)を含む水)に溶解した液体製剤や、例えば、有機溶媒に溶解した油剤、例えば、界面活性剤などの乳化剤とともに水中に分散した乳剤、などが挙げられる。
【0058】
上記ネオニコチノイド製剤の粉状物(粉剤)および粒状物(粒剤)は、いずれも樹脂エマルションに配合し、攪拌、混合して用いることができる。
また、上記ネオニコチノイド製剤の粉状物(粉剤)および粒状物(粒剤)は、いずれも合成樹脂微粒子と混合し、互いに付着させた状態で用いることができる。
合成樹脂微粒子は、特に限定されるものではなく、公知の各種の合成樹脂微粒子を用いることができる。また、合成樹脂微粒子を形成する樹脂としては、熱硬化性樹脂、および熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0059】
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、架橋剤により架橋させたビニル重合性モノマー重合体よりなる樹脂などが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ビニル重合性モノマー重合体よりなる樹脂などが挙げられる。
【0060】
合成樹脂微粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは、0.1〜200μm、より好ましくは、1〜60μm、さらに好ましくは、1〜50μmである。
上記ネオニコチノイド製剤による防除(シロアリの駆除およびシロアリによる被害の予防)の対象となるシロアリとしては、シロアリ(等翅)目に属する昆虫であること以外は特に限定されず、具体的には、例えば、イエシロアリ(Coptotermes formosanus)、ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)などのミゾガシラシロアリ科に属するもの、アメリカカンザイシロアリ、ダイコクシロアリなどのレイビシロアリ科に属するものなどが挙げられる。
【0061】
また、上記シロアリについて、兵蟻とは、兵隊アリまたは大型働きアリを示しており、職蟻とは、働きアリ(偽職アリ)を示している。
上記のネオニコチノイド製剤によれば、ネオニコチノイド系化合物を内包するマイクロカプセルの壁膜の厚みが上記範囲に設定されていることにより、長期間に亘って防蟻効果を発揮することができる。
【0062】
それゆえ、上記のネオニコチノイド製剤は、木材保存剤として、とりわけ、防蟻剤として好適である。
上記ネオニコチノイド製剤は、木材の保存や、シロアリの駆除およびシロアリによる被害(食害など)の予防などの用途に広く使用できる。
シロアリを防除する部位としては、これに限定されないが、例えば、土壌(地盤面など)、例えば、木材、例えば、建物(建築物;すなわち、家屋、倉庫、門扉、塀およびこれらの付属設備など。)における基礎構造部、上部構造部および地下構造部、例えば、建物の付属設備としての地下埋設物、例えば、シロアリの生息・発生域などが挙げられる。
【0063】
具体的には、例えば、土壌用の処理剤として、または、一般工業用や土木工業用に用いられる各種木材用の処理剤として好適に使用できる。
土壌用処理剤としての使用方法は、特に限定されないが、例えば、公知の散布方法(例えば、スプレーなど)によって処理対象の土壌に散布すればよい。より具体的には、例えば、ネオニコチノイド系化合物がマイクロカプセルに1〜60重量%の割合で内包されているネオニコチノイド製剤の場合、このネオニコチノイド製剤を、土壌の表面に対し、0.003〜3g/m2、とりわけ、0.03〜3g/m2の分量で散布すればよい。
【0064】
木材用処理剤としての使用方法は、特に限定されないが、例えば、公知の散布方法(例えば、スプレーなど)によって処理対象の木材に散布し、または、公知の塗布方法(例えば、刷毛塗りなど)によって処理対象の木材に塗布すればよい。より具体的には、例えば、ネオニコチノイド系化合物がマイクロカプセルに1〜60重量%の割合で内包されているネオニコチノイド製剤の場合、このネオニコチノイド製剤を、木材の表面に対し、0.0002〜0.2g/m2、とりわけ、0.002〜0.2g/m2の分量で散布または塗布すればよい。
【0065】
上記ネオニコチノイド製剤は、上述のように、例えば、マイクロカプセルを含む水懸濁液の状態で、もしくは、例えば、マイクロカプセルを乾燥させた粉状物(粉剤)、粒状物(粒剤)などの状態で、または、例えば、防腐防カビ剤を含有する製剤と混合した状態で用いられ、これらの状態で、シロアリを防除する部位に対し、処理される(具体的には、例えば、散布、噴射、噴霧、注入などによって処理される)。
【0066】
また、上記ネオニコチノイド製剤は、これに限定されないが、例えば、マイクロカプセルを含む水懸濁剤や、マイクロカプセルを乾燥させた粉剤、粒剤などの状態で、スプレー剤(エアゾール剤)、ムース剤などとして使用することもできる。
例えば、スプレー剤、ムース剤などを噴射、噴霧または注入する場合において、その処理対象としては、特に限定されないが、上述のシロアリを防除する部位のなかでも、例えば、シロアリの蟻道、シロアリによる食害(穿孔)を生じた部分、建物の基礎構造部、上部構造部および地下構造部における亀裂部分や隙間などが好適である。
【0067】
また、例えば、上記ネオニコチノイド製剤をスプレー剤(エアゾール剤)や、ムース剤として用いる場合において、その噴射口には、先端が細くなるようなテーパを有するノズルを備えていることが好ましい。このノズルの形状を、例えば、シロアリの蟻道、シロアリによる食害によって生じた穿孔の形状に合わせることで、上記ネオニコチノイド製剤の漏れを防止でき、効率よく、蟻道や穿孔などへの上記ネオニコチノイド製剤の注入処理を行うことができる。
【0068】
また、上記ネオニコチノイド製剤は、例えば、接着剤に混合することで、防蟻性が付与された合板を形成するための接着剤として使用することができる。
本発明の硬化性シロアリ防除組成物は、上記ネオニコチノイド製剤と、水硬性成分と、土砂成分とを含有している。
水硬性成分としては、土砂成分と上記ネオニコチノイド製剤とを分散させて、硬化性シロアリ防除組成物を形成できるものであること以外は、特に限定されず、モルタルまたはコンクリートの形成材料として用いられている種々の水硬性成分が挙げられる。
【0069】
具体的には、例えば、気硬性セメント(例えば、気硬性単味セメント、気硬性混合セメントなど)や、水硬性セメント(例えば、水硬性単味セメント、水硬性混合コメントなど)が挙げられる。
気硬性単味セメントとしては、例えば、焼セッコウ、無水セッコウプラスターなどのセッコウ類、例えば、消石灰、ドロマイトプラスターなどの石灰類などが挙げられる。気硬性混合セメントとしては、例えば、マグネシアセメントなどが挙げられる。
【0070】
水硬性単味セメントとしては、例えば、ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメントなどのポルトランドセメント類、例えば、アルミナセメント、石灰アルミナセメントなどのアルミナセメント類などが挙げられる。水硬性混合コメントとしては、例えば、石灰スラグセメント、石灰火山灰セメントなどの石灰混合セメント類、例えば、高炉セメント、シリカセメント、ポゾランセメント、フライアッシュセメントなどの混合ポルトランドセメント類、例えば、高硫酸塩スラグセメント類などが挙げられる。
【0071】
これら気硬性セメントおよび水硬性セメントは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
土砂成分を構成する土砂としては、例えば、礫、砂(粗砂、細砂)、シルト(微砂)、粘土が挙げられる。これらの土砂は、単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
上記土砂は、砂、シルト、粘土などの含有割合に基づき、例えば、砂土類(例えば、壌質砂土、砂土)、壌土類(例えば、壌土、砂壌土、微砂質壌土)、埴壌土類(例えば、埴壌土、砂質埴壌土、微砂質埴壌土)、および、埴土類(例えば、軽埴土、砂質埴土、微砂質埴土、重埴土)に分類される。なお、これらの土砂の区分は、国際土壌学会法の土性区分による。上記土砂は、上記土砂の1区分にのみ属するものであってもよく、2以上の区分に属するものであってもよい。
【0073】
また、上記土砂の具体例としては、例えば、砂類(例えば、けい砂、川砂、海砂、浜砂、山砂など)、土類(例えば、花崗岩の風化により形成された真砂土、例えば、赤土、黒土、しらすなどの火山灰土、例えば、河川の堆積土など)、各種園芸用土(例えば、赤玉土、鹿沼土、荒木田土、腐葉土、桐生砂など)、火成岩(安山岩、花崗岩、流紋岩など)、変成岩(珪岩、晶質石灰岩など)、堆積岩(泥岩、砂岩など)などが挙げられる。
【0074】
なお、上記砂類は、一般に砂土に分類され、真砂土は、一般に壌質砂土または壌土類に分類され、火山灰土は、一般に埴壌土類または埴土類に分類される。
上記例示の土砂のなかでは、取扱い性およびコスト面から、好ましくは、壌質砂土などの砂土類、壌土、砂壌土、微砂質壌土などの壌土類が挙げられ、また、具体的な材質としては、好ましくは、真砂土、けい砂が挙げられる。
【0075】
上記土砂は、礫成分を含んでいてもよい。礫成分は、粒径2mm以上の土または岩石粒子であればよく、具体的に、礫成分の粒径は、例えば、2〜8mm程度(9メッシュ〜2 1/2メッシュ程度)であり、好ましくは、2〜5mm程度(9メッシュ〜3 1/2メッシュ程度)であり、さらに好ましくは、2〜3.5mm程度(9メッシュ〜6メッシュ程度)である(なお、メッシュ単位は、タイラー表記による)。土砂中に礫成分が存在するときは、硬化性シロアリ防除組成物を硬化または固化させて得られるシロアリ防除層のシロアリ防除効果を、より一層向上させることができる。
【0076】
さらに、上記土砂は、礫成分と細粒成分とを含んでいてもよい。細粒成分は、少なくとも砂成分を含んでいればよく、この砂成分としては、粒径0.2〜2mm程度の粗砂、および粒径0.02〜0.2mm程度の細砂から選択される少なくとも1種が挙げられる。また、上記細粒成分は、さらに土成分を含んでいてもよく、この土成分としては、粘土(例えば、粒径0.002mm以下、好ましくは、0.00001〜0.002mm程度のもの)、およびシルト(例えば、粒径0.002〜0.02mm程度のもの)から選択される少なくとも1種が挙げられる。土砂中に細粒成分(特に、土成分)が含まれるときは、例えば、公園、霊園などの屋外で硬化性シロアリ防除組成物が用いられる場合であっても、硬化性シロアリ防除組成物が自然の土の風合いを有するものとなるため、周囲の景観を損なうことがない。
【0077】
礫成分と細粒成分との含有割合は、例えば、(礫成分の含有量):(細粒成分の含有量)で示される含有比率(重量比)として、99.9:0.1〜5:95程度(具体的には、例えば、99:1〜25:75程度)、好ましくは、99:1〜50:50程度、さらに好ましくは、95:5〜75:25程度であってもよい。
砂成分と土成分との割合割合は、粉粒状の硬化性シロアリ防除物を構成できる限り特に制限されず、例えば、(砂成分の含有量):(土成分の含有量)で示される含有比率(重量比)として、99:1〜10:90、好ましくは、95:5〜50:50、さらに好ましくは、90:10〜60:40程度であってもよい。
【0078】
また、上記土砂成分は、廃物の破砕物で構成されていてもよく、廃物の破砕物と、上記土砂とで構成されていてもよい。
廃物には、人工物および天然物の廃物が含まれる。人工物としては、例えば、人工の建造物または構造物(例えば、レンガ、かわら、コンクリート建材、モルタル建材、コンクリートブロック、コンクリート道路、アスファルト道路、窓ガラスなど)、日用品(植木鉢、コップ、陶器など)などが挙げられる。天然物としては、例えば、貝殻(アサリ、シジミ、ハマグリ、ホタテの貝殻など)、骨類(ウシ、ブタ、ニワトリの骨など)などが挙げられる。これらの廃物を土砂成分として用いることにより、資源の有効利用を図ることができる。
【0079】
上記廃物は、上記土砂と同様の粒径に破砕されていればよい。また、上記廃物は、単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記土砂成分は、硬化性シロアリ防除組成物を硬化または固化させて得られるシロアリ防除層の緻密さを維持するという観点から、土砂成分の総量の95重量%以上、とりわけ98重量%以上が、粒径1.5mm以下の土砂成分であることが好ましい。さらには、土砂成分の全てが、粒径1.5mm以下の土砂成分であることが好ましい。この場合、上記シロアリ防除層を有する被処理物について、シロアリによる穿孔を抑制し、シロアリ防除効果を早期に発現させることができる。
【0080】
上記硬化性シロアリ防除組成物中での上記水硬性成分の含有割合は、特に限定されないが、好ましくは、1〜99重量%であり、より好ましくは、1〜80重量%であり、さらに好ましくは、5〜30重量%である。
上記硬化性シロアリ防除組成物中での土砂成分の含有割合は、特に限定されないが、好ましくは、0.9〜99重量%であり、より好ましくは、19.9〜99重量%であり、さらに好ましくは、69.9〜95重量%である。
【0081】
また、上記硬化性シロアリ防除組成物中での土砂成分の含有割合は、上記水硬性成分100重量部に対して、好ましくは、1〜20000重量部であり、より好ましくは、10〜10000重量部であり、さらに好ましくは、25〜5000重量部である。
上記硬化性シロアリ防除組成物中での上記シロアリ防除成分の含有割合は、特に限定されないが、好ましくは、0.00001〜50重量%であり、より好ましくは、0.001〜10重量%である。
【0082】
上記硬化性シロアリ防除組成物中でのその他の添加剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、0〜20重量%であり、より好ましくは、0〜10重量%である。
上記硬化性シロアリ防除組成物を水と混練し、硬化させて得られる硬化物についての圧縮強度(JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」またはJIS A 1171:2000「ポリマーセメントモルタルの試験方法」に記載の圧縮強さ試験による測定値)は、特に限定されないが、好ましくは、1〜20N/mm2であり、より好ましくは、2〜18N/mm2であり、さらに好ましくは、2〜15N/mm2である。
【0083】
上記硬化性シロアリ防除組成物と水との混練物を硬化させて得られる硬化物の圧縮強度が、上記範囲を満たすときは、上記硬化物の硬さが、例えば、コンクリートのように、シロアリが加害できない程度の硬さではなく、一方で、例えば、通常の土壌のように、シロアリが容易に、直進しつつ貫通できる程度の柔らかさではなく、シロアリが加害するのに際して、適度な抵抗を有することになる。
【0084】
上記の硬化性シロアリ防除組成物において、防除の対象となるシロアリとしては、シロアリ(等翅)目に属する昆虫であること以外は特に限定されず、具体的には、上記ネオニコチノイド製剤による防除対象と同様のものが挙げられる。
上記硬化性シロアリ防除組成物の被処理域としては、例えば、シロアリが侵入する可能性のある部位(シロアリによる被害が予想される部位)、シロアリによる被害が実際に生じている部位など、シロアリの防除を必要とする部位が挙げられる。
【0085】
シロアリの防除を必要とする部位としては、具体的には、例えば、建物(建築物;すなわち、家屋、倉庫、門扉、塀およびこれらの付属設備など。)における基礎構造部、上部構造部および地下構造部、例えば、建物の付属設備としての地下埋設物、例えば、地盤面、例えば、シロアリの生息・発生域などが挙げられる。
建物の基礎構造部としては、例えば、基礎(独立基礎、布基礎、ベタ基礎など。)、地業(玉石地業、割りぐり石地業、砂地業など。)、基礎ばり、地中ばり、布石、土台(柱を載置するための木製の土台など。)、柱、床束、大引、根がらみ、根太、基礎断熱材などが挙げられる。
【0086】
建物の上部構造部としては、例えば、柱、床部(床上部、床下部;例えば、床板、床下断熱材など。)、壁部(外壁、内壁、間仕切壁、断熱材(外壁断熱材、内壁断熱材)など。)、天井部(天井板、天井断熱材など。)、はり(桁)、窓枠、庇、軒、屋根板、棟ばり、壁塀(壁塀表面、犬走り部、貼り付け石など。)などが挙げられる。
建物の地下構造部としては、例えば、建物の地下室部分を構成する柱、床部、外壁、外壁断熱材、内壁、内壁断熱材、間仕切壁、天井、はり(桁)などが挙げられる。
【0087】
建物(建築物)の付属設備としての地下埋設物としては、例えば、ケーブル類(電線ケーブル、光ファイバーケーブルなど。)の周囲、配管類(水道管、ガス管など。)の周囲などが挙げられる。
地盤面としては、例えば、建物外での基礎構造部近傍(建物の外周、壁塀の犬走り部下など。)の地盤表面、建物内(床下部)の地盤表面などが挙げられる。
【0088】
シロアリの生息・発生域としては、例えば、シロアリの巣、蟻道、加害部などが挙げられる。
なお、シロアリが侵入する可能性のある部位には、例えば、建物(上記の基礎構造部、上部構造部、地下構造部)や地下埋設物におけるひび割れ部分(クラックなど。)、隙間部分、ドリルなどにより穿孔された部分などが挙げられる。
【0089】
上記硬化性シロアリ防除組成物の施工量は、被処理域に合わせて適宜設定すればよい。
それゆえ、特に限定されないが、例えば、上記硬化性シロアリ防除組成物を、シロアリによる被害を防除する部位(具体的には、地盤面など。)に対し、直接に適用(具体的には、散布など。)する場合や、例えば、水、シロアリ防除成分を含有しているシロアリ防除液またはポリマーを含有している液体が散布された領域に対し、適用(散布など)する場合においては、例えば、シロアリによる被害を防除する部位または水などが散布された領域全面に対し、硬化性シロアリ防除組成物からなる層の厚みが、0.1〜5cm、好ましくは、0.1〜3cmとなるように適用(散布など)したり、例えば、硬化性シロアリ防除組成物からなる層の厚みが、0.25mm〜3cmとなり、幅が、1〜30cm、好ましくは、3〜20cmとなるように適用(散布など)する。
【0090】
例えば、上記硬化性シロアリ防除組成物と、水またはシロアリ防除成分を含有しているシロアリ防除液)との混練物を、シロアリによる被害を防除する部位(具体的には、建物の基礎構造部など、より具体的には、柱、断熱材など。)に適用(具体的には、塗工、注入など。)する場合には、例えば、シロアリによる被害を防除する部位などの表面に、上記混練物からなる層の厚みが、0.25mm〜3cmとなるように適用(塗工、注入)する。上記混練物は、例えば、基礎立ち上がり部分の全面に適用してもよい。また、例えば、上記混練物を基礎立ち上がり部分に適用する場合には、基礎部と壁面との境界からの高さ方向の長さが、1〜40cm、好ましくは、1〜20cmとなり、厚さが、0.25mm〜5cm、好ましくは、0.25mm〜3cm、より好ましくは、0.25mm〜1cmとなり、単位面積あたりの重量が、200g/m2〜60kg/m2となるように、上記混練物を適用(塗工、注入)する。
【0091】
上記硬化性シロアリ防除組成物は、上記した被処理域に対して、種々の方法で施工することができる。
本発明の防蟻性塗料組成物は、上記ネオニコチノイド製剤と、樹脂エマルションとを含有している。
上記の防蟻性塗料組成物において、防除の対象となるシロアリとしては、シロアリ(等翅)目に属する昆虫であること以外は特に限定されず、具体的には、上記ネオニコチノイド製剤による防除対象と同様のものが挙げられる。
【0092】
上記防蟻性塗料組成物において、樹脂エマルションとしては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法などの常法により、モノマーから合成された樹脂エマルションが挙げられる。また、上記樹脂エマルション中の樹脂を溶剤に溶解させて溶液としたもの、または上記樹脂を溶融させて液状としたものを、水中で強制乳化または転相乳化することでエマルションとし、界面活性剤でコロイド状態を安定化させたものであってもよい。
【0093】
また、樹脂エマルションを形成する樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これら樹脂は、単独で用いることができ、また、2種以上を混合して用いることもできる。
シリコーン樹脂としては、例えば、アルキル基および/またはアリール基を有するポリシロキサン、例えば、ポリシロキサンのシラノール基(−SiOH)と、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂などのヒドロキシル基(−OH)またはカルボキシル基(−COOH)とを反応させて得られる変性シリコーン樹脂などが挙げられる。なかでも好ましくは、ポリシロキサンのシラノール基と、アクリル系樹脂のヒドロキシル基またはカルボキシル基とを反応させて得られる、アクリル変性シリコーン樹脂が挙げられる。
【0094】
アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸アルキル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなど。)、メタクリル酸、メタクリル酸アルキル(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなど。)などのモノマーの1種以上を付加重合したポリマーが挙げられる。
【0095】
スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂(スチレンと、上記アクリル樹脂を形成するモノマーの1種以上の共重合体)、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−メタクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。
【0096】
酢酸ビニル系樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル共重合樹脂などが挙げられる。
塩化ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂などが挙げられる。
【0097】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合樹脂、エチレン−プロピレン−ジエン共重合樹脂などが挙げられる。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA系エポキシ樹脂、ノボラック系エポキシ樹脂、環状脂肪族系エポキシ樹脂、長鎖脂肪族系エポキシ樹脂などが挙げられる。
ウレタン樹脂としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどのジイソシアネートと、ブタンジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオールなどのジオールとを重付加して得られるポリウレタン、例えば、上記ポリウレタンのエマルション中で、アクリル樹脂を形成するモノマー類(1種以上)を重合させて得られるアクリル変性ポリウレタンなどが挙げられる。
【0098】
上記例示の樹脂から形成される樹脂エマルションは、単独で用いることができ、また、2種以上を混合して用いることもできる。
樹脂エマルションとしては、上記例示のなかでも、好ましくは、シリコーン樹脂エマルション、アクリル樹脂エマルション、アクリル−スチレン樹脂エマルション、シリコーン樹脂エマルションとアクリル樹脂エマルションとの混合物、アクリル変性シリコーン樹脂エマルション、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルション、ウレタン−アクリル樹脂エマルションが挙げられ、より好ましくは、アクリル変性シリコーン樹脂エマルション、アクリル樹脂エマルション、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルション、ウレタン−アクリル樹脂エマルションが挙げられる。
【0099】
上記防蟻性塗料組成物中での樹脂エマルションの含有量は、固形分として、上記防蟻性塗料組成物中の固形分100重量部に対し、好ましくは、2〜40重量部であり、より好ましくは、5〜30重量部である。
上記防蟻性塗料組成物には、上記ネオニコチノイド製剤と上記樹脂エマルション以外に、例えば、無機系フィラーを配合することができる。
【0100】
無機系フィラーとしては、例えば、シリカ、マイカ、タルク、石粉、珪藻土、クレー、火山灰、石炭灰、ベントナイト、グラファイト、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、アルミニウム末、鉄粉、二硫化モリブデン、硫酸バリウム、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄などが挙げられる。なかでも、好ましくは、炭酸カルシウム、酸化チタンが挙げられる。
【0101】
無機系フィラーの平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは、0.001〜100μmであり、より好ましくは、0.1〜50μmである。無機系フィラーの粒子径および平均粒子径は、例えば、市販されているレーザ回折/散乱式粒度分布装置を用いて、粒子径の大きさとその分布状態(粒度分布)を測定することにより、求めることができる。
無機系フィラーの平均粒子径は、シロアリ防除用塗料組成物を用いて形成される塗膜の平滑性を維持し、かつ、シロアリ防除成分をしっかりと固定させることが可能な、多孔性または高透湿性の塗膜を形成するという観点より、上記範囲に設定されていることが好適である。
【0102】
上記防蟻性塗料組成物中での無機系フィラーの含有量は、特に限定されないが、例えば、上記防蟻性塗料組成物中の固形分100重量部に対し、好ましくは、10〜98重量部であり、より好ましくは、20〜90重量部であり、さらに好ましくは、50〜90重量部であり、特に好ましくは、60〜90重量部である。
無機系フィラーの含有量は、上記防蟻性塗料組成物を用いて形成される塗膜の平滑性を維持し、かつ、シロアリ防除成分をしっかりと固定させることが可能な、多孔性または高透湿性の塗膜を形成するという観点より、上記範囲に設定されていることが好適である。
【0103】
上記防蟻性塗料組成物は、上記無機系フィラーのうち、着色に用いることができるものを適宜選択して配合することで、適宜の色に着色することができる。
上記防蟻性塗料組成物の着色に用いることができる無機系フィラーとしては、例えば、白色系に着色するための酸化チタン、黄色系に着色するための黄色酸化鉄、赤色系に着色するための赤色酸化鉄、黒色系に着色するためのカーボンブラックなどが挙げられる。
【0104】
また、上記防蟻性塗料組成物には、必要に応じて、保存剤(例えば、スライムコントロール剤、防腐剤、防かび剤、防藻剤など)、増粘剤、消泡剤、分散剤、揺変剤、保湿剤、可塑剤、老化防止剤などの添加剤を配合してもよい。
保存剤としては、例えば、ハロゲン化窒素硫黄化合物(例えば、商品名「スラオフ」シリーズ、日本エンバイロケミカルズ(株)製など)などのスライムコントロール剤、例えば、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート(慣用名:IPBC)、パラクロロフェニル−3−ヨードプロパギルホルマール(商品名:IF−1000、長瀬産業(株)製)、3−ブロモ−2,3−ジヨード−2−プロペニルエチルカーボナート(商品名:サンプラス、三共ライフテック(株)製)などの有機ヨウ素系防腐・防カビ・防藻剤、例えば、1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(慣用名:プロピコナゾール)、α−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−α(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:テブコナゾール)、α−(4−クロロフェニル)−α−(1−シクロプロピル−エチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:シプロコナゾール)などのトリアゾール系防腐・防カビ・防藻剤、例えば、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア(一般名:DCMU)などのウレア系防藻剤、例えば、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−S−チアジン(商品名:イルガロール1051、チバガイギー社製)などのチアジン系防藻剤などが挙げられる。
【0105】
増粘剤、消泡剤、分散剤、揺変剤、保湿剤、可塑剤および老化防止剤は、特に限定されず、公知のものが挙げられる。
上記防蟻性塗料組成物に配合されるその他の添加剤の含有量は、特に限定されないが、上記防蟻性塗料組成物中の固形分100重量部に対し、好ましくは、1〜10重量部であり、より好ましくは、1〜5重量部である。
【0106】
上記防蟻性塗料組成物は、樹脂エマルション中または水中に、上記ネオニコチノイド製剤を分散後、残りの原料(樹脂エマルション、無機系フィラー、各種添加剤)を攪拌混合することにより製造できる。
上記防蟻性塗料組成物に顔料を含有させる場合には、予め顔料をビーズミルなどの分散器中で樹脂エマルション中または水中に分散した後、残りの原料を攪拌混合すればよい。
【0107】
上記防蟻性塗料組成物に含有されるネオニコチノイド系化合物の量は、特に限定されないが、上記防蟻性塗料組成物中の固形分100重量部に対し、好ましくは、0.01〜5重量部であり、より好ましくは、0.02〜2.5重量部である。
上記防蟻性塗料組成物では、防除のための有効成分として、マイクロカプセル化されたネオニコチノイド製剤が用いられている。このマイクロカプセルは、上記防蟻性塗料組成物の調製時に破損されにくく、上記防蟻性塗料組成物からなる塗膜を備える最終成形物が高温にさらされても、マイクロカプセルが破損されにくく、とりわけ、上記最終成形物が高温多湿環境下にあるときにおいて、ネオニコチノイド系化合物の溶脱が生じにくい。このため、ネオニコチノイド系化合物を安定にかつ高濃度に保つことができ、シロアリに対し、優れた防除効果を発揮することができる。
【0108】
上記防蟻性塗料組成物を塗布する対象物としては、特に限定されないが、例えば、建物の基礎部に用いられるコンクリート、例えば、基礎部に立設される外壁や内壁、例えば、電線またはケーブルを被覆するための被覆部材、例えば、埋設ガス管や埋設水道管などの埋設パイプの被覆部材、例えば、電線、ケーブルなどが収納される埋設管材または埋設管の被覆部材(外装管)などが挙げられる。
【0109】
上記防蟻性塗料組成物の使用方法は、特に限定されないが、例えば、公知の塗布方法(例えば、はけ塗り、スプレーなど。)によって、例えば、上記塗布対象物の表面に塗布すればよい。
より具体的には、例えば、ネオニコチノイド系化合物が0.001〜5重量%の割合で含有された防蟻性塗料組成物を、建物基礎部のコンクリート表面や、基礎部に立設される外壁や内壁の表面に塗布する場合には、コンクリートの表面に対し、50〜500g/m2で塗布すればよい。
【0110】
また、例えば、ネオニコチノイド系化合物が0.001〜5重量%の割合で含有された防蟻性塗料組成物を、電線、ケーブル、埋設ガス管、埋設水道管、電線やケーブルなどが収納される埋設管材などにおける被覆部材の表面に塗布する場合には、これら表面に対し、10〜1000g/m2で塗布すればよい。
本発明の防蟻性樹脂成形体は、上記ネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂とを含有している。
【0111】
上記の防蟻性樹脂成形体による防除の対象となるシロアリとしては、シロアリ(等翅)目に属する昆虫であること以外は特に限定されず、具体的には、上記ネオニコチノイド製剤による防除対象と同様のものが挙げられる。
上記防蟻性樹脂成形体において、熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0112】
上記塩化ビニル系樹脂は、硬質タイプと軟質タイプ(可塑剤を配合したもの)とのいずれであってもよく、これらは、用途によって適宜、使い分けることができる。塩化ビニル系樹脂の具体例としては、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル共重合体樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂などが挙げられる。また、上記塩化ビニル共重合体樹脂における塩化ビニルと共重合するモノマーとしては、例えば、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル系モノマーなどが挙げられる。アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどが挙げられる。
【0113】
上記ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレンコポリマー、エチレン・プロピレン・ジエンターポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレンアクリル酸エチルコポリマー、塩素化ポリエチレンなどが挙げられる。また、上記ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレンなどの、種々のポリエチレンが挙げられる。
【0114】
上記ポリスチレン系樹脂の具体例としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン共重合体などが挙げられる。また、上記スチレン共重合体におけるスチレンと共重合するモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル系モノマー、アクリロニトリル、無水マレイン酸などが挙げられる。アクリル酸エステル系モノマーとしては、上記したものと同様のものが挙げられる。
【0115】
上記アクリル系樹脂の具体例としては、例えば、メタクリル樹脂、メタクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。また、上記メタクリル酸メチル共重合体におけるメタクリル酸メチルと共重合するモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル系モノマー、アクリロニトリル、スチレンなどが挙げられる。上記アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどが挙げられる。
【0116】
上記シリコーン系樹脂の具体例としては、例えば、ポリオルガノシロキサン単独重合体、ポリオルガノシロキサン共重合体などが挙げられる。
上記フッ素系樹脂の具体例としては、例えば、四フッ化エチレンの単独重合体、四フッ化エチレンとエチレン フッ化ビニリデンなどとの共重合体などが挙げられる。
上記ポリエステル系樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。
【0117】
上記ポリ酢酸ビニル系樹脂の具体例としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
上記ポリアミド系樹脂の具体例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などが挙げられる。
上記ポリカーボネート樹脂の具体例としては、例えば、グリコール成分として、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールZなどを用いたポリカーボネートが挙げられる。
【0118】
上記熱可塑性樹脂としては、好ましくは、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられ、特に好ましくは、塩化ビニル系樹脂が挙げられる。上記熱可塑性樹脂が、塩化ビニル系樹脂であるときは、電線やケーブル、これらを被覆する防蟻シート、防蟻フィルムなどに対し、難燃性を付与できるといった利点がある。
また、上記熱可塑性樹脂の好適例のうち、塩化ビニル系樹脂としては、より好ましくは、塩化ビニル樹脂や塩素化塩化ビニル樹脂が挙げられ、ポリオレフィン系樹脂としては、より好ましくは、ポリエチレン(とりわけ、高密度ポリエチレン)、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレンなどが用いられる。
【0119】
また、上記熱可塑性樹脂は、紫外線、X線、ガンマ線、α線、β線、中性子線などの高エネルギー放射線を照射することにより、または、あらかじめラジカル発生剤や架橋剤を熱可塑性樹脂中に配合させておき、これを必要により加熱することにより、防蟻性樹脂成形体の成形時または成形後において、熱可塑性樹脂を架橋してもよい。熱可塑性樹脂を架橋することで、成形後の防蟻性樹脂成形体の耐久性を向上させることができる。
【0120】
上記熱可塑性樹脂が、例えば、ポリオレフィン系樹脂である場合には、ダイナミトロン、リニアック、ヴォンテグラーフなどの電子線加速装置を用いてポリオレフィン系樹脂成形体に放射線照射を行い、後架橋してもよい。また、ジクミルパーオキシドなどの過酸化物をポリオレフィン系樹脂にあらかじめ混練しておいて、成形と同時または成形後において、加圧下に加熱して架橋してもよい。
【0121】
また、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基などの官能基を含む熱可塑性樹脂の水分散液をキャスティング成形する場合には、ポリイソシアネート化合物、ポリメチロール化合物、多価金属化合物などに架橋剤を添加して、成形と同時または成形後に加熱することにより、架橋してもよい。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トルエンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。ポリメチロール化合物としては、例えば、ヘキサメチロールメラミン、トリメチロールメラミンなどが挙げられる。多価金属化合物としては、例えば、酸化亜鉛などが挙げられる。
【0122】
防蟻性樹脂成形体は、例えば、上記ネオニコチノイド製剤と、上記熱可塑性樹脂とを配合し、成形することにより、製造することができる。
ネオニコチノイド系化合物の熱可塑性樹脂に対する配合割合は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂100重量部に対して、好ましくは、0.01〜10重量部であり、より好ましくは、0.05〜1重量部である。
【0123】
上記ネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂とを含有する熱可塑性樹脂成形体の成形方法は、特に制限されず、例えば、押出成形、プレス成形、射出成形、カレンダー成形、キャスティング成形、トランスファー成形など、種々の成形方法を用いることができる。
押出成形では、上記ネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂と、さらに必要に応じて、可塑剤、熱安定剤、充填剤、着色剤、難燃剤、滑剤、老化防止剤、耐衝撃剤、強化剤、キレーター、核剤、帯電防止剤、ラジカル発生剤などの配合剤と、をドライブレンドし、こうして得られた熱可塑性樹脂組成物を押出機に投入し、溶融混練しつつ押出せばよい。
【0124】
押出成形に供する上記熱可塑性樹脂組成物は、上記ネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂と、さらに必要に応じて、上記の配合剤とを配合し、バンバリーミキサー、ミキシングロール、混練用押出機、ニーダーなどによって加熱溶融ブレンドし、押出成形機にフィードし易いように、例えば、ペレット状やパウダー状に取り出されたものであってもよい。
【0125】
さらに、例えば、熱可塑性樹脂として軟質塩化ビニル系樹脂などが用いられる場合には、加熱溶融ブレンドの前に、あらかじめコンパウンドを均質化させるために、リボンブレンダー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサーなどにより、ドライブレンドした混合物を溶融ブレンドに供することが好ましい。
押出成形の成形条件は、上記熱可塑性樹脂組成物が十分に溶融混練され、かつ、熱可塑性樹脂が分解されない成形条件を設定する必要があるが、この成形条件は、使用する樹脂および配合剤の組成に応じて、適宜設定すればよい。例えば、塩化ビニル樹脂100重量部にフタル酸エステル系可塑剤50重量部が配合された軟質塩化ビニル樹脂では、例えば、130〜180℃の温度範囲を選択し、樹脂の熱分解を制御するために、フィード側からダイ側に向かって温度が高くなるように温度設定すればよいが、この条件に限定されるものではない。
【0126】
押出成形においては、排出側に装着するダイにより押出される成形物の形状が決定され、例えば、シートやフィルムを成形する場合には、Tダイを用いるTダイ法またはチューブダイを用いるインフレーション法を用いればよい。インフレーション法は、薄肉で直径の大きいチューブを押出し、中に空気を吹き込んで膨らませ、これを長さ方向にナイフで切り、拡げてシート、フィルムを成形する方法であって、押出機で大きな面積の成形品を製造するのに適している。
【0127】
プレス成形では、上記ネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂と、さらに必要に応じて、上記の配合剤と、を溶融ブレンドし、こうして得られた熱可塑性樹脂組成物を、予熱されたプレス機の金型内に投入し、プレス成形することにより、上記熱可塑性樹脂組成物を加圧展延すればよい。
プレス成形に供する上記熱可塑性樹脂組成物は、上記ネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂と、さらに必要に応じて、上記の配合剤とを配合し、バンバリーミキサー、ミキシングロール、混練用押出機、ニーダーなどによって加熱溶融ブレンドし、プレス機金型に投入し易いように、例えば、小塊状、ペレット状、パウダー状、シート状に取り出されたものであってもよい。
【0128】
さらに、例えば、熱可塑性樹脂として軟質塩化ビニル系樹脂などが用いられる場合には、溶融ブレンドの前に、あらかじめコンパウンドを均質化させるために、リボンブレンダー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサーなどにより、ドライブレンドした混合物を溶融ブレンドに供することが好ましい。
プレス成形の成形条件は、上記熱可塑性樹脂組成物が十分加圧展延され、かつ、熱可塑性樹脂が分解されない成形条件(温度、圧力、時間)を設定する必要があるが、この成形条件は、使用する樹脂および配合剤の組成に応じて、適宜設定すればよい。例えば、塩化ビニル樹脂100重量部にフタル酸エステル系可塑剤50重量部が配合された軟質塩化ビニル樹脂では、例えば、温度160〜170℃、圧力80〜100kg/cm2、時間3〜5分といった条件が選択されるが、この条件に限定されるものではない。
【0129】
射出成形では、上記ネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂と、さらに必要に応じて、上記の配合剤とを溶融ブレンドし、こうして得られた熱可塑性樹脂組成物を射出成形機にホッパーに投入し、溶融状態および加圧下において、金型内に射出注入すればよい。
射出成形に供される上記熱可塑性樹脂組成物は、上記ネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂と、さらに必要に応じて、上記の配合剤とを配合し、バンバリーミキサー、ミキシングロール、混練用押出機、ニーダーなどによって加熱溶融ブレンドし、ペレット状に取り出されたものであってもよい。
【0130】
さらに、例えば、熱可塑性樹脂として軟質塩化ビニル系樹脂などが用いられる場合には、溶融ブレンドの前に、あらかじめコンパウンドを均質化させるために、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサーなどにより、ドライブレンドした混合物を溶融ブレンドに供することが好ましい。
射出成形には多くの条件設定のパラメーターがあり、好適な成形条件は、使用する樹脂および配合剤の組成により変化することから、特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂組成物が、加圧下で十分に、金型内に充填され、かつ、熱可塑性樹脂が分解しない成形条件を設定する必要がある。
【0131】
カレンダー成形では、上記ネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂と、さらに必要に応じて、上記の配合剤とを配合し、バンバリーミキサー、ミキシングロール、混練用押出機、ニーダーなどによって加熱溶融ブレンドし、こうして帯状に取り出された熱可塑性樹脂組成物を、そのまま直接に、カレンダー・ロールに供することにより、フィルム状またはシート状に成形すればよい。
【0132】
例えば、熱可塑性樹脂として軟質塩化ビニル系樹脂などが用いられる場合には、加熱溶融ブレンドの前に、あらかじめコンパウンドを均質化させるために、リボンミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサーなどによりドライブレンドした混合物を、加熱溶融ブレンドに供することが好ましい。
キャスティング成形では、上記ネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂と、さらに必要に応じて、上記配合剤とを配合し、バンバリーミキサー、ミキシングロール、混練用押出機、ニーダーなどによって加熱溶融ブレンドしてなる熱可塑性樹脂組成物を、溶融状態で型へ流し込み、冷却固化させるか、または、上記ネオニコチノイド製剤と、必要に応じて、上記の配合剤を含む熱可塑性樹脂の溶液または分散液とを、成形型に流し込んで、溶剤または分散媒を揮発させて、固化させればよい。
【0133】
トランスファー成形では、上記ネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂と、さらに必要に応じて、上記配合剤とを配合し、バンバリーミキサー、ミキシングロール、混練用押出機、ニーダーなどによって加熱溶融ブレンドしてなる熱可塑性樹脂組成物を、溶融状態で型へ流し込み、冷却固化させればよい。
防蟻性樹脂成形体としては、これに限定されないが、例えば、防蟻シート、防蟻フィルム、埋設電線またはケーブルを被覆するための被覆部材(例えば、防蟻チューブ、防蟻パイプなど。)、埋設ガス管または水道管を被覆するための被覆部材(例えば、防蟻性被覆外装管など。)などが挙げられる。
【0134】
防蟻性樹脂成形体として、防蟻シート、防蟻フィルムを製造する場合には、押出成形法(Tダイ法、インフレーション法)、カレンダー成形法、プレス成形法、キャスティング成形法などが用いられ、好ましくは、押出成形法(Tダイ法、インフレーション法)、カレンダー成形が用いられる。
防蟻性樹脂成形体としての被覆部材(防蟻チューブ、防蟻パイプ)を有する電線(防蟻電線)またはケーブル(防蟻ケーブル)を製造する場合は、押出成形法などが用いられる。好ましくは、クロスヘッド型ダイを装着した押出機を用いた押出成形により、一度に上記熱可塑性樹脂組成物を電線またはケーブルに被覆するとよい。
【0135】
防蟻性樹脂成形体として、埋設電線またはケーブルを被覆するための被覆部材(防蟻チューブ、防蟻パイプ)、埋設ガス管または水道管を被覆するための被覆部材(防蟻性被覆外装管)を製造する場合は、押出成形法などが用いられる。好ましくは、二重管ダイを装着した押出機を用いた押出成形により成形するとよい。
上記成形方法において、防蟻性樹脂成形体は、まず、熱可塑性樹脂に対し、上記ネオニコチノイド製剤が高濃度で加熱溶融ブレンドされたマスターバッチペレットを成形後、このマスターバッチペレットと、熱可塑性樹脂と、必要に応じて、その他の配合剤とを配合し、上記した各種成形法により、成形できる。また、防蟻性樹脂成形体は、上記した各種成形法に供給する前段階でのドライブレンド時や溶融ブレンド時において、マスターバッチペレットをブレンドしてから成形することにより、得ることもできる。
【0136】
マスターバッチペレットは、例えば、熱可塑性樹脂100重量部に対し、例えば、ネオニコチノイド系化合物を0.1〜20重量部、好ましくは、1〜10重量部と、さらに必要に応じて、熱安定剤などの各種配合剤と、を配合し、上記した押出成形の成形条件で押出成形することにより、得ることができる。
次いで、得られたマスターバッチペレットを、熱可塑性樹脂100重量部に対し、例えば、0.1〜100重量部、好ましくは、1〜10重量部配合し、さらに、必要に応じて、熱安定剤などの各種配合剤と、を配合し、上記した各種の成形法で成形することにより、防蟻性樹脂成形体を得ることができる。
【0137】
上記防蟻性樹脂成形体では、防除のための有効成分として、マイクロカプセル化されたネオニコチノイド製剤が用いられている。このマイクロカプセルは、上記防蟻性樹脂成形体の製造時に破損されにくく、マイクロカプセルの表面組成による分散安定性効果によって、上記防蟻性樹脂成形体中に適度に分散されやすく、上記防蟻性樹脂成形体からなる最終成形物が高温にさらされても、マイクロカプセルが破損されにくく、とりわけ、上記最終成形物が高温多湿環境下にあるときにおいて、ネオニコチノイド系化合物の溶脱が生じにくい。このため、ネオニコチノイド系化合物を安定にかつ高濃度に保つことができ、シロアリに対し、優れた防除効果を発揮することができる。
【0138】
また、上記防蟻性樹脂成形体は、上記ネオニコチノイド製剤を、上記熱可塑性樹脂の成形体の表面に固着させることにより、得ることができ、さらに、上記ネオニコチノイド製剤の溶液または分散液を、樹脂成形体に塗布し、固着させることにより、得ることもできる。
上記ネオニコチノイド製剤を、熱可塑性樹脂の成形体の表面に固着させる場合には、予め、上記熱可塑性樹脂のみから、上記した成形方法により、所定形状の成形体を形成しておく。そして、例えば、上記ネオニコチノイド製剤の溶液または分散液を、スプレーすることにより、上記成形体表面に噴霧して、乾燥、固着させる。上記ネオニコチノイド製剤の溶液または分散液をスプレーするには、上記ネオニコチノイド製剤を含む溶液または分散液を調製し、これを公知の方法で上記成形体の表面に噴霧し、乾燥すればよい。
【0139】
上記溶液または分散液を調製するには、ネオニコチノイド系化合物を溶媒または分散媒に配合し、撹拌混合すればよい。上記溶媒または分散媒としては、マイクロカプセルを破損させ得る溶媒および分散媒(例えば、マイクロカプセルの隔壁形成材料を溶解する溶媒など。)以外のものであれば、適宜選択することができる。具体的には、例えば、水、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノールなどのアルコール類、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコール類などが挙げられる。
【0140】
上記ネオニコチノイド製剤の固着効果を上げるためには、予め、上記分散液中にバインダー成分を配合することができる。このバインダー成分としては、例えば、アクリル酸エステル系、ウレタン系、セルロース系、酢酸ビニル系などの各種ポリマーが挙げられる。
また、上記ネオニコチノイド製剤が、上述したように、粉状物または粒状物として調製され、かつ合成樹脂微粒子と混合し、互いに付着させた状態で用いられるものである場合には、上記ネオニコチノイド製剤と合成樹脂微粒子との混合物を、上記熱可塑性樹脂の成形体の表面に散布し、加熱により熱可塑性樹脂微粒子を溶融させることで、熱可塑性樹脂微粒子をバインダーとして、上記ネオニコチノイド製剤を熱可塑性樹脂の成形体の表面に固着させることもできる。
【0141】
上記防蟻性樹脂成形体は、種々の産業分野で使用することができ、例えば、防蟻性シート、電線またはケーブルを被覆するための被覆部材、埋設ガス管や埋設水道管などの埋設パイプの被覆部材、電線、ケーブルなどが収納される埋設管材あるいは埋設管の被覆部材(外装管)などの、種々の態様で使用することができる。
防蟻シートは、これに限定されないが、例えば、一方の面に接着剤を塗布して、防蟻テープとして使用することができる。この防蟻テープは、例えば、電線やケーブルの接続部、端子部などの被覆処理に使用することができる。
【0142】
また、電線またはケーブルを被覆するための被覆部材としては、例えば、図1〜図3に示す態様が挙げられる。
図1は、一般の金属導線1の周面に、防蟻性の絶縁体2が被覆された態様を示している。この図1に示す態様において、上記防蟻性樹脂成形体は、防蟻性の絶縁体2として形成されている。
【0143】
図2は、複数の導体4の束の周面に、この束を収納する防蟻性の絶縁体5が設けられた絶縁電線3を示している。この図2において、上記防蟻性樹脂成形体は、絶縁体5として形成されている。
導体4としては、特に限定されず、絶縁電線に用いられる公知の金属線などが用いられる。例えば、銅線、アルミニウム線などが挙げられる。
【0144】
図3は、複数の絶縁線心6(導体7が絶縁体8で被覆されたもの。)の束の周面に、防蟻性の絶縁体(シース9)が施されたケーブルを示している。この図3において、上記防蟻性樹脂成形体は、シース9として成形されている。
導体7としては、特に限定されず、例えば、導体4と同様の金属線が挙げられる。
絶縁体8としては、特に限定されず、絶縁線心の被覆に用いられる、公知の絶縁材料(上記した防蟻性樹脂成形体からなる絶縁体5であってもよい。)を用いることができる。
【0145】
本発明の散布器は、木材保存剤を散布するための散布器である。
また、本発明の散布方法は、本発明の散布器を用いて、被害部、または被害が予測される部位の隙間に、木材保存剤を散布する散布方法である。
木材保存剤としては、例えば、防腐防カビ剤、防蟻防虫剤などが挙げられる。防腐防カビ剤と、防蟻防虫剤とは、いずれか一方を単独で用いてもよく、両方を混合して用いてもよい。
【0146】
防腐防カビ剤は、防腐剤および/または防カビ剤であって、具体的には、例えば、トリアゾール系化合物、有機ヨード系化合物、スルファミド系化合物、ビス四級アンモニウム塩系化合物、四級アンモニウム塩系化合物、フタロニトリル系化合物、ジチオール系化合物、チオフェン系化合物、チオカルバメート系化合物、ニトリル系化合物、フタルイミド系化合物、ハロアルキルチオ系化合物、ピリジン系化合物、ピリチオン系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、トリアジン系化合物、グアニジン系化合物、尿素系化合物、イミダゾール系化合物、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、フェニルウレア系化合物などが挙げられる。
【0147】
防腐防カビ剤として例示の各上記化合物としては、いずれも、上記の化合物と同じものが挙げられる。上記例示の防腐防カビ剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、これら防腐防カビ剤のなかでは、有機ヨード系化合物やトリアゾール系化合物を用いることが好ましく、とりわけ、IPBC、プロピコナゾール、テブコナゾールを用いることが好ましい。
【0148】
防蟻防虫剤は、防蟻剤および/または防虫剤であること以外は、特に限定されないが、具体的には、例えば、ネオニコチノイド系化合物、ピレスロイド系化合物、有機塩素系化合物、有機リン系化合物、カーバメート系化合物、ピロール系化合物、フェニルピラゾ−ル系化合物、オキサジアジン系化合物、セミカルバゾン系化合物、植物またはその処理物、エクジステロイドなどが挙げられる。
【0149】
ネオニコチノイド系化合物としては、上記の化合物と同じものが挙げられる。
ピレスロイド系化合物としては、例えば、アレスリン、ペルメトリン、トラロメトリン、ビフェントリン、アクリナトリン、アルファシペルメトリン、シフルトリン、シフェノトリン、プラレトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン、フェンバレレートなどが挙げられる。
【0150】
有機塩素系化合物としては、例えば、ケルセンなどが挙げられる。有機リン系化合物としては、例えば、ホキシム、ピリダフェンチオン、フェニトロチオン、テトラクロルビンホス、ジクロフェンチオン、プロペタンホスなどが挙げられる。
カーバメート系化合物としては、例えば、カルバリル、フェノブカルブ、プロポクスルなどが挙げられる。
【0151】
ピロール系化合物としては、例えば、クロルフェナピルなどが挙げられる。
フェニルピラゾール系化合物としては、例えば、フィプロニルなどが挙げられる。
オキサジアジン系化合物としては、例えば、インドキサカルブなどが挙げられる。
セミカルバゾン系化合物としては、例えば、α−(α,α,α−トリフルオロ−m−トルオイル)−p−トリニトリル4−(p−トリフルオロメトキシフェニル)セミカルバゾンなどが挙げられる。
【0152】
植物またはその処理物としては、例えば、下記の植物や、それらの植物から採取された成分(処理物)が挙げられる。
ヒバ:ヒバ、その処理物(抽出物、滲出物)、例えば、市販のヒバ油、ヒバ中性油、ヒバ酸性油、およびヒバ樹脂油など。
パフィア属(Pfaffia)に属する植物:パフィア・イレジノイデス(Pfaffia iresinoides、別名:ブラジルニンジン)など、およびこれらの処理物、例えば、パフィアエキスなど。
【0153】
カワ種に属する植物:コショウ属コショウ科のカワ種に属する、カワ(Kava; Piper methysticum、または野生種Piper wichmannii)など、およびこれらの処理物、例えば、カワ抽出エキス、カワの成分であるカワイン類(例えば、5,6−ジヒドロ−4−メトキシ−6−スチリル−2H−ピラン−2−オンなどのカワラクトン)およびその誘導体など。なお、カワ種に属する植物、それらの処理物、およびそれらの誘導体についての詳細は、特開2002−307406号公報、特開2003−267802号公報、および特開2003−252708号公報に開示されている。
【0154】
ヒカゲノカズラ属(Licopodium)に属する植物:リポコジウム・クラバツム(Licopodium clavatum、和名:ヒカゲノカズラ)、リポコジウム・セラツム(Licopodium serratum、和名:トウゲシバ)、リポコジウム・セルヌウム(Licopodium cernuum、和名:ミズスギ)、リポコジウム・オブスクルム(Licopodium obscurum、和名:マンネンスギ)、リポコジウム・コンプラナツム(Licopodium complanatum、和名:アスヒカズラ)、リポコジウム・クリプトメリヌム(Licopodium cryptomerinum、和名:スギラン)など、およびこれらの処理物、例えば、ヒカゲノカズラ抽出エキス(さらに具体的には、例えば、ヒューペリジンAなどのリポコジウムアルカロイドなどを含む。)、石松子(ヒカゲノカズラの胞子)など。
【0155】
ウィタニア属(Withania)に属する植物:ウィタニア・ソムニフェラ(Withania somnifera、和名:インドニンジン、別名:アシュワガンダ)、ウィタニア・コアグランス(Withania coagulans)など、およびこれらの処理物、例えば、インドニンジン抽出エキスなど。
センニチコウ属(Gomphrena)に属する植物:キバナセンニチコウ(ゴムフレナ・ハーゲアナ(Gomphrena haageana))、センニチコウ(ゴムフレナ・グロボサ(Gomphrena globosa))、センニチノゲイトウ(ゴムフレナ・セロシオイデス(Gomphrena celosioides))など、およびこれらの処理物、例えば、キバナセンニチコウ抽出エキスなど。
【0156】
イノコズチ属(Achyranthes)に属する植物:ヒナタイノコズチ(アキランテス・ファウリエイ(Achyranthes fauriei))、ケイノコズチ(アキランテス・アスペラ(Achyranthes aspera))、ヤナギイノコズチ(アキランテス・ロンギフォリア(Achyranthes longifolia))、中国産のアキランテス・ビデンタータ(Achyranthes bidentata)など、およびこれらの処理物、例えば、ヒナタイノコズチ抽出エキス、アキランテス・ビデンタータ抽出エキスなど。
【0157】
ココヤシ属(Cocos)に属する植物:ココナッツ(ココス・ヌシフェラ(Cocos nucifera))など、およびこれらの処理物、例えば、ココナッツオイル、ヤシ油脂肪酸など。
アブラヤシ属(Elaeis)に属する植物:アブラヤシ(Elaeis)など、およびこれらの処理物、例えば、パーム油、ヤシ油脂肪酸など。
サウスレア属(Saussurea)に属する植物:モッコウなど、およびこれらの処理物、例えば、モッコウ抽出エキスなど。
【0158】
マグノリア属(Magnolia)に属する植物:コウボクなど、およびこれらの処理物、例えば、コウボク抽出エキスなど。
アトラクティロデス属(Atractylodes)に属する植物:ソウジュツなど、およびこれらの処理物、例えば、ソウジュツ抽出エキスなど。
レデボウリエア属(Ledebouriella)に属する植物:ボウフウなど、およびこれらの処理物、例えば、ボウフウ抽出エキスなど。
【0159】
パエオニア属(Paeonia)に属する植物:ボタンピなど、およびこれらの処理物、例えば、ボタンピ抽出エキスなど。
プソラレア属(Psoralea)に属する植物:ハコシなど、およびこれらの処理物、例えば、ハコシ抽出エキスなど。
ミリスチカ属(Myristica)に属する植物:ニクズクなど、およびこれらの処理物、例えば、ニクズク抽出エキスなど。
【0160】
クルクマ属(Curcuma)に属する植物:ウコンなど、およびこれらの処理物、例えば、ウコン抽出エキスなど。
フムルス属(Humulus)に属する植物:ホップなど、およびこれらの処理物、例えば、ホップ抽出エキスなど。
ソホラ属(Sophora)に属する植物:クジンなど、およびこれらの処理物、例えば、クジン抽出エキスなど。
【0161】
マキ属(Podocarpus)に属する植物:ポドカルプス・ナカイイ(Podocarpus nakaii、和名:トガリバマキ)、ポドカルプス・マクロフィルス(Podocarpus macrophyllus、和名:イヌマキ)など、およびこれらの処理物、例えば、トガリバマキ抽出エキス、イヌマキ抽出エキスなど。
エクジステロイドとしては、例えば、ポナステロンA、マキステロンA、イノコステロンなどが挙げられる。なお、ポナステロンAは、例えば、トガリバマキなどから抽出することができ、マキステロンAは、例えば、イヌマキなどから抽出することができ、イノコステロンは、例えば、ヒナタイノコズチやアキランテス・ビデンタータなどから抽出することができる。
【0162】
これら防蟻防虫剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、これら防蟻防虫剤のなかでは、ネオニコチノイド系化合物やピレスロイド系化合物を用いることが好ましく、ネオニコチノイド系化合物を用いることがさらに好ましく、とりわけ、クロチアニジンを用いることが好ましい。
上記散布方法において、被害部としては、例えば、シロアリなどの害虫により木材が被害を受けている箇所(具体的には、例えば、シロアリの食害(加害)部、シロアリの蟻道など)をいう。また、被害が予測される部位の隙間としては、例えば、シロアリなどの害虫により木材が被害を受けるおそれがある部位が挙げられ、具体的には、シロアリを防除する部位などが挙げられる。
【0163】
シロアリを防除する部位としては、これに限定されないが、例えば、土壌(地盤面など)、例えば、木材、例えば、建物(建築物;すなわち、家屋、倉庫、門扉、塀およびこれらの付属設備など。)における基礎構造部、上部構造部および地下構造部、例えば、建物の付属設備としての地下埋設物、例えば、シロアリの生息・発生域などが挙げられる。
図4は、本発明の散布器の一実施形態を示す外観図であり、図5は、図4に示す散布器10の使用状態(上記散布方法の一例)を示す模式図であり、図6は、図4に示す散布器10の使用状態における一部拡大断面図である。
【0164】
図7は、本発明の散布器の他の実施形態を示す外観図であり、図8は、図7に示す散布器21の使用状態(上記散布方法の他の例)を示す模式図である。
図9は、本発明の散布器のさらに他の実施形態を示す外観図であり、図10は、図9に示す散布器27の使用方法(上記散布方法のさらに他の例)を示す模式図である。
また、図11は、本発明の散布器のさらに他の実施形態を示す外観図である。
【0165】
以下、図4〜11を参照しつつ、本発明の散布器の一実施形態と、その一実施形態に係る散布器を用いた散布方法(本発明の散布方法)について説明する。なお、異なる実施形態において共通する部分については、同じ符号を付し、その説明を省略する場合がある。
図4および図5において、この散布器10は、供給部としてのポンプディスペンサ(ポンプボトル)11と、吐出部としてのノズル12と、可撓性の供給管としての透明チューブ13と、接続管14と、を備えている。
【0166】
ポンプディスペンサ11は、木材保存剤を収容するためのボトル15と、ボトル15内の木材保存剤を吸い上げてノズル12へ圧力により供給するポンプ16と、を備えている。
ボトル15は、木材保存剤によって変質を生じることのない材質から形成される。このような材質としては、例えば、各種プラスチック類、例えば、各種ガラス類、例えば、ステンレス、鉄、アルミニウム、真鍮などの金属類、などが挙げられる。
【0167】
ボトル15に収容される木材保存剤の製剤形態としては、液剤が挙げられる。この液剤は、例えば、上記木材保存剤を、水および/または有機溶媒中に溶解させ、または液滴として分散させた製剤形態であって、具体的には、例えば、上記木材保存剤を水(またはコソルベントを含む水)に溶解した液体製剤、例えば、上記木材保存剤を有機溶媒に溶解した油剤、例えば、上記木材保存剤と、界面活性剤と、水とを含む乳剤、などが挙げられる。
【0168】
これら製剤形態に調製するための溶剤、界面活性剤などは、特に限定されず、公知のものから適宜選択することができる。また、コソルベントとしては、公知の各種有機溶媒が挙げられる。
また、木材保存剤は、マイクロカプセル化され、かつ、水および/または有機溶媒中に分散された懸濁剤であってもよい。
【0169】
また、木材保存剤は、ノズル12からムース状に吐出させるために、上記液剤や上記懸濁剤に、さらに発泡剤を配合したムース剤であってもよい。
発泡剤としては、例えば、各種の界面活性剤など、発泡剤として公知のものから適宜選択することができる。
木材保存剤をムース剤として調製することにより、例えば、シロアリなどによる被害部や、被害が予想される部位の隙間に対し、木材保存剤が充填されやすくなり、液だれを抑制して、木材保存剤による薬効の持続性を得ることができる。
【0170】
ポンプ16は、ポンプ16を作動させて木材保存剤を吐出させるためのポンプヘッド17を備えている。このポンプヘッド17を押圧することで、ポンプディスペンサ11から木材保存剤を供給することができる。このようなポンプ16には、ポンプディスペンサ用の各種のポンプが用いられる。
ノズル12は、後述する接続管14の吐出方向下流端に接続されている。
【0171】
このノズル12は、先細形状に形成されており、具体的に、略円錐台形状に形成されている。すなわち、ノズル12は、吐出方向に向かって縮径されるテーパ形状に形成されている。
図6を参照して、ノズル12は、吐出方向下流端の吐出口18において、その外径t1が2mm以下、好ましくは、1.8mm以下、さらに好ましくは、0.5〜1.5mmである。また、ノズル12の内径は、特に限定されないが、好ましくは、0.1〜1.5mmである。
【0172】
ノズル12のテーパ角度θは、特に限定されないが、シロアリによる被害部や被害が予想される部位の隙間などへの挿入のしやすさや、上記被害部および隙間などとの密着性の観点より、好ましくは、1〜170°であり、さらに好ましくは、3〜90°であり、特に好ましくは、3〜30°である。
ノズル12の長さLは、特に限定されないが、シロアリによる被害部や被害が予想される部位の隙間などへ十分に挿入させる観点より、外径が2mm以下である部分の長さが、好ましくは、1mm以上であり、さらに好ましくは、2mm以上、通常、10mm以下である。
【0173】
木生息性シロアリ(乾材シロアリ;例えば、アメリカカンザイシロアリ、ダイコクシロアリなど。)や土壌性シロアリ(地下シロアリ;例えば、イエシロアリ、ヤマトシロアリなど。)の各種シロアリによる被害部(シロアリによる穿孔だけでなく、土壌性シロアリの蟻道などを含む。)は、大小さまざまであるが、1頭のシロアリが加害しながら進む孔道は、その内径が、通常、2mm程度である。特に、アメリカカンザイシロアリやダイコクシロアリによる被害部では、表面(開口端)が糞や木粉などで塞がれた直径2mm程度の加害孔が観察される。これに対し、ノズル12は、上述の構造を有することから、上記被害部に対し、ノズル12を直接に挿入することができる。さらに、ノズル12のテーパを利用して、ノズル12を上記被害部や、シロアリによる被害が予測される部位の狭小な隙間(例えば、コンクリートや木材のひび割れ部分など。)などに挿入しつつ、上記被害部や隙間の開口端をノズル12自体で塞ぐことができる。なお、ノズル12からの木材保存剤の散布は、被害部が、直径が2mmを上回るような加害孔である場合においても可能である。
【0174】
また、ノズル12は、上述の構造を有することから、たとえ、木材保存剤を散布する対象物に対し、ドリルなどで穿孔を設ける必要がある場合であっても、その穿孔の径を、2mm以下に設定することができる。すなわち、木材保存剤を散布する対象物に対して大きな穴を設ける必要がなく、穿孔を外観上目立たないものとすることができる。
再び図4を参照して、透明チューブ13は、その吐出方向上流端が、ポンプヘッド17の先端に接続されており、その下流端が、接続管14に接続されている。
【0175】
透明チューブ13としては、可撓性および透明性を有する各種のプラスチック製チューブが挙げられる。
透明チューブ13の長さは、散布器10の用途、使用状況などに応じて適宜設定され、特に限定されないが、好ましくは、1〜60cmであり、さらに好ましくは、10〜50cmである。
【0176】
この散布器10では、透明チューブ13が用いられていることから、木材保存剤がポンプディスペンサ11からノズル12へと供給されている状態を容易に認識できる。また、透明チューブ13を用いることで、ポンプディスペンサ11から、被害部または被害が予測される部位の隙間へと、木材保存剤が実際に供給されているかどうかを、目視で確認しやすくなる。さらに、例えば、被害部が、アメリカカンザイシロアリなどに加害孔(木材の内部に延びる加害孔)である場合には、ポンプディスペンサ11から供給された木材保存剤が透明チューブ13内を流れているか、あるいは透明チューブ13内で詰まっているかを目視で確認することにより、加害孔がどの程度連続しているかを容易に判断することができる。
【0177】
また、上記散布器10では、ポンプディスペンサ11とノズル12との間に透明チューブ13を備えていることから、ポンプディスペンサ11とノズル12とが離間された状態で、散布器10を使用することができる。それゆえ、図5を参照して、木材保存剤の散布に際し、例えば、シロアリによる被害を受けた木材19の穿孔20内にノズル12を挿入した上で、このノズル12から離れた位置より、ポンプディスペンサ11を操作することができる。
【0178】
接続管14は、その吐出方向上流端が、透明チューブ13に差し込まれており、その下流端が、ノズル12に接続されている。
接続管14としては、硬質のプラスチックや、ガラスからなる筒体が挙げられる。これに限定されないが、接続管14には、例えば、スポイト、ピペッタの筒部などを利用することができる。
【0179】
この接続管14を把持することで、ノズル12を穿孔20(図5参照)へ挿入するときの操作性が良好となる。
図5を参照して、散布器10は、例えば、上述したように、ノズル12を、シロアリによる被害を受けた木材19の穿孔20に挿入し、接続管14を一方の手で固定し、穿孔20から離れた位置に配置されたポンプディスペンサ11のポンプヘッド17を他方の手で押圧することにより使用される。また、これにより、ポンプディスペンサ11のボトル15内に収容された木材保存剤が、透明チューブ13および接続管14を介して、ノズル12から散布され、穿孔20の内部へと供給される。
【0180】
散布器10によれば、ノズル12から散布される木材保存剤を、シロアリによる被害部や、被害が予想される部位の隙間における内部に、確実に供給することができる。しかも、上記被害部や隙間の開口端からの木材保存剤の逆流を抑制することができる。
また、散布器10によれば、ノズル12から散布される木材保存剤の量を、ポンプヘッド17の押圧により適宜調節できる。
【0181】
なお、図4に示す実施形態では、ノズル12について、その全体が、吐出方向に向かって縮径されるテーパ形状に形成されているものを例に挙げて説明したが、ノズル12は、その吐出口18における外径t1、テーパ角度θ、および外径が2mm以下である部分の長さLが、いずれも上記範囲を満たすこと以外は特に限定されない。それゆえ、ノズルは、例えば、先細形状に形成された部分を吐出方向下流端のみに有しているものであってもよい。
【0182】
また、吐出部としてのノズル12は、例えば、シロアリによる被害部(例えば、穿孔部分など)の大きさ、シロアリによる被害が予想される部位の隙間の大きさなどに合わせて、吐出方向途中を適宜切断して使用することができる。
図7および図8において、この散布器21は、供給部としてのエアゾール缶22と、吐出部としてのノズル12と、可撓性の供給管としての透明チューブ13と、を備えている。
【0183】
エアゾール缶22は、噴出口24を有する耐圧性の容器であること以外は、特に限定されず、各種のエアゾール容器が挙げられる。
エアゾール缶22の具体例としては、特に限定されるものではなく、例えば、木材保存剤と、噴射剤とを収容するための耐圧容器23と、木材保存剤の噴出口24と、を備える、一般的な構造のエアゾール容器が挙げられる。また、エアゾール缶は、使用時に噴出口24を上向き(正立状態)にするものと、下向き(倒立状態)にするものとのいずれであってもよく、いずれの状態でも使用可能なものであってもよい。
【0184】
耐圧容器23に収容される木材保存剤の製剤形態としては、図4に示すボトル15に収容されるものと同じものが挙げられる。例えば、木材保存剤は、ノズル12からムース状に吐出させるために、上記液剤に、さらに発泡剤が配合されたムース剤であってもよい。
耐圧容器23に収容される噴射剤としては、例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、これらの混合物である液化石油ガス(LPG)、例えば、メタンを主成分とする液化天然ガス(LNG)、例えば、イソペンタン、ジメチルエーテルなどの液化ガス、例えば、フロン11(登録商標)、フロン12(登録商標)、フロン21(登録商標)、フロン113(登録商標)、フロン114(登録商標)などのフッ化炭化水素類、例えば、窒素ガス、炭酸ガスなどが挙げられる。なかでも、特に好ましくは、LPGが挙げられる。
【0185】
散布器21において、ノズル12は、透明チューブ13の吐出方向下流端に接続されている。
ノズル12には、図4〜図6に示す実施形態(散布器10)と同様のものが用いられる。なお、ノズル12の吐出方向上流端の形状、内径などは、透明チューブ13の径などに応じて、適宜設定される。
【0186】
透明チューブ13は、その吐出方向上流端が、エアゾール缶22の噴出口24の先端に接続されており、その下流端が、ノズル12に接続されている。
透明チューブ13には、図4〜図6に示す実施形態(散布器10)と同様のものが用いられる。なお、透明チューブ13の径は特に限定されず、例えば、供給部としてのエアゾール缶22の噴出口24の形状、径などに応じて、適宜設定される。
【0187】
透明チューブ13の長さは、散布器21の用途、使用状況などに応じて適宜設定され、特に限定されないが、好ましくは、1〜60cmであり、さらに好ましくは、10〜50cmである。
この散布器21において、透明チューブ13が用いられていることに伴う作用効果は、図4〜図6に示す実施形態(散布器10)の場合と同様であって、例えば、木材保存剤がエアゾール缶22からノズル12へと供給されている状態を容易に認識できることが挙げられる。
【0188】
また、透明チューブ13を備えていることから、エアゾール缶22とノズル12とが離間された状態で、散布器21を使用することができる。それゆえ、図8を参照して、木材保存剤の散布に際し、例えば、シロアリによる被害を受けた木材25の穿孔26内にノズル12を挿入した上で、このノズル12から離れた位置より、エアゾール缶22を操作することができる。
【0189】
散布器21は、例えば、上述したように、ノズル12を、シロアリにより加害された木材25の穿孔26に挿入し、ノズル12を一方の手で固定し、穿孔26から離れた位置に配置された噴出口24を他方の手で押圧することにより使用される。また、これにより、耐圧容器23内に収容された木材保存剤が、透明チューブ13を介して、ノズル12から散布され、穿孔26の内部へと供給される。
【0190】
散布器21によれば、ノズル12から散布される木材保存剤を、シロアリによる被害部や、被害が予想される部位の隙間における内部に、確実に供給することができる。しかも、上記被害部や隙間の開口端からの木材保存剤の逆流を抑制することができる。
なお、図7に示す実施形態では、ノズル12と、透明チューブ13とが直接に接続された例を挙げて説明したが、ノズル12と、透明チューブ13との間には、上述の接続管14を介在させてもよい(図4参照)。
【0191】
図9および図10において、この散布器27は、供給器としての手動ポンプ式スプレー28と、吐出部としてのノズル12と、可撓性の供給管としての透明チューブ13と、を備えている。
手動ポンプ式スプレー28は、さらに、木材保存剤を収容するためのボトル29と、ボトル29内の木材保存剤30を吸い上げてノズル12へ圧力により供給するポンプ部31と、木材保存剤30の噴出口32と、ポンプ部31の内部に挿入された状態で往復運動することにより、ボトル29内の圧力を上昇させるためのピストン33と、を備えている。
【0192】
ポンプ部31は、さらに、ボトル29内に収容されている木材保存剤を吸い上げるための吸上げチューブ34と、噴出口32に連なって、噴出口32と透明チューブ13とを接続するための接続管35と、を備えている。
吸上げチューブ34は、その吸上げ方向上流側の開口端36が、ボトル29底部側に達しており、この開口端36は、散布器27の使用時において、ボトル29内に収容された木材保存剤30に浸されている。また、この吸上げチューブ34は、散布器27の使用時において、ボトル29内の木材保存剤30の液面よりも鉛直方向上部側となる位置(すなわち、木材保存剤30に浸されない位置)に、ボトル29内のエアーを吸引するためのエアー吸引口37を備えている。
【0193】
この散布器27では、ポンプ部31内にピストン33を挿入し、往復運動させることにより、ボトル29内にエアーが送り込まれ、加圧される。その後、噴出口32を押圧することにより、接続管35および透明チューブ13を介して、ノズル12先端から木材保存剤30を吐出することができる。その際、木材保存剤は、吸上げチューブ34のエアー吸引口37から吸引されたエアーと混合され、ムース状で吐出される。
【0194】
また、この散布器27によれば、木材保存剤30を噴射するのに必要なボトル29内の加圧状態を、ピストン33を用いて手動により達成することができる。それゆえ、予めボトル29内に、エアゾール缶に用いられるような加圧用のガスを封入する必要がない。また、ボトル29内を加圧状態とするためのピストン33による操作は、散布器27を使用する都度、実行すればよく、しかも、ピストン33の往復運動といった極めて簡易な操作により達成できる。なお、ボトル29が、例えば、2リットル以上のような大容量のボトルである場合には、チューブを介してエアーコンプレッサとボトル29とを接続するなどして、ボトル29内を加圧状態とするための操作を連続的に行ってもよい。
【0195】
この散布器27を形成する手動ポンプ式スプレー28としては、例えば、市販のいわゆるオイルスプレー(レック株式会社製の「DELI オイルスプレーT−269」など。)のように、プラスチックまたはガラス製のボトルに収容された液体を霧状にスプレーするための、ノンガスタイプのスプレー容器を用いることができる。ボトルに収容された液体をムース状に吐出するためには、上記のとおり、吸上げチューブ34にエアー吸引口37を設ければよい。
【0196】
ボトル29に収容される木材保存剤の製剤形態としては、例えば、液剤や、マイクロカプセルの懸濁剤に、さらに発泡剤を配合して得られる、いわゆるムース剤が挙げられる。
液剤は、上記の場合と同様に、例えば、上記木材保存剤を、水および/または有機溶媒中に溶解させ、または液滴として分散させた製剤形態であって、具体的には、例えば、上記木材保存剤を水(またはコソルベントを含む水)に溶解した液体製剤、例えば、上記木材保存剤を有機溶媒に溶解した油剤、例えば、上記木材保存剤と、界面活性剤と、水とを含む乳剤、などが挙げられる。
【0197】
マイクロカプセルの懸濁剤としては、上記木材保存剤をマイクロカプセル化し、かつ、水および/または有機溶媒中に分散(懸濁)したものが挙げられる。
発泡剤としては、例えば、各種の界面活性剤など、発泡剤として公知のものから適宜選択することができる。
散布器27において、ノズル12は、透明チューブ13の吐出方向下流端に接続されている。
【0198】
ノズル12には、図4〜図6に示す実施形態(散布器10)と同様のものが用いられる。なお、ノズル12の吐出方向上流端の形状、内径などは、透明チューブ13の径などに応じて、適宜設定される。
透明チューブ13は、その吐出方向上流端が、手動ポンプ式スプレー28の噴出口32の先端に接続されており、その下流端が、ノズル12に接続されている。
【0199】
透明チューブ13には、図4〜図6に示す実施形態(散布器10)と同様のものが用いられる。なお、透明チューブ13の径は特に限定されず、例えば、供給部としての手動ポンプ式スプレー28の噴出口32の形状、径などに応じて、適宜設定される。
透明チューブ13の長さは、散布器27の用途、使用状況などに応じて適宜設定され、特に限定されないが、好ましくは、1〜60cmであり、さらに好ましくは、10〜50cmである。
【0200】
この散布器27において、透明チューブ13が用いられていることに伴う作用効果は、図4〜図6に示す実施形態(散布器10)の場合と同様であって、例えば、木材保存剤が手動ポンプ式スプレー28からノズル12へと供給されている状態を容易に認識できることが挙げられる。
また、透明チューブ13を備えていることから、手動ポンプ式スプレー28とノズル12とが離間された状態で、散布器27を使用することができる。具体的には、散布器27は、例えば、図8に示す散布器のエアゾール缶22を、散布器27の手動ポンプ式スプレー28と取り替えることで、図8に示す場合と同様に、シロアリによる被害を受けた木材25の穿孔26内にノズル12を挿入した上で、このノズル12から離れた位置より、手動ポンプ式スプレー28を操作することができる。
【0201】
散布器27は、例えば、上述したように、ノズル12を、シロアリにより加害された木材25の穿孔26に挿入した上で(図8参照)、ノズル12を一方の手で固定し、穿孔26から離れた位置に配置された噴出口32を他方の手で押圧することにより使用される。また、これにより、ボトル29内に収容された木材保存剤が、透明チューブ13を介して、ノズル12からムース状で散布され、穿孔26の内部へと供給される。
【0202】
散布器27によれば、ノズル12から散布される木材保存剤を、シロアリによる被害部や、被害が予想される部位の隙間における内部に、確実に供給することができる。しかも、上記被害部や隙間の開口端からの木材保存剤の逆流を抑制することができる。
なお、図9および図10に示す実施形態では、ノズル12と、透明チューブ13とが直接に接続された例を挙げて説明したが、ノズル12と、透明チューブ13との間には、上述の接続管14を介在させてもよい(図4参照)。
【0203】
図11において、この散布器38は、供給部としてのボトル39と、吐出部としてのノズル12と、可撓性の供給管としての透明チューブ13と、を備えている。
ボトル39は、木材保存剤を収容するためのボトル本体40と、キャップ41とを備えており、このキャップ41には、透明チューブ13を接続し、木材保存剤を供給するための貫通孔が設けられている。
【0204】
ボトル本体40、およびキャップ41には、これに限定されないが、例えば、市販のプラスチックボトルとそのキャップを用いることができる。
ノズル12は、透明チューブ13の吐出方向下流端に接続されている。
ノズル12には、図4〜6に示す実施形態(散布器10)と同様のものが用いられる。なお、ノズル12の吐出方向上流端の形状、内径などは、透明チューブ13の径などに応じて、適宜設定される。
【0205】
透明チューブ13は、その吐出方向上流端が、キャップ41の貫通孔に挿入されており、その下流端が、ノズル12に接続されている。
透明チューブ13には、図4〜6に示す実施形態(散布器10)と同様のものが用いられる。なお、透明チューブ13の径は特に限定されず、例えば、透明チューブ13が接続される部材の形状、径などに応じて、適宜設定される。
【0206】
透明チューブ13の長さは、散布器38の用途、使用状況などに応じて適宜設定され、特に限定されないが、好ましくは、1〜60cmであり、さらに好ましくは、1〜50cmである。
また、透明チューブ13は、その途中において、吐出方向の上流側から順に、点滴筒42と、クランプ43とを備えていてもよい。
【0207】
点滴筒42は、任意の部材である。この点滴筒42としては、特に限定されず、各種の点滴筒を用いることができる。
クランプ43としては、特に限定されず、各種のクランプを用いることができる。
透明チューブ13の途中に、クランプ43を設けることで、ボトル39から透明チューブ13を介してノズル12へ供給される木材保存剤の供給量を、適宜調節できる。また、透明チューブ13の途中に、点滴筒42を設けることで、ボトル39からノズル12への木材保存剤の供給の有無、供給速度などを、視覚により容易に確認できる。
【0208】
散布器38は、ボトル39を、そのキャップ41が鉛直方向下向きになるように固定し、ノズル12を、シロアリによる被害部や、被害が予想される部位の隙間に挿入した上で、クランプ43を適宜調節することにより使用される。また、これにより、ボトル本体40内に収容された木材保存剤が、自重により、透明チューブを介してノズル12から散布される。
【0209】
散布器38によれば、ノズル12から散布される木材保存剤を、シロアリによる被害部や、被害が予想される部位の隙間における内部に、確実に供給することができる。しかも、上記被害部や隙間の開口端からの木材保存剤の逆流を抑制することができる。
なお、図11に示す実施形態では、ノズル12と、透明チューブ13とが直接に接続され例を挙げて説明したが、ノズル12と、透明チューブ13との間には、上述の接続管14を介在させてもよい(図4参照)。
【0210】
本発明の処理方法は、特定の部位におけるシロアリ防除剤の好適な処理方法(例えば、散布方法、注入方法、塗布方法など。)であって、具体的には、
(i) 建物の壁、床または天井に配置される断熱材に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理する処理方法、
(ii) 建物の床下部に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理する処理方法、
(iii) 建物の天井部に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理する処理方法、または、
(iv) 建物の基礎部に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理する処理方法、
である。
【0211】
上記処理方法において、シロアリ防除剤としては、例えば、ネオニコチノイド系化合物、ピレスロイド系化合物、有機塩素系化合物、有機リン系化合物、カーバメート系化合物、ピロール系化合物、フェニルピラゾ−ル系化合物、オキサジアジン系化合物、セミカルバゾン系化合物、植物またはその処理物、エクジステロイドなどの、防蟻防虫剤が挙げられる。
【0212】
これら防蟻防虫剤としては、上記したものと同じものが挙げられる。
また、シロアリ防除剤は、上記本発明のネオニコチノイド製剤であってもよい。
また、このシロアリ防除剤の製剤形態としては、液剤や、マイクロカプセルの懸濁剤が挙げられる。
液剤は、例えば、上記シロアリ防除剤を、水および/または有機溶媒中に溶解させ、または液滴として分散させた製剤形態であって、具体的には、例えば、上記シロアリ防除剤を水(またはコソルベントを含む水)に溶解した液体製剤、例えば、上記シロアリ防除剤を有機溶媒に溶解した油剤、例えば、上記シロアリ防除剤と、界面活性剤と、水とを含む乳剤、などが挙げられる。
【0213】
これら製剤形態に調製するための溶剤、界面活性剤、コソルベントなどは、特に限定されず、公知のものから適宜選択することができる。
マイクロカプセルの懸濁剤としては、上記シロアリ防除剤をマイクロカプセル化し、得られたマイクロカプセルを、水および/または有機溶媒中に分散(懸濁)したものが挙げられる。
【0214】
上記シロアリ防除剤をムース状で散布するために、上記の処理方法においては、例えば、本発明の散布器を用いることができる。具体的に、上記の処理方法においては、シロアリ防除剤を処理するための散布器として、例えば、図4に示す散布器10、図7に示す散布器21、または、図9に示す散布器27を用いることができる。
また、これら散布器10、21、27を用いる場合には、散布器10のボトル15、散布器21のエアゾール缶22(供給部)、ボトル29に収容される木材保存剤を上記のシロアリ防除剤とし、さらに、このシロアリ防除剤(液剤、マイクロカプセルの懸濁剤)をムース状で吐出させるために、液剤やマイクロカプセル剤に発泡剤(水を含んでいてもよい。)を配合して得られるムース剤として調製する。
【0215】
発泡剤としては、例えば、各種の界面活性剤など、発泡剤として公知のものから適宜選択することができる。
ムース状で散布されるシロアリ防除剤について、その発泡倍率については、特に限定されないが、好ましくは、200倍以下、さらに好ましくは、10〜100倍、特に好ましくは、20〜80倍、とりわけ、20〜70倍である。シロアリ防除剤からなるムースの発泡倍率が、上記範囲を上回ると、ムースの破泡が生じやすくなるため、シロアリ防除剤の散布効果が損なわれるおそれがある。特に、破泡しやすくなることで、液剤としての性質を示すようになるため、液ダレによる居住空間の汚染を抑制しつつ、シロアリ防除剤を効率よく散布するという本発明の作用効果が損なわれる。一方、発泡倍率が上記範囲を下回ると、シロアリ防除剤の使用量が多くなり、コストが高くなるという不具合が生じる。
【0216】
上記の散布方法において、防除の対象となるシロアリとしては、シロアリ(等翅)目に属する昆虫であること以外は特に限定されず、具体的には、上記ネオニコチノイド製剤による防除対象と同様のものが挙げられる。
上記の第2の散布方法によれば、シロアリ防除剤がムース状で散布されることから、例えば、シロアリ防除剤が液剤として散布される場合の液ダレや、それに伴う居住空間の汚染などの問題を解消できる。
【0217】
とりわけ、散布対象が、建物の壁、床または天井に配置される断熱材の被害部(例えば、蟻道)である場合において、この断熱材が発泡体である場合には、散布器から散布されたムース状のシロアリ防除剤が、発泡体の内部で四方八方に広がることから、シロアリ防除剤を隅々まで行き渡らせることができる。なお、シロアリ防除剤が液剤である場合には、発泡体の被害部の内部を液剤が滲み込むルートが一旦定まると、そのルート以外に偏って液剤が滲み込む現象がみられる。このため、発泡体の隅々までシロアリ防除剤を行き渡らせることができず、しかも、発泡体の一部に液剤が偏って滲み込むことで、発泡体の被害部の割れ、破損などを招くおそれがある。
【0218】
一方、上記断熱材がガラスウールである場合には、散布器から散布されたムース状のシロアリ防除剤が、ムースが破泡する前に、およびガラスウールの繊維自体に吸収される前に、ガラスウールの全体に拡散することから、シロアリ防除剤を隅々まで行き渡らせることができる。なお、シロアリ防除剤が液剤である場合には、液剤がガラスウールの繊維自体に吸収されるため、ガラスウールの隅々までシロアリ防除剤を行き渡らせることができないという不具合が生じる。
【0219】
図12〜図14は、本発明の処理方法の一実施形態を示す模式図である。
図12は、建物の壁44に配置される断熱材45に対し、シロアリ防除剤46をムース状で処理(散布、注入)する処理方法を示している。
通常、断熱材45は、水平方向において柱47と間柱48と(または、一対の間柱)に挟まれ、かつ、上下方向において一対の横木49に挟まれるように配置されている。そこで、断熱材45の上部にシロアリ防除剤46をムース状で散布することにより、断熱材45の隅々まで、シロアリ防除剤46を行き渡らせることができる。シロアリ防除剤46は、図12中の矢印で示す部位にて、上述の散布器を用いて散布すればよい。
【0220】
図12に示す場合において、シロアリ防除剤46を処理(散布、注入)するには、例えば、必要に応じて、部分的に壁材50を切除、または取り外したり、数mm程度の注入用の穴をあけるようにしてもよい。なお、図12においては、説明のため、壁材50の一部と、断熱材45の一部とを切り欠いて示している。
図13は、建物の床下部51および基礎部52に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理(散布、注入、塗布)する処理方法を示している。
【0221】
床下部51には、例えば、束柱53、大引き54、根太55などの木材が配置されている。シロアリ防除剤46をムース状で散布することにより、例えば、束柱53などにおけるシロアリの食害(加害)部へ適用しやすくなる。
また、シロアリ防除剤46をムース状で散布することにより、例えば、大引き54や根太55などの表面や、基礎部52において、シロアリ防除剤46を比較的長期間にわたって留まらせることができる。それゆえ、例えば、上記木材、あるいは床下部51や基礎部52のうち、シロアリを防除する特定の部位に、あらかじめシロアリ防除用の固化製剤を散布しておき、その上からシロアリ防除剤46をムース状で散布することにより、必要な場所にのみ薬剤を定着させることができる。なお、処理部が、例えば、転ばし根太の場合であっても、その処理方法は同様である。
【0222】
図13に示す場合において、シロアリ防除剤46を処理(散布、注入、塗布)するには、例えば、必要に応じて、部分的に床材56を切除すればよい。また、床下部51用の点検口からシロアリ防除剤46を散布してもよい。なお、図13においては、説明のため、床材56の一部を切り欠いて示している。
図14は、建物の天井部57に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理(散布、注入、塗布)する処理方法を示している。
【0223】
天井部57には、例えば、柱47、天井根太58などの木材が配置されている。シロアリ防除剤46をムース状で散布することにより、柱47、天井根太58などの木材におけるシロアリの食害(加害)部へ適用しやすくなり、しかも、シロアリ防除剤46の液ダレが抑制されることから、居住空間への汚染を抑制することができる。
図14に示す場合において、シロアリ防除剤46を処理(散布、注入、塗布)する際には、例えば、必要に応じて、部分的に天井板を切除、または取り外せばよい。なお、図14においては、説明のため、天井板を省略している。
【実施例】
【0224】
次に、製剤例、比較製剤例、実施例、参考例、比較例、および製造例を挙げて本発明を説明するが、本発明は、下記の製剤例、実施例、参考例および製造例によって限定されるものではない。
以下の実施例などにおいて、マイクロカプセルの平均粒子径は、コールターカウンタ(ベックマン・コールター(株)製の商品名「マルチサイザー3」)で測定された体積平均粒子径D(μm)である。また、マイクロカプセルの壁膜の平均膜厚T(μm)は、下記式(1)に基づいて算出した。
【0225】
T=(D/6)×(W1/W2)×(D2/D1) …(1)
(式(1)中、W1は、壁膜形成物質の重量(g)を示し、W2は、膜内物質の重量(g)を示し、D1は、壁膜形成物質の平均密度(g/cm3)を示し、D2は、膜内物質の平均密度(g/cm3)を示す。
1.ネオニコチノイド製剤の製造(製剤例1〜3、比較製剤例1〜3)
比較製剤例1
KMC113(ジイソプロピルナフタレン、沸点300℃、呉羽化学工業(株)製)318gと、アルケンL(アルキルベンゼン、蒸留範囲285〜309℃、新日本石油化学(株)製)154gと、Disperbyk−164(3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量10000〜50000、ビッグケミー(株)製)48gとを配合して、均一になるまで攪拌した。次いで、得られた混合溶液にクロチアニジン480gを配合し、T.K.オートホモディスパー(特殊機化工業(株)製)にて攪拌することにより、クロチアニジンを含有するスラリー液(1)を得た。このスラリー液(1)のクロチアニジン濃度は、48重量%であった。
【0226】
次に、上記スラリー液(1)を、ビーズミル(ダイノーミル KDL A型、ガラスビーズ径1.5mm)に投入し、20分間湿式粉砕した。湿式粉砕後のスラリー液(1)中におけるクロチアニジンの平均粒子径は、480nmであった。
さらに、湿式粉砕後のスラリー液(1)83gに対し、タケネートD−140N(イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン変性体、三井化学ポリウレタン(株)製)の溶剤置換物260gを配合し、均一になるまで攪拌することにより、スラリー液(2)を得た。
【0227】
上記スラリー液(2)を、クラレポバール217(ポリビニルアルコール、登録商標、クラレ(株)製)60gと、ニューカルゲンFS−4(ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アニオン界面活性剤、竹本油脂(株)製)0.15gとを含有する水溶液885g中に加え、常温下で微少滴になるまでT.K.オートホモミキサー(特殊機化工業(株)製)にて数分間攪拌し、混合した。この際、T.K.オートホモミキサーの回転数は、4000回転/分とした。
【0228】
次いで、得られた混合液(2)を、75℃の恒温槽中で3時間緩やかに攪拌させながら反応させ、その際、ジエチレントリアミンを10g滴下した。
反応後、得られた分散液に凍結防止剤と、増粘剤と、防腐剤とを配合し、さらに、全体の重量が1992gとなるように水を配合して、クロチアニジンを2重量%含有するマイクロカプセル剤(水懸濁剤)を得た。
【0229】
得られたマイクロカプセルは、体積平均粒子径が4.5μmであり、壁膜の平均膜厚が0.3μmであった。
比較製剤例2
T.K.オートホモミキサーの回転数を2800回転/分としたこと以外は、比較製剤例1と同様にして、クロチアニジンを2重量%含有するマイクロカプセル剤(水懸濁剤)を得た。得られたマイクロカプセルは、体積平均粒子径が24μmであり、壁膜の平均膜厚が1.6μmであった。
【0230】
製剤例1
T.K.オートホモミキサーの回転数を2600回転/分としたこと以外は、比較製剤例1と同様にして、クロチアニジンを2重量%含有するマイクロカプセル剤(水懸濁剤)を得た。得られたマイクロカプセルは、体積平均粒子径が27μmであり、壁膜の平均膜厚が1.8μmであった。
【0231】
製剤例2
T.K.オートホモミキサーの回転数を2400回転/分としたこと以外は、比較製剤例1と同様にして、クロチアニジンを2重量%含有するマイクロカプセル剤(水懸濁剤)を得た。得られたマイクロカプセルは、体積平均粒子径が30μmであり、壁膜の平均膜厚が2.0μmであった。
【0232】
製剤例3
T.K.オートホモミキサーの回転数を1000回転/分としたこと以外は、比較製剤例1と同様にして、クロチアニジンを2重量%含有するマイクロカプセル剤(水懸濁剤)を得た。得られたマイクロカプセルは、体積平均粒子径が62μmであり、壁膜の平均膜厚が4.0μmであった。
【0233】
比較製剤例3
SAS310(ジフェニルアルカン、新日本石油化学(株)製)500gと、アルケンL(アルキルベンゼン、新日本石油化学(株)製)150gと、ナロアクテイーHN100(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、三洋化成(株)製)150gとを配合し、均一になるまで攪拌した後、得られた混合溶液に、クロチアニジン200gを配合し、T.K.オートホモディスパー(特殊機化工業(株)製)にて攪拌することにより、クロチアニジンを20重量%含有するスラリー液(3)を得た。
【0234】
上記スラリー液(3)を、ビーズミル(ダイノーミル KDL A型、ガラスビーズ径0.5mm)に投入し、20分間湿式粉砕して、クロチアニジンを20重量%含有するフロアブル剤を得た。このフロアブル剤中でのクロチアニジンの体積平均粒子径は、0.8μmであった。
1.(1) 土壌からの薬剤溶出試験
薬剤溶出試験には、製剤例1〜3および比較製剤例1、2で得られたマイクロカプセル剤を、それぞれ水で20倍に希釈し、クロチアニジン濃度を0.1重量%に調整して使用した。また、比較製剤例3で得られたフロアブル剤についても、水で希釈し、クロチアニジン濃度を0.1重量%に調整して使用した。
【0235】
薬剤溶出試験では、まず、ケイ砂6号(宇部興産(株)製)の含水率が12.5%となるように調整し、このケイ砂を、ガラス通水カラム(内径1.5cm)内に高さが10cmとなるよう充填した。次いで、上記ガラス通水カラム内のケイ砂層の上面に、上記の希釈されたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度0.1重量%)、または上記の希釈されたフロアブル剤(クロチアニジン濃度0.1重量%)を、それぞれ3L/m2の割合で散布した。上記マイクロカプセル剤(水懸濁剤)またはフロアブル剤の散布後、上記ガラス通水カラムを密封して、室温で3日間保存した。
【0236】
さらに、保存後、上記ガラス通水カラムを、20℃の雰囲気下と、60℃の雰囲気下との2つの雰囲気下に設置し、上記ガラス通水カラムに対し、20mL/hrの速さで、各雰囲気の温度に調整された蒸留水を通水し、流出水をサンプリングした。
蒸留水を計1000mL流水後、上記ガラス通水カラムからケイ砂を取出し、カラム内に残存しているクロチアニジンを、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)で定量した。こうして、流水処理後のクロチアニジン量の測定値と、上記マイクロカプセル剤(水懸濁剤)またはフロアブル剤の散布量より算出される初期のクロチアニジン量とから、クロチアニジンの残存率(%)を算出した。この結果を、表1に示す。
【0237】
高温多湿環境下でのクロチアニジンの溶脱を抑制し、シロアリの防除効果を長期に亘って発揮させるには、上記薬剤溶出試験において、20℃でのクロチアニジンの残存率が、40%以上、好ましくは、50%以上、より好ましくは、55%以上であり、かつ、60℃でのクロチアニジンの残存率が、35%以上、好ましくは、40%以上であることが求められる。
【0238】
なお、比較製剤例3では、流水処理後のカラムから、クロチアニジンが検出されなかった。
【0239】
【表1】
【0240】
1.(2) クロチアニジンの溶解度測定
クロチアニジンについて、既知である20℃の水に対する溶解度327ppm(mg/L)を基準値とし、この整数倍の濃度のクロチアニジン水溶液を調製した。次いで、各濃度のクロチアニジン水溶液の温度を、60℃と80℃とにそれぞれ調節し、クロチアニジンの溶解状態を目視で観察した。こうして、完全に溶解していると判定できた濃度の最も高い値を、その温度でのクロチアニジンの溶解度とした。
【0241】
その結果、60℃の水に対する溶解度は、1635ppm(20℃での溶解度の5倍)であり、80℃の水に対する溶解度は、2289ppm(20℃での溶解度の7倍)であった。すなわち、クロチアニジンは、温度の上昇により、水への溶解度が顕著に高くなっている。この結果より、ネオニコチノイド製剤は、高温下で水分にさらされると溶脱するおそれがあることがわかる。
【0242】
1.(3) 野外試験
鹿児島県下のイエシロアリ生育地内において、製剤例1で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤)について野外試験を行った。
試験は、(社)日本木材保存協会の規格「土壌処理用防蟻剤等の防蟻効力試験方法および性能基準(JWPS−TS−S)」の記載に準じて行った。
【0243】
すなわち、まず、イエシロアリ生息地内に10点をマークし、そのうち、任意の5点を処理土壌区とし、残りの5点を無処理土壌区とした。各々の試験区は、1m以上の間隔をあけて設定した。また、各試験区において、土壌表面の植生や落葉を除外した。
次に、製剤例1で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)を水で20倍希釈し、上記処理土壌区にのみ3L/m2の割合で散布した。その後、処理土壌区および無処理土壌区の中央部に、健全なアカマツ辺材(縦10cm、横10cm、厚さ1cm)を2枚重ねて置いて、放置した。
【0244】
上記処理土壌および無処理土壌の表面には、上記規格に準じて、塩化ビニール樹脂板からなる箱型容器を設置し、移動しないように杭で固定した。
こうして、試験開始から1年経過ごとに、上記アカマツ辺材の食害の有無を観察した。
その結果、試験開始から1年経過後には、無処理土壌区のアカマツ辺材に、食害の痕跡が顕著に観察された。
【0245】
一方、処理土壌区のアカマツ辺材については、上記規格に規定された試験期間(2年)の経過後においても、試験開始から3年経過後においても、シロアリによる食害の痕跡が観察されなかった。
1.(4) 木材用防蟻剤の性能試験
鹿児島県下のイエシロアリ生育地(屋外)において、製剤例2で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)について、木材用防蟻剤としての性能試験を行った。
【0246】
試験では、まず、木口3×3cm、長さ30cmのマツ辺材に、20倍に希釈された上記マイクロカプセル材を200g/m2となるように散布した。次いで、上記マツ辺材5本を、それぞれ長さ方向に10cmが隠れるようにして、上記生育地内の土壌に埋設し、放置した。
その結果、上記マイクロカプセル材が散布されたマツ辺材は、2年経過後においても、シロアリによる食害の痕跡が観察されなかった。
【0247】
2.粒剤タイプのネオニコチノイド製剤の製造(製剤例4〜6、比較製剤例4〜5)
比較製剤例4
カガライト2号(カガライト工業(株)製、軽石の細粒)100重量部に対し、比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)5重量部を配合し、乾燥して、ネオニコチノイド製剤の粒状物(粒剤)を得た。
【0248】
得られた粒剤のクロチアニジン濃度は、約0.1重量%であった。
比較製剤例5
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、比較製剤例2で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)5重量部を配合したこと以外は、比較製剤例4と同様にして、ネオニコチノイド製剤の粒状物(粒剤)を得た。得られた粒剤のクロチアニジン濃度は、約0.1重量%であった。
【0249】
製剤例4
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例1で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)5重量部を配合したこと以外は、比較製剤例4と同様にして、ネオニコチノイド製剤の粒状物(粒剤)を得た。得られた粒剤のクロチアニジン濃度は、約0.1重量%であった。
【0250】
製剤例5
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例2で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)5重量部を配合したこと以外は、比較製剤例4と同様にして、ネオニコチノイド製剤の粒状物(粒剤)を得た。得られた粒剤のクロチアニジン濃度は、約0.1重量%であった。
【0251】
製剤例6
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例3で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)5重量部を配合したこと以外は、比較製剤例4と同様にして、ネオニコチノイド製剤の粒状物(粒剤)を得た。得られた粒剤のクロチアニジン濃度は、約0.1重量%であった。
【0252】
2.(1) 土壌からの薬剤溶出試験
薬剤溶出試験には、製剤例4〜6および比較製剤例4、5で得られた粒剤をそのまま使用した。
薬剤溶出試験では、まず、ケイ砂6号(宇部興産(株)製)の含水率が12.5%となるように調整し、このケイ砂を、ガラス通水カラム(内径1.5cm)内に高さが10cmとなるよう充填した。次いで、上記ガラス通水カラム内のケイ砂層の上面に、上記粒剤を3L/m2の割合で散布した。上記粒剤の散布後、上記ガラス通水カラムを密封して、室温で3日間保存した。
【0253】
さらに、保存後、上記ガラス通水カラムを、20℃の雰囲気下と、60℃の雰囲気下との2つの雰囲気下に設置し、上記ガラス通水カラムに対し、20mL/hrの速さで、各雰囲気の温度に調整された蒸留水を通水し、流出水をサンプリングした。
蒸留水を計1000mL流水後、上記ガラス通水カラムからケイ砂を取出し、カラム内に残存しているクロチアニジンを、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)で定量した。こうして、流水処理後のクロチアニジン量の測定値と、上記粒剤の散布量より算出される初期のクロチアニジン量とから、クロチアニジンの残存率(%)を算出した。この結果を、表2に示す。
【0254】
高温多湿環境下でのクロチアニジンの溶脱を抑制し、シロアリの防除効果を長期に亘って発揮させるには、上記薬剤溶出試験において、20℃でのクロチアニジンの残存率が、40%以上、好ましくは、50%以上であり、かつ、60℃でのクロチアニジンの残存率が、35%以上、好ましくは、40%以上であることが求められる。
【0255】
【表2】
【0256】
3.防蟻性塗料組成物の調製(参考例1〜3、比較例1〜3)
比較例1
アクリル変性シリコーン樹脂エマルション(不揮発分48%、商品名「塗料用モビニール(登録商標)7220」、ニチゴー・モビニール(株)製)15重量部と、アクリル樹脂エマルション(不揮発分47%、商品名「塗料用モビニール(登録商標)LDM7156」、ニチゴー・モビニール(株)製)11重量部と、炭酸カルシウム12重量部と、保存剤、増粘剤および消泡剤の混合物1重量部と、水23重量部と、分散剤および保湿剤の混合物3重量部とを配合し、攪拌混合して、防蟻性塗料組成物(1)を調製した。
【0257】
上記各成分の固形分の重量割合は、次のとおりである。アクリル変性シリコーン樹脂エマルション11.9重量%、アクリル樹脂エマルション8.6重量%、炭酸カルシウム58.1重量部、酸化チタン微粒子19.9重量%、保存剤、増粘剤および消泡剤の混合物1.1重量%、水0重量%、分散剤および保湿剤の混合物0.4重量%。なお、固形分の重量割合は、四捨五入により丸めた値であるため、上記各成分の固形分の重量割合の合計値は、必ずしも100とはならない。
【0258】
次いで、比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)を、上記防蟻性塗料組成物(1)で希釈し、攪拌、混合することにより、クロチアニジンの濃度が0.1重量%である塗料組成物を得た。
比較例2
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、比較製剤例2で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)を使用したこと以外は、比較例1と同様にして、クロチアニジンの濃度が0.1重量%である塗料組成物を得た。
【0259】
参考例1
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例1で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)を使用したこと以外は、比較例1と同様にして、クロチアニジンの濃度が0.1重量%である塗料組成物を得た。
参考例2
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例2で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)を使用したこと以外は、比較例1と同様にして、クロチアニジンの濃度が0.1重量%である塗料組成物を得た。
【0260】
参考例3
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例3で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)を使用したこと以外は、比較例1と同様にして、クロチアニジンの濃度が0.1重量%である塗料組成物を得た。
比較例3
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、比較製剤例3で得られたフロアブル(クロチアニジン濃度20重量%)剤を使用したこと以外は、比較例1と同様にして、クロチアニジンの濃度が0.1重量%である塗料組成物を得た。
【0261】
3.(1) 塗膜からの薬剤溶出試験
参考例1〜3および比較例1〜3で得られた防蟻性塗料組成物を、それぞれ、正常健全なスギの辺材からとった、厚さ1cm、幅および長さ3.5cmの木材(試験片)の表面に、塗装用として一般的に用いられる刷毛で、塗装量が200g/m2となるように塗装した。
【0262】
次いで、塗装された上記試験片を、体積が上記試験片の10倍量である20℃および60℃の2つの蒸留水にそれぞれ浸漬し、24時間静置した。この浸漬操作を、1回ごとに新しい蒸留水に交換しつつ、合計10回繰り返した。
浸漬操作後、上記試験片の塗膜に残存しているクロチアニジンをアセトニトリルにより抽出し、HPLCで定量した。こうして、浸漬操作後のクロチアニジン量の測定値と、上記試験片に対する防蟻性塗料組成物の塗装量より算出される初期のクロチアニジン量とから、クロチアニジンの残存率(%)を算出した。この結果を、表3に示す。
【0263】
高温多湿環境下での塗膜からのクロチアニジンの溶脱を抑制し、シロアリの防除効果を長期に亘って発揮させるには、上記薬剤溶出試験において、20℃でのクロチアニジンの残存率が、40%以上、好ましくは、50%以上、より好ましくは、55%以上であり、かつ、60℃でのクロチアニジンの残存率が、35%以上、好ましくは、40%以上であることが求められる。
【0264】
なお、比較例3では、浸漬操作後の試験片から、クロチアニジンが検出されなかった。
【0265】
【表3】
【0266】
4. 防蟻性樹脂成形体の製造(参考例4〜5、比較例4〜5)
比較例4
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に、ステアリン酸カルシウムを配合し、攪拌混合後、乾燥させて、クロチアニジン濃度が2.0重量%のマクロカプセルを含有する粉状物を得た。
【0267】
次に、重合度1300の塩化ビニル樹脂(品名「TS−1300」、販売元「日本塩ビ販売(株)」)100重量部と、可塑剤としてフタル酸ジオクチル50重量部と、充填剤として軽質炭酸カルシウム10重量部と、クレー10重量部と、熱安定剤としてステアリン酸バリウム1.5重量部と、ステアリン酸亜鉛1.5重量部と、滑剤としてステアリルアルコール0.5重量部と、上記粉状物9.2重量部とを、スーパーミキサー((株)カワタ製)で、120℃を超えないようにドライブレンドした。次いで、得られた塩化ビニル樹脂混合物を室温まで冷却後、ミキシングロールで150〜160℃、3分間溶融混練しつつ、シートペレタイザーで塩化ビニル樹脂組成物のペレットを成形した。さらに、30cm角の加熱プレスの金型を160度で1分間予熱後、上記ペレットを上記金型内に投入し、100kg/cm2で3分間プレスすることにより、厚さ0.16cmの塩化ビニル樹脂(PVC)シートを得た。このPVCシートにおけるクロチアニジンの含有割合は、0.1重量%であった。
【0268】
比較例5
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、比較製剤例2で得られたマイクロカプセル剤を使用したこと以外は、比較例4と同様にして、クロチアニジン濃度が2.0重量%のマクロカプセルを含有する粉状物と、厚さ0.16cmのPVCシート(クロチアニジン濃度0.1重量%)とを得た。
【0269】
参考例4
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例1で得られたマイクロカプセル剤を使用したこと以外は、比較例4と同様にして、クロチアニジン濃度が2.0重量%のマクロカプセルを含有する粉状物と、厚さ0.16cmのPVCシート(クロチアニジン濃度0.1重量%)とを得た。
【0270】
参考例5
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例3で得られたマイクロカプセル剤を使用したこと以外は、比較例4と同様にして、クロチアニジン濃度が2.0重量%のマクロカプセルを含有する粉状物と、厚さ0.16cmのPVCシート(クロチアニジン濃度0.1重量%)とを得た。
【0271】
4.(1) PVCシートからの薬剤溶出試験
試験には、参考例4、5および比較例4、5で得られたPVCシートを、幅および長さ各2cmに裁断した試験片を使用した。
上記試験片1片を、20℃および60℃の恒温槽中で、それぞれ、体積が上記試験片の10倍量である蒸留水に浸漬し、24時間静置した。この浸漬操作を、1回ごとに新しい蒸留水に交換しつつ、合計14回繰り返した。
【0272】
浸漬操作後、上記試験片をテトラヒドロフラン(THF)で溶解させ、得られた溶液を、THFの2倍量のメタノールに配合し、沈殿物をろ別した。次いで、ろ液を濃縮し、クロチアニジンの含有量をHPLCで定量した。こうして、浸漬操作後のクロチアニジン量の測定値と、上記試験片の初期のクロチアニジン量とから、クロチアニジンの残存率(%)を算出した。この結果を、表4に示す。
【0273】
高温多湿環境下でのPVCシートからのクロチアニジンの溶脱を抑制し、シロアリの防除効果を長期に亘って発揮させるには、上記薬剤溶出試験において、20℃でのクロチアニジンの残存率が、70%以上、好ましくは、80%以上であり、かつ、60℃でのクロチアニジンの残存率が、15%以上、好ましくは、20%以上、より好ましくは、25%以上であることが求められる。
【0274】
【表4】
【0275】
5.硬化性シロアリ防除組成物の調製(参考例6〜8、比較例6〜7)
比較例6
カガライト4M号(カガライト工業(株)製、軽石の細粒)を篩に通して、粒径0.15mm以下の担体Aを得た。得られた担体A100重量部に対し、比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤50重量部を配合し、乾燥しながら均一に混合して、混合物を得た。
【0276】
得られた混合物を、粒径0.15mm以下の土砂(真砂土)で約4倍に希釈し、シロアリ防除成分Bを得た。
次いで、得られたシロアリ防除成分B50重量部と、乾燥土砂A(粒径が0.5mmを上回り1.5mm以下である土砂(真砂土)7重量部と、粒径が0.25mmを上回り0.5mm以下である土砂(真砂土)10重量部と、粒径0.15以上0.25mm以下の土砂(真砂土)15重量部と、粒径0.15mm未満の土砂(真砂土)68重量部とを配合し、攪拌混合したもの。)50重量部とを配合し、均一に混合して、混合物を得た。
【0277】
さらに、得られた混合物90重量部と、硬石こう(商品名「ニュープラストーン」、(株)ジーシー製)10重量部とを配合し、均一に混合して、硬化性シロアリ防除組成物を得た。得られた硬化性シロアリ防除組成物中の有効成分(クロチアニジン)濃度は、0.1重量%であった。
また、得られた硬化性シロアリ防除組成物100重量部と、水20重量部とを混練し、硬化させて得られた硬化物の圧縮強度を、JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に記載の圧縮強さ試験で測定した結果、約10N/mm2であった。
【0278】
比較例7
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、比較製剤例2で得られたマイクロカプセル剤を使用したこと以外は、比較例6と同様にして、硬化性シロアリ防除組成物を得た。
得られた硬化性シロアリ防除組成物100重量部と、水20重量部とを混練し、硬化させて得られた硬化物の圧縮強度を、JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に記載の圧縮強さ試験で測定した結果、約10N/mm2であった。
【0279】
参考例6
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例1で得られたマイクロカプセル剤を使用したこと以外は、比較例6と同様にして、硬化性シロアリ防除組成物を得た。
得られた硬化性シロアリ防除組成物100重量部と、水20重量部とを混練し、硬化させて得られた硬化物の圧縮強度を、JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に記載の圧縮強さ試験で測定した結果、約10N/mm2であった。
【0280】
参考例7
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例2で得られたマイクロカプセル剤を使用したこと以外は、比較例6と同様にして、硬化性シロアリ防除組成物を得た。
得られた硬化性シロアリ防除組成物100重量部と、水20重量部とを混練し、硬化させて得られた硬化物の圧縮強度を、JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に記載の圧縮強さ試験で測定した結果、約10N/mm2であった。
【0281】
参考例8
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例3で得られたマイクロカプセル剤を使用したこと以外は、比較例6と同様にして、硬化性シロアリ防除組成物を得た。
得られた硬化性シロアリ防除組成物100重量部と、水20重量部とを混練し、硬化させて得られた硬化物の圧縮強度を、JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に記載の圧縮強さ試験で測定した結果、約10N/mm2であった。
【0282】
5.(1) 硬化物からの薬剤溶出試験
試験には、参考例6〜8および比較例6、7で得られた硬化物を使用した。
上記硬化物を、20℃および60℃の恒温槽中で、それぞれ、体積が上記硬化物の10倍量である蒸留水に浸漬し、24時間静置した。この浸漬操作を、1回ごとに新しい蒸留水に交換しつつ、合計10回繰り返した。
【0283】
浸漬操作後、上記硬化物に残存しているクロチアニジンをアセトニトリルにより抽出しをHPLCで定量した。こうして、浸漬操作後のクロチアニジン量の測定値と、上記試験片の初期のクロチアニジン量とから、クロチアニジンの残存率(%)を算出した。この結果を、表5に示す。
高温多湿環境下での硬化物からのクロチアニジンの溶脱を抑制し、シロアリの防除効果を長期に亘って発揮させるには、上記薬剤溶出試験において、20℃でのクロチアニジンの残存率が、40%以上、好ましくは、50%以上であり、かつ、60℃でのクロチアニジンの残存率が、35%以上、好ましくは、40%以上であることが求められる。
【0284】
【表5】
【0285】
6.防蟻性被覆電線の製造(製造例1〜3)
製造例1
重合度1300の塩化ビニル樹脂(品名「TS−1300」、販売元「日本塩ビ販売(株)」)100重量部と、可塑剤としてフタル酸ジオクチル50重量部と、充填剤として軽質炭酸カルシウム10重量部と、クレー10重量部と、熱安定剤としてステアリン酸鉛3.0重量部と、製剤例2で得られたマイクロカプセル剤(体積平均粒子径30μm、壁膜の平均膜厚2.0μm)19.3重量部とを、スーパーミキサー((株)カワタ製)で、120℃を超えないようにドライブレンドした。
【0286】
次いで、得られた塩化ビニル樹脂混合物を室温まで冷却後、ミキシングロールで150〜160℃、3分間溶融混練し、シートペレタイザーで塩化ビニル樹脂組成物のペレットを成形した。
次に、得られたペレットを、クロスヘッドダイが装着された二軸押出機に投入し、公知の方法により、銅製導線(電線)とともに押出成形することにより、図1に示す、銅製導線(金属導線)1の周囲が防蟻性樹脂成形体(防蟻性の絶縁体)2で被覆された防蟻性被覆電線(防蟻電線)を製造した。
【0287】
得られた防蟻性被覆電線を、鹿児島県内のイエシロアリの生育が確認された土壌中に埋設し、1年間後に観察した結果、シロアリによる食害の痕跡は観察されなかった。
製造例2
製剤例2で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例1で得られたマイクロカプセル剤(体積平均粒子径27μm、壁膜の平均膜厚1.8μm)19.3重量部を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、防蟻性被覆電線(防蟻電線)を製造した。
【0288】
製造例3
製剤例2で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例3で得られたマイクロカプセル剤(体積平均粒子径62μm、壁膜の平均膜厚4.0μm)19.3重量部を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、防蟻性被覆電線(防蟻電線)を製造した。
7.散布器の製造および散布試験(実施例9〜11)
実施例9
図4を参照して、ポンプディスペンサ11には、ボトル15の内容量が350mLである市販品を使用した。
【0289】
ノズル12には、マイクロピペッタ用ノズルを使用した。このノズル12は、吐出口18における外径t1が約0.8mm、吐出口18における内径が約0.5mm、有効長Lが約3.5cm、吐出方向上流側における内径が約3.5mm、テーパ角度θが約5°であった(図6参照)。
透明チューブ13には、透明のポリエチレン製チューブ(内径9mm、長さ約50cm)を使用した。
【0290】
接続管14には、市販のベローズ付きスポイト(ポリエチレン製、東京硝子機器(株))のベローズ(蛇腹)部分を除去したものを使用した。
木材保存剤には、タケロックMC50E(日本エンバイロケミカルズ(株)製、クロチアニジン5重量%を含むマイクロカプセル剤)を水で50倍希釈し、得られた希釈物100重量部に対し、発泡剤としてエマールD−3−D(花王(株)製、陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩)3重量部を配合したムース剤使用した。
【0291】
ポンプディスペンサ11のポンプヘッド17に、透明チューブ13の一方側端を嵌め込み、さらに、透明チューブ13の他方側端に、接続管14の一方側端(スポイトの液溜め部からの距離が近い方の開口端)を嵌め込んだ。次いで、接続管14の他方側端に、ノズル12を取り付け、ボトル15内に木材保存剤を投入して、散布器10を得た。
図5を参照して、イエシロアリによる被害を受けた木材(直径約10cm、長さ約30cmのマツ材)19の穿孔20に、ノズル12を挿入し、ポンプヘッド17を手で数回押圧することにより、木材保存剤の泡を散布(供給)した。木材保存剤の散布状況は、透明チューブ13内を木材保存剤の泡が流れているか否かにより、目視にて判断した。
【0292】
上記散布処理において、穿孔20の開口端部分での木材保存剤の逆流は、観察されなかった。
また、上記散布処理により、穿孔20内に生息していたイエシロアリを駆除(殺虫)できた。
実施例10
図7を参照して、エアゾール缶22には、正立状態で使用される市販のエアゾール缶を使用した。
【0293】
ノズル12には、マイクロピペッタ用ノズルを使用した。このノズル12は、吐出口18における外径t1が約0.8mm、吐出口18における内径が約0.5mm、有効長Lが約3cm、吐出方向上流側の最大径t2が約4mm、テーパ角度θが約5°であった(図6参照)。
透明チューブ13には、透明のポリエチレン製チューブ(内径3mm、長さ約30cm)を使用した。
【0294】
木材保存剤には、タケロックMC50E(日本エンバイロケミカルズ(株)製、クロチアニジン5重量%を含むマイクロカプセル剤)を水で50倍希釈し、得られた希釈物85重量部に対し、発泡剤としてエマールD−3−D(花王(株)製、陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩)5重量部を配合した混合物を使用した。
【0295】
この混合物を、噴射剤としてのLPGガスとともに、耐圧容器23内に充填、密閉した。耐圧容器23内へのLPGガスの注入量は、上記混合物の総量90重量部に対し、10重量部とした。
次いで、エアゾール缶22の噴出口24に取り付けられたノズル(直径約3.5mm)の先端に、透明チューブ13の一方側端を接続し、さらに、透明チューブ13の他方側端に、ノズル12を取り付けて、散布器21を得た。
【0296】
図8を参照して、アメリカカンザイシロアリによる被害を受けた木材(直径約10cm、長さ約40cmのマツ材)19の側面に認められたアメリカカンザイシロアリによる穿孔26に、ノズル12を挿入した。この穿孔26は、直径が約2mmであり、その開口端には、穿孔26を塞ぐようにアメリカカンザイシロアリの糞が詰められていたため、この糞を取り除いてから、ノズル12を挿入した。
【0297】
なお、ノズル12は、穿孔26の開口端において隙間が生じないように、吐出口18の外径が約1.5mmとなる部分において切断した上で、使用した。
こうして、エアゾール缶22の噴出口24を手で数〜十数秒間押圧することにより、穿孔26内に木材保存剤の泡を散布(供給)した。木材保存剤の散布状況は、透明チューブ13内を木材保存剤の泡が流れているか否かにより、目視にて判断した。
【0298】
上記散布処理において、穿孔20の開口端部分での木材保存剤の逆流は、観察されなかった。
また、散布器21の木材保存剤は、噴射剤によって大きな圧が加えられた状態で散布されたことから、木材25の外表面のうち、ノズル12を挿入した穿孔26の開口端から鉛直方向上方、約30cm程度の部位(穿孔26の他方側開口端)において、木材保存剤の泡Fの噴出が確認された。
【0299】
上記散布処理後、木材25を切断して内部を観察したところ、穿孔26内に生息していたアメリカカンザイシロアリの駆除(死亡)を確認できた。
実施例11
図11を参照して、ボトル本体40には、市販のプラスチックボトル(内容量500mLのペットボトル)を使用した。なお、キャップ41には、透明チューブ13を挿入するための貫通孔(直径約2.5mm)を設けた。
【0300】
ノズル12には、マイクロピペッタ用ノズルを使用した。このノズル12は、吐出口18における外径t1が約0.8mm、吐出口18における内径が約0.5mm、有効長Lが約3cm、吐出方向上流側における内径が約3.5mm、テーパ角度θが約5°であった(図6参照)。
透明チューブ13には、透明のポリエチレン製チューブ(直径約3mm、長さ約50cm)を使用した。
【0301】
木材保存剤には、水性キシラモン3W(日本エンバイロケミカルズ(株)製、防蟻剤としてクロチアニジンを0.6重量%と、防腐剤としてIPBCを3重量%、およびプロピコナゾール3重量%と、を含む木材保存剤)を水で3倍希釈した希釈物を使用した。
ボトル39のボトル本体40に、木材保存剤300mLを投入し、キャップ41を取り付けた。このキャップ41の貫通孔には、予め、透明チューブ13の一方側端を挿入し、貫通孔と透明チューブ13との間に隙間が生じないように、接着剤で固めておいた。さらに、透明チューブ13の他方側端に、ノズル12を取り付けて、散布器38を得た。
【0302】
なお、透明チューブ13の途中には、キャップ41から吐出方向下流側へ約20cmの部位に、市販のクランプ43を取り付けた。また、透明チューブ13上において、点滴筒42の取り付けは省略した。
イエシロアリによる被害を受けた木材(直径約10cm、長さ約30cmのマツ材)の木口に現れている穿孔に、ノズル12を挿入した。次いで、クランプ43で木材保存剤の流量を5mL/分に調整し、ボトル39から透明チューブ13と、ノズル12を介して、木材の穿孔内に木材保存剤を散布(滴下注入)した。なお、散布処理時において、ボトル39の底部(キャップ41と相対する側の壁面)に針を挿入し、空気孔を設けた。
【0303】
上記散布処理において、穿孔の開口端部分での木材保存剤の逆流は、観察されなかった。
【0304】
また、上記散布処理により、穿孔内に生息していたイエシロアリを駆除(殺虫)できた。
【0305】
本発明は、以上の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲において、種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0306】
2:絶縁体(被覆部材)、5:絶縁体(被覆部材)、9:シース(被覆部材)、10:散布器、11:ポンプディスペンサ(供給部)、12:ノズル(吐出部)、13:透明チューブ(供給管)、18:吐出口、21:散布器、27:散布器、38:散布器、44:壁、51:床下部、52:基礎部、57:天井部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、散布器、散布方法および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロチアニジンなどのネオニコチノイド系化合物は、シロアリに対する防除剤として、広く知られている(特許文献1参照)。
また、特許文献2には、ネオニコチノイド系化合物のマイクロカプセルを含有し、長期に亘って効力を持続できる有害生物防除組成物が記載されている。
また、特許文献2には、ネオニコチノイド系化合物のマイクロカプセルを含有する水懸濁液を、土壌表面に散布することが記載されている。
【0003】
また、従来、シロアリ防除剤の処理(施工)方法としては、例えば、液剤としてのシロアリ防除剤に空気を送り込み泡立てる起泡装置を、床板の点検口などの開口部に設置し、シロアリ防除剤の泡を床板と基礎部との間などに散布するといった処理方法や、例えば、液剤としてのシロアリ防除剤を、断熱材、床下部、天井部などに直接塗布するといった処理方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3349551号公報
【特許文献2】特開2000−95621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、クロチアニジンなどのネオニコチノイド系化合物は、高温(例えば、40℃以上)かつ多湿の環境下で、水への溶解度が高くなり、シロアリに対する防除効果の持続性が低下する。
このため、ネオニコチノイド系化合物を単にマイクロカプセル化した上で、例えば、土壌や木材の表面または内部に散布または注入したり、モルタル、石こうなどの硬化物に含有させたり、塗膜、樹脂成形体などに含有させたりしても、高温多湿の環境下にさらされることで、ネオニコチノイド系化合物の溶脱が生じ、シロアリの防除効果が比較的短期間に低下する。
【0006】
また、シロアリによる食害部や、シロアリの蟻道などは、径の小さな空間であるため、例えば、ネオニコチノイド系化合物などのシロアリ防除剤をエアゾール剤として調製し、圧をかけて散布したとしても、上記食害部や蟻道などの内部にまでシロアリ防除剤を十分に供給できない場合がある。
また、液剤としてのシロアリ防除剤を泡立てるための起泡装置は大掛かりな装置であるため、例えば、断熱材、天井部などへのシロアリ防除剤の処理(例えば、散布、注入、塗布など)に適用することは困難である。さらに、例えば、床下部への処理において、シロアリ防除剤をくまなく行き渡らせることは困難である。
【0007】
一方、液剤としてのシロアリ防除剤を、断熱材、天井部などに対し、直接に散布し、または注入するといった処理(施工)方法では、液ダレによって居住空間内がシロアリ防除剤で汚染されるおそれがある。特に、断熱材が発泡体である場合において、シロアリ防除剤は、断熱材に既に滲み込んでいる部位やシロアリによる被害が生じている部位に偏って浸透するため、断熱材全体にシロアリ防除剤を行き渡らせることが困難であり、場合によっては、液剤が偏って浸透することで断熱材の破損を生じるおそれがある。また、断熱材がガラスウールである場合には、液剤がガラスウールの繊維自体に吸収されるため、断熱材全体にシロアリ防除剤を行き渡らせることが困難であり、断熱効果の低下を招くおそれもある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、高温多湿の環境下であっても、防蟻効果を効率よく発揮させ、かつ、長期にわたって持続させることのできるネオニコチノイド製剤と、それを用いた硬化性シロアリ防除組成物、防蟻性塗料組成物および防蟻性樹脂成形体と、を提供することである。
本発明の他の目的は、シロアリ防除剤を、シロアリの加害部や蟻道などの内部に、効率よく供給することのできる散布器と、散布方法とを提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、液ダレによる居住空間の汚染を抑制しつつ、簡易な方法により、シロアリ防除剤を建物の断熱材、床下部、天井部、基礎部などで効率よく処理することのできる処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために、マイクロカプセル化されたネオニコチノイド製剤について鋭意検討したところ、マイクロカプセルの壁膜の厚みを制御することで、高温多湿環境下でのネオニコチノイド系化合物の溶脱を抑制し、シロアリの防除効果を長期に亘って発揮できるとの知見を見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1) ネオニコチノイド系化合物が、壁膜の厚みが1.8〜4μmであるマイクロカプセルに内包されていることを特徴とする、ネオニコチノイド製剤、
(2) 前記ネオニコチノイド系化合物が、クロチアニジンであることを特徴とする、前記(1)に記載のネオニコチノイド製剤、
(3) 木材を保存するための木材保存剤であることを特徴とする、前記(1)または(2)に記載のネオニコチノイド製剤、
(4) シロアリを防除するための防蟻剤であることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のネオニコチノイド製剤、
(5) 土壌の表面または内部に散布または注入するための防蟻剤であることを特徴とする、前記(4)に記載のネオニコチノイド製剤、
(6) 木材の表面または内部に散布または注入するための防蟻剤であることを特徴とする、前記(3)または(4)に記載のネオニコチノイド製剤、
(7) 前記(1)または(2)に記載のネオニコチノイド製剤と、水硬性成分と、土砂成分とを含有することを特徴とする、硬化性シロアリ防除組成物、
(8) 前記(1)または(2)に記載のネオニコチノイド製剤と、樹脂エマルションとを含有していることを特徴とする、防蟻性塗料組成物、
(9) 前記(1)または(2)に記載のネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂とを含有していることを特徴とする、防蟻性樹脂成形体、
(10) 防蟻シートまたは防蟻性フィルムであることを特徴とする、前記(9)に記載の防蟻性樹脂成形体、
(11) 電線、ケーブルまたはこれらのシースを被覆するための被覆部材であることを特徴とする、前記(9)に記載の防蟻性樹脂成形体、
を提供するものである。
【0012】
また、本発明者らは、上記他の目的を達成するために、シロアリ防除剤の散布器と、散布方法について鋭意検討したところ、シロアリによる加害部やシロアリの蟻道に対するシロアリ防除剤の散布に適した散布器の構造を見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(12) 木材保存剤を供給するための供給部と、前記供給部から供給される木材保存剤を吐出するための吐出部と、を備え、前記吐出部は、先細形状に形成されており、前記吐出口の吐出方向下流端に形成されている吐出口の外径が、2mm以下であることを特徴とする、散布器、
(13) さらに、前記供給部と前記吐出部とに連結される可撓性の供給管を備えていることを特徴とする、前記(12)に記載の散布器、
(14) 前記供給部は、前記木材保存剤を圧力により供給することを特徴とする、前記(12)または(13)に記載の散布器、
(15) 前記供給部が、ポンプディスペンサ、エアゾール缶、またはポンプ式スプレーであることを特徴とする、前記(14)に記載の散布器、
(16) 前記木材保存剤が、ムース剤であることを特徴とする、前記(14)または(15)に記載の散布器、
(17) 前記供給部は、前記木材保存剤を自重により供給することを特徴とする、前記(12)または(13)に記載の散布器、
(18) 前記(12)〜(17)のいずれかに記載の散布器を用いて、被害部、または被害が予想される部位の隙間に、前記木材保存剤を散布することを特徴とする、散布方法、
(19) 前記隙間に合わせて、前記吐出部の吐出方向途中を切断して使用することを特徴とする、前記(18)に記載の散布方法、
を提供するものである。
【0013】
さらに、本発明者らは、上記のさらに他の目的を達成するために、シロアリ防除剤の処理(施工)方法について鋭意検討したところ、特定の部位においてシロアリ防除剤の好適な処理(散布、注入、塗布など)方法を見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(20) 建物の壁、床または天井に配置される断熱材に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理することを特徴とする、処理方法、
(21) 建物の床下部に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理することを特徴とする、処理方法、
(22) 建物の天井部に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理することを特徴とする、処理方法。
(23) 建物の基礎部に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理することを特徴とする、処理方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のネオニコチノイド製剤によれば、高温多湿環境下におけるマイクロカプセルからのネオニコチノイド系化合物の溶脱を抑制することができ、このような環境下においても、シロアリの防除効果を長期に亘って発揮できる。
また、本発明の硬化性シロアリ防除組成物、防蟻性塗料組成物および防蟻性樹脂成形体によれば、高温多湿環境下でのネオニコチノイド系化合物の溶脱を抑制でき、シロアリの防除効果を長期に亘って維持できる。
【0015】
また、本発明の散布器、散布方法、および処理方法によれば、シロアリによる食害部やシロアリの蟻道の内部にまで、シロアリ防除剤を十分に供給することができ、効率よくシロアリを防除できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】電線またはケーブル用被覆部材の一実施形態を示す断面図である。
【図2】電線またはケーブル用被覆部材の他の実施形態を示す断面図である。
【図3】電線またはケーブル用被覆部材のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の散布器の一実施形態を示す外観図である。
【図5】図4に示す散布器の使用状態を示す模式図である。
【図6】図4に示す散布器の使用状態における一部拡大断面図である。
【図7】本発明の散布器の他の実施形態を示す外観図である。
【図8】図7に示す散布器の使用状態を示す模式図である。
【図9】本発明の散布器のさらに他の実施形態を示す外観図である。
【図10】図9に示す散布器の使用方法を示す模式図である。
【図11】本発明の散布器のさらに他の実施形態を示す外観図である。
【図12】本発明の処理方法の一実施形態を示す模式図である。
【図13】本発明の処理方法の他の実施形態を示す模式図である。
【図14】本発明の処理方法のさらに他の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のネオニコチノイド製剤は、ネオニコチノイド系化合物をマイクロカプセルに内包したものであり、上記マイクロカプセルの壁膜の厚みが、1.8〜4μmである。
ネオニコチノイド系化合物としては、例えば、(E)−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(一般名:クロチアニジン)、N−アセチル−N−(2−クロロチアゾール−5−イル)メチル−N’−メチル−N”−ニトログアニジン、N−(2−クロロチアゾール−5−イル)メチル−N−メトキシカルボニル−N’−メチル−N”−ニトログアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリン−2−イリデンアミン(一般名:イミダクロプリド)、3−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−5−[1,3,5]オキサジアジナン−4−イルインデン−N−ニトロアミン(一般名:チアメトキサム)、(RS)−1−メチル−2−ニトロ−3−(テトラヒドロ−3−フリルメチル)グアニジン(一般名:ジノテフラン)、(E)−N1−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N2−シアノ−N1−メチルアセトアミジン(一般名:アセタミプリド)などが挙げられる。これらネオニコチノイド系化合物は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。また、上記ネオニコチノイド系化合物のなかでも、好ましくは、クロチアニジンが挙げられる。
【0018】
マイクロカプセルの調製方法としては、特に限定されず、化学的方法、物理化学的方法、物理的および機械的方法など、各種の方法が挙げられる。
化学的方法としては、例えば、界面重合法、in situ 重合法、液中硬化被覆法などが挙げられる。
界面重合法としては、例えば、多塩基酸ハライドとポリオールとを界面重合させてポリエステルからなる膜を形成する方法、多塩基酸ハライドとポリアミンとを界面重合させてポリアミドからなる膜を形成する方法、ポリイソシアネートとポリオールとを界面重合させてポリウレタンからなる膜を形成する方法、ポリイソシアネートとポリアミンとを界面重合させてポリウレアからなる膜を形成する方法などが挙げられる。
【0019】
in situ 重合法としては、例えば、スチレンとジビニルベンゼンとを共重合させてポリスチレン共重合体からなる膜を形成する方法、メチルメタクリレートとn−ブチルメタクリレートとを共重合させてポリメタクリレート共重合体からなる膜を形成する方法などが挙げられる。
液中硬化被覆法としては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、アルギン酸ソーダなどを液中で硬化させて被膜を形成する方法が挙げられる。
【0020】
物理化学的方法としては、例えば、単純コアセルベーション法、複合コアセルベーション法、pHコントロール法、非溶媒添加法などの水溶液系からの相分離法、例えば、有機溶媒系からの相分離法、液中乾燥法などが挙げられる。この物理化学的方法における膜形成成分には、例えば、ゼラチン、セルロース、ゼラチン−アラビアゴムなどが挙げられる。また、ポリスチレンなどを用いる界面沈降法などを採用することもできる。
【0021】
物理的および機械的方法としては、例えば、スプレードライ(噴霧乾燥)法、気中懸濁被膜法、真空蒸着被覆法、静電的合体法、融解分散冷却法、無機質壁カプセル化法などが用いられる。この物理的および機械的方法における膜形成成分には、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0022】
マイクロカプセルの調製方法は、ネオニコチノイド系化合物をマイクロカプセルに高濃度で内包させるという観点より、上記例示の調整方法の中でも特に、界面重合法が好適である。
次に、界面重合法によるマイクロカプセルの調製方法について、より詳細に説明する。
界面重合法によるマイクロカプセルの調製では、まず、有効成分としてのネオニコチノイド系化合物と、油溶性膜形成成分と、溶媒とを含む油相成分を調製する。
【0023】
油溶性膜形成成分としては、例えば、ポリイソシアネート、ポリカルボン酸クロライド、ポリスルホン酸クロライドなどが挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート、例えば、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。また、これらポリイソシアネートの誘導体、例えば、ダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレットジオン、オキサジアジントリオンなどや、これらポリイソシアネートの変性体、例えば、トリメチロールプロパンなどの低分子量のポリオールやポリエーテルポリオールなどの高分子量のポリオールを予め反応させることにより得られるポリオール変性ポリイソシアネートなども挙げられる。
【0024】
ポリカルボン酸クロライドとしては、例えば、セバシン酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、アゼライン酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド、トリメシン酸ジクロライドなどが挙げられる。
ポリスルホン酸クロライドとしては、例えば、ベンゼンスルホニルジクロライドなどが挙げられる。
【0025】
上記例示の油溶性膜形成成分は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記例示の油溶性膜形成成分の中では、特に、ポリイソシアネートを用いることが好ましく、さらには、脂肪族および脂環族のポリイソシアネート、とりわけ、ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートのトリマーやポリオール変性ポリイソシアネートを用いることが好ましい。
【0026】
溶媒としては、上記の有効成分や油溶性膜形成成分を溶解しまたは分散し得るものであればよく、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソオクチル、アジピン酸ジノニル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジドデシル、アジピン酸ジテトラデシル、アジピン酸ジヘキサデシル、アジピン酸ジオクタデシル、アジピン酸デシルイソオクチル、スベリン酸ジオクチル、スベリン酸ジイソノニル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジイソノニルなどの脂肪酸エステル類、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエチレングリコールエステル類、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、例えば、ヘキサノール、オクタノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコールなどのアルコール類、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール類、例えば、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドなどの含窒素化合物類、例えば、アルキルベンゼン類、アルキルナフタレン類、アルキルフェノール類、フェニルキシリルエタンなどの石油系溶媒(より具体的には、石油留分より得られる種々の市販の有機溶媒、例えば、サートレックス48(高沸点芳香族系溶剤、蒸留範囲254〜386℃、モービル石油(株)製)、アルケンL(アルキルベンゼン、蒸留範囲285〜309℃、日本石油化学(株)製)、ソルベッソ150(アルキルベンゼン、蒸留範囲188〜209℃、エクソン化学(株)製)、ソルベッソ200(アルキルナフタレン、蒸留範囲226〜286℃、エクソン化学(株)製)、KMC−113(ジイソプロピルナフタレン、沸点300℃、呉羽化学工業(株)製)、SAS296(フェニルキシリルエタン、蒸留範囲290〜305℃、日本石油化学(株)製)など)、なたね油などの油類などが挙げられる。
【0027】
上記例示の溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
油相成分における各成分の配合割合は、特に限定されるものではないが、例えば、有効成分(ネオニコチノイド系化合物)の配合割合は、油相成分の総量100重量部に対して、0.02〜99.9重量部、好ましくは、0.05〜99重量部である。
油溶性膜形成成分の配合割合は、油相成分100重量部に対して、0.1〜99.9重量部の範囲において配合可能である。なお、油溶性膜形成成分の配合割合が多くなると、得られるマイクロカプセルの壁膜が厚くなりすぎて、有効成分であるネオニコチノイド系化合物による防蟻効果が低下するおそれがあり、逆に、油溶性膜形成成分の配合割合が少なくなると、マイクロカプセルの壁膜を形成できなくなるおそれがある。
【0028】
また、溶媒の配合割合は、各成分の残余の割合でよい。
油相成分は、有効成分および油溶性膜形成成分を溶媒に配合して、攪拌混合することにより調製することができる。
また、油相成分には、有効成分の分散性を向上させるべく、分散剤を配合してもよい。分散剤は特に限定されるものではなく、例えば、エチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、エステルゴム、フローレンDOPA・15B(変性アクリル共重合物、共栄社製)、フローレン700(分岐カルボン酸の部分エステル、共栄社製)などが挙げられる。また、本発明においては、分散剤として、例えば、3級アミンを含む分子量1000以上のものが好ましく用いられる。
【0029】
3級アミンを含む分子量1000以上の分散剤としては、3級アミンを含有するカチオン系の高分子重合体、例えば、3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン系高分子重合体、3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体などが挙げられる。より具体的には、市販の分散剤、例えば、Disperbyk−161(3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量100000、ビッグケミー(株)製)、Disperbyk−163(3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量50000、ビッグケミー(株)製)、Disperbyk−164(3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量10000〜50000、ビッグケミー(株)製)、EFKA46(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量8000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA47(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量13000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA48(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量18000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA4050(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量12000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA4055(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量12000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA4009(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量5000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA4010(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量5000、EFKAケミカル(株)製)などが挙げられる。
【0030】
このような分散剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記した市販の分散剤は、通常、上記した溶媒などに、その濃度が50重量%以上となるような割合で希釈されている。
分散剤は、有効成分と、油溶性膜形成成分と、溶媒と、分散剤との、総量100重量部に対して、0.01〜99.99重量部の範囲において配合可能である。特に、20重量部以下、さらには10重量部以下で配合することが好ましい。
【0031】
油相成分の調製において、有効成分に防蟻防虫剤が配合される場合には、例えば、有効成分と、溶媒と、分散剤とを含むスラリーを調製し、さらに、スラリーを湿式粉砕した後、このスラリーに油溶性膜形成成分を配合することが好ましい。
湿式粉砕は、例えば、ビーズミル、ボールミル、またはロッドミルなどの公知の粉砕機を用いて、所定時間実施すればよい。湿式粉砕することにより、有効成分を微細な粒子として分散させることができ、カプセル化率の向上、製剤安定性の向上、および効力増強を図ることができる。
【0032】
また、このような湿式粉砕においては、有効成分の平均粒子径を、例えば、5μm以下、さらには2.5μm以下とすることが好ましい。平均粒子径がこれより大きいと、マイクロカプセルに良好に内包できない場合がある。
そして、湿式粉砕されたスラリーに、油溶性膜形成成分を配合するには、油溶性膜形成成分をスラリーに加えて攪拌混合すればよい。
【0033】
界面重合法によるマイクロカプセルの調製では、次いで、このようにして調製された油相成分を、水相成分に配合して、攪拌により界面重合させる。
水相成分は、例えば、水に、必要により、分散安定剤を配合することによって調製することができる。
分散安定剤としては、例えば、アラビヤガムなどの天然多糖類、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの半合成多糖類、ポリビニルアルコールなどの水溶性合成高分子、例えば、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン重縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩などのアニオン界面活性剤、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステルなどのノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。これら分散安定剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
なお、分散安定剤の配合割合は、例えば、水相成分100重量部に対して、例えば、20重量部以下、好ましくは、10重量部以下である。
油相成分を水相成分に配合するには、油相成分を水相成分中に加えて、常温下、微小滴になるまでミキサーなどによって攪拌すればよい。
そして、攪拌により界面重合させるには、例えば、油相成分の分散後に、水溶性膜形成成分を水溶液として滴下すればよい。
【0035】
水溶性膜形成成分としては、油溶性膜形成成分と反応して界面重合するものであれば、特に制限されず、例えば、ポリアミンやポリオールなどが挙げられる。
ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノトルエン、フェニレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ピペラジンなどが挙げられる。
【0036】
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0037】
これら水溶性膜形成成分は、単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。好ましくは、ポリアミンが用いられる。
また、水溶性膜形成成分を水溶液とするには、約50重量%以下の濃度とすることが好ましく、このような水溶液を、例えば、水溶性膜形成成分が、油溶性膜形成成分に対してほぼ等しい当量(例えば、ポリイソシアネートとポリアミンとが用いられる場合では、イソシアネート基/アミノ基の当量比がほぼ1となる割合)となるまで滴下する。
【0038】
このような水溶性膜形成成分の滴下により、水溶性膜形成成分と油溶性膜形成成分とが、油相成分(溶媒)と水相成分(水)との界面で反応することにより、有効成分が内包されるマイクロカプセルを、水分散液として得ることができる。
この反応を促進するために、例えば、約25〜85℃、好ましくは、約40〜80℃で、約30分〜24時間、好ましくは、約1〜3時間攪拌しつつ加熱することが好ましい。
【0039】
そして、このようにして得られるマイクロカプセル(水分散液として調製されるものを含む。)には、必要により、増粘剤、凍結防止剤、比重調節剤などの公知の添加剤を適宜配合する。
上記ネオニコチノイド製剤においては、高温多湿環境下でのネオニコチノイド系化合物の溶脱を抑制し、シロアリの防除(防蟻)効果を長期に亘って発揮させる観点より、マイクロカプセルの壁膜の厚さを1.8〜4μm、とりわけ、1.8〜3.5μmとすることが好ましい。
【0040】
マイクロカプセルを、その壁膜の厚さが1.8〜4μm、とりわけ、1.8〜3.5μmとなるように調製するには、例えば、界面重合法によるマイクロカプセルの調製において、油相成分を水相成分に配合した後の攪拌速度を適宜調節すればよい。
マイクロカプセルの壁膜の平均膜厚T(μm)は、後述するマイクロカプセルの体積平均粒子径D(μm)より、下記式(1)に基づいて求められる。
【0041】
T=(D/6)×(W1/W2)×(D2/D1) …(1)
(式(1)中、W1は、壁膜形成物質の重量(g)を示し、W2は、膜内物質の重量(g)を示し、D1は、壁膜形成物質の平均密度(g/cm3)を示し、D2は、膜内物質の平均密度(g/cm3)を示す。
マイクロカプセルの粒子径は、体積基準の平均粒子径(体積平均粒子径)を1〜200μm、とりわけ、6〜100μmに調整することが好ましい。また、マイクロカプセルの粒度分布は、特に限定されないが、正規分布に近く、かつ分布の幅が狭いことが好ましい。
【0042】
マイクロカプセルの体積平均粒子径は、例えば、レーザ回折/散乱式粒度分布装置により測定された粒子径の大きさとその分布状態(粒度分布)に基づいて、求めることができる。
なお、粒子径分布が正規分布となるマイクロカプセルを、目的とする平均粒子径に調整する方法は、マイクロカプセルの調製方法によって異なる。例えば、マイクロカプセルを界面重合法により調製する場合には、油相成分を水相成分に配合した後の攪拌速度を調節することで、平均粒子径を適宜調整することができる。例えば、平均粒子径が1〜200μmのマイクロカプセルを得るには、水相成分の粘度が例えば、0.1〜1Pa・s、好ましくは0.3〜0.6Pa・sである場合において、その攪拌速度を、周速13m/s未満、好ましくは0.1〜12m/sに設定すればよい。
【0043】
上記ネオニコチノイド製剤は、例えば、界面重合法によって製造されたマイクロカプセルのままの状態(水懸濁剤)で用いることができる。
また、上記ネオニコチノイド製剤は、マイクロカプセルを含む水懸濁液に、必要により、分散剤、界面活性剤、沈降防止剤などを適宜配合した上で、得られた水分散液を乾燥させることにより、あるいは、適当な溶媒に溶解、分散させて、スプレードライ法などで乾燥させることにより、例えば、粉状物(粉剤)、粒状物(粒剤)などとして用いることができる。
【0044】
上記ネオニコチノイド製剤を粉状物または粒状物として調製した場合には、その平均粒子径を0.1〜2000μm、好ましくは、1〜500μmに調整することが好ましい。粉状物または粒状物の平均粒子径は、例えば、マイクロカプセルの場合と同様にして、求めることができる。
上記ネオニコチノイド製剤は、例えば、防腐防カビ剤を含有する製剤と混合して用いることができる。この場合において、上記ネオニコチノイド製剤は、防蟻効果だけでなく、防腐防カビ効果を発揮できることから、木材保存剤として好適である。
【0045】
防腐防カビ剤は、防腐剤および/または防カビ剤であること以外は、特に限定されないが、具体的には、例えば、有機ヨード系化合物、トリアゾール系化合物、スルファミド系化合物、ビス四級アンモニウム塩系化合物、四級アンモニウム塩系化合物、フタロニトリル系化合物、ジチオール系化合物、チオフェン系化合物、チオカルバメート系化合物、ニトリル系化合物、フタルイミド系化合物、ハロアルキルチオ系化合物、ピリジン系化合物、ピリチオン系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、トリアジン系化合物、グアニジン系化合物、尿素系化合物、イミダゾール系化合物、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、フェニルウレア系化合物などが挙げられる。
【0046】
有機ヨード系化合物としては、例えば、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート(慣用名:IPBC)、パラクロロフェニル−3−ヨードプロパギルホルマール(商品名:IF−1000、長瀬産業(株)製)、3−ブロモ−2,3−ジヨード−2−プロペニルエチルカーボナート(商品名:サンプラス、(株)三共製)などが挙げられる。
トリアゾール系化合物としては、例えば、1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−プロピル−1、3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(慣用名:プロピコナゾール)、α−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−α(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:テブコナゾール)、α−(4−クロロフェニル)−α−(1−シクロプロピル−エチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:シプロコナゾール)などが挙げられる。
【0047】
スルファミド系化合物としては、例えば、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−フェニルスルファミド(商品名:プリベントールA4/S、バイエル製)、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−4−トリルスルファミド(商品名:プリベントールA5、バイエル製)などが挙げられる。
ビス四級アンモニウム塩系化合物としては、例えば、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド)(商品名:ダイマー38、イヌイ社製)、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムアセテート)(商品名:ダイマー38A、イヌイ社製)、4,4’−(テトラメチレンジカルボニルジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムブロマイド)(商品名:ダイマー136、イヌイ社製)、4,4’−(テトラメチレンジカルボニルジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムアセテート)(商品名:ダイマー136A、イヌイ社製)などが挙げられる。
【0048】
四級アンモニウム塩系化合物としては、例えば、ジ−n−デシル−ジメチルアンモニウムクロライド、1−ヘキサデシルピリジニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、コータミンD10EPR(花王製)などが挙げられる。
フタロニトリル系化合物としては、例えば、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル(商品名:ノプコサイドN−96、サンノプコ(株)製)などが挙げられる。
【0049】
ジチオール系化合物としては、例えば、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンなどが挙げられる。
チオフェン系化合物としては、例えば、3,3,4−トリクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシドなどが挙げられる。
【0050】
チオカルバメート系化合物としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィドなどが挙げられる。
ニトリル系化合物としては、例えば、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルなどが挙げられる。
フタルイミド系化合物としては、例えば、N−1,1,2,2−テトラクロロエチルチオ−テトラヒドロフタルイミド(Captafol)、N−トリクロロメチルチオ−テトラヒドロフタルイミド(Captan)、N−ジクロロフルオロメチルチオフタルイミド(Fluorfolpet)、N−トリクロロメチルチオフタルイミド(Folpet)などが挙げられる。
【0051】
ハロアルキルチオ系化合物としては、例えば、N−ジメチルアミノスルホニル−N−トリル−ジクロロフルオロメタンスルファミド(Tolylfluanide)、N−ジメチルアミノスルホニル−N−フェニル−ジクロロフルオロメタンスルファミド(Dichlofluanide)、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−N、N’−ジメチル−N−フェニル−スルファミドなどが挙げられる。
【0052】
ピリジン系化合物としては、例えば、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジンなどが挙げられる。
ピリチオン系化合物としては、例えば、ジンクピリチオン、ナトリウムピリチオンなどが挙げられる。
ベンゾチアゾール系化合物としては、例えば、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
【0053】
トリアジン系化合物としては、例えば、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジンなどが挙げられる。
グアニジン系化合物としては、例えば、1,6−ジ−(4’−クロロフェニルジグアニド)−ヘキサン、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩などが挙げられる。
尿素系化合物としては、例えば、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレアなどが挙げられる。
【0054】
イミダゾール系化合物としては、例えば、メチル−2−ベンズイミダゾールカルバメート、メチル−2−ベンズイミダゾールカルバメート塩酸塩、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾールなどが挙げられる。
イソチアゾリン系化合物としては、例えば、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
【0055】
ニトロアルコール系化合物としては、例えば、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−エタノールなどが挙げられる。
フェニルウレア系化合物としては、例えば、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレアなどが挙げられる。
これら防腐防カビ剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、これら防腐防カビ剤のなかでは、有機ヨード系化合物やトリアゾール系化合物を用いることが好ましく、とりわけ、IPBC、プロピコナゾール、テブコナゾールを用いることが好ましい。
【0056】
防腐防カビ剤を含有する製剤としては、例えば、懸濁剤、液剤などが挙げられる。
懸濁剤は、固体の粒子状の有効成分(防腐防カビ剤)が、水および/または有機溶媒中に分散した製剤形態であって、このような懸濁剤としては、例えば、フロアブル剤、マイクロカプセル剤、担体担持剤などが挙げられる。
なお、担体担持剤は、通常、有効成分を担持した、水および/または有機溶媒に不溶の固体の担体を、水および/または有機溶媒中に分散させた水および/または有機溶媒系製剤であって、担体としては、担持能または吸着能を有する固形の担体、具体的には、例えば、層状ケイ酸塩(モンモリロナイトなど)、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、ゼオライト、活性炭、ホワイトカーボン、シクロデキストリン(例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンなど)などが挙げられる。
【0057】
液剤は、液状の有効成分(防腐防カビ剤)が、水および/または有機溶媒中に溶解または液滴として分散した製剤形態であって、このような液剤としては、例えば、水(または溶解共力剤(コソルベント)を含む水)に溶解した液体製剤や、例えば、有機溶媒に溶解した油剤、例えば、界面活性剤などの乳化剤とともに水中に分散した乳剤、などが挙げられる。
【0058】
上記ネオニコチノイド製剤の粉状物(粉剤)および粒状物(粒剤)は、いずれも樹脂エマルションに配合し、攪拌、混合して用いることができる。
また、上記ネオニコチノイド製剤の粉状物(粉剤)および粒状物(粒剤)は、いずれも合成樹脂微粒子と混合し、互いに付着させた状態で用いることができる。
合成樹脂微粒子は、特に限定されるものではなく、公知の各種の合成樹脂微粒子を用いることができる。また、合成樹脂微粒子を形成する樹脂としては、熱硬化性樹脂、および熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0059】
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、架橋剤により架橋させたビニル重合性モノマー重合体よりなる樹脂などが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ビニル重合性モノマー重合体よりなる樹脂などが挙げられる。
【0060】
合成樹脂微粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは、0.1〜200μm、より好ましくは、1〜60μm、さらに好ましくは、1〜50μmである。
上記ネオニコチノイド製剤による防除(シロアリの駆除およびシロアリによる被害の予防)の対象となるシロアリとしては、シロアリ(等翅)目に属する昆虫であること以外は特に限定されず、具体的には、例えば、イエシロアリ(Coptotermes formosanus)、ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)などのミゾガシラシロアリ科に属するもの、アメリカカンザイシロアリ、ダイコクシロアリなどのレイビシロアリ科に属するものなどが挙げられる。
【0061】
また、上記シロアリについて、兵蟻とは、兵隊アリまたは大型働きアリを示しており、職蟻とは、働きアリ(偽職アリ)を示している。
上記のネオニコチノイド製剤によれば、ネオニコチノイド系化合物を内包するマイクロカプセルの壁膜の厚みが上記範囲に設定されていることにより、長期間に亘って防蟻効果を発揮することができる。
【0062】
それゆえ、上記のネオニコチノイド製剤は、木材保存剤として、とりわけ、防蟻剤として好適である。
上記ネオニコチノイド製剤は、木材の保存や、シロアリの駆除およびシロアリによる被害(食害など)の予防などの用途に広く使用できる。
シロアリを防除する部位としては、これに限定されないが、例えば、土壌(地盤面など)、例えば、木材、例えば、建物(建築物;すなわち、家屋、倉庫、門扉、塀およびこれらの付属設備など。)における基礎構造部、上部構造部および地下構造部、例えば、建物の付属設備としての地下埋設物、例えば、シロアリの生息・発生域などが挙げられる。
【0063】
具体的には、例えば、土壌用の処理剤として、または、一般工業用や土木工業用に用いられる各種木材用の処理剤として好適に使用できる。
土壌用処理剤としての使用方法は、特に限定されないが、例えば、公知の散布方法(例えば、スプレーなど)によって処理対象の土壌に散布すればよい。より具体的には、例えば、ネオニコチノイド系化合物がマイクロカプセルに1〜60重量%の割合で内包されているネオニコチノイド製剤の場合、このネオニコチノイド製剤を、土壌の表面に対し、0.003〜3g/m2、とりわけ、0.03〜3g/m2の分量で散布すればよい。
【0064】
木材用処理剤としての使用方法は、特に限定されないが、例えば、公知の散布方法(例えば、スプレーなど)によって処理対象の木材に散布し、または、公知の塗布方法(例えば、刷毛塗りなど)によって処理対象の木材に塗布すればよい。より具体的には、例えば、ネオニコチノイド系化合物がマイクロカプセルに1〜60重量%の割合で内包されているネオニコチノイド製剤の場合、このネオニコチノイド製剤を、木材の表面に対し、0.0002〜0.2g/m2、とりわけ、0.002〜0.2g/m2の分量で散布または塗布すればよい。
【0065】
上記ネオニコチノイド製剤は、上述のように、例えば、マイクロカプセルを含む水懸濁液の状態で、もしくは、例えば、マイクロカプセルを乾燥させた粉状物(粉剤)、粒状物(粒剤)などの状態で、または、例えば、防腐防カビ剤を含有する製剤と混合した状態で用いられ、これらの状態で、シロアリを防除する部位に対し、処理される(具体的には、例えば、散布、噴射、噴霧、注入などによって処理される)。
【0066】
また、上記ネオニコチノイド製剤は、これに限定されないが、例えば、マイクロカプセルを含む水懸濁剤や、マイクロカプセルを乾燥させた粉剤、粒剤などの状態で、スプレー剤(エアゾール剤)、ムース剤などとして使用することもできる。
例えば、スプレー剤、ムース剤などを噴射、噴霧または注入する場合において、その処理対象としては、特に限定されないが、上述のシロアリを防除する部位のなかでも、例えば、シロアリの蟻道、シロアリによる食害(穿孔)を生じた部分、建物の基礎構造部、上部構造部および地下構造部における亀裂部分や隙間などが好適である。
【0067】
また、例えば、上記ネオニコチノイド製剤をスプレー剤(エアゾール剤)や、ムース剤として用いる場合において、その噴射口には、先端が細くなるようなテーパを有するノズルを備えていることが好ましい。このノズルの形状を、例えば、シロアリの蟻道、シロアリによる食害によって生じた穿孔の形状に合わせることで、上記ネオニコチノイド製剤の漏れを防止でき、効率よく、蟻道や穿孔などへの上記ネオニコチノイド製剤の注入処理を行うことができる。
【0068】
また、上記ネオニコチノイド製剤は、例えば、接着剤に混合することで、防蟻性が付与された合板を形成するための接着剤として使用することができる。
本発明の硬化性シロアリ防除組成物は、上記ネオニコチノイド製剤と、水硬性成分と、土砂成分とを含有している。
水硬性成分としては、土砂成分と上記ネオニコチノイド製剤とを分散させて、硬化性シロアリ防除組成物を形成できるものであること以外は、特に限定されず、モルタルまたはコンクリートの形成材料として用いられている種々の水硬性成分が挙げられる。
【0069】
具体的には、例えば、気硬性セメント(例えば、気硬性単味セメント、気硬性混合セメントなど)や、水硬性セメント(例えば、水硬性単味セメント、水硬性混合コメントなど)が挙げられる。
気硬性単味セメントとしては、例えば、焼セッコウ、無水セッコウプラスターなどのセッコウ類、例えば、消石灰、ドロマイトプラスターなどの石灰類などが挙げられる。気硬性混合セメントとしては、例えば、マグネシアセメントなどが挙げられる。
【0070】
水硬性単味セメントとしては、例えば、ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメントなどのポルトランドセメント類、例えば、アルミナセメント、石灰アルミナセメントなどのアルミナセメント類などが挙げられる。水硬性混合コメントとしては、例えば、石灰スラグセメント、石灰火山灰セメントなどの石灰混合セメント類、例えば、高炉セメント、シリカセメント、ポゾランセメント、フライアッシュセメントなどの混合ポルトランドセメント類、例えば、高硫酸塩スラグセメント類などが挙げられる。
【0071】
これら気硬性セメントおよび水硬性セメントは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
土砂成分を構成する土砂としては、例えば、礫、砂(粗砂、細砂)、シルト(微砂)、粘土が挙げられる。これらの土砂は、単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
上記土砂は、砂、シルト、粘土などの含有割合に基づき、例えば、砂土類(例えば、壌質砂土、砂土)、壌土類(例えば、壌土、砂壌土、微砂質壌土)、埴壌土類(例えば、埴壌土、砂質埴壌土、微砂質埴壌土)、および、埴土類(例えば、軽埴土、砂質埴土、微砂質埴土、重埴土)に分類される。なお、これらの土砂の区分は、国際土壌学会法の土性区分による。上記土砂は、上記土砂の1区分にのみ属するものであってもよく、2以上の区分に属するものであってもよい。
【0073】
また、上記土砂の具体例としては、例えば、砂類(例えば、けい砂、川砂、海砂、浜砂、山砂など)、土類(例えば、花崗岩の風化により形成された真砂土、例えば、赤土、黒土、しらすなどの火山灰土、例えば、河川の堆積土など)、各種園芸用土(例えば、赤玉土、鹿沼土、荒木田土、腐葉土、桐生砂など)、火成岩(安山岩、花崗岩、流紋岩など)、変成岩(珪岩、晶質石灰岩など)、堆積岩(泥岩、砂岩など)などが挙げられる。
【0074】
なお、上記砂類は、一般に砂土に分類され、真砂土は、一般に壌質砂土または壌土類に分類され、火山灰土は、一般に埴壌土類または埴土類に分類される。
上記例示の土砂のなかでは、取扱い性およびコスト面から、好ましくは、壌質砂土などの砂土類、壌土、砂壌土、微砂質壌土などの壌土類が挙げられ、また、具体的な材質としては、好ましくは、真砂土、けい砂が挙げられる。
【0075】
上記土砂は、礫成分を含んでいてもよい。礫成分は、粒径2mm以上の土または岩石粒子であればよく、具体的に、礫成分の粒径は、例えば、2〜8mm程度(9メッシュ〜2 1/2メッシュ程度)であり、好ましくは、2〜5mm程度(9メッシュ〜3 1/2メッシュ程度)であり、さらに好ましくは、2〜3.5mm程度(9メッシュ〜6メッシュ程度)である(なお、メッシュ単位は、タイラー表記による)。土砂中に礫成分が存在するときは、硬化性シロアリ防除組成物を硬化または固化させて得られるシロアリ防除層のシロアリ防除効果を、より一層向上させることができる。
【0076】
さらに、上記土砂は、礫成分と細粒成分とを含んでいてもよい。細粒成分は、少なくとも砂成分を含んでいればよく、この砂成分としては、粒径0.2〜2mm程度の粗砂、および粒径0.02〜0.2mm程度の細砂から選択される少なくとも1種が挙げられる。また、上記細粒成分は、さらに土成分を含んでいてもよく、この土成分としては、粘土(例えば、粒径0.002mm以下、好ましくは、0.00001〜0.002mm程度のもの)、およびシルト(例えば、粒径0.002〜0.02mm程度のもの)から選択される少なくとも1種が挙げられる。土砂中に細粒成分(特に、土成分)が含まれるときは、例えば、公園、霊園などの屋外で硬化性シロアリ防除組成物が用いられる場合であっても、硬化性シロアリ防除組成物が自然の土の風合いを有するものとなるため、周囲の景観を損なうことがない。
【0077】
礫成分と細粒成分との含有割合は、例えば、(礫成分の含有量):(細粒成分の含有量)で示される含有比率(重量比)として、99.9:0.1〜5:95程度(具体的には、例えば、99:1〜25:75程度)、好ましくは、99:1〜50:50程度、さらに好ましくは、95:5〜75:25程度であってもよい。
砂成分と土成分との割合割合は、粉粒状の硬化性シロアリ防除物を構成できる限り特に制限されず、例えば、(砂成分の含有量):(土成分の含有量)で示される含有比率(重量比)として、99:1〜10:90、好ましくは、95:5〜50:50、さらに好ましくは、90:10〜60:40程度であってもよい。
【0078】
また、上記土砂成分は、廃物の破砕物で構成されていてもよく、廃物の破砕物と、上記土砂とで構成されていてもよい。
廃物には、人工物および天然物の廃物が含まれる。人工物としては、例えば、人工の建造物または構造物(例えば、レンガ、かわら、コンクリート建材、モルタル建材、コンクリートブロック、コンクリート道路、アスファルト道路、窓ガラスなど)、日用品(植木鉢、コップ、陶器など)などが挙げられる。天然物としては、例えば、貝殻(アサリ、シジミ、ハマグリ、ホタテの貝殻など)、骨類(ウシ、ブタ、ニワトリの骨など)などが挙げられる。これらの廃物を土砂成分として用いることにより、資源の有効利用を図ることができる。
【0079】
上記廃物は、上記土砂と同様の粒径に破砕されていればよい。また、上記廃物は、単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記土砂成分は、硬化性シロアリ防除組成物を硬化または固化させて得られるシロアリ防除層の緻密さを維持するという観点から、土砂成分の総量の95重量%以上、とりわけ98重量%以上が、粒径1.5mm以下の土砂成分であることが好ましい。さらには、土砂成分の全てが、粒径1.5mm以下の土砂成分であることが好ましい。この場合、上記シロアリ防除層を有する被処理物について、シロアリによる穿孔を抑制し、シロアリ防除効果を早期に発現させることができる。
【0080】
上記硬化性シロアリ防除組成物中での上記水硬性成分の含有割合は、特に限定されないが、好ましくは、1〜99重量%であり、より好ましくは、1〜80重量%であり、さらに好ましくは、5〜30重量%である。
上記硬化性シロアリ防除組成物中での土砂成分の含有割合は、特に限定されないが、好ましくは、0.9〜99重量%であり、より好ましくは、19.9〜99重量%であり、さらに好ましくは、69.9〜95重量%である。
【0081】
また、上記硬化性シロアリ防除組成物中での土砂成分の含有割合は、上記水硬性成分100重量部に対して、好ましくは、1〜20000重量部であり、より好ましくは、10〜10000重量部であり、さらに好ましくは、25〜5000重量部である。
上記硬化性シロアリ防除組成物中での上記シロアリ防除成分の含有割合は、特に限定されないが、好ましくは、0.00001〜50重量%であり、より好ましくは、0.001〜10重量%である。
【0082】
上記硬化性シロアリ防除組成物中でのその他の添加剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、0〜20重量%であり、より好ましくは、0〜10重量%である。
上記硬化性シロアリ防除組成物を水と混練し、硬化させて得られる硬化物についての圧縮強度(JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」またはJIS A 1171:2000「ポリマーセメントモルタルの試験方法」に記載の圧縮強さ試験による測定値)は、特に限定されないが、好ましくは、1〜20N/mm2であり、より好ましくは、2〜18N/mm2であり、さらに好ましくは、2〜15N/mm2である。
【0083】
上記硬化性シロアリ防除組成物と水との混練物を硬化させて得られる硬化物の圧縮強度が、上記範囲を満たすときは、上記硬化物の硬さが、例えば、コンクリートのように、シロアリが加害できない程度の硬さではなく、一方で、例えば、通常の土壌のように、シロアリが容易に、直進しつつ貫通できる程度の柔らかさではなく、シロアリが加害するのに際して、適度な抵抗を有することになる。
【0084】
上記の硬化性シロアリ防除組成物において、防除の対象となるシロアリとしては、シロアリ(等翅)目に属する昆虫であること以外は特に限定されず、具体的には、上記ネオニコチノイド製剤による防除対象と同様のものが挙げられる。
上記硬化性シロアリ防除組成物の被処理域としては、例えば、シロアリが侵入する可能性のある部位(シロアリによる被害が予想される部位)、シロアリによる被害が実際に生じている部位など、シロアリの防除を必要とする部位が挙げられる。
【0085】
シロアリの防除を必要とする部位としては、具体的には、例えば、建物(建築物;すなわち、家屋、倉庫、門扉、塀およびこれらの付属設備など。)における基礎構造部、上部構造部および地下構造部、例えば、建物の付属設備としての地下埋設物、例えば、地盤面、例えば、シロアリの生息・発生域などが挙げられる。
建物の基礎構造部としては、例えば、基礎(独立基礎、布基礎、ベタ基礎など。)、地業(玉石地業、割りぐり石地業、砂地業など。)、基礎ばり、地中ばり、布石、土台(柱を載置するための木製の土台など。)、柱、床束、大引、根がらみ、根太、基礎断熱材などが挙げられる。
【0086】
建物の上部構造部としては、例えば、柱、床部(床上部、床下部;例えば、床板、床下断熱材など。)、壁部(外壁、内壁、間仕切壁、断熱材(外壁断熱材、内壁断熱材)など。)、天井部(天井板、天井断熱材など。)、はり(桁)、窓枠、庇、軒、屋根板、棟ばり、壁塀(壁塀表面、犬走り部、貼り付け石など。)などが挙げられる。
建物の地下構造部としては、例えば、建物の地下室部分を構成する柱、床部、外壁、外壁断熱材、内壁、内壁断熱材、間仕切壁、天井、はり(桁)などが挙げられる。
【0087】
建物(建築物)の付属設備としての地下埋設物としては、例えば、ケーブル類(電線ケーブル、光ファイバーケーブルなど。)の周囲、配管類(水道管、ガス管など。)の周囲などが挙げられる。
地盤面としては、例えば、建物外での基礎構造部近傍(建物の外周、壁塀の犬走り部下など。)の地盤表面、建物内(床下部)の地盤表面などが挙げられる。
【0088】
シロアリの生息・発生域としては、例えば、シロアリの巣、蟻道、加害部などが挙げられる。
なお、シロアリが侵入する可能性のある部位には、例えば、建物(上記の基礎構造部、上部構造部、地下構造部)や地下埋設物におけるひび割れ部分(クラックなど。)、隙間部分、ドリルなどにより穿孔された部分などが挙げられる。
【0089】
上記硬化性シロアリ防除組成物の施工量は、被処理域に合わせて適宜設定すればよい。
それゆえ、特に限定されないが、例えば、上記硬化性シロアリ防除組成物を、シロアリによる被害を防除する部位(具体的には、地盤面など。)に対し、直接に適用(具体的には、散布など。)する場合や、例えば、水、シロアリ防除成分を含有しているシロアリ防除液またはポリマーを含有している液体が散布された領域に対し、適用(散布など)する場合においては、例えば、シロアリによる被害を防除する部位または水などが散布された領域全面に対し、硬化性シロアリ防除組成物からなる層の厚みが、0.1〜5cm、好ましくは、0.1〜3cmとなるように適用(散布など)したり、例えば、硬化性シロアリ防除組成物からなる層の厚みが、0.25mm〜3cmとなり、幅が、1〜30cm、好ましくは、3〜20cmとなるように適用(散布など)する。
【0090】
例えば、上記硬化性シロアリ防除組成物と、水またはシロアリ防除成分を含有しているシロアリ防除液)との混練物を、シロアリによる被害を防除する部位(具体的には、建物の基礎構造部など、より具体的には、柱、断熱材など。)に適用(具体的には、塗工、注入など。)する場合には、例えば、シロアリによる被害を防除する部位などの表面に、上記混練物からなる層の厚みが、0.25mm〜3cmとなるように適用(塗工、注入)する。上記混練物は、例えば、基礎立ち上がり部分の全面に適用してもよい。また、例えば、上記混練物を基礎立ち上がり部分に適用する場合には、基礎部と壁面との境界からの高さ方向の長さが、1〜40cm、好ましくは、1〜20cmとなり、厚さが、0.25mm〜5cm、好ましくは、0.25mm〜3cm、より好ましくは、0.25mm〜1cmとなり、単位面積あたりの重量が、200g/m2〜60kg/m2となるように、上記混練物を適用(塗工、注入)する。
【0091】
上記硬化性シロアリ防除組成物は、上記した被処理域に対して、種々の方法で施工することができる。
本発明の防蟻性塗料組成物は、上記ネオニコチノイド製剤と、樹脂エマルションとを含有している。
上記の防蟻性塗料組成物において、防除の対象となるシロアリとしては、シロアリ(等翅)目に属する昆虫であること以外は特に限定されず、具体的には、上記ネオニコチノイド製剤による防除対象と同様のものが挙げられる。
【0092】
上記防蟻性塗料組成物において、樹脂エマルションとしては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法などの常法により、モノマーから合成された樹脂エマルションが挙げられる。また、上記樹脂エマルション中の樹脂を溶剤に溶解させて溶液としたもの、または上記樹脂を溶融させて液状としたものを、水中で強制乳化または転相乳化することでエマルションとし、界面活性剤でコロイド状態を安定化させたものであってもよい。
【0093】
また、樹脂エマルションを形成する樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これら樹脂は、単独で用いることができ、また、2種以上を混合して用いることもできる。
シリコーン樹脂としては、例えば、アルキル基および/またはアリール基を有するポリシロキサン、例えば、ポリシロキサンのシラノール基(−SiOH)と、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂などのヒドロキシル基(−OH)またはカルボキシル基(−COOH)とを反応させて得られる変性シリコーン樹脂などが挙げられる。なかでも好ましくは、ポリシロキサンのシラノール基と、アクリル系樹脂のヒドロキシル基またはカルボキシル基とを反応させて得られる、アクリル変性シリコーン樹脂が挙げられる。
【0094】
アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸アルキル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなど。)、メタクリル酸、メタクリル酸アルキル(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなど。)などのモノマーの1種以上を付加重合したポリマーが挙げられる。
【0095】
スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂(スチレンと、上記アクリル樹脂を形成するモノマーの1種以上の共重合体)、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−メタクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。
【0096】
酢酸ビニル系樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル共重合樹脂などが挙げられる。
塩化ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂などが挙げられる。
【0097】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合樹脂、エチレン−プロピレン−ジエン共重合樹脂などが挙げられる。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA系エポキシ樹脂、ノボラック系エポキシ樹脂、環状脂肪族系エポキシ樹脂、長鎖脂肪族系エポキシ樹脂などが挙げられる。
ウレタン樹脂としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどのジイソシアネートと、ブタンジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオールなどのジオールとを重付加して得られるポリウレタン、例えば、上記ポリウレタンのエマルション中で、アクリル樹脂を形成するモノマー類(1種以上)を重合させて得られるアクリル変性ポリウレタンなどが挙げられる。
【0098】
上記例示の樹脂から形成される樹脂エマルションは、単独で用いることができ、また、2種以上を混合して用いることもできる。
樹脂エマルションとしては、上記例示のなかでも、好ましくは、シリコーン樹脂エマルション、アクリル樹脂エマルション、アクリル−スチレン樹脂エマルション、シリコーン樹脂エマルションとアクリル樹脂エマルションとの混合物、アクリル変性シリコーン樹脂エマルション、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルション、ウレタン−アクリル樹脂エマルションが挙げられ、より好ましくは、アクリル変性シリコーン樹脂エマルション、アクリル樹脂エマルション、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルション、ウレタン−アクリル樹脂エマルションが挙げられる。
【0099】
上記防蟻性塗料組成物中での樹脂エマルションの含有量は、固形分として、上記防蟻性塗料組成物中の固形分100重量部に対し、好ましくは、2〜40重量部であり、より好ましくは、5〜30重量部である。
上記防蟻性塗料組成物には、上記ネオニコチノイド製剤と上記樹脂エマルション以外に、例えば、無機系フィラーを配合することができる。
【0100】
無機系フィラーとしては、例えば、シリカ、マイカ、タルク、石粉、珪藻土、クレー、火山灰、石炭灰、ベントナイト、グラファイト、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、アルミニウム末、鉄粉、二硫化モリブデン、硫酸バリウム、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄などが挙げられる。なかでも、好ましくは、炭酸カルシウム、酸化チタンが挙げられる。
【0101】
無機系フィラーの平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは、0.001〜100μmであり、より好ましくは、0.1〜50μmである。無機系フィラーの粒子径および平均粒子径は、例えば、市販されているレーザ回折/散乱式粒度分布装置を用いて、粒子径の大きさとその分布状態(粒度分布)を測定することにより、求めることができる。
無機系フィラーの平均粒子径は、シロアリ防除用塗料組成物を用いて形成される塗膜の平滑性を維持し、かつ、シロアリ防除成分をしっかりと固定させることが可能な、多孔性または高透湿性の塗膜を形成するという観点より、上記範囲に設定されていることが好適である。
【0102】
上記防蟻性塗料組成物中での無機系フィラーの含有量は、特に限定されないが、例えば、上記防蟻性塗料組成物中の固形分100重量部に対し、好ましくは、10〜98重量部であり、より好ましくは、20〜90重量部であり、さらに好ましくは、50〜90重量部であり、特に好ましくは、60〜90重量部である。
無機系フィラーの含有量は、上記防蟻性塗料組成物を用いて形成される塗膜の平滑性を維持し、かつ、シロアリ防除成分をしっかりと固定させることが可能な、多孔性または高透湿性の塗膜を形成するという観点より、上記範囲に設定されていることが好適である。
【0103】
上記防蟻性塗料組成物は、上記無機系フィラーのうち、着色に用いることができるものを適宜選択して配合することで、適宜の色に着色することができる。
上記防蟻性塗料組成物の着色に用いることができる無機系フィラーとしては、例えば、白色系に着色するための酸化チタン、黄色系に着色するための黄色酸化鉄、赤色系に着色するための赤色酸化鉄、黒色系に着色するためのカーボンブラックなどが挙げられる。
【0104】
また、上記防蟻性塗料組成物には、必要に応じて、保存剤(例えば、スライムコントロール剤、防腐剤、防かび剤、防藻剤など)、増粘剤、消泡剤、分散剤、揺変剤、保湿剤、可塑剤、老化防止剤などの添加剤を配合してもよい。
保存剤としては、例えば、ハロゲン化窒素硫黄化合物(例えば、商品名「スラオフ」シリーズ、日本エンバイロケミカルズ(株)製など)などのスライムコントロール剤、例えば、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート(慣用名:IPBC)、パラクロロフェニル−3−ヨードプロパギルホルマール(商品名:IF−1000、長瀬産業(株)製)、3−ブロモ−2,3−ジヨード−2−プロペニルエチルカーボナート(商品名:サンプラス、三共ライフテック(株)製)などの有機ヨウ素系防腐・防カビ・防藻剤、例えば、1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(慣用名:プロピコナゾール)、α−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−α(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:テブコナゾール)、α−(4−クロロフェニル)−α−(1−シクロプロピル−エチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:シプロコナゾール)などのトリアゾール系防腐・防カビ・防藻剤、例えば、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア(一般名:DCMU)などのウレア系防藻剤、例えば、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−S−チアジン(商品名:イルガロール1051、チバガイギー社製)などのチアジン系防藻剤などが挙げられる。
【0105】
増粘剤、消泡剤、分散剤、揺変剤、保湿剤、可塑剤および老化防止剤は、特に限定されず、公知のものが挙げられる。
上記防蟻性塗料組成物に配合されるその他の添加剤の含有量は、特に限定されないが、上記防蟻性塗料組成物中の固形分100重量部に対し、好ましくは、1〜10重量部であり、より好ましくは、1〜5重量部である。
【0106】
上記防蟻性塗料組成物は、樹脂エマルション中または水中に、上記ネオニコチノイド製剤を分散後、残りの原料(樹脂エマルション、無機系フィラー、各種添加剤)を攪拌混合することにより製造できる。
上記防蟻性塗料組成物に顔料を含有させる場合には、予め顔料をビーズミルなどの分散器中で樹脂エマルション中または水中に分散した後、残りの原料を攪拌混合すればよい。
【0107】
上記防蟻性塗料組成物に含有されるネオニコチノイド系化合物の量は、特に限定されないが、上記防蟻性塗料組成物中の固形分100重量部に対し、好ましくは、0.01〜5重量部であり、より好ましくは、0.02〜2.5重量部である。
上記防蟻性塗料組成物では、防除のための有効成分として、マイクロカプセル化されたネオニコチノイド製剤が用いられている。このマイクロカプセルは、上記防蟻性塗料組成物の調製時に破損されにくく、上記防蟻性塗料組成物からなる塗膜を備える最終成形物が高温にさらされても、マイクロカプセルが破損されにくく、とりわけ、上記最終成形物が高温多湿環境下にあるときにおいて、ネオニコチノイド系化合物の溶脱が生じにくい。このため、ネオニコチノイド系化合物を安定にかつ高濃度に保つことができ、シロアリに対し、優れた防除効果を発揮することができる。
【0108】
上記防蟻性塗料組成物を塗布する対象物としては、特に限定されないが、例えば、建物の基礎部に用いられるコンクリート、例えば、基礎部に立設される外壁や内壁、例えば、電線またはケーブルを被覆するための被覆部材、例えば、埋設ガス管や埋設水道管などの埋設パイプの被覆部材、例えば、電線、ケーブルなどが収納される埋設管材または埋設管の被覆部材(外装管)などが挙げられる。
【0109】
上記防蟻性塗料組成物の使用方法は、特に限定されないが、例えば、公知の塗布方法(例えば、はけ塗り、スプレーなど。)によって、例えば、上記塗布対象物の表面に塗布すればよい。
より具体的には、例えば、ネオニコチノイド系化合物が0.001〜5重量%の割合で含有された防蟻性塗料組成物を、建物基礎部のコンクリート表面や、基礎部に立設される外壁や内壁の表面に塗布する場合には、コンクリートの表面に対し、50〜500g/m2で塗布すればよい。
【0110】
また、例えば、ネオニコチノイド系化合物が0.001〜5重量%の割合で含有された防蟻性塗料組成物を、電線、ケーブル、埋設ガス管、埋設水道管、電線やケーブルなどが収納される埋設管材などにおける被覆部材の表面に塗布する場合には、これら表面に対し、10〜1000g/m2で塗布すればよい。
本発明の防蟻性樹脂成形体は、上記ネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂とを含有している。
【0111】
上記の防蟻性樹脂成形体による防除の対象となるシロアリとしては、シロアリ(等翅)目に属する昆虫であること以外は特に限定されず、具体的には、上記ネオニコチノイド製剤による防除対象と同様のものが挙げられる。
上記防蟻性樹脂成形体において、熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0112】
上記塩化ビニル系樹脂は、硬質タイプと軟質タイプ(可塑剤を配合したもの)とのいずれであってもよく、これらは、用途によって適宜、使い分けることができる。塩化ビニル系樹脂の具体例としては、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル共重合体樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂などが挙げられる。また、上記塩化ビニル共重合体樹脂における塩化ビニルと共重合するモノマーとしては、例えば、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル系モノマーなどが挙げられる。アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどが挙げられる。
【0113】
上記ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレンコポリマー、エチレン・プロピレン・ジエンターポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレンアクリル酸エチルコポリマー、塩素化ポリエチレンなどが挙げられる。また、上記ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレンなどの、種々のポリエチレンが挙げられる。
【0114】
上記ポリスチレン系樹脂の具体例としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン共重合体などが挙げられる。また、上記スチレン共重合体におけるスチレンと共重合するモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル系モノマー、アクリロニトリル、無水マレイン酸などが挙げられる。アクリル酸エステル系モノマーとしては、上記したものと同様のものが挙げられる。
【0115】
上記アクリル系樹脂の具体例としては、例えば、メタクリル樹脂、メタクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。また、上記メタクリル酸メチル共重合体におけるメタクリル酸メチルと共重合するモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル系モノマー、アクリロニトリル、スチレンなどが挙げられる。上記アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどが挙げられる。
【0116】
上記シリコーン系樹脂の具体例としては、例えば、ポリオルガノシロキサン単独重合体、ポリオルガノシロキサン共重合体などが挙げられる。
上記フッ素系樹脂の具体例としては、例えば、四フッ化エチレンの単独重合体、四フッ化エチレンとエチレン フッ化ビニリデンなどとの共重合体などが挙げられる。
上記ポリエステル系樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。
【0117】
上記ポリ酢酸ビニル系樹脂の具体例としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
上記ポリアミド系樹脂の具体例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などが挙げられる。
上記ポリカーボネート樹脂の具体例としては、例えば、グリコール成分として、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールZなどを用いたポリカーボネートが挙げられる。
【0118】
上記熱可塑性樹脂としては、好ましくは、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられ、特に好ましくは、塩化ビニル系樹脂が挙げられる。上記熱可塑性樹脂が、塩化ビニル系樹脂であるときは、電線やケーブル、これらを被覆する防蟻シート、防蟻フィルムなどに対し、難燃性を付与できるといった利点がある。
また、上記熱可塑性樹脂の好適例のうち、塩化ビニル系樹脂としては、より好ましくは、塩化ビニル樹脂や塩素化塩化ビニル樹脂が挙げられ、ポリオレフィン系樹脂としては、より好ましくは、ポリエチレン(とりわけ、高密度ポリエチレン)、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレンなどが用いられる。
【0119】
また、上記熱可塑性樹脂は、紫外線、X線、ガンマ線、α線、β線、中性子線などの高エネルギー放射線を照射することにより、または、あらかじめラジカル発生剤や架橋剤を熱可塑性樹脂中に配合させておき、これを必要により加熱することにより、防蟻性樹脂成形体の成形時または成形後において、熱可塑性樹脂を架橋してもよい。熱可塑性樹脂を架橋することで、成形後の防蟻性樹脂成形体の耐久性を向上させることができる。
【0120】
上記熱可塑性樹脂が、例えば、ポリオレフィン系樹脂である場合には、ダイナミトロン、リニアック、ヴォンテグラーフなどの電子線加速装置を用いてポリオレフィン系樹脂成形体に放射線照射を行い、後架橋してもよい。また、ジクミルパーオキシドなどの過酸化物をポリオレフィン系樹脂にあらかじめ混練しておいて、成形と同時または成形後において、加圧下に加熱して架橋してもよい。
【0121】
また、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基などの官能基を含む熱可塑性樹脂の水分散液をキャスティング成形する場合には、ポリイソシアネート化合物、ポリメチロール化合物、多価金属化合物などに架橋剤を添加して、成形と同時または成形後に加熱することにより、架橋してもよい。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トルエンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。ポリメチロール化合物としては、例えば、ヘキサメチロールメラミン、トリメチロールメラミンなどが挙げられる。多価金属化合物としては、例えば、酸化亜鉛などが挙げられる。
【0122】
防蟻性樹脂成形体は、例えば、上記ネオニコチノイド製剤と、上記熱可塑性樹脂とを配合し、成形することにより、製造することができる。
ネオニコチノイド系化合物の熱可塑性樹脂に対する配合割合は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂100重量部に対して、好ましくは、0.01〜10重量部であり、より好ましくは、0.05〜1重量部である。
【0123】
上記ネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂とを含有する熱可塑性樹脂成形体の成形方法は、特に制限されず、例えば、押出成形、プレス成形、射出成形、カレンダー成形、キャスティング成形、トランスファー成形など、種々の成形方法を用いることができる。
押出成形では、上記ネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂と、さらに必要に応じて、可塑剤、熱安定剤、充填剤、着色剤、難燃剤、滑剤、老化防止剤、耐衝撃剤、強化剤、キレーター、核剤、帯電防止剤、ラジカル発生剤などの配合剤と、をドライブレンドし、こうして得られた熱可塑性樹脂組成物を押出機に投入し、溶融混練しつつ押出せばよい。
【0124】
押出成形に供する上記熱可塑性樹脂組成物は、上記ネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂と、さらに必要に応じて、上記の配合剤とを配合し、バンバリーミキサー、ミキシングロール、混練用押出機、ニーダーなどによって加熱溶融ブレンドし、押出成形機にフィードし易いように、例えば、ペレット状やパウダー状に取り出されたものであってもよい。
【0125】
さらに、例えば、熱可塑性樹脂として軟質塩化ビニル系樹脂などが用いられる場合には、加熱溶融ブレンドの前に、あらかじめコンパウンドを均質化させるために、リボンブレンダー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサーなどにより、ドライブレンドした混合物を溶融ブレンドに供することが好ましい。
押出成形の成形条件は、上記熱可塑性樹脂組成物が十分に溶融混練され、かつ、熱可塑性樹脂が分解されない成形条件を設定する必要があるが、この成形条件は、使用する樹脂および配合剤の組成に応じて、適宜設定すればよい。例えば、塩化ビニル樹脂100重量部にフタル酸エステル系可塑剤50重量部が配合された軟質塩化ビニル樹脂では、例えば、130〜180℃の温度範囲を選択し、樹脂の熱分解を制御するために、フィード側からダイ側に向かって温度が高くなるように温度設定すればよいが、この条件に限定されるものではない。
【0126】
押出成形においては、排出側に装着するダイにより押出される成形物の形状が決定され、例えば、シートやフィルムを成形する場合には、Tダイを用いるTダイ法またはチューブダイを用いるインフレーション法を用いればよい。インフレーション法は、薄肉で直径の大きいチューブを押出し、中に空気を吹き込んで膨らませ、これを長さ方向にナイフで切り、拡げてシート、フィルムを成形する方法であって、押出機で大きな面積の成形品を製造するのに適している。
【0127】
プレス成形では、上記ネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂と、さらに必要に応じて、上記の配合剤と、を溶融ブレンドし、こうして得られた熱可塑性樹脂組成物を、予熱されたプレス機の金型内に投入し、プレス成形することにより、上記熱可塑性樹脂組成物を加圧展延すればよい。
プレス成形に供する上記熱可塑性樹脂組成物は、上記ネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂と、さらに必要に応じて、上記の配合剤とを配合し、バンバリーミキサー、ミキシングロール、混練用押出機、ニーダーなどによって加熱溶融ブレンドし、プレス機金型に投入し易いように、例えば、小塊状、ペレット状、パウダー状、シート状に取り出されたものであってもよい。
【0128】
さらに、例えば、熱可塑性樹脂として軟質塩化ビニル系樹脂などが用いられる場合には、溶融ブレンドの前に、あらかじめコンパウンドを均質化させるために、リボンブレンダー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサーなどにより、ドライブレンドした混合物を溶融ブレンドに供することが好ましい。
プレス成形の成形条件は、上記熱可塑性樹脂組成物が十分加圧展延され、かつ、熱可塑性樹脂が分解されない成形条件(温度、圧力、時間)を設定する必要があるが、この成形条件は、使用する樹脂および配合剤の組成に応じて、適宜設定すればよい。例えば、塩化ビニル樹脂100重量部にフタル酸エステル系可塑剤50重量部が配合された軟質塩化ビニル樹脂では、例えば、温度160〜170℃、圧力80〜100kg/cm2、時間3〜5分といった条件が選択されるが、この条件に限定されるものではない。
【0129】
射出成形では、上記ネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂と、さらに必要に応じて、上記の配合剤とを溶融ブレンドし、こうして得られた熱可塑性樹脂組成物を射出成形機にホッパーに投入し、溶融状態および加圧下において、金型内に射出注入すればよい。
射出成形に供される上記熱可塑性樹脂組成物は、上記ネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂と、さらに必要に応じて、上記の配合剤とを配合し、バンバリーミキサー、ミキシングロール、混練用押出機、ニーダーなどによって加熱溶融ブレンドし、ペレット状に取り出されたものであってもよい。
【0130】
さらに、例えば、熱可塑性樹脂として軟質塩化ビニル系樹脂などが用いられる場合には、溶融ブレンドの前に、あらかじめコンパウンドを均質化させるために、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサーなどにより、ドライブレンドした混合物を溶融ブレンドに供することが好ましい。
射出成形には多くの条件設定のパラメーターがあり、好適な成形条件は、使用する樹脂および配合剤の組成により変化することから、特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂組成物が、加圧下で十分に、金型内に充填され、かつ、熱可塑性樹脂が分解しない成形条件を設定する必要がある。
【0131】
カレンダー成形では、上記ネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂と、さらに必要に応じて、上記の配合剤とを配合し、バンバリーミキサー、ミキシングロール、混練用押出機、ニーダーなどによって加熱溶融ブレンドし、こうして帯状に取り出された熱可塑性樹脂組成物を、そのまま直接に、カレンダー・ロールに供することにより、フィルム状またはシート状に成形すればよい。
【0132】
例えば、熱可塑性樹脂として軟質塩化ビニル系樹脂などが用いられる場合には、加熱溶融ブレンドの前に、あらかじめコンパウンドを均質化させるために、リボンミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサーなどによりドライブレンドした混合物を、加熱溶融ブレンドに供することが好ましい。
キャスティング成形では、上記ネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂と、さらに必要に応じて、上記配合剤とを配合し、バンバリーミキサー、ミキシングロール、混練用押出機、ニーダーなどによって加熱溶融ブレンドしてなる熱可塑性樹脂組成物を、溶融状態で型へ流し込み、冷却固化させるか、または、上記ネオニコチノイド製剤と、必要に応じて、上記の配合剤を含む熱可塑性樹脂の溶液または分散液とを、成形型に流し込んで、溶剤または分散媒を揮発させて、固化させればよい。
【0133】
トランスファー成形では、上記ネオニコチノイド製剤と、熱可塑性樹脂と、さらに必要に応じて、上記配合剤とを配合し、バンバリーミキサー、ミキシングロール、混練用押出機、ニーダーなどによって加熱溶融ブレンドしてなる熱可塑性樹脂組成物を、溶融状態で型へ流し込み、冷却固化させればよい。
防蟻性樹脂成形体としては、これに限定されないが、例えば、防蟻シート、防蟻フィルム、埋設電線またはケーブルを被覆するための被覆部材(例えば、防蟻チューブ、防蟻パイプなど。)、埋設ガス管または水道管を被覆するための被覆部材(例えば、防蟻性被覆外装管など。)などが挙げられる。
【0134】
防蟻性樹脂成形体として、防蟻シート、防蟻フィルムを製造する場合には、押出成形法(Tダイ法、インフレーション法)、カレンダー成形法、プレス成形法、キャスティング成形法などが用いられ、好ましくは、押出成形法(Tダイ法、インフレーション法)、カレンダー成形が用いられる。
防蟻性樹脂成形体としての被覆部材(防蟻チューブ、防蟻パイプ)を有する電線(防蟻電線)またはケーブル(防蟻ケーブル)を製造する場合は、押出成形法などが用いられる。好ましくは、クロスヘッド型ダイを装着した押出機を用いた押出成形により、一度に上記熱可塑性樹脂組成物を電線またはケーブルに被覆するとよい。
【0135】
防蟻性樹脂成形体として、埋設電線またはケーブルを被覆するための被覆部材(防蟻チューブ、防蟻パイプ)、埋設ガス管または水道管を被覆するための被覆部材(防蟻性被覆外装管)を製造する場合は、押出成形法などが用いられる。好ましくは、二重管ダイを装着した押出機を用いた押出成形により成形するとよい。
上記成形方法において、防蟻性樹脂成形体は、まず、熱可塑性樹脂に対し、上記ネオニコチノイド製剤が高濃度で加熱溶融ブレンドされたマスターバッチペレットを成形後、このマスターバッチペレットと、熱可塑性樹脂と、必要に応じて、その他の配合剤とを配合し、上記した各種成形法により、成形できる。また、防蟻性樹脂成形体は、上記した各種成形法に供給する前段階でのドライブレンド時や溶融ブレンド時において、マスターバッチペレットをブレンドしてから成形することにより、得ることもできる。
【0136】
マスターバッチペレットは、例えば、熱可塑性樹脂100重量部に対し、例えば、ネオニコチノイド系化合物を0.1〜20重量部、好ましくは、1〜10重量部と、さらに必要に応じて、熱安定剤などの各種配合剤と、を配合し、上記した押出成形の成形条件で押出成形することにより、得ることができる。
次いで、得られたマスターバッチペレットを、熱可塑性樹脂100重量部に対し、例えば、0.1〜100重量部、好ましくは、1〜10重量部配合し、さらに、必要に応じて、熱安定剤などの各種配合剤と、を配合し、上記した各種の成形法で成形することにより、防蟻性樹脂成形体を得ることができる。
【0137】
上記防蟻性樹脂成形体では、防除のための有効成分として、マイクロカプセル化されたネオニコチノイド製剤が用いられている。このマイクロカプセルは、上記防蟻性樹脂成形体の製造時に破損されにくく、マイクロカプセルの表面組成による分散安定性効果によって、上記防蟻性樹脂成形体中に適度に分散されやすく、上記防蟻性樹脂成形体からなる最終成形物が高温にさらされても、マイクロカプセルが破損されにくく、とりわけ、上記最終成形物が高温多湿環境下にあるときにおいて、ネオニコチノイド系化合物の溶脱が生じにくい。このため、ネオニコチノイド系化合物を安定にかつ高濃度に保つことができ、シロアリに対し、優れた防除効果を発揮することができる。
【0138】
また、上記防蟻性樹脂成形体は、上記ネオニコチノイド製剤を、上記熱可塑性樹脂の成形体の表面に固着させることにより、得ることができ、さらに、上記ネオニコチノイド製剤の溶液または分散液を、樹脂成形体に塗布し、固着させることにより、得ることもできる。
上記ネオニコチノイド製剤を、熱可塑性樹脂の成形体の表面に固着させる場合には、予め、上記熱可塑性樹脂のみから、上記した成形方法により、所定形状の成形体を形成しておく。そして、例えば、上記ネオニコチノイド製剤の溶液または分散液を、スプレーすることにより、上記成形体表面に噴霧して、乾燥、固着させる。上記ネオニコチノイド製剤の溶液または分散液をスプレーするには、上記ネオニコチノイド製剤を含む溶液または分散液を調製し、これを公知の方法で上記成形体の表面に噴霧し、乾燥すればよい。
【0139】
上記溶液または分散液を調製するには、ネオニコチノイド系化合物を溶媒または分散媒に配合し、撹拌混合すればよい。上記溶媒または分散媒としては、マイクロカプセルを破損させ得る溶媒および分散媒(例えば、マイクロカプセルの隔壁形成材料を溶解する溶媒など。)以外のものであれば、適宜選択することができる。具体的には、例えば、水、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノールなどのアルコール類、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコール類などが挙げられる。
【0140】
上記ネオニコチノイド製剤の固着効果を上げるためには、予め、上記分散液中にバインダー成分を配合することができる。このバインダー成分としては、例えば、アクリル酸エステル系、ウレタン系、セルロース系、酢酸ビニル系などの各種ポリマーが挙げられる。
また、上記ネオニコチノイド製剤が、上述したように、粉状物または粒状物として調製され、かつ合成樹脂微粒子と混合し、互いに付着させた状態で用いられるものである場合には、上記ネオニコチノイド製剤と合成樹脂微粒子との混合物を、上記熱可塑性樹脂の成形体の表面に散布し、加熱により熱可塑性樹脂微粒子を溶融させることで、熱可塑性樹脂微粒子をバインダーとして、上記ネオニコチノイド製剤を熱可塑性樹脂の成形体の表面に固着させることもできる。
【0141】
上記防蟻性樹脂成形体は、種々の産業分野で使用することができ、例えば、防蟻性シート、電線またはケーブルを被覆するための被覆部材、埋設ガス管や埋設水道管などの埋設パイプの被覆部材、電線、ケーブルなどが収納される埋設管材あるいは埋設管の被覆部材(外装管)などの、種々の態様で使用することができる。
防蟻シートは、これに限定されないが、例えば、一方の面に接着剤を塗布して、防蟻テープとして使用することができる。この防蟻テープは、例えば、電線やケーブルの接続部、端子部などの被覆処理に使用することができる。
【0142】
また、電線またはケーブルを被覆するための被覆部材としては、例えば、図1〜図3に示す態様が挙げられる。
図1は、一般の金属導線1の周面に、防蟻性の絶縁体2が被覆された態様を示している。この図1に示す態様において、上記防蟻性樹脂成形体は、防蟻性の絶縁体2として形成されている。
【0143】
図2は、複数の導体4の束の周面に、この束を収納する防蟻性の絶縁体5が設けられた絶縁電線3を示している。この図2において、上記防蟻性樹脂成形体は、絶縁体5として形成されている。
導体4としては、特に限定されず、絶縁電線に用いられる公知の金属線などが用いられる。例えば、銅線、アルミニウム線などが挙げられる。
【0144】
図3は、複数の絶縁線心6(導体7が絶縁体8で被覆されたもの。)の束の周面に、防蟻性の絶縁体(シース9)が施されたケーブルを示している。この図3において、上記防蟻性樹脂成形体は、シース9として成形されている。
導体7としては、特に限定されず、例えば、導体4と同様の金属線が挙げられる。
絶縁体8としては、特に限定されず、絶縁線心の被覆に用いられる、公知の絶縁材料(上記した防蟻性樹脂成形体からなる絶縁体5であってもよい。)を用いることができる。
【0145】
本発明の散布器は、木材保存剤を散布するための散布器である。
また、本発明の散布方法は、本発明の散布器を用いて、被害部、または被害が予測される部位の隙間に、木材保存剤を散布する散布方法である。
木材保存剤としては、例えば、防腐防カビ剤、防蟻防虫剤などが挙げられる。防腐防カビ剤と、防蟻防虫剤とは、いずれか一方を単独で用いてもよく、両方を混合して用いてもよい。
【0146】
防腐防カビ剤は、防腐剤および/または防カビ剤であって、具体的には、例えば、トリアゾール系化合物、有機ヨード系化合物、スルファミド系化合物、ビス四級アンモニウム塩系化合物、四級アンモニウム塩系化合物、フタロニトリル系化合物、ジチオール系化合物、チオフェン系化合物、チオカルバメート系化合物、ニトリル系化合物、フタルイミド系化合物、ハロアルキルチオ系化合物、ピリジン系化合物、ピリチオン系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、トリアジン系化合物、グアニジン系化合物、尿素系化合物、イミダゾール系化合物、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、フェニルウレア系化合物などが挙げられる。
【0147】
防腐防カビ剤として例示の各上記化合物としては、いずれも、上記の化合物と同じものが挙げられる。上記例示の防腐防カビ剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、これら防腐防カビ剤のなかでは、有機ヨード系化合物やトリアゾール系化合物を用いることが好ましく、とりわけ、IPBC、プロピコナゾール、テブコナゾールを用いることが好ましい。
【0148】
防蟻防虫剤は、防蟻剤および/または防虫剤であること以外は、特に限定されないが、具体的には、例えば、ネオニコチノイド系化合物、ピレスロイド系化合物、有機塩素系化合物、有機リン系化合物、カーバメート系化合物、ピロール系化合物、フェニルピラゾ−ル系化合物、オキサジアジン系化合物、セミカルバゾン系化合物、植物またはその処理物、エクジステロイドなどが挙げられる。
【0149】
ネオニコチノイド系化合物としては、上記の化合物と同じものが挙げられる。
ピレスロイド系化合物としては、例えば、アレスリン、ペルメトリン、トラロメトリン、ビフェントリン、アクリナトリン、アルファシペルメトリン、シフルトリン、シフェノトリン、プラレトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン、フェンバレレートなどが挙げられる。
【0150】
有機塩素系化合物としては、例えば、ケルセンなどが挙げられる。有機リン系化合物としては、例えば、ホキシム、ピリダフェンチオン、フェニトロチオン、テトラクロルビンホス、ジクロフェンチオン、プロペタンホスなどが挙げられる。
カーバメート系化合物としては、例えば、カルバリル、フェノブカルブ、プロポクスルなどが挙げられる。
【0151】
ピロール系化合物としては、例えば、クロルフェナピルなどが挙げられる。
フェニルピラゾール系化合物としては、例えば、フィプロニルなどが挙げられる。
オキサジアジン系化合物としては、例えば、インドキサカルブなどが挙げられる。
セミカルバゾン系化合物としては、例えば、α−(α,α,α−トリフルオロ−m−トルオイル)−p−トリニトリル4−(p−トリフルオロメトキシフェニル)セミカルバゾンなどが挙げられる。
【0152】
植物またはその処理物としては、例えば、下記の植物や、それらの植物から採取された成分(処理物)が挙げられる。
ヒバ:ヒバ、その処理物(抽出物、滲出物)、例えば、市販のヒバ油、ヒバ中性油、ヒバ酸性油、およびヒバ樹脂油など。
パフィア属(Pfaffia)に属する植物:パフィア・イレジノイデス(Pfaffia iresinoides、別名:ブラジルニンジン)など、およびこれらの処理物、例えば、パフィアエキスなど。
【0153】
カワ種に属する植物:コショウ属コショウ科のカワ種に属する、カワ(Kava; Piper methysticum、または野生種Piper wichmannii)など、およびこれらの処理物、例えば、カワ抽出エキス、カワの成分であるカワイン類(例えば、5,6−ジヒドロ−4−メトキシ−6−スチリル−2H−ピラン−2−オンなどのカワラクトン)およびその誘導体など。なお、カワ種に属する植物、それらの処理物、およびそれらの誘導体についての詳細は、特開2002−307406号公報、特開2003−267802号公報、および特開2003−252708号公報に開示されている。
【0154】
ヒカゲノカズラ属(Licopodium)に属する植物:リポコジウム・クラバツム(Licopodium clavatum、和名:ヒカゲノカズラ)、リポコジウム・セラツム(Licopodium serratum、和名:トウゲシバ)、リポコジウム・セルヌウム(Licopodium cernuum、和名:ミズスギ)、リポコジウム・オブスクルム(Licopodium obscurum、和名:マンネンスギ)、リポコジウム・コンプラナツム(Licopodium complanatum、和名:アスヒカズラ)、リポコジウム・クリプトメリヌム(Licopodium cryptomerinum、和名:スギラン)など、およびこれらの処理物、例えば、ヒカゲノカズラ抽出エキス(さらに具体的には、例えば、ヒューペリジンAなどのリポコジウムアルカロイドなどを含む。)、石松子(ヒカゲノカズラの胞子)など。
【0155】
ウィタニア属(Withania)に属する植物:ウィタニア・ソムニフェラ(Withania somnifera、和名:インドニンジン、別名:アシュワガンダ)、ウィタニア・コアグランス(Withania coagulans)など、およびこれらの処理物、例えば、インドニンジン抽出エキスなど。
センニチコウ属(Gomphrena)に属する植物:キバナセンニチコウ(ゴムフレナ・ハーゲアナ(Gomphrena haageana))、センニチコウ(ゴムフレナ・グロボサ(Gomphrena globosa))、センニチノゲイトウ(ゴムフレナ・セロシオイデス(Gomphrena celosioides))など、およびこれらの処理物、例えば、キバナセンニチコウ抽出エキスなど。
【0156】
イノコズチ属(Achyranthes)に属する植物:ヒナタイノコズチ(アキランテス・ファウリエイ(Achyranthes fauriei))、ケイノコズチ(アキランテス・アスペラ(Achyranthes aspera))、ヤナギイノコズチ(アキランテス・ロンギフォリア(Achyranthes longifolia))、中国産のアキランテス・ビデンタータ(Achyranthes bidentata)など、およびこれらの処理物、例えば、ヒナタイノコズチ抽出エキス、アキランテス・ビデンタータ抽出エキスなど。
【0157】
ココヤシ属(Cocos)に属する植物:ココナッツ(ココス・ヌシフェラ(Cocos nucifera))など、およびこれらの処理物、例えば、ココナッツオイル、ヤシ油脂肪酸など。
アブラヤシ属(Elaeis)に属する植物:アブラヤシ(Elaeis)など、およびこれらの処理物、例えば、パーム油、ヤシ油脂肪酸など。
サウスレア属(Saussurea)に属する植物:モッコウなど、およびこれらの処理物、例えば、モッコウ抽出エキスなど。
【0158】
マグノリア属(Magnolia)に属する植物:コウボクなど、およびこれらの処理物、例えば、コウボク抽出エキスなど。
アトラクティロデス属(Atractylodes)に属する植物:ソウジュツなど、およびこれらの処理物、例えば、ソウジュツ抽出エキスなど。
レデボウリエア属(Ledebouriella)に属する植物:ボウフウなど、およびこれらの処理物、例えば、ボウフウ抽出エキスなど。
【0159】
パエオニア属(Paeonia)に属する植物:ボタンピなど、およびこれらの処理物、例えば、ボタンピ抽出エキスなど。
プソラレア属(Psoralea)に属する植物:ハコシなど、およびこれらの処理物、例えば、ハコシ抽出エキスなど。
ミリスチカ属(Myristica)に属する植物:ニクズクなど、およびこれらの処理物、例えば、ニクズク抽出エキスなど。
【0160】
クルクマ属(Curcuma)に属する植物:ウコンなど、およびこれらの処理物、例えば、ウコン抽出エキスなど。
フムルス属(Humulus)に属する植物:ホップなど、およびこれらの処理物、例えば、ホップ抽出エキスなど。
ソホラ属(Sophora)に属する植物:クジンなど、およびこれらの処理物、例えば、クジン抽出エキスなど。
【0161】
マキ属(Podocarpus)に属する植物:ポドカルプス・ナカイイ(Podocarpus nakaii、和名:トガリバマキ)、ポドカルプス・マクロフィルス(Podocarpus macrophyllus、和名:イヌマキ)など、およびこれらの処理物、例えば、トガリバマキ抽出エキス、イヌマキ抽出エキスなど。
エクジステロイドとしては、例えば、ポナステロンA、マキステロンA、イノコステロンなどが挙げられる。なお、ポナステロンAは、例えば、トガリバマキなどから抽出することができ、マキステロンAは、例えば、イヌマキなどから抽出することができ、イノコステロンは、例えば、ヒナタイノコズチやアキランテス・ビデンタータなどから抽出することができる。
【0162】
これら防蟻防虫剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、これら防蟻防虫剤のなかでは、ネオニコチノイド系化合物やピレスロイド系化合物を用いることが好ましく、ネオニコチノイド系化合物を用いることがさらに好ましく、とりわけ、クロチアニジンを用いることが好ましい。
上記散布方法において、被害部としては、例えば、シロアリなどの害虫により木材が被害を受けている箇所(具体的には、例えば、シロアリの食害(加害)部、シロアリの蟻道など)をいう。また、被害が予測される部位の隙間としては、例えば、シロアリなどの害虫により木材が被害を受けるおそれがある部位が挙げられ、具体的には、シロアリを防除する部位などが挙げられる。
【0163】
シロアリを防除する部位としては、これに限定されないが、例えば、土壌(地盤面など)、例えば、木材、例えば、建物(建築物;すなわち、家屋、倉庫、門扉、塀およびこれらの付属設備など。)における基礎構造部、上部構造部および地下構造部、例えば、建物の付属設備としての地下埋設物、例えば、シロアリの生息・発生域などが挙げられる。
図4は、本発明の散布器の一実施形態を示す外観図であり、図5は、図4に示す散布器10の使用状態(上記散布方法の一例)を示す模式図であり、図6は、図4に示す散布器10の使用状態における一部拡大断面図である。
【0164】
図7は、本発明の散布器の他の実施形態を示す外観図であり、図8は、図7に示す散布器21の使用状態(上記散布方法の他の例)を示す模式図である。
図9は、本発明の散布器のさらに他の実施形態を示す外観図であり、図10は、図9に示す散布器27の使用方法(上記散布方法のさらに他の例)を示す模式図である。
また、図11は、本発明の散布器のさらに他の実施形態を示す外観図である。
【0165】
以下、図4〜11を参照しつつ、本発明の散布器の一実施形態と、その一実施形態に係る散布器を用いた散布方法(本発明の散布方法)について説明する。なお、異なる実施形態において共通する部分については、同じ符号を付し、その説明を省略する場合がある。
図4および図5において、この散布器10は、供給部としてのポンプディスペンサ(ポンプボトル)11と、吐出部としてのノズル12と、可撓性の供給管としての透明チューブ13と、接続管14と、を備えている。
【0166】
ポンプディスペンサ11は、木材保存剤を収容するためのボトル15と、ボトル15内の木材保存剤を吸い上げてノズル12へ圧力により供給するポンプ16と、を備えている。
ボトル15は、木材保存剤によって変質を生じることのない材質から形成される。このような材質としては、例えば、各種プラスチック類、例えば、各種ガラス類、例えば、ステンレス、鉄、アルミニウム、真鍮などの金属類、などが挙げられる。
【0167】
ボトル15に収容される木材保存剤の製剤形態としては、液剤が挙げられる。この液剤は、例えば、上記木材保存剤を、水および/または有機溶媒中に溶解させ、または液滴として分散させた製剤形態であって、具体的には、例えば、上記木材保存剤を水(またはコソルベントを含む水)に溶解した液体製剤、例えば、上記木材保存剤を有機溶媒に溶解した油剤、例えば、上記木材保存剤と、界面活性剤と、水とを含む乳剤、などが挙げられる。
【0168】
これら製剤形態に調製するための溶剤、界面活性剤などは、特に限定されず、公知のものから適宜選択することができる。また、コソルベントとしては、公知の各種有機溶媒が挙げられる。
また、木材保存剤は、マイクロカプセル化され、かつ、水および/または有機溶媒中に分散された懸濁剤であってもよい。
【0169】
また、木材保存剤は、ノズル12からムース状に吐出させるために、上記液剤や上記懸濁剤に、さらに発泡剤を配合したムース剤であってもよい。
発泡剤としては、例えば、各種の界面活性剤など、発泡剤として公知のものから適宜選択することができる。
木材保存剤をムース剤として調製することにより、例えば、シロアリなどによる被害部や、被害が予想される部位の隙間に対し、木材保存剤が充填されやすくなり、液だれを抑制して、木材保存剤による薬効の持続性を得ることができる。
【0170】
ポンプ16は、ポンプ16を作動させて木材保存剤を吐出させるためのポンプヘッド17を備えている。このポンプヘッド17を押圧することで、ポンプディスペンサ11から木材保存剤を供給することができる。このようなポンプ16には、ポンプディスペンサ用の各種のポンプが用いられる。
ノズル12は、後述する接続管14の吐出方向下流端に接続されている。
【0171】
このノズル12は、先細形状に形成されており、具体的に、略円錐台形状に形成されている。すなわち、ノズル12は、吐出方向に向かって縮径されるテーパ形状に形成されている。
図6を参照して、ノズル12は、吐出方向下流端の吐出口18において、その外径t1が2mm以下、好ましくは、1.8mm以下、さらに好ましくは、0.5〜1.5mmである。また、ノズル12の内径は、特に限定されないが、好ましくは、0.1〜1.5mmである。
【0172】
ノズル12のテーパ角度θは、特に限定されないが、シロアリによる被害部や被害が予想される部位の隙間などへの挿入のしやすさや、上記被害部および隙間などとの密着性の観点より、好ましくは、1〜170°であり、さらに好ましくは、3〜90°であり、特に好ましくは、3〜30°である。
ノズル12の長さLは、特に限定されないが、シロアリによる被害部や被害が予想される部位の隙間などへ十分に挿入させる観点より、外径が2mm以下である部分の長さが、好ましくは、1mm以上であり、さらに好ましくは、2mm以上、通常、10mm以下である。
【0173】
木生息性シロアリ(乾材シロアリ;例えば、アメリカカンザイシロアリ、ダイコクシロアリなど。)や土壌性シロアリ(地下シロアリ;例えば、イエシロアリ、ヤマトシロアリなど。)の各種シロアリによる被害部(シロアリによる穿孔だけでなく、土壌性シロアリの蟻道などを含む。)は、大小さまざまであるが、1頭のシロアリが加害しながら進む孔道は、その内径が、通常、2mm程度である。特に、アメリカカンザイシロアリやダイコクシロアリによる被害部では、表面(開口端)が糞や木粉などで塞がれた直径2mm程度の加害孔が観察される。これに対し、ノズル12は、上述の構造を有することから、上記被害部に対し、ノズル12を直接に挿入することができる。さらに、ノズル12のテーパを利用して、ノズル12を上記被害部や、シロアリによる被害が予測される部位の狭小な隙間(例えば、コンクリートや木材のひび割れ部分など。)などに挿入しつつ、上記被害部や隙間の開口端をノズル12自体で塞ぐことができる。なお、ノズル12からの木材保存剤の散布は、被害部が、直径が2mmを上回るような加害孔である場合においても可能である。
【0174】
また、ノズル12は、上述の構造を有することから、たとえ、木材保存剤を散布する対象物に対し、ドリルなどで穿孔を設ける必要がある場合であっても、その穿孔の径を、2mm以下に設定することができる。すなわち、木材保存剤を散布する対象物に対して大きな穴を設ける必要がなく、穿孔を外観上目立たないものとすることができる。
再び図4を参照して、透明チューブ13は、その吐出方向上流端が、ポンプヘッド17の先端に接続されており、その下流端が、接続管14に接続されている。
【0175】
透明チューブ13としては、可撓性および透明性を有する各種のプラスチック製チューブが挙げられる。
透明チューブ13の長さは、散布器10の用途、使用状況などに応じて適宜設定され、特に限定されないが、好ましくは、1〜60cmであり、さらに好ましくは、10〜50cmである。
【0176】
この散布器10では、透明チューブ13が用いられていることから、木材保存剤がポンプディスペンサ11からノズル12へと供給されている状態を容易に認識できる。また、透明チューブ13を用いることで、ポンプディスペンサ11から、被害部または被害が予測される部位の隙間へと、木材保存剤が実際に供給されているかどうかを、目視で確認しやすくなる。さらに、例えば、被害部が、アメリカカンザイシロアリなどに加害孔(木材の内部に延びる加害孔)である場合には、ポンプディスペンサ11から供給された木材保存剤が透明チューブ13内を流れているか、あるいは透明チューブ13内で詰まっているかを目視で確認することにより、加害孔がどの程度連続しているかを容易に判断することができる。
【0177】
また、上記散布器10では、ポンプディスペンサ11とノズル12との間に透明チューブ13を備えていることから、ポンプディスペンサ11とノズル12とが離間された状態で、散布器10を使用することができる。それゆえ、図5を参照して、木材保存剤の散布に際し、例えば、シロアリによる被害を受けた木材19の穿孔20内にノズル12を挿入した上で、このノズル12から離れた位置より、ポンプディスペンサ11を操作することができる。
【0178】
接続管14は、その吐出方向上流端が、透明チューブ13に差し込まれており、その下流端が、ノズル12に接続されている。
接続管14としては、硬質のプラスチックや、ガラスからなる筒体が挙げられる。これに限定されないが、接続管14には、例えば、スポイト、ピペッタの筒部などを利用することができる。
【0179】
この接続管14を把持することで、ノズル12を穿孔20(図5参照)へ挿入するときの操作性が良好となる。
図5を参照して、散布器10は、例えば、上述したように、ノズル12を、シロアリによる被害を受けた木材19の穿孔20に挿入し、接続管14を一方の手で固定し、穿孔20から離れた位置に配置されたポンプディスペンサ11のポンプヘッド17を他方の手で押圧することにより使用される。また、これにより、ポンプディスペンサ11のボトル15内に収容された木材保存剤が、透明チューブ13および接続管14を介して、ノズル12から散布され、穿孔20の内部へと供給される。
【0180】
散布器10によれば、ノズル12から散布される木材保存剤を、シロアリによる被害部や、被害が予想される部位の隙間における内部に、確実に供給することができる。しかも、上記被害部や隙間の開口端からの木材保存剤の逆流を抑制することができる。
また、散布器10によれば、ノズル12から散布される木材保存剤の量を、ポンプヘッド17の押圧により適宜調節できる。
【0181】
なお、図4に示す実施形態では、ノズル12について、その全体が、吐出方向に向かって縮径されるテーパ形状に形成されているものを例に挙げて説明したが、ノズル12は、その吐出口18における外径t1、テーパ角度θ、および外径が2mm以下である部分の長さLが、いずれも上記範囲を満たすこと以外は特に限定されない。それゆえ、ノズルは、例えば、先細形状に形成された部分を吐出方向下流端のみに有しているものであってもよい。
【0182】
また、吐出部としてのノズル12は、例えば、シロアリによる被害部(例えば、穿孔部分など)の大きさ、シロアリによる被害が予想される部位の隙間の大きさなどに合わせて、吐出方向途中を適宜切断して使用することができる。
図7および図8において、この散布器21は、供給部としてのエアゾール缶22と、吐出部としてのノズル12と、可撓性の供給管としての透明チューブ13と、を備えている。
【0183】
エアゾール缶22は、噴出口24を有する耐圧性の容器であること以外は、特に限定されず、各種のエアゾール容器が挙げられる。
エアゾール缶22の具体例としては、特に限定されるものではなく、例えば、木材保存剤と、噴射剤とを収容するための耐圧容器23と、木材保存剤の噴出口24と、を備える、一般的な構造のエアゾール容器が挙げられる。また、エアゾール缶は、使用時に噴出口24を上向き(正立状態)にするものと、下向き(倒立状態)にするものとのいずれであってもよく、いずれの状態でも使用可能なものであってもよい。
【0184】
耐圧容器23に収容される木材保存剤の製剤形態としては、図4に示すボトル15に収容されるものと同じものが挙げられる。例えば、木材保存剤は、ノズル12からムース状に吐出させるために、上記液剤に、さらに発泡剤が配合されたムース剤であってもよい。
耐圧容器23に収容される噴射剤としては、例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、これらの混合物である液化石油ガス(LPG)、例えば、メタンを主成分とする液化天然ガス(LNG)、例えば、イソペンタン、ジメチルエーテルなどの液化ガス、例えば、フロン11(登録商標)、フロン12(登録商標)、フロン21(登録商標)、フロン113(登録商標)、フロン114(登録商標)などのフッ化炭化水素類、例えば、窒素ガス、炭酸ガスなどが挙げられる。なかでも、特に好ましくは、LPGが挙げられる。
【0185】
散布器21において、ノズル12は、透明チューブ13の吐出方向下流端に接続されている。
ノズル12には、図4〜図6に示す実施形態(散布器10)と同様のものが用いられる。なお、ノズル12の吐出方向上流端の形状、内径などは、透明チューブ13の径などに応じて、適宜設定される。
【0186】
透明チューブ13は、その吐出方向上流端が、エアゾール缶22の噴出口24の先端に接続されており、その下流端が、ノズル12に接続されている。
透明チューブ13には、図4〜図6に示す実施形態(散布器10)と同様のものが用いられる。なお、透明チューブ13の径は特に限定されず、例えば、供給部としてのエアゾール缶22の噴出口24の形状、径などに応じて、適宜設定される。
【0187】
透明チューブ13の長さは、散布器21の用途、使用状況などに応じて適宜設定され、特に限定されないが、好ましくは、1〜60cmであり、さらに好ましくは、10〜50cmである。
この散布器21において、透明チューブ13が用いられていることに伴う作用効果は、図4〜図6に示す実施形態(散布器10)の場合と同様であって、例えば、木材保存剤がエアゾール缶22からノズル12へと供給されている状態を容易に認識できることが挙げられる。
【0188】
また、透明チューブ13を備えていることから、エアゾール缶22とノズル12とが離間された状態で、散布器21を使用することができる。それゆえ、図8を参照して、木材保存剤の散布に際し、例えば、シロアリによる被害を受けた木材25の穿孔26内にノズル12を挿入した上で、このノズル12から離れた位置より、エアゾール缶22を操作することができる。
【0189】
散布器21は、例えば、上述したように、ノズル12を、シロアリにより加害された木材25の穿孔26に挿入し、ノズル12を一方の手で固定し、穿孔26から離れた位置に配置された噴出口24を他方の手で押圧することにより使用される。また、これにより、耐圧容器23内に収容された木材保存剤が、透明チューブ13を介して、ノズル12から散布され、穿孔26の内部へと供給される。
【0190】
散布器21によれば、ノズル12から散布される木材保存剤を、シロアリによる被害部や、被害が予想される部位の隙間における内部に、確実に供給することができる。しかも、上記被害部や隙間の開口端からの木材保存剤の逆流を抑制することができる。
なお、図7に示す実施形態では、ノズル12と、透明チューブ13とが直接に接続された例を挙げて説明したが、ノズル12と、透明チューブ13との間には、上述の接続管14を介在させてもよい(図4参照)。
【0191】
図9および図10において、この散布器27は、供給器としての手動ポンプ式スプレー28と、吐出部としてのノズル12と、可撓性の供給管としての透明チューブ13と、を備えている。
手動ポンプ式スプレー28は、さらに、木材保存剤を収容するためのボトル29と、ボトル29内の木材保存剤30を吸い上げてノズル12へ圧力により供給するポンプ部31と、木材保存剤30の噴出口32と、ポンプ部31の内部に挿入された状態で往復運動することにより、ボトル29内の圧力を上昇させるためのピストン33と、を備えている。
【0192】
ポンプ部31は、さらに、ボトル29内に収容されている木材保存剤を吸い上げるための吸上げチューブ34と、噴出口32に連なって、噴出口32と透明チューブ13とを接続するための接続管35と、を備えている。
吸上げチューブ34は、その吸上げ方向上流側の開口端36が、ボトル29底部側に達しており、この開口端36は、散布器27の使用時において、ボトル29内に収容された木材保存剤30に浸されている。また、この吸上げチューブ34は、散布器27の使用時において、ボトル29内の木材保存剤30の液面よりも鉛直方向上部側となる位置(すなわち、木材保存剤30に浸されない位置)に、ボトル29内のエアーを吸引するためのエアー吸引口37を備えている。
【0193】
この散布器27では、ポンプ部31内にピストン33を挿入し、往復運動させることにより、ボトル29内にエアーが送り込まれ、加圧される。その後、噴出口32を押圧することにより、接続管35および透明チューブ13を介して、ノズル12先端から木材保存剤30を吐出することができる。その際、木材保存剤は、吸上げチューブ34のエアー吸引口37から吸引されたエアーと混合され、ムース状で吐出される。
【0194】
また、この散布器27によれば、木材保存剤30を噴射するのに必要なボトル29内の加圧状態を、ピストン33を用いて手動により達成することができる。それゆえ、予めボトル29内に、エアゾール缶に用いられるような加圧用のガスを封入する必要がない。また、ボトル29内を加圧状態とするためのピストン33による操作は、散布器27を使用する都度、実行すればよく、しかも、ピストン33の往復運動といった極めて簡易な操作により達成できる。なお、ボトル29が、例えば、2リットル以上のような大容量のボトルである場合には、チューブを介してエアーコンプレッサとボトル29とを接続するなどして、ボトル29内を加圧状態とするための操作を連続的に行ってもよい。
【0195】
この散布器27を形成する手動ポンプ式スプレー28としては、例えば、市販のいわゆるオイルスプレー(レック株式会社製の「DELI オイルスプレーT−269」など。)のように、プラスチックまたはガラス製のボトルに収容された液体を霧状にスプレーするための、ノンガスタイプのスプレー容器を用いることができる。ボトルに収容された液体をムース状に吐出するためには、上記のとおり、吸上げチューブ34にエアー吸引口37を設ければよい。
【0196】
ボトル29に収容される木材保存剤の製剤形態としては、例えば、液剤や、マイクロカプセルの懸濁剤に、さらに発泡剤を配合して得られる、いわゆるムース剤が挙げられる。
液剤は、上記の場合と同様に、例えば、上記木材保存剤を、水および/または有機溶媒中に溶解させ、または液滴として分散させた製剤形態であって、具体的には、例えば、上記木材保存剤を水(またはコソルベントを含む水)に溶解した液体製剤、例えば、上記木材保存剤を有機溶媒に溶解した油剤、例えば、上記木材保存剤と、界面活性剤と、水とを含む乳剤、などが挙げられる。
【0197】
マイクロカプセルの懸濁剤としては、上記木材保存剤をマイクロカプセル化し、かつ、水および/または有機溶媒中に分散(懸濁)したものが挙げられる。
発泡剤としては、例えば、各種の界面活性剤など、発泡剤として公知のものから適宜選択することができる。
散布器27において、ノズル12は、透明チューブ13の吐出方向下流端に接続されている。
【0198】
ノズル12には、図4〜図6に示す実施形態(散布器10)と同様のものが用いられる。なお、ノズル12の吐出方向上流端の形状、内径などは、透明チューブ13の径などに応じて、適宜設定される。
透明チューブ13は、その吐出方向上流端が、手動ポンプ式スプレー28の噴出口32の先端に接続されており、その下流端が、ノズル12に接続されている。
【0199】
透明チューブ13には、図4〜図6に示す実施形態(散布器10)と同様のものが用いられる。なお、透明チューブ13の径は特に限定されず、例えば、供給部としての手動ポンプ式スプレー28の噴出口32の形状、径などに応じて、適宜設定される。
透明チューブ13の長さは、散布器27の用途、使用状況などに応じて適宜設定され、特に限定されないが、好ましくは、1〜60cmであり、さらに好ましくは、10〜50cmである。
【0200】
この散布器27において、透明チューブ13が用いられていることに伴う作用効果は、図4〜図6に示す実施形態(散布器10)の場合と同様であって、例えば、木材保存剤が手動ポンプ式スプレー28からノズル12へと供給されている状態を容易に認識できることが挙げられる。
また、透明チューブ13を備えていることから、手動ポンプ式スプレー28とノズル12とが離間された状態で、散布器27を使用することができる。具体的には、散布器27は、例えば、図8に示す散布器のエアゾール缶22を、散布器27の手動ポンプ式スプレー28と取り替えることで、図8に示す場合と同様に、シロアリによる被害を受けた木材25の穿孔26内にノズル12を挿入した上で、このノズル12から離れた位置より、手動ポンプ式スプレー28を操作することができる。
【0201】
散布器27は、例えば、上述したように、ノズル12を、シロアリにより加害された木材25の穿孔26に挿入した上で(図8参照)、ノズル12を一方の手で固定し、穿孔26から離れた位置に配置された噴出口32を他方の手で押圧することにより使用される。また、これにより、ボトル29内に収容された木材保存剤が、透明チューブ13を介して、ノズル12からムース状で散布され、穿孔26の内部へと供給される。
【0202】
散布器27によれば、ノズル12から散布される木材保存剤を、シロアリによる被害部や、被害が予想される部位の隙間における内部に、確実に供給することができる。しかも、上記被害部や隙間の開口端からの木材保存剤の逆流を抑制することができる。
なお、図9および図10に示す実施形態では、ノズル12と、透明チューブ13とが直接に接続された例を挙げて説明したが、ノズル12と、透明チューブ13との間には、上述の接続管14を介在させてもよい(図4参照)。
【0203】
図11において、この散布器38は、供給部としてのボトル39と、吐出部としてのノズル12と、可撓性の供給管としての透明チューブ13と、を備えている。
ボトル39は、木材保存剤を収容するためのボトル本体40と、キャップ41とを備えており、このキャップ41には、透明チューブ13を接続し、木材保存剤を供給するための貫通孔が設けられている。
【0204】
ボトル本体40、およびキャップ41には、これに限定されないが、例えば、市販のプラスチックボトルとそのキャップを用いることができる。
ノズル12は、透明チューブ13の吐出方向下流端に接続されている。
ノズル12には、図4〜6に示す実施形態(散布器10)と同様のものが用いられる。なお、ノズル12の吐出方向上流端の形状、内径などは、透明チューブ13の径などに応じて、適宜設定される。
【0205】
透明チューブ13は、その吐出方向上流端が、キャップ41の貫通孔に挿入されており、その下流端が、ノズル12に接続されている。
透明チューブ13には、図4〜6に示す実施形態(散布器10)と同様のものが用いられる。なお、透明チューブ13の径は特に限定されず、例えば、透明チューブ13が接続される部材の形状、径などに応じて、適宜設定される。
【0206】
透明チューブ13の長さは、散布器38の用途、使用状況などに応じて適宜設定され、特に限定されないが、好ましくは、1〜60cmであり、さらに好ましくは、1〜50cmである。
また、透明チューブ13は、その途中において、吐出方向の上流側から順に、点滴筒42と、クランプ43とを備えていてもよい。
【0207】
点滴筒42は、任意の部材である。この点滴筒42としては、特に限定されず、各種の点滴筒を用いることができる。
クランプ43としては、特に限定されず、各種のクランプを用いることができる。
透明チューブ13の途中に、クランプ43を設けることで、ボトル39から透明チューブ13を介してノズル12へ供給される木材保存剤の供給量を、適宜調節できる。また、透明チューブ13の途中に、点滴筒42を設けることで、ボトル39からノズル12への木材保存剤の供給の有無、供給速度などを、視覚により容易に確認できる。
【0208】
散布器38は、ボトル39を、そのキャップ41が鉛直方向下向きになるように固定し、ノズル12を、シロアリによる被害部や、被害が予想される部位の隙間に挿入した上で、クランプ43を適宜調節することにより使用される。また、これにより、ボトル本体40内に収容された木材保存剤が、自重により、透明チューブを介してノズル12から散布される。
【0209】
散布器38によれば、ノズル12から散布される木材保存剤を、シロアリによる被害部や、被害が予想される部位の隙間における内部に、確実に供給することができる。しかも、上記被害部や隙間の開口端からの木材保存剤の逆流を抑制することができる。
なお、図11に示す実施形態では、ノズル12と、透明チューブ13とが直接に接続され例を挙げて説明したが、ノズル12と、透明チューブ13との間には、上述の接続管14を介在させてもよい(図4参照)。
【0210】
本発明の処理方法は、特定の部位におけるシロアリ防除剤の好適な処理方法(例えば、散布方法、注入方法、塗布方法など。)であって、具体的には、
(i) 建物の壁、床または天井に配置される断熱材に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理する処理方法、
(ii) 建物の床下部に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理する処理方法、
(iii) 建物の天井部に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理する処理方法、または、
(iv) 建物の基礎部に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理する処理方法、
である。
【0211】
上記処理方法において、シロアリ防除剤としては、例えば、ネオニコチノイド系化合物、ピレスロイド系化合物、有機塩素系化合物、有機リン系化合物、カーバメート系化合物、ピロール系化合物、フェニルピラゾ−ル系化合物、オキサジアジン系化合物、セミカルバゾン系化合物、植物またはその処理物、エクジステロイドなどの、防蟻防虫剤が挙げられる。
【0212】
これら防蟻防虫剤としては、上記したものと同じものが挙げられる。
また、シロアリ防除剤は、上記本発明のネオニコチノイド製剤であってもよい。
また、このシロアリ防除剤の製剤形態としては、液剤や、マイクロカプセルの懸濁剤が挙げられる。
液剤は、例えば、上記シロアリ防除剤を、水および/または有機溶媒中に溶解させ、または液滴として分散させた製剤形態であって、具体的には、例えば、上記シロアリ防除剤を水(またはコソルベントを含む水)に溶解した液体製剤、例えば、上記シロアリ防除剤を有機溶媒に溶解した油剤、例えば、上記シロアリ防除剤と、界面活性剤と、水とを含む乳剤、などが挙げられる。
【0213】
これら製剤形態に調製するための溶剤、界面活性剤、コソルベントなどは、特に限定されず、公知のものから適宜選択することができる。
マイクロカプセルの懸濁剤としては、上記シロアリ防除剤をマイクロカプセル化し、得られたマイクロカプセルを、水および/または有機溶媒中に分散(懸濁)したものが挙げられる。
【0214】
上記シロアリ防除剤をムース状で散布するために、上記の処理方法においては、例えば、本発明の散布器を用いることができる。具体的に、上記の処理方法においては、シロアリ防除剤を処理するための散布器として、例えば、図4に示す散布器10、図7に示す散布器21、または、図9に示す散布器27を用いることができる。
また、これら散布器10、21、27を用いる場合には、散布器10のボトル15、散布器21のエアゾール缶22(供給部)、ボトル29に収容される木材保存剤を上記のシロアリ防除剤とし、さらに、このシロアリ防除剤(液剤、マイクロカプセルの懸濁剤)をムース状で吐出させるために、液剤やマイクロカプセル剤に発泡剤(水を含んでいてもよい。)を配合して得られるムース剤として調製する。
【0215】
発泡剤としては、例えば、各種の界面活性剤など、発泡剤として公知のものから適宜選択することができる。
ムース状で散布されるシロアリ防除剤について、その発泡倍率については、特に限定されないが、好ましくは、200倍以下、さらに好ましくは、10〜100倍、特に好ましくは、20〜80倍、とりわけ、20〜70倍である。シロアリ防除剤からなるムースの発泡倍率が、上記範囲を上回ると、ムースの破泡が生じやすくなるため、シロアリ防除剤の散布効果が損なわれるおそれがある。特に、破泡しやすくなることで、液剤としての性質を示すようになるため、液ダレによる居住空間の汚染を抑制しつつ、シロアリ防除剤を効率よく散布するという本発明の作用効果が損なわれる。一方、発泡倍率が上記範囲を下回ると、シロアリ防除剤の使用量が多くなり、コストが高くなるという不具合が生じる。
【0216】
上記の散布方法において、防除の対象となるシロアリとしては、シロアリ(等翅)目に属する昆虫であること以外は特に限定されず、具体的には、上記ネオニコチノイド製剤による防除対象と同様のものが挙げられる。
上記の第2の散布方法によれば、シロアリ防除剤がムース状で散布されることから、例えば、シロアリ防除剤が液剤として散布される場合の液ダレや、それに伴う居住空間の汚染などの問題を解消できる。
【0217】
とりわけ、散布対象が、建物の壁、床または天井に配置される断熱材の被害部(例えば、蟻道)である場合において、この断熱材が発泡体である場合には、散布器から散布されたムース状のシロアリ防除剤が、発泡体の内部で四方八方に広がることから、シロアリ防除剤を隅々まで行き渡らせることができる。なお、シロアリ防除剤が液剤である場合には、発泡体の被害部の内部を液剤が滲み込むルートが一旦定まると、そのルート以外に偏って液剤が滲み込む現象がみられる。このため、発泡体の隅々までシロアリ防除剤を行き渡らせることができず、しかも、発泡体の一部に液剤が偏って滲み込むことで、発泡体の被害部の割れ、破損などを招くおそれがある。
【0218】
一方、上記断熱材がガラスウールである場合には、散布器から散布されたムース状のシロアリ防除剤が、ムースが破泡する前に、およびガラスウールの繊維自体に吸収される前に、ガラスウールの全体に拡散することから、シロアリ防除剤を隅々まで行き渡らせることができる。なお、シロアリ防除剤が液剤である場合には、液剤がガラスウールの繊維自体に吸収されるため、ガラスウールの隅々までシロアリ防除剤を行き渡らせることができないという不具合が生じる。
【0219】
図12〜図14は、本発明の処理方法の一実施形態を示す模式図である。
図12は、建物の壁44に配置される断熱材45に対し、シロアリ防除剤46をムース状で処理(散布、注入)する処理方法を示している。
通常、断熱材45は、水平方向において柱47と間柱48と(または、一対の間柱)に挟まれ、かつ、上下方向において一対の横木49に挟まれるように配置されている。そこで、断熱材45の上部にシロアリ防除剤46をムース状で散布することにより、断熱材45の隅々まで、シロアリ防除剤46を行き渡らせることができる。シロアリ防除剤46は、図12中の矢印で示す部位にて、上述の散布器を用いて散布すればよい。
【0220】
図12に示す場合において、シロアリ防除剤46を処理(散布、注入)するには、例えば、必要に応じて、部分的に壁材50を切除、または取り外したり、数mm程度の注入用の穴をあけるようにしてもよい。なお、図12においては、説明のため、壁材50の一部と、断熱材45の一部とを切り欠いて示している。
図13は、建物の床下部51および基礎部52に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理(散布、注入、塗布)する処理方法を示している。
【0221】
床下部51には、例えば、束柱53、大引き54、根太55などの木材が配置されている。シロアリ防除剤46をムース状で散布することにより、例えば、束柱53などにおけるシロアリの食害(加害)部へ適用しやすくなる。
また、シロアリ防除剤46をムース状で散布することにより、例えば、大引き54や根太55などの表面や、基礎部52において、シロアリ防除剤46を比較的長期間にわたって留まらせることができる。それゆえ、例えば、上記木材、あるいは床下部51や基礎部52のうち、シロアリを防除する特定の部位に、あらかじめシロアリ防除用の固化製剤を散布しておき、その上からシロアリ防除剤46をムース状で散布することにより、必要な場所にのみ薬剤を定着させることができる。なお、処理部が、例えば、転ばし根太の場合であっても、その処理方法は同様である。
【0222】
図13に示す場合において、シロアリ防除剤46を処理(散布、注入、塗布)するには、例えば、必要に応じて、部分的に床材56を切除すればよい。また、床下部51用の点検口からシロアリ防除剤46を散布してもよい。なお、図13においては、説明のため、床材56の一部を切り欠いて示している。
図14は、建物の天井部57に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理(散布、注入、塗布)する処理方法を示している。
【0223】
天井部57には、例えば、柱47、天井根太58などの木材が配置されている。シロアリ防除剤46をムース状で散布することにより、柱47、天井根太58などの木材におけるシロアリの食害(加害)部へ適用しやすくなり、しかも、シロアリ防除剤46の液ダレが抑制されることから、居住空間への汚染を抑制することができる。
図14に示す場合において、シロアリ防除剤46を処理(散布、注入、塗布)する際には、例えば、必要に応じて、部分的に天井板を切除、または取り外せばよい。なお、図14においては、説明のため、天井板を省略している。
【実施例】
【0224】
次に、製剤例、比較製剤例、実施例、参考例、比較例、および製造例を挙げて本発明を説明するが、本発明は、下記の製剤例、実施例、参考例および製造例によって限定されるものではない。
以下の実施例などにおいて、マイクロカプセルの平均粒子径は、コールターカウンタ(ベックマン・コールター(株)製の商品名「マルチサイザー3」)で測定された体積平均粒子径D(μm)である。また、マイクロカプセルの壁膜の平均膜厚T(μm)は、下記式(1)に基づいて算出した。
【0225】
T=(D/6)×(W1/W2)×(D2/D1) …(1)
(式(1)中、W1は、壁膜形成物質の重量(g)を示し、W2は、膜内物質の重量(g)を示し、D1は、壁膜形成物質の平均密度(g/cm3)を示し、D2は、膜内物質の平均密度(g/cm3)を示す。
1.ネオニコチノイド製剤の製造(製剤例1〜3、比較製剤例1〜3)
比較製剤例1
KMC113(ジイソプロピルナフタレン、沸点300℃、呉羽化学工業(株)製)318gと、アルケンL(アルキルベンゼン、蒸留範囲285〜309℃、新日本石油化学(株)製)154gと、Disperbyk−164(3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量10000〜50000、ビッグケミー(株)製)48gとを配合して、均一になるまで攪拌した。次いで、得られた混合溶液にクロチアニジン480gを配合し、T.K.オートホモディスパー(特殊機化工業(株)製)にて攪拌することにより、クロチアニジンを含有するスラリー液(1)を得た。このスラリー液(1)のクロチアニジン濃度は、48重量%であった。
【0226】
次に、上記スラリー液(1)を、ビーズミル(ダイノーミル KDL A型、ガラスビーズ径1.5mm)に投入し、20分間湿式粉砕した。湿式粉砕後のスラリー液(1)中におけるクロチアニジンの平均粒子径は、480nmであった。
さらに、湿式粉砕後のスラリー液(1)83gに対し、タケネートD−140N(イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン変性体、三井化学ポリウレタン(株)製)の溶剤置換物260gを配合し、均一になるまで攪拌することにより、スラリー液(2)を得た。
【0227】
上記スラリー液(2)を、クラレポバール217(ポリビニルアルコール、登録商標、クラレ(株)製)60gと、ニューカルゲンFS−4(ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アニオン界面活性剤、竹本油脂(株)製)0.15gとを含有する水溶液885g中に加え、常温下で微少滴になるまでT.K.オートホモミキサー(特殊機化工業(株)製)にて数分間攪拌し、混合した。この際、T.K.オートホモミキサーの回転数は、4000回転/分とした。
【0228】
次いで、得られた混合液(2)を、75℃の恒温槽中で3時間緩やかに攪拌させながら反応させ、その際、ジエチレントリアミンを10g滴下した。
反応後、得られた分散液に凍結防止剤と、増粘剤と、防腐剤とを配合し、さらに、全体の重量が1992gとなるように水を配合して、クロチアニジンを2重量%含有するマイクロカプセル剤(水懸濁剤)を得た。
【0229】
得られたマイクロカプセルは、体積平均粒子径が4.5μmであり、壁膜の平均膜厚が0.3μmであった。
比較製剤例2
T.K.オートホモミキサーの回転数を2800回転/分としたこと以外は、比較製剤例1と同様にして、クロチアニジンを2重量%含有するマイクロカプセル剤(水懸濁剤)を得た。得られたマイクロカプセルは、体積平均粒子径が24μmであり、壁膜の平均膜厚が1.6μmであった。
【0230】
製剤例1
T.K.オートホモミキサーの回転数を2600回転/分としたこと以外は、比較製剤例1と同様にして、クロチアニジンを2重量%含有するマイクロカプセル剤(水懸濁剤)を得た。得られたマイクロカプセルは、体積平均粒子径が27μmであり、壁膜の平均膜厚が1.8μmであった。
【0231】
製剤例2
T.K.オートホモミキサーの回転数を2400回転/分としたこと以外は、比較製剤例1と同様にして、クロチアニジンを2重量%含有するマイクロカプセル剤(水懸濁剤)を得た。得られたマイクロカプセルは、体積平均粒子径が30μmであり、壁膜の平均膜厚が2.0μmであった。
【0232】
製剤例3
T.K.オートホモミキサーの回転数を1000回転/分としたこと以外は、比較製剤例1と同様にして、クロチアニジンを2重量%含有するマイクロカプセル剤(水懸濁剤)を得た。得られたマイクロカプセルは、体積平均粒子径が62μmであり、壁膜の平均膜厚が4.0μmであった。
【0233】
比較製剤例3
SAS310(ジフェニルアルカン、新日本石油化学(株)製)500gと、アルケンL(アルキルベンゼン、新日本石油化学(株)製)150gと、ナロアクテイーHN100(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、三洋化成(株)製)150gとを配合し、均一になるまで攪拌した後、得られた混合溶液に、クロチアニジン200gを配合し、T.K.オートホモディスパー(特殊機化工業(株)製)にて攪拌することにより、クロチアニジンを20重量%含有するスラリー液(3)を得た。
【0234】
上記スラリー液(3)を、ビーズミル(ダイノーミル KDL A型、ガラスビーズ径0.5mm)に投入し、20分間湿式粉砕して、クロチアニジンを20重量%含有するフロアブル剤を得た。このフロアブル剤中でのクロチアニジンの体積平均粒子径は、0.8μmであった。
1.(1) 土壌からの薬剤溶出試験
薬剤溶出試験には、製剤例1〜3および比較製剤例1、2で得られたマイクロカプセル剤を、それぞれ水で20倍に希釈し、クロチアニジン濃度を0.1重量%に調整して使用した。また、比較製剤例3で得られたフロアブル剤についても、水で希釈し、クロチアニジン濃度を0.1重量%に調整して使用した。
【0235】
薬剤溶出試験では、まず、ケイ砂6号(宇部興産(株)製)の含水率が12.5%となるように調整し、このケイ砂を、ガラス通水カラム(内径1.5cm)内に高さが10cmとなるよう充填した。次いで、上記ガラス通水カラム内のケイ砂層の上面に、上記の希釈されたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度0.1重量%)、または上記の希釈されたフロアブル剤(クロチアニジン濃度0.1重量%)を、それぞれ3L/m2の割合で散布した。上記マイクロカプセル剤(水懸濁剤)またはフロアブル剤の散布後、上記ガラス通水カラムを密封して、室温で3日間保存した。
【0236】
さらに、保存後、上記ガラス通水カラムを、20℃の雰囲気下と、60℃の雰囲気下との2つの雰囲気下に設置し、上記ガラス通水カラムに対し、20mL/hrの速さで、各雰囲気の温度に調整された蒸留水を通水し、流出水をサンプリングした。
蒸留水を計1000mL流水後、上記ガラス通水カラムからケイ砂を取出し、カラム内に残存しているクロチアニジンを、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)で定量した。こうして、流水処理後のクロチアニジン量の測定値と、上記マイクロカプセル剤(水懸濁剤)またはフロアブル剤の散布量より算出される初期のクロチアニジン量とから、クロチアニジンの残存率(%)を算出した。この結果を、表1に示す。
【0237】
高温多湿環境下でのクロチアニジンの溶脱を抑制し、シロアリの防除効果を長期に亘って発揮させるには、上記薬剤溶出試験において、20℃でのクロチアニジンの残存率が、40%以上、好ましくは、50%以上、より好ましくは、55%以上であり、かつ、60℃でのクロチアニジンの残存率が、35%以上、好ましくは、40%以上であることが求められる。
【0238】
なお、比較製剤例3では、流水処理後のカラムから、クロチアニジンが検出されなかった。
【0239】
【表1】
【0240】
1.(2) クロチアニジンの溶解度測定
クロチアニジンについて、既知である20℃の水に対する溶解度327ppm(mg/L)を基準値とし、この整数倍の濃度のクロチアニジン水溶液を調製した。次いで、各濃度のクロチアニジン水溶液の温度を、60℃と80℃とにそれぞれ調節し、クロチアニジンの溶解状態を目視で観察した。こうして、完全に溶解していると判定できた濃度の最も高い値を、その温度でのクロチアニジンの溶解度とした。
【0241】
その結果、60℃の水に対する溶解度は、1635ppm(20℃での溶解度の5倍)であり、80℃の水に対する溶解度は、2289ppm(20℃での溶解度の7倍)であった。すなわち、クロチアニジンは、温度の上昇により、水への溶解度が顕著に高くなっている。この結果より、ネオニコチノイド製剤は、高温下で水分にさらされると溶脱するおそれがあることがわかる。
【0242】
1.(3) 野外試験
鹿児島県下のイエシロアリ生育地内において、製剤例1で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤)について野外試験を行った。
試験は、(社)日本木材保存協会の規格「土壌処理用防蟻剤等の防蟻効力試験方法および性能基準(JWPS−TS−S)」の記載に準じて行った。
【0243】
すなわち、まず、イエシロアリ生息地内に10点をマークし、そのうち、任意の5点を処理土壌区とし、残りの5点を無処理土壌区とした。各々の試験区は、1m以上の間隔をあけて設定した。また、各試験区において、土壌表面の植生や落葉を除外した。
次に、製剤例1で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)を水で20倍希釈し、上記処理土壌区にのみ3L/m2の割合で散布した。その後、処理土壌区および無処理土壌区の中央部に、健全なアカマツ辺材(縦10cm、横10cm、厚さ1cm)を2枚重ねて置いて、放置した。
【0244】
上記処理土壌および無処理土壌の表面には、上記規格に準じて、塩化ビニール樹脂板からなる箱型容器を設置し、移動しないように杭で固定した。
こうして、試験開始から1年経過ごとに、上記アカマツ辺材の食害の有無を観察した。
その結果、試験開始から1年経過後には、無処理土壌区のアカマツ辺材に、食害の痕跡が顕著に観察された。
【0245】
一方、処理土壌区のアカマツ辺材については、上記規格に規定された試験期間(2年)の経過後においても、試験開始から3年経過後においても、シロアリによる食害の痕跡が観察されなかった。
1.(4) 木材用防蟻剤の性能試験
鹿児島県下のイエシロアリ生育地(屋外)において、製剤例2で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)について、木材用防蟻剤としての性能試験を行った。
【0246】
試験では、まず、木口3×3cm、長さ30cmのマツ辺材に、20倍に希釈された上記マイクロカプセル材を200g/m2となるように散布した。次いで、上記マツ辺材5本を、それぞれ長さ方向に10cmが隠れるようにして、上記生育地内の土壌に埋設し、放置した。
その結果、上記マイクロカプセル材が散布されたマツ辺材は、2年経過後においても、シロアリによる食害の痕跡が観察されなかった。
【0247】
2.粒剤タイプのネオニコチノイド製剤の製造(製剤例4〜6、比較製剤例4〜5)
比較製剤例4
カガライト2号(カガライト工業(株)製、軽石の細粒)100重量部に対し、比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)5重量部を配合し、乾燥して、ネオニコチノイド製剤の粒状物(粒剤)を得た。
【0248】
得られた粒剤のクロチアニジン濃度は、約0.1重量%であった。
比較製剤例5
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、比較製剤例2で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)5重量部を配合したこと以外は、比較製剤例4と同様にして、ネオニコチノイド製剤の粒状物(粒剤)を得た。得られた粒剤のクロチアニジン濃度は、約0.1重量%であった。
【0249】
製剤例4
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例1で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)5重量部を配合したこと以外は、比較製剤例4と同様にして、ネオニコチノイド製剤の粒状物(粒剤)を得た。得られた粒剤のクロチアニジン濃度は、約0.1重量%であった。
【0250】
製剤例5
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例2で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)5重量部を配合したこと以外は、比較製剤例4と同様にして、ネオニコチノイド製剤の粒状物(粒剤)を得た。得られた粒剤のクロチアニジン濃度は、約0.1重量%であった。
【0251】
製剤例6
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例3で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)5重量部を配合したこと以外は、比較製剤例4と同様にして、ネオニコチノイド製剤の粒状物(粒剤)を得た。得られた粒剤のクロチアニジン濃度は、約0.1重量%であった。
【0252】
2.(1) 土壌からの薬剤溶出試験
薬剤溶出試験には、製剤例4〜6および比較製剤例4、5で得られた粒剤をそのまま使用した。
薬剤溶出試験では、まず、ケイ砂6号(宇部興産(株)製)の含水率が12.5%となるように調整し、このケイ砂を、ガラス通水カラム(内径1.5cm)内に高さが10cmとなるよう充填した。次いで、上記ガラス通水カラム内のケイ砂層の上面に、上記粒剤を3L/m2の割合で散布した。上記粒剤の散布後、上記ガラス通水カラムを密封して、室温で3日間保存した。
【0253】
さらに、保存後、上記ガラス通水カラムを、20℃の雰囲気下と、60℃の雰囲気下との2つの雰囲気下に設置し、上記ガラス通水カラムに対し、20mL/hrの速さで、各雰囲気の温度に調整された蒸留水を通水し、流出水をサンプリングした。
蒸留水を計1000mL流水後、上記ガラス通水カラムからケイ砂を取出し、カラム内に残存しているクロチアニジンを、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)で定量した。こうして、流水処理後のクロチアニジン量の測定値と、上記粒剤の散布量より算出される初期のクロチアニジン量とから、クロチアニジンの残存率(%)を算出した。この結果を、表2に示す。
【0254】
高温多湿環境下でのクロチアニジンの溶脱を抑制し、シロアリの防除効果を長期に亘って発揮させるには、上記薬剤溶出試験において、20℃でのクロチアニジンの残存率が、40%以上、好ましくは、50%以上であり、かつ、60℃でのクロチアニジンの残存率が、35%以上、好ましくは、40%以上であることが求められる。
【0255】
【表2】
【0256】
3.防蟻性塗料組成物の調製(参考例1〜3、比較例1〜3)
比較例1
アクリル変性シリコーン樹脂エマルション(不揮発分48%、商品名「塗料用モビニール(登録商標)7220」、ニチゴー・モビニール(株)製)15重量部と、アクリル樹脂エマルション(不揮発分47%、商品名「塗料用モビニール(登録商標)LDM7156」、ニチゴー・モビニール(株)製)11重量部と、炭酸カルシウム12重量部と、保存剤、増粘剤および消泡剤の混合物1重量部と、水23重量部と、分散剤および保湿剤の混合物3重量部とを配合し、攪拌混合して、防蟻性塗料組成物(1)を調製した。
【0257】
上記各成分の固形分の重量割合は、次のとおりである。アクリル変性シリコーン樹脂エマルション11.9重量%、アクリル樹脂エマルション8.6重量%、炭酸カルシウム58.1重量部、酸化チタン微粒子19.9重量%、保存剤、増粘剤および消泡剤の混合物1.1重量%、水0重量%、分散剤および保湿剤の混合物0.4重量%。なお、固形分の重量割合は、四捨五入により丸めた値であるため、上記各成分の固形分の重量割合の合計値は、必ずしも100とはならない。
【0258】
次いで、比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)を、上記防蟻性塗料組成物(1)で希釈し、攪拌、混合することにより、クロチアニジンの濃度が0.1重量%である塗料組成物を得た。
比較例2
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、比較製剤例2で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)を使用したこと以外は、比較例1と同様にして、クロチアニジンの濃度が0.1重量%である塗料組成物を得た。
【0259】
参考例1
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例1で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)を使用したこと以外は、比較例1と同様にして、クロチアニジンの濃度が0.1重量%である塗料組成物を得た。
参考例2
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例2で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)を使用したこと以外は、比較例1と同様にして、クロチアニジンの濃度が0.1重量%である塗料組成物を得た。
【0260】
参考例3
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例3で得られたマイクロカプセル剤(水懸濁剤;クロチアニジン濃度2重量%)を使用したこと以外は、比較例1と同様にして、クロチアニジンの濃度が0.1重量%である塗料組成物を得た。
比較例3
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、比較製剤例3で得られたフロアブル(クロチアニジン濃度20重量%)剤を使用したこと以外は、比較例1と同様にして、クロチアニジンの濃度が0.1重量%である塗料組成物を得た。
【0261】
3.(1) 塗膜からの薬剤溶出試験
参考例1〜3および比較例1〜3で得られた防蟻性塗料組成物を、それぞれ、正常健全なスギの辺材からとった、厚さ1cm、幅および長さ3.5cmの木材(試験片)の表面に、塗装用として一般的に用いられる刷毛で、塗装量が200g/m2となるように塗装した。
【0262】
次いで、塗装された上記試験片を、体積が上記試験片の10倍量である20℃および60℃の2つの蒸留水にそれぞれ浸漬し、24時間静置した。この浸漬操作を、1回ごとに新しい蒸留水に交換しつつ、合計10回繰り返した。
浸漬操作後、上記試験片の塗膜に残存しているクロチアニジンをアセトニトリルにより抽出し、HPLCで定量した。こうして、浸漬操作後のクロチアニジン量の測定値と、上記試験片に対する防蟻性塗料組成物の塗装量より算出される初期のクロチアニジン量とから、クロチアニジンの残存率(%)を算出した。この結果を、表3に示す。
【0263】
高温多湿環境下での塗膜からのクロチアニジンの溶脱を抑制し、シロアリの防除効果を長期に亘って発揮させるには、上記薬剤溶出試験において、20℃でのクロチアニジンの残存率が、40%以上、好ましくは、50%以上、より好ましくは、55%以上であり、かつ、60℃でのクロチアニジンの残存率が、35%以上、好ましくは、40%以上であることが求められる。
【0264】
なお、比較例3では、浸漬操作後の試験片から、クロチアニジンが検出されなかった。
【0265】
【表3】
【0266】
4. 防蟻性樹脂成形体の製造(参考例4〜5、比較例4〜5)
比較例4
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に、ステアリン酸カルシウムを配合し、攪拌混合後、乾燥させて、クロチアニジン濃度が2.0重量%のマクロカプセルを含有する粉状物を得た。
【0267】
次に、重合度1300の塩化ビニル樹脂(品名「TS−1300」、販売元「日本塩ビ販売(株)」)100重量部と、可塑剤としてフタル酸ジオクチル50重量部と、充填剤として軽質炭酸カルシウム10重量部と、クレー10重量部と、熱安定剤としてステアリン酸バリウム1.5重量部と、ステアリン酸亜鉛1.5重量部と、滑剤としてステアリルアルコール0.5重量部と、上記粉状物9.2重量部とを、スーパーミキサー((株)カワタ製)で、120℃を超えないようにドライブレンドした。次いで、得られた塩化ビニル樹脂混合物を室温まで冷却後、ミキシングロールで150〜160℃、3分間溶融混練しつつ、シートペレタイザーで塩化ビニル樹脂組成物のペレットを成形した。さらに、30cm角の加熱プレスの金型を160度で1分間予熱後、上記ペレットを上記金型内に投入し、100kg/cm2で3分間プレスすることにより、厚さ0.16cmの塩化ビニル樹脂(PVC)シートを得た。このPVCシートにおけるクロチアニジンの含有割合は、0.1重量%であった。
【0268】
比較例5
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、比較製剤例2で得られたマイクロカプセル剤を使用したこと以外は、比較例4と同様にして、クロチアニジン濃度が2.0重量%のマクロカプセルを含有する粉状物と、厚さ0.16cmのPVCシート(クロチアニジン濃度0.1重量%)とを得た。
【0269】
参考例4
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例1で得られたマイクロカプセル剤を使用したこと以外は、比較例4と同様にして、クロチアニジン濃度が2.0重量%のマクロカプセルを含有する粉状物と、厚さ0.16cmのPVCシート(クロチアニジン濃度0.1重量%)とを得た。
【0270】
参考例5
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例3で得られたマイクロカプセル剤を使用したこと以外は、比較例4と同様にして、クロチアニジン濃度が2.0重量%のマクロカプセルを含有する粉状物と、厚さ0.16cmのPVCシート(クロチアニジン濃度0.1重量%)とを得た。
【0271】
4.(1) PVCシートからの薬剤溶出試験
試験には、参考例4、5および比較例4、5で得られたPVCシートを、幅および長さ各2cmに裁断した試験片を使用した。
上記試験片1片を、20℃および60℃の恒温槽中で、それぞれ、体積が上記試験片の10倍量である蒸留水に浸漬し、24時間静置した。この浸漬操作を、1回ごとに新しい蒸留水に交換しつつ、合計14回繰り返した。
【0272】
浸漬操作後、上記試験片をテトラヒドロフラン(THF)で溶解させ、得られた溶液を、THFの2倍量のメタノールに配合し、沈殿物をろ別した。次いで、ろ液を濃縮し、クロチアニジンの含有量をHPLCで定量した。こうして、浸漬操作後のクロチアニジン量の測定値と、上記試験片の初期のクロチアニジン量とから、クロチアニジンの残存率(%)を算出した。この結果を、表4に示す。
【0273】
高温多湿環境下でのPVCシートからのクロチアニジンの溶脱を抑制し、シロアリの防除効果を長期に亘って発揮させるには、上記薬剤溶出試験において、20℃でのクロチアニジンの残存率が、70%以上、好ましくは、80%以上であり、かつ、60℃でのクロチアニジンの残存率が、15%以上、好ましくは、20%以上、より好ましくは、25%以上であることが求められる。
【0274】
【表4】
【0275】
5.硬化性シロアリ防除組成物の調製(参考例6〜8、比較例6〜7)
比較例6
カガライト4M号(カガライト工業(株)製、軽石の細粒)を篩に通して、粒径0.15mm以下の担体Aを得た。得られた担体A100重量部に対し、比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤50重量部を配合し、乾燥しながら均一に混合して、混合物を得た。
【0276】
得られた混合物を、粒径0.15mm以下の土砂(真砂土)で約4倍に希釈し、シロアリ防除成分Bを得た。
次いで、得られたシロアリ防除成分B50重量部と、乾燥土砂A(粒径が0.5mmを上回り1.5mm以下である土砂(真砂土)7重量部と、粒径が0.25mmを上回り0.5mm以下である土砂(真砂土)10重量部と、粒径0.15以上0.25mm以下の土砂(真砂土)15重量部と、粒径0.15mm未満の土砂(真砂土)68重量部とを配合し、攪拌混合したもの。)50重量部とを配合し、均一に混合して、混合物を得た。
【0277】
さらに、得られた混合物90重量部と、硬石こう(商品名「ニュープラストーン」、(株)ジーシー製)10重量部とを配合し、均一に混合して、硬化性シロアリ防除組成物を得た。得られた硬化性シロアリ防除組成物中の有効成分(クロチアニジン)濃度は、0.1重量%であった。
また、得られた硬化性シロアリ防除組成物100重量部と、水20重量部とを混練し、硬化させて得られた硬化物の圧縮強度を、JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に記載の圧縮強さ試験で測定した結果、約10N/mm2であった。
【0278】
比較例7
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、比較製剤例2で得られたマイクロカプセル剤を使用したこと以外は、比較例6と同様にして、硬化性シロアリ防除組成物を得た。
得られた硬化性シロアリ防除組成物100重量部と、水20重量部とを混練し、硬化させて得られた硬化物の圧縮強度を、JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に記載の圧縮強さ試験で測定した結果、約10N/mm2であった。
【0279】
参考例6
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例1で得られたマイクロカプセル剤を使用したこと以外は、比較例6と同様にして、硬化性シロアリ防除組成物を得た。
得られた硬化性シロアリ防除組成物100重量部と、水20重量部とを混練し、硬化させて得られた硬化物の圧縮強度を、JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に記載の圧縮強さ試験で測定した結果、約10N/mm2であった。
【0280】
参考例7
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例2で得られたマイクロカプセル剤を使用したこと以外は、比較例6と同様にして、硬化性シロアリ防除組成物を得た。
得られた硬化性シロアリ防除組成物100重量部と、水20重量部とを混練し、硬化させて得られた硬化物の圧縮強度を、JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に記載の圧縮強さ試験で測定した結果、約10N/mm2であった。
【0281】
参考例8
比較製剤例1で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例3で得られたマイクロカプセル剤を使用したこと以外は、比較例6と同様にして、硬化性シロアリ防除組成物を得た。
得られた硬化性シロアリ防除組成物100重量部と、水20重量部とを混練し、硬化させて得られた硬化物の圧縮強度を、JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に記載の圧縮強さ試験で測定した結果、約10N/mm2であった。
【0282】
5.(1) 硬化物からの薬剤溶出試験
試験には、参考例6〜8および比較例6、7で得られた硬化物を使用した。
上記硬化物を、20℃および60℃の恒温槽中で、それぞれ、体積が上記硬化物の10倍量である蒸留水に浸漬し、24時間静置した。この浸漬操作を、1回ごとに新しい蒸留水に交換しつつ、合計10回繰り返した。
【0283】
浸漬操作後、上記硬化物に残存しているクロチアニジンをアセトニトリルにより抽出しをHPLCで定量した。こうして、浸漬操作後のクロチアニジン量の測定値と、上記試験片の初期のクロチアニジン量とから、クロチアニジンの残存率(%)を算出した。この結果を、表5に示す。
高温多湿環境下での硬化物からのクロチアニジンの溶脱を抑制し、シロアリの防除効果を長期に亘って発揮させるには、上記薬剤溶出試験において、20℃でのクロチアニジンの残存率が、40%以上、好ましくは、50%以上であり、かつ、60℃でのクロチアニジンの残存率が、35%以上、好ましくは、40%以上であることが求められる。
【0284】
【表5】
【0285】
6.防蟻性被覆電線の製造(製造例1〜3)
製造例1
重合度1300の塩化ビニル樹脂(品名「TS−1300」、販売元「日本塩ビ販売(株)」)100重量部と、可塑剤としてフタル酸ジオクチル50重量部と、充填剤として軽質炭酸カルシウム10重量部と、クレー10重量部と、熱安定剤としてステアリン酸鉛3.0重量部と、製剤例2で得られたマイクロカプセル剤(体積平均粒子径30μm、壁膜の平均膜厚2.0μm)19.3重量部とを、スーパーミキサー((株)カワタ製)で、120℃を超えないようにドライブレンドした。
【0286】
次いで、得られた塩化ビニル樹脂混合物を室温まで冷却後、ミキシングロールで150〜160℃、3分間溶融混練し、シートペレタイザーで塩化ビニル樹脂組成物のペレットを成形した。
次に、得られたペレットを、クロスヘッドダイが装着された二軸押出機に投入し、公知の方法により、銅製導線(電線)とともに押出成形することにより、図1に示す、銅製導線(金属導線)1の周囲が防蟻性樹脂成形体(防蟻性の絶縁体)2で被覆された防蟻性被覆電線(防蟻電線)を製造した。
【0287】
得られた防蟻性被覆電線を、鹿児島県内のイエシロアリの生育が確認された土壌中に埋設し、1年間後に観察した結果、シロアリによる食害の痕跡は観察されなかった。
製造例2
製剤例2で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例1で得られたマイクロカプセル剤(体積平均粒子径27μm、壁膜の平均膜厚1.8μm)19.3重量部を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、防蟻性被覆電線(防蟻電線)を製造した。
【0288】
製造例3
製剤例2で得られたマイクロカプセル剤に代えて、製剤例3で得られたマイクロカプセル剤(体積平均粒子径62μm、壁膜の平均膜厚4.0μm)19.3重量部を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、防蟻性被覆電線(防蟻電線)を製造した。
7.散布器の製造および散布試験(実施例9〜11)
実施例9
図4を参照して、ポンプディスペンサ11には、ボトル15の内容量が350mLである市販品を使用した。
【0289】
ノズル12には、マイクロピペッタ用ノズルを使用した。このノズル12は、吐出口18における外径t1が約0.8mm、吐出口18における内径が約0.5mm、有効長Lが約3.5cm、吐出方向上流側における内径が約3.5mm、テーパ角度θが約5°であった(図6参照)。
透明チューブ13には、透明のポリエチレン製チューブ(内径9mm、長さ約50cm)を使用した。
【0290】
接続管14には、市販のベローズ付きスポイト(ポリエチレン製、東京硝子機器(株))のベローズ(蛇腹)部分を除去したものを使用した。
木材保存剤には、タケロックMC50E(日本エンバイロケミカルズ(株)製、クロチアニジン5重量%を含むマイクロカプセル剤)を水で50倍希釈し、得られた希釈物100重量部に対し、発泡剤としてエマールD−3−D(花王(株)製、陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩)3重量部を配合したムース剤使用した。
【0291】
ポンプディスペンサ11のポンプヘッド17に、透明チューブ13の一方側端を嵌め込み、さらに、透明チューブ13の他方側端に、接続管14の一方側端(スポイトの液溜め部からの距離が近い方の開口端)を嵌め込んだ。次いで、接続管14の他方側端に、ノズル12を取り付け、ボトル15内に木材保存剤を投入して、散布器10を得た。
図5を参照して、イエシロアリによる被害を受けた木材(直径約10cm、長さ約30cmのマツ材)19の穿孔20に、ノズル12を挿入し、ポンプヘッド17を手で数回押圧することにより、木材保存剤の泡を散布(供給)した。木材保存剤の散布状況は、透明チューブ13内を木材保存剤の泡が流れているか否かにより、目視にて判断した。
【0292】
上記散布処理において、穿孔20の開口端部分での木材保存剤の逆流は、観察されなかった。
また、上記散布処理により、穿孔20内に生息していたイエシロアリを駆除(殺虫)できた。
実施例10
図7を参照して、エアゾール缶22には、正立状態で使用される市販のエアゾール缶を使用した。
【0293】
ノズル12には、マイクロピペッタ用ノズルを使用した。このノズル12は、吐出口18における外径t1が約0.8mm、吐出口18における内径が約0.5mm、有効長Lが約3cm、吐出方向上流側の最大径t2が約4mm、テーパ角度θが約5°であった(図6参照)。
透明チューブ13には、透明のポリエチレン製チューブ(内径3mm、長さ約30cm)を使用した。
【0294】
木材保存剤には、タケロックMC50E(日本エンバイロケミカルズ(株)製、クロチアニジン5重量%を含むマイクロカプセル剤)を水で50倍希釈し、得られた希釈物85重量部に対し、発泡剤としてエマールD−3−D(花王(株)製、陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩)5重量部を配合した混合物を使用した。
【0295】
この混合物を、噴射剤としてのLPGガスとともに、耐圧容器23内に充填、密閉した。耐圧容器23内へのLPGガスの注入量は、上記混合物の総量90重量部に対し、10重量部とした。
次いで、エアゾール缶22の噴出口24に取り付けられたノズル(直径約3.5mm)の先端に、透明チューブ13の一方側端を接続し、さらに、透明チューブ13の他方側端に、ノズル12を取り付けて、散布器21を得た。
【0296】
図8を参照して、アメリカカンザイシロアリによる被害を受けた木材(直径約10cm、長さ約40cmのマツ材)19の側面に認められたアメリカカンザイシロアリによる穿孔26に、ノズル12を挿入した。この穿孔26は、直径が約2mmであり、その開口端には、穿孔26を塞ぐようにアメリカカンザイシロアリの糞が詰められていたため、この糞を取り除いてから、ノズル12を挿入した。
【0297】
なお、ノズル12は、穿孔26の開口端において隙間が生じないように、吐出口18の外径が約1.5mmとなる部分において切断した上で、使用した。
こうして、エアゾール缶22の噴出口24を手で数〜十数秒間押圧することにより、穿孔26内に木材保存剤の泡を散布(供給)した。木材保存剤の散布状況は、透明チューブ13内を木材保存剤の泡が流れているか否かにより、目視にて判断した。
【0298】
上記散布処理において、穿孔20の開口端部分での木材保存剤の逆流は、観察されなかった。
また、散布器21の木材保存剤は、噴射剤によって大きな圧が加えられた状態で散布されたことから、木材25の外表面のうち、ノズル12を挿入した穿孔26の開口端から鉛直方向上方、約30cm程度の部位(穿孔26の他方側開口端)において、木材保存剤の泡Fの噴出が確認された。
【0299】
上記散布処理後、木材25を切断して内部を観察したところ、穿孔26内に生息していたアメリカカンザイシロアリの駆除(死亡)を確認できた。
実施例11
図11を参照して、ボトル本体40には、市販のプラスチックボトル(内容量500mLのペットボトル)を使用した。なお、キャップ41には、透明チューブ13を挿入するための貫通孔(直径約2.5mm)を設けた。
【0300】
ノズル12には、マイクロピペッタ用ノズルを使用した。このノズル12は、吐出口18における外径t1が約0.8mm、吐出口18における内径が約0.5mm、有効長Lが約3cm、吐出方向上流側における内径が約3.5mm、テーパ角度θが約5°であった(図6参照)。
透明チューブ13には、透明のポリエチレン製チューブ(直径約3mm、長さ約50cm)を使用した。
【0301】
木材保存剤には、水性キシラモン3W(日本エンバイロケミカルズ(株)製、防蟻剤としてクロチアニジンを0.6重量%と、防腐剤としてIPBCを3重量%、およびプロピコナゾール3重量%と、を含む木材保存剤)を水で3倍希釈した希釈物を使用した。
ボトル39のボトル本体40に、木材保存剤300mLを投入し、キャップ41を取り付けた。このキャップ41の貫通孔には、予め、透明チューブ13の一方側端を挿入し、貫通孔と透明チューブ13との間に隙間が生じないように、接着剤で固めておいた。さらに、透明チューブ13の他方側端に、ノズル12を取り付けて、散布器38を得た。
【0302】
なお、透明チューブ13の途中には、キャップ41から吐出方向下流側へ約20cmの部位に、市販のクランプ43を取り付けた。また、透明チューブ13上において、点滴筒42の取り付けは省略した。
イエシロアリによる被害を受けた木材(直径約10cm、長さ約30cmのマツ材)の木口に現れている穿孔に、ノズル12を挿入した。次いで、クランプ43で木材保存剤の流量を5mL/分に調整し、ボトル39から透明チューブ13と、ノズル12を介して、木材の穿孔内に木材保存剤を散布(滴下注入)した。なお、散布処理時において、ボトル39の底部(キャップ41と相対する側の壁面)に針を挿入し、空気孔を設けた。
【0303】
上記散布処理において、穿孔の開口端部分での木材保存剤の逆流は、観察されなかった。
【0304】
また、上記散布処理により、穿孔内に生息していたイエシロアリを駆除(殺虫)できた。
【0305】
本発明は、以上の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲において、種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0306】
2:絶縁体(被覆部材)、5:絶縁体(被覆部材)、9:シース(被覆部材)、10:散布器、11:ポンプディスペンサ(供給部)、12:ノズル(吐出部)、13:透明チューブ(供給管)、18:吐出口、21:散布器、27:散布器、38:散布器、44:壁、51:床下部、52:基礎部、57:天井部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材保存剤を供給するための供給部と、
前記供給部から供給される木材保存剤を吐出するための吐出部と、を備え、
前記吐出部は、先細形状に形成されており、
前記吐出部の吐出方向下流端に形成されている吐出口の外径が、2mm以下であることを特徴とする、散布器。
【請求項2】
さらに、前記供給部と前記吐出部とに連結される可撓性の供給管を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の散布器。
【請求項3】
前記供給部は、前記木材保存剤を圧力により供給することを特徴とする、請求項1または2に記載の散布器。
【請求項4】
前記供給部が、ポンプディスペンサ、エアゾール缶、またはポンプ式スプレーであることを特徴とする、請求項3に記載の散布器。
【請求項5】
前記木材保存剤が、ムース剤であることを特徴とする、請求項3または4に記載の散布器。
【請求項6】
前記供給部は、前記木材保存剤を自重により供給することを特徴とする、請求項1または2に記載の散布器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の散布器を用いて、被害部、または被害が予想される部位の隙間に、前記木材保存剤を散布することを特徴とする、散布方法。
【請求項8】
前記隙間に合わせて、前記吐出部の吐出方向途中を切断して使用することを特徴とする、請求項7に記載の散布方法。
【請求項9】
建物の壁、床または天井に配置される断熱材に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理することを特徴とする、処理方法。
【請求項10】
建物の床下部に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理することを特徴とする、処理方法。
【請求項11】
建物の天井部に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理することを特徴とする、処理方法。
【請求項12】
建物の基礎部に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理することを特徴とする、処理方法。
【請求項1】
木材保存剤を供給するための供給部と、
前記供給部から供給される木材保存剤を吐出するための吐出部と、を備え、
前記吐出部は、先細形状に形成されており、
前記吐出部の吐出方向下流端に形成されている吐出口の外径が、2mm以下であることを特徴とする、散布器。
【請求項2】
さらに、前記供給部と前記吐出部とに連結される可撓性の供給管を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の散布器。
【請求項3】
前記供給部は、前記木材保存剤を圧力により供給することを特徴とする、請求項1または2に記載の散布器。
【請求項4】
前記供給部が、ポンプディスペンサ、エアゾール缶、またはポンプ式スプレーであることを特徴とする、請求項3に記載の散布器。
【請求項5】
前記木材保存剤が、ムース剤であることを特徴とする、請求項3または4に記載の散布器。
【請求項6】
前記供給部は、前記木材保存剤を自重により供給することを特徴とする、請求項1または2に記載の散布器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の散布器を用いて、被害部、または被害が予想される部位の隙間に、前記木材保存剤を散布することを特徴とする、散布方法。
【請求項8】
前記隙間に合わせて、前記吐出部の吐出方向途中を切断して使用することを特徴とする、請求項7に記載の散布方法。
【請求項9】
建物の壁、床または天井に配置される断熱材に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理することを特徴とする、処理方法。
【請求項10】
建物の床下部に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理することを特徴とする、処理方法。
【請求項11】
建物の天井部に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理することを特徴とする、処理方法。
【請求項12】
建物の基礎部に対し、シロアリ防除剤をムース状で処理することを特徴とする、処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−81468(P2013−81468A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−272685(P2012−272685)
【出願日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【分割の表示】特願2008−15263(P2008−15263)の分割
【原出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(503140056)日本エンバイロケミカルズ株式会社 (95)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【分割の表示】特願2008−15263(P2008−15263)の分割
【原出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(503140056)日本エンバイロケミカルズ株式会社 (95)
【Fターム(参考)】
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