説明

散気装置監視器

【課題】 本発明は、散気装置の異常停止を、汚水浄化槽の使用者に、確実に知らしめることができる散気装置監視器を提供することを目的とする。
【解決手段】 浄化槽システム内に設置された散気装置へ供給する電流値を監視する検出手段と、この検出手段により検出される電流値が予め設定された電流値以下となった際に報知を行う警告手段と、屋外用コンセント部とを備え、上記検出手段と警告手段とを一体化させた散気装置監視器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄化槽システム内に設置される散気装置の運転異常を検出し、それを報知する、散気装置監視器に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道設備の整っていない地域では、排水を浄化するのに汚水浄化槽を使用している。汚水浄化槽は、通常地下に埋められており、屋内にて発生した汚水を流入させ、嫌気処理、好気処理、滅菌処理を行った後に、系外へと放流する。
好気処理は、酸素を好む好気性微生物により排水中の固形分を分解するものであり、微生物の活性化のために、酸素含有の空気を槽内へと供給している。空気供給は、散気装置と呼ばれるものを使用し、一般的には、ダイヤフラム式のポンプを使用することが多い。
【0003】
散気装置は、汚水浄化のために必用なものであり、空気供給が停止すると、水質が急速に悪化する。そこで、特許文献1では、ダイヤフラムの反復屈曲使用による弾性疲労が原因で、ダイヤフラムが破損し所期のポンプ作用が行えなくなると、それを確実に検知し、散気装置を停止させることができる保護装置が搭載されている。
【特許文献1】実用新案登録第3007702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記保護装置は、散気装置の運転を停止することができるものの、汚水浄化槽使用者は、散気装置の停止に気が付くことができない。散気装置が停止していることは、維持管理業者による定期点検により発見されるが、この定期点検は最大4ヶ月の間隔があるため、その間好気処理を行うことができず、結果水質の悪化、悪臭の発生に至ってしまう恐れがある。
【0005】
本発明は、散気装置の異常停止を、汚水浄化槽の使用者に、確実に知らしめることができる散気装置監視器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のものに関する。
(1)浄化槽システム内に設置された散気装置へ供給する電流値を監視する検出手段と、この検出手段により検出される電流値が予め設定された電流値以下となった際に報知を行う警告手段と、屋外用コンセント部とを備え、上記検出手段と警告手段とを一体化させた散気装置監視器。
(2)項(1)において、更に外部通信手段を有し、この外部通信手段により屋内に設置した屋内警告手段を作動させる散気装置監視器。
(3)項(2)において、外部通信手段が、電力線通信、無線又は専用線である散気装置監視器。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、汚水浄化槽に用いている散気装置の異常停止、高負荷を原因とした風量低下等に対し、その異常を報知することができるので、速やかに散気装置の故障修理又は汚水浄化槽のばっ気異常を修理することができ、汚水浄化槽の水質悪化、悪臭発生を未然に防止することができる。
また、外部通信手段及び屋内警告手段を有する場合は、屋外の警告手段が目立たない所に設置されていたとしても、確実に使用者への警告が行え、汚水浄化槽の維持管理会社へと直接通報も可能となる。
更に、本発明の散気装置監視器は、検出手段と警告手段とを一体化させたものであり、屋外用コンセントを挿入するだけで、どのような散気装置への取り付けも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明にて述べる浄化槽は、好気処理を行うものであれば特に制限されるものではなく、具体的には、嫌気処理槽、好気処理槽、消毒槽を備えたものを使用することができる。また、上記槽以外に、汚泥消化槽、処理水槽、流量調整槽等を付加したものを使用することもできる。
【0009】
本発明にて述べる散気装置は、好気処理を行う槽に対し、酸素を含む気体を供給可能なものであれば特に制限されず、また、好気処理以外に、汚水の移流を行うエアリフトポンプ用の空気、濾床を有するものであれば、その濾床を洗浄する洗浄空気の供給を行わせることもできる。
【0010】
本発明にて述べる検出手段は、CT(カレントトランス)による方法や、クランプ式交流電流センサによる方法などがあり、また、ブロワへの電源供給回路に直列に抵抗器を挿入し電圧降下分を検出するといった、間接的に電流の変化を検出する方法などでも良い。
【0011】
本発明にて述べる警告手段及び屋内警告手段は、視覚警告、聴覚警告の何れであっても、併用したものであっても良い。
視覚警告としては、表示器を用いた識別、LED等の発光体を用いた表示色識別等を行うことができる。
聴覚警告としては、警報音を発することで使用者に知らせることができ、振動等を併用させても良い。
【0012】
検出手段と警告手段との一体化は、この2つの手段が、同一筐体に設置されることによりなされ、検出手段を筐体内に配置し、警告手段を筐体外表面に配置することが好ましい。
【0013】
本発明にて述べる外部通信手段は、上記屋内警告手段を作動させるものであり、外部通信手段と、屋内警告手段との間は、電力線通信、無線通信、専用線通信等により接続される。
屋内警告手段は、屋内のどこに設置しても良いが、通常人のいる時間が長いところが好ましく、具体的には、台所、居間等に設置するようにする。
【実施例】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明を更に具体的に説明する。
図1は、本発明の1実施例である散気装置監視器の外観図である。
散気装置監視器1は、図示を省略する散気装置および監視器自体に電源を供給する電源プラグ2、散気装置監視器を屋外壁に取付けるための屋外壁取付部3、散気装置が正常運転状態にあることを表示する運転表示部4、散気装置が異常運転状態にあることを表示する警報表示部5、散気装置の電源プラグを挿入し、且つ、散気装置に電源を供給する屋外コンセント部6を備えている。
【0015】
図2は、図1に示す散気装置監視器の回路図を示す。
散気装置監視器1の表面には、接続する散気装置への電源供給を行う屋外コンセント部6、散気装置の正常運転中を表示する運転表示部4、散気装置の運転異常状態を表示する警報表示部5があり、散気装置監視器1の内部には、散気装置への供給電流値を検知するための電流検出部7と、制御部8とがある。
【0016】
電源プラグ2からの供給電源は、途中二分岐し、一方は制御部8への電源供給に用い、他方は、電流検出部7を介し、屋外コンセント部6への電源供給に用いる。
【0017】
電流検出部7は、屋外コンセント部6に接続した散気装置への供給電流値を検出する機能を有する。電流検出部7は、予め設定した電流値を下回った場合に、散気装置の運転異常を判断し、制御部8に対して信号として出力する。電流の検出にあっては、CT(カレントトランス)による方法や、クランプ式交流電流センサによる方法などがあり、また、ブロワへの電源供給回路に直列に抵抗器を挿入し電圧降下分を検出するといった、間接的に電流の変化を検出する方法などでも良い。
【0018】
運転表示部4は、緑色ランプを用い点灯表示することで、ブロワが運転中であることを視覚的に表示するための表示部であり、警報表示部5は、赤色ランプを用い点滅表示することで、ブロワ運転が異常状態にあることを注意喚起するための表示部である。
【0019】
汚水浄化槽に空気を供給する散気装置は、内部に異常時保護装置を有している。外気の空気を吸入し、加圧排気するダイヤフラムが破れると、異常時保護装置が作動し、ブロワへの電源供給を遮断する仕組みとなっている。従って、散気装置が正常運転している場合は、ある程度の電流がブロワによって消費されているが、ブロワがこの異常時安全装置によって停止すると、消費電流は無くなることになる。
【0020】
図2に示す本発明の実施例では、電流検出部7にて、消費電流値がゼロになったことを検出し、散気装置の運転停止であると判断し、警報表示することができる。しかしながら、汚水浄化槽システム内のばっ気用散気管の目詰まり等が原因で、散気装置にとって高負荷状態にある場合、散気装置は作動しているものの、空気の風量が低下するといった問題になるが、この場合であれば、消費電流値も低下する傾向にある。
【0021】
そこで、散気装置監視器1においては、予め異常時の電流検出レベルの設定が可能な構造とし、例えば、通常80リットル毎分のエアーを供給する散気装置であれば、運転時消費する電流値が、1A程度であった場合、高負荷にて風量低下時は、0.5A程度になるため、電流検出部での検出レベルを0.7Aに予め設定しておくことで、ブロワの単純な異常停止だけでなく、散気管の目詰まり等による異常風量低下時においても、ブロワの異常と判断し、使用者に異常警報することができる。
【0022】
散気装置監視器1内に通信手段を設け、該通信手段から信号受信し異常警報する警報手段を別途設けることで、散気装置の停止異常を屋外壁とは別の場所に異常警報することができる。異常警報は、屋外壁に取付けた本装置にて警報表示するが、取付け場所が家屋北側等の目立たない場所であった場合、汚水浄化槽使用者が異常警報に気づきにくいといった問題になるが、これを解消できる。警報装置での異常警報は、赤色ランプの点滅表示に加え、警報音による方法もあるが、使用者不在の場合の警報音や、夜間での警報音は、あまり好ましくない。
【0023】
図3は、外部通信手段を備えた本発明の1実施例を示す回路図である。
外部通信手段9は、電源プラグ2から制御部8へと供給される電力の一部を分岐させており、屋内警告手段10とは、電力線通信により結線されている。そのため、ブロワ停止異常を家屋内のコンセントに別途接続した警報手段に信号を送信し、異常警報することが可能となる。
【0024】
図4は、外部通信手段を備えた本発明の他の1実施例を示す回路図である。
本実施例では、外部通信手段9と屋内警告手段10との間が、無線通信を採用しており、家屋内は勿論、汚水浄化槽の管理会社等に設けた警報手段にてブロワ停止異常を警報表示することが可能となる。
【0025】
図5は、本発明の1実施例である散気装置監視器の実使用例を示す斜視図である。
散気装置監視器1は、既設屋外コンセント11の近傍に取付けられ、電源プラグ2を既設屋外コンセント11に挿入する。一方、汚水浄化槽に空気を供給する散気装置は、散気装置監視器1の近傍に据え付けてあり、該散気装置の電源プラグ12を、散気装置監視器1の屋外コンセント部6に挿入する。
散気装置は、散気装置監視器1から電源供給を受け、運転を開始し、空気吐出口13に接続された汚水浄化槽とのエアー配管に、ばっ気用の空気を一定圧にて供給する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の1実施例である散気装置監視器の外観図である。
【図2】図1に示す散気装置監視器の回路図である。
【図3】外部通信手段を備えた本発明の1実施例を示す回路図である。
【図4】外部通信手段を備えた本発明の他の1実施例を示す回路図である。
【図5】本発明の1実施例である散気装置監視器の実使用例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1…散気装置監視器、2…電源プラグ、3…屋外壁取付部、4…運転表示部、5…警報表示部、6…屋外コンセント部、7…電流検出部、8…制御部、9…外部通信手段、10…屋内警告手段、11…既設屋外コンセント、12…電源プラグ、13…空気吐出口。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化槽システム内に設置された散気装置へ供給する電流値を監視する検出手段と、この検出手段により検出される電流値が予め設定された電流値以下となった際に報知を行う警告手段と、屋外用コンセント部とを備え、上記検出手段と警告手段とを一体化させた散気装置監視器。
【請求項2】
請求項1において、更に外部通信手段を有し、この外部通信手段により屋内に設置した屋内警告手段を作動させる散気装置監視器。
【請求項3】
請求項2において、外部通信手段が、電力線通信、無線又は専用線である散気装置監視器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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