説明

散気装置

【課題】散気運転により弾性多孔体の位置がずれたり、皺を生じたりすることが防止できる散気装置の提供。
【解決手段】平板状の支持体10が、周辺に沿って形成された、それぞれが独立した複数の突起部14を有し、弾性多孔体20が、周辺に沿ってかつ厚さ方向に貫通して形成された、それぞれが独立した複数の固定孔22を有し、枠体30が、周辺に沿って形成された、それぞれが独立した複数の凹部34を有している。支持体10の突起部13が弾性多孔体20の固定孔22を貫通し、枠体30の凹部34に嵌め込まれて一体化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理場等の生物処理槽で使用できる散気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場等の生物処理槽では散気装置が使用されている。散気装置は、支持体上に置かれたゴム製の弾性膜が固定部材で固定された構造のものが広く採用されている。
散気装置の運転時、ゴム製の弾性膜には大きな圧力が加えられることになるため、前記した固定部材で固定するときの固定強度は重要となる。
【0003】
特許文献1のディフューザでは、メンブレンゴム3の周端部を断面コ字状に下向きに屈曲させ、ゴムの弾性を利用してホルダー1の周端面に外側から嵌合させており、さらにステンレススチール製のバンド4を組み合わせて固定している(段落番号0007、図1)。
【0004】
特許文献2の散気装置では、散気膜3の四辺縁部とベースプレート2の四辺縁部が、パッキンを介して金属製の枠体4に固定されている(段落番号0026、図1)。
【0005】
特許文献3では、板状本体部31、弾性体膜32を備えた板状メンブレン散気体が使用されており、板状本体部31自体が弾性体膜32を厚さ方向に挟み込むことができる構造のものとなっている(段落番号0011、図1、図3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−71288号公報
【特許文献2】特開2004−313938号公報
【特許文献3】特開2006−150268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来は、支持体と弾性膜を固定する手段として、バンドや枠等の固定具が使用されているが、散気運転の開始や停止による圧力変動が継続的に繰り返し加えられたとき、支持体上の弾性膜の位置がずれたり、変形(皺等)を生じたりする場合がある。
【0008】
本発明は、下水処理場等の生物処理槽において使用する散気装置として適用した場合であっても、支持体上に固定された膜がずれたり、変形したりすることなく、安定した散気運転を継続することができる散気装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願請求項1の発明は、課題の解決手段として、
空気供給口を備えた平板状の支持体上に置かれた弾性多孔体の周囲が枠体で固定された散気装置であって、
平板状の支持体が、周辺に沿って形成された、それぞれが独立した複数の突起部を有しており、
弾性多孔体が、周辺に沿ってかつ厚さ方向に貫通して形成された、それぞれが独立した複数の固定孔を有しており、
枠体が、周辺に沿って形成された、それぞれが独立した複数の凹部を有しており、
平板状の支持体の突起部が、弾性多孔体の固定孔の長さと枠体の凹部深さの合計値と同程度の長さを有するものであり、
平板状の支持体と弾性多孔体と枠体が、平板状の支持体の突起部が弾性多孔体の固定孔を貫通し、さらに枠体の凹部に嵌め込まれていることで一体化されている、散気装置を提供する。
【0010】
また本願請求項2の発明は、課題の他の解決手段として、
空気供給口を備えた平板状の支持体上に置かれた弾性多孔体の周囲が枠体で固定された散気装置であって、
平板状の支持体が、周辺に沿って形成された、それぞれが独立した複数の凹部を有しており、
弾性多孔体が、周辺に沿ってかつ厚さ方向に貫通して形成された、それぞれが独立した複数の固定孔を有しており、
枠体が、周辺に沿って形成された、それぞれが独立した複数の突起部を有しており、
枠体の突起部が、弾性多孔体の固定孔の長さと平板状の支持体の凹部深さの合計値と同程度の長さを有するものであり、
平板状の支持体と弾性多孔体と枠体が、枠体の突起部が弾性多孔体の固定孔を貫通し、さらに平板状の支持体の凹部に嵌め込まれていることで一体化されている、散気装置を提供する。
【0011】
本発明の散気装置は、平板状の支持体と弾性多孔体と枠体を固定する手段として、平板状の支持体又は枠体が有している突起部又は凹部と弾性多孔体の固定孔の組み合わせを有している。
本発明の散気装置は、弾性多孔体が有する固定孔に前記突起部が通され、さらに突起部が凹部に嵌め込まれることで結合固定されている。
また突起部の一部として着脱自在のボルトを使用し、ボルトに対応する凹部として内部にはネジを有するものを使用して、ボルトを凹部にねじ込むことで、さらに固定強度を高めることができる。
本発明の散気装置は、さらに他の固定手段を併用して周囲から固定することもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の散気装置は、散気運転の開始や停止による圧力変動が継続的に繰り返し加えられたとき、支持体上の弾性多孔体の位置がずれたり、変形(皺等)を生じたりすることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の散気装置の組立方法を説明するための斜視図(又は分解状態を説明するための斜視図)。
【図2】図1で使用した枠体の構造示す幅方向の断面図。
【図3】本発明の散気装置の組立方法を説明するための部分側面図。
【図4】図3の状態で組み立てた後の散気装置を説明するための部分側面図(一部断面図を含んでいる)。
【図5】別実施形態の散気装置の組立方法を説明するための部分側面図(一部断面図を含んでいる)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)第1の実施形態
図面により本発明の散気装置を説明する。
図1に示す散気装置1は、平板状の支持体10、弾性多孔体20、枠体30を有している。
【0015】
〔平板状の支持体10〕
平板状の支持体10は、弾性多孔体20を載せた状態で支持するためのものであり、図1は四角形(長方形)であるが、正方形、円形等の所望形状にすることができる。
支持体10の大きさ及び形状は、弾性多孔体20の大きさ及び形状と同じになるようにする。
支持体10の材質は、金属、合成樹脂、セラミックス、それらの複合材等にすることができる。
【0016】
支持体10は、中心部に外部の空気源(酸素源)と空気供給管で接続するための空気供給口12を有している。
支持体10は、底面11と、その四辺に沿って形成された底面11よりも厚さの大きな肉厚部13を有している。支持体10は、肉厚部13が形成されていない、全体が同一厚さの底面11からなるものでもよい。
【0017】
肉厚部13上には、それぞれが独立した複数の突起部14が形成されている。
突起部14の形状は、円柱状、円柱状で先端部が丸みを帯びているもの、円柱状で先端部が円錐状のもの、円錐状、円錐状で先端部が丸みを帯びているもの、角柱状、三角錐状等にすることができる。
【0018】
複数の突起部14は、全てが等間隔をおいて形成されていることが好ましいが、角部に位置するものは間隔が異なっていてもよい。
隣接する突起部14同士の間隔は、例えば、支持体10が1辺500mmの正方形であるとすると、5.0〜20.0mmの間隔であることが好ましく、8.0〜10.0mmの間隔であることが好ましい。
支持体10が長方形であっても、円形であっても、長さ(円周)500mmの範囲において前記間隔で突起部14が形成されていることが好ましい。
突起部14の外径は、例えば、支持体10が1辺500mmの正方形であるとすると、1.5〜2.5mmの範囲であることが好ましい。
【0019】
図5に示すように、複数の突起部14は、一部を着脱自在のボルト15にすることができる。
ボルト15にするときは、ボルト15の頭15aが支持体10の面から突き出さないように、ボルトの頭15aに相当する部分に同形状の窪みを形成しておくことが好ましい。
複数の突起部14のどれを着脱自在のボルト15にするかは特に制限されるものではない。
例えば、支持体10の角部、好ましくは四隅の角部の突起部14をボルト15にしたり、各辺の中間位置の突起部14をボルト15にしたりすることができるほか、前記した角部と各辺の中間位置の突起部14をボルト15にすることができる。
【0020】
〔弾性多孔体20〕
弾性多孔体20は、四辺に沿った周縁部に厚さ方向に貫通した固定孔22を有していることを除いて、通常の散気装置で使用されているゴム製又はエラストマー製の膜と同じものであり、例えば、特開2006−75771号公報や特開2007−38198号公報に記載された弾性多孔体と同じものを使用することができる。
固定孔22が形成されている四辺に沿った周縁部は、強度を高めるため、他の部分よりも肉厚になっているが、全体が均一厚さのものでよい。
固定孔22は、支持体10に形成された突起部14の全てを貫通させることができる数、位置、大きさになるように形成されている。
【0021】
弾性多孔体20は、固定孔22が形成されている周縁部を除いた部分21に多数の微細孔を有している。微細孔の密度は、1m2当たり1万個〜100万個が好ましい。
弾性多孔体20の厚みは0.1〜3mmの範囲が好ましく、微細孔が形成された部分21の厚みは0.3〜2mmの範囲が好ましい。厚みは、運転時に加えられる空気圧に応じて円滑に散気できる厚さのものを選択する。
【0022】
〔枠体30〕
枠体30は、弾性多孔体20の四辺を上から押さえて固定するためのものである。
枠体30の大きさ及び形状は、弾性多孔体20の大きさ及び形状と同じになるように決定される。
枠体10の材質は、金属、合成樹脂、セラミックス、それらの複合材等にすることができる。
【0023】
枠体30は、図2に示すように、弾性多孔体20とは接触しない上面部31と、弾性多孔体20と接触する下面部32、外側面33a、内側面33bを有している。
下面部32には、それぞれ独立した複数の凹部34を有しており、さらに枠体30に沿って周方向に連続的に形成された突起35を有している。この突起35は、組立時に弾性多孔体20に押しつけることでシール性を高めるように作用するものである。
枠体30は、下面32、外側面33a、内側面33bから周方向に連続した窪みが形成されており、この窪みに弾性多孔体20の固定孔22が形成されている周縁部(肉厚部)がぴったりと嵌め込まれるようになっている。
凹部34は、弾性多孔体20の固定孔22を通された支持体10の突起部14の全てが嵌め込まれる数、位置、大きさ及び深さになるように形成されている。
【0024】
図5に示すように、複数の突起部14の一部を着脱自在のボルト15にしたときには、対応する凹部35の内部はボルト15をねじ込むためのネジが形成されている。
【0025】
支持体10の突起部14の長さは、弾性多孔体20の固定孔22の長さと枠体30の凹部34深さの合計値と同程度、即ち、前記合計値と同じか又は僅かに短くなるように調整されている。
支持体10の突起部14の外径と枠体30の凹部34の内径は、枠体30の凹部34にぴったり嵌め込むことができるように調整されている。
弾性多孔体20の固定孔22の内径は、支持体10の突起部14の外径と同一であるか、僅かに小さい程度に調整されている。
【0026】
〔散気装置〕
散気装置1は、図1、図4に示すように、支持体10の突起部14に対して、全ての固定孔22を通して弾性多孔体20が取り付けられ、さらに固定孔22から飛び出した突起部14に対して枠体30の凹部34が嵌め込まれて一体化されている。
弾性多孔体20は、枠体30の下面32、外側面33a及び内側面33bから形成される窪みにぴったりと嵌り込んだ状態になっている。
また、枠体30の突起35が弾性多孔体20の周縁部を押圧するようになっていることから、シール性が高められている。
なお、散気装置1では、枠体30の下面部32に突起部を形成し、支持体10の肉厚部13に凹部を形成して、弾性多孔体20の固定孔22と組み合わせて一体化することもできる。
【0027】
散気装置1は、運転時に加えられる圧力の程度に応じて、さらに固定強度を高める観点から、図1、図4に示すように、一体化されている平板状の支持体10、弾性多孔体20及び枠体30の周囲の全部又は一部が厚さ方向の両側から固定具41〜44により固定されたものにすることができる。
固定強度を高める観点からは、図1に示すように固定具41〜44の全てを使用することが好ましいが、固定具41、43の組み合わせ及び固定具42、44の組み合わせの一方のみを使用することもできる。
また、特開2007−38198号公報の図7(a)に示されている固定部材31〜34と同じもので四隅を固定してもよい。
【0028】
図1に示す固定具41〜44は、弾力性のある金属からなるものであり、弾力性は、形状、厚さ及び材質を調整することにより付与することができる。
固定具41〜44は、幅方向の断面形状が、アルファベットのC又はそれに類似した形状の長さ方向に連続した開口部を有する筒状のものである。アルファベットのCに類似した形状とは、断面がコの字型、アルファベットのU型等である。
固定具41〜44の厚さは0.5〜2.0mmの範囲が好ましい。
固定具41〜44は、ステンレス、鉄、アルミニウム等からなるものが好ましい。
固定具41〜44は、叩くことで変形させる(即ち、かしめる)ことができるものでもよいし、バネ弾性を利用して挟み付けるものでもよい。
【0029】
固定具41〜44は、一体化されている平板状の支持体10、弾性多孔体20及び枠体30を厚さ方向の両側から挟み込むように取り付けられている。
固定具41〜44の開口部の幅は、一体化されている平板状の支持体、弾性多孔体及び枠体の合計厚さ(T)未満のものであり、好ましくは合計厚さ(T)の70.0〜95.0%の範囲である。
さらに上記固定具41〜44を取り付けた後、固定強度を高めるため、外側から叩いて変形させることで、一体化されている平板状の支持体10、弾性多孔体20及び枠体30に密着させるようにすることができる。
【0030】
〔散気装置1の運転方法〕
外部の空気源と接続された空気供給口12から送風したとき、圧力を受けた弾性多孔体20は、例えば、特許文献1(特開平6−71288号公報)の図1の状態、特許文献2(特開2004−313938号公報)の図4の状態、特許文献3(特開2006−150268号公報)の図3b)の状態のように側面から見ると弓なりに膨張する。
このとき、弾性多孔体20は内側に引っ張られることになるが、散気装置1は、支持体10の突起部14、弾性多孔体20の貫通孔22、枠体30の凹部34の組み合わせにより一体化されているため、弾性多孔体20がずれることがない。
そして、弾性多孔体20は、運転を停止すると元に戻り、再度運転を開始すると再び弓なりに膨張して、長期間にわたってこれを繰り返すことになるが、このような運転状態が継続されても、弾性多孔体20のずれが防止されるので、皺が生じることもない。
運転時に供給される空気量(空気圧)に応じて、さらに高い圧力が加えられるときには、固定具41〜44を組み合わせることで、固定強度を高めることができるので、弾性多孔体20にずれが生じたり、皺が生じたりすることがない。
【符号の説明】
【0031】
1 散気装置
10 平板状の支持体
14 突起部
20 弾性多孔体
22 固定孔
30 枠体
34 凹部
41〜44 固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気供給口を備えた平板状の支持体上に置かれた弾性多孔体の周囲が枠体で固定された散気装置であって、
平板状の支持体が、周辺に沿って形成された、それぞれが独立した複数の突起部を有しており、
弾性多孔体が、周辺に沿ってかつ厚さ方向に貫通して形成された、それぞれが独立した複数の固定孔を有しており、
枠体が、周辺に沿って形成された、それぞれが独立した複数の凹部を有しており、
平板状の支持体の突起部が、弾性多孔体の固定孔の長さと枠体の凹部深さの合計値と同程度の長さを有するものであり、
平板状の支持体と弾性多孔体と枠体が、平板状の支持体の突起部が弾性多孔体の固定孔を貫通し、さらに枠体の凹部に嵌め込まれていることで一体化されている、散気装置。
【請求項2】
空気供給口を備えた平板状の支持体上に置かれた弾性多孔体の周囲が枠体で固定された散気装置であって、
平板状の支持体が、周辺に沿って形成された、それぞれが独立した複数の凹部を有しており、
弾性多孔体が、周辺に沿ってかつ厚さ方向に貫通して形成された、それぞれが独立した複数の固定孔を有しており、
枠体が、周辺に沿って形成された、それぞれが独立した複数の突起部を有しており、
枠体の突起部が、弾性多孔体の固定孔の長さと平板状の支持体の凹部深さの合計値と同程度の長さを有するものであり、
平板状の支持体と弾性多孔体と枠体が、枠体の突起部が弾性多孔体の固定孔を貫通し、さらに平板状の支持体の凹部に嵌め込まれていることで一体化されている、散気装置。
【請求項3】
前記突起部の一部が着脱自在のボルトであり、ボルトに対応する凹部の内部にネジが形成されている、請求項1又は2記載の散気装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の散気装置において、
一体化されている平板状の支持体、弾性多孔体及び枠体の周囲の全部又は一部が厚さ方向の両側から固定具により固定されている、散気装置。
【請求項5】
前記固定具が、
弾力性のある金属からなるものであり、
幅方向の断面形状が、アルファベットのC又はそれに類似した形状の長さ方向に連続した開口部を有する筒状のものであり、
開口部の幅が、一体化されている平板状の支持体、弾性多孔体及び枠体の合計厚さ未満のものであり、
前記固定具の開口部において、一体化されている平板状の支持体、弾性多孔体及び枠体の周囲の全部又は一部を厚さ方向の両側から挟み込むようにして固定されている、請求項4記載の散気装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−91049(P2013−91049A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235799(P2011−235799)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(594152620)ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 (104)
【Fターム(参考)】